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DISCUSSION PAPER SERIES 東アジアの再生可能エネルギー政策
DISCUSSION PAPER SERIES 東アジアの再生可能エネルギー政策 -日中韓台の普及促進措置の現状と課題- 朴勝俊・李秀澈 No.2009-05 京都産業大学大学院経済学研究科 〒 603-8555 京都市北区上賀茂本山 Graduate School of Economics Kyoto Sangyo University Motoyama-Kamigamo, Kita-ku, Kyoto, 603-8555, Japan 2009/06/14 1 東アジアの再生可能エネルギー政策-日中韓台の普及促進措置の現状と課題- The Renewable Energy Policy in East Asia -- Current Status and Challenges for Promotion Schemes in Japan, China, Korea and Taiwan-○ 朴 勝 俊 *・ 李 秀 澈 ** 1. はじめに 太陽・風力・バイオマスといった再生可能エネルギーは、地球温暖化問題とエネルギー セ キ ュ リ テ ィ の 解 決 策 の 一 つ と し て 、 世 界 的 に 関 心 を 呼 ん で い る 。 主 に 、 EU 諸 国 の 積 極 的な支援策が広く知られているが、日本、中国、韓国、台湾(以下、日中韓台)の東アジ ア 4 ヶ国・地域でも、近年、その普及を促進する政策措置の導入が進んでいる。本報告で は 、 こ れ ら の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 普 及 措 置 の 歴 史 と 現 状 、 お よ び 制 度 の 効 果 を 、 EU 諸 国 の試みを参照点としつつ相互に比較し、それらの成果や課題、および改善方向を明らかに する。 再生可能エネルギーとは、化石燃料や原子力との対比で、自然界からの恵みによって一 定限度内であれば枯渇することなく繰り返し利用できるエネルギーをいう。ただ各国は、 再生可能エネルギーを政策的に支援する上で、非石油エネルギー供給源の多様化や、エネ ルギー需要側の技術普及促進など、それぞれの実情に応じた政策目的を絡ませて、国ごと に異なった概念名称と定義を与えている。表 1 から分かるように法令上の定義・分類は大 同小異であるが、大規模水力の取り扱い、廃棄物エネルギーの取り扱い等で若干の差異が あ る 。す な わ ち 日 本 の 定 義 で は 1000kW を 超 え る 大 型 水 力 発 電 設 備 は 新 エ ネ ル ギ ー に 含 ま れないが、他の 3 国・地域では再生可能エネルギーの一つとされる。また、韓国や台湾で は 廃 棄 物 エ ネ ル ギ ー が 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー に 含 ま れ る の に 対 し 、日 本 の RPS 法 (後 述 )で は 、 廃棄物に含まれる植物由来の残渣分だけが新エネルギーに含まれる。 また、韓国では石炭・中質油残渣由来の液化ガスや水素エネルギーなどの自然界由来と 言えないものや、燃料電池のような、エネルギー源というよりエネルギー利用設備に対し て 、 新 エ ネ ル ギ ー と い う 分 類 を 与 え 、 支 援 を 行 っ て い る 。 日 本 で も 2008 年 の 政 令 改 正 ま では 、表 2 に示 すよう な分類 がなさ れ 、廃棄 物発電 や天然 ガス コー ジェネ レーシ ョン 、燃 料電池なども含まれていた。 本稿では、これらの中でも再生可能エネルギーからの発電(以下、再生可能発電あるい は再生可能電力と呼ぶ)と、普及促進のための政策措置を主な検討対象とする。 * 京 都 産 業 大 学 経 済 学 部 Faculty o f Econo mics, Kyoto Sangyo University 〒603-8555 京 都 市 北 区 上 賀 茂 本 山 Tel 075-705-1862 ** 名 城 大 学 経 済 学 部 Faculty of Econo mics, Meijo University 〒468-8502 愛 知 県 名 古 屋 市 天 白 区 塩 釜 口 1-501 Tel 052-832-1151( 代 ) 2 表 1: 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 関 連 定 義 ・ 分 類 の 比 較 中国 韓国 台湾 可 再 生 能 源 法 ('06 施 新 エネ特 別 法 施 行 令 行 )、中 期 発 展 規 画 ('08 改 正 ) ('07) 新 再 生 エネ開 発 普 及 促 進 法 ('04) 可再生能源発展条 例 草 案 ('08 ) 分類 可再生能源 新 エネルギー 新 再 生 エネルギ ー 可再生能源 太 陽 エ ネルギー 太 陽 エ ネルギー 太陽熱 太陽熱 太 陽 エ ネルギー 太陽電池 太陽光発電 風力発電 風力 風力 バイオマス燃 料 製 造 バイオディーゼル 、バ イオエタノール 、バイ オガス、バイオ 液 化 油 、バ イオ燃 料 バイオマス 小規模水力 非抽蓄式水力 定義法令 概念名称 再生可能 エネルギー 風力 風力発電 バイオマス (藁 ・ 薪 ・畜 糞 の伝 統 的 燃 焼 を 除 く) エ タノ ール、バ イオ・ディー ゼル、バイオマス練 炭 、メタンガ ス 日本 バイオマス熱 利 用 水力 バイオマス発 電 バイオマス発 電 小規模水力 小 水 力 (千 kW 以 下 ) 大規模水力 大 規 模 水 力 (2003-) 海 洋 エ ネルギー 海 洋 エ ネルギー 海 水 ・河 川 水 熱 源 利 用 地熱 地熱 地熱 海 洋 エ ネルギー 海 洋 エ ネルギー 地熱 地熱 廃 棄 物 エネルギ ー 廃 棄 物 エネルギ ー 雪 ・氷 熱 利 用 ※08 年 の改 正 ま で、 廃 棄 物 エネルギ ー等 の非 再 生 エネルギ ー の他 、さまざまな需 要 側 技 術 などが列 挙 さ れていた 。 その他 (韓 国 でい うの新 エ ネ ルギー) 表 2: 石 炭 ・中 質 残 渣 油 の液 化 ガ ス 水 素 エ ネルギー 2008 年 政 令 改 正 前 の 日 本 の 「 新 エ ネ ル ギ ー 」 の 定 義 ・ 分 類 自 然 エ ネルギー 再 生 可 能 エ ネルギー 自 然 エ ネルギーでかつ リサイクルエネルギー リサイクルエネルギー 従 来 型 エネルギ ーの新 利 用 形 態 2. 燃料電池 太陽光発電 風力発電 太陽熱利用 雪氷熱利用 バイオマス発 電 バイオマス熱 利 用 バイオマス燃 料 製 造 廃棄物発電 廃棄物熱利用 廃棄物燃料製造 温 度 差 エネルギ ー クリーンエネルギ ー自 動 車 天 然 ガ スコージェネレーション 燃料電池 再生可能エネルギーに対する支援の根拠 風力や太陽光等の再生可能エネルギーは、多くの場合、化石燃料や原子力等の既存電源 と 比 較 し て 高 コ ス ト か つ 供 給 不 安 定 で あ り 、市 場 競 争 に お い て は 淘 汰 さ れ る 可 能 性 が 高 い 。 これらに政策的支援を行う根拠は、主に次の 3 点に求めることができるであろう。 3 第 1 に、環境 上の効 果であ る。化石 燃料に よる火 力発電 や原 子力 等に比 べて 、大 気汚染 物質や温室効果ガスによる外部費用や、放射性廃棄物対策および過酷事故リスクの外部費 用が小さい。この際、本来であれば、既存電源に対して環境税等によって外部費用の内部 化がはかられるべきである。しかし環境税の導入は政治的に難しく、しかも既存エネルギ ーには相当の政府補助が行われているので、再生可能エネルギーへの支援政策を通じて競 争 条 件 の 均 等 化 が も た ら さ れ る べ き で あ る ( 大 島 2006)。 第 2 に、エネ ルギ ー 自給率 の向上 であ る。再生可 能エネ ルギ ーは 国内に 賦存す る自 然エ ネルギーの活用であるため、その使用量に応じて既存エネルギーを節約し、エネルギー輸 入依存度を下げることができる。 第 3 に、電力 市場の 資源配 分機能 の補 正で ある 。電力 市場 では既 存の発 電所(多 くの場 合、減価償却を終えた発電所)で、安価な燃料を用いて発電された電気が最も安い。その ため、これらの発電所がたとえ非効率でかつ外部費用が大きくても、優先的に用いられる ことになる。それに対し、新規の風力・太陽光発電所は固定費の比率が高く、長期平均費 用が電力市場価格を下回る投資案件であっても、投資家は期待する年数内で確実に資金が 回収できる確信が持てないことが多い。そのため、最新技術の普及を促進し、旧式の非効 率な発電所の引退を促進する上でも、再生可能電力を優先的に販売できるような施策が望 ましいのである。 3. 再生可能発電の開発段階と関連政策類型 再生可能発電普及のための政策措置は、その開発・普及段階に応じて様々なものが考え ら れ る( 表 3)。一 般 に は 、研 究 ・ 開 発 段 階 か ら 順 に 需 要 開 拓 ・ 普 及 へ と 向 か う た め 、そ れ に応じた政策が順に導入されると想像されるが、近年では、中国や韓国でも積極的に、欧 米 の 先 進 国 と 同 様 の 普 及 拡 大 策 が 制 度 化 さ れ て お り 、 議 論 の 焦 点 は RPS(供 給 義 務 量 + 証 書 取 引 )と FIT(固 定 価 格 買 取 制 )の い ず れ を 選 択 す べ き か 、 に 移 っ て い る と 言 え る 。 ま ず 、表 1 と 図 1 を 念 頭 に 、開 発 段 階 に お い て 必 要 と さ れ る 政 策 措 置 に つ い て 、説 明 を 与 え る こ と と し よ う 。図 1 は 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を め ぐ る 各 種 ア ク タ ー の 分 類 を 示 し て い る。政策措置を検討する場合、どのアクターを実施主体とし、どのアクターが負担を負う のかを、よく切り分けておくことが重要である。 3.1. 研究・開発初期段階 再生可能エネルギー技術が商業化段階に達していない「研究・開発初期段階」において は、研究・開発補助金によって実用化へ向けた研究開発が図られる。もちろん、収益性と 成長が見込まれる分野では、民間の設備メーカーによって自発的に研究開発がすすめられ るはずであるが、再生可能エネルギーに関しては環境上・エネルギー安全保障上の外部効 果と、内部費用が低く安定的な既存エネルギー(化石燃料や原子力)との競争という障壁 4 の存在から、政府を中心とした研究開発体制がとられるのが普通である。 表 3: 再 生 可 能 発 電 の 発 展 段 階 別 に み た 政 策 措 置 一 覧 公的政策措置 普及段階 義務的政策措置 研 究 ・開 発 初期段階 初期需要 開拓段階 研 究 ・開 発 プロジェクトや補 助 金 系統連係規則、 設置義務 (公 共 建 築 や大 規 模 建 築) 市場形成 段階 系統連係規則、 FIT の電 力 買 取 義 務 、 RPS の導 入 義 務 量 普及拡大 段階 系統連係規則、 FIT の電 力 買 取 義 務 、 RPS の導 入 義 務 量 成熟段階 系統連係規則 図 1 設 備 補 助 金 または税 制 優 遇 措 置 、 政 策 金 融 (低 利 融 資 )、 部品等輸入関税軽減、 各 種 許 認 可 手 続 の簡 素 化 設 備 補 助 金 または税 制 優 遇 措 置 、 政 策 金 融 (低 利 融 資 )、 部品等輸入関税軽減、 FIT の固 定 価 格 制 、差 額 補 助 電 力 価 格 補 助 [Premium-FIT]、 RPS の証 書 取 引 、 競争入札制度、 各 種 許 認 可 手 続 の簡 素 化 FIT の固 定 価 格 制 、 RPS の証 書 取 引 、 入札制度、 電 力 価 格 補 助 [Premium-FIT] 各 種 許 認 可 手 続 の簡 素 化 既 存 エネルギーへの環 境 税 既 存 エネルギーへの環 境 税 市 民 による率 先 導 入 、 需 要 者 の自 発 的 グリーン証 書 (グリーン電 力 を含 む)、 電 力 会 社 の自 発 的 FIT (余 剰 電 力 購 入 メニュー)、 環 境 配 慮 金 融 (SRI 等 ) 市 民 による率 先 導 入 、 需 要 者 の自 発 的 グリーン証 書 (グリーン電 力 を含 む)、 電 力 会 社 の自 発 的 FIT 余 剰 電 力 購 入 メニュー)、 環 境 配 慮 金 融 (SRI 等 ) 環 境 配 慮 金 融 (SRI 等 ) 環 境 配 慮 金 融 (SRI 等 ) 再生可能発電をめぐる各種アクター 設備 設 備 ユーザー メーカー =設 置 者 =発 電 者 従来型電源 による発 電 者 3.2. 自発的措置 (民 間 人 が当 面 の金 銭 的 不 利 益 を覚 悟 で自 発 的 に行 うもの) 誘導的政策措置 (インセンティブ付 与 ) 配 電 ・小 売 送電会社 (電 力 会 社 ) 会社 (電 力 会 社 ) 電力消費者 企業 家庭 公的機関 初期需要開拓段階 再生可能エネルギー技術の実用化に成功したものの、生産規模の小ささと高コストに特 徴づけられる商用化の初期段階においては、初期の需要創造と生産規模拡大のための施策 が求められる。 風力発電や太陽光発電などの不安定な自然の力に依存するエネルギー源は、蓄電池等を 5 用いれば独立分散型の電源として活用することも可能であるが、個別に蓄電池等を併設し て 負 荷 の 変 動 に 備 え る よ り も 、 既 存 の 送 電 網 に 電 力 を 流 し 込 ん で (feed-in)、 個 別 の 変 動 を 送 電 網 全 体 で 吸 収 し た 方 が 社 会 的 費 用 面 で 合 理 的 な 場 合 が 多 い 。そ の た め 、送 電 会 社 1 に 対 して、再生可能電力の系統連係義務を課すことが有効といえる。他方、公共建築や大規模 建築に対して再生可能発電設備の設置を義務づければ初期需要を開拓することが可能であ る。以上が義務的政策措置である。 再生可能発電設備の生産者の起業や設備投資を支援したり、設置者(ユーザー)に対し て再生可能発電設備の設置・利用することを促す、誘導的政策措置(経済的インセンティ ブ措置)もいくつか考えられる。最もよく用いられるのは、太陽電池や風力発電機の設置 コ ス ト に 対 す る 補 助 で あ り 、 設 備 補 助 金 、 税 制 優 遇 措 置 (税 額 控 除 )、 政 策 金 融 (低 利 融 資 ) な ど で あ る 。ま た 、韓 国 の よ う に 設 備 メ ー カ ー が 外 国 か ら の 部 品 に 依 存 し て い る 場 合 に は 、 それに対する輸入関税の軽減が有効である。また、設備メーカーの工場建設や、設備ユー ザ ー に よ る 建 設 ・ 設 置 、 系 統 連 係 等 に 関 わ る 各 種 許 認 可 手 続 (建 築 許 可 等 )の 簡 素 化 は 、 投 資のリードタイムを短縮してリスクを緩和することにより、投資を促進する効果がある。 上記の施策が政府による政策措置であるのに対し、政府が適切な政策措置を採らない段 階で、民間人や企業による自発的な取り組みも存在する。設備ユーザーがコスト高な設備 を率先して導入したり、この負担を自発的なグリーン電力証書取引で広く分担するなどの 措 置 が あ る 2 。 こ れ は 、 民 間 企 業 が 企 業 の 社 会 的 責 任 (CSR)の 一 環 と し て 行 い 、 企 業 宣 伝 に 役立てる場合もある。日本の電力会社が行っている「余剰電力購入メニュー」は、太陽電 池や風力発電所を系統連係した上で、固定された価格で余剰電力を無制限に買い取るとい う も の で あ り 、 制 度 的 に は 後 述 の 固 定 価 格 買 取 制 (feed-in tariff)に 等 し い が 、 法 的 拘 束 力 が な い 自 発 的 な 取 り 組 み で あ る 点 で 特 徴 的 で あ る 。 環 境 配 慮 金 融 (SRI 等 )は 資 金 不 足 に 陥 りがちな再生可能エネルギー部門に対し、企業や個人が好意的な条件で投資や貸付を行う ものである。以上のいずれも、社会的文脈によっては重要な役割を果たしうるが、その効 果が法的な拘束力によって担保されるものでなく、民間人や企業が環境や社会のために当 面の金銭的な不利益・負担を覚悟で、率先して実施するものであるのが特徴である。 3.2. 市場形成段階から普及拡大段階 設備メーカーたちの数や規模が増加して供給力が高まってくると、政府の再生可能エネ ルギー普及目標に応じて、電力市場で相当のシェアを占めるまでに普及させる施策が求め られる。系統連係義務はここで、他の電源より優先的に再生可能電力を市場に送り込むと 東 ア ジ ア 4 ヶ 国・地 域 で は 、垂 直 統 合 さ れ た 地 域 独 占 的 な 電 力 会 社 が 送 電 網 を 所 有 し て い る 。 自 発 的 な グ リ ー ン 電 力 証 書 取 引 で は 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 発 電 者 は 買 電 価 格 に 加 え て 、発 電 量 に 応 じ た グ リ ー ン 電 力 証 書 を 第 三 者 に 販 売 し て 自 己 負 担 を 減 ら す 。証 書 の 購 入 者 は そ の「 環 境価値」をアピールすることができる。 1 2 6 いう政策的な意味を帯びる。 こ の 段 階 で 重 要 な 役 割 を 果 た す 固 定 価 格 買 取 制 (feed-in tariff, FIT)と 再 生 可 能 電 力 供 給 義 務 量 ・ 証 書 取 引 制 (renewable portfolio standard, RPS 3 )は 、 い ず れ も 義 務 的 政 策 措 置 と 誘導的政策措置のポリシーミックスとみることができる。 FIT は 送 電 会 社 に 対 し て 、 再 生 可 能 電 力 を 有 償 で 買 い 取 る 義 務 を 課 す と と も に 、 法 令 に よってその買取価格を長期間にわたり電力市場価格よりも高い水準で固定するものである。 そ れ だ け で は 送 電 会 社 に 多 額 の 負 担 が 発 生 す る の で 、 法 定 買 取 価 格 (基 準 価 格 )と 電 力 市 場 価格との差額分が、政府から送電会社や発電者に補助金として与えられたり、電気料金へ の 上 乗 せ に よ っ て 電 力 消 費 者 が 薄 く 広 く 分 担 す る 制 度 が 明 文 化 さ れ る 。と こ ろ で FIT の 亜 種 と し て 固 定 料 率 補 助 制 (Premium-FIT)が 存 在 す る が 、 こ れ は 発 電 者 に 再 生 可 能 電 力 を 電 力市場において市場価格で販売することを認めつつ、その市場価格に固定された料率の補 助金を上乗せで与えるものである。この場合には送電会社に買い取り義務は課されない。 RPS は 電 力 供 給 者 に 、販 売 電 力 の 一 定 比 率 を 再 生 可 能 電 力 で 賄 う こ と を 義 務 づ け る と と もに、義務量と実際の再生可能電力供給量との差を証書取引の形で融通することを認め、 再生可能電力に証書価格というインセンティブを追加させるものである。ここで、電力供 給 者 と し て 、全 て の 従 来 型 電 源 に よ る 発 電 者 ・ 輸 入 者 (producer & importer)を 指 定 す る 場 合 と 、 全 て の 電 力 小 売 会 社 (supplier)を 指 定 す る 場 合 が あ る 4 。 競 争 入 札 制 度 (tender)は 、 政 府 や 送 電 会 社 が 一 定 の 容 量 の 再 生 可 能 発 電 設 備 に 対 し て 、 長期間にわたって固定価格での電力買い取りを保障するとともに、販売権を競争入札によ っ て 発 電 者 に 割 り 当 て る 制 度 で あ る 。そ の 際 、電 力 の 落 札 価 格 が 長 期 間 の 固 定 価 格 と な る 。 FIT、 RPS、 競 争 入 札 制 度 の い ず れ も 、 価 格 が 魅 力 的 か 、 義 務 と 制 裁 の 厳 し い 政 策 が と ら れ る な ら ば 、十 分 な 販 売 シ ェ ア を 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー に 与 え る こ と が で き る は ず で あ る 。 助成措置(補助金、税制優遇措置、政策金融)は補完的施策として併存する場合もある が 、 FIT、 RPS、 競 争 入 札 制 度 が 充 実 す る に つ れ て 重 要 性 が 低 下 す る 。 各 種 許 認 可 手 続 の 簡素化の重要性は変わらない。民間人や企業による自発的な取り組みも、主要な普及策が 充実するにつれて重要性が低下する。むしろ、実質的に再生可能電力量に上限を定める RPS 制 度 の 下 で は 、 自 発 的 な 取 り 組 み は 必 ず し も 全 体 の 供 給 量 の 増 加 に は つ な が ら な い 。 従 っ て 、 自 発 的 に 導 入 支 援 さ れ た 再 生 可 能 電 力 は RPS 市 場 の 外 部 に 留 ま る べ き で あ る 。 それに対して、自発的な環境配慮金融による低利融資は、政府資金を要さずに再生可能 エネルギー部門に資金を集め、設置者の負担を軽減するとともに、要求される投資回収年 数 の 短 縮 化 に 貢 献 す る の で 、他 の 助 成 措 置 や 自 発 的 取 り 組 み に 比 べ れ ば 重 要 性 は 保 た れ る 。 EU で は こ の 制 度 を Quota Obligation System and Tradable Green Certificate (Quota/TGC)と 呼 ん で い る (Ragwitz, M et al. (2007))。 4 発 電 者・ 輸 入 者 を 指 定 す る 例 と し て 日 本 や イ タ リ ア 等 が 、電 力 小 売 会 社 を 指 定 す る 例 と し て ベ ル ギ ー や 英 国 等 が あ る 。例 外 的 に 、全 て の 電 力 消 費 者 に 対 し て 、購 入 電 力 の 一 定 比 率 を 再 生 可 能 電 力 で 賄 う 義 務 を 課 す 制 度 も あ る (ス ウ ェ ー デ ン 等 )。 3 7 また、再生可能電力の競争力を高める上で、既存電源(化石燃料による火力や原子力、 大規模水力等)から発電された電力に対しては、その外部費用に応じた環境税が課される べ き で あ る 5。 3.3. 成熟段階 再生可能発電の単価が、既存電源(化石燃料による火力や原子力、大規模水力等)と十 分に競争できる水準まで低下すれば、普及支援策はほとんど不要となろう。ただし、既存 電 源 の 外 部 不 経 済 に 応 じ た 環 境 税 は 不 可 欠 で あ る 6 。不 安 定 な 風 力 や 太 陽 光 と い っ た 電 源 で 、 発電量が事前に予測できない場合には、価格は市場価格に準ずるとしても、優先的な系統 連係義務が維持されるべきかもしれない。また、発電設備の新陳代謝のために、老朽設備 の引退を促進し新規設備への投資を促進する制度も検討に値する。さらに、環境配慮金融 はこの段階でも重要な役割を果たすとみられる。 図2:EU27ヶ国の再生可能エネルギー支援制度 EU27 FIT RPS(義務量) 証書取引制度 OPTRES (2007) Final Report 補助金 優遇税制 競争入札 EUでは大半の国々がFITを導入している 16 (OPTRES 2007、Fig.12) 4. AT: オ ー ス ト リ ア 、 BE: ベ ル ギ ー 、 BG: ブ ル ガ リ ア 、 CY: キ プ ロ ス 、 CZ: チ ェ コ 、 DE:ド イ ツ 、DK:デ ン マ ー ク 、 EE: エ ス ト ニ ア 、 EL: ギ リ シ ャ 、 ES: ス ペ イ ン 、 FI: フ ィ ン ラ ン ド 、 FR: フ ラ ン ス 、 HU: ハ ン ガ リ ー 、 IE: ア イ ル ラ ン ド 、 IT: イ タ リ ア 、 LT: リ ト ア ニ ア 、 LU: ル ク セ ン ブ ル グ 、 LV: ラ ト ビ ア 、 MT: マ ル タ 、 NL: オ ラ ン ダ 、 PL: ポ ー ラ ン ド 、 PT: ポ ル ト ガ ル 、 RO: ル ー マ ニ ア 、 SE: ス ウ ェ ー デ ン 、 SI: ス ロ ヴ ェ ニ ア 、SK:ス ロ ヴ ァ キ ア 、 UK: 英 国 FIT vs RPS--OPTRES 報 告 書 に 基 づ く 主 要 政 策 の 効 果 と 経 済 性 の 比 較 4.1. 普及実績の比較 固 定 価 格 買 取 制 (FIT)と 再 生 可 能 電 力 供 給 義 務 量 ・証 書 取 引 制 (RPS)の 制 度 実 績 を 比 較 す る 上 で 、 欧 州 委 員 会 の 支 援 に 基 づ き 、 EU 加 盟 国 で の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 促 進 策 の 国 別 実 績 を 比 較 検 討 し た OPTRES 研 究 が 参 考 に な る 。 こ の 最 終 報 告 書 (Ragwitz et al. 2007)に よ れ ば 、FIT 制 を 採 用 し て い る 国 々 の 方 が RPS 制 を 採 用 し た 国 々 よ り も 、特 に 風 力 と 太 陽 光 5 ここでいう環境税は炭素税ではなく、原子力も外部費用やリスクに応じた課税を免れない。 も ち ろ ん 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー と 言 っ て も 外 部 費 用 が ゼ ロ で は な い の で 、そ の 電 力 を 享 受 す る者は環境税を支払うべきであろう。 6 8 の 導 入 実 績 が 優 れ て い た 。 こ う し た 経 緯 か ら 、 EU で は 多 く の 加 盟 国 が FIT 制 度 を 採 用 す る に 至 っ て い る ( 図 2 お よ び 付 録 を 参 照 )。 風 力 に 関 し て は 、 EU15 7 に お け る 2007 年 末 の 累 積 設 備 容 量 の 79.8%が FIT を 採 用 し て い た 国 々 ( ド イ ツ 、 ス ペ イ ン 、 デ ン マ ー ク 等 ) に 存 在 し 、 RPS を と っ て い た 国 々 ( イ ギ リ ス 、 イ タ リ ア 等 ) は 自 然 的 潜 在 量 を 十 分 に 開 拓 し 得 て い な い 8 。 一 方 で 、 2005 年 の FIT 導 入まで、競争入札制をとっていたアイルランドでも急激な伸びが見られていた。 太 陽 光 に 関 し て は 、 FIT 制 を と っ て い る 一 部 の 国 々 ( ド イ ツ 等 ) で 急 激 な 伸 び が 見 ら れ る が 、 FIT 制 を と っ て い る 全 て の 国 が 同 様 に 成 果 を 挙 げ て い る わ け で は な い 。 他 方 、 RPS 制 を 採 用 し た 国 で は 、 普 及 が ほ と ん ど 進 ん で い な い 。 FIT を 採 用 し た 国 々 で は 、 現 時 点 で は ま だ 高 コ ス ト の 太 陽 光 発 電 に 対 し て 、 10 ~ 20 年 に わ た っ て 、 高 い と こ ろ で 約 0.5 EUR/kWh (約 85 円 /kWh)水 準 の 固 定 価 格 買 い 取 り を 行 っ て い る ( 一 木 ・ 貝 塚 2007)。 そ れ に 対 し 、RPS 制 度 に お い て は 全 て の 再 生 可 能 電 力 が 原 則 と し て 同 じ 土 俵 で 競 争 せ ね ば な らず、発電単価が他の再生可能電力の数倍に達する太陽光にとって、市場参入の余地は限 られる。 4.2. 補助単価の比較 OPTRES 最 終 報 告 書 の 第 4 章 で は 、 技 術 別 の 補 助 単 価 [EUR/MWh]の 比 較 が 行 わ れ て い る 9 。 一 般 に 、 RPS 制 度 の 方 が 均 一 の 市 場 で の 自 由 競 争 で あ り 、 コ ス ト 低 下 が 進 む の で 、 固 定 的 な 価 格 で 補 助 を 与 え 続 け る 1 kWh あ た り の 補 助 単 価 が 低 く な る と 信 じ ら れ て い る 。 し か し な が ら 、 補 助 単 価 は FIT 制 の 国 々 の 方 が 総 じ て 低 い と い う 。 図 3 は 、 EU15 の 陸 上 風 力 に 対 す る 補 助 単 価 の 実 績 を 比 較 し た も の で あ る 。 帯 グ ラ フ は 発 電 単 価 の 幅 (最 小 値 ~ 平 均 値 )、 点 と 線 の グ ラ フ は 補 助 単 価 ( 平 均 値 ~ 最 大 値 ) を 比 較 し た も の で あ る 。 こ れ を 見 る と 、 FIT 諸 国 で は お お む ね 平 均 以 下 の 発 電 単 価 を 回 収 で き る 最 低 限 度 の 補 助 単 価 と な っ て い る の に 対 し 、RPS 諸 国 で は 市 場 で 決 ま る 補 助 単 価 は 平 均 発 電 単価を大幅に上回る場合が多いことが分かる。 この理由は、証書市場がいまだ十分に成熟していないこと、および多様な電源を単一の 市 場 で 扱 う こ と の ほ か 、価 格 の 変 化 す る RPS 制 度 の 下 で は 、投 資 回 収 年 数 が 長 期 に わ た る 再生可能エネルギー投資に対して、投資家が相当のリスクプレミアムを要求するためであ る と 見 ら れ る 。逆 に 言 え ば 、FIT は 長 期 に 渡 っ て 価 格 を 固 定 さ せ る た め 、投 資 家 (一 般 家 庭 の 場 合 も 多 い )に と っ て リ ス ク が 小 さ く 、十 数 年 の 間 で 費 用 が 回 収 で き る 見 通 し さ え あ れ ば 利益が小さくてもその投資が行われる可能性がたかい。つまり、同じ補助単価水準であれ 2004 年 の 東 欧 諸 国 加 盟 以 前 か ら の 既 存 EU 加 盟 国 15 ヶ 国 を い う 。 欧 州 風 力 連 盟 (EWEA)の 最 新 デ ー タ と OPTRES(2007)の 各 国 制 度 一 覧 よ り 計 算 。 9 補 助 単 価 と し て 、現 行 の 再 生 可 能 電 力 価 格( FIT の 場 合 は 公 定 固 定 価 格 、RPS の 場 合 は 電 力 市 場 価 格 + RPS 証 書 価 格 )に 基 づ く 収 入 単 価 の 現 在 価 値 を 用 い る 。ま た 、各 国 の 補 助 年 数 の 違 い を 、 利 子 率 6.6%で 標 準 耐 用 年 数 15 年 に 換 算 し て 、 同 じ 基 準 で 比 較 で き る よ う に し て い る 。 7 8 9 ば 、RPS 制 度 の 方 が FIT よ り も 再 生 可 能 電 力 供 給 量 が 小 さ く な り 、同 じ 再 生 可 能 電 力 供 給 量 を 実 現 す る に は RPS 制 度 の 方 が 、 高 い 価 格 が 必 要 と な る と い う こ と で あ る 。 図 3: EU15 の 陸 上 風 力 に 対 す る 補 助 単 価 (2005) AT: オ ー ス ト リ ア (F) BE: ベ ル ギ ー (R) DK: デ ン マ ー ク (F) FI: フ ィ ン ラ ン ド (S) FR: フ ラ ン ス (T&F) DE: ド イ ツ (F) GR: ギ リ シ ャ (F) IE: ア イ ル ラ ン ド (T) IT: イ タ リ ア (R) LU: ル ク セ ン ブ ル グ (F) NL: オ ラ ン ダ (S&F) PT: ポ ル ト ガ ル (F) ES: ス ペ イ ン (F) SE: ス ウ ェ ー デ ン (R) UK: 英 国 (R) か っ こ 内 の F は FIT、R は RPS、 T は 競 争 入 札 、 S は 補助金や優遇税制をさす。 図 4: EU15 の 太 陽 光 発 電 に 対 す る 補 助 単 価 (2005) AT: オ ー ス ト リ ア (F) BE: ベ ル ギ ー (F) DK: デ ン マ ー ク (F) FI: フ ィ ン ラ ン ド (S) FR: フ ラ ン ス (T&F) DE: ド イ ツ (F) GR: ギ リ シ ャ (F) IE: ア イ ル ラ ン ド (T) IT: イ タ リ ア (F) LU: ル ク セ ン ブ ル グ (F) NL: オ ラ ン ダ (S&F) PT: ポ ル ト ガ ル (F) ES: ス ペ イ ン (F) SE: ス ウ ェ ー デ ン (R) UK: 英 国 (S) か っ こ 内 の F は FIT、R は RPS、 T は 競 争 入 札 、 S は 補助金や優遇税制をさす。 4.3 技術別の補助の必要性 太 陽 光 発 電 に 関 し て は 、 FIT を 採 用 し て い る 一 部 の 国 々 で の み 、 コ ス ト 回 収 が 可 能 な 補 助 単 価 が 与 え ら れ て い る( 図 4)。太 陽 光 発 電 は 現 時 点 で は コ ス ト が 高 く 、細 や か な 価 格 差 別 が 可 能 な FIT 制 度 の 下 で 、特 に 太 陽 光 発 電 に 高 い 価 格 付 け が な さ れ て い る 場 合 に の み 普 及 が 見 込 め る 。 RPS や 入 札 で 決 ま る 価 格 は 太 陽 光 発 電 に と っ て は 低 す ぎ る の で あ る 。 10 現時点でコストが高い電源に対して補助を行うことは非効率であるとするなら、太陽光 発 電 の 普 及 促 進 策 を と る べ き で は な い 。 こ う 考 え る な ら ば RPS 制 度 に 問 題 は な い 。 しかし、太陽光発電の将来的なコストダウンは普及拡大による生産量の増加に伴って生 じるものであり、また普及拡大に成功した国では、設備製造業が国際競争力を獲得する可 能 性 が 高 い 。 ド イ ツ や ル ク セ ン ブ ル ク 、 ポ ル ト ガ ル 等 の 国 々 は こ の よ う な 考 え か ら 、 FIT に お い て 太 陽 光 発 電 に 対 し 、 高 い 固 定 価 格 を 設 定 し て い る の で あ る 10 。 多種多様な再生可能エネルギーに対して、電源種類別・規模別・立地条件別の細やかな 価格差別を行うことは、普及支援に必要な資金を最小化する上でも重要な意味がある。そ れ ぞ れ の 価 格 は 、こ れ ら 設 備 の 市 場 価 格 を 調 査 し 、そ の 平 均 的 な 水 準 か ら 発 電 単 価 を 求 め 、 適正利潤を加算することによって定めることができる。 図 5 は、各種 再生 可 能電力 の限界 費用 を模 式的に 示した もの であ る。単一 価格の 場合 に は 、そ の 価 格 よ り も 安 価 な 再 生 可 能 電 力 し か 普 及 が 促 進 さ れ な い 。価 格 が 低 い 場 合 (A)に は 、 供 給 量 が 限 定 さ れ る 。し か し 、供 給 量 を 増 や そ う と 価 格 を 高 め れ ば (B)、安 価 な 電 源 に 対 し て限界費用を何倍も上回る余計な補助がなされる。それに対して、電源種類別・規模別・ 立地条件別に細やかに価格差別を行えば、現時点で相対的にコストの高い再生可能電源も 普及を促進でき、限界費用の低い電源には必要最小限の補助を与えることができる。ドイ ツ に 代 表 さ れ る FIT 制 度 で は 、再 生 可 能 電 力 が 細 か く 類 型 化 さ れ 、そ れ ぞ れ に 異 な る 価 格 が 定 め ら れ て い る (例 え ば BMU(2004)を 参 照 )。 図 5: 再 生 可 能 電 力 に 対 す る 単 一 価 格 と 差 別 価 格 限 界 費 用 ・電 力 価 格 [円 /kW h] 単一価格B 太陽光 差別価格 単一価格A 廃棄物 バイオマス 水力 風力 地熱 電 力 量 [kWh] 0 RPS 制 度 は ふ つ う 単 一 価 格 を と る 。RPS 制 度 の も と で 、再 生 可 能 電 力 供 給 義 務 を 負 っ た ............. 電力会社が仮に他者から再生可能電力を全量購入する場合、同量の再生可能電力を供給す ベ ル ギ ー と イ タ リ ア は 太 陽 光 発 電 に 対 し て は FIT を 、 英 国 は 設 置 補 助 金 を 用 い て い る ( 一 木 ・ 貝 塚 2007) 10 11 ...... る と い う 条 件 で 比 較 す る な ら ば 、 顧 客 に 転 嫁 す べ き 負 担 は 十 分 に 価 格 差 別 が な さ れ た FIT よ り も む し ろ 大 き く な る 11 。 い ず れ に せ よ 、 全 て の 種 類 の 再 生 可 能 電 力 が 潜 在 量 い っ ぱ い まで活用しようと思えば、支援制度において価格差別が不可欠となる。 制度間のコスト比較は同量の再生可能電力供給という条件で行わなければ意味がない。 ド イ ツ の よ う に 再 生 可 能 電 力 供 給 量 を 大 幅 に 増 加 さ せ て い る FIT 制 度 と 、同 様 の 成 功 を 見 せ て い な い 日 本 等 の RPS 制 度 を 比 べ た 場 合 、後 者 の 方 が 電 力 消 費 者 の 負 担 が 小 さ く な る の ... は当然である。電力消費者の負担抑制という議論の背後で、暗黙の再生可能電力供給目標 水準の切り下げがないよう注意する必要がある。 参 考 ま で に 、 ド イ ツ の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 法 (EEG)が 標 準 家 庭 の 電 気 料 金 に 与 え た 効 果 を 表 4 に 示 す 。 2000 年 か ら 2007 年 ま で 、 電 気 料 金 は 約 1.5 倍 に 上 昇 し て お り 、 EEG は 1999 年 に 導 入 さ れ た 電 力 税 (エ コ 税 )と 合 わ せ 、そ の 原 因 と し て し ば し ば 槍 玉 に 挙 げ ら れ る 。 し か し な が ら 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を ド イ ツ の 電 力 消 費 の 14.2%(2007 年 )に ま で 高 め 、ド イ ツ の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 産 業 を 世 界 一 の 座 に 押 し 上 げ る の に 寄 与 し た EEG の 費 用 負 担 は 、2007 年 に お い て 電 気 料 金 の 4.9%(月 あ た り 2.94 ユ ー ロ ≒ 500 円 )を 占 め る に 過 ぎ な い 。 実 際 に は 通 常 の 発 電・送 電・供 給 費 用 が 、価 格 上 昇 の 過 半 を 占 め る が 、そ の 上 昇 の 理 由 は 、 ド イ ツ 電 力 市 場 の 自 由 化 後 の 寡 占 化 、 EU 排 出 枠 取 引 に よ る タ ナ ボ タ 利 益 (朴 2008)、 お よ び国際エネルギー価格の上昇等である。 表 4: ド イ ツ に お け る 電 気 料 金 の 上 昇 要 因 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 4.8% 5.5% 6.3% 6.7% 7.8% 8.1% 9.5% 10.4% 11.7% 14.2% 49.95 48.20 40.66 41.76 46.99 50.14 52.38 54.23 56.63 60.31 0.23 0.5% 0.28 0.6% 0.58 1.4% 0.70 1.7% 1.02 2.2% 1.23 2.5% 1.58 3.0% 1.84 3.4% 2.20 3.9% 2.94 4.9% コジェネレーション支 援 法 0.00 0.00 0.38 0.58 0.76 0.90 0.85 0.99 0.90 0.85 電 力 税 (エコ税 ) 0.00 2.25 3.73 4.46 5.22 5.97 5.97 5.97 5.97 5.97 再 生 可 能 電 力 シェア 標 準 的 電 気 料 金 (EUR/月 ) 再 生 可 能 エネルギー法 (電 気 料 金 に占 める比 率 ) 供 給 権 税 (Concess ion cha rg e) 発 電 ・送 電 ・供 給 費 用 付加価値税 電 気 料 金 単 価 [cent/kWh] 5.22 5.22 5.22 5.22 5.22 5.22 5.22 5.22 5.22 5.22 37.60 6.90 33.80 6.65 25.15 5.60 25.05 5.75 28.29 6.48 29.90 6.92 31.52 7.24 32.73 7.48 34.53 7.81 35.70 9.63 17.1 16.5 13.9 14.3 16.1 17.2 18.0 18.6 19.0 21.0 50.97 48.88 40.66 40.94 45.44 47.98 49.32 50.07 51.44 54.23 (EUR/ 月 ; 2000 年 価 格 実 質 ) ※ 年 間 電 力 消 費 量 3500kWh の 家 庭 を 想 定 。 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 法 は 、 再 生 可 能 電 力 に 支 払 わ れ る 固 定 価 格 か ら 従 来 型 電 源 の 発 電 単 価 を 除 い た も の を 、電 力 消 費 者 が 電 気 料 金 を 通 じ て 負 担 す る 仕 組 み で あ る 。 出 典 : 2004 年 ま で の 値 は BMU(2007)、 2005 年 以 降 は BMU(2008a)に よ る 。 再 生 可 能 電 力 シ ェ ア は BMU(2008b)に 基 づ く 。 4.4. 自 国 製 造 業 の 国 際 競 争 力 先 に 、一 般 に RPS 制 度 の 方 が 均 一 の 市 場 で の 自 由 競 争 で あ り 、コ ス ト 低 下 が 進 む の で 、 11 もちろん、同じ量であっても、電力会社が自ら再生可能電力供給する比率を高める場合に は、顧客の負担をそれに応じて小さくすることができる。 12 固 定 的 な 価 格 で 補 助 を 与 え 続 け る 1 kWh あ た り の 補 助 単 価 が 低 く な る と 信 じ ら れ て い る 、 と 述 べ た 。こ れ が 事 実 で あ れ ば 、RPS 採 用 国 で 、国 際 競 争 力 の あ る 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 設 備メーカーが育つはずである。 しか しなが ら 、図 6 によれ ば、風力 発電設 備メー カーと して 上位 を占め ている のは 、米 国 の GE-Wind と イ ン ド の Suzlon を 除 い て は 、 FIT に よ る 普 及 実 績 の 顕 著 な EU 加 盟 国 ( FIT 採 用 国 ) の メ ー カ ー で あ り 、 日 本 も 含 め 、 RPS 採 用 国 の メ ー カ ー は 1 社 も ト ッ プ 10 に 名 を つ ら ね て い な い こ と が 分 か る 。 図 6: 風 力 発 電 設 備 メ ー カ 上 位 10 社 (2007 年 新 規 設 置 量 ベ ー ス ) 随 Acciona (ES) 2.7% Goldwind (CHN) 2.6% Others Repower (DE) 4.3% 3.0% こ れ は 、 設 備 投 資 主 体 に と っ て 、 10 年 か ら 20 年 の 固 定 価 格 買 取(DK) 制の Vestas Nordex (DE) 26.5% 3.2% Siemens (DE) 6.9% Suzlon (IND) 7% Enercon (DE) 14.5% Gamesa (ES) 14.7% FIT採 用 国 RPS採 用 国 その他 GEWind (US) 14.5% Merril Lynch 2007 太 陽 光 発 電 に 関 し て は 、上 位 5 社 の 顔 ぶ れ が 2006 年 か ら 2007 年 の 間 に 大 き く 変 化 し て い る 。 2006 年 ま で は シ ャ ー プ を 初 め 日 本 企 業 が 上 位 を 占 め て い た が 、 こ れ は RPS の 効 果 と い う よ り 、 90 年 代 半 ば か ら の 設 置 補 助 金 と 余 剰 電 力 購 入 メ ニ ュ ー に よ る も の で あ っ た 。 そ れ に 対 し 、2007 年 に は つ い に ド イ ツ の Q-Cells が ト ッ プ の シ ェ ア を 獲 得 、そ れ 以 外 に も 中 国 や 米 国 の メ ー カ ー が 上 位 に 顔 を 出 す よ う に な っ て い る 。 4.3 節 で 見 た よ う に 、 RPS は 太 陽 光 発 電 の 普 及 に ほ と ん ど 効 果 を も た ら さ な い た め 、RPS 採 用 国 に お い て 、RPS に よ っ て太陽電池メーカーが育つということはなかったのである。 13 表 5: 太 陽 電 池 メ ー カ ー 上 位 5 社 と そ の シ ェ ア 2006 年 1 17.2% シ ャ ー プ (日 本 ) 2 10.0% Q セ ル ズ (ド イ ツ ) 3 7.1% 京 セ ラ (日 本 ) 4 6.2% サ ン テ ッ ク (中 国 ) 5 6.1% 三 洋 電 機 (日 本 ) 出 典 : 日 本 経 済 新 聞 2008 年 6 月 2 日 4.5. 2007 年 Q セ ル ズ (ド イ ツ ) シ ャ ー プ (日 本 ) サ ン テ ッ ク (中 国 ) 京 セ ラ (日 本 ) フ ァ ー ス ト ソ ー ラ ー (米 国 ) 10.4% 9.7% 8.8% 5.5% 5.5% その他の留意事項 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 普 及 策 と し て 、FIT を 採 用 し た 国 々 の 方 が RPS 採 用 国 よ り も 、再 生可能電力の供給量と、設備メーカー育成の点で高い業績を挙げていることが分かった。 そ の た め 日 本 で も 、 太 陽 光 発 電 に つ い て の み 、 FIT 制 度 を 導 入 す る こ と を 経 済 産 業 大 臣 が 明 言 し た (2009 年 2 月 24 日 )。 し か し な が ら 、 単 な る FIT か RPS か と い う 二 分 法 で 、 普 及 策 の 成 否 が 決 定 さ れ る わ け ではない。政府の将来計画の明確さや制度枠組の長期安定性、行政上の許認可手続の簡便 さ 、FIT の 場 合 に は 固 定 価 格 の 水 準 、RPS の 場 合 に は 供 給 義 務 量 の 水 準 や 制 裁 金 の 水 準 な ど が 、制 度 の 成 否 を 大 き く 左 右 す る 。ま た 、OPTRES 最 終 報 告 書 に お い て は 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 普 及 に 対 す る 様 々 な 障 害 の 存 在 が 指 摘 さ れ て い る (表 6)。 い ず れ の 政 策 を 導 入 するにしても、これらの問題に十分な対応がなされる必要がある。 表 6 再生可能エネルギー普及に対する様々な障害 行政上の障害 関 連 す る 役 所 の 数 が 多 す ぎ る こ と や 、そ れ ら の 間 の 協 調 が 不 十 分 な こ と 。リ ー ド タ イ ム が 長 い こ と 。都 市 計 画 ・ 空 間 計 画 上 の 規 制 。中 央 ・ 地 方 の 政 府 が 再 生 可 能 エネルギーの便益を認識していないこと。 系 統 連 系 に 関 す る 送 電 線 容 量 の 不 足 。手 続 の 不 透 明 さ と 、客 観 性 の 欠 如 。高 い 系 統 連 系 費 用 。リ ー 障害 ドタイムが長いこと。 社会的な障害 NYMBY 問 題 (立 地 地 域 の 人 々 や 政 府 の 反 対 )。 地 方 政 府 や 人 々 が 再 生 可 能 エ ネ ル ギーの便益を認識していないこと。既存電源の外部費用が認識されないこと。 資金調達上の障害 投 資 家 や 銀 行 に 信 用 さ れ に く い こ と 。電 力 収 入 や 補 助 金 の 見 通 し が は っ き り し な いこと。 参 考 : OPTRES 最 終 報 告 書 (Ragwitz et al. 2007) 5. 東アジア 4 ヶ国の再生可能エネルギー普及策 5.1. 再生可能エネルギー導入目標 東ア ジア 4 ヶ国 はそ れぞれ、長期的 な再 生 可能エ ネルギ ー導 入目 標を立 ててい る。人 口 や経済規模が大きく異なるので単純な比較はできないが、公式の総量目標をそのまま一覧 表 と し て 示 す (表 7)。 比 較 に 際 し て は 、 国 の 規 模 に 応 じ て 同 じ 基 準 で 比 較 す べ き で あ り 、 そ の た め 備 考 に 人 口 と GDP を 示 し て い る 。 日 本 の 場 合 は 、 総 合 資 源 エ ネ ル ギ ー 調 査 会 (2001)に よ る 2010 年 の 新 エ ネ ル ギ ー 供 給 目 標 は 、総 量 で 原 油 換 算 1910 万 kL で あ り 、電 源 別 の 目 標 と し て 、太 陽 光 発 電 が 4820MW、 14 風 力 発 電 が 3000MW と な っ て い る 。ま た 、電 源 を 区 別 し な い RPS 法 上 の 目 標 は 、2010 年 に は 122 億 kWh(約 1.35%)、2014 年 に は 160 億 kWh(約 1.6%)の 発 電 量 目 標 と な っ て い る 。 日本の新エネルギーの数値からは大型水力が除外されている点に注意する必要がある。 表 7: 日 中 韓 台 の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 導 入 目 標 日本 一 次 エネ比 (%) 4.3% *(2005) 総 発 電 量 比 (%) 1.35% *(2010) 1.6% *(2014 ) 中国 太 陽 光 設 備 (MW) 1422 (2005) 4820 (2010) 風 力 設 備 (MW) 1390 (2006) 3000 (2010) 5 (2005) 300 (2010) 1800 (2020) 10000 (2030) 34.7 (2006) 2600 (2006) 5000 (2010) 30000 (2020) 7.5% (2005) 10% (2010) 15% (2020) 173 (2006) 人 口 0.49 億 人 1137 (2010) GDP 0.89 兆 ドル 2250 (2012) 1300(2012) 1.18 兆 $PPP 1.4% (2006) 7.3% (2006) 1 (2006) 200 (2010) 台湾 人 口 0.23 億 人 10.3% (2010) 31 (2010) 980 (2010) GDP 0.39 兆 ドル 14.9% (2025) 1000 (2025) 3000 (2025) *日 本 の 2005 年 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 比 率 4.3%は 大 型 水 力 も 含 ん だ 数 字 で あ る が 、総 発 電 量 比 は RPS 法 の 目 標 で あ り 大 型 水 力 を 含 ま な い 。 RPS 法 に よ る 目 標 は 実 際 に は 量 的 目 標 で あ り 、 こ れ を 電 力 需 要 推 定 を 元 に 百 分 率 に 換 算 し た 。 な お 、 EDMC(2008)に よ れ ば 水 力 は 2006 年 総 発 電 量 の 8.4%を 占 め る 。 **人 口 は 2008 年 、 GDP は 2007 年 。 $PPP は 購 買 力 平 価 ド ル 換 算 を 意 味 す る 。 出 典:GWEC(2007)、資 源 環 境 対 策 (2007)、Chen(2008)、IEA-PVPS(2007)、李・李 (2008)、林・朴 (2008)、 宋 ・ 李 ・ 知 足 (2008)、 EDMC(2008) 韓国 2.06% (2006) 5.0% (2011) 1.0% (2006) 7.0% (2012) 備 考 ** 人 口 1.27 億 人 GDP 4.35 兆 ドル 4.35 兆 $PPP 人 口 13.2 億 人 GDP 2.5 兆 ドル 13.0 兆 $PPP 中 国 は 2010 年 ま で に 一 次 エ ネ ル ギ ー の 10%、2020 年 に は 15%を 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー で ま か な う こ と 、 2020 年 に は 太 陽 光 発 電 を 1800MW、 風 力 発 電 を 30000MW ま で 拡 大 さ せ る こ と を 目 標 と し て い る 。ま た 、2030 年 の 太 陽 光 発 電 目 標 は 10000MW で あ る 。絶 対 量 と しては日本よりはるかに多くなるが、1 人当たりでみれば必ずしも多いわけではない。 韓 国 は「 第 2 次 基 本 計 画 」と し て 2012 年 ま で の 目 標 を 持 ち 、2011 年 に は 一 次 エ ネ ル ギ ー の 5.0%、 2012 年 に は 総 発 電 量 の 7.0%を 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー で ま か な う と す る 。 ま た 、 2012 年 に は 、 太 陽 光 発 電 を 1300MW、 風 力 を 2250MW ま で 高 め る 目 標 で あ る 。 こ れ は 、 1 人あたりでは日本より大きいと言える。 台 湾 は 2025 年 ま で の 目 標 を 持 ち 、2010 年 に は 総 発 電 量 比 の 10.3%を 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー で ま か な い 、 太 陽 光 発 電 を 31MW に 、 風 力 を 980MW に 増 や す と す る 。 ま た 、 2025 年 に は 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 総 発 電 量 比 の 14.9% に 、 太 陽 光 発 電 を 1000MW 、 風 力 を 3000MW に 高 め る 目 標 で あ る 。 こ れ も 、 1 人 あ た り で は 日 本 よ り 野 心 的 な 計 画 と 言 え る か もしれない。 日 本 以 外 の 総 発 電 量 比 の 目 標 に は 大 型 水 力 が 含 ま れ る 。日 本 で は 、2006 年 の 総 発 電 電 力 量 の 8.4%が 水 力 発 電 で 供 給 さ れ て お り 、再 生 可 能 電 力 比 率 は 欧 州 諸 国 と 比 較 し て も 決 し て 低いわけではない。また、再生可能エネルギーの潜在量は地理的・自然的条件に依存する 15 ので、この比率だけで目標の厳しさを単純に比較できるわけではない。 5.2. 日中韓台 4 ヶ国・地域における再生可能エネルギー普及政策とその効果 日中韓台は地理的な近接性にも関わらず、経済発展の水準には相当の開きがある。概し て、再生可能エネルギーに関して先を行く日本の方が、市場形成から普及拡大へとより高 い段階に達しており、工業発展段階の順序に応じて、韓・台・中の順でそれに続くと考え れば、日本以外の国々は研究開発の初期段階か、初期需要の開拓段階にあると想像される か も し れ な い 。 し か し な が ら 近 年 で は 、 中 国 や 韓 国 が 積 極 的 に 、 欧 州 先 進 国 と 同 様 の FIT に基づく普及拡大策を制度化している。すなわち、後発国は先進国で開発・成熟化された 技術の普及と国産化をめざし、それに適した普及策を導入していると言える。以下では、 4 カ 国 ・ 地 域 導 入 し て き た 普 及 策 を 概 観 す る ( 表 5)。 表 8: 日 中 韓 台 の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 普 及 政 策 研究・ 開発初 期段階 初期需 要開拓 段階 日本 1974 年 ~ 「サンシャイン計 画 」等 ・政 府 の研 究 開 発 ・設 備 補 助 金 ・低 利 融 資 1994 年 ~ ・設 備 補 助 金 ・電 力 会 社 の余 剰 電 力 購 入 メニュー(自 主 FIT) →太 陽 光 ・ 風 力 2003 年 ~現 在 「RPS 法 」 ・RPS 制 度 市場形 成 ~普 及拡大 段階 ・電 力 会 社 の余 剰 電 力 購 入 メニュー(自 主 FIT) は RPS と併 存 ・電 力 会 社 の系 統 連 携 抽 選 (風 力 ) 中国 1981 年 ~ 「第 6 次 5 ヶ年 計 画 」 ・政 府 の研 究 開 発 ・ODA 資 金 での建 設 2000 年 ~ 「第 10 次 5 ヶ年 計 画 」 ・ 風 力 の 競 争 入 札 (2003~2007、15 回 ) ・西 部 地 域 への太 陽 光 ・小 風 力 設 置 推 進 2006 年 ~現 在 「可 再 生 能 源 法 」 ・固 定 価 格 買 取 制 (電 力 会 社 買 取 義 務 、 公 定 価 格 ・入 札 価 格 、 費用分担制度) 風 力 :入 札 バイオ:公 定 か入 札 太 陽 ・海 洋 ・地 熱 は 公定価格 韓国 1988 年 ~ 「第 1 次 基 本 計 画 」 ・政 府 の研 究 開 発 ・設 備 補 助 、低 利 融 資 1992 年 ~ 「第 1 次 基 本 計 画 (続 き)」 ・政 府 の研 究 開 発 ・設 備 補 助 、低 利 融 資 2003 年 ~ 「第 2 次 基 本 計 画 」 「新 再 生 エネ法 」 ・固 定 価 格 買 取 制 (電 力 会 社 買 取 義 務 、 基 準 価 格 制 、差 額 国 庫補助) ・公 共 義 務 化 事 業 ・普 及 補 助 (設 備 補 助 ) ・政 策 金 融 ・税 制 優 遇 (税 額 控 除 ・ 関税軽減) 台湾 1980 年 代 ~ 風 力 技 術 開発 1995 ~ 太 陽 光 技 術 開 発 1999 ~ RDF-5 パ イ ロ ッ ト 2000 年 ~ ・太 陽 エネルギーへの 設備補助金 2003 年 ~ ・台 湾 電 力 の購 入 制 度 2008 年 現 在 ・台 湾 電 力 の購 入 制 度 「可 再 生 能 源 発 展 条 例 草案」 ・固 定 価 格 買 取 制 (電 力 会 社 買 取 義 務 、 公 定価 格、費 用分 担 制度) ・ 設 備 補 助 金 は 2005 年 で廃 止 、2009 年 1 月 より復 活 [7 万 円 /kW] 2012 年 より RPS 制 度 ・2010 年 度 より太 陽 光 に移 行 予 定 に FIT が導 入 予 定 参 考 : 杉 山 (2007)、 宋 ・ 知 足 (2008)、 李 ・ 李 (2008)、 林 ・ 朴 (2008)、 NEDO 海 外 レ ポ ー ト 関 連 記 事 等 注:表は網羅的ではない。例えば政府の研究開発は後の段階でも新技術に対して継続されている。 日 本 は 1970 年 代 か ら の サ ン シ ャ イ ン 計 画 や ム ー ン ラ イ ト 計 画 、1993 年 か ら の ニ ュ ー サ ンシャイン計画を通じて、太陽光や地熱を中心とする石油代替エネルギー発電技術の研 16 究・開発で世界の先端の地位を築き、普及量においても相当の実績がある。設備補助金が 太 陽 熱 温 水 器 (1980~ )、太 陽 光 発 電 (1992~ )、風 力 発 電 (1995~ )に 対 し て 給 付 さ れ て き た 。 1994 年 の 通 商 産 業 省 (当 時 )に よ る 設 備 補 助 金 と 、電 力 会 社 に よ る「 余 剰 電 力 購 入 メ ニ ュ ー (自 主 FIT) 12 」の組み合わせによって、太陽光発電の普及実績において日本は世界一の地 位 を 保 ち 続 け た (2004 年 ま で )。2003 年 の「 電 気 事 業 者 に よ る 新 エ ネ ル ギ ー 等 の 利 用 に 関 す る 特 別 措 置 法 」( RPS 法 )の 実 施 以 降 、 政 策 の 中 心 は RPS 制 度 と な っ た が 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 普 及 は 伸 び 悩 ん だ 。そ の た め 、2009 年 1 月 よ り 太 陽 光 発 電 に 対 す る 設 備 補 助 金 が 復 活 ( 7 万 円 /kW)、 2010 年 度 か ら は 太 陽 光 発 電 に 対 し て の み FIT 制 度 が 導 入 さ れ る こ と と な っ た 。 FIT 制 度 で は 、 太 陽 光 発 電 の 余 剰 電 力 が 10 年 間 に わ た り 50[円 /kWh]の 単 価 で 買 い 取 ら れ 、消 費 者 の 電 気 料 金 に 上 乗 せ し て 回 収 さ れ る 。初 年 度 は 総 額 900 億 円 、世 帯 あ た り 月 額 約 30 円 、 10 年 後 に は 総 額 3000 億 円 近 く 、 世 帯 月 額 100 円 程 度 ま で 上 昇 す る と さ れ て い る (山 崎 2009)。 中 国 は 4 地 域 の 中 で 最 も 所 得 水 準 が 低 い が 、近 年 の 急 速 な 経 済 発 展 に 応 じ る べ く 従 来 型 エ ネ ル ギ ー お よ び 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 供 給 拡 大 を 急 い で い る 。FIT を 法 制 化 し (可 再 生 能 源 法 、 2006 年 1 月 施 行 )、 外 国 製 品 の 導 入 ・ 普 及 か ら 徐 々 に 国 産 化 を は か っ て い る 。 中 国 の FIT は ド イ ツ と 同 様 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 導 入 に 伴 う 超 過 費 用 を 電 力 会 社 が 自 動 的 に 電 気料金に上乗せして回収するとともに、再生可能エネルギー適地が集中する地域の電力消 費者の過度な負担を防ぐために、全国の送電会社の間で負担を融通する制度である。しか し な が ら 、 近 年 の 風 力 発 電 の 著 し い 伸 び は 、 FIT の 導 入 以 前 か ら の 競 争 入 札 制 度 (2003 年 ~ )に よ っ て 引 き 起 こ さ れ て お り 、FIT は さ ら に そ れ を 強 く 後 押 し し た 格 好 で あ る 。他 方 で 、 太 陽 光 発 電 の 国 内 普 及 は 、 系 統 連 系 に 関 す る 問 題 が 大 き い た め に 遅 れ て い る 。 FIT 自 体 の 効果や問題点を評価するのには、もう少し時間が必要だと言える。 韓国は製造業一般の強い競争力にも関わらず再生可能エネルギー関連産業は出遅れてお り 、そ の 育 成 の た め に FIT を 用 い て い る (発 電 差 額 支 援 制 度 、2002 年 施 行 )。た だ し 、中 国 や ド イ ツ の 場 合 と 違 っ て 、電 力 会 社 (韓 国 電 力 (株 )1 社 )は 固 定 価 格( 基 準 価 格 )で の 買 い 取 り に 伴 う 超 過 費 用 に 相 当 す る 金 額 を 、 政 府 の 電 力 産 業 基 盤 基 金 か ら 補 助 金 (発 電 差 額 支 援 金 )と し て 受 け 取 る 仕 組 み で あ る 。こ の 場 合 、FIT を 運 営 す る た め に は そ れ を 裏 付 け る 公 的 資金が必要であり、また再生可能エネルギーの普及が成功裏に進めば進むほど必要な財源 規 模 が 大 き く な る た め 継 続 が 困 難 と な る 。 実 際 、 韓 国 政 府 は 2012 年 か ら FIT を 放 棄 し て RPS 制 度 に 転 換 す る 方 針 を 表 明 し た 。第 4 節 に 見 た よ う に 、欧 州 の 経 験 か ら 政 策 効 果 と 経 済 性 は RPS 制 度 よ り FIT 制 度 の 方 が 優 れ た 成 果 を 挙 げ て い る こ と が 知 ら れ て い る か ら 、 .... 制度を改善するという理由よりも、財源問題が転換の主な理由ではないかと思われる。な お 、韓 国 で は FIT 以 外 に も 多 種 多 様 な 補 助 政 策 が 並 列 的 に 導 入 さ れ て い る 。い ず れ も 、公 12 余 剰 電 力 購 入 価 格 は 電 力 小 売 価 格 と 同 じ 。従 っ て 、契 約 種 別 に よ っ て 価 格 が 異 な る 。ま た 、 RPS 法 施 行 後 は 、 RPS 証 書 (相 当 量 )を 電 力 会 社 に 帰 属 さ せ る こ と が 契 約 の 条 件 と な っ て い る 。 17 的資金に依存するものである。 台 湾 は 、 普 及 政 策 措 置 の 導 入 に 関 し て は 4 地 域 の 中 で は 出 遅 れ て い る が 、 2008 年 5 月 にようやく再生能源発展条例が起草された。この中で、政府が設置補助と固定価格支援の ための基金を設立し、同時に電力会社は電力小売価格への上乗せ金を、総発電量に応じて こ の 基 金 に 納 め る と さ れ て い る (CEPD 2008)。な お 、正 式 の 普 及 支 援 制 度 は 未 完 成 で あ る が 、 2003 年 か ら 電 力 会 社 ( 台 湾 電 力 : 公 営 ) が 自 主 FIT 1 3 を 行 っ て い る 。 5.3. 日 本 の RPS 法 運 用 の あ り か た 東 ア ジ ア 諸 国 の 中 で も 日 本 で は 、 2003 年 度 に RPS 法 が 施 行 さ れ て か ら 2007 年 度 ま で のデータが入手可能であり、これに基づいて制度の実績と課題について検討する。 RPS 法 に は 新 エ ネ ル ギ ー 導 入 目 標 量 が 表 9 の よ う に 示 さ れ て い る が 、 2009 年 ま で は 移 行措置として、前年度の電力供給量や新エネルギーの既存利用量に基づいて目標量の軽減 が 行 わ れ る 。軽 減 後 の「 調 整 基 準 利 用 量 」は 前 年 の 電 力 供 給 量 が 確 定 す る ま で 分 か ら な い 。 表 9: RPS 法 の 新 エ ネ ル ギ ー 導 入 目 標 量 と 調 整 基 準 利 用 量 年度 目 標 量 (億 kWh) 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 73.2 76.6 80.0 83.4 86.7 92.7 103.3 122.0 131.5 141.0 150.5 160.0 (調 整 )基 準 利 用 量 32.8 36.0 38.3 44.4 60.7 75.6 94.6 122.0 131.5 141.0 150.5 160.0 ※ 2009 年 ま で は 調 整 基 準 利 用 量 、2010 年 よ り 基 準 利 用 量 。2007 年 度 ま で は 実 績 値 。2008~ 2009 年 度 は 予 測 値 (RPS 法 評 価 検 討 小 委 員 会 (2006)に よ る )。 RPS 法 に お い て は 、 こ の (調 整 )基 準 利 用 量 が そ の ま ま 、 対 象 と な る 電 気 事 業 者 の 利 用 す べ き 新 エ ネ ル ギ ー 電 力 量 と な る わ け で は な い 。 ま ず 、 RPS 証 書 (「 相 当 量 14 」 )の 取 引 に よ っ て 各 電 気 事 業 者 の (調 整 )基 準 利 用 量 が 上 下 す る 。 次 に 、 法 第 8 条 の 規 定 で は 「 経 済 産 業 大臣は、電気事業者の新エネルギー等電気の利用をする量が基準利用量に達していない場 合において、その達していないことについて正当な理由がないと認めるときは、その電気 事 業 者 に 対 し (...中 略 ...)、 利 用 す べ き こ と を 勧 告 す る こ と が で き る 」。 こ の 「 正 当 な 理 由 」 に は 、(1)バ ン キ ン グ (前 年 度 か ら の 余 剰 導 入 量 の 繰 り 越 し )、(2)上 限 価 格 (RPS 証 書 が 11 円 /kWh 以 下 の 価 格 で 調 達 で き な か っ た 場 合 は 、そ の 量 に つ い て は 免 除 さ れ る )、(3)太 陽 光 発 電 の い わ ゆ る 2 倍 カ ウ ン ト 分 (2011~ 2014 年 度 )、 (4)余 剰 電 力 購 入 メ ニ ュ ー 対 象 の 住 宅 用 太 陽 光 発 電 に つ い て 同 意 の 努 力 に も 関 わ ら ず 設 備 認 定 15 が 行 わ れ な い 場 合 、 (5)ボ ロ ウ イ ン グ (基 準 利 用 量 の 20%ま で 自 動 的 に 翌 年 度 利 用 量 か ら の 前 借 り )、の 5 項 目 が 含 ま れ て い る 16 。 電 力 購 入 価 格 は 風 力 2[台 湾 ド ル /kWh]、 太 陽 光 17[台 湾 ド ル /kWh]で あ る 。 ち な み に 石 炭 火 力 は 1.0[台 湾 ド ル /kWh]で あ る (Taipei Times [web] 2008/4/15) 。1 台 湾 ド ル は 約 3.5 円 で あ る 。 14 正 式 に は 「 新 エ ネ ル ギ ー 等 電 気 相 当 量 」 と 呼 ば れ る 。 15 設 備 認 定 の 際 、 RPS 証 書 が 電 力 会 社 に 帰 属 す る こ と を 確 認 す る と い う 意 味 が 重 要 で あ る 。 16 発 電 事 業 者 に よ る 新 エ ネ ル ギ ー 等 の 利 用 に 関 す る 特 別 措 置 法 の 運 用 に 関 す る 留 意 事 項 等 (15 資 省 部 第 21 号 、 経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 省 エ ネ ル ギ ー ・ 新 エ ネ ル ギ ー 部 長 通 知 、 平 13 18 これほどの例外措置・柔軟化措置が採られてもなお、電気事業者の義務未達成に「正当な 理由がない」と判断された場合には「利用」の勧告を、未達成量が著しい場合には利用の 「 命 令 」 を 受 け 、 こ の 命 令 に 違 反 し た 場 合 に 100 万 円 以 下 の 罰 金 が 科 さ れ る の で あ る 。 こ の よ う に 、 日 本 の RPS で は 利 用 義 務 遵 守 の 判 定 は 非 常 に 柔 軟 で 、 RPS 証 書 に 対 し て 11[円 /kWh]の 上 限 価 格 が 定 め ら れ て い る ほ か 、100 万 円 の 罰 金 は 大 規 模 な 電 気 事 業 者 に と っては極めて軽微なものである。 これを念頭に、まず、過去の目標量および調整基準利用量の水準と、実際に利用された 新 エ ネ ル ギ ー の 量 に つ い て 考 察 を 加 え よ う (図 7)。調 整 基 準 利 用 量 は 2003 年 に お い て 目 標 量 の 半 分 程 度 ま で 割 り 引 か れ 、 2010 年 に 目 標 量 に 追 い つ く よ う に 調 整 さ れ て ゆ く 。 他 方 、 2007 年 度 ま で の 再 生 可 能 電 力 の 利 用 量 は 毎 年 こ れ を 大 幅 に 超 過 し 続 け て き た 。 そ の 結 果 、 2007 年 度 の バ ン キ ン グ 量 は 調 整 基 準 利 用 量 を 上 回 っ て お り 、実 際 に は 、今 後 全 く 新 エ ネ ル ギ ー の 増 設 が 行 わ れ な く て も 、 現 状 の 量 を 維 持 す れ ば 2010 年 度 の 目 標 が 達 成 で き る 計 算 で あ る 。こ れ は 、実 際 の 義 務 量 の 緩 さ を 示 唆 す る も の で 、RPS 法 の 制 度 的 な 実 効 性 に 疑 問 を抱かせるものである。 図 7: 日 本 の RPS 法 の 利 用 義 務 量 履 行 状 況 新エネルギー電力利用量(億kWh) 180 その他 160 バイオマス 140 中小水力 120 太陽光 風力 100 目標量 80 バンキング量 調整基準利用量 60 40 20 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 0 年度 出 典:経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 資 料「 電 気 事 業 者 に よ る 新 エ ネ ル ギ ー 等 の 利 用 に 関 す る 特 別 措 置 法 の 平 成 **年 度 の 施 行 状 況 に つ い て 」 各 年 度 版 (平 成 15~ 19 年 度 )よ り 作 成 。 また、新エネルギー利用量に占めるバイオマス発電の比率が大きいことも特徴である。 成 15 年 2 月 13 日 ) 19 この大部分は一般廃棄物であるほか、近年では電力会社が既存の石炭火力発電設備におい て木材ペレット等の混焼を行う例が増えている(これは石炭を節約するというよりは、そ の 利 用 を 助 長 し て い る よ う に 見 え る )。他 方 で 、風 力 発 電 は 欧 米 主 要 国 と 比 較 し て も 伸 び 悩 ん で お り 、 太 陽 光 発 電 の 導 入 量 で も ド イ ツ 大 き く 引 き 離 さ れ つ つ あ る (5.4.参 照 )。 あいたい 次 に 価 格 に 着 目 し よ う 。 日 本 の RPS 法 に お い て は 、 RPS 証 書 の 取 引 は 相 対 で 行 わ れ 、 個 別 の 価 格 は 原 則 と し て 公 表 さ れ ず 、一 物 一 価 の 法 則 が 成 立 し な い 。ま た 、原 則 と し て「 電 気 の み の 価 格 」 と 「 相 当 量 の 価 格 (RPS 証 書 価 格 )」 は 分 離 し て 販 売 で き る が 、 電 気 の み の 価 格 を 電 力 会 社 が 3 円 /kWh 程 度 と 一 方 的 に 安 価 に 設 定 す る (飯 田 2007)。 「余剰電力購入メ ニ ュ ー 17 」 等 の 電 力 会 社 の 提 供 す る 優 遇 的 制 度 の も と で 、 両 者 を 一 緒 に 販 売 で き れ ば 有 利 だが 、その 機会 も制約 されて いる 。図 8 にみ るよう に、契約 条件に よって 価格が 異な るの で、風力発電価格は、同じ年度内で最大値と最小値に大きな幅が生じている。また、特に 高 い も の は 以 前 に 契 約 さ れ た「 余 剰 電 力 購 入 メ ニ ュ ー 」に よ る も の と み ら れ る 。と は い え 、 注 目 さ れ る べ き は 、 図 7 で み た よ う に 毎 年 RPS 義 務 量 が 大 幅 に 超 過 達 成 さ れ て い る に も 関 わ ら ず 、 図 9 に み る よ う に RPS 証 書 価 格 は ゼ ロ に な ら ず 、 何 ら か の プ ラ ス の 値 を 保 っ て い る こ と で あ る 。こ の 理 由 は 、バ ン キ ン グ が 認 め ら れ て い る こ と と 、2010 年 度 を 過 ぎ た あたりで利用目標量が実質的な制約になってゆくと見られていることである。 図 8 図 9 風力発電価格の推移 12.0 相当量の価格(円/kWh) 電気+相当量の価格(円/kWh) 25.0 RPS 証 書 (相 当 量 )の 価 格 の 推 移 20.0 15.0 10.0 5.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 0.0 2003 2004 2005 2006 2003 2004 2005 2006 出 典 : 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 資 料 「 RPS 法 下 に お け る 新 エ ネ ル ギ ー 等 電 気 等 に 係 る 取 引 価 格 調 査 結 果 に つ い て 」 各 年 度 版 (平 成 15~ 18 年 度 )よ り 作 成 。 線 グ ラ フ は 最 大 値 と 最 小 値 の 幅 を 、 帯 グ ラ フ は 単 純 平 均 と加重平均の幅を示している。 あえて、加重平均のみに注目して、新エネルギー電源の種別ごとに価格の推移をとらえ る と 図 10 の よ う に な る 。 RPS 証 書 (相 当 量 )の み の 価 格 は 、 約 5 円 /kWh で 推 移 し て い る 。 17 現 在 の 余 剰 電 力 購 入 メ ニ ュ ー は 欧 州 諸 国 の FIT の よ う な 長 期 固 定 価 格 制 で は な い 。 多 く の 電 力 各 社 HP 資 料 で は 契 約 期 間 が 明 示 さ れ て い な い (九 州 電 力 の 場 合 は 1 年 単 位 の 自 動 更 新 )。 状 況 の 変 化 に よ っ て 価 格 が 変 更 さ れ る こ と も 、契 約 が 終 了 さ れ る こ と も あ る 。ま た 、RPS 証 書 は電力を購入した電力会社に帰属する。 20 これが日本において新エネルギーに与えられている平均的なインセンティブ水準であると 言 え る 。太 陽 光 (20 円 /kWh 弱 )や 風 力 (10 円 /kWh 強 )の 電 力 価 格 が 相 対 的 に 高 い の は 、先 述 のように、余剰電力購入メニューによって、比較的高い価格での買い取りがなされている 部分が あるた めで ある 。余剰電 力購入 メニ ュ ーの外 では、電 気の み の価格 が約 3 円と 低い こ と か ら 、こ れ に RPS 証 書 価 格 の 約 5 円 を 上 乗 せ し て も 価 格 は 平 均 約 8 円 /kWh で あ る か ら 、約 10~ 24 円 /kWh と さ れ る 風 力 発 電 の 採 算 を と る こ と は 難 し い (2001 年 の 発 電 原 価 試 算 (付 録 2)参 照 )。 水 力 ・ バ イ オ マ ス の 電 力 価 格 は そ れ に 比 べ て も さ ら に 低 い 。 し か し 、 既 存の石炭火力発電所での「バイオマス混焼」は新規設備投資が不要のため採算性があり、 この制度から恩恵を受けている分野である。いずれにせよ、価格の決定権は電力会社の側 にあり、推定される発電原価を十分に回収できる価格とは言い難い。 図 10 電源種別ごとの新エネ電力価格の推移 新エネ電力価格の推移(加重平均) 電力+相当量の価格(円/kWh) 25.0 20.0 風力 太陽光(電灯・最低) 水力 バイオマス 相当量のみ 15.0 10.0 5.0 0.0 2003 2004 2005 2006 出 典 : 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 資 料 「 RPS 法 下 に お け る 新 エ ネ ル ギ ー 等 電 気 等 に 係 る 取 引 価 格 調 査 結 果 に つ い て 」 各 年 度 版 (平 成 15~ 18 年 度 )よ り 作 成 。 第 4 節 で は 欧 州 に お い て 、 FIT 採 用 国 の 再 生 可 能 電 力 普 及 実 績 が 優 れ て い る こ と を 紹 介 し た が 、 日 本 の RPS 制 度 に は 、 相 対 的 に 劣 位 に あ る RPS を 採 用 し た と い う 以 外 の 点 に 、 本質的な問題があるようである。 第一に、電力会社の裁量で決められる点が多いことである。再生可能電力のための公共 政策としての「優先接続」も「電力買取ルール」もなく、ガイドラインさえないため、電 力会社は電力価格、抽選方法、連系協議の手続やその費用まで、一方的に決めることがで き 、重 大 な 普 及 の 障 害 と な っ て い る (飯 田 2007)。日 本 の 再 生 可 能 電 力 制 度 は 電 力 会 社 が 独 占的な地位を利用して新エネルギー発電者に対して不利益な価格での取引を強いる可能性 が 高 い た め 、公 正 取 引 委 員 会 も「 独 占 禁 止 法 上 問 題 と な る お そ れ の あ る 行 為 」を 列 挙 し て 、 未 然 防 止 に 努 め て い る が 、 今 後 も 動 向 が 注 視 さ れ る べ き で あ る (公 正 取 引 委 員 会 2003)。 21 第二に、 「 系 統 の 制 約 」で あ る 。系 統 の 不 安 定 化 の 懸 念 か ら 、風 力 資 源 の 豊 富 な 地 方 の 各 電力会社は、風力発電連系可能量を定め、その範囲内でしか毎年度の募集(入札や抽選) を 行 わ な い 18 。 ま た 、 風 力 発 電 設 置 者 に 対 し て 、 蓄 電 池 の 設 置 や 解 列 条 件 ( 調 整 力 が 不 足 する時間帯に系統から風力を切り離すという条件)での契約が求められるようになってい る。また、電力会社間の送電線による融通が行われれば系統不安定化の懸念は相当に改称 さ れ る は ず で あ る が 、 こ れ が 積 極 的 に 活 用 さ れ よ う と し て い な い 19 。 第 三 に 、導 入 目 標 量 の 低 さ で あ る 。日 本 の 新 エ ネ ル ギ ー 電 力 利 用 の 目 標 は 、2010 年 に 電 力 の 1.35%、2014 年 に 1.63%と な っ て い る 。確 か に 、大 型 水 力 を 含 む EU と 、単 純 な 比 較 は で き な い 。 日 本 の 大 型 水 力 は 1999 年 に 総 発 電 量 の 9.0%、 2006 年 に 8.6%を 占 め て い た か ら 、 こ れ に 1.63%を 上 乗 せ す る と 、 日 本 の 再 生 可 能 電 力 は EU の 定 義 で 言 え ば 2014 年 に は 約 10%を 占 め 、 国 際 的 に 見 て も 遜 色 な い か の よ う に 見 え る 。 し か し 、 EU は 2010 年 の 再 生 可 能 電 力 目 標 は 22%な の に 対 し 、 1999 年 の 再 生 可 能 電 力 比 率 は 14.2%( う ち 水 力 が 12.1%)で あ っ た か ら 、約 7.8%ポ イ ン ト の 増 加 で あ る 。 中 で も ド イ ツ は 2010 年 目 標 が 12.5%な の に 対 し 、1999 年 の 再 生 可 能 電 力 比 率 は 5.6%( う ち 水 力 は 3.8%)で あ っ て 、6.9% ポ イ ン ト の 増 加 が 求 め ら れ て い た 。し か も 、2007 年 に は す で に 2010 年 目 標 を 上 回 る 14.2% の 再 生 可 能 電 力 比 率 を 達 成 し た の で あ る 。や は り 、2010 年 の 目 標 量 の 厳 し さ と い う 点 で は 、 日本と欧州の間で数倍の違いがあると言わざるを得ない。 これに関しては、政府・経済産業省の審議会の場で重要な位置を占める電力会社が議論 を主導し、上述の系統制約などを理由に目標水準を低く抑えているとみられる。 日本においてはまた、政治主導で再生可能エネルギーの明確な将来構想が打ち出されて い な い こ と か ら 、再 生 可 能 電 力 の 普 及 の た め の 政 策 的 ル ー ル( 優 先 接 続 、電 力 買 取 ル ー ル 、 負荷変動の調整責任、費用負担等)の議論が十分になされず、再生可能エネルギー普及に 不利となる追加的な制約が先行していた。 5.4. 太陽光発電の累積設備容量の国際比較 本節では、東アジア諸国の太陽光発電設備容量を、米国・ドイツの導入量を参照しつつ 評 価 す る 。各 国 の 累 積 設 備 容 量 (表 10)を 見 れ ば 、ま ず 日 本 の 容 量 の 大 き さ と 、そ れ を 2005 年に一挙に抜き去ったドイツの勢いが目に付く。米国は世界 3 位の設備容量であるが、日 独との差は大きい。これらに対し、中・韓・台は大きく出遅れていることが分かる。 2006 年 度 の 募 集 規 模 /連 系 可 能 量 (kW)は 、 北 海 道 電 力 5 万 /25 万 、 東 北 電 力 10 万 /52 万 、 北 陸 電 力 2.5 万 kW/15 万 、四 国 電 力 0 万 /20 万 、中 国 電 力 5.5 万 /検 証 中 、九 州 電 力 5 万 /70 万 、 沖 縄 電 力 1.1 万 /2.5 万 で あ っ た (飯 田 2007)。 19 井 田 (2007)に よ る 。 彼 に よ れ ば 、 解 列 に よ っ て 風 車 の 効 率 が 25%減 少 、 蓄 電 池 に よ っ て 風 力 発 電 設 備 の 費 用 が 2 倍 に 増 え る と い う 。 ま た 、 北 海 道 と 本 州 を 結 ぶ 送 電 線 は 60 万 kW、 東 北 電 力 と 東 京 電 力 を 結 ぶ 送 電 線 は 600 万 kW に も 達 す る も の で あ る 。 18 22 表 10: 太 陽 光 発 電 の 累 積 設 備 容 量 (MW) 中国 日本 韓国 台湾 1993 1994 NA NA 24.3 31.2 1.6 NA 12.4 6.63 43.4 1.8 NA 147.7 1996 1997 1998 1999 NA NA NA NA 133.4 208.6 59.6 2.1 NA 28.8 91.3 2.5 NA 3.0 NA 3.5 NA 2000 19 330.2 2001 2002 NA 452.8 4.0 4.8 45 636.8 5.4 2003 2004 NA 859.6 6.0 NA NA NA NA 2005 2006 65 70 80 1132 1422 1709 13.5 34.7 8.5 NA NA 1.6 41.8 53.8 69.4 113.7 194.6 278.0 431.0 1044 1910 2863 50.3 57.8 66.8 76.5 88.2 米国 出 典 : IEA-PVPS(2007), 李 ・ 王 等 (2007) 100.1 117.3 138.8 167.8 212.2 275.2 376.0 479.0 624.0 ドイツ 8.9 1.7 NA 1995 繰 り 返 し に な る が 、 日 本 の 太 陽 光 発 電 を 支 え た の は 、 政 府 の 設 備 補 助 金 (1994 年 ~ 2005 年 )と 電 力 会 社 の 余 剰 電 力 購 入 メ ニ ュ ー (1992 年 ~ )で あ り 、 RPS 法 で は な い 。 2006 年 度 か ら政府の設備補助金がなくなり、設置者にとって太陽光発電の採算がとりにくくなった。 そ の た め 、前 述 の よ う に 、2009 年 1 月 か ら 補 助 金 が 復 活 し 、2010 年 度 か ら FIT 制 度 が 復 活 したのである。 中国は、太陽電池が高価であることの他、いまだに電力会社への系統連系そのものが進 ん で い な い と い う ( 宋 ・ 李 ・ 知 足 (2008)) 。そ の た め 、太 陽 電 池 セ ル の 生 産 能 力 が 日 本 と ド イ ツに続き世界第 3 位の水準に達しているにも関わらず、そのほとんどは輸出されており、 国 内 で 設 置 さ れ る の は ご く 一 部 で あ る 20 。 太 陽 光 発 電 の 市 場 を 立 ち 上 げ る た め の 関 連 規 制 の整備が求められる。 韓 国 は 、 FIT や 各 種 補 助 政 策 の 効 果 が 現 れ て 太 陽 光 発 電 の 普 及 が 急 激 に 進 み つ つ あ る 。 表 6 に 示 さ れ て い な い が 、2007 年 の 設 置 容 量 は 100MW を 超 え た と み ら れ る 2 1 。た だ 、FIT は 3kW 以 上 3MW 以 下 の 比 較 的 大 き な 設 備 に 対 し て 適 用 さ れ 、家 庭 用 に は「 太 陽 光 住 宅 10 万戸補助事業」などの補助金制度が重要な役割を果たしていると言える。 台湾はまだ、普及のごく初期段階にあるに過ぎない。 5.5. 風力発電の累積設備容量の国際比較 主 要 国 の 累 積 風 力 設 備 容 量 を 表 7 に 示 す 。2007 年 の 累 積 風 力 設 備 容 量 は 、ド イ ツ 、米 国 、 ス ペ イ ン 、イ ン ド に 続 き 、中 国 が 5 位 に つ け た 。ド イ ツ 、ス ペ イ ン と も に FIT の 成 功 例 と さ れ る 。 米 国 は FIT を も た ず 、 優 遇 税 制 や 低 利 融 資 、 あ る い は 州 レ ベ ル の RPS に よ っ て 急激に設備容量を伸ばしているが、政策環境は必ずしも安定的ではないと言われる。 20 Chen(2008)に よ れ ば 、中 国 の 2006 年 の 太 陽 光 セ ル 生 産 量 は 381.5MW で あ る 。し か し 、表 5 か ら 分 か る よ う に 、 同 年 に 国 内 で 設 置 さ れ た の は 約 10MW に 過 ぎ な い 。 21 2007 年 の 実 績 数 値 は ま だ 筆 者 の 手 元 に な い 。 2007 年 3 月 現 在 、 建 設 中 ・ 計 画 中 の も の が 121MW に 達 す る と い う 産 業 資 源 部 の 発 表 (朝 鮮 日 報 Online 2007/5/17)に 基 づ く 推 定 で あ る 。 23 表 11: 風 力 発 電 の 累 積 設 備 容 量 (MW) 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 中国 346 402 469 567 764 1260 2599 5906 日本 136 302 338 580 809 1049 1309 1538 8 8 韓国 13 18 68 98 173 191 台湾 NA NA NA NA NA NA NA 203.7 EU 12887 17315 23159 28598 34371 40511 48029 56535 ドイツ 6104 8754 11994 14609 16629 18415 20622 22247 米国 2578 4275 4685 6372 6725 9149 11575 16818 中 国 は 風 力 資 源 に 恵 ま れ て お り 、 2003 年 以 降 の 競 争 入 札 に よ る 普 及 拡 大 に 、 2006 年 施 行 の 可 再 生 能 源 法 が 拍 車 を か け 、2005 年 か ら 2007 年 ま で の 間 に 4 倍 以 上 に 増 え た 。単 年 度 の 設 置 容 量 も 伸 び を 続 け て い る (表 8)。 そ れ に 対 し 、 日 本 の 単 年 度 設 置 容 量 は 2003 年 以 降 、 200MW 台 で 伸 び 悩 ん で い る 。 韓 国 で も 、 2006 年 ま で 単 年 度 設 置 容 量 の 伸 び が 続 い て い た が 、 2007 年 に は 大 き く 落 ち 込んでいる。韓国の陸上風力導入の障壁は、風力適地の地理的条件(山岳地帯で電力イン フラが乏しい、自然保護地域で許可取得が難しい)や、市民による反対である。 ※台湾に関しては風力に関する情報が現時点で得られていない※。 表 11: 風 力 発 電 の 単 年 度 設 置 容 量 (MW) 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 76 56 68 98 197 503 1337 3304 日本 166 36 242 229 240 260 229 韓国 0 5 5 50 30 75 18 中国 台湾 5.6. NA NA NA NA NA NA NA NA 東アジア諸国の再生可能電力支援価格の比較 表 10 に 、 東 ア ジ ア 諸 国 の 再 生 可 能 電 力 支 援 価 格 の 一 覧 を 示 す 。 参 考 と し て 、 FIT の お 手本となるドイツの再生可能エネルギー法に定める公定価格も合わせて示した。 中国は公定の固定価格が未整備である。太陽光に関しては価格の設定基準がいまだ検討 中であり、固定価格買取制はいまだ始まっていない。風力に関しては競争入札による価格 と、政府 による 審査 価 格の 2 種類が ある が、いずれ も価格 その もの は際だ って高 いわ けで なく、長期間のその価格での買い取りが保証されるということが、急速な普及を後押しし ているものと考えられる。 日 本 の 価 格 は す で に 5.3.節 に て 詳 述 し た も の で あ る が 、 こ こ で は 最 低 値 と 最 高 値 の み 示 し た 。こ こ に は 、電 力 会 社 の 余 剰 電 力 購 入 メ ニ ュ ー (自 主 的 FIT)に よ る 固 定 価 格 と 、「 電 気 の み の 価 格 +RPS 証 書 の み の 価 格 」 が 混 在 し て い る 。 日 本 で は こ れ ら の 価 格 は 原 則 非 公 表 24 かつ不安定であり、長期的な価格の安定性は電力会社の提示する契約条件次第である。 表 10 東 ア ジ ア 諸 国 の 再 生 可 能 電 力 支 援 価 格 (円 /kWh 換 算 ) 中 国 (実 績 ) 太陽光:未定 風力: 入 札 6.1-8.3 審 査 8.2-10.2 日 本 (2006) 太 陽 光 : 8.7-24.1 風 力 : 7.0-21.0 水 力 : 4.5-13.0 バイオマス: 4.0-15.0 RPS 証 書 : 2.0-7.0 [参 考 ]新 FIT 制 度 太 陽 光 : 50 韓 国 (‘06.8-‘08.9) 太 陽 光 : 67.8-71.2 風 力 : 10.8 水 力 : 7.4 バイオガス: 7.3-8.6 バイオマス: 6.9 燃 料 電 池 : 23.5-28.3 台 湾 (2003-) 太 陽 光 : 59.5 風 力 : 7.0 ド イ ツ (2004-) 太 陽 光 : 77.7-106.1 風 力 : 14.8-15.5 水 力 : 6.3-16.4 バイオガス: 11.3-16.4 バイオマス: 6.6-29.8 地 熱 : 12.1-25.5 出 典 : 宋 ・ 李 ・ 知 足 (2008)、 李 ・ 李 (2008)、 TaipeiTimes (2008.4.15)、 BMU(2004) ※ 為 替 レ ー ト を 、 1 元 = 16 円 、 1 ウ ォ ン = 0.1 円 、 1 台 湾 元 = 3.5 円 、 1 ユ ー ロ = 170 円 と し て 円 換 算 。 韓 国 の FIT 制 度 は 、 ド イ ツ の 制 度 と 同 様 に 、 再 生 可 能 電 力 の 種 別 ・ 技 術 別 ・ 規 模 別 に 、 細かく価格差別が行われている。特に、太陽光発電に対しては、投資を十分に回収できる ほど高い価格が設定されている。また、いずれの電源に対しても、固定価格の適用期間は 15 年 と 定 め ら れ て い る ( 2008 年 10 月 よ り 、 太 陽 光 発 電 に 対 し て は 20 年 か 15 年 か を 選 べ る こ と に な る )。 ド イ ツ で は 原 則 20 年 間 の 固 定 価 格 で の 買 い 取 り と 、 毎 年 度 一 定 率 22 の 価 格 切 り 下 げ (Degression)が 法 律 で 定 め ら れ て い る 。こ の Degression は 技 術 革 新 と コ ス ト 低 下 を 目 的 と して、年度ごとの新規案件に対して適用されるもので、既設設備の電力価格が切り下げら れるわけではないから、すでに投資した人々の利益が損なわれるわけではない。これと同 様 に 韓 国 で も 、 2006 年 の 関 連 法 改 正 の 際 に 、 技 術 集 約 型 電 源 ( 太 陽 光 、 風 力 、 燃 料 電 池 ) に対しては、一定の猶予期間(太陽光と風力は 3 年、燃料電池は 2 年)後、太陽電池が毎 年 4%、 風 力 が 毎 年 2%、 燃 料 電 池 が 毎 年 3%の 基 準 価 格 減 少 率 が 適 用 さ れ る よ う に な っ た (李 ・ 李 2008)。 台 湾 に つ い て は 、 台 湾 電 力 (Taipower)に よ る 自 主 FIT の 価 格 を 示 し て い る 。 太 陽 光 発 電 の買取価格の高さが注目に値する。 5.7. 普及に関するその他の問題 ここまでで、東アジア 4 ヶ国の再生可能エネルギー目標、および再生可能電力支援制度 の 概 要 と そ の 普 及 上 の 成 果 、お よ び 支 援 価 格 に つ い て 示 し 、比 較 を 行 っ て き た 。本 稿 で は 、 RPS に よ っ て 「 市 場 競 争 」 を 促 す か 、 FIT 制 度 に よ っ て 「 投 資 の 確 実 性 」 を 担 保 す る か 、 という主要な政策手法の選択、支援価格水準の設定を最重要の論点として議論を進めてき たが、東アジア諸国の電力市場における再生可能エネルギーの普及については、それ以外 にも重要な問題がある。 22 Degression の 率 は 、水 力 1%、バ イ オ マ ス 1.5%、地 熱 1%(~ 2010)、風 力 2%、太 陽 光 (5%)。 25 第一に、日本の制度上の問題として指摘された、独占的地位にある電力会社の行為の規 制である。特に日本の場合、制度の運用上、電力会社の裁量に負うことが多く、そのこと が普及を妨げている。電力市場の自由化の進んでいない東アジア諸国にとっては、明確な ルールの策定が、共通の問題と言えよう。 第 二 に 、 OPTRES 報 告 書 で 指 摘 さ れ た 各 種 の 障 害 ( 行 政 上 の 障 害 、 系 統 連 系 上 の 障 害 、 社 会 的 障 害 、 資 金 調 達 上 の 障 害 ; 表 6 参 照 ) で あ る 。 EU 諸 国 の 再 生 可 能 電 力 普 及 制 度 に 関連して指摘された問題であるが、東アジア諸国にとっても、ほぼそのまま当てはまるよ うに思われる。 第 三 に 、関 連 産 業 の 競 争 上 の 問 題 で あ る 。RPS や FIT 等 の 普 及 政 策 は 、原 則 と し て 自 国 製品と外国製品とを差別しないため、自国企業が弱ければ外国製品に依存せざるを得なく な る 。他 方 、国 内 企 業 が 強 い 競 争 力 を 持 っ て い れ ば 、再 生 可 能 発 電 者 に と っ て の コ ス ト( 設 備 購 入 費 、 発 電 単 価 ) の 大 半 は 、 国 内 企 業 の 付 加 価 値 と し て GDP 増 加 に 貢 献 す る こ と に な る 。 4.4.節 で は 、 自 国 で 普 及 が 進 ん で い る 国 ほ ど 、 設 備 メ ー カ ー の 競 争 力 が 強 く な る こ と が 示 唆 さ れ た が 、後 発 の 韓 国・中 国・台 湾 に と っ て 、ど の よ う な 方 法 で 技 術 水 準 を 高 め 、 競 争 力 を 高 め て ゆ く べ き か は 重 要 な 問 題 で あ り 、 政 府 に よ る R&D や 、 国 際 貿 易 ル ー ル に 反 し な い と い う 前 提 で 、国 産 設 備 と 輸 入 設 備 を 差 別 す る 補 助 金 制 度 (c.f.中 国 の 低 利 融 資 )を 検討する必要があろう。 最後に、費用負担の問題である。中国はドイツの制度に類似した、電気料金による明示 的 な 費 用 負 担 ル ー ル を 備 え て い る 。そ れ に 対 し 、韓 国 は FIT 制 度 を 立 ち 上 げ た が 、差 額 補 助 の 費 用 を 政 府 財 源 に 依 存 し て お り 、ま た 、2012 年 に は 、明 示 的 に 財 源 を 確 保 す る 必 要 の な い RPS 制 度 に 転 換 さ れ る 予 定 で あ る 。 他 方 、 日 本 で は 、 2010 年 か ら の FIT 制 度 で 、 太 陽 光 発 電 に 関 す る 消 費 者 へ の 費 用 転 嫁 が 明 確 化 さ れ る が 、RPS 法 に つ い て は 電 力 会 社 に 生 じ た 超 過 負 担 を 、 明 示 的 に 電 気 料 金 に 転 嫁 す る ル ー ル が な い 。 仮 に RPS 証 書 価 格 を 5 円 /kWh と し て も 、2007 年 の 新 エ ネ ル ギ ー 発 電 量 74.3 億 kWh 程 度 で あ れ ば 371.5 億 円 、2014 年 の 160 億 kWh に 対 し て は 800 億 円 程 度 と な る 。電 力 業 界 の 19 年 度 の 売 上 高 (約 16.7 兆 円 )に 比 較 す れ ば わ ず か で あ り 、現 時 点 で は 吸 収 が 可 能 で あ ろ う が 、利 用 義 務 量 の 増 加 に と もなって電力会社の負担が急増するか、負担の増加を嫌う電力会社によって再生可能電力 導 入 目 標 が 低 く 抑 え ら れ る 状 況 が 続 く も の と み ら れ る 。RPS 制 度 に 関 し て も 、国 民 ま た は 電力消費者によって、薄く広く、再生可能電力普及に伴う費用を負担するルールを明確化 すべきである。 6. 結論 日中 韓台の 東ア ジ ア 4 ヶ 国は、地 球温 暖 化問題 とエネ ルギ ー・セキュ リティ 問題 への 対 応から、再生可能エネルギー普及を支援する政策を打ち出している。中でも、再生可能電 力 の 普 及 に 関 し て は 、 欧 米 で 実 施 さ れ て き た RPS 制 度 ま た は FIT 制 度 の い ず れ か の 導 入 26 をはかっている。このことは、東アジアの後発国でも、研究開発段階・初期需要開拓段階 を飛び越えて、市場形成・普及拡大段階に突入したことを示している。 EU15 ヶ 国 で は OPTRES 研 究 等 に よ り 、FIT 制 度 を 導 入 し た 国 々 の 方 が 導 入 量 、コ ス ト 、 企 業 競 争 力 の 点 で 優 れ た 結 果 を 残 し て い る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 中 国 と 韓 国 は FIT を 導 入 済 み で あ り 、 台 湾 で は FIT を 制 度 化 し た 再 生 能 源 条 例 の 草 案 が 作 ら れ た 。 日 本 は RPS が 主 体 で あ る が 、太 陽 光 発 電 に は FIT が 導 入 さ れ る 予 定 で あ る 。い ず れ に せ よ 、各 国 の制度は導入からの年月が短く、中国の風力および韓国の太陽光で、設備容量の急速な伸 びが見られるものの、制度の実績に関して結論を出すのにはまだ早い。また、補助金等の 関 連 制 度 も 、 東 ア ジ ア で は RPS や FIT 以 上 に 、 重 要 な 役 割 を 果 た し 続 け て い る 。 い ず れ に せ よ 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 普 及 は 、RPS か FIT か と い う 政 策 の 二 分 法 だ け で 割 り 切 れ るほど単純ではない。東アジアの電力市場の現状を踏まえた上で、行政上の障害、系統連 系 上 の 障 害 、社 会 的 障 害 、資 金 調 達 上 の 障 害 、電 力 会 社 に よ る 普 及 に 有 害 な 行 為 の 除 去( 運 営 上 の ほ か 政 策 形 成・目 標 設 定 へ の 影 響 を 含 む )、自 国 企 業 の 育 成 、お よ び 費 用 負 担 に 関 し て、透明かつ公平なルール作りが求められる。 27 付 録 1: 東 ア ジ ア 4 ヶ 国 お よ び EU15 の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 支 援 措 置 の 推 移 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 CH T T T *T&F JP S&f S&f S&f S&f S&f S&f *R&S&f R&S&f *R& f R&f KO S S S S S S *F&S F&S F&S F&S TW S S S *S&f S&f S&f S&f AT F F F F +F F F F +F BE F F F F F *R R R R R DK F F F F *F F F F F F FI S S S S S S S S S S FR-wind F&T F&T F&T *F +F F *F&T *F F +F FR-bio *T T *F F *F&T F&T F&T +F&T FR-PV *F F F F F +F DE F F F +F F F F +F F F GR F F F F F F F F F +F IE T T T T T T T T *F F IT-wind F F *R R R R R R +R R IT-bio F F *R R R R R R +R R IT-PV F F *R R R R R R *F F LU F F F F F F F F F R NL R&S R&S R&S *S S S *F&S F&S F&S *F PT F F F F F F F F F F ES F +F F F F F F +F F F SE S S S S S S *R R R R UK T T T T T *R R R R R ※ F は FIT、f は 自 発 的 FIT、R は RPS、T は 競 争 入 札 、S は 補 助 金 や 優 遇 税 制 を さ す 。*は 制 度 の 変 更 、 +は 制 度 の 調 整 が 行 わ れ た こ と を 意 味 す る 。 参 考 : 東 ア ジ ア 4 ヶ 国 に つ い て は 本 文 。 EU15 に 関 し て は Ragwitz, M et al. (2007)、 p.34 付 録 2: 日 本 に お け る 公 式 の 発 電 コ ス ト 試 算 例 発 電 単 価 (円 /kWh) 風力 10—14 (大 規 模 ) 18—24 (中 小 規 模 ) 太陽光 46 (トップ) 66 (平 均 ) 一般廃棄 物発電 9—11 (大 規 模 ) 11—12 (中 小 規 模 ) 出 典 : 総 合 資 源 エ ネ ル ギ ー 調 査 会 (2001) 付 録 3: 韓 国 に お け る 電 源 別 発 電 単 価 比 較 (ウ ォ ン /kWh) LNG 原子力 石 炭 (国 内 炭 ) 石 油 3.08 22.9(60.5) 117.0 91.0 太陽光 500~ 900 風力 100~ 130 出 典 : 李 ・ 李 (2008) 文献 BMU(2004) Die wichtigsten Merkmale des Gesetzes für den Vorrang Erneuerbarer Energien (Erneuerbare Energien Gesetz) vom 21. 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