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ダウンロード - 太平洋セメント

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ダウンロード - 太平洋セメント
CORPORATE
SOCIAL
RESPONSIBILITY
REPORT 2007
CSRレポート2007
071100001IM
CONTENTS
C o r p o r a t e S o c i a l Re s p o n s i b i l i t y
Re p o r t 2 0 0 7
04
08
編集方針
■商号/太平洋セメント株式会社 ■設立/1881年5月3日 ■資本金/69,499百万円 本レポートは「持続可能な発展」に向けた太平洋セメントグルー
■本社所在地/〒104-8518 東京都中央区明石町8-1 プのCSR(企業の社会的責任)活動の状況を取りまとめたものです。
■グループ/子会社313社 関連会社149社 うち
(連結子会社174社 持分法適用会社 70社)
(2007年3月末現在)
■セメント生産拠点/国内11、米国3、中国3、ベトナム1、
フィリピン1、韓国2(グループ含む)
経営理念を具体的行動に
つなげるために
CSR長期ビジョンを策定
08
10
11
14
15
17
19
本レポートの 対 象 範 囲
経営理念・行動指針・行動基準
コーポレート・ガバナンス
CSRマネジメント
コンプライアンス
リスクマネジメント
情報セキュリティ
CSR経営の基盤
会社概要
トップインタビュー
●
セメント産業における持続
可能な発展のための活動
1.
対象期間
業績の概況
比168.2%増)
となりました。
経常利益
百万円
70,000
940,630
800,000
600,000
40,000
20,000
49,792
313,409
連結
05
20,875
20,000
06 年度
0
26,365
8,890
0
14,412
9,101
04
2,061
06 年度
05
06 年度
※2006年度(2007年3月期)
単体従業員数(2,031名)の内訳
・男性= 1,893名
・女性= 138名
5,611
-10,000
-30,000
04
05
06 年度
単体
所在地別概況
■主な事業拠点
その他 1%
アンカレッジ
寧越
南京
上海
香港
ハノイ
東海
太平洋セメント本社
秩父太平洋セメント(株)秩父工場(埼玉県)
コルトン
リリトー
台北
台中
高雄
バンコク
ホーチミン
48
の環境負荷・環境会計データを集計しています。
78%
ギソン
31
また、セメント、資 源、環 境(注 1)、発 電(注 2)の 4 事 業セグメント
13%
モハベ
ロサンゼルス
龍振鉱業(株)大船渡鉱山(岩手県)
武甲鉱業(株)武甲鉱山(埼玉県)
秩父鉱業(株)御堂鉱山(埼玉県)
(株)イシザキ藤原鉱山(三重県)
大分太平洋鉱業(株)新津久見鉱山(大分県)
香春鉱業(株)香春鉱山(福岡県)
明星セメント(株)田海鉱山(新潟県)
秩父太平洋セメント(株)三輪鉱山(埼玉県)
秩父太平洋セメント(株)叶山鉱山(群馬県)
社会を支える
セメント・コンクリート
50
56
56
廃棄物のリサイクル
62
63
第三者コメント
安全な職場づくり
ユーザーニーズに応える
取り組み
② 分 社 化し設立した 子 会 社 の 工 場 − 1 社 1 工 場
北米
ストックトン
太平洋セメントUSA
48
① 当 社 に 原料を供 給している子 会 社 の 鉱 山 − 8 社 9 鉱 山
日本
8%
シアトル
ポートランド
コミュニケーション活動
鉱山における環境配慮
(注 1)環 境 事 業 の 廃 棄 物 処 理 サービスにお いて、セメント工 場を活 用 する部
分は、セメント事業に含めて集計しています。
構造物の長寿命化・軽量化
快適な生活環境づくり
(注2)財務会計上は発電事業をセメント事業セグメントに含めています。
マニラ
( 2 )環 境 負 荷・環 境 会 計 デ ータ以 外 の 情 報 は 、太 平 洋 セメントグ
持ち株会社
セブ
所在地別売上高構成比
(2007年3月期・連結)
駐在員事務所
セメント工場
シンガポール
(地域内訳)
クリンカ粉砕工場
アジア・
・
・
・
・
・
・
・ 中国、マレーシア、ベトナム、
フィリピン
パプアニューギニア
場 合 に は 太 平 洋セメント(株)を指します。
ステークホルダー・ダイアログ
太平洋シンガポール
み に つ いて、社 名を明 示して報 告しています。当 社と表 記した
北米・
・
・
・
・
・
・
・
・
・米国
セメントターミナル
ル ープ 企 業( 当 社と子 会 社 3 1 3 社 、関 連 会 社 1 4 9 社 )の 取り組
58
その他・
・
・
・
・
・
・ ハンガリー、パプアニューギニア
参 考ガイドライン
事業別概況
■セメント事業
セメント・固化材・生コンクリートなどの製造・販売
■資源事業
骨材・鉱産品などの製造・販売
■環境事業 廃棄物の処理サービスならびに脱硫材など環境商品の製造・販売 ■建材・建築土木事業
建築・土木資材、
コンクリート製品などの製造・販売、土木・建築工事
■セラミックス・
エレクトロニクス事業
精密セラミックス製品、圧電セラミックス製品、
金属基複合材料(MMC)部品、
カーオーディオチューナーなどの製造・販売、電子部品受託生産
■その他
不動産事業、エンジニアリング事業、情報処理事業、
金融事業、運輸・倉庫事業、
スポーツ事業など
1 . 環 境 省 環 境 報 告 書ガイドライン(2 0 0 3 年 度 版)
その他
セメント
2 . G R I サステナビリティ・リポーティング・ガイドライン2 0 02
8%
セラミックス・
エレクトロニクス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
アジア
北京
太平洋水泥(中国)投資
秦皇島
大連
41
環境パフォーマンス
2,031
-20,000
05
働きやすい職場づくり
環境会計・環境投資
し、以下の国内子会社事業所を含めています。
-22,721
04
31
34
37
環境負荷の全体像
当社単体の鉱山・工場(自家発電所を含む)
・サービスステーショ
2,143
24,408
3,730
環境マネジメント
ンを報告対象組織としていますが、事業上の緊密な関係を考慮
0
30,000
10,000
04
(1)環 境負荷・環 境 会 計データの 集 計 範 囲
5,000
10,000
38,264
2.
対象組織
21
22
24
26
30
社会的な取り組み
309,016
200,000
0
百万円
30,000
67,907
50,000
291,734
17,305
純利益
60,000
400,000
17,170
10,000
売上高
21
を明 示して掲 載しています。
15,000
の活用拡大などにより、連結経常利益は679億円(前期比36.4%増)
となり、連結当期純利益は244億円(前期
906,657
しています。な お、対 象 期 間以降でも、重 要と思わ れる事 項 は 時 期
17,469
り、2006年度(2007年3月期)の連結売上高は9,406億円(前期比3.7%増)
となりました。
また、
リサイクル資源
872,686
従業員数
人
20,000
したこともあり前期に比べ増収となりました。海外セメント事業は、北米などの業績が好調でした。
これらによ
百万円
1,000,000
2 0 0 6 年 度(2 0 0 6 年 4月1日∼ 2 0 0 7 年 3月3 1日)の 実 績を対 象と
環境保全の取り組み
国内セメント事業は、国内販売数量がほぼ前年並みの水準であったものの、セメント価格が上向きに推移
従業員数の推移
7%
建材・建築土木
10%
60%
7%
環境
62
編集後記
8%
資源
事業別売上高構成比
(2007年3月期・連結)
※財務情報の詳細を取りまとめた「アニュアルレポート」は、当社ホームページ(http://www.taiheiyo-cement.co.jp/ir/index.html)からダウンロードできます。
3
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
トップインタビュー
■CSR長期ビジョン
経営理念を具体的行動につなげるために
CSR長期ビジョンを策定
【宣言】
私たち太平洋セメントグループは、
安全・安心な社会基盤の構築を、資源循環型社会の実現を、
地域社会の活性化を支えていくことで、地球の未来を切り拓きます。
太平洋セメントグループは、持続可能な発展(SD)
を経営理念として掲げ、
これを具現化するためにCSR経営を推進してきました。
今回CSR長期ビジョンを策定するに至った経営トップの思いを、
客さまの期待を先取
りした製品・サービス
を提 供 することで 、
安全・安心な社会基
盤の構築と維持に取
り組みます。
土台
開発に努め、社会の
課 題を 解 決 する製
品・サ ービスを提 供
することで、資 源 循
環型社会の実現に貢
地域社会の活性化
術 力を駆 使して、お
環境負荷低減につな
がる先進的な技術の
柱3
伝統に培われたセメ
ント・コンクリート技
資源循環型社会の実現
安全・安心な社会基盤の構築
︻重点領域︼
インタビューを通してお伝えします。
柱2
柱1
株式会社クレアンのCSRコンサルタント山口智彦氏による
積 極 的 な 対 話 とコ
ミュニケーションを
実施し、事業を展開
する地域の一員とし
て、地域社会の活性
化に努めます。
献します。
多様性を尊重した活気ある職場づくり
多様性を尊重した活気のある職場をつくり、太平洋セメントグループで
働く仲間の一人ひとりが、誇りを持って誠実に仕事に取り組んでいきます。
●CSRについての基本的な考え方
太平洋セメント
(株)代表取締役社長 鮫島 章男
Q.鮫島社長は常々、
「企業は人々を幸せにするために生まれ
思います。
てきた」
とおっしゃっておられます。ここでの「人々」
とは、お客
各ステークホルダーとの関係については、ステークホルダ
様、株主、従業員、サプライヤー、地域社会などの多様なステー
ーごとに、長期的に考えなければならない課題や短期的に対
●CSRを経営と一体化するために長期ビジョンを策定しました
クホルダーを総称しておられるのだと思います。会社経営とは、
処しなければいけない課題など様々であり、ステークホルダ
Q.太平洋セメントは、2007年8月に「CSR長期ビジョン」を策
それぞれのステークホルダーとのバランスをぎりぎりのところで
ーに応じた時間軸で関係を構築していく必要があります。
法律論では、企業というものを法人と自然人という概念で
「3つの柱」
と
「1つの土台」からなっています。
定されました。
このビジョンは、経営理念をCSRの観点で具体化
この3つの柱の一つ目が「安全・安心な社会基盤の構築」、二
取っていくことであろうと思われますが、
「各ステークホルダーと
し、10年後の自社のあるべき姿を描いたものとなっています。
つ目が「資源循環型社会の実現」、三つ目が「地域社会の活性
のバランス」
という観点で、経営にあたっての所信をお聞かせく
ビジョン策定にあたってのお考えをお聞かせください。
化」、そして土台が「多様性を尊重した活気ある職場づくり」で
ださい。
す。今後10年間、
これらを中心として事業活動の中でCSRを進
A.当社グループの経営理念は、加盟しているWBCSD(P.19参
めていきます。
A.私は、企業が存在するところの最終的な目的は、社会のす
照)の理念「持続可能な発展」に賛同して2002年に定めたも
また、現在、2008年度からの3カ年中期経営計画を策定中
べての人々を幸せにすることだと考えます。
のですが、経営理念を従業員一人ひとりが自らのものとして理
ですが、経営理念を実践するためには、経営とCSRを一体化す
企業は世の中の害になることや迷惑をかけることをしては
解し実践するためには、日常業務の中で解釈できるようにす
ることが必要です。そのため、CSR長期ビジョンに沿って、
「太
ならない、
ということは当然ですが、その上で、何を幸せとする
ることが必要だと考え、CSR経営委員会で検討を重ねました。
平洋セメントは社会的な存在として、世の中の仕事のどの部
かの基準がそれぞれ異なる多様なステークホルダーとどのよ
CSR長期ビジョンは、将来こうありたいという姿を表わした
分を担っていくのか」
という視点で、社会・環境側面の目標をこ
うな関係を持つべきかを良く考え、それぞれに幸せを感じて
の中期経営計画に織り込む予定です。
いただけるように努力する、
というのが企業のあるべき姿だと
「宣言」
と、これを実現するための重点取り組み領域を表わす
4
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
5
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
トップインタビュー 対比させて語りますが、法人の影響力は自然人に比べてはる
です。たった一人の従業員が信用を損なう行為を行なえば、
かに大きいですから、自然人以上の節度をもって、法や社会規
その企業全体の社会的信用が失われます。私は事が起こった
範を守っていく必要があると思います。
時に責任を負う覚悟を持っていますが、その上で、一人ひとり
一方で、企業はたくさんの従業員の集合体ですから、法人と
が会社の信用を背負っていることを自覚してほしい、と研修
しての人格的なものをどのように保つのかという問題があり
の席で繰り返し従業員に伝えています。
ます。企業の信用とは、具体的には一人ひとりの従業員の信用
●10年かかって一つの会社になってきました
●セメント産業は地球温暖化に対して原罪を背負っています
Q.セメント産業は、たくさんのエネルギーを使うということで
酸化炭素(CO2)排出量の削減にもつながります。
これは他の産
知られています。
業ではできない、セメント産業ならではの社会貢献です。
一方、資源循環の面では、廃棄物をセメントの原料にする努
もっとも何でもかんでも無防備に資源化しようとすると、別
力を長年してこられて、今日では日本の総廃棄物量の約7%を
の環境問題を引き起こす可能性もありますから、並行的に技
セメント原料にするところまできたと聞きました。循環型社会づ
術開発を進めていかなければなりません。当社の廃棄物資源
くりに欠かすことのできない産業となっているわけですが、
この
化技術を発展途上国などの海外にも移転し、貢献していきた
側面については一般の人間はほとんど知りません。もっとアピ
いと考えています。
ールされても良いのではないかと思います。
確かにセメント産業は、大量の天然資源を採掘して利用し、
人々を幸せにする会社になるための基礎は従業員です。従
CSR経営の「土台」
として、性別や国籍などに関係なく、すべ
業員が、
「自分の仕事で人々を幸せにしたい」
と考えて仕事を
ての従業員がそれぞれの個性や能力を十分に発揮できる評価
A.CSR長期ビジョンの柱の一つが、
「資源循環型社会の実現」
球温暖化が世界規模の深刻な課題となりましたが、太古にお
する会社にならなければなりません。お客様やそのほかのス
制度を整備するとともに、海外で展開する事業のマネジメント
です。太平洋セメントは、土木建設の資材を提供する会社で
いて大気中のCO 2を固定化することによって生成された石灰
テークホルダーに信用され、あの担当者と仕事をして良かっ
にも、積極的に現地の人材を登用していきたいと思います。
す。
この基本的な役割に加えて、近年、世の中の廃棄物を引き
石を、セメントの製造過程で原料として使用することで再び
た、
と思っていただける会社になるためには、従業員自身が働
受けることを役割に加えてきました。日本全体で出る廃棄物
CO 2を大気に放出し、地球温暖化を促進しているという面で、
くことを幸せだと感じる会社になることが基本だと思います。
4億5,000万トンのうち、約3,000万トンをセメント産業で受け
私たちのビジネスは原罪を背負っています。このような産業
当社は1998年の合併から来年の10月でちょうど10年目を
入れ、セメントの原料や燃料としてリサイクル利用しています。
に携わる者として、セメントのライフサイクルでのCO 2排出量
迎えます。皆で一つの会社になるための努力をしてきました
廃棄物の中でも処理が難しいとされる下水汚泥なども受け入
をいかに減らしていくかについて積極的に考え、実行していく
が、会社として一体感が出てくるのに、10年くらいかかったと
れていますが、
こうしたリサイクルは資源の循環だけでなく、二
責任があると考えています。
CO 2も大量に排出するなど、環境負荷も少なくありません。地
いうのが率直な気持ちです。異なる社風の企業が合併したわ
けですから、簡単に理解し合うことは困難です。
しかし、より合
理的な新しいものを求めるという視点に立って様々な課題に
●地域社会とのコミュニケーションを一層深めていきたいと思います
取り組み、会社としてのまとまりが出てきました。その結果、そ
れぞれの従業員が、資質や能力を生かして仕事をする場が醸
成されてきたように感じます。
Q.
「CSR長期ビジョン」のもう一つの柱に「地域社会の活性化」
も、当初は賛同していただけない地域もありましたが、当社が
を掲げておられます。地域との共生と、そのためのコミュニケー
責任を持って安全・確実に処理していることへのご理解をい
ションという観点で方針と施策をお聞かせください。
ただき、現在では地域の皆様から積極的にご支持をいただけ
るようになりつつあります。
こうした取り組みの結果、地域社会
●持続可能な社会への転換に向けて当社の機能も変わっていかなければ生き残れません
A.私は、工場と地元との対話ということについては、昭和30
との対話は、以前と比べてはるかに活発になり、地域住民の皆
年代の公害問題の時代に学んだことが、現在の取り組みに生
様との意思疎通も図りやすくなったと感じています。
Q.ビルや道路などの構造物の多くは、本来の耐用年数よりも
短いサイクルで道路や建物をつくっては壊すことを繰り返す
かされてきていると思っています。当社は日本だけでなく、海
また、セメントやコンクリートの原料には石灰石や岩石など
ずっと短い単位で壊され、新しくつくり直されています。新しい
時代は遠からず終わりを告げ、もっと長く、ものを大切に使う
外にも工場を持っていますが、私どもの採掘場や工場が存立
の鉱物資源を使用しますが、これら鉱物資源の採取は、地域
ものを良しとする価値観は今後相当変わるのではないかと思
必要に迫られる時代が来るでしょう。
するためには、地域住民の方々と対話することが基本です。
社会や地域経済の盛衰とも深く関わっています。事業をその
われますが、
「ものを大事にする」
という考え方と太平洋セメン
こうした社会の変化を見据え、当社も、良いものづくりを続
特に工場は、他の地域からも廃棄物の受け入れを行なって
地域で行なうことによって経済に貢献する面と、環境・社会面
トの事業は相反しないでしょうか。
けることはもちろんのこと、一度つくった構造物などを長く使
いるため、地域に迷惑がかからないように細心の注意を払う
でご迷惑を掛けないようにする、
という両面でのバランスを取
うための補修サービスや、使用済みコンクリート片をもう一
とともに、地域の方々へは隠しごとをせず、率直に情報を公開
ることが、地域社会において私たちが守らなければならない
A.当社は、土木建設資材を提供する企業として120年以上の
度セメントにリサイクルするといった新たな試みを発展させ
するように努めています。他県の廃棄物の受け入れについて
課題です。
歴史を持ちますが、今回、長期ビジョンの柱の一つとして「安
ていきたいと考えています。後者についてはすでに技術は確
全・安心な社会基盤の構築」を掲げました。
立し、施工例もありますが、建物が解体される40∼50年後に
社会基盤の構築に携わる中で、人々を幸せにするためには
その建物がリサイクルできる素材で建てられたかどうかの情
何が大切かを常に念頭に置きつつ、
これまでのやり方に固執せ
報をどのように伝えるかという課題をクリアする必要がありま
ずに、社会の変化に応えていく必要があると考えています。
す。
しかし、
こうした課題を一つひとつ解決しながら、持続可能
持続可能な社会の実現は人類すべての課題ですが、従来の
な社会の実現に貢献していきたいと考えます。
6
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
インタビューを終えて
世の中にはジレンマを感じることが多い仕事と、少ない仕事があるように思いますが、セ
メント産業はその多いほうの代表格ではないかと思います。
鮫島社長は、自社は社会基盤を支える会社だ、
という強い自負心を持ちつつ、セメント産
業の背負っている重荷を、
「原罪」
という言葉まで用いて自分の責任として認めた上で、正と
負のバランスをどう取るのが総合的な社会益となるのか、また、将来のセメント産業はどう
変わっていくべきか、について、足を地に着けて考えておられることをインタビューで示さ
れたように思います。
株式会社クレアン CSRコンサルタント 山口智彦
7
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
「行動指針」が会社としての行動の在り方を示した
【グループ】経営理念
ものであるのに対し、今回制定した「行動基準」はそ
CSR経営の基盤
の会社で働く役員・従業員一人ひとりの行動のよりど
【会社】行動指針
ころを示したものです。したがって、主語は「私たち
【個人】行動基準
経営理念・行動指針・行動基準 …… P.08
コーポレート・ガバナンス ………… P.10
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
は」です。
CSRマネジメント………………… P.11
行動基準
コンプライアンス ………………… P.14
リスクマネジメント ……………… P.15
セメント産業における持続
可能な発展のための活動 ………… P.19
私たちは、
「社会基盤の整備、資源循環の促進、そして地域社会の活性化を支える」太平洋セメントグルー
プの一員として、自ら考え行動します。
①安全・安心な社会基盤づくりに取り組みます。
④不断の研究開発に努め、優れた製品・サービスを世の
②廃棄物リサイクルに対する社会の要請に応え、資源循
環型社会の構築に貢献します。
中に提供します。
⑤対話と社会貢献活動を推進し、地域社会の活性化を
③事業プロセスの環境負荷を低減します。
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
情報セキュリティ ………………… P.17
目指す方向性
支援します。
公正さの追求
私たちは、常に公平で公正な姿勢を保ちます。
①法令等を遵守するとともに、社会の良識に則って行動
2007年8月、経営理念の浸透を目指して、一人ひとりの行動のよりどころとして
「行動基準」を制定
しました。
③相互にチェックしながら、責任を持って業務を遂行し
します。
②公私の区別を明確にし、会社の利益と相反するような
行為はしません。
ます。
④反社会的勢力と関係を持ちません。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
経営理念・行動指針・行動基準
⑤インサイダー取引を行いません。
2002年6月に制定した太平洋セメントグループの経営理念は、当社が加盟するWBCSD(P.19参照)の共通理念
2002年12月には、
グループ経営理念を実現するために9項目からなる太平洋セメントの行動指針を定めました。
私たちは、様々な関係者に対し誠実・公正に対応します。
①談合やカルテルなどのない、公正な市場取引、入札を
グループ経営理念
太平洋セメントグループは、
持続可能な地球の未来を拓く先導役をめざし、
実施します。
②協力会社との適正で透明なパートナーシップを保持し
ます。
③公正・公平に取引先を選定します。
④節度ある接待・贈答を行います。
⑤正直で誠実な、宣伝広告・表示・説明を行います。
⑥お客様の声に適切に対応します。
⑦政治・行政との透明な関係を保ちます。
⑧事業を展開する地域の文化、慣習を尊重します。
経済の発展のみならず、環境への配慮、
連携と協調の職場づくり
私たちは、働く仲間を大切にし、
ともに成長していくことを目指します。
行動指針
◎太平洋セメントグループとして総合力を発揮し、企業価値の最大化を目指します。
◎地球環境との調和に努め、循環型社会の実現に向け積極的に貢献します。
①人権を尊重し、国籍、性別などによる差別をしません。
②ハラスメントのない職場をつくります。
③個性を尊重し、建設的で率直なコミュニケーションを
行います。
④太平洋セメントグループの一員として、グループ内の
連携・協力に努めます。
⑤安全、健康の確保を最優先します。
⑥社内外に通用する人材となることを目指します。
◎法令等を遵守するとともに、社会の良識に則って行動します。
◎技術の更なる研究・開発に努め、優れた製品・サービスを社会に提供します。
会社資産・情報の適切な使用
私たちは、重要な経営資源である会社資産や情報を、適切・適正に取り扱います。
◎国際的な企業として、
グローバルな視野で発想し行動します。
①会社資産を適切に管理、使用します。
⑤知的財産権を尊重、保護します。
◎事業環境の変化に即応し、柔軟に行動します。
②文書・印章、標章などの管理を適切に行います。
⑥適正な会計処理と財務報告を行います。
◎一人ひとりが社内外に通用する人材となることを目指します。
(個人情報を含む)の保持に努めます。
③情報セキュリティ
⑦情報の適時・適切な開示を行います。
◎人権を尊重し、安全で健康な職場づくりに努めます。
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
社会への貢献とも調和した事業活動を行います。
◎広く社会とのコミュニケーションを行います。
8
社外との誠実な関係づくり
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
「持続可能な発展」の実現を目指して、経済、環境、社会のトリプルボトムラインを経営の機軸に据えています。
④守秘義務を果たします。
9
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
役職者の率先垂範
役員をはじめとする役職者は、
この行動基準の実現が自らの役割であることを認識し、職場に浸透するよう
自ら行動します。
①折に触れ経営理念や行動指針、行動基準に照らして自
③問題が発生した際には、役職者自らが先頭に立って、
解決に向け行動します。
②部下が迷っているときは、役職者が進んで話を聴く機
CSRマネジメント
④ステークホルダーに対して、組織のトップ自らが説明
会をつくります。
責任を果たします。
2007年8月、経営理念をCSRの観点から具体化し、10年後のあるべき姿を描いた「CSR長期ビジ
ョン」を策定しました。
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
らの行動を振り返ります。
「行動基準」に掲げた6つのカテゴリー・35項目が、
CSR要綱
一人ひとりの日常業務の中で確実に実践されるよう、
より具体的な行動場面を想定した「行動基準ケース
ブック」を作成して全従業に配布しました。
営を進める目的と基本方針とともに当面の重点課題
年4月にCSR経営を推進する上でのよりどころとして
と推進体制を定めています。
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
当社では2004年4月にCSR推進部を設置し、2005
「CSR要綱」を制定しました。要綱では、当社がCSR経
CSR経営 当面の重点課題
●コンプライアンスの徹底
●リスクマネジメントの強化
● 地球環境保全活動の推進、
環境経営の促進
コーポレート・ガバナンス
● 品質保証体制の再構築、
顧客満足度向上
CSR経営の推進体制
内部統制システムの整備状況
①新たに監査役室を設置した上で専任者を配置して
CSR経営を推進する体制として、2005年4月に取締
CSR経営委員会の傘下には10の専門委員会があり
システム構築の基本方針」に基づき具体的施策を検
監査役の職務を補助する体制を強化しました。
役会直属で部門横断的に構成されるCSR経営委員会
ます。各専門委員会は担当役員が委員長を務め、最も
討していくために、有期限の社内プロジェクト組織を
②グループのリスク管理体制の整備を推進するため
を設置しました。CSR経営委員会は、社長を委員長と
関連の強い部署が事務局となっています。各委員会
設けて、①コーポレート・ガバナンス、②リスク・コンプ
に、子会社を含めた経営幹部層を対象にリスク管
して全取締役がメンバーとなり、全社CSR実施計画等
ともテーマごとの方針を実現するための委員会ミッ
ライアンス、③財務報告、の観点から内部統制システ
理研修を実施しました。
の重要事項の審議と実施状況のレビューを役割とし
ションを明確にした上で、年間活動計画を策定して活
ています。
動を推進しています。
(P.12-13参照)
ムの構築に取り組んでいます。
③金融商品取引法で求められる財務報告に関する内
現段階で具体的に実施している内容は次の通り
部統制の整備に対応するため、経理部および監査
です。
部に専門の組織体制を編成しました。
CSR長期ビジョン
■コーポレート・ガバナンス体制の概念図
株 主 総 会
選任・解任
選任・解任
取締役会
経営の意思決定・監督
監査役会
業務監査
会計監査人
会計監査
選任・解任
監督
経営会議
重要案件の審議
した。
が、現状では経営理念が従業員一人ひとりに浸透し
当社グループを一軒の家に見立てると、
「宣言」
とい
ているとはいえません。そこで、C S R経営委員会およ
う看板と、
「重点領域」として家を支える土台と3つの
び傘下の専門委員会の事務局メンバーが集まり、経
柱からなります。
(P.5参照)
営理念をCSRの観点から具体化し10年後のあるべき
姿を描こうと検討しました。国際的な各種CSRガイド
ラインに照らして当社のCSRの現状課題を棚卸しす
監査役室
監査役の補助
る一方、当社グループの事業における強み・弱み・機
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
選任・解任
当社のCSR経営は経営理念を具現化することです
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
2006年5月16日に取締役会で決議した「内部統制
社会的な取り組み
社会的な取り組み
●コミュニケーションの促進
(WBCSDセメント産業部会活動ほか)
会・脅威をCSRの観点で分析しました。それらを踏ま
執行役員
業務執行
本社、
カンパニー、
各事業所
監査部
内部監査
えて、当社グループらしさを表すキーワードを抽出し
CSR経営委員会
ました。出来上がった素案を2007年2月に従業員に
提示したところ、400件を超える意見・要望が寄せら
れ、これらを反映して「CSR長期ビジョン」をまとめま
10
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
11
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
2006年度活動実績と2007年度活動計画
2006年度の活動実績と2007年度の活動計画は以下の通りです。一部の活動実績については、
「関連ページ」
に記事を掲載しています。
2006年度実績・成果
関連ページ
活動主体・委員会
2007年度計画
●
「リスク管理要綱」を廃止し
「リスク管理
(総務部)
基本方針」
「リスク管理規定」を策定
●全社リスクの評価
・分析と重大リスクの
抽出
●グループ会社のリスク管理体制推進支援
17
●
「規定管理規程」の制定
15
品質保証・
PL委員会
(セメントカンパニー
品質技術部)
アンケート実施
●全社統合EMSの構築
物質削減方針の策定・公表 ……………………20
●
「廃棄物管理規定」
「廃棄物処理委託マニ
ュアル」の原案策定と担当者研修の実施
●環境啓発の推進
●
「環境情報システム」の構築
●行動基準ケースブックの作成と従業員への配布
●e-ラーニングによる従業員の理解度チェック
●法令管理システムの導入を検討
環境経営委員会
(CSR推進部)
……………41
●
「CSRレポート2006」の作成と発行
●ISMSの継続的運用と改善
ステークホルダー・
コミュニケーション
委員会
● 情報セキュリティ対策の計画的実施
(物理
的、技術的対応の推進)
●情報セキュリティ啓発プログラムの継続
● 情報セキュリティの保持状況のモニタリン
グ、
評価
●グループ情報セキュリティへの取り組み
● 個人情報保護マネジメントシステムの継続
的運用・改善
(CSR推進部)
●工場における地域社会との対話実態調査実施
●有識者とのステークホルダー・
ミーティング実施
●グループ会社CSR基礎情報データベー
ス化検討
●SRIスクリーニング等外部調査に積極対応
●セメント協会を通じ、
地球温暖化対策の国
際活動に協力
●環境啓発の推進
●CSRレポート2007の作成と発行
●地域との対話促進方策検討と取りまとめ
●有識者、
従業員とのダイアログ促進
●グループ会社CSR基礎情報データベース
の運用開始
●社会貢献方針
・ガイドライン検討
社会的な取り組み
18
常時の詳細対応の検討
●グループ会社の品質保証体系の実態調査
●グループCO 2 削減目標および大気汚染
●情報開示方針と開示規程の制定
17
●
「緊急時対応マニュアル」の整備と品質異
●行動基準の制定と周知
●グループ従業員意識調査アンケートの実施
∼
社会的な取り組み
(情報システム部)
ステム)
規程体系の整備と定着
●情報システムのBCP(事業継続計画)、
復
旧計画の充実
● 情報セキュリティ教育
(e-ラーニング教
育)、各種啓発活動の実施
●ISMS対応状況の評価
(情報セキュリティ
ベンチマーク評価)
●グループ各社への情報セキュリティ対策
の指導、推進
●個人情報保護マネジメントシステムの推進
い、結果をグループ会社対象のリスク管
理研修会で報告
●
「PL管理規程」
と
「PL実践マニュアル」の
原案作成
●内部通報制度の見直し
●ISMS*
(情報セキュリティマネジメントシ
情報セキュリティ
委員会
2007年度計画
環境保全の取り組み
14
案・策定
●各事業所のリスクの洗出しと評価
●グループ会社のリスク管理強化への支援
●緊急時の危機対応準備
社会関連
(CSR推進部)
所管理者層を対象としたe-ラーニングの
実施
●上記e-ラーニング教材の冊子化と配布
●グループ会社廃棄物処理担当者研修の
実施(2回)
∼
内部統制関連
環境保全の取り組み
●社内コンプライアンス新任推進者と事業
コンプライアンス
委員会
関連ページ
● 直系生コン100工場で現地調査を行な
● 全社リスク重要項目についての対策の立
15
∼
リスク管理委員会
2006年度実績・成果
(事務局)
(事務局)
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
活動主体・委員会
*ISMS:Information Security Management System
●グループ会社地域関係情報定期報告実施
専門委員会以外
(2回)
2007年度も継続して実施
●グループ法務懇談会開催
(3回)
●新規採用活動の活発化
障害者雇用推進
委員会
●特例子会社以外の事業所での採用推進
●採用ルートの確保と開拓
●障害者行政窓口との意思疎通確保
33
●障害者行政窓口との意思疎通確保
●当社障害者雇用の実態を社内に周知
●当社障害者雇用の実態を社内に周知
(人事部)
(人事部)
33
●体系的な社内研修の継続的実施
●社外研修への積極的参加
●社内相談窓口員を全事業所に常時配置
セクシュアル・
ハラスメント防止
委員会
(人事部)
●社外相談窓口を常時開設
●
「グループ会社CSRトップ層研修」で外
33
部講師によるパワーハラスメントの講演
を実施
●
「安全設計基準」に設備腐食が原因の墜
(技術部)
12
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
落災害についての安全仕様を追加
●廃溶剤系燃料の利用促進に伴い
「低引火点
液状代替燃料の取扱い基準」を制定
●安全作業責任者教育を実施
34
∼
安全保安衛生
委員会
35
●グループ会社向け研修会の実施
●社内、
社外相談窓口の常時開設
…………………11
ステークホルダー・ダイアログ
職場関連
ステークホルダー・ダイアログ
人権啓発推進
委員会
●体系的な社内研修の継続的実施
(トップ層、
新任管理職、新入従業員、
一般従業員)
●社外研修への積極的参加
●人権週間の啓発行事実施
(標語募集、
ビデオ上映等)
●CSR中長期ビジョンの検討
……………15
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
その他
●グループ経営層向け
「CSRトップ層研修」実施
●年度安全保安衛生管理方針策定
●安全週間
・衛生週間行事指導
● 社内資格
「安全作業責任者」の認定制度を
導入
13
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
コンプライアンス推進活動
教育・啓発活動
教育・啓発メニューを拡充し、
コンプライアンス意識の浸透に努めています。
コンプライアンス委員会では年次活動計画(プログ
透に努めました。
ラム)に基づいて活動を推進しています。2006年度は
このほか、4月の新入従業員研修、8月の新任管理職
各層別にカリキュラムや研修方法・ツールを工夫した
研修では、教育カリキュラムの中に「CSRとコンプライ
活動を以下の通り実施し、コンプライアンス意識の浸
アンス」を入れて意識啓発を図っています。
太平洋セメント
経営層
コンプライアンス基本方針
2005年3月に「コンプライアンス基本方針」を公表
CSRトップ層研修
[講演会]
コンプライアンス基本方針
し、併せて「コンプライアンス規程」を制定しました。
当社の「コンプライアンス」の定義は、狭義の「法令遵
● 社内諸制度・規程の整備と周知徹底
守」にとどまらず、法令の背景にある社会通念やグル
●グループ各社の連携と教育・啓発活動推進
ープ経営理念や当社行動指針、社内諸規程・規則の
● 問題発生時の適切な対応と施策打ち出し
遵守を含むものとしています。
● 必要な情報の適時・適切な開示とコミュニケ
当社ならびに当社グループの各社が社会各方面か
関係会社
一般従業員
●
●
外部機関よりメルマガ配信
[インターネット・メール]
●
●
コンプライア
ンス担当者
●
コンプライアンス専門教育
[e-ラーニング・冊子配布]
コンプライアンス情報掲載
[イントラネット・ポータルサイト]
経営層
●
●
●
●
●
●
廃棄物リスク管理担当者研修
[集合研修]
●
ーション
らの信頼と期待に応え、安定的に発展を遂げていくた
● 国際基準・ルール遵守と現地文化・習慣尊重
めに、行動指針からコンプライアンスに関わる事項を
● 反社会的勢力・団体の不正・不当な要求拒否
抽出して7項目を基本方針として定めました。
含めたモニタリング体制を構築しています。
責任者(CSR担当役員)を委員長とした「コンプライア
また、主要な関係会社では「コンプライアンス担当
ンス委員会」を運営しています。コンプライアンス委
者」を設置し、各社においてコンプライアンスに取り
員会では年次活動計画(プログラム)を策定し、支店・
組んでいます。当社では、その担当者に対して研修会
工場に置く
「コンプライアンス推進者」と連携し教育
を実施するなどサポートをしています。
昨今企業経営に関わる重要な法改正が続いている
する場として、
グループ会社の経営層・法務担当者に
ことから、当社グループのコンプライアンス体制整備
よる懇談会を2005年度から開催しています。2006年
の一助とするため、法律改正などの法務情報を共有
度は以下のテーマで行ないました。
開催日
参加人数
テーマ
第5回
2006年
9月1日
65社 81名
内部統制システムとグループ経営
会社役員の義務と責任 ほか
第6回
11月29日
59社 74名
契約交渉段階のリーガル・リスク
会社役員の義務と責任(その2) ほか
第7回
2007年
2月27日
68社 84名
企業グループにおけるコンプライアンスの実践
会社法に基づく株主総会への対応 ほか
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
コンプライアンスの最高責任者は社長であり、統括
グループ法務懇談会
計画等を実行するとともに、内部通報制度や監査を
最高責任者:社長
統括責任者:CSR担当役員
カンパニー
コンプライアンス推進者
工場・支店
リスクマネジメント
コンプライアンス推進者
事務局:CSR推進部
関係会社
コンプライアンス担当者
内部通報制度
監査制度
当社は2001年11月に制定した「リスク管理要綱」に
観点から、より実効性の高いリスクマネジメント推進
則り、
リスクマネジメントに関する取り組みや体制の
を目指しています。
構築を行なってきました。
リスクマネジメント体制の
その一環として、
これまでの「リスク管理要綱」を廃
中核となる「リスク管理委員会」については、2005年
止し、新たに「リスク管理基本方針」と「リスク管理規
度からCSR経営委員会の1専門委員会と位置付け、
「リ
程」を2007年4月に制定しました。
ステークホルダー・ダイアログ
年次活動計画
(プログラム)
従 業 員 等
ステークホルダー・ダイアログ
本社
コンプライアンス推進者
コンプライアンス委員会
社会的な取り組み
社会的な取り組み
コンプライアンス推進体制
委員長:統括責任者
(CSR担当役員)
委 員:関連事業所長 環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
● 経営理念、
行動指針、社会規範の遵守
コンプライア
事業所管理者
ンス推進者
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
コンプライアンス
スクマネジメントは企業の社会的責任である」
という
14
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
15
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
リスク管理基本方針・リスク管理規程
リスク管理研修
「リスク管理基本方針」は、
「リスク管理要綱」におけ
時の活動方針、緊急時の活動方針、グループ展開に
2006年12月、本社の部長クラスや支店長・工場長
クマネジメント概論」の講義をはじめ、当社のリスク
る基本方針をベースとして、当社の事業継続や持続
ついて次の5項目を定めています。
などを対象に、
リスク管理研修を4回開催し79名が参
管理体制や今後の取り組みについての説明・演習な
加しました。外部からコンサルタントを招いての「リス
どを実施しました。
的発展を目的に、
リスク管理の目標、管理体制、平常
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
リスク管理研修
リスク管理基本方針(要旨)
■日 時
●ステークホルダーから一層の信頼を得るため、
リスクの予防と低減に努める。
● 様々なリスクを適切に管理するための体制を整備する。
2006年12月5日(火)、8日(金)、11日(月)、15日(金) 各日13:00∼17:30
■場 所
本社 講堂
■研修内容
1)
リスクマネジメント概論
● 計画・実践・評価・是正のサイクルを通じてリスク管理を推進する。
2)太平洋セメントグループのリスク管理体制(案)
●リスクが顕在化した際、
迅速かつ適切に対処する。
3)
「リスク洗出し・評価→課題設定」の実施要領
● 太平洋セメントグループとして迅速かつ適切に対処するための体制を構築する。
4)
「リスク洗出し・評価→課題設定」のグループ演習
5)
「リスク評価結果」
(暫定版)の説明
PDCAサイクル(計画、実践・教育・訓練、評価、是正・
点を置いたリスク管理体制を構築するとともに、新
見直し)による継続的改善の手法も取り入れたリスク
たに「平常時におけるリスク管理推進」等を規定し、
管理活動の推進などについて定めました。
リスク管理体制
スクを管理していく旨を掲げています。
視野に入れた内部統制システムの構築を求めてお
その取り組みの一環として、2007年3月にグループ
り、当社も2006年5月に決議した「内部統制システム
会社経営層をリスク管理責任者と位置付け、研修会
構築の基本方針」の中で、
グループの事業に関するリ
を4回開催し、114名が参加しました。
太平洋セメントグループ リスク管理責任者研修会
者がそれぞれの年間取組計画を決定し、リスク管理
■日 時
2007年3月1日(木)、2日(金)、8日(木)、9日(金) 各日13:00∼17:00
に関する取り組みの実践や教育・訓練を、推進して
■場 所
本社 講堂
を運営しています。
いきます。
■研修内容
1)当社役員からの太平洋セメントグループとしての取り
リスク管理委員会の重要な役割として、
リスク管理
リスク管理委員会は、
これら年間取組状況の報告を
(総務担当役員)を委員長とした「リスク管理委員会」
に関する活動の全社年間取組計画の検討・立案を行
受けるとともに、自己評価や監査の結果、必要に応じ
なうことが挙げられますが、この全社計画に基づき、
て是正措置を実施します。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
リスク管理の最高責任者は社長であり、統括責任者
会社法等の諸法令は、企業集団(グループ)全体を
組み姿勢説明
2)内部統制とリスク管理概論
3)太平洋セメントグループの内部統制とリスク管理体制
4)
グループディスカッション∼リスク管理・ケーススタディ
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
最高責任者:社長
統括責任者:総務担当役員
全社年間
取組計画
カンパニー
リスク管理責任者
工場・支店
リスク管理責任者
事務局:総務部
関係会社
リスク管理責任者
リスク対策
実施状況報告
評価制度
16
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
情報セキュリティ
当社は、情報セキュリティの保持がコーポレート・ガバナンスの課題、企業の社会的責任上の課
題であると認識しています。2005年3月に発効した「情報セキュリティ基本方針」に基づき、情報セ
キュリティマネジメントシステムのPDCAサイクルの確立と確実な定着を図るため、継続的に情報セ
キュリティの保持活動に取り組んでいます。
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
委員長:統括責任者
(総務担当役員)
委員:関連事業所長 リ ス ク 管 理 の 実 践・教 育
本社
リスク管理責任者
リ ス ク の 洗 出 し・評 価
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
各事業所やカンパニーに置かれたリスク管理責任
リスク管理委員会
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
また、
「リスク管 理 規 程」で は、より実 務 対 応 に重
情報セキュリティマネジメントシステムの定着
2005年12月に情報セキュリティマネジメントシ
ステム管理要領」などの各種要領の制定・拡充、およ
ステムの基本規程として、
「情報セキュリティ管理規
び、情報セキュリティの保持にかかわるガイドを制
程」を制定し、これに基づく
「情報セキュリティ管理
定して、情報セキュリティ規程体系の整備と、その遵
体制」を整備しました。さらに、2006年度は、
「 情報シ
守に努めました。
17
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
「情報セキュリティ管理ガイド」の制定と管理の徹底
各事業所の「情報管理責任者」および「情報取扱責
キュリティ管理ガイド」を2006年10月に制定し、活動
任者」が主体となり、継続的かつ組織として情報セキ
を推進しています。
セメント産業における持続可能な発展のための活動
WBCSDセメント産業部会における活動
「情報システム利用ガイド」の制定と啓発
当 社 は 地 球 温 暖 化 問 題 を 含 め 、持 続 可 能 な 発
ルとガイドラインを開発しました。
展 に 向 け た 国 際 的 な 取り組 み に 参 加しています。
2007年4月には温暖化対策作業部会を東京で開催
当社の情報システムを利用するにあたり、全従業
また、
このガイドの主旨を文化として定着させるた
特にW B C S D のセメント産業部会(C S I=C e m e n t
し、
(社)セメント協会および石灰石鉱業協会と情報
員が遵守すべきルール(禁止事項および注意事項)を
め、定期的に全従業員を対象としたe-ラーニングおよ
Sustainability Initiative)ではコアメンバーとして
交換を行ないました。新たにコンクリートリサイクル
明示した「情報システム利用ガイド」を2006年6月に
び集合教育を実施しています。
2000年より活動してきました。
などのテーマを加えて、さらに活動を広げて取り組ん
CSIは、世界中のステークホルダーとの対話を踏ま
でいきます。
制定し、情報システムの適正な活用を図っています。
*
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
えたセメント産業の持続可能性に関する調査研究
に基づいて「自主行動計画」を策定し、2002年7月に
■情報セキュリティ管理体制
コアメンバー10社の共同コミットメントとして公表
CSR経営委員会 最高責任者
しました。
情報セキュリティ委員会
各事業所
情報セキュリティ 統括責任者
情報セキュリティ 担当責任者
情報管理責任者
情報取扱責任者
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
ュリティの保持に取り組むことを目的として「情報セ
この「自主行動計画」は20年間のビジョンで作成
され、5年ごとに活動を見直すことになっています。
2007年までの5年間には6つの優先課題それぞれに
ついて作業部会を設定し、非財務的指標であるK P I
(主要業績評価指標)や、世界で共通して使えるツー
情報セキュリティの保持状況の評価と改善
ループとして整合性の取れた取り組みが求められて
ティガバナンスのあり方に関する研究会」の報告書を
いると認識し、
グループ会社へも当該調査を実施しま
参考に「情報セキュリティ対策ベンチマーク」を策定
した。
「グループ会社情報システム交流会」において、
しました。これをもとに自社の取り組み状況と対応状
ベンチマーク結果を踏まえたグループ全体の「情報
況を毎年評価し、計画的に情報セキュリティ対策に取
セキュリティ対策の現状と課題」を共有し、
グループと
り組んでいます。
しての情報セキュリティ強化に取り組んでいます。
2002-2007年に取り組んだ優先課題
・気候変動の防止
・原燃料の利用
・従業員の安全衛生
・排出物質の削減
・地域社会への影響
・コミュニケーションと報告
また情報セキュリティの保持は、当社のみならずグ
CSIの自主行動計画をはじめとする活動内容や開発したツールなどの詳細は、当社ホームページからダウンロードできます。
個人情報マネジメントシステムの推進
当社は、日本工業規格を参考に、
「 個人情報保護コ
アンス・プログラムを「個人情報保護マネジメントシ
ンプライアンス・プログラム」を制定して個人情報の
ステム」へ改訂し、継続して個人情報の保護に取り組
んでいます。
1999(個人情報保護コンプライアンス・プログラム)」
が「JISQ15001:2006(個人情報保護マネジメントシ
ステム)」へ改訂されたことに伴い、当社版コンプライ
個人情報保護方針については当社ホームページ(http://www.
taiheiyo-cement.co.jp/privacy/)をご参照ください。
ネット排出 *1
CO 2排出
CO2排出原単位
*2
CO 2排出量 *2
(kg-CO2/t-セメント)
764
784
(千tCO 2/年)
38,339
39,327
*1:CO2総排出から代替燃料由来のCO2排出を差し引いたもの
*2:イー・アール・エム日本(株)より第三者保証を受けている
安全衛生指標
情報システムのBCP(事業継続計計画)、復旧計画の充実と共有
総排出
備 考
休業災害件数
(件)
13
休業災害度数率
(−)
1.21
休業災害件数
(件)
21
死亡災害件数
(件)
0
直接雇用の従業員
直接雇用の従業員(100万人時あたり)
間接雇用の従業員(協力企業と下請け企業)
当社では、情報システムにかかわる災害リスク対
の確認・共有・訓練および改善を実施しています。ま
策についても積極的に取り組んでいます。大規模な
た、緊急事態から情報システムを守るため、定期的に
死亡災害度数率
(−)
0
直接雇用の従業員(1万人あたり)
地震災害等(緊急事態)の発生を想定した、
「情報シス
システムおよびデータを安全に外部に保管するとと
死亡災害件数
(件)
1
間接雇用の従業員
テム危機対応マニュアル」、
「情報システム継続計画」、
もに、スタンバイ・バックアップシステムを構築・運用
死亡災害件数
(件)
0
第三者(雇用関係になし)
「情報システム復旧計画書」を策定し、情報処理を委
託しているパシフィックシステム(株)を含めて各計画
18
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
保護に努めてきました。2006年5月に「JISQ15001:
2006年 CSIのKPI(主要業績評価指標)による主な評価項目
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
当社では、
「経済産業省 企業における情報セキュリ
*WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)
:約200社の国際的な企業をメンバーとした経済団体。経済、環境、社会の調和した
持続可能な発展(SD)のために様々な活動を行なっている。
SD(Sustainable Development)
とは、
「将来のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズをも満たすこと」
(国連のブ
ルントラント委員会報告書「われら共有の未来」1987年)。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
温暖化対策作業部会 東京での情報交換会
直接雇用の従業員
することで、被災時に迅速な復旧が図れる環境の整
備に取り組んでいます。
19
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
大気汚染物質削減目標策定について
2002年7月に策定したWBCSDセメント産業部会の
「自主行動計画」に基づき、参加企業として「気候変
環境保全の取り組み
動の防止」
「排出物質の削減」の2つの優先課題につ
き目標を策定し、2007年3月に公表しました。
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
1.当社グループの目標
(1)CO 2排出削減目標
太平洋セメントグループのセメント製造における
に2000年比でネットC O 2 排出原単位*3%削減」とし
「2010年まで
二酸化炭素(C O 2)排出の削減目標を、
ます。
環境マネジメント ………………… P.21
環境負荷の全体像………………… P.22
*ネットCO2排出原単位:セメント1トンあたりのCO2総排出原単位からセメント1トンあたり代替燃料由来のCO2排出原単位を差し引いた値
環境会計・環境投資 ……………… P.24
基準年:
2000年
対象範囲:
国内7工場、国内関係会社6社、海外関係会社8社
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
環境パフォーマンス ……………… P.26
目標達成年: 2010年
鉱山における環境配慮 …………… P.30
(2)大気汚染物質(NOx、SOx、ばいじん)の排出マネジメント
太平洋セメントグループの海外を含むすべてのセ
物質の排出量を毎年モニタリングする体制を確立し
メント工場において、キルンから排出する大気汚染
ます。
目標達成年: 2010年
環境マネジメント
国内7工場、国内関係会社6社、海外関係会社7社
社会的な取り組み
社会的な取り組み
対象範囲:
環境経営方針
2.目標達成の手段
(1)CO 2排出量削減
標を達成するための主な方策としては、省エネプロジ
画における国内設備投資によるCO 2 削減効果および
ェクトと代替原燃料使用量の増加であり、その効果割
海外工場の将来計画を基に定めたものです。削減目
合は概ね1:2となります。
境経営の方針を策定しました。
環境保全基本方針」を廃止し、
「太平洋セメント環境経
自らの事業における環境配慮にとどまらず、循環型
営方針」を2006年1月1日付で制定しました。CSR経営
社会構築や地球温暖化といった社会的な環境問題へ
を推進すべく、2005年度より従来の地球環境保全委
の取り組みを重要な経営課題と位置付け、5つの項目
員会に代わり環境経営委員会を設置し検討を重ね、環
を環境経営方針として掲げています。
(2)大気汚染物質(NOx、SOx、ばいじん)の排出モニタリング
モニタリングが徹底されていない一部の海外工場
なお、すでにモニタリングを行なっている工場も、
においては、連続測定装置を設置する、あるいは第三
その測定値の信頼性の向上を図ります。
者機関による定期測定を実施します。
太平洋セメントはこれまでの「地球環境保全基本方針」を見直し、社会的な環境問題への積極的な取り組みを重
要な経営課題と位置付け「環境経営方針」を制定しました。国際社会から地域社会まで広範なステークホルダーとコ
ミュニケーションを図り、WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)セメント産業部会の一員として、持続
可能なセメント産業の在り方を追求していきます。
事業活動における環境影響を適切に評価し、環境管理の徹底ならびに環境負荷の低減に役立つ製品・技術の開
発と採用により、環境効率の向上に取り組む。あわせて地域社会の一員として、良好な環境の保全に努める。
2.資源循環型社会への貢献
セメント産業固有の能力と機能を活かし、産業や生活から発生する廃棄物等をセメント原燃料として資源化する。
アジア太平洋パートナーシップ
3.地球温暖化問題への積極的な取り組み
6カ国(米国、中国、豪州、韓国、印度、日本)による
日本が議長を務めるセメント産業の分野におい
事業活動全体にわたり一層の省エネルギー化を推進するとともに、社会全体の温室効果ガス排出削減に繋がる
「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パート
て、当社は民間からのメンバーとして協力していま
技術開発に挑戦する。
ナーシップ(APP)」は地球温暖化対策をはじめ、クリ
す。今後、各国の関係者やCSIと連携をとりながら、実
ーン技術の開発、普及、移転のための太平洋を囲む
効のある取り組みを進めていきます。
国々の協力関係です。
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
1.環境に配慮した事業活動
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
ネットC O 2 排出原単位の目標値は、07中期経営計
1998年に制定し、その後、数次の改定を経た「地球
4.国際協力
当社が保有する環境保全や省エネルギーならびに廃棄物等のリサイクルに関する技術の海外への移転と普及を
推進する。
5.自然保護への取り組み
自然との共生に役立つ製品と技術を提供するとともに、自然保護活動に取り組む。
20
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
21
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
当社は2006年度において2,157万トンのセメント製品、2,840万トンの資源品(骨材・石灰石製
廃棄物・副産物の原料・燃料を適切にバランスよく組み合わせて使用しています。
品など)、73万トンの環境事業製品(排煙脱硫材など)、そして28万MWhの電力を生産しました。
様々な産業から発生する廃棄物・副産物の有効利用や再資源化に積極的に取り組むとともに、
セメント製品の生産にあたっては、石灰石を中心とする天然原料および石炭などの化石燃料と、
製造プロセスで発生する多量の熱は排熱発電装置で回収するなど有効利用しています。
エネルギー
原 料
496,223 t
重油
57,865 kl
軽油
25,977 kl
廃棄物燃料
555,840 t
購入電力
738,609 MWh
廃 棄 物・副 産 物
24,087 t
その他
粘土
けい石
石膏
1,382 kl
灯油
石灰石
221,907 t
8,214,149 t
492,950 t
副産石膏
589,263 t
CO 2 *
排出物
うち購入電力分
廃棄物等の排出
排水
315,547 千m 3
外部処理委託廃棄物等
263,683 t
うち 海水
301,152 千m 3
うち 最終処分量
591 t
淡水
14,252 千m 3
金属くず等有価物
8,956 t
16,730,394 t
12,024 t
SOx**
4,449 t
粉砕媒体・鋳鋼品
1,572 t
NOx**
31,098 t
潤滑油・薬品類
5,267 kl
ばいじん**
その他
3,246 t
ダイオキシン類** 0.89 g-TEQ
耐火物
1,741,767 t
鉄原料
4,950 t
火薬
107,032 t
その他
27,845 t
添加剤等
44,875,672 t
水域への排出
生活雑排水
144 千m 3
624 t
*輸送によるCO 2は別途算出(P.28参照)
2,320,478 t
用 水
高炉スラグ
1,756,069 t
海水・淡水
その他
1,650,649 t
**セメント・発電事業のみ(購入電力分は除く)
317,081 千m 3
アウトプット
社会的な取り組み
社会的な取り組み
フライアッシュ・
石炭灰
インプット
事業別製品
発
発電所
発電事業
電力(売電)
資源事業
骨材
276,598 MWh
電力
鉱 山
源
セメント工場
軽油・
火薬等
石灰石製品
その他
8,797,080 t
11,820,452 t
7,780,878 t
セメント事業
ポルトランドセメント
混合セメント
サービスステーション
16,927,603 t
2,887,572 t
クリンカ(輸出用等)
840,360 t
セメント系固化材
911,538 t
排煙脱硫材
478,155 t
フライアッシュ製品
165,644 t
アッシュセンター
境
環境事業
無機材料
22
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
ステークホルダー・ミーティング
セメント
石炭・購入電力・添加剤等
環
ステークホルダー・ミーティング
石灰石等・
天然鉱物
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
資
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
電
石炭・石油コークス・用水等
廃棄物・副産物
1,400 t
環境保全の取り組み
石油コークス
天然資源
環境保全の取り組み
2,132,193 t
石炭
大気への排出
材 料
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
環境負荷の全体像
86,143 t
23
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
環境保全効果
■環境保全効果
環境負荷指標
効果の内容
04年度
05年度
06年度
06年度
対前年増減量
当社では事業活動に伴う環境負荷の把握と合わせて、環境保全に要したコストを網羅的に抽出
することで、事業活動や設備投資の費用対効果を的確に評価できると考えています。
公害防止
2,943
3,737
4,449
712
NOx排出量(t)
33,330
33,429
31,098
−2,331
ばいじん排出量(t)
CO₂ 排出量(t)
地球環境保全
また当社は、様々な産業や自治体など
(サプライチェーンの上流)から排出される廃棄物・副産物
SOx排出量(t)
内
訳
投資と費用は「上・下流コスト」に区分しています。
保全コストを集計し始めました。その後2001年度より
としました。
単位:百万円
主な取り組みの内容
公害防止コスト
キルン排ガス用高煙突設置
地球環境保全コスト クリンカクーラ高効率化
資源循環コスト
表土処理
(2)上・下流コスト
都市ごみ焼却灰資源化
92,705
94,735
2,030
2,784
2,953
3,142
189
142
146
125
−22
温暖化防止
CO₂ 削減量(千t)
エネルギー資源枯渇防止
エネルギー(原油)削減量(千t)
鉱物資源枯渇防止
鉱物資源削減量(千t)
6,152
6,902
8,814
1,912
処分場延命
最終処分量削減量(千t)
4,612
5,029
5,227
198
● 外部廃棄物利用効果では廃棄物の利用を積極的
約20億円の費用を投入していますが、2006年度は
に推進した結果、エネルギー削減量を除く項目が
NOxを除いて増加しました。
2005年度に比べ改善しました。
投資額
費用額
04年度
05年度
06年度
04年度
05年度
06年度
1,680
3,132
1,848
1,024
1,403
1,117
3,039
2,646
3,058
2,207
1,946
2,283
76
1,015
413
638
656
723
580
714
318
193
44
51
2,729
3,766
3,993
2,630
2,931
3,272
●大分工場(津久見)
●大船渡工場
大分工場では生活系廃棄物をセメント原料用に安定利
大船渡工場では屋外石炭置場に防じんフェンスを設置
用するため、都市ごみ焼却灰を資源化する設備を設置し
して粉じんの飛散防止に努めました。
ました。
2006年度投資額:約1億円
2006年度投資額:約20億円
(公害防止コストに計上)
(上・下流コストに計上)
環境マネジメントシステム
0
40
70
333
320
195
キルン排ガス処理技術
29
22
112
94
107
441
(5)社会活動コスト
工場見学対応
6
3
1
11
5
4
(6)環境損傷対応コスト
汚染負荷量賦課金等
33
60
104
111
345
367
合 計
4,477
7,022
6,128
6,218
6,353
7,338
項目
04年度
05年度
06年度
当該期間の投資額の総額
14,196
18,717
17,304
当社では、外部からの廃棄物利用拡大に伴う社会的な
前年比5%増)の社会的効果を上げたと認識しています。
663
817
922
環境負荷低減効果を貨幣価値に換算し、「外部経済効果」
外部経済効果の85%を廃棄物の埋立処分費用相当分が
として評価しています。
(EEBE®: External Economic
占めています。原油価格や最終処分場の埋立費用は年々
Benefit Evaluation)
高騰していますが、ここでは市場価格を据え置いて数量増
一種のみなし効果ですが、
2006年度は923億円(対
加の効果だけを評価しています。
当該期間の研究開発費の総額
● 環 境 関 連 設 備 投 資 額 は 前 年よりわ ず か に少 なく
なっていますが、設備投資総額の35%を占めてい
ます。キルン排ガス用煙突の高煙突化、省エネの
● 上・下流コストは環境関連設備投資額および環境
保全費用の約半分を占めています。2006年度の
「セメント資源化システム」の取り組みによる外部経済効果の算定
代表的な投資実績は、建設発生土の置場拡張、下
インパクト
インベントリ
セメント1tあたり
(kg)
*は千t/年
インベントリ セメント
外部
設定市場価格 生産数量 経済効果
(円/t) (万t) (億円)
水汚泥処理用乾燥設備導入、木くず処理設備の能
実施しました。
力増強、都市ごみ焼却灰資源化工事などがありま
地球温暖化
CO2
870
718
152
818
す。また、受入廃棄物の増加に伴い、受け入れ、構
エネルギー資源枯渇
原油
37
31
6
18,400
鉱物資源枯渇
天然原料
1,580
1,153
427
1,000
0
253
253
● 環境保全にかかる費用は前年より増え73億円とな
りました。
VPC
内横持ち、前処理、投入などのリサイクルにかかる
費用も増加しています。
最終処分場枯渇
廃棄物
廃棄物(環境事業)
全セメント
17*
−
削減量
−
88
784
−
3
外部経済効果の算定方法について
● 当社で他産業の廃棄物リサイクルを行なわない場合に、
のです。
● 仮に廃棄物をまったく使用しない場合のセメント
(VPC:
設定した市場価格を乗じて経済効果に置き換えていま
す。それぞれのインベントリの設定市場価格は2000年
度から据え置いていますが、設定根拠は以下の通りです。
CO 2:炭素税3,000円/t、原油:輸入価格、天然原料:購
バージンポルトランドセメント)の環境負荷を算定し、そ
入価格(仮定)、廃棄物(管理型処分場)の処理費用(首
れと廃棄物等を使用した当該年度のセメント環境負荷を
都圏)
インベントリ比較します。
● 両者のインベントリの差
(環境保全物量効果)に、当社で
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
23
2,066
923
合 計
社会全体が受ける環境影響を独自の方法で算定したも
24
15,000
26
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
ためのクリンカクーラ高効率化工事などの投資を
■外部経済効果
(億円)
1,000
923
877
900
802
800
700
600
500
400
300
200
100
0
04 05 06 年度
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
(3)管理活動コスト
(4)研究開発コスト
社会的な取り組み
内訳
社会的な取り組み
(1)事業エリア内コスト
91,808
主な環境関連投資
■環境保全コスト
分類
77
224,395
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
集計範囲を広げ、鉱山、サービスステーションも対象
624
16,730,394
エネルギー使用量(千GJ)
● SOx、
NOx、ばいじんの排出抑制を図るため毎年、
当社では1999年度実績より、セメント工場の環境
546
16,505,999
(2)外部廃棄物利用効果
を受け入れてセメント原料・燃料にリサイクルし、環境負荷低減につなげていますが、
これに要した
環境保全コストの集計結果
634
16,089,445
CSR経営の基盤
(1)事業エリア内効果
内
訳
CSR経営の基盤
環境会計・環境投資
● この算定方法による外部経済効果のうち、
一部は当社損
益に反映されています。
25
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
SOx
排出量(t)
4,000
3,000
40,000
3,737
2,943
20,000
1,000
10,000
04
33,330
33,429
04
05
30,000
2,000
0
排出量
(t)
05
06
0
年度
700
600
500
400
300
200
100
0
31,098
06
年度
634
624
546
04
05
06
年度
当社はセメント事業以外に資源事業、環境事業、発電事業にも相当量の物質投入と排出があり
ますが、それらを合計して全事業の環境負荷パフォーマンスを把握し評価しています。2006年度の
主なものを以下に紹介します。
大気への排出:ダイオキシン類
セメント焼成炉で廃棄物を処理する場合には、廃棄
インプット
ことが義務付けられています。排出濃度は産業廃棄物
トンでした。これは、セメントの国内需要がほぼ前期
いて水分を多く含む廃棄物の使用割合が増加したた
焼成炉に適用される最も厳しい排出規制値の0.1ng-
並みの水準を維持したものの、生コンクリート向け骨
めです。
TEQ/m3Nを大きく下回っています。セメント焼成炉の中
材および埋立用土砂が減少したためです。
約3億m 3 の水利用量のうち、自家発電設備の冷却
は1,450℃以上の高温となるため、
ダイオキシン類はほ
総エネルギー投入量は9,474万ギガジュールで、前
用海水が9割以上を占めています。
とんど分解されます。
■総エネルギー投入量
利用量(千m3)
333,681
80,000
60,000
57,701
94,735
92,705
300,000
40,000
05
06
年度
0.017
0.015
0.014
総排出量
g-TEQ/年
1.04
1.00
0.89
排水量(千m3)
電設備の冷却用海水であり、水質汚濁防止法に規定さ
100,000
04
排ガス平均濃度
総排水量は約3億m3と膨大ですが、ほとんどが自家発
04
05
06
0
年度
300,000
れる汚水ではありません。セメント工場では海水以外の
20,000
0
15
水域への排出:総排水量
317,081
40,000
20,000
15
200,000
60,000
0
307,075
80,000
62,025
15
ng-TEQ/m3N
(O2=12%)
04
05
06
年度
社会的な取り組み
社会的な取り組み
63,497
91,808
04年度 05年度 06年度
基
■水利用量
投入量(千GJ)
100,000
単 位
調査対象キルン数
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
年に比べ2%増加しました。これはセメント製造にお
投入量(千t)
■ダイオキシン類排出量
物処理法により排ガス中のダイオキシン類を測定する
総物質投入量は、前年に比べ2%減少して6,200万
■総物質投入量
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
環境パフォーマンス
ばいじん
NOx
排出量(t)
4,449
298,348
315,197
315,547
04
05
06
200,000
排水については発塵防止用散水などに利用しており、
100,000
公共水域への排水を最小限にするよう努めています。
0
公共水域への排水ルートには、沈殿槽、油水分離槽、
年度
大気への排出:CO2
2006年度は1,673万トンのCO 2を排出し、前年に比
増えず、結果としてCO 2排出量削減に結びつきません
べ1%増加しました。このうち、セメントおよび生石灰
でした。
の原料である石灰石の分解に伴うCO 2排出量が全体
の約6割を占め、残りの約4割を燃料の燃焼などから
の排出が占めています。燃料については、木くずなど
燃料使用割合を減らすよう努めていますが、他産業
からの参入により熱エネルギー代替廃棄物の収集が
18,000
16,089
16,506
2006年度に工場および鉱山から外部に処理委託
委託量が増加しました。廃棄物処理のリスク管理を強
した廃棄物は1,400トンで、うち591トンが最終処分
化するとともに、少しでも最終処分量を減らすように
(埋立)されています。
16,730
15,000
努めていきます。
2006年度は解体工事の影響で一時的に外部処理
12,000
9,000
外部処理委託量(t)
6,000
3,000
0
最終処分量(t)
1,400
1,331
04
05
06
年度
大気への排出:SOx、NOx、ばいじん
1,200
900
600
600
300
300
0
セメントキルンや発電ボイラーなどの燃焼排ガス
を維持するとともに、排ガス中の排出濃度を連続監
中のSOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)、ばいじん
視することにより、適正運転に努めています。
が大気への主な排出となります。
熊谷工場では、2005年度に当社では初めてキルン
SOx排出量の増加は、世界的に燃料需給が悪化し
排ガスのばいじん対策として、電気集塵機に代えてバ
たことに伴い、燃料調達ソースを変更したことによる
グフィルターを導入しました。今後、順次他工場への
ものです。
展開を図っていきます。
1,200
1,041
900
04
05
06
年度
0
586
04
547
05
591
06
年度
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
のバイオマス燃料の利用を増やすことにより、化石
排出量(千t)
廃棄物等の排出
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
油膜検知器を設置して漏洩リスク対策を講じています。
アウトプット
電気集塵機をはじめとする排ガス処理装置の能力
26
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
27
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
輸送にかかる環境負荷
環境事故
送業者との連携を密にし削減に努めます。複荷輸送
2006年度も罰金・科料を受けるような環境事故は
輸送会社に委託しています。2006年4月から施行され
や船舶、
トラックへの省エネ装備の導入など、当社は
ありませんでした。工 場で は、環 境 事 故を想 定した
た改正省エネ法および改正温暖化対策法により、荷主
もとよりグループ全体の物流合理化を進め、環境負荷
「緊急時対応計画」を作成するとともに、地元消防署
としての責任が明確になりましたが、2004年度から国
低減を推進していきます。
と協力した消防訓練や海上油濁事故を想定したオイ
ルフェンス設置訓練などを行なっています。
内輸送にかかるCO2排出量を把握し評価しています。
2006年度における輸送量は4,765万トンで前年度
輸送
手段
輸送量
(千t)
トラック
17,509
45.6
799,248
貨 車
3,502
33.1
115,990
2
で前年度に比べ5.5%の減少となりました。生産活動
船 舶
26,635
441.0
11,745,587
446
にかかるCO 2 排出量と比べると約4%程度ですが、輸
合 計
47,646
265.7
12,660,825
588
に比べ8.1%減少、これに輸送距離を掛け合わせたト
ンキロは6.9%減少しました。C O 2 排出量は59万トン
平均輸送
距離(km)
輸送トンキロ CO2排出量
(千t×km)
(千t)
139
油流出処理訓練(上磯工場)
環境苦情
2006年度にセメント工場に寄せられた環境苦情・
指摘は合計68件で、前年度(58件)に比べ約2割増加
TOPICS
バイオディーゼル燃料の活用
しました。その中で大気・粉じん苦情は前年度(19件)
より件数が増えています。寄せられた環境苦情に対し
とうもろこし等の植物原料のエタノールを混ぜたガソ
ークリフトの燃料として使用しています。
ては、できる限り速やかに現地に出向いて、現場で状
リンや、廃食用油から再生したバイオディーゼル燃料等
車輌に対する影響も13,000km走行後の点検時では
況を確認するとともに、原因を調査し当社に起因する
のバイオ燃料については、実用化に向けて国や自治体を
全く異常はみられませんでした。こうした秋田運送(株)と
含めた取り組みが開始されてきています。 の取り組みで、バイオディーゼル燃料を車輌燃料として
使用する技術的な問題はほぼクリアされ実用化の目途は
境に配慮した物流体制の構築は必要不可欠な課題で、
つき、今後は、供給体制の構築が課題となっています。
39.7%
11件
その他 16.2%
悪臭 7.4%
5件
水質 5.9%
4件
振動 2.9%
2件
19件
場合には状況を説明の上、改善策を実施しています。
そ の 対 策 の 一つとして、C O 2 の 発 生 量 のカウントがゼ
27件
合計
68件
騒音
27.9%
社会的な取り組み
社会的な取り組み
国 内 有 数 のセメント物 流 量をもつ 当 社にとって、環
大気・粉じん
オフィスなどでの環境保全への取り組み
ロとなるバイオディーゼル燃料の導入を積極的に考え
ており、運送契約会社である秋田運送(株)では実験的
エコ施策について
に運用を開始しています。
同社では、県内で発生する廃食油(天ぷら油)を精製し
社の秋田北サービスステーション内で使用しているフォ
土壌汚染の管理
2000年度にセメント工場敷地内で土壌汚染の可
価を実施しています。その後、
リスクの高い場所から
能性がある場所について、専門コンサルタントによる
優先してボーリング調査(フェーズⅡ調査)を行なって
土地履歴等の調査(フェーズⅠ調査)により、
リスク評
確認しています。
へのダイオキシン類と鉛の排出量は以下の通りです。
ダイオキシン類
鉛およびその化合物
不要紙類のリサイクル
「私もクールビズしてます」を合
本社内で不要となった事務用
片面使用用紙は再利用コーナ
言葉に、本社では6月から9月まで
品を有効に活用するため、
リユー
ーに置き、裏面を再コピー用紙と
の4カ月間 、COOL BIZ(夏の軽装)
スコーナーを設置し、中古品を最
して活用しています。また、機密
を推奨するとともに、事務所温度
大限に活用するとともに、安易に
文書は、施錠された廃棄用B O X
を28℃に設定しています。またエ
新品を購入しないような仕組みを
に入れ、秘密保持契約を結んだ
レベーターの使用を極力控えるな
とっています。
単位
04年度
05年度
06年度
mg-TEQ
0.0018
0.0120
0.0014
kg
0.1
0.1
0.1
2001年6月に制定されたP C B特別措置法に基づ
理し、2007年には香春鉱業(株)に保管してあるコンデ
き、全国48カ所で保管しているPCB廃棄物の適正保
ンサ類56台などを処理する計画です。
当社では、文具の購入に際して、環境に配慮した製
品の購入(グリーン購入)を推進しています。本社に
おけるグリーン購入の実績は次の通りです。
購入率(%)
購入率
グリーン購入
5,000
4,000
100
70.8
71.5
75.8
80
3,000
60
2,000
40
1,000
20
0
保管台数
06年度
07年度
処理台数 (07年3月31日現在) 処理計画
境安全事業(株)と処理委託契約を結び、保管している
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
購入額(千円)
04
05
06
年度
ハイブリッド車の積極的な導入
管状況を確認し、毎年届出を行なっています。日本環
は旧門司工場に保管してあったコンデンサ45台を処
て利用されています。
削減に取り組みました。
PCB廃棄物の管理
PCB廃棄物の計画的処理を進めています。2006年度
専門業者が引き取り、再生紙とし
ど電力消費の低減に努め、CO 2 の
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
洗する設備がPRTR法届出対象に該当しています。水域
リユースコーナーの設置
グリーン購入について
PRTR(環境汚染物質排出移動登録)
当社では熊谷工場に設置した都市ごみ焼却灰を水
COOL BIZ ∼クールビズ∼
(夏の軽装)
運動の推進
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
ボディ車27台(2006年度輸送実績:73,000トン)
と当
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
(注)1.集計の対象はセメント・資源・環境・発電の4つの事業セグメントにおける、当社が運賃を負担している製品・原料・燃料・リサイクル資源の国
内輸送です。但し、セメント製品は工場からサービスステーションまでの輸送のみを対象としています。
2.輸送トンキロに国土交通省輸送機関別CO 2排出原単位を乗じて算出しました。
バイオディーゼル燃料100%燃料を大型バラ車2台・平
28
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
当社では、原燃料および各種製品の輸送は基本的に
コンデンサ
45
455
57
トランス
0
10
0
当社資産分合計(放電コイル、安定器含まず)
環境負荷軽減の一環として、2006年度から支店に
し、その促進のため、社内規程で具体的なハイブリッ
おける営業車を検討する際には、C O 2 、N O x排出量
ド車名を選定対象の候補車両として規定しました。
を低減するハイブリッド車を積極的に導入することと
29
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
社会的な取り組み
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
鉱山における環境配慮
セメントの主原料である石灰石の多くは、珊瑚などの海洋生物の死骸が堆積し、1億年以上の時
を経て岩石になったものです。
これらの一部が様々な地殻変動を受けて陸上に山として現れ、
この
働きやすい職場づくり …………… P.31
山を切り開き石灰石を採掘しているのが石灰石鉱山です。当社では現在、国内外併せて20以上の
安全な職場づくり ………………… P.34
石灰石鉱山で石灰石を採掘しています。
鉱山の環境修復
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
ユーザーニーズに応える
取り組み …………………………… P.37
コミュニケーション活動 ………… P.41
鉱山では、自然に存在する岩石を採取するため、採
し、少しでも元の自然環境へ近付けることを願って地
掘の進行とともに自然の姿を変えることとなります。
道な作業を続けています。
そこで、石灰石を採掘した跡地には客土・植栽を施
バイオ技術による希少植物増殖への取り組み
る希少植物の保護育成活動に取り組んでいます。
1995年からは組織培養と超低温保存という当社中
現在進行中の第3次人員計画(期間:2005∼2007年度)
では、人材の育成と新規採用による人材
希少植物の培養系確立、確立種のフラスコ内保存、増
の確保を積極的に推進しています。
殖種の鉱山内植え戻しを行なっています。
このバイオ
また、特例子会社の活用を中心とした障害者雇用の促進、高齢者社会への対応としての定年退職
技術は叶山鉱山(群馬県)へも展開しています。
者の再雇用制度導入、仕事と育児・介護の両立に対する支援策としての育児・介護休業制度改定とい
2006年には新たに木本類への取り組みを始め、チ
った雇用の多様性に配慮した施策や、人権啓発活動の一層の推進に取り組むなど、働きやすい職場
チブミネバリ、チチブヤナギ、ブコウマメザクラといっ
づくりに努めています。
た希少な樹木の保存、増殖に成功しました。
評価者研修の実施
チチブミネバリ
鉱山の多くは、採掘を行なう過程で残壁を形成し
価制度の仕組みや評価のルールを中心に評価者とし
く、評価結果をもとに一人ひとりに対し何が足りない
ての導入研修を実施してきました。2007年度からは、
のかを分析し、人材の育成に結びつけることとしてい
それに加え評価者として経験を積んできた者に対し、
ます。そのためには、評価する者の意識の持ち方が重
人材育成のマネジメント教育の一環として評価力を
要と考えています。従来、初めて人事評価をすること
向上させるための「マネジメント
(人事評価)研修」を
になった者に対し、
「新任役付き者研修」
として人事評
新たに実施することとしました。
ています。そのような場所では、残壁内に小段を設
けそこへ客土・植栽を施し、周辺環境との調和、景観
の保護に取り組んでいます。武甲鉱山(埼玉県)では
人材育成と教育・研修
ヤナギ、フサザクラ、シラカバ、ヒノキ等を植栽して
います。
従業員の能力開発は、当社グループの持続可能な
る具体的な教育・研修の取り組みについては、各事業
発展を確実なものとする上で、経営戦略上の最重要
の環境などを反映し効率良く実施されるよう検討して
課題の一つと位置付け、2006年5月に「人材開発基本
いるところです。
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
残壁緑化
当社の評価制度では、人事評価は単なる査定でな
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
央研究所バイオプロセスチームのバイオ技術により
社会的な取り組み
社会的な取り組み
働きやすい職場づくり
三輪鉱山(埼玉県)では、1972年から鉱山に自生す
方針」を策定しました。各カンパニーや事業所におけ
30
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
31
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
太平洋セメント 人材開発基本方針
障害者雇用の取り組み
当社は2000年6月時点の障害者雇用率が0.82%と
や 総 務・経 理 事 務 等
1.人材開発はOJTとこれを補完するOFF-JTを基本とします
いうことで東京労働局より雇用率未達企業として企業
の業務に従事してい
2.それぞれの分野および階層において次代を担う後継者を育成します
名が公表されました。直ちに社内に『障害者雇用推進
ま す 。今 後 はこれら
3.常にグループ経営を視野に入れ行動する人材を育成します
委員会』を設置し、以降これを障害者雇用の推進母体
3 特 例 子 会 社 以外 の
4.世界に通ずるグローバルな人材を育成します
として取り組んでいます。2007年6月時点では雇用率
事業所への展開によ
5.CSR推進の積極的な活動を通じ、環境への配慮、社会への貢献が出来る人材を育成します
1.75%(不足人数1名)
と残念ながら法定雇用率は未
り雇用率の改善を図
6.自己啓発により、意欲溢れる視野の広い従業員となることを支援・促進します
達となりましたが、2006年全国民間企業平均(1.52%)
ることとします。
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
社内外に通用する人材の育成を目指します
お弁当販売の準備
を上回るなど着実に雇用率の改善を図っています。
また、社内横断的な階層別研修については、その在
2006年度については、
『 障害者雇用行政の動向お
「法務教育」
「セメント製造技術者教育」など、実務的
り方についても検討を行ない、2007年に若手従業員
よび当社障害者雇用の現状と見通し』をテーマとして
な専門知識の習得を目的とした教育・研修について
を対象とした「新入従業員フォローアップ研修」を再
障害者雇用推進委員会を開催し、加えて主要関係会
2.00
現在実施している教育研修の概況は次の通りです。
■障害者雇用率の推移
雇用率(%)
開することとしました。また、中堅従業員の活性化を目
社(41社)の人事担当者にも同様の情報を提供する場
能力開発の実現を目指しています。
的とした研修等についても企画し実施する予定です。
を設けるなど、当社およびグループ一体となって取り
1.00
組みました。なお、障害者雇用の促進・定着に向けた
0.50
階層別
CSRコンプライ
アンス研修
情報スキル・
セキュリティ教育
マネジメント
(人事評価)研修
新任管理職研修
新入従業員
フォローアップ研修
新入従業員研修
具体的な取り組みについては、特例子会社を北海道・
東京都・大分県に3社設立し、2007年7月時点で3社合
国際要員
育成
経理財務研修会
法務教育
情報システム マネー
ジャー・担当者教育
知的財産権入門研修
特許情報検索研修
特許侵害研修
中央研究所配属新入
従業員対象知的財産研修
グループ建材会社
特許担当者会議
テクノスクール
セメント製造技術者
教育(7コース)
品質管理技術基礎講座
品質管理試験技術研修
耐火物管理教育
生産系システム担当者教育
製造オペレータ教育
PMパトローラ教育
機械係員保全教育
電気係員保全教育
固化材担当者技術研修
支店技術担当者研修
独禁法講習会
資源技術発表会
資源カンパニー 技術者教育
不動産実務担当者
研修会
社会経済生産性本部
経営アカデミー その他 各種外部研修・
セミナー派遣
グループ
経営教育
太平洋セメントグループ
法務懇談会
太平洋セメントグループ
CSRトップ層研修
その他
自己啓発各種通信教育
人権研修会
社内
研修
計28名(うち重度12名)の障害者が厚生施設の管理
1.39
1.41
1.66
1.75
1.52
1.09
民間企業
0.80
当社
0
00
01
02
03
04
05
06
07 年度
(注)特例子会社・・・厚生労働大臣に認定された障害者の雇用に特別の
配慮をした子会社
行動指針の一つである「人権を尊重し、安全で健康
参加者には人権研修に対する意見・気づきに関し
な職場づくりに努めます」を基本に、従業員はもとよ
てアンケート調査を行ない、今後の研修に役立てて
り事業活動に関係する人々の人権を尊重し、安全と
います。
2006年度の主な社内研修テーマ
出席者数(概数)
同和問題の研修(全事業所を対象)
2,050名
具体的には、全社人権啓発推進組織を通じて全従
新入従業員の人権入門研修
業員に人権研修を毎年、定期的に行なっており、2006
セクハラ・パワハラ研修
110名
障害者の人権
300名
90名
と
「不払い残業」になり得る事例を紹介しています。
で不払い残業の防止を目的に「時間外・休日労働ガイ
18.8時間
ワーク・ライフ・バランスの取り組み
休業制度の改定を行ない、最初の休業開始から5日
介護休業
の家族を対象に、恒例となった人権啓発標語を募集
を含めた役員・トップ層研修も開催し、2006年度は時
し、優秀作品の表彰・掲示を行なうなどさらなる人権
代背景を汲み取り、パワー・ハラスメントを主題に選
啓発の推進に努めています。
家族の部
「違って当然、話して理解、世界を広げる豊かな心」
従業員の部
「耳をすましてよく聞こう 誰かの心のSOS」
70.0%
*出向者を除く
育児休業
般従業員に対する研修だけではなく、グループ会社
人権標語2006年度優秀作品
年次有給休暇取得率
従業員の仕事と育児・介護の両立に対する支援体
人権週間では、協力企業も含めた従業員およびそ
び110名が研修を受けました。
2006年度実績
時間外・休日労働実績(1カ月平均)
なわれた研修会への参加者は250名になりました。一
最初の5日間
6日目∼子が満1歳に達するまで
有 給
無 給
最初の5日間
6日目∼1年間
有 給
無 給
また、セクシュアル・ハラスメント防止委員会を中心
進するとともに、全事業所および社外に相談窓口を設
に、セクシュアル・ハラスメント防止の啓発活動を推
け、困ったことがあった場合の相談にあたっています。
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
っており、厚生労働省の取り組みを踏まえ、労使協同
間については賃金・賞与を支給することとしました。
1.49
年度は社内研修に延べ2,900名が参加し、社外で行
正や時間外・休日労働の適正な管理方法
制をさらに拡充するために、2007年4月に育児・介護
1.46
人権の尊重と快適な職場づくり
備に努めています。
11月は「賃金不払残業解消キャンペーン月間」
とな
「時間外・休日労働ガイド」では労働時間法制の改
1.48
健康の確保とともに明るく働きやすい職場環境の整
時間外・休日労働ガイドの配布
ド」を作成し、在職従業員に配布しました。
0.94
1.47
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社外
研修
就業後語学クラス
(英語・中国語)
0.82
1.49
社会的な取り組み
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
海外赴任前後教育
部門別研修
社会的な取り組み
WBCSD Future
Leaders Team 派遣
1.49
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
は継続的に実施し、従業員一人ひとりの絶え間ない
1.50
セクハラ相談窓口
社内:全事業所に相談窓口員を配置(52名)
社外:
「21世紀職業財団セクシュアル・ハラスメント相談窓口」で電話相談を受付
(改定前は育児・介護休業の全期間について賃金・賞与は不支給)
32
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
33
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
2006年度重点実施事項
(1)安全管理体制の強化
工場では現場第一線の作業者の労働災害を撲
します。2007年度からの制度の運用開始に向け
滅するため、新たに当社独自の社内教育制度に
て2006年度は教育を実施しました。
よる「安全作業責任者認定制度」を定めました。 (2)不安全行動の撲滅
工場において所定の安全教育を受けて、工場の
重大な労働災害が発生した工場での安全衛生
当社は労働災害撲滅のため、事業所ライン管理によるトップダウンと職場自主活動のボトムアッ
安全管理者から認定された人だけが安全作業
委員会に、本社の安全担当者や担当部署が参加
プで、従業員と協力会社が一体となリ、危険有害要因を取り除き快適職場を築いていく安全保安
責任者になれることとしました。当社と臨時を含
し、再発防止の徹底を図りました。
衛生活動を組織的に推進しています。
めた協力会社の従業員が対象で、一定期間ごと
安全体制
「安全衛生協力会」を設置しており、危険有害要因の
員会」を開催し、それを統括する本社では「全社安全
指摘、安全衛生活動情報の共有化に取り組んでいま
保安衛生委員会」を設置しています。
ともに労使双方
す。また「太平洋セメント安全保安衛生方針」を定め、
の代表で構成しています。
本社と事業所の「安全保安衛生管理方針」を策定して
さらに各工場においては、協力会社で構成された
います。
に再教育を繰り返します。安全作業責任者は作
転落災害の対策として、
「 安全設計基準」を新た
業の安全衛生を確保するため、作業者の教育・
に1件制定しました。
指導を徹底するとともに、安全作業の指示・命令
労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS *)の活動
● 当社では2002年に運用を開始し、
2003年からはす
べてのセメント工場・鉱山で運用しています。
太平洋セメント 安全保安衛生方針
1.労働災害ゼロを目指し、労使協力の下に安全保安衛生活動を推進する。
2.安全保安衛生関係諸法令を遵守するとともに、事業所で定めた安全保安衛生規程類を整備し従業
または有害性の調査および実施事項の設定を行な
●(社)
セメント協会主催のセメント安全衛生大会で
い、リスクの低減を進めています。また、設計時の
安全研究として、工場のOSHMS活動について発表
安全評価、使用前後の検査制度の充実、安全作業
しています。
標準書の定期的見直し改定作業等を実施し、安全
の向上を進めています。
3.労働安全衛生マネジメントシステムをより発展させ、安全保安衛生水準の維持向上に努める。
4.安全保安衛生活動を推進するため、全社及び事業所安全保安衛生委員会等の安全組織の機能強
化を図るとともに、太平洋グループの労働災害低減活動を進める。
● OSHMSに従ったリスクアセスメントにより危険性
*OSHMS:Occupational Safety and Health Management System
事業者が労働者の協力の下に、連続的かつ継続的な安全管理を自主的に行なうことにより、事業所の労働災害の潜在的な危険
性の低減、および快適職場を促進させる仕組み。厚生労働省がこれに関する指針を定めている。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
員・協力会社の安全保安衛生を確保する。
(3)設備安全化、職場環境整備の推進
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
工場・鉱山・支店の事業所別に「安全(保安)衛生委
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
安全な職場づくり
に抜けがないように進め、労働災害ゼロを目指
■安全保安衛生 管理機構概略
社 長
本社各部門・各カンパニー
残念ながら2006年度においては休業災害が多く発
生し、度数率が上昇しました。また、セメント業界の平
■休業度数率
度数率
(%)
2.50
関係会社
全産業
2.00
を一層強化していきます。
1.50
*度数率=(休業件数/労働延べ時間)×1,000,000
労働百万時間あたりの休業発生頻度を示しています。
*休業件数とは業務による労働災害で1日以上休んだ場合を
1件とします。
1.00
1.78
1.77
1.85
1.57
1.15
1.05
1.05
0.78
当社
0.50
0
業災害が対象です。
02
03
04
■社団法人セメント協会表彰
安 全
衛 生
2006年度スローガン
セメントカンパニー 危険を見つけて設備の改善 みんなでなくそう不安全行動
資源カンパニー
34
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
全員参加で有害・危険要因を排除し、職場の安全保安を確保する
1.07
1.24
*当社工場の従業員と協力会社を含めた、全ての作業者の休
を展開しました。安全と保安のスローガンと重点実施
事項は次の通りです。
1.90
上磯工場
安全優良賞 (連続無災害達成 60万時間)
大船渡工場
安全優良賞 (連続無災害達成 30万時間)
上磯工場
衛生大賞
土佐工場
衛生優良賞 (新患発生率・休業率連続基準達成2年)
05
06 年度
ステークホルダー・ダイアログ
2006年度の「安全保安衛生管理方針」を定め、活動
2.01
1.84
業界
1.24
労働安全衛生の社外からの表彰
安全保安衛生管理方針の策定
1.95
良い
鉱山保安委員会
安全衛生委員会
各鉱山保安委員会
各支店安全衛生委員会
各工場安全衛生委員会
ステークホルダー・ダイアログ
中央研究所安全衛生委員会
均値も上昇しています。今後は労働災害低減の活動
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
全社安全保安衛生委員会
[委員長]技術部担当役員
本社・東京支店・関東支店
安全衛生委員会
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
休業度数率
経営会議
(新患発生率・休業率連続基準達成7年)
■経済産業大臣表彰
保 安
土佐山鉱山
全国鉱山保安表彰 保安実績優良鉱山の部
35
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
メンタルヘルスの継続的な取り組み
ートシステムの周知徹底を継続して行なっています。
衛生法」および厚生労働省の「メンタルヘルス指針」
また、2006年度はセルフケア推進の一環として、階
に基づき、全従業員を対象としたメンタルヘルスチェ
層別研修にメンタルヘルスについての講義を織り込
ックを2005年度より導入しています。年に1回従業員
む一方、職制を対象にラインケアの強化を目的とし
一人ひとりのメンタルヘルスへの関心を高めるととも
た「メンタルヘルスマネジメント研修」を実施しまし
に、太平洋セメント健康保険組合にて契約しているカ
た。今後は若年層を中心としたストレスのセルフコン
当社は100年以上にわたるセメント製品供給を通じて培った品質管理技術により、安全・安心を保
ウンセリングなどをはじめとしたメンタルヘルスサポ
トロール研修についても実施を検討していきます。
証する取り組みを推進するとともに、社会環境とユーザーニーズの変化を先取りし、国際競争力強化、
ユーザーニーズに応える取り組み
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
メンタルヘルスケアの取り組みとしては、
「労働安全
顧客満足度向上につながる新製品・製造技術の研究開発に努めています。
品質管理の強化
石綿(アスベスト)による健康障害について
1.
健康障害の発生状況について
工場名
旧秩父セメント(株)秩父第一工場
[2000年創業停止]
旧秩父セメント(株)秩父第二工場
[現秩父太平洋セメント(株)]
品質方針
(2007年7月31日現在)
労災認定を受けて
現在治療中の方
労災認定を受け死亡した方
石綿使用製品製造期間
24名 (うち中皮腫8名)
源品や廃棄物リサイクル業サービスがあり、下流には
太平洋セメント発足時に以下の「品質方針」を掲げま
生コンクリートやコンクリート二次製品があるサプラ
した。
7名
ユーザーニーズに即した品質設計を追求し、
1961年∼1979年12月
1名 *①
−
1名 *①(うち中皮腫0名)
−
−
1名 *①②(うち中皮腫1名)
−
1947年7月∼1949年3月
−
1名
1945年5月∼1951年4月
27名 *④(うち中皮腫10名)
9名
−
品質保証を確実に行い、顧客満足度の向上を図る。
ISO9001品質マネジメントシステム(QMS)
旧浅野セメント(株)
スレート部大阪工場*③
*① 石綿含有製品の製造に従事していない元従業員の方に、石綿含有製品の使用によると思われる健康障害が発生しました。
*② 石綿新法による適用
*③ 1951年4月アサノスレート(株)に継承、1972年工場閉鎖
*④ 死亡時期:1973年∼2006年
ません。
● 秩父工場で石綿使用製品の製造に携わった方々を対象と
した健康診断を、1993年より毎年実施しています。2007
し全社一体的に運用するQMSに再構築しています。そ
めて2000年版で強化された要求事項である「トップマ
の後、ISO9001-2000年版への対応をしてきましたが、
ネジメントの責任」、
「業務の継続的改善」、
「顧客満足
2004年4月の組織改定に伴い社内カンパニー制が導
度の向上」への取り組みを充実させました。
● 当社の7工場ならびに小野田事務所、
西多摩事務所では、
て、工場勤務経験者を対象とした石綿健康診断を実施す
品質要求事項の明確化
ることにしております。
次回は2008年の実施を予定しています。
営 業
用実態調査と使用禁止を通達しました。
に解体・除去しました。その後順次必要な措置を実施し、
品質要求事項のレビュー
品質要求事項に応じた品質設計
品質要求
● 石綿を含有する部品・資材については、
順次、ノンアスベ
スト品への取り替えを進めています。
試製・評価
技術
サービス
お客様
2006年度中に対応を完了しました。
資材調達
製品
製造部門
技術サービス
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
3.
石綿含有製品の使用禁止
● 飛散の可能性など緊急性を要する箇所については直ち
研究・開発部門
営業部門
2005年度より3年ごとに各工場O B会の理解と協力を得
年は7月に実施し37名の方が受診されました。
● 2005年7月に、
全事業所およびグループ各社に、石綿使
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
く、近隣住民の方を対象とした健康診断は実施しており
入されたのを契機に、QMS組織体を見直すとともに改
■品質マネジメントシステム
2.
健康診断の実施について
● これまで近隣住民の方からの健康異常のお申し出はな
工場ごとに構築していたQMSを1999年4月に統合
社会的な取り組み
社会的な取り組み
1名 *①(うち中皮腫1名)
大分工場(佐伯)
計
イチェーンの中で事業を展開しています。1998年の
1936年8月∼1979年12月
藤原工場
旧小野田セメント(株)小野田工場
[現小野田事務所]
当社はセメントを主力製品として、上流に骨材等資
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
当社における石綿(アスベスト)に関わる健康障害等の状況は以下の通りです。
●製造条件管理
流 通
●工程内での品質つくり込み
出荷検査
36
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
●工程内検査
受入検査
37
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
研究開発
ユーザーへの技術支援
る性能が高度化し、コンクリートの高性能化・多機能
なコースと、最新のコンクリート事情や診断技術を習
化の進歩は目覚しいものがあります。また、国際化に
得する上級者コースに分けて実施し、一層の技術力
伴う社会ニーズに対応すべく、関連する規格・基準類
向上に繋がるよう、少人数制(各コースとも10数名で
の改正は頻繁に行なわれており、コンクリート分野を
開催し、年間200名程度が受講)で開催しています。ま
取り巻く技術的環境は目まぐるしく変化することが予
た、最近はコンクリート業界に期待される社会的責任
想されます。このような状況のもと、生コンクリート、
がますます大きくなっていることから、コンプライアン
コンクリート二次製品メーカーをはじめとするセメン
ス意識の向上を目的とした講演を研修会に取り入れ
トユーザーの皆様からは、技術力の維持・向上に向
るなど、従来の技術研修会にはなかった取り組みを
けての支援や新技術情報の提供などのニーズがあり
行なっています。
ます。
そのほか、コンクリート技士・主任技士の資格取得
このような声に応えるべく、当社では特殊案件にか
の支援として通信教育講座を開講しています。通信教
かわるコンクリートの技術支援、規格改正・新技術に
育講座は毎年約1,000人が受講し、そのフォローアッ
関するタイムリーな情報発信のほか、各種のコンク
プ教育として試験直前には模擬試験を含めた受験対
リート技術研修会を開催しています。技術研修会は、
策講習会を各地で開催しています。
当社の研究開発はRTD(Research & Technological
Development)部門が主に担当しています。RTD部
門は開発推進部、技術部、中央研究所、知的財産部か
らなり、実用運転されている装置や事業化した商品
への技術支援、さらなる高機能化・高付加価値化のた
めの開発を各カンパニーとともに進めています。
また、RTD部門の大きな使命に、次世代技術の創造
があります。開発推進部がカンパニーの将来展望を
集約し、指針を研究・技術開発戦略にまとめ、それに
基づき中央研究所や技術部は、次世代技術開発に取
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
セメント・コンクリートの基本的なことを学ぶ基礎的
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
近年、様々な用途に応じてコンクリートに要求され
り組んでいます。
TSDS(Taiheiyo Sludge Drying System)
セメント工場では多くの廃棄物を受け入れ社会に
乾燥汚泥
+乾燥排ガス
貢献しています。さらに廃棄物の処理量を増加できる
ように各種技術開発を進めています。
最近開発したTSDSは下水汚泥を高効率で乾燥し、
す。下水汚泥は水分が多く、臭気があります。臭気を
社会的な取り組み
社会的な取り組み
セメントキルンで原燃料として利用するシステムで
下水汚泥
投入口
分解するためにセメントキルンの高温部に直接投入
すると、下水汚泥の水分の影響で熱量損失が大きくな
ります。この課題を解決するために、熱源としてセメ
技術研修会(講義風景)
技術研修会(実習風景)
乾燥熱源
ガス入口
ントキルンの廃熱を利用した高効率乾燥機によって
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
下水汚泥の臭気を分解すると同時に乾燥するシステ
ムを開発し、現在各工場で稼動しています。
当社製造委託製品の品質問題について
TMPバーナー(Taiheiyo Multi-purpose Burner)
1.対象製品
売した、麻生ラファージュセメント(株)(以下麻生社)からの
製品名
普通ポルトランドセメント
高炉セメントB種
ジオセット
(固化材)
OEM品の一部につき、通常よりも高い濃度のクロムを含有
していたことが判明しました。
ステークホルダー・ダイアログ
当該製品について、様々な観点から検証した結果、地盤
出荷時期
2月6日∼3月29日
2月27日∼3月11日
2月6日∼3月29日
出荷数量*
605t
1,558t
2,355t
品質の良いセメントを製造するには高温の熱源が
必要で、主に化石燃料をバーナー(燃焼器)で燃焼し
ています。可燃性廃棄物を利用して化石燃料を削減
*地盤改良用として販売した数量
することと、NOx発生量を抑制することの2つの側面
に定める基準を超過する六価クロムが溶出する可能性を
● 製造場所:麻生社
から新型のTMPバーナーを開発しました。
否定できないことが判明しました。なお、生コンクリート・コ
● 出荷地域:福岡、
佐賀、熊本、大分、長崎、宮崎、山口、島根各県
ンクリート製品等に使用した場合は、問題がないと判断し
● 販売支店:九州支店、
中国支店
改良工事に用いた場合、工事後の改良土から環境基本法
田川工場(福岡県)
ステークホルダー・ダイアログ
当社が2007年2月から3月にかけて九州地区を中心に販
熱流体シミュレーションを利用して、バーナーの構
造やフレーム(炎)の長さや温度分布などを詳細に解
ております。
お客様ならびに関係する皆様には多大なるご迷惑とご
2.再発防止策
心配をおかけすることとなり、深くお詫び申し上げます。 麻生社に対して、品質管理の徹底を要請しました。当面
本件の概要は次の通りです。
の受入品については、全品種について毎日品質確認を実施
しております。品質確認の方法は、当社サービスステーショ
析することによって、当初の目的が達成できました。
TMPバーナーは太平洋エンジニアリング(株)に技術
導出し、国内外のセメント工場で利用されています。
従来のバーナー
ンでの抜取り試験および麻生社からの日々の試験結果報告
により行なっております。
本件は2007年8月6日付で公表しております。詳細は当社ホームペー
ジ、ニュースリリースをご参照ください。
38
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
TMPバーナー
39
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
コンクリートの塩分拡散
鉄筋コンクリートは、鉄筋が錆びるとその強度が著
しく低下します。アルカリ性であるコンクリートは鉄
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
コミュニケーション活動
筋を錆びにくくする機能を持ちますが、海水にさらさ
れるなど塩分の多い環境におかれたコンクリートは
塩分が非常にゆっくりとコンクリート中に浸透してい
くため、その塩分が鉄筋の強度に影響を与えます。
し
情報開示方針・情報開示規程の制定
たがって、塩分の拡散現象を正しく理解することは構
近年、会社を取り巻く事業環境は時々刻々と変化
2006年8月1日に、情報開示の適法性・適正性を確
クリートは化学的にも物理的にも複雑な材料である
し、企業活動も複雑化しています。そのような中、会
保することを目的として、新たに「情報開示規程」を制
ために、その把握は極めて困難です。
社、特に上場会社は経営に関する透明性を、投資家
定しました。情報開示体制とその役割・責任など情報
現在、海外の大学と協力しながら、塩分拡散のメカ
をはじめとしたステークホルダーから強く求められて
開示に関する基本事項を定め、さらに開示申請から
ニズムの解明や分解能の高い測定技術に関する研究
います。
発表までの一連の手続きを定めています。
を行なっており、完成度の高い寿命予測技術を目指
当社でも、適切な情報開示によりステークホルダー
また、2007年5月1日には、当社の情報開示に対す
しています。
とのコミュニケーションを促進する旨を、かねてより
る方針・考え方を示した「情報開示方針」を制定し、ス
「CSR要綱」や「コンプライアンス基本方針」に掲げて
テークホルダーとの信頼関係を醸成する一助とすべ
います。
く、当社ホームページ上に公開しています。
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
造物の寿命予測をする上で非常に重要ですが、コン
ICタグの構造物への応用
ICタグは店舗での盗難防止や駅の改札などに多く
IR活動
クリート構造物の維持管理や施工の信頼性向上に応
ICタグ
用する研究をしています。ICタグに様々なセンサーを
当社では、株主・投資家の皆様から当社グループの
ミーティングは年々件数が増えており、2006年度は
つけ、センサーが応答するとI Cタグから信号を発信
企業価値について適正な判断をしていただくため、
199回実施しました。
この他にも生産現場である工場・
し、その信号を外部から読み取る「センサー機能つき
分かりやすい情報の開示に努めています。
鉱山の見学会や、
ICタグシステム」を開発しています。
機関投資家の方を対象とした年2回の決算説明会
特定のテーマに
では、社長を含む経営陣が自ら経営方針や中長期戦
つ いてのスモー
という筒の中にグラウト材と呼ばれる特殊セメントペ
略などを直接伝える機会と位置付けています。株主・
ルミーティングを
ーストを注入すると、充填により空気が押し出された
投資家の皆様のご要望に応じ随時開催している個別
開催しています。
シース管
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
その一例が「グラウト充填センサー」です。シース管
ことを感知して、センサーが信号を送ることによって、
内 容
充填が確実に行なわれたことを確認できます。
当社はセメントをつくるだけでなく、その用途であ
回 数
決算説明会
2回
会社施設見学会
5回
るコンクリートにも目を向けた最新技術の研究を行
個別ミーティング
なっています。
スモールミーティング
社会的な取り組み
社会的な取り組み
当社をご理解いただくためのコミュニケーション活動
見られるようになりました。当社ではこの技術をコン
199回
1回
機関投資家の工場見学会
多くの方が集まる展示会は、当社グループの事業
業祭等に出展しています。2006年度に出展した主な
を知っていただく良い機会と捉えています。環境関連
展示会は以下の通りです。
の展示会をはじめ、工場の地元などで開催される産
日 付
5/20∼5/21
7/8∼7/9
2006中国国際循環経済博覧会
都市ごみのセメント資源化システム
コンクリートテクノプラザ2006
シリカフュームプレミックスセメント、低放射化コンクリート、ダクタル
環境広場さっぽろ2006
都市ごみのセメント資源化システム
8/4∼8/6
11/30∼12/2
12/6∼12/8
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
出展内容
工場の取り組み
7/11∼7/13
8/29∼9/1
40
展示会名
くまがやエコライフフェア
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
展示会への出展
ウェステック2006
都市ごみのセメント資源化システム、電力関連事業
建設技術展2006近畿
コンクリートソリューション、
グループ会社事業紹介
セミコン・ジャパン2006
次世代対応ポーラスチャック、新MMC、超高機能UCコートほか
41
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
各種情報開示ツール
住民説明会の開催
皆様に当社グループの事業への理解を深めてい
心がけています。今後さらなる内容の充実を目指し
新規に事業を開始する際や、鉱区の変更があると
す。また、都市ごみの受け入れ状況や、排ガスの測定
ただけるよう、様々なツールを活用して情報発信を
ます。
きには、地域の方々を対象に説明会を開催していま
値なども報告しています。
発行頻度
内 容
毎月
社内コミュニケーションツール。カンパニープレジデントインタビューなどによる
経営方針やグループ会社の紹介、社員の声を掲載しています。社内のみならず地
域社会、マスメディアにも配布しています。
技術情報誌「CEM S」
年4回
セメント・コンクリート、建材、環境関連の技術動向の解説、時流に即した研究開
発、最新施工事例を紹介しています。主に当社ユーザーへ配布しています。
アニュアルレポート
年1回
主に海外の投資家向けIRツールです。当社の財務状況を当該年度のトピックスと
ともに掲載しています。日本語版も制作しています。
随時更新
ニュースリリースや製品・サービスの情報掲載はもとより、研究開発部門の情報や採
用情報も掲示しています。
「セメント工場バーチャルツアー」ではセメントができるま
でを分かりやすく説明しています。 URL http://www.taiheiyo-cement.co.jp
社内報「Taiheiyo」
ホームページ
環境モニター制度
工場近隣に住む当社従業員やO B、地域住民の方
ニターをお願いしています。これにより、工場周辺の
に、環境情報を定期ならびに随時に報告いただくモ
環境情報を迅速に把握し対応しています。
地域行事への参加
地域で開催される祭りや行事には従業員が参加す
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
るなど、地域の方々との交流を深めています。また、
地元の子供たちを対象とした野球大会の開催や、地
元自治体が開催するイベントへの出展など、各種行
国内での地域社会コミュニケーション
事へ積極的に参加しています。
当社は2002年に定めた行動指針の中で「広く社会
コミュニティの一員として、地域に根ざした取り組み
とのコミュニケーションを行います」
と謳っています。
を中心に各事業所で様々な活動をしています。
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
ツール
お祭りへの参加 大分工場
消防活動に貢献
社有地・施設の提供
社会的な取り組み
社会的な取り組み
各事業所には消防団に所属している従業員が多数
講堂や体育館、
グラウンド、テニスコート、ゲートボ
おり、非常時には地域の消火活動に協力しています。
ール場などを地域の方々に開放しており、ソフトボー
岩手県の大船渡工場は、消防団活動に参加しやすい
ルや少年サッカーの練習などにご利用いただいてい
就業規則の整備や、日頃の消防行政への協力が認め
ます。また、地域行事が開催される際は、駐車場とし
られ、
「総務省消防庁消防団協力事業所」として全国
て社有地を提供しています。
で第一号の認定事業所になりました。今回認定され
原工場は総務省消防庁より
「消防団地域活動表彰」の
表示証交付式にて 大船渡工場
ゲートボール場の開放 藤原工場
「事業所表彰」を受けました。
インターンの受け入れ
清掃活動
当社グループ各社では中学生、高校生のインター
事業所周辺を中心に従業員が定期的に清掃活動
ンを受け入れ、就業体験の場を提供しています。ま
を行なっています。また自治体等の企画による清掃
た、中央研究所では外部機関を通じて、海外の大学か
活動にも参加しています。
ら学生を受け入れています。
中学生の職場体験 埼玉工場
工場・鉱山などの見学
サイトレポートの発行
地域の主要産業として、学童、学生を中心に毎年
たくさんの見学者を受け入れています。また、廃棄
埼玉県では一定規模以上の事業者に対し「彩の国
目に加えて、受け入れ廃棄物・副産物の種類や使用
物の受け入れ増加に伴い、官庁、自治体、企業の方
エコアップ宣言」
という環境負荷低減計画の作成と公
量、定期排ガス測定値、環境負荷低減の取り組みなど
の見学も増えています。2006年度は5,000人を超え
表を義務付けています。埼玉県にある熊谷工場、埼玉
を自主的に公開しています。
る方々が、セメント工場、鉱山、生コン工場の見学に
工場と、子会社の秩父太平洋セメント(株)では必須項
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
北斗市クリーン作戦に参加 上磯工場
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
た事業所は全国で2カ所だけです。また三重県の藤
みえました。
地域の方々をお招きした工場参観デイ 熊谷工場
42
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
43
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
海外での地域社会コミュニケーション活動
活動として、環境保全や社会貢献に日頃より取り組
洋地域の5カ国で、セメント生産拠点として10工場
んでいます。ここでは主なセメント生産拠点の概況
が稼働しています。各拠点では、地域社会に根付く
を紹介します。
中国
主な事業所
アメリカ
操業開始
所在地
従業員数
中華人民共和国 北京市
セメント生産能力
単位:千t
太平洋水泥(中国)投資有限公司
1996年2月
11名
̶
大連小野田水泥有限公司
1992年7月
遼寧省大連市
381名
1,370
秦皇島浅野水泥有限公司
1997年7月
河北省秦皇島市
286名
1,380
江南小野田水泥有限公司
1996年6月
江蘇省南京市
505名
1,370
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
当社グループは「太平洋」の名に相応しく、環太平
*太平洋水泥(中国)投資有限公司は中国における生コン事業の持株会社です。
主な事業所
所在地
従業員数
太平洋セメントU.S.A.
1986年10月
アメリカ合衆国 カリフォルニア州
4名
カリフォルニア・ポルトランド・セメント
1990年10月
カリフォルニア州
2,080名
̶
3,618
エリア代表者メッセージ
太平洋水泥(中国)投資有限公司 董事長 兼 総経理 布重 博邦
(モハベ工場)
カリフォルニア州 (143名)
(1,422)
2006年度、太平洋水泥(中国)投資有限公司は中国日本商会と日中友好協会の共同主催
(コルトン工場)
カリフォルニア州 (132名)
(783)
による社会貢献活動に積極的に参加しました。2005年春に起きた反日デモは、日本への理
(リリトー工場)
アリゾナ州
(1,413)
解を深める努力が足りなかったことも一因かもしれません。本活動はその反省に立ち、
『走
(159名)
*太平洋セメントU.S.A.は米国事業の持株会社です。
*カリフォルニア・ポルトランド・セメントの従業員数は連結合計人数です。
近日企、感受日本』(日本企業に触れ、日本を感じよう)をモットーに、日中の安定した友好
関係の構築のためには、様々な世代に日本社会、経済などの理解を深めることが重要 と日
エリア代表者メッセージ
太平洋セメントU.S.A. 取締役社長 菊池 謙
太平洋セメントの米国事業は、北はアラスカから南はアリゾナまで、110年以上の歴史を
系企業が立ち上がり結成し、現地マスコミにも大きく取り上げられました。
個々の活動は植樹をはじめ、各種スポーツ大会の協賛、科学教育活動への寄付等小さなことかも知れませんが、
こうした地道な活動が、地域社会との相互理解を深める上で、最も重要かつ必要不可欠な交流だと思います。
また先日、日中経済協会の依頼で『日中セメント省エネ・環境セミナー』を国内2カ所で開催し、政府や関連業
事業所で構成されています。
界、研究機関が多数参加し、大好評を得ました。
どの地域でどの事業を行なうにしても、環境(自然)に配慮し事業の推進に対して地域
特に『セメント設備における産廃物・都市ごみ処理』をテーマにした、環境技術導入の必要性を深めるための説
(社会)の理解を得るということは欠くことのできない共通の取り組みです。これは「共生
明会である環境セミナーを、政府機関や地域住民、ステークホルダーに対し開催できたことは重要な社会貢献活
動の一つだと感じました。今後も機会あるごとに積極的にアピールしたいと考えております。
カリフォルニア・ポルトランド・セメント社は2007年春、使用エネルギー効率化への地道な取り組みが認められ
現在、中国政府からセメント業界への要望事項は、循環型社会への構造転換であります。当社は日本で培った
て米国連邦環境保護局から3年連続でエナジースター賞を授与されました。また、電力会社と契約してセメント工
廃棄物処理等の環境技術、即ち『静脈技術』を活用し、循環型社会への構造転換の分野で、さらなる社会貢献がで
場の所有地内に風力発電設備を設置してその電力を利用するなど、少しでも環境への負荷の少ない事業運営を
きると確信しております。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
誇るセメント工場から新設の生コン工場までと、それぞれ地域・歴史・規模の異なる多数の
への努力」
という言葉で言い表せるかもしれません。
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
操業開始
セメント生産能力
単位:千t
していく方法はないかと知恵を絞っています。
この努力に終わりはありません。
ったオープンハウスを実施したり、生コン工場では地域の要請に基づいて介護施設の一部に生コンを寄付した
り、また療養施設の児童をマリナーズ戦観戦に招待したりと、それぞれができる範囲・やり方で、地域と共に生きる
努力を行なっています。
太平洋セメントが米国に進出して今年で20年になります。
これからも自然と社会と共生できる会社であり続け
たいと考えています。
EPA(環境保護局)
より
「エナジースターパートナー賞」を3年連続受賞
環境保全に対する取り組み
秦皇島浅野水泥有限公司では、鉱山および工場構内の緑化を
推進しており、2006年度は計5,000本以上の植樹を実施しました。
2004年
また貨車荷卸場では地域環境への配慮から防塵ネットを新設しま
した。
江南小野田水泥有限公司でも鉱山への植樹による緑化をはじ
め、景観対策、騒音対策等に注力しています。
現在
「Energy Star」
とはEPAが運営する環境プログラムであり、エネ
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
地域との関係では、セメント工場では地域や取引先の方々を場内にお招きして当社の事業を理解して頂くとい
ルギー効率の向上により地球温暖化ガスの削減を図る企業・団体
江南小野田水泥 茨山鉱山の緑化
カリフォルニア・ポルトランド・セメント社はセメント業界での省エ
ネ活動促進に大きく貢献したことが認められ、3年連続で「エナジー
スターパートナー賞」を受賞しました。CPC社の環境対策は一過性
のものではなく、
「継続する事に意義がある」
と念頭に置いており、
今後も連続して受賞できるよう、努力していく方針です。
PCA(米国セメント協会)
「エネルギー効率改善賞」受賞
地域社会とのコミュニケーション
秦皇島浅野水泥有限公司、大連小野田水泥有限公司、江南小野田水泥有限公司のセメント製造販売3社とも
に、各地域の近隣住民を積極的に工場見学に招き、工場の取り組みなどについて理解を深めてもらっています。
また、秦皇島浅野水泥有限公司、江南小野田水泥有限公司では地元大学生の業務実習を受け入れました。
地域社会との相互理解は、一見地道な活動の積み重ねですが、
この小さな活動がお互いの心を近づけるため
には重要な方法だと考えています。
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
を支援するのが主な目的です。現在、登録団体数は約8,000を超え、
カリフォルニア・ポルトランド・セメントのモハベ工場が「エネルギー効率改善賞」を受賞(2度目)
しました。
これ
はPCAがEPAの運営するエナジースタープログラムと連携して取り組んでいる環境保護活動の一つで、温暖化ガ
スの削減に寄与したことが認められたことにより、今回の受賞に至りました。ちなみに同賞が設立された6年前か
ら現在までで、同カテゴリーで2度の受賞を果たした工場は同工場が初という快挙です。
この他、NRMCA(全米生
コン協会)の「環境優秀賞」を生コン2工場で受賞する等、
グループ全体での取り組みが各カテゴリーで評価され
ています。
44
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
45
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
フィリピン
ベトナム
操業開始
太平洋セメントフィリピンズ
所在地
2000年10月
フィリピン共和国 セブ市
エリア代表者メッセージ
従業員数
セメント生産能力
単位:千t
主な事業所
操業開始
所在地
従業員数
セメント生産能力
単位:千t
349名
1,008
ギソンセメントコーポレーション
2000年7月
ベトナム社会主義共和国 タインホア省
465名
2,150
太平洋セメントフィリピンズ 取締役社長 小松 俊男
エリア代表者メッセージ
ギソンセメントコーポレーション 取締役社長 森 紀雄
ベトナムは日本の九州と秋田県を除いた面積に相当する30万km 2の国土を持ち、8,400
当社はフィリピンのセブ島でセメントを製造販売している会社であります。
万人が暮らし、人口の60%が35歳以下という若さに溢れた国です。経済は1986年のドイモ
イ政策以降高い成長をしてきましたが、1997年のアジア地域の通貨、経済危機の影響や投
日々の事業を運営する中で近隣と価値観の違い、文化の違い、言葉の壁で種々の行き違
資環境整備の遅れによって一時鈍化しました。2000年以降回復基調となり、以後7%∼8%
いはあるものの、熱意と誠意でなんとかこれまで地元の理解・協力を得てきました。
の安定した経済成長を継続しています。
防音・防塵対策はもとより、近隣との緩衝帯作りの土地購入なども実施してまいりました
ギソンセメントの工場はハノイ市から南へ約220kmのタインホア省ギソン地区にあり、
が、それでも十分とはいえず、環境整備や地域貢献には地元・行政も参加した定期委員会を開催し、植林事業をは
2000年7月よりベトナム国家の定める環境基準を遵守し操業しています。高品質のセメントを安定して供給する
じめとした5年単位の地域対策プログラムを作成し実行中です。
基本方針が短期間でマーケットの信頼を得て、ベトナムにおけるプレゼンスの維持、拡大を図るべく2007年4月第
リサイクル事業についてはまだ日本ほどの条件整備がなされていませんが、現在ECC(環境保全証明)内容の変
2生産ラインの増設に着手しました。
2005年にはISO14001の認証を取得し環境保全活動に取り組み、また地域と共存する工場を目指し、工場・鉱
山地域住民との交流会を通じ親交を深め、操業への理解をいただくとともに、奨学金制度を確立し社会貢献にも
日です。
努めています。
ベトナムの環境問題はまだ深刻度は低いものの、近年の経済活動の活発化、都市への集中、生活の近代化によ
り廃棄物問題は重要な環境問題になると予想されます。最近はベトナムに進出した日系企業から廃棄物処理依
工場および粘土鉱山周辺の12バランガイ(フィリピンの最小行政区分/日本の町・村に相当)で中学進学を希
望する子供に在学期間中の4年間、奨学金を支給しました(2年目)。2006年度は、23名の子供たちがこの制度を
頼もあり、また工場に近接して石炭火力発電所の建設計画も進んでおり、近い将来には当社においてもリサイク
ル資源活用が始まるものと予想されます。環境・安全・品質面からの十分な検討を行ないながら、ベトナムにおけ
る環境対策の先導役、牽引役として責任ある積極的な対応をしていく所存です。
利用しています。 社会的な取り組み
社会的な取り組み
更を所轄官庁に申請中で、許可取得後フィリピンの廃棄物問題にも地道に取り組んでいきたいと思っています。
椰子の実しげる白い砂浜そしてその眼前に広がる青い海原を見るにつけ、環境保全の重要性を再認識する毎
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
2 0 0 0 年 度 に太 平 洋セメントが 事 業 買 収し今日に至っておりますが、当 社 の 社 是 は
「Building Better Communities」
(より良き社会の構築)です。
地域との共存
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
主な事業所
また2005年度より継続しているFeeding Program(小学校未就学の栄養失調児童に対する食料支援)を実
施したほか、メディカルミッション(無料診療)および常備薬の無料配布を実施しました。今後さらに地域社会に
地域社会とともに
共働きが多い地域性を考慮し2004年に社宅内に開設したギソン幼稚園には、現在従業員の子供たち50名程
2006年6月のフィリピン環境資源省の緑化推進月間には行事の一環として工場敷地、自社土地に植樹をしま
した。
度が通園しています。
また地域住民の当社への理解を深めてもらうため、そして将来を担う子供達に日本の最新技術を知ってもらう
目的で、地元の6つの小学校の生徒を招き、見学会を実施しました。各校とも先生を含め、25∼30名程度が来場し
ました。
奨学金制度を利用している子供たち
幼稚園の園児たち
災害支援活動
レイテ島で起きた地滑り災害、ギマラス島沖合いで起きたタンカー事故、ルソン島ビコール地区で起きた大
型台風による被害など、各災害事故の被災者に対し、食料・衣類等の救援物資の寄付を行ないました。
46
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
小学生の工場見学
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
Feeding Programの実施
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
貢献できるよう2006年度からの継続事項に加え、地元学校への施設・備品の寄付、地元住民に対する生計手段
(Livelihood)の指導・援助などを強化していく予定です。
47
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
■様々なコンクリートの使われ方
社会を支えるセメント・コンクリート … P.48
廃棄物のリサイクル ……………… P.50
構造物の長寿命化・軽量化 ……… P.56
トンネル
快適な生活環境づくり …………… P.56
コンクリートをノズルで
噴射して吹きつける吹
き付けコンクリートが使
用され、すみやかに施工
面が保護されます。
河川護岸
法 面
セメントは社会資本整備に欠かせない建設資材の一つで、そのほとんどが砂・砂利・水を加えて
練り混ぜた「コンクリート」
として使用されます。コンクリートは、住宅・ビルなどの居住空間のほか、
道路、鉄道、空港施設やダム、上下水道設備の建設など様々な用途に使用されており、私たちのラ
イフラインを支える重要な資材となっています。
コンクリートがこれほど普及してきた理由は、
「容易
供給が安定した経済的な資材であるためといえます。
日本でセメントが使用されたのは、江戸幕府末期
ト会社(小野田セメント・現当社)が設立されるなど、
の1861年に長崎製鉄所の建設の際、煉瓦の接着に輸
各地でセメント工場が建設されるようになりました。
入セメントが用いられたのが最初であると考えられ
セメントの主原料である石灰石、けい石、粘土などが
ています。
しばらくはこのように輸入セメントが使用
国内に豊富であったことは、今日これほどセメント・コ
されていましたが、1871年(明治4年)に横須賀製鉄所
ンクリートが私たちの暮らしに密接に関わっているこ
とと無関係ではないでしょう。
メント費用が巨額であったことからセメントの国産化
1949年(昭和24年)に東京に日本初の生コン工場
が急務であると考えられるようになりました。また、翌
が誕生して以降、戦災復興、その後の高度経済成長期
年の1872年に銀座・京橋・築地一帯に大規模な火災
にかけ、セメント・コンクリートは急速に普及していき
が発生し、防火建築の普及が求められたことも国内
ました。新技術・工法の開発に相まって、セメント・コ
におけるセメント製造の気運が高まった理由といわ
ンクリートも高品質・高機能・多機能化され、時代の
れています。
ニーズに応じてきました。超高層建築物のより一層の
そして1875年(明治8年)、東京・深川に官営で国内
高層化、部材のスリム化・長スパン化を可能にした超
初めてのセメント工場(後の日本セメント・現当社)が
高強度コンクリートや、エコセメントなどリサイクル
建設され、輸入品に比べてほとんど遜色のない品質
資源を活用した環境配慮型コンクリートなどもその
のセメントが製造されるようになりました。その後、
一例として挙げられます。
高層建築物
建築物の高層化に伴い、高強度・超高強度コンク
リートなどが使用されるケースが増えています。
また、施工期間・労力を縮小するため、あらかじ
めコンクリート製品工場で製造されたカーテン
ウォールなどのプレキャスト製品や、軽量コンク
リートが使用される場合もあります。
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
(後に横須賀造船所と改称)の工事に使用されたセ
橋 梁
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
に自由な形状のものをつくることができる」
「圧縮強度が大きい」
「耐久性に優れる」利点がある上、
コンクリートの曲げ強度を改善したプレス
トレストコンクリートや、施工性を向上させ
るため高流動コンクリートなどが用いられ
ています。また、基礎部分には水の中でも
施工が可能な水中不分離性のコンクリー
トなどが使用されることがあります。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
社会を支えるセメント・コンクリート
空隙をもったコンクリートに培
土を充填して、緑化を可能と
した 環 境 に 配 慮したコンク
リートが使用されます。緑化コ
ンクリートは河川護岸のほか、
屋上緑化などヒートアイラン
ド対策に期待されています。
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
目的により、吹き付けコンク
リートやあらかじめ製造され
たプレキャストコンクリート製
のセグメントが使用されます。
コンクリートのひび割れを抑
制するため、発熱の少ない
セメントを使用した硬練りコ
ンクリートが使用されます。
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
ダム
1881年(明治14年)山口県厚狭郡に民間初のセメン
48
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
49
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
●製鉄会社
シウム・生石灰は、精錬後にスラグ・鉄さいなどの副
石中に含まれる不純物を除く精錬工程があります。当
産物となりますが、当社ではそれらをセメント原料や
社はこの精錬工程で使用される炭酸カルシウムや生
混合材として使用しています。
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
廃棄物のリサイクル
製鉄会社では、鉄鉱石から鉄をつくる過程で、鉄鉱
石灰を精錬材として供給しています。また、炭酸カル
セメント資源化システム
炭酸カルシウム
炭酸カルシウム、生石灰
セメント製造工程と利用廃棄物等
火力発電所
製鉄所
石 膏
てリサイクルする「セメント資源化システム」は、最終
他産業から排出された副産物を安全かつ大量に再資
処分場の延命効果だけでなく、天然資源の枯渇防止
源化することが可能です。廃棄物・副産物を資源とし
やCO2などの大気への排出物の低減に寄与します。
原料調合・粉砕工程
焼成工程
仕上工程
出 荷
石 灰 石・粘 土・鉄 原 料 等 を
調 合・乾 燥し、原 料ミル で
粉砕します。
補助燃料装置で予熱した後、
ロータリーキルンで焼成し
ます。その後急冷し、クリン
カという半製品ができます。
クリンカに少量の石膏を添
加し、仕 上ミル で 粉 砕して
セメントが完成します。
こうしてつくられたセメント
は、船・トラック・貨車で出荷
されます。
スラグ、鉄さい、高炉ダスト等
石炭灰
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
セメント製造プロセスでは、様々な種類の廃棄物や
セメント工場
廃棄物・副産物使用量の拡大
石灰石
粘土類
仕上ミル
トラック
原料ミル
2006年度に社内外から受け入れ、セメント原燃料
セメント協 会 で は 、2 0 1 0 年 度 の 使 用 原 単 位 を
として使用した廃棄物・副産物は757万トンで、前年
400kg/t-セメントとする努力目標を掲げていますが、
度に比べ3%増加しました。セメント1トンあたりの廃
当社としてもこの目標達成に向け努力をしています。
棄物・副産物の使用原単位は367kg/t-セメントとな
2006年度は、建設廃材や建設発生土の使用量が大
り、4%増加しました。
きく増えています。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
タンカー
ロータリーキルン
各種原料
貨車
■セメント工場における廃棄物・副産物の使用量・原単位
使用量(t)
利用廃棄物・副産物
〔原料〕
〔原料〕
〔石膏〕
高炉スラグ、石炭灰、汚泥ス
ボタ、廃白土、下水汚泥
排脱石膏、化学副産石膏
ラッジ、非鉄鉱さい、製鋼ス 〔燃料〕
〔混合材〕
ラグ、ボタ、鋳物砂等
廃油、廃プラスチック、廃タ
スラグ粉、フライアッシュ
イヤ 、廃 パ チンコ 台 、R D F
(都市ごみ)、再生油
産業系
廃棄物・
副産物
当社は、セメント資源化システムを通じて多くの産
業とつながりを持ち、結合体(クラスタ)を形成して資
05年度
06年度
78,058
70,072
66,307
3.9
3.3
3.2
再生油※
90,837
70,186
79,287
4.5
3.3
3.8
1,935
3,184
3,490
0.1
0.2
0.2
廃タイヤ※
77,506
65,461
51,507
3.8
3.1
2.5
高炉スラグ
1,316,320
1,313,685
1,258,346
65.0
62.6
60.9
転炉スラグ
127,549
65,941
108,327
6.3
3.1
5.2
非鉄鉱さい
381,749
379,287
345,052
18.9
18.1
16.7
鋳物砂
184,156
200,921
236,779
9.1
9.6
11.5
未燃灰、ばいじん、ダスト
399,855
407,840
324,031
19.7
19.4
15.7
102.4
石炭灰(含むJIS灰)
2,064,738
2,217,391
2,114,838
102.0
105.7
415,601
385,143
444,827
20.5
18.4
21.5
副産石膏
671,194
706,377
709,051
33.1
33.7
34.3
6.4
建設廃材
16,113
25,648
132,522
0.8
1.2
木くず※
118,147
125,727
125,374
5.8
6.0
6.1
建設発生土
523,321
747,271
909,639
25.8
35.6
44.0
源の循環に努めています。他産業とのつながりの代
廃プラスチック※
80,575
81,985
87,257
4.0
3.9
4.2
表例は、電力会社や製鉄会社との関係です。
その他(原料系)
87,494
120,298
108,757
4.3
5.7
5.3
●電力会社
小計
石炭火力発電所では、石炭を燃やした後に大量の
いますが、当社はこの装置で排煙脱硫材として使用さ
上・下水汚泥+下水汚泥焼却灰
石炭灰が発生しますが、当社はこの石炭灰を引き取
れる炭酸カルシウムを納入しています。さらに、排煙
り、セメント原料である粘土の代替として使用してい
脱硫材は硫黄酸化物と反応して石膏になりますが、
こ
都市ごみ焼却灰
ます。また、石炭を燃やすと有害な硫黄酸化物が発生
の石膏も石炭灰と同様にセメント原料として有効活
するため、火力発電所では排煙脱硫装置を設置して
用しています。
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
04年度
汚泥、スラッジ
その他(燃料系)※
50
06年度
生活系
廃棄物
RDF※
その他一般廃棄物
小計
廃棄物等合計
うち 原料系
うち 燃料系(※印)
82,246
69,317
66,120
4.1
3.3
3.2
6,717,393
7,055,734
7,171,511
331.7
336.2
347.2
58,959
58,569
60,842
2.9
2.8
2.9
203,679
246,988
318,119
10.1
11.8
15.4
5,913
6,731
5,964
0.3
0.3
0.3
14,836
15,507
15,996
0.7
0.7
0.8
283,387
327,796
400,921
14.0
15.6
19.4
7,000,780
7,383,530
7,572,432
345.7
351.8
366.6
6,467,499
6,894,050
7,090,617
319.4
328.5
343.3
533,282
489,479
481,815
26.3
23.3
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
資源循環を通じた社会システム(産業クラスタ)の形成
原単位(kg/t-セメント)
廃油※
廃白土
05年度
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
04年度
23.3
※印は燃料系
51
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
セメント中の微量成分
昨今、あらゆる製品に環境安全性が求められてお
都市ごみセメント資源化システム
■普通ポルトランドセメントの微量成分含有量
り、セメントもその例外ではありません。天然資源の
代替として廃棄物などをセメント原燃料に使用する
性についてご質問をいただくようになりました。当社
では、廃棄物等の活用技術の開発や以下に示す厳密
な品質管理体制の構築により、製品の品質および安
全性は十分に確保しています。
廃棄物の新規受け入れにあたっては発生元情報、
化学成分、試験使用結果に基づく三段階の受け入れ
に、石綿を含む廃棄物は受け入れないなど、ルール化
を徹底しています。
含有されていますが、セメント工場では廃棄物の受
け入れにあたって微量成分の管理を各製造工程にわ
たって強化しています。当社ではクロムなど主要な微
量成分については、原料・焼成・仕上・出荷の工程内
立てられていますが、全国的に残余年数が減少し、新し
想されています。当社グループでは、社会のニーズに合
い最終処分場の確保が厳しい状況にあります。特に大
わせて3つの都市ごみ資源化システムを推進し、資源の
都市圏を中心とした各自治体では「ごみ処理問題」が悩
有効利用と環境問題の解決に取り組んでいます。
497
152
棒グラフは当社
2006年度の平均値
普通セメント工場
わたしたちの
生活
76
73
生コン工場
AKシステム
セメント工場で都市ごみそのものを
普通セメントの原燃料としてリサイクル
コンクリート製品工場
12
(8.0)
灰水洗システム
0.9
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
都市ごみ
セメント工場でごみ焼却灰を
普通セメントの原料としてリサイクル
3.0>
定量下
廃棄物に限らず天然資源にも微量に重金属類が
みの種になっており、今後ますます深刻になるものと予
全Cr Zn
(水溶性Cr
(Vl)
)
Pb
Cu
As
Se
Cd
0.017
Hg
普通セメント
(JIS R 5210)
*H.J.M.Bowen:浅見輝男・茅野充男訳、環境無機化学、博友社,1983
エコセメント工場
エコセメントシステム
される仕組みをとっています。また、環境面での規制
エコセメント工場を新設しごみ焼却灰
をエコセメント原料としてリサイクル
清掃工場
ント中の微量成分は減少傾向で、ほぼ天然土壌の含
エコセメント
(JIS R 5214)
焼却灰
有レベルの範疇であることが確認されています。
1987年
1994年
2000年
2005年
2006年
Zn
Pb
Cu
As
Se
Cd
Hg
平均
−
17.4
556
221
122
17
−
1.5
−
最大
−
32.3
1,059
668
233
39
−
2.6
−
最小
−
5.3
137
18
17
2
−
0.6
−
平均
86
12.7
563
145
125
15
−
2.4
0.010
エコセメントは、都市ごみの焼却灰を主原料として
のエコセメントを製造します。
最大
168
26.5
954
387
240
29
−
6.2
0.025
つくられる、これまでにない画期的なセメントです。
この施設は公設民営(DBO:デザイン・ビルド・オペ
最小
40
5.4
310
5
19
4
−
1.0
0.001
平均
92
8.5
427
78
116
15
0.8
2.2
0.008
普通セメントの主な原料は、石灰石・粘土類・鉄原料・
レート)手法を採用した事業であるという点が特徴で
最大
123
11.5
736
163
246
40
最小
64
5.4
224
33
28
3
平均
76
7.8
493
81
144
最大
86
9.4
681
143
359
エコセメントシステム
2.1
5.5
0.036
石膏ですが、エコセメントでは、これらの原料の代替
す。東京たま広域資源循環組合が事業主体で、当社と
0.5>
0.8
0.005>
として、エコセメント1トン当たり500kg以上の都市
(株)荏原製作所が建設工事から施設の運営業務まで
14
1.2
1.3
0.010
38
1.7
2.1
0.023
ごみ焼却灰などの廃棄物を利用しています。廃棄物
を一貫して受注・受託するというプラントエンジニア
リング型の大型事業です。
最小
51
5.5
310
47
45
4
0.7
0.1
0.005>
を大量に有効利用できることから、
「21世紀の地球環
平均
79
8.0
495
84
151
14
1.1
3.0>
0.010
境を救う技術」
として高く評価されており、海外からも
最大
105
11.9
763
200
384
46
1.4
4.0
0.033
最小
43
4.2
263
43
32
6
0.5>
3.0>
0.005>
注目されています。
平均
73
8.0
497
76
152
12
0.9
3.0>
0.017
2001年、世界で初めてエコセメントを生産する施
最大
110
12.1
865
139
351
32
1.2
3.0>
0.042
設として、千葉県市原市で市原エコセメント
(株)が操
最小
42
3.2
263
44
27
3
0.5>
3.0>
0.005>
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
2004年
水溶性Cr(Ⅵ)
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
微量成分含有量の推移(mg/kg)
全Cr
社会的な取り組み
社会的な取り組み
で検査を行ない、最終的に良好な品質の製品が出荷
強化に合わせて管理基準を厳しくしているため、セメ
環境保全の取り組み
環境に影響を及ぼさないことを確認しているととも
500
400
300
200
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
1
土の含有量範囲*
︵
限
未満︶
環境保全の取り組み
可否チェックを行なって製品の品質、製造工程、周辺
1,000
900
800
現在、多くの都市ごみ焼却灰は、最終処分場へ埋め
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
にあたり、ユーザーの皆様より製品の品質および安全
(mg/kg)
1,600
1,500
業を開始しました。
また2006年7月には、東京都西多摩郡日の出町の
「東京たまエコセメント化施設」が稼働を開始しまし
た。東京都多摩地域25市1町から発生する都市ごみ
焼却灰を年間9万4,000トン受け入れ、13万3,000トン
東京たまエコセメント化施設
52
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
53
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
灰水洗システム
設備で除去した後、セメント原料に使用します。製品
ことにより、都市ごみ焼却灰を普通ポルトランドセメ
であるセメントの品質はこれらの処理によって適切
ントの原料としてリサイクルするシステムです。焼却
に保持されます。また、キルン排ガスを利用して重金
残渣のうち、焼却主灰に混入している金属や異物を
属を除去する独自の排水処理技術も採用しました。
除去、ばいじんについては含まれている塩素を水洗
建設発生土
2003年2月に土壌汚染対策法が施行されました。
国展開している各工場とを有機的に結びつける中間
同年4月より当社では、建設現場等で発生する建設発
基地を整備しました。その結果、2003年度に24万トン
生土(汚染土壌含む)のセメント資源化に取り組んで
だった受け入れ量は年々増え、2006年度には106万ト
ンを受け入れ、資源化しました。
熊谷工場(埼玉県熊谷市)、藤原工場(三重県いなべ市)
り、焼却灰の前処理設備(事業規模年間約4万トン)
と投入
います。従来処分場に廃棄されていた土壌をセメン
に続いて、2007年4月、都市ごみ焼却灰のセメント資源化
設備を同工場内に建設しました。県内の焼却灰のみを処
トの原材料として有効活用することにより、建設発生
事業が大分工場(大分県津久見市)でもスタートしました。
理対象とした熊谷工場、藤原工場での事業に対し、本事業
大分県を中心に、自治体から発生する都市ごみ焼却灰を収
では、大分県内のみならず九州地区全域、中国・四国地区、
集し、セメント原料としてリサイクルする事を目的にしてお
そして首都圏からも焼却灰を受け入れる予定です。
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
既存のセメント工場設備に前処理設備を付設する
様々なリサイクル事業
土のマテリアルリサイクルに貢献するとともに、処分
受け入れ量(万t)
場の延命にも寄与しています。
106
100
建設発生土は、受け入れに際してまず現場に赴き、
ての受け入れ可否を判定したのち、工場へ搬入しま
す。当社では、環境省指定調査機関の認定を取得し、
調査から工事、物流、工場での処理までを一貫して請
け負える体制を整え、さらに建設発生土の発生地と全
60
57
40
20
0
24
03
04
05
06
年度
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
サンプリングをし、分析にかけます。セメント資源とし
78
80
都市ごみ焼却灰のセメント資源化システム(大分工場)
AKシステム
石炭火力発電所から発生する石炭灰は、今後ます
ルタル」、骨 材 ( 砂 ) の 代
ます増加することが予想されています。当社では、こ
替として石 炭 灰 を 大 量
の石炭灰のさらなる有効利用を目的としてアッシュ
に使用した「CAコンクリ
センター事業を展開しています。セメント工場への円
ート」、シールド工事など
の裏込め注入材など、石
た関東アッシュセンター(神奈川県川崎市)に加え、
炭 灰を使 用した 多 様 な
のを、普通ポルトランドセメントの原燃料としてリサ
2005年9月から九州アッシュセンター(福岡県苅田
製 品を供 給 する役 割も
イクルするシステムです。セメント焼成キルンをごみ
町)も稼働しました。
担っています。
資源化キルンに改造することなどにより、既存のセメ
アッシュセンターは石炭灰の安定供給以外にも、併
ント工場設備を利用することができます。
設された混合設備により、高機能埋め戻し材料「FAモ
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
滑な石炭灰の供給を図るための中間処理機能を持っ
家庭から排出されたごみや事業系一般ごみそのも
社会的な取り組み
社会的な取り組み
アッシュセンター事業
ごみ収集車で回収した都市ごみをセメント工場に
直接持ち込むので、清掃工場(焼却場)が不要になり
ます。持ち込まれたごみは、ごみ資源化キルンで3日
ほどかけて発酵、生分解され、安全で衛生的なセメン
システムは埼玉工場にて操業しており、埼玉県日高市
から排出される都市ごみ全量(年間約1万5,000トン)
をセメントの資源として活用しています。
54
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
石膏ボードは、主に内装材等に使用する建築材料
2
プ会社の(株)ナコードでは、この廃石膏ボードを無
です。その累計出荷量は、全国で5億m を超える水準
水石膏として再資源化する事業を2004年10月より行
にあり、それに伴って発生する廃石膏ボードの量は右
なっています。無水石膏は、セメント関連製品の原材
肩上がりで推移することが予想されています。
グルー
料などとして利用されます。
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
ト用の原料や燃料に生まれ変わります。現在、
このAK
廃石膏ボードのリサイクル
55
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
スーパーバリアフリーシステム
太平洋プレコン工業(株)
大型車輌が通行する用途(道路)にブロック舗装をす
る際、表層に擬石平板または透水性平板を使用した
場合、段差や破損が生じやすくなります。
「スーパーバ
(コンクリート構造物の環境負荷削減)
リアフリーシステム」は、
これらを防止する技術です。
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
構造物の長寿命化・軽量化
この技術により視覚障害者や車椅子利用者などが
通行しやすいバリアフリーの路面となります。また、
コンクリートの診断・補修事業
舗装面は長期間にわたり良好な路面性状を維持し、
当 社 はグ ル ープ 各
きています。また、慢性的な廃棄物処分場の不足が続
社とともに、コンクリー
き、社会問題となっている昨今、コンクリート構造物
ト構 造 物 の 維 持と、診
においても、その廃材の量を少しでも削減することが
断・補 修をトータルで
求められています。そこで、コンクリート構造物を長期
手がけ、コンクリート構
にわたり大切に使っていくためには、日頃からコンク
造物の長寿命化とライ
リートの維持・補修・補強が欠かせません。
フサイクルコストの低減を目指しています。
補修費の低減および工期の短縮化を実現しました。
システムを構成する擬石平板、透水性擬石平板、敷
砂、目地材、不織布およびプラスチック製強化プレー
トには同社の最新の技術を導入しています。
シズカライト
ダクタル®
「ダクタル ® 」は、強度およびじん性に優れた超高強
■物性比較
2
度繊維補強コンクリートです。補強鉄筋を使用せず構
項目
強度(N/mm )
圧縮
曲げ
引張
ダクタルFM(鋼繊維)
210
43
10.8
なった斬新な素材・技術です。
ダクタルFO(有機繊維)
160
22
8.5
通常のコンクリートよりも数倍の強度を有するだけ
普通コンクリート
∼36
∼5
∼3
でなく、極めて緻密な構造により非常に高い耐久性を
■耐震補強
有しており、
(社)土木学会刊行「超高強度繊維補強コ
ルな防音壁をつ
音域から高音域まで幅広い周波数域において、大変
くること が 可 能
優れた吸音性能がある軽量気泡コンクリート系剛体
となります。騒音
多孔質吸音材です。
問 題 など様々な
また、遮音材としても比較的高い性能を併せ持ち、
音 に 対し て 、快
この特性を利用してフレキシブルボードやALC(軽量
適な環境を提供
気泡コンクリート)
との複合壁にすることでハイレベ
します。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
造部材の設計が可能で、従来の鉄筋コンクリートと異
全体積の80%以上を微細な連続気泡で構成し、低
クリオン(株)
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
高度成長期につくられた建築物は老朽化が進んで
ンクリート設計・施工指針(案)」において、100年耐久
の構造物設計が可能であることが示されています。
ハーモナイト
を図り、ライフサイクルコストを縮減することで環境
クリオン(株)
生活空間を快適な湿度領域に調整し、ジメジメ感
収し、また高い抗菌性・抗カビ性を持ちます。
より快適
最近では、老朽化した共同住宅を耐震補強により
や過乾燥な状態になるのを防ぐ調湿建材です。
しか
で健全な住空間をつくることができる調湿内装材で、
も、主原料はリサイクル材と二酸化炭素(製品重量の
新築・リフォームを問わず、一般住宅・教育施設・介護
約20%の二酸化炭素を製品中に固定化)を使用して
施設・医療施設・オフィス・ホテル・駅・美術館・博物館
おり、環境へ配慮した製品です。
など幅広い用途で採用され、高い評価を得ています。
ハーモナイトには、現在「ハーモナイトシーズ」と
両 製 品とも 多く
「ハーモナイトA g」の2種類の製品があります。両製
の 色 柄 を 取り揃
品とも、優れた調湿性能に加え、
「ハーモナイトシー
え意 匠 性 にも優
ズ」はシックハウス症候群の原因となる空気中のホル
れています。
再生するといった、時代のニーズに即したテーマにも
取り組んでいます。
開口部を設けたダクタル耐震壁(厚さ30mm)
(独)建築研究所、東京理科大学と共同研究
快適な生活環境づくり
(製品特性を活かした生活環境の向上)
ムアルデヒドを吸着・分解する機能を併せ持ち、
「ハ
ーモナイトA g」は生活臭・加齢臭・ペット臭などを吸
トリーノ
環境問題への関心が高まる中、インターロッキング
ブロックや擬石平板等の表層面に酸化チタンを加工
した「トリーノ」は、酸化チタンの光触媒作用と太陽光
の力で空気中のNOx(窒素酸化物)やSOx( 硫黄酸化
太平洋プレコン工業(株)
■ハーモナイト採用事例
場 所
使用箇所
JR尾久駅(東京都)
駅舎トイレ 内壁
市川ショッピングセンター(千葉県)
リニューアル工事 売場内・柱周り
岩手県立博物館
展示用ケース 底板
熊本市立熊本博物館
海御座船「波奈之丸」 保存室内壁
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
負荷低減に貢献しています。
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
ダクタルを使用することにより構造物の長寿命化
物)等の有害物を除去し、大気を浄化する働きがあり
ます。自然に優しい太陽エネルギーを利用して地球
環境をクリーンにするエコロジー製品です。
56
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
57
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
ステークホルダー・ダイアログ
石 日本でも環境税を導入しようという議論はありまし
から来る途上国の人々に、豊かさを抑えろと言うことはで
た。
しかし、原油価格が40ドルから70ドルにあがっても、走
きません。
行距離が5%減ったぐらいで誰も車を放棄しませんよね。
石 経済成長に関しては、BRICsのあとには「ネクストイレ
せん。
ブン」(※2)の国々が控えています。人間とはどういう生き
ものか、という眼で見ると、一度得た豊かさは手放したく
高見 税率が低すぎると効果がありません。
ない、
という不可逆性と、小榑さんがおっしゃるように、自
抑制効果のある税率を導入する必要があります。例え
主的に自分にとって不都合な行動を取ることができない
ば、ストックホルムの渋滞税は、通勤する人にとって結構高
生物です。
しかも、世界で電気のない15億人もこれから電
有識者にお集まりいただき当社のCSR経営全般について意見を伺うステークホルダー・ミーティングを一昨
くなるので、導入されると車の量が20∼25%減りました。
気は欲しいでしょう。
年、昨年と2回開催してきましたが、今年は「持続可能な社会に向けて」をテーマにダイアログを開催し、様々な
また、税をかけるだけではだめで、
「アメとムチ」の両
今後、人類は、最大限の環境負荷低減努力をしつつも、
ご意見を伺いました。
方が必要です。スウェーデンでは、エコカーだと渋滞税を
総体としてCO 2の排出量を抑制することはできず、人口の
免除したり、駐車場を無料にする、車税は二酸化炭素の
増加と相まってどこかの時点である種の破綻が起きると思
排出量で計算するのでエコカーだと得するなど、実にた
います。
今後、ある種の破綻は起こる、
という冷静な認識を持っ
意識も大事ですが、実利が必要です。私は、日本企業は世
て、破綻を最小の影響にとどめるための施策、および破
界で一番努力していると思いますが、政策誘導がないた
綻後の社会をどのように再興させるかについての施策を
めに、自主的にやりなさいと言われて空回りし、世界から
打つ、という行動を取ることになるのではないかと思い
置いてきぼりになるのではないかと危惧しています。こ
ます。
れは、日本企業にとってのビジネスリスクでもあると思い
石 弘之 氏 岡本 久人 氏 小榑 雅章 氏 高見 幸子 氏 松田 禎二
北海道大学
公共政策大学院
教授
九州国際大学
次世代システム研究所
所長
向社会性研究所 主任研究員、
社会学博士
国際NGO
ナチュラルステップ・
インターナショナル
日本支部代表
太平洋セメント(株)
取締役
専務執行役員
※1 スターン・レビューとは、英国のブレア首相、ブラウン財務
ます。
相の委託を受け、ニコラス・スターン卿(元世界銀行チーフエコノ
小榑 未来の危機についての人間の意識について挙げ
ミスト)がまとめた気候変動の経済的側面に関するレビューで、
2006年10月30日に公表された。本レビューの重要な論点は、気候
ますと、今年1月に千島列島で地震があり、その時、北海道
変動の被害は甚大で長期にわたるが、
これを回避するためのコス
沿岸地域などに津波警報が出されました。
しかし、避難し
トは、被害が顕在化した場合のコストに較べて相対的に低く、早期
たのは11万人中、6千人でした。間近に危機が迫らないと、
の対応は経済的に有利である、
というもの。
人は動かないという例です。
※2 BRICsの次に成長してくる新興国11カ国の総称で、バングラ
比べて1∼2%のコストで済むという調査結果が出ていま
さらに、今後、中国やインドが発展する中で多くの資源
デシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリ
てみると、それはヒト科の大繁栄です。資源を大量消費し
す。少なくともヨーロッパでは、ビジネスの中に環境が組
が消費され、CO 2 が排出されると思いますが、私たちは後
ア、パキスタン、フィリピン、
トルコ、ベトナムのことをいう。
ながら、人口も指数的に急速に増えている。ここから考え
み込まれるというパラダイムシフトが起こっており、確実に
ないと、資源問題や環境問題の本質は見えてきません。
意識が変わりつつあります。
石 私は「持続可能な社会」の実現は難しいと思っていま
石 確かに今対策を行なったほうが、コストは安くてすむ
小榑 戦後の復興期、みんな立派なビルというものに憧
す。
「持続可能な社会」にどう近づけていくかについて、人
かもしれません。
しかし、IPCCは、京都議定書に定める通り
れを持っていて、セメント産業はこれをつくってきたという
いるのです。
これは各業界が悪いのではなく、国民全体に
類は最大の努力をしていくべきですが、世界の人口は毎
世界のCO 2 排出量(炭素換算)を70億トンから60億トンに
意味で非常に前向きに社会を構築する役割を果たしてき
経済についての誤解があり、フロー型の経済をまい進して
年約7,200万人ずつ増加しており、資源消費も2.5∼3%ず
減らすためには、膨大な費用がかかると見積もっていま
たと思います。一方、ハード面の社会基盤が一通りなされ
きたことによります。
つ増えています。7,200万人分の食料、水、エネルギー、ス
す。世界の人々は地球温暖化対策に今その膨大な金額を
てきた今日の日本では、セメント産業は斜陽産業になった
ペースをどうするのかという問題です。
「サステナビリテ
出すでしょうか。
と思っていました。
しかし、ダイアログ参加にあたって勉強
ィ」だと言われても、自分の生活レベルは変えたくない、あ
るいは少しでも豊かになりたいというのが人間の本質で
高見 スウェーデンの科学者は、負担はそんなに大きく
素材産業の役割とは
ての意識が決定的に国家の構造や個人の生活を規定して
松田 日本が「フロー型社会」になったことには、地震や
してみると、サステナビリティを獲得しようと非常に努力
台風などが多かったり、木の文化なので火事に弱かった
されていることがよくわかりました。
り、
といった気候や文化などの特殊性もあったのではない
ないと言っています。例えば、世界の国がスウェーデンが
1991年に導入した炭素税のレベルを支払えばIPCCのい
岡本 私は、環境面でも経済面でも、日本を変えるのは鉄
必要であり、ローマが滅びたのも石造りの構築物のメンテ
と考えます。
うコストはまかなえると計算しました。スウェーデンは、現
やセメントなどの素材産業だと思っています。かつてイタ
ナンスが難しかったからとの説もあるようです。もともと
30年ぐらいでサイクルされる風土があり、こういう環境の
でしょうか。また、石の文化も長期的にはメンテナンスが
このまま進めば、2050年には世界の人口は92億人にな
在、その当時の10倍の炭素税を課税していますが、1994
リアに赴任していた時、非常に大きなカルチャーショック
ると言われていますが、その途中である種の破綻は避け
年よりGDPは、平均3%という経済成長をしています。
を受けたことがあります。彼らの給料は私たちの半分と少
差が大きく影響していると思います。
しかし、
これらを克服
られないと思います。
しかし、何も政策誘導をしなかったら、おっしゃる通り企
ないのに、日本人よりもずっと豊かな生活を送っていたか
していくうえで、鉄やセメントは日本では大きな役割を果
業にとってはコストがかかるだけで、負担になります。
しか
らです。その原因を探っていくと、ヨーロッパが「ストック
たし得ると思います。
高見 確かに今までは、環境やサステナビリティと言うと、
し、例えば、スウェーデンでは、炭素税やエネルギー税を導
型社会」で日本が「フロー型社会」であるということに気づ
入しましたが、再生可能なエネルギーはそれが免税になっ
きました。
岡本 確かに何世紀にも亘ってメンテナンスフリーとい
ったと思います。
しかし、昨年の「スターンレビュー」
(※1)
ています。また、切り替えのためのインフラ作りに助成金を
ヨーロッパは家や道路の寿命が日本に比べて非常に長
うわけにはいかないでしょうが、鉄やセメントをうまく使
の発表に見られるように、世界の流れは大きく変わってき
つけました。そして、人件費にかかる税金を軽減しました。
く、道路も一度つくったら100年間メンテナンスフリーで
っていけば、何世代も使える社会基盤をつくることができ
「モラル」
とか「自己犠牲」が必要ととらえられることが多か
たと思います。気候変動がこのまま進むと様々な被害が生
その結果、経済を発展させながら、化石燃料の使用量を
す。日本は何十年かごとにつくり直すことを前提に基盤が
ます。
じ、それから対応するのでは莫大なコストが必要になりま
50%減らすことに成功しています。それは、代替の木質バ
造られていて、資産としてのストックになりません。その結
例えば建物の場合、初期投資を10%増やせば寿命が5
す。
しかし、今、温暖化対策を行なえばトータルとして少な
イオマスの方が安くなったため、切り替えることで経済的な
果、稼ぎは多いものの、自分の世代で使い切ってしまうと
倍になるというデータがあります。日本の2005年の総資
いコストで済むことが明らかにされました。例えばスウェ
メリットがあったからです。それで、経済成長をしたにも関
いう社会の仕組みが出来上がっています。
産は8,500兆円、
このうち6,000兆円が金融資産で、物とし
ーデンの場合、今対策を行なえば、先延ばしにした場合に
わらず、温室効果ガスの総排出量が増えていないのです。
初期投資のわずかな違い、および「もの」の寿命につい
ての資産は残りの2,500兆円に過ぎません。
このお金の一
58
Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
すから、非常に大きな強権を発動して規制をかけることで
もしない限り、現在の環境問題を改善することはできない
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
岡本 今日の環境問題の根源は何だろうといろいろ考え
社会的な取り組み
社会的な取り組み
持続可能な社会実現への課題
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
くさんの施策を実施しました。多くの市民を動かすには
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
持続可能な社会とは。
持続可能な社会に転換するための企業の役割とは。
たとえ環境税を5%かけても消費抑制効果は期待できま
59
Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
部で、日本の資産をつくり直せばいいのです。例えば、100
高見 持続可能な社会構築に向けた世界における日本
今後、CO 2排出量と資源消費量を極限まで抑える事が人
界はプレキャスト化(規格が統一され、予め工場などで製
∼200年もつ道路などの社会基盤をつくり、これを不動産
企業の役割、
という観点では、日本の省エネ技術を世界に
類の至上命題です。個々の企業努力というような部分最適
造)
した部材で社会インフラを構築するようにし、将来的
証券やファンドにする。資産価値の劣化がない魅力的な
広げていくことにも力を入れていただきたいと思います。
だけではだめで、立法府の強力なリーダーシップが必要
には「もの」をできるだけつくらず、サービスで成り立たせ
投資先をつくれば民間がそれに投資する。そのようにすれ
ニーズはありますから、ノウハウをビジネスにしていって
になると思います。
る、というような概念の転換が、否が応でも求められる社
ば、税金を投入する必要もなくなり、100∼200年もつ社会
はどうでしょう。
会になると思います。
日本が資源的に自立できる人口は7千万人(江戸時代は
松田 日本のセメント産業のエネルギー効率は世界トッ
変わってきたというお話がありましたが、日本人について
松田 太平洋セメントが考える資源循環型社会とは、岡
3千万人∼4千万人)
ぐらいだと思われます。そのように見
プクラスですが、技術の出し惜しみはしていません。太平
は、私が以前行なった調査で、こんな結果が出ました。主
本さんがおっしゃるようなストック型の社会になって廃棄
れば日本の人口減少も、理想的な方向に向かっていると
洋セメントでは中国に3つの合弁会社を設立し、すでに技
婦を対象にアンケートを行なったところ、80%以上が「環
物の絶対量が大きく減ったとしても、人が生きていれば都
言えます。あとは経済と技術を組み合わせて、家などの資
術移転は行なっています。今後は、自社グループ以外へも
境問題は大変だ」
「子供たちに迷惑をかけてしまう」
と思っ
市ごみなどの生活系廃棄物は出る。それを別の産業で原
産を30年ごとにつくり変えるのではなく200年使えるよう
廃棄物リサイクル技術などを移転するビジネスを進めて
ていました。
ところが、環境を良くするために何か行動して
料として活かすなど、社会全体で資源が無駄にならないよ
にすれば、次の世代に資産を残しながら、資源的に自立し
いこうと考えています。
いるかを聞くと、
「 何かしたいけれどやっていない」
という
うにする、というものです。例えばセメント原料に石灰石
のです。
の原石を使うのではなく、他の用途で使い終わったものを
た社会ができるのではないでしょうか。
岡本 「ストック経済」というのは資源やエネルギーを「も
原料とするという発想です。
の」
として固定化することです。あるいは金融資産を「もの
石 我々の調査でも、8割以上の人が「環境問題は大変
としての資産」に置き換えておくことです。
「もの」に固定
だ」
と言いながら、実際に行動に移している人は2∼4%と
石 循環という考え方自体はいいと思います。ただ、循環
起伏の激しい地形です。また、周期的な地震があります。
化するというのは、資源やエネルギーを抱え込むのと同じ
いう結果が出ています。それどころか、大型車や大画面テ
そのものにもエネルギーがかかります。循環させることに
これらの条件のために、道路、
トンネル、堤防などの公共イ
です。
「将来は、資源やエネルギーの調達が難しくなると
レビに買い替えたりしているわけです。そうした行動が積
熱心になり、ペットボトルのようにかえってCO 2排出量を増
ンフラをつくるのにヨーロッパより5倍ほどのお金がかか
予想されるため、長寿命製品といった形にして、資源やエ
もり積もって環境問題を引き起こしているわけです。
やしている場合もあります。単に企業イメージを上げるた
ると言われています。100年∼200年もつ、耐久性の高い
ネルギーを抱え込む必要がある」
ということを産業界が率
構造物を高いコストをかけてつくるのをみんなが望むか
先して主張していくべきだと思います。私は長らく委員会
どうかは、難しい課題だと思います。
などで提案してきましたが、ようやく認められ行政の白書
「積極的な行動は取らなくても、反対はしない、そういう
などにも載るようになってきました。産業界もこのチャン
風にされても仕方がない」
という受動的賛成派が70∼80
岡本 道路を道路だけと考えず、
「ロジスティックライン」
スを逃さないようにしていただきたいと思います。
%いるということです。例えば、
レジ袋をやめるといったと
めに無駄な循環をやっているのであれば、それは持続可
小榑 ただ、調査の結果、一つ良い点がわかりました。
能ではありません。ライフサイクル全体を見渡して、循環
するのが良いか、あるいはそのまま廃棄するのかを決め
る事が重要です。
き、賛成はしないが反対もしない人がいる。
これは非常に
高見 将来を見ることはできませんが、つくることはでき
信など、社会基盤すべての通路だと考えれば、同じ投資で
重要なことです。
ます。
「このままだと、
こうなる」、
という議論ではなく、つま
2倍、3倍の機能が実現できます。
今後、持続可能な社会への転換という大きな課題があ
り、現在の延長線上で物事を考えず、
「 成功した姿、つまり
持続可能な社会とはどんな社会なのかを明確にして、そ
念を提唱し、新しいライフスタイルや政策を提案していく。
れから、そのような望ましい未来を、自分たちでつくるん
えられているようですね。また、コンクリートの舗装は乗り
それに対して、受け入れるかどうかを判断するのは市民で
だ」
という意思をそれぞれの主体が持つことが大切だと思
心地は良くありませんが、アスファルト舗装に較べて自動
す。普通の市民が「そろそろ今までの暮らし方を変えよう
います。
車の燃費が良くなるようです。道路に限らず、省資源・省エ
か」
という判断をするかどうかです。
温暖化問題では、セクターを横断した連携が必要です。
ネルギーという観点で物事の設計をし直せば、多分今の
普通の人々は、能動的でこそないけれども、バランス感
日本のNGOも力をつけてきました。ぜひ手をとって一緒に
技術だったら相当変わります。
覚があり、信頼するに足る判断力を持っている、
ということ
取り組んでいただきたいと思います。
をしっかり捉えるべきだと思います。環境に配慮した行動
それから、今日のダイアログは出席者に女性が一人し
を、一般の市民が日常生活の中で選択できるように社会
かいませんでしたが、もう一人いたら議論の流れはずい
環境を整備することが、今後の政策には強く求められると
ぶん変わっていたかな(全員笑い)
と思います。
これからの
思います。
社会や企業をつくっていくうえで女性のものの考え方は大
はなく、ユーザーの現状コストの価格でリースするので
産業に従事しています。ストック型社会に向けた100年設
す。
これによって企業の側では資産が増えますから税金が
計は確かに重要ですが、30年で回ることを前提に経済の
かかってしまいます。そこで1kmごとにレールを証券化し
切です。女性を含む多様な社内外の人が、
このような議論
岡本 日本では「循環型社会」というのは良いものだと
や、さらに企業経営に参加する機会をもっと増やしていか
れることを期待します。
て、皆さんにレールの所有者になってもらえばいい。1km
いう前提で世の中は進んでいますが、私は「循環」ではなく
換すると、
これらの産業のほか、大量の失業者を生む結果
ごとの運用益が債権者の毎年の収入となり、
レールのメー
「同じものを長く使い続けること」を最優先する社会に転
となり、経済は大混乱を起こすことになるでしょう。起こし
カーはメンテナンスを行なうため雇用も続きます。
換することが基本だと思います。
開催日:2007年7月11日
用途が変わっても長く使えるように、セメント関連の業
てもやる、
という考え方を日本人ができるかどうかが課題
だと思います。
松田 セメントが要らないのにつくり続ける必要はまっ
岡本 私は新しい意味での「日本列島改造論」をやるべ
ズに応える。おっしゃる通り産業とはそういうものだと思
きだと思っています。つまり、例えば2050年にどういう理
います。
たく無いということですね。社会のニーズをよく見て、ニー
ダイアログを終えて
想の社会をつくるかを考え、その実現を目指すのです。人
ダイアログにご出席くださいました皆様、真摯なご議論を賜り本当にありがとうございました。
口が減るなかで、素材産業やメーカーがどうやって生き残
岡本 長寿命な道路や橋などのインフラをつくり、証券化
るかという問題がありますが、私は多くの産業が製造販売
して管理していけば、製造プラントの規模は縮小していて
ただきました。社内では「循環型社会=持続可能な社会」
とする見方もありますが、必ずしもそうで
業から製造リース業に転換すべきだと考えています。所有
も、一方ではサービスを提供する、
という企業活動は続く
はない、
という示唆に富む知見を得たことは幸いでした。
から利用に経済を変えるのです。
わけです。メーカーは最終製品をつくったらサービス業に
当社は、地球をどのように守っていくか、支えていくかという視点でできることを着実に進めてい
例えば鉄鋼業であれば、鉄道で使うレールを10年おき
なってもいい。ビジネスモデルを変えてしまう、
ということ
きたいと思いますが、改めて自由な発想で検討することが必要だと認識しました。本日の議論を踏
につくり変えていますが、30年メンテナンスフリーのレー
です。過去の知見だけで物事を考えてもブレークスルーは
ルもある。
しかし値段も2∼3倍高い。そこで販売するので
できません。まったく違う戦略が必要なのです。
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Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
仕組みができているから、もし100年で回る社会に構造転
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
らゆる場所で議論されていくわけですが、
リーダー層が理
松田 車が通ると発電する道路など、いろいろなことが考
社会的な取り組み
社会的な取り組み
と考えればいいと思います。道路の下はエネルギーや通
石 日本では、労働人口の4人に1人が建設・製造関連の
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
松田 ストック型社会への転換を考えるにあたって、日本
の風土を思うのですが、日本は山があり、谷があるという
社会の構造転換は意識変革から
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
小榑 先ほど、ヨーロッパでは昨今、人々の意識が大きく
基盤のスタンダードをつくれる。
それぞれのご専門の視点から、やや悲観的な将来予測も含めて、新しい見方、意外な指摘などをい
CSR推進部長
塚原 宏
まえ、今後、さらに社内外の議論を深め、社員一人ひとりがCSRの意識を持って日々の業務に取り組
んでいきたいと思います。
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Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
太平洋セメント CSRレポート2007
(次回は2008年10月に発行予定)
● 2007年11月発行
● 内容に関するお問い合わせ先
CSR経営の基盤
CSR経営の基盤
太平洋セメント株式会社 CSR推進部
TEL:03-6226-9109 FAX:03-6226-9154
E-mail:[email protected]
● このレポートはホームページ上でもご覧いただけます。
http://www.taiheiyo-cement.co.jp
環境保全の取り組み
環境保全の取り組み
編集後記
改めて御礼申し上げます。
さて、2007年版は概ね昨年版の構成を踏まえながらも、以下の通りいくつかの新しい
試みに取り組みました。
社会的な取り組み
社会的な取り組み
第3回目のCSRレポートが発行の運びとなりました。
ご協力を賜りました多くの方々に
①社長メッセージをインタビュ−によってお伝えする形にしました。外部の方にインタ
ビュアーをお願いし、社内の視点とは異なる角度からの問いをいただくことにより、当
けてわかりやすくお伝えしたいと考えました。
(P.4∼7)
②海外での事業を拡大する中で、現地のグループ会社でも多様なCSR活動が推進され
ています。そこで、各国の代表者メッセージを添えて、現地の事情や取り組みの内容
をお伝えすることにしました。
(P.44∼47)
③当社の主要製品であるセメントは主にコンクリートの原材料として用いられていま
す。
コンクリートは生活の中を見渡しますと、住まいをはじめ身近に使われています
が、その存在を意識される機会は少ないのではないかと思います。そこで、当社の事
業をご理解頂く一助として、
どのような場面でお役に立っているのかを整理しました。
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社会のニーズに応える製品・システム・サービス
社の「CSR長期ビジョン」制定にあたって込めた思いを、様々なステークホルダーに向
(P.48∼49)
の思いでテーマを設定しました。地球の、日本の、そしてセメント産業の持続可能性
を巡って、4名の有識者の方々に示唆に富んだ貴重なご意見を伺うことができました。
(P.58∼61)
振り返って見ますと、企画段階では候補に上がりながら実現できなかった取り組みも
■第三者コメント作成にあたって
ありますし、
グループのデータや情報も限られた範囲に止まっています。
タスクフォース
のメンバーを中心に、
さらなるレポートの質的向上に向けて努力を続けてまいります。
ステークホルダー・ダイアログ
ステークホルダー・ダイアログ
④ステークホルダー・ダイアログは、当社の事業そのものをCSRの観点から検証しようと
現在策定中の「10(イチマル)中計」は、2008年4月から2011年3月までの3年間を対
象期間とする中期経営計画です。CSRの実行計画を織り込み、CSR長期ビジョンの実現
に向けて一歩を踏み出します。今後とも、当社のCSR活動ならびに本レポートにつき、皆
様よりお気付きの点をお知らせ頂ければ何よりの幸いです。
CSRレポート作成タスクフォース事務局
村田取締役常務執行役員へインタビュー
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Ta i h eiyo C em e nt CSR Rep or t 20 07
埼玉工場を視察
CSR推進部担当者へインタビュー
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Taiheiyo Cement CS R Report 20 07
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