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農業施設インターネット監視システムの紹介
07 民間開発の技術の紹介 07―■ 民間開発の技術の紹介 農業施設インターネット監視システムの紹介 −いつでも・何処でも施設の運転状況を把握できるクラウドサービス− 川勝 啓行 *1 佐藤 雄彦 *2 坪山 修 *3 末吉 康則 *1 *1 株式会社クボタ パイプシステム事業部 ポンププラント部 *2 株式会社クボタ パイプシステム事業部 ポンプ営業部 *3 クボタシステム開発株式会社 営業本部 1.はじめに 管理所側には、監視用パソコン、 日本の農業用水を供給する農業 弊社は、平成 15 年より自治体向 水利施設のうち、基幹的な農業用 けに小規模施設のインターネット プリンタ、大型ディスプレイ等を 用 排 水 路 の 延 長 は 約 5 万 km で、 監視システムを構築して以来、全 設置する。 ダム、頭首工、用排水機場等は約 国で 2,000 施設以上の施設状況を 7 千箇所存在する。 閲覧するシステムを提供している。 農業施設インターネット監視シ ステムのソフトウェアは、データ センタを利用することも専用サー 基幹的水利施設の相当数は、戦 昨今の通信インフラの急激な進 後から高度成長期にかけて整備さ 歩と低価格化、ICT 技術の目覚ま れてきたことから、老朽化が進行 しい発展に伴い、各種通信ネット また、監視用機器としては、ス しており、近年、標準的な耐用年 ワークを利用した施設監視システ マートフォン、タブレット端末も 数を経過している。 ムの構築が可能となり、従来機に 利用可能であるため、場所・時間 農水省が発表している数値で 比べ、導入・運用コストを低減し を選ばずに、担当者が運転状況を は、再建設費ベースで約 3.1 兆円 たシステムのサービスが実現化し 閲覧できる(図 -1)。 の規模であり、全体の 17%を占め バを設置することも可能である。 (図− 1) システム構成イメージ (2)主な機能 ①施設の状態監視 ②通報機能 ④トレンドグラフ 異常・故障発生時には電子メー 水位、水質、流量、雨量等のト 監視施設の状態を表示。表示項 ルにて複数のアドレスに通報を行 レンドを表示する。また、機械の 目は施設の運転、故障を表示し、 うことが可能。メール通報先は設 経年劣化分析支援として、傾向管 ている。最新の技術を取込み、農 あわせて、写真や簡単な図面等を 定可能である。通報メールの送・ 理機能を有する。 ている(平成 21 年時点) 。さらに 業施設の長寿命化へ寄与する製品 表示することができる。 受信履歴を記録しているため、情 10 年後には約 31%まで達すると 技術について紹介する。 予測されている。施設の老朽化の 進行に伴い、突発事故のリスクが 増加し修繕の負担が増大するとみ られている。 利用した施設、機械、水位の状況 が進行している。 監視が可能である。 一方、施設の更新・補修と同じ システム構成は、施設側にポン く施設監視システムの更新も計画 プ、 水 位 計、 ゲ ー ト 制 御 盤 等 と されているが、旧来型の専用機を データの送受信するデータ通報装 主体とした構成では、導入コスト 置(MU-1000 シリーズ)を設置(写 の面で課題が顕在化している。 真―1)。 より、現場の状況をリアルタイム 日 報、 月 報、 年 報、 故 障 履 歴、 農業施設インターネット監視シ ストックマネジメントの取り組み ARIC情報|No.121 2016-03 ③帳票管理 (1)システム概要 ステムは、インターネット回線を ⑤現場画像監視 WEB カメラを設置することに 2.システムの紹介 こうした状況下で、国主導の下 38 報伝達状況が瞬時に把握できる。 MU-1000 MU-1000 expansion MU-1000PLUS 小規模施設対応モデル 拡張 ユニット 計装設備対応モデル FOMA®の他に電話回線、 光ファイバー、無線を 使った様々なシステム にも適用可能。 点数の多 い大中施設 では MU -1000に、 ユニットを この拡張 まで接続可。 最大 5 台 水位計変換機能を 搭載。流量・雨量 監視などにも適用 可能。 に監視することが可能。また、画 運転履歴を自動集計し表示、それ 像データを保存できるため、過去 らの帳票印刷をする。 に遡って状態確認が可能。 (表− 1) MU1000 シリーズ 主要仕様 (写真− 1) データ通報 装置 MU-1000 シリーズ ARIC情報|No.121 2016-03 39 07―■ 民間開発の技術の紹介 (3)システムの特長 ■WEB カメラ(オプション) ①優れたユーザビリティ 農業施設インターネット監視シ 録画再生機能ズーム機能、ズーム、 赤外線照明により夜間でも画像監 ■施設詳細情報 ■グラフ日報 不測の事態を想定し、データセ ンタは 2 重化(東日本、西日本に 視である。 ステムは、24 時間、何処からでも 遠隔監視が可能。 ③データ保全・セキュリティ 各 1 箇所)対応をしている。 ②低コストの実現 収集したデータは万全に保管さ 操作する端末は、旧来型の専用 データセンタを利用したクラウ 端末ではなく、汎用機器(Windows ドサービスの場合は、中央管理所 外部からのハッキング等の脅威 パソコン・タブレット・スマート に専用のサーバ機器・ソフトウェ へ の 対 策 と し て、 強 固 な フ ァ イ フォン)から閲覧・操作が可能で アは不要。さらに、システム・サー アウォールを装備して対応してい ある(図− 3)。 バ機器の更新費用が不要である。 る。また、本システムで採用して システムにログインすると、全 旧来型の専用機もしくは、サーバ いる FOMA® 通信はクローズした 体の位置図が表示され、瞬時に施 機器の電気代・設置スペースを削 ネットワークであり、独自のプロ 設の状態(正常、故障)を確認す 減できることにより、旧来型のシ トコルを採用しているため外部か ることができる、見やすく分かり ステムより導入コストを大幅削減 らのデータ改ざんを防止できてい 易い画面になっている。また、各 できる。 る。 れる仕組みを取っている。 施設を選択することで、施設の詳 システム運用は、サービス提供 システム利用は ID・パスワード 細情報、帳票管理、トレンドグラ 業者側が行うため、利用者側で係 にて認証しており利用者を限定・ フを閲覧できる。 る費用(人件費等)を削減できる。 特定している。 ® 故障発生時等には、設定により 回 線 は FOMA を 利 用 し て お 複数の担当者へ警報通知のメール り、回線費用とサービス利用費用 送信が可能。警報通信ログは、シ を合わせて月に一定額の費用で利 ステムで自動に記録され、一覧で 用が可能である。 閲覧ができるため、連絡確認状況 を瞬時に確認できる。 WEB カメラ機能(オプション) により、現場を画像で監視するこ 一方、専用サーバを設置した場 合は、デジタル簡易無線などとの ④豊富な導入実績 契約実績は全国で 120 団体、2,000 施設以上の施設への導入実績があ る。 【内訳】 組み合わせで通信費を抑えたシス ・農業水利施設:3 地区 17 施設 テム構成が可能である。 ・地方自治体:約 2,000 施設 とが可能。リアルタイム 1 分更新・ ■運転来歴 ■事故故障画面(携帯電話画面) (図− 2) 主なシステム画面 40 ARIC情報|No.121 2016-03 (図− 3) 利用端末イメージ ARIC情報|No.121 2016-03 41 07―■ 民間開発の技術の紹介 3.農業水利施設導入事例 ■揚水機場・制水弁 取水・送水の水位、流量ならびにポンプ、除塵機、 ゲート、などの施設を管理。 電力量なども併せて管理することにより、予算管理 および計画に活用している。 長野県中信平地区 長野県中信平地区 千葉県印旛沼地区 ①団体名 中信平土地改良区連合 梓川土地改良区 印旛沼土地改良区 ②場所 長野県松本市梓川倭4252 長野県松本市大字新村525番地 千葉県佐倉市山崎143 【分水工】 4施設 ・赤松、 矢橋、 島内、 真鳥羽 【ゲート】 1施設 ・梓川左岸2号転倒ゲート 【雨量計】 3箇所 【ポンプ場】1施設 ・白山甚兵衛機場 【バルブ】2施設 ・甚兵衛幹線制水弁 ・白山3号支線制水弁 【流量計】1箇所 ・白山1号支線流量計 【分水工】2箇所 ③管理施設概要 小水力発電設備 ④導入システム 機能 【分水工】 ゲート開度、 水位、 流量、 故障 【ポンプ場】 等の監視及び操作 小水力発電設備の運転状況の 運転、停止、故障、水位、吐出 【ゲート】 監視 (運転、 停止、 発電値等) ゲート転倒状態、 故障、 水位 量等の監視 の監視 【雨量計】 雨量の監視 ■カメラ(オプション) ■梓川放流工 ■印旛沼分水工 カメラクラウドを利用し、分水工やゲートの水位や流量を遠隔からモニタすることができる。 静止画のグループ機能と保存機能により円滑な運用が可能。 ■太陽光パネル発電(オプション) 4.おわりに 本報で解説したインターネット 信頼性が高く、長期間の発電が可能な太陽光パネル発電を利用し、受電が困難な場所でも監視が可能。 (写真 -2)農業水利施設 導入例 42 ARIC情報|No.121 2016-03 実 現 し た こ と で、 年 々 利 用 す る ユーザが増加している。 監視システムは、高度な維持管理 クボタグループでは社会基盤と 性、経済性が受け入れられ、多く なるインフラ整備に必要な技術、 のユーザに利用されている。専用 製品、サービスを提供しているが、 サーバではその地域に最適なネッ 維持管理、修理、メンテナンスな トワークの構築と求められる独自 どメーカとしてのノウハウがこれ 機 能 を 実 現 し て い る。 ク ラ ウ ド ら監視システムを通して、ユーザ サービスでは通信料を含めたサー の課題解決の「見える化」に役立 ビスを電話の基本料金より安価に てていただければ幸いである。 引用文献 1) 農 林 水 産 省(2015): 農 業 水 利施設におけるストックマネ ジメントへの取組について, pp2-9 2)クボタ技報 No.48 ■問合せ先 株式会社クボタ パイプシステム事業部 ポンプ事業ユニット ポンプ営業部 佐藤 雄彦 〒 104-8307 東京都中央区京橋 2-1-3 電話 03-3245-3425 URL http://www.kubota-pump.com/ ARIC情報|No.121 2016-03 43