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スマホ時代の大人が知っておきたいこと(3)

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スマホ時代の大人が知っておきたいこと(3)
第
6
回
インターネットと
上手につき合う
竹内 和雄
Takeuchi Kazuo
兵庫県立大学准教授
公立中学校で 20 年間生徒指導主事等を担当。市教育委員会を経て2012 年
より現職。いじめ、不登校、ネット問題等を研究。文部科学省、総務省等で
子どもとネット問題についての委員を歴任。著書に
『家庭や学級で語り合うス
マホ時代のリスクとスキル』
(北大路書房)
など多数。
ウィーン大学客員研究員。
(3)
スマホ時代の大人が知っておきたいこと
子どもたち自身がルールをつくる
② ID 交換掲示板について
警察庁の報告から
ID 交換掲示板では、LINE 等の無料通話アプ
まず、2014 年9月警察庁発表の
「平成 26 年
リの ID を交換します。電話番号を知らなくても
上半期の出会い系サイト及びコミュニティサイ
ID から簡単に個人が特定でき、面識のない人と
トに起因する事犯の現状と対策について」*1の
のやりとりが可能になるので、以前から危険性
一部を紹介します。被害が多い罪種として、児
が指摘されていました。掲示板は LINE 株式会
童買春や児童ポルノ等が挙げられています。
社
(以下、LINE 社)の運営ではありませんが、
1被害児童数のグラフより
社会的責任として、LINE 社は、2012 年 12 月、
①グラフから分かること
18歳未満のIDを検索できないようにしました。
図は、出会い系サイト等に起因する犯罪被害
スマホには有効な対策ですが、携帯音楽プ
にあった児童(警察では 18 歳未満を指す)数の
レーヤーやタブレットからの登録では制限でき
推移を示したものです。出会い系サイトでの被
ないことが分かってきました。また、自分の QR
害は減少しています。2003 年に
「出会い系サイ
コードを ID 交換掲示板に貼りつける抜け道がす
ト規制法」*2が制定され、功を奏していること
ぐに登場しました。LINE 社の対策の甘さを指摘
が分かります。全体の被害児童数も減少が続い
しているのではありません。機械の設定や法整
ていましたが、2013 年に増加に転じました。
備だけでは不十分で、重要なのは、子ども自身
増加の要因は、ID 交換掲示板と推察できます。
の意識の変容を促すことだと言いたいのです。
22014 年上半期の検挙事例から
ちなみに、ID 交換掲示板での被害児童数は、
今年度上半期 262 人で、昨年同期 117 人から
今回の報告には5つの検挙事例が掲載されて
倍以上増えています。
課題は絞られたようです。
児童数(人)
1,500
1,000
0
1,136
0
関係しています。端末はスマホだけでなく、携
0
1,239
1,085
254
282
500
0
453
2009
2010
出会い系サイト
図
いますが、そのうち2事例に無料通話アプリが
2011
その他
36
1,040
218
2012
帯ゲーム機や学習用のタブレットが使われてい
352
ます。もはや、ケータイ・スマホにだけ注意し
ておけばいい時代ではなくなっているのです。
941
54 歳の男性が「みだらな性行為をした」と報
159
2013 (年度)
告されている相手は、11歳の女子小学生。学習
ID 交換掲示板
用タブレットからコミュニティサイトに接続し
被害児童数のグラフ
て被疑者の男性と知り合ったといい、もはや事
「平成 26 年上半期の出会い系サイト及びコミュニテイサイトに
起因する事犯の現状と対策について」
警察庁より
態は待ったなしです。
*1 https://www.npa.go.jp/cyber/statics/h26/pdf02-1.pdf
*2 正式名称は
「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引
する行為の規制等に関する法律」
2014.11
国民生活
24
インターネットと上手につき合う
子どもたち自身に力を
大人の対策だけでは限界があります。制限や
禁止では子どもは抜け道を見つけます。子ども
自身が自分たちで自分たちの生活を見つめ直し
たうえで、ルールづくりをすることしか道はな
当初
「勉強優先派」
と
「制限は逆効果派」
で議論が
いでしょう。そこで、大学生と協働で行われて
白熱しましたが、最後は折衷案に収まりました。
いる関西での実践をいくつか紹介しましょう。
「9時まで」
ですが、そのままでは9時以降に
①神戸市教育委員会との協働
(小学校)
来た LINE などが気になってしかたがありませ
市内全 167 小学校で、兵庫県立大学の学生等
ん。そこで
「寝る前 10 分可」
。確認する時間を
(以下、大学生)
がスマホの授業を実施していま
取るので、ストレスがたまらないのです。「こ
す。大学生はスマホ問題の現状を小学生に分か
のルールならば、合格したい受験生は守れるは
りやすく伝え、その後小学生は自分たちでルー
ずだ」
と高校生は話します。
ルづくりをします。
後半が主眼の取り組みです。
見事です。まさに、血の通ったルール。この
難しいのではと不安もありましたが、小学生た
微妙なさじ加減は当事者の彼ら自身にしか分か
ちは、想像以上に良い話し合いをしています。
りません。実は、高校生がうまく言葉にできな
②大阪府青少年課との協働
(小中学校)
いときのために、大学生は事前に候補を考えて
小中学生が集まり、自分たちのスマホの問題
いました。提示していれば、そのありきたりの
について話し合いました。解決策を探るため、
候補に引っ張られ、実効性のないものになって
自分たちで実態調査アンケートを作成し、1万人
いたところです。大学生たちは
「今後一切、意
規模で実施。結果をもとに、ルールづくりをす
見は言わない」
と誓い合いました。
ることになっています。結果分析と話し合いの
高校生から
「三ヶ条を巻物風で勉強部屋に貼
ファシリテートを大学生たちが担当しています。
りたくなるものに」とデザインを託された大学
③京都府警察との協働
(高校)
生たちは、高校生手描きの原画の修正と約1,000
京都府警察は、「ネット安心アドバイザー」
枚の印刷を引き受けました。夏の1週間を大学
(ネット問題に詳しい教育関係者や企業等)
を活
のゼミ室で朝から晩まで、姫路飾西高校のゆる
用して、府下全高校を対象に、スマホ啓発講座
キャラ
「たかまる君」
と奮闘しながら過ごしまし
を実施しています。
大学生たちは、
アドバイザー
た。
「私たちができることは、これ以上でもこれ
対象の研修講師役を努め講座資料作成も担当し
以下でもない」
。教員をめざす大学生たちにとっ
ます。講座では高校生が自分の問題と考えるこ
て、熱く、有意義な夏になったことでしょう。
とができるよう努めています。
大人として
大学生が見つけた支援の極意
大学生の存在は大きい。大人でもなく、子ど
写真は兵庫県立姫路飾西高校生徒会作成の
もでもない。今回の実践群では、彼らの存在が
あるから、子どもたちは考え始めたのです。
「受験生のためのスマホ三ヶ条」
。オープンハイ
このような取り組みが全国に広がることを期
スクールに来た中学生に説明し、
手渡しました。
三ヶ条の策定には大学生がファシリテーターと
待します。そのうえで、さらに重要なのは、大
してかかわったのですが、その議論の一部を紹
人がまず本気になることです。試されているの
介しましょう。
は、我々大人なのです。それぞれの立場ででき
ることがあるはずです。
「一、夜9時まで。ただし寝る前 10 分可」
は、
2014.11
国民生活
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