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草原管理を反映する指標植物の検証(2)

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草原管理を反映する指標植物の検証(2)
里山学研究センター 2014年度年次報告書
草原管理を反映する指標植物の検証(2)
近畿中国四国農業研究センター専門員・里山学研究センター研究スタッフ
高橋 佳孝
半自然草原が生物多様性保全上重要な生態系であるとの認識が高まり、各地で管理の再開や
保全活動が進められている。熊本県阿蘇地方でも、2005年に阿蘇草原再生協議会が発足し、官
民が一体となった草原の保全再生が進められているが、保全活動や再生事業の生物多様性保全
上の効果を評価するためには、実施者(牧野組合員)や支援者(ボランティア)が多様性の高
い草原を認識できる有効なツールを確立する必要がある。
もともと阿蘇では植生のデータが少なく、現在、環境省九州地方環境事務所を中心に、5
年前頃から植生調査によって基礎データを蓄積しつつある(図1)が、それらを活用して現
在、採草や放牧など管理方法を指標する植物種の抽出が行われている。その結果、北外輪山地
域の採草型草地に関しては、一般市民や農家に分かりやすい植物指標として、アキノキリンソ
ウ、アソノコギリソウ、オミナエシ、サイヨウシャジン、サワヒヨドリ、トダシバが選定され、
それらを用いて草原の診断をする「阿蘇草原の生物多様性評価用調査マニュアル−北外輪山地
域(採草型草地)編)」(写真)が作成されている。そこで、上述の植物指標が実際現場で使え
るかどうかを検証する作業の一環として、今回は指標種の有無と種多様性(種数)との関係性
を解析した(図2)。
植生調査を実施した303箇所の採草型草地において、上記の指標種が存在するか否か、また、
何種の指標種が含まれているかを検証した結果、指標種が多く出現する場所ほど草原性植物の
出現種数(/m2)が多くなる傾向が認められた。また、指標種が3種以上存在すれば全体の平
均出現種数を上回り、逆に放棄地の指標種が2種以上存在すれば平均種数を下回った。このこ
とから、マニュアルで規定した「指標種3種以上で高い得点配分をする」ことの妥当性が確認
された。また、阿蘇地方では、「盆花」として主に採草地の草花が盂蘭盆の墓前に供えられる
風習があるが、盆花に用いられる植物(75種、大滝 1976-2001より)の出現種数と指標種との
関係性においても同様の傾向が認められた(図省略)。
今回検証した指標種は、管理形態(採草)に応じた「草原の質」を指標しており、農家によ
る適切な管理(採草)が実施されていることとともに、植物種の豊富さも反映していることが
明らかとなった。そしてそれらの関係性は、地元の農家になじみ深い「盆花」を用いて説明す
ることも可能であると考えられた。識別しやすい指標植物による評価は、簡便な方法であると
ともに、将来的には環境支払いなどの施策にも応用できると考えられる。
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研究活動報告
図1 阿蘇草原における植生データの蓄積努力(植生調査点数の累積値)
写真 草原管理の指標植物による生物多様性評価マニュアル
(環境省九州地方環境事務所、左:北外輪山地域・採草型、右:中央火口丘地域・放牧型)
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里山学研究センター 2014年度年次報告書
図2 調査地に含まれる指標種の数と草原性植物の出現種数(/m2)との関係
(図中の点線は、全調査地を込みにした草原性植物の平均出現種数を示す)
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