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プロモーション価格設定

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プロモーション価格設定
連 載
データを収益に変えるためのマインドウェア「BIO」
Vol. 5
プロモーション価格設定
先進的な小売業は、
BIO:Business Improvement Opportunities
(経営改善課題)
を設定し、
1. 目的 2. 分析 3. 行動 4. 効果の
アプローチを取ることにより、データウェアハウスを武器にして、
データを収益に変える手法を身につけている。
明細データを活用することによって、
経営改善課題に対して、
どのように挑んでいくべきかを紹介する。
1. 目的
BIOの
アプローチ
4. 効果
2. 分析
3. 行動
前
回は、グロサリーチェーンに
おける欠品の最小化に対する
であれば、プロモーションを実施する価
分 析
アプローチをご紹介したが、
このグロサリーチェーンにおいて実施さ
る。逆に価格を下げても効果のない商品
2
値はないということになる。ここからそ
これらの課題を改善していくために、 もそも価格を下げる価値があるかを判定
れた課題改善のアプローチを、もう一つ
このチェーンでは過去のプロモーション
することが可能である。次に実施するべ
ご紹介していく。
がどのように実施されてきたのかを分析
きは、バスケットレベルでの効果の把握
していった。これは、目的として掲げた
である(表2)
。その他の商品の購買を
の価格設定に関するアプローチである。 粗利を低減させてしまう悪い価格設定を
牽引できる商品であれば、単品での粗利
このチェーンでは、プロモーション時の
認識し、ポリシーとして組み込むこと
がターゲットを下回っていてもバスケッ
価格設定に対して明確なポリシーを持っ
と、価格に対する消費者の反応を認識
トレベルでの粗利がカバーしてくれるこ
ておらず、結果的にはプロモーション時
し、効果が高い価格はどこなのかを理解
とになる。ここから、単品レベルでの分
の粗利のコントロールが実施できない状
することが、分析のテーマとなった。こ
析で効果があるのかを把握するととも
態であり、結果的に特定のプロモーショ
こでは代表的な分析例を4点挙げていき
に、バスケットレベルでの牽引度が高い
ン商品が常に赤字になっている等の事態
たい。最初に実施した分析は、プロモー
商品であるか、プロモーション期間の終
が発生していた。これを改善するために
ションの前中分析である(表1)
。価格
了後反動が発生する商品であるかなども
データウェアハウスを活用し、価格設定
を下げて販売することにより、反応の高
併せて把握し、適切な価格設定であった
を最適化することに取り組むことになっ
い商品であればプロモーションの効果が
かを確認し、次のプロモーションへ活か
た。
期待できる商品であるということができ
すことも可能となる。3点目の分析が価
今回ご紹介するのは、プロモーション
1
目 的
このチェーンが目的として掲げたこと
表1 プロモーション前中分析(単品)
店舗A、
プロモーションID=11
商品 メトリック
は2つであった。1つめは、プロモーシ
プロモ前
売上数量 売上金額 粗利金額
プロモ中
粗利率
売上数量 売上金額 粗利金額
粗利率
ョンにおける粗利金額、粗利率を改善す
商品A
30
9,000
4,500
50%
80
16,800
4,800
ることであった。このために2点目とし
商品B
20
7,600
4,000
53%
50
9,500
500
5%
商品C
20
7,200
3,600
50%
24
6,000
1,680
28%
て、プロモーション商品を選定した後、
29%
…
プロモーションの価格を設定する際のポ
リシーを確立し、粗利を最大化させるこ
とができるようにすることが必要であっ
た。逆の言い方をすれば、現在散見され
表2 プロモーション前中分析(バスケット)
店舗A、
プロモーションID=11
商品 メトリック
る、粗利を低下させてしまうような価格
設定や販売方法を排除することによっ
13
商品A
プロモ前
平均粗利率
バスケット数 平均買上点数
/バスケット /バスケット
26
7.5
45.3%
プロモ中
平均粗利率
バスケット数 平均買上点数
/バスケット /バスケット
75
10.2
39.5%
商品B
18
5.6
45.1%
43
16.4
42.9%
て、結果的に粗利を改善することがその
商品C
19
4.9
39.8%
23
6.3
29.1%
目的と言えよう。
…
表3 価格履歴の分析
店舗A、商品D、
2003年第11週∼第14週
日
メトリック
改善したり、プロモーションの計画、価
格設定に役立てることが可能となった。
売上数量
売上金額
粗利金額
2003年第11週
10
32,000
17,000
粗利率
53.1%
平均売単価
3,200
2003年第12週
15
42,000
19,500
46.4%
2,800
2003年第13週
30
75,000
30,000
40.0%
2,500
2003年第14週
32
67,200
19,200
28.6%
2,100
4
効 果
最終的にこのチェーンでは、プロモー
ション時の粗利率を2%改善させること
に成功した。プロモーションの効果は、
格履歴の分析である(表3)
。過去販売
に、同一期間に一斉に各店舗で違う販売
単品ベースであれば、プロモーション対
してきた履歴の長い商品であれば、それ
タイプを実施した例として用意している
象商品の粗利率がどのように改善したの
ぞれの価格設定においていちばん反応が
が、実際には店舗規模などが異なるた
かを把握し、プロモーション対象商品の
高い価格はどこなのか、そして粗利金額
め、類似する条件を幾つか試行した中か
売上金額とかけ合わせることによって把
ベースで最大化できる価格はどこなのか
ら比較することが必要となる。
握することが可能となる。売上金額ベー
を理解することが可能となる。純粋に価
格を下げれば売上数量が直線的に上がる
売業であればあるほど、粗利率のポイン
行 動
のであれば物事は簡単だが、実際はそう
ではない。競合の価格設定、消費者が感
スでのプロモーション依存度が大きい小
3
ト改善が小さくとも効果は高くなる。逆
このグロサリーチェーンにおいては、 に粗利金額をキーとなる効果項目として
じる価格合理性等によっても売上数量は
販売方法を比較した場合に、セット販売
考えるのであれば、粗利率の低下以上
左右され、特定の価格以下にすることに
がもっとも効果の高い販売方法であるこ
に、売上数量、売上金額を最大化できれ
よって急激に売上数量がスパイクするこ
とを認識し、販売方法のメーンにセット
ば、絶対的な粗利金額を最大化させるこ
とも有り得るし、逆に、ある一定の価格
販売を据えることになった。当然ながら
とが可能となる。これは単品ベースでの
以下にしても売上数量が伸びないことも
個別のチェーンや扱い商品によって最も
効果測定方法であるが、バスケットレベ
有り得るのである。また、こういった価
適切な販売方法は異なるため、個店、個
ルでの効果測定でも考え方は同じであ
格の変化に伴って売上数量と粗利率は変
別商品ごとの分析によって一番効果の高
る。プロモーション対象商品が含まれる
化する。結果的には粗利金額ベースで最
い販売方法を策定することが必要にな
バスケットをその効果の対象として、バ
大化するポイントを理解することが必要
る。また、前回ご紹介した欠品の最小化
スケットあたりの粗利率の平均がどの程
となるであろう。またメーカーからのプ
における事例同様、計画した粗利金額を
度改善したのか、またはバスケットあた
ロモーション協賛金等が存在するのであ
達成していない商品に関しては、例外ベ
りの売上金額、バスケット数がどの程度
れば、これらも考慮に入れて算出する必
ースでのアラートを発生させ、商品担当
増加したのかを把握することにより、プ
要があるであろう。積極的に考えれば実
者に注意を促した。商品担当者は、店舗
ロモーションの波及効果をバスケットレ
績データをベースにして、メーカーにと
において当初決定した販売価格を下回る
ベルで把握することが可能となる。
っても効果の高いプロモーション計画を
販売をしていないか、または売上数量が
逆に提案することも可能となる。最後の
思わしくないためにプロモーションの効
次回は、クロスチャネル効果の最大化に
分析は、販売タイプ別の分析である。金
果が伸びない店舗がどの程度存在してい
関するBIOのアプローチに関してご紹介
額値引、パーセント割引、そしてセット
るかをチェックし、各店舗におけるプロ
していく。
販売(例えば2個パックで販売等)とい
モーション活動を微調整しながらプロモ
った販売タイプごとにどの販売タイプの
ーションの効果を最大化させるようにコ
効果が高いかを分析した(表4)
。商品、 ントロールすることが可能となった。ま
店舗ごとに過去の販売タイプごとの実績
た、分析例にてご紹介したようなレポー
山本泰史
を比較し、効果の高い販売タイプを理解
トを本部の商品担当者だけではなく、個
することが必要となるであろう。例示し
店で分析できる環境を用意し、個店でも
たレポートでは、わかりやすくするため
レポートを把握して、プロモーションを
日本NCR株式会社テラデータ事業本部
流通事業部マーケティング担当
BIOに関しての詳細は以下のURLから
http://www.teradata-j.com/solution/sol2_0104.html
表4 販売タイプ別分析
店舗A/B/C、2003年3月、商品E
販売タイプ
店舗
メトリック
売上数量
売上金額
粗利金額
粗利率
平均売単価
1,350
パーセント値引
店舗A
50
67,500
17,500
25.9%
金額値引
店舗B
45
60,750
15,750
25.9%
1,350
セット販売
店舗C
78
106,080
28,080
26.5%
1,360
14
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