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JICA の気候変動に関する取り組み

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JICA の気候変動に関する取り組み
独立行政法人国際協力機構(JICA)
地球環境部気候変動対策室
JICA の気候変動に関する取り組み
〒102-8012 東京都千代田区二番町 5-25 二番町センタービル
URL: www.jica.go.jp Email: [email protected]
JICA の気候変動対策支援
気候変動と開発に関する日本の役割
◆気候変動に係る取組みの方向性
◆JICA と日本の ODA
JICA は、以下の方向性に基づき、気候変動対策支援を進める方針です。
包括的な
支援
持続可能な開発と
気候変動への対応の両立
グローバルな課題である
気候変動問題
PDCA
サイクル*
(MRV**等)
エネルギー、運輸、
廃棄物管理、森林等
<緩和策:低炭素な社会づくり>
◆日本の短期資金(Fast-Start Finance)
日本は 1954 年以来、政府開発援助 (ODA: Official Development
日本は、途上国の持続可能な開発と気候変動に対する取り組みへ
Assistance) として、開発途上国に資金的・技術的な協力を実施
の支援を積極的に行っています。
しています。国際協力機構 (JICA) は ODA のうち、国際機関へ
日本は 2012 年までに短期資金(Fast-Start Finance)として約
の資金の拠出を除く、二国間援助を一元的に担っています。
150 億ドルの供与を表明しました。これは、カンクン合意におけ
JICA はこれまでに培ってきた開発途上国支援の経験・成果や日
る世界的コミットメントの約半分に相当します。日本の短期資金
本の技術と経験を最大限活用し、途上国の持続可能な開発と同
は、温室効果ガス排出削減に積極的に取り組んでいる途上国、気
国家計画・セクター戦略
時に様々な開発課題の解決に貢献するマルチベネフィット型の
候変動に特に脆弱な途上国を支援するものです。総額約 150 億ド
効率的なシステムの構築
支援を行っています。温室効果ガス排出量の削減に寄与する緩
ルの資金は、ODA(約 72 億ドル)とその他の公的資金(約 78 億ド
和策および気候変動のもたらす影響への適応策など、さまざま
ル)を通じ、緩和及び適応に充てられます。
資金協力
技術協力
温室効果ガス
排出削減
公正な
経済成長
政策・制度改善、資金メカニズム、
人材育成
気候変動
への対応
持続可能
な開発
気候モデリング・脆弱性評価
適応力の
強化
人間の
安全保障
低炭素技術の開発・普及等
な分野に対して、資金協力と技術協力を有機的に組み合わせ、
日本の短期資金(Fast-Start Finance)
支援しています。
2011年7月31日現在(約113億ドル)
ODA
(政府開発援助)
二国間
援助
緩和:約48.7億ドル
JICA
REDD+ : 約4.9億ドル
緩和+適応:約10.4億ドル
技術協力
変化に強いインフラの整備等
多国間
援助
防災、水資源、
農業、衛生等
<適応策:変化に強い社会づくり>
有償資金協力
(円借款)
海外投融資
市民参加協力
開発途上国の気候変動政策・制度に対する支援
*外交政策遂行上の必要から外務省が自ら実施するものを除く
円借款による気候変動対策プログラム・ローンは、国家政策・戦略に基づく気候変動政策の実施を支援するため、開発途上国に資金・
技術協力を行う革新的なスキームです。気候変動対策プログラム・ローン は、パートナー国の政府との間で行われる政策協議に基づいて、
分野ごとに複数年の政策をまとめた政策マトリックスの作成から始まります。
気候変動対策支援ツールのご紹介
政策マトリックスの例
柱1:主要な政策課題
1.1: 国家開発計画における
気候変動の主流化
1.2: 資金スキームと政策調整
2.2:エネルギー
3.1: 気候予測及び影響評価・脆弱性評価
・再生可能エネルギー開発
・エネルギー効率改善
・交通
3.2: 水資源
3.3: 農業
JICA では、途上国の気候変動対策を支援する際の方針の検討やプロジェクトの形成に役立
てるため、下記①②の内容をまとめた気候変動対策支援ツール「JICA Climate Finance
柱 3:適応
柱2:緩和
2.1:森林
・森林管理及びガバナンス
・泥炭地保全
・REDD
・植林・再植林
1.3: 温室効果ガス排出・吸収の測定
3.4: 海洋及び
漁業
Impact Tool (JICA Climate-FIT)」を作成しました。
①温室効果ガス(GHG)の排出削減、吸収に貢献する活動(緩和事業)の定量評価に関
する測定・報告・検証(MRV)を実施するための方法論
関係省庁間の
調整
モニタリング、レビュー、アドバイス
運営委員会
パートナー国の政府
ドナー
資金支援
(一般財政支援、
事業借款、無償)、
技術協力
②気候変動に対する脆弱性の低減や適応能力・抵抗力の維持・増加に貢献する活動(適
応事業)において適応に関する要素が適切に組み込まれるようにするための考え方 及び指針
2008 年 9 月、JICA は、インドネシアに対して初の気候変動対策プログラム・ローン 円借款を供与しました。その後、JICA は、気候変
動に関する国家アクションプランの確実な実施を確保するため、2008 年を通じモニタリングを行うとともにインドネシアに対するアド
バイザリー・サービスを提供しました。JICA とインドネシアは、毎年行われるモニタリングを通じて効果的、実現可能で確実な政策ア
クションを改善するべく政策マトリックスを修正した後、第2次、第3次の気候変動対策プログラム・ローン 円借款契約を締結しました。
また、2010 年 6 月には、ベトナムとの間で同様の気候変動対策プログラム・ローン円借款契約を締結し、2011 年 11 月には本プログラ
ム・ローンの二期目も供与されました。
2012年までに約150億ドル
国際緊急援助
** MRV (Measurable, Reportable, Verifiable): 緩和事業の温室効果ガス排出削減量を測定・報告・検証(MRV)可能なものとする取組み
約45.5億ドル
適応:約9.35億ドル
無償資金協力*
*PDCA サイクル: Plan、Do、Check、Action の 4 ステップからなる活動の継続的改善をはかるマネージメントサイクル
OOF
(民間資金を含む)
気象災害等への適応能力強化
政策対話
民間連携
調査・研究
2011 年 11 月
報告書掲載先ウェブサイト URL:
( 日本語 )http://www.jica.go.jp/activities/globalization/climate.html
( 英語 )http://www.jica.go.jp/english/operations/climate_change/index.html
ODA
約72億ドル
OOF
(民間資金を含む)
約 78 億ドル
低炭素 で 気 候 変 動 の 影 響 に
強い社会 の 構 築 に 向 け て
緩和
① インドネシア:ルムットバライ地熱発電事業
欧州
・
中東
10
11 12
2
8
4
本事業は交通渋滞と大気汚染が問題となっているバンコク首都圏において、公
共交通軌道路線のネットワーク化及び郊外への延伸を行い、道路交通から鉄道
へのモーダルシフトを図ることで、交通渋滞の緩和と大
気汚染の改善、温室効果ガスの削減を目指すものです。
バンコク都に対しては、気候変動対策の取り組み支援
(バンコク都気候変動削減・適応策実施能力向上プロジェ
クト)もあわせて行っています。
③ アルジェリア:
サハラを起点とするソーラーブリーダー 研究開発
化石燃料の大量消費による資源枯渇と気候変動への影響が懸念される中、開発
途上国の生活向上に伴うエネルギー需要増大への対策は不可欠です。本事業で
は、サハラをはじめとする不毛の砂漠をシリコン太陽
電池の原料のシリカおよび日照の宝庫として活用し、
ソーラーシリコンと太陽光発電所の増殖的(ブリー
ダー)建設、およびアフリカにおける太陽光発電の有
効活用、長距離低損失送電の可能性を実証する国際共
同研究を開始します。
SATREPS
④ タンザニア:イリンガ - シニャンガ基幹送電線強化事業
タンザニアでは近年、経済成長に伴いシニャンガ州など北部
地域の電力需要が高まっていますが、その電源は南部地域の
水力発電が中心となっています。本事業は南部地域から北部
地域への送電能力向上を図るもので、送電損失を低減し効率
的な電力利用を可能にすることで、温室効果ガスの排出抑制
にも貢献できるため、気候変動対策円借款* の適用案件となっ
ています。
⑤ ブラジル:ベレン都市圏幹線バスシステム事業
ブラジル北部のベレン都市圏は約 211 万人の人口を擁し、交通渋滞が深刻化し
ています。本事業ではバス専用道路・バスレーンの建設やバスターミナルの新
設等、幹線バスシステムの整備を実施することで、ベレ
ン都市圏における交通渋滞の緩和や大気汚染の改善、温
室効果ガスの排出の抑制を図ります。
ブータンを含むヒマラヤの国々では、氷河の縮小に伴う氷河湖の出現とその
拡大がみられます。これらの湖は時に決壊するため、その洪水災害のリスク
の調査と対策の実施は喫緊の課題となっています。
本事業では専門家による最先端の研究を行うととも
に、ブータンの地質鉱山局の職員に対し、研究手法
や衛星データの利用、ハザードマップの作成といっ
た技術面での協力を行います。
アジア
7
3
写真提供:西日本技術開発株式会社
② タイ:バンコク大量輸送網整備
⑩ ブータン:
ヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水(GLOF)に関する研究プロジェクト
本事業は南スマトラ州ムアラエニム県において地熱発電所を建設するもので、
気候変動対策円借款* の適用案件です。これによりスマトラ系統における電力供
給の安定性の改善を図り、民生の向上等を通じたスマト
ラ地域の経済発展及び再生可能エネルギー開発の促進に
よる温室効果ガスの削減に寄与します。なお、JICA は膨
大なインドネシアの地熱資源の開発に向けて、民間事業
者の参入を促進する制度改善調査も実施しています。
適応
1
アフリカ
13
6 14
9
大洋州
中南米
・
カリブ
緩 和 + 適応
⑥ フィリピン:森林管理事業
෗┿
SATREPS
5
フィリピンでは近年においても森林面積が年に 2%以上の割合で減少し、温室効果ガ
スの排出削減効果が減少しています。さらに森林の荒廃は土壌流出や保水能力低下を
招き、洪水、干ばつ等の自然災害を起こす要因ともなっています。本事業ではルソン
島及びパナイ島において、住民参加型の森林管理及び生計向上活動を実施することに
より、森林の再生、自然災害リスクの軽減、地域住民の生計向上を図り、温室効果ガ
スの排出削減効果も期待されています。
REDD+
⑦ ヨルダン:上水道エネルギー効率改善計画
ヨルダンでは気候変動により降水量のさらなる減少が予測されている上、上水道施設
におけるポンプの老朽化や不適切な維持管理が原因で、電力消費の増大による温室効
果ガスの排出量増加も懸念されています。本事業ではポンプ設備の更新、運転・維持
管理の指導などを行うことで、送配水にかかるエネルギー節減を通じた二酸化炭素排
出量の削減(緩和策)と同時に、水供給の安定化(適応策)を図ります。
⑧ カメルーン:熱帯雨林とその周辺地域における持続的生業戦略の確立と自然資源管理
- 地球規模課題と地域住民ニーズとの結合
コンゴ盆地の森林は生物多様性の宝庫であるとともに、気候変動を防止する炭素貯蔵
庫として重要な役割を果たしています。一方でこの地域では約 6,000 万人におよぶ住
民が、燃料、食物、薬等の供給源として森林に強く依存しています。本事業は、熱帯
林の保全と地域住民の生活改善を両立させることを目的として、持続的農業の確立、
森林の価値の再評価、生態学的資源管理の 3 点から調査・研究を行い、森林保全に
対する住民の能力強化に貢献します。
REDD+ SATREPS
⑨ パプアニューギニア:
気候変動対策のための森林資源モニタリングに関する能力向上プロジェクト
パプアニューギニア(PNG)は世界でも有数の熱帯雨林を有する国ですが、持続可能
でない伐採や農地への転用等を原因とした森林資源の減少・劣化の進行は大きな問題
となっています。本事業は、気候変動に対する緩和策及び適応策の一環として PNG の
森林が持続的に保全、経営されることを目的とし、炭素蓄積量を含む森林資源モニタ
リングの実施能力が強化されるよう、衛星画像や GIS 等を用いたシステム構築とそれ
らのための人材育成をおこないます。
REDD+
⑪ バングラデシュ:クルナ水供給事業
バングラデシュでは、安全な水の安定的な供給が十分に行われておらず、とり
わけバングラデシュ第 3 の都市であるクルナ市では、未だ大規模上水道施設の
整備は行われていません。本事業では、クルナ市で住
民が安全な水に安定してアクセスすることができるよ
う、取水・浄水・送水・配水施設の整備を一体的に行
います。また将来的な海面上昇による塩水遡上の影響
の増大に対応した施設とすることにより、気候変動へ
の適応にも貢献します。
⑫ ベトナム:衛星情報の活用による災害・気候変動対策事業
ベトナムは世界でも有数の災害国であり、特に近年気候変動の影響とも考え
られる豪雨や大規模熱帯低気圧が多発しています。本事業ではこうした自然
災害による被害を軽減するために、地球観測衛星の
開発・利用に必要な関連施設の整備と、それらの施
設の持続的運営のための技術移転を行います。これ
により、災害・気候変動対策技術の高度化と体制確立
を図り、もって同国の社会・生活面の向上に寄与します。
⑬ カリブ:災害管理プロジェクト
カリブ地域は、大型のハリケーン等による被害を受けやすい地域です。日本
はカリブ災害緊急管理機関(CDEMA)及びその加盟国に対し、近年拡大する
気候変動による被害に対処する能力が高められるよ
う、洪水ハザードマップの作成を含むコミュニティ防
災計画策定能力の向上、洪水早期警戒体制構築、水文
データベースの構築等を目指したプロジェクトを実施
しています。
⑭ パラオ:サンゴ礁モニタリング能力向上プロジェクト
パラオでは豊かな自然環境を利用した観光開発を経済的発展の主軸として位
置づけていますが、近年では破壊的な漁法、乱獲、社会インフラの急激な発
展などに加え、世界的な気候変動による影響によりサ
ンゴ礁生態系が危機に晒されています。本事業は、日
本政府がパラオ国にアジア・大洋州におけるサンゴ礁
研究の拠点として無償資金協力により建設した研究施
設「パラオ国際サンゴ礁センター(PICRC)」を実施機
関として、海洋保護区管理に必要なモニタリングの技
術的能力の強化や地域との連携強化を目的としています。
SATREPS(サトレップス:地球規模課題対応国際科学技術協力)とは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)と JICA が共同で実施している、地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う 3 ∼ 5 年間の研究プログラムです。
(http://www.jst.go.jp/global/)
REDD+ は、開発途上国が森林減少・劣化の抑制や森林保全により、温室効果ガス排出量を減少させた際あるいは森林の炭素蓄積量を維持・増大させた際に、その排出削減量あるいは維持・増大した炭素蓄積量に応じて、先進国が途上国へ経済的支援(資金支援等)を行うものです。
* 気候変動対策円借款:温室効果ガスの排出抑制と経済成長の両立について政策協議を経た国に おいて、気候変動の緩和に資するプロジェクトが実施される場合に、通常よりも優遇された 条件で円借款をおこなう制度。
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