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基礎的・基本的な運動の技能や知識を活用する力の
茨城県教育委員会学校体育研究推進校 主 題 基礎的・基本的な運動の技能や知識を活用する力の育成 ―学び合う活動を生かした指導方法の改善― 小美玉市立美野里中学校 小美玉市教育委員会 Ⅰ 研究の概要 1 研究主題 基礎的・基本的な運動の技能や知識を活用する力の育成 -学び合う活動を生かした指導方法の改善- 2 主題設定の理由 学習指導要領の改訂の基本方針は,教育基本法等で明確となった教育理念を踏まえ,「生 きる力」を育成すること,基礎的・基本的な知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等 のバランスを重視すること,道徳教育や体育などの充実により豊かな心と健やかな体を育成 することなどである。 保健体育科においては,「生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の育成」,「健康の保持 増進」,「体力の向上」が改訂の重要なねらいであることを明確に示すとともに,引き続き 心と体を一体としてとらえ,健康で豊かなスポーツライフを実現することをめざすものとし ている。 特に「生涯にわたって運動に親しむ資質や能力」を育てるためには「体を動かすことが, 情緒面や知的な発達を促し,集団的活動や身体表現などを通じてコミュニケーション能力を 育成することや,筋道を立てて練習や作戦を考え,改善方法などを互いに話し合う活動など を通じて論理的思考力をはぐくむことにも資することを踏まえ,運動の楽しさや喜びを味わ えるような基礎的な運動の技能や知識を確実に身に付けるとともに,それらを活用して,自 らの運動の課題を解決するなどの学習をバランスよく行うことが重要である。」『中学校学 習指導要領解説保健体育編』と具体的な内容が示されている。 本校では,「豊かな人間性と確かな学力を身に付け,社会的に自立した生き方のできる生 徒の育成」を学校教育目標に掲げ,1年後の生徒のめざす姿を「志(目標)をもって自分を 伸ばしている」「あたたかい人間関係,あたたかい友だち関係を作ろうとしている」とし, 教育活動全体を通して実践している。各教科指導においては,思考力・判断力・表現力・コ ミュニケーション能力の向上を図るために,「学び合う活動」・「交流」・「つながり」をキー ワードとした授業づくりを推進している。 本校の生徒は,運動やスポーツが好きで,体育の授業を楽しいと感じている生徒が多く, 進んで運動に取り組むことができている。一方で,運動やスポーツをすることが得意ではな いと思っている生徒が多く存在することから,生涯にわたって運動に親しむ実践者を育成す るためにも,「できる」「分かる」「かかわる」楽しさを体験させ,運動に対する有能感を高 めていく必要がある。また,授業において,グループで思考を深める場面では,習得した運 動の技能や知識を活用して課題解決にあたる姿が十分にみられないことから,観察し合った り,話し合ったりする認知的学習場面を意図的に取り入れ,肯定的なかかわり方を重点的に 指導していく中で,「活用する力」を育てていく必要性を感じている。 以上のことから,本校の体育授業のめざす方向は,学び合う活動を生かした指導方法の改 善を行い,「できること」「分かること」「かかわること」をバランスよく組み込んだ授業を 展開し,生徒が基礎的・基本的な運動の技能や知識を確実に習得して,運動の楽しさや喜び を味わえるようにすることである。そして,習得した力を活用し,自信をもって運動に挑戦 したり,自らの運動の課題を解決したりできる生徒を育成することである。基礎的・基本的 な運動の技能や知識を活用する力の育成を図ることが,健康で豊かなスポーツライフを実現 させる力となり,体育・保健体育科の究極の目標である「明るく豊かな生活を営む態度」を 育てることになると考え,本研究主題を設定した。 3 研究のねらい 学び合う活動を生かした指導方法の改善を行うことにより,基礎的・基本的な運動の技能 や知識を活用する力の育成を図る。 4 研究の仮説と検証方法 (1)研究の仮説 以下のような視点から研究を進め,実践を積み重ねていけば,「基礎的・基本的な運動 の技能や知識を活用する力の育成」が具現化するであろう。 研究の視点1 協同的な学びを通してコミュニケーション能力を育成する。 研究の視点2 認知的学習を通して論理的思考力を育成する。 (2)検証方法 研究の視点 1 協同的な学びを通してコミュニケー 2 認知的学習場面を通して論理的思考力 ション能力を育成する。 を育成する。 ○ 仲間のよさ(考えや動き)を認め, ○ 学習した技能や知識を学習場面で活用 仲間と協力し,教え合ったり,励まし し,課題を見付け,課題に応じた取り組 具体的な 合ったりしている。 み方ができる。 生徒の姿 ○ 積極的に分担した役割を果たしたり,○ 思考・判断する場面で,根拠を挙げた 考えを伝えたりしている。 り,比較したりするなど筋道を立てて説 明できる。 ・授業に関するアンケート調査 検証方法 ・診断的・総括的授業評価 ・学習カードの記述内容 ・パフォーマンス評価(観察) 5 ・授業に関するアンケート調査 ・診断的・総括的授業評価 ・学習カードの記述内容 ・期末テストの記述問題 研究の内容 (1)研究主題についての基本的な考え 基礎的・基本的な運動の技能や知識とは ○ 運動の楽しさや喜びを味わうことができるための技能 ○ 記録や技に挑戦できる,試合や発表ができるための技能 ○ 「運動の特性や成り立ち」 , 「技術の名称や行い方」 , 「運動の観察の方法」 , 「表現の仕方」 , 「交 流や発表の仕方」などの知識 活用する力とは ○ 思考力,判断力 ○ 学習課題に応じて,これまでに学習した内容を学習場面に適用したり,応用したりする力 学び合う活動とは ○ 仲間と協力しようとする,グループでの責任を果たそうとする「協同的な学び」がある活動 ○ 一人の発言や考え,動きなどのよさをみんなで認め合う「表現と共有」がある活動 ○ 素材やモノ(教材,場など)を媒介した「問題解決的思考(認知的学習場面) 」がある活動 (2)研究の視点についての基本的な考え ①「協同的な学びを通してコミュニケーション能力を育成する」について 協同的な学びとは ◇ 仲間と協力したり,グループでの責任を果たしたりしようとする姿がある学習 ◇ 知識・技能だけでなく多様な人々が協同する生き方を学ぶことができる学習 ◇ 生徒一人一人の学びが保証されている学習 コミュニケーション能力とは ◇ 仲間のよさや違いを認め合いながら人間関係やチームワークを形成する力 ◇ 対話をして情報を共有し,考えを伝え深め合って合意形成・課題解決する力 具体的な手立て ◇ 学習内容に応じて学習形態を工夫する。 ◇ 心と体をほぐす運動であたたかい人間関係をつくる。 ◇ 学習指導要領で示された「態度」の学習内容を明確化し,知的に理解させる。 ②「認知的学習を通して論理的思考力を育成する」について 認知的学習とは ◇ グループやペアで話し合ったり,観察し合ったりする学習 ◇ 仲間の考えや動きのよさが分かったり,自分との違いを比較したりできる学習 ◇ 課題解決のために運動の仕方や練習方法を工夫する学習 論理的思考力とは ◇ 直感やイメージに対して,分析,総合,比較,関係づけなどができること ◇ 筋道の通った思考。例えば前提-結論あるいは主張-理由という骨組みを整え ていること(課題-解決方法) 具体的な手立て ◇ 思考・判断を促す課題提示や発問の仕方・内容を工夫する。 ◇ ICT機器などを活用し,話し合いの場を工夫する。 ◇ 思考・判断が見取れる学習カード(ワークシート)を工夫し,言語活動の充実 を図る。 (3)研究の構想図 基礎的・基本的な運動の技能や知識を活用する力の育成 -学び合う活動を生かした指導方法の改善- 6 研究の進め方と組織 (1)研究を進めるにあたって ① 研究の組織として,研究推進委員会と授業研究部,環境・調査研究部を置き,研究仮 説の検証を行う。 ② 研究推進委員会は,全体計画及び授業研究部,環境・調査研究部との連絡調整を行う。 ③ 授業研究部は,指導計画の検討及び作成,学習指導の工夫・改善を行う。また,教科 主任は,各教科の視点で学び合う活動について検証する。 ④ 環境・調査研究部は,生徒の実態を把握するために,アンケートの実施や授業の分析 を行う。また,運動環境や掲示物を整備する。 (2)研究組織 校 長 研 究 推 進 委 員 会 授業研究部 ○体育部 ○各教科主任 ・指導計画の検討及び作成 ・学習指導の工夫と改善 ・各教科の視点で,学び合う活動について検証する。 環境 ・調査研究部 ○体育部 ○部活動顧問 ・アンケートの実施,集約 ・授業の分析 ・運動環境や掲示物の整備 7 研究の経過 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 平成24年度(1年次) 実態調査の実施と集計及び分析 研究主題・研究計画の立案,学習指導案の形式の検討 校内授業研修 (第3学年 体力を高める運動) 第1回県学校体育研究推進校訪問指導 (第2学年 マット運動) 茨城県学校体育研究推進校視察(稲敷市立東中学校) 全国学校体育研究大会視察(北海道) 第2回県学校体育研究推進校訪問指導 (第1学年 創作ダンス) 要請訪問・研究協議(研究主題・研究内容の検討) 平成25年度(2年次) 実態調査の実施と集計及び分析,研究主題・研究計画・研究内容の見直し 第1回県学校体育研究推進校訪問指導 (第1学年 創作ダンス) 校内授業研修 (第1学年 体育理論) 全国学校体育研究大会視察(東京都) 茨城県学校体育研究推進校視察(潮来市立延方小学校) 第2回県学校体育研究推進校訪問指導 (第2学年 体育理論) 要請訪問・校内授業研修(第1学年 創作ダンス) 平成26年度(3年次) 実態調査の実施と集計及び分析,研究主題・研究計画・研究内容の確認 校内授業研修 (第2学年 体育理論) 第1回県学校体育研究推進校訪問指導 (第1学年 創作ダンス,第2学年 体育理論) 要請訪問・校内授業研修 (第1学年 創作ダンス,第1学年 体育理論) 要請訪問・校内授業研修 (第1学年 創作ダンス,第2・3学年 体育理論) 茨城県学校体育研究推進校研究発表会 Ⅱ 研究の実際 1 授業研究部の取組 (1)実践事例1【3年次 第1学年 創作ダンス】 ① 学習内容の明確化 8つのダンスキーワードを設定し,生徒に身に付けさせたい技能や態度を明確に 示した。毎時間の授業ごとに,ダンスキーワードをめあてに入れ,単元全体を通し てすべてのキーワードを身に付けられるようにした。また,生徒への指導や声かけ の時にも,ダンスキーワードを積極的に取り入れた。例えば,動きが止っている生 徒に対して,「もっと動きなさい」ではなく,「4秒!」と声をかけた。学習の振 り返りの場面では,学習カードに感想を書くだけでなく,8つのダンスキーワード ができているかどうかを確認するようにした。また, 「今日のベストパフォーマー」 とその理由を書くようにし,お互いを認め合うような雰囲気を大切にした。さらに, 「男女で仲良く,笑顔でできた」「いい汗をたくさんかけた」「クラスの雰囲気が よくなった」なども確認させ,コミュニケーションをより意識するためのめあてに した。 1 2 3 4 5 6 7 8 8つのダンスキーワード 4秒ルール (4秒以上同じ場所・同じポーズでいない。人のいないところに動く) 見たことがない動き (ねじったり,回ったり,跳んだり) 早送り・スローモーション・繰り返し 一人ではできない動き,立体的な動き (はなれたり,くっついたり,まねしたり,くぐりぬけたり) 喜怒哀楽の表情や見る方向の工夫 手の動かし方の工夫(体より大きく,なめらかに,強く,弱く) ハイタッチ,励ましの言葉かけ,だれとでもダンスができる ひとながれ 空間のくずし 身体のくずし リズムのくずし 動きのくずし 表情のくずし 手のくずし 人間関係固定のくずし ダンスキーワード「ハイタッチ」 ② 人間関係づくり(MINORIウォーミングアップダンス) あたたかい人間関係づくりとダンスにつながる多様な動き,身体感覚づくりのた めに,毎回,授業の導入段階で,MINORIウォーミングアップダンスを行った。 ペアや4人組で行い,仲間と一緒に楽しく活動することができるようにした。音楽 に乗せて1曲通して踊るようにし,最後は必ず決めのポーズをして終わるようにし た。 ③ 学習形態の工夫(男女混合4人グループによるカルテット学習) 1学年を中心に,男女混合グループで授業を行った。創作ダンスにおいても,男 子の力強い動き,女子のやわらかな動きなど,それぞれのよさを参考にできるよう にした。同時に日常生活での男女間のコミュニケーションをより円滑にできること もねらいとした。 ④ 効果的な話し合い活動(タブレット端末機の活用) 自分たちが踊っている様子をタブレットの動画撮影機能を活用し,グループで見 られるようにした。そして,自分たちの動きを見て,キーワードを振り返り,もっ とテーマに近づけるために必要なことを話し合わせた。 リーダーをまねて 動きを確認 「見る」を意識して ⑤ 考察 ダンスキーワードを取り入れたことで,教師も生徒により具体的な声かけや指導をす ることができるようになった。キーワードを意識させることで,例えば『4秒以上同じ 場所にいない・同じポーズでいない,人のいないところに動く』のポイントを守ろうと し,前より進んで動けるようになった。生徒の話し合う活動でも,「もっと手の動かし 方を大きくしよう」「見たことがない動きをもっと工夫しよう」など,キーワードを意 識して話し合い,課題解決に向けて取り組むことができるようになった。 また,技能だけでなく態度面のキーワード「ハイタッチ,励ましの言葉かけ,だれと でもダンスができる」を入れたことで,授業中に男女関係なくだれとでもハイタッチを したり,励ましの言葉かけをしたりできるようになった。グループの仲間と「ナイスダ ンス」とハイタッチをすることで,クラス全体もより温かい雰囲気になった。 (2)実践事例2【3年次 第1学年 体育理論】 ① 発問の工夫 「どのような」 「どうして」をキーワードに,思考を広げたり,整理したりすること をねらいとした発問を準備した。プレゼンテーションソフト(パワーポイント)を活 用し,ワークシートと対応させて課題提示や発問をするようにした。 ② 効果的な話し合い活動(グループワークの工夫) ブレインストーミングの手法を用い,分散的思考を促すグループワークを行った。 付箋紙に具体的なスポーツのかかわり方を書き出し,「する」「見る」「支える」の 3つの視点に分類した。全体での発表場面では,グループで書き出したものの中か ら2つを選択し黒板に提示した。どうしてそれを選んだのかをグループで話し合い, 全体に説明した。 ③ ワークシートの工夫 生徒と教師の双方から思考・判断が見取れるワークシートにした。書き出した付 箋紙はそのままワークシートに分類して貼り付けるようにした。まとめの場面では 自分の考えを根拠を挙げて書かせるようにした。論理的思考力を高める手段とする とともに評価の手がかりとした。 グループワークの流れ 分類する場面 ④ 思考を広げる発問 ワークシートの例 まとめの場面 考察 ブレインストーミングの手法を用いることで,もっている知識をグループ内で活発に 出し合うことができた。しかし,「時間内にたくさん」を強調しすぎると『サッカー』, 『ける』などの単語が並び,具体的に書けない生徒が見られた。例を示すなど,具体的 な内容を書くことができるような指示が必要であった。ICT機器を活用し発問やワー クシートと対応させながら,生徒の思考活動を広げられるように支援した。グループで 理由を話し合うことや友達の意見を参考にして考えることを通して情報を整理し考える 力を高めることができたのではないかと考える。 2 環境・調査研究部の取組 (1)運動・スポーツ及び授業に関するアンケート調査 ① 基礎的・基本的な運動の技能や知識(できる・わかる)の内容について ア 保健体育科の授業では,運動やスポーツが今までよりもうまくできるようになります。 イ 保健体育科の授業では,体の動かし方やうまくなるためのコツが分かります。 H24 H24 H25 H25 H26 H26 0 20 そう思う 40 大体そう思う 60 80 あまりそう思わない 100 そう思わない 0 そう思う 20 40 大体そう思う 60 80 あまりそう思わない 100 そう思わない 平成26年度には, 「うまくできる」 「コツが分かる」両項目で, 「そう思う」 「大体そう思う」 と回答した生徒が80%以上となった。学び合う活動を生かした指導により,生徒は基礎的・基 本的な運動の技能や知識を身に付け,運動の楽しさや喜びをより味わうことができるようになっ たと考えられる。 ② 思考・判断(活用する)の内容について【論理的思考力】 ア 保健体育科の授業の中で,どうすればうまくできるようになるか考えています。 イ 以前に学習したことを活用して,自分の課題を解決しようとしています。 H24 H24 H25 H25 H26 H26 0 20 そう思う 40 大体そう思う 60 80 あまりそう思わない 100 そう思わない 0 そう思う 20 40 大体そう思う 60 80 あまりそう思わない 100 そう思わない 「考える」 「活用する」両項目で,平成25年度に「そう思う」 「大体そう思う」と回答した生 徒が前年度より減少したが,平成26年度は増加し,どうすればうまくできるようになるか考え ている生徒は89%となった。話し合い活動の時間を設定するだけでなく,何を話し合うのかを 確認した。学習カードや発問を工夫し,効果的な話し合い活動にすることで,論理的思考力を高 めることができたと考えられる。 ③ 態度(かかわる)の内容について【コミュニケーション能力】 ア 保健体育科の授業では,仲間と協力し,お互いに教え合ったり,励まし合ったりしています。 H24 H25 H26 0 そう思う 20 40 大体そう思う 60 80 あまりそう思わない 100 そう思わない 平成26年度には,「そう思う」「大体 そう思う」と回答した生徒が94%に達 した。学習形態を工夫し,カルテット学 習で学び合うことや「公正,協力」「責 任,参画」の学習内容の充実を図ること で,お互いの動きのよさや違いに気付き, 学びを深め,コミュニケーション能力を 高めることができたと考えられる。 (2)診断的・総括的授業評価 ① 授業評価について 診断的・総括的授業評価を用いて,生徒の実態及び授業後の生徒の変容を調査した。 質問の回答方法は,「はい」を3点,「どちらでもない」を2点,「いいえ」を1点の3 段階で平均得点を出し,4つの分類ごとに合計した。それぞれの項目ごとに,中学校段 階の各項目・次元の得点に関する診断基準をもとに,+・0・-で評価した。 ② 検証授業について ア 対象 第1学年5組 (男子19人,女子18人,計37人) イ 実施期間 平成26年6月12日~7月16日 ウ 単元名 創作ダンス ③ 結果 ほとんどの項目で,単元前より単元後の評価が高くなった。「たのしむ」(情意目標) , 「で きる」(認識目標) , 「まなぶ」(運動目標) , 「まもる」(社会的行動目標)の合計を診断基準 で比較すると,単元前には「できる」(運動目標) , 「まなぶ」(認識目標)は0であったが, 単元後には,すべての項目において+に変容した。 体育授業態度の変容(診断的評価と総括的評価の比較)① ④ 体育授業態度の変容(診断的評価と総括的評価の比較)② 考察 ペア学習や男女4人のカルテット学習による学び合う活動を通して,クラスの雰囲気 が明るくなり,楽しく学習することができた。ハイタッチや励ましの言葉をかけ合うこ とでお互いを認め合い,楽しく運動に取り組めるようになった。また,積極的に発言し たり,仲間の動きを参考にしたりして学び合うことができるようになってきた。そして, 仲間と協力していろいろな動きを身に付けたり,技能が上達したりすることによって少 しずつ自信をもって課題に取り組めるようになった。 (3)観察・映像分析によるパフォーマンス評価 ① パフォーマンス評価について 思考力・判断力・表現力等,学習した基礎的・基本的な技能や知識を実際の場面で活 用しているかどうかを直接的に調べる方法である。主に観察法と作品法に大別される。 観察法とは生徒が学習活動している場面や,課題に取り組んでいる場面を観察して評価 するものである。本校では,教師の直接的な観察評価と併用して,タブレットの動画機 能を使い,生徒の技能の上達度だけでなく態度の変化を観察する方法を用いた。撮影は, T 2教師で行った。態度面については,話し合い活動の様子やグループで学び合う様子 を評価計画に合わせて観察評価した。 ② 検証授業について ア 対象 第1学年5組 (男子19人,女子18人,計37人) イ 実施期間 平成26年6月12日~7月16日 ウ 単元名 創作ダンス エ 評価規準 「仲間のよさを進んで認め合おうとしている。 」 ※ 下線は十分満足な状況 オ 評価場面 グループでテーマにあったイメージを即興的に表現する場面 ③ 結果 5時間目 7時間目 ④ 十分満足できる 12人 19人 おおむね満足できる 20人 18人 努力を要する 5人 0人 考察 態度の学習内容を明確にし,学習課題として提示することで,生徒は意識して学習に 取り組むことができた。具体的な態度として,仲間のよい動きや考えを「笑顔,拍手, 声かけ」で表現しようと助言した。7時間目の映像には,全員が笑顔で仲間とかかわり 合い,よい動きやがんばりに拍手を送る場面が見られた。協同的な学びを通してあたた かい人間関係をつくり,その中でコミュニケーション能力を高めることができたと考え る。 (4)学習カード(ワークシート)の記述内容の分析 ① 協同的な学びを通して表現力を高めた例 学習の振り返り③~⑧ H25 第1学年女子〔創作ダンス〕 3時間目には仲間の動きの違いのよさに気 付き,4時間目以降もたくさんの仲間とかか わりながら動きを工夫していった様子が分か る。(たくさんの人とペアをつくって楽しく リズムダンスをすることができた。)(2つ のグループの発表をうまく組み合わせてスト ーリーをつくることができた。)(新しい動 きを取り入れたり,内容を変えたりと楽しく できた。) 創作ダンスで表現力を高めるた めには,仲間の肯定的なかかわりが重要であ ることが再確認できた。 ② 協同的な学びを通して仲間のよさを学んだ例 まとめの感想 H24 第2学年女子〔陸上競技〕 単元後の感想から,仲間の動きを参考にし たり,仲間の励ましから意欲を高めたりした 様子が分かる。(踏み切りがうまくできなか ったけど,友達の動きを見たり先生からアド バイスをもらったりしてこつをつかむことが でき,うまく踏み切りができたし,記録を向 上させることができた。友達から動きを学ぶ ことは大切なことが分かった。)(走り高跳 びはやったことがなくて恐かった。でも友達 とがんばろうと言って跳んだら,跳ぶことが できた。友達の力は大きいんだなあと実感し た。)(がんばっている仲間がいれば大きな 声で「がんばれ!ラスト!ラスト!」と声か けをすることができた。)(体力だけでなく, 人としても成長することができたと思った。) Ⅲ 研究の成果と課題 1 研究の成果 (1)研究の視点1「協同的な学びを通してコミュニケーション能力を育成する。」について ① 学習形態を工夫し,4人グループを基本形態として授業を行うことで,生徒は仲間の 動きや考え方のよさ,あるいは違いに気付きながら学びを深めることができた。 ② 「体ほぐしの運動」や「ダンス」の授業でペアやグループで動きを合わせる,対応さ せるなどの運動を行うことにより,仲間と協力したり,助け合ったりする楽しさや心地 よさを体験させることができた。生徒のあたたかい人間関係をつくろうとする態度は, コミュニケーション能力の向上につながった。 ③ 「公正,協力」「責任,参画」の態度の学習内容を明確にして,学習目標として提示 し,生徒に知的に理解させることで,生徒の仲間のよさを認め合おうとする態度や積極 的に役割を果たそうとする態度が身に付いた。 (2)研究の視点2「認知的学習を通して論理的思考力を育成する。」について ① 課題提示や発問の工夫をし,考えたことを学習カードなどに記述する活動とペアやグ ループで話し合う活動を授業の中に組み込むことにより,生徒は「なぜ」「どうして」 そうなるのか,「どうすれば」いいのか,「どんな」方法があるのかなどを考えること ができた。理由や根拠を挙げたり,以前の自分や友達の動きなどと比較したりし,筋道 を立てて説明できる生徒も見られるようになった。 ② 学習カード(ワークシート)やICT機器の活用をして話し合い活動をしたり,ブレ インストーミングや順位付けなどのグループワークを取り入れたりしたことで,生徒は 学習した技能や知識を活用して課題を見つけ,課題に応じた取り組み方ができるように なった。 ③ 生徒と教師の双方から思考・判断が見取れる学習カード(ワークシート)の工夫を行 ったことにより,生徒は前時の学習内容を生かしたり,課題解決の方法を考えたりでき るようになった。また,学習課題や活動について振り返り,「どうして」「どうすれば」 「どんな」につながる内容を記述させることで,言語活動の充実が図られ,論理的思考 力を高めることができた。 (3)研究主題「基礎的・基本的な運動の技能や知識を活用する力の育成」について ① 学び合う活動を生かした指導方法の改善により,生徒のコミュニケーション能力や論 理的思考力を高めることができ,基礎的・基本的な運動の技能や知識を活用する力の育 成を図ることができた。 2 今後の課題 (1)ペアやグループ学習において,生徒同士のかかわりがうまくいかない場合の手立てを, 発問や言葉かけ,場の工夫の視点で一斉に指導する内容と個別に支援する内容を検討す る必要がある。 (2)パフォーマンス評価や自己評価,相互評価の活用など,指導と評価の一体化を更に実 現していくために,効率的・効果的な評価の在り方について研究・研修を積み重ねてい きたい。 (3)各領域で,球技におけるタスクゲームのような基礎的・基本的な運動の技能や知識を 活用できる学習の場(運動しながら思考力,判断力が高められる場)の工夫をしていき たい。