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1 統合・内分泌学中間試験対策 生殖生理・組織学 解説篇 rev.β
統合・内分泌学中間試験対策 生殖生理・組織学 解説篇 rev.β Preface 遅くなって申し訳ないです。解説というよりは覚え書きのレベルですがご容赦を。誤りも多々あると思いますが是非ともご一報を。 内分泌はいまいちピンとこない。 MMIII May.23 Tsukasa OHARA<[email protected]> 2002 中間試験 問 不妊治療で体外受精を行った女性(B,donor)野過剰排卵された卵子を用い、別の卵巣機能不全患者(A,recipient) でも体外受精を行った。図はこの時の donor と recipient の血漿 estradiol(E2,●)と progesterone(P4,○)の変動 とホルモン投与法を示している。 (図は省略)以下の問いに答えなさい。 (26 点) (1) estradiol と progesterone の変動パターンは donor と recipient でほぼ同じである。 (6 点) a) estradiol の I,II の時期における生理的機能を述べなさい。 b) progesterone の III の時期における生理機能を述べなさい。 I、II の時期は卵巣周期の「卵胞期」にあたるものなので、そこでのエストロゲンの作用といえば子宮に対しては「子 宮内膜機能層の増殖、内膜の肥厚、内膜腺の形成」です。下垂体に対しては I の時期では抑制的に作用し LH、FSH の 分泌を抑制(負のフィードバック) 、II の時期にはその逆に LH、FSH の分泌を促進して(正のフィードバック) 、LH サ ージを誘引し、排卵を誘起します。 III の時期は「黄体期」にあたるもので、ここでのプロゲステロンの作用は子宮にたいしては「内膜の浮腫化、分泌期 の誘因、初期妊娠の維持」下垂体に対してはエストロゲンの LH、FSH への負のフィードバックを増強します。さらに、 視床下部に作用して基礎体温の上昇も起こします。 (2) Donor では、排卵誘発のため PMG(post menopausal gonadotropin)を day3 から day8 まで用い、さ らに day8 の↑の時点に hCG(human chorionic gonadotropin)を投与した。(注:postmenopausal: 閉経後) (7 点) a) PMG にはどのようなホルモンが含まれていると考えられるか。 b) PMG と hCG は、それぞれ何を目的として投与されたか。 c) Esradiol レベルの day11-14 における低下と、その後の回復の細胞内メカニズムを述べなさい。 PMG を調べると「閉経期性腺刺激ホルモン」とのことです。そんなものは知らないですが「閉経後」の「ゴナドト 1 ロピン」なのでそのまま LH、FSH だろうと。グラフを見ると Day 2 では E2(エストロゲン)が検出されていないの で PMG によって E2 の分泌が促された、あるいは文中に「排卵を誘発するため」とある、などから類推しても間違っ ちゃあいないでしょう。 b)で目的を聞いていますが、リード文で「排卵を誘発するため」とあります。投与順が PMG、hCG の順であるので、 求められているのは PMG=卵胞の発育、成長を促す、hCG=排卵を誘発する、とすればこの投与順に意味が与えられ ます。ちなみに PMG は LH と FSH の混合剤、hCG は LH 作用を示す、とのことなのでこういう解釈でいいのではな いでしょうか。 c)はプリントによると「LH surge により theca cell 細胞内の P450、CYP17 の活性が消失、エストロゲンが低下」 とあります。排卵によって卵胞が黄体に移行する時、卵胞細胞がアンドロゲンからエストロゲンへの変換を停止すると いうことなので、 「低下」については説明がつきます。その後の回復機構ですが、標準生理によると「排卵後黄体にとり 込まれた卵胞膜細胞からエストロゲンが分泌される」とあります。細胞内機構についてはよく分かりません。 (3) この処置により donor から 14 個の卵を採取し、7 個の卵子を用いて体外受精を行い、5 個の受精卵を donor の子宮に戻した。 (5 点) a) 妊娠が成立したかどうかを最初に検出する方法はなにか。また、なぜその方法で診断可能かを説明せよ。 b) 妊娠が成立した場合としなかった場合とで、estradiol、progesterone の変動パターンはこの後どのよ うに異なるか。 妊娠成立を検出する方法といえば hCG の検出でしょう。hCG は着床した胚胞から分泌されるので妊娠が成立しない と分泌されません。妊娠検査に使われています。 妊娠が成立した場合には hCG は LH 様の作用を示すため、プロゲステロンは分泌を促進します。エストラジオールに ついては、減少してくれないと妊娠が維持できないので、減少していきます。妊娠黄体が退縮した後は胎盤からプロゲ ステロンが供給されるため、さらに濃度は上昇します。妊娠が成立しなかった場合は、プロゲステロンもエストロゲン も黄体がそのまま退縮するため、濃度は減少します。 (4) donor から採取した卵のうち 7 個を用い、recipient でも体外受精を行ってそのうち 5 個の受精卵を day16 から day18 に recipient の子宮に戻した。 (8 点) a) donor と recipient はほぼ同じ血液ホルモン変動を示しているが、両者で投与されたホルモンが異なる。 Recipient では、何を目的としてこのようなタイムスケジュールで 2 種のホルモン投与がなされたかを考 察しなさい。 b) 妊娠が確認された場合、recipient では、妊娠維持のために、donor では行わなかったホルモン補充が必 要となる。何を何のために投与するか、また、それはいつまで持続する必要があるかを書きなさい。 2 レシピエントは「卵巣機能不全」ということで、エストロゲン、プロゲステロンの投与を受けています。 (ドナーが PMG、 hCG の投与を受けていたのは、LH、FSH の分泌に異常にあったと考えるべきでしょう)おそらく、レシピエントでは 卵胞成熟機構あるいは卵巣での排卵に異常があると考えられます。卵巣機能のみの不全であれば、子宮におけるエスト ロゲン、プロゲステロンの作用は正常ということです。 (逆に、子宮のほうに異常があれば妊娠できない)そうすると、 この 2 種類のホルモン投与は、子宮内膜の肥厚、および湿潤(つまり着床の準備)のために行われたものと考察できま す。 レシピエントでは黄体(妊娠黄体)が形成されていないような気がします。プロゲステロン供給が十分にないと妊娠 が維持できないはずです。よって、プロゲステロンの投与が引き続き必要だと考えられます。これは、子宮内膜の崩落 を防ぐためです。期間については、標準生理に「6∼9 週にかけて胎盤は妊娠に必要なプロゲステロンを十分に供給で きるようになる」とあるのでそのぐらい必要でしょう。 問 視床下部—下垂体—性腺系のホルモンについて以下の a∼d の記述の中で間違っているものを挙げなさい。(複数回 答可) (4 点) (1) GnRH 細胞は、 a.pulse generator である。 b.Estrogen receptor を持つ。 c.Estrogen による positive,negative の feedback を受ける。 d.脳下垂体に存在する。 GnRH 細胞は pulse generator で、GnRH のパルス状分泌が性ホルモン分泌のパルスを生み出します。 エストロゲンから正、負のフィードバックをうけますが、エストロゲンレセプターは持ちません。より上位の細胞から の情報に反応するだけです。また、視床下部の内側視索前野と弓状核に存在しています。 (2) 以下のホルモンは分娩を促進する作用がある。 a.プロスタグランジン b.オキシトシン c.estradiol d.progesterone 分娩を促進するホルモンはプロスタグランジン、オキシトシン、エストロゲンです。プロゲステロンは妊娠維持に働 くホルモンなので、分娩時には抑制的に働きます。 3 問 精巣における精子の発生過程 spermatogenesis について、減数分裂と関連づけて述べなさい。 (15 点) われらが高野先生の担当分野です。生殖生理の問題に比べてなんとありがたい問題なのでしょう。出発点は原始生殖 細胞(二倍体、2N)です。これが体細胞分裂を起こして精粗細胞(二倍体、2N)になります。ここから減数分裂には いります。精粗細胞が一次精粗細胞(二倍体、4N)になり、これが2つの二次精粗細胞(半数体、2N)になります。 ここまでが第一減数分裂です。この二次精粗細胞がそれぞれ2つの精子細胞(半数体、N)になります。この過程が第 二減数分裂です。これだけでは寂しいので、もうすこし細かくすれば、精粗細胞は精細管の基底膜側にあり、Ad、Ap、 B にわけられます。B のステージに入った精粗細胞が減数分裂に入ります。一次精粗細胞は PL 期、L 期、Z 期、P 期、 D 期にわけられ、精細胞のなかで最大なのは P 期(緻密期)です。また、精子は発生段階を進むにつれて基底膜側から 精細管の中心部に移動していきます。精子細胞の時期が最も小さな時期で、精祖細胞から精子細胞ができるまで 64 日 かかります。 問 子宮の性周期を 3 期に分けて、子宮内膜の構造変化について述べなさい。 (10 点) 子宮の性周期は、増殖期、分泌期、月経期の 3 つに分けられ、28 日周期を繰り返します。増殖期は月経が終わった 時から排卵までの 14 日ほど。月経後には粘膜の基底層のみ(1mm ほど)が残っている状態で、エストロゲンの作用 で上皮細胞が増殖して、基底層の上に機能層を形成します。排卵直前には 6mm ほどの厚さになります。これは血管の 発達や分泌腺の発達によります。また、血管は機能層では次第にらせん状を示します。分泌期にはプロゲステロンの働 きによってエストロゲンの作用(上皮細胞の増殖)が抑制され、機能層の肥厚は止まります。また、プロゲステロンに よって内膜は細胞が膨大して浮腫状になり、分泌腺から分泌液を放出して、着床の準備が完全に整います。月経期には 黄体の退縮とともにホルモンが減少します。ラセン動脈が動静脈吻合したり、強く収縮することにより、子宮内膜が虚 血状態となり、壊死し、崩落します。このとき、機能層のみが崩落し、基底層は残存します。 4 2001 中間 問 生殖生理に関する以下の問いに答えなさい。 1.性の分化について、以下の文の(a) ∼(h)の中に適切な語句を入れなさい。 ヒトの性は、(a)染色体の(b)遺伝子の発現の有無で決まる。(b)蛋白はさらに(c)、(d)などの遺伝子転写を促し、 これらの因子は性腺原基を(e)へと分化させる。しかし、先天性副腎低形成症を伴う低ゴナドトロピン性性腺機能低 下症の原因遺伝子として同定された(f)染色体上の(g)遺伝子が過剰発現すると、(b)の有無にかかわらず性腺原基を (h)に分化しうる。 解答だけを示します。 (a)Y (b)SRY (c)MIS(d) SF-1 (e)精巣 (f)X (g)DAX-1 (h)卵巣 2.女性性周期に関する以下の問いに答えなさい (1)Estrogen の negative あるいは positive フィードバックが、a)卵胞期前半、b)排卵前相、c)黄体期前半、 d)黄体期末期でそれぞれどのように機能しているかを簡潔に述べなさい。 (2)一月経周期に 1 個の卵が排卵されるまでに成熟するメカニズムを簡潔に述べよ。 卵胞期前半ではエストロゲン濃度が低いため、LH、FSH の分泌に負のフィードバックをかけています。排卵前期で 濃度が高くなっているので、LH、FSH に対して正のフィードバックをかけます。これが 36 時間以上続くことで LH サ ージが誘引され、排卵が起こります。黄体期前半では、エストロゲンはプロゲステロンからの生合成経路が遮断される ため、濃度が低くなります。よって LH、FSH に負のフィードバックをかけ、プロゲステロンの存在下でエストロゲン の負のフィードバック機構が増強されます。黄体期末期においては、プロゲステロンの濃度が低下し、相対的にエスト ロゲンの濃度が上昇しており、月経がおこります。 卵胞はそれぞれ外からの刺激がなくてもある程度は成長します。月経が終わると FSH は上昇しはじめ、ある FSH 濃 度(閾値)をこえるようになると(FSH Window)、その時成長をはじめた卵胞がこれに反応して成長し続けます。その なかでもちょうどいいタイミング(FSH 閾値をこえたと同時)で成長しはじめた卵胞が主席卵胞となって、排卵までい たります。 3.妊娠中のホルモン分泌について以下の問いに答えなさい。 (1)妊娠中に生じる以下の a)∼d)の現象を、妊娠経過に従って順番に並べなさい。 (2)それぞれのホルモン(d は luteo-placentral shift を生じるホルモン)の生理作用を列記しなさい。 a) human chorionic gonadotropin 分泌のピーク b) human chorionic somatomammotropin 分泌のピーク 5 c) プロスタグランジン分泌のピーク d) luteo-placental shift 解答は(d)(a)(b)(c) a)のホルモンは妊娠黄体の形成と初期妊娠の維持 b)のホルモンは成長ホルモン、プロラクチン様の作用を示し、母体の脂肪分解を促しグルコース利用を抑制、 それにより胎児へのグルコース供給に働いている。 c)のホルモンは分娩に関与するもので、プロゲステロンの分泌抑制を通して子宮筋の収縮を促し、分娩開始さ せる。 d)のホルモンはわかりません。次回当たりのプリントにあるでしょう。 問 生殖組織学に関する以下の問いに答えなさい。 1. 精子の各部分(左)の特徴(右)を線で結び付けよ。 頭 軸糸のみをもつ 尾の中部 先体をもつ 尾の主部 軸糸を縦に走る繊維(緻密繊維)が囲む 尾の終末部 ミトコンドリアを持つ 肋骨状の繊維鞘をもつ 精子の構造について:頭部は先体(透明膜を溶かす酵素)と核のみからなる。 尾の中部はミトコンドリアがあり、このミトコンドリアが軸糸を肋骨のようにとり囲んでいます。 尾の主部は軸糸を立てに走る繊維が囲んでいます。 尾の終末部は軸糸のみを持ちます。 2. セルトリ細胞の機能を列挙せよ。 セルトリ細胞の機能は高野先生のプリントによれば 5 つ。血液精巣関門の形成によって免疫反応が起こるのを阻止す る。ABP を産生して管腔のアンドロゲン濃度を高める。精子を遊離させる。精子が残した遺残小体を処理する。液体成 分の産生・分泌。 3. 精巣上体頭部の始めの部から採取した精子と尾部から採取した精子の差異についてのべよ。 6 精巣上体頭部の始めの部から採取した精子では、まだ未成熟な状態であり、受精能力及び運動能力を獲得している精 子は非常に少ない。尾部から採取した精子では、精巣上体から分泌される分泌物によって成熟した精子が多く、受精能 力を獲得している。 4. 子宮でラセン動脈、基底動脈の内膜分布とその機能について図示して述べよ。 図にはできないので言葉で。基底動脈はその名の通り基底層に達している血管で、ラセン動脈は機能層まで達してい る血管です。機能については、基底動脈は基底層の維持、ラセン動脈は分泌期における湿潤に関与し、また月経期にお ける機能層の崩落ではこの血管が虚血をおこすため起こる。 2001 再試 問 右の図は健常女性における 4 種類のホルモンの血中濃度を 1 か月に渡り測定した結果である。以下の問いに答えな さい。 1) a、b、c、d のホルモン名を書きなさい。 a は LH です。ピークになっているのが B より高く、周期の最初の方では b より低いことから判断できます。b は FSH です。c はプロゲステロンです。LH サージのあとに分泌が増加していることから、排卵後の黄体から分泌されるホルモ ンだと判断できます。d はエストロゲンです。LH サージの前にピークがあるために判断できます。 2) ホルモン a のピーク状の上昇はなんと呼ばれるか。また、これによって生じる現象は何か。 LH サージにより卵胞がやぶれ、排卵が誘起されます。 3) ホルモン d が 2 つのピークの間で一番低下するのはどのような機序によるか。 LH サージによってエストロゲンを産生する内卵胞膜細胞の酵素が阻害され、エストロゲンの放出が抑制されます。 LH サージの後に LH 濃度が減少するため、この抑制がはずれて再びエストロゲンの産生が活発になります。 4) 基礎体温は 1∼14 日と 14∼28 日ではどちらが高いか。基礎体温に差異を生じるメカニズムをのべなさい。 7 基礎体温を上げるホルモンはプロゲステロンです。プロゲステロンが視床下部に作用して体温上昇を引き起こしま す。よって、基礎体温が高いのはプロゲステロンが産生される(排卵後に黄体が形成される)14∼28日の方で す。 問 妊娠中のホルモン変動について以下の問いに答えなさい。 受精が成立すると、黄体の退縮が抑制される。 1) 黄体退縮抑制のシグナルとなるホルモンは何か。 2) 妊娠黄体から分泌される主なホルモンとその生理作用は何か。 黄体退縮抑制のホルモンといえば、hCG です。また妊娠黄体から分泌されるホルモンはプロゲステロンでしょう。こ れの作用は子宮筋の興奮を抑制することで妊娠を維持することにあります。 2000 中間 問 生殖生理に関する以下の問いに答えなさい。 1)2 匹のアカゲザルの両側卵巣を摘出し、1 か月後に実験を開始した。静脈に留置カテーテルを挿入し、経時的に微 量の採血を行った。また視床下部弓状核に慢性的に電極を挿入した。なお、一回の採血量は微量であり、採血は長 時間におよばないため、貧血の影響は考慮の必要はない。また、採血や電気活動記録はケージ外から自動的に行い、 この間サルは自由に行動できるため、ストレスの影響も考慮する必要はない。 a) 卵巣摘出したサルの血液を 20 分間隔で採血した。この時の血中の LH、FSH 濃度及び変動は正常のサルの 血中レベルと比較して、どのような特徴があるか。 卵巣摘出によってエストロゲンの分泌が低下したことから、LH、FSH への負のフィードバック作用がなくなります。 そのために血中の LH、FSH 濃度は上昇します。 b) このサルの皮下に卵胞期前半の生理的濃度のエストラジオールを持続的に放出するエストラジオールペレッ トを埋め込み、3 日後に同様の採血を行った。血中の LH,FSH は a)に比較してどのように変化したか。 生理的濃度であり、c)の問題でさらに大量の、とあるので少量のエストロゲンの作用を答えます。先に書いたように、 LH、FSH への負のフィードバック作用によって LH、FSH の濃度は減少しているはずです。 8 c) このサルにさらに大量のエストラジオールを注射し、翌日同様の採血を行った。血中の LH、FSH レベルは b)に比較してどのように変化したか。 大量のとあるので、排卵直前の状況と同じくらいと考えます。大量のエストロゲンは LH、FSH に対して正のフィー ドバックを起こすため、LH、FSH は非常に増加します。 。 d) 2 匹目のサルは、大量のエストラジオールと同様にプロゲステロンも注射した。血中の LH、FSH レベルは c)の場合と比較してどのような違いがみられたか。 プロゲステロンは、エストロゲンの正のフィードバック作用を抑制します。これは排卵直後のホルモン濃度の変化を 考えれば良いでしょう。よって、LH、FSH のレベルは減少していきます。 e) この実験結果からエストロゲンとプロゲステロンが LH、FSH レベルを調節する機序を説明しなさい。 エストロゲンは低濃度では LH、FSH に対して抑制的に、高濃度では促進的に働きます。プロゲステロンはエスト ロゲンの存在下で両ホルモンに抑制的に働きます。 f) 採血と同時に弓状核に埋め込んだ電極から発火頻度を測定した。どのような変動が見られたか。 弓状核にあるのは GnRH 細胞です。よって GnRH の分泌はどうなるか?という問題と考えます。GnRH は下位のホ ルモンから負のフィードバックを受けています。いま、卵巣は摘出されているので、エストロゲンは産生されません。 GnRH はエストロゲンによって負のフィードバックをうけていますが、この場合は GnRH は抑制をうけません。故に発 火頻度は上昇したと考えられます。 g) 視床下部弓状核と他の脳組織との間の神経連絡を微小ナイフを用いて遮断したところ、LH、FSH 変動、お よび電気活動には変化がなかった。この実験結果から。電気活動と LH、FSH 分泌の関係を説明せよ。 LH、FSH 変動には変化がないということから、あいかわらず GnRH 細胞は活発に活動しています。神経連絡を遮断 したのに活動に変化がないということは、GnRH は他の脳組織との間に神経連絡がないということになります。これは GnRH 細胞がより上位の脳組織からコントロールされている(GnRH 細胞自体にはエストロゲンレセプターがない)こ とと一見矛盾します。しかし、GnRH 細胞が自立的に活動しているとすれば矛盾は生じないと思います。つまり、GnRH 細胞が pulse generator となり、自律的に電気活動を起こすことで GnRH が分泌され、LH、FSH の分泌を促す、とい うことでしょうか。 9 h) 電極に通電して視床下部弓状核の神経細胞を破壊し、その後、生理的濃度の GnRH を持続的に注入した。LH、 FSH はどのような変動を示したか。この実験結果から弓状核の神経細胞が LH、FSH に果たしていた役割を 述べなさい。 弓状核の神経細胞を破壊したことにより、もともと分泌されるはずの GnRH は分泌されません。GnRH は性ホルモン のリズムを決定するように周期的に分泌されています。しかし、GnRH を持続的に注入することで、このリズムが破壊 されます。よって、LH、FSH の周期的変動は消失するはずです。さらに、GnRH の持続的な注入により減少調節がお こり、LH、FSH の分泌は低下するものと考えられます。このあたりをまとめればよいでしょう。 2)以下の問いに答えなさい。 a) 胎生期に精巣から分泌される Androgen が中枢神経における周期性を消失させるメカニズムを説明しなさい。 アンドロゲンは 90%以上テストステロンだそうです。テストステロンの中枢での作用部位は視床下部視索前野で、 ここで aromatase によりエストロゲンに変換されます。このエストロゲンが視床下部に作用することによって、もと もと雌性である視床下部の周期性が消失するとのことです。エストロゲンは雌性でも大量に分泌されますが、同時期に できるαフェトプロテインと結合するため視床下部では作用しません。 b) 妊娠が成立すると黄体の退縮が抑制されるのは、どのようなメカニズムによるのか。また、妊娠の一定時期を 過ぎると黄体は退縮しても妊娠が維持されるのはどのようなメカニズムによるのか。 黄体の退縮抑制といえば胞胚から分泌される hCG ですね。これは LH 様の作用を示すことで、プロゲステロンの分泌 を持続させます。 (妊娠が成立しなければ、LH サージにより一時的に LH が枯渇し、プロゲステロン分泌量もやがて減 少する)これによってエストロゲンによる機能層の崩落を防ぎます。 (分泌期の持続)妊娠の一定時期をすぎても妊娠が 維持されるのは、妊娠成立4∼8週に胎盤や胎児からプロゲステロンなどが分泌されるようになるからです。 c) 生理的には胎盤でのみ産生されるホルモンを 2 つ挙げ、成人ではどのホルモンと構造機能が類似しているかを 述べなさい。また、妊娠のどの時期に最も分泌が盛んになるか。 胎盤でのみ産生されるホルモンは、hCG および hCS または hPL です。hCG は成人の LH 様の作用を示します。妊 娠の第 8 週に濃度が上昇します。HCS は GH、プロラクチン様の作用を示します。35 週頃にピークとなります。 10 問 生殖組織学に関する以下の問いに答えなさい。 1) ある男性が事故により下半身に退量の放射線をあびた。その約 2 か月後、精液に精子がほとんどなくなっていた。 それまでの精子数はほとんど正常であった。放射線を浴びてすぐにでなく、なぜ 2 か月後に精子が少なくなった 理由を説明せよ。 同じようなのを組織学実習のときにやったような期がします。放射線に対してもっとも感受性が高いのは、分裂の時 期です。 (より正確には DNA の合成時期)つまり、放射線を浴びた時期に分裂期に入ろうとしていた細胞が死滅します。 精子の発生過程では、精粗細胞から精子にいたるまでに64日かかります。ちょうど計算もあいますね。減数分裂では DNA 合成が起こるのは第一減数分裂が起こる前、すなわち精粗細胞の段階のみです。そのステージをこえてしまえば、 放射線の影響は無視できる程度なのでしょう。 2) セルトリ細胞は、精子形成と関連して多くの機能を営む。そのうち 4 つの機能について、形態学的証拠(光学顕 微鏡、電子顕微鏡的証拠)もいれて説明せよ。 形態学的特徴については講義で触れていた記憶もありませんしわかりません。もう一度セルトリ細胞の機能について 触れておくと、血液精巣関門の形成によって免疫反応が起こるのを阻止する。ABP を産生して管腔のアンドロゲン濃度 を高める。精子を遊離させる。精子が残した遺残小体を処理する。液体成分の産生・分泌。 3) 子宮壁のラセン動脈について以下を説明せよ。 (1) 組織学的にどこに分布するか 組織学的な分布といえば、子宮内膜の機能層ということでいいと思います。 (2) 組織学的にどのようにみえるか 子宮内膜の基底層から表面にむかってラセン状に上行しているように分布しています。 (3) どのような働きをするか 胎盤が形成されると、ラセン動脈は絨毛間腔に開口して、血液を絨毛間腔に噴出することで、胎児と母体の循環に 関与している。 11 4) 卵巣には、出生時 12 万個ほどの原始卵胞を含むという。これが閉経の時には消失している。どのように消失す るのか?その組織学的証拠もいれて説明せよ。 2000 再試 問 生殖内分泌に関する以下の設問に答えなさい。 1) 性の分化に関する以下の問いに答えなさい。 胎生初期の性腺原基は、性染色体がいかんにかかわらず(a;男性、女性)型に分化する能力を持っている。性の 分化はまず「遺伝子の性」すなわち(b:X、Y)染色体上の(c)遺伝子の有無により「性腺の性」が決まる。こ れにより、原始(d:卵巣、精巣)が形成されると、(e)が分泌されて (f)管を退縮させると同時に、 (g)を分 泌して(h)管の分化を促進する。 (1) (a、b、d)から適当な語句を選び、 (c) 、 (e)∼(h)の中に適切な語句を入れなさい。 a)女性 b)Y c)性決定 d)精巣 E)ミュラー管抑制因子 F)ミュラー管 G)テストステロン H)ウォルフ (2) (g)は胎生期に中枢神経における性差を決定する。(g)の有無により胎児の中枢神経内で生じる男性型 と女性型の差異はどのような点にあるか。 女性型では視床下部において、性ホルモンの周期性調節を行う機構がありますが、男性ではテストステロンの分泌に よってこの周期性調節機構が失われます。 2) FSH と LH は男性と女性ではそれぞれどの組織のどの細胞に作用し、何の合成分泌を促進するか。 まず、FSH について。男性では精巣のセルトリ細胞に作用して、インヒビン、アクチビンの合成分泌を促進します。 女性では卵巣の顆粒細胞に作用して、エストロゲンの合成分泌を促進します。 LH について。男性では精巣のライディッヒ細胞に作用して、アンドロゲンの合成分泌を促進します。女性では卵巣 の内卵胞膜細胞に作用してエストロゲンの合成分泌を促進します。 3) 月経周期に伴う変動について以下の問いに答えなさい。 (1) 右図は月経周期に伴う各種ホルモンの血中レベルを示している。 (a)∼(d)のホルモン名を答えなさい。 12 以前にも同じ問題がありました。A)が LH、b)が FSH、c)がプロゲステロン、d)がエストロゲンです。 (2) (e)∼(i)に適当な語句を入れなさい。 卵巣周期は普通は3つに分けると思いますが。E)は卵胞期、f)は黄体期、g)は月経期、h)は増殖期 I)は分泌期です。 (3) これらの反応を調節している GnRH のパルス頻度及び振幅はどのホルモンにより調節を受けているか。 GnRH のパルス頻度および振幅は、エストロゲンにより調節されています。 4) 受精・妊娠に関する以下の問いに答えなさい。 受精は(a)において生じる。その際、まず(b)反応により精子は(c)層を貫通し、卵黄膜と融合する。そ の後数時間以内に、受精卵は(d)の過程を経て(e)となり、受精後約3日で子宮に到達すると、1 着床可能な状態 にある子宮内膜に湿潤性着床する。胚の着床後(f)細胞から分泌される(g)は(h)の退縮を抑制し、(i)分泌を 持続させる。 (i)は、子宮筋層に作用して 2 妊娠の維持をはかる。 (1)(a)∼(i)に適切な語句を入れなさい。 a)卵管膨大部 b)先体 c)透明 D)桑実胚 e)胞胚 f)栄養膜 g)hCG h)黄体 I)プロゲステロン (2) 下線 1、 「着床可能な」子宮内膜の状態とはどのような状態か。どのホルモンによりこの状態が生じるか。 ホルモン名を2種あげよ。 子宮内膜が肥厚しており、子宮腺から分泌物が放出されて内膜が湿潤している状態です。エストロゲンにより内膜の 肥厚(増殖期) 、プロゲステロンにより分泌(分泌期)が生じます。 (3) 下線 2、ホルモン(i)による「妊娠維持」は、どのようなメカニズムによるか。2 つ挙げなさい。 プロゲステロンは、子宮の収縮性を低下させ、 子宮内膜の安定化により妊娠維持をはかっています。 13 1999 中間 問 生殖組織学に関する以下の問いに答えなさい。 1) 精祖細胞から精子にいたるまでの過程は厳密にプログラムされている。精子形成の stages と期間 duration に ついて簡単に説明せよ。 2) セルトリ細胞の機能を 4 つあげよ。 3) 女性では生涯、妊娠した回数と同じ数しか卵子を作らない。卵細胞の減数分裂などと関連して簡単に説明せよ。 (1)および(2)については省略。(3)について。卵祖細胞から卵子を形成する過程においてですが、卵祖細胞は出生時に すでに第一減数分裂前期に入って停止しています。これらの卵細胞の大半は卵胞閉鎖によって消失します。思春期 以降の LH サージによって、卵母細胞の第一減数分裂は進行し、半数体、2N の第二次卵母細胞と一次極体となり ます。第二次卵母細胞はすぐに第二減数分裂に入りますが、分裂が完了しないままに排卵されます。この第二次卵 母細胞が受精するとそれが刺激となって第二減数分裂が完了し、卵子が形成されると同時に受精卵となります。つ まり、精子と異なり、卵子になる=受精卵=妊娠、という訳です。 問 生殖生理学に関する以下の問いに答えなさい。 1) 右の図は健常な成人女性の月経周期の間に見られる血漿ホルモン変動を示したものである。 a) a∼d のホルモン名と、それぞれを分泌する器官名と細胞名を書きなさい。 b) 排卵は a∼d のホルモンのうち、どのホルモンがどのようなパターンを示すことによって生じるか。 c) この図を用いて、同じホルモンが、ホルモン環境によってネガティブとポジティブのフィードバックを示 す例を説明しなさい。 d) 卵巣を摘出すると a∼d のホルモンはどのようなパターンを示すかを右図をもとに図示しなさい。 この図が出ることはもうないとは思いますが、もう一度確認すると、a はエストロゲンです。4 つのホルモンのうち で特徴的なのは山が2つあることです。b はプロゲステロンです。一番遅い時期に山がでてきます。c は LH です。14 日の急激な濃度上昇がありますね(LH サージ) 。d は FSH です。 排卵は LH サージによっておこります。 この図を用いて、とありますが要はエストロゲンによる LH、FSH のフィードバック調節です。エストロゲンの濃度 が低いときには負のフィードバック、濃度が高い時には正のフィードバックでした。グラフを見ると、エストロゲンの ピークと LH のピークに時間的ずれがあり、黄体形成後のエストロゲンの上昇と LH の減少から説明できます。 卵巣を摘出するとエストロゲンは分泌されない、と考えていいでしょう。(厳密には、副腎皮質でも合成されているそ うです。 )そうすれば当然プロゲステロンも分泌されません。問題は LH、FSH ですが、アカゲザルの問題でもあったよ うに、エストロゲンの負のフィードバックを受けないため、濃度は上昇するでしょう。 14 2) 代表的な胎盤ホルモンを 2 つあげ、妊娠経過に伴う変動、分泌調節、生理作用を述べなさい。 胎盤ホルモンといえば hCG、hPL(hCS)です。hCG は LH 様の作用を示し、妊娠黄体の維持を促します。妊娠第 8 週 までに濃度は上昇し、15 週にかけて低下していきます。黄体からのプロゲステロンの分泌を促進します。調節につい ては講義ででもやるのでは?hCS は hCG の減少とともに分泌が始まります。妊娠第 8 週ころから分泌されはじめ、分 娩期まで濃度は上昇していきます。GH やプロラクチン様の作用を示し、母体から胎児へのグルコース代謝に関係して います。 3) 以下の現象はどのホルモンを測定することによって分かるか。 a) 妊娠成立 b) 妊娠初期の胎児死亡 c) 妊娠後期の胎児機能 妊娠の成立は hCG で検出します。 妊娠初期の胎児死亡についてはよくわかりません。妊娠初期に関与しているホルモンといえば hCG、プロゲステロン など考えられます。 標準生理の p.943 によると「エストリオールは胎児自身の状態を知るのに良い指標となる」とあるのでこれで。 15