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5 94 条 2 項の「第三者」(無過失の要否)
学習チェック欄 H5-1,H7-1,H17-1 5 Q 94 条 2 項の「第三者」(無過失の要否) Aは債権者の差押えを免れるために,自己所有の甲土地をBに仮装譲渡し, 登記も移転した。AB間の事情について善意有過失であったCが,Bから甲土 地を譲り受け登記を備えた場合,Cは甲土地所有権を取得できるか。 問題提起 CはAB間の仮装譲渡という事情について知らないことに過失が あった。そこで,94 条 2 項の「善意」の第三者として保護されるため には,無過失であることが必要かが問題となる。 規範定立 この点,94 条 2 項の「善意」の第三者として保護されるためには, 単なる善意であれば足り,無過失であることは必要ないと解する。 なぜなら,94 条 2 項は条文上「善意」としか規定していないし,虚 偽の外観を作り出した本人の帰責性が強い以上,第三者保護の要件を 厳しくするのは本人との関係で,公平さに欠けるからである。 あてはめ したがって,有過失であるCでも甲土地所有権を取得できる。 94 条 2 項は,単に「善意の第三者」としか規定していないため,無過失 の要否が問題となります。 無過失不要説については,理由を 2 つ書けるのが理想です。①条文上「善 意」と規定(形式的理由)。②虚偽の外観を作り出した本人の帰責性が強 い(実質的理由)。 書き方の注意点として,上記のように「第三者として『保護される』た めには・・」と書いてください。「第三者に『あたる』ためには・・」と 書くのは間違いです。なぜなら,この「無過失の要否」の論点を論ずる前 に,94 条 2 項の善意の「第三者」に『あたる』認定は終わっているからで す。この理は,次の論点 6 の「94 条 2 項の「第三者」(登記の要否)」で もあてはまります。 10 LEC東京リーガルマインド 不動産鑑定士 2016 こう書け!民法 民法では,『主観的要件』が重要です。 取引の相手方(買主)や第三者(転得者)が保護されるために要求される内心の事 情を『主観的要件』といいます。 この『主観的要件』については,大きく「善意・無過失」・ 「善意・無重過失」・ 「善 意のみ」・ 「悪意」の4つに分けられます。民法では,各論点について,どの主観的要 件が必要かを押さえることが重要です。 ちなみに,本論点で要求される主観的要件は, 「善意のみ」です。つまり,善意であ れば足り,過失の有無は問いません。 LEC東京リーガルマインド 不動産鑑定士 2016 こう書け!民法 11