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EXCELでの積分

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EXCELでの積分
人工呼吸器演習:F-V ループの実験
EXCEL を用いた積分計算
ここでは、EXCEL による数値計算で積分計算を行う方法を学びます。
例として、等加速度運動で、物体が動き始めてから止まるまでの間に移動した距離を求め
る場合を考えます。
以下のようなモデルを考えます。
・ 加速度は、0~10 秒は 1m/sec 、10~20 秒では 0 m/sec 、20~30 秒では-1m/sec
とします。
・ 数値計算では、0.01 秒刻みで値を求めることにします。
このモデルでは、10 秒間に速度は 0m/sec から 10m/sec まで加速し、10~20 秒の間は
10m/sec の等速運動を行います。20~30 秒の間では減速して、30 秒後には静止します。こ
の物体の移動の様子をグラフにすると、下の図1のようになります。
計算上は、この 30 秒の間に物体は 200m 移動することになります。
2
2
250
2
12
10
200
8
150
6
100
4
50
距離(m)
速度(m/sec)
2
0
0
0
2
4
6
8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
図 1 移動する物体の速度と距離(加速度が2回変化する場合)
この問題を、データだけから解く場合にはどうしたらいいでしょうか。
距離は速度の時間積分で表すことができます。速度を v(t)、距離を r(t)とすると、
t
r (t ) = ∫ v(τ)dτ+ r0
0
で表すことができます。但し、r は時刻 0 秒での距離(初期位置)とします。
ここで、積分とはどんな計算か考えてみます。
速度とは、「単位時間あたりの移動距離」のことです。1時間に 40km 移動する速度が「時
速 40km」=40km/h です。1秒間に 10m 移動する速度は、10m/s(秒速 10m)。つまり、
0
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
秒速 10m で1秒間経過すると 10m 移動します。2秒なら 10×2=20 で 20m です。
これは、「縦軸に速度、横軸に時間」をとった時に、グラフの面積として表すことができま
す。
加速し始めの「速度」と「距離」をグラフで表してみましょう。
速度と距離のディジタル計算
0.016
0.014
0.012
0.01
0.008
0.006
0.004
0.002
0
速度(m/sec)
距離(m)
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0.09
0.1
0.11
0.12
0.13
0.14
0.15
0.16
0.18
0.16
0.14
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
図 2 移動し始めの速度と距離
図2のグラフで、縦軸(左側の目盛)は速度、青い線は距離です。0 秒から 0.01 秒の間の
速度は 0m/s(静止状態)とすると、移動距離は 0 です。次に 0.01 秒から 0.02 秒の間を見
ると、加速度が 1m/sec ですから、速度は 0.01m/s に上昇します。このほんのわずかの時間
(0.01 秒間)に、速度 0.01m/s を掛けると、0.01(s)×0.01(m/s)で、0.0001m(0.1mm)だ
け移動することがわかります。次の 0.02 秒~0.03 秒を見てみると、速度は 0.02m/s から始
まりますから、次の 0.01 秒間の移動距離は、0.02×0.01=0.0002m 移動していることがわ
かります。最初の 0.01 秒で 0.0001m 移動していますから、合計の移動距離は
0.0001+0.0002=0.0003m になります。
積分計算というのは、実は掛け算と足し算の繰り返しのことだと考えて下さい。
2
加速度が0
加速度が0に切り替わる周辺
10.05
51.5
51
50.5
10
50
49.5
49
48.5
9.95
9.9
9.85
速度(m/s)
距離(m)
48
図 3 加速度が 0 に切り替わる周辺の速度と距離
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
10 秒経過後に、加速度は 0 になります。つまり「速度が変化しない」状態になります。こ
こでのグラフは図 3 のようになります。速度の変化はなくなりますが、既に秒速 10m
(10m/s)まで加速していますから、距離はどんどんと広がり続けます。9.9 秒から 10.1 秒ま
での 0.2 秒の間に、約 2m 移動しています。距離は、直前の時刻での「移動距離」に、次の
0.01 秒間の移動距離(つまり、長方形の面積)を加算したものになります。
この状況を EXCEL ではどのように入力したらいいでしょうか。上の図 1~図 3 のグラフ
は、図4のようなやり方で作成しました。
まず、時間軸では、0 秒~30 秒までの値を 0.01 秒刻みで作成します。先頭行、A3~C3
のセルには全て 0 を入力しておきます。(時刻 0 で、初速は 0、距離も 0 です。)
図 4 セルへの式の入力
ここでは、最初に A4~C4 にそれぞれの数式を入力します。A4 のセルには[=A3+0.01]、B4
のセルには[=A4*1]、C4 のセルには[C3+B4*0.01]と入力します。
では、コピーを行った時に相対的な位置関係で式の内容を適切に書き換えてくれる
ので、A4 のセルでは「一つ上のセル(A3)の値に 0.01 秒を加える」という式が、B4 のセル
では「一つ左のセル(A4)の値[s]に1(m/s )を掛ける」という式が、C4 のセルでは「一つ上
のセル(C3)の値[m]に、一つ左のセル(B4)の値[m/s]に 0.01(s)を掛ける」という内容でコピ
ーされます。まず、A4 のセルでマウスをクリックし、C4 のセルまで移動してからマウス
を離し、三つのセルを選びます。
ここで、EXCEL のリボンで「コピー」を選ぶか、または、Ctrl+C を押して「コピーモー
ド」にします。次に、A5 のセルを左クリックしてから、[Shift]キーを押しながら[Page Down]
キーを連続的に押します(コピー先の範囲選択)。起点は A3 のセルなので、A1003 のセル
まで一気に範囲を広げます。(Page Down を押しっぱなしにすると良い。行きすぎた場合は、
上向きの矢印キー[↑]や下向きの矢印キー[↓]、または[Page Up]キーなどで Shift を押し続
EXCEL
2
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
けたまま範囲を調整します。
A5 のセルから A1003 までが選択された状態になったら、Ctrl+V を押すか、または「貼り
付け」ボタンを押します。ここで、画面をスクロールして A1003 行の周辺のセルの状態を
確認します。
なお、連続しているセルで、カーソルを一気に移
動する場合には[Ctrl]キーを押しながら上下左右
のキーを押して下さい。例えば、A3 のセルから
[Ctrl+下向き↓]キーを押すと、値が入っているセ
ルを一気に辿って、値が途切れるところまで移動 図 5 C1003 のセルの式を確認
します。
A1003 のセルの値、B1003 のセルの値が 10 になっていれば OK です。
次に、B1003 のセルの値を数式ではなく「値」として 10 に切り替えます。等速運動の部分
では、時刻に関係なく速度は 10m/s です。
図 6 B1003 のセルの値を 10 に書き換える
こうしておいてから、A1003~C1003 のセルを選
択し、A1004~C2003 行目までコピーします。操
作方法は、A1003 まで操作した時と同じです。
まず、A1003~C1003 のセルを選択し、Ctrl+C
を押すか、または「コピー」ボタンをクリックし
て「コピー」モードにします。次に、まず A1004
のセルをクリックしてから[Shift+PageDown]ボ
タンを押してコピー先の範囲を入力します。
A2003 行目までが「選択」されたなら、そこで
Ctrl+V を押すか、または「貼り付け」ボタンを
クリックします。
うまく貼り付けが成功すると図 7 のような画面
図7
になります。
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A2003
行目までのコピーを確認する
人工呼吸器演習:F-V ループの実験
引き続き、最後まで入力しましょう。
最終段階では速度が 10m/s で一定だ
ったところから、減速し-1m/s の加
速度で減少し(つまり、1秒間に 1m/s
ずつ遅くなり、)最終的に速度がゼロ
(つまり停止)するところまでの変
化を入力します。図 7 に示した部分 図 8 最後の「減速部分」の設定
です。
2
時刻から速度を求める式は、直線の傾きが変わるために変更になります。B2003 のセルの
数式を以下のように書き換えます。
=30-A2003
式の意味は、直線の傾きは-1 で、それに時刻(一つ左のセルの値)を掛け(-A2003)、y 切片
である 30 を加える、というもので、時刻から速度を求める直線を表す一次関数の式です。
図 9 B2003 の式の入力
ここで、B2003 の式を書き替えたら、A2003~C2003 の式を、A3003 から C3003 までコピ
ーします。やり方は、A2003~C2003 までのセルに式をコピーした時と同じです。
操作方法は書きませんので、上の説明をよく読んで、(セルを読み替えて)自分で工夫して
下さい。コピーがうまくできると、30 秒後に速度がほぼゼロとなり、移動距離が 200m と
なる以下のようなセルの値になっているはずです。
図 10
3003
行目までのコピーの確認
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
図 10 で見ると、B3003 のセルがゼロになっていません。これは計算誤差で、表示されてい
る値は-1.9×10 という値の浮動小数点表示です。
-12
この計算結果をグラフにしてみましょう。
C3003 のセルをクリックします。
図 11 範囲選択の起点の選択
ここで、[Shift]キーと[Ctrl]キーの両方を押しながら上向き矢印(↑)キーを押すと、カー
ソルは一気に上にジャンプし、以下のような画面になります。
図 12 範囲を一気に上まで選択する
[Shift]キーを押しながらの移動は「範囲を選択する」という意味があり、[Ctrl]キーを押し
ながらの移動には「連続するセルを一気にジャンプする」という意味があるため、数式な
どが書き込まれたセルを一気に上に辿り、画面の一番上まで移動したのです。
ここで、[Shift]キーだけ押しながらカーソルを左に2回(←)、下に2回(↓)移動させる
と以下のような画面になります。
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
この画面では、A3~C3003 までのセルが選択さ
れていることがわかります。この範囲のセルの
値でグラフを作ります。
挿入の「折れ線グラフ」を選びます。
EXCEL2003 を使っている人は、
「グラフ」から
「折れ線」を選んでください。
図 13 グラフにする範囲の選択。
図 14 グラフの種類「折れ線」を選ぶ
すると、以下のような表示になります。
図 15 最初に自動で表示されたグラフ
これで、計算そのものはうまくいっていることが確認できますが、グラフの表示がきれい
ではないので、少しグラフを整えましょう。
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
まず、タイトルが表示できるように「デザイン」の「レイアウト」ボタンを押します。
図 16 レイアウトの選択
どのレイアウトを選ぶかは、皆さんの自由とします。
例えば、レイアウト1を選び、「グラフタイトル」を「速度と移動距離」と書き替えると、
画面は以下のようになります。
図 17 タイトル・軸ラベルを表示したグラフ
このグラフでは、時刻がうまく表示できていません。
そこで、グラフの中央を右クリックして「ポップアップ」を表示させ、「データの選択」を
クリックします。
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
図 18 時刻の数値の上で右クリックし、ポップアップを表示した。次に「データの選択を
クリック」
すると、以下のようなポップアップが表示されます。
図 19 「データの選択」ポップアップ
ここでは、「横(項目)軸ラベル」の下にある「編集」ボタンをクリックします。すると、
以下のようなポップアップが表示されます。
図 20 時刻データの範囲を入力する画面
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
ここで、画面上の A3 のセルをクリックし、[Shift]と[Ctrl]の両方を押しながら下向き矢印
(↓)を押すか、または、下記のように[=Sheet1!$A$3:$A$3003]と入力します。シート名は、
各自の使っているシート名を正しく入力して下さい。
図 21 時刻データのセル位置を入力した画面
これで OK を押します。軸ラベルの部分が 0, 0.01 となっていたらこの作業は OK です。
図 22 時刻データの設定が終わったところ
ここで、範囲として選択した「系列1」を削除します。「系列1」は、もともと軸ラベルに
するはずの値でした。系列1を選択して「削除」ボタンを押します。
図 23 データの名称設定画面
続けて、速度や、移動距離の名称も設定しましょう。
系列2を選択して、「編集」ボタンを押します。すると、右のようなポップアップが現れま
す。ここで「速度(m/s)」と入力します。
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
図 24 データ名称の設定画面
さ
同様にして、系列3の名称も「距離(m)」と入力します。
図 25 データ名称の入力が終わった画面
これで OK として、一旦グラフに戻ります。すると、グラフは下記のようになっているは
ずです。
図 26 データ名称入力が終わった画面
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
このグラフでは、速度も距離も同じ軸ラベルで表示されています。ここで軸ラベルを分け
ましょう。グラフの「速度」を右クリックして、ポップアップで「データ系列の書式設定」
をクリックします。
図 27 データ系列の書式を変更する
すると、以下のようなポップアップが表示されます。
図 28 軸オプションの変更
ポップアップで「第 2 軸」を選択し、「閉じる」ボタンを押して下さい。
すると、グラフは以下のようになります。
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
図 29 数値軸ラベルの表示
最後に、時間軸を整えましょう
時間軸の数値の上で右クリックし、「軸の書式設定」をクリックします。
図 30 時刻軸見出しの設定
ポップアップで、「軸の間隔」を 500 に、また、「目盛の間隔」を 500 に設定します。
また、数値をクリックして表示されるポップアップで「目盛線の追加」を選択します。
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
図 31 時間軸の設定方法
さらに、レイアウトの選択で時間軸のラベルが表示されるものを選ぶなどして、グラフを
整えると、最終的に下図のようなグラフを得ることができます。
図 32 表示を整えた後のグラフ
このグラフは、「速度」を EXCEL 上で時間積分計算して得られた「距離」のグラフです。
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人工呼吸器演習:F-V ループの実験
課題
理解する上でのポイント
※
の、どの列の値が何を意味しているか。
「一つ上のセル」の値を利用して、計算式を入力している。Δtや、v×Δtなどが
どんな意味を持っているか考えよう。
EXCEL
※ 積分の計算が、グラフ上の「面積」の計算だというのは、どんな意味か考えよう。
「単位時間当たり」という考え方と、「単位時間当たりの量」に「時間」を掛け
合わせる、という計算の意味を考えよう。
応用課題
※ 速度と距離と類似する関係を考え、例をあげてみよう。
例:毎月の貯金額と月数、銀行の残高の関係
例:お風呂に水を入れる時の、流速と時間、溜っている水の量の関係
例:携帯電話(の充電器[二次電池])への、電流の流入量と時間、電池残量の関係
他にどんなものがあるか、例をあげてみよう。
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