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人工知能がもたらす保険業務の新しい可能性
人工知能がもたらす 保険業務の新しい可能性 下 e c n e g i l l e t n I l a i c i f i t r A )に関する話題が大きくなるにつれて、実用化への期 AI(人工知能― 待も大きくなっている。IT企業というカテゴリーに入らない企業でもAIの実用化に関心を持って あり、AIの積極活用を AIと人間の協働形態で ここで紹介するケースは ると言っていいだろう。 点では先進的なものであ 用されているので、現時 「言語理解」の技術が利 認識能力の大幅向上」と 律的な行動計画」「環境 る。図表2における「自 が実施している内容であ を感じていた業務はIT い。当社が改善の必要性 イアントへ示しがつかな いては問題であり、クラ が非効率な業務を行って を提案しているわれわれ 通常、クライアントへ 効率的な業務とシステム では認識されている。 ンド系の企業として世間 リカ企業でありながらイ いていることから、アメ せざるを得なくなり、か 題解決に部分的な関与を エンジニアにとっては課 割をする必要があった。 も結局人間が補完的な役 だが、新しい作業工程で い作業工程を定義したの プロセスを抽出し、新し 程を精査して問題のある 難であった。作業の全工 それを実行に移すのは困 本方針は掲げたものの、 ある。前者は最先端のA ヒューマンエンジニアで ャルエンジニア(注)と エンジニアとは、バーチ が決定された。2種類の を担うよう設計すること ニアが協働して保守業務 はなく、2種類のエンジ 化」観点だけで見るので あ っ た。 業 務 を「 自 動 エンジニアの「共存」で た基本方針は、2種類の ぼ %ずつであった。そ 比率は、開始段階ではほ 当社の調べでは、それ ぞれのエンジニアの分担 応するのである。 ニアが役割分担をして対 ニアとヒューマンエンジ よってバーチャルエンジ 際に、チケットの内容に がインシデント対応する 稼動させる。エンジニア ケッティングシステムを ティ(技術的特異点)が み、今後、シンギュラリ て い く。 深 層 学 習 が 進 介した。深層学習はAI 前章ではAIと人間の 協働作業を実例と共に紹 えって仕事がやりにくい な会話や書き言葉を高い 載しており、人間の自然 I(推論エンジン)を搭 るチケットの数が増加す ンジニアのほうが対応す %となり、バーチャルエ れが後に平均で しまう、という見方があ ほどに世の中が変容して 人間的な生活ができない 超えて、人間を支配し、 Iが人間の能力を大きく の能力を加速度的に高め 検討する読者にとっては との意見が出るようにな るようになっていた。深 るのだ。 いるディープラーニング Iには深層学習で自らの をすることができる。A このようにAIと人間 は共存して高品質な仕事 されていく形になる。 する、交通事故を避ける できなかった病気を発見 う。これまで人間が解明 化してもらいたいと思 することができる。ある の事象から解決策を推測 決できなかった場合、別 題を解決する。そして解 会で求められることでは 共存することが今後、社 る。AIと人間が快適に に向かうことが可能にな うだ。互助による安心安 AIに期待されているよ 減少させることなどが、 転で人間の神経的負担を ーになっていくに違いな Iは今後、良きパートナ た保険業界にとって、A 全な社会形成を担ってき ないだろうか。 ンエンジニアから解決策 を学習すると、次回から は着実に結果を出せるよ はない。保守対象のIT スを大きく変更する必要 一般的な保守業務プロセ バーチャルエンジニア が業務を担当する際に、 くのだ。 るほど着実に進化してい っていくのかが利用者に ってどのような存在にな 後、AIが人間社会にと る、 と 前 回 述 べ た。 今 らこそ利用者は感動す 考えて動き結果を出すか 性」があり、機械自らが AIには、これまでの システムにはない「自律 活用したインフラ保守サ ント社と協業し、AIを の一部である。コグニザ 社の主要ソリューション t社による命名であり同 (注)バーチャルエン ジニアとは、IPsof ◇ ービスを提供している。 (おわり) アセットをモニタリング とって大いに気になると い。 ツールが監視し、インシ ころであろう。 うになる。利用すればす デントが発生した際にチ 3. 今 後 の A I に対する期待 いは経験のあるヒューマ 取り除くという方向へ進 徹底して現場のエンジニ 業務範囲を拡大してもら 40 (深層学習)の機能が備 60 いるようだ。これらの企業は無論、IT、デジタル技術を積極的に取り入れ、商品やサービスの品質 インフラの保守業務であ った。 精度で解析できる能力を 層学習が継続されている 44.4 迷惑メールの高度かつ自動的な削除 訪れるとされている。A った。当社はITインフ 持っている。 ため、着実にヒューマン 37.0 金融資産の高度かつ自動運用による利回りの最大化 %対 役立つものになると考え ラの保守品質には定評が そこで課題解決のため の基本方針を「自動化」 ( 3) デ ィ ー プ ラ ー ニ ングによる業務改善サイ 66.7 わっている。彼らは自分 ・教育、秘書 ・ホワイトカラー支援 向上に努めてきた。AIへ関心を持つのは当然の流れではあるが、従来の技術革新とは若干様相が異 あったが、クラウド化の という言葉で定義するこ 66.7 不正アクセスや不正送金などの金融犯罪の高度な検知 アの声を聞いた。 大規模 知識理解 なるように筆者には思える。AIの活用が最も期待できる分野として挙げられるのが、医療、自動運 ている。 流れの中で、近年急激に とをやめた。別の視点か エンジニアの負荷は軽減 従業員がインドに籍を置 いる。ちなみに約 さらなる 知識習得 転、緊急車両の運行に関する交通環境の改善、道路交通情報など(図表1)である。これらの領域に ( 1) 導 入 に 向 け た 経 緯 業務の受注が増加してい クル ここでひとつAIを活 用した事例を紹介した ・翻訳 ・コールセンター対応 は民間企業が確かに進出しているが、従来と異なり、企業収益向上よりも、社会変革のために行って たのである。要員の増加 らの基本方針を検討する そのためには、AIに は徹底して人間の不安を い。筆者の所属する企業 需要予測や製造管理等によるサプライチェーン最適化 動線を発見する、自動運 言語理解 いるようにも思える。次元の一段階違う考え方に基づきAIを実用化しようとしているのだ。自社の 当社は、グローバルに 事業を展開しているIT ことにしたのである。膨 を支えているといわれて バーチャルエンジニア には、第3次AIブーム バーチャルで行われるた 70.4 犯罪発生の予兆の高度な分析 い、人間はさらなる高み 言語との ひも付け 業務にAIを活用することから始めて、ひいては人類の発展に役立てることを想像する。AIはその 企業である。事業領域は では問題の解決にならな 大なITインフラの保守 め、そのプラットフォー 74.1 交通手段間での高度な利用者融通や増発対応 自身にアサインされた課 環境認識能力の 大幅向上 ようなスケールの大きな発想がよく似合う技術である。 システム開発、アウトソ いと考え、当初基本方針 業務の何が問題なのか。 ーンを考えることは正し 77.8 緊急車両の最適搬送ルートの高度な設定 検討した結果、出てき 行動に基づく 抽象化 上位 位以内に 2種類も ーシング、デジタル業務 として掲げたのは徹底し くない。なぜならAIが ム上に保険サービスを載 ・自動運転 ・ラストワンマイルなど 例えば、画像認識技術 の向上により、画像診断 た「自動化」であった。 AIが人類の発展に寄 与し得る技術であること せる必要があるだろう。 自律的な行動計画 保険業務が入っていると 改革支援、コンサルティ は明白である。ところが 単独でひとつの職業を担 また言語理解の向上で、 81.5 路線バスやタクシー等の高度な自動運転 50 ングなど。そして世界で 保険業界はAIやFin うのはまだ技術的に困難 部を代替することが可能 行動と プランニング 2. I T 保 守 業 務におけるAI 活用事例 Techという概念が生 であるからだ。 になるし、担当要員を適 ・ビッグデータ ・防犯、監視 (遠隔医療)が可能とな まれるずっと以前から、 AI時代の到来に向け て保険業界が取るべき道 切にサポートすることで 感情理解、行動予測、 環境認識 りつつある。その際には 社会生活を円滑に進める は、職業の面から考えて 快適な顧客サービスが可 マルチモーダル な抽象化 述べた。保険業務を改善 上で大きな役割を担って いくのではなく、AIの 能になると考えられる。 2015年 していく上で、職業とい きた。その意味では保険 技術発展がどのような社 重要なことは、図表2の 認識精度の向上 1. 保 険 会 社 に とってのAI技 術実用化の観点 (出典)総務省「ICT の進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」 (平成28年)より一部改変 万人の従業員が働いて 会社は積極的にAIに取 会的事象に影響を与える 右半分、技術の発展が社 画像認識 医者と患者のやりとりは り組む必要があると思わ かという観点から分析す 2014年 う観点からAIの活用シ (出典)総務省「ICT の進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」 (平成28年)より一部改変 (2)基本方針の確立 ITインフラの保守業 務の「自動化」という基 れる。 ることが重要である。図 会の何を変えていくかを 81.5 健康状態や病気発症の予兆の高度な診断 %の 具体的な実用化の観点 を考えてみよう。前回の 表2をご覧いただきた 常に考えることである。 48.1 感情認識等によるコンピュータと人間の対話の高度化 コールセンター業務の一 記事では、機械に代替さ い。 ・社会への進出 ・家事、介護など 向上する技術 A I 時代の到来 れる可能性の高い職業の コグニザントジャパン 図表1 人工知能の利活用が望ましい分野 70 6.7 優良顧客情報等による、顧客の囲い込みや満足度向上 ・広告 ・画像からの診断 技術発展 2020年 3.3 最適な融資額の算定による貸倒れ損失の回避 社会への影響 年 15 金融事業部ディレクター 高橋 正敏 図表2 人工知能 (AI)の発展と利活用の進化 24 2 0 1 6 年(平成 2 8 年)1 1 月 1 5 日(火曜日) ( 4 ) (第 3 種郵便物認可)