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研究の方法・ 調査研究② 連載 「研究の進め方」

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研究の方法・ 調査研究② 連載 「研究の進め方」
連載 ● 「研究の進め方」
前回、
「調査の種類」と「アンケート調査の手順」について紹介
~その4~
しました。今回は、そのアンケート調査を踏まえて、どのように集
研究の方法・
調査研究②
計し分析するのかについて紹介します。研究を進めるうえで、現任
校の課題を的確に捉えることは研究主題や研究仮説を確かなもの
にしていくために大事なことです。アンケート対象者からの調査結
果を、有効に活用していくために大切なポイントとなります。
調査研究には、企画、実施、集計分析、報告書の作成などの
標準的なプロセスがありますが、ここでは、データの集計・分析につい
て説明します。
2 サンプリング・調査票の設計
3 調査実施
右の図は、標準的な調査研究のフローです。集計と分析は、調
査の結果として集められた調査票をもとに、必要な統計データを作り
出し、数字を読み取り、解釈を行う作業全体のことを指します。
データの集計
1 調整・企画
4 調査票のチェック
5 データ入力・チェック
集計の方法については、単純集計とクロス集計があります。
(ア)単純集計
単純集計は、個々の質問項目ごとに回答を集計し、質問項目別の調査対象の特徴を把握
する方法のことです。
(例)
「いじめ問題」の解決に関する経験に
「 いじめ問題」 の解決に関する経験について
46.5
33.9
ついて、
「いじめ問題を解決したことがあ
19.6
る」、「いじめ問題を解決したことがな
0%
20%
40%
「いじめ問題」を解決したことがある
60%
80%
「いじめ問題」を解決したことがない
100%
無回答
い」
、
「無回答」で集計しました。
単純に数値を把握したり、比較すると
教員 1,071 人
きなどに使います。
出典(東京都教職員研修センター
「いじめ問題に関する研究報告書」
平成 26 年 2 月)
(イ)クロス集計
クロス集計は、単純集計によって把握した特徴がどのような要因で説明されるかを2つの
質問の関係で明らかにする方法のことです。これは、質問と対象者の属性、あるいは質問と
質問との関係を調べることで、因果関係や傾向という別の特徴を明らかにするために行うも
のです。
話合いが解決を促し、理解を深めると思う
(例)まず、
「数学の学習が好きか嫌いか」について
調査します。次に、数学の学習が好きな生徒と嫌
いな生徒で「話合いが解決を促し、理解を深める
と思う」ことについて、認識がどう違うのかを知
りたいときにクロス集計を行います。
「話合いが解
高等学校 735 人
決を促し、理解を深める」について「数学が好き」
出典(平成 24 年度東京都教職員研修センター
紀要第 12 号「教科基礎調査研究」
)
と回答した生徒は「当てはまる」が 22.3%、
「数学
が嫌い」と回答した生徒は 9.9%と差が見られるこ
とが分かります。
データの分析
データの分析とは、調査結果の読み取り、解釈を行う作業のことです。
分析の目的は、アンケート調査で得たデータから、研究仮説の裏付けとなるような妥当性のある根
拠を探すことです。
調査では、企画段階で調査テーマを検討し、仮説を立てておきます。それから調査を行い、その仮
説が立証されるかの検証を行います。したがって、仮説を検証するためには、適切な調査方法を企画
段階で決めておく必要があります。調査結果を基にして、研究主題の再設定や仮説の修正と確定、検
証授業の見通しといった具体的な計画を立てます。
研究報告書に調査結果をまとめるときは、①調査の目的、②調査時期、③調査方法、④調査対象、
⑤分析方法等を最初に記載しておきます。
【資 料 】調 査 研 究 例
研 究 主 題 : 「自 ら学 ぶ意 欲 を高 める読 書 指 導 とその評 価 に関 する 研 究 」
(調査研究の概要)
1
調査の目的
(1) 児童・生徒が、読書の「楽しさ」をどのように捉えているかを把握する。
(2) 児童・生徒の国語科学習における「関心・意欲・態度」についての意識を把握
する。
(3) 小・中学校の教師が児童・生徒の「関心・意欲・態度」をどのような状況から
捉え、高めるためにどのような手だてを行っているのかを把握する。
2
調査時期
(1) 事前調査(6月上旬)
(2) 本調査(6月中旬~7月上旬)
3
調査方法
(1) 質問方法:質問紙法(選択肢)
(2) 質問内容:児童・生徒用(問1~問9)
〔略〕
教師用(問1~問9)〔略〕
4
調査対象
5
(1) 事前調査
1学級(児童 30 名、教師2名)
(2) 本調査
全 18 学級(児童 618 名、教師 28 名)
調査結果の分析方法
ア
児童
・単純集計し、傾向を考察する。
・「読書の好き、嫌い」
「めあての有無」と問3、5、7の質問をクロス集計し、その関連を考察する。
イ
教師
・単純集計し、傾向を考察する。
6
調査の結果と分析・考察〔以下略〕
まとめ
*集計・・・意思決定の判断材料となるように、統計データにまとめ
ることが大切です。
*分析・・・データとして取り上げた理由を、理論的背景や事実から
明確にしておくこと、そして、複数のデータを取り上げ、
相互関係や構造を踏まえて分析することが大切です。
その5
次回の予告
・学習指導案の作成
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