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先進医療から保険医療化へ
臨 床 評 価 36 巻 別冊 2009 第Ⅱ部 実用段階に入る再生医療 下肢血管再生臨床試験の展開 先進医療から保険医療化へ Future trend and development of peripheral arterial regeneration clinical trials 星野 純一 Junichi Hoshino 虎の門病院腎センター Toranomon Hospital Nephrology Center 要なリスクファクターです.透析患者は毎年 1 万 はじめに 人ずつ増加し,昨年度末で総計 27.5 万人になりま す.透析患者は動脈の石灰化,身体機能の低下, われわれ臨床家にとって重要なのは,より多く 長期透析の増加などにより,PTA やバイパスなど の患者をいかによくするかということです.下肢 の既存治療に抵抗性の方が多いのが現状です 再生治療に関しては,最大患者層である透析患者 (Fig. 1) . 実際,amputation の頻度は,透析患者で高く, も含めた臨床試験が重要と考えています.現在わ が国初となる,透析患者も含めた先進医療の枠組 全体の 2%が amputation を必要とし,更に最近増 みでの臨床試験が計画されており,報告させてい えている DM 合併例については 5%が切断を余儀 ただきます. なくされています.従って透析患者に対する新た な治療が求められています. 1.下肢血管再生療法について 下肢血管再生療法は,筋肉内もしくは皮下内に 血管再生物質を注入し,それが新生血管を誘導す メタボリックシンドロームの増加に伴って,慢 性下肢血流障害は年々増加しています.透析も重 ることで,下肢血流の改善,潰瘍治癒を目的とし た治療です.実際の症例を示しますと,6 カ月後, Fig. 1 下肢血流障害の現状 メタボリック シンドロームの増加 27.5 万人 (07 年) 毎年 1 万人の増加 透析患者の増加 動脈石灰化・身体機能低下・DM腎症や長期透析の増加 難治性下肢血流障害 の増加 治療抵抗性 四肢切断 透析患者の2.0% DM合併例では5.0% − 120 − Clin Eval 36 Suppl XXVI 2009 1 年後に,collateral を通じた血流改善が観察され 析患者の割合が 80%と極めて多いのが特徴です. 今回全国多施設共同研究を行うのはこの方法です ます(Fig. 2) . 下肢血管再生療法は大別すると,遺伝子治療と (Table 2) . 自己幹細胞に分類されます.遺伝子治療はより 治療後の難治性潰瘍の推移ですが,何をやって purify された治療ではありますが,倫理的なハー も治らなかったような方が,移植後 1.5 年で実 ドルがあり,自己幹細胞移植のほうが広く行われ 際に潰瘍が治ってくるケースを経験します (Fig. 3) . ているのが現状です(Table 1) . 幹細胞移植は使用する幹細胞ソースにより,骨 2.PAD-CT Retro 調査の結果 髄 と 末 梢 血 に 分 類 さ れ ま す. 更 に 末 梢 血 で は G-CSF 動員の有無や CD34 陽性細胞抽出の有無で 3 つの方法に大別されます.1 つめは G-CSF 動員 これらの治療の治療効果を明らかにするため, 下 CD34 陽性細胞移植で,先に木下愼先生がご発 2006 年から北楡病院の川村明夫先生を中心に末梢 表されましたように,先端医療センターを中心に 血管再生治療研究会が発足しました.目的として 行われています.2 つめは G-CSF 動員のない単核 は,血管再生治療を中心とした末梢血管障害の集 球細胞移植で,千葉大学を中心に行われています. 学的治療の発展,および多くの研究者・臨床医へ 3 つめは全国で最も多数例に行われ,北楡病院や の情報提供,ならびに血管再生治療の発展です. 虎の門病院などで行われている,G-CSF 動員下単 全国 retrospective 調査を行い,これからお話しす 核球幹細胞移植です.2007 年 11 月の段階で,全 る全国の第Ⅲ相臨床試験(Impact Study)を計画 国で最も多い 162 例に対して施行され,しかも透 しています(Fig. 4) . Fig. 2 下肢血管再生療法とは? 虚血下肢の筋肉内に 血管再生物質を注入 血管再生物質が 新生血管を誘導 下肢血流改善! 潰瘍治癒 6 ヶ月後 1 年後 Table 1 下肢血管再生療法の種類 -1 �遺伝子治療(血管増殖因子) (94 ∼,Isner) VEGF(血管内皮細胞増殖因子) (98 ∼,Schumacher) bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子) (01 ∼,森下) HGF(肝細胞増殖因子) �自己幹細胞による治療 自己骨髄幹細胞移植(00 ∼,松原,室原ら) 関西医大・久留米大・自治医大など 自己末梢血幹細胞移植(01 ∼稲葉,川村ら) 北楡・虎の門・千葉大・東海大など − 121 − 臨 床 評 価 36 巻 別冊 2009 Table 2 下肢血管再生療法の種類 -2 �遺伝子治療(血管増殖因子) (94 ∼,Isner) VEGF(血管内皮細胞増殖因子) (98 ∼,Schumacher) bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子) (01 ∼,森下) HGF(肝細胞増殖因子) �自己幹細胞による治療 自己骨髄幹細胞移植(00 ∼,松原,室原ら) 7 例(ASO 3 例) 115 例(ASO 74 例) HD 30% 関西医大・久留米大・自治医大など G-CSF+ 単核球細胞移植(北楡・虎の門・医歯大ら) 162 例(ASO 140 例) 80% 42 例(ASO 26 例) 45% 17 例(ASO 5 例) 0% 単核球細胞移植(千葉大・北里大) G-CSF+CD34 細胞移植(先端医療セ・東海大) (2007.11 血管再生療法 コンセンサス会議) Fig. 3 末梢血幹細胞移植後の潰瘍変化 移植前 移植 1.5 年後 70 歳女性 DM type2 透析歴 2 年 64 歳女性 DM type2 透析歴 2 年 (J Hoshino, et al. Circ J. 2007;71:1193-8.) Fig. 4 末梢血管再生治療研究会(JPRCT) Japan Study group of peripheral vascular regeneration cell therapy 設 立 2006 年 1 月 代表幹事 特定医療法人 北楡会 川村 明夫 目 的 �血管再生治療を中心とした末梢血管障害の集学的治療の発展 全国 retrospective 調査(2007 年) 全国第Ⅲ相臨床試験(Impact Study) �多くの研究者・臨床医への情報提供ならびに血管再生治療の発展 先進医療技術の浸透・情報交換 − 122 − Clin Eval 36 Suppl XXVI 2009 まず retrospective study の結果を簡単にご紹介 vival が 2 年で約 80%で,Fontaine Ⅳ度は 36%でし しますと,2001 年から 2006 年まで,下肢末梢血 た.従来の報告では Fontaine のⅢ度とⅣ度を併せ 管障害の患者 162 例を対象とし,TRI の多大な支 て重症虚血肢(CLI)と表現し,一年非切断生存 援のもとで行われました(Table 3) . 率が約 45%とされていますが,今回の検討ではⅢ 患者背景は,ASO の方が 140 例で,うち透析例 度とⅣ度で明らかな予後の違いを認め,Fontaine は 68%の 102 例でした.これが ASO 患者層の実 IV 度のみで 45%程度と,従来治療に比べると良 情だと思います.さらに,Fontaine 分類のⅣ度の 好な予後が推察されました(Fig. 5) . 更に透析の有無で amputation free survival が倍 方が 86 名いらっしゃいました(Table 4) . Amputation free survival を 比 較 す る と,Fontaine 分類Ⅱ度,Ⅲ度の方で,amputation free sur- 近くの差があることが明らかになりました (Fig. 6) . Table 3 G-CSF 動員自家末梢血単核球細胞移植の臨床効果と安全性に関する レトロスペクティブ調査(PAD-CT Retro) 対象 2001 年 12 月 1 日から 2006 年 12 月 31 日までの間に下肢末梢血管障害 (ASO,バージャー病,膠原病,糖尿病性壊疽)の患者へ G-CSF 動員 自家末梢血単核球細胞を移植した全症例 調査施設と登録症例数 北楡会 札幌北楡病院 106 例 板橋中央総合病院 15 例 神奈川県立循環器呼吸器病センター 14 例 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 12 例 東京医科歯科大学医学部附属病院 8例 国立病院機構千葉東病院 7例 合 計 162 例 データセンター・統計解析 ㈶先端医療振興財団 臨床研究情報センター Table 4 PAD-CT Retro 患者背景 症例数 年齢 性別(男/女) 透析歴 糖尿病 虚血性心疾患 脳血管障害 Fontaine Ⅱ Ⅲ Ⅳ Rutherford 1 2 3 4 5 6 ASO 140 69(44-86) 106/34 102 93 44 32 22 25 86 6 9 6 23 63 21 TAO 11 60(30-73) 10/1 2 1 0 0 0 4 7 0 0 0 1 2 0 糖尿病性 4 66(50-70) 4/0 3 4 0 0 0 1 3 0 0 0 1 2 1 − 123 − 膠原病 7 48(39-64) 1/6 1 1 0 0 0 0 6 0 0 0 0 5 1 合計 162 68(30-86) 121/41 108 99 44 32 22 30 102 6 9 6 25 72 23 臨 床 評 価 36 巻 別冊 2009 Fig. 5 Fontaine 分類・壊疽別 Amp Free survival(PAD-CT Retro) Survival Distribution Function 1.0 F. Ⅱ,Ⅲは2年で約80% 0.8 0.6 F. Ⅳは2年で36% 0.4 0.2 FontaineⅡ FontaineⅢ FontaineⅣ&壊疽無し FontaineⅣ&壊疽有り 0.0 0 6 12 従来治療の1年後CLI(=F. Ⅲ+Ⅳ) 非切断生存率約45% 18 24 30 months after transplantation 36 42 48 殆どが F. Ⅳ透析例が対象になっている 末梢血幹細胞移植でも遜色ない治療成績 Fig. 6 透析の有無別 Amp Free Survival(PAD-CT Retro) (n=123) Survival Distribution Function 1.0 2年で73% 0.8 0.6 2年で36% 0.4 0.2 透析無し 透析有り 0.0 0 6 12 18 24 30 36 42 48 months after transplantation 細胞の誘導として,5µg/kg の G-CSF を 4 日間皮 3.Impact Study の概要 下注射します.4 日目に幹細胞を含んだ単核球分 画を比重遠心法にて採取します.そして同日午後 現在これらの結果をもとにして,全国 19 施設参 に筋肉内移植を腰麻もしくは全麻下で行います. 加予定の多施設前向きのランダム化比較試験を計 1 カ所 0.5cc ずつで,だいたい 100 ∼ 200 カ所の筋 画しています(Table 5) . 肉注射になります(Fig. 8) . 臨床試験の概要です.既存治療施行中の患者を 予想される総有核細胞は,先ほどの retrospec- 対象に,医師による説明,患者の十分な同意を得 tive の検討により中央値が 1.75 × 1010 個,CD34 たあとに,登録・ランダム化し,TASC Ⅱや日本 陽性細胞は 2.57 × 107 個/ body です(Table 6) . 脈管学会治療指針Ⅱによる推奨治療を行うグルー 推奨治療の概要です.TASC Ⅱに従い,禁煙・ プと,同推奨治療+細胞移植を行うグループの 2 脂質管理・抗血小板薬使用,および間歇性跛行に 群に分け,1 カ月,6 カ月,1 年後に観察・評価を 対してはシロスタゾールなどを推奨治療としてあ 行うデザインです(Fig. 7) . げています(Fig. 9) . 末梢血幹細胞移植の概要です.まず末梢への幹 − 124 − 患者の選択基準です.Fontaine 重症度分類のⅡ Clin Eval 36 Suppl XXVI 2009 Table 6 末梢血幹細胞移植の概要 -2 Table 5 末梢動脈疾患患者に対する G-CSF 動員 自家末梢血単核球細胞移植治療のランダ ム化比較試験 PAD-Retro 調査での本臨床試験と同様の対象患者 123 例の結果より,両下肢筋肉内移植される細胞数(予測) Improvement of PAD with G-CSF mobilized Autologous PBMC Transplantation 総有核細胞数 Impact Study 0.57 ∼ 26.6 × 1010 個 /body (中央値 1.75 × 1010 個) CD34 陽性細胞数 0.08 ∼ 47.5 × 107 個 /body (中央値 2.57 × 107 個) 末梢血管再生治療研究会 JPRCT Fig. 7 臨床試験概要 検査・診察 患者様の同意*1 推奨治療(TASC Ⅱ, 日本脈管学会治療指針Ⅱ) *1:「推奨治療のみ」の患者さんは, 「細胞採取」を含むこの臨床試 験への参加に係る同意が必要に なります. さらに,「自己血中細胞移植治 療」を 受 け る 患 者 さ ん は,「細 胞移植」に係る同意が必要にな ります. *2 1,6ヵ月,1年後に観察・検査 推奨治療+自己血中細胞移植治療 *2 約7から10日間の入院を必要とします. ↓:G-CSF投与 ○:細胞採取 ▼:細胞移植 Fig. 8 末梢血幹細胞移植の概要 -1 ①幹細胞の末梢への誘導 ②幹細胞採取 G-CSF 5µg/kg 4 日間皮下注射 COBE spectra Plasma MNCs RBCs 比重遠心法にて 幹細胞(単核球細胞)を抽出 − 125 − ③筋肉内移植 採取同日に 腰麻/全麻下で 両下肢に 0.5ml ずつ約 200 ヶ所 筋肉注射 一 斉 調 査 既存の治療 登録・ランダム化 医師による説明 臨 床 評 価 36 巻 別冊 2009 除外基準です(Table 9) .病態進行性の患者, 度からⅣ度,かつ Rutherford 分類の 3 ∼ 5 群に分 類される患者を対象としています.さらに血管造 および心筋梗塞,脳梗塞などの発症後 6 カ月未満 影で確認されている,さらに PTA やバイパス手 の患者,および Fontaine Ⅳ度の透析患者で心臓・ 術の適応がない患者,年齢は 20 歳から 75 歳以下 脳疾患の既往がある人など,以下に挙げた項目を としています(Table 7) . 除外基準としています. Rutherford 分類の 6 群を省いた理由ですが,先 先ほど Fontaine Ⅳ度の透析患者で心臓・脳疾患 の retrospective 調査によれば,Rutherford 6 群の の既往の人を除いた理由ですが,retrospective 調 予後のみがきわめて悪く(Fig. 10) ,今回は 5 群 査で 1 年以内死亡例が 15 例あり,これら全例を除 までを対象としました(Table 8) . 外対象に含んだ結果です(Table 10) . Fig. 9 推奨治療の概要 推奨事項 推奨事項 推奨事項 推奨事項 推奨事項 推奨事項 推奨事項 1.末梢動脈疾患における禁煙 2.末梢動脈疾患(PAD)患者における脂質コントロール 3.末梢動脈疾患(PAD)患者における高血圧のコントロール 6.末梢動脈疾患(PAD)患者における抗血小板療法 14.間歇性跛行の運動療法 15.間歇性跛行症状に対する薬物療法:シロスタゾール 17.重症下肢虚血(CLI)における心血管リスクの改善 Table 7 選択基準 下記の選択規準を全て満たす患者を対象とする. 1.下肢血管造影にて閉塞あるいは狭窄が確認された,慢性閉塞性動脈硬化症又 はバージャー病患者 2.Fontaine 重症度分類のⅡからⅣかつ,より重症な一方の下肢が Rutherford 重症度分類の 3 から 5 群に分類される患者 3.血管形成術や膝窩動脈までのバイパス手術の適応がない患者(狭窄部位がび まん性,あるいは末梢の細小動脈に存在しバイパス術や形成術の適用が不可 能な重症患者),あるいはこれらの既存治療を受けたにもかかわらずコント ロール不良な患者 4.非喫煙患者又は 1 ヶ月以上禁煙している患者 5.同意取得時の年齢が 20 歳以上 75 歳以下で,本人から文書による同意が得ら れている患者 Fig. 10 Rutherford 重症度分類別生存期間(PAD-CT Retro) Rutherford 分類 6 群の 2 年生存率は 10%未満と,その他の群の 2 年生存率 70%以上に比べ予後不良であった. Survival Distribution Function (ASO n=140) months after transplantation − 126 − Clin Eval 36 Suppl XXVI 2009 Table 8 選択基準 -2 Fontaine,Rutherford 重症度分類 Fontaine 重症度分類 重症度 症 状 Ⅰ度 無症状 Rutherford 重症度分類 重症度 0度 症 状 TASC Ⅱ 0 群 無症状で血行動態的な閉塞所見がない. 軽度の間歇性跛行.トレッドミル運動負荷テスト(速度 2km/hr,傾斜 1 群 12%,時間 5 分)を終了できる.負荷後の足関節血圧が 50mmHg を超え るが,安静時に比して 20mmHg 以上低下する. Ⅱ度 間歇性跛行 Ⅲ度 虚血性安静時痛 Ⅳ度 潰瘍化又は壊疽 Ⅰ度 Ⅱ度 Ⅲ度 2 群 中等度の間歇性跛行.1 群と 3 群の中間. 3群 重症の間歇性跛行.トレッドミル運動負荷テストを終了できず,負荷後 の足関節血圧が 50mmHg 未満. 4群 虚血性の安静時疼痛.安静時の足関節血圧が 40mmHg 未満,又は足関節 部,中足骨部の容積脈波が記録不可又は平坦.足趾血圧 30mmHg 未満. 5群 軽度の組織喪失.治癒しない潰瘍,びまん性の足虚血に伴う局所の壊疸. 安静時足関節血圧が 60mmHg 未満,又は足関節部,中足骨部の容積脈波 が記録不可又は平坦.足趾血圧 40mmHg 未満. 間歇性 跛行 (IC) 重症下肢 虚血 (CLI) 6 群 中足骨レベルを超えて広がる組織喪失.足趾の機能の温存は不可能. Table 9 除外基準(一部抜粋) 下記の除外規準に 1 つでも当てはまる患者は対象としない. 1.1 ヶ月以内に Fontaine 分類あるいは Rutherford 分類で重症度が増悪している病態進行性の患者 2.大切断が予定されている患者 3.血管形成術又はバイパス手術,他の外科的治療,もしくは LDL アフェレシスから 1 ヶ月以上経過していない患者 4.G-CSF 製剤及びアフェレシスに対する重篤な過敏症,副作用の既往を有する患者 5.コントロール不良な虚血性心疾患,心不全,不整脈を合併する患者 6.頭蓋内外の主幹動脈に重度の狭窄性病変を有する患者 7.心筋梗塞,脳梗塞,脳出血又は一過性脳虚血発作発症後 6 ヶ月未満の患者 8.虚血性心疾患,脳梗塞又は脳出血の既往があり Fontaine Ⅳ度に分類される透析施行中の患者 9.糖尿病増殖性網膜症(新福田分類 BI から BV)を合併する患者 10.悪性腫瘍を合併する,又は 3 年以内の既往である患者 Table 10 PAD-CT Retro 調査での 1 年以内の死亡例 PAD-Retro の 1 年以内死亡例 15 例は全て不適格 選択基準 4 移植後 生存日数 死 因 303 87 141 279 308 293 352 14 330 242 320 93 93 44 259 胆嚢炎 心筋梗塞 心筋梗塞 心筋梗塞 呼吸不全 心不全+心筋梗塞 心不全 心不全 不整脈 肺炎 心不全 脳梗塞 肺炎 自殺 脳梗塞 5 喫煙 年齢 喫煙者 喫煙者 喫煙者 喫煙者 喫煙者 非喫煙者 喫煙者 喫煙者 非喫煙者 喫煙者 非喫煙者 非喫煙者 非喫煙者 非喫煙者 喫煙者 82 62 75 48 81 65 73 72 73 83 78 53 68 59 78 5 コントロール不良 な虚血性心疾患・ 心不全・不整脈 いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ はい はい いいえ いいえ いいえ いいえ はい いいえ いいえ − 127 − 虚血性 心疾患 の既往 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 無 無 無 無 無 除外基準 8 脳梗塞 , Fontaine 脳出血 分類 の既往 無 Ⅳ 無 Ⅳ 無 Ⅳ 無 Ⅱ 無 Ⅲ 有 Ⅳ 無 Ⅳ 無 Ⅳ 無 Ⅳ 有 Ⅱ 有 Ⅲ 有 Ⅳ 有 Ⅲ 無 Ⅳ 無 Ⅱ 13 透析歴 感染症 合併 有 有 有 有 有 有 有 有 有 無 無 有 有 有 無 いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ はい いいえ いいえ いいえ はい いいえ 臨 床 評 価 36 巻 別冊 2009 endpoint で す.primary endpoint は 無 増 悪 生 存 期間で,これは増悪日またはあらゆる原因による す.来年の 1 月から 2012 年 1 月までを試験予定に しています(Table 12) . 死亡日のいずれか早い方までの期間と定義してい 目標症例数の設定根拠ですが,推奨治療+細胞 ま す.secondary endpoint は,Fontaine 分 類 の 変 治療群の 1 年後の予想死亡・切断率は,retrospec- 化などです(Table 11) . tive study の結果から 33%と見積もっています. 目標症例数は 144 例で,推奨治療群が 72 例と, 推奨治療+細胞移植治療群が 72 例となっていま 一方,推奨治療群は,TASC Ⅱの報告より 55%と 見積もっています.retro では 68%が透析例であ り,今回の前向き試験でも同様の透析患者の割合 Table 11 エンドポイント が推察されたため,それぞれ一年後の予想死亡・ 切断率を 35%と 60%と概算しました.これから 必要症例数を検討し,各群 64 例,脱落 10%を見 有効性評価項目 1.主要評価項目 無増悪生存期間 登録日を起算日とし,増悪日またはあらゆ る原因による死亡日のいずれか早い方まで の期間を無増悪生存期間として定義する. 込んで各群 72 例と設定しています(Fig. 11) . Table 12 目標症例数と試験期間 2.副次評価項目 ① Fontaine 分類及び Rutherford 分類の推移 ②生存期間 ③下肢温存期間 ④下肢温存生存期間 ⑤潰瘍・壊疽のサイズ ⑥下肢の虚血性疼痛の重症度 ⑦ ABI(測定可能な患者は TBI を実施) ⑧跛行出現距離(ICD)及び最大歩行距離(ACD) 目標症例数 目標登録症例数:144 例 (推奨療法群 72 例,推奨療法+細胞移植治療 群 72 例) 試験期間 試験期間 :2009 年 1 月∼ 2012 年 1 月 症例登録期間 :2009 年 1 月∼ 2010 年 12 月 プロトコル治療期間:登録から 1 年間 一斉調査 :最終症例の登録から 1 年後 に実施 安全性評価項目 有害事象の発生 Fig. 11 目標症例数の設定根拠 重症虚血下肢(Fontaine Ⅲ or Ⅳ)の一年後の切断・死亡率 推奨治療+細胞治療群 推奨治療群 33%(PAD-CT retro) 55%(TASCⅡ) PAD-CT retroでは68%が透析例 35% 60% 有意水準α=0.05(両側) ,検出力 80%,Freedman 方式にて必要症例数を検討 各群64例 各群72例 − 128 − 脱落を約10% と推定 Clin Eval 36 Suppl XXVI 2009 研究組織としては,北楡病院の堀江卓先生を主 臨床試験の進捗状況および今後のスケジュール 任研究者として,ご覧のような先生方のご協力の です(Fig. 12) .retrospective study は現在投稿中 下に行っています(Table 13) . です.Impact Study は,全体会でのプロトコル説 統計は神戸 TRI の松原義弘先生に責任者をお願 明が終わり,先ほどあげた19施設が参加予定です. まず各施設がプロトコールを倫理委員会に申請し, いしています. Table 13 研究組織 主任研究者 北楡会 札幌北楡病院 外科 堀江 卓 副主任研究者 東京医科歯科大学医学部附属病院 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 老年病内科 腎センター 金子 英司 星野 純一 外科 血液浄化療法部 老年病内科 腎センター 心臓血管外科 輸血 ・ 細胞療法部 一般・消化器外科 血液浄化センター 内科 岩下 力 赤松 眞 金子 英司 星野 純一 市川由紀夫 石田 明 尾原 秀明 塚本 達雄 平櫛 恵太 プロトコル作成委員 国立病院機構千葉東病院 板橋中央総合病院 東京医科歯科大学医学部附属病院 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 神奈川県立循環器呼吸器病センター 慶應義塾大学病院 慶應義塾大学病院 田附興風会 医学研究所 北野病院 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 京都大学医学部附属病院 探索医療センター検証部 ㈶先端医療振興財団 臨床研究情報センター 福島 雅典 小野寺理恵 大野 隆之 ㈶先端医療振興財団 臨床研究情報センター 研究事務局 北楡会 札幌北楡病院 統計解析責任者 ㈶先端医療振興財団 臨床研究情報センター 松原 義弘 データセンター ㈶先端医療振興財団 臨床研究情報センター 独立データモニタリング委員 委員長 旭川医科大学 外科学講座 委員 森田シャントアミロイド治療クリニック 委員 ㈶先端医療振興財団 血管再生治療研究グループ 委員 京都大学医学部附属病院 探索医療センター検証部 葛西 眞一 森田 弘之 川本 篤彦 手良向 聡 末梢血管再生治療研究会代表者 特定医療法人 北楡会 川村 明夫 研究支援機関 ㈶地域医学研究基金 研究参加予定施設及び試験責任医師 北楡会 札幌北楡病院 市立函館病院 青森県立中央病院 国立病院機構千葉東病院 明生会 東葉クリニック 板橋中央総合病院 東邦大学医療センター大森病院 東京医科歯科大学医学部附属病院 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 慶應義塾大学病院 神奈川県立循環器呼吸器病センター 東海大学医学部 外科学系 湘南鎌倉総合病院 田附興風会 医学研究所 北野病院 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 島根大学医学部附属病院 徳島赤十字病院 天神会 新古賀病院 長崎大学医学部 ・ 歯学部附属病院 − 129 − 外科 心臓血管外科 血液内科 外科 外科 血液浄化療法部 腎センター 老年病内科 腎センター 一般・消化器外科 心臓血管外科 形成外科学 腎臓内科 血液浄化センター 内科 心臓血管外科 外科 血液浄化療法部 堀江 卓 森下 清文 久保 恒明 岩下 力 林 良輔 赤松 眞 水入 苑生 金子 英司 星野 純一 尾原 秀明 市川由紀夫 田中 理佳 小林 修三 塚本 達雄 久傳 康史 織田 禎二 阪田 章聖 古賀 伸彦 錦戸 雅春 臨 床 評 価 36 巻 別冊 2009 承認後に今年から新たに定められたヒト幹細胞倫 なります.厚労省の承認後に臨床試験の開始とな 理指針申請を厚労省に行います.現在 4 施設が申 ります.(Fig. 13) . さらに第二の目的は,各施設が,症例を蓄積す 請済みです.現在,来年 1 月から臨床試験の開始 ることで先進医療を取得することです.先進医療 を予定しています. 臨床試験の流れと scheme です.質の高い臨床 試験を遂行し,エビデンスを確立するために必要 施設増やし,その医療を一般化させることも重要 と考えます. な流れをまとめてみました.臨床試験の実施に向 質の高い臨床試験,および先進医療施設の増加 けた実施計画書の作成→院内倫理委員会への申請 の 2 本の車輪により,保険導入への道筋が立てら での承認→再生医療を施行するための厚生労働大 れればと考えています. 臣へのヒト幹細胞臨床研究の申請の流れが必要に Fig. 12 臨床試験の進捗状況,今後のスケジュール PAD-CT Retro 1.統計化解析 2.論文化作業 3.投稿作業 07 年 12 月 08 年 3 月 08 年 4 月 Impact Study 1.全体会でのプロトコール説明 2.参加施設の募集 3.施設倫理委員会への申請 4.厚生労働大臣へ申請(ヒト幹倫理指針) 5.臨床研究の開始 6.臨床研究登録終了 7.臨床研究観察期間終了 08 年 4 月 13 日 08 年 4 月末 08 年 5 月から 08 年 7 月から 09 年 1 月から 10 年 12 月まで 12 年 1 月まで 4 施設申請済 Fig. 13 Impact Study 臨床試験と保険導入 Impact Study 実施計画書 スーパー特区への応募 施設倫理委員会申請 特区のメリット ※ 既存の研究費の柔軟な活用 ※ 薬事相談の優遇 先端的な医療の産業化・ 実用化の推進が目的 承認 ? 厚生労働大臣へ ヒト幹細胞臨床研究申請 先進医療 先進医療取得施設 「有効性」「安全性」 「技術的成熟度」「社会的妥当性」 「普及性」「効率性」 先進医療未取得施設 年1回 先進医療実施報告 先進医療の届出 先進医療 専門家会議 承認 臨床試験開始 エンドポイント評価 症例蓄積 細胞移植治療の有効性と安全性データ 保険適応等 の検討 臨床試験 保険導入 − 130 − Clin Eval 36 Suppl XXVI 2009 較)をするということですが,その先進的治療を < Q&A > 受けない方に関しては(医療費は)どうなります 座長(永井) どうもありがとうございました. か. これまでいくつかの研究グループに分かれてやら 星野 今回の Impact Study 参加予定施設は先進 れていた治療法をまとめて,フェーズⅢというか 医療施設と未申請施設両方が含まれます.先進医 たちで,本当にこれが効くのかどうかということ 療申請には,症例を 10 例以上,5 年以上の症例の について一気に決着をつけようという臨床試験に 経験が必要ですので,未申請施設は今回の Impact なります.そして,先進医療で普及を図るという Study を通じて症例の蓄積をして,各施設が先進 スキームでした. 医療を申請していただきたいと考えています. 白 5 演題が終わったあとで,時間の許す限りご質 問をお受けしたいと思っていますが,どうしても 間は個人負担ということになるんですか. 星野 入院が必要なのは細胞移植群のみですが, という方がいらっしゃったら,いかがでしょうか. 白 入院中の細胞移植関連諸費用はすべて(先進医療 先生,どうぞ. 白 そうすると,Impact Study をやっている 聞き逃したのかもしれませんが,先進医 の枠組みでなく)研究会負担で行う予定です. 療でランダム化試験(先進的治療と標準治療の比 * * * − 131 −