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平成23年度水素ネットワーク 構築導管保安技術調査

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平成23年度水素ネットワーク 構築導管保安技術調査
平成23年度経済産業省委託事業
平成23年度水素ネットワーク
構築導管保安技術調査
「水素導管圧力解析調査」
調
査
報
告
書
平成24年3月
三井化学産資株式会社
Ⅰ調査の概要
1.背景と目的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2.調査体制
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
3.調査内容
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
3.1
圧力損失解析式の導出過程及び暫定実用式導出に向けた要因選定
・・・・・・
4
3.2
圧力損失測定試験の試験装置の検討及び測定における事前調査
・・・・・・・
4
3.3
圧力損失測定試験の試験設備稼働方法の検討
・・・・・・・・・・・・・・・
4
3.4
圧力損失測定試験結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
3.5
水素暫定実用式の導出
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
Ⅱ圧力損失解析式の事前調査及び暫定実用式導出に向けた要因選定
1.圧力損失解析式の事前調査
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
1.1
Darcy-Weisbach の式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
1.2
JGA本支管指針の式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
1.3
その他の圧力損失要因式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
1.3.1
螺旋管における圧力損失式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.3.2
継手(エルボ)における圧力損失式
9
・・・・・・・・・・・・・・・・
9
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
2.暫定実用式導出に向けた要因選定
2.1
平成19年度調査結果
2.2
圧力損失における関連要因の選定
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
― i―
12
Ⅲ圧力損失測定試験の試験装置の検討及び測定における事前調査
1.試験設備の仕様
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.2
試験設備設計思想
1.3
配管図
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
2.測定における事前調査
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.1
マノメータによる差圧測定の妥当性確認
2.2
系内の気体濃度管理
2.3
各管種での口径測定結果
2.4
各管種での表面粗度測定結果
2.5
試験温度の許容範囲調査
2.6
本試験で想定される圧力損失の算出
3.試験条件
13
19
・・・・・・・・・・・・・・・・・
19
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
19
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
28
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
30
Ⅳ圧力損失測定試験の試験設備稼働方法の検討
1.各気体におけるライン全体のパージ方法及びシール方法
・・・・・・・・・・・・・
31
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
31
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
34
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
37
1.1
N2パージ及びN2シール
1.2
H2置換及びH2シール
2.圧力損失試験方法
2.1
試験設備運転方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
37
2.2
測定方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
37
3.異常時の対応及び不在時の維持管理
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
39
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
39
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
39
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
39
3.1
ボンベハウス内の水素漏洩
3.2
屋外ライン中の水素漏洩
3.3
ブロワの作動異常
3.4
不在時における維持管理
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
― ii―
39
Ⅴ圧力損失測定試験結果
1.各種気体におけるポリエチレン管の圧力損失測定
・・・・・・・・・・・・・・・・
1.1
各種気体におけるポリエチレン管の圧力損失調査
1.2
調査結果
1.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
・・・・・・・・・・・・・
40
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
41
2.延長による圧力損失への影響調査
・・・・・・・・・・・
43
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
46
2.1
各種延長におけるポリエチレン管の水素圧力損失調査
2.2
調査結果
2.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
・・・・・・・・・・・
48
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
47
・・・・・・・・・・・
49
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
51
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
51
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
52
3.表面粗度による圧力損失への影響調査
3.1
鋼管の水素圧力損失調査
3.2
調査結果
3.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
4.口径の圧力損失への影響調査
・・・・・・・・・・・
55
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
4.1
小口径管の水素圧力損失調査
4.2
調査結果
4.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
58
5.コイル管による圧力損失への影響調査
・・・・・・・・・・・
59
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
61
5.1
螺旋状ポリエチレン管の水素圧力損失調査
5.2
調査結果
5.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
・・・・・・・・・・・・・・・・
61
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
62
6.継手(エルボ)による圧力損失への影響調査
・・・・・・・・・・・
63
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
65
6.1
継手を介したポリエチレン管の水素圧力損失調査
6.2
調査結果
6.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
7.調査結果まとめ
40
・・・・・・・・・・・・・
65
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
66
・・・・・・・・・・・
68
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
75
― iii―
Ⅵ水素暫定実用式の導出
1.水素暫定実用式の導出
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.1
暫定式導出に向けた課題と方策
1.2
暫定実用式の提示
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
76
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
76
1.2.1
想定される水素使用設計条件下での実測値と既存理論式との比較
1.2.2
1.2.3
Ⅶ総括
参考文献
76
・・・
76
暫定実用式の提示と既存理論式との比較(Kh値固定)
・・・・・・・
78
暫定実用式の提示と既存理論式との比較(Kh値変動)
・・・・・・・
80
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
83
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
84
― iv―
Ⅰ.調査の概要
1.背景と目的
平成21年7月の総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会において「低炭素社会における
ガス事業のあり方」についての提言がなされ、「省CO2を図りつつ安定的なエネルギーの供給を確
保する為には(中略)二次エネルギーとして将来的に水素を活用することが重要」であり、「水素ス
テーションを起点に水素パイプラインを通じて水素を供給できるようなネットワーク(ローカル水素
ネットワーク)を構築していくことが重要な課題」と提起されている。
しかしながら、水素のパイプライン供給に関しては、水素に特有の挙動特性等の基礎的な技術調査
や、系統的な技術検討がこれまでなされておらず、実用化に至っていない。
そこで、一般需要家向けの水素パイプライン供給に際して、保安技術確保のために必要となる導管
等のガス工作物について、そのネットワークとしての運用に係わる安全基準や工法等の具体的処置を
明確化するため、これに有用な基盤技術、知見を整理し、ガス事業法の技術基準等の見直しに反映さ
せることで、水素ネットワーク社会構築における保安確保を図ることを本調査の目的とする。
2.調査体制
経済産業省では平成23年度より水素ネットワーク構築導管保安技術調査事業を開始し、初年度に
あたる今回は調査事業全体が4事業に分割され、一般競争入札が実施された。
三井化学産資㈱ではそのうち「水素導管圧力解析調査」の調査事業を受託した。本調査にあたって
は、「委員会の運営等」の調査事業を受託した一般社団法人日本ガス協会により運営される以下の委
員会、ワーキンググループにて協議することで効率的な事業推進を行う。
(1)特別専門委員会
(2)推進ワーキンググループ
(3)事業連携会議
(一般社団法人日本ガス協会、ガス事業者との個別検討会議)
図2.1に調査実施体制(全体関連図)、図2.2に調査実施体制(三井化学産資㈱)を示す。ま
た、表2.1に委員会等の名簿を示す。
― 1―
経済産業省
原子力安全・保安院
ガス安全課
<水素ネットワーク構築導管保安技術調査>
「委員会の運営等」/一般社団法人日本ガス協会
運営
・委員会の設置、運営
・他調査の実施者に対する助言
・水素パイプラインの利用と保安に関する事例調査
委託
「水素漏えい・拡散挙動調査」/(独)産業技術総合研究所
・水素の漏えい挙動、拡散挙動、着火影響、静電気着火に
係る調査の実施
特別専門委員会
審議
事業説明等
「付臭剤添加による金属系材料の水素脆化影響調査」
/日鉄パイプライン㈱
・付臭剤を添加した水素が金属系配管材料に及ぼす影響を
調査するための試験方法を計画
・水素混入天然ガスの適用可能性検討
「施工方法の安全性評価調査」/日立金属㈱
・PE 管融着作業時の安全性評価(温度)調査
・鋼管孔作業時の安全性評価(温度)調査
「水素導管圧力解析調査」/三井化学産資㈱
・水素パイプラインにおける圧力損失測定調査
・水素暫定圧力式の算出
図2.1
調査実施体制(全体関連図)
― 2―
推進ワーキンググループ
管材事業部
事業部長
美濃田 武
実働部隊
本社
管材事業部
ガスパイプ部
部長 福留俊明
管材事業部
ガスパイプ部
担当部長 横峰勝重
大竹事業所
大竹事業所
管材開発部
部長 田中宏明
事業所長 田中泰夫
大竹事業所
管材開発部
担当 岩崎雅也
大竹
事業所
大竹事業所
管材開発部
担当 塩野井真
(A)管材事業部 ガスパイプ部(1人)
・経済産業省および運営担当事業者との窓口、折衝業務
・本調査事業の統括業務
(B)大竹事業所 管材開発部(3人)
・本調査事業計画の立案および実施
・本調査事業の進捗管理
・評価結果の解析
・技術文献調査
・工場関係各所との折衝・調整
・経済産業省および運営担当事業者への経過報告
図2.2
表2.1
委員長
岡崎
委
吉川 暢宏
員
健
三井化学産資㈱の事業調査体制
水素ネットワーク構築導管保安技術調査特別専門委員会名簿
東京工業大学大学院 理工学研究科
教授
東京大学 生産技術研究所 革新的シュミレーション研究センター教授
粟飯原 周二 東京大学 工学系研究科 システム創成学専攻教授
西村 寛之
京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 先端ファイブロ科学部門教授
長もちの科学研究センター長
井上 雅弘
九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門
水素エネルギー国際研究センター准教授
関係者
事務局
長谷 耕志
東京ガス株式会社 技術開発本部 基盤技術部長
藤井 貴
大阪ガス株式会社 理事 エンジニアリング部長
杉
経済産業省 原子力安全・保安院 ガス安全課 基準班長
司
篠原 秀和
経済産業省 原子力安全・保安院 ガス安全課 基準班
浅野 由香
経済産業省 原子力安全・保安院 ガス安全課 ガス安全専門職
一般社団法人
ガス工作物係長
日本ガス協会 技術開発部 燃料電池・水素グループ
― 3―
3.調査内容
都市ガス事業における導管材料としては、鋼管、ダクタイル鋳鉄管、ポリエチレン管等が主とし
て用いられており、それぞれの材質に水素が及ぼす影響調査は、別途調査事業にて行われていると
ころである。三井化学産資においても、ポリエチレン管についての調査を平成19年度地方都市ガ
ス事業天然ガス化促進対策調査「水素供給システム安全性技術調査(樹脂系材料の仕様検討)」に
て実施し、性能への影響がないことを確認している。
上記の調査結果より、水素パイプライン供給に対しては、現状の都市ガス用圧力解析式(“JG
A本支管指針の式”、“Darcy-Weisbach の式”
)をそのままでは適用出来ないと結論付けているが、
水素ネットワークの効率的な導管網形成が実現できるように、水素パイプライン供給に適合した水
素の圧力解析式を導き出すための調査を実施した。
本年度は平成19年度の調査結果を受け、下記の5項目を調査した。
3.1 圧力損失解析式の事前調査及び暫定実用式導出に向けた要因選定
本項目は、既存の圧力損失解析式や今回の測定で検討が必要な圧力損失要因式を洗い出し、暫定
実用式導出に必要な測定パラメータについて抽出し、導出の為の解析手段について調査した。
3.2 圧力損失測定試験の試験装置の検討及び測定における事前調査
本項目は、圧力損失を測定する為の敷地や試験装置の設計思想について検証し、その測定装置か
ら想定される様々な測定誤差要因について調査した。
3.3 圧力損失測定試験の試験設備稼働方法の検討
本項目は、圧力損失測定試験にて実際に水素を取り扱う為、爆発混合気による着火等の災害・危
険性に対して細心の注意を払う必要があり、事前にあらゆる危険源を特定し、水素による着火事故
等を未然に防止する為の作業方法について調査した。
3.4 圧力損失測定試験結果
本項目は、水素配管時に重要となる圧力損失について、様々な条件下での水素圧力損失を確認し、
更に Darcy-Weisbach の式やその他の圧力損失要因式を用いた圧力損失計算結果と、様々な条件下
での水素圧力損失実測値と比較し、計算による水素圧力損失の妥当性について調査した。
3.5 水素暫定実用式の導出
本項目は、3.4で取得した圧力損失測定結果を基に、水素のパイプラインに適用可能な暫定圧
力式導出の為の課題と方策を挙げ、暫定実用式の導出及び適用可否について調査した。
― 4―
Ⅱ.圧力損失解析式の事前調査及び暫定実用式導出に向けた要因選定
1.圧力損失解析式の事前調査
暫定実用式導出に当り、試験結果の妥当性を確認する為の理論的に圧力損失理論値の算出可能な式
を使用する必要がある。今回は、圧力損失を導出する為の理論式の種類や都市ガス設計における従来
技術について調査を実施した。
1.1 Darcy-Weisbach の式
上記でも述べた通り、一般的な圧力解析式である Darcy-Weisbach の式は、
(1)式のように定義
される。
P  
ρ  L
2D
2
V
-(1)
ΔP(H)
:起点圧力と終点圧力の差(圧力損失)
[Pa]
V:ガス流速[m/s]
ρ:ガス密度[kg/m3]
D:内径[m]
λ:管摩擦係数[-]
L:本支管延長
[m]
ここで、管摩擦係数:λは、レイノルズ数:Re及び相対粗さ:ε/Dに関係するが、層流と乱
流とでは全く異なった値を示す。
層流の場合の流体摩擦は、円管内の流れはポワズイユ流れとして取り扱うことが出来、レイノル
ズ数:Reを(2)式と定義することで、管摩擦係数:λは(3)式のようになる。なお、νは動
粘性率[m2/s]を示す。
Re 
V D
V D

ν
μρ
λ
64
Re
-(2)
-(3)
乱流の場合の流体摩擦は、主として乱れ速度に基づく運動量の交換であって、慣性力の影響が大
きい為、管摩擦係数:λはレイノルズ数:Reのみならず、管壁の粗さの影響を受ける。このとき
の管摩擦係数:λは(4)式のようになる。なお、(4)式はコールブルック(Cole-brook)の式
と呼ばれている。
― 5―
1
2.51 
εD
 -2  log


λ
3.71 Re λ
-(4)
また、レイノルズ数:Reと相対粗さ:ε/Dから管摩擦係数:λを求める方法として、図1.
1に示すムーディ線図(Moody diagram)を用いることとした。
図1.1
ムーディ線図
― 6―
1.2 JGA本支管指針の式
一般社団法人日本ガス協会編「本支管指針(設計編)
」(JGA試-201-02)に、低圧本支
管の供給能力の算定として、(5)式で規定されている。なお、前記の参考資料には内径をセンチ
メートルで表記されている為、センチメートル単位での内径(Dc)として記載する。
1000 H  D c
S Lg
Q  K
5
-(5)
(5)式から圧力損失H(=ΔP)を求める式に変換すると、
(6)式のようになる。
P 
Q
S L  g
5
K 2 Dc
2
-(6)
ΔP(H)
:起点圧力と終点圧力の差(圧力損失)
[Pa]
Q:ガス流量[m3/hr]
S:ガス比重[-/- Air]
Dc:内径[cm]
K:流量係数[-]
L:本支管延長[m]
g:重力加速度[9.8m/sec2]
また、流量係数:Kはポールの定数、米花の係数がある(表1.2)。今回調査に用いる、口径
25Aの係数は規定されていないが、50A,75A,100Aの数値から定数を外挿して求めて
用いることとした(図1.2)
。
表1.2
係数K
内径
(mm)
D
50
80
100
150
200
300
低圧時の流量係数
米花
ポール
ポール
(定数) (内径ごとの定数)
K=0.837(1+4.35/D)-1/2
鋼管
PE管
鋼管
PE管 鋼管
PE管
PE管
鋳鉄管
(1号U
鋳鉄管 (1号管) 鋳鉄管 (1号管)
(2号管)
PE管
管)
(0.707) 0.632
0.623
0.612
0.607
-
-
(0.707) 0.685
0.668
0.674
0.660
-
-
0.707
0.699
0.690
0.694
0.698
0.707
0.737
0.727
0.730
0.734
(0.707)
0.759
0.749
0.752
0.755
(0.707)
0.782
-
-
-
― 7―
ポールの定数(PE1号管)
0.8
外挿値
文献値
0.7
0.6
0.5
25A
0.4
0
20
40
60
80
100
パイプ内径(mm)
図1.2
25Aでの流量係数の算出
様々な文献で Darcy-Weisbach の式が一般的に取り上げられているが、実際の導管設計において上
式に含まれる管摩擦係数λや流速Vを都度導出する必要がある。一方、一般社団法人日本ガス協会で
は、上記の方策では計算手順が煩雑になることを考慮し、Darcy-Weisbach の式から流量Qや流量係
数K等の導管設計に置き換えた式を規定したものと推測する。以上から、目的に応じて様々な式の形
態が存在するが、本質的には同じ原理に基づいたものであることが言える。
― 8―
1.3 その他の圧力損失解析式の事前調査
1.3.1
螺旋管における圧力損失式
後述でも紹介するが、平成19年度の調査では圧力損失の実測値と、JGA本支管指針の式と
は傾向が一致しないことを報告している。その中で、実測値と理論値との乖離の要因として想定
されるのは、その際に使用した試験体が螺旋状であったことである。直線状と螺旋状とで、圧力
損失導出に大きく影響する管摩擦係数が異なるからである。
乱流域での螺旋管の管摩擦係数:λcは、実験から(7)式のように表すことが出来る。
R
λc  
a 
1 2
  a 2 
 0 . 029  0 . 304   Re   
 R 


1 4
-(7)
但し、適用範囲: 0.034  Re a R   300
2
参考文献:
「機械工学便覧 基礎編 A5 流体工学」日本機械学会
λc:螺旋管の管摩擦係数[-]
a:管の半径[m]
R:管中心軸の曲率半径[m]
今回、水素における試験流量範囲は20~200Nm3/hであり、そこからレイノルズ数を
算出し、試験に用いた螺旋管(呼び径:25A、50A)の管半径及び曲率半径を適用範囲に代
入すると、この試験流量範囲においては適用可能であることを確認した。螺旋管での実測値と理
論値との比較に当たっては、(7)式を適用する。
1.3.2
継手(エルボ)における圧力損失式
一般的に折返し(ベンド)による圧力損失は、(8)式のように管摩擦係数と曲がりによる圧
力損失の和で表すことが出来る。
(ζλ l / D) ρ V 2
P 
2
-(8)
参考文献:
「水力学-流れ現象の基礎と構造」実教出版
「機械工学便覧 基礎編 A5 流体工学」日本機械学会
ΔP(H)
:起点圧力と終点圧力の差(圧力損失)
[Pa]
V:ガス流速[m/s]
ρ:ガス密度[kg/m3]
D:内径[m]
λ:管摩擦係数[-]
ζ:方向転換による損失係数[-]
l
:曲がりの中心線に沿う長さ[m]
― 9―
2.暫定実用式導出に向けた要因選定
平成19年度は、空気、都市ガスおよび水素と分子量が近い擬似水素ガスとしてヘリウムガスを用
いて圧力損失を実測し、得られた実測値と各種設計式、計算式による算出結果とを比較し、計算式の
適用性について調査した。
上記の調査結果から、水素パイプライン供給に対しては、現状の都市ガス用圧力解析式(“JGA
本支管指針の式”、
“Darcy-Weisbach の式”)をそのままでは適用出来ないと結論付けているが、ヘリ
ウムガスを使用し、かつ、非常に小さな流量でしか圧力損失を確認しておらず、実際に水素の使用が
想定される低~中流量域(~200Nm3/h)でのポリエチレン管に対する圧力損失への影響につ
いて詳細な調査がなされていない。
その為、平成23年度は、平成19年度とは異なり、実際に水素を使用した圧力損失の測定調査を
実施した。
2.1 平成19年度調査結果
平成19年度の調査として、水素配管時に重要となる圧力損失について、一般社団法人日本ガス協
会編「本支管指針(設計編)」の低圧本支管の供給能力算定式および、一般社団法人配管技術協会編
「圧力損失ver.3.0」の Darcy-Weisbach の式を用いた圧力損失計算結果と、空気、都市ガス
および水素擬似ガスとしてヘリウムガスを使用しての圧力損失実測値と比較し、計算による水素圧力
損失の妥当性を調査した。
(1)図2.1に示した通り、空気および都市ガスの場合、圧力損失の実測と、Darcy-Weisbach
の式とは非常に良く一致している事が確認できた。
(2)ヘリウムガスの場合、5Nm3/hr以下の低流域では実測値と Darcy-Weisbach の式とは比
較的近いことが確認できた。しかし、5Nm3/hrを超えた流域では実測と計算結果は乖
離が徐々に大きくなった。
上記を纏めると、以下の通りである。
(1)都市ガスとヘリウムガスの圧力損失実測の結果、流量が5Nm3/hr以下では両者はほぼ
同等の圧力損失であり、それ以上の流量域ではヘリウムガスの圧力損失は都市ガスの約
60%程度であった。
(2)空気、都市ガスの実測値は、一般社団法人日本ガス協会編「本支管指針(設計編)」計算式
および Darcy-Weisbach の式ともに良く一致した。しかしヘリウムガスの場合は両式と実測
は一致しなかった。その為、今後、低比重ガスを使用した場合には、正確な供給設計式を確
立する為更なる調査が必要である。
― 10―
10
圧力損失 (kPa)
1
【空気】
0.1
0.01
測定値
JGA本支管指針(設計編)
Darcy-Weisbachの式
0.001
1
10
100
3
試験流量 (Nm /hr)
10
圧力損失 (kPa)
1
【都市ガス(13A)】
0.1
0.01
測定値
JGA本支管指針(設計編)
Darcy-Weisbachの式
0.001
1
10
100
3
試験流量 (Nm /hr)
10
圧力損失 (kPa)
1
【ヘリウムガス】
0.1
0.01
測定値
JGA本支管指針(設計編)
Darcy-Weisbachの式
0.001
1
10
100
3
試験流量 (Nm /hr)
図2.1
各種ガスによる圧力損失計算結果と実測値比較(25Aパイプ、40m長)
― 11―
2.2 圧力損失における関連要因の選定
1.事前調査にて示した結果より、圧力損失に寄与する計算要因、即ち圧力損失に影響を及ぼす
要素として、下表2.1が起因するものと仮定し、調査を実施した。
表2.1
圧力損失試験での確認項目
計算要素
パラメータ
条件
流体の種類(比重、粘度)
水素、ヘリウム、空気
管種(表面粗度、管摩擦係数)
PE管、鋼管(SGP)
管の圧損特性
口径
25A、50A
温度
常温(配管水没等を行い温度影響を可能な限り低減)
配管長さ
25m、70m
導管設計
継手(エルボ)
2つ曲がり、4つ曲がり
― 12―
Ⅲ.圧力損失測定試験の試験装置の検討及び測定における事前調査
1.試験設備の仕様
今回、製作及び使用した試験設備について以下に示す。
1.1
試験設備設計思想
圧力損失測定時の圧力、温度及び流量の安定化を図り、かつ、任意に値を調整することを目的
とし、前項の確認項目を満足させるべく、次項に示すような圧送設備を設計・製作した。
測定にあたり、開放系での流れの場合、200Nm3/hで各気体を流す為には大量の気体を
必要とすることから、循環系での流れで測定を行えるような設備を設計した。具体的な流量調整
は、ブロワからバッファタンク間で流れる流量のバランスを、タンク出側の流量調節弁により試
験体に流れる流量を調整し、任意の流量での圧力損失を測定するものである。
試験体(ポリエチレン管)についても試験装置と合わせて折返しを有する形状での接続とし、
直線での長さは、想定試験流量内で、圧力損失が確認出来、必要最小限の実施可能な延長(40
m、測定有効延長として35m)で設定した。
装置類は屋外に設置し、場合により雤滴からの養生をテント等により行う。また、水素、ヘリ
ウム、窒素のボンベはボンベハウスに入れて管理を行いボンベハウス上部に水素検知器を配置す
るものとする。加えて、検知器動作時には、緊急遮断弁にて水素を遮断する等の機能(安全対
策)を有することで、十分安全に配慮した各種検証が可能である。
ルーツ
ブロワ
バッファ
タンク
試験体(PE管)
ボンベ
ハウス
40m(測定有効延長35m)
図1.1-1
機器概略図
また、試験設備工事完工後の様子を以下に示した。
図1.1-2
試験設備全景
― 13―
図1.1-3
図1.1-4
試験設備ブロワ・バッファタンク部
試験設備ボンベハウス内部
なお、試験体は塩ビ管(呼び径として300A)を加工して製作した簡易水槽内に水没させるこ
とで気体温度の安定化を図るものとする。水没させた際に、ポリエチレン管が浮力により浮き上が
る為、固定冶具を別途製作し、冷却能力を高めることを期待する。
― 14―
図1.1-5
試験設備簡易水槽部(水没時)
図1.1-6
固定冶具拡大
― 15―
1.2
配管図
圧力損失測定試験を実施するにあたり、下図の試験配管で設計を実施した。
図1.2-1
配管・計装図
― 16―
図1.2-2
― 17―
配管図
表1.2
機器名
基数 防爆
主要機器リスト
形式
能力
仕様
メーカー
3相 200V
22kW
ルーツブロワー
4Nm3/min(240Nm3/h)
0.03MPaG
㈱四葉機械製作所
レンジ:0~200Nm3/h(水素)
0~300Nm3/h(空気)
測定誤差:±1~2%
日本エマソン㈱
レンジ:0~2kPa
0~20kPa
測定誤差:±1%(2kPa)
±0.5%(20kPa)
長野計器㈱
ブロワー
1 d2G4
オリフィス流量計
1 d2G4
差圧計
1 d2G4
ガバナー
1-
バッファタンク
1-
第二種圧力容器
安全弁(タンク付)
1-
コンペンショナル型
テストプラグ付
フレームアレスタ
1-
50A
水素検知器
1 d3aG4
空気中濃度0.5%(5000ppm)で検知
圧力計
5-
レンジ:max 0.4MPaG
面積式流量計
1-
テーパガラス管
0~50L/min(運転 26L/min) 20℃
下流側ニードル弁付き
流体工業㈱
温度計
3-
直結型
サーモウェル付
JIS10K:25A
レンジ:0~100℃
バイメタル・φ 125
㈱佐藤計量器製作所
緊急遮断弁
1 d3aG4
エア駆動弁
FAIL CLOSE
電源喪失時クローズ
駆動ガスは、
N2ボンベより供給
KTM
フレキシブルホース
8-
1m
SUS316L
関西フレックス工業㈱
φ 100
一次側:30kPaG
二次側:10~30kPaG
φ 1200×1000H SS400(1.58m3)
伊藤工機㈱
DP:0.5MPaG
DT:100℃
中条鉄工㈱
㈱ミハナ製作所
SUS304
金子産業㈱
― 18―
パトライト(屋外)アラーム
新コスモス電機㈱
長野計器㈱
2.測定における事前調査
今回の圧力損失測定を行うに当り、各パラメータの妥当性及びその影響の度合いを把握しておく必
要がある。そこで、様々な測定パラメータについて事前に調査を行うことで、より精度の高い測定が
可能となる。以下には、その方策を示す。
2.1
マノメータによる差圧測定の妥当性確認
表2.1-1
流量計
(参考)
4.25
6.29
7.66
9.43
11.49
14.01
差圧計
2kPaレンジ
0.12
0.15
0.24
0.35
0.46
0.69
1.23
1.74
-
差圧計の妥当性確認
マノメーター
計測器差 誤差(FS比較)
20kPaレンジ 差圧[kPa]
0.13
0.01
0.5%
0.16
0.01
0.5%
0.26
0.02
1.0%
0.37
0.02
1.0%
0.47
0.01
0.5%
0.69
0.00
0.0%
1.24
0.01
0.5%
1.73
-0.01
-0.5%
2.3
2.44
0.14
0.7%
3.2
3.30
0.10
0.5%
4.2
4.29
0.09
0.4%
5.5
5.61
0.11
0.5%
差圧計による差圧指示とマノメータによる差圧指示との比較により、各差圧測定値でのフルス
ケールとしての測定誤差の割合を算出した。2kPaレンジの差圧計の測定保証範囲は±1%、2
0kPaレンジの差圧計の測定保証範囲は±0.5%である為、いずれの差圧計も概ね測定保証範
囲内での測定が可能であることが確認出来た。
2.2
系内の気体濃度管理
本試験では試験気体で試験装置内をパージすることにより、系内の入替を実施する。その際、
水素は空気に比べて密度が小さい為、水素中に窒素が残存している場合、僅かな割合で残存してい
ても混合気の密度は大きく変化し圧力損失にも影響することが想定される。そこで、水素中に含ま
れる窒素の割合とそれによる密度変化、及び Darcy-Weisbach 式による混合気の密度毎の圧力損失
の関係を試算し、その結果を下図に示す。
― 19―
0.18
0.16
推定密度(kg/m3)
※残部を窒素とする
0.14
0.12
0.10
0.08
0.06
0.04
0.02
0.00
100
99
98
図2.2-1
97
96
95
水素濃度(%)
94
93
92
水素濃度による密度変化
圧力損失(kPa)
10
1
100%
99%
98%
97%
96%
95%
94%
93%
92%
0.1
0.01
10
図2.2-2
100
流量(Nm3/h)
1000
混合気の密度毎の圧力損失変化(PE管使用、70m延長、水素使用条件)
上記の試算結果から、系内の水素中に窒素濃度が10%程度含有していれば、圧力損失は純水素
と比較して約2倍大きくなる傾向にあることが確認出来た。
このことから、純水素としての測定精度を上げる為に、測定前後はガスサンプルを採取し、ガス
クロマトグラフィーにて気体濃度が99%以上であることを確認し、密度の違いによる圧力損失へ
― 20―
の影響は極力出ないように配慮した。系内の気体を窒素から水素に切り替えて、水素の圧力損失試
験の開始と終了までの各気体濃度測定結果の一例を下図に示す。
0.25
100.0
99.93
0.22
99.8
99.78
0.15
0.14
0.10
99.6
99.4
H2濃度[%]
N2濃度[%]
0.20
99.86
0.07
0.05
99.2
N2
H2
0.00
99.0
39
51(試験開始前)
パージ所要時間[min]
図2.2-3
試験終了後
各気体濃度測定結果
本事業での実験装置では、窒素から水素に系内中の気体を切替るのに50分程度所要することで
99.9%の水素濃度を得ることが出来た。また、試験前後の水素濃度についても、測定上問題無
い程度の変化であることを確認した。
― 21―
2.3
各管種での口径測定結果
管口径は圧力損失に関わるパラメータ(レイノルズ数:Re、管摩擦係数:λ等)の要因となっ
ている。圧力損失実測値との比較に当り、圧力損失計算の精度を高める為に、公称値のみではなく
管種の各口径の実測値にて圧力損失を算出した。各管種の口径別測定結果を下表に示す。
表2.3
測定値[mm]
口径 規格中心値
(呼び)
[mm]
管種
PE管
SGM管
2.4
各管種口径別測定結果一覧
1
2
3
4
Ave.
16A
15.6
15.41
15.44
15.66
15.42 15.48
25A
26.6
25.92
25.87
25.81
25.96 25.89
50A
48.2
47.80
47.80
47.86
48.04 47.88
50A
52.9
53.32
53.32
53.27
52.99 53.23
各管種での表面粗度測定精査
コールブルックの式やムーディ線図から、表面粗度によって管摩擦係数は変化し、管摩擦係数の影
響により圧力損失に影響するものと推測する。一般的に、ポリエチレン管の表面粗度は「合成樹脂管
の十分平滑なもの」である”1.62[μm]”を、鋼管の表面粗度は「市販鋼管」である”50
[μm]”として取り扱われているが、文献値から実際に使用した各管種の表面粗度を測定した実測
値に変更した。表面粗度の測定は、2-3cm程度の管を半割りにしたものをそれぞれ3箇所ずつで
測定を実施した。各管種の表面粗度測定結果を下表及び下図に示す。
表2.4
管種
口径 文献値
(呼び) [μ m]
各管種表面粗度測定結果一覧
測定値[μ m]
1
2
3
4
5
6
Ave.
PE管
16A
1.62
2.0527
1.933
2.1282
2.0855
2.2781
2.1773
2.1091
SGM管
50A
50
7.2634
10.2463
11.7545
12.2943
10.1587
10.3228
10.340
― 22―
図2.4-1
ポリエチレン管表面粗度測定結果(1/2)
― 23―
図2.4-2
ポリエチレン管表面粗度測定結果(2/2)
― 24―
図2.4-3
鋼管表面粗度測定結果(1/2)
― 25―
図2.4-4
鋼管表面粗度測定結果(2/2)
― 26―
2.5
試験温度の許容範囲調査
圧力損失測定の際は、ブロワを稼動し続ける為、測定時間が長い程ブロワの稼動熱と気体の系
内循環により、試験気体の温度が高くなることが想定される。そこで、熱膨張による配管及び内径
の変化に対する圧力損失への影響について試算した。
三井化学産資㈱独自の測定結果により、ポリエチレンの熱膨張係数は0.000183(1℃に
つき)であることが判明している。また、一般的に熱膨張量は、配管について(9)式、内径につ
いて(10)式で求めることが出来る。
 L  α(
 t 2  t1) L
-(9)
D  α(
 t 2  t1) D
-(10)
参考文献:
「熱による鋼管の膨張と荷重」住友金属工業㈱ホームページ
ΔL(ΔD):熱膨張量[mm]
L:膨張前の配管長さ[m]
D:膨張前の内径[mm]
α:熱膨張係数
[-]
t1:変化前の温度
[℃]
t2:変化後の温度
[℃]
(9)式、(10)式を使用して、ポリエチレン管使用、70m延長、水素使用下の条件におい
て試験前温度が20℃で任意の試験終了後の温度での配管及び内径変化、それに伴う圧力損失の試
算結果を以下に示す。
表2.5
熱膨張による配管及び内径の変化一覧(PE管、70m延長、水素使用下条件)
初期温度[℃] 終了温度[℃] 配管の伸び[mm]
配管延長[m]
内径の伸び[mm]
配管内径[mm]
20
20
0
70.00
0
47.90
20
25
63
70.06
0.04311
47.94
20
50
378
70.38
0.25866
48.16
― 27―
10
圧力損失(kPa)
1
0.1
H2理論値(DW式使用、遷移域≒乱流域、20℃(70m))
H2理論値(DW式使用、遷移域≒乱流域、25℃(70.063m))
H2理論値(DW式使用、遷移域≒乱流域、50℃(70.378m))
0.01
10
100
流量(Nm3/h)
図2.5
1000
熱膨張による圧力損失への影響(PE管、70m延長、水素使用下条件)
上図より、試験中にたとえ温度が20℃から50℃まで温度が上昇していても、配管延長の膨張
による圧力損失増加と、配管内径の膨張による圧力損失減尐の両方が影響している為、圧力損失は
殆ど影響しないことが確認出来た。
この結果より、試験中における多尐の温度変化は無視して問題無いものと判断する。
2.6
本試験で想定される圧力損失の算出
2.3から2.5にて検証した圧力損失要因のパラメータを用いることで、より精度の高い理論
値の算出が期待出来る。従来の Darcy-Weisbach の式での算出理論値と継手(エルボ)2個分の圧
力損失も含めた測定パラメータ精査後の算出結果の比較を行った。その一例として、ポリエチレン
管使用、25m延長、水素使用下の条件での算出結果を下図に示す。なお、各理論値の算出に当り、
理論式で使用する各気体の物性値を下表に示す。
表2.6
水素
気体
温度
粘性率 μ
各気体の物性比較
[℃]
0
20
ヘリウム
23
0
20
窒素
0
20
[kg/m s] 8.35E-06 8.76E-06 8.82E-06 1.86E-05 1.96E-05 1.66E-05 1.72E-05
密度 ρ
[kg/m3]
0.08988
0.08412
0.08332
動粘性率 ν
[m2/s]
9.29E-05 1.04E-04 1.06E-04 1.04E-04 1.10E-04 1.33E-05 1.48E-05
ガス比重 S
[-/-Air] 6.95E-02 6.98E-02 6.97E-02 1.38E-01 1.48E-01 9.68E-01 9.65E-01
― 28―
0.1785
0.1663
1.251
1.163
圧力損失(kPa)
1.0
0.1
H2理論値(従来、遷移域=乱流域)
H2理論値(エルボの圧損による補正実施)
H2理論値(エルボの圧損、内径による補正
実施)
H2理論値(エルボの圧損、内径、表面粗度・
熱膨張係数による補正実施)
0.0
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図2.6
本試験で想定される圧力損失(PE管、25m延長、水素使用下条件)
本事業の測定において、最も影響が大きいものと考えられる圧力損失要因はエルボの圧損による
ものであり、他の測定パラメータは圧力損失に実際の使用に支障をきたすほど大きな影響を及ぼさ
ないことが確認出来た。この結果を基に、後述で紹介する試験測定値との比較を行った。
― 29―
3.試験条件
表1.2-2で示した圧力損失試験での確認項目について、全ての項目を確認すべく以下の試験
条件を策定した。得られた結果を都度確認した上で次の試験に挑む工程で計画を組んでいる為、年度
内に三期に分けて実施するものとした。
なお、第一期では19年度結果との比較や水素使用下の圧力損失測定の基礎データ採取、第二期で
は表面粗度や管形状(=生曲がり)の異なる試験条件での第一期結果との比較、第三期では継手によ
る圧力損失への影響の確認を主目的として試験を実施した。
表3.1
圧力損失測定条件一覧
試験
期間
試験
番号
管種
口径
(呼び)
長さ
(m)
管形状
エルボ
曲がり
第一期
(11月)
①
PE管
50A
70
直管
2曲がり
N2
He、H2との比較用
②
PE管
50A
70
直管
2曲がり
He
平成19年度結果との比較用
③
PE管
50A
20、40
70
直管
2曲がり
無し
H2
5kPaG下でも実施
①
SGM管
50A
70
直管
2曲がり
H2
表面粗度による圧損への影響把握
②
PE管
50A
70
コイル管
無し
H2
③
PE管
25A
70
コイル管
無し
H2
④
PE管
25A
70
直管
2曲がり
H2
⑤
PE管
16A
70
直管
2曲がり
H2
①
PE管
50A
25
直管
4曲がり
H2
曲がりの一辺:5m
②
PE管
50A
25
直管
4曲がり
H2
曲がりの一辺:0.5m
③
PE管
50A
25
直管
2曲がり
H2
4曲がりとの比較用
④
PE管
50A
25
直管
1曲がり
H2
2曲がりとの比較用
⑤
PE管
50A
25
直管
なし
H2
2曲がり、4曲がりとの比較用
⑥
PE管
50A
78.5
直管
6曲がり
H2
試験配管の都合により、延長は成行
⑦
PE管
50A
90
直管
10曲がり
H2
試験配管の都合により、延長は成行
第二期
(12月)
第三期
(1月)
※大気圧(0[PaG])
、常温の条件下にて測定を実施。
― 30―
気体
備考
小口径による圧損への影響把握
Ⅳ.圧力損失測定試験の試験設備稼働方法の検討
1.各気体におけるライン全体のパージ方法及びシール方法
今回の圧力損失測定試験では実際に水素を取り扱うに当たる為、爆発混合気による着火等の災害・
危険性に対して細心の注意を払って試験を行うべきである。また、装置駆動による騒音や振動等、試
験場所周辺への配慮も必要である。
事前にあらゆる危険源を特定し、試験者が安全に試験を実施出来るような作業手順を作成すること
により、水素による着火事故等を未然に防止することが可能となる。以下には、その作業方法の一部
を紹介した。
1.1 N2パージ及びN2シール
スタートアップの第1段階としてN2パージを実施する。また、H 2での試験後の配管施工前や、
試験終了時にも、N2パージを実施する。目的は①系のN 2置換による可燃性ガス、可燃性液体の着
火防止②支燃気体であるO2の除去である。管理目標値はO2濃度1%以下とする。
[N2パージ]
<事前準備>
(1)系内のバッファタンクテストエリア側の各バルブ(⑩、⑪、⑫、⑬)が開いている事、及びそ
れ以外の各バルブ(①~⑨、⑭~)が閉じている事を確認する。なお、計器類の各バルブは
常時開とする。
(a~p)
(2)ブロワの冷却水循環ポンプを起動させ、ポンプに付帯する流量計を見て冷却水をブロワに送液
可能であることを確認する。
<ボンベハウス内の残留ガスパージライン>
(3)ライン内をパージする際にパージ用の気体でバッファタンク内の圧力が過圧状態(0.45M
PaG以上)にならないよう、予めブロワ入側~フレームアレスタへの抜出しラインのバルブ
(⑭)を開ける。但し、バッファタンク上部の圧力計(バルブeに付帯する圧力計)で大気圧
(0PaG)未満である場合は、先に操作(4)を行った後に実施する。
(4)N2ボンベ出側の減圧弁の二次側の圧力計にて0PaGであることを確認し、N 2ボンべ元弁、
減圧弁出側の流量調整バルブ及びボンベに付帯したフレキシブルホースをラインに接続する側
のバルブ(①~④のいずれか1つ)を尐開する。このときに、N 2の一次側の圧力に注意する。
尐開後、減圧弁の二次側の圧力を減圧弁の圧力調整バルブにて0.3MPaGに調整し、
圧力計(c)の読み及び緊急遮断弁の開度を確認し、遮断弁を開にした後に圧力計のバルブ
(c)を閉にする。この操作は、緊急遮断弁駆動の為に、0.3MPaG加圧する必要がある
為に実施する。
(5)H2ボンベラインのバルブを開けて、フレキシブルホース接続口のバルブ(⑰~⑳)から1~
2秒間N2ブローし、残ガスをパージ後、同様のバルブを閉にする。また、ライン内からH 2
を追い出す際はバルブ⑰のみを使用する。この操作は、パージ操作にてH2がハウス内で一時
的に滞留し、緊急遮断弁の作動を防止する為に実施する。
(6)ボンベハウス出側(⑤)のバルブを開けて、屋外の設備エリアへN 2パージする。このときに、
フレームアレスタ付近の酸欠に注意し、それらの機器に顔を近付けないようにする。
― 31―
<残留ガスパージライン サイクル①>
(7)ブロワ出側(⑥)のバルブを開にする。また、サイクル③から移行する際は、ブロワと停止
させ、ブロワ入側~フレームアレスタへの抜出しラインのバルブ(⑭)を開、バッファタン
クバイパス側(⑦)及びブロワ入側のバルブ(⑮)を閉にする。その状態から、テストエリ
ア及び大気開放ラインを3分間パージする。また、3分間よりも多目パージする場合は10
分間とする。
<残留ガスパージライン サイクル②>
(8)サイクル①終了後、バッファタンクバイパス側(⑦)、ブロワ出側のバイパス弁及びブロワ
入側のバルブ(⑮)を開、ブロワ入側~フレームアレスタへの抜出しラインのバルブ(⑭)
を閉にする。その状態から、バイパスライン及びブロワ入側ラインで30秒間N 2循環させ
る。
<残留ガスパージライン サイクル③>
(9)サイクル②終了後、ブロワを起動し、テストエリア経由で30秒間N 2循環させる。以降、
パージを続ける際は、サイクル①の操作から再開する。このときに、N 2で循環させる際の
騒音に注意する。またこのサイクルを15回繰り返すと、所定濃度により近くなることが判
明した。
(第一期実施の結果から、所要時間60分)
<サンプリング>
(10)サイクル③終了後、ブロワ入側のサンプリングバルブ(⑯)からサンプリングし、O 2濃度
が所定濃度以下であることを確認する。
[N2シール]
(1)O2濃度を確認し、サイクル③終了後、ブロワを停止し、ブロワ入側~フレームアレスタへ
の抜出しラインのバルブ(⑭)を一時開にし、以下の順でバルブを閉め、N 2シールとする。
(⑭→①~④→⑤→⑥)
(2)長時間使用しない際はN2ボンベ元弁を閉じて、ボンベ出側の減圧弁の二次圧側を0PaG
に調整する。また、系内のバッファタンクテストエリア側の各バルブ(⑩、⑪、⑫、⑬)を
閉にする。
― 32―
図1.1-1
N2パージライン
サイクル①
図1.1-2
N2パージライン
サイクル②
― 33―
1.2 H2置換及びH2シール
試験ライン内をH2雰囲気にすべく、N2或いはHeからH2に試験気体の置換を実施する。目的は
①
H2の圧力損失試験では、H2雰囲気で実施②系のH2置換による他気体の混合防止である。管理
目標値はH2濃度99%以上とする。
[H2置換]
<事前準備>
(1)N2或いはHeシールの状態で、系内のバッファタンクテストエリア側の各バルブ(⑩、⑪、
⑫、⑬)が開いている事、及びそれ以外の各バルブ(①~⑨、⑭~)が閉じている事を確認す
る。この操作は、ライン内に空気が存在すると、H2が可燃性混合気となり得る為、必ずN 2
シール或いはHeシールを実施した後に実施する。なお、計器類の各バルブは常時開とする。
(a~p)
(2)ブロワの冷却水循環ポンプを起動させ、ポンプに付帯する流量計を見て冷却水をブロワに送液
可能であることを確認する。N2パージの操作と併せて実施の場合、この操作は割愛する。
<ボンベハウス内の残留ガスパージライン>
(3)バッファタンク上部の圧力計(バルブeに付帯する圧力計)で大気圧(0PaG)以上である
ことを確認し、ブロワ入側~フレームアレスタへの抜出しラインのバルブ(⑭)を開ける。大
気圧(0PaG)未満である場合は、先に操作(4)を行った後に実施する。
(4)N2ボンベ出側の減圧弁の二次側の圧力計にて0PaGであることを確認し、N 2ボンベ元弁、
減圧弁出側の流量調整
バルブ及びボンベに付帯したフレキシブルホースをラインに接続
する側のバルブ(①~④のいずれか1つ)を尐開する。このときに、N2の一次側の圧力に注
意する。尐開後、減圧弁の二次側の圧力を減圧弁の圧力調整バルブにて0.3MPaGに調整
し、圧力計(c)の読み及び緊急遮断弁の開度を確認し、遮断弁を開にした後に圧力計のバル
ブ(c)を閉にする。N2パージの操作と併せて実施の場合、この操作は割愛する。
(5)H2ボンベ出側の減圧弁の二次側の圧力計にて0PaGであることを確認し、H2ボンベ元
弁、減圧弁出側の流量調整バルブ及びボンベに付帯したフレキシブルホースをラインに接続す
る側のバルブ(⑰~⑳のいずれか1つ)を尐開する。このときに、H2の一次側の圧力に注意
する。尐開後、減圧弁の二次側の圧力を減圧弁の圧力調整バルブにて0.1MPaGに調整す
る。
(6)ボンベハウス出側のバルブを開けて、屋外の設備エリアへH 2置換する。また、バルブにてラ
インを開放する際は、都度リークテスタにて、各配管(鋼管、PE管)の繋ぎ口からのH 2の
漏れが無きことを確認する。
<残留ガスパージライン サイクル①>
(7)ブロワ出側(⑥)のバルブを開にする。また、サイクル③から移行する際は、ブロワと停止さ
せ、ブロワ入側~フレームアレスタへの抜出しラインのバルブ(⑭)を開、バッファタンクバ
イパス側(⑦)及びブロワ入側のバルブ(⑮)を閉にする。その状態から、テストエリア及び
大気開放ラインを3分間パージする。また、3分間よりも多目パージする場合は10分間とす
る。
<残留ガスパージライン サイクル②>
(8)サイクル①終了後、バッファタンクバイパス側(⑦)、ブロワ出側のバイパス弁及びブロワ入
― 34―
側のバルブ(⑮)を開、ブロワ入側~フレームアレスタへの抜出しラインのバルブ(⑭)を
閉にする。その状態から、バイパスライン及びブロワ入側ラインで30秒間H 2循環させる。
<残留ガスパージライン サイクル③>
(9)サイクル②終了後、ブロワを起動し、テストエリア経由で30秒間H2循環させる。以降、パ
ージを続ける際は、サイクル①の操作から再開する。このときに、H2で循環させる際の騒
音に注意する。またこのサイクルを15回繰り返すと、所定濃度により近くなることが判明
した。(第一期実施の結果から、所要時間60分)
<サンプリング>
(10)サイクル③終了後、ブロワ入側のサンプリングバルブ(⑯)からサンプリングし、O 2濃度
が所定濃度以下であることを確認する。H2置換する際は都度、濃度を確認する。
[H2シール]
(1)H2濃度を確認し、サイクル③終了後、ブロワを停止し、ブロワ入側~フレームアレスタへの
抜出しラインのバルブ(⑭)を一時開にし、以下の順でバルブを閉め、H 2 シールとする。
(⑭→⑰~⑳→⑥)
(2)試験時以外の休憩等、一時的に試験設備から離れる際は
H2ボンベ元弁を閉じて、ボンべ出
側の減圧弁の二次圧側を0PaGに調整する。
(3)長時間使用しない際はH2ボンベの元弁が閉であることを確認し、2.1の手順に沿ってN2
パージを実施する。
― 35―
図1.2-1
H2置換ライン
サイクル①
図1.2-2
H2置換ライン
サイクル②
― 36―
2.圧力損失試験方法
適正なガス流量、圧力の調整に必要な機器操作を実施する。目的は①各気体における圧力損失(差
圧)測定②圧力損失に付帯する各パラメータ測定(流量、温度、圧力)である。管理目標値は①流
量:0~200Nm3/h(H2、He)、0~300Nm3/h(N2)②温度:常温(試験中に大
幅な温度変化が無きこと)③圧力:0~0.03MPaGとする。
2.1
試験装置運転方法
<事前準備>
(1)各気体シールの状態で、系内の各バルブ(①~)が閉じている事を確認する。この操作は、混
合気でのデータは不要である為、必ず各気体シールを実施した後に行うものとする。(但し、
空気で試験を行う場合は、この限りでは無い。)なお、計器類の各バルブは常時開とする。
(a
~p)
<ライン操作>
(2)バッファタンクテストエリア側(⑩或いは⑪→⑫→⑬)~ブロワ入側(⑮)の各バルブを開け
て、ブロワを起動し、テストエリア経由で試験流体を循環させる。また、バルブにてラインを
開放する際は、都度リークテスタにてH 2の漏れが無きことを確認する。なお、試験配管無し
での運転を行う際は、テストエリアに循環用スプールピースを差し替えるものとする。
(3)試験気体の流量及び圧力を根本的に変更する場合は、試験流体のボンベバルブを尐開し、ブロ
ワ出側迄のバルブの開度を調節し、排気流量を調整する。(N 2、He使用時:①~④のいず
れか1つ→⑤→⑥、H2使用時:⑰~⑳のいずれか1つ→⑥)このときに、バッファタンク上
部の圧力計で各試験気体の圧力に注意する。
(4)バッファタンクの内圧が安定しない場合は、バッファタンクバイパス側のバルブ(⑦)の開度
を調節し、圧力調整する。
(5)テストエリア入り側の圧力が、希望する圧力迄整圧出来ていない場合は、ガバナーのスプリン
グを切り替えて、バッファタンク出側の二次側の圧力を変更する。また、ガバナー内部のスプ
リングの切替時は、一時的にライン内が開放状態になる為、切替前後でN 2パージを実施する。
(6)流量計及び差圧計レンジを変更する場合は、必要に応じて各バルブの開閉により、流量計(⑩
或いは⑪)及び差圧計(m或いはn)の流路をそれぞれ1方向になるよう変更する。
(7)運転準備が整った時点で圧力損失等の測定を開始する。また、試験終了時は速やかにブロワ及
び冷却ポンプを停止する。
2.2
測定方法
(1)差圧計、流量計、熱電対(温度)の接点をPC側に接続する。このときに、試験体側の接点か
ら、水が流入しないよう注意する。
(2)試験体に接続した測定用ソケットにエアチューブを差込みエアチューブのもう片方を差圧計の
差込口に接続し、データロガーにて、PCに経時での測定データを取り込む。
(3)圧力等、データロガーで拾えないパラメータに関しては、必要に応じて都度、現場からゲージ
を読み取り、記録する。
― 37―
図2.1
運転ライン
― 38―
3.異常時の対応及び不在時の維持管理
スタートアップ時及び試験時に系内(ボンベハウス内、屋外ライン)よりH 2の漏洩の異常があっ
た場合、
直ちにボンベ出側の緊急遮断弁で系内のH2供給を停止し、ブロワ排気にて異常排気ライ
ンからの大量
流出を防止する。また、ブロワの作動異常時も、ブロワを直ちに停止させ、N2パー
ジにてライン中のH2をフレームアレスタ経由で大気放出する。
3.1
ボンベハウス内の水素漏洩
(1)ボンベハウス内の水素検知器のアラームで漏洩を検知する。但し、漏洩の疑いなければ水素検
知器誤作動も考えられるので、原因を調査する。
(2)検知と同時に緊急遮断弁によりテストエリアへのH2供給を停止させる。
(3)H2リークテスタにて漏洩箇所を見つけ、漏洩防止を図る。
(4)漏洩箇所を復旧後、H 2ボンベバルブの元弁、及びフレキシブルホース接続口のバルブ(⑰~
⑳)を閉にした後にボンベを取り外す。このときに、ハウス内にH 2が充満していることを懸
念し換気を十分に行い作業する。
3.2
屋外ライン中の水素漏洩
(1)H2リークテスタのアラームで漏洩を検知する。
(2)H2ボンベバルブを閉じて、テストエリアへのH2供給を停止させる。
(3)H2リークテスタにて漏洩箇所を見つけ、漏洩防止を図る。
(4)N2ボンベ側(①~④)~ブロワ出側(⑤、⑥)迄の各バルブを開けて、N 2パージにて残留
H2を系外へ大気放出する。
(5)復旧後、再度リークテストを行う。また、スタート前に全員で、事例検討を行い、再発防止に
努める。
3.3
ブロワの作動異常
作動時に以下の異常を想定する。また、ブロワ異常による火花発生には十分に注意する。
(1)排気(静圧)不良、電動機異音
(2)発熱異常
:
:
速やかにブロワと停止する。
速やかにブロワを停止し、水冷クーラーにより温度を沈静させる。
(3)冷却ユニット(水中ポンプ)不良
:
ユニット(水中ポンプ)を停止し、小型ファンで冷却
可能か検討し、不可能ならブロワも停止する。系内の残留気体は、N 2パージにて圧送し、大
気放出する。
3.4
不在時における維持管理
(1)退出時は必ず各ボンベの元弁が閉になっていること、ボンベ出側の減圧弁の二次圧側を0Pa
Gになっていること、及びブロワ等の各種電源がOFFになっていることを確認する。
(2)ボンベハウス内気体漏洩による酸欠防止の為、ハウス内の風通しを良い状態で維持する。
(3)ボンベを設置する際は、常時壁側に設置し、周囲をチェーンで巻くことにより固定し、使用時
も含めてボンベ転倒を防止する。使用していないボンベについては、横に寝かせた状態で、ボ
ンベハウス内に保管する。
(4)試験設備を長期で使用しない場合は、試験設備全体をブルーシート等で覆い、またボンベもボ
ンベメーカーに返却する。
(5)万が一、不在時に問題が発生した際は、現場まで急行し、直ちに原因追求にあたる。
― 39―
Ⅴ.圧力損失測定試験結果
前項までの既存式、試験装置の検証を踏まえ、以下に測定結果を記載する。
1.各種気体におけるポリエチレン管の圧力損失
1.1
各種気体におけるポリエチレン管の圧力損失測定
国内での水素を用いた圧力損失調査は報告された事例が尐ない。まずは水素の圧力損失が他の
気体に対しての圧力損失差を把握する為に、水素使用下での圧力損失測定、及びその比較として
ヘリウム、窒素の圧力損失を測定した。
水素はヘリウムや窒素よりも比重が軽く、粘性が小さいため圧力損失が小さいことが予想され
る。試験装置の能力及び今回の試験場での最大延長を想定し、50Aパイプで70m直管(継手
2個による折返し)を使用した。今回、評価に供したパイプ、ガスを下記に示す。
・パイプ:GP50AL
直管(70m)
外径=60.0mm
内径=48.2mm(規格中心値)、47.9mm(測定値)
製造・販売元:三井化学産資㈱
・ガス
:水素、ヘリウム、窒素
不純物濃度
水=3 vol ppm未満
酸素=2 vol ppm未満
メタン=0.5 vol ppm未満
販売元:㈱エア・ガシズ北九州
測定は、パイプの根元にある入側の圧力取り出し口から70mの位置に出側の圧力取り出し
口を取付け、圧力の差圧を測定する。
直線部の差圧測定として使用
平面図
差圧計
ブロワ戻り方向
この距離の倍をエルボ(2個)を
含んだ差圧測定として使用
バッファタンク
側面図
流量計
差圧計
差圧計を任意の管長さ位置に
移動して測定
図1.1
各測定位置
流量範囲20Nm3/h~200Nm3/h、大気圧(0PaG)、常温(20℃)下での測定
とし、供給ガスの温度は圧力損失測定時に、流量や圧力損失と併せて都度測定した。
― 40―
1.2
調査結果
水素、ヘリウム及び窒素での圧力損失結果を表1.2及び図1.2に示す。なお、流量計の保
証範囲は25~225[Nm3/h](水素、ヘリウム)、37~337[Nm3/h](窒素)
である為、それ以外の範囲での流量実測値及びそれに伴う圧力損失実測値は参考値として取り扱
うものとする。
表1.2
気体:H2
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
23.6
0.044
27.9
0.060
29.2
0.070
31.7
0.084
37.1
0.111
47.3
0.172
57.7
0.236
68.6
0.320
83.3
0.446
97.9
0.586
104.3
0.654
110.5
0.722
119.2
0.821
136.2
1.029
147.1
1.174
163.1
1.410
172.1
1.541
188.7
1.800
206.3
2.097
211.9
2.523
各種気体における圧力損失測定結果
気体:He
気体:N2
ガス流量Q 圧力損失⊿P
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
[Nm3/h]
[kPa]
25.3
0.090
42.1
0.963
30.9
0.136
47.1
1.290
38.7
0.242
50.8
1.531
48.0
0.352
61.0
2.120
53.3
0.422
74.1
3.043
58.5
0.497
100.2
5.168
60.2
0.520
108.3
6.060
70.5
0.681
118.7
7.230
79.7
0.835
126.8
8.188
89.9
1.024
138.7
9.735
99.7
1.221
151.1
11.575
111.8
1.494
126.5
1.840
140.7
2.211
151.4
2.628
100
圧力損失(kPa)
10
H2実測値
1
He実測値
0.1
N2実測値
0.01
10
100
流量(Nm3/h)
図1.2
各種気体における圧力損失測定結果
― 41―
1000
40Nm3/hから150Nm3/hまでの流量範囲において、密度が小さい気体程圧力損失も
小さくなることが確認出来た。また、20℃における水素の密度が0.08412[kg/m3]、
窒素の密度が1.163[kg/m3]と約10倍程異なることに対して、圧力損失も同様に流量
に依らず約10倍程異なることから、圧力損失の要因には気体の密度が大きく寄与することが確認
出来た。
― 42―
1.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
実測値の比較を目的に、Ⅱ1.1
Darcy-Weisbach 式及びⅡ1.3.2
継手(エルボ)に
おける圧力損失式に準拠して、理論値を算出し、その比較結果を表1.3-1~1.3-3及び
図1.3-1~図1.3-3に示す。
表1.3-1
水素における圧力損失比較結果
圧力損失⊿P [kPa]
ガス流量Q ガス流速V Re数 管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
[-]
23.6
3.64
1675
0.038
0.033
0.044
27.9
4.29
1978
0.032
0.040
0.060
29.2
4.50
2074
0.049
0.064
0.070
31.7
4.89
2253
0.048
0.074
0.084
37.1
5.72
2634
0.045
0.096
0.111
47.3
7.29
3361
0.042
0.146
0.172
57.7
8.89
4095
0.040
0.205
0.236
68.6
10.58
4873
0.038
0.277
0.320
83.3
12.85
5918
0.036
0.388
0.446
97.9
15.09
6952
0.034
0.513
0.586
104.3
16.08
7408
0.034
0.573
0.654
110.5
17.04
7849
0.033
0.634
0.722
119.2
18.38
8466
0.032
0.724
0.821
136.2
21.00
9673
0.031
0.914
1.029
147.1
22.68
10448
0.031
1.046
1.174
163.1
25.14
11584
0.030
1.255
1.410
172.1
26.52
12219
0.029
1.378
1.541
188.7
29.09
13401
0.029
1.622
1.800
206.3
31.79
14648
0.028
1.898
2.097
211.9
32.66
15048
0.028
1.991
2.523
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
表1.3-2
ヘリウムにおける圧力損失比較結果
圧力損失⊿P [kPa]
ガス流量Q ガス流速V Re数 管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
[-]
25.3
3.91
1588
0.053
0.079
0.090
30.9
4.76
1937
0.050
0.098
0.136
38.7
5.97
2428
0.047
0.213
0.242
48.0
7.40
3008
0.044
0.307
0.352
53.3
8.21
3338
0.042
0.366
0.422
58.5
9.02
3668
0.041
0.431
0.497
60.2
9.28
3771
0.041
0.452
0.520
70.5
10.87
4419
0.039
0.593
0.681
79.7
12.29
4997
0.037
0.734
0.835
89.9
13.86
5634
0.036
0.903
1.024
99.7
15.38
6252
0.035
1.082
1.221
111.8
17.23
7005
0.034
1.319
1.494
126.5
19.50
7930
0.033
1.638
1.840
140.7
21.69
8816
0.032
1.972
2.211
151.4
23.33
9486
0.031
2.242
2.628
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
表1.3-3
窒素における圧力損失比較結果
ガス流量Q ガス流速V Re数
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
42.1
6.49
21075
47.1
7.26
23573
50.8
7.83
25419
61.0
9.39
30503
74.1
11.41
37055
100.2
15.44
50139
108.3
16.69
54205
118.7
18.28
59388
126.8
19.54
63457
138.7
21.36
69385
151.1
23.27
75599
管摩擦係数λ
[-]
0.026
0.025
0.025
0.024
0.022
0.021
0.021
0.020
0.020
0.020
0.019
― 43―
圧力損失⊿P [kPa]
理論値 実測値
1.009
0.963
1.232
1.290
1.409
1.531
1.952
2.120
2.768
3.043
4.771
5.168
5.493
6.060
6.479
7.230
7.305
8.188
8.589
9.735
10.037
11.575
10
圧力損失(kPa)
1
0.1
H2理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
H2実測値
0.01
10
遷移域
100
1000
流量(Nm3/h)
図1.3-1
水素における圧力損失比較結果
10
圧力損失(kPa)
1
0.1
He理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
He実測値
0.01
10
遷移域
100
流量(Nm3/h)
図1.3-2
ヘリウムにおける圧力損失比較結果
― 44―
1000
100
圧力損失(kPa)
10
1
N2理論式(Darcy-Weisbach式)
N2実測値
0.1
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図1.3-3
窒素における圧力損失比較結果
各気体依存のパラメータ(密度:ρ、管摩擦係数:λ)を Darcy-Weisbach の式に適用すること
により、この流量範囲においていずれの気体でも圧力損失実測値を再現することが確認出来た。
但し、層流域においては、乱流域での測定結果と比べて、圧力損失の差異が若干大きくなる結果
が得られた。この要因として、ルーツブロワの断続的な圧力供給により系内の圧力が脈動した為乱
流に近い挙動になったこと、助走区間(配管径の約5~10倍)以上でも圧力が安定していない可
能性があること等が考えられるが、原因の特定には至らなかった。
― 45―
2.延長による圧力損失への影響調査
2.1
各種延長におけるポリエチレン管の水素圧力損失調査
配管設計にあたり、流体が管内を通過する際に、管内と接する距離が長い程圧力損失が増大す
ることを推定出来ることから、水素の場合でも都市ガスと同様に、延長による圧力損失差を把握
しなくてはならない。そこで、延長による圧力損失差を把握すべく、各延長における水素使用下
での圧力損失を測定した。
試験装置の能力及び今回の試験場での最大延長迄の区間での延長変更を想定し、50Aパイプ
で70m直管(継手2個による折返し)を使用した。今回、評価に供したパイプ、ガスを下記に
示す。
・パイプ:GP50AL
直管(70m)
外径=60.0mm
内径=48.2mm(規格中心値)、47.9mm(測定値)
製造・販売元:三井化学産資㈱
・ガス
:水素
不純物濃度
水=3 vol ppm未満
酸素=2 vol ppm未満
メタン=0.5 vol ppm未満
販売元:㈱エア・ガシズ北九州
測定は、パイプの根元にある入側の圧力取り出し口から20m、40m、60m、70mの位
置に出側の圧力取り出し口を取付け、各距離の圧力の差圧を測定する。圧力取り出し口の取り付
け方法は、下図に準拠する。
70 m
60 m
40 m
20 m
ガスの流れ
図2.1
測定位置図
流量範囲20Nm3/h~200Nm3/h、大気圧(0PaG)、常温(20℃)下での測定
とし、供給ガスの温度は圧力損失測定時に、流量や圧力損失と併せて都度測定した。
― 46―
2.2
調査結果
20m、40m、60m延長での水素圧力損失結果を表2.2-1及び図2.2-1に示す。
なお、流量計の保証範囲は25~225[Nm3/h]である為、それ以外の範囲での流量実測
値及びそれに伴う圧力損失実測値は参考値として取り扱うものとする。
表2.2-1
各種延長における水素圧力損失測定結果
延長:20m
延長:40m
延長:60m
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
24.1
29.5
34.1
38.9
49.4
57.8
67.3
78.3
87.6
95.0
103.8
115.8
129.6
148.2
162.1
177.5
196.1
208.5
0.013
0.020
0.028
0.036
0.055
0.072
0.091
0.121
0.148
0.172
0.200
0.244
0.296
0.380
0.444
0.521
0.627
0.752
23.2
26.0
28.0
29.6
36.1
44.8
55.1
60.9
69.2
79.6
88.4
102.1
115.2
132.0
149.0
161.4
184.1
208.5
0.029
0.032
0.038
0.045
0.062
0.091
0.132
0.155
0.193
0.244
0.293
0.374
0.464
0.582
0.719
0.822
1.044
1.300
23.5
24.7
26.1
27.9
30.1
33.1
35.6
40.0
44.8
48.6
50.8
54.4
57.9
63.3
66.8
73.0
76.3
80.1
83.8
90.1
93.5
101.3
115.3
128.3
141.2
157.4
177.3
201.2
207.8
0.031
0.034
0.039
0.047
0.059
0.071
0.085
0.105
0.127
0.149
0.161
0.184
0.205
0.239
0.262
0.305
0.328
0.357
0.388
0.438
0.467
0.538
0.669
0.809
0.954
1.157
1.428
1.780
2.096
10
差圧(kPa)
1
H2実測値(20m)
0.1
H2実測値(40m)
H2実測値(60m)
H2実測値(70m)
0.01
10
遷移域
100
流量(Nm3/h)
図2.2-1
各種延長における水素圧力損失測定結果
― 47―
1000
表2.2-2
延長:20m
圧力損失⊿P
ガス流量Q
(単位延長当り)
[Nm3/h]
[kPa]
24.1
0.0006
29.5
0.0010
34.1
0.0014
38.9
0.0018
49.4
0.0028
57.8
0.0036
67.3
0.0046
78.3
0.0060
87.6
0.0074
95.0
0.0086
103.8
0.0100
115.8
0.0122
129.6
0.0148
148.2
0.0190
162.1
0.0222
177.5
0.0260
196.1
0.0313
208.5
0.0375
単位延長当りでの各種延長における水素圧力損失測定結果
延長:40m
圧力損失⊿P
ガス流量Q
(単位延長当り)
[Nm3/h]
[kPa]
23.2
0.0007
26.0
0.0008
28.0
0.0009
29.6
0.0011
36.1
0.0016
44.8
0.0023
55.1
0.0033
60.9
0.0039
69.2
0.0048
79.6
0.0061
88.4
0.0073
102.1
0.0093
115.2
0.0116
132.0
0.0145
149.0
0.0179
161.4
0.0205
184.1
0.0261
208.5
0.0324
延長:60m
圧力損失⊿P
ガス流量Q
(単位延長当り)
[Nm3/h]
[kPa]
23.5
0.0005
24.7
0.0006
26.1
0.0006
27.9
0.0008
30.1
0.0010
33.1
0.0012
35.6
0.0014
40.0
0.0017
44.8
0.0021
48.6
0.0025
50.8
0.0027
54.4
0.0031
57.9
0.0034
63.3
0.0040
66.8
0.0044
73.0
0.0051
76.3
0.0055
80.1
0.0059
83.8
0.0065
90.1
0.0073
93.5
0.0078
101.3
0.0089
115.3
0.0111
128.3
0.0135
141.2
0.0159
157.4
0.0193
177.3
0.0238
201.2
0.0296
207.8
0.0349
延長:70m
圧力損失⊿P
ガス流量Q
(単位延長当り)
[Nm3/h]
[kPa]
23.6
0.0006
27.9
0.0009
29.2
0.0010
31.7
0.0012
37.1
0.0016
47.3
0.0025
57.7
0.0034
68.6
0.0046
83.3
0.0064
97.9
0.0084
104.3
0.0093
110.5
0.0103
119.2
0.0117
136.2
0.0147
147.1
0.0168
163.1
0.0201
172.1
0.0220
188.7
0.0257
206.3
0.0299
211.9
0.0360
0.1
差圧(kPa)
0.01
H2実測値(20m)
0.001
H2実測値(40m)
H2実測値(60m)
H2実測値(70m)
遷移域
0.0001
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図2.2-2
単位延長当りでの各延長における水素圧力損失測定結果
各延長どうしの比較を行うため、単位長さあたりの差圧に変換し比較を行った。その結果、
図2.2-2となり同一傾向の圧力損失であることが確認できた。
また、この数値内には各延長それぞれにエルボ2個による圧力損失の影響を含んでいるが、
単位長さに変換する際、20~70分の1になっているため誤差程度に小さくなっているものと
考える。
― 48―
2.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
実測値の比較を目的に、Ⅱ1.1
Darcy-Weisbach 式及びⅡ1.3.2
継手(エルボ)に
おける圧力損失式に準拠して、理論値を算出し、その比較結果を表2.3-1~2.3-3及び
図2.3に示す。70m延長での水素圧力損失比較結果はⅤ1.3水素の圧力損失比較結果に準
拠する。
表2.3-1
20m延長における水素圧力損失比較結果
ガス流量Q ガス流速V Re数 管摩擦係数λ
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
[-]
24.1
29.5
34.1
38.9
49.4
57.8
67.3
78.3
87.6
95.0
103.8
115.8
129.6
148.2
162.1
177.5
196.1
208.5
3.71
4.54
5.25
5.99
7.61
8.90
10.36
12.06
13.49
14.63
15.98
17.83
19.95
22.82
24.95
27.33
30.20
32.10
表2.3-2
1709
2093
2421
2762
3507
4104
4776
5559
6220
6745
7366
8217
9197
10518
11501
12599
13919
14797
※
圧力損失⊿P [kPa]
理論値 実測値
0.037
0.011
0.013
0.049
0.021
0.020
0.047
0.027
0.028
0.045
0.034
0.036
0.042
0.051
0.055
0.040
0.067
0.072
0.038
0.088
0.091
0.036
0.115
0.121
0.035
0.141
0.148
0.034
0.162
0.172
0.034
0.190
0.200
0.033
0.231
0.244
0.032
0.282
0.296
0.031
0.359
0.380
0.030
0.422
0.444
0.029
0.497
0.521
0.028
0.594
0.627
0.028
0.664
0.752
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
40m延長における水素圧力損失比較結果
圧力損失⊿P [kPa]
ガス流量Q ガス流速V Re数 管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
[-]
23.2
3.57
1648
0.039
0.019
0.029
26.0
4.01
1848
0.035
0.022
0.032
28.0
4.30
1983
0.032
0.024
0.038
29.6
4.55
2099
0.049
0.039
0.045
36.1
5.55
2561
0.046
0.054
0.062
44.8
6.89
3176
0.043
0.079
0.091
55.1
8.48
3911
0.040
0.113
0.132
60.9
9.37
4320
0.039
0.134
0.155
69.2
10.65
4911
0.038
0.167
0.193
79.6
12.26
5651
0.036
0.214
0.244
88.4
13.60
6270
0.035
0.257
0.293
102.1
15.72
7246
0.034
0.331
0.374
115.2
17.74
8178
0.033
0.409
0.464
132.0
20.32
9369
0.031
0.520
0.582
149.0
22.94
10576
0.030
0.644
0.719
161.4
24.84
11452
0.030
0.742
0.822
184.1
28.33
13062
0.029
0.937
1.044
208.5
32.09
14796
0.028
1.170
1.300
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
― 49―
表2.3-3
60m延長における水素圧力損失比較結果
ガス流量Q ガス流速V Re数
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
23.5
3.61
1666
24.7
3.80
1754
26.1
4.02
1853
27.9
4.30
1982
30.1
4.64
2138
33.1
5.10
2352
35.6
5.48
2528
40.0
6.15
2837
44.8
6.89
3177
48.6
7.49
3452
50.8
7.82
3605
54.4
8.38
3862
57.9
8.91
4110
63.3
9.74
4489
66.8
10.29
4743
73.0
11.23
5179
76.3
11.74
5412
80.1
12.33
5687
83.8
12.90
5946
90.1
13.86
6392
93.5
14.39
6633
101.3
15.59
7186
115.3
17.75
8183
128.3
19.75
9104
141.2
21.73
10019
157.4
24.23
11171
177.3
27.29
12581
201.2
30.96
14274
207.8
31.98
14744
圧力損失⊿P [kPa]
管摩擦係数λ
理論値 実測値
[-]
0.038
0.028
0.031
0.036
0.030
0.034
0.035
0.032
0.039
0.032
0.034
0.047
0.048
0.058
0.059
0.047
0.068
0.071
0.046
0.077
0.085
0.044
0.094
0.105
0.043
0.114
0.127
0.042
0.132
0.149
0.041
0.142
0.161
0.040
0.160
0.184
0.040
0.178
0.205
0.039
0.208
0.239
0.038
0.228
0.262
0.037
0.266
0.305
0.037
0.287
0.328
0.036
0.313
0.357
0.036
0.338
0.388
0.035
0.383
0.438
0.035
0.409
0.467
0.034
0.470
0.538
0.033
0.590
0.669
0.032
0.712
0.809
0.031
0.842
0.954
0.030
1.020
1.157
0.029
1.258
1.428
0.028
1.573
1.780
0.028
1.666
2.096
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
10
H2実測値(20m)
H2実測値(40m)
1
差圧(kPa)
H2実測値(60m)
H2実測値(70m)
H2理論値(20m、Darcy-Weisbach式、
遷移域=乱流域)
H2理論値(40m、Darcy-Weisbach式、
遷移域=乱流域)
H2理論値(60m、Darcy-Weisbach式、
遷移域=乱流域)
H2理論値(70m、Darcy-Weisbach式、
遷移域=乱流域)
0.1
0.01
10
遷移域
100
1000
流量(Nm3/h)
表2.3
各種延長における圧力損失比較結果
各延長を Darcy-Weisbach の式に適用することにより、この流量範囲においていずれの延長で
も圧力損失実測値を再現することを確認出来た。これにより、任意の延長においても DarcyWeisbach の式を用いることで、水素使用下でも圧力損失が算出可能であることを確認出来た。
― 50―
3.表面粗度による圧力損失への影響調査
3.1
鋼管の水素圧力損失調査
配管の選定にあたり、流体が管内を通過する際に、管内との接触面が粗い程、圧力損失が増大
することを推定出来ることから、水素の場合でも都市ガスと同様に、表面粗さによる圧力損失差
を把握しなくてはならない。そこで、表面粗さ(管種)による圧力損失差を把握すべく、鋼管を
使用した際の水素使用下での圧力損失を測定した。
上記の通り、表面粗度が大きい程圧力損失が大きいことが予想される。低圧での導管網におけ
る圧送、かつ今回の試験場での最大延長を想定し、50Aパイプで70m直管(継手2個による
折返し)を使用した。今回、評価に供したパイプ、ガスを下記に示す。
・パイプ:配管用炭素鋼管(SGP)
直管(70m)
外径=60.5mm
内径=52.9mm(規格中心値)、53.2mm(測定値)
製造・販売元:JFEスチール㈱
・ガス
:水素
不純物濃度
水=3 vol ppm未満
酸素=2 vol ppm未満
メタン=0.5 vol ppm未満
販売元:㈱エア・ガシズ北九州
測定は、パイプの根元にある入側の圧力取り出し口から70mの位置に出側の圧力取り出し口
を取付け、圧力の差圧を測定する。
流量範囲20Nm3/h~200Nm3/h、大気圧(0PaG)、常温(20℃)下での測定
とし、供給ガスの温度は圧力損失測定時に、流量や圧力損失と併せて都度測定した。鋼管は、下
図のようにポリエチレン管と並列して試験装置に接続し、測定温度は成り行きとした。
図3.1
鋼管接続時の様子
― 51―
3.2
調査結果
鋼管での圧力損失結果を表3.2及び図3.2-1に示す。比較用のポリエチレン管での圧力
損失結果はⅤ1.2水素の圧力損失測定結果に準拠する。なお、流量計の保証範囲は25~22
5[Nm3/h]である為、それ以外の範囲での流量実測値及びそれに伴う圧力損失実測値は参
考値として取り扱うものとする。
表3.2
鋼管の水素圧力損失測定結果
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
33.5
0.044
36.4
0.053
38.4
0.063
41.5
0.074
44.1
0.083
47.7
0.098
50.6
0.108
56.6
0.134
59.8
0.149
64.2
0.172
69.0
0.193
75.9
0.232
78.4
0.245
83.0
0.270
91.5
0.321
100.4
0.382
108.3
0.439
120.6
0.527
132.9
0.628
143.7
0.720
150.3
0.780
159.3
0.863
166.0
0.932
176.4
1.040
184.0
1.120
198.4
1.281
10.0
圧力損失(kPa)
1.0
0.1
H2実測値(PE管)
H2実測値(SGP管)
遷移域
0.0
10
100
流量(Nm3/h)
図3.2-1
鋼管の水素圧力損失測定結果
― 52―
1000
ポリエチレン管と鋼管とでは、配管の呼び径が同じでも、実内径がポリエチレン管よりも鋼管
のほうが大きいことから、表面粗さが大きい鋼管のほうが圧力損失は小さくなる結果が得られた。
圧力損失の要因として、表面粗度以外に内径も影響すると、表面粗度による圧力損失の違いが確
認出来ないことから、下図に実測値をポリエチレン管の内径に換算した値を使用した際の比較結
果を示す。
10.0
圧力損失(kPa)
1.0
H2実測値(PE管)
0.1
H2実測値(SGP管)[PE管口径へ換算]
H2理論値(SGP管、Darcy-Weisbach式)
0.0
遷移域
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図3.2-2
鋼管の水素圧力損失測定結果(ポリエチレン管口径へ換算後)
層流
遷移域(不安定領域)
乱流
λ
SGP:0.031
PE:0.029
Re=13000
図3.2-3
参照URL:http://m-sudo.blogspot.com/2010/05/blog-post_26.html
管摩擦係数比較
― 53―
鋼管での圧力損失実測値をポリエチレン管の内径に換算した値を使用することにより、ポリエ
チレン管での圧力損失実測値と殆ど一致することを確認出来た。このことから図3.2-1で提
示した結果は、内径による圧力損失への影響が支配的であり、表面粗度の影響は尐ないことが確
認出来た。このことは、管摩擦係数を算出した上でも同じことが言える。例えば、図3.2-3
の管摩擦係数の比較により、流量が190Nm3/hであるときのレイノルズ数は13000に
相当し、それに伴う管摩擦係数λは、ポリエチレン管で0.029、鋼管で0.031となる為、
今回実験した流量域よりもさらに流量(流速)が増加する場合においては、表面粗度の影響がよ
り顕著になる傾向にある為、注意が必要である。
― 54―
3.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
実測値の比較を目的に、Ⅱ1.1
Darcy-Weisbach 式及びⅡ1.3.2
継手(エルボ)に
おける圧力損失式に準拠して、理論値を算出し、その比較結果を表3.3及び図3.3に示す。
ポリエチレン管での水素圧力損失比較結果はⅤ1.3水素の圧力損失比較結果に準拠する。
表3.3
鋼管の水素圧力損失比較結果
ガス流量Q ガス流速V Re数 管摩擦係数λ ※ 圧力損失⊿P(口径換算後)[kPa]
理論値 実測値
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
[-]
33.5
5.17
2381
0.047
0.081
0.070
36.4
5.62
2587
0.046
0.094
0.084
38.4
5.93
2729
0.045
0.103
0.100
41.5
6.41
2949
0.044
0.117
0.118
44.1
6.81
3134
0.043
0.130
0.132
47.7
7.36
3390
0.042
0.149
0.156
50.6
7.81
3596
0.041
0.165
0.172
56.6
8.74
4022
0.040
0.200
0.213
59.8
9.23
4249
0.039
0.220
0.237
64.2
9.91
4562
0.039
0.248
0.274
69.0
10.65
4903
0.038
0.281
0.307
75.9
11.72
5394
0.037
0.332
0.369
78.4
12.10
5571
0.037
0.351
0.390
83.0
12.81
5898
0.036
0.388
0.430
91.5
14.12
6502
0.035
0.460
0.511
100.4
15.50
7135
0.034
0.541
0.608
108.3
16.72
7696
0.033
0.617
0.699
120.6
18.61
8570
0.032
0.745
0.839
132.9
20.51
9444
0.032
0.884
1.000
143.7
22.18
10212
0.031
1.015
1.147
150.3
23.20
10681
0.031
1.098
1.242
159.3
24.59
11320
0.030
1.217
1.374
166.0
25.62
11796
0.030
1.309
1.484
176.4
27.23
12535
0.029
1.457
1.656
184.0
28.40
13075
0.029
1.570
1.783
198.4
30.62
14099
0.029
1.795
2.040
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
10.0
圧力損失(kPa)
1.0
0.1
H2実測値(SGP管)[PE管口径へ換算]
H2理論値(SGP管、Darcy-Weisbach式)
0.0
10
遷移域
100
1000
流量(Nm3/h)
図3.3
鋼管の水素圧力損失測定結果
鋼管での管摩擦係数を Darcy-Weisbach の式に適用することにより、この流領域において鋼管
でも圧力損失実測値を再現することを確認出来た。これにより、任意の管種においても DarcyWeisbach の式を用いることで、水素使用下でも圧力損失が算出可能であることを確認出来た。
― 55―
4.口径の圧力損失への影響調査
4.1
小口径管の水素圧力損失調査
今回の調査では、口径の違いによる理論式の整合性を確認する為、別口径による圧力損失測定
を行った。
試験装置の能力及び今回の試験場での最大延長を想定し、25Aパイプで70m直管(継手2
個による折返し)を使用した。また、参考用として、更に小口径とした比較対象の給水給湯用1
6Aパイプも使用した。今回、評価に供したパイプ、ガスを下記に示す。
・パイプ:GP25A
直管(70m)
外径=34.0mm
内径=26.6mm(規格中心値)、25.9mm(測定値)
JCP-16ST(エルメックス)
直管(70m)
外径=21.5mm
内径=15.6mm(規格中心値)、15.5mm(測定値)
製造・販売元:三井化学産資㈱
・ガス
:水素
不純物濃度
水=3 vol ppm未満
酸素=2 vol ppm未満
メタン=0.5 vol ppm未満
販売元:㈱エア・ガシズ北九州
測定は、パイプの根元にある入側の圧力取り出し口から70mの位置に出側の圧力取り出し口
を取付け、圧力の差圧を測定する。
流量範囲20Nm3/h~200Nm3/h、大気圧(0PaG)、常温(20℃)下での測定
とし、供給ガスの温度は圧力損失測定時に、流量や圧力損失と併せて都度測定した。なお、ポリ
エチレン管は、下図のように25A配管と16A配管で並列して試験装置に接続した。ポリエチ
レン製のバルブ操作により、16A或いは25A配管への流路の切り替えを行うものとする。
― 56―
図4.1
小口径管接続時の様子①
図4.2
小口径管接続時の様子②
― 57―
4.2
調査結果
小口径管での圧力損失結果を表4.2及び図4.2に示す。なお、流量計の保証範囲は25~
225[Nm3/h]である為、それ以外の範囲での流量実測値及びそれに伴う圧力損失実測値
は参考値として取り扱うものとする。
表4.2
各小口径管の水素圧力損失測定結果
16A
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
3.3
1.33
5.3
1.76
8.0
2.98
10.5
4.17
13.4
5.49
15.6
6.88
17.7
8.27
20.5
10.55
24.1
13.87
26.4
16.35
25A
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
4.4
0.19
6.3
0.21
9.3
0.26
12.5
0.36
13.9
0.48
17.3
0.63
21.4
0.86
26.0
1.17
29.7
1.40
33.4
1.69
39.2
2.15
41.4
2.37
46.4
2.83
50.2
3.24
55.6
3.80
58.3
4.12
64.6
4.89
69.1
5.45
73.8
6.07
78.9
6.78
85.4
7.75
90.1
8.49
97.8
9.69
104.4
10.81
110.7
11.94
118.4
13.32
121.5
13.92
132.5
16.12
100
圧力損失(kPa)
10
1
H2実測値(16A)
H2実測値(25A)
0.1
1
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図4.2
各小径管の水素圧力損失測定結果
上記の結果から、16Aの圧力損失は25Aの圧力損失の約10倍に相当する結果が得られた。
― 58―
4.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
実測値の比較を目的に、Ⅱ1.1
Darcy-Weisbach 式及びⅡ1.3.2
継手(エルボ)に
おける圧力損失式に準拠して、理論値を算出し、その比較結果を表4.3-1~4.3-2及び
図4.3に示す。
表4.3-1
ガス流量Q
[Nm3/h]
3.3
5.3
8.0
10.5
13.4
15.6
17.7
20.5
24.1
26.4
ガス流速V
[Nm/s]
4.92
7.89
11.83
15.44
19.76
23.04
26.08
30.26
35.60
38.92
Re数 管摩擦係数λ
[-]
[-]
732
0.087
1174
0.055
1762
0.036
2299
0.047
2942
0.044
3431
0.042
3884
0.040
4507
0.039
5301
0.037
5796
0.036
表4.3-2
ガス流量Q
[Nm3/h]
4.4
6.3
9.3
12.5
13.9
17.3
21.4
26.0
29.7
33.4
39.2
41.4
46.4
50.2
55.6
58.3
64.6
69.1
73.8
78.9
85.4
90.1
97.8
104.4
110.7
118.4
121.5
132.5
ガス流速V
[Nm/s]
2.30
3.32
4.87
6.54
7.30
9.07
11.24
13.65
15.60
17.56
20.60
21.76
24.36
26.36
29.23
30.63
33.94
36.32
38.78
41.44
44.85
47.32
51.36
54.84
58.15
62.20
63.82
69.59
16A管の水素圧力損失比較結果
※
圧力損失⊿P [kPa]
理論値 実測値
0.41
1.33
0.65
1.76
0.99
2.98
2.19
4.17
3.32
5.49
4.31
6.88
5.33
8.27
6.88
10.55
9.10
13.87
10.61
16.35
25A管の水素圧力損失比較結果
Re数 管摩擦係数λ
[-]
[-]
574
0.111
828
0.077
1215
0.053
1633
0.039
1822
0.035
2263
0.048
2804
0.045
3405
0.042
3893
0.040
4382
0.039
5142
0.037
5431
0.037
6077
0.035
6577
0.035
7293
0.034
7643
0.033
8468
0.032
9064
0.032
9678
0.031
10340
0.031
11191
0.030
11808
0.030
12816
0.029
13683
0.029
14509
0.028
15521
0.028
15926
0.028
17366
0.027
― 59―
※
圧力損失⊿P [kPa]
理論値 実測値
0.07
0.19
0.10
0.21
0.15
0.26
0.20
0.36
0.22
0.48
0.46
0.63
0.66
0.86
0.92
1.17
1.15
1.40
1.41
1.69
1.86
2.15
2.04
2.37
2.48
2.83
2.85
3.24
3.41
3.80
3.70
4.12
4.42
4.89
4.97
5.45
5.58
6.07
6.26
6.78
7.19
7.75
7.90
8.49
9.12
9.69
10.24
10.81
11.35
11.94
12.78
13.32
13.37
13.92
15.59
16.12
100
圧力損失(kPa)
10
H2実測値(16A)
1
H2実測値(25A)
H2理論値(16A、Darcy-Weisbach式、
遷移域=乱流域)
H2理論値(25A、Darcy-Weisbach式、
遷移域=乱流域)
0.1
1
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図4.3
各小径管の水素圧力損失比較結果
小口径での内径、それに伴う管摩擦係数を Darcy-Weisbach の式に適用することにより、この
流領域において25A管でも圧力損失実測値を再現することが確認出来た。16A管で実測値と
理論値が乖離したのは、圧力損失が高くなり過ぎる為、流量の測定可能範囲下限で測定していた
こと、或いは16A継手には内装に融着接合時のパイプ膨張を防止する為の仕切り板(スティフ
ナー)が設けてあり、その分、流路が小さくなる為、見かけ上の圧力損失より実測の圧力損失の
ほうが大きいことが考えられる。16A管を使用した目的は小口径による流速増加を期待してい
たが、外乱による影響が大きい為
実測値との乖離は大きくなった。しかし、傾向としては、理
論値に沿っている為、この外乱を正しく除外する環境とすれば、更に理論値に近づくものと推測
する。
― 60―
5.コイル管による圧力損失への影響調査
5.1
螺旋状ポリエチレン管の水素圧力損失調査
配管の施工にあたり、ポリエチレン管の特性(管の柔軟性)を生かし、直線状だけでなく生曲
げの状態での施工も実施可能である。水素においてもそのような曲がり管よる圧力損失差を把握
すべく、コイル管を使用した際の圧力損失を測定した。
直線状の測定と比較を行う為、25A及び50Aパイプで70mコイル管を使用した。今回、
評価に供したパイプ、ガスを下記に示す。
・パイプ:GPC50A
コイル管(70m)
外径=60.0mm
内径=48.2mm(規格中心値)、47.9mm(測定値)
GPC25AH
コイル管(70m)
外径=34.0mm
内径=26.6mm(規格中心値)、25.9mm(測定値)
製造・販売元:三井化学産資㈱
・ガス
:水素
不純物濃度
水=3 vol ppm未満
酸素=2 vol ppm未満
メタン=0.5 vol ppm未満
販売元:㈱エア・ガシズ北九州
測定は、パイプの根元にある入側の圧力取り出し口から70mの位置に出側の圧力取り出し口
を取付け、圧力の差圧を測定する。
流量範囲20Nm3/h~200Nm3/h、大気圧(0PaG)、常温(20℃)下での測定
とし、供給ガスの温度は圧力損失測定時に、流量や圧力損失と併せて都度測定した。なお、コイ
ル管は、下図のように50A配管と並列して試験装置に接続した。直線での測定では配管を水没
させ温度の安定化を図ったが、コイル管では成り行きとした。
図5.1
コイル径管接続時の様子
― 61―
5.2
調査結果
コイル管での圧力損失結果を表5.2及び図5.2に示す。なお、流量計の保証範囲は25~
225[Nm3/h]である為、それ以外の範囲での流量実測値及びそれに伴う圧力損失実測値
は参考値として取り扱うものとする。
表5.2
各コイル管の水素圧力損失測定結果
25A
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
2.7
0.22
4.1
0.25
5.8
0.30
9.3
0.42
12.3
0.54
17.8
0.79
19.1
0.86
22.5
1.05
25.8
1.22
30.3
1.43
33.2
1.61
36.6
1.85
39.1
2.03
42.2
2.29
46.7
2.70
51.7
3.24
56.6
3.82
61.7
4.44
64.9
4.87
72.2
5.94
76.8
6.55
81.7
7.37
85.4
7.94
89.8
8.72
96.5
9.96
103.1
11.17
108.4
12.23
114.1
13.38
122.7
15.18
130.1
16.87
139.6
19.18
151.5
20.98
50A
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
19.6
0.062
20.8
0.068
23.0
0.076
26.0
0.090
28.3
0.101
31.3
0.113
34.1
0.129
41.9
0.171
45.8
0.190
48.8
0.209
59.4
0.272
63.9
0.299
69.9
0.332
78.1
0.393
83.9
0.445
90.8
0.502
97.6
0.568
104.9
0.642
112.0
0.722
119.2
0.805
124.8
0.875
133.4
0.993
140.2
1.091
151.2
1.256
163.0
1.437
171.3
1.578
181.7
1.751
192.4
1.949
196.0
2.017
206.4
2.099
100
圧力損失(kPa)
10
1
H2実測値(25A)
H2実測値(50A)
0.1
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図5.2
各コイル管の水素圧力損失測定結果
上記の結果から、25Aの圧力損失は50Aの圧力損失の約10倍に相当する結果が得られた。
― 62―
5.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
実測値の比較を目的に、Ⅱ1.1
Darcy-Weisbach 式及びⅡ1.3.1
螺旋管における圧
力損失式に準拠して、理論値を算出し、その比較結果を表5.3-1~5.3-2及び図5.3
-1~5.3-2に示す。
表5.3-1
25Aコイル管の水素圧力損失比較結果
圧力損失⊿P [kPa]
ガス流量Q ガス流速V Re数 管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
[-]
17.8
9.36
2336
0.048
0.48
0.79
19.1
10.03
2503
0.047
0.54
0.86
22.5
11.83
2952
0.046
0.72
1.05
25.8
13.55
3380
0.044
0.92
1.22
30.3
15.90
3968
0.043
1.22
1.43
33.2
17.44
4352
0.042
1.44
1.61
36.6
19.25
4804
0.041
1.72
1.85
39.1
20.54
5125
0.040
1.93
2.03
42.2
22.19
5537
0.040
2.21
2.29
46.7
24.52
6120
0.039
2.64
2.70
51.7
27.18
6783
0.038
3.17
3.24
56.6
29.72
7415
0.037
3.71
3.82
61.7
32.40
8085
0.036
4.33
4.44
64.9
34.13
8515
0.036
4.75
4.87
72.2
37.94
9467
0.035
5.74
5.94
76.8
40.37
10074
0.035
6.41
6.55
81.7
42.95
10718
0.034
7.16
7.37
85.4
44.86
11192
0.034
7.73
7.94
89.8
47.20
11777
0.033
8.46
8.72
96.5
50.73
12658
0.033
9.62
9.96
103.1
54.16
13514
0.032
10.82
11.17
108.4
56.96
14213
0.032
11.83
12.23
114.1
59.97
14964
0.032
12.97
13.38
122.7
64.45
16081
0.031
14.75
15.18
130.1
68.37
17059
0.031
16.39
16.87
139.6
73.34
18299
0.030
18.57
19.18
151.5
79.58
19858
0.030
21.49
20.98
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
表5.3-2
50Aコイル管の水素圧力損失比較結果
圧力損失⊿P [kPa]
ガス流量Q ガス流速V Re数 管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
[-]
28.3
4.36
2010
0.050
0.059
0.101
31.3
4.83
2225
0.049
0.071
0.113
34.1
5.26
2425
0.048
0.082
0.129
41.9
6.45
2973
0.046
0.118
0.171
45.8
7.05
3249
0.045
0.138
0.190
48.8
7.53
3469
0.044
0.155
0.209
59.4
9.16
4221
0.043
0.220
0.272
63.9
9.85
4537
0.042
0.250
0.299
69.9
10.77
4962
0.041
0.293
0.332
78.1
12.04
5548
0.040
0.358
0.393
83.9
12.93
5957
0.039
0.406
0.445
90.8
14.00
6452
0.039
0.468
0.502
97.6
15.05
6934
0.038
0.532
0.568
104.9
16.17
7451
0.038
0.605
0.642
112.0
17.27
7957
0.037
0.680
0.722
119.2
18.37
8464
0.037
0.759
0.805
124.8
19.23
8861
0.036
0.824
0.875
133.4
20.56
9472
0.036
0.928
0.993
140.2
21.62
9959
0.035
1.015
1.091
151.2
23.31
10740
0.035
1.161
1.256
163.0
25.12
11572
0.034
1.326
1.437
171.3
26.41
12167
0.034
1.450
1.578
181.7
28.02
12907
0.033
1.612
1.751
192.4
29.66
13664
0.033
1.785
1.949
196.0
30.22
13920
0.033
1.845
2.017
206.4
31.82
14659
0.032
2.023
2.099
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
― 63―
100
圧力損失(kPa)
10
1
H2実測値
H2理論値(螺旋管、遷移域=乱流)
0.1
10
遷移域
100
1000
流量(Nm3/h)
図5.3-1
25Aコイル管の水素圧力損失比較結果
10
圧力損失(kPa)
1
0.1
H2実測値
H2理論値(螺旋管、遷移域=乱流)
0.01
10
遷移域
100
1000
流量(Nm3/h)
図5.3-2
Ⅱ1.3.1
50Aコイル管の水素圧力損失比較結果
螺旋管における圧力損失式は適用範囲を乱流域のみとしているとおり、乱流域
では測定値と同傾向となる事が確認された。
遷移域以下においては一般的に確立されている螺旋管の圧力損失式がないため、整合性の比較
はできないが、実際の配管施工では今回試験したほどの多くの曲がりは存在しないため、測定結
果から判断すると導管全体への影響は微弱であると考える。
― 64―
6.継手(エルボ)による圧力損失への影響調査
6.1
継手を介したポリエチレン管の水素圧力損失調査
Ⅲ2.6本試験で想定される圧力損失の試算から、継手(エルボ)による曲がりは圧力損失に
大きな影響を与えていると推測出来る。そこで、継手を介した圧力損失差を把握すべく、継手を
複数個使用した際の水素使用下での圧力損失を測定した。
直線状との比較及び継手(エルボ)に関して以下の検証を想定した。
<エルボの想定条件>
・エルボの個数(0、1、2、4、6、10個)
・エルボによる曲がり区間の広さ(0.5m、5m)
50Aパイプで90m配管(継手10個による曲がり)を使用した。今回、評価に供したパイ
プ、ガスを下記に示す。
・パイプ:GP50AL
直管(70m)
外径=60.0mm
内径=48.2mm(規格中心値)、47.9mm(測定値)
製造・販売元:三井化学産資㈱
・ガス
:水素
不純物濃度
水=3 vol ppm未満
酸素=2 vol ppm未満
メタン=0.5 vol ppm未満
販売元:㈱エア・ガシズ北九州
測定は、以下の配管図を参考に、継手4曲がり迄は25m区間で、継手6曲がり及び10曲が
りでは任意の区間(78.5m、90m)で圧力取り出し口を取付け、この2点の圧力の差圧を
測定する。圧力取り出し口の取り付け方法は、下図に準拠する。
③(25m)
5m
2.5m
⑤(25m)
5m
2.5m
5m
5m
7m
10.5m
5m
37.5m
⑥(78.5m)
②(25m)
⑦(90m)
1m
ガスの流れ
5m
40.5m
5m
0.5m
13.5m
7m
0.5m
5m
4.5m
0.5m
①(25m)
④(25m)
図6.1
継手を介した試験体(ポリエチレン管)の配管図
流量範囲20Nm3/h~200Nm3/h、大気圧(0PaG)、常温(20℃)下での測定
とし、供給ガスの温度は圧力損失測定時に、流量や圧力損失と併せて都度測定した。直線での測
定では配管を水没させ温度の安定化を図ったが、この配管では成り行きとした。
― 65―
6.2
調査結果
各継手個数の水素圧力損失結果を表6.2-1~6.2-3及び図6.2-1に示す。70m
延長での水素圧力損失結果はⅤ1.2水素の圧力損失測定結果に準拠する。なお、流量計の保証
範囲は25~225[Nm3/h]である為、それ以外の範囲での流量実測値及びそれに伴う圧
力損失実測値は参考値として取り扱うものとする。
表6.2-1
小エルボ4曲がり(25m)
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
24.2
0.013
30.6
0.026
34.0
0.033
43.6
0.055
49.2
0.069
52.7
0.079
60.9
0.102
69.2
0.130
76.5
0.157
84.1
0.185
92.8
0.222
99.6
0.251
107.5
0.288
117.2
0.334
126.0
0.380
132.6
0.419
140.7
0.464
150.9
0.527
160.4
0.589
170.8
0.656
182.5
0.738
195.9
0.839
199.1
0.862
表6.2-2
各継手個数の水素圧力損失測定結果①(25m延長)
折返しエルボ2曲がり(25m)
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
23.7
0.006
27.8
0.013
31.8
0.023
34.9
0.029
39.2
0.037
44.4
0.049
50.3
0.061
55.9
0.076
59.7
0.087
64.2
0.099
69.8
0.116
77.2
0.140
82.3
0.158
86.7
0.171
94.2
0.198
100.3
0.223
108.8
0.256
118.4
0.301
127.2
0.343
136.2
0.386
143.7
0.426
150.5
0.466
158.0
0.506
163.8
0.541
170.4
0.581
177.4
0.625
186.2
0.681
197.9
0.760
大エルボ4曲がり(25m)
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
23.6
0.011
25.7
0.015
29.5
0.022
33.3
0.031
37.8
0.041
44.1
0.057
51.4
0.076
60.7
0.103
67.6
0.126
72.6
0.143
81.9
0.177
89.4
0.209
100.4
0.258
108.1
0.294
115.6
0.333
132.3
0.424
141.2
0.479
150.2
0.535
156.2
0.572
164.6
0.632
179.8
0.739
194.9
0.855
各継手個数の水素圧力損失測定結果②(25m延長)
エルボ無し(25m)
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
23.7
0.005
26.6
0.009
28.1
0.013
29.2
0.016
32.1
0.021
35.2
0.026
40.5
0.036
44.3
0.044
52.0
0.061
58.1
0.075
64.4
0.090
69.3
0.103
75.0
0.119
82.5
0.142
90.3
0.166
99.0
0.195
109.2
0.230
118.7
0.267
129.7
0.312
138.6
0.353
149.9
0.402
159.8
0.450
168.3
0.492
179.8
0.551
191.7
0.617
― 66―
エルボ1曲がり(25m)
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
22.9
0.005
27.2
0.010
30.0
0.020
33.6
0.025
38.4
0.034
42.6
0.042
47.5
0.053
54.7
0.070
61.2
0.087
67.8
0.103
76.9
0.132
84.4
0.157
91.2
0.180
99.0
0.209
105.5
0.233
113.0
0.263
121.2
0.299
128.6
0.331
139.0
0.380
146.6
0.419
154.2
0.458
162.5
0.504
167.4
0.530
175.1
0.574
186.8
0.644
191.0
0.670
表6.2-3 各継手個数の水素圧力損失測定結果②(78.5m、90m延長)
エルボ6曲がり(78.5m)
エルボ10曲がり(90m)
ガス流量Q 圧力損失⊿P
ガス流量Q 圧力損失⊿P
[Nm3/h]
[kPa]
[Nm3/h]
[kPa]
24.0
0.045
23.3
0.056
28.1
0.066
27.0
0.074
30.0
0.084
29.3
0.095
33.4
0.105
31.1
0.114
38.7
0.139
34.9
0.139
44.6
0.182
38.5
0.168
53.7
0.251
43.4
0.208
61.9
0.319
48.0
0.244
68.7
0.383
51.8
0.281
73.8
0.431
56.1
0.321
82.1
0.519
61.3
0.375
93.8
0.648
66.3
0.429
98.1
0.699
73.1
0.506
105.7
0.794
80.4
0.597
112.6
0.891
86.8
0.685
120.6
0.999
94.5
0.786
129.8
1.140
102.8
0.912
138.4
1.271
111.6
1.055
149.6
1.453
117.0
1.147
162.1
1.669
125.3
1.287
175.0
1.911
136.4
1.493
143.9
1.639
152.1
1.809
157.2
1.909
10
圧力損失(kPa)
1
H2実測値(小エルボ4曲がり)
H2実測値(折返しエルボ2曲がり)
0.1
H2実測値(大エルボ4曲がり)
H2実測値(エルボ無し)
0.01
H2実測値(エルボ1曲がり)
H2実測値(エルボ6曲がり[78.5m])
H2実測値(エルボ10曲がり[90m])
0.001
10
遷移域
100
1000
流量(Nm3/h)
図6.2
各継手個数の水素圧力損失測定結果
25m同一延長での圧力損失測定結果を比較した際に、継手(エルボ)無しを起点に継手個数
の増加に伴い圧力損失も大きくなる傾向が得られた。また、継手4個同士の圧力損失測定結果を
比較すると、継手間距離による圧力損失への影響は微小である為、導管設計上における圧力損失
へ決定的な要因には至らないものと推測する。
― 67―
6.3
実測値と Darcy-Weisbach の式による理論値との比較
実測値の比較を目的に、Ⅱ1.1
Darcy-Weisbach 式及びⅡ1.3.2
継手(エルボ)に
おける圧力損失式に準拠して、理論値を算出し、その比較結果を表6.3-1~6.3-7及び
図6.3-1~6.3-7に示す。
表6.3-1
小エルボ4曲がりでの水素圧力損失比較結果
ガス流量Q ガス流速V
[Nm3/h]
[Nm/s]
24.2
3.73
30.6
4.72
34.0
5.24
43.6
6.73
49.2
7.59
52.7
8.13
60.9
9.39
69.2
10.67
76.5
11.80
84.1
12.97
92.8
14.32
99.6
15.36
107.5
16.58
117.2
18.08
126.0
19.44
132.6
20.45
140.7
21.70
150.9
23.28
160.4
24.74
170.8
26.35
182.5
28.15
195.9
30.22
199.1
30.71
表6.3-2
圧力損失⊿P [kPa]
Re数 管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[-]
[-]
1719
0.037
0.016
0.013
2174
0.048
0.031
0.026
2415
0.047
0.037
0.033
3097
0.043
0.057
0.055
3495
0.042
0.070
0.069
3744
0.041
0.080
0.079
4326
0.039
0.103
0.102
4916
0.038
0.129
0.130
5435
0.037
0.155
0.157
5975
0.036
0.183
0.185
6593
0.035
0.219
0.222
7076
0.034
0.249
0.251
7637
0.033
0.285
0.288
8326
0.032
0.333
0.334
8951
0.032
0.380
0.380
9420
0.031
0.417
0.419
9995
0.031
0.464
0.464
10720
0.030
0.527
0.527
11395
0.030
0.589
0.589
12134
0.029
0.661
0.656
12965
0.029
0.746
0.738
13917
0.028
0.849
0.839
14144
0.028
0.874
0.862
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
折返しエルボ2曲がりでの水素圧力損失比較結果
ガス流量Q ガス流速V
[Nm3/h]
[Nm/s]
23.7
3.65
27.8
4.28
31.8
4.90
34.9
5.38
39.2
6.04
44.4
6.84
50.3
7.75
55.9
8.62
59.7
9.20
64.2
9.89
69.8
10.76
77.2
11.90
82.3
12.68
86.7
13.36
94.2
14.52
100.3
15.46
108.8
16.77
118.4
18.25
127.2
19.60
136.2
20.99
143.7
22.15
150.5
23.19
158.0
24.35
163.8
25.24
170.4
26.26
177.4
27.34
186.2
28.70
197.9
30.50
Re数
[-]
1683
1974
2258
2478
2783
3153
3572
3969
4239
4559
4956
5482
5844
6156
6689
7122
7726
8407
9032
9671
10204
10687
11219
11631
12100
12597
13222
14052
圧力損失⊿P [kPa]
管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[-]
0.038
0.013
0.006
0.032
0.016
0.013
0.048
0.029
0.023
0.046
0.034
0.029
0.045
0.041
0.037
0.043
0.051
0.049
0.041
0.064
0.061
0.040
0.077
0.076
0.039
0.086
0.087
0.038
0.098
0.099
0.038
0.113
0.116
0.036
0.135
0.140
0.036
0.151
0.158
0.035
0.166
0.171
0.034
0.192
0.198
0.034
0.215
0.223
0.033
0.248
0.256
0.032
0.288
0.301
0.032
0.327
0.343
0.031
0.370
0.386
0.031
0.407
0.426
0.030
0.442
0.466
0.030
0.482
0.506
0.030
0.514
0.541
0.029
0.551
0.581
0.029
0.593
0.625
0.029
0.646
0.681
0.028
0.721
0.760
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
― 68―
表6.3-3
ガス流量Q ガス流速V
[Nm3/h]
[Nm/s]
23.6
3.64
25.7
3.96
29.5
4.55
33.3
5.13
37.8
5.83
44.1
6.80
51.4
7.92
60.7
9.36
67.6
10.42
72.6
11.19
81.9
12.62
89.4
13.78
100.4
15.48
108.1
16.66
115.6
17.82
132.3
20.39
141.2
21.76
150.2
23.15
156.2
24.08
164.6
25.37
179.8
27.71
194.9
30.04
表6.3-4
ガス流量Q ガス流速V
[Nm3/h]
[Nm/s]
23.7
3.65
26.6
4.10
28.1
4.33
29.2
4.50
32.1
4.95
35.2
5.43
40.5
6.24
44.3
6.83
52.0
8.02
58.1
8.96
64.4
9.93
69.3
10.68
75.0
11.56
82.5
12.72
90.3
13.92
99.0
15.26
109.2
16.83
118.7
18.30
129.7
19.99
138.6
21.36
149.9
23.11
159.8
24.63
168.3
25.94
179.8
27.71
191.7
29.55
大エルボ4曲がりでの水素圧力損失比較結果
Re数
[-]
1676
1825
2095
2365
2684
3132
3650
4310
4800
5155
5816
6349
7130
7676
8209
9395
10027
10666
11092
11689
12768
13840
圧力損失⊿P [kPa]
管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[-]
0.038
0.015
0.011
0.035
0.017
0.015
0.049
0.029
0.022
0.047
0.035
0.031
0.045
0.044
0.041
0.043
0.058
0.057
0.041
0.076
0.076
0.039
0.102
0.103
0.038
0.124
0.126
0.037
0.141
0.143
0.036
0.175
0.177
0.035
0.204
0.209
0.034
0.252
0.258
0.033
0.288
0.294
0.033
0.325
0.333
0.031
0.415
0.424
0.031
0.467
0.479
0.030
0.522
0.535
0.030
0.561
0.572
0.030
0.617
0.632
0.029
0.725
0.739
0.028
0.839
0.855
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
直線(エルボ無し)での水素圧力損失比較結果
Re数
[-]
1683
1889
1995
2074
2279
2500
2876
3146
3693
4126
4573
4921
5326
5859
6412
7030
7755
8429
9210
9842
10645
11348
11951
12768
13613
圧力損失⊿P [kPa]
管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[-]
0.038
0.011
0.005
0.034
0.013
0.009
0.032
0.013
0.013
0.049
0.022
0.016
0.047
0.026
0.021
0.046
0.030
0.026
0.044
0.038
0.036
0.043
0.044
0.044
0.041
0.058
0.061
0.040
0.070
0.075
0.038
0.083
0.090
0.038
0.094
0.103
0.037
0.108
0.119
0.036
0.127
0.142
0.035
0.148
0.166
0.034
0.174
0.195
0.033
0.206
0.230
0.032
0.238
0.267
0.032
0.278
0.312
0.031
0.312
0.353
0.030
0.357
0.402
0.030
0.399
0.450
0.030
0.437
0.492
0.029
0.490
0.551
0.029
0.548
0.617
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
― 69―
表6.3-5
エルボ1曲がりでの水素圧力損失比較結果
ガス流量Q ガス流速V Re数
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
22.9
3.53
1626
27.2
4.19
1931
30.0
4.62
2130
33.6
5.18
2386
38.4
5.92
2727
42.6
6.56
3025
47.5
7.32
3373
54.7
8.43
3884
61.2
9.43
4345
67.8
10.45
4814
76.9
11.85
5460
84.4
13.01
5993
91.2
14.05
6476
99.0
15.26
7029
105.5
16.26
7491
113.0
17.41
8023
121.2
18.68
8606
128.6
19.82
9131
139.0
21.42
9869
146.6
22.59
10409
154.2
23.76
10949
162.5
25.04
11538
167.4
25.80
11886
175.1
26.98
12433
186.8
28.79
13263
191.0
29.43
13562
表6.3-6
ガス流量Q ガス流速V
[Nm3/h]
[Nm/s]
24.0
3.69
28.1
4.33
30.0
4.62
33.4
5.15
38.7
5.96
44.6
6.87
53.7
8.28
61.9
9.55
68.7
10.58
73.8
11.37
82.1
12.65
93.8
14.46
98.1
15.12
105.7
16.29
112.6
17.35
120.6
18.59
129.8
20.00
138.4
21.33
149.6
23.06
162.1
24.98
175.0
26.97
※
圧力損失⊿P [kPa]
管摩擦係数λ
理論値 実測値
[-]
0.039
0.012
0.005
0.033
0.014
0.010
0.048
0.024
0.020
0.047
0.030
0.025
0.045
0.037
0.034
0.043
0.044
0.042
0.042
0.054
0.053
0.040
0.068
0.070
0.039
0.083
0.087
0.038
0.099
0.103
0.037
0.123
0.132
0.036
0.145
0.157
0.035
0.166
0.180
0.034
0.192
0.209
0.033
0.214
0.233
0.033
0.242
0.263
0.032
0.273
0.299
0.032
0.303
0.331
0.031
0.348
0.380
0.031
0.382
0.419
0.030
0.418
0.458
0.030
0.459
0.504
0.030
0.483
0.530
0.029
0.523
0.574
0.029
0.587
0.644
0.029
0.610
0.670
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
エルボ6曲がりでの水素圧力損失比較結果
圧力損失⊿P [kPa]
Re数 管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[-]
[-]
1701
0.038
0.042
0.045
1994
0.032
0.050
0.066
2129
0.048
0.081
0.084
2373
0.047
0.098
0.105
2745
0.045
0.126
0.139
3164
0.043
0.161
0.182
3814
0.041
0.223
0.251
4398
0.039
0.286
0.319
4875
0.038
0.343
0.383
5238
0.037
0.389
0.431
5828
0.036
0.469
0.519
6662
0.035
0.594
0.648
6966
0.034
0.643
0.699
7504
0.033
0.733
0.794
7996
0.033
0.821
0.891
8564
0.032
0.927
0.999
9216
0.032
1.056
1.140
9830
0.031
1.185
1.271
10624
0.030
1.361
1.453
11511
0.030
1.570
1.669
12428
0.029
1.801
1.911
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
― 70―
表6.3-7
ガス流量Q ガス流速V
[Nm3/h]
[Nm/s]
23.3
3.60
27.0
4.15
29.3
4.52
31.1
4.79
34.9
5.38
38.5
5.94
43.4
6.69
48.0
7.40
51.8
7.98
56.1
8.65
61.3
9.45
66.3
10.22
73.1
11.26
80.4
12.39
86.8
13.38
94.5
14.56
102.8
15.83
111.6
17.20
117.0
18.03
125.3
19.31
136.4
21.01
143.9
22.17
152.1
23.44
157.2
24.23
エルボ10曲がりでの水素圧力損失比較結果
圧力損失⊿P [kPa]
Re数 管摩擦係数λ ※
理論値 実測値
[-]
[-]
1656
0.039
0.049
0.056
1913
0.033
0.059
0.074
2081
0.049
0.095
0.095
2208
0.048
0.105
0.114
2478
0.046
0.128
0.139
2735
0.045
0.152
0.168
3081
0.043
0.187
0.208
3409
0.042
0.224
0.244
3675
0.041
0.255
0.281
3982
0.040
0.294
0.321
4352
0.039
0.344
0.375
4706
0.038
0.395
0.429
5187
0.037
0.469
0.506
5707
0.036
0.556
0.597
6162
0.035
0.637
0.685
6707
0.034
0.740
0.786
7294
0.034
0.860
0.912
7921
0.033
0.997
1.055
8307
0.033
1.085
1.147
8895
0.032
1.226
1.287
9679
0.031
1.427
1.493
10213
0.031
1.572
1.639
10799
0.030
1.738
1.809
11160
0.030
1.844
1.909
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
圧力損失(kPa)
1
0.1
H2理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
H2実測値
0.01
10
遷移域
100
流量(Nm3/h)
図6.3-1
小エルボ4曲がりでの水素圧力損失比較結果
― 71―
1000
1
圧力損失(kPa)
0.1
0.01
H2理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
H2実測値
0.001
10
遷移域
100
1000
流量(Nm3/h)
図6.3-2
折返しエルボ2曲がりでの水素圧力損失比較結果
圧力損失(kPa)
1
0.1
H2理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
H2実測値
0.01
10
遷移域
100
流量(Nm3/h)
図6.3-3
大エルボ4曲がりでの水素圧力損失比較結果
― 72―
1000
1
圧力損失(kPa)
0.1
0.01
H2理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
H2実測値
0.001
10
遷移域
100
1000
流量(Nm3/h)
図6.3-4
直線(エルボ無し)での水素圧力損失比較結果
1
圧力損失(kPa)
0.1
0.01
H2理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
H2実測値
0.001
10
遷移域
100
流量(Nm3/h)
図6.3-5
エルボ1曲がりでの水素圧力損失比較結果
― 73―
1000
10
圧力損失(kPa)
1
0.1
H2理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
H2実測値
0.01
遷移域
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図6.3-6
エルボ6曲がりでの水素圧力損失比較結果
10
圧力損失(kPa)
1
0.1
H2理論式(Darcy-Weisbach式、遷移域=乱流域)
H2実測値
遷移域
0.01
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図6.3-7
エルボ10曲がりでの水素圧力損失比較結果
各延長を Darcy-Weisbach の式に適用し、継手の個数に応じた継手分の圧力損失を加算するこ
とで、実体に近い値を導くことが可能であると確認出来た。今回の試験では、圧力損失理論値よ
りも実測値のほうが低い結果となったが、理論式内では継手の形状による変数を含まないため継
手毎に増減する可能性が考えられる。そのため継手の圧力損失が重要となる場合においては個々
の圧損を確認する必要があると考える。
― 74―
7. 調査結果まとめ
水素配管時に重要となる圧力損失について、様々な条件下での水素圧力損失を確認し、更に
Darcy-Weisbach の式やその他の圧力損失要因式を用いた圧力損失計算結果と、様々な条件下での
水素圧力損失実測値と比較し、計算による水素圧力損失の妥当性を調査した。
その結果は、以下に示した(1)~(4)の圧力損失結果比較で、圧力損失理論値が概ね圧力損
失実測値を再現していることを確認した。但し、いずれも完璧に一致する訳ではなく、この差につ
いての原因は明確には分かっておらず、恐らく脈動による系内の圧力挙動変化、或いは測定装置特
有の誤差要因であると推測する。今後の暫定実用式導出においても、このバラツキを考慮した上で
導出する必要があることを把握した。
(1)
水素と他気体との圧力損失結果比較にて、密度が小さい気体程圧力損失も小さくなること
から、圧力損失の要因には気体の密度が大きく寄与することを確認出来た。
(2)
表面粗度による圧力損失結果比較にて、ポリエチレン管と鋼管の圧力損失実測値が殆ど一
致することを確認し、都市ガス同等の流量域では管摩擦係数λによる圧力損失への影響が小
さいことを確認出来た。
(3)
コイル管による圧力損失結果比較にて、螺旋管における圧力損失式は完全な乱流域におい
ては、直線状の管と同様に、いずれのコイル管でも圧力損失実測値を再現することを確認出
来た。
(6)
継手(エルボ)による圧力損失結果比較にて、継手個数の増加に伴い、概ね理論値通り、
圧力損失も大きくなることを確認出来た。
― 75―
Ⅵ.水素暫定実用式の導出
1.水素暫定実用式の導出
1.1
暫定実用式導出に向けた課題と方策
V.圧力損失測定試験結果から、Darcy-Weisbach の式で算出した圧力損失理論値は、水素を流
した際でも圧力損失実測値を概ね再現していることを確認した。但し、Darcy-Weisbach の式その
もので実際の導管設計を行うと、配管依存の係数(レイノルズ数:Re、相対粗さ:ε/D、管摩
擦係数:λ)を流量から流速に変換した後に、流速に応じて変更しなければいけない為、導管設計
時に活用し易い形態とした実用式が望ましい。
上記の理由から、Darcy-Weisbach の式に基づき簡略化した暫定実用式の導出を試みるが、それ
に当り、以下の点を考慮して実施した。
1)導管設計による配管は、現実の施工では土中の障害物により変更を余儀なくされ継手の数
(特にエルボ)が増加することがある為、設計の時点では継手の数を限定するのは困難であ
る。
2)導管設計における圧力損失の算定には流量や流量係数等の尐ないパラメータから問うのから
求められるように、簡便な算出手法が一般的に活用されている。
(流量に応じてレイノルズ数を算出し、ムーディ線図やコールブルックの式を用いて都度流
量毎の管摩擦係数:λを求めるのは設計実務においては比較的複雑で時間を要する。
)
3)Darcy-Weisbach の式中の配管依存の係数(管摩擦係数:λ等)を流量に依らず固定値で扱
うことで式の簡略化が可能だが、これら係数は流量により変化する為、流量によっては実測
値との誤差が大きくなる。
これらの課題を解決する為の方策として、都市ガス導管設計の考え方や導管材料使用平均実績か
ら水素の使用の前提条件を絞り込み、試験実測値に余裕分として圧力損失要因を加味した水素特有
の暫定実用式を導出することとした。
1.2
暫定実用式の提示
1.2.1
想定される水素使用設計条件下での実測値と既存理論式との比較
暫定実用式の導出にあたり、係数固定の簡略化した式では流量範囲よって実測値との乖離が大
きくなる場合があることから、実際に使用する特定流量範囲での活用を想定した。その想定にお
いて、現時点では指標とする水素使用機器の想定が困難である為、都市ガスにおける基準を参考
にして設定を行った。
― 76―
表1.2.1-1
項目
想定される水素使用設定条件
条件
備考
エルボ1個当りの等価管長は3mとする
(実測値から算出)
継手数
50A:25mにつき4個
エルボ個数は日本ガス協会による
使用実績からの試算による
(エルボ数)
使用流量
()内は供給
圧力を仮定
① 30~40Nm3/h(2.5kPa)
② 40~70 Nm3/h(5kPa)
現行の都市ガス設計基準と同等な
配管選定を水素において行う際の使用流量
③ 70~120Nm3/h(10kPa)
温度
0℃
日本国内での埋設深度を想定した場合の最低温度
上記の表の条件から、Ⅴ6.継手(エルボ)による圧力損失への影響調査で測定した継手無し
での圧力損失結果を基に、温度を測定温度(20℃)から0℃での圧力損失に換算し(温度変化
による内径、延長の収縮も加味)、更に継手(エルボ)を4個分追加した際の圧損を算出するこ
とで、余裕分や継手(エルボ)による曲がり分も含む圧力損失想定値を導出した。
表1.2.1
余裕分も含む圧力損失実測値と既存理論式及び圧力損失想定値との比較
(測定条件:50Aポリエチレン管、水素使用、25m延長、継手による曲がり無し)
圧力損失⊿P [kPa]
実測値
理論値
実測値
(温度誤差分、継手4個分加味)
0.038
0.011
0.005
0.010
0.034
0.013
0.009
0.015
0.032
0.013
0.013
0.019
0.049
0.022
0.016
0.026
0.047
0.026
0.021
0.033
0.046
0.030
0.026
0.040
0.044
0.038
0.036
0.053
0.043
0.044
0.044
0.064
0.041
0.058
0.061
0.087
0.040
0.070
0.075
0.106
0.038
0.083
0.09
0.127
0.038
0.094
0.103
0.145
0.037
0.108
0.119
0.167
0.036
0.127
0.142
0.199
0.035
0.148
0.166
0.232
0.034
0.174
0.195
0.273
0.033
0.206
0.23
0.322
0.032
0.238
0.267
0.373
0.032
0.278
0.312
0.436
0.031
0.312
0.353
0.492
0.030
0.357
0.402
0.561
0.030
0.399
0.45
0.628
0.030
0.437
0.492
0.687
0.029
0.490
0.551
0.770
0.029
0.548
0.617
0.862
※ Re数>2000で乱流域と見なした場合
ガス流量Q ガス流速V Re数 管摩擦係数λ
[Nm3/h]
[Nm/s]
[-]
[-]
23.7
26.6
28.1
29.2
32.1
35.2
40.5
44.3
52
58.1
64.4
69.3
75
82.5
90.3
99
109.2
118.7
129.7
138.6
149.9
159.8
168.3
179.8
191.7
3.65
4.10
4.33
4.50
4.95
5.43
6.24
6.83
8.02
8.96
9.93
10.68
11.56
12.72
13.92
15.26
16.83
18.30
19.99
21.36
23.11
24.63
25.94
27.71
29.55
1683
1889
1995
2074
2279
2500
2876
3146
3693
4126
4573
4921
5326
5859
6412
7030
7755
8429
9210
9842
10645
11348
11951
12768
13613
※
― 77―
圧力損失(kPa)
1.00
0.10
H2理論値(Darcy-Weisbach式)
H2実測値
H2想定値(安全率、継手4個分加味)
0.01
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図1.2.1
余裕分も含む圧力損失実測値と既存理論式及び圧力損失想定値との比較
(測定条件:50Aポリエチレン管、水素使用、25m延長、継手による曲がり無し)
1.2.2
暫定実用式の提示と既存理論式との比較(Kh値固定)
暫定実用式導出においては、計算値よりも圧力損失実測値が大きいと水素供給が滞る可能性が
ある為、水素特有の係数を既存の理論値から余裕分等を含む実測値を満足する範囲で選定する必
要がある。なお、水素特有の係数は、既存の Darcy-Weisbach の式中の流速:Vを流量:Qに置
き換え、更に流量:Q、管延長:L、管内径:D以外を一括り纏めたものとして取り扱う。
既存の Darcy-Weisbach の式から流速:Vを流量:Qに置き換えると、
(11)式のように変換
出来る。
Q 2 ρ L
Pa
P  
1.62 106 π2  D5
-(11)
また、内径をメートル単位:Dからセンチメートル単位:Dcに換算すると、(12)式のよ
うになる。
Q 2 ρ  L
 Pa
P  
5
4
2
1 . 62  10 π  D c

-(12)
(12)式の流量:Q、延長:L、内径:Dc以外の係数を一括りにしたものを水素流量
係数:Khと定義し、Kh値を定義した後の圧力損失導出式は(14)式のように定義出来る。
― 78―
Kh 
λ ρ
1 . 62  10  4 π 2
 P  Kh
Q
2
L
Dc
5
 Pa 
-(13)
-(14)
この(14)式を用いて、想定される水素使用設計条件下での実測値との整合を実施し、実
測値や温度誤差分を加味した上で、表1.2.1-1の想定されるそれぞれの使用流量範囲で
の水素流量係数:Khを定義した。なお、Kh値を使用した際に、標準条件(23℃、継手無
し)で入力しても、余裕分として圧力損失が大きくなる条件(0℃、継手4個含む)下での圧
力損失が算出出来るように、Kh値を補正した。その結果を下表、下図、及び(15)式~
(17)式に示す。
表1.2.2
余裕分も含む圧力損失実測値と暫定実用式との比較(Kh値固定)
(測定条件:50Aポリエチレン管、水素使用、25m延長、継手による曲がり無し)
ガス流量Q
[Nm3/h]
23.7
26.6
28.1
29.2
32.1
35.2
40.5
44.3
52
58.1
64.4
69.3
75
82.5
90.3
99
109.2
118.7
129.7
138.6
149.9
159.8
168.3
179.8
191.7
圧力損失⊿P [kPa]
理論値
実測値
(Kh値①②③使用) (温度誤差分、継手4個分加味)
0.010
0.015
0.019
0.026
0.033
0.033
0.040
0.040
0.053
0.053
0.064
0.064
0.110
0.087
0.135
0.106
0.156
0.127
0.168
0.145
0.203
0.167
0.243
0.199
0.292
0.232
0.355
0.273
0.420
0.322
0.373
0.436
0.492
0.561
0.628
0.687
0.770
0.862
― 79―
圧力損失(kPa)
1.00
0.10
H2理論値(Darcy-Weisbach式)
H2理論値(Darcy-Weisbach式、水素流量係数Kh①使用)
H2理論値(Darcy-Weisbach式、水素流量係数Kh②使用)
H2理論値(Darcy-Weisbach式、水素流量係数Kh③使用)
H2実測値
①
③
②
H2想定値(温度誤差分、継手4個分加味)
0.01
使用流量範囲
10
100
1000
流量(Nm3/h)
図1.2.2
余裕分も含む圧力損失実測値と暫定実用式との比較(Kh値固定)
(測定条件:50Aポリエチレン管、水素使用、25m延長、継手による曲がり無し)
Kh①  3.34
-(15)
Kh②  3.39
-(16)
Kh③  3.10
-(17)
上記の検討により、水素流量係数:Khを使用流量範囲により使い分けることで、任意の流量
範囲での実測値との整合を可能とした。但し、Kh値自身が固定値であり、傾きは一定である為、
適用流量範囲外での使用は実測値と整合しないことに注意が必要である。
1.2.3
暫定実用式の提示と既存理論式との比較(Kh値変動)
1.2.2で暫定実用式について紹介したが、水素流量係数:Khを固定値で扱うと、適用範
囲外の使用では現実と合わない値が算出される。そこで、Kh値を流量:Qの関数として取り扱
うことで、より Darcy-Weisbach の式に整合させることが期待出来る為、以下に検討を行った。
― 80―
検討に当たっては、まず実測により得られた流量-圧力損失の関係に継手(エルボ)分の圧力
損失等の余裕分を加算し、その結果を Darcy-Weisbach の式によりKh値を逆算し求めた。それ
により得られたKh値と流量の関係から近似式を求め、(18)式のようにKh値の関数とした。
表1.2.3
安全率も含む圧力損失実測値と暫定実用式との比較(Kh値変動)
(測定条件:50Aポリエチレン管、水素使用、25m延長、継手による曲がり無し)
ガス流量Q 水素流量係数Kh
[Nm3/h]
[-]
23.7
26.6
28.1
29.2
32.1
35.2
40.5
44.3
52
58.1
64.4
69.3
75
82.5
90.3
99
109.2
118.7
129.7
138.6
149.9
159.8
168.3
179.8
191.7
4.01
3.92
3.88
3.85
3.78
3.71
3.61
3.54
3.43
3.35
3.29
3.24
3.19
3.13
3.07
3.02
2.96
2.91
2.86
2.82
2.78
2.74
2.71
2.68
2.64
理論値
(Kh値使用)
0.022
0.027
0.029
0.032
0.037
0.044
0.057
0.067
0.089
0.109
0.131
0.149
0.172
0.205
0.241
0.284
0.339
0.394
0.462
0.520
0.599
0.672
0.738
0.831
0.933
圧力損失⊿P [kPa]
実測値
(温度誤差分、継手4個分加味)
0.010
0.015
0.019
0.026
0.033
0.040
0.053
0.064
0.087
0.106
0.127
0.145
0.167
0.199
0.232
0.273
0.322
0.373
0.436
0.492
0.561
0.628
0.687
0.770
0.862
10
0.10
H2理論値(Darcy-Weisbach式)
H2理論値(Darcy-Weisbach式、水素流量係数Kh使用)
H2実測値
H2想定値(温度誤差分、継手4個分加味)
水素流量係数Kh
累乗 (水素流量係数Kh)
0.01
10
100
1
1000
流量(Nm3/h)
図1.2.3
安全率も含む圧力損失実測値と暫定実用式との比較(Kh値変動)
(測定条件:50Aポリエチレン管、水素使用、25m延長、継手による曲がり無し)
― 81―
水素流量係数Kh(-)
圧力損失(kPa)
1.00
Kh  7.56  Q  0 .2
-(18)
近似式としては今回採用した累乗関数以外にも多くあり、かつより整合性が高い関数も存在
するが、本来の実用式の意図である“簡便に計算可能なこと”を踏まえると累乗関数が適して
いると考えた。但し、(18)式は流速ではなく流量の関数であり、管口径が異なるとKh値
もそれぞれ異なる。今回は、一例として内径が50Aとしての(18)式を導出したが、他の
口径での使用の際は、別途導出する必要がある。
― 82―
Ⅶ.総括
本事業では、水素導管における圧力損失解析について、下記事項を調査した。
(1)水素パイプラインにおける圧力損失測定
・各圧力損失測定結果から得られた気体依存のパラメータ(密度:ρ、管摩擦係数:λ)、
及び配管依存のパラメータ(延長:L、口径:D)を Darcy-Weisbach の式に適用するこ
とにより、試験流量範囲(20~200Nm3/h)において、水素やヘリウム等の低比
重の気体でも圧力損失実測値を再現することが確認出来た。
(2)水素暫定圧力式の算出
・既存の圧力解析式である Darcy-Weisbach の式をベースに検討した結果、水素使用流量範
囲による使い分けを行うことで、任意の流量範囲での実測値との整合を可能とする水素の
暫定実用式を導出した。
― 83―
<参考文献>
1)平成19年度地方都市ガス事業
天然ガス化促進対策調査
「水素供給システム安全性技術調査」
(樹脂系材料の仕様検討)調査報告書
2)平成19年度地方都市ガス事業
三井化学㈱
天然ガス化促進対策調査
「水素供給システム安全性技術調査」
(内管の仕様検討)調査報告書 日立金属㈱p41-87
3)
「導管網解析ハンドブック」:
(社)日本ガス協会
昭和62年8月
4)
「基礎流体力学(基礎流体力学編集委員会編)」
:
産業図書㈱(H18.8.9)
5)
「水力学-流れ現象の基礎と構造」:
6)
「機械工学便覧
基礎編
A5
7)
「化学工学便覧改訂5版」
8)
「岩波
実教出版(1982)p131-132
流体工学」
:
日本機械学会(1999)p78-79,84
:(社)化学工学会
理化学辞典第5版」:
岩波書店㈱
p82-85,260-269
(1998.2.20)
9)
「水素の基本特性」:
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
10)板橋明吉
p162-163
状況別インデックス
:「管路の圧力損失係数に関する巨視的評価(第2報,エルボの損失係数)」
日本機械学会論文集
Vol.73,No.725,176-181
(2007)
11)L.F.Moody: Functional Factor for pipe flow,ASTM Trans.,
Vol.66,pp671-684,
(1944)
12)荻野正男、梶本光廣
原子力安全基盤機構
:
「事故時の格納容器内水素挙動に関する大規模試験」
原子力システム安全部
13)「地中温度等に関する資料」
:
農林水産省
14)「水素ヒヤリハット事例解析集」:
(2009年10月23日)
気象庁
九州大学
昭和57年3月
統合技術会議
(2008年1月25日)
15)「三井PEガス導管システム」カタログ:三井化学産資㈱
16)「三井給水給湯配管システム
17)「ガス用ヒシパイプPE
エルメックス」
:
三井化学㈱
ガス用ヒシPE継手」:
18)「エスロンガス用ポリエチレン管・継手」
:
積水化学㈱
19)「日立ガス用ポリエチレン配管システム」カタログ
20)「ガス配管用管継手類」カタログ
21)「防爆規格」
:
㈱ノーケン
22)「熱流体力学」木下祥次
23)「気体の粘度」流体工業㈱
:
三菱樹脂㈱
:
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日立金属㈱
日立金属㈱
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24)「熱による鋼管の膨張と荷重」住友金属工業㈱
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