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医療計画策定プロセスガイドライン

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医療計画策定プロセスガイドライン
RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
医療計画策定プロセスガイドライン
1
RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
1.まとめ
□1 趣旨
地域医療計画の行政担当者は策定に負担と不安を感じている。審議会・分科会・圏域会
議委員など策定に関わる人は、策定プロセスと自分の役割が十分に理解できていない懸念
がある。地域医療計画の質を高めるには、標準的プロセスを共有し、策定を支援する仕組
みをセットで整備する必要があると考えられる。こうした支援のもと、策定プロセスの「年
間スケジュール化」
「定例化(ルーチン化)」を進めることにより、過大な負担なく、医療
計画の質を高める実質的な議論を行い、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルの向上
を図ることができると考えられる。10 のステップを想定し、合計 12 の施策を推奨する。
10 のステップはおおよそ順番に進められるが、並行して進められる部分もある。
□2 推奨施策(各施策の内容は本文を参照)
○ステップ 1 策定の体制の整備
・
「地域医療計画策定人材養成講座」の運営と受講
・
「地域医療計画策定支援センター」の設置
・
「地域医療計画サミット」の開催
○ステップ 2 基本方針の策定
・
「地域医療計画策定基本方針・要項」の作成
○ステップ 3 既存施策の評価
・
「施策・指標マップ」に基づいた施策効果に関する評価の実施
○ステップ 4 データの収集と分析
・
「地域医療計画情報・指標センター」の設置
○ステップ 5 医療提供者の意見の聴取
・
「医療提供団体中期計画」の策定
○ステップ 6 住民等の意見の聴取
・審議会等への患者・住民参画の必須化
・
「地域医療計画タウンミーティング」の開催
○ステップ 7 施策の作成
・
「施策作成ツールキット」の使用
○ステップ 8 評価指標の作成
・
「地域医療計画情報・指標センター」の設置(再掲)
○ステップ 9 審議会等での検討
・
「審議会等委員ミッションステートメント」の作成
○ステップ 10 計画のとりまとめ
・
「地域医療計画課(とりまとめ責任者)
」の設置
2
RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 1
策定の体制の整備
□1 策定の体制の整備とは
医療計画を策定するための体制の整備をすること。
□2 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「外部評価を受けるなどのプロセスを検討すべきである」(3 ページ)
・
「統計学や疫学、公衆衛生学等の知見を有する学識経験者等の多くの関係者が関与する」
(4 ページ)
・
「都道府県職員の異動に対処するため、計画設立時の担当者だけでなく、計画に関わる他
の関係者と計画の方向性について積極的に共有する」(4 ページ)
・
「マルチステークホルダー(多様な立場の者たち)が継続的かつ主体的に医療計画に参画
する体制の構築」
(5 ページ)
・
「医療計画策定担当者への研修等の技術的支援をこれまで以上に行う」(6 ページ)
・
「自治体間でノウハウを共有できる仕組みを作る」
(6 ページ)
○H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート結果〔回答 34 県中〕
十分であった(86%) 不十分であった(15%)
(四捨五入の関係で合計が 100 にならないことがある)
〔自由記載欄から〕
・
「人員不足が深刻」
・
「ビジョンや医療計画の策定、施行は、必ずしも都道府県に十分な人員、予算、時間が確
保された中で行われるものではないことを前提に、いかにして実効性のある計画を効率
的に作り上げていくか、またその後の評価・分析をいかに実効的に行うかという視点を
持って、ガイドラインを作ってほしい」
○RH-PAC 内での意見
・
「計画策定プロセス全体を進行管理し支援できる人材(行政内部あるいは外部)の存在が
カギ」
・
「都道府県庁担当部署での人材の確保が重要」
□3 課題の整理
・策定プロセス全体を年間スケジュール化、ルーチン化(恒例化)して回していくための
基盤として、組織、人員などの体制や資源を確保しておくことが必要。
・都道府県庁内の人員と人材を確保すること。計画策定に中期的に取り組める専門家を育
成するか、担当者の異動があっても対処できる仕組みを作ること。
・地域医療対策協議会/同分科会/圏域会議を整備し、計画の PDCA サイクルのための実
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
質的な議論を、過度な負担なく開催できるようにすること。策定する組織とは独立性の
高い評価のための組織や会議体を設置することが望ましい。
・そのためには、地域において、マルチステークホルダー(多様な立場の者たち)からな
る、リーダーシップをもって医療計画に継続的に取り組む人材群を形成する必要がある。
□4 推奨施策
○推奨施策 1-1 「地域医療計画策定人材養成講座」の運営と受講
・地域医療計画の策定に関わる(あるいは、策定者の支援を行う)人を育成するために、
マルチステークホルダーが参加する人材養成講座を設置する。(
「医療計画策定参画者研
修ガイドライン」参照)
○推奨施策 1-2 「地域医療計画策定支援センター」の設置
・都道府県の地域医療計画策定を支援するために、進行管理、課題の抽出と施策案の策定、
連絡調整などの実務ができる人材プール機能を持つ支援センターを設置する。
○推奨施策 1-3 「地域医療計画サミット」の開催
・各都道府県が年に 1 回程度、患者・住民、保険者、議員、行政担当者、医療提供者、医
療政策に関わる有識者、地域のメディアなどが集まって地域医療計画を議論する「地域
医療計画サミット」を開催する。地域医療計画の PDCA サイクルの中での意見集約や情
報共有を行う。
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 2
基本方針の策定
□1 基本方針の策定とは
医療計画の目的、基本理念、基本骨子などを検討し、作成すること。
□2 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「データを十分に活用し、現状と課題を把握し、患者の受療動向を踏まえて、医療提供体
制のあるべき姿を念頭において目標を立て、関係者による議論で合意形成を得ながら計
画を実行し、適切な指標を用いて進捗評価を行い、医療計画を見直すという PDCA サイ
クルを有効に機能させることが必要不可欠である」
(2 ページ)
○H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート結果〔回答 34 県中〕
・十分であった(88%)
、不十分であった(12%)
〔自由記載欄から〕
・
「エビデンスに基づくビジョンの作成が必要」
・
「フレームワーク(枠組み)
、あるべき姿などを政策立案の前段階において詰めておくマ
ネジメントが大切」
○RH-PAC 内での意見
・
「まず、中長期的に望ましい医療提供体制とは何かを整理してから議論を進める」
・
「目指すべき姿、アウトカム目標を最初に設定する」
・
「自分たちで地域に必要なことをじっくり考える前に、ひながたに合わせて文字を埋めて
いる印象がある」
・
「手段(施策)が目的化せずに、成果を出すために何が必要かを、実質的な議論を行きつ
戻りつ、継続できる場と文化の醸成が大切」
□4 課題の整理
・全体のビジョン、分野ごとのあるべき姿・目指すべき方向、意見集約と施策形成の仕方、
PDCA 管理の役割分担と資源確保など、枠組みや基本的な考えをあらかじめ決めておき、
関係者と周知合意しておくことが重要である。
・地域ごとに医療計画の策定基本方針や策定要項を作ってから、
□5 推奨施策
○推奨施策 2 「地域医療計画策定基本方針・要項」の作成
・都道府県は地域医療ビジョン、地域医療計画の策定に当たって、基本理念、目指すべき
方向、策定プロセスの枠組みなどを示した基本方針・要項を策定してから本格作業に着
手する。国は、
「地域医療構想(ビジョン)策定ガイドライン」において、基本方針・要
項のモデル(ひながた)を示す。
5
RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 3
既存施策の評価
□1 既存施策の評価とは
前回の医療計画に基づき実施された施策の効果を検証すること。
本ステップについては関連性の高い「PDCA サイクルと指標の章」を参照ください。
□2 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「地域の医療提供体制の目指すべき姿を常に念頭に置いた上で、既存の課題が解決に向か
っているかについて、評価を行う」
(3 ページ)
○H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート結果〔回答 34 県中〕
・十分であった(85%)
、不十分であった(15%)
〔自由記載欄から〕
・
「前計画(第 5 次医療計画)の評価については、計画の具体的推進とその進行管理のため
に、数値目標の達成状況など前年度の状況について、毎年度、確認・評価を行い、施策
への反映を行った」
○RH-PAC 内の意見
・
「これからの計画を考えるには過去の計画の反省が必要」
・
「行政は疾病や事業の現況はある程度見るが、自分たちの施策を評価することは避けがち
ではないか」
・
「これまでアウトカム指標の設定が不十分なので、振り返って既存施策を評価する前提が
整っていない。今後は、アウトカム目標を設定し、それによる施策の事後評価を行い、
施策の改善につなげることが重要」
□3 課題の整理
・従来はアウトプット目標設定が中心で、アウトカム目標の設定が不十分だったので、既
存施策の実施的評価は困難。
・今後は、アウトカム目標を設定し、個別施策がアウトカムにどの程度の効果をもたらし
たか(インパクト評価)を評価の観点としていく。
(アウトプット、アウトカム、インパクト等の用語については、「PDCA サイクルと指標」
の章 3 ページを参照)
6
RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
□4 推奨施策
○推奨施策 3 「施策・指標マップ」に基づいた施策効果に関する評価の実施
・施策の策定時のみならず評価の際にも、「施策・指標マップ」を用いて、施策がアウトカ
ム指標にどのような効果をもたらしたかの観点から評価を実施する(施策・指標マップ
については、
「PDCA サイクルと指標」の章を参照)
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 4
データの収集と分析
□1 データの収集と分析とは
地域医療の現状と将来の分析に関するデータの収集と分析を行うこと。
□2 現状
○局長通知/課長通知
・厚生労働省医政局長通知「医療計画について」
(2012 年 3 月)においては、
「SPO データ
セットを集めて PDCA をしていく」ことが記載されている(3 ページ)。
(SPO とは、ス
トラクチャー、プロセス、アウトカムのこと。用語の意味については、
「PDCA サイクル
と指標」の章を参照)
・SPO 指標セットについては、厚生労働省医政局課長通知(2012 年 3 月)に別添として必
須指標、推奨指標などの表が示されている。ただし、「施策・指標マップ」として施策と
関連づけて示されているわけではない。
○「PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会」での資料から
・資料「指標について」によると、都道府県は、厚生労働省が示した SPO 指標に関して、
必須指標や推奨指標を必ずしも網羅できていない。
□3 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「必要なデータを定期的、継続的に提供する」「統一したデータベースを経年的に管理す
る」
「国がデータを分析して都道府県に提供する」
「都道府県の独自指標を共有する」「医
療と介護のレセプトデータを連結する」などと記載されている(5~6 ページ)
。
○H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート結果(回答 34 県中)
・十分であった(68%) 不十分であった(32%)
・10 ステップのうち、
「不十分であった」の比率が、「評価指標の作成」と共にもっとも高
かった。
〔自由記載欄〕
・
「情報の収集と分析には専門的な人材が必要」
・
「県独自に電子レセプトデータおよびDPCデータの分析を行い、県内における医療提供
体制と受療動向の把握を行った」
・
「データ収集と分析が不十分で数値指標が十分に作れなかった。厚労省のデータブックが
不十分であった。人材の確保が必要」
・
「広大な県土を有する地理的、時間的制約あるいは医療に関する資源の地域的な格差など
本県独自の実情を踏まえたビジョンとなるよう取組を進めていきたい」
・
「評価指標・数値の取得には、多大なコストがかかるため、評価指標書類の作成作業に傾
注し過ぎず、数値評価に過度に拘泥しないことが必要である」
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
・
「計画策定のための指標の設定及び調査・収集分析・解釈はどの程度のものを求められる
のか。調査を行うためのシステム構築などの財源はどうなるのか」
○RH-PAC 内の意見から
・
「問題は分析能力があるかどうか」
・
「分析や課題抽出を多くの識者で行う」
・
「検証・裏付けるべきデータが何かを洗い出し、定量データ・定性データを収集する」
・
「医療をどうするかを明確にした上で、定義に沿った有効なデータを収集・分析する」
・
「DPC データやレセプトデータなどを活用し、現状を可視化する。アウトカム分析が可能
となる情報を集める」
・
「より適切な指標の元にデータを集める」
・
「住民ニーズに沿ったデータ収集・分析とする」
・
「患者・住民の患者(満足度)調査を実施する」
・
「行政のもつデータと医療・医療機関が持つデータを組み合わせて医療圏単位に課題を抽
出する」
・
「行政がリーダーシップを発揮し、医療機関や住民も協力して、継続してデータ収集・調
査・分析を実施する」
・
「国のデータブックを整備、充実させる。それができるようにインフラを整備する」
・
「データ集をツール化し、各ステークホルダーが活用できるようにする」
・
「情報共有を工夫する」
・
「できるだけ業務負担を増やさずに継続性を担保する」
□4 課題の整理
・分析能力を付ける必要がある。そのためには人材や教育・研修が必要となる。
・得ることが容易なデータを集めるのではなく、必要なデータが何かを同定してから、そ
れを集めたり調べたりする力がカギとなる。
・必要なデータを計測したり、集めたりする力を付ける必要がある。
・各都道府県や医療現場の負担をできるだけ減らし、作業を通常可・恒例化(ルーチン化)
するために、
(1)データの開発、収集、分析を共同で行う仕組み(2)全国の知見を共有
する仕組み(3)都道府県の活動を支援する仕組み――などが必要と考えらえる。
□5 推奨施策
○推奨施策 4 「地域医療計画情報・指標センター」の設置
・各都道府県や 2 次医療圏などの SPO 指標、各地の施策と目標設定、施策の好事例候補、
各地で実施されている調査票と結果などを全国から収集し、比較可能、検索可能とする。
また、指標の開発、指標のデータベース化、データの収集と提供、ベンチマーキング(比
較)
、公表と普及などにより、地域医療計画の策定に関わる人を支援する。分析の方法や
ツールも提供し、指標を使った評価と施策の改善の支援も行う。
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 5
医療提供者の意見の聴取
□1 医療提供者の意見の聴取とは
地域の職能団体や地域で医療を提供している医療提供者からの意見を聴取すること。
□2 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「地域の医療提供者の行動計画という性質も備えたものとなるべきである」
(2 ページ)
○H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート結果から(回答 34 県中)
十分であった(97%) 不十分であった(3%)
・地域医療計画の策定に参画した人数
中央値が有識者(5 人)
、患者・住民が(8 人)であるのに対し、医療現場・提供者は 24
人と多い(
「医療計画策定参画者研修ガイドライン」参照)。
〔自由記載欄から〕
・
「医療機関等の関係者の意見をいかに調整して、地域医療ビジョンに反映させるかが重要
と考える。地域医療ビジョンの実現について関係者が協議をする「協議の場」において、
関係者の協議を円滑に進めるためにも、事前の調整が重要である」
・
「地域医療ビジョンの策定、推進に当たっては、個々の医療機関の経営転換を伴うケース
等も想定されることから、地域における医療提供体制の現状・課題等を的確に把握・分
析した上で、医療機関相互の協議により合意形成を図っていく必要がある」
○RH-PAC 内の意見から
・
「医療従事者や医療機関(保健・福祉施設含む)の声の収集は、各専門分野の会を利用す
る」
・
「職能団体等の意見、審議会等における医療提供者委員の発言などが、医療の現場の実感
や声と一致しているかが重要」
・
「医療提供者が職能団体等の実行計画とつなぐこと」
・
「その地域の中核となる医療法人の参画が必要不可欠」
・
「医療者のみならず、医療機関の経営者・事務分野の人も参画する」
・
「政策を検討する医療提供者が医療政策、医療経済などの広い知識を持つようにする」
□3 課題の整理
・地域の医療提供者関係団体・組織が地域医療提供体制の最適化をミッションとして明確
化することが重要である。
・地域医療計画が医療提供者の行動計画となるべく、医療計画の策定に参画している医療
提供者委員が、組織や地域の医療提供者とよく対話をすることが重要である。
・地域医療計画の策定に参画している医療提供者委員が、医療・介護などの現場の問題を
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【医療計画策定プロセスガイドライン】
十分に把握することが重要である。
・医療提供者内の意見が総論賛成・各論反対となった際に、ビジョンの実現と問題解決の
ための最適解を得られる場とコーディネーターが存在することが重要である。
□4 推奨施策
○推奨施策 5 「医療提供団体中期計画」の策定
・地域の医療提供者の職能団体等が地域医療計画の内容と期間と調和のとれた中期計画を
策定し実行する。その策定に当たっては、審議会等の委員や職能団体等の幹部だけでな
く、地域の医療提供者から広く意見を集約し、議論する過程を経る。
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 6
住民等の意見の聴取
□1 住民等の意見の聴取とは
患者・住民・保険者などの医療ニーズや意見を把握・聴取すること(保険者も含んでい
ることに留意)
。
□2 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「策定・見直しの段階から積極的に住民の意見を反映させ、策定後も住民意見を汲み取る
体制を確保すべきである」
(4 ページ)
○H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート結果(回答 34 県中)(四捨五入の関係で合計が
100%にならないことがある)
十分であった(83%) 不十分であった(18%)
・地域医療計画の策定に参画した人数
医療現場が 24 人であるのに対し、患者・住民は 8 人と少ない(中央値)
(
「医療計画策定
参画者研修ガイドライン」参照)
。県によって人数にばらつきがある。
〔自由コメント欄〕
・
「患者・現場・地域の代表者を保健医療計画策定委員会の委員及びワーキンググループの
委員として委嘱し、計画策定に携わっていただいた。また、計画の策定に当たっては、
圏域連携会議の開催や関係団体・市町村からの意見聴取、パブリックコメントの実施な
ど、現場の声を反映させるための取組を行った」
○『医療政策決定プロセスにおける住民・患者の参画』
(同研究班。H-PAC2 期成果物)よ
り
・現状と課題:
患者・住民の参画が少ない。都道府県格差がある。実質的な議論に参画できる土壌が不
十分。議事録の公開などが不十分。
・推奨施策:
患者・住民委員参画のための支援。「医療政策に参画するための講座の設定」
住民への周知。
「複数の公募委員の参画を求める」
○がん対策における事例
・がん対策推進協議会が『平成 23 年度 がん対策に向けた提案書~みんなで作るがん政策
~』を作成する過程において、6 県(6 カ所)で対話をして意見集約を行うタウンミーテ
ィングを開催。
・患者団体等が主催するタウンミーティングが開催されている地域がある。
・沖縄県では、沖縄県がん診療連携協議会と琉球大学医学部附属病院がんセンターが主催
するタウンミーティングが 10 数回開催されている。
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
・北海道や沖縄県などで、患者関係者と医療提供者ががん対策を考えるワークショップが
行政担当者の参加の上で開催された。
・患者が集まる患者サロン等の場において行政が患者ニーズや意見を聞く事例がある。
○RH-PAC 内の意見から
・
「患者・住民参画が十分になされていることが重要」
・
「保険者の参画が不可欠である」
・
「住民自らが作り、参画したと認識できるようなプロセスと方法を考えることが重要」
・
「当初の計画から患者・住民委員が参画し、節目ごとに公開セミナーを開催し、そこで対
話して意見を聞く」
・
「タウンミーティングを開催する」
・
「地域の医療計画をつくる人を立場ごとに定め、公募する。選出された人を公表し、選出
された人は地域の代表として公的に活動する」
・
「住民代表委員がエゴでない発言をすることが重要」
・
「患者・市民代表委員が役割を果たせるような手立てが必要」
・
「地域住民のニーズを把握する」
・
「患者・市民が地域の医療に対してどの程度、要望や不満を持っているのか病院でのアン
ケート等を実施する」
・
「患者の満足度を点数化する。精神的な不安の解消などの視点も必要」
・
「受療者の倫理や感性も重視し、人間的暮らしを高める手法を検討する」
・
「国際患者団体連合が発表しているような患者視点の評価指標を検討する」
□3 課題の整理
・地域医療計画を策定する審議会等で分科会を含めて患者・住民が参画することとなって
いるが、実際には必ずしも参画できるようになっておらず、参画を必須とする仕組みが
必要である。
・保険者が、加入者である患者・住民の意見や利益に基づいて行動する仕組みができてい
ない。また、保険者が地域医療計画を検討する場での発言が少ない。
・患者・住民の立場の参画者が、地域の患者・住民のために役割を果たせる仕組みが必要
である。
・患者・住民の価値観や社会的悩みも含んだ患者満足度調査など、広く地域の患者/住民
のニーズや意識を把握する調査が重要である。
□4 推奨施策
○推奨施策 6-1 審議会等への患者・住民参画の必須化
・分科会を含む審議会等への患者・住民および保険者の参画を必須化する。参画者が十分
に役割を果たせるように、推奨施策 1-1 の「地域医療計画策定人材養成講座」を受講で
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
きるようにする。また、推奨施策 1-2 の「地域医療政策サミット」に参加することとす
る。なお、医療政策決定プロセスへの患者参画を担保することを含んだ「医療基本法」
を提唱する動きがある。
○推奨施策 6-2 「地域医療計画タウンミーティング」の開催
・都道府県や圏域単位で、地域の患者・住民や多様な立場の者が集まって、地域の医療計
画を知り、地域の医療計画に関する意見集約・交換を行うタウンミーティングを開催す
る。また、患者の視点を重視した患者調査を実施し、その結果を対策に活用する。
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 7
施策の作成
□1 施策の作成とは
5 疾病・5 事業および在宅医療に関する課題を抽出し、それを解決する施策を作成するこ
と。
□2 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「目標を達成する際の行動主体及び役割分担を明確にしておくことは、目標達成に不可欠
なものと考えられる」
(4 ページ)
○H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート結果(回答 34 県中)
十分であった(88%) 不十分であった(12%)
〔自由記載欄から〕
・
「施策については、
「『県の取組』
、
『県民の取組』、
『関係機関・団体の取組』などに役割を
分担し、それぞれについて数値目標を設定した」
・「作成過程で予算協議を踏まえないため予算を伴う施策についてはほとんど記載できず、
計画の具体性に欠けることになっている」
○RH-PAC 内の意見から
・
「短期、中期、長期に分けて考えることが必要」
・
「策定プロセスを成果から逆向きに設計する(成果をもたらす施策を考える)
」
・
「やれることではなく、やるべきことから考える」
・
「やるべきことをするために、どの程度の資源が必要かの検討が必要」
・
「課題に対応した解決策(施策)を見出すために十分な議論を行う」
・
「施策案を効果等の観点から吟味し優先付けをする」
□3 課題の整理
・課題を抽出しそれを解決すると期待される施策を見出すこと、すなわちアウトカムをも
たらす施策を考える発想が不十分である。
・論理的、合理的に、証拠や合意に基づいて、共通土俵の上で施策を形成する作業を行う
必要がある。
□4 推奨施策
○推奨施策 7 「施策作成ツールキット」の使用
・地域医療計画の策定等に関わる審議会等の委員や地方自治体職員は、
「施策・指標マップ」
(
「PDCA サイクルと指標」の章参照)などの施策作成ツールを活用して施策の作成や、
合意形成のプロセスを進める。推奨施策 1 の「地域医療計画策定人材養成講座の実施と
受講」に、施策作成ツールキットの使い方の講義を含める。
15
RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 8
評価指標の作成
□1 評価指標の作成とは
5 疾病・5 事業および在宅医療の関する施策を評価する指標や数値目標を作成すること。
本ステップに関しては、
「PDCA サイクルと指標」の章を参照のこと。
□2 課題と問題意識
○都道府県アンケート結果(回答 34 県中)
十分であった(68%) 不十分であった(32%)
10 ステップのうち、
「不十分であった」の比率が、
「データの収集と分析」と共にもっと
も高かった。
〔自由記載欄から〕
・
「評価指標の選定に当たっては、医療に関する県民意識調査結果やワーキンググループ委
員からの意見、国から提示された指標例などを参考に、ワーキンググループにおいて選
定し決定した(その結果、保健医療計画には、500 を超える指標を掲載した)」
・
「施策の方向性は、具体的には「目標」の設定として表れるが、従来は随時捕捉できるデ
ータが不足しており、目標の達成度合いを示す指標の設定が困難だった」
・
「達成目標としての数値目標の設定が困難である」
○RH-PAC 内の意見から
・
「ある指標を集めるのではなく、取るべき指標を取る」
・
「より適切な指標の元にデータ収集と分析を行う」
・
「PDCA 管理のためのツールを、初期段階で各ステークホルダーに提供する」
・
「PDCA サイクルの C(評価)と A(改善)を支援する仕組みが必要」
・
「国保のレセプトデータを活用する」
・
「数量的エビデンスに加え、受療者の倫理や感性も重視して人間的暮らしを高める手法を
作る」
・
「技術的な側面だけでなく、精神的な面も含めた患者満足度調査を行う」
□3 課題の整理
・評価指標の作成は、都道府県行政から困難なステップと捉えられている。また、十分な
理解がされていないため、強力な支援が必要である。
・支援策のひとつとして、PDCA 管理のためのツールを提供することが重要である。
・指標の収集が既存データの収集となっており、評価に必要な指標の開発やデータ収集が
不足している。指標の共同開発、指標の開発支援、指標のデータベース、指標の比較な
どができるセンターが必要。
・指標データは、
(1)レセプトデータなどから医療の質や現況に関する客観データを得る
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
(2)患者の視線を重視した患者調査からのデータを活用する――の両面を促進すること
が重要。
□4 推奨施策
○推奨施策 8 「地域医療計画情報・指標センターの設置」
(再掲)
・各都道府県や 2 次医療圏などの SPO 指標、各地の施策と目標設定、施策の好事例候補、
各地で実施されている調査票と結果などを全国から収集し、比較可能、検索可能とする。
また、指標の開発、指標のデータベース化、データの収集と提供、ベンチマーキング(比
較)
、公表と普及などにより、地域医療計画の策定に関わる人を支援する。分析の方法や
ツールも提供し、指標を使った評価と施策の改善の支援も行う。
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 9
審議会等での検討
□1 審議会等での検討とは
地域医療計画を検討する審議会、作業部会、圏域会議などで検討すること。
□2 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「進捗状況が芳しくない場合には、その原因について考察を行う。目標設定が適切でない
場合は修正を検討する」
(3 ページ)
・
「達成困難と考えられる課題については、その原因について十分に考察し、圏域連携会議
や作業部会で議論し、解決策を検討する」(3 ページ)
○H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート結果
十分であった(94%) 不十分であった(6%)
〔自由記述コメント欄から〕
・
「協議の場の運営について、どのようなタイミングで、どのような議論を提示すべきか具
体的に示してほしい」
・
「策定過程における合意形成のプロセス(参加者の選定も含めて)が重要」
・
「地域医療ビジョンの策定、推進に当たっては、個々の医療機関の経営転換を伴うケース
等も想定されることから、地域における医療提供体制の現状・課題等を的確に把握・分
析した上で、医療機関相互の協議により合意形成を図っていく必要がある」
(再掲)
・
「ワーキンググループにおいて策定した分野ごとの施策案について、保健医療計画策定委
員会においてとりまとめを行った。とりまとめた計画案は医療審議会において審議を行
った」
・
「日頃から関係者と連携し、課題等を共有した上で時間をかけて議論することが必要」
・
「日頃から各分野の現状や課題について、関係者で議論できる場作りが必要」
・
「地域医療ビジョンの策定においては、医療機関等の関係者の意見をいかに調整して、地
域医療ビジョンに反映させるかが重要と考える。地域医療ビジョンの実現について関係
者が協議をする『協議の場』において、関係者の協議を円滑に進めるためにも、事前の
調整が重要である」
○RH-PAC 内の意見から
・
「はじめに結論ありきでない議論と、議論のとりまとめが必要」
・「ステークホルダーごとに、中長期的に望ましい医療提供体制とは何かを整理した上で、
現実を踏まえてステークホルダー間で調整する」
・
「議論のとりまとめのために、ファシリテーター(協働促進者)が参画する」
・
「県議会、市議会などとの情報共有と勉強会が必要」
・
「協議は可能な限り公開とする」
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
・
「同じ内容の発言が繰り返されて議論が進まないことがよくある」
・
「優先すべき項目に絞り込む段階を作る」
□3 課題の整理
・審議会等の開催の状況(参画者の構成と数、開催回数、提出資料、議事録公開など)は、
都道府県によって大きな差がある。マルチステークホルダー(多様な立場の者たち)に
よる実質的な議論ができるようにする必要がある。
・事務局からの資料説明の時間が長く、委員からの意見を聞くことが不十分であることが
多い。委員からの活発な意見が出ないこともある。委員がそれぞれの意見を述べるだけ
で、議論が不十分であることが多い。実質的な議論ができるようにすることがカギ。
・地域医療計画に関する審議会等では、本「医療計画策定プロセスガイドライン」のステ
ップ 1 から 10 までを年間カレンダーに基づき、計画的に審議する必要がある。
□5 推奨施策
○推奨施策 9 「審議会等委員のミッションステートメントの作成」
審議会等の目的と委員の役割についてミッションステートメント(役割に関する宣誓書)
を作成し、参画・審議前に委員は理解・合意する。委員は審議会の目的達成のために、推
奨施策 2 の「地域医療計画基本方針」を尊重し、行動・発言する。委員は、推奨施策 1-1
の「地域医療計画策定人材養成講座」を受講する。推奨施策 3 の「施策・指標マップ」を
活用し、マップ上で施策を提案し、評価する議論を行う。
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
ステップ 10
計画のとりまとめ
□1 計画のとりまとめとは
ステップ 1 から 9 を踏まえて都道府県庁内において医療計画をとりまとめること。
□2 課題と問題意識
○『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から
・
「役割分担を明確にしておくことは、目標達成に不可欠なものと考えられる」(4 ページ)
・
「地域の将来像を踏まえて、拡張や新設の視点だけではなく、既存のものの転換や削減の
必要性等を検討するという視点も必要である」(4 ページ)
○都道府県アンケート結果(34 県回答)
十分であった(89%) 不十分であった(9%) 無回答(3%)
〔自由記載欄から〕
・
「ビジョンや医療計画の策定、施行は、必ずしも都道府県に十分な人員、予算、時間が確
保された中で行われるものではないことを前提に、いかにして実効性のある計画を効率
的に作り上げていくか、またその後の評価・分析をいかに実効的に行うかという視点を
持って、ガイドラインを作ってほしい」
(再掲)
・
「関係者の協議を円滑に進めるためにも、事前の調整が重要である」
○RH-PAC 内の意見から
・
「庁内の関係部局が一致連携して取り組む」
(「医療計画策定基本ガイドライン」の章参照)
・
「県庁内の縦割りがとりまとめを難しくしている」
・
「審議過程の意見にあった施策のうち、どの施策がどんな理由で採用されたのか(不採用
になったのか)
、説明が不十分」
・
「優先すべき項目に絞り込む段階をつくってはどうか」
・
「だれが何をするかを明確にする」
・
「やることになった施策が実際にされているかの監査が必要」
□3 課題の整理
・厚生労働省は地域医療計画課を設置した。都道府県においても、地域医療計画に関する
とりまとめを、リーダーシップをもって行う組織や責任者が必要。
・地域医療計画のとりまとめのために必要な人材と予算を確保する必要がある。
・医療計画策定のプロセスを経たうえで、とりまとめることが重要である。
・多様な意見を集約したうえで、有効性・優先性などの点を確保しつつ、実効性の高い計
画に仕上げることが重要である。
・基金も活用し、予算面の担保をすることが重要である。
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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン(暫定版)
【医療計画策定プロセスガイドライン】
□4 推奨施策
○推奨施策 10 「地域医療計画課(とりまとめ責任者)の設置」
・都道府県において、庁内の関係部局が一致連携して取り組める体制を整備する。地域医
療計画課の設置やとりまとめ責任者の明確化とそのための予算化などを含めて検討する。
地域医療計画に携わる行政担当者は、推奨施策 1-1 の「地域医療計画策定人材養成講座」
を受講し、推奨施策 1-3「地域医療計画サミット」に参加する。
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