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参考資料1 国内外における文化産業構築に向けた取り組み
参考資料1 国内外における文化産業創出に向けた取り組み ■ 金沢市の取組 <都市の概要> ○ 人口45万人。経済発展と文化・環境とのバランスのとれた中規模都市。 <地域経済の特性> ○ 繊維工業と繊維機械工業が地域内で相互連関的に発展を遂げ、近年は工作機械や食品関 連機械、出版・印刷工業、コンピュータ関連産業が展開して多様な産業連関構造を保持。 市民生活を支える伝統産業や食品工業、アパレル産業等も発展している。 ○ 内発的な発展形態により、移輸出産業が生み出す所得が地域内で循環する(=域外に漏 出しない)経済構造を形成し、それをベースに中堅企業の絶えざるイノベーションや文 化的投資が可能になっている。 ○ 独自技術やイノベーションによりすきま間分野でトップシェア(ニッチトップ)を維持 する中堅・中小企業が多い。 文化産業 創出に向 けた取組 ○ 2001年に経済界と市民が主体になって「金沢創造都市会議」を設立。行政 と連携して創造都市を目指した事業を展開。 <金沢市民芸術村> ・ 1996年9月、紡績工場跡と倉庫群を活用してオープン(繊維産業の衰退が 契機) ・ 4棟の工房を運営するのは一般市民から選ばれた8人のディレクター ば デ (各工房に2人)。施設利用の活性化、独自事業の企画立案、利用者間 の調整を自律的に行っている。 <金沢21世紀美術館> ・ 県庁舎の郊外移転によって空洞化が懸念された金沢市中心部に2004年 10月開館 ・ コンテンポラリーアートを中心に世界の芸術作品を収集・展示し、著名 なアーティストを招いた公開製作などを通じて、地元の伝統工芸・伝統 芸能と現代アートの融合を目指している。 ・ 美術館を核にファッション産業やデジタルコンテンツ産業の創造支援を 担うファッション産業創造機構を立ち上げ、伝統工芸・伝統芸能と現代 アートの融合の中から新しい地域産業を創出する事業を開始。 <主な取組主体> 金沢創造都市推進委員会、金沢市民芸術村の運営主体 金沢21世紀美術館、ファッション産業創造機構、イート金沢実行委員会、金沢 美術工芸大学、金沢市 等 成果と課題 ○ 金沢市民芸術村は、市民の能動的な参加によって、「近代産業遺産」が「文 化創造の場」に転化しつつあり新しい文化的インフラストラクチャーができ つつある。 ○ 金沢21世紀美術館は、開館1年で市内人口を3倍ほど上回る150 万人の入場 者を数え、その経済波及効果(建設投資を除く)は100 億円を超える。また 開館後は地元商店街にも経済効果が現れるなど、都心部の賑わいが復活。 1 ■ 横浜市の取組─クリエイティブシティ・ヨコハマ─ <都市の概要> ○ 人口360万人(日本最大の市)。横浜都心部は開港の歴史を刻む建造物が町並みを形成す る一方、みなとみらい21地区には最新の高層ビルが建ち並ぶ。 <地域経済の特性> ○ 1859年の開港以来、明治時代にかけては、日本の国際貿易の過半を占める交易の中心地、 海外からの情報・文化の最大の窓口として、東京と並ぶ中枢機能を持った日本最大の国際 都市であった。 ○ しかし、その後の時代変遷の中で、文化・情報面での国際性や貿易港としての地位は低下 しつづけ2000年代初頭には、都心部にあった企業の本社機能が次々と東京に移転し都市の 自立性が低下、経済が低迷していった。 文化産業 創出に向 けた取組 ○ 上記のような状況の中で、2002年以降、国際的な都市間競争に勝ち残って いくために、文化芸術の持つ創造性を牽引力にして都市の活性化を図ろうと する新しい都市戦略「文化芸術創造都市―クリエイティブシティ・ヨコハマ 」が中田新市長のもとで推進された。 ⇒ アーティスト・クリエイター等が創作・発表・滞在する空間を既成市街 地の中に作っている(創造界隈形成事業)。良い作品を美術館等に持っ てきて鑑賞するだけでは文化の消費にとどまる。真に創造的な街にする には、そこで文化芸術が生まれる仕組みを作る必要があり、それなくし ては都市の自立性が育たない という発想 ては都市の自立性が育たない、という発想。 ⇒ 一方で、アートだけでは地域は自立しない、創造性を生かした経済活動 が必要という発想から、映像産業をはじめとする創造的産業の集積を進 めている ○ この都市戦略では、実現可能なものについては実験事業という形で早々に 着手。ある程度のスピードで一定のところまで持っていかないと、その後が 続かないという認識のもと、各種の施策を短期間に集中的に実施している ○ これらの施策を推進するために、従来は縦割りであった文化政策、産業政 策、まちづくりに関わる行政のセクションを横断的に再編する新組織「文化 芸術都市創造事業本部」と「創造都市推進課」を創設。これを中核的推進組 織として、さらにNPO等市民団体の政策過程への参画を積極的に進めている <主な取組主体> 文化芸術都市創造事業本部(創造都市推進課)、NPO法人STスポット横浜など 成果と課題 ○ 上記の取組により、停滞していた都心部に活気が戻り、横浜を訪れる観光客 は大幅に増加(2005年の観光客数は10年前に比べて約1,000万人増加)、みな とみらい21地区の土地利用もここ数年で急速に進んでいる。 ○ 創造界隈形成事業による経済波及効果は、2007年3月までの3年間で約120億円 にのぼっている。 ○ 一方で、施設運営等を完全に任せるようなNPO等はなかなか育っていない。 NPO等中間支援機能の強化が課題となっており、その育成に取り組んでいる。 2 ■ 韓国・ソウル市の取組 <都市の概要> ○ 人口1,000万人超の大都市(韓国全人口の4分の1が集中)。 <地域経済の特性> ○ 韓国企業の本拠地として経済成長を遂げ、国全体の国民総生産の21%を生み出している。 ○ かつては大統領府や景福宮、明洞がある鐘路区を中心に商業・ビジネスなどの都心機能が 集積していたが、市の中央部に米軍基地が存在していることや、一方で急速に地下鉄網が 発達したこともあり、漢川を越えて三成や江南など市の南側の地域に商業・ビジネス拠点が 急速に発展しつつある。 ○ 市長が都市デザインに重点をおき、デザイン的に優れた都市に改造することで経済を発展 させる戦略をとっている。ソウルは国際産業デザイン団体協議会によるコンペで2010年の 「世界デザイン首都」に選定され、都市デザインを前面に出したまちづくりを進め、激化する 都市間競争の中でソウルの魅力度を高め、世界中から人や金を集めようとしている。 文化産業創 出に向けた 取組 ○ 韓国企業の本拠地として経済成長を遂げ、国全体の国民総生産の21%を生 み出している。 ○ ソウル文化財団は、「創造文化都市」の実現に向けたソウル市の「カル チャノミックス」政策のもと、芸術家と市民の創造的能力を育むことで都 市の国際競争力強化を図る「ソウル市創作空間造成事業」を進めている。 芸術家には創作空間を提供し、距離感のあった芸術を地元住民にとって身 近な存在にするというねらいで、遊休空間を創作空間として再生し2009年 秋から本格的にオープンした。旧都心部を文化的に再生し、地域コミュニ ティを活気づけることで、ソウルの文化・環境・教育・経済的ニーズに応 える効果をもあげている。 ○ 同事業により、西橋洞の旧役場の建物をリサイクルした「芸術実験セン ター」を皮切りに、延嬉洞の旧時事編纂委員会の空間を活用した「文学創 作村」、禿山洞の印刷工場を活用した「国際文化芸術交流センター」、新 堂洞の旧地価商店街を改造した「新堂創作アーケード(工芸工房村)」など がすでにオープンしている。その他にも文来洞の鉄工所団地内の工場と保健 所、交通センターなど、都心にあった様々な遊休空間を引き続き掘り起こし て、多様なジャンル創作空間を作り出している。 ○ 芸術家らの創作活動に対する支援の他にも、海外との交流、若手養成及び 文化芸術教育を通して、市民に密着した空間になるように取り組んでいる。 ○ 巨大都市でよく見かける大型コンプレックス中心の施設ではなく、都市 のあちこちに散在していた小規模な遊休施設を活用することでその空間の 特色に合わせた創作機能を持たせ、それを一つのベルトにつなげてネット ワーク化している。 ○ 一方、韓国では国家戦略として文化産業の振興に力を入れており、アジア 市場にターゲットを絞った輸出産業、とりわけライセンスビジネスへの展開 が促進されている。すでにオンラインゲームの分野では韓国は世界有数のシ ェア(30.4%)を誇っている。ソウル市ではデジタルメディアシティ・プロ ジェクトのもと、メディアエンターテイメント産業の集積・拠点化が積極的 に図られている。 <主な取組主体> ソウル市、ソウル市文化財団 等 3