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シニアの季節:さいたま

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シニアの季節:さいたま
季刊誌
シニアの季節:さいたま
(春号:H23年3月)
NPO法人さいたまシニアライフアドバイザーの会
http://saitama-sla.at.webry.info/
Contents
3
報告「24時間在宅医療と介護」講座(近藤)
4
[特別寄稿] 終末ケア施設の現状(鈴木ヨシモト直美)
11
在宅での看取り
医療側のすべきこと、利用側また市民側のすべきこと
文献調査報告と考察
18
(近藤)
編集後記
(表紙出典:HP「西都原古墳群の桜と菜の花」より)
http://miyazaki.daa.jp/saitobaru/konohana.htm
2
報告「24時間在宅医療と介護」講座
さいたまシニアライフアドバイザーの会by近藤
1
開催経緯
当会では平成22年1∼3月にかけ、さいたま市生涯学習総合センターとの共催で
「高齢者の介護と住まい」講座を開催。定員40人のところに60人も集まり、やむ
なく抽選。このため平成22年度、本講座を再度行う予定を立てた。
5月、友人へのアドバイスを考えていたところ「在宅療養支援診療所」を知った。
7月、内閣府の高齢社会セミナーにて「24時間随時訪問介護」を知った。
恥じた。
“住まい”というハードウェアのみしか知らなかったからである。
そこで表題の講座を企画、実施したのである。なお22年度は学習センター共催講座が、
市事情により中断したこともあり“自主講座”として単独で開催した。
開催時期は、
“認知症予防”に関する助成の決定また実行前の時期とし、11∼1月と
した(助成は落選だったが)
。なお“住まい”講座を行うことはいつでも可能である(例
えば「出前講座」として)
。
2
実施内容と課題
日時
内容
11月20日(土) 第1回
14:00∼
ナースコールのない在宅介護の課題
(比較:施設介護と在宅介護
24時間ナースコールのある施設、
16;00
講師
会場
当会会員講師
アウルホテル
シニアライフアドバイザー
大宮 会議室
近藤康男
(新都心駅より
徒歩6分)
在宅介護の課題と解決策)
12月18日(土) 第2回
24時間随時訪問介護
世田谷区事業受託企業
14:00∼
16:00
埼玉会館5F
株式会社ジャパンケア 5C会議室
(世田谷区の先進事例紹介。
サービス
介護保険法改正動向、
包括ケア本部夜間対応型
明日の地域包括ケア。
)
訪問介護
(浦和駅より
徒歩6分)
サービス統括 成島慎二
1月15日(土) 最終回
14;00∼
15:30
24時間在宅医療
(24時間365日在宅での医療をサポート
する在宅療養支援診療所について解説)
3
さいたま市与野医師会
シーノ大宮
在宅・介護保険担当
生涯学習総合
すこやか内科クリニック
センター9F
澤田院長
学習室1
11月20日の講座
1月15日の講座
左端が澤田院長
プロジェクタを映しているのでやや暗い
4
講座はいずれも好評であった。
「随時訪問介護」は、講座としては全国でも先陣を切っ
たのではないだろうか(TVニュース報道が直前に行われていたが)
。
課題の一つは、会場を固定できなかたことである。これは公民館が3ヶ月前からの抽
選申し込みであるからであり、民間施設であれば1年∼6ヶ月前からの予約が可能であ
るものの高価格であるからである。
今一つの課題は月1の開催である。このため参加者が回ごとに減る傾向が出た。隔週
開催の方がやはり集中してよいのであろうか。
3
講師
小さな、名も知れぬNPO法人のため講師は何人かに断られた後、与野医師会に要請
した結果、澤田院長に引き受けていただいた。
介護も3社目の(株)ジャパンケアサービスに引き受けていただいた。なお当社は世田
谷区の24時間随時訪問サービスを委託されている会社でもあり最適でかつラッキーで
あった(本社は大塚)
。
そして講師が自主的に無償講演を引き受けてくださり、このため講座は「無料開催」
とした。
4
今後へ向けて
今般、24時間在宅医療と介護の現状がよく分かった。
講座前、在宅療養支援診療所に対する私の期待と澤田院長との認識にずれがあるように
思われた。講座では「寝たきりや外出できない悲惨な状況の高齢者の方などへ市や病院
からの要請にもとづき往診を開始した」現状が語られた。私が世話になるであろう将来
の状況とは程遠いように思われるのだが、これが現在の現場なのである。
「24時間随時訪問介護」は2012年から介護サービス化される予定のものである
が、是非普及して欲しいと思った(前段の「夜間対応訪問介護」が価格設定等の課題に
より普及していないのが現状である)
。
この随時訪問介護が在宅医療とチームを組むことにより、24時間での在宅医療と介護
が可能になり、さらには在宅療養支援診療所のさらなる増加にもよい影響をもたらすの
ではないだろうか。
これら在宅ケアの普及は謂わば国民的課題だと思われるが、まだまだ時間が掛かるも
のと思え、今後とも普及実現に向け「出来ること」を進めたいと思う。
今回の初開催は地元、さいたま市で行ったものであるがが出来れば首都圏対象に拡大し
たいと思うこの頃である。
以上
5
終末期ケア施設の現状
不十分な整備体制である今、地域住民に求められること
株式会社GCI代表取締役 鈴木直美
終末期を過ごす施設として、一般的に考えられるのは、以下のとおりです。
 病院の緩和ケア病棟
 独立の施設としてのホスピス
 病院の一般病棟
 特別養護老人ホーム、老人保健施設、その他介護保険上の施設
 有料老人ホーム
(1)病院の緩和ケア病棟
まず、緩和ケア病棟についてですが、日本全国の緩和ケア認可病棟数は 203 施設、緩和ケ
ア認可病床数 4,065 床(資料1参照)
。平均すると 100 万人あたり 25 床です。一方で、全
国で一年間に亡くなる方は 110 万人(平成 19 年)
、悪性新生物(がん)で亡くなる方は 33.6
万人。がん患者さんがすべて緩和ケアに入院すると、一年間に 95 人あたり 1 ベッドしか
緩和ケアベッドはありません。期間にすれば一人あたり 4 日足らずです。埼玉県は全国で
も特に緩和ケアの病床が少なく(資料1参照)
、人口 10 万人当たりの緩和ケア病床は全国
で最下位となっています。また、緩和ケア病棟の方針は施設によってまちまちであり、中
には母体となる病院の一般病棟からの患者受け入れを優先させ、一般からの受け入れはあ
まり実施していない病棟もあります。もしくは、在宅での療養を基本とし、緩和ケア病棟
はこれを支えるとの位置づけから、急変もしくは在宅の療養が不可能と判断された場合に
のみ、患者を受け入れるという方針の緩和ケア病棟もあります。幸運にも緩和ケア病棟に
入れたとしても、全てにおいてご自宅と同様の快適さが得られるとも限りません。緩和ケ
ア病棟は、あくまでも病院の一部、一フロアとしての位置づけですから、ご自宅と同様の
環境を整えるのは困難なのです。
(2)独立の施設としてのホスピス
その点、独立の施設としてのホスピスは建物内部としては病院よりも、自宅に近い環境を
整えることに長けています。しかし、こういった施設は全国的にも数えられるほどしかな
く、関東圏では東名高速道路秦野中井インター近くのピースホスピスしかありません。こ
ちらのホスピスは、聖路加国際病院の日野原先生が肝いりで、7 年間の準備期間をかけ、
6
ホスピス先進国のひとつであるオーストラリアのホスピスを参考にしながら開設されたホ
スピスですが、実際には患者受入数は少なく、空きベッドも多く出ています。これは何故
なのか、正確な理由は分かりませんが、ふたつの理由が考えられます。まず一つには、入
居費用が高い為です。こちらの施設には差額ベッド代のかからない4人部屋と、1 日当た
り 2 万円近い差額ベッド代のかかる個室とがありますが、4人部屋や常に満床であるにも
かかわらず、個室には空室が目立ちます。差額ベッド代は高額医療費の対象にもなりませ
んから、
1 か月に 60 万円近い入居費用を自己負担できる方は限定されてしまうのでしょう。
素人考えですが、全て個室にして差額ベッド代をもっと安くすれば良いのに、と考えられ
ますし、ホスピス先進国である米国ではホスピスと言えば個室以外考えられず、日野原先
生も本来は全室個室にされたかったのでは、と推察しますが、日本では、制度の枠内で実
施しようとすると、4 人部屋と個室との混合で、そのぶん個室の差額ベッド代は高額で、
という形でしか実現しえなかったのかもしれません。もう一つには、患者さんの住居から
遠い山奥に位置し、家族や友人が通いにくいためではないか、と筆者は考えます。これは
ピースホスピスを見学した看護師の話ですが、患者さんは終末期と言えども確かに生きて
いるのであって、息を引き取られる最期の瞬間まで社会との接点を持ち続け、住み慣れた
ご自宅近くで過ごされるのが望ましいのであって、このような山奥に入って、友人や家族
という訪問者もなく、まるで社会から隔絶されたように過ごすことのお手伝いはしたくな
い、という考え方もあります。
(3)病院の一般病棟
病院の一般病棟が終末期を過ごす施設となる場合もあります。ここには、治療中であった
時代の主治医の居る病棟を望んで入られる場合もありますが、患者さんもしくはご家族の
ご希望ではなく、急変時の救急搬送により結果的にそうなってしまった場合も含まれます。
一般病棟は、治療中の病気がない場合には、終末期を過ごすには最も適していない場所で
あると筆者は考えます。一般病棟は、その建物としての構造だけではなく、医師・看護師
等の人員的にも、患者さんが治療中であることを想定したつくりになっています。緩和ケ
アを必要とはするものの、完治を目的とした治療をする必要のない(もしくはもう治療で
きない)患者さんよりも、本来の、この病棟が想定している患者さんに、医師・看護師と
もに集中せざるを得ない(それが本来の彼ら・彼女らの任務です)ですから、治療を必要
としない患者さんは、ナースステーションから最も遠い病室に入らざるを得なかったり、
ナースの時間もあまり取ってもらえなくなることも少なからずあります。また、一般病棟
に配置されている医師や看護師は、一般的には緩和ケアの専門知識や経験もありません。
そのような医師・看護師の為に、緩和ケアチームという緩和ケアの専門家集団が一般病棟
を巡回する病院もあります。緩和ケアチームは、一般病棟の医師・看護師らのコンサルタ
ントとして、彼らと共に、一般病棟の患者さんも快適な終末期を過ごせるように支援しま
す。
7
(4)介護保険上の施設と有料老人ホーム
特別養護老人ホーム、老人保健施設をはじめとする介護保険上の施設、及び民間が運営す
る有料老人ホームは、一般的には終末期を過ごす施設としては望ましくないと考えられて
きました。特にがんの末期など、医療・看護を必要とする患者さんにとっては、医師・看
護師の関わりが少ないこれらの施設では充分なケアが受けられません。看護師が常駐して
いる施設もあります(看護師の常駐が介護保険上の施設要件になっている場合もあります)
が、このような施設に勤務している看護師は、例外ももちろんありますが、重篤な状態を
看護できる専門性も、緩和ケアの専門知識や経験も少ないということが一般的には言われ
ています。施設によっては、入居者の安全性確保を優先させ、医療・看護が必要となった
場合には他施設に移ることを入所の条件にしている施設もあります。急変時には例外なく、
救急車で病院に搬送するとう方針を明確にしている施設も多く存在します。結果として、
この患者さんは一般病棟で終末期を過ごされることになるのです。制度的には、これらの
施設のうち、特別養護老人ホームとグループホームには、がんの末期など、疾患が限られ
る場合がありますが訪問看護師の訪問が認められています。有料老人ホームでかつ介護保
険上の制約を受けない契約形態であるならば、訪問看護の依頼は自由にできます。これら
の施設に入居しながら、比較的元気なうちは施設専属の看護師に健康チェックをしてもら
いつつ、いよいよ終末期となった場合には、終末期ケアの専門性の高い訪問看護師に訪問
看護をお願いする、ということが一般的になるのもそれほど遠いことではないかもしれません。
(5)結論
このように見てくると、どの施設も終末期を過ごす施設として整備が進んでいないと考え
られます。かと言って、在宅で終末期を迎えることが最良かと言えば、問題はそのように
単純ではありません。在宅ケアを標ぼうする医師も、看取りを積極的に行うという訪問看
護師も、個人的能力や経験には大きなバラツキがある上、在宅ケアはまだ始まったばかり
で、病院のようには組織化されていない為、医師・看護師一人の能力では限界があり、継
続的に高い質のケアを提供できる体制になっていないからです。特に埼玉県は、全国的に
見ても緩和ケア病棟・在宅ケアともに整備の遅れが顕著であり、不安が募る状況にあると
考えられます。
埼玉県の緩和ケア病棟・在宅ケアの整備という、個人レベルを超えた取り組みに、同じ志
を持った仲間と力を合わせ、大きな力にして取り組んでいく必要性があると共に、個人レ
ベルでは、日頃から終末期をどう過ごしたいかについて、家族や親類・知人と話し合った
り、どのような施設があるかについて、もしくは、各施設の特徴についての情報収集を行
い、自分がその時を納得して迎えられる準備をしておく必要があると、筆者は考えます。
8
(6)最後に
最後になりますが、筆者は、個人的には自分の家族を自宅で看取りたいと考えている他、
自分自身も天蓋孤独になった暁(筆者には兄弟姉妹も子供も居ません)には、地域社会で
筆者を自宅で看取ってもらおう、そしてこれは充分可能である、という自信を持っていま
す。
筆者は仕事がら、これまで何年もの間、終末期ケアの従事者にインタビューしたり、終末
期ケアの施設を研究したりしてきました。これらのケア施設には、ホスピスケアの先進国
である米国で、質が高いと評されるホスピスも含まれています。このように質が高いと一
般的には言われる施設を充分に知った上でも、筆者にとって、自宅に勝る場所はありませ
んでした。
誰にも気兼ねせず、主人との思い出の詰まったこの場所で、主人を看取り、そして自分自
身も、自分で選んだ医師・看護師・ヘルパーさんだけに、自分が望む時にだけ来てもらい、
あとは自分一人で一人きりの時間を、最期まで心ゆくまで楽しみたい。誰にも看取られず、
朝ヘルパーさんが来てくれた時には息を引き取っていた、そんな形でも、私にとっては最
期まで自宅に居られることが一番の幸せなのだ、と思っています。
皆様に、私と同じように考えては、と申し上げているのではなく、私と同じように、元気
な頃からご自身が終末期をどう過ごされたいか、よくよく考え抜き、そしてそれを周囲の
方にお話ししておく必要性がある、と筆者は考えるのです。
ご自身の意思さえしっかりと表明しておけば、周囲がなんとか、それを実現するように動
いてくれるものです。医療従事者も含め、周囲の人間を動かして、ご自身の人生にとって
最も大切な時期のひとつである終末期という時期を、どうか大切に、ご自身の希望が通る
ようになさって下さい。
医療従事者にとっては患者さんの希望が実現されることこそが、この上ない喜びなのです。
9
資料1(出典:日本ホスピス緩和ケア協会HPhttp://www.hpcj.org/what/pcu_tdfk.html)
<筆者紹介>
しゃくやく
横浜で、2件の訪問看護ステーション(訪問看護ステーション 芍 薬 、ホープ訪問看護
ステーション)を経営しているのが株式会社GCIであり、その代表取締役が筆者である
鈴木ヨシモト直美
さんです。
鈴木さんは第1期SLC(シニアライフコーディネーター)でもあります。
ステーションのホームページは下記URL。
http://gci-zaitaku.co.jp/
株式会社GCIの組織理念
世界最高水準の在宅ホスピス・緩和ケアの提供を通じて、地域社会、日本、
そして世界のウェル・ビーイングの向上に貢献すると共に、参画人員全員の
リーダーシップと参観人員間のチームワークの形成を通じて、参画人員個々
の職業人としての資質向上と、人間としての成長に貢献する。
10
在宅での看取り
医療側のすべきこと、利用側また市民側のすべきこと
(文献調査報告と考察)
H23.2.18 近藤康男
表題の件、医療側、利用側につき幾つかの文献を調査した結果を記す。そして市民側のすべきこと
につき考察を行い、今後の利用側また市民側のすべきことの更なる見極めの参考となることを試みる。
1
医療側のすべきこと
在宅ホスピス協会による「在宅ホスピスケアの基準」によれば、医療側のすべきこと
は以下の内容である(抜粋であり、詳しくはホームページ参照)
。
(1)方針(理念)
・患者本人は、いつでも自由に、施設ホスピスケアへの移行や延命を目的とした
治療への変更を希望することができる。
・本人の自己決定、家族の意思を最大限尊重する。
・死を早めることも遅らせることもしない。
(2)本人、家族を対象とした死の教育
・本人と家族が安心できるように病状の説明を充分に行い、起こりうる病状変化に
対処する方法を指導する。
・家族を対象として死のプロセスの理解、看取りの心得などの教育を行う。
・家族に対して日常的なケアに関する教育をする。
(3)提供されるケア
・24時間、週7日間対応のケア
・緩和医療
・遺族を対象とした死別後の計画的なケア(グリーフケア)
・病院や施設ホスピスと連携したケア
(4)チームアプローチ
・ホスピスケアの提供はチームを組んで行い、チームの中心となる者を決めておく。
チームの基本単位は医師、看護師、介護者である。
・チーム内の連絡を密にとり情報を共有する。またチーム内が24時間連絡可能な
体制とする。
以上、協会ホームページ http://www005.upp.so-net.ne.jp/zaitaku-hospice/より。
(2)にある“病状変化への対処”については“方法を指導する”だけではなく、
“共
に対処した上その後の対策につき相談に応ずる“よう願いたいと思う。
11
またグリーフケアは、遺族へ行うのではなく、その準備を生前から行われることが望
ましいのではないだろうか。
2
利用側のすべきこと
(1)利用する上で重要な幾つかの環境の整備
神津内科クリニック院長によると、利用する上で次の環境が重要である。
・住環境・・・患者本人の部屋があり住みやすいことや、バリアフリー構造など
本人への配慮がなされていること、など
・介護環境・・介護の手が複数あること、介護スペースが確保されることなど
・教育(受講)環境・・看取りとは如何なることか本人も家族も認識していること
・経済環境・・療養費などが支払えること
(出典:
「在宅で看取りたい、看取られたい」神津内科クリニック神津仁院長
http://www.j-health.jp/egao/kenkou_kyositsu/191/index.html)
これらは利用側だけで出来ることではないが(一定のアドバイス等が必要)
、少なく
ともこのような認識は事前に必要なことであろう。
(2)利用側のすべきこと
船戸クリニック院長によると、利用側のすべきことは以下のことである。
① リビングウィル(尊厳死宣言)
② 本人の覚悟、家族の覚悟
本人の覚悟のためもあり元気なうちに尊厳死を宣言すべきだという。もとづき家族
はこれを受託し看取る覚悟が必要だという。
(出典:
「在宅医療からのメッセージ」船戸クリニック船戸院長
http://www.f7.dion.ne.jp/~funacli/collumn/number/2009/090102.html
尊厳死宣言書が記載されている。
)
覚悟だけでは実行できず、医療側との連携が必須であろう。
3
市民側のすべきこと(考察)
ここでいう“市民”については例えば“成年後見人”など明確な類別が本来必要で
あるが、ここでは細分化せず考察を行う。
(1)医療側についての考察
上記1節医療側の、すべきことにつき考察を行う。
ホスピス協会の基準は妥当なものだと思えるが、これを全て医療側で行おうとする
のは、負担が大きいのではないだろうか。負荷分散が必要と思われる。
12
注:医療と介護が本格的にチームを組めるのは24時間在宅介護スタートの20
12年からであろう。現状の現場は厳しい応対ではないだろうか。
医療側外への負荷分散の対象は、例えば死の教育やグリーフケアである。
死への一般的な教育やグリーフケアは、例えば専門の市民、または得意な、あるいは
訓練された市民が行うのはどうであろうか。もちろん現場では医療側が無関係である
はずはなく、重要な担い手の一人であることに変わりはない。
死の教育やグリーフケアについては医療側を中心者として位置づけるよりは他者を中
心者とし、自身はチームアプローチなどに邁進していただきたいと思えるのである。
注:グリーフケア講座は一般市民を対象として幾つかある。看取り講座はまだ
専門家向けが主流のようである。市民向けの一環教育が必要である。
以下に参考を記す。
本人・家族への“死の教育”への一参考
大項目
中項目
内容
否認
死ぬ?嘘だ!
死への
怒り
なぜ私が?
プロセス
取引
何とかならないのか
抑うつ
落ち込み(うつの様な状態)
受容
あきらめ、受け入れ
身体的痛み
緩和治療
精神的痛み
・臨床心理士らによるケア
(不安感、苦悩など)
・向精神薬治療
第Ⅰ部 看取られ:
看取り:
緩和ケア
社会的痛み(経済や財産の課 ・家族・仲間やソーシャルワーカーらによるケア
題、社会的役割喪失への不安)
霊的痛み
・宗教的ケア
(後悔や死・消滅への恐怖)
第Ⅱ部 グリーフケア
グリーフ
茫然自失
LDTグリーフワークをはじめ様々な方法がある。
第1段階
第2段階
第3段階
また様々なサポート団体がある。
怒り
http://www.gendai-kuyo.com/grief.html
(自責等)
(日本古来の法要もそうか。
抑うつ
四十九日:故人が極楽へ着いた日。納骨、形見分け。
百ヶ日:悲しみへの区切りの日
第4段階
受け入れ、癒し、
一周忌:喪明け(参列者との新たな付き合いの開始)
形骸化しているのか(無宗教の檀家)。)
日常復帰
13
注1:死へのプロセス:エリザベス・キューブラ・ロス女史による。
注2:緩和ケア項目:シシリー・ソンダース女史による。
内容についての一参考は以下。
http://www2.odn.ne.jp/da-kanwa/1_zenjin.pdf
注3:グリーフケアの段階について;
NPO法人グリーフケア・サポートクラブ平山正実氏によると、ケアは
ショック、怒り、抑うつ、立ち直りの4段階にあるとのこと。
出典:http://bereaved.namidaame.com/bereaved01.html
4段階説にしても、説により内容や定義が異なる(例えばNPO法人日本
グリーフケア協会の説)
。
なお第2段階の“怒り”は、不慮の死などの場合ではあるまいか。
このほか3段階説(急性期、中期、回復期など)等がある。
上記の表は平山説の用語を、より分かりやすく試みたものである。
以下に垣添忠夫“妻を看取る日”の例を紹介する。
“妻を看取る日”より(夫妻の心情により葬儀は行われなかった)
没後3ヶ月
茫然自失(酒浸り)
、うつ状態(やる気起こらず)
3ヶ月後
生活改善を始める
6ヶ月後
生活リズムが戻り始める。妻の絵の遺作展を企画・準備。
9ヶ月後
6∼9ヶ月、気持ちが大分上向きになる。登山再開。
12ヶ月後
新しいこと(居合など)にチャレンジ
遺作展を開催
“妻を看取る日”を書き始める
以上は3段階のように思われる(覚悟があり“怒りの段階”は生じないのでは?)。
初期
当初3ヶ月(茫然自失)
中期
3∼6ヶ月(日常への復帰に取り組むものの、うつが継続)
回復期
6∼12ヶ月(遺作展企画が心の整理の始まり、開催が弔い)
4段階でいえば2段階がなく1・3段階が当初の6ヶ月。4段階が6ヶ月∼
12ヶ月。
14
法要でいえば百ヶ日や一周忌は意味をなすようにも思われる。日本古来のケアも
儀式化形式化せず、意義を噛みしめながら行うと“グリーフケア・ワーク”の装いに
なるのではないだろうか。
(2)利用側についての考察
利用側の環境の整備につき、その支援を専門の市民または得意な、あるいは訓練
された市民により行われることは適切なことではないだろうか。コンシェルジュは
必要である。
さらに、専門の市民または得意な、あるいは訓練された市民によるボランティアの
領域があるものと思われる。
4
おわりに
最期に、医療・看護・介護に恵まれる中、すい臓がんの伴侶を看取った実体験からの、
課題を以下に紹介する。
「最後のときを迎えるときの患者 の悟った心と生きようとする体との戦 いは熾烈なものが
ある。これを調和させるにはどうしたらよいかが今後の課題だと思 う。」
(出典:優美記念財 団体験談「我 が家の 在宅医療」両角智弘
http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/main/taikendan3.html)
以上
15
[編集後記]
報告のように11∼1月にかけ講座を自主開催した。この講座アンケートに「終末
ケア施設の現状が知りたい」とする要望が記されていた(氏名は不詳だが)
。
このことが契機となり講座受講者でもあった鈴木さんに“簡単な解説”を願ったのが
当季刊誌の原稿であり、今般の目玉でもあります。現状が「よく分かった」でありま
しょう(受講者には配布済)
。鈴木さんにはあらためて御礼もうしあげます。
3月に入りまだまだ寒さが残っておりますが、間もなく春。
河津桜はすでに咲き、すぐモクレンも咲きましょう。咲く花にむせるのも近日でしょう。
それでは皆さんお元気でご機嫌よう、花粉にはご注意あれ。
来年度の投稿をお待ちしております。
(ホームページ“壁紙村”より)
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