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視野障害を伴う眼疾患(緑内障)における運転への 影響の定量的把握
視野障害を伴う眼疾患(緑内障)における運転への 影響の定量的把握に関する研究 ― 平成 26 年度(本報告) タカタ財団助成研究論文 ― ISSN 2185-8950 研究代表者 佐藤 健治 研究実施メンバー 研究代表者 一般財団法人 日本自動車研究所 副研究員 佐藤健治 報告書概要 近年の緑内障に関する疫学調査によると,40 歳以上の 20 人に 1 人が緑内障に罹患し ているといわれており,高齢化が進む国内においてはさらに緑内障患者の増加が想定さ れる.緑内障はタイプや症状の進行状況により社会生活において影響が様々であり,特 に,自動車の運転に関しては詳細な影響が把握されていない.自動車の運転は視覚情報 への依存度が高いことから,患者への社会生活のサポートや運転支援の開発のために, 運転への影響を把握しておくは重要である.そこで本研究では,緑内障における運転へ の影響を把握するために,ドライビングシミュレータを用いて運転行動を計測した.実 験では通院中の緑内障患者と健常者に協力を得て運転行動を比較した.緑内障患者にお いては症状の進行状況を示す視野検査結果と運転行動の関係性を分析した.実験結果か ら,緑内障患者は症状が進行していると健常者よりも危険対象物(飛出し歩行者等)へ の回避行動が遅れる傾向が見られた.また,緑内障患者の視野検査結果が危険対象物の 飛出し位置によって回避行動に影響する結果が示された.本検討から,左眼が正常でも 右眼の視野障害の進行状況によって回避行動に影響する傾向が見られた.今後は,緑内 障の視野検査結果から社会生活のサポートへ繋げていくため,本実験での実験条件に加 えて,症状の進行状況と運転行動について追加分析が必要である.これらの研究結果を 通じて,緑内障患者への安全運転教育や運転支援の方策等へ繋げていくことを目指して いる. 目次 視野障害を伴う眼疾患(緑内障)における運転への影響の定量的把握に関する研究 第1章 はじめに 1.1 研究背景 1.2 研究目的 第2章 運転行動計測実験 2.1 実験概要 2.2 実験参加者 2.3 実験装置 2.4 実験条件 2.4.1 実験条件 1 2.4.2 実験条件 2 2.5 計測指標 2.6 実験手順 1 2.7 実験結果 2.7.1 実験条件 1 (1)データ取得状況 (2)衝突割合 (3)緑内障患者と健常者のドライバ行動の比較 (4)緑内障患者の症状の分類によるドライバ行動の比較 (5)個々の視野障害程度とドライバ行動の関係 2.7.2 実験条件 2 (1)データ取得状況 (2)衝突割合 (3)緑内障患者と健常者のドライバ行動の比較 (4)緑内障患者の症状の分類によるドライバ行動の比較 (5)個々の視野障害程度とドライバ行動の関係 第3章 まとめと考察 3.1 まとめ 3.2 今後の課題 参考文献 2 第1章 はじめに 1.1 研究背景 一般的に自動車の運転は認知,判断,操作という手順を踏んで運転している.認知は ある対象を知覚し,判断する為の重要な過程である.視覚的な知覚とは,眼が捉えた光 の情報が脳へ伝送され情報処理されることである.眼疾患によって視覚に何らかの不全 が生じると,認知へ悪影響を及ぼすばかりではなく,判断,操作へも影響を及ぼすこと により交通事故へ至る危険性が懸念される.眼疾患のなかで緑内障は視神経に異変が起 き,視野が狭くなったり(視野狭窄),部分的に見えない範囲(視野欠損)が生じるな どの視野障害が現れる.緑内障の症状の特徴として,進行が緩徐であることや視力の低 下が症状初期では現れないことから,自覚症状がほとんどないために潜在的な緑内障患 者が懸念されている.近年の緑内障に関する疫学調査によると,40 歳以上の 20 人に 1 人が罹患していると報告がされており 1),高齢化が進む国内においてはさらに患者の増 加が想定される.先行研究では視野障害が高度であるほど交通事故に至る可能性が高い と報告されており,視野障害が交通事故要因の一つではないかと考えられている 2).そ うした緑内障による運転への影響を把握するために,視野検査結果とドライビングシミ ュレータ(以下,DS)の事故件数との関係性が検討されている 3).そこでは,ある特 定の視野範囲における視野検査結果と事故件数には相関がある可能性が指摘された.ま た,運転中の視線行動を分析した研究では,実写映像を用いたハザード知覚テストを行 い,緑内障患者は健常者よりも注視やサッケード運動を多くしていることが確認された 4).このように近年,緑内障に関する運転への影響を把握する研究が多方面で進められ ているものの,通院中の緑内障患者に対して社会生活へのサポートや安全運転への教育 など十分な状態とは言えない.そこで本研究では,緑内障患者に対して有効な運転支援 方策や安全運転への教育的知見に役立てることを目標とした. 1.2 研究目的 本研究では,緑内障による運転への影響を定量的に把握するため,緑内障患者と健常 者の運転行動を計測し,両者の関係や視野検査結果が運転にどのように関与しているか 検討することを目的とした.具体的な手法として,DS と実車(拡張現実実験車)を用 いて,典型的な交通事故再現場面時における危険対象物(飛出し歩行者等)への回避行 動をもとに反応時間や衝突の有無を調べた. 3 第2章 運転行動計測実験 2.1 実験概要 緑内障による運転への影響を把握するため,DS と実車(拡張現実実験車)を用いて 運転行動の計測を行った.緑内障はタイプや症状の進行状況によって社会生活の影響が 様々であることから,運転への影響も個人によって異なる可能性がある.本実験では, 2 つの実験条件し,緑内障の運転への影響を確認した. 2.2 実験参加者 実験は通院中の緑内障患者 9 名(平均年齢 60.3±10.9 歳)と健常者 10 名(平均年齢 60.0±12.6 歳)で実験を行った(表 1,表 2).緑内障患者は研究協力者である眼科医 の担当患者に実験の協力を得た.健常者は事前に眼科医指導のもと緑内障診断を実施し, 正常眼であることを確認した.緑内障患者及び健常者は本研究に協力する前にインフォ ームド・コンセントを得て実施した.また,本研究で扱う実験は,実験の内容及び安全 性について,事前に(一財)日本自動車研究所の定める倫理審査委員会にて審議し,承 認を得た. 表 1 実験参加者一覧(緑内障患者) No. 性別 年齢 MD 値[dB] 視力 運転歴 年間走行距離 [歳] [年] [km] 左眼 右眼 左眼 右眼 G1 M 75 50 10,000 0.9 1.2 -8.89 -17.44 G2 M 59 39 5,000 1.2 0.9 -18.64 -25.48 G3 M 63 43 25,000 1.2 0.5 -8.19 -1.58 G4 M 67 51 10,000 1.2 0.6 -16.96 1.59 G5 M 64 44 26,000 1.2 1.2 -3.55 -14.43 G6 M 57 39 7,000 0.9 0.8 -14.01 -10.19 G7 M 55 35 6,000 1.2 0.9 -25.86 0.46 G8 M 36 16 10,000 1.2 1.2 -10.52 -11.06 G9 M 67 49 18,000 0.8 0.3 -8.58 -6.58 ※ MD(Mean Deviation)値は Humphrey 視野検査 30-2 プログラム検査結果であり, 視野の欠損の程度を表す.負の値が正常値以下を表しており,一般的に 0 から-6dB 以上を初期,-6 から-12dB 間を中期,-12dB 以下を後期と分類されている. 4 表 2 実験参加者一覧(健常者) No. 性別 年齢 MD 値[dB] 視力 運転歴 年間走行距離 [歳] [年] [km] 左眼 右眼 左眼 右眼 H1 M 52 36 50,000 1.0 0.9 0.61 1.24 H2 M 65 42 5,000 0.8 0.9 -0.9 -0.07 H3 M 74 54 15,000 0.7 1.2 -2.79 -0.74 H4 M 67 39 20,000 0.7 0.9 0.56 -0.1 H5 W 74 34 5,000 0.8 0.8 -0.9 -0.91 H6 M 35 17 25,000 1.2 1.5 -1.74 -0.8 H7 M 50 29 25,000 1.2 1.5 0.38 0.93 H8 M 67 42 1,000 0.7 0.8 -0.05 -1.22 H9 M 50 29 30,000 1.0 1.0 -1.73 0.26 H10 M 66 41 3,000 0.6 1.0 -0.65 -0.44 2.3 実験装置 本研究で用いた実験装置について下記に示す. (1)全方位視野ドライビングシミュレータ 全方位視野 DS は(一財)日本自動車研究所所有の実験装置である.360°のスクリー ンに 6 軸動揺装置機構と実車ボディを搭載している(図 1) .また,回転テーブル機構を 備わっており,交差点の右左折に応じて,実車ボディがヨー方向に回転する仕組みにな っている.運転者への視覚情報は全方位から提供されるため,実験環境への没入感が高 く実際に走行しているような感覚が得られる.あらゆる交通状況(他車両や歩行者等) や交通環境(道路環境,道路形状等)の模擬を行い,運転者の運転行動を計測すること ができる.運転者は車両のステアリング,アクセル及びブレーキペダルを操作してバー チャル空間を運転することができる. 図1 全方位視野DSの構成及び外観 5 (2)拡張現実実験車 拡張現実実験車(以下,JARI-ARV)は(一財)日本自動車研究所所有の実験装置で ある.JARI-ARV の外観を図 2 に,車内から見た前方の状況を図 3 示す.実車の運転 席前方のモニタに車両前方の映像が表示されており,運転者はそれを見ながら実車を運 転することができる.本装置は拡張現実技術を用いて,運転者前方のモニタに,実写風 景の映像に加えてコンピュータグラフィック(以下,CG)を付加することができる(図 4) .CG はあらかじめ測定したテストコース座標をもとに車両の位置情報と照らし合わ せることで,CG の大きさや方向を計算して映像を出力する.車両の位置情報の取得に は GPS 情報を用いる.位置情報の誤差を最小限にするために,Real Time Kinematic – Global Positioning System(以下、RTK-GPS)方式を用いる.これにより,バーチャ ル空間と現実空間とを高精度に結合することを可能にしている. 図 2 JARI-ARV の外観 図 3 JARI-ARV の前方風景 6 図 4 JARI-ARV の拡張現実技術の概略 2.4 実験条件 2.4.1 実験条件 1 ここでの検討では,交通死亡事故の人対車両事故について着目し,緑内障による運転 への影響を調べた. 歩行者横断中に発生する交通死亡事故は全交通死亡件数の約 25.6% 6)と高い割合を示しており,緑内障による影響を確認する方法を検討した.歩行者の横 断方法は,いくつかパターンがあり,本検討では突発的に物陰から歩行者が車道に飛出 す場面を設定した.歩行者の出現位置は,本実験で参加した緑内障患者の視野検査結果 をもとに設定した.緑内障患者の左右眼の視野検査結果を合わせて両眼視野とすると, 中心視に対して水平方向 15°付近に視野の感度が低い箇所が多く見られた (図 5, 図 6) . 通常,両眼が正常であれば,片眼の盲点(マリオット盲点)は両眼視野で補なわれるが, 緑内障の場合,視野障害があることによって盲点が顕在化し視野感度低下の箇所が現れ る.一方,中心視付近(10°以内)では感度が低い症例が見られなかった. 以上の症例から,実験条件 1 では歩行者飛出しは車両進行方向に対して「左から」 「右 から」の 2 条件の飛出し方向と車両進行方向に対して出現する角度「15°」(図 7,図 8)「7.5°」 (図 9,図 10)の 2 条件,合わせて 4 条件実施した.これらの条件は視野 検査結果と車両進行方向に対する出現位置が運転への影響が現れるのか確認するため に設定した. 走行方法として,車両速度 40km/h であることを教示し,車両速度 40km/h を超える 場合はエンジン出力を制限した.走行場面は片側 1 車線の市街地道路を直進方向のみ走 行とした.また,前方への注意(脇見などを防止するため)が向くように先行車を配置 した. 本検討では,車両位置に応じて歩行者の出現位置を正確に出現させる必要があるため, 全方位視野 DS を用いて実験を実施した. 7 図5 G1 の視野検査結果 図6 G3 の視野検査結果 8 図 7 歩行者飛出しイメージ図(出現角度 15°条件) 図8 歩行者飛出し場面時の走行映像(出現角度 15°,出現方向左) 図9 歩行者飛出しイメージ図(出現角度 7.5°条件) 9 図 10 歩行者飛出し場面時の走行映像(出現角度 7.5°,出現方向左) 2.4.2 実験条件 2 ここでの検討では,典型的な交通事故場面における回避行動について着目し,緑内障 による運転への影響を調べた.典型的な交通事故場面として,追突(図 11,図 12), 自転車飛出し(図 13,図 14),歩行者飛出し(図 15,図 16)について 3 条件検討した. 走行方法として,車両速度 40km/h であることを教示し,先行車が存在する場面では 先行車が 30km/h で走行するため,適切な車間距離で走行するように教示した.走行場 面は市街地道路を模擬したテストコースを走行し,可能な限り,対向車両や歩行者を出 現させ,一般の走行環境を再現した. 本検討では,ドライバの回避行動を取得するにあたり,実車感覚得られながら,交通 事故場面を再現できる JARI-ARV を用いて実験を実施した. 自車 先行車(減速度6m/s2) 図 11 典型的な交通事故場面イメージ図(追突条件) 10 図 12 典型的な交通事故場面時の走行映像(追突条件) 図 13 典型的な交通事故場面イメージ図(自転車飛出し条件) 図 14 典型的な交通事故場面時の走行映像(自転車飛出し条件) 11 図 15 典型的な交通事故場面イメージ図(歩行者飛出し条件) 図 16 典型的な交通事故場面時の走行映像(歩行者飛出し条件) 2.5 計測指標 計測項目として,表 3 に示すドライバの視認行動及び運転行動,車両の状態量,危険 対象物(CG 歩行者等)の情報を取得した.視認行動はアイマークレコーダ(図 17) (Nac 製 EMR-9)を用いて計測し,危険対象物が出現してから視線が向け終わるまでの時間 を発見反応時間として評価した.運転行動のアクセルペダル操作は危険対象物が出現し てからアクセルペダルをリリースするまでに要した時間をアクセルオフ時間として評 価した.ブレーキペダル操作は危険対象物が出現してからブレーキペダルを踏むまでに 要した時間をブレーキオン時間として評価した.車両の状態量と危険対象物の位置情報 から衝突判定を行ない衝突の有無を評価した. 表 3 計測項目一覧 ドライバ行動 視認行動 危険対象物状態量 車両状態量 (歩行者などの CG) 映像 位置[m] 位置[m] 前方 アクセルペダル操作量[%] 速度[km/h] 速度[km/h] 顔 ブレーキペダル操作量[N] 加速度[m/s2] 加速度[m/s2] 足元 姿勢角[deg] 姿勢角[deg] 12 図 17 視認行動計測 2.6 実験手順 実験はドライバ一人あたり練習走行 5 分程度, 本番走行 15 分程度の走行時間とした, ドライバへの教示は以下の通りに実施した. 現実で起こりうる交通場面(例えば追従走行,車線変更,追い越しなど)における 運転行動を調べるために行います。 普段通りにハンドル,アクセル,ブレーキ操作をしながら運転して下さい。 (運転操 作の仕方は一般の車と同じです) 速度は 40km/h 程度で必要に応じてブレーキや車線変更をお願いします. 2.7 実験結果 2.7.1 実験条件 1 (1)データ取得状況 実験参加者一人あたり,4 条件の飛出し条件を各 3 試行実施し,データ数は 192 デー タ取得した.除外データとして,シミュレータ酔いと見られる症状が発生した実験参加 者,歩行者出現時に脇見をしていた実験参加者,歩行者を注視したものの減速行動しな いデータ(普段の運転を反映できていない可能性がある)は除外した.表 4 及び表 5 に示すように,各条件の取得件数と衝突件数を示した. 13 表 4 データ取得状況(緑内障患者) 歩行者飛出し条件 出現角度 15° No. 出現角度 7.5° 左出現 試行数 右出現 衝突件数 試行数 左出現 衝突件数 試行数 右出現 衝突件数 試行数 衝突件数 G1 3 0 3 0 0 0 0 0 G2 3 3 3 1 0 0 0 0 G3 3 0 3 0 データなし データなし データなし データなし G4 3 0 3 1 0 0 0 0 G5 3 3 3 0 0 0 0 0 G6 3 1 3 1 0 0 0 0 G7 3 0 3 0 0 0 0 0 G8 3 0 3 0 0 0 0 0 G9 3 0 3 0 データなし データなし データなし データなし 27 7 27 3 21 0 19 0 合計 表 5 データ取得状況(健常者) 歩行者飛出し条件 出現角度 15° No. 出現角度 7.5° 左出現 試行数 右出現 衝突件数 試行数 左出現 衝突件数 試行数 右出現 衝突件数 試行数 衝突件数 H1 3 0 3 0 1 0 3 0 H2 3 0 3 0 3 0 3 0 H3 3 1 3 0 2 0 2 0 H4 3 0 3 0 3 0 3 0 H5 3 1 3 0 データなし データなし データなし データなし H6 3 0 3 0 3 0 3 0 H7 3 1 3 0 3 0 3 0 H8 3 0 3 0 2 0 データなし データなし H9 3 0 3 0 データなし データなし データなし データなし H10 1 0 2 0 3 0 3 0 合計 28 3 29 0 20 0 21 0 14 (2)衝突割合 表 6 に示すとおり,緑内障患者と健常者の衝突割合を比較すると,出現角度 15°の 左出現条件では緑内障患者が健常者よりも 15.2%高い割合となった.同様に,出現角 度 15°の右出現条件では健常者の衝突割合 0%に対して,緑内障患者は 11.1%となっ た.どちらの実験条件も緑内障患者の方が健常者よりも高い衝突割合となった.また, 出現角度 7.5°条件はどちらの実験参加者において衝突は見られなかった. 表 6 緑内障患者と健常者との衝突件数の比較 歩行者飛出し条件 出現角度 15° 実験参加者 左出現 出現角度 7.5° 右出現 衝突件数 衝突割合 衝突件数 緑内障患者 7(27) 25.9% 3(27) 健常者 3(28) 10.7% 0(29) 左出現 衝突割合 右出現 衝突件数 衝突割合 衝突件数 衝突割合 11.1% 0(21) 0% 0(21) 0% 0% 0(23) 0% 0(23) 0% ※(試行数) (3)緑内障患者と健常者のドライバ行動の比較 図 18,19 は歩行者出現角度 15°条件における,緑内障患者と健常者の発見反応時間, アクセルオフ時間,ブレーキオン時間の緑内障患者と健常者の平均値を示す.緑内障患 者は健常者に比べ,左出現と右出現どちらにおいても,発見反応時間が 0.5 秒程度遅れ る傾向となった.同様に,アクセルオフ時間とブレーキオン時間は 0.4 秒程度遅れるこ と傾向になった. 3 発見反応時間 反応時間[s] 2.5 アクセルオフ時間 2 ブレーキオン時間 1.5 1 0.5 0 0.96 1.01 1.2 0.45 緑内障患者 0.6 0.8 健常者 実験参加者 図 18 緑内障患者と健常者とのドライバ行動の比較(出現角度 15°,左出現条件) 15 3 発見反応時間 反応時間[s] 2.5 アクセルオフ時間 2 ブレーキオン時間 1.5 1 0.5 0 0.94 1.09 1.3 0.46 緑内障患者 0.71 0.93 健常者 実験参加者 図 19 緑内障患者と健常者とのドライバ行動の比較(出現角度 15°,右出現条件) 図 20,21 は歩行者出現角度 7.5°条件における,発見反応時間,アクセルオフ時間, ブレーキオン時間の緑内障患者と健常者の平均値を示す.緑内障患者は健常者に比べ, 左出現の条件において,0.2 秒程度反応が遅れる傾向となった.右出現の条件において は,発見反応時間が 0.3 秒程度遅れ,アクセルオフ時間とブレーキオン時間は 0.5 秒程 度遅れる傾向となった.ただし,出現角度 7.5°条件の右出現は歩行者出現後から歩行 者に最接近するまでに時間的余裕があるため,運転行動の操作方法に個人差(歩行者に 対して減速する運転方法)の影響が考えられる. 3 発見反応時間 反応時間[s] 2.5 アクセルオフ時間 2 ブレーキオン時間 1.5 1 0.61 0.39 0.5 0 0.84 1.07 0.71 緑内障患者 0.98 健常差 実験参加者 図 20 緑内障患者と健常者とのドライバ行動の比較(出現角度 7.5°,左出現条件) 16 3 発見反応時間 反応時間[s] 2.5 アクセルオフ時間 2 ブレーキオン時間 1.5 1 0.76 0.45 0.5 1.34 0 1.81 0.92 緑内障患者 1.26 健常差 実験参加者 図 21 緑内障患者と健常者とのドライバ行動の比較(出現角度 7.5°,右出現条件) (4)緑内障患者の症状の分類によるドライバ行動の比較 緑内障患者内で症状の程度別に比較するため,2.2 項の MD 値に基づき,中期群と後 期群の 2 種類に分類した(表 7) .図 22 は歩行者出現角度 15°条件における発見反応 時間の平均値を示す.図 22 の左出現条件において,後期群は中期群に比較して 0.7 秒 程度と発見反応時間が遅れる傾向が見られた.右出現条件では中期群と後期群で同程度 の発見反応時間であった.なお,中期群で比較すると左出現よりも右出現の方が 0.3 秒 程度遅れる結果となった.同様に,アクセルオフ時間(図 23)とブレーキオン時間(図 24)も発見反応時間と同じ傾向となった. 表 7 緑内障患者の症状別の分類 分類 対象 患者番号 中期 3名 G3,G8,G9 後期 6名 G1,G2,G4,G5,G6,G7 17 3 中期 発見反応時間[s] 2.5 後期 2 1.5 1 0.5 0 0.51 1.18 0.84 出現角度15°左出現 1.00 出現角度15°右出現 歩行者出現条件 図 22 緑内障患者間の分類による比較(発見反応時間) ア クセルオフ時間[s] 3 中期 2.5 後期 2 1.5 1 0.5 0 0.52 1.24 0.98 出現角度15°左出現 1.15 出現角度15°右出現 歩行者出現条件 図 23 緑内障患者間の分類による比較(アクセルオフ時間) ブレーキオン時間[s] 3 中期 2.5 後期 2 1.5 1 0.5 0 0.75 1.42 1.22 出現角度15°左出現 1.34 出現角度15°右出現 歩行者出現条件 図 24 緑内障患者間の分類による比較(ブレーキオン時間) 18 (5)個々の視野障害程度とドライバ行動の関係 視野欠損程度とドライバ行動の関係として,個々の緑内障患者の MD 値と発見反応 時間との関係を図 25,図 26 に示す.図 26 に示すとおり,右眼の MD 値は歩行者出現 角度 15°の左出現で発見反応時間との関係を回帰式「y = -0.0617x + 0.3724」で示せ た(R2=0.63).MD 値と発見反応時間の関係について,各条件ごとに相関係数をまとめ た表を表 8 に示す.表 8 から,MD 値右眼と出現角度 15°の左出現で発見反応時間と 強い負の相関(-0.79)が見られた.運転行動では,MD 値右眼と出現角度 15°の左出 現のアクセルオフ時間で比較的強い負の相関(-0.68)が見られた(表 9) .また,ブレ ーキオフ時間においても強い負の相関(-0.77)が見られた. 3 3 左15°からの歩行者飛出し 右15°からの歩行者飛出し 2.5 発見反応時間[s] 発見反応時間[s] 2.5 2 1.5 y = 0.0403x + 1.4839 R² = 0.148 1 0.5 2 1.5 y = -0.0003x + 0.9406 R² = 1E-05 1 0.5 0 0 -30 -25 -20 -15 -10 MD値( 左眼)[dB] -5 0 -30 -25 -20 -15 -10 MD値( 左眼)[dB] -5 0 ※回帰式に用いる変数 y:発見反応時間 x:MD 値 図 25 左眼の MD 値と発見反応時間の関係 3 3 左15°からの歩行者飛出し 右15°からの歩行者飛出し 2.5 発見反応時間[s] 発見反応時間[s] 2.5 2 1.5 y = -0.0617x + 0.3724 R² = 0.6303 1 0.5 2 y = -0.0098x + 0.8515 R² = 0.0252 1.5 1 0.5 0 0 -30 -25 -20 -15 -10 MD値( 右眼)[dB] -5 0 -30 -25 -20 -15 -10 MD値( 右眼)[dB] 図 26 右眼の MD 値と発見反応時間の関係 表 8 視野障害程度と発見反応時間の関係(相関行列) MD値(左眼) MD値(右眼) 出現角度15° 左出現 右出現 0.33 -0.01 -0.79 -0.16 19 出現角度7.5° 左出現 右出現 -0.01 -0.36 -0.07 -0.33 -5 0 表 9 視野障害程度と運転行動の関係(相関行列) 出現角度15° 出現角度7.5° 左出現 右出現 左出現 右出現 アクセルオフ ブレーキオン アクセルオフ ブレーキオン アクセルオフ ブレーキオン アクセルオフ ブレーキオン MD値(左眼) 0.15 0.29 -0.02 -0.01 -0.09 -0.12 -0.15 0.00 MD値(右眼) -0.68 -0.77 -0.17 -0.13 -0.09 -0.11 -0.27 -0.18 2.7.2 実験条件 2 (1)データ取得状況 実験参加者一人あたり,典型的な 3 場面の交通事故場面を各 1 試行実施し,データ数 は 53 データ取得した.除外データとして,自転車を注視した後に減速行動しないデー タは除外した.表 10 及び表 11 に示すように,各条件の取得件数と衝突件数を示した. 表 10 データ取得状況(緑内障患者) No. 追突 試行数 自転車飛出し 衝突件数 試行数 歩行者飛出し 衝突件数 試行数 衝突件数 G1 1 0 1 1 0 0 G2 1 0 1 1 0 0 G3 1 0 1 0 0 0 G4 1 0 1 0 0 0 G5 1 0 1 1 0 0 G6 1 0 1 1 0 0 G7 1 0 1 0 0 0 G8 1 0 1 0 0 0 G9 1 0 1 1 0 0 合計 9 0 9 5 9 0 20 表 11 データ取得状況(健常者) No. 追突 試行数 自転車飛出し 衝突件数 試行数 歩行者飛出し 衝突件数 試行数 衝突件数 H1 1 0 1 1 0 0 H2 1 0 1 0 0 0 H3 1 0 1 0 0 0 H4 1 0 1 0 0 0 H5 1 0 1 1 0 0 H6 1 0 1 1 0 0 H7 1 0 1 0 0 0 H8 1 0 データなし データなし 0 0 H9 データなし データなし データなし データなし データなし データなし H10 1 0 1 1 1 0 合計 9 0 8 4 90 0 ※H9 天候不良によりデータなし (2)衝突割合 表 12 に示すとおり,自転車飛出し場面では緑内障患者と健常者の衝突割合を比較す ると同じ傾向となった.追突場面と歩行者飛出し場面ではどちらの実験参加者において も衝突は見られなかった. 表 12 緑内障患者と健常者との衝突件数の比較 追突 出会い頭 歩行者飛出し 実験参加者 衝突件数 衝突割合 衝突件数 緑内障患者 0(9) 0% 5(9) 健常者 0(9) 0% 4(8) 衝突割合 衝突件数 衝突割合 55.6% 0(9) 0% 50.0% 0(9) 0% ※(試行数) (3)緑内障患者と健常者のドライバ行動の比較 図 27 は追突場面における,アクセルオフ時間,ブレーキオン時間の緑内障患者と健 常者の平均値を示す.緑内障患者は健常者に比べ,平均値が 0.1 秒程度早い傾向である が,同程度の結果であった. 21 3 アクセルオフ時間 反応時間[s] 2.5 ブレーキオン時間 2 1.5 1 0.5 0 0.70 1.04 1.20 0.87 緑内障患者 健常者 実験参加者 図 27 緑内障患者と健常者とのドライバ行動の比較(追突場面) 図 28 は自転車飛出し場面における,発見反応時間,アクセルオフ時間,ブレーキオ ン時間の緑内障患者と健常者の平均値を示す.緑内障患者は健常者に比べ,アクセルオ フ時間にバラつきがあるものの,平均時間の差に大きな違いが見られなかった. 3 発見反応時間 反応時間[s] 2.5 アクセルオフ時間 2 ブレーキオン時間 1.5 1 0.5 0 0.66 0.81 0.99 0.61 緑内障患者 0.79 1.03 健常者 実験参加者 図 28 緑内障患者と健常者とのドライバ行動の比較(自転車飛出し場面) 図 29 は歩行者飛出し場面における,発見反応時間,アクセルオフ時間,ブレーキオ ン時間の緑内障患者と健常者の平均値を図 29 に示す.緑内障患者は健常者に比べ,発 見反応時間が 0.15 秒程度遅れる傾向となった.同様に,アクセルオフ時間も 0.15 秒程 度遅れる傾向となった.ブレーキオン時間の緑内障患者と健常者の反応時間は同傾向に なった. 22 3 発見反応時間 反応時間[s] 2.5 アクセルオフ時間 2 ブレーキオン時間 1.5 1 0.5 0 0.49 0.60 0.80 0.43 緑内障患者 0.51 0.81 健常者 実験参加者 図 29 緑内障患者と健常者とのドライバ行動の比較(歩行者飛出し場面) (4)緑内障患者の症状の分類によるドライバ行動の比較 緑内障患者内で症状の程度別に比較するため,2.2 項の MD 値に基づき,中期群と後 期群の 2 種類に分類した(表 13).図 30 は各交通事故場面と発見反応時間の平均値を 分類にごとに比較したものを示す.中期群と後期群を比較すると自転車飛出し場面にお いて,後期群は 0.2 秒程度と発見反応時間が遅れる傾向が見られた.歩行者飛出し場面 では中期群と後期群で同程度であった. 図 31 は各交通事故再現場面とアクセルオフ時間の平均値を分類ごとに比較したもの を示す.追突場面は中期群と後期群でアクセルオフ時間は同程度であった.自転車飛出 し場面はアクセルオフ時間の傾向と発見反応時間(図 30)で同じ傾向が見られた.歩 行者飛出し場面時における,中期群の 2 名は歩行者が出現する前からアクセルオフして おり,ここでの値は 1 名の個人データを用いる(0.5 秒) . 図 32 は各交通事故再現場面とブレーキオン時間の平均値を分類ごとに比較したもの を示す.追突場面はアクセルオフ(図 31)と同様に中期群と後期群でアクセルオフ時 間は同程度であった.自転車飛出し場面はブレーキオン時間の傾向と発見反応時間(図 30)で同じ傾向が見られた.歩行者飛出し場面は中期群のブレーキオン時間にバラつき が大きいものの,平均反応時間 0.25 秒程早い結果となった. 表 13 緑内障患者の症状別の分類 分類 対象 患者番号 中期 3名 G3,G8,G9 後期 6名 G1,G2,G4,G5,G6,G7 23 3 中期 発見反応時間[s] 2.5 後期 2 1.5 1 0.47 0.5 0.50 0 0.42 0.71 自転車飛出し 歩行者飛出し 典型的な交通事故場面 図 30 緑内障患者間の分類による比較(発見反応時間) ア クセルオフ時間[s] 3 中期 2.5 後期 2 1.5 1 0.5 0 0.66 0.72 追突 0.68 0.87 自転車飛出し 0.50 0.62 歩行者飛出し 典型的な交通事故場面 図 31 緑内障患者間の分類による比較(アクセルオフ時間) ブレーキオン時間[s] 3 中期 2.5 後期 2 1.5 1 0.62 0.5 0 1.01 1.05 追突 0.86 1.05 自転車飛出し 0.79 歩行者飛出し 典型的な交通事故場面 図 32 緑内障患者間の分類による比較(ブレーキオン時間) 24 (5)個々の視野障害程度とドライバ行動の関係 視野欠損程度とドライバ行動の関係として,MD 値と発見反応時間との関係を示した ものを図 33 に示す.MD 値と発見反応時間の関係について,条件ごとに相関係数をま とめた表を表 14 に示し,MD 値右眼と自転車飛出し場面で発見反応時間において強い 負の相関(-0.70)が見られた.運転行動では,MD 値右眼と自転車飛出し場面のアク セルオフ時間で比較的強い負の相関(-0.55)が見られた(表 14).また,ブレーキオフ 時間においても比較的強い負の相関(-0.52)が見られた. 3 3 自転車飛出し場面 自転車飛出し場面 2.5 発見反応時間[s] 発見反応時間[s] 2.5 2 1.5 R² = 0.0011 1 0.5 2 1.5 1 R² = 0.4873 0.5 0 0 -30 -25 -20 -15 -10 MD値( 左眼)[dB] -5 0 -30 -25 -20 -15 -10 MD値( 右眼)[dB] -5 0 図 33 左右眼の MD 値と発見反応時間の関係 表 14 視野障害程度とドライバ行動との関係(相関行列) 追突 自転車飛出し 歩行者飛出し アクセルオフ ブレーキオン 発見反応時間アクセルオフ ブレーキオン 発見反応時間アクセルオフ ブレーキオン MD値(左眼) -0.13 -0.06 0.03 -0.01 0.02 0.27 0.11 0.16 0.23 0.47 -0.70 -0.55 -0.52 -0.21 -0.16 -0.23 MD値(右眼) 25 第3章 まとめと考察 3.1 まとめ 本研究では緑内障の運転への影響を定量的に把握することを目的とし,健常者との運 転行動の違い,緑内障患者内の症状程度による運転行動の違い,緑内障患者の視野障害 程度による運転行動への影響について次の知見を得た. ○ 緑内障患者と健常者との運転行動の違い 車両進行方向に対して,左右各 15°方向の歩行者出現条件では,健常者よりも 緑内障患者の衝突割合が高くなった.また,同じ条件に対して,緑内障患者は健常 者よりも反応時間(発見反応時間,アクセルオフ時間,ブレーキオン時間)が 0.7 秒程度と大きく遅れる傾向となった.このように,視野障害箇所と同等の車両進行 方向に対して出現する歩行者において,回避行動が遅れる傾向が推察される.一方, 車両進行方向に対して左右 7.5 方向の歩行者出現条件では,健常者よりも緑内障患 者の反応時間が 0.3 程度遅れる傾向が見られた.協力した患者の視野検査結果は中 心視 10 以内に視野感度の低下が見られなかったが,反応時間の遅れが見られるこ とから,視野障害範囲以外においても,運転への影響が現れることが推察される. 典型的な交通事故場面として,追突場面,自転車飛出し場面及び歩行者飛出し場 面を再現したところ,緑内障患者と健常者との衝突割合や運転行動に特徴的な違い が見られなかった.このことから,交通事故場面によって緑内障による運転への影 響が大きく異なる可能性が推察される.特に,車両進行方向に対して左右方向から の歩行者飛出しなどが運転への影響に関係することが推察される. ○ 緑内障の症状程度による運転行動の影響 緑内障の症状の中期群と後期群で運転行動を比較した結果,車両進行方向に対し て,左 15°方向の歩行者出現において,中期群は後期群よりも反応時間が早くな った.しかしながら,右 15°方向の歩行者出現については,同程度の反応時間を 示した.このように,中期群と後期群で同程度の反応時間を示すことから,緑内障 の症状が中期程度であっても,症状の進行状況によって緑内障後期と同程度の反応 時間を示すことがある.このため,緑内障中期についても注意が必要であると推察 される. 26 ○ 個々の視野障害程度と運転行動の関係 視野欠損程度を示す MD 値と運転行動との関係を検討した結果,MD 値の右眼と 車両進行方向に対して左 15°方向の歩行者出現との反応時間に負の相関関係が見 られた.このことは,一般的に緑内障の症状の進行は鼻側から多く見られ,右眼が 緑内障によって症状が進行すると,両眼視野で左眼の盲点が顕在化し,左方向の横 断歩行者に対して発見や回避行動への影響を及ぼすことが示唆される. 3.2 今後の課題 本研究は,早急な科学的知見の蓄積が求められている緑内障による運転への影響を明 らかにしていくための初段階であると考える.このような運転影響を把握することで, 視野検査結果をもとにした緑内障患者へ運転支援の構築や社会生活のサポートに繋げ ていくことが可能と考える.今後は緑内障の運転への影響を詳細分析するために,本研 究で検討できていない歩行者の横断場面の追加分析を行う.また,本実験で運転行動の 反応時間が遅れた緑内障患者に対して運転支援(注意喚起等)の効果があるか否かを検 討する. 27 参考文献 1) 日本緑内障学会:日本緑内障学会多治見疫学調査報告書 (2012) 2) 青木由紀,国松志保ほか:緑内障患者における自動車運転実態調査,あたらしい眼 科 Vol29,No.7(2012) 3) 国松志保,青木由紀ほか:ドライビングシミュレータでの運転事故と後期緑内障患 者の視野因子との関連,第 1 回視野学会,No.8,p24(2012) 5) David P. Crabb:Exploring Eye Movements in Patients with Glaucoma When Viewing a Driving Scene,PLOS ONE,Volume 5,Issue 3,p.1-9(2010) 6) 警察庁:H26 年中の交通事故の発生状況 28