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北海道での考察と感想 - AMG Financial Group

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北海道での考察と感想 - AMG Financial Group
April 2012
北海道での
北海道での考察
での考察と
考察と感想
今年のイースター(感謝祭)に、私は家族と日本の北海道で楽しい休
暇を過ごし、良い思い出も作ることが出来た。最後に私が日本へ行っ
たのは8年以上前だが、完全にプライベートで訪れたのは今回が初めて
だった。今月のコメンタリーでは、この旅行中に私が発見したことや
感じた事について書かせて頂きたい。
この旅行は5泊6日の旅で、私たちは登別、函館、小樽、そして札幌を
訪れた。北海道へは札幌の港から入り、そして帰りも同じ港を利用し
た。飛行機に乗る前にチェックした天気予報では、最初の2、3日は少
し雪が降り、その後は晴れるという予想だった。結局最終日を除いて
は毎日雪だった。雪の量が最高潮に達したのは小樽に滞在していた日
の午後だ。始めは小樽で夕食を食べた後にライトアップされた小樽運河を見てから札幌へ向かうという予定だっ
たが、悲しいことにその大雪のせいで小樽を早めに後にしなければ
ならなくなった。
訪れた先で感じた事はこのようなものだ。
登別は有数の温泉地だ。知らない人と一緒に裸で温泉に入る事
に少し抵抗があったが、予想していたより悪くない経験だった
。
洞爺湖の近くにあるレストランでランチをした。景色がとても
良い割には値段が安くておいしく、本当に良かった。
函館は美しい街で歴史も古い。函館山からの夜景は世界でも有
名だ。函館に来る観光客の間では言わずと知れた観光スポット
のようで、私が行った時にはデッキが人で溢れかえっており、少なくとも4組の台湾人観光客と、香港人観
光客と日本人観光客が2組ずつ居た。
観光客が多い割に、函館では英語があまり通じない。借りたレ
ンタカーにナビが付いていなければ、どこに行くのもかなりの
苦労をしただろう。宿泊先のホテルのフロント係も、かなり頑
張ってブロークンイングリッシュが話せるレベルだった。旅行
の間中、英語を流暢に話せたのは偶然会った二人の日本人だ。
一人はJR函館駅のツーリストインフォメーションセンターで働
いており、若いときにインドとアメリカに住んでいたことがあ
るらしい。ビックリしてしまったのだが、もう一人は函館市場
の水産食品を扱う店の店員だった。
ホテルの部屋からはJR函館駅がきれいに見えた。駅の駐車場は4
分の1程度しか埋まっておらず、電車は2両編成だった。金曜の朝8時ごろ、駅を出入りする人はまばらだっ
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た。近くにはバス停もあったが、そこに居る人は更に少なかった。
対照的に駅の前には多くのタクシーが列を作っていたが、客はほと
んどいなかったようだ。
街を車で回っていると、数人の客を乗せたバスとトラムを見かけた。
道は整然としていて広かったが、交通量は少ない。父が函館の人口
はどれくらいだろう?と聞いてきたが、私には分からなかった。
(www.stad.comによると、函館の人口は276,000人だそうだ)。
函館ではクレジットカードが余り使えない。私達が食事をしたレス
トランでクレジットカードが使えた場所は一つもなかった。セブンイレブンでさえも、レジにVISAのマーク
を提示されているにも関わらず、カードが使えなかった。レジ係に何故か尋ねると(もちろん英語でだが)、
首を振って腕を交差し、“No”のサインを見せてきただけだった。
日本円がすぐに足りなくなってしまったので、銀行へ両替に出向いた。みずほ銀行での日本円-香港ドルの為
替レートは本当に最悪だった。ブルームバーグのウェブサイトで為替レートを事前にチェックした時には
10.48だったのに、銀行では8.818だった!信じられず、放心状態になってしまった。結局はそのレートで納
得するしかなく、数千円しか残らないという事態に陥ってしまった。もちろん、銀行で英語を話せる人はい
なかったが、もしかしたら話せても話したくなかっただけなのかも知れない。(はぁぁ・・・)
銀行での出来事はイヤな思い出になってしまったが、この旅行の中でも最高の思い出の一つが出来たのも函
館だった。ツーリストインフォメーションで働く若者が教えてくれた小さなカフェだ。函館湾を望む小高い
丘の端にあると言う。ナビに電話番号を入れ、車で向かった。着いてみると、そこは外国人墓地のど真ん中
だった。カフェの看板を探し回ったがどこを見ても高級住宅街が見えるだけだった。あきらめ切れず、誰か
に道を尋ねようと墓地内を歩き回った。実は、カフェはその高級住宅街の中の一軒だったのだ!20代後半と
思われる若い女性が一人で切り盛りをしており、おいしいコーヒーやデザート、パンを出してくれる。内装
は思い出が詰まっていそうな品で埋め尽くされていた。古いカメラやスピーカー、HiFiコンポ、ミシンとい
った品だ。素敵な隠れスポットに巡り合えた。
小樽は小さな街だが、水路沿いに建つ石造りの倉庫からも分かる様に、これまで貿易で栄えてきた街である。
この街はガラス細工とパン屋でも有名だ。店が立ち並ぶ大通りを歩いていると、スイスのチューリッヒを思
い出した。
札幌は北海道の県庁所在地で、日本では5番目に人口の多い街だ。繁華街が多い街で、私達が昼食を食べた
ショッピングモールも人でごったがえしており、数階ある駐車場が街の至る所に建っていた。都会にしては
交通量が日中は少なく、通行人もまばらだった。
街を歩いていると、日本人、特に若い世代の日本人は以前と比べマナーが悪い。何年も前の話だが、私は仕
事で東京に3度程行っている。その頃は信号を無視して横断歩道を渡る人など見なかったものだ。今回の札
幌では信号無視をする通行人を最低3人は見た。
札幌では食においても貴重な体験をした。一つ目は狭い路地にある小さなラーメン店だ。その夜は雪がたく
さん降っており、その小さな店に駆け込んだ時には私のメガネには雪が積もっていた。長いベンチには客が
一人しかいなかった。テーブルが二つしか無かったので、8人いた私達が店を占領する形になった。60代前
半に見える店主は体の大きな男だった。驚いたことに、彼は少し英語を話した。ラーメンと餃子を注文して
みんなで分けた。私たちの「大量注文」のおかげでその店主は忙しく動き回っていたが、その間にも食べに
来た芸能人の写真とサインが貼ってある壁を指さしていた。正直ラーメンと餃子の味はまぁまぁと言ったと
ころだった。しかし、私たちの注文したものを一所懸命に料理してくれるその店主と、暖かい雰囲気の店内、
外に見えた大粒の雪という状況の中ではそれはどうでも良いことだった。私たちは心とお腹に温かいものを
感じながら店を後にした。
次の日の夜は旅行の最終日で、私の友人から勧められたカニとエビのビュッフェレストランで食事をした。
価格は良心的で味も良かった。カニは新鮮で甘くジューシーだった。カニは食べるのが面倒なので余り好き
ではなかったが、この時食べたカニの量はここ3年間で食べた全てのものに値する位の量だった。このレス
トランが禁煙であれば、この食事が旅のクライマックスになっていただろう。私たちの後ろに座っていた人
たちが途切れることなく煙草を吸っていた。残念だ。何故日本には禁煙席が無いのか・・・と考えていた。
2車線の高速道路を走っていると、大きなトラックやトレーラーが両方の車線を走行しているのに良く出く
わした。私はアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでも運転したことがあるが、それらの
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国ではトラックは大体遅い方の車線を走り、追い越しをするときだけは速い方の車線を走っていた。北海道
では多くのトラックが遅い車線と早い車線の両方を走っており、追い越しや合流に全く注意を払っていない
ようだった。日本ではルールが違うのか、それとも日本のトラック運転手は基本的なエチケットを欠いてい
るのか、私には知る由もなかった。
以下は経済に関する感想だ。
札幌に滞在中、私の父は道路を走る車のメーカーやモデルが多種多様であることに驚いていた。特に父は
香港では見られないような軽自動車や軽トラックに興味を持ったようだった。ミクロ車や軽自動車と日本
で呼ばれている種類の車は、600cc以下の小さなエンジンを搭載しているが、ステータスを重んじる香港
人には人気が無い。が、父のこの観察はおもしろいと思い、日本の自動車市場について更に調べてみよう
と考え付いた。そして、日本では人口(2011年11月末で1億2776万人、5年連続で減少しているが世界で
は第10位)に比べ、車メーカーとモデルが多いというに気付いた。
日本では主要な乗用車メーカーが8つある。トヨタ、ホンダ、日産、ダイハツ、スズキ、マツダ、三菱、
そしてスバルだ。このうちトヨタ、日産、スズキ等はトラックやバスも製造しているが、大型車メーカー
として名高いのはいすゞ、日野、三菱ふそうとU.S.トラックだ。日本自動車工業会のウェブサイトで売り
上げ記録を見つけ、見やすいように以下のような表を作成してみた。
Toyota
Honda
Nissan
Daihatsu*
Suzuki*
Total
2007
1,373,596
529,921
616,908
492,947
529,921
4,400,299
Passenger Cars
2008
2009
1,291,591
1,238,137
586,932
595,559
579,993
520,492
512,238
474,694
534,998
485,397
4,227,643
3,923,741
2010
1,415,439
600,399
565,875
477,221
483,645
4,212,267
2011
1,038,111
476,688
514,534
429,669
437,092
3,524,788
*Daihatsu and Suzuki, primarily manufacture mini car (also known as k-car in Japan)
比較してみると、米国は2011年末の時点で人口が3億1,333万人で、新車の売上は1,510万台だ。一方、日本
の人口は米国の40%だが、自動車売り上げは昨年で米国の25%しかない。
これにはいくつかの問題点が考えられる。まず最初に思い浮かぶのは日本の自動車産業は競争がかなり激し
いということだ。次に、型数が多いため、メンテナンス、コスト、在庫、運営管理の状況はその分厳しくな
る。更に、新しいモデルを出す年、日本では平均3,4年に一回だが、研究・開発にかかるコストは莫大だ。
最後に、このようなビジネスモデルは多額の投資を要し、利益は少ないという問題もある。
近年では、高級車部門において日本車は欧州メーカーや韓国メーカーに押されている。昨年のタイでの洪水
は車ファンの間では最悪の出来事として話題に上るが、日本車が価格の面ではアメリカ車や韓国車より劣っ
ており、運転のしやすさやデザインの面ではヨーロッパ車より劣ると言われ始めている。
日本の産業で以前の勢いを失っているのは自動車の他に電化製品と家庭用品も同じだ。家庭用品では日本は
各方面から競争相手が表れている。まず、ハイアール、グリー、メイジ、チョンホン、TCL、コンカ、ケロ
ンのような安価な中国メーカー。また一方では欧州のシーメンズ、エレクトロラックスや韓国のサムスン、
LG 等がある。余り知られていないが、香港の東芝家庭用エアコビジネスは、米国の United technologies の
一部である Carrier に数年前に売却されている。
最近のウォールストリートジャーナルに、日本企業に投資する中国人が増えているという記事があった。昨
年最も多く投資のあった部門の一つが電化製品部門だ。
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1週間ほど前、ソニーのCEO、平井一夫氏が1万人の従業員の解雇と、利益の少ないテレビ事業を縮小すると発表
した。その発表があった夜、私はそのニュースがブルームバーグチャンネルで何度も流れるのを家のパイオニア
製プラズマテレビで眺めていた。パイオニアのプラズマ技術はすばらしいものがあると私は今でも思っているの
だが、パイオニアにおいてもテレビ関係の製造は縮小されている。ステレオを見てみるとサンスイ、アイワ、ア
カイ、ケンウッドと、今はもう消えてしまったブランド名があった。
市場展望
米国:
米国:中立
労働統計局(BLS)は3月には新たに
120,000の雇用が創出されたと発表し、
これは過去3か月の平均245,000に比
べると大きく下回る。2月と1月の雇
用データは何度も更新された後、結局
4,000の新規雇用となった。また、
BLSによると失業率は先月の8.3%か
ら8.2%へと少しではあるが回復した。
この数字は予想より悪いが、原因は恐
らく2カ月連続となる小売部門の雇用
の減少だろう。小売はほとんどの一般
商店を含む。しかし同時に、米国際シ
ョッピングセンター協会によると、3
月にはチェーン店で昨年と先月に比べ
売り上げが伸びたという。
雇用の伸びが悪い事に加え、賃金の伸びが遅れていること
も問題だ。平均時給は昨年比で2.1%上昇したが、インフレ
を埋め合わせるには足りない。
失業率が8.2%に減少したことに関しては、労働力率が低下
したことが大きく関係している。3月には労働力率が63.8%
に落ちた。これは2月の63.9%、そして1年前の64.5%から
比べても少ない。また、長期失業率が上がっている事も心
配だ。これは雇用市場が人材能力のミスマッチと労働の非
流動性に苛まれているということを意味する。データによ
ると、2011年の長期失業率人口は2007年の4倍にも上る。
連銀の議長であるバーナンキ氏は貧弱な経済成長を背景に
失業率が急に減少した事に困惑の色を見せている。バーナ
ンキ氏がここ数か月の力強い雇用の増加はこれからも続く
のかと疑問に思う一方で、連邦公開市場委員会(FOMC)
は雇用市場の急成長は期待できず、量的緩和第3弾の可能性
を消してしまうには時期尚早だとコメントした。
最近、世界経済がバランスを取り戻してきたのではという
楽観的な見方もある。現在の歳計剰余金は中国、日本、そ
していくつかの石油輸出経済国で大幅に減少している。米
国の現在の財政赤字は金融危機以前に比べ随分減っている。
しかしながら、「アンバランスのグリーンスパン基準」、
つまり全経済の現在の絶対的な資金状態を合算した世界的不均衡の幅広い基準(前兆は含まない)が、2009年に
大きな改善を見せて以来、再度上昇し始めている。
米国貿易赤字も、高くなりつつある国内需要と輸入需要に伴い増えつつある。このことから2009年のアンバラン
ス改善はそう長く続く現象ではない事が分かる。
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欧州:
欧州:弱気
欧州中央銀行が実施したLTRO(長期資金供給オペ)の効
力を示すデータが出てきている。2011年の第4半期に大幅
な収縮が見られた後、今年始めの2カ月でユーロ圏M3が大
きく盛り返したことから、金融システムが安定を取り戻し
てきたことが分かる。また、2度のLTROで銀行の流動性
が高まり国債へのアクセスが増えた。欧州中央銀行の記録
によると1月と2月だけで欧州銀行は計76億ユーロの国債
を購入している。欧州の銀行によるこのような国債の購入
は今年の政府の資金確保に大きく貢献する。
もう一つの改善の兆しとしては、欧州周辺国の銀行部門か
ら、銀行預金の流出が減り始めていることだ。この問題に
ついては以前から私達の大きな懸念であったが、近頃の統
計を見ると、その懸念も少しは緩和される。クレディ・ス
イスの報告によると、欧州周辺経済の5つの国における銀行
預金が2011年の11、12月で100億ユーロ減少していた。し
かし、1月と2月では流出が止まり、預金が増えて来ている。
反対にドイツとフランスの預金は減少している。
2度にわたるLTROの後、投資家達の心配の方向は欧州金融
安定基金(EFSF)に移ってきている。基金の内容から、
EFSF保険の投資家達は事実上ユーロ国債のポートフォリオ
を保有していることが見えてくる(救済措置を受けた国々
の国債は除く)。ポートフォリオに含まれる国の割り当て
はおおまかにはその国のGDPのサイズに比例するが、ドイ
ツでは少し多め、イタリアでは少し少なめと言える。
EFSFには払込資本金がないが、72億ユーロに相当する金
融保証がバックにある。フランス債の格下げが起こり、
EFSFの格付けは平均AA-だ。長期EFSF債は現在S&Pで
AA+で格付けされており、ムーディーズとフィッチでは3
月に最高の格付けになっている。
昨年国債のリスクが急上昇したために、EFSFは2つの財源
からの資本借り入れを検討している。一つは欧州国債保護
基金(ESBPF)、もう一つは欧州国債投資基金(ESBIF)
だ。ESBPFは国債の一部リスク保護を供給するためのもの
だ。ESBIFは民間部門と公共部門の両方に開かれている共
同投資基金で、欧州経済通貨同盟(EMU)に加盟する国の
国債のための基金だ。この二つの基金がESFS投資家の借
り換えリスクとシステマティックリスクを軽減する。
EFSFとは対照的に、欧州安定メカニズム(ESM)は永久
的な基金で7月からEFSFに取って代わる。ESMは最初に
500億ユーロの貸出しが可能であり、合計の寄付資金は700
億ユーロだ。現在の取り決めではESFSとESMの貸出し上
限は500億ユーロまでと決められている。しかしこの上限
を上げるための議論が現在進行中だ。
日本:
日本:中立
日銀の思いがけない介入の後、今年始めの円高から比べる
と円は安価のまま留まっている。右の表では円とドルの為
替レートが米国債と日本国債の利回り格差と比例して動い
ていることが分かる。そのため、二つの国の金融政策への
姿勢に注意して観察する事が肝心だ。
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前回の日本政府の介入ではさほど何の効果も無かったことか
ら、投資家達にとっては日本政府のよりも米国政府の動き方
が気になる様だ。米国の最近の経済データでは、成長が持続
している事からマネタリーベースの引締めが予想されていた
2014年後半よりも早くに起こる可能性が示唆されている。
米国経済が成長を見せている一方で、日本の貿易赤字は2月
に過去最高を記録した。この二つの経済の差を縮めるために
は日本政府はこれまでの緩和政策を続行するか、あるいは更
なる政策を実施する必要があるだろう。
中国:
中国:中立
上の表は中国政府が国の資本勘定を自由化するまでの歴史をまとめたものだ。中国の通貨市場は何十年にも渡っ
て閉鎖的であったが、通貨政策は今後必然的に自由化に向かう。中国が通貨政策を開放にすることで数多くの利
益が考えられる。1つ目は中国企業が発展し、国際的スケールでの競争を可能にすること。二つ目は人民元の国際
化を促進すること。もう一つは経済構造が更に向上するという事だ。
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中国はこのゴールに向かって段階的に準備をすすめると考えられている。まず初めに、中国企業が海外投資に手
を出しやすいよう、政府が実際の事業活動に関連する海外直接投資の規制を緩める。その次に海外から人民元が
戻ってくるよう、貿易取引に関連する商業信用の規制を緩める。最後に不動産投資と銀行関連の資本フローを含
むその他の資本規制を緩める。野村総合研究所がこのステップの根拠を以下の表のようにまとめている。
政府は海外直接投資を既に開放した。中国政府は今ステッ
プ2、つまり貿易取引関連の商業信用の規制を緩める段階を
踏んでいる最中だ。
その動きのねらいは2010年からHSBC銀行が国際取引を人
民元で行えるようにすることだ。それ以来、人民元の預金
が国内で劇的に増加した。人民元預金は去年全体の9.6%に
達し、過去最高となった。また、中国と香港の預金レート
の差が大きくなるにつれ、投資家達の海外投資や海外預金
が減り、中国に残る規制に課題を投げかけている、
中国国営新華通信社によると、広東省政府に委託され国務院に承認さ
れた動きのなかで、全国社会保障基金(NCSSF)が、広東州の労働者の
為に 100 億元の年金を管理する事が決まった。その年金基金のうちの
20%は株式市場に投資されると予想されている。NCSSF の年間報告
によると、2011 年末に中国の基礎年金基金は 1.92 兆元を越えた。
この動きは必要なものだったと考えられる。年金支給額の大きな差、
個人預金の赤字、投資先の制限、監督官庁の腰の重さが原因で地元の
社会保険基金が大きな支払プレッシャーに面している。NCSSFの年間
残金は350億元と400億元の間だ。もし基金の10%が株式に流れ
NCSSFの規模がこれからも引き続き大きくなるとすれば、株式市場に
は35億元もの資本流入が期待されるということだ。
中国の3月の製造PMIは53.1に上昇し、サブ指数も
ほとんどが上昇した。生産高、新規受注、完成品在
庫と雇用に回復が見られた。
このなかでも、新規受注指数が一番の伸びを見せ、
51.0から55.1まで跳ね上がり、昨年以来最高レベル
を記録した。しかし、3月のNBSとマーキット
HSBCのPMIではこれとは違ったデータが出ており、
この回復は一部のもので、中国経済の成長は次の四半期になってみないとまだ確実には分からない。
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インド:
インド:中立
インドはアジア諸国の中でも国際リスクの地合いにもっとも影響を受け
る国の一つだ。インド企業が2006年~2007年中に借り入れたローンが今
年満期となり、多くの外貨建転換社債が現金化される。
この二つがインドのテールリスクを高めている。右のグラフは国債リス
ク地合いと外貨為替資本のフローの関係を表している。
長引くインフレ圧力の結果としてインド準備銀行はベンチマーク保険料
率を8.5%に引き上げ、その後著しく経済成長が妨げられた。アジアの
主要経済の中でも金利が最高であるにも関わらず、インフレ圧力は余り
さがっていない。
ここ数カ月間では食料品関連のインフレは収まってきたものの、これは
天気に関連した現象の様だ。青果インフレが2月に急上昇してい
る。更に重要なことは、タンパク源の価格に高騰が見られること
だ。タンパク源はここ数年では食料インフレの先陣と考えられて
いる。このことからインフレはまたすぐに元通りとなり、保険料
率が上げられたとしてもインフレ率は高いままに終わるだろう。
更に、インドの政界における汚職スキャンダルや進まない構造改
革等が投資家に不安を与えている。ユーロ債務危機での流動性安
定化とインフレ縮小の兆しが見えないことから、投資家はインド
株には気を付けた方が良いだろう。
アジア太平洋
アジア太平洋:
太平洋:中立
金融危機が飛び火するリスクはアジアでは少なくなってきた。欧
州中央銀行の2度にわたるLTROとG-7の中央銀行が米ドルに流動
性を与える努力をした結果、世界的な流動性不足は解消されてき
た。米ドル流動性はこれまでもアジアの通貨と密接な関係があっ
た。
金融緩和策が欧州銀行部門による滅茶苦茶なレバレッジに対する
リスクを削減し、アジア諸国から多くの銀行が投資を引き上げる
のではという懸念も薄らいだ。結果、資本フローのボラティリテ
ィが下がり、アジアの通貨が強くなった。
インドネシア銀行は2005年と2008年に為替レートの下落と燃料
価格の高騰に対応する為に金利を大幅に引き上げ、短期商品で
の多額の外国為替ポジションがそれを助長する形となった。し
かし現状は違う。財政が安定している上に海外投資家は短期商
品を6か月以上保有する事が出来なくなった。そのため、イン
ドネシア銀行が急いで金利を上げる必要はないのだ。
.
最近では、インドネシア政府は財政負担を軽減する為、燃料価
格の補助金を打ち切れるよう様々な方面から応援を要請してい
る。この動きによりガソリン価格は33%上昇し、リットルあた
り6,000ルピアになると予想されている。
インドネシアの主要商品を除く売買勘定は赤字であり、その額
は大きくなり続けている。強い国内需要の中、非自然資源を除く
月々の売買赤字は昨年12月に史上最高を記録した。現在非商品の
売買赤字は強い自然資源の輸出により改善されつつあるので、投
資家はこの国の貿易赤字を注意して観察する必要があるだろう。
原油以外では最大の輸出商品である石炭の価格は中国経済の改善
に伴い下がって来ているが、石油価格の高騰が輸入側としては貿
易のバランスを更に崩すかも知れず、インドネシアの貿易は速い
ペースで悪化する可能性がある。
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韓国では求職者が増えたこともあり2月には失業率が3.7%に書きかえられた。次のシーズンには求職者が減るた
め、失業率がこのまま上がり続けることは無いだろう。労働市場における消費の低迷の影響が出始めれば、雇用
創出も鈍化するだろう。
一方、製造PMIや国内の信頼感指数のような韓国の主要な指数は回復を見せている。2月に輸出が伸びを見せたこ
とも大きな要因だろう。輸出の成長がこのまま続けば、2011年の第3,4半期には減少してしまった機械と設備投
資を促進してくれるはずだ。
ロシア&
ロシア&新興ヨーロッパ
新興ヨーロッパ:
ヨーロッパ:注意
インフレが2月には昨年比で3.7%という低い数字を出したロシアだが、
あと数か月は5%以下を保つ見込みだ。政府が毎年行っていた関税の
引き上げを2012年の7月まで延期することを決定したことが原因とし
て考えられる。これによりロシア中央銀行に借換えレートと購入レー
トを削減する余裕が出てくる。資本流出を抑える事で政府の投資意欲
を継続させることが出来るだろう。
ロシアの財政パフォーマンスは石油価格が下がらなかったため、今年
は良い方だろう。これに押されロシアは市場を試すため、ルーブル建
てユーロ債券を発行した。国内発行は合計で2011年の939億ルーブル、
から2012年には1209億ルーブルまで増える見込みだ。
1998年7月に至るまでの長い期間、ロシアルーブルは段階的平価変動制
に従っていたが、その後は通貨が切り下げられ、厳しい管理フロート制
へと変化して行った。2008年の8月に2度目の通貨切り下げがあり、そ
の後は管理フロート制が柔軟さを増した。ロシア中央銀行はロシアルー
ブルをユーロ(45%)と米ドル(55%)のバスケットに対し管理して
いる。
通常、ロシア中央銀行が介入する際にはモスクワ銀行間通貨取引所
(MICEX)を仲介者にして行う。ロシアが今インフレ・ターゲット政
策へ移行しようとしている中で、ロシア中央銀行は為替レートの規制
を緩める態勢に入っている。
ウラジミール・プーチンが再び首相に選ばれた今、いくつかの重要金
融エリアに改革が起きる事が期待されている。
1. 国営企業の役員職から強制的に政治家を排除すること
2. 資本市場の改革
3. WTO参加までの時間短縮
4. より強い経済
5. インフラストラクチャーへの多額資金投入
ラテンアメリカ:
ラテンアメリカ:注意
ラテンアメリカの政策担当者はいわゆる「政策トリレンマ」に面している。具体的に言うとそれは自由な国債資
本フローを保ちながらインフレと通貨をコントロールするという不可能なタスクのことだ。政策が与える影響は
その国によって異なり、政府の市場への介入の度合いや*インフレの有無、市場の開放の度合い等により変わって
くる。
ラテンアメリカのCPIインフレは2010年に底をついてから2011年にはピークを向かえ、アルゼンチンとベネズエ
ラ以外ではここ数か月間抑制されている。
インフレ抑制においてはブラジルが一番心配されている国だ。しかしCPIが最近減少している事から、BNPパリバ
ではブラジルは今年更に公定歩合を引き下げるのではと見ている。また、ペルーとチリでは国内需要が回復して
おり、欧州債務危機にも比較的影響されていないことから、急いで公定歩合を下げる必要はなさそうだ。
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中国はラテンアメリカから多種多様の商品を輸出入していることから、
中国経済はラテンアメリカにとって大きな懸念であることを私たちは長
年主張してきた。チリとペルーにとっては銅、コロンビアとメキシコに
とっては原油、ブラジルとアルゼンチンにとっては鉄と大豆がとても重
要な商品だ。すなわち、確固とした中国経済の成長と、商品価格が低迷
しない事がラテンアメリカを助ける必須の要因である。
米国の経済回復で一番利益を上げているのはメキシコだ。メキシコペソ
は今年既に市場コンセンサスを上回っている。工業生産は上昇気流に乗
っている。雇用市場も回復しており失業率は2月に4.8%に下がり、6月
の5.7%より随分低くなっている。
投資家にとっての大きなリスクとしては、メキシコは石油輸入大国であ
るため、石油価格が上がれば必然的にインフレと経済成長に影響が出る。
麻薬密売ギャングが国の選挙や政治に関わることが増えていることも忘
れてはいけない事項の一つだが、それについては市場がリスクプレミア
ムとして勘定していないのかも知れない。
商品:
商品:弱気
世界金協議会は2011年のまと
めデータを発表した。投資需
要が今年も金市場では重要な
カギとなっている。小売投資
家達のリスク回避が高まった
ことで2011年には金塊とコイ
ンの需要が27%、1530トン分
急増した。国別にみてみると、
需要が高まったのは主にイン
ド、中国、東南アジア(タイ
とベトナム)だった。逆に宝
石需要は4%減少し、1963トンになった。この減少の主な原因は、インドの輸入のスランプと金の価格がルピー
において高騰したことにある。
2011年のもう一つの注目すべき展開として、中央銀行の金の購
入が大幅に増えたことが上げられる。2010年以来、中央銀行が
再び金の主な購入者になっている。2011年に中央銀行が購入し
た金の正味の合計は440トンに上り、1964年以来最高レベルに
達している。
一部の調査によると、この中央銀行の金の大量買いが近年の金
価格を左右しており、購入国のほとんどは新興国だという。今
年ではメキシコ、ロシア、トルコが最も多くの金を購入してい
る。
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金価格を上げるもう一つの要因が量的緩和政策第3弾の可能
性だ。金の価格はインフレ予想と密接な関係にある事は長
い間言われてきた。BNPパリバは金価格が2~10年物の米国
債の利率幅と似たようなパターンで取引されている事を発
見した。市場では緩和政策がもう一度実施されることを予
想しているが、もし実施されたとすれば金利が下がり、そ
れがインフレの可能性を高め、その結果、金の需要が更に
高まるという筋書きが考えられる。
ヘッジファンド:
ヘッジファンド:中立
2月には良好なマクロ経済の傾向を受けてショートバイアス戦略を除く全てのヘッジファンドがプラスのリターン
だった。米国の経済状況と欧州中央銀行の長期LTROプログラムが市場を安定させ流動性を促した。また、買戻し
や利率配当といった企業の動きのおかげで転換社債アービトラージマネージャーが良好なパフォーマンスを見せ
た。新興市場マネージャーも市場が標準に近づき、リスク資産と欧州国債に投資家の興味が戻りつつあることで、
力強いパフォーマンスを記録した。
ベン・バーナンキ氏が今の経済状況では追加の資産購
入が必要であるとの考えを表明したことで、米国では
ヘッジファンドのリターンはマイナスの結果となった。
これが原因で、多くはないものの米国債の売却が起こ
り、そのうちの多くは10年物で2.05%の金利という底
値がついた。
幸いなことに、債券アービトラージマネージャーは市
場に影響する複雑な政治的観点から、慎重で戦略的な
取引アプローチをしたことで、まずまずのリターンを
出している。
国債:
国債:中立
投資家達の興味は手の届きやすさと売買のしやすさが魅力の新
興市場国債に移り始めている(商品の多さと投資規制の少なさ
も魅力だ)。これは投資家ベースが広がっている事からも分か
る。右の表でも新興市場国債の規模が急速に拡大しいることが
分かり、人気の高さを物語っている。中央ヨーロッパ、東ヨー
ロッパ、中東、日本を除くアジアは投資家に一番好まれている
地域だ。
海外機関の投資家に加え、国内年金基金もその購入者だ。新興
市場の年金基金はポートフォリオの大半を自国の国債に投資す
る傾向がある。
新興市場貿易機関によると、新興国国債の取引量は2006年以来、
対外債務を超えたという。また、売買量と利率のボラティリテ
ィの間にははっきりとした関係があることが証明されいている。
ブルームバーグによると、利率が上昇した2008年の債務危機の
間には新興国国債の取引の量が劇的に増えた。しかし、信用レ
ートの低い新興国国債はボラティリティがそれだけ高くなるとい
うことを忘れてはいけない。
* 他に表示が無い限り、全ての数値・情報は、WSJ, Bloomberg 、 Haver Analytics.を参照しました。
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