...

多品種微量生産の“ものづくり” と ICTによる“売る仕組み”を実現!

by user

on
Category: Documents
36

views

Report

Comments

Transcript

多品種微量生産の“ものづくり” と ICTによる“売る仕組み”を実現!
経営
の ヒ ン ト
多品種微量生産の“ものづくり”と
ICTによる“売る仕組み”を実現!
職人の技術を高め
他社にはできないものづくり
で、1934年の創業以来「多品種微
やりたがらないものづくり”、“他
売れる仕組みづくりを
ICT化で推進
「選択と集中」
、これは現在の経
社にはできないものづくり”を目
“東海バネしかできないものづ
営原則の1つです。効率性や合理
指して頑張ってきました。
くり”というテーマは、創業以来一
性を追求し収益率を高めようとい
平均ロット5個、平均受注金額5
貫しています。しかし、これをビ
うものですが、手っ取り早く儲け
万円という、多品種微量生産で高
ジネスとして成り立たせるには、
ようと安易な
「選択と集中」をして
品質なバネづくりを支えているの
売れる仕組みをつくらなければな
しまうと危険もあります。国内の
は職人の技術です。そのため、国
りません。その大きな転機がICT
バネ業界には約3,000社があると
家資格である「金属ばね製造技能
システムの導入でした。
言われており、そのほとんどが効
士」の取得を推奨したり、社内に独
今から30数年前にある人に紹
率化を図るために「少品種大量生
自の資格制度を整備する等、技術
介された酒販売店を訪ねた時のこ
産」を追求しています。グローバ
の向上や伝承に取り組んできまし
とです。お店の主人から「うちの
ル化が進んだ現在、そうした企業
た。そのかいあって、世界に一台
売上げは、まわりの同業者の3倍
は労働力を安価に利用できる海外
しかない大型コイルバネの成形を
です。この商売は空振り覚悟のご
の企業と価格競争をするはめに陥
するスーパーコイリングマシーン
用聞き商売と言われていますが、
ってしまいました。
や、当社にしか製造できない特殊
うちは空振りしません。コンピュ
当社の経営戦略は全くその逆
で大型の竹の子バネ等の開発をす
ータで顧客の受注リストを管理す
量生産」を続けています。“他社が
ることができました。
ることで、得意先を回る時は確実
今では、
「単品なら東海
に注文を取れるようになったんで
バネ」
と言っていただけ
す」という話を聞きました。
るまでになりました。
この話がきっかけとなり、早速、
東海バネ工業株式会社
代表取締役社長
渡辺 良機氏
わたなべ よしき◎1945年に大阪で生まれる。近畿大学卒業後、実家の鉄工所
で働く。その後、1971年に東海バネ入社。1984年に社長就任。多品種微量生産
の経営戦略で、東海バネのものづくりを追求、そして、商品を売る仕組みをICTシ
ステムの構築で実現。その独自性の高い経営手法が評価され、2008年「ポーター
賞」、2009年「中小企業IT経営力大賞」等、数々の賞を受賞している。
14
2011.11
お客様のデータベース化を含む受
注生産のシステム構築に着手し、
お客様情報を打ち込むと、そのお
客様との取引履歴が一覧で確認で
きるようにしました。お客様の中
には、3年前につくったバネを3個
ほしいと依頼する方もいます。そ
の度に、書庫に行って3年前の設
計図を探しだすのは大変な作業で
す。システムの導入で、そういっ
た作業は大幅に軽減されました。
当社はバネを設計図どおりその
オーダーメードのバネをつくる職人の技術や知 「リ・オ・ダ」
には購買履歴がデータベース化さ
識こそが、
強力な
“競争障壁”
となる。
れており、
2回目以降の注文は簡単に行うことが
できる。
ままに作ることはありません。お
と、想像もしていなかった方々か
客様毎に、設計図に表せないクセ
ら問い合わせがありました。大学、
があるからです。例えば、
「このお
企業の研究室やクラッシックカー
客様の場合は、ここをちょっとひ
マニアといった個人の方等、これ
顧客満足度より、社員満足度
世界最強の手づくり工場を
目指して
ねっておかないと」というような
までお付き合いのなかった層のお
ICTシステムのおかげでビジネ
ことです。これを
「暗黙知」と呼ん
客様を取り込むことができ、リニ
スモデルが確立でき、売上げも順
でいます。その暗黙知もデータ化
ュ ー ア ル し て か ら1年 間 で100
調に推移しています。様々な賞を
し、
社内で共有しています。
社、現在まで累計すると1,000社
いただき、メディアにも取り上げ
システムは、材料の在庫や現場
以上の新規顧客を獲得することが
られたおかげで、今では年間500
の作業状況とリンクしているの
できました。
人ほどが工場見学に訪れます。自
で、
お客様から受注を受けた時に、
また、インターネットを通じて
分たちの苦労が評価され、頻繁に
瞬時に納期まで分かるようになっ
注文ができるようにもしました。
仕事場へ見学者が訪れることで、
ています。受注から製造納品まで、
当社と取引の経験があるお客様
社員のモチベーションも上がりま
すべてシステムで管理されていま
は、2回目以降は「リ・オ・ダ」と
した。
すので、
飛び込みの仕事によって、
いうウェブサービスから簡単に直
私は、顧客満足度よりも、まず社
他の製造スケジュールが乱される
接注文ができます。お客様はウェ
員満足度だと思っています。社員
こともありません。今では、年間
ブサイトで自分の購入履歴を一覧
が家族やプライベートを犠牲にし
900社、3万 件 も の オ ー ダ ー が あ
できる仕組みになっていますの
てまで、顧客の満足を追求する必
りますが、納期遵守率は99.8%で
で、数年前に注文した内容がすぐ
要はありません。残業もほとんど
す。
に分かり、リピート注文がしやす
ないですし、休日もしっかり休ま
攻めのシステムにリニューアル
新規顧客が100社増加!
くなっています。また、注文した
せます。
バネが手元に届くまでの進捗状況
昨年、兵庫県豊岡市に煉瓦造り
も確認することができます。
の工場を建てました。「啓 匠 館 」
次 の 転 機 は2002年 の こ と で
これら一連のシステムで、営業
と名付けています。東海バネの無
す。ITコーディネーターの方から、
効率が飛躍的に高まりました。以
形資産である職人の匠の技を教え
「インターネットを活用した“攻め
前は東京・大阪・広島に営業拠点
広めるという意味です。「職人た
のシステム”
に変えた方がいい」と
を設け40人体制を敷いていまし
ちに快適な工場で、思う存分バネ
アドバイスを受け、ウェブサイト
たが、今では営業担当は本部(大
づくりをしてもらおう」そう思っ
を全面リニューアルしました。ウ
阪)に10人です。
ています。目指すのは、
「世界最強
ェブサイトに、
製造のノウハウ等、
け い しょう か ん
の手づくり工場」です。
社内の情報を惜しみなく公開する
●東海バネ工業株式会社 http://tokaibane.com/
2011.11
15
Fly UP