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加工適性に優れた水稲紫黒糯の新品種「峰のむらさき A New
愛 知 農 総 試 研 報 39: 111-1 20(20 07) Res.B ull.Aichi Agric.R es.Ctr. 39:1 11-12 0(20 07) 加工適性に優れた水稲紫黒糯の新品種「峰のむらさき」 坂 * * 紀 邦 ・寺 島 竹 彦 ・ 工藤 遠藤征馬 ** ・城田雅毅 悟 ** ・ 加 藤 恭宏 ** ・井上正勝 *** **** ・ 杉 浦 和彦 ・大竹敏也 ** * * * ** 摘 要 : 「 峰 の むら さ き 」 は 、 1996年 に 愛 知 県 農業 総 合 試 験 場 山間 農 業 研 究 所 ( 農林 水 産 省 水 稲 育 種 指 定 試験 地 ) に お い て「 イ 糯 413」 を 母と し 、 「 奥 羽 糯349号 」 を 父 と して 人 工 交 配 さ れ た 後 代 から 育 成 さ れ た 。赤 色 み り ん 等 の加 工 適 性 に 優 れる 紫 黒 糯 米 品 種 であ る 。 1 本 種 は 、 「 朝 紫」 、 「 ヒ メ ノ モチ 」 級 の 早 生 の 晩に 属 す る 。 稈 長は 中 、 穂 長 は 中、 穂 数 は 中 位 で あ る 。草 型 は 、 中 間 型を 示 し 、 稈 性 は 中位 で あ る 。 収 量性 は 高 い 。 玄 米は や や 長 で 見 か けの 品 質 は 良 く 、玄 米 千 粒 重 は 「朝 紫 」 よ り も 2g 重 い 。 2 本 種 は 玄 米表 面 の 果 皮 に 「朝 紫 」 と 同 じ 紫黒 色 の ア ン ト シア ン を 蓄 積 す る 。 3 い も ち 病 真性 抵 抗 性 の 推 定遺 伝 子 型 は 、 Pia 、 Pii と 推 定 され る 。 圃 場 抵 抗 性は 、 葉 い も ち で は 、 やや 強 、 穂 い も ちは 、 や や 弱 で ある 。 障 害 型 耐 冷性 は 弱 で あ る 。 キ ー ワ ー ド : 「峰 の む ら さ き 」、 紫 黒 米 、 ア ント シ ア ン 、 米 加工 適 性 A New Purple Grain Glutinous Rice Variety " Minenomurasaki " for Rice Processing SAKA Norikuni, TERASHIMA Takehiko, K UD O Sa toru, KATO Takahiro, SUG IURA K azuhiko, END O Ikum a, SHIRO TA Masaki, INOUE Masaka tsu and O TAKE T oshiya A bstract: Minenom urasa ki was a glutinous ric e variety with pur ple gra in developed a t the Aichi Agric ultural resea rch center in 200 7. This var iety w as selected from the progeny of the cr oss betw een Im oti-41 3 and pur ple gra in rice O uu-m oc hi 349 (Asam ur asa ki). It possesses goood rice processing for c olored Millin, colored rice w ine, or other a dditives. 1 . T he va riety, belongs to the early m aturing group like Asam ur asaki and Himenom ochi. T he plant is of the medium type, moder ate resistance to lodging and m edium high sta bility in yielding.The ker nel size is of the medium long group w ith good appearance. Its thousand kernel weight is comparatively ab out 2 g heavier than Asam urasaki. 2 . The variety possesses da rk pur ple(anthocya n pigment) gr ain pericarp sam e as Asamura saki. 3 . It has true resista nc e genes to blast Pia , Pii and medium high field resista nc e to lea f b last. How ever , f ield resista nc e to panicle blast and cool tem pera ture toler ance are low. K ey Words: Minenomurasaki, P ur ple grain, Anthocyan, Rice processing 本 品 種は 農 林 水 産 省 水稲 育 種 指 定 試 験事 業 の 一 環 と して 育 成 さ れ た 。 * 山 間農 業 研 究 所 **** ** 山間 農 業 研 究 所 (現 作 物 研 究 部 ) 元山間農業研究所 ***** *** 山 間 農 業 研究 所 ( 現 農 業 大 学校 ) 山 間 農 業 研 究 所 (現 環 境 基 盤 研 究 部 ) (2007.9.11 受 理 ) 坂ら : 加工 適性 に優 れた 水稲 紫黒 糯の 新品 種「 峰の むら さき 」 2 緒 言 11 2 育 成経 過 育 成 経過 を表 1 及び 図 2に 示 す。 国 民 の 食生 活 に お け る 多 様化 が 進 む に つ れ 、米 の 需 要 は減 少 し、 2004年 で は一 人 当た り 米の 年 間消 費 量は 61.5kg/年と な り、 最 も多 か った 1962年 (118kg/年 )の 半 あ系103B (黄金晴) F1 北陸1 03号 愛知糯91号 愛知糯27号 1 , 2) 恵糯 ふ系102号 重 要 な 役割 を 担 っ て い る 。 ま た、 急 峻 な 国 土の 中 で 水 田 の 治 水機 能 等 の 多 面 的 役割 が 評 価 さ れ 、 水田 の 有 2) 効 利用 の 必要 性 が求 め られ て いる 。 こ の よ うな 背 景 か ら 農 林 水産 省 で は 、 新 た な米 の 需 要 を 創 出 し、 多 様 化 し た 消 費者 ニ ー ズ に 応 え るた め に 「 新 形 質 米」 の 開 発 を 進 め 、低 ア ミ ロ ー ス 米 、高 ア ミ ロ ース 米、GABA米( 巨大 胚、糖質 米)、有色 素 米( 赤 米、 愛知56号 (月の光) 愛知37号 (青い空) 分 近 く ま でに な っ て い る 。 しか し 、 米 は 国 民 の主 要 な 供 給 カ ロ リー 源 で あ り 、 食 生活 の 変 化 に 伴 う 栄養 バ ラ ン ス の 乱 れや 生 活 習 慣 病 の 増加 等 へ の 対 応 と して 米 は 峰のむらさき タツミモチ F1 BP−1 (バリ島在来紫黒米) F6東糯396 中部糯57号 (ココノエモチ) 82Y5-3 (奥羽3 16号) トヨニシキ 図1 有 色 素 米 の育 成 に 対 す る 要 望が 多 い 。 ま た 、 愛知 県 中 山 間 地 域 にと っ て 水 稲 を 利 用し た 新 た な 地 域 特産 物 の 開 発は 、 地域 の 活性 化 のた め の重 要 な課 題 であ る 。 こ の た び、 こ れ ら の 要 望 に応 え る こ と が で きる 「 峰 の む ら さ き」 を 育 成 し た の で、 こ こ に そ の 育 成経 過 と 特 性の 概 要を 報 告す る 。 表1 次 1996 代 交配 交配 栽植系統群数 栽植系統数 (個体数) 15粒 系統内個体数 選抜系統数 年次 1996 1997 世代 交配 F1 「峰 の むら さ き」 の 育成 経 過 1997 1998 1999 2000 2001 F1 F2-3 F4 F5 F6 15 1998 1999 F2・3 F4 と 栽 培 安 定性 の 結 合 を 目 標 とし 、 母 本 に は 、 良質 ・ 多 収 の糯 系 統「 イ 糯413」を 選 定し 、 父本 に はバ リ 島在 来 種 「BP-1」 に 由来 す る 紫黒 米 形質 を 導 入 し た 「 奥 羽 糯 349号( 後の 「 朝紫 」)」 を選 定し 、 交配 ・ 選抜 を 行っ た 後 代 か ら育 成 さ れ た。「 イ糯 413」 は 、 そ の 良 質・ 多 収 性 を系 譜 上か ら 推定 す ると 「 愛知 56号( 月 の光 )」に 由 来 す る と 考え ら れ 、 栽 培 安 定性 が 高 い 。 紫 黒 米形 質 を 持 つ「 奥 羽糯 349号 ( 後の 「 朝紫 」)」は 、 独立 行 政法 人 東 北農 業 研究 セ ンタ ー で育 成 され て いる 。 F5 F1 奥羽糯349号 BB B 5 6 ......... 育 種 目標 と 来歴 図1 に 「峰 の むら さ き」 の 系譜 を 示す 。「峰 の むら さ き 」 は 、 米の 新 規 需 要 拡 大 のた め に 特 徴 の あ る新 形 質 2000 2001 2002 1 2 3 4 イ糯413 / 2002 2003 2004 2005 F7 F8 F9 F10 世代促進 選抜 系統 系統 6 5 8 5 6 15 15 18 34 20 24 1460 23 46 46 46 46 46 15 6 5 8 5 6 2 稲系糯971 中部糯114号 育種目標及び育成経過 1 奥羽331号 (ふくひびき) 「 峰 のむ ら さき 」 の系 譜 紫 黒 米品 種 ・系 統 こ の う ち、 有 色 素 米 は 「 古代 米 」 と 称 し た 在来 種 や 紫 黒 糯 米 品種 「 朝 紫 」 等 が 作付 け ら れ 、 こ れ らを 原 料 と した 加 工品 等 は「 地 域 おこ し」の材 料 とな っ てい る。 年 世 奥羽糯349号 (朝 紫) コチヒビキ 曲系872 1 ,2 ) 愛 知 県 でも 有 色 素 米 の 作 付が 小 面 積 で は あ るが 行 わ れ 、 餅 の 着色 や 菓 子 等 に 加 工さ れ 、 地 域 特 産 物と し て 販 売 さ れ てい る 。 し か し 、 上記 の 有 色 素 米 は 収量 性 が 低 く 、 脱 粒性 等 の 欠 点 も 多 いた め 、 栽 培 安 定 性の 高 い イ糯64 ア糯96 中部糯37号 紫 黒米 )、 香り 米等 が 数多 く 育成 さ れて い る 。 これ ら は 作 付 面 積は 少 な い が 、 全 国各 地 で 作 付 け さ れ、 こ れ 2 - 5) ら を 加 工原 料 と し た 地 域特 産 物 の 開 発 等 も 盛ん に な っ てい る 。 ま た 、 有 色素 米 の 赤 や 紫 黒 の色 素 は 、 糠 層 に ある ポ リ フ ェ ノ ー ルの 一 種 で 、 抗 酸 化作 用 を 持 つ た め に健 康 食 2 ,4, 6) 品 とし て の需 要 も高 ま って い る 。 イ糯413 愛知56号 (月の光) トヨニシキ 15 F6 1 2 3 4 2003 2004 2005 F7 F8 F9 F10 1 1 2 2 3 4 稲系糯971 1 2 3 4 3 4 5 6 7 8 9 1 1 2 2 3 3 4 4 1 1 2 3 4 1 2 3 4 2 3 4 10 峰のむらさき 中部糯114号 図 2 「 峰 のむ ら さき 」 の育 成 (選 抜 )経 過 □ :選 抜 した 系 統を 示 す 113 愛 知 県 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 第 39号 交 配 (1996年):8 月 に せん 穎 法 によ り F 1種 子 を 15粒 得 2 た。 F 1( 1997年 ):F 1 世代 15個体 を 圃場 で 養成 し た。 F 2∼ F 3( 1998年):宮 崎 県総 合 農業 試 験場 に てF 2∼ F 3を 世 (1) 早晩 性( 出 穂・ 成 熟期 ) 育 成 地( 山 間 農業 研 究所 豊田 市)にお け る成 績( 表 2、3、 5)で は、本 種 の出 穂 ・成 熟 期は「 朝紫 」、 「ヒ 代 促進 を 行い 、 F4 世 代種 子100gを得 た 。 F 4 (1999年 ):1460個 体を 圃 場 で養 成 し 、稔 実 の 良い 紫 黒 糯を 15個体 、 選抜 し た。 F 5( 2000年):単 独 系 統と し て 15系 統 栽 培し 、 紫 黒色 の メノ モ チ 」 と 同 等 で 、育 成 地 で は 「 早生 の 晩 ( 温 暖 地 中山 間)」 に 属す る 。 (2) 草型 稈 長 は、 育成 地 の成 績 (表 3 )で は 、「朝 紫 」と 同 等 発 色が 優 れる 6 系統 を 選抜 し た。 F 6 (2001年 ):系 統 栽 培で 6 系 統群 、 15系統 を 供 試し 、 い も ち 病 抵抗 性 等 を 加 味 し なが ら 、 紫 黒 色 の 発色 が 優 かや や 短く 、中 で ある 。 節間 の 構成 は 、「朝 紫 」に 似 る (表 8)。 穂 長は 「 朝紫 」 より や や長 く 、中 で ある 。 穂 相調 査( 表 9) から 、粒着 密 度は「 朝 紫」よ りや や 疎、 れ る5 系 統を 選 抜し た 。 F 7( 2002年):系 統 栽 培で 5 系 統群 、 18系統 を 供 試し 、 栽 培 特 性 等に 留 意 し な が ら 、紫 黒 色 の 発 色 が 優れ る 8 系 統を 選 抜し た 。そ の うち 、 1系 統 に「 稲 系糯 971」 と 「ヒ メ ノ モ チ 」 と ほ ぼ同 等 で あ る 。 穂数 は 「 朝 紫 」 よ りも や や 多 げ つ で 、 中で あ り 、 草 型 は中 間 型 に 属 す る (図 3)。 出 穂後 の 草姿 は 止葉 が やや 垂 れる こ とか ら 、 やや 不 良で ある 。 付 名し 、 奨励 品 種決 定 予備 調 査に 供 試し た 。 F 8( 2003年):系 統 栽 培で 8 系 統群 、 34系統 を 供 試し 、 諸 特性 に 優れ る 5系 統 を選 抜 した 。 この う ち、「 稲系 糯 脱 粒 性 は 難 で 、 籾 には 少 程 度 に や や短 芒 を 有 し 、 籾 は紫 、 ふ先 色は 淡 紫色 で ある ( 表2 )。 (3) 耐倒 伏性 及 び障 害 抵抗 性 971」を 付名 し た群 が、紫 黒糯 と して 多 収で あ った た め、 「 中部 糯 114号 」を 付 名し 、 奨励 品 種決 定 本調 査 に供 試 し た。 稈 の 細 太 は 中 、 剛 柔の 程 度 は 中 で あり 、 耐 倒 伏 性 は 中で あ る ( 表 2 、3 )。 耐 冷 性 は 弱( 表 16、 17 )、 穂 発 芽性 は 「朝 紫」 よ りも 優 れ、 難 に属 す る( 表 18)。 F 9∼ F 1 0 (2004∼ 2005年 ):奨 励 品 種決 定 本調 査 を 継続 す る と と も に愛 知 県 内 現 地 試 験、 山 梨 県 の 奨 励 品種 決 定 調 査に 供 試し た 。 F 1 1(2006年 ):「 中 部糯 114号 」 は、 2006年 11月 に愛 知 県 (4) 収量 性 育 成 地 で は 、 収 量 は「 ヒ メ ノ モ チ 」と 同 等 ∼ わ ず か に多 く 、「 朝 紫 」 より も 11% 程 度 多 収 であ る ( 表 3)。 多肥 栽 培で は、「 朝 紫」 よ りも 7 %程 度 多収 で ある ( 表 職 務育 成 品種 認 定会 議 で育成 品種として 認められ、 2007 年 5 月 に 名称 協 議 申 請 を 行 い、 協 議 後 8 月 に 「峰 の む ら さき 」 とし て 種苗 登 録出 願 した 。 5)。 愛知 県 中山 間 地帯 で の現 地 試験 で は、 設 楽町 津 具 では 「 朝 紫 」 と ほ ぼ 同等 、 設 楽 町 名 倉で は 「 朝 紫 」 よ りも 6 %多 収で あ る( 表 6)。 愛 知県 長 久手 町 にお い て 試験結果及び特性概要 も「 朝 紫」 より 多 収で あ る( 表 7)。 (5) 玄米 形質 ・ 品質 玄 米 千 粒 重 は 「朝 紫 」 よ り も 2.0g以 上重 く 、 玄 米 の 1 試 験 成績 各 地 で 行わ れ た 奨 励 品 種 決定 本 調 査 並 び に 特性 検 定 試 験 の 成 績は 以 下 の と お り であ る 。 な お 、 試 験成 績 中 の 育成 地 は当 場 山間 農 業研 究 所を 示 す。 特 性の 概要 形状 は、や や 長で あ る( 表 10、図 4)。粒 色 は、 「 朝 紫」 と同 じ 紫黒 であ り 、見 掛 けの 品 質は 、「 朝紫 」 並み で あ る( 表 4 、 図 4)。 粒の 厚 さ は 、「 朝 紫」 と ほ ぼ 同 等 で ある ( 表10 )。 (6) 食味 小 型 と う 精 器 に よ ると う 精 試 験 の 結果 、 適 と う 精 時 間は 30秒程 度で あ り、「 朝 紫」、「 ヒメ ノ モチ 」 より も 短 いが 白 度は やや 低 い( 表 19)。 峰のむらさき 図3 朝紫 「 峰の む らさ き 」の 立 毛草 姿 ヒメノモチ 図4 峰のむらさき 朝紫 「峰 の むら さ き」 の 籾及 び 玄米 坂ら : 加工 適性 に優 れた 水稲 紫黒 糯の 新品 種「 峰の むら さき 」 11 4 食味 試 験は 、基 準 の「 ヒ メノ モ チ」に比 べ 劣っ た が、 推定 さ れる (表 11 )。圃 場 抵抗 性 は、 葉 いも ち では 、 や 「 朝紫 」とほ ぼ 同等 で ある( 表20 )。タン パ ク質 含 量は 、 「 朝紫 」 より も やや 高 い傾 向 があ る (表 21)。 (7) 耐 病性 や強 、 穂い もち は 、や や 弱で あ る( 表 12、 13 )。 縞 葉 枯病 には 、 罹病 性 (表 14 )、紋 枯 病抵 抗 性は 中 で ある ( 表15 )。 い も ち病 真 性 抵 抗 性 の推 定 遺 伝 子 型は 、 Pia , Pii と 表2 一 般特 性 調査 (育 成 地) 稈 品 種 名 芒 早 晩性 峰 のむらさき 細太 剛柔 多少 長短 芒色及 び ふ 先色 ふ色 粒着 密度 脱 粒性 の 難易 早生の晩 中 中 少 や短 紫 淡紫 中 難 (比)朝紫 早生の晩 中 中 少 や短 紫 淡紫 中 難 (参)ヒメノモチ 早生の晩 中 や柔 稀 極短 黄白 黄白 中 難 表3 出 穂 期 成 熟 期 登 熟 日 数 稈 長 穂 長 (月.日 ) 7.28 7.28 7.27 (月.日 ) 9.07 9.06 9.04 日 41 40 39 cm 76 77 79 cm 19.2 18.8 20.3 品 種 名 峰 のむらさき (比)朝紫 (参)ヒメノモチ 生育 ・収 量( 育 成地 病害 の多 少 倒伏 の 同 左比 較 精玄 米重 多少 穂い ご ま 紋枯 比率 葉枯 病 もち 病 2 kg/a % 本/m 376 2.5 0.3 0.0 0.3 63.9 111 321 1.4 1.4 0.0 0.7 57.6 100 323 2.1 1.0 0.2 0.3 63.1 110 穂 数 注 . 移 植期 平 均( 月/日 )5/15、 倒 伏、 病害 の多 少 (0∼ 5 表4 品 種 名 品質 峰のむらさき (比)朝紫 (参)ヒメノモチ 注 . 品 質 (1∼ 9 品 種 名 峰のむらさき (比)朝 紫 (参)ヒメノモ チ (参)ココノエ モチ 玄 米 調査 (育 成地 分 級):0( 無) ∼ 5( 甚 ) 2002∼2005年 ) 光沢の多少 未熟の多少 茶米の多少 胴割の多少 穂発芽の多少 3.8 3.3 3.8 4.7 4.7 5.0 0.3 0.2 0.2 0.1 0.1 0.4 0.3 0.2 0.2 分 級 ):上 の 上(1)∼ 下の 下 (9)、 4 =食 糧 事務 所検 査 1等 相 当 表5 出 穂 期 2002∼2005年 ) 成 熟 期 (月.日) (月.日) 7.27 9.07 7.26 9.06 7.24 9.02 7.29 9.09 注. 表示 の基 準 は表 3に 準 ずる 多 肥栽 培の 生 育・ 収量 (育 成 地 登 熟 日 数 日 41 40 40 39 稈 長 穂 長 穂 数 cm 77 81 91 78 cm 19.1 18.5 21.5 19.2 本/m 365 366 379 397 0.1 0.1 0.2 そ の他 : 0(無 ) ∼5( 甚) 2004∼2005年) 病害の多 少 倒伏の 同左 比較 ごま 紋枯 精玄米重 穂い 多少 比率 葉枯 病 もち 病 品質 2 3.2 1.9 3.0 1.6 窒 素施 肥 量: 標肥 対比 3 割増 0.4 1.0 0.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.7 0.8 0.8 0.3 60.3 56.0 76.6 72.1 107 100 129 128 3.5 3.3 4.5 3.9 115 愛 知 県 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 第 39号 表6 試 験場所 品種名 年 出穂期 成熟期 稈長 穂長 次 穂数 cm cm 78 17.7 本/m 347 650m (比 )朝紫 設楽町名倉 600m 峰のむらさき 峰のむらさき 倒伏 穂い 精玄米 同左対 玄米 の多 重 照比率 千粒重 もち 少 品質 有望度 3.0 △ '03 8.10 (月. 日) 9.21 8.10 9.19 80 17.4 278 0.0 1.0 39.2 100 18.0 3.5 '06 8.05 9.18 75 17.6 372 0.0 0.0 64.3 106 20.6 4.0 8.04 9.18 74 16.8 398 0.2 0.0 60.9 100 18.9 3.8 (月.日) 設楽町津具 愛 知県 内現 地試 験 の生 育・ 収量 (比 )朝紫 2 0.0 kg/a % g 0.5 39.0 99 19.8 表7 品 種 名 峰のむらさき (対)恵糯 峰のむらさき (比)朝紫 (対)恵糯 注. 愛 知 県平 坦地 域( 長 久手 町) の生 育 ・収 量(作 物研 究部 2003∼2005年 ) 登 病害の多少 出 成 倒伏 玄米 熟 稈 穂 穂 精玄 同左比 穂 熟 の多 穂い 縞葉 年次 千粒 日 長 長 数 期 期 少 もち 枯病 米重 較比率 重 数 g (月.日) (月.日) 日 cm cm 本/m 2 2003 7.20 8.24 35 83 18.5 418 1.0 0.0 0.0 45 81 20.1 7.20 8.29 40 81 19.8 360 0.5 0.0 0.0 55.4 100 18.9 7.14 8.16 33 84 19.4 390 0.1 0.0 0.0 52.2 99 22.2 200 4 -2 005 7.13 8.14 32 84 19.1 364 0.1 0.0 0.0 45.2 86 20.5 平均 7.15 8.23 39 85 20.1 402 0.8 0.0 0.0 53.4 100 19.5 ○ 品質 は、 表4 に 準ず る 品質 有望 度 g 5.3 5.3 5.9 6.0 5.8 △ ○△ 有望 度 は、 ◎: ごく 有 望、 ○: 有 望、 △: 並、 × :見 込み なし 表8 節間 長( 育成 地 2005年 ) 節 間 長 品 種 名 峰のむらさき 穂長 稈長 cm 19.8 N0 N1 N2 N3 N4 N5 cm 31.7 cm 18.8 cm 12.6 cm 5.7 cm 1.0 cm 0.0 cm 69.8 (比)朝紫 20.1 32.1 21.4 14.1 7.3 0.4 0.0 75.3 (参)ヒメノモチ 20.8 39.1 21.8 10.2 3.9 0.6 0.0 75.6 注. 系統 栽 培の 材料 稈長 順上 位3 本 、5 株、 計15本 測定 表9 穂 相( 育 成地 2005年) 枝梗数 品 種 名 穂長 一穂粒数 枝梗別籾着粒数割合 粒着密度 1次 2次 2次 % 50.7 % 49.3 峰のむらさき cm 19.8 粒 109.0 粒/cm 5.5 本 9.2 本 18.5 (比)朝紫 20.1 139.7 7.0 12.1 23.3 53.3 46.7 (参)ヒメノモチ 20.8 117.2 5.6 8.7 21.9 43.6 56.4 注. 系統 栽 培の 材料 品 種 名 1次 稈長 順上 位3 本 、5 株、 計15本 測定 表 10 玄 米の 形状 (育 成 地 2005年) 長さ/幅 長さ×幅 長 さ×幅 ×厚さ 粒形 粒大 粒色 光沢 長さ 幅 厚さ 千粒重 峰のむらさき やや 長 中 紫黒 良 mm 5.65 mm 2.87 mm 2.05 1.97 15.96 32.76 g 23.7 (比)朝 紫 やや 長 やや 小 紫 黒 良 5.34 2.84 2.05 1.88 15.14 30.97 21.1 (参)ヒメノモチ 中 中 白 良 5.25 2.98 2.17 注 .奨 励品 種 決定 調査 の 材料 粒 厚分 布 のモ ード 値を 20粒測 定 1.76 15.60 33.79 23.7 坂ら : 加工 適性 に優 れた 水稲 紫黒 糯の 新品 種「 峰の むら さき 」 表 11 いも ち 病真 性抵 抗性 ( 育成 地 品 種 名 峰のむらさき 新2号 愛知旭 藤坂5号 表12 葉 い もち (育 成 地 品 種 名 峰のむらさき 朝紫 ヒメノモチ ココノエモチ 中部105号 中部101号 峰ひびき ホウレイ 東北IL2号 黄金晴 ミネアサヒ 003 R S S R 縞葉 枯病 抵 抗性 (作物 研究 部 2003∼ 2004年) 2002年 ) 推定 遺伝子型 007 S S S S 2003∼2005年) 推定 平均 抵抗性 遺伝子 発病 評価 型 程度 Pia,Pii 5.1 ○△ Pia 5.3 ○△ Pik 4.8 ○ Pia 5.2 ○△ r Pia,Pii 3.3 ○ mr Pia,Pii 4.7 ○ mr Pia,Pii 5.2 ○△ m Pia,Pii 5.5 ○△ ms Pia,Pii 8.4 △× ms Pia,Pii 7.6 △× ms Pia,Pii 8.0 △× 注 . 発 病程 度: 0(無 )∼10(甚) 判 定基 準: ごく 強 (◎ )、強 (○)、 やや 強(○ △)、 中 (△ )、や や弱 (△× )、弱 (×)、 ごく 弱(× ×) 表 14 接種菌株 005 R S R S 表13 Pia,Pii + Pia Pii 穂 い もち (育 成 地 品 種 名 峰のむらさき 朝紫 ヒメノモチ ココノエモチ サチイズミ ヨネシロ あきたこまち 藤坂5号 中部45号 トドロキワセ 注. 峰のむらさき あさひの夢 日本晴 発病 率 % 76.5 21.5 90 表 15 紋 枯病 抵抗 性 (鹿 児島 農試 表16 障害 型耐 冷性 (育成 地 出穂 品 種 名 峰のむらさき 朝紫 ヒメノモチ ココノエモチ はなの舞 サチイズミ みやにしき レイメイ アキヒカリ とみちから 森田早生 注. 2003∼ 2005年 ) 不稔 表 17 評価 は、 表12に 準ず る 歩合 % 55 33 32 21 21 28 40 52 59 54 82 r rm m ms s 出穂 発病 期 月・日 7.12 7.28 7.27 7.26 7.24 7.26 度 % 29 0 7 24 35 59 × ○△ ○△ ○ ○ ○ ○△ △ × × × 評価 程度 7.8 8.7 5.2 3.3 3.7 6.5 7.7 8.4 3.5 4.8 △× △× ○△ ○ ○ △ △× △× ○ ○△ 峰のむらさき トドロキワセ オオトリ コガネヒカリ アキホマレ トヨニシ キ 注. 2004年) 評価 障 害型 耐冷 性 (宮 城県 古川 農試 品 種 名 期 月・日 8.05 8.05 8.05 8.10 8.03 8.04 8.02 8.02 8.03 8.04 7.31 抵抗 性 評価 抵抗性 rr r rm m ms s ss 品 種 名 峰のむらさき WSS3 北陸糯181号 夢十色 日本晴 多収系772 注. R:抵 抗 性、 S:罹 病 性 発病 表 示は 、表 12に準 ずる 評価 S R S 2003∼2005年) 推定 出穂 遺伝子 抵抗性 型 期 月・日 Pia,Pii 8.07 Pia 8.07 Pik 8.04 Pia 8.11 Pia,Pii rm 8.04 Pii m 8.03 Pia,Pii ms 8.07 Pii s 8.01 Pii r 8.13 Pii rm 8.06 平均 品 種 名 11 6 △ ○ ○△ △ △× × 2003∼2005年) 出穂 不稔 評価 期 月・日 8.16 8.08 8.15 8.14 8.14 8.16 歩合 % 95 39 55 62 61 78 × ◎ ○ ○△ ○△ △× 抵抗性 rr r rm m ms 評 価は 、 表12に準 ず る 117 愛 知 県 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 第 39号 表18 穂 発 芽性 (育 成地 2002∼2006年 ) 発芽 品 種 名 評価 歩合 % 8.8 15.6 95.6 32.1 48.0 29.4 23.1 峰の むらさき 朝紫 ヒメノモ チ ココノエ モチ あきたこまち チヨニシキ ミネアサ ヒ 注. 採 穂: 出穂 後50日 ○ ○△ × ○ △ ○△ ○ 発 芽温 湿度 : 27℃ 、湿 潤状 態 判 定基 準: ご く難 (◎ )、難 (○)、 やや 難(○ △)、 中(△ )、 や や易 (△× )、易 (× ) 表 19 供 試玄 米 水 分(%) 白度 品 種 名 注. と う精 試験 (育 成 地 峰 のむらさき 16.3 4.4 (対)朝 紫 15.6 4.8 (比)ヒメノモ チ 15.0 29.6 白度 : ケッ ト 調 査項 目 と う 精 歩 合 (%) 胚 芽残存 歩合 (%) 白 度 と う 精 歩 合 (%) 胚 芽残存 歩合 (%) 白 度 と う 精 歩 合 (%) 胚 芽残存 歩合 (%) 白 度 2006年) と う 精 時 間 25秒 30秒 35秒 40秒 45秒 88.0 87.4 86.7 85.7 11.5 8.5 4.4 2.9 21.4 22.7 24.7 24.6 87.0 86.0 85.3 84.4 12.9 9.9 7.7 5.5 26.3 27.7 29.4 30.2 90.4 89.7 88.8 86.4 14.5 13.9 8.2 7.1 50.9 52.9 52.8 53.3 C-300で測 定 と う精 : ケッ トTP-2型、 50g 、2 反 復 □: 適 とう 精時 のと う 精歩 合を 示す 表 20 食 味官 能 検査 (育 成地 2006年) 食味評価項目 品 種 名 玄米 とう精 水分 歩合 白度 総合 % 14.8 16.1 15.2 -0.75 * -0.88 * -0.13 -0.67 * -0.96 ** -0.27 0.00 0.00 0.00 峰のむらさき 朝紫 (対)ヒメノモチ 表 21 % 85.1 85.8 84.9 タン パク 質 含量 (育 成地 品 種 名 29.7 24.4 59.4 滑らかさ うま味 粘り 硬さ (歯ご たえ) -0.42 -0.17 0.00 -0.21 -0.29 0.00 -0.13 -0.04 0.00 2003∼2005年 ) 玄 米タンパ ク質含 量 2003年 2004年 2005年 平均 峰の むらさき 8.7 7.5 8.0 8.1 朝紫 8.5 7.3 7.4 7.7 ヒメノモチ 8.2 7.8 8.7 8.2 ココノエモチ 8.0 7.5 7.6 7.7 注. 外観 近 赤 外分 析計 に よる 峰のむらさき 図5 一般糯米 「 峰の む らさ き」 を 使っ た赤 色み り ん ( 愛知 県 食品 工業 セ ンタ ー 原図 ) 「 峰の む らさ き」を用 いた み りん は、鮮赤 色を 呈 して いる 。 坂ら : 加工 適性 に優 れた 水稲 紫黒 糯の 新品 種「 峰の むら さき 」 3 他 府 県に お ける 試 験成 績 2 11 8 「 峰の むら さ き」 の 加工 適 性 紫 黒 糯米 の 要 望 の あ った 山 梨 県 に 2004∼2005年 に か け て 配 付 した 。 主 な 有 利 形 質は 外 観 品 質 、 不 利な 形 質 と し て は 比較 品 種 が 粳 種 の 「ひ と め ぼ れ 」 の ため 、 収 玄 米 に 色 が 着 い た 米に は 、 タ ン ニ ン系 の 赤 米 と ア ン 8) トシ ア ン系 の紫 黒 米 が あ る。 色 素は と もに 糠 層に あ る ため 、 完 全 に と う 精 する と 白 米 と な る。 こ れ ら は 、 と 量 であ っ た( 表 省略 )。 う精 せ ず に 混 米 と し て利 用 し た り 、 糠を 一 部 分 残 し て とう 精 あ る い は パ ー ボイ ル ド ( 蒸 煮 )し て 色 素 を 胚 乳 部分 に 移 行 さ せ た 後 にと う 精 す る 利 用法 、 色 素 を 抽 出 して 利 用 す る 方 法 等 によ り 、 色 つ き の飯 米 、 餅 、 酒 あ 考 1 察 「 峰 のむ ら さき 」 の普 及 及び 栽 培上 の 注意 愛 知 県 の山 間 ・ 中 山 間 地 域の 水 田 は 、 標 高 差が 大 き く 、 気 象 条件 も 異 な る た め 、小 面 積 を 数 品 種 で分 割 し て い る 。 この た め 、 ロ ッ ト が小 さ く て も 産 地 の特 長 を 生 か し た 差別 化 、 高 付 加 価 値化 で き る 品 種 へ の要 望 が 高 い 。 近 年、 消 費 者 の 健 康 志向 か ら 、 農 産 物 の機 能 性 成 分 が 注 目さ れ 、 抗 酸 化 物 質で あ る ア ン ト シ アン 含 量 の 高 い 紫 黒米 等 の 色 素 米 の 生産 が 開 始 さ れ て いる 。 当 所 で は 、 愛知 県 食 品 工 業 技 術セ ン タ ー と 共 同 で、 色 素 米 を使 っ た新 し い特 産 品の 開 発を 行 い、 「 峰 のむ ら さき 」 を 使 っ て 、 従 来 に 無 い 赤 色 の み り ん の 醸 造 方 法 7 )を 開 発 した ( 図5 )。 こ の た め、 古 代 米 と 呼 称 し導 入 さ れ て い た 脱粒 し や す い 等 の 不良 な 栽 培 特 性 を 有す る 在 来 の 紫 黒 米糯 に 替 え て、「 峰の む らさ き 」を 作 付け る こと に より 、 栽培 安 定 性の 高 い特 産 米生 産 が可 能 とな る。更に 、赤 みり ん、 赤 酢 等 の 少量 で も 特 徴 の あ る加 工 産 品 の 生 産 が可 能 と な り 、 山 間・ 中 山 間 地 域 振 興に 貢 献 で き る と 考え ら れ 2, 3,6 ) るい は 製菓 原料 と して 利 用す る 。 また 、 色素 米 の玄 米中 に は 各 種 ビ タ ミ ン類 や 鉄 、 カ ル シウ ム 等 の 有 用 無 3 , 9) 機成 分 に 富 む も の が あり 、 健 康 食 品 とし て も 期 待 さ れて い る。 有 色 素 米 の 加 工 方 法に つ い て は 、 紫黒 米 か ら の 色 素 6) 6) 10 ,11 ) 抽出 法 、 着色水飴の 製造法 、赤 米からの赤 酒製造法 等が あ る 。 こ の 他 、 有色 素 米 の 色 素 を利 用 し た 赤 餅 、 3, 4, 12, 13 ) 赤飯 、 粥等 数 多く の 加工 食 品が 既 に販 売 され て い る( 図 6)。 12 ) 「峰 の む ら さ き 」 は 、 紫 黒 色 素 を 「 朝 紫 」 に 由 来 する 。「朝 紫 」は 日 本で 最 初に 育 成さ れ た紫 黒 糯米 で あ る。 有 色 素 米 の 先 駆 けと し て 全 国 で 作付 さ れ 、 そ れ に 伴い 上 記 の 加 工 食 品 の国 民 の 認 知 度 も高 ま っ て い る 。 「 峰 のむ らさ き 」は 、「 朝紫 」 の収 量 性を 改 善し た 品 種で あ る と 言 え る 。 加工 原 料 と し て 、生 産 者 の 収 入 を 向上 さ せ る た め に 反 収の 増 加 は 最 も 効果 の あ る も の で 14 ) ある 。 ま た、 伊 藤 は 、「 峰の む ら さき 」 の アン ト シ ア ン含 量 は「 朝紫 」 より 高 いと し てい る 。 る。 上述 の とお り 、本 種 は愛 知 県の 標 高150∼600mの山 間 ・ 中 山 間 地帯 に 適 す る と 考 えら れ 、 在 来 の 紫 黒糯 に 代 替 する 。 普及 見 込み 面 積は 5 haで あ る。 50 生 産 地数 栽培 上 の注 意 点は 次 のと お りで あ る。 (1) 耐 冷性 は 弱い の で、 冷 害の 恐 れが あ る山 間 高冷 地 へ の導 入 は避 け る。 10 0 玄米 0.4 5 00 0.1 菓子 原料 その他 加工 原料 全国 の有色 素米生 産地で の生産 物販売 形態 ( 1998 4) 年 )新 形質 米 の生 産 ・流 通 の取 組 事例 集 改図 。 総栽 培 面積 は、81ha 。観 賞用 で の有 色 素米 栽 培は 除 く。 6 00 0.2 酒造 用 図6 0.5 0.3 30 20 T P値(ppm) AE値(⊿E;OD520) (2) 穂 い も ち 抵抗 性 は 弱 い の で適 期 防 除 に 努め る 。 (3) 耐 倒伏 性 は中 程 度の た め、 過 肥を 慎 む。 (4) 一 般米 に 混入 し ない よ う、 隔 離、 専 用機 械 の使 用 等 が必 要 であ る 。 40 4 00 3 00 2 00 1 00 0 0 長久手町 (標高80m) 豊田市稲武町 (標高505m) 設 楽町津具 (標高650m) 長久手町 (標高80m) 豊田市稲武町 (標高505m) 1 4) 設楽町津具 (標高650m) 図 7 産地 ( 標高 )別 の「 峰 のむ らさ き」 の 機能 性成 分 含量 (伊 藤 改 図 ) 玄 米試 料に 対 し、 5倍量 の20%エ タ ノー ル(pH3.5: クエ ン酸 緩 衝液 )で 色素 を 抽出 した 。(25℃、 5時間 ) AE値: アン ト シア ニン 相 当値 を示 し、 重 亜硫 酸塩 によ る 色素 の退 色を 表 す。( ⊿OD520) TP値: 総ポ リ フェ ノー ル 量を 示し 、タ ン ニン 酸換 算で 表 した 。 119 愛 知 県 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 第 39号 用 水路 な ど 3- 5 m離 す 紫 黒 米 の 花 粉 が 一 般 品 種 に 交 雑 した ら 隣 接 する 品 種 の 出 穂 期 は 1 0 日 以上 離 し たい 隣 接 す る 場 合 、8 -1 2 条 は 種 子 に しない 紫 色 が 優 性 なの で、 苗 の 葉 舌 色 が 薄 紫 に な る こ れ は 、生 育 が 進 む に つ れ 、 濃 く なる の で移 植 前苗 箱中で 抜き取 る 一 般 品 種 の 花 粉 が 紫 黒 米 に 交 雑 した ら 果 皮 色 も 優 性 な の で 、 F3 世 代 (F 2 個 体 )ま で識 別 困 難 図8 異品 種が 隣 接す ると きの 「 峰の むら さき 」 採種 条件 図 7 に 産地 ( 標 高 ) 別 の 「峰 の む ら さ き 」 の機 能 性 成 分含 量 を示 し た。 AE 値 、 TP値 と もに 標 高が 高 くな る に つ れ 、 数値 が 上 昇 し て い る。 こ れ は 、 ア ン トシ ア ン 1 5,1 6) 種の 出 穂期 を10日 以上 離 すこ と 、② 隣接 す る場 合 には 、 隣接 す る8 ∼12条 は種 子 にし な いこ と 、③ 異品 種 とは 、 用水 路 等を 挟み 、 最低 3 ∼5 m離 すこ と が必 要 であ る 。 含 量は 登 熟温 度 が低 い と多く 蓄積される ことによる 。 こ の よ うに 「 峰 の む ら さ き」 の 特 徴 で あ る 、機 能 性 成 分 含 量 を高 め る に は 、 登 熟温 度 の 低 い 、 山 間・ 中 山 こ の 条 件 で も 異 品 種に 本 種 が 交 雑 する 場 合 が あ る 。 この 場 合 に は 、 紫 色 が優 性 な の で 、 苗の 葉 舌 色 が 薄 紫 にな り 、 生 育 が 進 む につ れ 、 濃 く な るの で 移 植 前 の 苗 間 地域 で の普 及 が望 ま しい 。 1 4) 伊 藤 は、「峰 の む らさ き 」 を用 い た 赤色 み り んは 、 従 来 の み りん に 比 べ 、 pHが 低く 、 酸 度 、 ア ミ ノ酸 度 が 箱 中で 抜 き 取 る こ と が 出 来 る 。 一 方 、 本 種 に 異 品 種 19 ) が 交 雑 し た 場 合 に は 、 果 皮 色 も 優 性 な の で 、 F3 世 代 (F 2個 体 )ま で 識別 困 難と な る。 高 い 傾 向 があ り 、 ク エ ン 酸 が高 く 、 タ ン パ ク 質、 遊 離 ア ミ ノ 酸、 GABAを 豊 富 に 含 む とし て い る 。 機 能性 に つ い て は 、 赤色 み り ん は 、 総 ポリ フ ェ ノ ー ル を 赤ワ イ ン 並 に 含 み、 SOSA( ス ー パ ー オ キシ ド ア ニ オ ン 除去 ) 活 ま た 、 本 種 は 耐 冷 性、 穂 い も ち 抵 抗性 が 不 十 分 で あ る。 こ の た め 、 冷 害 の危 険 性 の な い 採種 地 の 選 定 と い もち 病 の徹 底防 除 が必 要 であ る 。 図 8 に こ れ ら を ま とめ 、 本 種 の 採 種条 件 を 示 し た 。 性 も 赤 ワ イン と 同 等 で あ る とし て い る 。 ま た 、赤 色 み り んは 赤 ワイ ン に比 べ ACE( ア ンギ オ テン シ ン変 換 酵素 ) 阻 害 活 性 が高 い と し て い る 。更 に 赤 色 み り ん の飲 用 利 紫黒 粳 品種 「お く のむ ら さき 」 の例 で は、 花 粉は 25.5m 18) ま で飛 散 す る こ と が 観 察 さ れ て い る 。 現 場 の 混 乱 が ない よ う、 関係 者 の指 導 管理 の 徹底 が 望ま れ る。 用 、 み り ん干 し の 際 の 抗 酸 化性 や 脱 臭 効 果 に も有 効 で あ ると し てい る 。 2007年 現 在 、愛 知 県 内 の 2 社に 赤 色 み り ん の製 造 法 4 1 8) 命 名の 由来 山 間 ・ 中 山 間 地 域 の水 田 が 本 種 に よっ て 紫 色 に 輝 く の 特許 許 諾を 行 い、「 峰の む らさ き 」の 栽 培も 開 始さ れ た 。 本 種 が愛 知 県 山 間 ・ 中 山間 地 域 の 新 た な 地域 特 産 物 に貢 献 する こ とを 願 って や まな い 。 様子 を イメ ージ す る。 3 22に 示 す。 「 峰 のむ ら さき 」 の混 種 ・採 種 につ い て 「 峰 の むら さ き 」 の 導 入 に際 し て 最 も 注 意 すべ き 点 は 、 混 種 であ る 。 一 般 米 に 有色 素 米 が 混 入 す ると 規 格 外 と な り 、米 価 は 著 し く 低 下す る 。 こ の た め 、本 種 の 栽 培 に つ いて は 、 ① 一 般 品 種と 隔 離 で き る 圃 場で 栽 培 す る 必 要 があ る こ と 、 ② 収 穫・ 乾 燥 調 整 を 本 種専 用 に す る 必 要 があ る こ と 、 ③ 漏 生株 の 混 入 を 防 ぐ ため に 圃 場 も 毎 年 同じ に す る 必 要 が ある こ と 等 の 条 件 が必 要 と な る。 や む を 得ず 、 本 種 を 栽 培 した 圃 場 で 異 品 種 を作 付 け 5 育 成者 と従 事 期間 本 種 の育 成に 関 与し た 担当 者 と、 そ の従 事 期間 を 表 表22 年次 世代 氏名 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 交配 F 1A1 F 1A2 F 1A3 F 1A4 F1A5 F1A6 F1A7 F1A8 F 1A9 F 1A10 工藤 悟 備 考 現 作物研究部 坂 紀邦 現在員 ○ 4月 城田雅毅 ○ 現 作物研究部 4月 る 場 合 に は、 漏 生 株 の 除 去 方法 と し て 、 ① 「 峰の む ら さ き 」 は 極早 生 で あ る こ と から 、 秋 期 た ん 水 で発 芽 さ せ て し ま う方 法 や ② 耕 起 時 期を 遅 ら せ 、 雀 等 に籾 を 食 寺島竹彦 べ さ せ る 機会 を 与 え る 方 法 、③ 移 植 前 に 除 草 剤を 使 用 し 、出 芽 した 籾 を除 去 する 方 法が あ る。 1 7) 採 種 条 件 と し て 、 栽 培 と 同 様 に① 圃 場 の 団 地 化 、 ② 毎 年 同 じ品 種 を 作 る こ と 、③ 収 穫 ・ 乾 燥 調 整を 専 用 杉浦和彦 に す る こ とが 必 要 で あ る 。 採種 圃 場 は 、 ① 隣 接す る 品 育成 者 と従 事 年 現在員 ○ 4月 加藤恭宏 現 農業大学校 ○ 3月 遠藤征馬 大竹敏也 ○ ○ 4月 3月 現 作物研究部 ○ ○ 4月 3月 現 作物研究部 現 環境基盤研究部 ○ 4月 井上正勝 ○ ○ ○ 4月 4月 3月 元 作物研究所 坂ら : 加工 適性 に優 れた 水稲 紫黒 糯の 新品 種「 峰の むら さき 」 12 0 謝 辞 : 本 種の 育 成 に 当 た り 、愛 知 県 食 品 工 業 技術 セ ン 9. 東 北農 業 研究 セ ンタ ー 作物 機 能開 発 部. 有 色米 の カ タ ー伊 藤 彰敏 主 任研 究 員、深谷 伊 和男 セン タ ー長 に は、 加 工 適 性 につ い て ご 指 導 を 戴い た 。 現 地 適 応 性に つ い て は 、 新 城設 楽 普 及 課 の 加 藤幸 一 普 及 員 及 び 現地 担 当 ル シ ウ ム 含 量 は「 コ シ ヒ カ リ 」 より も 多 い . 研 究 成 果 情 報 No.20 平成17年度 東北 農業水 稲(土 壌肥 料 ). 23, 45-46(2005) 農 家 か ら 多大 な ご 協 力 を 戴 いた 。 ま た 、 品 種 登録 に 関 し て 愛 知 県農 業 経 営 課 か ら 多大 な ご 指 導 を 戴 いた 。 こ こ に記 し て、 こ れら 各 位に 深 甚の 謝 意を 表 しま す 。 10. 前 川 季 義 , 新 家 龍. 赤 米 色素 の 性質 と 赤 米を 原 料 と し た清 酒製 造 試験 . 醸協 . 84(11), 787-793(1989) 11. 高 橋 康 次 郎 , 吉 沢 淑. 赤 米色 素 とそ れ を 利用 し た 酒 類 の製 造. 醸 協. 82(10), 740-744(1987) 引用文献 12. 東 正 昭, 山 口 誠 之, 小 山 田善 三 , 春 原 嘉 弘 , 小 綿 寿 志 , 田 村泰 章 , 横 上 晴郁 , 佐々 木 武彦 , 阿部 真 三, 松 永 和 久, 岡 本 栄 治, 狩 野 篤 , 池橋宏, 荒木均.紫 黒 1. 石 谷孝 佑 , 平尾 正 之 , 平 泉 光一 . 第 4章 食 環 境 の 変 化 と米 の 食 味 ・ 嗜 好 の 変化 . 美 味 し い 米第 3 巻 . 21 世紀に向けた美味 しい米の開発戦略.( 櫛渕欽也監 修). 農林 水 産技 術 情報 協 会. 東 京. p.85-114(1997) 2. 農林 水産 省 農林 水 産技 術 会議 . 新た な 用途 を めざ し た 稲の 研 究 開 発 . 農 林水 産 研 究 開 発 レポ ー ト 18. 東 京. p.1-18(2006) 3. 堀末 登, 石 谷孝 佑 . 第 5 章新 し い形 質 を導 入 した 新 形質 米 品種 の 開発 と 利用 の 展望 .美 味し い 米第 3 巻. 21世 紀 に向 け た美 味 しい 米 の開 発 戦略 . (櫛 渕 欽也 監 修) .農 林 水産 技術 情 報協 会 .東 京.p.115-136(1997) 4. 農林 水産 技 術情 報 協会 . 新形 質 米の 生 産・ 流 通の 取 組事 例 集. 東 京. p.1-46(2001) 5. 滝田 正, 東 正昭 , 山口 誠 之, 横 上晴 郁 , 片 岡 知守 , 田 村泰 章 , 小 綿 寿 志 , 小 山田 善 三 , 春 原 嘉弘 . 紫 黒 米粳 品 種「 お くの む らさ き 」の 育 成. 東 北農 試 研報 . 98, 1-10(2001) 6. 農林 水産 技 術会 議 事務 局 .需 要 拡大 の ため の 新形 質 水田 作 物の 開 発. 研 究成 果 . 340, p.1-176(1999) 7.「赤 色 みり ん 及び そ の製 造 方法 」 特願 2005-305277. 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