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第 75 講 産業の国際化

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第 75 講 産業の国際化
第 9 章 グローバル化と地理 第 75 講 産業の国際化 産業の高度化 ① 工業化 ・低資本、低技術の工業から高付加価値製品の製造へとシフト。
→繊維工業から金属、機械、先端産業へ
・集積による効率化。
情報共有や部品調達、人材の確保などのメリットの一方、コストの高騰も。
・途上国の工業化 → 輸入代替型工業と輸出指向型工業。
・輸入代替型工業 → 輸入に依存していた軽工業品などを自国生産する工業。
初期の工業化で見られる形態。
国内市場が狭い国では限界が生じる。
・輸出指向型工業 → 安価な人件費を背景に価格で競争力の高い製品を生産。
労働集約的製品を中心に輸出を拡大。
輸出系企業の税金を優遇する地域を設置(輸出加工区)。
人件費の高騰で競争力が失われ、工場が移転することも。
② サービス経済化 ・産業が発達するにつれて農業や工業からサービス業へシフト。
・産業構造上、サービス業の比重が高まることをサービス経済化という。
・サービス経済化の流れ → 初期は伝統的なサービス産業が発達。
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第 75 講 産業の国際化 (卸・小売 金融 保険 運輸 通信 飲食)
高度化するにつれ需要のあがるサービス業が発達。
(教育や医療、家事、レジャー、情報など)
・高付加価値サービスの重要性 → 研究や開発、調査部門の登場。
※生産部門と比較し収益がきわめて大きいため、研究開発に特化する企業も登場。
(ファブレス企業)
産業の国際化
① 国際分業 ・水平分業 →主に先進国同士で行う分業で、相互に機械類の生産を分担する。
垂直分業 →資源のある途上国と先進国の分業。資源を途上国側が輸出し、先進国
で加工する。
・工程間分業 →工業品を生産するまでの行程をそれぞれの国の特性により分業する
こと。
市場の大きい国・教育水準が高い国(先進国):研究開発部門
技術力の高い国:部品生産部門(中間材)
人件費の安い国(途上国):組み立て部門
・製品間分業 →工業製品によって分業する。
労働集約的製品は人件費の安い途上国で生産し、技術・知識集約的
な製品は先進国が生産する。
他にも、ターゲットにより分業することも。
例:高級車は先進国、大量生産車は途上国など
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第 9 章 グローバル化と地理 ② グローバル化 ・ボーダーレス社会 → 国境のない社会。
グローバル化の進む現代を表現したもの。
文化交流や貿易のみならず、観光、労働など越境移動者が
増加し、投資など金融や情報も国境をこえて活発化してい
る。
・経済活動や生産活動が一国でとどまらず全世界に範囲が拡大する。
(多国籍企業の登場や、海外進出・投資、海外企業連携など)
・国際分業の進展から、他国の経済状況などで国内生産に影響が出ることも。
例:タイの通貨危機、リーマンショック、欧州債務問題
・渡航者の増加、移動・通信の多様化から新しい脅威も懸念。
→感染症の拡大、膨大な情報による混乱など
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第 9 章 グローバル化と地理 次の問に答えよ。
(1)工業化の初期に発達しやすい工業は何か。
(2)前問(1)の理由は何か。
(3)工業化が進展した先進国で発達する工業は何か。
(4)途上国が輸入品を自国生産に切り替えることで工業化することを何というか。
(5)安価労働力を背景に輸出に特化した工業化を何というか。
(6)工業製品の価格や利益により生産する製品を分担して国際的に生産する分業を何とい
うか。
(7)組み立て、部品製造など一つの製品を生産するにあたり複数の国で分担することを何と
いうか。
(8)研究開発部門に特化した企業を何というか。
(9)高度な知識や新技術を武器にした知識集約型、創造型の小企業を何というか。
(10)1990 年代に通貨が暴落し、ASEAN 各国を中心に国際的に大きな影響をあたえた国を
答えよ。
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第 75 講 産業の国際化 次の各文には誤りがある。誤りを訂正し、正しい文に書き換えよ。
(1)アメリカ合衆国は、鉄鋼などの金属工業へのシフトをすすめ、現在でも中心的な存在と
なっている。
(2)日本では賃金の高騰や円高から家電の生産拠点を海外に移したため、国内での生産はほ
とんど行われていない。
(3)ベトナムは、近年の急速な成長により賃金が高騰し、一部の工場が中国へ移転している。
(4)ASEAN 域内の自動車工場では、部品から組み立てまですべて域内で生産している。
(5)リーマンショックにより、欧米諸国では経済が低迷したが、日本には影響はほとんどな
かった。
次の問に答えよ。
(1)近年、台湾を中心に生産部門に特化した企業が登場している。こうした背景を 30 字以
内で述べよ。
(2)2000 年代前半と後半では日本から中国への海外進出の形態の特徴に違いがみられる。
産業の種類に着目して、その違いを 60 字以内で述べよ。
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第 9 章 グローバル化と地理 グローバル化の進展にともなって、世界各地で生じた様々な事象について述べた文として
適当でないものを、次の①
④のうちから一つ選べ。(2006 年センター本試)
① インドでは、IT(情報技術)産業の成長にともないインターネットの利用者が増加し
ているが、情報化の恩恵を受けられない人々も多い。
② 日本では、多くの外国企業が生産拠点を設けたことにより、国内雇用が拡大して産業
が活性化した。
③ アジアでは、2000 年代に入り感染症の SARS(重症急性呼吸器症候群)が発生して
急速に拡散し、世界各国は早急な対応を迫られた。
④ タイでは、1990 年代後半に通貨危機が発生し、その影響は周辺諸国などへ短期間で
波及して、世界の金融市場を混乱させた。
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