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「感性を育む音楽の授業づくり」

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「感性を育む音楽の授業づくり」
2009 年 9 月 30 日 (水 )
平 成 21 年 度 釧 路 管 内 学 校 教 育 研 究 大 会 標 茶 大 会 部 会 Ⅰ 音 楽 レ ポ ー ト
於:標茶町立標茶中学校
「感性を育む音楽の授業づくり」
齊 藤 淳 子
鶴居村立鶴居中学校
I. 鶴 居 村 研 究 所 音 楽 部 会 の 活 動 に つ い て
1. 現 状 に つ い て
今 年 度 の 鶴 居 村 研 究 所 音 楽 部 会 の 構 成 員 は , 小 学 校 1 名 ,中 学 校 2 名 , 計 3 名 で , 昨 年
度より 1 名増となったが,相変わらず少ない状況が続いている。
音楽部会の活動は主に,打楽器の実技講習会,9 月に行われる授業研究会及びそれに向
けた事前研などである。打楽器の実技講習会は,スティックの持ち方や腕の使い方などの
基本的な奏法やいろいろな楽器の奏法などを中心に,学芸会などで活かせる内容のものと
な っ た 。ま た ,年 に 数 回 開 か れ る 部 会 で は ,各 校 の 現 状 交 流 や 情 報 交 換 等 を 行 な っ て い る 。
2. 研 究 主 題 に つ い て
「 感 性 」と は「 物 事 に 感 じ る 能 力 」
「 外 界 か ら の 刺 激 を 深 く 感 じ 取 り ,心 に 受 け と め る 能
力 」の こ と を い う 。そ こ で ,
「 音 楽 」を 刺 激 と し て い ろ い ろ な 感 情 を 持 ち ,表 現 す る こ と が
できるようになって欲しいという願いから,本研究主題を設定した。尚,本研究主題は前
年度から継続しているものである。
II. 各 校 の 実 践 紹 介
1. 鶴 居 村 立 下 幌 呂 小 学 校 の 実 践 紹 介
鶴 居 村 教 育 研 究 所 で は ,公 開 授 業 研 究 会 を 9 月 に 2 回( 第 2 週 及 び 3 週 )実 施 し ,所 属
部会と所属以外の部会を参観することで,校種や教科を越えた交流を行っている。今年度
の 音 楽 部 会 は ,下 幌 呂 小 学 校 の 第 5 及 び 6 学 年 の リ コ ー ダ ー に よ る 表 現 の 授 業 を 公 開 し た 。
参観者は,教育長をはじめ,音楽部会員,教育実習生を含め 9 名であった。
以下は,公開授業研究会の指導案である。
音 楽 科 学 習 指 導 案
時 : 平 成 21 年 9 月 9 日 ( 水 ) 第 5 校 時
童:第 5 学年 男子 7 名 女子 2 名 計 5 名
第 6 学 年 男 子 2 名 女 子 5 名 計 16 名
授業者:教諭 吉川 千穂
日
児
(1) 題 材 名
豊かな表現②
(2) 教 材 名
「 こ き り こ 」( リ コ ー ダ ー 合 奏 )
(3) 児 童 に つ い て
5 年生 9 名と 6 年生 7 名は,通常は単式学級として別々に学習を行っているが,音楽や
体育,総合的な学習など,一部の教科や単元では合同授業を行っている。
-1-
高学年児童は,音楽に対して意欲的に学習している。歌唱の学習では,きれいな歌声で
音 程 正 し く 歌 う こ と が で き る 児 童 が 多 い 。リ コ ー ダ ー で は ,上 級 生 で あ る 6 年 生 を 中 心 に ,
リズムを理解し,練習時間が確保できれば,スムーズに演奏できる子が多い。中には,簡
単な楽曲であれば,短時間で上下両パートを吹きこなす子もいた。しかし,時間をかけて
もなかなかスムーズに演奏できない子もいて,個人差は大きい。現在,並行して行ってい
る全校合奏の練習においても,楽譜を見たり範奏を聞いたりしながら音程やリズムをどん
どん自分でとっていける子と,苦労している子がいる。
音 名 読 み を す る こ と で リ ズ ム に 慣 れ さ せ た り , パ ー ト ご と の 演 奏 を 録 音 し た CD を 用 意
して音程の動きやリズムを耳からとらえさせたり,苦手な部分を取り出して集中的に練習
させたりしながら,演奏技術を高めたい。また状況によっては,個人練習を増やすよう促
したり,演奏する範囲を徐々に広げていったりするなど,児童の実態に応じた手だてを講
じたい。
(4) 題 材 ( 教 材 ) に つ い て
題 材 「 豊 か な 表 現 」 ② は , ① 全 校 合 唱 「 歌 よ あ り が と う 」, ③ 全 校 器 楽 「 明 日 が あ る さ 」
と 並 行 し て 学 習 を 行 っ て い る 。こ こ で は ,曲 想 を 生 か し た 表 現 を 工 夫 し ,各 パ ー ト の 歌 声 ・
楽器の音色や曲全体の響きを味わいながら演奏することを目的としている。
教材「こきりこ」は富山県の民謡「こきりこ節」をもとに,リコーダー合奏用に編曲さ
れたものである。3 つのパートに分かれていて,音の重なりを楽しむことができる。主旋
律 が 計 3 回 登 場 し ,第 1 パ ー ト が 転 調 を 含 め て 2 回 ,第 2 パ ー ト が 1 回 担 当 す る 。そ れ に
伴う他パートの動きもそれぞれ違うアレンジになっているので,曲想の変化を楽しむこと
ができる。ソロや強弱など,曲の感じに変化を与えるための指示記号があり,立体感のあ
る曲作りも工夫できる。このように,音の重なりの変化を味わったり,演奏方法や強弱を
工夫したりなど,豊かな表現力を養うのにふさわしい楽曲である。
また富山県の民謡ということで,日本の民謡にも興味をもたせ,今後の「民謡や子もり
歌めぐり」の学習につなげるきっかけとしたい。
(5) 指 導 観 ~ 研 究 主 題 と の 関 わ り ~
音楽科部会の研究主題「感性を育む音楽の授業づくり」を目ざし,本題材での合唱や合
奏を通して,豊かな感性を育てたいと考える。
「音楽に対する感性」とは,音楽的な刺激に対する反応であり,音楽的感受性ととらえ
られる。この音楽的感受性は,音楽から感覚的にとらえるリズム感,旋律感,和声感,強
弱 感 ,速 度 感 ,音 色 感 な ど で あ り ,表 現 お よ び 鑑 賞 の 活 動 の 根 底 に か か わ る も の で も あ る 。
「感性の育成」とは,美しいものや崇高なものに感動する心など,豊かな心を育てようと
することである。そして,多様な美しさをもった様々な音や音楽を尊重する心にもつなが
るものである。
「こきりこ」は三部合奏でやや難易度が高い楽曲ではあるが,演奏しながら音の重なり
やアレンジの変化を楽しむことができ,強弱記号をヒントに表現を工夫できるような場面
も何か所かある。出だしや最後に音楽が収束する場面,主旋律につなげていく様々なパタ
ーンのつなぎ,流れるような主旋律に対してリズムを刻むような副旋律,全パートが同じ
動きをする部分と全く違う動きが重なっている部分など,音楽のおもしろさを感じさせる
要素が多く,児童なりに感性を働かせて,どんな表現で演奏したらよりよくなるかを考え
出せるのではないかと思っている。
「ここは歯切れよく」
「ここはなめらかに」
「ここは強め
に」
「ここは弱い音から始めて」
「ここで山をつくる」
「 ソ ロ の 部 分 は 人 数 を 減 ら し て 」な ど ,
いろいろなアイディアを出し合いながら試し,より質の高い音楽づくりに向かわせていき
たいと考えている。そのためにも,違うパートの動きも意識させたり,小グループを作っ
て互いの演奏を聴き合ったり,範奏を聴かせたりしながら,気づきを交流させる場面を設
定したい。
-2-
(6) 題 材 の 目 標
リ コ ー ダ ー の 音 色 の 響 き 合 い を 楽 し み な が ら ,表 現 を 工 夫 し て 演 奏 す る こ と が で き る 。
(7) 題 材 の 評 価 規 準
単 元 の 評 価 規 準
関心・意欲・態度
音楽的感受や表現の工夫
表現の技能
鑑賞の能力
1 リコーダーの演奏
を楽しんだり,進
んで表現を工夫し
たりしようとして
いる。
1 原曲から和楽器の
音色や曲の特徴を
感じ取ったりして
いる。
2 よりよい演奏を目
指し,旋律やリズ
ムの変化,他のパ
ートの音の動きや
音の重なりを感じ
取りながら,それ
らを生かした表現
を工夫している。
1 旋律のまとまりや
リズム,速さ,強
弱,リコーダーの
音色に気をつけな
がら,曲想を生か
して演奏してい
る。
1 楽器の音色や特徴
を味わって聴いて
いる。
2 グループごとの演
奏や全体演奏を聴
いて,よさを感じ
とったり,気づき
を発表したりして
いる。
(8) 学 習 指 導 計 画 ( 全 8 時 間 )
時間
主な学習活動
1
リコーダーで編曲された
「こきりこ」の演奏を聴
いたり,
「 こ き り こ 」の 原
曲を聴いて歌詞の内容を
理解したりしながら,曲
想の特徴をとらえる。
関
○
感
表
鑑
○
○
2・3・4
各パートに分かれて,演
奏の仕方に気をつけなが
ら「こきりこ」の練習を
する。
○
○
○
5・6(本時)
3 つのパートを含めた小
グループに分かれて,表
現を工夫しながら「こき
りこ」の練習をする。
○
○
-3-
評価
具体の評価規準
(関 1)「 こ き り こ 」 の 演 奏 に 興
味をもって聴いている。
(感 1)原 曲 の 歌 詞 の 意 味 を 想 像
し た り ,和 楽 器 の 音 色 や 曲 の 特
徴を感じ取ったりすることが
できる。
(鑑 1)「 こ き り こ 」 を 聴 い て ,
原曲の和楽器の音色や楽曲の
特徴を味わって聴くことがで
きる。
(関 1)リ コ ー ダ ー の 演 奏 を 楽 し
みながら練習している。
(感 2) パ ー ト 練 習 を 通 し , 旋
律やリズムの変化を感じ取り
な が ら ,よ り よ い 演 奏 に な る よ
う気づいたことや意見を出し
ている。
(表 1) 旋 律 の ま と ま り や リ ズ
ム ,速 さ ,リ コ ー ダ ー の 音 色 に
気をつけながら演奏している。
(関 1) 進 ん で 表 現 を 工 夫 し よ
うとしている。
(感 2) 他 の パ ー ト の 音 の 動 き
や音の重なりを感じ取りなが
ら ,曲 想 を 生 か し た 表 現 を 工 夫
している。
評価方法
観察
観察・
発言
観察・
発言
観察
観察・
発言
観察
観察
観察・
書き込
み
○
○
全体で「こきりこ」を合
わせ,よりよい表現で演
奏する。
○
○
7・8
○
○
(表 1) リ コ ー ダ ー の 音 色 や 強
弱 記 号 に 気 を つ け な が ら ,曲 想
を生かして演奏している。
(鑑 2) グ ル ー プ ご と の 演 奏 を
聴いて,よさを感じとったり,
気づきを発表したりしている。
(関 1) 進 ん で 表 現 を 工 夫 し よ
うとしている。
(感 2) 他 の パ ー ト の 音 の 動 き
や音の重なりを感じ取りなが
ら ,曲 想 を 生 か し た 表 現 を 工 夫
している。
(表 1) 強 弱 記 号 に 気 を つ け な
が ら ,曲 想 を 生 か し て 演 奏 し て
いる。
(鑑 2) 全 体 演 奏 を 聴 い て , 曲
全 体 の よ さ を 感 じ と っ た り ,気
づきを発表したりしている。
観察
観察・
ワーク
シート
観察
観察・
発言
観察
ワーク
シート
(9) 本 時 に つ い て
① 本時の目標
3 つの音の重なりを感じながら,表現の仕方を工夫して演奏することができる。
② 本 時 の 展 開 ( 6/ 8)
学習活動・学習内容
1.本 時 の 学 習 内 容 を 確 認 す る
指導上の留意点
評価規準
2.ど ん な 表 現 の 工 夫 が で き る か 確 認 す る
・強弱記号に気をつける
・ solo と tutti を 工 夫 す る
・なめらかさや歯切れよさ
・主旋律と副旋律を意識する
・速さや音をのばす数を合わせる
・工夫の仕方を確認す
ることで,活動の見
通しをもたせるよう
にする。
(関 1) 進 ん で 表 現 を 工
夫しようとしている。
(観察)
3.3 つ の パ ー ト を 含 ん だ 小 グ ル ー プ に 分 か
れ ,グ ル ー プ ご と に 表 現 を 工 夫 し な が ら
練習する
・fや p の違いを出そう
・ク レ シ ェ ン ド な ど の 強 弱 記 号 に 気 を つ け
よう
・人数を変えてみよう
・主旋律はなめらかにふこう
・歯切れよさを入れてみよう
・気をつけることを楽
譜に書き込ませるこ
とで,グループ内で
工夫する場所を意識
させるようにする。
(感 2) 他 の パ ー ト の 音
の動きや音の重なりを
感じ取りながら,曲想
を生かした表現を工夫
している。
( 観 察 ・書 き
込み)
(表 1) リ コ ー ダ ー の 音
色や強弱記号に気をつ
けながら,曲想を生か
して演奏している。
音 の 重 な り を 感 じ な が ら ,表 現 を 工 夫
して演奏しよう(後半)
-4-
4.グ ル ー プ ご と に 発 表 し ,工 夫 の 仕 方 を 交
流する
・グ ル ー プ の 代 表 が ,ど ん な 工 夫 を し た の
か ,特 に ど の 部 分 が よ く で き て い る の か
を伝えてから,演奏する
・他パートの演奏のよさや気づきを交流
する
・どんな工夫を試みた
のか,特にどの部分
がよくできているの
かを伝えることで,
聴く側に視点をもた
せるようにする。
5.本 時 の 学 習 を 振 り 返 り ,次 回 の 活 動 の 見
通しをもつ
・表現の工夫を全体演奏にも取り入れて
演奏しよう
・よさを感じた表現方
法を全体演奏にも生
かすように,意識づ
けを図る。
(鑑 2) グ ル ー プ ご と の
演奏を聴いて,よさを
感じとったり気づきを
発表したりしている。
( 観 察・ワ ー ク シ ー ト )
(10) 児 童 の 変 容 に つ い て
第 4 時 ま で は , パ ー ト 内 で テ ン ポ や リ ズ ム を そ ろ え る こ と , CD の 他 パ ー ト の 旋 律 に 合
わせながら自分のパートを演奏することに集中していた。
第 5 時 か ら は , 3 つ の パ ー ト を 含 め た 小 グ ル ー プ で の 練 習 に 切 り 替 え た 。 CD と の 機 械
的な合奏ではなく,グループのメンバーとの音楽づくりが開始された。
グループ練習開始当初は,リーダーやサブリーダーが中心になって進めているものの,
周りの子は一部の子にお任せの状況だった。また,できない子に対する間違いの指摘も目
立って いた 。表 現の工 夫も ,速さ やの ばす数 に注目 してい る程 度だ った 。特に 2 グ ループ
とも,フェルマータの長さをそろえることに気を配っていた。
全体で一度,現時点で取り入れた工夫を確認し合い,どちらのグループもまだ試みてい
な い solo や tutti へ の 関 心 が 高 ま っ た 。 リ ー ダ ー 任 せ に せ ず , み ん な で ア イ デ ィ ア を 出 し
合 う こ と も 促 し ,「 こ こ で 息 を そ ろ え よ う 」「 次 は 上 か ら 2 人 , 1 人 , 2 人 の 組 み 合 わ せ で
やってみよう」など少しずつ意見が出されるようになっていった。
第 6 時ともなるとグループでの活動にも慣れ,発表会に向けて分担を確認し合ったり,
みんなで合わせることを意識した練習を行ったりしていた。主旋律と副旋律の関係や,レ
ガート奏法などまだまだ課題はあるものの,子ども達なりの工夫を感じる演奏が発表会で
披 露 さ れ ,聴 衆 側 に も 伝 わ っ て き た 。
「 最 後 が き れ い だ っ た け ど ,ち ょ っ と の び す ぎ て い た
人がいた」
「 テ ン ポ が 速 か っ た け れ ど ,み ん な そ ろ っ て い た か ら よ か っ た 。」
「人数を変えて
いるのがわかった」など,音楽的な表現の工夫に焦点をあてた意見が発言や鑑賞カードの
記述として多く出されていた。
-5-
2. 鶴 居 村 立 幌 呂 中 学 校 の 実 践 紹 介
「曲のしかけを知ろう」
1. 目 的
生 徒 は 日 常 的 に 音 楽 を 聴 い て 自 ら の「 感 性 」を も と に「 こ の 曲 は 好 き だ 」
「この曲は嫌い
だ 」と 判 断 し て い る 。し か し ,
「 ど う し て そ の 曲 が 好 き だ と 感 じ る の か 」つ ま り ,そ の 曲 が
音楽的に「どのような作りをしているのか」というところを追究するには至っていない。
そこで,音楽の諸要素のはたらきを理解し,それに着目して聴いたり,感じたことを自分
の 言 葉 で 表 現 し た り ,そ れ ら を 生 か し て 表 現 し た り す る こ と で ,
「 感 性 」を 育 ん で い け る の
ではないかと思い,この実践を試みた。
2. 方 法 及 び 内 容
以下の通り,校内で授業を公開した。
音 楽 科 学 習 指 導 案
日 時 : 平 成 20 年 12 月 11 日 ( 木 ) 4 校 時
場 所:鶴居村立幌呂中学校 視聴覚室
生 徒:第 1 学年 男子 1 名 女子 4 名 計 5 名
授業者:教諭 佐藤 恵美
(1) 題 材 名 「 音 楽 の 諸 要 素 の 働 き 」
教材名「メリーさんの羊」 作曲者不明
(2) 本 時 の 目 標
① 曲の雰囲気の変化に興味をもち,コンピュータを使って諸要素を変化させることに
意 欲 的 に 取 り 組 む こ と が で き る 。( 音 楽 へ の 関 心 ・ 意 欲 ・ 態 度 )
② 音楽の諸要素による表現の違いを感じ取り,自分の言葉で表現することができる。
(音楽的な感受や表現の工夫)
(3) 生 徒 の 学 習 意 欲 を 高 め る 手 立 て
a ~導入で,既習曲風にアレンジした「メリーさんの羊」を聴かせ,学習内容への期待
感を持たせる。
b ~ 諸 要 素 の 変 化 が つ け や す く ,変 化 し た こ と が す ぐ わ か る よ う ,コ ン ピ ュ ー タ を 使 う 。
c ~まとめがしやすいよう,ワークシートを工夫する。
d ~発言しやすい雰囲気作りを心がける。
e ~「要素の変化による曲想の変化を感じ取る」という課題を達成した生徒には,アレ
ンジされた「変化させた要素を感じ取る」という発展的な課題を設定する。
(4) 本 時 の 展 開
過程
生徒の学習活動
○「メリーさんの羊」を聴
く。
導
入
○課題の確認
7
分
教師の働きかけ
評価
・ 2 つ の「 メ リ ー さ ん の 羊 」 ◇ 観 察 ①
を聴いてもらいます。違
いはなんでしょう。a
・課題の確認
曲の雰囲気を決めるのはなんだろう?
-6-
備考
・2 拍子
・白鳥の湖風
展
開
33
分
○ 曲 の 雰 囲 気 を 決 め る 要 素 ・何 が 違 っ て い た ん だ ろ う 。 ◇ 発 言 ①
を考える。
・生徒の気づきを認め,自
調・拍 子・速 さ・リ ズ ム ・
信を持って発表できるよ
音 色・旋 律・形 式・和 音 ・
うにする。d
強弱
○ 諸 要 素 の 確 認 ( 教 科 書 ・音楽の諸要素を教科書で
p.22)
確認しよう。
・コンピュータを使って要 ◇観察①
○コンピュータで要素を変
記述②
素を変えてみて,どう変
化 さ せ ,変 化 を メ モ す る 。
わったかメモしてみよ
う。bc
・机間指導
○本時のまとめ
整
理
10
分
○次時の内容を知る
・要素を変化させることで
作曲してしまった人がい
ます。しかけを書いてみ
よう。
・
「 メ リ ー さ ん の 羊 」の 要 素
を変えてアレンジしてみ
よう。
◇観察①
記述②
・板書
・板書
・拍子・調・速
さ・音色
・ワークシート
・できた生徒に
は発展的な課
題を与えるe
・「 天 国 と 地 獄 」
(抜粋)
・
「かめ」
(抜粋)
(5) 評 価 の ポ イ ン ト
・ 本時の目標が達成されていたか。
・ 「学習意欲を高める手立て」が有効であったか。
3. 結 果
生 徒 は 高 い 意 欲 を 持 っ て 学 習 し て い た 。自 ら コ ン ピ ュ ー タ を 操 作 し て 変 化 さ せ る こ と で ,
諸要素の変化による雰囲気の違いを感じ取った。
このあとの授業では,教師の用意したいろいろな「メリーさんの羊」について,それぞ
れ の 要 素 と 曲 の 雰 囲 気 に つ い て 聴 き 取 り ,自 分 の 言 葉 で 表 現 す る こ と が で き て い た 。ま た ,
自分の着目した要素を工夫して試行錯誤しながら,自分の表現したい「メリーさんの羊」
を追究し,編曲することができた。
この実践によって,言葉による表現も上手になったが,演奏するときの姿勢も以前に比
べてより主体的になり,ただ音を出すのではなく,どんな風に演奏したいかが感じられる
ようになってきた。
4. 資 料
① ワークシート(次頁)
② 授 業 で 使 用 し た 音 源 ( CD- R)
③ 生 徒 の 作 品 ( CD- R)
-7-
曲の雰囲気を 決めるのはな んだろう?
1年
(
)
♪2 つの「メリーさんの羊」の違いは
♪音楽の諸要素とは
♪拍子を変えてみたら(2 拍子→3 拍子)
♪調を変えてみたら
① 高さを変えてみる(ハ長調→
長調)
② ミ,ラに♭をつける(ハ長調→ハ短調)
♪速さを変えてみたら
遅くした→
速くした→
♪音色を変えてみたら
( パ ー ト 1~
パ ー ト 2~
パ ー ト 3~
)
♪「かめ」にはどんなしかけがあったかな
おかわりワーク
「メリーさん の羊」のしか けを見破って ください!
1年 (
○○風
(例)民謡
変化させた要素は
リズム・音色
)
雰囲気は
盆踊りのような音楽
-8-
3. 鶴 居 村 立 鶴 居 中 学 校 の 実 践 紹 介
太鼓による創作活動に関する実践学的研究
-「言葉」がもつリズムに着目して-
1. 問 題 の 所 在
筆 者 が こ れ ま で に 行 っ て き た 太 鼓 に よ る 創 作 活 動 は ,「『 鼕 行 列 ( 島 根 県 松 江 市 : ど う ぎ
ょ う れ つ )』 と 『 秩 父 屋 台 囃 子 ( 埼 玉 県 秩 父 市 : ち ち ぶ や た い ば や し )』 で 用 い ら れ て い る
リズムの中から比較的容易に演奏できそうなものをいくつか厳選したリズム」や「授業の
中 で 学 習 し た リ ズ ム 」( 1 ) を 大 き く 印 刷 し ,
「 1 枚 の シ ー ト に 1 つ の リ ズ ム パ タ ー ン 」が 書 か
れたものを数枚ずつ準備し、それらのシートを,パズルを並べるようにいろいろな組み合
わせを工夫しながら曲をつくっていく,という方法であった。この方法では,自分達で一
からリズムを考える活動は行わないため,短時間で創作活動を行うことができるというメ
リットがあった。しかし,あまり慣れ親しまないリズムを用いた場合は,それらを習得す
ることに時間がかかってしまったり,既習のリズムを用いた場合であっても,リズムの組
み合わせを考えていくのは音楽の得意な生徒ばかりで,グループ活動になかなか参加でき
ない生徒が出てしまったりするというデメリットがあった。
そこで,音楽の得手・不得手に関わらず,全員が話し合いや創作活動に参加できる方法
と し て , KJ 法 を 利 用 す る こ と は で き な い だ ろ う か と 考 え た 。
2. 研 究 の 目 的
本研究の目的は,音楽の得手・不得手に関わらず,グループ活動においてメンバー全員
が話し合いに参加し,
「 言 葉 」が も つ リ ズ ム に 着 目 し た 創 作 活 動 を 行 う た め の 一 方 法 を 提 案
することにある。
3. 研 究 の 方 法
(1) KJ 法 に 関 す る 理 論 研 究
(2) KJ 法 を 用 い た 話 し 合 い 活 動 を 取 り 入 れ た 教 材 の 開 発
(3) 授 業 実 践 ( 全 4 時 間 )
4. KJ 法
(1) KJ 法 と は
川 喜 田 二 郎 が , 著 書 『 発 想 法 ― 創 造 性 開 発 の た め に ― 』 (2)で , 学 問 の 方 法 と し て 野 外 科
学を確立する必要性を訴えるなかで,特に発想法部分のさらに中核的な技術として提案さ
れた方法である。それは,野外で観察した複雑多様なデータをいかにまとめたらよいか,
という課題を解決する方法として始まったものである。
因 み に , KJ と は , 川 喜 田 二 郎 の イ ニ シ ャ ル K と J を 日 本 式 に 並 べ , 便 宜 的 に 記 し た も
の を , 日 本 独 つ く 性 協 会 と い う 研 究 グ ル ー プ が 正 式 に 使 っ た こ と か ら KJ 法 と い う 名 で 定
着したのである。
(2) KJ 法 を 行 う た め に 必 要 な も の
上記の著書では,①黒鉛筆またはペン,②赤・青などの色鉛筆,③クリップ多数,④輪
ゴ ム 多 数 ,⑤ 名 刺 大 の 紙 片 多 数 ,⑥ 図 解 用 の 白 紙( コ ピ ー 用 紙 ),⑦ 文 章 を 書 く た め の 原 稿
用 紙 , ⑧ 紙 片 を 拡 げ る た め の 大 テ ー ブ ル ( 畳 ), を 準 備 す る と あ る 。
し か し ,本 実 践 で は 上 記 の も の と 若 干 異 な る も の を 準 備 し た 。そ れ は 以 下 の 通 り で あ る 。
-9-
① シ ャ ー プ ペ ン シ ル ( 黒 鉛 筆 ), ② マ ジ ッ ク を 4 色 , ③ 名 刺 大 の 半 分 の 大 き さ の 糊 付 き
の付箋,④図解用の模造紙,⑤長机 2 つ。
風などで飛ばないメリットがあるため,名刺大の紙片ではなく糊付きの付箋を用いた。
そのため,輪ゴムなどのまとめるためのものは必要なくなったので省いた。また,文章を
書く作業もないため原稿用紙も省いた。
(3) KJ 法 を 行 う 手 順
ま ず ,共 通 の 主 題 を 決 め ,そ の 主 題 に つ い て 1 枚 の 紙 片 に つ き 1 つ の 事 項 を で き る だ け
簡潔に書き込んでいく。
次に,小テーマ毎に 1 つひとつの紙片を見比べ,親近感のあるもの同士をグループにま
とめて いく 。そ して ,まとめ られた グル ープ に 1 行 タイト ルを つけ ていく 。ど のグ ループ
にも入らないものがあった場合は,無理に入れる必要はない。これらの作業を全てのテー
マ毎に行う。
本来であれば,グルーピング後に図解化したり,文章化したりし,口頭発表を行うので
あるが,本実践はグルーピングをするところで終わっている。
(4) KJ 法 を 用 い た 話 し 合 い の 場 面 の 映 像 及 び 実 物 紹 介
図 1
リ ー ダ ー シ ッ プ と は な に か ,と い う こ と に つ い て KJ
法 で ま と め ら れ た 図 の 一 部 で あ る (3)
図 2
KJ 法 に よ る 話 し 合 い の
様子
図 3
グルーピングしている
様子
5. 授 業 実 践 の 紹 介
(1) 指 導 内 容
A 表 現 (3)創 作 ア , イ
(2) 題 材 名
太鼓によるリズムアンサンブルで自分達の「夢」を表現しよう
(3) 対 象 学 年
中 学 2 年 生 ( 2009 年 3 月 16 日 ~ 19 日 実 施 )
(4) 教
ア シ ュ リ ー ・ ヘ ギ 『 ア シ ュ リ ー ~ All About Ashley~ 』 ( 4 ) Chapter10「 夢 」
自 分 達 が こ れ ま で に 抱 い て き た 「 夢 」,「 夢 」 を 実 現 さ せ る た め に 頑 張 る こ
と・目標
材
「跳ねるリズムと跳ねないリズム」
-10-
(5) 題 材 目 標
観 点 1. オ リ ジ ナ ル の リ ズ ム パ タ ー ン を つ く る こ と に 興 味 を 持 ち , 意 欲 的 に 創 作 及
びアンサンブル活動に取り組もうとする。
観 点 2. 跳 ね る リ ズ ム と 跳 ね な い リ ズ ム を 知 覚 し , そ の 特 質 を 感 受 す る と と も に ,
それらを生かした表現を工夫する。
観 点 3. 表 現 し た い イ メ ー ジ を も っ て , 跳 ね る リ ズ ム と 跳 ね な い リ ズ ム の 特 質 を 生
かしたリズムパターンの組み合わせなどを工夫しながら音楽をつくる技能
を身に付ける。
(6) 指 導 計 画
第 1時
学 習 活 動
<「言葉」の持つリズムの知覚>
 ア シ ュ リ ー の「 夢 」の 一 部 を 3 種 類 の 読 み 方 で 音 読 す る( 普 通 に 読 む ,1
語 1 拍で読む,全部をタッカ(
) の リ ズ ム で 読 む )。
 リズムを意識して音読することで,言葉にはリズムがあることを知る。
< KJ 法 に よ る 話 し 合 い 活 動 >
 「 幼 児 の 頃 に 抱 い て い た 夢 」「 小 学 生 の 頃 に 抱 い て い た 夢 」「 中 学 生 に な
ってから抱いた夢」
「 夢 を 実 現 さ せ る た め に 頑 張 る こ と・目 標 」を 付 箋 に
書 き 出 す ( KJ 法 )。 そ れ ぞ れ 5 分 で 付 箋 に 書 き , 模 造 紙 に 貼 っ て い く 。
 それぞれの項目でグルーピングをする。
 グルーピングした各項目にタイトル(一行タイトル)を付ける。
第 2時
< KJ 法 に よ る 話 し 合 い 活 動 と そ れ を も と に し た 創 作 活 動 >
 昨 年 度 取 り 組 ん だ「 く い し ん ぼ う の ラ ッ プ ( 5 ) 」と 今 年 度 取 り 組 ん だ「 魔 法
の フ ル ー ツ バ ス ケ ッ ト ( 6 ) 」を 歌 い ,言 葉 に よ る リ ズ ム ア ン サ ン ブ ル と は ど
のようなものかを確認する。
 各項目から,そのグループのオリジナルリズムパターンをつくる。
 自分達でつくったリズムパターンを組み合わせて,アンサンブル曲をつ
く り ,そ の 過 程 を ワ ー ク シ ー ト( 楽 譜 )に ,「 音 符 」 で は な く 「 言 葉 」 で
まとめていく。
 つくった曲を,手拍子と合わせながらリズムを歌い,確かめる。
第 3時
<創作活動>
 オ リ ジ ナ ル リ ズ ム パ タ ー ン を「 言 葉 」で は な く ,「 太 鼓 」で 表 現 す る と ど
うなるか様々な方法を試しながら,確かめていく。
 「幼い頃から現在に至るまでの『夢』の変遷及び『夢』を実現するため
の目標」を「起承転結」で表現する。その際,特に「跳ねるリズム」と
「跳ねないリズム」を意識する。
第 4時
<最終発表>
 発表し合う。
 自己評価及び他者評価を行う。
 自分達の作品で用いた「跳ねるリズム」について振り返る。
 他 の グ ル ー プ の 発 表 を 聴 き ,特 に「 跳 ね る リ ズ ム 」を 知 覚 し よ う と す る 。
-11-
(7) 評 価 規 準
評価の観点
ア 音楽への
関 心・意 欲・態 度
①
①
イ 音楽的な感受や
表現の工夫
②
③
①
ウ 表現の技能
②
題材の評価規準
オ リ ジ ナ ル の リ ズ ム パ タ ー ン を つ く る こ と に 興 味 を 持 ち ,意
欲的に創作及びアンサンブル活動に取り組んでいる。
[観察]
拍 節 感 を 意 識 し な が ら ,リ ズ ム パ タ ー ン を 知 覚 し て い る[ ワ
ークシート・発言]
跳 ね る リ ズ ム と 跳 ね な い リ ズ ム を 知 覚 し ,そ の 特 質 を 感 受 す
る 。[ ワ ー ク シ ー ト ・ 発 言 ]
リ ズ ム の 特 質 を 生 か し ,イ メ ー ジ に 基 づ い て ,リ ズ ム パ タ ー
ン の 組 み 合 わ せ 方 な ど を 工 夫 し て い る 。[ 演 奏 ・ 発 言 ]
表 現 し た い イ メ ー ジ を も ち ,リ ズ ム の 特 質 を 生 か し な が ら 音
楽をつくることができる[ワークシート・発言]
つくったリズムパターンを正確に打つことができている。
[演奏]
(8) ワ ー ク シ ー ト
┣太鼓で曲づくり┗
┫自 分 達 の イ メ ー ジ に あ っ た 表 現 を 工 夫 し よ う ┳
━普段,何気なく使っている言葉ですが・・・┼
1.
「 ア シ ュ リ ー ~ All About Ashley~ 」の「 夢 」と い う Chapter の 一 部 を 黙 読 し て 下 さ い 。
2.
次のように音読して下さい。
① 普通に音読して下さい。
② 一つの言葉を 1 拍として音読して下さい。
③ 「タッカのリズム
」で音読して下さい。
3.
「言葉」には「音楽の諸要素」のうち深く関わっているのはどれだろう?当てはまると
思うものに○をつけて下さい。
旋律(メロディ)
速さ(テンポ)
4.
5.
「 言 葉 」の も つ「
・
・
リズム
和音(ハーモニー)
音色
・
形式
・
・
強弱
リズム
・
・
拍子
調
」を 意 識 し て ,も う 一 度「 ア シ ュ リ ー 」を 音 読 し て 下 さ い 。
自分の夢の変遷(移り変わり)について,考えてみよう。
① 幼児の頃に抱いていた夢
② 小学生の頃に抱いていた夢
③ 中学生になってから抱いた夢
④ 夢を実現させるために頑張ること・目標
6.
自 分 達 の 書 き 出 し た「 夢 」に つ い て ,
「
7.
自分達の書き出した「夢」から,オリジナル「
リズム
-12-
」を 意 識 し て ,そ れ ぞ れ 読 ん で み よ う 。
リズム
」をつくってみよう。
┣太鼓で曲づくり┗
┫自 分 達 の イ メ ー ジ に あ っ た 表 現 を 工 夫 し よ う ┳
━「言葉のもつリズム」を意識してみよう!!┼
1. 「 ア シ ュ リ ー ~ All About Ashley ~ 」の「 夢 」と い う Chapter の 一 部 を 短 く 区 切 り な
が ら 読 み ,「 跳 ね る リ ズ ム ( 言 葉 )」 と 「 跳 ね な い リ ズ ム ( 言 葉 )」 に 分 け て み よ う 。
跳ねるリズム
跳ねないリズム
2. 自 分 達 の 書 き だ し た「 夢 」を 口 に 出 し て 読 ん で み よ う 。そ し て ,
「 跳 ね る リ ズ ム( 言 葉 )」
と 「 跳 ね な い リ ズ ム ( 言 葉 )」 に 分 け て み よ う 。
跳ねるリズム
跳ねないリズム
┣太鼓で曲づくり┗
≪タイトル≫
┫自 分 達 の イ メ ー ジ に あ っ た 表 現 を 工 夫 し よ う ┳
*グルーピングにつけた「タイトル」とその中に含まれる「夢」のいくつか用いて,オリジナルリズムをつくってみよう。
1. 幼 児 の 頃 に 抱 い て い た 夢
①
②
③
①
②
③
①
②
-13-
6. ま と め と 今 後 の 課 題
これまでに行ってきた創作活動の方法では,一からリズムを考える必要がなかったため
に,短時間で行うことができるというメリットがあった。しかし,創作活動の中心となる
のは音楽を得意とする生徒ばかりで,音楽の苦手な生徒は話し合いにすらなかなか参加で
きず,他の生徒が決めたリズムの組み合わせを言われるままにやるというような状況がし
ば し ば 見 ら れ た 。 そ こ で 本 研 究 で は , あ る テ ー マ に 対 し て 話 し 合 い 活 動 を 行 う 際 に KJ 法
を用いることで,音楽の得手・不得手に関わらず全員が話し合いに参加できるのではない
か と 考 え , KJ 法 を 取 り 入 れ た 教 材 を 開 発 し , 全 4 時 間 で 授 業 実 践 を 行 っ た 。
実践を行ったクラスは,音楽を苦手としている生徒の他に,発達障害を抱えており,コ
ミュニケーションをとることが苦手な生徒やフィリピンからの帰国生徒(現地の学校に通
っており,音楽の授業経験がほとんどない)など,様々な生徒がいる。本実践では大テー
マ を「 夢 」と し た 。そ し て ,最 初 の ス テ ッ プ は「 幼 児 の 頃 に 抱 い て い た 夢 」
「小学生の頃に
抱いていた夢」
「中学生になってから抱いた夢」
「 夢 を 実 現 さ せ る た め に 頑 張 る こ と・目 標 」
という自分のことについて書き出す作業であったため,全く参加しないという生徒はいな
かった。特に,幼児や小学生の頃に抱いていた夢を書き出す作業は,幼いころを思い出し
ながら和気あいあいとした雰囲気のなかで進められた。次のステップであるグルーピング
及び一行タイトル付けの作業においても,最初のステップ同様,全員が話し合い活動に参
加 す る こ と が で き た 。3 つ 目 の ス テ ッ プ で は ,KJ 法 に よ っ て 完 成 し た 図 解 用 紙 を 見 な が ら ,
曲に用いる「言葉」を選び,それらを手拍子によるリズム打ちをすることによって,跳ね
るリズムか跳ねないリズムかを確認しながら創作活動が進められた。そして,作成する楽
譜には音符は用いず,
「 言 葉 」で 書 き 込 ん で い っ た こ と ,ま た「 言 葉 」を 声 に 出 し て 言 っ た
ものを手拍子による「リズム打ち」に置き換えていったことで,比較的スムーズにリズム
を 習 得 す る こ と も で き た 。さ ら に ,「 言 葉 」か ら「 手 拍 子 」へ ,「 言 葉 」と 一 緒 に「 手 拍 子 」
で 打 っ た リ ズ ム を「 太 鼓 」へ ,
「 言 葉 」と 一 緒 に「 太 鼓 」で 打 っ た リ ズ ム を も う 一 度「 手 拍
子」で打って確認するなど,全ての練習の中心に「言葉」があり,生徒同士の教え合いや
発表も「言葉」を言いながら行うことで,短時間での創作活動が可能となった。
この授 業を通 し ,普段 は何気 なく使 って い る 1 つ ひとつ の「言葉 」に はそれ ぞれ に固有
のリズムがあることに気づき,また,生徒達にとって身近なテーマを用いることで目標を
達 成 す る こ と が で き た こ と か ら , KJ 法 を 用 い た 話 し 合 い 及 び 創 作 活 動 は 有 効 な 方 法 で あ
るといえる。
今 後 は , KJ 法 を 用 い た 話 し 合 い 及 び 創 作 活 動 に は ど の よ う な テ ー マ を 設 定 す る こ と が
有効であるかを検討していく。また,本発表では触れていないが,概念地図法を用いた評
価方法についても,より簡単に作図できる方法を模索していく。
7. 参 考 文 献
(1) 竹 内 秀 男 『 イ ラ ス ト で み る
合 唱 指 導 法 』 教 育 出 版 株 式 会 社 , pp.88- 89, 2003
筆 者 の 勤 務 校 で は ,リ ズ ム の 読 み 取 り を 苦 手 と す る 生 徒 が 多 い 。そ こ で ,い ろ い ろ な「 リ ズ ム 」
に 慣 れ 親 し む た め , グ ル ー プ 毎 に リ ズ ム 唱 を 行 う 活 動 を 授 業 の 最 初 に 取 り 入 れ て い る 。「 授 業 で
学習したリズム」とは,その中で学習したものをいう。
(2) 川 喜 田 二 郎 『 発 想 法 ~ 創 造 性 開 発 の た め に ~ 』 中 央 公 論 新 社 , 1967
(3) 川 喜 田 二 郎 『 続 ・ 発 想 法 ~ KJ 法 の 展 開 と 応 用 ~ 』 中 央 公 論 新 社 , 1970
(4) ア シ ュ リ ー ・ ヘ ギ 『 ア シ ュ リ ー ~ All About Ashley~ 』 株 式 会 社 フ ジ テ レ ビ 出 版 ,
pp.135- 137, p.149, 2006
(5) 三 善 晃 監 修 『 中 学 音 楽 音 楽 の お く り も の 1』 教 育 出 版 株 式 会 社 , pp.42- 43, 2006
(6) 三 善 晃 監 修 『 中 学 音 楽 音 楽 の お く り も の 2・ 3 上 』 教 育 出 版 株 式 会 社 , pp.34- 35,
2006
(7) 田 中 耕 治 編『 や わ ら か ア カ デ ミ ズ ム ・〈 わ か る 〉シ リ ー ズ よ く わ か る 教 育 評 価 』ミ ネ
ル ヴ ァ 書 房 , pp.94- 95, 2005
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