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岐阜県飛騨地方御岳山山麓の大面積森林伐採跡地における

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岐阜県飛騨地方御岳山山麓の大面積森林伐採跡地における
卒業論文
岐阜県御嶽山山麓における大面積森林伐採跡地の埋土種子集団
岐阜大学
生産環境科学課程
応用生物科学部
環境生態科学コース
山地管理学研究室
大橋レアンドロ
目次
要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
2.調査地と方法
2.1.調査地の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
2.2.調査方法
(1) 土壌サンプリングとササの被度調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
(2) 埋土種子集団の推定法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
2.3.解析方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
3.結果
3.1.発芽試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
3.2.高木種の発芽本数密度と環境因子の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・
24
4.考察
4.1.埋土種子の種数および個数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
27
4.2.埋土種子の種組成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
27
4.3.高木種の発芽本密度と環境因子の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
28
4.4.埋土種子による森林更新・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
29
5.おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
30
6.謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
31
7.引用・参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
8.付表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
34
要旨
岐阜県の御嶽山山麓には面積約 350ha の大面積森林伐採跡地が存在する。この場所は森林
伐採後に造林作業を行わなかったため,現在では 350ha の面積の内の約 8 割がクマイザサ優
占地となっている。そこで,このササ地化した森林伐採跡地の森林更新法を検討する一つ
の手がかりとするため,現地の埋土種子組成および埋土種子の発芽本数密度と環境因子と
の関係について調査した。
調査は 350ha の伐採跡地の内の 120ha(標高 979m-1231m)を対象とし,2011 年 4 月に調査
地を横断するように 3 本のベルト・トランセクトを設置して行った。そして,20m 間隔に
合計 95 地点から土壌サンプル(20cm×30cm×5cm)を採取し,
「発芽試験法」によって埋土種子
の発芽本数密度を調べた。解析は森林更新を考える上で重要となる高木種に着目し,発芽
本数密度と環境因子(ササの被度,斜面方位,傾斜角度,Topographic Index,母樹からの距離)
との関係について重回帰分析を行った。
発芽試験の結果,2011 年 4 月から 12 月までの期間で合計 72 種(高木:6 種,小高木:5
種,低木:15 種,つる:3 種,草本Ⅰ*1:6 種,草本Ⅱ*2:37 種),1109.6 本/m2(高木:84.2
本/m2,小高木:156.2 本/m2 ,低木:540.5 本/m2,つる:4.6 本/m2,草本Ⅰ:57.7 本/m2,草
本Ⅱ:216.5 本/m2,不明:50.0 本/m2)の実生が確認された。高木種は 6 種 84.2 本/m2 と決し
て少ない値ではなかったものの,低木種がそれを大きく上回るという結果になった。サン
プリング地点別にみると高木種は 81.1%の地点で発芽が確認されたが,発芽本数密度の大小
にはばらつきがあった。埋土種子の発芽本数密度と環境因子との関係について重回帰分析
を行ったところ,全ての変数は棄却され,両者の間に有意な関係性は認められなかった。
以上の結果から,本調査地には相当量の埋土種子が,環境因子とは関わりなく不均一に分
布していることがわかった。また,現在残存している調査地周辺の森林はほとんどが針葉
樹人工林であり,種子散布源となる天然林はわずかにしか分布していない。このことは森
林伐採以前に現地を広く覆っていた広葉樹林から散布された種子が,現時点においても土
壌中で生存し,環境条件が整えば発芽可能となる埋土種子として存在しているという可能
性を示唆している。つまり,当森林伐採跡地ではササ地化している場所においても埋土種
子の発芽および実生の定着を図ることによって,森林更新を促進できると考えられた。た
だし,発芽試験の結果から,今回検出された埋土種子の内の 54.3%は低木種・つる・草本種
Ⅰであり,これらの種は更新阻害要因となり得る。このため,埋土種子による森林更新を
目指すのであれば,ササの除去と地表撹乱だけでなく,高木種の生長を助けるための下刈
りなどの保育管理も必要であると考えられる。
*1:高さが 1m 以上になる草本種 *2:高さが 1m に達しない草本種
1
1.はじめに
現在,我が国の林業は採算性の悪化,森林所有者の施業意欲の低下,林業産出額・林業
所得の減少,林業就業者の減少・高齢化が悪循環をなして進行するなど,長期的に低迷し
ている(林野庁, 2010)。これに伴い,森林伐採後に再造林されることなく放置される,再造
林放棄地が全国的に拡大しつつある。再造林放棄地の増加は,森林資源の減少につながる
だけでなく,その植生が回復しない場合,水源涵養機能や地球環境保全機能などの森林が
持つ公益的・多面的機能の低下が懸念されている。さらに,近年の地震や集中豪雨などの
自然災害の多発により,森林の土砂災害防止機能への国民の期待は高まっているものと思
われる。そのため,再造林放棄地の増加は林業のみならず,私たちの生活する環境や社会
全体における重要な問題であるといえる。
岐阜県飛騨地方御嶽山山麓には面積約 350ha の大面積森林伐採跡地が存在する。この場所
はかつて天然林と針葉樹人工林からなる林分であった。しかし,森林伐採後に造林作業を
行わなかったため,現在では面積の約 8 割がクマイザサ群落に覆われており(水野, 2009),
ササ群落内の地表面付近の相対散乱光は 1%未満である(上杉, 2009)。この再造林放棄地には
多くのカンバ類が生育しているが,カンバ類の種子の発芽および実生の定着には 20%以上
の相対散乱光が必要である(石田, 2000)ことから,ササによって森林更新が阻害されている
ものと推測される。そこで,この再造林放棄地を対象として,低コストで省力的な天然更
新技術を検討する研究がされた。その方法は,ササ地に繁殖雌牛を放牧し,ササの葉を食
べさせることでササ地内の光環境の改善を目指すというものである。その結果,牛がササ
を摂食した範囲に限り,ササの出現を抑制し,陽樹の旺盛な伸長生長を可能にする林床の
光環境を形成する効果があることが確認された(岩川, 2010)。
牛がササの葉を食べることによって光環境が改善し,同時に地表撹乱が行われれば,そ
の撹乱に反応して埋土種子が発芽することが期待される。埋土種子とは,発芽の最適期を
待って休眠状態を維持しており,撹乱などによって発芽できる環境条件が整うと発芽する
種子のことである(沼田, 1981)。埋土種子は森林の更新や維持にとって重要な役割を持つと
されている(Nakagoshi, 1985)。また,前生樹が待機している場合を除くと,天然更新の初期
段階には埋土種子が重要な役割を果たすと言われている(荻野, 1989)。したがって,埋土種
子組成を明らかにすることは,当森林伐採跡地の森林更新法を検討する際の重要な手がか
りとなると考えられる。
埋土種子に関する研究は,天然林と隣接する針葉樹人工林の埋土種子組成についての研
究(酒井ら, 2006)やスギ人工林と広葉樹二次林の埋土種子集団を比較した研究(川西ら, 2007),
2
スギ人工林における埋土種子密度と種構成についての研究(高橋ら, 2009)などといったもの
があるが,未だに解明されていない点が多いと思われる。特に,埋土種子と環境因子との
関係についてはあまり知られていない。林縁からの距離との関係について調べた例(小谷,
2007)はあるものの,さまざまな環境因子を複合的に検討した例は報告されていない。
そこで,本研究では,ササ地と化した森林伐採跡地を調査地とし,その埋土種子組成を
明らかにするとともに,埋土種子の発芽本数密度と五つの環境因子(傾斜角度,斜面方位,
Topographic Index,ササの被度,母樹からの距離)との関係について調査した。そして,本調
査地内のササを除去することができれば埋土種子による森林更新が可能なのかを検討した。
3
2.調査地と方法
2.1.調査地の概要
岐阜県飛騨地方御嶽山山麓の民有林内に面積約 350ha の森林伐採跡地が存在する。この森
林伐採跡地は大きく分けて東,中央,西の三つのブロックに分けることができ,本研究で
は面積約 120ha の中央のブロック(北緯 35°59′41″,東経 137°19′35″,標高 979m-
1231m)を調査地とした(図 1)。国土数値情報の気候メッシュデータによると,年平均気温と
年平均降水量はそれぞれ 8.6℃,2155mm であり,平年積雪深は 62cm である。また,温量
指数は 70.2 であり温帯落葉広葉樹林帯に属する。
当森林伐採跡地は,森林伐採後に造林作業が行われなかったため,現在は 350ha の面積の
内の約 8 割はクマイザサ優占地となっており(水野 2009),120ha の本調査地も大部分がクマ
イザサに覆われている。樹木が天然更新している一部の場所ではシラカンバ,ウダイカン
バ,ダケカンバなどのカンバ類が優占している。その他,ミズナラやウワミズザクラ,ミ
ヤマザクラ,ホオノキなどの高木性樹種や,ノリウツギ,タニウツギ,タラノキなどの低
木性樹種が生育している。
本調査地の前生林分は,1990 年 4 月に撮影された空中写真を判読した結果,大径落葉広
葉樹林,小径落葉広葉樹林,ヒノキ人工林,カラマツ人工林の 4 タイプに分類された(図 2)。
水野(2010)によると,当森林伐採跡地内には森林更新地かササ地かに関わらず,シラカンバ,
ミズナラ,クリの切株が多数あり,切株の直径は,シラカンバで 12cm~57cm,ミズナラで
12cm~72cm,クリで 15cm~59cm であった。このことから,本調査地の前生林分の主要樹
種は,シラカンバ,ミズナラ,クリであり,その中には直径が 50cm 以上になる樹木もあっ
たと考えられる。また,空中写真によると 1990 年 4 月においてはまだ伐採が行われておら
ず,2000 年 5 月には一部が伐採されていた。そして,2005 年 5 月には現在と同様に約 350ha
が伐採されていたことから,本調査地は伐採から 10 年前後が経過していると推測される。
さらに,2005 年 5 月に撮影された空中写真から判断すると,現在残存している当森林伐採
跡地周辺の森林はほとんどが針葉樹人工林であり,種子散布源となる天然林はわずかにし
か分布していない。
4
図 1.森林伐採跡地の全容
(黒線内が 350ha の森林伐採跡地全体であり,白の四角枠で囲まれている中央のブロックが
120ha の本調査地である。)
図 2.1990 年 4 月の空中写真より判読した森林伐採跡地の前生林分
:大径落葉広葉樹林
:小径落葉広葉樹林
:ヒノキ人工林
:カラマツ人工林
5
2.2.調査方法
(1)土壌サンプリングとササの被度調査
調査は当森林伐採跡地を横断するように設置した 3 本のベルト・トランセクトを用いて
行った。ベルト 1 は 946m,ベルト 2 は 756m,ベルト 3 は 274m であり,全長は 2.0km に及
ぶ。土壌サンプリングは 2011 年 4 月 19 日および 20 日の 2 日間に渡って行われた。サンプ
リング地点はフリーソフトウェア「カシミール 3D」を用いて 20m 間隔に設定し,現地では
地形図および携帯用 GPS(GARMIN,eTrex Venture HC)を使用して各地点を特定した。埋土
種子は表層から 5cm までの土壌中にほとんど全てが含まれていることが知られている(中越,
1981)ため,サンプルの大きさは 20cm×30cm×5cm とした。また,土壌サンプリングと同
時に,ベルト・トランセクトに沿って 2m 間隔にササの被度調査も行った。幅を 1m とし,
2m×1m の方形区内のササの被度(%)を記録した。3 本のベルトの位置およびサンプリング
結果は以下に示す通りである。
ベルト 3
ベルト 2
ベルト 1
図 3.ベルト・トランセクトの位置
表 1.サンプリング結果
ベルト1
ベルト2
ベルト3
合計
サンプル数 面積(m2) 体積(m3)
46
2.76
0.14
38
2.28
0.11
11
0.66
0.03
95
5.70
0.29
写真 1.サンプリングの様子
6
また,サンプリング地点はササの被度および水野(2011)の毎木調査の結果から大きく分け
て 4 タイプに分類された。
1.残存林分
サンプリング地点から前後 10m 以内に前生林分から伐採されずに残った樹木(残存木)
が 1 本以上ある場所
2.更新地
サンプリング地点の前後 10m 以内に残存木がなく,樹高 2m 以上の高木性樹種が
10 本以上ある場所
3.ササ地
サンプリング地点の前後 10m 以内に残存木がなく,樹高 2m 以上の高木性樹種が
10 本未満であり,ササが密生している場所
4.沢源頭部
沢の源頭部であり,岩が多く,上記の 3 タイプとは異質な森林を形成している場所
1
2
残存林分
更新地
3
4
ササ地
沢源頭部
写真 2.サンプリング地点の分類例
7
前項で述べた分類基準をもとに各ベルトの特徴を説明すると以下のようになる。
【ベルト 1】
長さは 946m であり,標高は 1050m-1231m に及ぶ。斜面上部から中部までは更新地だが,
途中に残存林分が一部含まれている。斜面下部はササ地の割合が高い。しかし,ベルトの
終点付近は沢の源頭部のため岩や低木性樹種が多い。
斜面下部
沢源頭部
斜面上部
ササ地
更新地
前生林分
更新地
図 3.ベルト 1 の詳細
【ベルト 2】
長さは 756m であり,標高は 979m-1225m に及ぶ。斜面上部は更新地だが,ベルトの始点
付近に残存林分が一部含まれている。斜面中部から下部はササ地の割合が高いが,ベルト
の終点付近はベルト 1 と同様に,沢の源頭部のため岩や低木性樹種が多い。
斜面下部
沢源頭部
斜面上部
ササ地
更新地
図 4.ベルト 2 の詳細
8
前生林分
【ベルト 3】
長さは 756m であり,標高は 1108m-1190m に及ぶ。ベルト全体でササ地の割合が高いが,
一部更新している。残存林分および沢の源頭部は含まれていない。
斜面下部
斜面上部
更新地
ササ地
ササ地
図 5.ベルト 3 の詳細
(2)埋土種子集団の推定法
サンプル土壌の埋土種子集団の推定には「発芽試験法」(露崎, 1990)を用いた。発芽試験
法とは室内にてサンプルした土壌を散布し,適宜水を与えながら種子を発芽させて実生を
数える方法である。埋土種子集団を推定する方法は,この他に直接検鏡法や篩分け法,比
重選別法といったものがあるが,発芽試験法はこれらの方法に比べて操作が容易であり大
量のサンプル中の発芽能力を持った種子だけを効率的に検出することができる。しかしそ
の一方で,試験期間が非常に長く,実生の同定や水の管理,外部からの種子混入(コンタミ
ネーション)を防ぐことが難しいという欠点を持っている。さらに,光・温度・水分条件に
より発芽する種子が異なり(Vegis, 1964),季節的に種子の発芽特性は変化することから(鈴木,
1984),土壌中の種子が全て発芽したとは限らず正確さには問題があるともいわれている(露
崎, 1990)。そのような欠点も十分に理解した上で,本研究では「発芽試験法」を採用した。
発芽試験は 2011 年 4 月 26 日から 12 月 13 日までの約 8 ヶ月間行った。サンプル土壌はバ
ーミキュライトを敷いたプランターに薄く広げ,岐阜大学柳戸試験林に設置した寒冷紗ハ
ウスで管理した。また,水は自動散水器により適宜与えた。発芽した実生は同定できる大
きさになるまで育て,同定できたものはカウントし,プランターから除去していった。観
察を開始してから1ヶ月ほど経過した時点で大量の実生が発芽し,カウントをする前に実
生が枯死・消失する可能性が高まったため,毎週 1 回実生の分布をプランター上から定点
9
撮影し,発芽した実生については出来る限りカウントできるようにした。撮影の方法は,
自作の定点撮影用の台をプランターにかぶせ,一つのプランターにつき 4 枚の写真を撮影
するというものである。写真が一部オーバーラップしてしまうためプランターに線を引き,
分かるようにした。また,実生がどのように生長していくのかを知るため各種の実生をい
くつか選定し,毎週 1~2 回写真を撮影した。これらの写真撮影は約 6 ヶ月間続けた。
写真 3.寒冷紗ハウス内の様子(発芽試験前)
写真 4.定点撮影用の台(左)とその使用法(右)
(木枠の中にカメラのレンズを差し込み撮影。木枠右上の棒は写真が回転するのを防ぐ
ためのもの。)
10
写真 5.定点撮影した写真の一例
(青色の枠内がオーバーラップしていない部分。)
6 月 10 日
6 月 17 日
6 月 24 日
7 月 12 日
7月5日
6 月 28 日
7 月 19 日
7 月 26 日
8月5日
写真 6.実生の生長記録写真の一例(ウダイカンバ)
11
5 月 26 日
6 月 10 日
7月5日
6 月 24 日
7 月 19 日
8月2日
写真 7.定点撮影した写真の 2 週間毎の変化①(更新地のサンプル)
サンプリング地点
12
5 月 26 日
6 月 10 日
7月5日
6 月 24 日
7 月 19 日
8月2日
写真 8.定点撮影した写真の 2 週間毎の変化②(ササ地のサンプル)
サンプリング地点
13
2.3.解析方法
埋土種子中の高木種の含有量が森林更新の可能性に深く関わると考えられるため,解析
は高木種に着目して行った。そして,埋土種子の発芽本数密度と環境因子との関係を知る
ため,発芽試験における高木種の発芽本数密度を被説明変数とし,それに影響を及ぼして
いると思われる五つの説明変数(ササの被度,傾斜角度,斜面方位,Topographic Index,母樹
からの距離)を設定した。ただし,発芽試験で確認された高木種の中にはフサザクラが含ま
れていた。フサザクラは谷筋や崩壊地などの限られた環境下でしか生育しないため,環境
因子との結びつきが強いと考えられる上に,主要な森林構成樹種であるとは考えにくい。
そこで,解析では高木種の中からフサザクラを除外し,環境因子との関係性が明確には分
からない主要な森林構成樹種のみを対象とした。Topographic Index とは分布型流出モデル
「TOPMODEL」より算出されるモデルパラメーターであり,水が集まりやすい場所を表す
一つの指標である。ササの被度を除く四つの説明変数は GIS(Geographic Information System:
地理情報システム)を利用して算出した。その算出には航空レーザー測量により測定された
DEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)および DSM(Digital Surface Model:数値表層
モデル)のデータ(4m メッシュ)を利用した。これらは岐阜県より提供して頂いたデータであ
る。また,解析は統計解析ソフト「R」(バージョン 2.10.1)を用いて実施した。
傾斜角度,斜面方位および Topographic Index は DEM の値より算出されるが,ここではそ
の詳しい算出方法については省略することとする。これら三つの値はまず調査地全体で算
出した後に各サンプリング地点の値のみを抽出し,解析に用いた。母樹からの距離は DSM
の値から DEM の値を差し引いて得られる VH(Vegetation Height:植生高)を利用し,植生高
が 15m 以上の点を母樹として推定した。しかし,植生高からだけでは針葉樹か広葉樹かを
判別できないため,その判別には空中写真を利用し,樹冠の形状および色から広葉樹のみ
の母樹を設定した。広葉樹のみとする理由は,発芽試験で針葉樹の種子が検出されなかっ
たためである。そして,各サンプリング地点から母樹までの最短距離を求め,母樹からの
距離とした。そして,重回帰分析により高木種(フサザクラを除く)の発芽本数密度と五つの
環境因子との関係について検討した。
14
(度)
(度)
(m)
図 6.傾斜角度(左上),斜面方位(右上),Topographic Index(左下),VH(右下)
のイメージ図
傾斜角度:値が大きいほど傾斜が急であり,小さいほど緩やかである。
斜面方位:真南が最大(180 度)であり,真北が最小(0 度)である。
Topographic Index:値が大きいほど水が集まりやすく,小さいほど流れやすい。
VH:値が大きいほど植生高が高く,小さいほど低い。
15
3.結果
3.1.発芽試験
発芽試験の結果,合計 6325 本(木本:4508 本,草本:1817 本)の実生が確認された。面積
当たりの発芽本数を発芽本数密度(本/m2)として表すと合計 1109.6 本/m2 (木本:790.9 本/m2,
草本:318.8 本/m2 )であった。
発芽本数密度 �本⁄m2 � =
発芽本数 (本)
サンプル数 × サンプル面積 0.06 (m2 )
種名まで同定することができた実生は 72 種(木本:29 種,草本:43 種),6040 本(木本:
4477 本,草本:1563 本)であった。キイチゴ属の木本およびカヤツリグサ科,イネ科,キク
科,スミレ属,カラマツソウ属の草本は同定が難しく,科・属までの同定しかできなかっ
たものがあった。そのようなものは 237 本(木本:23 本,草本:214 本)あった。また,科・
属すらも不明のものが 48 本(木本:8 本,草本:40 本)あった。このため,今回の発芽試験
における種数は実際には 72 種よりも多いと考えられる。
表 2.発芽試験の結果
発芽本数(本)
発芽本数密度(本/m2)
種まで同定できた実生 科・属まで同定できた実生
木本
草本
木本
草本
4477
1563
23
214
785.4
274.2
4.0
37.5
不明の実生
木本
草本
8
40
1.4
7.0
合計
木本
草本
4508
1817
790.9
318.8
全合計
6325
1109.6
次に,種名まで同定できた実生を生活型別(高木,小高木,低木,つる,草本Ⅰ,草本Ⅱ)(牧
野,1989)および種子散布型別(風散布,動物散布,自発散布,重力散布)(田川,1981)に分類し
た。ただし,草本Ⅰは高さが 1m 以上になる草本種,草本Ⅱは高さが 1m に達しない草本種
である。生活型別にみると種数は草本種Ⅱが最も多かったが,発芽本数密度では低木種が
最も多かった。また,生活型別に発芽本数密度の比率を円グラフ(図 8)にして表すと,高木
種を大きく上回る量の低木種および草本種が発芽したことがわかる。種子散布型別にみる
と種数は風散布および動物散布の種が多かったが,発芽本数密度では風散布の種が圧倒的
に多かった。
16
表 3. 生活型・種子散布型別の結果
生活型
高木
種子
散布型
風
動物
自発
重力
高木合計
種数
発芽本数(本)
発芽本数密度(本/m2)
4
2
0
0
6
465
15
0
0
480
81.6
2.6
0
0
84.2
2
3
0
0
5
861
29
0
0
890
151.1
5.1
0
0
156.2
小高木
風
動物
自発
重力
小高木合計
低木
風
動物
自発
重力
低木合計
5
10
0
0
15
2692
389
0
0
3081
472.3
68.2
0
0
540.5
つる
風
動物
自発
重力
つる合計
0
3
0
0
3
0
26
0
0
26
0
4.6
0
0
4.6
草本Ⅰ
風
動物
自発
重力
草本Ⅰ合計
5
0
0
1
6
158
0
0
171
329
27.7
0.0
0.0
30.0
57.7
草本Ⅱ
風
動物
自発
重力
草本Ⅱ合計
16
11
8
2
43
544
92
583
15
1234
95.4
16.1
102.3
2.6
216.5
全合計
72
6040
1059.6
草本Ⅰ:高さが 1m 以上になる草本種
草本Ⅱ:高さが 1m に達しない草本種
17
600
50
:自発
( 本 /㎡ )
400
300
:動物
:重力
0
0
100
10
200
20
種数
30
発芽本数密度
40
500
:風
高木
小高木
低木
つる
草本Ⅰ
草本Ⅱ
高木
小高木
低木
つる
草本Ⅰ
草本Ⅱ
図 7.生活型・種子散布型による種数(左)および発芽本数密度(右)の比較
つる
0.4%
不明
高木
4.5%
7.8%
草本Ⅱ
小高木
19.5%
14.1%
草本Ⅰ
5.2%
低木
48.7%
図 8.生活型別の発芽本数密度の内訳
18
次に,種別に結果をまとめると表 4 および図 9 のようになった。発芽本数密度の上位 5
種はノリウツギ,リョウブ,アカショウマ,フジウツギ,タニウツギであった。その中で
もノリウツギとリョウブが際立って多く,それぞれ 303.9 本/m2,150.9 本/m2 であり,二つ
を合わせると全体の 40.0%を占めた。高木種はウダイカンバが 41.4 本/m2 と全体で 6 番目に
多く,その他に,フサザクラ(25.8 本/m2)とシラカンバ(12.6 本/m2)が多かった。また,それ
ぞれの種について,全サンプル数に占める 1 本以上発芽したサンプル数を出現頻度(%)とし
て表すと,出現頻度の上位 5 種はノリウツギ,リョウブ,タラノキ,ウダイカンバ,タケ
ニグサであった。ノリウツギ,リョウブ,ウダイカンバは発芽本数密度,出現頻度ともに
高かった。一方,フジウツギとタニウツギは発芽本数密度については高かったものの,出
現頻度はそれぞれ 21.1%,31.6%と比較的低かった。また,高木種 6 種を合計した出現頻度
は 81.1%であった。
出現頻度 (%) =
1 本以上発芽したサンプル数
全サンプル数
× 100
表 4.種別の結果
生活型 種名
高木
ウダイカンバ
フサザクラ
シラカンバ
キハダ
ミズメ
クマノミズキ
種子
散布型
風
風
風
動物
風
動物
ベルト1(n=46)
本数a 密度b 頻度c
136
49.3
60.9
31 11.2
19.6
56 20.3
23.9
9
3.3 15.2
1
0.4
2.2
0
0
0
ベルト2(n=38)
本数a 密度b 頻度c
53 23.2
36.8
108
47.4
55.3
13
5.7 23.7
3
1.3
7.9
9
3.9
7.9
3
1.3
5.3
ベルト3(n=11)
本数a 密度b 頻度c
47 71.2
81.8
8 12.1
54.5
3
4.5
9.1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
合計(n=95)
本数a 密度b 頻度c
236
41.4
53.7
147
25.8
37.9
72 12.6
22.1
12
2.1 10.5
10
1.8
4.2
3
0.5
2.1
小高木 リョウブ
ヌルデ
エゴノキ
イヌツゲ
コミネカエデ
風
動物
動物
動物
風
297 107.6
14
5.1
0
0
0
0
0
0
60.9
17.4
0
0
0
340 149.1
10
4.4
3
1.3
2
0.9
1
0.4
68.4
15.8
2.6
2.6
2.6
223 337.9 100.0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
860 150.9
24
4.2
3
0.5
2
0.4
1
0.2
68.4
14.7
1.1
1.1
1.1
低木
ノリウツギ
フジウツギ
タニウツギ
コアジサイ
タラノキ
キブシ
ウツギ
ムラサキシキブ
ガマズミ
ダンコウバイ
クサギ
クマイチゴ
バライチゴ
フユイチゴ
エビガライチゴ
キイチゴ属spp.
風
風
風
風
動物
動物
風
動物
動物
動物
動物
動物
動物
動物
動物
-
744 269.6
304 110.1
33 12.0
141
51.1
110
39.9
13
4.7
21
7.6
2
0.7
0
0
0
0
0
0
3
1.1
8
2.9
5
1.8
3
1.1
3
1.1
91.3
21.7
21.7
8.7
67.4
15.2
17.4
2.2
0
0
0
6.5
10.9
6.5
2.2
6.5
707 310.1
9
3.9
265 116.2
85 37.3
91 39.9
97 42.5
44 19.3
2
0.9
3
1.3
2
0.9
1
0.4
1
0.4
8
3.5
11
4.8
0
0
15
6.6
89.5
15.8
44.7
13.2
44.7
55.3
15.8
5.3
7.9
2.6
2.6
2.6
10.5
7.9
0
18.4
281 425.8 100.0
8 12.1
36.4
10 15.2
27.3
10 15.2
18.2
12 18.2
45.5
2
3.0 18.2
30 45.5
18.2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
14 21.2
36.4
1
1.5
9.1
0
0
0
0
0
0
5
7.6 27.3
1732 303.9
321
56.3
308
54.0
236
41.4
213
37.4
112
19.6
95 16.7
4
0.7
3
0.5
2
0.4
1
0.2
18
3.2
17
3.0
16
2.8
3
0.5
23
4.0
91.6
21.1
31.6
11.6
55.8
31.6
16.8
3.2
3.2
1.1
1.1
8.4
10.5
6.3
1.1
13.7
つる
ヤマブドウ
マタタビ
ノブドウ
動物
動物
動物
不明木本
-
15
5
0
5.4
1.8
0
13.0
10.9
0
3
0
1
1.3
0
0.4
7.9
0
2.6
0
2
0
0
3.0
0
0
18.2
0
18
7
1
3.2
1.2
0.2
9.5
7.4
1.1
4
1.4
8.7
3
1.3
5.3
1
1.5
9.1
8
1.4
7.4
19
表 4 の続き
生活型 種名
草本Ⅰ タケニグサ
ヒヨドリバナ
アカソ
イタドリ
オトコエシ
ヒメムカシヨモギ
種子
散布型
重力
風
風
風
風
風
草本Ⅱ アカショウマ
オトギリソウ
サワギク
オカトラノオ
ミヤマカンスゲ
ミズ
コナスビ
オニタビラコ
ベニバナボロギク
ヒメジョオン
ツユクサ
タニソバ
ミヤマトウバナ
ヤエムグラ
ハハコグサ
タチツボスミレ
ミズヒキ
タネツケバナ
イガホオズキ
フキ
エノコログサ
スズメノヤリ
チチコグサ
アオイスミレ
ツルアリドオシ
ニワゼキショウ
ムラサキケマン
チゴユリ
チヂミザサ
ヨモギ
チチコグサモドキ
イラクサ
キランソウ
ザクロソウ
キツリフネ
トキワハゼ
フタリシズカ
スミレ属spp.
カラマツソウ属spp.
キク科spp.
イネ科spp.
カヤツリグサ科ⅰ
カヤツリグサ科ⅱ
カヤツリグサ科spp.
自発
風
風
風
風
風
動物
風
風
風
動物
風
重力
動物
風
自発
風
自発
動物
動物
重力
動物
風
動物
動物
自発
自発
動物
動物
風
風
風
動物
自発
自発
自発
風
-
-
-
-
-
-
-
不明草本
-
ベルト1(n=46)
本数a 密度b 頻度c
71
25.7
39.1
41
14.9
32.6
12
4.3
15.2
31
11.2
21.7
0
0
0
0
0
0
511 185.1
80
29.0
9
3.3
52
18.8
30
10.9
8
2.9
11
4.0
9
3.3
19
6.9
16
5.8
0
0
12
4.3
11
4.0
0
0
5
1.8
2
0.7
0
0
2
0.7
5
1.8
4
1.4
4
1.4
3
1.1
2
0.7
2
0.7
2
0.7
1
0.4
2
0.7
2
0.7
0
0
1
0.4
1
0.4
1
0.4
1
0.4
1
0.4
0
0
1
0.4
1
0.4
6
2.2
2
0.7
2
0.7
25
9.1
115
41.7
10
3.6
2
0.7
16
5.8
ベルト2(n=38)
本数a 密度b 頻度c
78
34.2
52.6
21
9.2
23.7
42
18.4
7.9
0
0
0
2
0.9
2.6
1
0.4
2.6
52
18
88
18
49
51
11
17
5
1
13
0
0
11
3
4
6
3
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
2
0
0
0
0
0
1
0
0
9
0
5
10
16
9
0
22.8
7.9
38.6
7.9
21.5
22.4
4.8
7.5
2.2
0.4
5.7
0
0
4.8
1.3
1.8
2.6
1.3
0
0
0.0
0
0
0
0
0.4
0
0
0.9
0.0
0
0
0
0
0.4
0
0
3.9
0
2.2
4.4
7.0
3.9
0
10.5
15.8
23.7
18.4
21.1
7.9
13.2
13.2
7.9
2.6
13.2
0
0
5.3
7.9
7.9
2.6
2.6
0
0
0.0
0
0
0
0
2.6
0
0
5.3
0.0
0
0
0
0
2.6
0
0
7.9
0
7.9
10.5
18.4
18.4
0
0
16
0
23
0
0
24
0
1
0
1
1
0
0
1
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
24.2
0
34.8
0
0
36.4
0
1.5
0
1.5
1.5
0
0
1.5
3.0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4.5
0
0
0
36.4
0
36.4
0
0
9.1
0
9.1
0
9.1
9.1
0
0
9.1
18.2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
9.1
0
0
563
114
97
93
79
59
46
26
25
17
14
13
11
11
9
8
6
5
5
4
4
3
2
2
2
2
2
2
2
1
1
1
1
1
1
1
1
15
2
7
35
134
19
2
98.8
20.0
17.0
16.3
13.9
10.4
8.1
4.6
4.4
3.0
2.5
2.3
1.9
1.9
1.6
1.4
1.1
0.9
0.9
0.7
0.7
0.5
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
2.6
0.4
1.2
6.1
23.5
3.3
0.4
25.3
17.9
14.7
21.1
16.8
7.4
13.7
9.5
14.7
6.3
6.3
5.3
3.2
2.1
8.4
7.4
1.1
2.1
3.2
2.1
2.1
2.1
1.1
2.1
2.1
2.1
2.1
1.1
2.1
1.1
1.1
1.1
1.1
1.1
1.1
1.1
1.1
7.4
1.1
5.3
13.7
18.9
16.8
2.1
15.2
22
9.6
15.8
2
3.0
9.1
40
7.0
14.7
(本)
b:発芽本数密度
c:出現頻度
合計(n=95)
本数a 密度b 頻度c
171
30.0
46.3
70
12.3
28.4
54
9.5
10.5
31
5.4
10.5
2
0.4
1.1
1
0.2
1.1
43.5
15.2
10.9
19.6
17.4
8.7
15.2
8.7
21.7
10.9
0
8.7
6.5
0
8.7
4.3
0
2.2
6.5
4.3
4.3
4.3
2.2
4.3
4.3
2.2
4.3
2.2
0
2.2
2.2
2.2
2.2
2.2
0
2.2
2.2
8.7
2.2
4.3
19.6
21.7
19.6
4.3
n:サンプル数
a:発芽本数
ベルト3(n=11)
本数a 密度b 頻度c
22
33.3
54.5
8
12.1
27.3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
(本/ m2)
(%)
20
:高木
ノリウツギ
リョウブ
アカショウマ
フジウツギ
タニウツギ
ウダイカンバ
コアジサイ
タラノキ
タケニグサ
フサザクラ
オトギリソウ
キブシ
サワギク
ウツギ
オカトラノオ
ミヤマカンスゲ
シラカンバ
ヒヨドリバナ
ミズ
アカソ
コナスビ
イタドリ
オニタビラコ
ベニバナボロギク
ヌルデ
ヤマブドウ
クマイチゴ
ヒメジョオン
バライチゴ
フユイチゴ
ツユクサ
タニソバ
キハダ
ミヤマトウバナ
ヤエムグラ
ミズメ
ハハコグサ
タチツボスミレ
マタタビ
ミズヒキ
タネツケバナ
イガホオズキ
フキ
エノコログサ
ムラサキシキブ
スズメノヤリ
ガマズミ
エビガライチゴ
エゴノキ
クマノミズキ
チチコグサ
アオイスミレ
ツルアリドオシ
オトコエシ
ニワゼキショウ
ムラサキケマン
チゴユリ
チヂミザサ
ダンコウバイ
イヌツゲ
ノブドウ
ヨモギ
ヒメムカシヨモギ
チチコグサモドキ
イラクサ
キランソウ
ザクロソウ
キツリフネ
トキワハゼ
フタリシズカ
クサギ
コミネカエデ
ノリウツギ
リョウブ
タラノキ
ウダイカンバ
タケニグサ
フサザクラ
キブシ
タニウツギ
ヒヨドリバナ
アカショウマ
シラカンバ
オカトラノオ
フジウツギ
オトギリソウ
ウツギ
ミヤマカンスゲ
ベニバナボロギク
ヌルデ
サワギク
コナスビ
コアジサイ
アカソ
イタドリ
バライチゴ
キハダ
オニタビラコ
ヤマブドウ
ハハコグサ
クマイチゴ
タチツボスミレ
マタタビ
ミズ
フユイチゴ
ツユクサ
ヒメジョオン
タニソバ
ミズメ
ムラサキシキブ
ミヤマトウバナ
ガマズミ
イガホオズキ
ヤエムグラ
フキ
エノコログサ
ニワゼキショウ
タネツケバナ
アオイスミレ
ツルアリドオシ
チヂミザサ
ムラサキケマン
クマノミズキ
スズメノヤリ
ノブドウ
ミズヒキ
エゴノキ
エビガライチゴ
イヌツゲ
ダンコウバイ
チチコグサ
オトコエシ
チゴユリ
ヨモギ
ヒメムカシヨモギ
チチコグサモドキ
イラクサ
キランソウ
ザクロソウ
キツリフネ
トキワハゼ
フタリシズカ
クサギ
コミネカエデ
0
50
150
250
:小高木
:低木
:草本Ⅰ
:草本Ⅱ
:つる
0
35
20
40
60
80
10
出現頻度 ( % )
発芽本数密度 ( 本
図 9.種別の発芽本数密度(左)および出現頻度(右)の比較
21
次に,高木種の結果に着目し,ベルト別にタイプ分け(残存林分,更新地,ササ地,沢源
頭部)した各サンプリング地点における発芽本数密度を図化すると図 10 のようになった。た
だし,解析方法の項で述べた理由により,フサザクラとそれ以外の高木種は分けて示した。
ベルト 1 は,残存林分の中央付近および更新地とササ地の境界付近で特に発芽本数密度が
高かったが,更新地の中央付近では低かった。また,ベルト 1 の終点付近のササ地および
沢源頭部ではフサザクラの発芽本数密度が高かった。ベルト 2 はササ地の中央付近で特に
発芽本数密度が高かったが,その大部分はフサザクラであった。ベルト 3 は際立って発芽
本数密度が高い地点はなく,ベルト全体で同じような傾向を示した。3 本のベルトを総合し
てみると,埋土種子の発芽本数密度は不連続的に変化しており,大小にはばらつきがみら
700
600
( 本 /㎡ )
500
400
発芽本数密度
( 本 /㎡ )
0
100
200
300
500
400
300
0
100
200
発芽本数密度
600
700
れた。
0
180 280 380 480 580 680 780 880
80
0
60
140 220 300 380 460 540 620 700
水平距離 ( m )
700
水平距離 ( m )
( 本 /㎡ )
500
高木種
:ササ
(フサザクラを除く)
:沢源頭部
:残存林分
300
400
:更新地
200
:更新地
100
:ササ地
フサザクラ
:沢源頭部
0
発芽本数密度
600
:残存林分
0
20
40
60
80
120
160
200
水平距離 ( m )
図 10.ベルト別(左上:ベルト 1,右上:ベルト 2,左下:ベルト 3)の高木種の発芽傾向
22
また,高木種の結果に着目し,3 本ベルトの合計発芽本数密度および出現頻度について,
更新地とササ地との間で比較をした(図 11)。残存林分および沢源頭部についてはサンプル数
が少なく,ササ地の森林更新ということについて考える上でそれほど重要性は高くないと
判断し,比較の対象とはしなかった。また,フサザクラについては解析方法の項で述べた
理由により,図 11 ではその他の高木種と分けて示し,比較対象からは除外した。発芽本数
密度について更新地とササ地との間で比較した結果,両者の間に有意差はみられなかった
(マン・ホイットニーの U 検定,p=0.44)。また,出現頻度について比較した結果においても
(% )
80
40
60
出現頻度
( 本 /㎡ )
60
40
0
20
20
0
発芽本数密度
80
100
100
両者の間に有意差はみられなかった(χ2 検定,p=0.76)。
更新地
ササ地
更新地
:更新地
高木種
:更新地
:ササ地
(フサザクラを除く)
:ササ地
フサザクラ
図 11.更新地とササ地の発芽本数密度(左)および出現頻度(右)による比較
23
ササ地
3.2. 高木種の発芽本数密度と環境因子の関係
すでに述べたように,埋土種子中の高木種の含有量が森林更新の可能性に深く関わると
考えられるため,解析は高木種に着目し,重回帰分析を行った。ただし,解析方法の項で
述べた理由によりフサザクラは除いた。また,便宜上,六つの変数(傾斜角度,斜面方位,
Topographic Index,ササの被度,母樹からの距離,高木種の発芽本数密度)をそれぞれ,Slope,
Azimuth,Topindex,SasaCover,Distance,Tree と呼ぶこととする。結果は表 5~表 7 のよう
になった。全ての変数は棄却され,高木種の発芽本数密度と環境因子との間に有意な関係
性は認められなかった(表 6)。
表 5.各変数間の相関係数
項目
Slope
Azimuth
Topindex
SasaCover
Distance
Tree
Slope
-
Azimuth
-0.19
-
Topindex
0.09
0.14
-
SasaCover Distance
Tree
0.32
0.55
-0.24
-0.26
-0.22
0.12
-0.22
0.15
-0.12
0.52
-0.01
-0.17
-
表 6.重回帰分析の結果
項目
切片
Slope
Azimuth
Topindex
SasaCover
Distance
回帰係数
標準誤差
t値
118.89
51.00
-1.70
1.04
0.21
0.22
-5.48
7.03
0.19
0.26
-0.05
0.11
P値
2.33
-1.64
0.96
-0.78
0.72
-0.49
表 7.回帰式の適合度
項目
重相関係数R
決定係数R2
自由度調整済み決定係数R2
標準誤差
0.28
0.08
0.03
90.10
24
0.02
0.11
0.34
0.44
0.47
0.63
以下の図は,Slope,Azimuth,Topindex,VH のイメージ図に Tree(発芽本数密度)の値をの
せたものであり,“●”が大きいほど発芽本数密度が高いことを表している。これらの図か
らも環境因子とは無関係に埋土種子が分布していることを見て取ることができる。
:50 本/m2
:250 本/m2
:500 本/m2
(度)
:50 本/m2
:250 本/m2
:500 本/m2
(度)
図 12.傾斜角度(上) および斜面方位(下)と高木種の発芽本数密度の関係
25
:50 本/m2
:250 本/m2
:500 本/m2
:50 本/m2
:250 本/m2
:500 本/m2
(m)
図 13.Topographic Index(上)および植生高(下)と高木種の発芽本数密度の関係
26
4.考察
4.1.埋土種子の種数および個数
本研究の発芽試験における合計発芽本数は 72 種 6325 本であり,発芽本数密度に換算す
ると 1109.6 本/m2(深さ 5cm)であった。つまり,72 種 1109.6 個/m2(深さ 5cm)の埋土種子が検
出された。発芽試験法による埋土種子の研究(いずれも深さ 5cm)では,スギ人工林から 67
種 1064 個/m2(Sakai et al, 2005),30 種 1866.7 個/m2(川西ら, 2007),ヒノキ人工林から 10 種
1107.4 個/m2(木佐貫ら, 2002),コナラ林から 38~50 種 605~1830 個/m2(山瀬, 2003),広葉樹
二次林から 28 種 2408.3 個(川西ら, 2007)の種子が検出されている。本調査地のようにササ地
化した森林伐採跡地での研究がないため単純には比較できないが,他の研究と比較してみ
ると,本研究で検出された埋土種子の種数は多かった。種子密度でみると,他の研究と大
差ない結果であった。
4.2.埋土種子の種組成
生活型別にみると発芽試験で発芽本数が最も多かったのはノリウツギやタニウツギ,フ
ジウツギなどの低木種であり,全体の 48.7%を占めた。この傾向はこれまでの報告(木佐貫
ら, 2002,酒井, 2006,小谷, 2007)とも一致する。高木種の全体に占める割合は 7.8%であり,
低木種がそれを大きく上回るという結果であった。
木本種だけに限定して種子散布型別にみると種数は風散布および動物散布の種がほとん
どであり,それぞれ 10 種と 18 種であった。しかし,発芽本数密度でみると風散布の種が
705.0 本/m2 であったのに対し,動物散布の種はわずか 80.5 本/m2 であった。これまでの報告
(Sakai et al, 2005,小谷, 2007,高橋・長谷川, 2009)によると木本種の埋土種子は動物散布の
種,特に鳥による被食散布の種が多いとされている。しかし,本調査地では種数について
は動物散布の種が多かったものの,発芽本数密度は風散布の種が圧倒的に多かった。この
理由は,ササ地化した当森林伐採跡地には鳥の止まり木となるような樹木が少なく,鳥が
飛来してくるような環境になっていないことが考えられる。
種別にみると発芽本数密度,出現頻度ともに高かったのはノリウツギ(303.9 本/m2,91.6%)
とリョウブ(150.9 本/m2,68.4%)であった。これら 2 種と比較すると値は低めであるが,ウダ
イカンバも発芽本数密度 41.4 本/m2,出現頻度 53.7%であり全体の中では高い結果であった。
つまり,これらの 3 種の埋土種子は調査地内に多く,かつ高い確率で含まれていることが
示唆された。一方,発芽本数密度の上位 5 種に含まれるアカショウマ(98.8 本/m2),フジウ
ツギ(56.3 本/m2),タニウツギ(54.0 本/m2)は,発芽本数密度は高かったものの,出現頻度は
27
それぞれ 25.3%,21.1%,31.6%と比較的低かった。このことから,これら 3 種の埋土種子
は局所的に多く分布していると考えられた。また,発芽本数密度の上位種は先駆性が強い
種(ノリウツギ,リョウブ,フジウツギ,タニウツギ,ウダイカンバなど)がほとんどであっ
た。このことは Sakai et al(2005)や小谷(2007)の結果とよく一致する。
以上のことから,本調査地で検出された埋土種子集団は,低木種が多く,しかも風散布
の種が大部分であり,先駆性が強いことがわかった。低木種・先駆種が多いことは過去の
研究ともよく一致していたが,大部分が風散布の種であったことは異なっていた。このこ
とから,動物散布の種子が少なく,風散布の種子が非常に多いことは当森林伐採跡地にお
ける埋土種子集団の重要な特徴であると考えられた。
4.3.高木種の発芽本数密度と環境因子の関係
全高木種を合計した出現頻度は 81.1%と高かったが,サンプリング地点別にみると地点に
よって発芽本数密度には大きくばらつきがみられた(図 10)。これは浜田・倉本(1984)の結果
と一致する。発芽本数密度のばらつきには,環境因子が何らかの影響を及ぼしているとい
う可能性が推察されるが,本研究で設定した五つの環境因子(傾斜角度,斜面方位,
Topographic Index,ササの被度,母樹からの距離)と高木種の発芽本数密度との間に有意な関
係性は認められなかった。つまり,高木種の埋土種子は環境因子とは関わりなく,調査地
内に不均一に分布していると考えられた。
しかし,Sato and Himura(1998)の結果によると,カンバ類の落下種子密度は風の影響を除
去すると最頻値は 25.0m であり,その後落下種子密度は単調に減少していた。また,樋口・
肥後(1994)もウダイカンバやミズメなどの風散布型種子は林縁からの距離が増加すると落
下種子数が単調に減少していたと報告している。本研究で検出された高木種(フサザクラを
除く)の埋土種子は,ほとんどがウダイカンバおよびシラカンバであった。このことから推
測すると,本研究での高木種の発芽本数密度も母樹(林縁)からの距離が増加するにつれて減
少することが期待されるが,今回はそのような結果にならなかった。この理由として考え
られることは,今回検出された埋土種子が残存林分によって供給されているものではなく,
かつて現地を広く覆っていた広葉樹林由来のものであるということである。水野(2010)の結
果よると,当森林伐採跡地内には森林更新地かササ地かに関わらず,多数の切株があり,
切株の直径は大きいものでシラカンバは 57cm,ミズナラは 72cm,クリは 59cm であった。
このことから推測すると,本調査地の前生林分は,直径が 50cm 以上になる大径な樹木も含
む,落葉広葉樹主体の大きな林分であったと考えられる。しかも,現在調査地周辺の森林
28
はほとんどが針葉樹人工林であり,種子供給源となりそうな天然林はわずかにしか分布し
ていない。また,ウダイカンバやシラカンバなどの先駆種の種子は少なくとも 2~3 年以上
は埋土種子として土壌中で生存し,長期間にわたって発芽することが知られている(水井,
1993)。以上のことから,今回検出された種子は,前生林分由来のものであり,それらが現
時点においても土壌中で埋土種子として生存していたという可能性が示唆された。
4.4.埋土種子による森林更新
今回の結果から,当森林伐採跡地には環境因子とは関わりなく相当量の埋土種子が分布
していることがわかった。また,高木種(フサザクラを除く)の発芽本数密度および出現頻度
について更新地とササ地との間で比較をした結果,発芽本数密度,出現頻度ともに両者の
間に有意差はみられなかった。つまり,発芽可能な高木種の埋土種子量は更新地とササ地
との間で大きな差はなく,ほぼ同程度であることが示唆された。よって,ササ地化してい
る場所においても埋土種子の発芽および実生の定着を図ることで森林更新を促進できると
考えられた。ただし,二つのことに注意する必要がある。
一つは,今回検出された埋土種子集団を構成する種のほとんどが先駆性の強い樹種や草
本種だということである。そして,ミズナラやブナ,クリといったブナ科の樹種は含まれ
ていない。こうした樹種は種子の寿命が短く,ほとんどの種子が暗い森林の中でも発芽し
て実生になるため埋土種子にならないことが知られている(壁谷, 2008)。したがって,埋土
種子は植生を回復させる機能はあるものの,その地域の天然林を代表する樹種まではカバ
ーしていないため,万能ではない(酒井, 2008)。つまり,多様性という観点からみると,埋
土種子のみに頼った森林更新では不十分かもしれない。
もう一つは,今回検出された埋土種子の内の 54.3%は低木種・つる・草本種Ⅰ(図 8) であ
り,これらの種は更新阻害要因となり得るということである。特に,今回最も多く発芽し
たノリウツギは,発芽試験で観察した結果から推測するに,非常に先駆性が強く,生長が
早いといわれるウダイカンバよりも初期生長は早い。このため,ササを除去し,地表攪乱
をしただけで有用性の高い林分を成立させることは期待できないかもしれない。つまり,
埋土種子による森林更新を目指すのであれば,ササの除去と地表撹乱だけでなく,高木種
の生長を助けるための下刈りなどの保育管理も必要であると考えられる。
29
5.おわりに
本研究では,大面積森林伐採跡地において,その埋土種子組成を明らかにするとともに,
埋土種子の発芽本数密度と環境因子との関係について調べた。そして,今回は埋土種子集
団を推定する方法として「発芽試験法」を用いた。その結果,以下のことがわかった。
1.本調査地で検出された埋土種子集団は,低木種が多く,しかも風散布の種が大部分であ
り,先駆性が強い。
2.更新地とササ地との間で発芽可能な高木種(フサザクラを除く)の埋土種子量に大きな差
はなく,ほぼ同程度である。
3.高木種(フサザクラを除く)の埋土種子は環境因子とは関わりなく,調査地内に不均一に
分布している。
4.今回検出された埋土種子は残存林分によって供給されているものではなく,前生林分由
来のものである可能性がある。
5.当森林伐採跡地でササ地化している場所においても,埋土種子の発芽および実生の定着
を図ることによって森林更新を促進できる可能性が高い。
6.ブナ科の樹種は埋土種子になりにくいため,埋土種子のみに頼った森林更新では多様性
という観点からみると不十分である可能性がある。
7.埋土種子による森林更新を目指すのであれば,ササの除去と地表撹乱だけでなく,高木
種の生長を助けるための下刈りなどの保育管理も必要である。
ただし,種子の休眠解除の条件は種ごとに異なるため,埋土種子集団を構成する全ての
種子にとって最適な発芽環境を満たすことは不可能である。このため,条件を変えてより
長い期間でサンプル土壌の観察を続ければまた違う結果が得られるかもしれない。また,
今回は 3 本のベルト・トランセクトから土壌サンプルを採取したに過ぎない。このため,
350ha という広大な森林伐採跡地の埋土種子組成を明らかにするためには,新たにベルト・
トランセクトを設置し,サンプル数を増やす必要があると考えられる。
30
6.謝辞
本研究を行うに際してご指導いただきました岐阜大学応用生物科学部山地管理学研究室
の石田仁准教授,調査地を提供していただいた湯之島館様,航空レーザー測量のデータを
提供していただいた岐阜県林政部の皆様に厚くお礼申しあげます。また,本研究にあたり
調査や寒冷紗ハウスの準備等を手伝っていただいた植物生産管理学研究室の村上芳哉先輩,
山地管理学研究室の直井聡先輩,芦原雅人君,奥山綾菜さん,川口泰平君に深く感謝いた
します。
31
7.引用・参考文献
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33
8.付表
表 8.フロラリスト
科名
クスノキ科
種名
学名
ダンコウバイ
Lindera obtusiloba Blume
センリョウ科
フタリシズカ
Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult.
ケシ科
タケニグサ
Macleaya cordata (Willd.) R. Br.
ケマンソウ科
ムラサキケマン
Corydalis incisa (Thunb.) Pers.
フサザクラ科
フサザクラ
Euptelea polyandra Sieb. et Zucc.
イラクサ科
アカソ
Boehmeria tricuspis (Hance) Makino
ミズ
Pilea hamaoi Makino
イラクサ
Urtica thunbergiana Sieb. et Zucc.
ミズメ
Betula grossa Sieb. et Zucc.
ウダイカンバ
Betula maximowicziana Regel
シラカンバ
Betula platyphylla Sukatchev var. japonica (Miq.) Hara
ザクロソウ科
ザクロソウ
Mollugo pentaphylla L.
タデ科
ミズヒキ
Antenoron filiforme (Thunb.) Roberty et Vautier
タニソバ
Persicaria nepalensis (Meisn.) H. Gross
イタドリ
Reynoutria japonica Houtt.
マタタビ科
マタタビ
Actinidia polygama (Sieb. et Zucc.) Planch. ex Maxim.
オトギリソウ科
オトギリソウ
Hypericum erectum Thunb.
キブシ科
キブシ
Stachyurus praecox Sieb. et Zucc.
スミレ科
タチツボスミレ
Viola grypoceras A. Gray
アオイスミレ
Viola hondoensis W. Becker et H. Boiss.
アブラナ科
タネツケバナ
Cardamine flexuosa With.
リョウブ科
リョウブ
Clethra barbinervis Sieb. et Zucc.
エゴノキ科
エゴノキ
Styrax japonica Sieb. et Zucc.
サクラソウ科
オカトラノオ
Lysimachia clethroides Duby
コナスビ
Lysimachia japonica Thunb.
ウツギ
Deutzia crenata Sieb. et Zucc.
コアジサイ
Hydrangea hirta (Thunb. ex Murray) Sieb. et Zucc.
ノリウツギ
Hydrangea paniculata Sieb. et Zucc.
アカショウマ
Astilbe thunbergii (Sieb. et Zucc.) Miq.
カバノキ科
アジサイ科
ユキノシタ科
34
表 8 の続き
科名
バラ科
種名
学名
ミツバツチグリ
Potentilla freyniana Bornm.
フユイチゴ
Rubus buergeri Miquel
クマイチゴ
Rubus crataegifolius Bunge
バライチゴ
Rubus illecebrosus Focke
エビガライチゴ
Rubus phoenicolasius Maxim.
ミズキ科
クマノミズキ
Cornus macrophylla Wallich
モチノキ科
イヌツゲ
Ilex crenata Thunb.
ブドウ科
ノブドウ
Ampelopsis brevipedunculata (Maxim.) Trautv.
ヤマブドウ
Vitis coignetiae Pulliat ex Planch.
カエデ科
コミネカエデ
Acer micranthum Sieb. et Zucc.
ウルシ科
ヌルデ
Rhus javanica L. var. roxburghii (DC.) Rehd. et Wils.
ミカン科
キハダ
Phellodendron amurense Ruprect
ツリフネソウ科
キツリフネ
Impatiens noli-tangere L.
ウコギ科
タラノキ
Aralia elata (Miq.) Seemann
ナス科
イガホオズキ
Physaliastrum japonicum (Franch. et Savat.) Honda
クマツヅラ科
ムラサキシキブ
Callicarpa japonica Thunb.
クサギ
Clerodendrum trichotomum Thunb.
キランソウ
Ajuga decumbens Thunb.
ミヤマトウバナ
Clinopodium sachalinense (Fr. Schm.) Koidz.
フジウツギ科
フジウツギ
Buddleja japonica Hemsley
アカネ科
ヤエムグラ
Galium spurium L. var. echinospermon (Wallr.) Hayek
ツルアリドオシ
Mitchella undulata Sieb. et Zucc.
ガマズミ
Viburnum dilatatum Thunb. ex Murray
タニウツギ
Weigela hortensis (Sieb. et Zucc.) Koch.
オミナエシ科
オトコエシ
Patrinia villosa (Thunb.) Juss.
キク科
ヨモギ
Artemisia indica Willd.
ヒメムカシヨモギ
Conyza canadensis L.
ベニバナボロギク
Crassocephalum crepidioides (Bentham) S. Moore
ヒメジョオン
Erigeron annuus (L.) Pers.
ヒヨドリバナ
Eupatorium chinense L.
シソ科
スイカズラ科
35
表 8 の続き
科名
キク科
種名
学名
ハハコグサ
Gnaphalium affine D. Don
チチコグサ
Gnaphalium japonicum Thunb.
チチコグサモドキ
Gnaphalium pensylvanicum Willd.
フキ
Petasites japonicus (Sieb. et Zucc.) Maxim.
サワギク
Senecio nikoensis Miq.
オニタビラコ
Youngia japonica (L.) DC.
ツユクサ科
ツユクサ
Commelina communis L.
イグサ科
スズメノヤリ
Luzula capitata (Miq.) Miq.
カヤツリグサ科
ミヤマカンスゲ
Carex dolichostachya Hayata var. glaberrima (Ohwi) T. Koyama
イネ科
チヂミザサ
Oplismenus undulatifolius (Ard.) Roem. et Schult. var. japonicus (Steud.) Koidz.
エノコログサ
Setaria viridis (L.) Beauv.
ユリ科
チゴユリ
Disporum smilacinum A. Gray
アヤメ科
ニワゼキショウ
Sisyrinchium atlanticum Bicknell
36
最後に,本研究で約 6 ヵ月間撮影した実生の写真の中から,一部抜粋して掲載した。発
芽試験を開始したのは 2011 年 4 月 26 日である。撮影にはデジタルカメラ(RICOH,GXR)
を使用した。
ウダイカンバ
6 月 10 日
7月8日
8月5日
7月8日
8月5日
7月8日
8月5日
6 月 24 日
7 月 24 日
シラカンバ
6 月 10 日
ミズメ
6 月 10 日
キハダ
5 月 24 日
37
フサザクラ
6 月 10 日
7月8日
8月5日
7月8日
8月5日
7 月 12 日
8 月 24 日
6 月 17 日
7 月 19 日
エゴノキ
6 月 10 日
リョウブ
6 月 24 日
ヌルデ
5 月 18 日
38
コミネカエデ
5月7日
6 月 10 日
7 月 12 日
6 月 21 日
7 月 19 日
7 月 19 日
8 月 24 日
6 月 24 日
7 月 23 日
ノリウツギ
5 月 26 日
フジウツギ
6 月 24 日
タニウツギ
5 月 24 日
39
ウツギ
6月6日
7月8日
8 月 11 日
6 月 21 日
7 月 29 日
7 月 12 日
8月5日
7月8日
7 月 29 日
タラノキ
5 月 24 日
キブシ
6月6日
マタタビ
6 月 13 日
40
ヤマブドウ
5 月 26 日
6 月 28 日
7 月 28 日
6月6日
7月8日
6月3日
7月5日
6 月 17 日
7 月 19 日
タケニグサ
5 月 21 日
イタドリ
5 月 14 日
ヒヨドリバナ
5 月 24 日
41
アカショウマ
7 月 15 日
8 月 18 日
10 月 16 日
6 月 10 日
7 月 12 日
6月3日
7月5日
6 月 21 日
7 月 23 日
ミツバツチグリ
5 月 18 日
サワギク
5 月 18 日
オカトラノオ
5 月 24 日
42
オトギリソウ
6 月 17 日
7 月 12 日
7 月 26 日
6 月 10 日
7月5日
5 月 24 日
6月6日
6 月 10 日
7月5日
ベニバナボロギ
5 月 18 日
ツユクサ
5月9日
タニソバ
5 月 14 日
43
ヤエムグラ
5月7日
5 月 24 日
6 月 13 日
6 月 10 日
7 月 12 日
6月3日
7月8日
6 月 10 日
8月5日
イガホオズキ
5 月 18 日
フキ
5 月 11 日
ツルアリドオシ
5 月 18 日
44
ムラサキケマン
6月3日
6 月 24 日
8月5日
6月6日
7 月 23 日
イラクサ
5 月 16 日
45
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