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リフォームの支援制度
生活知識情報 住まいに関する 支援制度 第 6 回 河合 敏男 住まいに関する支援制度の内容や しくみについて紹介します。 Kawai Toshio 弁護士 (第二東京弁護士会所属) 河合敏男法律事務所。国民生活センター紛争解決委員会特別委員、 第二東京弁護士会住宅紛争審査会紛争処理委員、東京地裁調停委員等。 リフォームの支援制度 *2014年2月現在 くしています。 リフォームの目的 これに対応するのがリフォーム瑕疵保険です。 後日、工事に欠陥が見つかった場合、補修費用 リフォームはいろいろな目的で行われていま す。家族構成の変化や住宅の老朽化に応じてもっ 等の保険金がリフォーム業者に支払われます。 と暮らしやすくするためのリフォーム、屋根・外 業者が倒産している場合は消費者に対して直接 壁などの耐久性を向上させるためのリフォーム、 支払われます。また保険法人に所属する建築士 耐震性を高めて安全に居住するためのリフォー が工事中に現場検査を行うので、欠陥などの未 ム、断熱サッシに替えるなどの省エネを目的と 然防止にも役立ちます。保険加入はリフォーム したリフォームなどです。 業者が行うことになりますが、そのためには業 者は事前に保険法人に登録しておく必要があり 今回は、リフォームの目的に応じて、利用を ます。この登録を受けるためには、過去の事故 検討したい制度を紹介します。 の経歴などの審査を受けるので、登録業者であ るということは1つの安心材料にもなるでしょ リフォーム瑕疵保険 う。登録されたリフォーム業者か否かは、一般 か し 社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会のホーム リフォーム工事における瑕疵(欠陥)問題は ページ*4で検索することができます。 少 な く あ り ま せ ん。 特 に 訪 問 販 売 に よ る リ フォーム工事トラブルは、国民生活センターの 相談件数*1をみても分かるように、年々増加 リフォームの減税制度 する傾向にあります*2。本来、リフォーム工 事は、住宅の既存の構造、仕様、材料などを前 リフォームの減税制度は、3つあり ⑴所得 提に工事をすることから、建築技術的には難し 税の減税 ⑵固定資産税の減税 ⑶贈与税の非課 いのです。ところが、その一方で、建設業法上 税措置です。紙面の関係上、ここでは概略のみ 「軽微な工事」とされている工事(建築一式工 説明します。 詳細は一般社団法人 住宅リフォー 事でない建設工事では、500万円に満たない工 ム推進協議会の発行している『住宅リフォーム 事)は、建設業の許可を受けていないリフォー ガイドブック』を参照してください*5。 ム業者でも施工できることから*3、技術力の ⑴ 所得税の減税 ないリフォーム業者の参入も許される状況にあ リフォームのためのローン利用の有無にかか ります。このことがリフォーム工事の欠陥を生 わらず所得税の減税を受けられるのは ①耐震リ む1つの要因となっています。また、このよう フォーム ②バリアフリーリフォーム ③省エネ なリフォーム業者には賠償能力がないことが多 リフォームの場合です。なお、これ以外の項目 いため、消費者の泣き寝入りとなる危険を大き のリフォーム工事については、住宅ローン減税 2014.3 国民 生 活 16 生活知識情報 の1つとして、リフォームローンの年末残高の の補助を行っています。耐震リフォームを検討 1%が10年間にわたって所得税から控除される している人は、これらの制度も確認してくだ 制度があります。 さい。 耐震リフォーム減税は、1981年5月31日以 前に建築された旧耐震基準の建物(既存不適格 リフォームの無料専門家相談 建物といいます)が対象で、改修工事費用に応 じた減税を受けられます。バリアフリーリフォー 政府は、かつての新築住宅建設の推進から、 ム減税は、高齢者や要介護者などが居住してい 価値があるものを作って長く大切に使うストッ ることが要件となりますが、通路の拡幅、浴室 ク重視の政策に転換し*6、2009年に住宅エコ 改良、手すり取付けなどのバリアフリー改修工 ポイント制度などが創設されて、既存住宅の維 事に対して、改修工事費用に応じた減税を受け 持、保全、改良に対する大きな予算措置が決定 られます。省エネリフォーム減税は、すべての されました。このような国家予算を伴う大きな 居室の窓全部の改修工事を行った場合、または 助成制度が創設されると、玉石混交の関連事業 これに床、天井、壁の断熱工事を合わせて行っ 者が参入し、消費者被害が多発することは、過 た場合は、これらの改修工事費用に応じた減税 去の歴史が証明しています。 ぎょくせきこんこう が受けられる制度です。 そこで創設されたのが、無料専門家相談の制 ⑵ 固定資産税の減税 度です。公益財団法人住宅リフォーム・紛争処 耐震リフォーム、バリアフリーリフォーム、 理支援センター(住まいるダイヤル)は、リ 省エネリフォームを行うと、1年度分(工事完 フォームに関する無料の電話相談を受け付けて 了年の翌年度分)だけ、当該家屋の固定資産税 います*7。電話で対応するのは、建築士など の2分の1~3分の1の減税が受けられます。 の専門家です。また、この電話相談だけでは不 バリアフリーと省エネのリフォーム減税は、併 十分な場合のために、住宅紛争審査会を設置し 用できます。 ている各地の弁護士会が協力して、建築士と弁 ⑶ 贈与税の非課税措置 護士のペアによる面談での無料相談も実施して 2014年12月31日までに、満20歳以上の個人 います。この電話や面談による相談は、トラブ が親などから住宅取得資金の贈与を受けた場合 ル相談だけではなく、見積書の内容や金額が適 は、一定金額まで贈与税が非課税となりますが、 正かどうかなどの事前チェック(リフォーム見 これは増改築工事の資金の贈与を受けた場合に 積チェックサービス)も受け付けており、積極 も適用があります。 的に利用することをお勧めします。 市区町村の補助制度 *1 「訪問販売によるリフォーム工事」 http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/reform.html 耐震リフォームには市区町村による補助制度 *2 訪問販売で契約したときは、法定書面を受け取ってから8日間は 工事に着手していたとしてもクーリング・オフ(無条件で契約を 解除すること)ができる。 があります。都市部の自治体では、マンション の耐震診断および耐震改修等に関する助成事業 *3 建設業法施行令 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S31/S31SE273.html を行っています。例えば、東京都では耐震アド *4 http://search-kashihoken.jp/ バイザー派遣事業、耐震診断助成事業、耐震改 *5 http://www.j-reform.com/publish/book_guidebook.html 修助成事業、建替え助成事業などを定め、費用 *7 住まいるダイヤル http://www.chord.or.jp/ *6 「住生活基本法」(2006年) 2014.3 国民 生 活 17