...

中部横断自動車道開通による物流進展の可能性

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

中部横断自動車道開通による物流進展の可能性
中部横断自動車道開通による物流進展の可能性
Ⅰ 背景
1 物流を取り巻く社会的情勢
(1)東アジアの台頭
近 年 の 日 本 の 貿 易 相 手 国 を み る と 、欧 米 と の 貿 易 額 は ほ ぼ 横 ば い で あ る
の に 対 し て 、『 世 界 の 工 場 』 と 呼 ば れ る 中 国 と の 貿 易 額 が 急 増 し て お り 、
米 国 を 抜 い て 最 大 の 貿 易 相 手 国 と な っ て い る 。日 本 は 、中 国 に 立 地 す る 工
場に重要部品を輸出するという貿易構造となっている。
また、中国のほか、日本から東アジアへの貨物も急激に増加しており、
平 成 19 年 の 貿 易 額 の 31.6% を 東 ア ジ ア 地 域 で 占 め 、 東 ア ジ ア 域 内 の 物 流
が「準国内化」の傾向にある。
現 在 、 ア ジ ア 地 域 の GDP は 、 全 世 界 の 約 25% で あ る が 、 20 年 後 に は
40% 、30 年 後 に は 50% を 占 め る と の 予 測 も 出 て い る 。そ の 背 景 と し て は 、
大 中 華 圏 の 躍 進 が あ げ ら れ 、経 済 産 業 に お け る 中 国 本 土 の「 陸 の 中 国 」と 、
香 港 、台 湾 、シ ン ガ ポ ー ル の「 海 の 中 国 」の 相 互 連 携 が ま す ま す 深 化 し て
いる状況がある。
ま た 、ロ シ ア は 近 年 、天 然 ガ ス と 原 油 生 産 量 の 合 計 で は 世 界 第 1 位 と な
っ て お り 、 エ ネ ル ギ ー 資 源 を 背 景 に 高 成 長 を 続 け て い る 。 平 成 24 年 に 開
催 を 予 定 し て い る APEC ウ ラ ジ オ ス ト ッ ク 総 会 を 睨 み 、 日 本 円 に し て 約
6,400 億 円 の イ ン フ ラ 投 資 を 計 画 し て い る こ と か ら 、 極 東 ロ シ ア の 経 済 発
展も期待され、ロシア向けの貨物が増加していくことが予想される。
図:日本の貿易相手国の推移
兆円
平成19年の貿易額内訳
平成12∼19年の相手国別貿易額の推移
35
30
中国(香港
含む )
33兆円
21%
その他
40兆円
2 5%
25
20
15
韓国
10兆円
6%
総額
157.1兆円
10
ASEAN10カ
国
20兆円
13 %
EU27カ国
20兆円
13 %
5
0
平成12 平成13 平成14 平成15 平成16 平成17 平成18 平成19
年
中国(香港含む)
米国
ASEAN10カ国
中国(香港含まない)
韓国
米国
25兆円
16%
イン ド
1兆円
1%
台湾
8兆円
5%
出典:国土交通省HP
・欧米との貿易額は横ばいだが、中国との貿易額が急増(平成12年から平成19年で
貿易額が2.7倍。年平均15%以上の増加。)
・平成19年の貿易額の内訳は、主なアジア諸国(中国、韓国、ASEAN等)で71.4億
円(45.4%)
・平成19年には、香港を含まない中国単独の貿易額でも米国を上回った。
今後もアジアへの物流が増加していく傾向が強い。
1
(2)環境への配慮
平 成 17 年 の 京 都 議 定 書 の 発 効 に よ り 、先 進 各 国 で は 国 毎 に CO2 な ど の
温 室 効 果 ガ ス の 排 出 量 に つ い て 数 値 目 標 が 設 定 さ れ 、平 成 2 年 の 基 準 に 対
し て 6 % 削 減 す る こ と が 国 際 公 約 と な っ て い る 。そ の た め 、日 本 で も 国 民
や企業などの間で地球環境問題に対する関心が高まっている。
物 流 分 野 に お い て も 、物 流 コ ス ト 、リ ー ド タ イ ム 、サ ー ビ ス 品 質 に 続 き 、
CO2 排 出 量 が 管 理 対 象 の 4 番 目 の 尺 度 と し て 挙 げ ら れ る な ど 、 環 境 負 荷
の 低 減 が 求 め ら れ て き て お り 、物 流 関 係 者 が 連 携 し て 、こ れ ら の 問 題 に 適
切に対応することが必要となってきている。
図 : 日 本 の 産 業 別 CO2 排 出 量
日本の各部門におけるCO2排出量
工業プロセス部門
(石灰石消費等)
4%
運輸部門におけるCO2排出量
航空, 4.2%
廃棄物部門
(廃プラ、廃油の焼
却)
3%
鉄道, 3.0%
内航海運,
5.0%
エネルギー転換部
門
(発電所等)
6%
産業部門
(工場等)
36%
家庭部門
13%
タクシー, 1.7%
営業用貨物
車, 17.3%
バス, 1.8%
自家用貨物
車, 18.0%
CO2総排出量
12億9,300万トン
(2005年度)
運輸部門の
うち約9割が
自動車関係
自家用乗用
車, 48.9%
業務その他部門
(商業、サービス、
事務所等)
18%
運輸部門
20%
内訳
出典:国土交通省HP
・日本のCO2排出量のうち、運輸部門からの排出量は約2割。
・運輸部門からの排出量のうち約5割(日本全体の約1割)が自家用乗用車。その他の貨
物車等を加えると、運輸部門からの排出量のうち約9割が自動車関係。
今後も物流部門における環境対策の重要性が高まっていく。
2
(3)原油価格の高騰
現在の日本国内の物流の大部分を担うトラック輸送は主に軽油を燃料
としているが、その価格は昨年、原油価格高騰を受け大幅に上昇した。
( 社 ) 山 梨 県 ト ラ ッ ク 協 会 の 調 べ に よ る と 、 軽 油 価 格 は 平 成 17 年 に は
70 円 台 で あ っ た も の が 、平 成 20 年 8 月 に は 140 円 台 に 突 入 し た 。そ の 後
は 、世 界 的 な 景 気 後 退 な ど に よ り 原 油 価 格 が 急 激 に 下 落 し 、こ れ に 伴 い 軽
油 価 格 も 一 時 期 よ り は 低 下 し た が 、依 然 と し て 高 値 を 維 持 し て お り 、今 後 、
世界経済が持ち直せば、再度上昇に転じることも予想される。
物 流 事 業 者 は 、軽 油 価 格 の 上 昇 に よ り 燃 料 コ ス ト が 大 き く 上 昇 し 、現 状
の 運 賃 で は コ ス ト 上 昇 分 を 吸 収 し き れ な く な っ た こ と か ら 、荷 主 側 に 対 し
て 、燃 料 サ ー チ ャ ー ジ 制 の 導 入 な ど 、軽 油 価 格 上 昇 分 の 運 賃 へ の 転 嫁 を 要
請 し た 。要 請 に 応 じ た 荷 主 で は 、輸 送 に か か る 費 用 が 上 昇 し た こ と に よ り 、
収益の圧迫に繋がることとなった。
こ う し た 背 景 か ら 、荷 主 は 物 流 の 一 層 の 効 率 化 を 図 る た め 、輸 送 コ ス ト
を ゼ ロ か ら 見 直 し 、物 流 部 門 を 一 括 し て 外 部 委 託 す る 事 業 者 も 現 れ て き て
い る 。一 方 、物 流 事 業 者 の な か に は 、こ の 厳 し い 経 営 環 境 を ビ ジ ネ ス チ ャ
ン ス と 捉 え 、荷 主 に 対 し て 輸 送 の 効 率 化 を 提 案 す る こ と で 、新 規 の 顧 客 を
獲 得 し て い る 事 業 者 も あ り 、今 後 も 双 方 に お い て 、物 流 の 効 率 化 が 重 要 な
ポイントとなると考えられる。
軽油価格(ローリー価格)の推移(円/L)
円
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月
H17年
H18年
H19年
全国
H20年
山梨県
(( 社 ) 山 梨 県 ト ラ ッ ク 協 会 調 べ )
3
(4)世界経済の後退
平 成 20 年 9 月 の ア メ リ カ 大 手 投 資 銀 行 の 破 綻 を 契 機 と し た ア メ リ カ 発 の
金融危機により、世界的に経済が悪化している。
内 閣 府 の 報 告 に よ る と 、 ア メ リ カ 、 ユ ー ロ 圏 で は 平 成 19 年 の 後 半 か ら 景
気 後 退 し て お り 、経 済 の 牽 引 役 で あ っ た 中 国 に お い て も 、5 年 連 続 の 二 け た
で あ っ た 経 済 成 長 が 、 平 成 20 年 は 一 け た 台 の 経 済 成 長 に 鈍 化 し て い る と の
ことである。
ま た 、平 成 21 年 の 世 界 経 済 の 成 長 率 が 1% 程 度 と な り 、平 成 20 年 見 通 し
の 2.6% か ら 一 段 と 落 ち 込 む な ど 、 平 成 21 年 の 世 界 経 済 を 全 体 と し て 非 常
に 低 い 成 長 に な る と 予 測 し て い る 。さ ら に 、欧 米 の 景 気 後 退 と ア ジ ア の 減 速
が 更 に 深 刻 化・長 期 化 す れ ば 、世 界 同 時 不 況 に 陥 る 可 能 性 も あ る と 懸 念 し て
いる。
日 本 の 経 済 に つ い て は 、戦 後 最 長 の 経 済 成 長 が 、ア メ リ カ の 景 気 後 退 と ほ
ぼ 同 時 期 に 悪 化 に 転 向 し た と 報 告 し て い る 。金 融 危 機 の 深 刻 化 に 伴 う 世 界 的
な 消 費 減 退 や 、外 国 為 替 市 場 で の 円 高 の 直 撃 を 受 け 、自 動 車 や 電 気 機 器 な ど
の輸出が不振に陥っていることが主な要因となっている。
日 本 銀 行 の 見 通 し で は 、平 成 20 年 度 と 平 成 21 年 度 の 経 済 成 長 率 を 、そ れ
ぞ れ マ イ ナ ス 1.8% 、 マ イ ナ ス 2.0% と し て お り 、 戦 後 最 悪 の 落 ち 込 み が 二
年続くと予測している。
こ う し た 世 界 経 済 の 後 退 は 、物 流 量 に も 大 き く 影 響 を 与 え 、海 上 貨 物 量 な
ど は 大 き く 縮 小 し て い る が 、世 界 経 済 の 回 復 と と も に 、物 流 量 も 増 加 に 転 ず
ると予想される。
表:国際機関による主要国・地域別経済見通し(実質経済成長率)
( 出 典 : 内 閣 府 『 世 界 経 済 の 潮 流 2008 年 Ⅱ 』)
4
2
物流対策の状況
物 流 を 取 り 巻 く 社 会 経 済 状 況 の 大 き な 変 化 に 対 応 し て い く た め 、行 政 と 民 間
それぞれにおいて、様々な取組が行われている。
(1)国の取組
国 で は 、関 係 各 省 庁 が 協 力 し て 、政 府 一 体 と な っ て 物 流 施 策 を 推 進 し て い
くため、平成9年4月に「総合物流施策大綱」を策定した。
現 在 の 日 本 の 物 流 政 策 は 、 平 成 17 年 11 月 に 閣 議 決 定 さ れ た 「 総 合 物 流
施 策 大 綱( 2005― 2009)」に 沿 っ て 、① 国 際 物 流 の 推 進 、② セ キ ュ リ テ ィ と
効率性の両立、③環境対策の推進を目標に施策を推進している。
図:国の物流施策の状況
①東アジア域内物流の「準国内化」、②テロを契機とした物流セキュリティ確保
の要請、③京都議定書の発効(環境対策の必要)等、物流を取り巻く情勢は大
きく変化している。
①東アジア域内物流の「準国内化」
③京都議定書の発効(2005.2)
・生産拠点、消費市場として急成長
・距離的に国内物流と大差の無い圏域
・実効性あるCO2対策の必要
・企業の社会的責任
物流を取り巻く情勢の変化(経済社会の変化や構造改革の進展)
②テロを契機としたセキュリティ要請
・世界的なセキュリティ対策の強化
・安全性と効率性の両立の必要性
「総合物流施策大綱(2005−2009)を閣議決定(2005.11)
柱1:国際物流の推進
柱2:セキュリティと効率
性の両立
柱3:環境対策の推進
出典:国土交通省HP
①国際物流の推進
国 際 物 流 の 推 進 を 図 る 対 象 と し て は 、中 国 、韓 国 、ASEAN と い っ た
東アジアを中心に展開している。
特 に 中 国 、韓 国 と の 間 で は 、日 中 韓 三 国 の 連 携 強 化 が 、東 ア ジ ア の 発
展 に 寄 与 す る と の 考 え か ら 、平 成 18 年 9 月 に「 第 1 回 日 中 韓 物 流 大 臣
会 合 」が 開 催 さ れ て お り 、今 後 に お い て も 、同 会 合 を 継 続 し 、さ ら な る
連携強化を図っていくこととしている。
5
ま た 、 今 後 発 展 が 見 込 ま れ る ASEAN と の 間 で は 、「 日 ASEAN 交 通
連携」における物流円滑化ワーキンググループの枠組みを活用し、
ASEAN と の 連 携 強 化 を 図 っ て い る 。さ ら に 、日 本 と ASEAN 双 方 の 国
の 所 管 機 関 同 士 の 枠 組 み だ け で な く 、民 間 経 済 団 体 や 他 省 庁( 経 済 産 業
省 、財 務 省 等 )の 関 係 者 が 一 堂 に 会 し た「 国 際 競 争 力 パ ー ト ナ ー シ ッ プ
会 議 」を 立 ち 上 げ 、同 会 議 で 策 定 し た 行 動 計 画 に 基 づ き 実 証 実 験 等 の 取
組を推進している。
②セキュリティと効率性の両立
同 時 多 発 テ ロ 以 降 、国 際 物 流 に も セ キ ュ リ テ ィ の 強 化 が 求 め ら れ て い
る 。一 方 、従 来 型 の 貨 物 検 査 強 化 な ど の 対 応 で は 、効 率 的 な 物 流 を 阻 害
す る 恐 れ が あ る た め 、世 界 的 に セ キ ュ リ テ ィ と 効 率 化 の 両 立 に 向 け た 方
策の検討・取組が行われている。
こ う し た こ と か ら 、国 に お い て は 、政 策 群「 安 全 か つ 効 率 的 な 国 際 物
流 の 実 現 」 な ど の 場 を 活 用 し 、 官 民 協 働 で 、 日 本 版 AEO 制 度 ( 貨 物 の
セキュリティ面のコンプライアンスに優れた輸出入者等の税関手続き
に 優 遇 措 置 を 与 え る 制 度 ) の 構 築 、 手 続 の 簡 素 化 ・ 電 子 化 、 IT セ キ ュ
リティの確保等、各種の取組を推進している。
③環境対策の推進
平 成 17 年 の 京 都 議 定 書 の 発 効 な ど に よ り 、 世 界 的 に 地 球 温 暖 化 な ど
の 環 境 対 策 の 必 要 性 が 高 ま っ て お り 、物 流 分 野 に お い て も 、環 境 負 荷 低
減のために適切に対応することが求められている。
国 に お い て は 、 CO2 排 出 量 削 減 等 の 環 境 負 荷 を 低 減 さ せ る 物 流 の 実
現 に 向 け 、グ リ ー ン 物 流 パ ー ト ナ ー シ ッ プ 会 議 の 開 催 、都 市 内 物 流 の 効
率 化 、物 流 総 合 効 率 化 法 の 制 定 、3 P L 事 業 の 総 合 支 援 、モ ー ダ ル シ フ
ト推進等の各種施策に取り組んでいる。
また、物流・輸送活動にも省エネ対策への取組を求めるため、平成
18 年 に 「 エ ネ ル ギ ー の 使 用 の 合 理 化 に 関 す る 法 律 の 一 部 を 改 正 す る 法
律 ( 改 正 省 エ ネ 法 )」 を 施 行 し 、 一 定 規 模 以 上 の 荷 主 企 業 、 輸 送 事 業 者
に 対 し 、毎 年 、省 エ ネ に 関 す る「 中 長 期 計 画 」の 策 定 と 、
「定期報告書」
の提出を義務付けている。
6
参考:モーダルシフトとは
環 境 負 荷 の 小 さ い 鉄 道 ・海 運 利 用 へ と 、 貨 物 輸 送 を 転 換 す る こ と を モ ー
ダルシフトと言う。
環 境 保 全 意 識 の 高 い 多 く の 企 業 で は 、 社 会 的 責 任 (C S R )と 位 置 付 け
て 、商 品 の 生 産 か ら 廃 棄 に い た る 全 て の 場 面 で 環 境 負 荷 の 削 減 に 取 り 組 ん
で お り 、そ の 中 で 、輸 送 に お け る 環 境 負 荷 の 削 減 の 一 つ と し て モ ー ダ ル シ
フトに取り組んでいる。
1 ト ン の 貨 物 を 1 ㎞ 運 ぶ と き に 排 出 す る CO2 の 量 を み る と 、鉄 道 は ト ラ
ッ ク の 1 /8 、海 運 は 1 /4 で あ り 、貨 物 輸 送 の 方 法 を 転 換 す る こ と で 、鉄
道 利 用 で は 87% 、 海 運 利 用 な ら 75% も CO2 排 出 量 を 削 減 す る こ と が で き
る と 言 わ れ て い る 。こ う し た こ と か ら 、地 球 温 暖 化 対 策 と し て の モ ー ダ ル
シフトの重要性が高まっている。
(出典:経済産業省
第5回総合資源エネルギー調査会需給部会配布資料)
全 国 規 模 の 鉄 道 貨 物 輸 送 は 、 日 本 貨 物 鉄 道 株 式 会 社 ( JR 貨 物 ) が 昭 和
62 年 に 日 本 国 有 鉄 道 か ら 鉄 道 事 業 を 引 き 継 ぎ 、貨 物 列 車 を 運 行 し て い る 。
本 県 で の 取 り 扱 い は 竜 王 駅 の み で あ り 、 12 フ ィ ー ト コ ン テ ナ 貨 物 を 取
り扱っている。
■ 鉄道特性発揮分野 ⇒ 中長距離・大量・定時輸送が可能
・中長距離輸送…輸送距離が長くなるほどコストメリットが出る。
・大 量 輸 送 … … … 最 大 26 両 の コ ン テ ナ 車 を 牽 引 す る こ と が で き 、一 度
に 650t( ト ラ ッ ク( 10t 車 )で 65 台 分 )も の 荷 物
を輸送することができる。
・定時輸送………旅客列車同様、ダイヤに従って運行し、道路渋滞で
遅れる心配がない。
(天候等により遅れる可能性はあ
り 、 定 時 率 は 95% 程 度 )
7
(2)地方自治体の取組
①物流に関するビジョンの策定
効 率 的 な 物 流 が 行 わ れ る た め に 、都 道 府 県 単 位 で 物 流 に 関 す る ビ ジ ョ ン
を策定し、物流に関する施策を計画的に実施している。
○近年策定された物流に関するビジョン(平成19年度調査) ビジョン等の名称
策定年度
宮城県
宮城県物流基本構想
平成11年度
福島県
福島県物流ビジョン
平成13年度
茨城県
茨城県総合物流計画
平成14年度
(平成18年度改定)
群馬県
群馬県物流体系整備基本構想
平成6年度
千葉県
千葉県物流戦略
平成18年度
東京都
総合物流ビジョン
平成17年度
富山県
とやま物流戦略
平成18年度
兵庫県
21世紀ひょうご物流ビジョン
平成12年度
鳥取県
鳥取県物流指針
平成10年度
岡山県
岡山県物流ビジョン
平成10年度
広島県
広島県総合物流効率化ビジョン
平成10年度
鹿児島県 鹿児島県物流構想
平成10年度
(山梨県調べ)
②流通業務団地の造成
都 心 部 に 過 度 に 集 中 し て い た 物 流 関 連 施 設 を 、郊 外 の 適 地 に 流 通 市 街 地
と し て 移 転 集 約 す る こ と に よ り 、都 市 の 流 通 機 能 の 向 上 及 び 道 路 交 通 の 円
滑 化 を 図 る こ と を 目 的 と し て 、 昭 和 41 年 に 「 流 通 業 務 市 街 地 の 整 備 に 関
する法律」が制定された。
流 通 業 務 市 街 地 は 、都 市 計 画 法 に 定 め ら れ た 地 域 地 区 の「 流 通 業 務 地 区 」、
都 市 施 設 の「 流 通 業 務 団 地 」に よ り 構 成 さ れ る 。都 市 計 画 に 流 通 業 務 地 区
が 定 め ら れ る と 、そ の 地 区 内 で は 、ト ラ ッ ク タ ー ミ ナ ル 、鉄 道 貨 物 駅 、倉
庫 、卸 売 市 場 な ど の 流 通 業 務 に 関 連 す る 施 設 以 外 の 施 設 の 設 置 等 が 規 制 さ
れ る こ と に な り 、そ の 地 区 内 で 特 に 一 体 的・計 画 的 に 整 備 す べ き 区 域 は 流
通 業 務 団 地 と し て 都 市 計 画 に 定 め ら れ 、都 市 計 画 の 中 で 、流 通 業 務 施 設 の
位置・規模や建ぺい率、容積率の制限等が定められることとなる。
地 方 自 治 体 の 中 に は 、こ の 法 律 に 基 づ い て 流 通 業 務 団 地 を 造 成 し 、物 流
関 連 施 設 の 集 約 化 を 行 う こ と で 、物 流 機 能 の 向 上 や 、物 流 拠 点 と し て の 魅
力向上を図っている団体もある。
8
③物流総合効率化法の運用
産 業 空 洞 化 の 歯 止 め 、運 輸 部 門 に お け る 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 削 減 、物
流 拠 点 整 備 へ の ニ ー ズ の 高 ま り を 背 景 に 、中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法
が 廃 止 さ れ 、平 成 17 年 10 月 か ら 新 た に「 流 通 業 務 の 総 合 化 及 び 効 率 化 の
促進に関する法律」いわゆる物流総合効率化法が施行された。
こ の 法 律 に よ り 、倉 庫 業 、運 送 業 等 の 物 流 事 業 者 が 、流 通 業 務 の 総 合 化・
効 率 化 を 図 り 、環 境 負 荷 の 低 減 に も 資 す る 総 合 効 率 化 計 画 の 認 定 を 受 け た
場合には、次のようなメリットを受けられることとなった。
○事業許可等の一括取得
(倉庫業、貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業の許可等を一括で申
請・取得が可能)
○立地規制に関する配慮
(市街化調整区域における施設整備のための開発許可についての配慮を
受けることが可能)
○物流拠点施設に関する税制特例
(法人税、固定資産税等の特例(営業倉庫等)を受けることが可能)
同 法 は 、地 方 自 治 体 に 対 し て 、市 街 化 調 整 区 域 に お け る 施 設 整 備 の た め
の 開 発 許 可 に つ い て の 配 慮 を 求 め て お り 、こ れ を 受 け て 、い く つ か 団 体 で
は 、法 の 趣 旨 を 開 発 許 可 基 準 に 反 映 さ せ 、市 街 化 調 整 区 域 に お け る 、ト ラ
ックターミナルや倉庫などの大規模な流通業務施設整備のための開発許
可基準を緩和し、物流施設の誘導を図っている。
(3)物流事業者の取組
①物流拠点の集約
物 流 事 業 者 に お い て は 、輸 送・保 管 の 効 率 化 や 流 通 加 工 に よ る 付 加 価 値
を向上させるため、物流施設の新設やスクラップアンドビルド等により、
物流施設の集約合理化・大型化を積極的に行っている。
②物流部門の外部委託
製造業者などでは、運送業務だけではなく、材料の発注から製品の配
送 、 在 庫 管 理 ま で 、 物 流 部 門 全 般 の 管 理 に つ い て 他 の 業 者 ( 3 PL( サ ー
ドパーティ・ロジスティクス)業者)に委託し、企業における経営資源
を商品作り等のコアビジネス(本業)に集中するというケースも増えて
いる。
3 PL で は 物 流 事 業 者 が 多 く の 荷 主 の 荷 物 を 大 量 に 処 理 す る こ と で 効
率化が図ることができ、そのための施設として、大型化した施設が利用
されるケースが多い。
9
③共同物流の推進
原 油 価 格 の 高 騰 に よ り ト ラ ッ ク の 燃 料 で あ る 軽 油 価 格 が 上 昇 し 、物 流 事
業者では、コスト上昇分を現状の運賃で吸収しきれなくなったことから、
荷主に対して運賃の引き上げを要請せざるを得ない状況となった。
ま た 、製 造 業 者 等 の 荷 主 に お い て も 、原 材 料 が 高 騰 し て い る が 容 易 に 価
格 に 転 嫁 で き な い こ と か ら 、輸 送 コ ス ト 削 減 へ の 取 組 を 強 化 し て い る 状 況
にある。
こ う し た こ と か ら 、輸 送 コ ス ト を 削 減 す る 手 段 と し て 共 同 物 流 が 再 び 注
目を集めている。
こ れ ま で も 共 同 物 流 の 取 組 は 行 わ れ て き た が 、今 回 の 燃 料 高 騰 が 深 刻 で
あ っ た こ と に 加 え 、企 業 へ の 環 境 対 策 の 要 求 が 強 ま っ て い る た め 、大 手 の
競 合 業 者 間 で 連 携 し て 物 流 の 効 率 化 を 図 っ て お り 、共 同 物 流 を 行 う 事 例 が
増えている。
参 考 : 3 PL( サ ー ド パ ー テ ィ ・ ロ ジ ス テ ィ ク ス ) と は
3 PL と は 、荷 主 企 業 の 物 流 機 能 で あ る 輸 送 、保 管 、在 庫 、顧 客 サ ー ビ
ス、荷役、情報サービスなどを、荷主企業に代わって一括して提供する
か、もしくは、これらの機能を個別にまたはいくつかを組み合わせて、
一 定 期 間 契 約 に 基 づ い て 提 供 す る 事 業 者 の こ と で あ る 。( 齊 藤 実 「 ア メ
リ カ 物 流 改 革 の 構 造 ∼ ト ラ ッ ク 輸 送 産 業 の 規 制 緩 和 」 1999 年 5 月 )
● 3 P L ビ ジ ネ ス の 条 件 ・ 特 徴 ( 従 来 型 物 流 サ ー ビ ス と の 違 い )。
①荷主企業の物流改善・効率化を目的とするサービス
荷 主 の 指 示 に 従 い 運 送 、保 管 、荷 役 等 を 行 う こ と 自 体 が 目 的 で は な い 。
②物流改革の提案・実現
単 な る 作 業 の 受 託 で は な く 、物 流 改 善・効 率 化 を 実 現 す る た め に 荷 主
企業に対して提案を行い、荷主企業の物流改革を図る。
③広範・多様なサービスの提供・一括請負
保 管 、運 送 等 単 一 業 務 で は な く 、流 通 加 工 、在 庫 管 理 等 の 幅 広 い サ ー
ビスを提供する。
従来型物流業務委託
荷主企業
倉庫業者
運送業者B
荷主企業
物流部門
運送業者B
運送業者A
物流部門
倉庫業者
それぞれ委託契約
運送業者A
サードパーティ・ロジスティクス
物流業務を一括して委託
10
3
物流施設の動向
物 流 事 業 者 に と っ て の 物 流 施 設 は 、所 与 の 前 提 条 件 と し て 捉 え ら れ て い た
が 、最 近 で は 、物 流 構 造 の 解 析 と 抜 本 的 な 物 流 コ ス ト 削 減 戦 略 の 一 環 と し て
再 評 価 さ れ る べ き も の と な り つ つ あ り 、物 流 施 設 を 自 由 に 選 定 で き る よ う な
環境に変わりつつある。
特 に 、不 動 産 投 資 会 社 に よ る マ ル チ テ ナ ン ト 型( 複 数 企 業 向 け )の 物 流 施
設 の 開 発 が 増 加 し て お り 、物 流 事 業 者 が 求 め る 機 能 や 立 地 条 件 を 満 た し た 物
流 施 設 が 、各 地 に 開 発 さ れ た こ と に よ り 、物 流 事 業 者 に と っ て は 、業 務 を 行
う物流施設の選定が最重要課題となっている。
(1)物流施設が果たす役割
物 流 施 設 で は 、貨 物 の 積 卸 し・保 管・荷 さ ば き・流 通 加 工 な ど 、物 流 の 円
滑 化 の た め の 様 々 な 活 動 が 行 わ れ る 。物 流 活 動 は 生 産 や 販 売 の 後 方 支 援 の 役
割 と 考 え ら れ て い た が 、最 終 消 費 者 や 納 品 地 に も っ と も 近 い 存 在 と し て 、経
営戦略上優先的に検討すべき要素になりつつある。
(2)物流施設に求められる立地条件
従 来 、倉 庫 や 配 送 セ ン タ ー は コ ス ト ダ ウ ン 要 請 か ら 、地 価 の 安 い 比 較 的 不
便 な 場 所 に 立 地 す る 傾 向 に あ っ た が 、輸 送 技 術 と 輸 送 ス ピ ー ド の 重 要 性 が 高
ま り つ つ あ る 現 在 で は 、立 地 場 所 は 、全 国 を カ バ ー す る 交 通 の 要 所 や 作 業 者
の確保が容易である人口集密度の高い地域が選択されるようになってきて
い る 。つ ま り 、地 価 に つ い て の 優 先 度 が 下 が り 、輸 送 費 用 や 採 用 を 含 め た 人
件費という物流のトータルコストが最適となる場所を選択するようになっ
てきている。
多くの作業者を確保するためには住宅地からの通勤圏である必要があり、
ま た 輸 送 ス ピ ー ド を 最 大 限 に 発 揮 す る た め に 、交 通 の 要 所 な ど 最 終 消 費 地 へ
のアクセスが重視されるようになってきている。
また、現在は物流の効率化のため、在庫を極限まで削減する傾向にあり、
在 庫 削 減 が 進 む に つ れ て 物 流 施 設 の 統 廃 合 が 進 み 、新 た な 物 流 施 設 で は 大 型
化 と 高 機 能 化 が 進 展 し て お り 、従 来 の 保 管 型 倉 庫 か ら 高 度 な 流 通 加 工 機 能 を
有する通過型配送センターへと変化してきている。
11
(3)物流施設の開発の状況
①首都圏の状況
首 都 圏 ( こ こ で は 、 東 京 、 神 奈 川 、 埼 玉 、 千 葉 の 1 都 3 県 を 指 す 。) に
お い て は 、港 湾 周 辺 部 で 物 流 施 設 の 開 発 が 盛 ん で あ り 、内 陸 部 に つ い て も 、
首 都 圏 中 央 連 絡 自 動 車 道( 圏 央 道 )や 東 京 外 か く 環 状 道 路( 外 環 道 )な ど
の 環 状 道 路 の 沿 線 地 域 で 、関 越 自 動 車 道 や 東 北 自 動 車 道 な ど の 放 射 方 向 の
高速道路と交差する地域を中心に、物流施設の開発が進んでいる。
図 : 首 都 圏 に お け る 物 流 施 設 開 発 状 況 ( H17.7 東 京 都 市 圏 交 通 計 画 協 議 会 作 成 )
②その他の地方の状況
首 都 圏 以 外 の 地 域 に つ い て は 、首 都 圏 と 同 様 、主 に 港 湾 周 辺 に お い て 物
流 施 設 の 開 発 が 進 ん で お り 、内 陸 部 に お い て は 、福 島 県 郡 山 市 、佐 賀 県 鳥
栖 市 な ど の よ う に 高 速 道 路 が 交 差 す る 地 域 に お い て 、物 流 関 連 施 設 の 開 発
が進んでいる。
12
4
物流拠点の意義・効果
行 政 主 導 に よ る 物 流 施 設 の 計 画 的 な 誘 致・集 積 や 、民 間 に お け る 物 流 施 設 の
開 発 が 、立 地 地 域 に 対 し て ど の よ う な 効 果 を も た ら す の か 。ま た 、大 型・高 機
能の物流施設や物流施設が集積した地域などを物流拠点と呼ぶ場合があるが、
物流拠点はどのような機能を果たしているかなどについて確認することが必
要である。
(1) 物流拠点の定義
物 流 拠 点 に つ い て の 明 確 な 定 義 は な い が 、国 の 白 書 な ど で は 、次 の と お り
位置づけられている。
・「 貨 物 の 保 管 、 積 卸 し 、 荷 捌 き 等 物 流 活 動 の 円 滑 化 の た め の 様 々 な 活
動 が 行 わ れ る 物 流 の 結 節 点 」( 出 典 : H8 年 運 輸 省 「 運 輸 白 書 」)
・「 物 流 の 過 程 に お い て 、 貨 物 の 積 卸 し 、 保 管 、 荷 さ ば き 、 流 通 加 工 等
のサービスを提供している地区又はそれらの機能を果たしている施
設 」( 出 典 : H10 運 輸 省 「 物 流 拠 点 の 整 備 を 進 め る 上 で の 指 針 」)
(2) 物流拠点の類型
物 流 拠 点 の 定 義 に 当 て は ま る 施 設 は 数 多 く 、こ れ ら は い く つ か 類 型 化 す る
ことができる。
類 型 ① (「 物 流 拠 点 の 整 備 の あ り 方 に つ い て 」( H8 運 輸 省 ) に お け る 物 流
拠点の類型)
①流通効率化への対応を行う物流拠点
・配送センター、物流センターなど
②食料品の流通・備蓄に対応する物流拠点
③共同配送を行うための物流拠点
④広域物流への対応を行うための物流拠点
ア.内航海運、鉄道貨物を扱うターミナルなど
イ .幹 線 輸 送 の た め の ト ラ ッ ク タ ー ミ ナ ル 、道 路 一 体 型 タ ー ミ ナ ル な
ど
⑤輸入等国際物流への対応を行う物流拠点
・ 空港、港湾に隣接した倉庫・上屋、コンテナターミナル
・ 内陸に立地するインランドデポ
など
13
類 型 ② (「 3 PL 人 材 育 成 研 修 テ キ ス ト 」( 主 催 : 国 土 交 通 省 、 3 PL 人 材 育
成促進事業推進協議会)による物流拠点の類型)
① 在 庫 型 物 流 拠 点 ( デ ィ ス ト リ ビ ュ ー シ ョ ン セ ン タ ー : DC 型 )
・施設開発の目的:届け先への納期遵守
・施設の機能・能力:保管・ピッキング機能
・開発が多い業種:メーカーや卸売業者
② 仕 分 け 型 物 流 拠 点 ( ト ラ ン ス フ ァ ー セ ン タ ー : TC 型 , ク ロ ス ド ッ キ
ングセンター)
・施 設 開 発 の 目 的:自 社 店 舗 へ の 一 括 納 品 に よ る 物 流 コ ス ト 低 減 、店 舗
オペレーションのコスト低減
・施設の機能・能力:仕分け・積み替え機能
・開発が多い業種:大手の小売業者
参考:インランドデポとは
港 湾・空 港 地 域 以 外 に あ る 内 陸 部 の 貿 易 貨 物 輸 送 基 地 で 、通 関 業 務 、
保管施設を有する。多くの貿易貨物がコンテナ化されている現在、イ
ン ラ ン ド デ ポ は 主 と し て 、コ ン テ ナ の 集 配 、コ ン テ ナ 貨 物 の 積 み 込 み 、
取出しなどを行うフレートステーション(CFS)機能が併設される
ことが多く、コンテナ船寄港地との輸送の能率化と営業の拡大を目的
としている。
14
(3) 物流拠点の意義・効果
物 流 拠 点 で は 、貨 物 の 積 卸 し・保 管・荷 さ ば き・流 通 加 工 等 、物 流 活 動 の
円 滑 化 の た め の 様 々 な 活 動 が 行 わ れ 、物 流 施 設 利 用 者 に 対 し て 物 流 に 関 す る
便 益 を 与 え て い る が 、こ の ほ か 、立 地 さ れ た 地 域 に 対 し て も 、以 下 の よ う な
貢献を果たしているものと考えられる。
① 地域経済に対する貢献
・ 顧 客 企 業 の 物 流 の 効 率 化 、合 理 化 、集 約 化 と 、こ れ に 伴 う 物 流 費 用 の
削減
・ 地域の中小企業に対する低価格での物流サービスの提供
・ 物流施設に近接する地理的優位性を活かした企業誘致効果
・ 消費地等との輸送時間の短縮
など
② 地方自治体に対する貢献
・ 物流施設立地や新たな企業立地の誘発による税収増
・ 雇用の発生による地域の活性化及び税収増
・ 災害時の支援物資の保管 など
③ 雇用に対する貢献
・ 物 流 施 設 へ の 地 元 採 用 、パ ー ト 雇 用 等 に よ る 雇 用 増 。但 し 、物 流 施 設
の 形 態 に よ り 創 出 す る 効 果 は 異 な り 、作 業 の オ ー ト メ ー シ ョ ン 化 な ど
のため雇用創出効果が大きくない場合もある。
・ 新たな企業立地による雇用増
・ 物流施設関連業務(運送業など)の雇用増 など
④ その他の貢献
・ 効 率 的 な 物 流 が 行 わ れ る こ と に よ る 交 通 渋 滞 、交 通 事 故 、騒 音 等 の 緩
和・縮減
・ 物流施設周辺の道路等、インフラ整備の充実 など
15
Ⅱ
分析・研究
1 貨物の流動状況の現状
(1)全国の物流の状況
① 年間出荷量の推移と産業構成
・ 年 間 出 荷 量 は 30億 6,200万 トンで あ り 、 年 々 減 少 傾 向 に あ る 。
・化 学 工 業 品 が 37.9% と 最 も 多 く 、以 下 、鉱 産 品 、金 属 機 械 工 業 品 の 順 と な り 、
こ の 3 品 類 で 年 間 出 荷 量 全 体 の 75.5% を 占 め る 。
・ H12年 と 比 較 す る と 、 林 産 品 、 雑 工 業 品 、 特 殊 品 ( 排 出 物 を 含 む ) を 除 い て
出荷量が減少。
図 :年 間 出 荷 量 の推 移
年間出荷量推移(物流センサス)
千トン
4,000,000
3,610,000
3,556,000
3,500,000
3,302,000
3,062,000
3,000,000
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
0
H2年調査
H7年調査
H12年調査
H17年調査
図 : H17調 査 に お け る 年 間 出 荷 量 の 品 類 構 成
参 考 : H12 年 調 査
( 3,302 百 万 ト ン )
( 出 典 : H17物 流 セ ン サ ス )
※品類分類対応表
農水産品
穀物、野菜・果物、畜産品、水産物、その他の農産品
林産品
木材、薪炭
鉱産品
石炭、金属鉱、砂利・砂・石材、石灰石、その他の非金属鉱物
金属機械工業品 鉄鋼、非鉄金属、機械
化学工業品
セメント、その他の窯業品、石油製品、石炭製品、化学薬品、化学肥料、その他の化学工業品
軽工業品
紙・パルプ、繊維工業品、食料工業品
雑工業品
日用品、その他の製造工業品
特種品
金属くず、動植物性飼肥料、その他の特種品
その他
その他(混載荷物、分類不能なもの)
16
(2)本県の物流の現状
① 出荷貨物量の推移
・年 間 出 荷 量( 本 県 か ら 県 内 、県 外 へ の 出 荷 量 )は 17,693千 ト ン( 全 国 値 に 占
め る 割 合 は 0.6% ) で あ り 、 全 国 と 同 様 、 年 々 減 少 傾 向 に あ る 。
・ 化 学 工 業 品 が 38% と 最 も 多 く 、 以 下 、 鉱 産 品 、 軽 工 業 品 の 順 と な り 、 こ の 3
品 類 で 年 間 出 荷 量 全 体 の 77% を 占 め る 。
・平 成 12年 と 比 較 す る と 、化 学 工 業 品 、軽 工 業 、雑 工 業 、金 属 機 械 工 業 品 、林
産品などが増加し、鉱産品が大きく減少している。
図:年間出荷量の推移
山梨県の年間出荷量推移(物流センサス)
千トン
30,000
27,330
25,709
25,000
21,338
20,000
17,693
15,000
10,000
5,000
0
H2年調査
H7年調査
H12年調査
H17年調査
図:本県の年間出荷量の品類構成(物流センサス)
平 成 12 年
雑工業
493,496
2%
農水
特殊
338,536 235,474
2%
1%
林産
105,059
0%
平 成 17 年
農水
204,108
1%
単位:トン
排出
172,840
1%
林産
878,208
5%
金属機械
1,110,844
5%
特殊
1,842
0%
単位:トン
金属機械
1,368,246
8%
軽工業
1,445,348
7%
化学
6,866,162
38%
雑工業
1,383,639
8%
年間総出荷額
21,338,287
鉱産
11,663,039
55%
軽工業
1,873,625
11%
化学
5,946,491
28%
年間総出荷量
17,692,639
鉱産
4,943,969
28%
17
② 入荷貨物量の推移
・ 年 間 入 荷 量 ( 県 内 、 県 外 か ら 本 県 へ の 入 荷 量 ) は 16,339千 ト ン で あ り 、 H12
年と比較すると減少している。
・ 化 学 工 業 品 が 44% と 最 も 多 く 、 以 下 、 鉱 産 品 、 金 属 機 械 工 業 品 の 順 と な り 、
こ の 3品 類 で 年 間 出 荷 量 全 体 の 71% を 占 め る 。
・平 成 12年 と 比 較 す る と 、化 学 工 業 品 、金 属 機 械 工 業 品 、軽 工 業 、雑 工 業 、林
産品などが増加し、鉱産品が大きく減少している。
図:年間入荷量の推移
山梨県の年間入荷量推移(物流センサス)
千トン
30,000
25,000
18,016
20,000
16,339
15,000
10,000
5,000
データ無し
0
H2年調査
H7年調査
H12年調査
H17年調査
図:本県の年間入荷量の品類構成(物流センサス)
平 成 12 年
農水
540,225
3%
雑工業
293,481
2%
特殊
204,293
1%
平 成 17 年
林産
146,389
1%
単位:トン
林産
919,782
5%
軽工業
1,097,887
6%
特殊
478,416
3%
排出
956
0%
単位:トン
雑工業
1,358,867
8%
金属機械
1,245,233
7%
化学
3,593,846
20%
農水
888,703
5%
年間総入荷量
18,015,942
軽工業
1,413,312
8%
鉱産
10,894,588
60%
金属機械
1,957,617
11%
18
化学
7,580,921
41%
年間総入荷量
16,338,572
鉱産
3,339,476
19%
③ 地域間流動
ア.流動状況の推移
・ 平 成 12年 と 比 較 す る と 、 域 内 流 動 量 が 減 少 し 、 県 外 へ の 出 荷 量 が 増 加 し て
いる。
図:本県の域内、域外別貨物量
山梨県における貨物の流動状況(物流センサスより)
35,000,000
トン
30,000,000
25,000,000
61.5%
43.8%
20,000,000
15,000,000
10,000,000
県域内流動量
県外からの入荷量
県外への出荷量
28.6%
26.5%
5,000,000
0
27.6%
12.0%
平成12年
平成17年
※県外への出荷量=年間出荷量−域内流動量
県外からの入荷量=年間入荷量−域内流動量
よって、前々頁の年間出荷量と前頁の年間入荷量の合計には、域内流動量がそれぞれ
加算されているため、上図の流動量の合計とは一致しない。
19
イ.出荷先別貨物量
・ 静 岡 県 へ の 貨 物 が 最 も 多 く 、 そ の 中 心 は 鉱 産 品 ( 砂 利 、 砂 な ど )。
・ 平 成 12 年 と 比 較 す る と 、 茨 城 県 ・ 群 馬 県 ・ 栃 木 県 の 北 関 東 3 県 、 神 奈 川
県、長野県、静岡県、中国・四国・九州への貨物が大きく増加している。
図:本県の出荷先別貨物量
2,000,000
山梨県出荷貨物の状況(H17物流センサス)
トン
特殊
排出
1,500,000
雑工業
軽工業
1,000,000
化学
500,000
金属機械
林産
中 国 ・四 国 ・九
州
そ の他 関 西
大阪
愛 知 ・三 重
川
静岡
神
京
長野
東 葉
北 陸 ・新 潟
千 玉
奈
埼 茨 城 ・群 馬 ・栃
木
北 海 道 ・東 北
2,000,000
鉱産
農水
山梨県出荷貨物の状況(H12物流センサス)
トン
特殊
雑工業
1,500,000
軽工業
1,000,000
化学
金属機械
500,000
林産
中 国 ・四 国 ・九
州
そ の他 関 西
大阪
愛 知 ・三 重
川
静岡
神
京
長野
東 葉
北 陸 ・新 潟
千 玉
奈
埼 茨 城 ・群 馬 ・栃
木
北 海 道 ・東 北
20
鉱産
農水
ウ.入荷元別貨物量
・ 愛知県・三重県からの貨物が最も多く、化学工業品が多い。
・ 平 成 12年 と 比 較 す る と 、東 京 都 、神 奈 川 県 、長 野 県 な ど か ら の 貨 物 が 減 少
し、愛知県・三重県からの貨物が大きく増加している。
図:本県の入荷元別貨物量
3,000,000
山梨県入荷貨物の状況(H17物流センサス)
トン
特殊
2,500,000
雑工業
2,000,000
軽工業
1,500,000
化学
1,000,000
金属機械
500,000
林産
中 国 ・四 国 ・九
州
そ の他 関 西
大阪
愛 知 ・三 重
川
静岡
神
京
長野
東 葉
北 陸 ・新 潟
千 玉
奈
埼 茨 城 ・群 馬 ・栃
木
北 海 道 ・東 北
鉱産
農水
山梨県入荷貨物の状況(H12物流センサス)
トン
3,000,000
特殊
2,500,000
雑工業
2,000,000
軽工業
1,500,000
化学
1,000,000
金属機械
500,000
林産
中 国 ・四 国 ・九
州
そ の他 関 西
大阪
愛 知 ・三 重
川
静岡
神
京
長野
東 葉
北 陸 ・新 潟
千 玉
奈
埼 茨 城 ・群 馬 ・栃
木
北 海 道 ・東 北
21
鉱産
農水
④ 輸出入貨物の状況
ア.輸出入貨物量と、利用される空港・港湾、貿易相手地域、取扱品目
・海 上 貨 物 に よ る 輸 出 入 が 9 割 以 上 を 占 め 、ア ジ ア と の 貿 易 が 多 く 、一 般
機械や電気機器の取扱量が多くなっている。
・航 空 貨 物 で は 、成 田 空 港 の 利 用 が 8 割 以 上 を 占 め 、海 上 貨 物 で は 、東 京
港、横浜港の利用が多く、合わせて 8 割以上を占める。
・ 清 水 港 の 利 用 は 、 輸 出 で 3 位 ( 13.8% )、 輸 入 で 4 位 ( 2.8% )。
表:H18.9.1∼ 9.7 間 の 県 内 輸 出 入 貨 物 量 と 、利 用 さ れ る 空 港・港 湾 、貿 易 相 手 地 域 、
取扱品目の上位
貨物量
利 用 される港 ・空 港
相手地域
品目
航空貨物
海上貨物
輸出
成 田 空 港 (84.7%)
アジア(65.4%)
電 気 機 器 (42.9%)
339MT
中 部 国 際 空 港 (5.7%)
北 米 (18.4%)
一 般 機 械 (37.7%)
輸入
成 田 空 港 (83.4%)
アジア(53.9%)
一 般 機 械 (22.5%)
139MT
関 西 国 際 空 港 (15.8%)
EU(32.3%)
元 素 及 び化 合 物 (16.5%)
輸出
東 京 港 (42.2%)
アジア(56.1%)
一 般 機 械 (54.8%)
2,611MT
横 浜 港 (41.5%)
EU(22.7%)
電 気 機 器 (14.7%)
清 水 港 (13.8%)
輸入
東 京 港 (53.8%)
アジア(75.1%)
一 般 機 械 (23.1%)
4,900MT
横 浜 港 (35.0%)
中 南 米 (14.0%)
コーヒー、茶 、ココア、香 辛
名 古 屋 港 (8.0%)
料 類 (17.5%)
清 水 港 (2.8%)
( 出 典 : 財 務 省 関 税 局 調 査 課 「 H18.輸 出 入 貨 物 の 物 流 動 向 調 査 」( 調 査 実 施 期 間 の 1 週
間 以 内 に 申 告 さ れ る 、 海 上 ・ 航 空 の 普 通 貿 易 統 計 計 上 貨 物 を 対 象 に 調 査 し た も の 。))
※ MT= メ ト リ ッ ク ト ン 。 ト ン と ほ ぼ 同 義 。
22
イ.海上コンテナ貨物の状況
・ 海 外 向 け 海 上 コ ン テ ナ 貨 物 は 、輸 出 入 と も 、東 京 港 、横 浜 港 の 利 用 が 多 く 、
清水港の利用は1∼2割程度。
・ 長 野 県 と 比 較 す る と 、本 県 の 海 上 コ ン テ ナ 貨 物 量 は 長 野 県 の 4 割 弱 と な っ
ている。
図:本県の海外向け貨物の港湾別コンテナ量
(中部地方整備局清水港湾事務所作成)
図 : 本 県 及 び 長 野 県 の 輸 出 入 コ ン テ ナ 貨 物 の 状 況 (( 輸 出 + 輸 入 ) / 月 )
(中部地方整備局清水港湾事務所作成)
23
⑤ 代表輸送機関別年間出荷量
・ ト ラ ッ ク に よ る 出 荷 が 9割 以 上 を 占 め る 。
・ 平 成 12年 と 比 べ 、 鉄 道 利 用 な ど が 増 加 し 、 ト ラ ッ ク の 割 合 は 若 干 減 少 し て
いる。
図:本県の代表輸送機関別年間出荷量
鉄道
11,821
航空その他
26,950
平成12年調査
21,338,287トン
自家用トラック
10,721,589
営業用トラック
10,577,614
鉄道
574,454
航空その他
33,814
自家用トラック
8,994,588
平成17年調査
17,692,639トン
0%
海運
313
10%
20%
30%
営業用トラック
7,788,895
40%
50%
60%
70%
80%
海運
300,888
90%
100%
( 出 典 : H17物 流 セ ン サ ス )
■まとめ:本県の物流の現状
・ 本県発着貨物量は、全国と比べると極めて少ない。
・ 産業品類別では、化学工業品、鉱産品貨物が多い。
・ 貨物量は減少傾向にあるが、県外への出荷貨物は増加。
・ 入 荷 で は 愛 知 県 、三 重 県 か ら 、出 荷 で は 静 岡 県 、長 野 県 、首 都 圏 向 け 貨 物
が多い。
・ 輸出入貨物は、ほとんどが京浜港を活用。
・ 国の傾向と同様にアジアとの輸出入貨物が多い。
・ トラックによる輸送が 9 割以上を占める。
24
2
中部横断自動車道開通後における物流拠点の立地条件
中 部 横 断 自 動 車 道 は 、 現 在 開 通 し て い る 双 葉 JCT か ら 増 穂 IC の 間 を 含 め
て 、 平 成 29 年 度 に は 、 双 葉 JCT か ら 清 水 連 絡 道 路 を 経 由 し て 、 東 名 高 速 道
路 の 尾 羽 JCT 間 ま で の 開 通 が 予 定 さ れ て お り 、開 通 後 に は 物 流 基 盤 は 飛 躍 的
に 向 上 す る こ と が 期 待 さ れ る が 、こ こ で は 、こ の 道 路 の 開 通 後 の 本 県 の 立 地
条件について確認を行っていく。
(1)中部横断自動車道が本県物流に与える効果(関東地方整備局甲府河川国道
事 務 所 HP よ り )
①甲府市内から静岡駅までの所要時間が、1 時間程度短縮される。⇒所要時
間の短縮
②荒天時の通行止め規制が回避される。⇒移動・輸送の確実性が向上
●国 道 52号 の雨 による通 行 規 制 区 間 (直 轄 管 理 )
規制延長 規制基準値
規制区間名
規制時間
規制回数
( km)
( mm・ 連続)
2.4
150
7回
142時間40分
3.1
200
6回
82時間10分
1.3
200
7回
69時間00分
4.8
200
5回
59時間10分
富士見峠
(ふじみとうげ)
4.9
200
5回
59時間00分
逢坂
(おうさか)
2.5
200
5回
45時間15分
古屋敷
(ふるやしき)
相又
(あいまた)
切久保
(きりくぼ)
万沢
(まんざわ)
( 延べ)
※ 規 制 回 数 と 規 制 時 間 は 平 成 13年 度 から 平 成 17年 度 まで
の実 績
25
③中部横断自動車道沿線の、企業立地のポテンシャルが向上する。⇒企業立
地による貨物の増加
④農 産 物 や水 産 物 等 の生 鮮 品 の供 給 範 囲 の拡 大 。⇒物 流 ニーズの増 進 による貨
物 の増 加
⇒中部横断自動車道の開通後には、物流基盤の飛躍的な向上により、流通
貨物の増加や、企業立地の進展などが予想される。
26
(2)本県の立地条件
中部横断自動車道沿線地域の物流に関する将来像を検討していくた
めには、現状だけでなく、未来の物流について考えていく必要がある。
特 に 、経 済 は 急 激 に グ ロ ー バ ル 化 し て お り 、今 後 は さ ら な る 進 展 が 想 定
さ れ る こ と か ら 、日 本 国 内 だ け で な く 、物 流 が 拡 大 す る 東 ア ジ ア を 視 野
に入れることが必要である。
現 在 、日 本 の 産 業 の 中 心 は 、首 都 圏 や 中 京 圏 な ど が 位 置 す る 太 平 洋 側
と な っ て い る が 、経 済 の グ ロ ー バ ル 化 や 、東 ア ジ ア 物 流 の 進 展 を 勘 案 す
る と 、今 後 、日 本 海 側 の 港 湾 の 役 割 が 増 加 し 、環 太 平 洋 と 環 日 本 海 を つ
なぐラインの重要性が高まっていくことが考えられる。
本 県 は 首 都 圏 と 中 京 圏 の 間 に 位 置 し て お り 、こ れ ま で 二 つ の 地 域 を つ
な ぐ 中 央 自 動 車 道 を 活 用 し 、産 業 経 済 な ど 様 々 な 分 野 で 発 展 し て き た が 、
中 部 横 断 自 動 車 道 開 通 後 は 、 環 太 平 洋 ( い わ ゆ る 太 平 洋 ベ ル ト )、 環 日
本 海 を 視 野 に 入 れ 、首 都 圏 と 中 京 圏 を 結 ぶ ラ イ ン と 環 太 平 洋 と 環 日 本 海
を結ぶラインのクロスポイントに位置することになる。
中 部 横 断 自 動 車 道 沿 線 地 域 は 、首 都 圏 と の 物 流 の み で は 優 位 性 は 低 い
も の の 、成 長 著 し い 東 ア ジ ア と の 物 流 を 視 野 に 入 れ た 場 合 は 、高 い 優 位
性があると考えられる。
図 : 約 10 年 後 の 高 規 格 道 路 の 状 況
環太平洋と環日本海、首都圏と
中京圏を結ぶクロスポイント
27
(3)中部横断自動車道沿線地域別の立地条件
中 部 横 断 自 動 車 道 沿 線 地 域 の 交 通 ア ク セ ス の 特 徴 か ら 、イ ン タ ー チ ェ ン
ジに着目して、以下の3地域に分けて分析を行う。
な お 、増 穂 IC、南 部 IC は そ れ ぞ れ 2 つ の 地 域 に 重 複 す る こ と と し た が 、
統 計 デ ー タ 上 は 、 増 穂 IC の あ る 増 穂 町 は 「 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア 」 、
南 部 IC の あ る 南 部 町 は 「 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア 」 に 振 り 分 け た 。
○ 双 葉 JCT∼ 増 穂 IC エ リ ア ( 南 ア ル プ ス 市 、 甲 斐 市 、 中 央 市 、 昭 和 町 )
・中 央 道 、中 部 横 断 道 の 結 節 点 に 位 置 し 、中 央 道 を 利 用 し て 、東 京 、長 野
方面にもアクセスが容易。
○ 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア( 市 川 三 郷 町 、増 穂 町 、鰍 沢 町 、早 川 町 、身 延
町)
・ 甲 府 市 と 静 岡 市 の 中 間 に 位 置 し て お り 、 身 延 IC 予 定 地 は 中 央 自 動 車 道
と東名高速道路からほぼ等距離。
○ 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア ( 南 部 町 )
・ 東 名 高 速 道 路 尾 羽 JCT、 第 二 東 名 高 速 道 路 吉 原 JCT 及 び 国 道 52 号 と 交
差 す る 清 水 IC に 近 接 し て お り 、 清 水 港 、 富 士 山 静 岡 空 港 な ど 、 静 岡 方
面の各地へアクセスが容易。
図:中部横断自動車道の開通予定時期とインフラの状況
双葉 JCT
新山梨環状道路
高速道路株式会社整備区間
平成28年度開通予定
JR中央線
白根 IC
南アルプス IC
増穂 IC
新直轄方式区間
高速道路株式会社整備区間の
六郷 IC
進捗に合わせて整備
身延 IC
南部 IC
高速道路株式会社整備区間
平成29年度開通予定
富沢 IC
28
甲府南 IC
JR身延線
① インフラ整備
○ 双 葉 JCT∼ 増 穂 IC エ リ ア ( 南 ア ル プ ス 市 、 甲 斐 市 、 中 央 市 、 昭 和 町 )
・中部横断道開通後は、静岡方面への移動時間が大幅に短縮。
・鰍沢町∼甲斐市間は甲西バイパスが敷設。
・ 南 ア ル プ ス IC は 新 山 梨 環 状 道 路 南 部 区 間 ( H21 開 通 予 定 ) の 始 点 。
○ 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア( 市 川 三 郷 町 、増 穂 町 、鰍 沢 町 、早 川 町 、身 延
町)
・ 主 要 道 路 の 国 道 52 号 は 、 幅 員 狭 小 、 線 形 不 良 、 通 行 規 制 の 多 発 な ど の
課題がある。
・鰍沢町∼甲斐市間は甲西バイパスが敷設。
・ 六 郷 IC∼ 富 沢 IC 区 間 は 新 直 轄 方 式 に よ る 整 備 に よ り 通 行 料 が 無 料 。
○ 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア ( 南 部 町 )
・ 主 要 道 路 の 国 道 52 号 は 、 幅 員 狭 小 、 線 形 不 良 、 通 行 規 制 の 多 発 な ど の
課題がある。
・ 富 士 山 静 岡 空 港 は H21.6 に 開 港 予 定 。
・ 第 二 東 名 高 速 道 路 は H24 よ り 順 次 開 通 予 定 。
② 用地確保の容易度
○ 双 葉 JCT∼ 増 穂 IC エ リ ア ( 南 ア ル プ ス 市 、 甲 斐 市 、 中 央 市 、 昭 和 町 )
・平地が多く用地確保は比較的容易
○ 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア( 市 川 三 郷 町 、増 穂 町 、鰍 沢 町 、早 川 町 、身 延
町)
・山間地が多く用地確保が困難
○ 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア ( 南 部 町 )
・山間地が多く用地確保が困難
③ 土地利用規制
○ 双 葉 JCT∼ 増 穂 IC エ リ ア ( 南 ア ル プ ス 市 、 甲 斐 市 、 中 央 市 、 昭 和 町 )
・双 葉 JCT 周 辺 や 、白 根 IC、南 ア ル プ ス IC、増 穂 IC 周 辺 な ど の 釜 無 川 右
岸 は 、市 街 化 を 抑 制 す べ き 区 域( 市 街 化 調 整 区 域 )を 設 け な い 非 線 引 き
都市計画区域にある。
・な お 、釜 無 川 左 岸 は 市 街 化 調 整 区 域 を 設 け た 線 引 き 都 市 計 画 区 域 で 、開
発が制限される地域もある。
・沿線優良農業用地には農用地区域が広く設定されている。
○ 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア( 市 川 三 郷 町 、増 穂 町 、鰍 沢 町 、早 川 町 、身 延
町)
・増 穂 IC 周 辺 及 び 身 延 IC 予 定 地 周 辺 は 、非 線 引 き 都 市 計 画 区 域 と な っ て
い る が 、そ の ほ か の 沿 線 地 域 に は 都 市 計 画 区 域 は な く 、用 途 制 限 は な い 。
29
・沿線優良農業用地には農用地区域が広く設定されている。
○ 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア ( 南 部 町 )
・沿線地域に都市計画区域はなく、用途制限はない。
・沿線優良農業用地には農用地区域が広く設定されている。
④ 取扱物流量
○ 双 葉 JCT∼ 増 穂 IC エ リ ア ( 南 ア ル プ ス 市 、 甲 斐 市 、 中 央 市 、 昭 和 町 )
・ 製 造 品 出 荷 額 は 6,908 億 円 で 県 全 体 の 28% 。
・ エ リ ア 内 に 9 つ の 工 業 団 地 が あ り 、 65 社 2 組 合 が 立 地 し て い る ( 国 母
工業団地含む)。
・ 小 売 業 年 間 販 売 額 は 1,105 億 で 県 全 体 の 23% 。
・県内唯一の卸売団地である県流通センターが立地している。
○ 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア( 市 川 三 郷 町 、増 穂 町 、鰍 沢 町 、早 川 町 、身 延
町)
・ 製 造 品 出 荷 額 は 927 億 円 で 県 全 体 の 4% 。
・ 現 在 、 エ リ ア 内 に 4 つ の 工 業 団 地 が あ り 、 11 社 が 立 地 し て い る 。
・ 小 売 業 年 間 販 売 額 は 268 億 円 で 県 全 体 の 3% 。
○ 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア ( 南 部 町 )
・製 造 品 出 荷 額 は 315 億 円 で 県 全 体 の 1 % 強 。製 造 品 出 荷 額 7,556 億 円 の
静岡市清水区に隣接。
・エリア内に 1 つの工業団地が造成されており、1 社が立地している。
・ 小 売 業 年 間 販 売 額 は 55 億 円 で 県 全 体 の 1% 弱 。
( 製 造 品 出 荷 額 は H17 工 業 統 計 、工 業 団 地 の 状 況 は H19.3 現 在 、小 売 業 年
間 販 売 額 は H16 商 業 統 計 に よ る )
⑤ 労働力
○ 双 葉 JCT∼ 増 穂 IC エ リ ア ( 南 ア ル プ ス 市 、 甲 斐 市 、 中 央 市 、 昭 和 町 )
・ 人 口 は 、 19 万 5 千 人 で 県 全 体 の 22% 。
・ 就 業 者 人 口 は 、 101,399 人
○ 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア( 市 川 三 郷 町 、増 穂 町 、鰍 沢 町 、早 川 町 、身 延
町)
・ 人 口 は 、 5 万 3 千 人 で 県 全 体 の 6% 。
・ 就 業 者 人 口 は 、 25,463 人
○ 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア ( 南 部 町 )
・ 人 口 は 、 1 万 人 で 県 全 体 の 1% 強 。
・ 就 業 者 人 口 は 、 4,624 人
( 人 口 、 就 業 者 人 口 は H17 国 勢 調 査 に よ る )
30
3 物流拠点形成に向けた課題
(1)本県における課題
①企業誘致などによる発着貨物の増加
出荷貨物、入荷貨物とも近県と比べ少ないことから、発着貨物を増加
させていくため、沿線地域にモノがあつまるような活動や仕組みづくり
が求められる。
②顧客企業への近隣性や物流の方向性を踏まえた物流拠点の適地の選定
中部横断自動車道は、甲府盆地の西側から静岡市に向かってまっすぐ
延びる計画となっているが、現在のモノの流れや、将来のモノの流れを
予測し、どの地域が物流拠点の形成にもっとも好ましいかを選定する必
要がある。
また、中部横断自動車道に連結している新山梨環状道路の整備も着実
に進展していることから、中部横断自動車道沿線を広く捉え、物流拠点
を形成すべき地域を検討していく必要がある。
③地震防災、周辺環境、住民生活等への配慮
物流施設は、迷惑施設として扱われるケースがあり、地元住民からの
理解が必要となる。
また、地震の発生する可能性などについて把握するため、土壌や断層
について確認する必要がある。
さらに、環境負荷を軽減させるため、トラック利用だけでなく、鉄道
貨物との連携を模索する必要がある。
④清水港の機能強化
清水港は本県最寄りの港湾であり、中部横断道の開通により所要時間
が大幅に短縮されるが、現在のところ港湾の機能不足などにより利用頻
度 が 京 浜 港 と 比 べ て 低 い こ と か ら 、清 水 港 の 機 能 拡 充 な ど が 重 要 で あ る 。
(2)地域別の課題
○ 双 葉 JCT∼ 増 穂 IC エ リ ア ( 南 ア ル プ ス 市 、 甲 斐 市 、 中 央 市 、 昭 和 町 )
・新山梨環状道路により中部横断道とのアクセスが容易であることから、
拠点形成の適地を選定する沿線地域について、広く捉えることが必要。
・鉄道との連携によるモーダルシフトの検討。
○ 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア( 市 川 三 郷 町 、増 穂 町 、鰍 沢 町 、早 川 町 、身 延
町)
・地 域 の 産 業 の 発 展 や 産 業 立 地 の 推 進 な ど 、地 域 の ニ ー ズ を 踏 ま え た 物 流
基盤という視点で物流拠点形成を考えていくことが必要。
○ 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア ( 南 部 町 )
・静 岡 県 側 の ニ ー ズ へ の 対 応 だ け で な く 、本 県 へ の 波 及 効 果 も 大 き い 物 流
施設の誘致。
31
4.物流拠点の方向性
視点1:地理的な強みを活かした内陸型国際物流中継基地
首 都 圏 、 中 京 圏 お よ び 環 太 平 洋 ( 太 平 洋 ベ ル ト )、 環 日 本 海 を 見 据 え る こ
と が で き る 立 地 条 件 の 強 み を 生 か す こ と に よ り 、中 部 横 断 自 動 車 道 沿 線 地 域
は 、東 ア ジ ア や 欧 米 方 面 に 向 け た 最 適 な 物 流 を 選 択 で き る 基 点 と な り 、日 本
の国際物流ネットワーク網の中継基地となることができる可能性がある。
東 ア ジ ア に 貨 物 が 集 ま っ て い る 現 在 、日 本 の 産 業 は ア ジ ア の 時 代 に 適 確 に
対 応 し て い く こ と が 必 要 で あ り 、東 ア ジ ア に 近 接 す る 環 日 本 海 側 の 港 湾 の 貨
物 量 が 、全 国 伸 び 率 と 比 較 し て 大 幅 に 伸 び て き て い る こ と に 見 ら れ る よ う に 、
今後、日本海の重要性がますます高まることが予想される。
こ う し た こ と か ら 、中 部 横 断 自 動 車 道 の 開 通 は 、太 平 洋 側 は も と よ り 、東
ア ジ ア に 近 接 す る 日 本 海 側 の 港 湾 へ の ア ク セ ス を 向 上 さ せ る こ と と な り 、日
本 の 産 業 の 発 展 に と っ て 大 き な 意 味 を 持 つ も の で あ る 。中 部 横 断 自 動 車 道 が
敷 設 さ れ る 本 県 は 、環 太 平 洋 と 環 日 本 海 を 結 ぶ ラ イ ン と 、首 都 圏 と 中 京 圏 の
ラ イ ン の ク ロ ス ポ イ ン ト と い う 強 み を 生 か す こ と で 、本 県 の 物 流 拠 点 は 国 際
物 流 ネ ッ ト ワ ー ク 網 の 中 継 基 地 と な る 可 能 性 が あ り 、そ の 場 合 に は 、本 県 の
産業にも大きく貢献することが期待される。
(出典:北陸信越運輸局
北陸地域国際物流戦略チーム第2回本部会配布資料)
ま た 、本 県 で は 、ワ イ ン や 果 物 な ど の 地 場 産 品 に つ い て の 輸 出 の 取 組 を 積
極 的 に 推 進 し て い る 。本 県 で の 国 際 物 流 拠 点 の 形 成 は 、太 平 洋 側 の 港 湾 の み
な ら ず 日 本 海 側 港 湾 に つ い て も 利 便 性 を 向 上 さ せ る な ど 、輸 出 の 効 率 化 に 寄
与するため、これら地場産品の輸出の増加につながることも期待できる。
こ う し た 取 組 に よ り 地 場 産 品 が 海 外 で 評 価 さ れ る こ と に よ り 、国 内 に お い
て も 評 価 が 高 ま る こ と が 期 待 で き 、そ の 結 果 、国 内 に お い て も 需 要 が 増 加 し 、
首都圏や中京圏への輸送が増加していくことも考えられる。
32
視点2:社会的な要請の強い環境配慮型モーダルシフト拠点
現 在 、世 界 的 に 地 球 温 暖 化 が 問 題 と な っ て お り 、日 本 を 始 め 、多 く の 国 で 温
室効果ガスの抑制に国を挙げて取り組んでいる。
本 県 は 、東 京 に 隣 接 し て い る に も 関 わ ら ず 、富 士 山 を 始 め 豊 富 な 自 然 を 残 し
ていることから、中部横断道沿線地域における物流拠点の形成にあたっては、
豊かな自然との共存を目指すことが重要である。
現 在 、物 流 に お け る 環 境 負 荷 低 減 の 方 法 と し て 、ト ラ ッ ク に よ る 幹 線 貨 物 輸
送 を 、地 球 に 優 し く 、大 量 輸 送 が 可 能 な 海 運 ま た は 鉄 道 に 転 換 す る モ ー ダ ル シ
フ ト が 注 目 を 集 め て い る 。環 境 へ の 意 識 の 高 ま り に よ っ て 、鉄 道 貨 物 の 輸 送 量
は年々増加を続けている状況にあり、今後も同様の傾向が続くと予想される。
鉄 道 貨 物 輸 送 の 特 性 は 長 距 離 、大 量 輸 送 で あ る た め 、モ ー ダ ル シ フ ト の 効 果
を 発 揮 す る に は 、概 ね 500km 以 上 の 輸 送 距 離 と 一 定 規 模 の 貨 物 量 が 必 要 と な る 。
ま た 、本 県 か ら 長 野 県 に か け て の JR 中 央 線 沿 線 に は 、国 際 標 準 規 格 で あ る
ISO 規 格 の 20 フ ィ ー ト 及 び 40 フ ィ ー ト 海 上 コ ン テ ナ を 取 り 扱 う 駅 が な い た
め 、本 県 に こ れ ら の コ ン テ ナ を 取 り 扱 う 拠 点 が 形 成 さ れ た 場 合 に は 、本 県 の ほ
か 、長 野 県 な ど の 内 陸 部 の 貨 物 が 集 約 さ れ る こ と が 期 待 さ れ 、大 量 輸 送 に よ り
物流の効率化にも貢献できると考えられる。
そ の た め 、本 県 に お け る 物 流 拠 点 の 形 成 に お い て は 、鉄 道 と 連 携 し た 内 陸 型
モーダルシフトタイプが、ひとつの方向性として考えられる。
(出典:経済産業省
第5回総合資源エネルギー調査会需給部会配布資料)
33
Ⅲ
まとめ
1 物流拠点形成の可能性
(1)本県における可能性
物 流 を取 り巻 く情 勢
・東 アジアの躍 進 による、日 本 海 側 港 湾 の利 用 度 ・重 要 度 の向 上
・物 流 部 門 に対 する環 境 対 策 の要 請
・原 油 高 により、更 なる物 流 の効 率 化 の追 求
・物 流 施 設 の集 約 化 の進 展
本 県 における立 地 条 件 (強 み)
・首 都 圏 と中 京 圏 のほぼ中 間 に位 置
・中 部 横 断 道 の開 通 により、清 水 港 のほか、東 海 道 ベルトと接 続
・進 展 する東 アジアに近 接 する日 本 海 側 と東 海 道 ベルトの間 に位 置
首 都 圏 と中 京 圏 の両 方 の貨 物 を取 り扱 い、太 平 洋 側 、日 本 海 側 の両 方
を見 据 える物 流 拠 点 の可 能 性 がある。
図:本県における物流拠点の可能性
首都圏と中京圏、環太平洋(京浜港、清水港)と日
本海(直江津港)を取り扱い範囲とする物流拠点
34
(2)中部横断自動車道沿線地域別の可能性
○ 双 葉 JCT∼ 増 穂 IC エ リ ア ( 南 ア ル プ ス 市 、 甲 斐 市 、 中 央 市 、 昭 和 町 )
・工 業 団 地 が エ リ ア 内 に 多 く 立 地 し て い る こ と 、中 央 道 、中 部 横 断 道 の 結
節 点 に 位 置 し て い る こ と 、中 部 横 断 自 動 車 道 に よ り 東 海 道 へ 直 結 す る こ
と な ど か ら 、本 県 の ほ か 、首 都 圏・長 野・静 岡・愛 知 方 面 の 発 着 貨 物 を
扱う広域物流拠点形成の可能性がある。
・中 部 横 断 自 動 車 道 に よ る 清 水 港 や 富 士 山 静 岡 空 港 ま で の 所 要 時 間 の 短 縮 、
京 浜 港 の 慢 性 的 な 渋 滞 な ど か ら 、両 港 の い ず れ も 利 用 可 能 で 、か つ 新 潟
直江津港も見据える国際貨物の物流拠点形成の可能性がある。
○ 増 穂 IC∼ 南 部 IC エ リ ア( 市 川 三 郷 町 、増 穂 町 、鰍 沢 町 、早 川 町 、身 延
町)
・域 内 に お け る 発 着 貨 物 が 少 量 で あ り 、ま た 山 林 が 多 く 大 規 模 な 土 地 の 確
保 が 難 し い こ と か ら 、現 状 で は 物 流 拠 点 の 形 成 は 困 難 で あ る こ と が 見 込
まれる。
○ 南 部 IC∼ 富 沢 IC エ リ ア ( 南 部 町 )
・域 内 の 発 着 貨 物 は 少 な い が 、第 二 東 名 に 近 接 し 、静 岡 市 の 後 背 地 と し て 、
主に静岡県内発着貨物を扱う広域的な物流拠点形成の可能性がある。
図:地域別の物流拠点の可能性
【双葉JCT∼増穂IC】
・中央道、中部横断道の結節点
・中部横断道により太平洋ベルトに直結
⇒首都圏・長野・静岡・愛知方面の発
着貨物を扱う広域物流拠点
・清水港や富士山静岡空港までの所要時
間の短縮
双葉JCT
⇒両施設のいずれも利用可能な国際
貨物の物流拠点
白根IC
南アルプスIC
増穂IC
【増穂IC∼南部IC】
六郷IC
・山林が多く大規模な土地の確保が困難
身延IC
⇒物流拠点の形成は困難
南部IC
富沢IC
【南部IC∼富沢IC】
・第二東名に近接
吉原JCT
⇒静岡市の後背地として、主に静岡
県内発着貨物を扱う物流拠点
35
2
物流拠点の将来像
内陸型の国際物流中継基地と、モーダルシフト拠点による『環境配慮型
国際物流拠点』の形成
本 県 は 中 部 横 断 道 の 開 通 に よ り 、環 日 本 海 と 環 太 平 洋 を 結 ぶ ラ イ ン と 、中 部
圏と首都圏を結ぶラインのクロスポイントに位置するという強みを有するこ
と に な る 。中 部 横 断 自 動 車 道 沿 線 へ の 物 流 拠 点 形 成 の た め に は 、こ の 強 み を 最
大 限 に 活 か す こ と が 必 要 で あ り 、日 本 海 側 と 太 平 洋 側 の 港 湾 を 選 択 的 に 利 用 で
きる内陸型国際物流中継基地が、本県の物流拠点の一つの方向となる。
ま た 、現 在 の 物 流 に 要 求 さ れ て い る 環 境 負 荷 低 減 の 実 現 の た め 、大 量 か つ 効
率 的 な 幹 線 輸 送 を 可 能 に す る 物 流 拠 点 が 、豊 富 な 自 然 環 境 を 有 す る 本 県 の 目 指
すべき物流拠点のもう一つの方向性として浮かび上がる。
こ う し た こ と か ら 、本 県 の 物 流 拠 点 は 、日 本 全 国 の 輸 出 入 貨 物 が 集 ま る「 内
陸型国際物流中継基地」と、それらの貨物を環境負荷の低い鉄道輸送により、
集 荷・輸 送 す る「 環 境 配 慮 型 物 流 拠 点 」の 両 方 の 性 格 を 有 す る こ と が 、も っ と
も望ましい物流拠点の将来像であるといえる。
例 え ば 、輸 出 に つ い て は 、北 海 道・東 北 、九 州 な ど で 生 産 さ れ た 貨 物 は 環 境
負 荷 の 低 い 鉄 道 輸 送 、ま た 首 都 圏 や 中 京 圏 で 生 産 さ れ た 貨 物 は ト ラ ッ ク 輸 送 ま
た は 鉄 道 輸 送 か ら 効 率 的 な 方 法 を 選 択 し て 本 県 の 物 流 拠 点 ま で 輸 送 さ れ 、集 積
さ れ た 輸 出 貨 物 は 、太 平 洋 側 で は 京 浜 港 、清 水 港 な ど 、日 本 海 側 で は 直 江 津 港 、
新 潟 港 な ど を 、輸 出 先 に 応 じ て 最 も 効 率 的 な 港 湾 を 選 択 し て 輸 出 す る こ と が 可
能となる。
輸 入 に つ い て は 逆 の 流 れ と な り 、近 隣 の 各 港 湾 か ら の 貨 物 が ト ラ ッ ク 輸 送 に
よ り 本 県 の 物 流 拠 点 に 到 着 し 、そ の 拠 点 か ら 、長 距 離 に つ い て は 鉄 道 輸 送 、中
距 離 に つ い て は 、鉄 道 輸 送 ま た は ト ラ ッ ク 輸 送 、近 距 離 に つ い て は ト ラ ッ ク 輸
送により、効率的に全国に配送を行うことが可能となる。
こ の よ う に 、中 部 横 断 自 動 車 道 沿 線 地 域 を 中 心 に 、全 国 の 物 流 の 一 大 中 継 基
地 と な る 可 能 性 が あ り 、こ う し た 物 流 拠 点 が 形 成 さ れ る こ と に よ り 、本 県 の 物
流基盤の向上はもとより、日本全国の物流の効率化に資することができる。
図:本県物流拠点の将来像
36
Fly UP