...

Page 1 UDC 331.024.1.002.71:613,65 労働科学 41巻2号 (1965) (51

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

Page 1 UDC 331.024.1.002.71:613,65 労働科学 41巻2号 (1965) (51
労働科学 4
1巻 2 号・(1
9
6
5
) (5
1)
UDC3
3
1
.0
2
4.
1
.0
0
2
.7
1:6
1
3
.6
5
一労働者の運ぶ最大許容重量について(I
I
)
勝 木
新次*
THE MAXIMUMPERMISSIBLEWEIGHT T O B E
I
I
)
CARRIED B Y ONE WORKER (
By
S
h
i
吋iKATSUKI*
巴ri
n
t
r
o
d
u
c
e
dt
h
ed
i
s
c
u
s
s
i
o
n
sa
tt
h
e Meeting o
fE
x
p
e
r
t
s on
Int
h
ep
r
e
v
i
o
u
sp
a
p
e
r
,t
h
ew
r
i
t
t
h
e Maximum P
e
r
m
i
s
s
i
b
l
e Weight t
o be C
a
r
r
i
e
d by One Worker, Geneva, 1
9
6
4
,r
e
l
a
t
i
n
gt
h
e
nt
h
i
sp
a
p
e
r
, he o
u
t
l
i
n
e
dt
h
er
e
g
u
l
a
t
i
o
n
s.
a
n
dp
r
a
c
t
i
c
a
l
h
i
s
t
o
r
i
c
a
l background o
ft
h
em
e
e
t
i
n
g
. I
c
o
d
e
si
nv
a
r
i
o
u
sc
o
u
n
t
r
i
e
s
, anda
f
t
e
rt
h
a
thed
i
s
c
u
s
s
e
d.
b
r
i
e
f
l
yt
h
i
sproblemont
h
eb
a
s
i
so
fr
e
s
e
a
r
c
h
worki
nt
h
i
sc
o
u
n
t
r
y
.
以下に運搬重量の制限に関する各国の法規を紹介しよ
を超える荷物を機械の助けをからず挙上する作業,常時
うと思うが,法規は国によりかなり形がちがっている。
8kgを超える荷物,または時に 15kg を超える荷物を
即ちー部の国では性年齢を間わず,健康に害を及ぼすほ
機械の助けをからずに動かしあるいは運ぶ仕事を含め,
どに重い荷物を運ばせることはならぬと抽象的に規定
し,その限度は権威ある人の判定にまつことにしている
が,他の一部では具体的に細かく数字を定めている。以
下多数の国々の法規を一々紹介出来ないので,具体的な
数字を掲げている例だけを列記することにしたい。
I 婦人年少者に関する規定
i
) オーストラリア, (New S
o
u
t
hW
a
l
e
s
)S
h
o
p
s
(
A
m
e
n
d
m
e
n
t
)A
c
t1
9
2
7
.
婦人または年少者は以下の制限を超える重量の挙上ま
たは運搬が許されない。
1
6歳以下男子
1
8歳以下男子
1
6歳以下女子
1
8歳以下女子
14kg
18kg
9kg
11kg
16kg
1
8歳以上女子
i
i
) オーストラリア,・ M
a
t
e
r
n
i
t
yP
r
o
t
e
c
t
i
o
nA
c
t1
9
5
7
.
妊婦は 5kg以上の荷重が普通であるが,時に 10kg
重量運搬に従事させてはならぬ。
i
i
i
) ボリビ‘ア, R
e
g
u
l
a
t
i
o
n
sf
o
rt
h
eA
d
m
i
n
i
s
t
r
a
t
i
o
n
o
ft
h
eP
r
e
s
i
d
e
n
t
i
a
lD
e
c
r
e
eo
f2
1
,S
,
巴p
t
.1
9
2
9
.
(手による運搬)
1
6歳以下男子
1
6歳以下女子
1
6∼2
0歳女子
(軌道をゆくトロッコ)
1
6歳以下男子
1
6歳以下女子
1
6∼2
0歳女子
300kg
150kg
300kg
(手押車)
14-16歳男子
40kg
(三輪または四輪荷車)
1
6歳以下男子
1
8歳以下女子
1
8∼2
0歳女子
キ明治生命厚生事業団体力医学研究所長・労働科学研究所常務理事
D
i
r
e
c
t
o
r
,P
h
y
s
i
c
a
lF
i
t
n
e
s
sR
e
s
e
a
r
c
hI
n
s
t
i
t
u
t
e
,
M
e
i
j
iL
i
f
eF
o
u
n
d
a
t
i
o
no
fH
e
a
l
t
ha
n
dW
e
l
f
a
r
e
.
10kg
5kg
10kg
3
5
k
g
・
35kg
50kg
(52)
i
v
) スペイン, TheWomen and Young P
e
r
s
o
n
s
1
7∼1
8歳男子
45kg
(
D
a
n
g
e
r
o
u
so
rUnhealthyWork) D
e
c
r
e
eo
f2
6
,J
u
l
y
8歳女子
1
7∼1
35kg
1
9
5
7
.
(三∼四輪車による運搬)車をも含めて
(手による運搬)
1
6∼1
7歳男子
45kg
1
6歳以下男子
15kg
8歳男子
1
7∼1
50kg
1
8歳以下女子
8kg
8歳女子
1
7∼1
45kg
1
6∼1
8歳男子
20kg
1
8∼2
1歳女子
10kg
2
1歳以上女子
20kg
(金属軌道上のトロッコによる運搬)車をも含めて
400kg
1
6∼1
7歳男子
1
7∼1
8歳男子
500kg
(軌道トロッコ)
1
6歳女子
150kg
1
6歳以下男子
300kg
1
6歳以上女子
300kg
v
, Orderdated15January1954.
v
i
) イスラエ J
1
8歳以下女子
200kg
1
6∼1
8歳男子
500kg
(手による運搬)
18-21歳女子
400kg
1
6歳以下男子
2
1歳以上女子
600kg
2
.
1日2時間を超えないとき 1
5kg
(一輪手押車)
1
6歳以下男子
40kg
2
1歳以上女子
40kg(
2
1歳以下女子は禁止)
1
6∼1
自歳男子
1s
h
i
f
t 1日2時間を超えると
き 16kg
1日2時間を超えないとき
(三輪自転車)
1
6歳以下男子
50kg
8歳男子
1
6∼1
75kg(女子はすべて禁止)
20kg
1
6歳以下女子
1日2時間を超えてはならな
U、8kg
1
6∼1
8歳女子
1日2時間を超えてはならな
u、
10kg
(二輪手押車)
1
8歳以下男子
130kg
2
1歳以上女子
1
3
0kg(
2
1歳以下女子は禁止)
(三輪または四輪車)(手押車,醸造用車等)
1
6歳以下男子
1s
h
i
f
t 2時間以上のとき 10kg
50kg
v
i
i
) マラガシイ共和国: DecreeNo. 6
2
/
1
5
2
(手による運搬)
1
8歳以下女子
35kg
1
4∼1
6歳男子
15kg
1
6∼
'1
8歳男子
60kg
8歳男子
1
6∼1
20kg
18-21歳女子
50kg
6歳女子
1
4∼1
8kg
2
1歳以上女子
60kg
1
6∼1
8歳女子
10kg
1
8歳以上女子
25kg
(注)車で運ぶときの重量が何を意味するか疑問が起る
と思うが,この場合は運搬,押し,引くーさいの作業で,
(軌道上のトロッコ)車をも含めて
その努力が平地で上記の重さを動かす努力を超えるよう
14∼1
7歳男子
500kg
なことはいけないという表現をとり,重量は車の重さを
1
6歳以下女子
150kg
も含めてのことだとしている。
1
6∼1
7歳女子
300kg
成人女子
600kg
なおブルガリアの法規は平地とせず傾斜 0.02以下と
しているが,これも幾分参考になる。
フランス,イギリス,イタリアの法規はよく知られて
いるので省略し,以下,新興国のものを掲げてみる。
v
) ガボン, DecreeNo. 275o
f5December1
9
6
2
.
(手による運搬)
(一輪車)
14∼1
7歳男子
40kg
成人女子
40kg 年少女子は禁止
(三∼四輪車)
1
4∼1
7歳男子
60kg
1
6∼1
7歳男子
15kg
1
6歳以下女子
35kg
1
7∼1
8歳男子
20kg
1
6歳以上女子
60kg
1
7∼1
8歳女子
10kg
(小手押車)
(一輪車による運搬)車をも含めて
1
4∼
正7歳男子
130kg
16-17歳男子
成人女子
130kg 年少女子は禁止
35kg
(53)
〈三輪自転車)
14∼1
5歳男子
7歳男子
1
6∼1
。
のをあげると以下のとおりである o
50kg
75kg 女子は一切禁止
〈注)なお大形三輪手押車は女子年少者は禁止
I
I 成人に関する規定
i
) チリー ActNo. 3
9
1
5o
f9February1
9
2
3等
1
9
4
7年 2月のアルゼンチンの団体協約(如何なる
産業のものかつまびらかでない)では 1人で持ちあげ,
あるいは運ぶ最大重量は特定の貨物の場合, 70kg
,その
他のすべての貨物は 50kgを超えではならぬとの条項が
ある。
i
i
) オーストラリアでは,陶器工業における団体協約
商品を入れた袋は 80kgを超える重量であってはなら
には,女子労働者の運ぶ貨物の最大重量は 10kg と定め
ぬ。輸入貸物で 80kg を超えるものは肩にかついではな
らない。車に積むか 2人で担架にのせて運ばねばなら
ている。
i
i
i
) カナダでは,海運会社と労組との協約で, 1
0
0ポ
ぬ。湿度で重くなったとき,その他若干のマージンは認
, 1
4
0ポン
ンドの袋を 7吠以上の高さに積むときは 2人
められている。
(注)コスタリカの法規も上記に似ており,スペインも
.
S
Okg という制限を採用している。
北来合衆国でも数州、H
乙法規があり,マサチュセッツ J
M
ドを超える袋の取扱いには 4人を必要とする。積みあげ
の高さは重量で異なる。長い鉄,鋼片やバイプを肩でか
つぐときは,それを持ちあげる際その堆貨に他の 2人が
ついていること,を定めており,他の協定では補助者な
J
主,繊維工場の労働者,機械の保守,修理工は 325ポン
しに 80ポンド以上のものを 4吠 6吋以上の高さに積み
4
6kg余)のものを挙上させてはならず,鋳物工場
ド(1
:(
4
5kg
)を制限重量としている。
では 100ポン 1
あげないことを定めている。
そのほかの国の制限重量を列記してみると,ハイチは
i
v
) U. S
. A.では,海運労働者, ドック労働者,印
刷業労働者の協約がある。例えばシカゴの海運協会と,
80kg
,ホンヂュラスは 50kg
,インドは 1
6
5ポンド(74kg
国際埠頭労働者協会との協約には 2人で積み上げる荷物
余)メキシコは75kg (但しとうもろこし製粉工場からト
の重量制限がある。この制限は積み上げる高さ!こより
)パナマ,
ルチラ製造工場へこねた粉を運ぶときは 50kg
1
0
0∼2
0
0ポンドの聞で異なる。他にニューヨークの新
ーベノレーは, 80kg0
聞販売会社左新聞郵便配達人組合との間の協約があり,
英国は毛織工場でぎゅっとしまった荷,または国体は
68kg
,でないときは 54kg
,農業で 82kg と な っ て い
る
。
ソ連のはやや詳細で, 1人で運ぶ荷の制限量は, 8
0
k
g
,
5
0ポンドを最大重量と定めている。
v
) イスラエルでは製塩会社と労組との聞に協約があ
9
6
2年 1月
り,袋の目方が曾って 100kgであったのを 1
1日以降 6
0
.
5kg と定めている。
但 し 50kgを超えるときは,他の者が運搬者の肩への
v
i
) ポルトガルではセブタールの魚鱗詰工業協会と
せてやり,また下してやり,距離は 60m を超えぬこ
鰭詰労働者組合との間に,女子には 21kgを超える荷を
と。遠いときはリレーで運ぶか,車などを用いることと
9
5
7年),オボルト地区の
運ばせないとの協定があり(1
し,荷を高いところへ運びあげるときは高さの制限は 3
同じ工業は女子の最大許容重量を 23kg と定めた。また
m迄,傾斜路の長さは高さの 3倍以上。岩塩および酸製
1952年の陶器工業労使関の協定では, 18歳以下の年少
造のときは成人のみ運搬に従事し,中にーぱいに入れた
者及び女子は 6kg以上のものを扱わず, 10kg以上の
)以下,建設業では 88ポ
容器の目方は 70ポンド(31.5kg
荷を手で, 20kg以上のものを頭上または肩で運ばない
ンド,運輸業で積みこみ,積みおろし,運搬は 1
0
8,ポンド
ことを定めている。
(
4
8
.
6kg
)以上は手助けなしにしてはならぬとしている。
v
i
i
) 英国では,一般郵便局の団体協約があり,徒歩
なお熱帯には特殊の法規がみられ,オーストラリアの委
郵便夫 17kg
,自転車配達 23kg
,三輪車配達 32kg を
仕統治のニューギニア地区では 5
0ポンド以上のものを
最大限度としてをり,女子年少者の場合の最大許容重量
1日1
2マイル以上運ぶことを要求されてはならぬとし,
コンゴー(レオポールドピル) 1人 25kg (2人 45kg)
は以下のとおりである。
以上を運ぶこと,丘陵または湿地, 15km
,その他25km
1
5歳以下年少者
以上歩くことを要求されてならぬとしている。
1
6歳以下年少者
I
I
I 団体協約および実行規定
以上は法規であるが,そのほか国体協約などで実効を
あげているものがある。 ILO 事務局でしらべられたも
徒歩
自転車
1
5ポンド
2
0ポンド
20ポシド
2
6ポンド
1
7歳以下年少者
2
8ポシド
3
5∼40ポンド
女子
28ポシド
40ポンド
1
他の郵便局作業では 16∼1
8歳の年少者は断続作業 60
ポンド,継続作業 45ポンドを最大許容重量としてい
(54)
る
。
そのほか団体協約が権威ある公的機関で承認され,半公
式の規則となっている例がある。埠頭作業などがその例
で,これは港湾規則となっている。
v
i
i
i
) イタリーでは,ゼノア港の規則で手で動かすと
,石炭をスキップで荷卸しするときはその
きは, 100kg
で,その両手かかえの場合をとりあげてみることにす
る
。
。
第ーに運搬の R.M.R. を男女で比較すると,す
べての重量について女子の R.M.R. は男子より高いが,
特に 25kg以上の重量で女子の R.M.R. は急増する傾
向がみられている。
,石炭を船内で用いるために積みこむと
容量が, 100kg
i
i
) 次に腹内圧の増加をしらべたところでは, 15kg
k
i
pの容量は 40kgを限度としている。同様の規
きの s
になると腹内圧がかなり著明に増加し, 30kgになると
則が同国の他の港にも適用されており,カタニアでは荷
また一段と腹内圧が高まるという結果が出ている。
k
i
pの容量は 60kg を超えないこととし
卸しのときの s
次に現場調査の成績をみると,通常最も多い運搬作業
ている。
は1
0∼15kgの重さのものの運搬であり,運搬方法を限
i
が トルコでは,埠頭労働者その他海運関係労働者が
荷を運ぶときには 40kgを超えないようにとの規則が
1
9
4
8年に出されており,車輸による運搬では,最大許
定して両手でかかえる場合だけをとりあげてみると 1
0∼
20kgが全体の 44%であり, 30kgをこえる場合は 4.5
%であったという。 1
0∼20kg が多いというのは経験的
容重量が自転車その他の小車輔, 50kg
,手押車, 1
0
0
k
g
,
にそれが適当と考えられたためか,それとも製品の性質
傾斜 1
0
0 以下の場合のトロッコ 300kg と定めている。
から来ていることなのか不明であるが,経験にもとづく
という事情が皆無とは考えられない。 50kg以上のもの
付 言
は両手でかかえるのでは無理で,かつぐ,負う,ころが
以上が諸外国の法規および協約の事例であるが,わが
6歳以下男子 1
0kg (
1
5k
g
)1
6∼1
8歳男子, 20
国では 1
す等の方法で運ばれているという。
kg {
3
0
k
g
)1
6歳以下女子 8kg (
1
2k
g
)1
6∼1
8歳女子
について質問した結果では,運搬重量 45kg以上が明ら
また外傷,関節炎,腰痛その他婦人特有の障害の発生
1
5kg (
2
5k
g
) 18歳以上女子 20kg (
3
0
k
g
) 〔括弧内は
かに障害が多いとなっているが,日々の正味運搬作業時
断続作業の場合〕と女子年少者労働基準規則に定められ
間の倶l
からみると, 4時間以上で急増じていて,これは
ていることは周知のとおりで,なお同規則では基準監督
運搬方法をとわないで計算されている。この点を考える
8歳以上女子が継続 30kg
官の認めた特定の場合には 1
断続 40kgまでを運び得ることとしている。これを今回
実労時聞が長ければ障害があらわれ易いということかも
の専門家会議の勧告に対比してみると,わが国の規則は
しれない。
と
, 45kgまでは安全というのではなく,それ以下でも
若干緩かであると考えねばならず,諸外国の法規もわが
以上は両手でかかえての運搬であるが,リュックに入
国より低い制限値を採用している場合が多い。殊にわが
れた荷を利き肩(男子右,女子左)から頚へかけて運ぶ
国の場合は,車柄等を用いる場合について何等の定めが
場合についてしらべた結果では, 35kgになると R.M.
ない。現在では人カ運搬が殆んど影をひそめ多くの場合
R
. が急に高まり. R
.
Q
.も 1
.
0を超えるほどになった
運搬には車が用いられていることから考え,入力運搬の
みについて定めていることはどうかと思われる。
たえやすいように見える。
という。即ちとの方法の方が両手かかえより重い重量に
ところでかなり以前から斎藤現労研所長はとの問題に
いずれにもせよ 1
8歳以上女子で継続作業 20kg
,断続
深い関心を持ち,労働省婦人少年局の希望もあって色々
作業 30kg
,特定の場合, 3
0
k
g
, 40kg という現行規定
と調査研究を進めて来られた。その結果は「婦人労働保
が不可であるといい得るほどの結果ではないが,さりと
護法視の医学的批判,重量物取扱いについて」と題し
てこれでいいといえる結果でもない。そして今回の専門
7巻第 6号に発表されているが, その内容
て,本誌第 3
家会議からの提言があり,各国の法規でもわが国より{民
を今一度ここに想起してみることにしたい。
い規準を採用している例が少なくないという事情から考
え,わが国の規準の可否はもう一度考え直してみてもよ
先ず斎藤氏等の実験的研究の結果からみて行くことに
する。その場合車輔による運搬は別とし,人カのみで運
いのではないか左恩われる。
ぶとしても,両手でかかえるのと,肩や背にかつぐのと
しかもかかる重量制限は,体格,体力,気候,栄養な
では負荷のかかり方がちがう。日本の法規はそのいずれ
どをも考慮して定められるべきだということは,会議の
をねらいとしたものか不明で,特に運搬方法を限定して
報告でも強調されているが,日本婦人の体格体力は義理
いないが,斎藤氏等の現場調査の結果からすると実際に
にも国際的に一流だとはいえないし,気候についても
は両手でかかえる運搬が圧倒的に多いということなの
栄養についてもわが国が有利だとはいえない。その点も
(5
5)
私共の気にかかるところである。そして車柄運搬につい
ひ’ている。その災害率が果して運搬重量と関係があるか・
て規制がなくてもよいのかどうかということもあるので
一応検討の必要がありそうに思われる。
あるから,全般的に検討してみる時期が来ているのでは
あるまいか。
土建作業については曾って狩野氏ほかの同僚が研究、
し
, 1日の消費エネルギーと災害発生との間にある程度
次に成人男子の重量運搬については,過去に規制につ
の関係のあることが実証されている。また農業や運送業ー
いて考えられたことはなさそうである。ただ同僚大橋氏
、て研究され
において,脊推骨変化のみられることにつν
が米俵について問題を提起し,この点について実験的研
ていることなどもここに想起すべきであって,かく考え
究も行なわれたのが稀少な例の一つであるような気がす
でみると,運搬の最大許容重量を法的に規制するか否か
る。運搬の至適重量については奥山等の研究があり,そ
は別とし,健康安全の見地から成人男子についても研究ー
れはそれとしてこの問題の検討に有力な資料として用い
の必要のあることだけは確かであると思われる。
得るであろう。
ところで現実問題として重量規制の必要がないのかど
うか,例えば外国で問題になっている埠頭荷役について
考えてみると,この作業は災害の多い点で近年脚光を浴
そうした意味で,今回の ILO の専門家会議の報告は』
ひろく読まれてよいと考え,敢えて前稿にその全文を訳
出した次第である。
(受付: 1
964年 9月 2
9日
〉
Fly UP