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道民カレッジ「ほっかいどう学」大学インターネット講座 「小さくても輝く村

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道民カレッジ「ほっかいどう学」大学インターネット講座 「小さくても輝く村
道民カレッジ「ほっかいどう学」大学インターネット講座
「小さくても輝く村」づくり~西興部村の挑戦~
講師:北海道大学高等教育推進機構
木村 純 特任教授
◇講座の内容◇
・西興部村は「平成の大合併」に際しても、合併を選択せず「自立」を目指して、「小さくても輝
く」村づくりを進めてきた。
・西興部村の村づくりの特徴を学び、過疎化と高齢化が進むなかで、小規模自治体が今後、どのよ
うに発展していくことができるかを考える。
◆西興部村について
・西興部村は面積の 割を山林が占める酪農と林業の村で
ある。
・ 年に興部村から分村し、人口は ~ 人ほど
で推移していたが、現在は 人あまりとなっている。
◆西興部村の人口推移
・ 年には 人あまりの人たちが住んでいたが、
その後、林業が衰退し、また畑作から酪農への転換
により農地の集約化・大規模化が進んだことで、村
を離れる人たちが増え人口が減少してきた。
・現在は道内で 番目に人口が少ない村である。
◆平成の大合併
・国が推し進めた平成の大合併によって、全国の市町村
は から に減った。
・北海道も から になったが、西興部村は合併の
道を選ばず、自立を選択した。
・
「平成の大合併」の流れに加わらなかった全国の町村と
連帯し「小さくても輝く村づくり」をすすめてきた。
1
◆全国の町村と連帯した村づくり
・きっかけは、今から 年以上前である。
・ 年、内閣府の審議会である地方制度調査会の当時の副会長が「人口1万人未満の自治体は、
将来、自治体として存続しえない。市町村合併をしないとすれば、近隣都市に補完してもらうか、
都道府県に補完してもらうしかない」との見解を示した。
・これに対し、人口が少ないという理由で自治権を
剥奪するのは問題であるとして、合併を拒否して
自立の道を選んだ自治体が集まり、 年に第 回「全国小さくても輝く自治体フォーラム」を開
催した。
・その後 人を超える自治体の首長が呼びかけ人
となって、毎年フォーラムが開かれるようになる。
・ 年には常設的な「小さくても輝く自治体フ
ォーラムの会」へと発展した。
・この会に、北海道からはニセコ町、東川町、訓子府町と西興部村が参加している。
・参加しているすべての自治体が自立を選択し、連帯を深めている。
・ 年のフォーラムでは「合併・人口減少・町村自治」と題した記念講演が行われた。
・平成の大合併について、小規模町村への財政負担を減らしたい政府が効率化のため、財政が危な
くなることから進めたもの。
・しかし、自立を選んだ町村では役場機能が維持され「職員採用された若者が地域に残る効果があ
った」などと指摘した。
こう と り そ ん
◆「向都離村」からの転換
・人口の減少については、自治をあきらめない限り今後も町村はなくならないとし、日本の歴史で
長く続いた『向都離村』からの転換が起こり始めていると述べた。
◆小さいからこそ輝く自治体
・自治体の首長を経験した人たちによるシンポジウムでは、村長経験者が、「村の職員が住民の得
意なことをつぶさに把握し、地域に役立てることが大切」だとし、「一人一人を生かすことは、
何万人もいる自治体ではできないことだ」と強調。
・「小さくても輝く自治体」から「小さいからこそ輝く自治体」という主張で、自らの村への誇り
を強く感じさせる発言であった。
◆村が自立を決めた経緯
・西興部村では 年に北海道の市町村合併推進
要項が決定したことを受け、翌 年、役場内
に市町村合併検討委員会を設置。
・役場職員の学習会を実施するとともに、住民参加
の講演会を実施した。
・ 年、第 次行財政改革大綱が決定されたこと
を受け、住民懇談会が行われ、村議会で村長から
合併しないことが提案された。
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・第 次行財政改革大綱では、職員の削減、行政の効率化が打ち出されるとともに「行政と住民と
の新しい協同関係づくり」
「小さくても輝く村づくり」が打ち出されたのである。
◆村づくりの財源
・西興部村の財政も他の過疎地
域の自治体と同様、村税や使
用料・手数料などの自主財源
が歳入に占める割合は少ない。
・地方交付税や地方譲与税、国
や道の支出金が占める割合が
高くなっている。
・しかし、基金会計などからの
「繰入金」が 億 千 百万
円ある。
・他市町村に先駆けて経費削減に取り組むとともに、有利な起債や補助金を活用して積み立てられ
た貯金が現在でも 億円ある。
・「繰入金」には、この貯金を地方交付税の削減など、将来の歳入減を見越して、計画的に取り崩
したものが含まれている。
・その結果歳出についても、
公債費の支出が国の財政健
全化の基準をクリアし、今
後も将来の負担を上回る収
入が見込まれている。
・ 億円の貯金は、 年の
予算総額が 億円であるこ
とと比べてもその「豊かさ」
がわかる。
・これが、合併を選択せずに
自立を目指す村づくりを支
えている。
◆西興部村の村づくりの特徴…公共施設
社会教育施設や福祉施設が村の中心部に集約されている。(取材 975
【事例①】森の美術館「木夢(コム)
」
・全天候型の屋内遊園地として 年にオープン。
・宿泊制のスクールでは、おもちゃの制作以外にも村の観光や交流会なども行われている。滞在型
観光により、交流人口を増やすことも目的とした村の事業。
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【事例②】
「ホテル森夢(リム)
」
・村が作り、第 セクターが運営。
・遠くからウッディスクールなどに参加する人たちが泊まることができる。
・併設された公民館は、村民が村づくりをするための学習拠点となっている。
・交流人口の増加を支える滞在型観光の拠点。
【事例③】「マルチメディア館 ,7 夢(アトム)」
・電波事情が悪く、かつては村全体が難視聴地域であった→村全体を一つのケーブルで結ぶ取り組
みにより光ファイバーケーブルが全世帯・施設に引かれる。
・村の自主放送と併せてインターネットにも利用され、無料で使用できるように。
・村の人たちが快適に暮らせるための施設が充実している。
・西興部村の村づくりの特徴は、福祉と教育の充実である。
【福祉施設の整備①】(取材 975)
特別養護老人ホーム「西興部興楽園」
・診療所と、渡り廊下でつながった「ケアハウス」がある。
【福祉施設の整備②】(取材 975)
障害者支援施設「清流の里」
・障害者のグループホームも カ所設けられている。
・これら高齢者や障害者のための福祉施設の入所者と働いている職員とその家族は 人に上り、
村の人口の4分の1を上回っている。
◆子育て・教育支援事業
・エンゼル祝い金
…出産祝いとして村民に支給。
第 子に 万円、第 子に
万円、第 子以降 万
円を支給する。
・子ども医療費無料化事業
…村内の義務教育終了までの
子ども医療費を世帯の所得
に関係なく全額助成。
・高等学校通学費補助金
…村内に高校がないので、バス利用により通学する生徒及び他市町村で下宿等により通学する生
徒1人あたり月額1万円を支給。
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・遠距離通学児童通学助成金
…村営バスを利用する児童生徒の定期乗車券購入費を補助。
・生徒海外体験学習事業
…中学 ・ 年生全員によるホームステイ。隔年で行われている。
…ホームステイの場所はアメリカのアラスカ州ジュノー市。
(写真で紹介)
・上興部小学校は児童数 ~ 名の時期がしばらく続いたが、村は学校統合しないで、 年
に山村留学の募集を始めた。
・山村留学の家族には、子どもへ月 万円の支給、住宅費や引越し費用の支給を行う。
・保護者には資格や特技を活かした就職の斡旋や村内の福祉施設での就業の紹介などを行って
いる。
・「小さくても輝く自治体フォーラム」に参加している小規模自治体の出生率は、大都市など
と比べても高い。
・西興部村もそれらの市町村に負けないように頑張っている。
合併を選択せず福祉や子育て・教育を大切にしている村づくりについて
鎌谷俊夫西興部村教育長にインタビュー(取材 975)
◆教育機関との連携
・「小さくても輝く村づくり」のため、 年に北海道大学大学院教育学研究院と連携協定を結ん
だ。
・インターネットを利用して公民館で北海道大学の公開講座を受講し、画面上で質疑応答を行う「遠
隔講座」を実施している。
・教育学部と大学院を中心に地域の実態調査をしたり、夏休みに北大生が西興部中学校の生徒の学
習を応援する取り組みを行っている。
・ 年には西興部の先生たちと協力して科学実験を体験する教室の手伝いを行った。
・教育学部の学生の中には学習塾でアルバイトをしていて、教えることに優れたスキルを持ってい
る学生もいる。
・西興部村の中学生や先生に喜ばれると同時に、先生方から講評をいただき、学生にとっても貴重
な学びと体験の場になった。
◆西興部村の産業
・西興部村が抱えている、農業におけるエゾシカ被害の問題を解決し、産業に結びつける研究をし
ている。
・ 年に「西興部村養鹿研究会」を発足。
・エゾシカの飼育技術と生態を学び、鹿牧場を運営→「エゾシカと共に生きる村づくり」が始まっ
た。
・農水省の補助事業を活用して、
「鹿牧場公園」を整備。
・鹿肉処理施設を設けて鹿肉の販売を始めた。
・この公園は、捕まえた鹿を肉に加工するまでの間、飼っておく牧場であるが、子供が鹿に草を与
えている。写真
・村としては観光の資源になることを期待している。
・
「132 法人西興部村猟区管理協会」を立ち上げ、猟区の認可を北海道知事から受け、地元ガイドを
付け、狩猟の場を提供している。
・また、村は酪農学園大学と円山動物園と協定を結んでいる。
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・研究するフィールドを村が提供し、その研究成果を村に還元してもらうとともに、村の 35 につ
ながることが期待されている。
◆今後の村づくりの課題
・高齢化が進む西興部村では、第 に、高齢者
の役割が重要。
・山村留学での自然学習など、エゾシカの猟区
管理協会会員の高齢者が、遊びの工夫、植物
の名前など蓄積してきた知恵やわざを伝える
ことは、子どもたちだけではなく西興部を訪
れる人々にとっても魅力的である。
・第 に、「森夢」に併設された公民館や図書室を拠点に、社会教育委員をリーダーにして行われ
る社会教育は、高齢者の孤立を防ぎ、生きがいを作り出すこと、地域の産業を発展させ、若者の
働く場を作り出すなど、村民自身が村づくりの主体として、地域課題を明らかにし、その解決の
主体となっていくうえでますます重要になる。
・第 に大学との連携が重要である。
・大学に受動的に依存して「模範解答」を求めるのではなく、地域住民が自ら解答を見つけ出す社
会教育の充実に結び付けることが重要になっている。
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