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高速・低損失の GaN その実際と実力の検証
GaN パワーデバイスの A,B,C 高速・低損失の GaN その実際と実力の検証 GaN パワーデバイスの潜在能力とデバイスの実力, そしてメリットを引き出すためのノウハウ. ■ 特性を活かす実装のポイント GaN デバイス (以下 GaN)はシリコンなどに比べ高 速で低損失なスイッチングが可能なパワーデバイスで す.特に,カスコード接続された一体型の GaN は数 多くのメリットがあります. いっぽう,GaN の持つ特性を活かして従来の性能 を超える電源や駆動回路を実現するためには,高速・ 低損失ならではの配慮も必要です.例えば,ソースと グラウンド間の配線はゲートの駆動入力とドレイン電 流出力という二つのループの共通インピーダンスを形 成するため,出力電流の変化でゲート電圧が大きく振 られるという結果を招きます.これを防ぐには,入出 力のループを分離して相互の影響が少なくなるような 配線パターン (ケルビン接続)にします. 同様に,寄生振動防止用としてゲートにフェライト ビーズの挿入が有効です. 不要な振動や発振はデバイス周りの浮遊容量と寄生 インダクタンスが原因で起こり,対策としてはゲート ビーズなし と直列に数十 Ω 程度の抵抗を入れることが一般的で す.ところが,GaN ではスピードが落ちるだけで効 き目が現れません.この抵抗はゲート - ドレイン間の 容量(Cgd)とでローパスフィルタを構成することで発 振を押さえる働きをします.フィルタのカットオフは 両 者 の 積 で 決 ま り ま す が,GaN は シ リ コ ン の MOSFET に比べて Cgd が数分の 1 程度と小さいため, 数十 Ω では発振を引き起こす周波数に効果が及ばな いからです.かといって抵抗値を大きくするとスピー ドが落ちてしまいます. そこで,寄生振動の防止にはゲートにフェライトビ ーズを挿入することが推奨されています.<図 1 > フェライトビーズは高周波域で抵抗値が上昇するた め,速度を損ねることなく不要な振動を抑えることが できます.したがってフェライトビーズには発振を起 こす周波数付近で抵抗値が高くなる特性の物を選びま す.<図 2 >にこれらの点に配慮した実装パターンの 例を示しました. 駆動側ループ用のパターン フェライトビーズ (ゲートピン直前) Power レイヤーにすぐ落とす S G D ハイサイド Tr ビーズあり G S D ローサイド Tr GND レイヤーにすぐ落とす バイパス用セラミックコンデンサ (裏面) 〈図 1〉フェライトビーズの挿入効果 24 〈図 2〉デバイス直近の推奨パターン 2015 年 7 月号 PR C:Circuit around the GaN 30 20 10 0 0 2 4 6 8 10 12 Output Current [A] 〈図 3〉ターンオフ時のエネルギー損失 カスコード GaN はターンオフ時も高効率 32 99 28 98.5 24 98 20 16 97.5 12 97 f=500kHz 96.5 Si MOS GaN(TPH3006PS) 96 0 200 400 600 800 8 4 0 1000 1200 Pout[W] 〈図 5〉効率と損失比較(昇圧コンバータ 200V → 400V) 12 10 8 6 60 f=500kHz 4 100 2 0 50 98 0 5 10 15 20 25 Vg[V] Pl o ss(o n ) [ μJ ] GaN の持つ多くのメリットは実際の回路でどのよ うに反映されるのでしょうか. まずは,標準的なハードスイッチングのコンバータ で,シリコンとの効率と損失の比較です.スイッチン グ周波数が高くなるとスイッチング損失の割合が多く なり,差が顕著に表れるのでスイッチングは 500kHz としました.<図 5 >は昇圧コンバータで最新の Si パ ワー MOS と比較したもの,<図 6 >は降圧コンバー タの効率で出力 6A 時の損失内訳も併せて示しました. 何れも GaN の持つ低損失特性が良く表れています. 図 6 では,ハイサイドスイッチの損失差が大きいこと が分かります. 上記はハードスイッチングです.では,原理的にタ ーンオン損失が小さいとされるソフトスイッチングで はどうでしょう.実はソフトスイッチングでも,ター ンオフ時に GaN のメリットが発揮されます.ターン オフ時に生じるデッドタイムは出力容量 Coss に比例 しますが,GaN はシリコンより出力容量(Coss)が小 さいので,デッドタイムの間に生じる損失が小さくな 30 25 20 40 30 Eff [%] Plo ss(o ff ) [ μ J] もともと,GaN はスイッチングが速く損失が小さ いのですが,トランスフォーム社の GaN のようにカ スコード接続された GaN はターンオフ時の損失がさ らに小さいことが大きな特長です. その訳は,ターンオフの瞬間に要するエネルギーが 小さく済むことにあります.単体の GaN の場合,ス イッチのターンオフ時に高電圧がかかった GaN のド レイン - ソース間の容量をチャージするエネルギーが 必要です.これに対してカスコード接続の GaN では 低耐圧 FET へのチャージが主となるので僅かなエネ ルギー損失で済みます.<図 3 > 同様にカスコード接続された GaN のメリットのひ とつとしてドライブに必要なゲート電圧が小さく済む ことが挙げられます.<図 4 >に GaN と SiC,Si-FET の 3 者についてゲート電圧と損失との関係を示しまし た.SiC と Si-FET では高速なターンオンには 20V 程 度のゲートドライブ電圧が必要ですが,同図から分か るように GaN ではその半分の 9V あればオンするので, 他に比べてドライブ部分の電力ロスを少なく抑えられ ます. 実回路での差をチェック Power[W] ■ ■ Loss[%] : Single switch : Cascade GaN Turn-off Energy Vds=380V, inductive load 40 Eff[%] Energy[μJ] 50 96 94 92 20 15 90 1 2 3 4 5 6 7 Output Current[A] 10 10 5 0 0 0 5 10 15 Vg[V] GaN(TPH3006PS) SiC 20 25 HiSW cond LoSW cond Inductor LoSW turn-on LoSW turn-off Si(Rg=2.2Ω) 〈図 6〉電流特性と損失内訳(降圧コンバータ 380V → 200V) 〈図 4〉ゲート電圧と損失 2015 年 7 月号 25 GaN GaN Power Power Low-loss Low-loss Switch Switch PR ■ ■ 製品への搭載も続々 ■ ■ 世界初! GaN(窒化ガリウム)パワー半導体モジュール搭載の 太陽光発電用パワーコンディショナ 設置面積の比較 「Enewell-SOL V1 シリーズ 4.5kW」を販売開始 同製品は GaN 搭載により、最大変換効率 98%のほか、取付面積は従来モデルの 約 1/2 で世界最小のコンパクトサイズとファンレス自然空冷を実現。 また、可聴領域を超える高周波スイッチングを実現し、耳障りな高周波音(モスキ ート音)をなくした。(2014 年 12 月株式会社安川電機 リリースより) るからです.<図 7 >は,この特長が活かされる LLC コンバータ(390V → 12V/124W/200kHz)でオフ時の 挙動比較です. 450 2 400 1.6 1.2 Vs 300 0.8 Ip 250 0.4 200 0 150 -0.4 100 -0.8 50 Ipr (A) できるようになったことで,アプリケーションも拡が ってきました.例えばトーテムポール型のブリッジレ ス PFC もそのひとつです.中でもトーテムポール型 の PFC はシンプルなのが特長ですが,スイッチに良 好な逆回復特性が要求されるため実用化が遅れていま した.こちらもデモボードがあり,性能を評価できま す.トーテムポール型 PFC で問題となるノイズも規 格をクリアできることが実証されています.<図 9 > -1.2 DT 0 -1.6 -50 -2 1.6 1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8 (μs) t 70 99.5 2 1.6 Vs 1.2 0.8 300 Ip 250 0.4 200 0 150 -0.4 100 -0.8 50 -1.2 DT 0 Ipr (A) 400 350 50kHz 99.0 Efficiency[%] 450 Vs(V) GaN 搭載超小形 住宅用パワーコンディション Enewell-SOL 4.5kW 従来機種 (200V 級 単相 4.5kW) 60 50 98.5 100kHz 98.0 40 97.5 30 97.0 20 96.5 Power Loss[W] Vs(V) 350 1/2 10 96.0 0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 Output Power[W] -1.6 -2 -50 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 〈図 8〉3kW インバータ (μs) t 〈図 7〉ターンオフ特性(ソフトスイッチング) 200 GaN ならではの回路 & 製品開発へ トランスフォーム・ジャパン株式会社 26 160 eff 98.0 120 97.0 80 96.0 40 Loss 95.0 0 Power Loss [W] いっぽう,<図 8 >は GaN を使った 3kW インバー タの例 (デモボード) です. これまで,インバータでは周波数 20kHz 程度でス イッチングが行われ,デバイスとしては IGBT が多く 使われてきました.それを GaN に置き換えることで 周波数を高くできるうえ,スイッチロスが少なく済む ので小 型 化 と 省 エ ネ が図れます.同図のグラフは 50kHz と 100kHz でスイッチングしたときの効率です. 高速・高効率の GaN パワーデバイスが手軽に入手 99.0 Efficiency [%] ■ 0 500 1000 1500 2000 2500 Output Power [W] 〈図 9〉トーテムポール型ブリッジレス PFC http://transphormjapan.com/ ツイッター @transphormjapan 〒 222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜 2-5-15 新横浜センタービル 9F TEL:045-471-1370( 代表 ) FAX:045-471-1386 ■株式会社 UKC ホールディングス ■飯田通商株式会社 ■富士通エレクトロニクス株式会社 03-5496-1128 03-6866-7201 045-415-5822 2015 年 7 月号