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【 国連の安全保障システム 】 1.自衛権の保障 2.集団的自衛権行使の
【 国連の安全保障システム 】 1.自衛権の保障 2.集団的自衛権行使の方法 3.日本政府の解釈 4.国連の考える安全保障システムと理念成立までの経緯や現実の問題点 5.「冷戦の制約」から創造された「プラクティス(慣行・実行) 」 1.自衛権の保証 (1)個別的自衛権 ある国が他国から侵略にたいして防衛する権利⇒「固有の権利」である (2)集団的自衛⇒同様に「固有の権利」(日本では異なるが) ① 世界的規模で結ぶ集団安全保障 ② 地域的規模で結ぶ集団安全保障 国連憲章 51 条でも認めている。 2.集団的自衛権行使の方法 国連の考える安全保障は…1.(2)の①を原則とし,②を例外としてかかげた しかし,冷戦によって①は事実上機能せず。 ①世界的規模で結ぶ集団安全保障…いわゆる 集団安全保障(collective security) …国連安全保障システムの中核 ・すなわち,国際連盟や国際連合。 ・加盟国が「戦争しない」という約束で組合を組織していることが前提。 ・ 「加盟国である A 国が B 国に対して戦争をしかけたとき,のこるすべての加盟国(C∼J)が一致団結して A 国に制裁を加え,B 国への戦争をやめさせ,平和をとりもどす」というもの。 これが国連の掲げた安全保障システムである。 ・仮想敵という存在がない A B A B 国連憲章第 7 章 42∼47 条がもっとも翻弄された 42 条:軍事的措置 43 条:兵力使用に関する特別協定 44 条:兵力使用の際の非理事国の決定参加 45 条:空軍割当部隊 46 条:兵力使用計画の作成 47 条:軍事参謀委員会 国連の集団安全保障 必要条件:安保理の決議能力 十分条件:上記の 6 ヶ条(強制行動の物理的手段) ⇒必要・十分条件とともに整わなかった ②地域的規模で結ぶ集団安全保障…いわゆる「集団的自衛」 ①との相違点 ・仮想敵を予め想定し,そこから防衛のために利害関係をともにする友邦国をつくる。しかし,いざという とき機能してくれないのでは困るため,通常は条約という形をとり,義務化を図る(同盟) ・以下のように機能すると考えられる。 ① 同盟 B のある加盟国 b 国が,同盟 A によって攻撃を受けたとする。 ② 同盟 B 構成国は b 国を救うため,一致して同盟 A の攻撃を排する行動をとる(集団的自衛権の行使)。 こうして,同盟 A と同盟 B が交戦状態に入る。 ・・・・・・さらに進むと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ③ 同盟 C のある加盟国 c 国は経済的利益を共有する友邦 b 国のために同盟 B に加担。 ④ そのため c 国は同盟 A の国々と交戦状態に入る。 ⑤ c 国の加盟する同盟 C の国々は規定に従って,同盟 A と交戦状態に入る 同盟 A 同盟 B 同盟 A 同盟 B ② ① b ④ ⑤ c 同盟 C ③ c 同盟 C 同盟同士が軍拡を重ね,緊張状態が高まり第一次,第二次大戦につながった。 だが,現代の同盟をそれらと同類視してはいけない,という説(池尻)がある。 歴史的背景が異なる点 憲章 51 条で認められている点 戦争は違法という前提がある点 ●国連憲章における「集団的自衛権」という「国連創設会議の途中」から条項に加えることになった。 51 条 安保理が認めるまで反撃できないのではなく,個別的,集団的自衛権を阻止してはいない。 52 条 国連の理念にそった地域的取極はよい。 53 条 安保理の承認なしに地域的取極によってなされた軍事行動をとれない 51 条と 52 条は別個に規定されながらも,つながりが深い。 ●51 条創出の原動力 ラテン・アメリカ諸国はチャプルテペック規約(1945.3)に合意していたが,国連において「拒否権」を大国が行使する ことで,ラテン・アメリカの地域問題に不利にはたらくことをおそれた。そのため,安保理がマヒする事態に備え地 域として「相互援助」行動がとれる法的保障をほしがった,ことが創出の原動力といえる。 3.日本政府の解釈 憲法 9 条との関わりで,苦しい解釈をしてきたことでおかしな状況にある。 すなわち,集団的自衛権はあるが行使できない,というものである。 また,根本的に自衛権を「個別的と集団的とをことさら分けて考える」ことはしないのが世界では当たり前 であったが,日本においては国会討論などで「9 条との関わり」に言及せねばならず,その区別をあえてせね ばならず,現在にいたっている。 保持 行使 個別的自衛権 集団的自衛権 ○ ○ ○ × 現実には冷戦終了後の日米安保再定義,それに関する有事法制整備で「集団的自衛権行使可能」という状態 に踏み切ったという見方ができる。 4.国連の考える安全保障システムと理念成立までの経緯や現実の問題点 (1)集団安全保障概念成立までの歴史…「戦争違法化」の積上げ 1809, 1907 ハーグ平和会議 1919 国際連盟規約 1928 不戦条約 従来の「正戦論」「無差別戦争観」と一線を画す (2)戦争そのものをなくす 3 つのステップ ①「紛争の平和的解決」原則の遵守 ②「武力の不行使」原則の遵守 ③上二者を違反した国に対する制裁措置…段階的に規定(勧告⇒経済制裁⇒武力制裁) ⇒③における武力制裁には違法性なし (3)国連の集団安全保障システムの不備な点 外部に仮想敵を置く「集団的自衛」と区別される点で特定の国を敵と想定することはしていない(先述)。だ が,現実には「政治」と「制度」の両面から種々の制約が課されて機能してこなかった。 制約をうけた機能・制度 制約される理由 ①母体としての「国連軍」 冷戦により安全保障理事会が分裂。 国連軍の組織が不可能になる。 憲章 7 章 ・ 本来予め各国から集められた国連軍が「紛争の有無にかかわらず」組 42 条「示威,封鎖をとれる」 織され常備されている規定があるが,その組織化は不可能, 43 条「実行する国連軍」 ・ 軍事参謀委員会が指揮する規定があるが,その人選も同様に行えてい ない。 ・ 朝鮮戦争の「国連軍」は規定によったものではなく,実体は「多国籍 軍」 ②憲章 51 条で自衛権を認 国連軍が来援するまでは自衛権により防衛する(固有の権利) 。 めている点 ・ だが,それまでに単独での防衛は困難であることを想定し, 「集団的 憲章 7 章 自衛権」も同時に明文化(固有の権利・地域的取極)。 51 条「安保理が認めるまでの そのため,「集団的自衛権」発動を口実に,違法化されたはずの戦争 個別的自衛」 が行われる余地を残した。 52 条「地域的取極」 ③安全保障理事会決議に 常任理事国となっている大国に対して制裁措置がとられることが考えに よる決議 くい いずれも国連が世界政府ではなく,また,安保理が政治機関であることから生じたジレンマ 5.「冷戦の制約」から創造された「プラクティス(慣行・実行)」 6 章半の活動 停戦監視 総会の決定で行動できるもの ②国連平和活動の広が 冷戦後, 「平和への課題」で平和強制も試みられるが,コソボ,ソマリアでの失敗 り を受けて,「限定的な」平和強制は可能に。 問題点 加盟国の政治的意思に左右去れがち 介入の合法性や正統性は定義しにくい点 ③人間の安全保障への 国家安全保障からの大転換 関心の高まり 「国家」は対外的干渉を排除すると同時に,対内的には「自国民の安全と福祉」 に責任を持つことへの期待。 ⇒人道的介入(国際法的には確立した概念ではないが) ①PKO