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GPS・気象センサーつきデータロガーを用いた 自転車による移動気象観測
科教研報 Vol.24 No.1 GPS・気象センサーつきデータロガーを用いた 自転車による移動気象観測 ―自転車による局地気象観測の事例― On the meteorological observation using by bicycle with GPS data logger −Case study in local meteorological observation using by bicycle− ○小笠原悠人、 斎藤理絵、名越利幸* YUTO Ogasawara,RIE Saitou,TOSIYUKI Nagoshi 岩手大学教育学部* Faculty of Education, Iwate University [要約]本研究では中学生にとって理解しづらい地球大気の問題を、最近容易に利用されるよ うになってきた GPS 測器とデーターロガーを用いて、自転車による移動気象観測を行 うシステムを開発した。その結果、気象情報と位置情報をリンクさせ、作画プログラム を用いることで中学生にも理解しやすいと思われるシステムができた。 [キ−ワード]大気環境教育 GPS データロガー 移動気象観測 自転車 1.はじめに 2)解決策として次のような方策をとった。 昨今、地球環境に対する関心が高まりつつあ ①GPS およびデータロガーの設置方法:GPS 受 るが、気象の学習は目に見えない大気を取り扱 信機は反応性を良くするためにハンドル上 うために、中学生にとって理解しにくい領域で 部に取り付け、予備としてもうひとつを首か ある。そこで最近容易に利用できるようになっ らぶら下げて測定する。データロガーは地上 てきた GPS 受信機と、データロガーを用いて自 からある程度離れた高さに設置するため、か 転車による移動気象観測を行うシステムを開 ご前面に設置する。 発し、身近な地域の大気環境教育に利用するこ ②リアルタイムの GPS 位置情報を取り込んだ とを試みた。 移動気象観測システムの開発:GPS 位置情報 を取り込んだ移動気象観測システムは、車載 2.GPS・データロガ−を用いた観測システム 用の研究用途以外、現在開発されていない。 1)データ取得システムを考案するために次の そこで、生徒たちが自転車で移動しながら気 諸点を明らかにする。 象データと位置情報を取り込み観測できる ①データを正確に受信、観測するために GPS ようなシステムの開発を行った。 とデータロガーをどのように自転車に設置 ③気象データと位置情報をリンクさせるシス すべきか。 テムの開発:それぞれ時間軸に沿って、各種 ②GPS による位置情報を、リアルタイムに携帯 気象データと位置情報がデータロガーにそ 端末に記録させ、一定間隔で小型携帯パソコ れぞれ記録されており、CSV ファイルとして ンに取り入れるにはどのようなシステムを 出力可能である。それぞれの時間軸を一致さ 開発すべきか。 せることで、気象情報と位置情報がリンクし ③移動気象観測の結果とデータを取得した位 たデータとなる。これらのデータから、中学 置情報から生徒が簡単に理解できるような 生が理解をしやすいように気象データを地 表示をするにはどのようなことを考えるべ 形図上に表示するプログラムを構築する。そ きか。 のために、フリーソフトであるグラフ作画プ 21 ログラム「グヌプロット」を用いた。このソ 方がいいが、全体を通してみるとそこまで大幅 フトは、簡単に等値線が描けるように工夫さ な差は見られなかった。今回の測定に関してお れており、3Dの表示も可能である。 んどとりで得られたデータを用いることは問 題ないと思われるが、短時間での急激な温度変 化を調べる際には考慮する必要があると思わ れる。 5.考察と今後の課題 自転車による観測から得られたデータを3 Dグラフとして見やすく表すことができたた め、システム構築のめどが立った。ただし、測 器の熱時定数の問題や GPS のデータ欠損など の課題もある。そこで、今後は中高生による教 育実践を積み重ね、観測システムを改良し、そ 3.まとめ の教育効果を調査していきたい。 盛岡市内には高温部と低温部で最高0.6度 の差があり、ヒートアイランド現象があること 参考文献 を確認することができた。また、GPS 測器の結 1)名越利幸(2009)『局地気象の共同観測に関す 果を組み合わせることである程度の結果を出 る指導マニュアルの開発』岩手大学教育学部 すことができた。 附属教育実践総合センター研究気紀要第 8 号、89−97 4.測器の応答速度検定 今回測定に用いたおんどとりは熱時定数が 2)名越利幸(2007)『中学校科学センター組織を 12 分のものであったため、熱時定数が異なる 利用した「局地気象」の共同観測』理科の教 測器(ウェザーコム)を用いてデータの正確性 育 No,8、34−36 3)新田尚(1991)『予防時報 162』気象庁 を調べることにした。得られたデータから考察 したところ、反応性に関してはウェザーコムの 走 行 時 の 測 器 検 定 17 16 14 ウ ェザ ー コ ム お ん ど と り 13 12 11 時 間 (s) 22 991 936 881 826 771 716 661 606 551 496 441 386 331 276 221 166 111 56 10 1 温度(℃) 15