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1. 本調査の背景と目的
2. 他産業の優良ビジネスモデルについて
3. 優良ビジネスモデルの導入可能性について
4. 検討委員会での議論の取りまとめ
5. 6次産業化の取り組みへの示唆
6. 今後の課題
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4.検討委員会での議論の取りまとめ
本調査期間中に、調査内容等に関する検討委員会を実施
 本調査期間中に、大学の研究者、製造業等民間企業、農業関係者からなる検討委員会を実施した。
 検討委員会の委員、オブザーバー、事務局は下表のとおり。
検討委員会の委員・オブザーバー・事務局
役 割
氏 名
木内 博一
坂爪 裕
委
員
'代理出席(
役 職 等
農事組合法人和郷園 代表理事
区 分
農業関係者
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 准教授
大学の研究者
矢坂 雅充
東京大学大学院経済学研究科 准教授
大学の研究者
佐野 泰三
カゴメ株式会社 常務執行役員
民間企業
福田 秀人
株式会社セブンファーム 代表取締役社長
民間企業
株式会社イトーヨーカ堂 青果部 セブンファーム開発担当チーフディストリビューター
民間企業
久留原 昌彦
藤本 隆宏
東京大学大学院経済学研究科 教授
ものづくり経営研究センター センター長
大学の研究者
オブザーバー
新宅 純二郎
事務局
東京大学大学院経済学研究科 准教授
野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社
ものづくり経営研究センター 研究ディレクター
大学の研究者
-
'敬称略(
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4.検討委員会での議論の取りまとめ
第1回検討委員会における議論の要点
6次産業化の生産性向上の誯題
経営理念
ミッション
経営管理
 リスクをとらない。
 やる気があっても資金が不足。
生産計画
(商品戦略)
生産プロセス
販売戦略
-
優良なビジネスモデルの導入可能性
 農家の持続性が重要。野菜の加工・生産までとし、リスクの大きい
最終商品までは手を出さない。
 農業者自らがリスクをとって経営を行っていく概念も重要。
 6次産業化のパターンは、1次から始まるだけでなく、2次から1次、
3次から1次など多様なものがあってよい。
 ①ユーザー側のどのようなニーズに応えていくか、②輸出を射程
に入れているか、③農業外での経験者の活躍が重要。
 6次産業化のプロデューサーの育成が重要。
 出口を出発点として6次産業化を考えるべき。
 店頭ではカット野菜の需要が大きいので、生産側で様々な用途の
カットを実施。
 販売先の細分化と販売先別の商品戦略が必要。
 天候などによるバラつき。
 バラつきの標準化。
 品質も価格も同じではないので多様なブランディングが必要。顧客
の違い、地域の違いもある。
 多様なブランディングの展開。
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4.検討委員会での議論の取りまとめ
第2回検討委員会における議論の要点
6次産業化への示唆
経営理念
ミッション
経営管理
 コストを下回る生産者価格で出し続けて良いはずがない。その意味で、農産物に「定価」をつけたい。ただ、農業はどうしても生産にブレがあ
るので'天候などで(、そのブレ'ロス率(を軽減するため、当社では加工を始めた。それによって、生鮮品の定価が守れるようになる。さらに、
単に受注生産'OEM(をやっても、それだけではそれ以上の価値を生まないので、自社のブランドをつくることが必要となった。そのため、消
費者需要を把握する目的で、アンテナショップを作り、マーケットリサーチを行ったのである。
 6次産業化で加工と販売にある'経済(価値をとるというのは理想論ではないか。例えば、地産地消のようなエリアマーケットであれば、生産
から販売まで完結できるかもしれない。ただ、マーケットサイズは限定的である。6次化であって、産業にはならない。
 イノベーションという言葉は、新しいアイデアという意味ではなく、新しい共同体'コラボレーション(だ。イノベーションの5要素は、①新しい組
織の形成、②新しい原料・半製品の供給元の確保、③新しい生産方法を取り入れる、④新しい販売形態'販路(、⑤新しい製品の製造、であ
る。生産者だけで狭く付き合うのではなく、視野を広げること'異業種のノウハウ・視点を取り込むこと(が重要だ。
 セブン-イレブンもそうだが、どう新商品を継続的に市場に投入していくかは課題である。TVの美食家が唸った商品は次の日から完売とな
るが、ブームが去るのも早い。商品開発力の中で、どうアンテナを高く張って、いち早く新商品を生み出していくか、また、継続的に買ってもら
う仕組みやそのための商品開発力の強化は、小売にとって継続的なテーマである。
生産計画
(商品戦略)
 セブン-イレブンはチームで集まって新商品の開発を実施している。決して、一人のバイヤーだけで完結できることではない。
 受注生産を受けて、顧客の需要を学習し、次第に見込み生産を始めるという繰り返しが重要でないだろうか。
 生産者として小売とどこまで話ができているか。例えば、顧客からクレームがきたら、生産者がダイレクトに応える、または、サラダボウルの
ように売り切れる商品設計を小売に提案するなどである。小売の悩みを生産者がどこまで解決できるような提案ができるかが重要だと思う。
3次産業まで行かずとも、小売側と同じ考え方になれるかどうかが重要だと思う。
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4.検討委員会での議論の取りまとめ
第2回検討委員会における議論の要点
6次産業化への示唆
生産プロセス
 バラつきをおさえることはできず、せいぜい規格でしかコントロールできない。当社では部会毎に使う肥料や農薬を同じにしている。しかし、土
壌によって'形や味は(違ってくる。また、品目によってもバラつきが不要かどうかは異なる。例えば、きゅうりは形よりも新鮮であることがトッ
プチアだ。土壌によって使う肥料や農薬が異なり、加工用にはこの規格、SM向けにはこの規格といったコントロールを行う。標準化はそれほ
ど大きな問題ではないのではと思う。
 農産加工はセル生産できない。それはライン'品目(が多過ぎるからだ。設備も必然に増える。一箇所に品目を集約するなどか。
 「理念ブランド」と「商品ブランド」は分けている。前者は、“和郷園'和郷(”ブランドであり、これは農家であることを売りとしている。出発点は
農家であり、それに、和郷園が管理している安心・安全ブランドが付加されている。一方、後者は、商品の価値を強調したブランドである。当
社には、規格外の野菜ブランドである“自然体”、冷凍野菜の“さーやキッチン”、高級感を演出した“銀座フルティカ”がある。
 ブランドは根拠'ロジック(が必要である。和郷園の場合、当社が生産者の品質基準を担保していることでブランドの根拠を提示している。
さーやキッチンは冷凍商品であるが、中国の冷凍食材に対する不信感が強まり始めた頃、自分の娘に食べさせても安心'さーやは木内委員
の娘様のお名前(という価値を内包し、供給している。また、銀座フルティカは、日本でも特によいものが集まる銀座のイメージを活用したも
のである。ブランドは顧客目線からの表示'価値(評価である。
販売戦略
 安全・安心というブランドを前提にしているからこそ、当社のブランド'PB(である「顔の見える野菜」が成り立っている。ネーミングとブランドも
違う。安全・安心のロジックとは、品質管理や土壌分析、その他栽培の安全管理を徹底的に実施しており、かつ消費者から問い合わせがあ
れば、それらのトレースができるという点にある。例えば、当社では糖度の高い商品などのこだわりを持った商品を「陽だまり育ち」のブランド
で販売している。これは消費者に需要のある甘い'糖度の高い(商品を提供することが提供価値であり、ブランドとして訴えている点である。
ブランドの前提となる中身が伴ったものについて、それをどう分かりやすく消費者に知ってもらうか、というためにネーミングが登場するだけな
のである。その意味で、単品毎の商品戦略が必要となってくるのではないか。
 農産品については、例えば、和郷園のトマトだけでもいろいろある。消費者は選択肢が多くなりすぎて選べない。例えば、小売側で、「顔がみ
える」、「陽だまり」などのブランド毎に囲ってもらうなどが必要ではないか。
 軽井沢のジャムなどあるが、消費者に目立つように陳列して販売するといった工夫が必要である。また、口コミから入り、継続的なリピーター
になった人もいるのも事実。
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4.検討委員会での議論の取りまとめ
第3回検討委員会における議論の要点
6次産業化への示唆
 「身の程を知る」という話だが、生産者は、B~C級品の農産物が出ると、逃げ道として加工という発想にすぐなる。余ったからジュースをつく
る、ジャムつくるという安易な発想はかなりリスクが高く、安易に手を出すべきでない。それは、ジュースやジャムを専門に作っている食品メー
カーが数多く存在しているからである。原料調達や商品性など専門家には太刀打ちできない。安易に6次産業化するのは、余計な赤字を増
やし、経営資源も分散してしまう結果になるのではないか。
経営理念
ミッション
経営管理
 私は家業を手伝う中で、流通'需要者(側の意見を聞かないと駄目だとわかった。そして、その際、自分が知らない品目については勉強しな
いと駄目だった。生産技術取得に10年はかかった。そのような時間がかかり、やりながら覚えると思う。実践研修と実務の双方が必要ではな
いか。
 経営者化が必要だと思う。例えば、セブンファームが生産者と付き合う際に、経営者としての自覚を認識してもらうことから始めている。
生産者の持っているノウハウと流通の持っているMDとの融合、組み合わせであり、密なコミュニケーションが必要だ。
 小規模での6次産業化では、業者との連携に加え、地域の廃棄施設・工場・給食場'統廃合で数が減っている(を再利用することが考えられ
る。地域の雇用という点からも、地域施設の再利用という点だけでなく、従業員をそのまま引き継ぐというのは意味があるのではないか。
 大企業が持っている管理ノウハウや教育をはじめ、資金、CSRの考え方など、日々のリアルのオペレーションは、1次産業のマインドを変え
るにも大きく役立つのではないか。
 異業種がやっているものをそのまま導入できるわけではない。導入できるとすれば、アプローチの仕方や'ビジネスモデルの(考え方だ。
販売戦略を中心とする生産-加工-販売のサイクルをどう回していくかがビジネスモデルであるが、ビジネスモデルは、同業種間でも様々あ
る。農業でもいろいろなパターン、ビジネスモデルの回し方'ビジネスサイクル(が存在するはずだ。肝心な点は、販売戦略であり、自分で売
るにしろ他社に販売を任せるにしろ、販売に無頓着では駄目だ。
バリューチェーン
(バリューサイクル)
 生産者は、これまで自らビジネスモデルを考えてこなかった。いわば、「生産して終わり」であった。ビジネスモデルを回すという考え方への意
識改革が重要である。また、マーケット・インは大手にはよいが、小さな農家には決して向かない面も認識しておく必要がある。生産者自身の
良さを認識したプロダクト・アウトと、マーケットの需要をすり合わせる'ミックス型の(戦略が重要ではないか。そのためにも、自分のよさをどう
気づいて、どう需要と接点を見出していくのかの視点が6次産業化には必要だ。
 6次産業化を実施する際、自分で行う部分と他社と連携する部分があるが、この2つの比率'バランスの問題(が重要だと思う。バリューサイ
クルの実践において、限られた経営資源をどう活用するかという観点で、どことどう組んで、自社の運営部分との比率をどうするかという議論
は不可欠だと考える。
 バリューサイクルという考え方は重要だと思う。これを生産、加工、販売という3つで定義した時、共通するのは、まず、技術、そして、金融、さ
らに経営者マインドである。特に、最後の3つ目が農業には抜けている。
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