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へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究
へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 ─ 北海道南部と北部のへき地指定中学校の実態比較 ─ 阿 部 二 郎 佐 (北海道教育大学函館校) 藤 廣 賢 (函館市立鱒川中学校) 松 本 啓 資 (椴法華村立椴法華中学校) ─ ─ はじめに へき地性の根源的な問題 へき地教育に対しては,昭和 振興法 ,同年 て,昭和 年 年 月の へき地教育 月の へき地教育振興法施行令 ,そし 月の へき地教育振興法施行規則 榎本守恵は,へき地性の問題について,前述の へき 地教育振興法 に触れつつ以下のように述べている。 の成 立によってようやく積極的な取り組みが教育行財政の面 からも行われるようになったと言われている。 ところで,へき地教育の問題は 物理的な教育環境の 交通条件,自然的条件,経済的条件,文化的諸条件で あり,それはおもに山間地,離島その他の地域というこ とになる。ここでの基底は 教育の機会均等 であるが 課題 として一面的に捉えるべきではない。教育課題と ほかにまず注意しておくべきは,単級・複式などの学級 しての別な側面,例えば戦前から大きな課題として認識 編成について直接ふれていないことである。事実,日本 されてきた 農村教育・農民教育 る。同様に, 同和教育 問題とも関わりがあ の教育制度史上では学級編成は別の観点から問題になっ における課題と無縁であると てきたのであって,つまり,一学年一学級以上の学級編 も言いがたい一面を持っている。さらには,社会教育や 成の問題は へき振法 教員養成政策とも浅からぬ関連があり,大変複雑な教育 えられる。しかし,へき地指定校に単級・複式校が多い 問題であると捉えるべきである。 のは事実であり,両者はときに分かちがたく結びついて 科目として設けら いる場合が多い。なぜなら,交通条件・文化条件等に恵 れた技術教育である。しかし,本来の技術教育は,産業 まれない地域集落は,世帯人口が少なく,したがって所 教育としての専門的な教育内容をも包含するものであ 定の学年学級編成が,法律的にもできない場合が多いか る。そうした技術教育を, 普通教育 の課程の中で実 らである。いずれにせよ,単級・複式学級の問題とへき 施する場合には,教科の性格,教育目標の設定,教育内 地学級とは制度的に密着していないが,深い関係がある 容や方法の選定などに際して,必然的に多くの問題が生 といえるであろう。) 一方,技術・家庭科は 普通教育 の直接の課題ではなかったと考 じることになる。即ちこれが,昭和 年に新設された技 術・家庭科がその誕生と同時に抱え込んだ根本的な問題 榎本の 単級・複式学級の問題とへき地学級とは制度 なのである。つまり,その後の学習指導要領改訂の度に 的に密着していないが,深い関係があるといえる 多くの問題を生じさせ,かまびすしい論議を巻き起こす う指摘は, へき地性の問題 要因になっているのである。 榎本は次のようにも述べている。 とい の本質を突いているが, 従って,へき地教育における技術・家庭科教育の実践 は,複雑極まりない状況下に置かれる可能性が高い。そ 私は,もともと僻地教育なる存在は,封建社会のなか れはまた,へき地指定学校の比率が高い北海道において に存在するものではなく,日本資本主義社会特有のもの は, 北海道の中学校教育課程における技術・家庭科の だと考えているのである。先述の村落共同体が,時代と 課題 そのものであるという見方もできそうである。 ともに開かれた社会になっていく必然性があるならば, 僻地教育という教育課題にとりくむ必要はないはずであ 阿 部 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 る。しかし,僻地教育問題は学制以来一世紀余を経てな 中学校学習指導要領では, 領域を お問題にされているのである。 男女共通の必修領域を つ指定するだけに留まり,男女 僻地教育は日本民主主義社会特有とのべたが,ヨー ロッパの教育界には,日本の“僻地教育”に該当する訳 語はない。まさしく日本特有のひずみといえるであろ ) う。 に整理していながら, 共学という現代社会では当たり前の教育条件すら満足に は満たされてはいなかった。 昭和 年の女子(婦人)差別撤廃条約批准,昭和 年 の発効を受ける形で,技術・家庭科においても男女共学 化が徐々に進んできており,担当教員においても女性の このような,日本特有のひずみが,同じく日本特有の 技術科教員や男性の家庭科教員はそれほど珍しくはなく 生活綴方運動 なってきている。 や,東北の寒村や北海道を中心とする 地域での 北方性教育運動 を産み出したと見ることも 本来,教職員免許法の趣旨を完全に遵守しつつ,前期 できるだろう。この 生活綴方運動 が目指したものは, 中等教育である中学校の教科 つの完全遂行を目指すな まさに生活教育であった。 この生活教育という考え方は, ら,最低でも 校に 人の教員が必要とされる。ところ 今日のへき地教育の中にも一貫して色濃く残っている。 が,現実的には 公立義務教育諸学校の学級編成及び教 つまり,榎本の言う 日本特有のひずみ は,実は今 職員定数の標準に関する法律 の第六条,第七条の規定 日においても本質的な解消がなされてはいないようにも によって教員数は学級数によって確定される。例えば, 思われるのである。 仮に 学年 また,単級・複式学級(授業)の問題は,少子化傾向 学級の全 学級の中学校の場合なら,教員 定数は 人(校長及び養護教諭は含まない)にすぎない。 が懸念される今日においては,へき地だけではなく,都 従って,こうした小規模校に技術科教員と家庭科教員 市部の学校においても顕在化してきている。特にその影 が揃って配属される可能性は極めて小さいのが現実であ 響は,教科担任制を基本とする中学校において顕著と る。当然,へき地学校の場合も教員の人数は少ないのが なってきている(後述)。都市部においては複式学級化 通例であり,技術科教員と家庭科教員が揃って配属され が行われる可能性は小さいが,道内全域では学校の統廃 る可能性はさらに小さい。 こうした問題は,何も技術・家庭科だけに限ったもの 合化が急ピッチで進んでいるのである。 以上の事から,筆者らは榎本の指摘は へき地性の問 題 の本質を突いていると考えるのである。 ではなく,あらゆる教科の問題である。けれども,学校 教育において必修教科と選択教科のどちらを優先するべ きかという問題であれば,論理的には必修教科を優先す るべきであろう。学習指導要領上,外国語は選択教科で 技術・家庭科の根本的な問題 あり,英語はフランス語,ドイツ語その他の外国語と共 技術・家庭科は,前期中等教育課程にのみ設置されて に選択肢の つにすぎない。ところが,現実の教員配置 いる必修教科である。初等教育課程での家庭科や,後期 を見ていくと,英語の教員は多数配属されているのに技 中等教育課程の家庭科も共に必修教科であるが,教科と 術科教員や家庭科教員が しては明確に区別をする必要がある。 多数見られるのである。 人も配属されていない学校が 技術・家庭科は,発足当初から多くの問題を抱えてお ただし,実際問題として,英語はすでに国際標準の言 り,選択教科としての産業教育(職業教育)科目である 語として認知されつつあるにもかかわらず,それを相変 工業・農業・水産・商業・家庭 と混同されたり,職 業準備教育と誤解されたりしてきた。 ス語やドイツ語,その他の外国語と共に,それを選択教 また,技術・家庭科は単一教科であるにも関わらず, その当該免許は 中学校技術科 と 中学校家庭科 わらず外国語と呼び,教科書が作られてもいないフラン 科とすることの無意味さを指摘しておきたい。 に また,現実の標準授業時間数を考えても,外国語と技 分かれており,教育職員免許法上は全く異なる免許であ 術・家庭科を比較すれば,学校現場で英語の教員が多数 る。従って,教員養成課程におけるそれぞれのカリキュ 求められるという実情は十分に理解できる。 ラムも全く異なるのが実態である。 けれども, こうした現実の動きには論理的矛盾がある。 平成 年に告示された中学校学習指導要領からは,教 選択教科である外国語の標準授業時間数を定めているの つの分野に大別さ は学習指導要領である。従って,公立学校にその標準授 れたため,教職員免許法との関わりの面では分かりやす 業時間数をこなすことのできるだけの教員を配属するの くなった。しかし,昭和 年告示の中学校学習指導要領 は当然である。しかし同時に,学習指導要領は技術・家 までは,男子向き・女子向き,技術系列・家庭系列など 庭科を必修と定めているのである。これは単に生徒が必 という曖昧な区分けに過ぎなかったし,平成元年告示の ず履修するべき教科を示しているのではなく,その教科 科内容が技術分野と家庭分野という へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 が適切に指導されるという教育環境と条件を保障すると 校にまで減少しており,約 年間で 校が減少した いうことの明示でもあるはずである。技術科教員や家庭 ことになる。つまり,昨年 年間で減少した校数は, 科教員の配属が少ないということは,国の定める義務教 年間で減少した 育課程が画餅と化す危険性を孕んでいると言わざるを得 気に進んだことを示している。(仮に,休校となってい ず, 標準授業時間数によってのみ配属教員人数を決定し, る 配属教員の担当教科を偏向させることは問題である。 ) は 校にも達することになる。 技術・家庭科は実技も伴う関係上,多くの施設・設備 校の %を占めており,統廃合が一 校 )も事実上の減少と見なせば, 年間での減少数 本務教員総数は,昭和 年には 人であったもの 人へと減少し, 年間で 人の減少を示し を必要とする。この点では理科なども同様である。しか が し,理科の場合,理科教育振興法による設備基準が定め てしているが,過去 年間で減少した 人は,減少数 %を占め,近年になって急激に本務教員総数 られている。技術・家庭科は普通教育であるため,産業 全体の 教育振興法の適用範囲外にある。このため,教科新設時 が減少していることが分かる。なお,平成 に整備された諸施設が老朽化したり,労働基準法で使用 現在の, 公立中学校の管内別学校数は表 の通りである。 が禁止された規格の機種が設置されたままになっていた りと,教科教育運営上欠かすことのできない環境整備の 面でも問題が多い。これは,大都市においても例外では 管 内 表 管内別学校数 校 数 年 学校総数に占める割合 狩 校 % 渡 島 校 % 檜 山 校 % 後 志 校 % 空 知 校 % 上 川 校 % 校減少し 留 萌 校 % ている。公立中学校だけの推移を見ると, 校の減少で 宗 谷 校 % 網 走 校 % 胆 振 校 % 人で,前年度よりも 日 高 校 % 人減少している。公立中学校の生徒数の推移を見 十 勝 校 % 人が減少している。同様に, 釧 路 校 % 公立中学校の本務教員(教頭・教諭)総数の変化を見る 根 室 校 % 校 % 北海道の公立中学校の状況と推移 年度北海道学校基本調査 )によれば,北海道の 平成 校(国立 中学校数は 校を含む)で前年度よりも 校減少している。また,過去 あり,学級数で見ると,過去 年間で見ると 年間で 学級の減少と なっている。 年度の生徒数は 平成 ると,過去 年間で と,過去 年間で 人減少している。さらに詳しく見 合 計 平成 年 日 ) 石 なく,設備の更新は急務であるところが多い。 月 ていくと,生徒数は昭和 年から減少傾向が続いている ことが分かる。) そこで,昭和 年を基準として現在の状況と比較する 人から と,公立中学校の場合,生徒数は 人に減少している。これは, %( 数の 年間で昭和 ら 学級に減少しており,減少率は 年の %( 日現在の住民基本台帳人口 )によれ ば,北海道全人口は 日現在の国勢調査人口が 年の生徒総 人)が減少したことになる。 同様に学級数で比較すると,昭和 月 人である。平成 年 月 人であり,このこ とからも人口が減少傾向にあることが分かるが, 万 人余の人口を抱える札幌市のある石狩管内の人口は,全 学級か 学級) に達する。 道人口の %を占める。その割りに学校総数に占め る石狩管内の割合が低いが,これは規模の大きな学校が 多いことを示している。 生徒数の減少率に対して,学級数の減少率が小さいこ 単純に,地域別の人口比と学校規模の大きさの関係を との理由としては,上記期間中に学級編成基準(単式学 短絡させることには意味がないが,地域の人口動態と学 級の場合)が, 人から 校規模の相関は決して無視できない。 人に変更されたことによる影 響ではないかと推測される。 学校数の推移では,昭和 年間で 年に 校であったものが, 校に減少しており,減少率では %( 校) を示している。 しかし,平成 年 月 日現在の公立中学校数は ), 阿 北海道の 部 へき地指定学校 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 の状況と推移 へき地と人口過疎地の関係について,高橋誠一郎は次 ていた。 ) さらに,昭和 年 月の文部省発表による ) へき地校等の全公立校に占める割合(%) %, (全国 位)中学校で 小学校で では, %(全国 位) となっていたことを考え合わせると, 北海道における へ のように指摘している。 き地指定学校 が急増していることが分かる。 へき地と人口過疎地域は,厳密にいって同義語ではな い。へき地とは,文部省所管のへき地教育振興法,同施 次に,各管内における へき地指定学校 の指定状況 行規則により,自然的条件や文化的条件を考慮して指定 について見て行く。筆者らは,各管内別の詳細な指定状 されるものである。 況データを入手できなかったため,北海道教職員組合編 年に制定された過疎地域振 一方,人口過疎地は昭和 興特別措置法(過疎法)にもとづき指定されるものであ る。〔中略 北海道教育関係 表 振興法,過疎法のほか山村振興法,離島振興法,豪雪地 多く,これらのいずれにも該当しない単なる過疎地は全 過疎指定市町村( 団体)のうち 団体( %)に すぎない。したがって,へき地と過疎地域はほとんど重 複しているとみてよいだろう。) へき地指定学 地域市町村率の高い北海道では必然的に 校 の割合は高くなる傾向を示すことになる。 年の時点で,北海道の へき地指 定学校 の実情に関して次のように述べている。 北海道では,実際に農村小規模校の比率が 校が文部省の 約 また,約 へき地 割を占め, 校の全小学校のうち, 校の指定を受けている。 校の全中学校のうち約 校が へき地 校 の指定を受けている。その中でも根室・宗谷など,北海 道東部と北部で へき地 管 内 校の割合が高い。 年 月 ) 日現在の,北海道の 地指定学校 の状況については, 公立小学校 校),公立中学校 %( 普通 各管内別へき地指定校一覧 特 準 級 級 級 級 級 へき地 校合計 札 幌 石 狩 後 志 空 知 釧 路 根 室 胆 振 宗 谷 檜 山 渡 島 日 高 十 勝 網 走 普通は一切の指定がない学校。特は特別地,準は準へき 地,へき地校合計は 級 級の合計。 表 ちなみに,平成 を基にし 留 萌 これを除外して北海道の一般的な特質はとらえられな い。また北海道では,例年,約 ) 上 川 高橋の指摘を待つまでもなく,全国でも有数の,過疎 玉井康之は,平成 年度版 て表 にまとめた。 筆者〕へき地や人口過疎地は,へき地教育 域対策特別措置法など関連法の適用を受けていることが 職員録 校) へき %( ) とされており,中 で分かるように,玉井の指摘した北海道東部,即 ち,網走,根室,釧路,十勝管内や北海道北部の宗谷管 内に へき地指定学校 が多いことがわかる。 次頁及び次々頁の表 は,同じ方法で筆者らが自作し 学校に関する内訳では,特別地域 校,準僻地 校, た,各管内の地方自治体ごとの内訳一覧である。やや精 級地 校, 度に欠けるが,全体的な傾向を把握することはできる。 級地 校, 級地 校, 級地 校, 級地 校となっている。 (註 北海道の場合,特別地とは, へき地教育振興 法施行規則 第三条で言うところの点数合計が 点から 点までの学校であり,準へき地とは, 点から 点の地域である。 ) 昭和 年当時の北海道の公立中学校における 指定学校 率は全国平均の 昭和 年時点では %に対して %となり,全国 和 年時点でも,全国平均 へき地 %を示し, 位であった。昭 %に対して %となっ へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 支庁別・自治体別学校数 表 支 庁 札 幌 市 石狩支庁 石狩支庁 後志支庁 自治体 札 幌 市 普通 特 準 級 級 級 級 級 総計 支 庁 空知支庁 当 別 町 南 幌 町 新篠津村 栗 沢 町 厚 田 村 北 浜 益 町 月 形 町 江 別 市 岩見沢市 千 歳 市 夕 張 市 恵 庭 市 美 唄 市 石 狩 市 三 笠 市 北広島市 沼 田 町 合 計 上川支庁 秩父別町 妹背牛町 寿 都 町 北 竜 町 黒松内町 雨 竜 町 蘭 越 町 幌加内町 ニセコ町 上砂川町 真 狩 村 奈井江町 留寿都村 新十津川町 喜茂別町 浦 臼 町 京 極 町 深 川 市 倶知安町 芦 別 市 共 和 町 赤 平 市 岩 内 町 滝 川 市 泊 砂 川 市 村 歌志内市 積 丹 町 空知支庁 古 平 町 釧路支庁 計 厚 岸 町 仁 木 町 釧 路 町 赤井川村 標 茶 町 小 樽 市 弟子屈町 合 計 鶴 居 村 占 冠 村 阿 寒 町 南富良野町 音 別 町 中富良野町 白 糠 町 釧 路 市 美 瑛 町 釧路支庁 東神楽町 根室支庁 合 計 別 海 町 東 川 町 中標津町 当 麻 町 標 津 町 上 川 町 羅 臼 町 愛 別 町 空知支庁 合 浜 中 町 余 市 町 上富良野町 上川支庁 村 島 牧 村 神恵内村 後志支庁 自治体 長 沼 町 根 室 市 比 布 町 根室支庁 鷹 栖 町 胆振支庁 合 計 豊 浦 町 和 寒 町 虻 田 町 剣 淵 町 洞 爺 村 朝 日 町 大 滝 村 下 川 町 壮 瞥 町 風 連 町 白 老 町 美 深 町 早 来 町 音威子府村 追 分 町 中 川 町 厚 真 町 士 別 市 鵡 川 町 名 寄 市 穂 別 町 富良野市 苫小牧市 旭 川 市 登 別 市 合 計 伊 達 市 栗 山 町 由 仁 町 室 蘭 市 胆振支庁 合 計 普通 特 準 級 級 級 級 級 総計 阿 表 支 庁 宗谷支庁 自治体 枝 幸 町 部 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 支庁別・自治体別学校数 普通 特 準 級 級 級 級 級 総計 支 庁 日高支庁 中頓別町 様 似 町 歌 登 町 浦 河 町 浜頓別町 三 石 町 猿 払 村 静 内 町 豊 富 町 新 冠 町 利尻富士町 門 別 町 利 尻 町 平 取 町 礼 文 町 稚 内 市 宗谷支庁 留萌支庁 留萌支庁 桧山支庁 合 計 日 高 町 日高支庁 十勝支庁 渡島支庁 計 増 毛 町 士 幌 町 上士幌町 苫 前 町 鹿 追 町 羽 幌 町 新 得 町 初山別村 清 水 町 遠 別 町 芽 室 町 天 塩 町 中札内町 幌 延 町 更 別 町 留 萌 市 虫 類 村 合 計 大 樹 町 上ノ国町 広 尾 町 江 差 町 浦 幌 町 厚沢部町 豊 頃 町 乙 部 町 池 田 町 熊 石 町 幕 別 町 大 成 町 本 別 町 北桧山町 足 寄 町 瀬 棚 町 陸 別 町 奥 尻 町 渡島支庁 合 音 更 町 小 平 町 今 金 町 桧山支庁 自治体 えりも町 合 計 帯 広 市 十勝支庁 網走支庁 合 計 斜 里 町 松 前 町 清 里 町 福 島 町 小清水町 知 内 町 東藻琴町 木古内町 女満別町 上 磯 町 美 幌 町 大 野 町 津 別 町 七 飯 町 端 野 町 戸 井 町 常 呂 町 恵 山 町 佐呂間町 椴法華町 訓子府町 南茅部町 置 戸 町 鹿 部 町 留辺蕊町 砂 原 町 生田原町 森 町 丸瀬布町 八 雲 町 白 滝 村 長万部町 遠 軽 町 函 館 市 湧 別 町 合 計 上湧別町 滝 上 町 西興部町 興 部 町 雄 武 町 北 見 市 網 走 市 紋 別 市 網走支庁 合 計 普通 特 準 級 級 級 級 級 総計 へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 へき地の子ども 観とへき地教育 前述したように, へき地 に聞き入る大人(島にラジオが無かった)。部落民の 間では,経済的な諸問題は,部落の地曳網を軸とした, をどのような観点で捉え 網支配のシステムの中でおこり,処理されてきた。つ るかという問題は大変重要である。玉井は次のような疑 まり網所有者の所有と,その利用が,むら支配の体制 問を呈している。 にそのまま持ち込まれる。教師たちも,島の生活に一 応慣れてきて,父兄や青年達との間柄も親しくなり, へき地は,近年置かれた状況の変化の中で,へき地の むらという 定義自体も境界が不明瞭になりつつある。へき地教育振 ) じめた。 つのまとまりと交渉を持つ学校になりは 交通困難で,自然的,経済 へき地は封建的・閉鎖的であり,伝統・旧慣に埋没 的,文化的諸条件に恵まれない山間地,離島,その他の して保守的であり,没個性的であり,進歩を望まず退 地域に所在する公立の小学校,中学校 とされており, 嬰的である。それは,へき地の生活を支える社会のし またへき地の一般的特徴として,自然的悪条件・僻遠 くみからくるもので,その中に生きるへき地の人びと 性・経済的貧困性・文化的停滞性・社会的封建制・教育 の生活態度や考え方の特質であろう。 興法では,へき地学校とは 的低調性の つが指摘されている。しかし,近年におい 飯米すら自給できない農家,それがへき地山村の農 てもそれぞれの項目が現在の北海道のへき地に当てはま 家である。へき地の兼業・副業への要求はこのような るかどうかは,とりわけ都府県と比較すれば,後述する 切実な背景を持つ。へき地は生産手段に乏しく,生産 ように疑問である。したがってここでは,単に距離的に 力が乏しい。必然的に協力が必要となる。へき地社会 市街地から離れているという意味で,へき地をとらえる には緊密な共同がある。(水の共同,山の共同,共同 こととしたい。 ) 体規制) ) わが国のへき地社会には,いたるところ,びっくり つの特徴は, 全国へき地教育連盟編 へ 峠があり,思案峠があり,辞職峠がある。いや,職を き地複式教育ハンドブック などの指摘を引用したもの 玉井の掲げた 辞退するならまだよいが,命を辞退させられるような だと思われる。その上で,この特徴が北海道のへき地に 難路もある。とにかく交通不便ということが島の生活 は必ずしも当てはまらないのではないかという疑問を呈 を窒息させている。私の生まれた村には,ずっと前か しているわけであり,この指摘は大変示唆に富むもので, らどんな小さな部落にも,村屋(部落の人々の集会所, 改めて検討していくことにしたい。 公民館のようなもの)というのがあって,部落のいろ まず,前述の つの特徴は,最初に山川武正が指摘し いろなきまりは,部落中の人がここに集まって決める た後,へき地教育に携わった人々全体に一貫して支持さ ことになっていた。私の生まれた部落は,一面民主的 れてきたもののようである。例えば,過去に刊行された な平和郷でありながら,他面,血縁的な社会構造から へき地教育 関連文献での指摘を見ると以下のような 事例が挙げられている。 〔筆者らの抄訳〕 くる生活共同体意識のために, 個の自覚が没却されて, 封建的な社会を形成しつつある,いわば矛盾する つ の性格の併存する社会であった。へき地にはこのよう 後進的な性格をもった特異な意識が認められる。 な性格の社会があるかと思うと, いわゆる地主階級と, 人々の意識の中には,家に関連する特異な意識が非常 そうでない者とのあまりに大きなへだたりのため,外 に強い(社会の仕組みが,どの社会よりも“家”を基 面的な平和を保っているというような社会もある。し 礎として,成立している。家格による身分づけなど) 。 たがって,地主の意志が部落の意志であり,ひとびと 部落に関連した特異な意識が形成されている(はえ の意志になるのである。こんな地域では,地主の意志 抜きの者の重視,身元のはっきりしない者をいやがる にそむいて行動することは,その部落から追放される 気風,部落共同体としての仲間意識の強さ,部落本意 ことである。 の考え方が強い。慣例の重視,社会的統制としての申 文化の中心から遠ざかる農山村ほど,ろうことして し合わせの重視,自給自足への意欲の強さ,身分意識 抜くべからざる迷信と因襲を持つ。閉ざされたへき地 の強さ,金銭本位の考え方の台頭,自然に対する深い 社会は文化の波も寄せつけず,原始的な職は業家長制 感謝の気持ち)。 ) 出稼ぎが多く,島に残るのは年よりと主婦や子ども の支配をつよくうけているために,迷信にとってはま ことによい温床になっている。 達のみ。部落民の団結力の強さ。不漁時における不漁 へき地社会のひとつの特徴は,古代と現代を現実に 祈願(婦女子たちの祈願踊りは妖気に満ち溢れたもの 合わせ持っていながら,それがいかにものんびりと握 であった),生産に対する計画的発想の欠如。ラジオ 手しているように見えることである。 ) 阿 部 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 つの文献から,へき地の説明に関わる部分を抄訳的 年代後半 に示したが,それぞれ書かれた時期は,昭和 から昭和 年代前半にかけてである。多少の物理的社会 へき地 環境の違いは散見されるにせよ,それぞれの 療法 因襲 迷信 時間概念 などが調査対象とし ても取り上げられていることである。また, 子ども の傾向に関しては,考えない,見過ごしが多い,単純に 肯定し信じやすいなどといったことについて報告されて に対する説明には一貫した内容がある。つまり,玉井が いる。その他の,より具体的な記述事例としては以下の 指摘した特徴の,自然的悪条件・僻遠性・経済的貧困 ようなものがある。 〔筆者らの抄訳〕 性・文化的停滞性・社会的封建制である。 さらに,掲げた事例部分で筆者らが意識的に削除した 要素として, 教育的低調性 がある。これは,共通に 述べられている事項であったためである。 てそれを読み直すと,まるで文化人類学者が危険極まり ない未開地に踏み入っていくかのような述べ方であるこ へき地の子ども 観は,教員の 観と深く結びついている。 溝口謙三は, へき地 について り,単調かつ均質的である。自主性・創造性の貧弱, 積極性・社会性などの能力の未熟,言語生活のかたよ 過去,へき地に関する研究文献は数多いが,今日改め とに気がつく。実は,こうした へき地 学習意欲が貧弱である。生活経験が極めて貧弱であ りが見られるが,これらはへき地に共通の閉鎖性,封 建制・非合理性の所産である。 ) 生産のすべての面で働く(不平もいわず,いいつけ をよく守って一しょうけんめい働く)。口が重く,よ そ者にはなかなか口を開かない。無気力で学習意欲が へき地の生活のし なく,表現能力が不足している。学力が低い。知能テ 式)でも, 中ノ下 にかたまっている。 くみや考え方が劣っておりまた遅れているものであれ スト(田中 ば,それはどのような方向に変えられなければならない 精神作業検査においても,作業量が少なく,初頭努力 のであろうか。しかもそれが生活に深く根ざしたもので と終末努力が欠けており,休憩効果も極めて少ない。 ある限り,生活のしくみを変えなければ,へき地の進歩 経験の領域が狭い。けんかが少なく,きわめて仲がよ はないといえよう。そのへき地の生活が,いろいろの条 く社会性に富む(多くは部落内に限定される) 。 件において恵まれていないとすれば,そのような状態の ままにしていることは,社会全体の責任であるというこ とになろう。 ) と述べつつ へき地の子どもたちの生 活にも,おそらくいろいろの問題がおおいかぶさってい ) やる気が不足している, 学力がアンバランスである, 無性格である,集団反応が非常に不十分である,集団 志向が不足している。言語能力,特に表現力が問題で ある。他人への依存度が高く,社会性がない。 ) ることであろう。たしかに,へき地の子どもたちは学力 無気力,活気がない,他人依存,のろい,すなお, が低い,無気力である,社会性がない等といわれる。 〔中 あきやすい,経験が浅い,学力が低い,自発性不足。 略 思考力が不足で,読書力がないことがいろいろな面に 筆者〕へき地の子どもたちの特質は,へき地の生活 そのものの中でつくられたものである。子どもたちは, 悪影響を及ぼす。 ) どのような社会のしくみの中でどのような生活をしてい 子どもたちは一般的に読書力,書字力は高いが国語 るか。何に喜びを見出し,どんなことに悲しみを味わっ に対して数学は低い。物事を深く掘り下げかんがえて ているだろうか。〔中略 筆者〕へき地の子どもたちの 理解する努力が一般的に低い。国語の話す力が劣るの 特質を個々ばらばらに切り離して見てはならない。生活 は,日常会話については親しい者同志の場合には発言 と 力が高いが事改まって話す場合に直面すると発言力が 観を見るこ 低くなる。子どもは早くから(小三年頃)から労働の 全体の中で全体の人間として見なおしてみたい。 まとめている。ここに,前述の 生活教育 ) とができる。溝口の指摘する, へき地の子どもの欠点 は 中に編入されているため遊びの時間が少ない。 学力が低い。無気力である。社会性の欠如。 の三 拍子が揃っているということである。 言い方を変えれば, これではどうしようもない らこそ へき地教育 以下, へき地 という評価になる。だか の改善が急務とされたのである。 観と同様に, へき地の子ども 観と へき地教育資 料 を刊行しているが,筆者らが入手できた 童生徒の科学性 ) や では, へき地の子ども 決められた学習は熱心であるが,持続性に乏し い。 生活経験の領域がせまく, 語いの不足が目立つ。 動的な活動と静的な活動の参加意欲の差が大き い。 集団思考の場での広がりや深まりが薄い。 してどのような事例があるのか見ていく。 文部省は昭和 年代後半から相次いで ) へき地児 へき地児童の興味や関心 ) の実態を把握することが中心 となっている。注目すべきは,後者において, 呪術的 じっくり思考して学習するのが得意ではない。 個人差がはっきりしている。 論理的な組み立てに弱い。 表現力が不足である。 学習は盛り上がりやすい反面,学習のねらいか へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 ら逸脱しやすい。 実態は地域格差が大きく,それぞれの 依存性が強く,学習活動も固定的である。 ) 考え方が内面的といおうか,発生的といおうか,そ のような方向をたどるようになる。へき地における生 活の経済的貧困のために,子どもの夢がいつも現実の へき地 には特 有の実情があるという指摘を考慮したからである。ここ に示した事例の対象とされた へき地 は総て異なるも のである。 また, へき地 という考え方は,その時代その時代 年前の へき地 と今 中に引きおろされてしまいがちである。純情である。 における相対的なものであり, 素朴である。へき地の子どもはよく働く。 劣等感を持っ 日の へき地 ており,沈黙やその他の消極的態度で表現されがちで るはずである。しかし,都市部や市街地との相対におい ある。まじめで従順である。のろまで決断力がにぶく, て へき地 むっつりやでおくびょう。 ) の物理的環境や実態は大きく変化してい が存在している。従って,前述の事例が述 べられた時期も総て異なるものを挙げてある。具体的に 読書量が少なく,その内容は貧弱である。学習意欲 も低調である。年中行事への参加を通して,強い部落 意識や社会共同体としての一体感を身につけるように なる。山の子どもたちは,同一部落内での強い相互的 接近を基盤にして,その上に同情愛着や尊敬共鳴の理 は,昭和 年から昭和 年までの約 年間という時間の 中で各々述べられてきたものである。 ところが,事例として示した へき地の子ども 観は, 地域差や年代差を越えて殆ど変化していない。 一番の特徴は, へき地の子ども の長所が殆ど述べ 由で結びつきを形成する。そのため,むしろなれあい られずに,短所だけが大きく取り上げられているという の結合であるため,社会性は育ちにくい。へき地の子 事実である。換言すれば,それだけ どもの交友関係は,きわめてへいさ的・排他的で,さ うことであったのだろう。今日においても, へき地の らに情緒的主観的である。 子どもの空間意識がせまい。 子ども の学力の低さは大きな教育課題である。その意 へき地の子どもは,いわば加法的なやり方で経験のよ 味で,へき地指定学校や小規模校における複式学級での せ集めをしているのであって,直接経験から間接経験 複式授業の在り方については大きな関心が寄せられてい への足がかりを持たない。 ) とい 年度からの北海道教育大学・北海道教 る。事実,平成 〔北海道〕へき地の子どもには,とくにせき柱異常, 問題がある とし 育委員会連携事業において,研究プロジェクト トラホーム,結膜炎,回虫卵保有などが見られ,衛生 て へき地・複式教育に関する研究 環境が良くない。栄養水準は他の地域と比較してかな 学習指導の在り方 り劣る。運動能力では,一般的に都市にくらべてへき における学習指導の在り方 地の子が劣るとはいえるが,固定した型があるわけで する先生へ はない。都市や市街地の子どもと比較して,農山村や 高さと,教育実践現場からのニーズの大きさをうかがう へき地の子どもの知能水準が低い。学力も低い。知的 ことができる。 には即時的(抽象性に欠ける)であり,情緒的には素 朴で安定性を持ち,行動的には受け身で消極的であり, 社会的には経験が狭く未成熟である。 ) 複式学級における が設定され,指導資料 複式学級 はじめて複式学級を担任 が発刊されたことからもそうした関心の しかし,事例に挙げた多くの文献においては,さまざ まな問題の根源を, へき地生活とへき地社会 の特異 性に求めようとしていた。けれども,高校進学率が % 岐阜県では,僻地の子どもの知能指数は都市のそれ を越えている今日,かつてのへき地に見られた特異な教 に比べて著しく低い。どの学年も殆ど同様に著しく低 育観 (教育の低調性) を声高に主張することは難しくなっ く,男女とも同様に低い。中学生は特に低い様である。 ている。その他の地域と比較すれば,まだその低調性を 文部省の報告によれば, 学業成績は僻地学校の子らは, 指摘したり,当該地域の子どもの学力格差が認められる 他のどの地域の学校の子らよりも低いとなっている としても, へき地の実情 が,岐阜県の場合はそうではない。僻地の子どもは, と考えるべきであろう。 その生活する環境と条件のゆえに,比較的社会性の発 はかなり変化してきている 前述の玉井も, 北海道のへき地教育の可能性と再評 の中で先の つの特徴について この特性が 達が遅れている。また,情緒的社会的発達としては都 価の課題 市に見られない優秀さもあることは忘れられてはなら 現代でもそのままいえるかどうかは疑わしい。 ) と述 ない。非社会性,正直でまじめ,仕事を熱心にする, べている。同時に へき地環境及びへき地校の積極面へ 現実的な思考態度,粗野,無関心で自信が欠乏して臆 の転換の観点 病,劣等感を持ち,友人関係は親密で,尊敬の念が厚 着目の必要性も指摘している。時代の流れと子どもの教 い。 ) として, へき地校教育の優位性 育環境の変化は, 非へき地化・都市化 への の持つ非教育 環境的側面を露呈させつつあるという指摘である。 大変多くの事例を掲げたが,この理由は へき地 の 榎本の 北海道僻地社会における共同体論の問題 ) 阿 や玉井の 学校と地域 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 研究における北海道のへき地 素直で素朴。 代後半 都府県との比較による問題提 教育研究の役割 起 部 ) で明らかにされたように,今日のわが国の へ 男 とくになかった。 き地指定学校 の大半が存在する北海道の歴史的条件, 素直,素朴,子どもらしい(短所もあるが) 。 自然的・経済的条件は本州とかなり様相を異にする。 代後半 へき地 従って,現在の北海道の と本州の へき地 純粋である。 を同一視することは慎重であるべきであろう。 特別な事情のある子が多いので,ある部分は純粋だ これらの北海道のへき地小規模 だからこそ,玉井の 男 けれども,時々違う面を見せることがある。 校のもつ特性は,単にへき地教育のみならず,市街地・ 都市部の学校運営改善の目指すべき在り方をも指し示す ものであろう ) という指摘は北海道の教育全般を検 イ 北海道北部の場合 代前半 男 明るく素直な生徒。 討する際には重く受け止められるべきである。 ところで,筆者らは,平成 年度に北海道北部にある 都会の生徒の印象とあまり変わらない。 へき地指定学校 代前半 と北海道南部の へき地指定学校 の教員に対するアンケート調査を実施した。この北部と 南部から抽出された へき地指定学校 地域を代表する典型的な へき地指定校 は,それぞれの ということで 女 純粋で無垢。 素直だが自己中心的な面がある。学習意欲が低い。 代後半 男 抽出されたのではない。抽出はあくまでも無作為におこ 明るく素直。 なわれたものである。 正直で気が強く,わがまま。 筆者らの意図は,北海道南部の へき地指定校 に勤 代前半 男 務している教員と,北部に勤務している教員の へき地 素朴,素直。 の子ども 観にどの程度の差異が見られるのかを大まか 人間関係が固定化されている。 に探ろうとすることにあった。以下, へき地の子ども 代前半 観に関連する項目の結果を示す。なお,サンプル数が少 素朴,人なつっこい。 ないため統計処理などは行わず,回答の質的分析のみを 集団行動が苦手,粗雑な面が見られる。 行った。 代後半 女 男 素朴,素直,すれていない。 質問内容 在る意味で素直。社会性がない。すれている。 へき地指定学校への赴任前に持っていた,へき地の 生徒の印象(イメージ) 。 赴任後の印象。 代後半 男 素朴,素直,正直,照れ屋。 素直。二極化している(テレビや他メディアの影響 を強く受ける子と,比較的昔の良さを持っている子) 。 ア 北海道南部の場合 代後半 代前半 素朴。 男 恵まれた自然環境の中で,明るく伸び伸びと育って いる子ども達。 閉鎖された空間の中で,人間関係が固定化されてし まいかわいそう。 代前半 女 男 けじめがない。 代後半 女 素直,明るい,活動的。 めんどうくさがり。社会性がない。わがまま。責任 転嫁しやすい。 素朴,幼い。 代後半 思ったとおり,素朴で幼い。 都市部の生徒よりも教師に対して距離が近い。明る 代前半 男 素朴で人見知りが強い。割合過保護に育っている。 活動には一生懸命取り組む。 男 い子が多く素直である。学力面で都市部に劣る。 教師との距離が近いが,礼儀と身の程を知らない。 学校を 合法的に反抗したり,ストレスを発散したり 概ね変わらないが,集団行動ができず自分勝手。 できるところ 代後半 い。思ったよりも個性がない。 男 素直,素朴。 と思い,おかしな意味での依存心が強 へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 代後半 男 素朴。 代前半 男 基本的には大差ないが,家庭環境が割りとしっかり 社会性の欠如。淡白。 していることと,夜にたむろする場がないので,荒れ る要素が少ない。 質問内容 同じ顔ぶれなので,人間関係が固定化してしまう。 都市部の生徒との違い。 へき地教育の抱える課題にはどのようなことがある と思うか。へき地教育において一番の問題は何か。 ゆえに“力のピラミッド”がくずれにくい。 代前半 女 自己を主張することが下手だと思う。 小規模校が多いので,学芸会,運動会では子どもの ア 北海道南部の場合 代前半 男 素直で真面目な児童生徒が多い。 複式学級の解消。少人数であっても成長段階に応じ た教育が必要である。 代前半 女 都市部生徒の方がませているのではないか。 負担が大きい。 代後半 男 集団生活ができない。地域内では威張れるが,外で は借りてきた猫になる。競争相手がいない。 競争相手がいないのでなあなあで物事が終わる。あ らゆる面において,自分の位置,立場がわからない。 地元に密着しすぎて保守的になる。 町の人々の仕事などを身近に感じる事が困難。 代後半 代前半 大差なくなりつつあるように感じる。人間関係が固 男 我慢の度合いが違う。こちらは過保護な面があり, つらいとあきらめてしまうことがある。 いかに集団の中で強く自分の力で生き抜く力を身に つけられるか。 代後半 男 男 定化し,他から吸収することが少ない。 教育環境としてのハード面(美術館,科学館,映画 館,図書館など)の不十分さ。 代後半 男 競争意識が薄い。 わからない。 教職員の低年齢化。 閉鎖的。大人数の中で自分を(個性)発揮できなく 代後半 競争意識が薄い。協調性がない。上下関係がない。 なる。 代後半 女 男 学習面での向上心の低さが目立つ。 生活空間での発達の差。 代後半 少人数,特定の友人関係。 学習に対する考えが甘すぎる。教師,学校と家庭な 代後半 男 荒れている学校の側面の一部を持っているので基本 的には変わらないが,素直であることが一番違う。 他校との交流。交流するための準備が整っていない。 ど, 男 の使い分けができない。学校の好きな子が 多い。万引き等,校外事件はほとんどない。 地域との結びつきが強い分,地域に誤解されてしま うとその考え方が広まり, 教育の場 としての学校 が否定され,荒れにつながりやすい。 イ 北海道北部の場合 代後半 代前半 同世代同士の人間関係が下手。異なる考え方を認め 男 都市部の生徒は商業施設やコンビニエンスストアへ の出入りが多いと考えられるが,へき地の生徒はそう いったことが少ないのではないか。 男 ようとはしない。 直接,聞いたり見たりすることのできる文化に貧し い(生の音楽や演劇など) 。 教員構成上の課題。経験豊かな教員が少ない。 代前半 女 積極的な姿勢があまり見うけられない。 交流学習がしにくい。教職員の研修でできることに 制限がでてしまう。 代後半 男 社会性がない。 競争意識をいかにつけるか。 質問内容 へき地教育の持つ 長所 にはどのようなものがあ るか。 学校教育としての理想につながる要素はあるか。 今のへき地の生徒に必要な資質・能力は何か。その ためには何をどうすればいいと考えているか。 阿 ア 部 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 北海道南部の場合 代前半 代前半 少人数学級による手厚い指導。指導のきめこまやか 男 少人数であるため,一人ひとりによく目が届き,き めの細かい指導が可能である。 広い視野から物事を見る力。 そのためには, インター ネットを使った,他地域や他都市の学校との交流を図 る。新聞を取り入れた授業。見学学習を多く取り入れ るなどが考えられる。 代前半 女 地域や保護者との関わりが密で,アットホーム。豊 かな自然と触れ合える。 男 さ。 対人関係構築能力。 代前半 女 身近にある自然,資源を活かした弾力のある教育が できると思う。 (総合的な学習など) へき地という一括りはできないが,集団の中での協 調性という点では少し欠けると思われる。協調性を養 うために,行事(交流)などを通して,行動,態度を 身につけさせたらよいと思う。 コミュニケーションの能力。他校との交流。 代後半 代前半 生徒に目が行き届くと思う。どうなるかは分からな 男 マンツーマンの指導が日常の中で自然に行われ,一 人ひとりへの指導が行き届く。 男 いが,(将来)少人数学級制になったときは,こんな 感じになるのかなあと思う。 強い心,生き抜く力。 社会性。外の世界との付き合い方。 代後半 代後半 男 教師の目が行き届くため,生徒を良く知ることがで きる。 面,自主性を育てるための阻害にもなっている。この 人前で上がらないこと。多くの人の前で何かを発表 する機会を与える。 代後半 男 少人数であるため,個を伸ばす手助けがしやすい反 男 一人ひとりを大切にできる個別教育。他の生徒との 深まりには欠けるかもしれないが,情報教育や校外学 習で埋めることも可能だと思う。 点を教師側で一致して確認できれば,心豊かで逞しい 子どもを育てることができる。 へき地に限らず,大人社会へとけ込むための練習の 場が学校(ミニ社会)と考えるなら,大人と関わる体 験を多く取り入れることが大切である。 代後半 男 人と高めあう能力,認め合える友達作り。 自然に囲まれている。 代後半 広い視野で物を考える力。外に出る機会を増やす。 男 一人ひとりを見ることができる。逆に,一人ひとり を見られなければ意味がない。 代後半 女 (少人数ゆえに)子どもと関わる機会が多い。 コミュニケーション能力。そのためには交流を多く 競争心。他地域との交流が多くなると良い。部活動 する。他人に見られていなくてもできる力。そのため や学習面では,外との交流が進めば多少は伸びると思 には,孤独に強くなることと,自己教育力をつけさせ う。 代後半 る。 男 生徒とパーソナルな関係を築きやすく,一人ひとり イ 北海道北部の場合 に目が利く。特定の生徒の隠れた個性を見つけ出せる 代前半 点は学校教育に生かせるのではないか。 男 自然環境が豊かである。地域とのつながりが密接に なりやすい。 基礎・基本の充実と自ら調べる能力が著しく劣って いる。総合的な学習は,へき地の現状では 活動あっ 回答なし。 て学びなし である。小学校時代からの丁寧な学習と 代前半 ベテラン教師の指導が必要。 女 受験制度や修学旅行代金に救済措置がとられている こと。理想につながる要素は今のところ分からない。 積極的姿勢,正しいものの考え方ができること。そ のためにも,教師の年令層を上に厚くしていくこと。 代後半 男 きめの細かい指導ができる。 耐える力。 代後半 男 父母(地域)との連携がしやすい。今の教育の原点 はへき地にある。 自己抑止力,社会性,思いやりの心。学校,地域, 家庭が一体になって心の教育を具体的に推進しなけれ ばならない。 へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 北海道南部のへき地指定学校は農山間的へき地であ り,北海道北部のへき地指定学校は漁村的へき地である。 回答者は 歳代から しての技術・家庭科がどのような状況で実践されてきた のかということについて見て行くことにする。 歳代であり,男性女性双方が含ま れている(教職経験や異動パターンも多様である) 。 へき地教育 ところが,回答例を見ていくと,例えば生徒に対する における技術・家庭科教育 年前の印象と大差ないことに気づ 技術・家庭科の,教科教育としての根本的な問題につ く。また,南部と北部での明確な違いを認めることもで いてはすでに前述した。以後は,中学校技術科教員免許 きなかった。さらに,へき地の生徒に見られる教育課題 所持者が担当する技術・家庭科教育(以後 でも,昔のへき地における教員の見方と大差なく,その のみを検討対象とする。 印象では,前述した 意味で へき地教育 の根本的な課題は,いまだに解消 されてはいない事がわかる。例えば,例外なく多くの教 員が へき地教育 の長所として へき地の生徒 と同様の教 と技術科の関わりに ついての先行研究事例はどの程度あるのであろうか。 少人数制指導におけ る生徒実態把握の容易さと,個別の実践指導の可能性 に言及していながら,昔の 果たして,過去, へき地教育 技術科 ) 現在,唯一の技術・家庭科教育雑誌である 技術教室 誌でどの程度の実践報告論文があるのかを調査した。 年 月号の その結果は驚くべきもので,昭和 ) 僻地 が唯一無二のものであった。 育課題を解決できていないという矛盾がある。つまり, における家庭科教育 それこそが へき地 即ち,へき地教育と技術科との関わりについての研究論 の持つ根本的な問題なのであり, 地域社会生活の特殊性や,人的交流の少なさに起因する 部や実践報告論文は全く見られなかったのである。 生徒の未発達・未成熟部分は,学校教育だけでは到底解 また,技術教育研究会が継続的に発刊している 消しがたい要素を持っているということなのであろう。 しかし,玉井の指摘のように,かつて,へき地問題の 筆頭に掲げられた経済的貧困性・社会的封建制・教育的 低調性は,今回の調査ではそれほど大きく意識されては いないようであった。また,学力問題は大きな問題であ 教育研究 誌においても,岸田興治による ) 技術教育 のわずか を抱える北海道 の技術科教員が,教科教育担当者としての立場からどの ように へき地問題 め,昭和 年から昭和 に関わる問題に注 本の実践報告が見られるだけ へき地指定学校 次に,大変多くの うであり,むしろ,自然的悪条件・僻遠性・文化的停滞 非社会性 島嶼僻地の であった。 るが,教員はそれほど大きな問題とは見なしていないよ 性・などによって生じる 技術 を捉えようとしていたかを探るた 年までの全道教育研究集会での レポート題目・報告者総覧 ) での確認を行った。その 目しているようである。もちろん,地域社会との関わり 結果, へき地教育分科会 は大きな問題であるようだが,社会的封建制という表現 教育に関わるレポートは提出されていないことが判明し で過去に指摘されてききた 本州的封建制 とは若干そ では,ただの一度も技術科 た。さらに,技術・職業教育分科会においても 小規模 のニュアンスが異なるようである。この点に関する解釈 校 というキーワードが用いられたレポートは数本確認 では,榎本や玉井の指摘が参考になるだろう。 できたが, へき地 今回の調査結果を通して,筆者らが最も注目している のは,赴任前の印象と赴任後の生徒に対する印象の変化 というキーワードを用いたレポー トは皆無であった。 最後に,北海道教育大学へき地教育研究施設紀要の掲 へき地教育 と技術科教育との関わり である。赴任前の印象には具体的なマイナスイメージが 載論文一覧から ほとんど見られず,むしろプラスイメージとして述べら を取り上げた論文を検索したが, 本しか該当せず,特 れている。ところが,赴任後の印象では,具体的なマイ に技術科教育の実施状況に関わるものは,井上平治・金 ナスイメージが前面に出てきており,具体的なプラスイ 田 メージはほとんど記述されていないということである。 査 それだけ, へき地教育 の抱える困難さが教員を具 体的に追い詰めていると見るべきなのかもしれない。 これまで, へき地 や へき地教育 も の特質,その時代的変化,北海道の 海道南部と北部の教員に見る へき地教育 弘 僻地における技術科教育の実施状況に関する調 ) 本にすぎなかった。 以上のことから分かることは,これまでの技術科教育 の世界においては, へき地教育 と技術科教育の関わ へき地の子ど りについて正面から取り上げて検討しようとする機運が へき地 ほとんどなかったということである。 と北 観などにつ へき地指定学校 や 小規模学校 に勤務していた いて大まかに見てきた。結果として言えることは,依然 技術科教員が報告した実践論文は多数あるが, それは へ として へき地教育 き地教育 としての検討を主眼にしたものではなかった の抱える問題は多く,また困難な ものであることは変わらないということである。 次に,そうした厳しい実態の中で,必修の教科教育と ということなのであろう。 それでは,現実の へき地教育 における技術科教育 阿 部 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 の状況はどのようなものなのであろうか。前述の岸田は さらに,職業科免許所持者で中学校勤務をしている教員 次のように述べる。 も,技術科教員には含めていない。 昨年度の中学校の生徒数は, 年生 名, 年生 年生 名の計 も全校で 名, 名でした。〔中略 筆者〕小学校児童 表 で分かるように,全道の中学校に勤務している技 術科教員は 市に勤務している。表 では,表 を基にした人数比率 名に事務に教頭,小学校は全学 を示している。この結果から分かることは,北海道内の 年 名に事務,養護教諭,栄養士,教頭,また小中兼任 名,以上合計 表 名がいます。僻地へいくと複数 教科を受け持つことになるという話しを聞いていたの 管 内 札 幌 市 ありません。大島管内では,全ての中学校に全ての教科 石 狩 の教員が配置されています。現在のところ,東京都では 後 志 無免許による教科指導はさせない方針を貫いているよう 上 川 空 知 宗 谷 このように恵まれた状況にある地方自治体は,全国に 留 萌 どれほど存在するものなのであろうか。北海道において 檜 山 は, へき地指定学校 で免許外教科を担当することは 渡 島 半ば常識化している。技術・家庭科教員の場合には,都 胆 振 市部の学校においてさえ兼務は常識化している。 日 高 では,技術科教員がどのよ 十 勝 うな配置状況になっているのであろうか。北海道教育庁 釧 路 を公 根 室 開しているが,教科免許所持者の詳細な一覧などは公開 網 走 ) 現実の へき地指定学校 では,平成 年度学校教員統計調査結果の概要 ) 北海道教育関係 筆者らは,北海道教職員組合編 職 表 年版 から技術科教員免許所持者を選び出し, その内の何人が 計(人) 合 計 していない。 員録 技術科教員の管内別分布 普通校(人) へき地校(人) 合 で,不安を感じていたのですが利島ではそういうことは です。 人が札幌 名でした。この生徒数,児童数に対して職員 は,中学校は全教科計 で校長 人に過ぎない。実にその内の へき地指定校 に配属されているのか 探ることで,北海道の へき地教育 管 内 技術科教員の管内別分布(人数比) 普通校(人) へき地校(人) 合 計(人) における技術科教 札 幌 市 % % % なお,この職員録は,出版元から送られた調査用紙に 石 狩 % % % 記入された内容をそのまま転記する編集方針を取ってい 後 志 % % % るようである。従って,時には臨時採用教員が名簿に含 上 川 % % % まれている場合がある反面,こうした臨時採用教員が名 空 知 % % % 簿に含まれていない場合も多い。さらに,技術・家庭科 宗 谷 % % % に関わる免許が,技術科と家庭科に分かれていることが 留 萌 % % % 知られていないため,所持免許として 技・家 と書か 檜 山 % % % れている場合も多い。さらに,担当授業科目すべてが羅 渡 島 % % % 列されている場合もある。こうした場合には,学校全体 胆 振 % % % の教員の教科バランス,性別,記述順などを参考にして 日 高 % % % 所持免許を推定した。そのため,作成した資料の精度は 十 勝 % % % つの傾向を知る上 釧 路 % % % 根 室 % % % 網 走 % % % % % % 育の状況を探ろうとした。それが表 である。 かなり悪いものである。あくまでも での参考資料にすぎないことを付記しておく。 なお,以後の技術科教員という場合は,技術科教員免 許所持者で,なおかつ中学校に勤務している者を指して 合 計 いる。ただし,学校長はこの調査の対象外としている。 合計値が に満たないのは端数処理のため。 へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 技術科教員の が政令指定都市の札幌に勤務してお が上川管内, り, が渡島管内と石狩管内に 勤務していることがわかる。逆に,留萌管内,檜山管内, ,根室管内で 日高管内は 内が普通校における不在校の %に当る 技術科教員の へき地指定学校 人が普通校に勤務して には %に当る 人が勤務 それぞれほぼ で,技術科教員不在の比率が高い 表 %が札幌市に勤務している。上 と,普通校勤務者の %であるが,実にこの つの管内だけで半 数を占めてしまうのである。これに石狩管内の %を 管 内 狩 %に過ぎない。以上のこと 後 志 からは,普通校勤務の技術科教員が,特定地域に偏在し 上 川 ていることが分かる。 空 知 に勤務している技術科教員に目を 宗 谷 転ずると,同様に幾つかの地域に偏在している事がわか 留 萌 る。つまり,十勝管内,後志管内,渡島管内,網走管内 檜 山 以上の教員が配属されており,これ 渡 島 胆 振 日 高 十 勝 技術科教員配置の問題としては,以上のような偏った 釧 路 人数分布という問題と共に,配属されていない小規模の 根 室 普通校が多数あるという問題がある。授業時間数の削減 網 走 北海道にある全中学校の へき地指定学校 でそれぞれが つの地域の中学校総数は, に根室管内を加えると, へき地指定学校 勤務の技術 科教員の半数を超えてしまうのである。 とともに,近年になってこの傾向が顕著になりつつある。 そこで,普通校と へき地指定学校 表 教員の不在の学校数がどの程度あるのかを示したのが表 ではない,普通校においてすら 技術科教員不在校の管内別分布 普通校(校) へき地校(校) 合 計(校) 合 計 において,技術科 である。ここで特筆するべきことは,へき地指定学校 における技術科教 札 幌 市 石 この 加えると %近くなる。 となっている。これに根室管内を加 えると,北海道の へき地指定学校 している。普通校(小規模校を含む)について見て行く 技術科教員不在校の管内別分布(校数比) 管 内 普通校(校) へき地校(校) 合 計(校) 校も技術科教員が不在 の学校が存在しているということである。ただし,こう 札 幌 市 % % % した学校において技術科教育が行われていないというこ 石 狩 % % % 臨時 後 志 % % % 採用の技術科教員免許所持者 が勤務している場合もあ 上 川 % % % るからである。また,非常勤講師という形で技術科教育 空 知 % % % を行っている学校もあると考えられる。同様に,前述の 宗 谷 % % % 技術科教員数には, 技術科の臨時採用教員 が混在し 留 萌 % % % ている可能性もありえる。その意味では,データとして 檜 山 % % % の精度は問題視されてもしようがないが,それにしても 渡 島 % % % 校という数はあまりにも多い。この数は,北海道の全 胆 振 % % % %を上回る数だからである。しかも, へ 日 高 % % % き地指定学校 での不在校を加えると,北海道の全中学 十 勝 % % % 釧 路 % % % 根 室 % % % 網 走 % % % % % % とではない。例えば,名簿上に表記されていない 中学校数の 校の 表 地 のは,網走管内,十勝管内,釧路管内,宗谷管内であり, おり, へき地指定学校 川管内で となっていて,この 域で %近くになる。 しか配属されて いない。 ,上川管内で 内で 以上であり,胆振管 %で技術科教員が不在なのである。 は,普通校並びに へき地指定学校 における 技 術科教員不在校 の比率を示したものである。 普通校で,技術科教員不在の比率が高いのは,空知管 合 計 合計値が に満たないのは端数処理のため。 阿 員不在校総数の 部 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 %となる。 の数と, へき 普通学校においても技術科教員不在の割合が高 地指定学校 総数に占める管内別の比率である。従来か く,学校規模との関わりが大きい。つまり,都市部 表 は,管内別の 教員の配属地に大きな片寄りがある。 へき地指定学校 ら,北海道北部と東部に へき地指定学校 が多いと言 でも小規模校には技術科教員が配置されていない。 へき地指定学校 われてきているが,この表でも,宗谷管内,上川管内, 十勝管内,釧路管内,根室管内,網走管内の へき地指 定学校 の比率が高い。この き地指定学校 の 表 へき地指定学校 %近くを占めている。 校数が,それぞれの管内の へき地指定学校 校中,技術科教員不在校数は の中でも,管内ごとの技術科 教員配置に偏りが大きく, 技術科教育の立場から へ の中で技術科教員不在 る割合を示したものである。 へき地指定学校 に技術科教員が不在 である。 地域で,北海道全体の へ では, へき地指定学校 の き地教育 を考えた時に,留萌管内,日高管内,上 数に占め 表 総数 校にのぼり,実に, へ 管 へき地指定校における技術科教員不在校の比率 内 不在校数 指定校数 比 率(%) 札 幌 市 % 石 狩 % 後 志 % 上 川 % ていないということである。いくら へき地指定学校 空 知 % に特殊な状況があったとしても,これは義務教育課程で 宗 谷 % の許容値を超えているように思われる。 留 萌 % 管内の学校総数に占める技術科教員不在校の割合を示 檜 山 % である。この表の数値を見ていくと,比較 渡 島 % 的人口の多い中核都市を抱える管内の比率が下がってい 胆 振 % る。つまり,各管内においても,技術科教員の多くが中 日 高 % 核的都市部に勤務していることを示している。 十 勝 % 釧 路 % 根 室 % 網 走 % き地指定学校 の %に技術科教員が不在であるという 実態がわかる。 これは大変なことで,必修教科の正式な免許所持教員 が, へき地指定学校 したのが表 の 校中の 校にしか配置され 以上の事から,北海道における技術科教育の問題点は 次のように整理できそうである。 % 合 計 表 管 内 管内別のへき地指定校数と比率 へき地指定校(校) 表 管内別比率 管内学校総数における技術科教員不在校の比率 札 幌 市 % 石 狩 % 札 幌 市 % 後 志 % 石 狩 % 上 川 % 後 志 % 空 知 % 上 川 % 宗 谷 % 空 知 % 留 萌 % 宗 谷 % 檜 山 % 留 萌 % 渡 島 % 檜 山 % 胆 振 % 渡 島 % 日 高 % 胆 振 % 十 勝 % 日 高 % 釧 路 % 十 勝 % 根 室 % 釧 路 % 網 走 % 根 室 % % 網 走 % 合 計 合計値が に満たないのは端数処理のため。 管 内 合 計 不在校数 学校総数 比 率(%) % へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 川管内,檜山管内,釧路管内において適正な教員配 置の必要性を指摘できる。 これは,へき地指定学校 希望するだけ購入してもらえた。 技術科専用室の有無 が多いとされている地域とは必ずしも一致していな 有り。 い。 有り。 作業机の有無と台数 北海道南部と北部の へき地指定学校 おける技術科教育環境の比較 に 観や 台。 たか へ 人。 き地教育 観を比較しても大きな差異は認められなかっ 人。 教員による 観, へき地の子ども 台。 有り 台につき平均して何人の生徒が割り当てられ これまで述べてきたように,北海道北部と南部の現職 へき地 有り 年代前半のものと た。また,その意識や回答は,昭和 生徒用コンピータの有無と台数 本質的にはほとんど変化していないことが認められた。 有り 台。 さらに,技術科教員と へき地指定校 有り 台。 の関わりを見た が,極めて特異な傾向が認められ,南部,北部,東部と いうような区分けでは説明しにくい状況がある。 むしろ,中規模校以上の学校があるところに技術科教 員が配属されていると考える方が妥当な傾向が出てい る。そこで,最後に,サンプリングとして北海道南部の 生徒用コンピュータのメンテナンス コンピュータ室管理責任者が担当。 基本的には学校で管理している。コンピュータ管 理担当者が行う。 生徒用コンピュータの設置場所 へき地指定校と北部のへき地指定校における,技術科教 コンピュータ室。 育実践環境について比較を行った。その概要は以下の通 図書室。 りである。質問事項の下の は,北部のへき地指定校で 生徒用コンピュータのインターネット接続環境 (こ の回答であり, は南部のへき地校での回答である。 生徒用はなし。教員用のみ接続している。教員立 のサンプリング校は,佐藤及び松本の前勤務校である。 ) 会いの時に使用させられる。 生徒用有り。 質問内容(以下 と表現する) フィルタリングソフト導入の有無 週間に担当する技術科の授業時数 導入済み。 時間。 導入済み。 インターネットプロバイダー 時間。 その他の担当教科 特殊学級での作業学習 体育 週 民間のプロバイダ。 週 時間。 時間,小学校の図工 週 民間のプロバイダ。 時間。 担当部活動 サッカー部。 バドミントン部。 担任業務の有無 なし。 なし。 校務分掌 ウイルス対策の有無 学校としての対策は講じていない。 ウイルスバスターを利用。 生徒のメール使用について メールは開放していない。 使用禁止としている。 技術科専用の機械類の設置状況 丸鋸盤 台,卓上ボール盤 教務部。 動鉋盤 台。 保健体育部,研究部。 角ノミ盤 その他の特殊な業務 コンピュータ室の管理,保護者向けのパソコン教 台,糸鋸盤 台,糸鋸盤 台,グラインダー ベルトサンダー 台。 機械室の立ち入り制限施設が整っていたか 室の実施。 なし。自由に立ち入れる状況。 コンピュータの管理,研究回覧。 なし。自由に立ち入れる。 技術科の教科予算 必要なものをそのつど事務に依頼する。 額面不明。 台,自 工具類の設備状況 一通り揃っている。半数は使える状態。 台, 阿 部 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 へき地指定校勤務における,教科指導者として とにかく道具は揃っていて,半分は使える。 複式授業導入の有無 の課題にはどんなことがあったか なし。 生徒が少数のため,生徒指導では行き届いた指導 なし。 ができる反面,へき地で小規模校(教員の人数の 資料集・技術科ノートの購入利用の有無 問題)のため,教科研修などの,教科指導におけ 共になし。 る自己研鑚を行う機会が非常に少ない。 なし。 良い教材などをすぐに試すことのできる状況にあ テレビ,ビデオ, 設備について るので,年間指導計画などを弾力的にこなせる。 設備はある。 従ってより一層の研鑚をしなければならないと 設備あり。教科としては,デジタルビデオカメラ 思っている。 (純粋で知識量がすくないため),誤 のみ使用した。 魔化しやすい反面,直接的に教員の指導の力量差 教材業者の訪問の有無 なし。 が生徒の学習成果として現われやすいので油断が できない。 常に努力する必要があると思っている。 へき地指定学校 なし。 教材発注から到着までの日数 おおよそ 約 日。 週間。 物資(仕事で使うもの,生活用品,食料など)の 購入についてはかなりの不満を感じる。特に書 利用できる教材会社(カタログの送付があった のかどうか) 道外の大手 勤務における。生活者とし ての課題 物・書籍の流通に関しては酷い。 問題はないが,地域を出ていく必要がある。地域 社程度。 内では十分な取り揃えができない。 本州の業者,山崎教材など複数。 へき地の生徒の技術科に対する学習意欲(他の 以上,北海道南部と北部の へき地指定学校 におけ 教科と比較して) る技術科教育環境の比較を行ったが,前述したように, 作業を取り入れると意欲を示す。 北部の学校は漁村的へき地であり,南部は農山間的へき すごく意欲的。一生懸命にやる。 地である。教員は共に 代半ばという条件の下での回答 へき地の生徒の技術的な知識の素養について である。これを見る限り,今日の 北海道のへき地 に (都市部と比較して) おける技術科教育の環境は,北部でも南部でも大差ない 実際に技術(技能)を使っていても,知識として ようである。 定着しているとは言いがたい。 偶然によるのかもしれないが,両者の回答傾向はほと 知識的な部分が不足している。数式など,数字に んど差異が認められなかった。その意味からは,よほど 弱すぎる。 地理的・歴史的に特殊な地域を選ばない限り,北海道の へき地の生徒が都市部の生徒と違うと思われる 複数の へき地 の調査をすれば,北海道の へき地教 部分 育 における技術科教育の全体傾向と実態を把握するこ 社会性がない。地元のルールに基いた判断,考え とが可能であるようだ。特に,学校設備,教科教育環境 方しかできない。先輩,後輩の上下関係がない。 については,既に昭和 年から 年まで,みんな一緒という認識の生徒 年代のような都市部との大きな 格差が消失しているようである。 が多く,ついでに教師も一緒という認識が強い。 地域から抜け出すことが目的で勉強する生徒が多 い。勉強がだめだったら家業を手伝えばいいと 思っている生徒も多い。 おわりに 本研究報告は,中間報告としてまとめた。今後はもう 孤独に耐えられない。(我慢が足りない。いつも 少し多くの被験者(教員)への調査を実施し,より詳細 注目されていたい。)純粋な部分がある。自分の なデータの集積と整理を行いながら, 北海道のへき地 考えを上手く伝えられない。 教育としての技術科教育実践の状況 教材研究をする時に,ホームセンターや文房具 店などが近くにあったか の把握を試みたい と考えている。 今回の報告論文作成に当り,筆者らは へき地教育 全くない。 における あった。 討できなかった。今後は,先行研究事例の検索と検討, 技術科教育実践 の先行研究成果を十分に検 へき地指定学校における技術科教育実践の実態調査研究 実態調査結果の分析などを通して,より的確な実態の把 握を心がけたい。 ) 中学校,北海道南部の 中学校の教員の方々から アンケート調査へのご協力をいただいた。学校名,ご氏 名等はあえて記さないが,この場を借りて厚くお礼申し )前掲書 ) )文部省 へき地教育資料 。 )大分県 第 集 へき地の学校の (光風出版 生活指導 蒲江町立蒲江小中学校 小中併設 上げたい。 の を自作した。 中学校部分のデータを用いて表 なお,本研究報告をまとめるのに際して,北海道北部 の 年版 (北海道教育評論社 ) 。 深島分校 校の生活指導の実践 へき地 ふか島の教育(昭 和 年度文部省研究指定校研究報告書) )溝口謙三 へき地の子ども (東洋館 引用文献 近代僻地教育の研究 (同成社 ) )山 川 武 正 。 ) 。 ( 現在) 。 )算出するためのデータは, 北海道立教育研究所編 北 海道教育史資料編第二巻 (北海道立教育研究所 ) に拠った。 ( 現在) 。 ) )前掲書 ) 。 )前掲書 ) 。 )文部省 へき地教育資料 現在)。 へき地教育資料 ) )前掲書 ) )前掲書 ) )高柳 及び 第 ) 集 へき地児童生徒 ) 。 。 晃 むらからの教育考 ) (高 。 地域に根ざすへき地教育 (新北海道教 ) )大分県 ) 。 。 育新報社 現在)のデータを基に阿部が自作した。 へき地児童の興 (光風出版 文堂出版社 ) 集 (光風出版 味や関心 )文部省 第 )神田嘉延 へき地教育 ( 。 蒲江町立蒲江小中学校 深島分校 へき地 小中併設校の生活指導の実践 ふか島の教育 (昭 ( )高橋誠一郎 現在) 。 和 年度文部省研究指定校研究報告書) へき地と過疎地の関係 模学校読本教職研修増刊 ) へき地小規 号 (教育開発研究所 。 ) 。 平成 年度 新しい先生のため 学校教育の手引き (北海道教育庁生涯学習部 ) 。 。 では,昭和 同書 児童・生徒の実態を踏まえた学習指導 ) )前掲書 ) 。 へき地の子ども 年から昭和 )北海道教育研究所 時点で,中学校総数の %が該当し,全国へき地 %に相当することが述べられ 指定中学校総数の 勲 年までのへき 地指定学校数の推移の詳細が示されているが,この ) 北海道の小さな学校 ) )前掲書 ) )前掲書 ) ) 表 号 (教 からの孫引きで 北海道教育関係 職員録 へき地教育の 。 。 。 。 )村田泰彦 僻地における家庭科教育 (国土社 )岸田興治 ある。 )北 海 道 教 職 員 組 合 編 ) き地教育研究施設 すものであると結論づけている。 へき地小規模学校読本教職研修増刊 。 ) 未来と北海道教育大学の役割 (北海道教育大学へ ) へき地・小規模学校の実 北海道教 僻地教育 (三和書房 )北海道教育大学へき地教育研究施設 )前掲書 )本データは,貞松修二郎 増補 。 。 ており,北海道の過疎過密の現象が著しいことを示 育開発研究所 講座教育社会学 へき地の教育 (東洋館出版社 )米 増 号 (教育 。 育第十一号(北海道教育研究所 ) 。 へき地小規模学校読本教職研修増刊 )西塔辰雄 )北海道教育委員会 )前掲書 )工藤鉄雄 開発研究所 )玉井康之 北海道の学校と地域社会(東洋館 態 へき地の教育 (明治図書 の科学性 ) に , 。 ) ( ) 。 )榎本守恵 )前掲書 。 ) 島嶼僻地の技術教育 科授業実践 技術教育研究 技術教育 。 生徒 名での技術 (技術教育研究 阿 会 ) 部 二 郎・佐 藤 廣 賢・松 本 啓 資 。 )北海道教育大学附属図書館 北海道教育資料目録第 十一輯全道教育研究集会レポート題目・報告者総 覧 (北海道教育大学附属図書館 )第一分冊 第三分冊。 )井上平治・金田 弘 僻地における技術科教育の実 僻地教育研究第 施状況に関する調査研究 ) 海道教育大学僻地教育研究施設 )前掲書 ) 号(北 。 。 ) ( 現在) 。 参考文献 )全国へき地教育研究連盟編 明るい未来を築く日本 のへき地教育シリーズ第一集 へき地学校の実践と 指導 (全国へき地教育研究連盟 )全国へき地教育研究連盟編 のへき地教育シリーズ第三集 へき地学校の学習指 導 (全国へき地教育研究連盟 )北海道教育大学 学報 第 ) 。 明るい未来を築く日本 ) 。 号 (北海道教育大学 )。 )北海道教育大学地域教育支援部会 平成 年度 北 海道起用行く大学と北海道教育委員会との連携に関 するプロジェクト報告書 (北海道教育大学 )。 )北海道立教育研究所・北海道教育大学 指導資料 複式学級における学習指導の在り方 はじめて複式 学級を担任する先生へ )。 (北海道立教育研究所