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なのか「統治」なのか - 慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA)
Title Author Publisher Jtitle Abstract Genre URL Powered by TCPDF (www.tcpdf.org) 報告三 : 「選挙」なのか「統治」なのか : メディア技術の革新がもたらすアメリカ民主主義の危機? 西川, 賢(Nishikawa, Masaru) 慶應義塾大学法学研究会 法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.88, No.2 (2015. 2) ,p.96114 Journal Article http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20150228 -0096 川 賢 その意味で、候補者が新しいメディア技術を選挙に 取 り 入 れ よ う と す る こ と は 戦 略 上 当 然 の 行 動 で あ る。 環境の変化には、①人口動態の変化、②経済的変化、 外的環境の変化 この選挙キャンペーンのあり方(は、 ( が生み出す文脈に大きく左右される。このような外的 ソ ー シ ャ ル・ ネ ッ ト ワ ー キ ン グ・ サ ー ビ ス ( S N S ) いたが、現在ではケーブルテレビ、インターネット、 ラジオ、ダイレクト・メールなどを用いて展開されて ( ( 有権者とのコミュニケーションは新聞、テレビ広告、 ③移民の流入、④社会行動の変容、⑤国際環境の変化 などが選挙キャンペーンにおいて確かな地歩を占めつ ( などが含まれるが、メディア技術の発展も選挙キャン つある。 ( ペーンのあり方に多大な影響を与える外的要因の一つ 本論考では、第一にアメリカにおけるメディア技術 ( ( ( 96 報告三 「選挙」なのか「統治」なのか る。 ( ( 成功するか否かは、選挙での当落を左右するからであ に取り入れ、有権者との円滑なコミュニケーションに 津田塾大学准教授 西 ︱︱メディア技術の革新がもたらすアメリカ民主主義の危機?︱︱ 一 はじめに )かす Priming 選挙キャンペーンとは、候補者・政党がパーソナリ ティや政策争点をアピールして有権者を説得する ( Persuasion )か自らを強く印象づける ( する、あるいは新規支持者の獲得を目指す営みである。 一九八〇年代には選挙キャンペーンにおける候補者と ( ( ることにより、従来の支持層からの支持をより強固に ( であることに疑いはない。メディア技術の発展を選挙 ( 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) ているが、これがアメリカ民主主義にどのような影響 の枠を超えて統治領域にまで拡張利用するようになっ バラク・オバマ政権はインターネットやSNSを選挙 九二年以降の歴史を振り返って考える。第二に、近年 どのように取り入れられていったのかについて、一九 の発展、特にインターネットやSNSが大統領選挙に な一般国民の高い関心を反映して、クリントン政権は ジに高い関心を持っていることが窺われた。このよう には一日平均八〇〇件を超す書き alt.politics.Clinton 込みが寄せられており、有権者が候補者のウェブペー だ が、 限 定 的 な 利 用 に と ど ま っ て い た と は い え、 ウェブサイトを立ち上げている。 ( ( デイヴィッド・ライテルの主導下でホワイトハウスの のドメインを取得し、科学 発足後に WhiteHouse.gov 技術政策局でインターネット・ストラテジストである ・インターネッ 二 揺籃期 (一九九二~二〇〇〇年) トの選挙活用の夜明け を与えているのかについて考察を加える。 ⑴ 一九九二年選挙 このような変化を受けて、一九九四年の選挙では候 補者個人や政党などによる電子メールやウェブサイト の利用が活発化し始めた。 ターネットのみの活動を行っていた政治活動委員会に アメリカにおいて、インターネットが初めて選挙に 活用されたのは一九九二年の大統領選挙である。 足をすくわれて落選したことであり、これはインター 注 目 す る べ き は、 現 職 の 下 院 議 長 で あ る ト マ ス ・ フ ォ ー リ ー ( ワ シ ン ト ン 州 選 出・ 民 主 党 )が ほ ぼ イ ン とはいっても、当時はウェブ・ブラウザが現在ほど 普 及 し て い な か っ た た め、 ビ ル・ ク リ ン ト ン = ア ル (共和 ( ( バート・ゴア陣営のインターネット利用も電子メール ⑵ 一九九六年選挙 一 九 九 六 年 の 選 挙 時 に は ロ バ ー ト・ ド ー ル ( ネットの政治利用 (特に選挙利用)への注目が集まり つつあった時代を象徴する出来事であったといえよう。 ループ( は政策公約への有権者の反応を集約するための討論グ ( )を 形 成 す る な ど、 限 定 的 alt.politics.Clinton 利用の域を出るものではなかった。 97 ( ( AOL, CompuServe, Prodigy, TelNet などの既存プラット ( ( フ ォ ー ム が 利 用 さ れ た )や 電 子 掲 示 板 の 利 用、 あ る い 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 党) 、クリントン(民主党) 、 ロ ス・ ペ ロ ー ( 改 革 党 ) るなど、有権者との相互作用を重視した先進的な作り クロスワードやクイズが楽しめるコーナーが設けられ ( ( など、主要政党の候補者すべてがウェブページを開設 ( になっていた点に特徴があった。 ( しており、主要政党以外の候補者でもウェブページを 開設するものが八〇%に上った。かくして、政策文書、 他にも、スティーブ・フォーブス候補 (共和党)の ウェブページには、訪問した有権者が自分の現在の所 (( ( ” )と 題 す る デ ィ ア の 青 写 真 」(“ New Media Blueprint ド ー ル 陣 営 の ロ バ ー ト・ ア リ ー ナ は、「 新 し い メ じて随時閲覧することが可能になった。 を 盛 り 込 ん で 有 権 者 の 関 心 を ひ く 工 夫 が ほ ど こ さ れ、 装置が設置されるなど、ゲーミフィケーションの要素 に還付される所得税控除額が自動的に計算される計算 得額を打ち込むとフォーブスが提唱する新税制導入後 ( インターネット利用者を対象とする有権者アウトリー ( クリントン=ゴア陣営が専らウェブサイトを選挙公約 はなかった特徴を持っており、有権者の目をひいた。 者の「知られざる素顔」を提供するというそれまでに し始め、一九九六年には未発達であったヤフーやグー 一九九六年には未だダイヤルアップ接続が主流で あったが、二〇〇〇年にはブロードバンド接続が普及 わずか四年で六七〇〇万人に達した。 一九九六年の選挙時には七五〇万人に過ぎなかった ア メ リ カ の イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 者 は 爆 発 的 に 増 加 し、 (( ( ( の提示など、主としてアジェンダ設定の目的で用いた グルのような検索ツールの性能が向上し、有権者が候 ( のに対し、ドールのウェブページには選挙ボランティ 補者のウェブページを発見することが格段と容易に ( ” ) ア を 募 集 す る「 選 挙 に 参 加 し よ う 」(“ Get Involved ⑶ 二〇〇〇年選挙 なっていた点なども注目に値する。 (( のコーナー、「ドール・インターアクティブ」という このウェブページには、ドール自身があまり語りた がらなかったキャリア、特に軍歴や彼が戦場で負った をデザインした。 ド ー ル 同 様、 有 権 者 と の 相 互 作 用 を 重 視 し た 作 り に (( チの体系的戦略に基づいてドール候補のウェブページ ( 演説、候補者の経歴などを有権者がウェブページを通 ( 「名誉の負傷」についてなどが記載されており、候補 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) (( 98 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 ( なった。また、リサーチ・イン・モーション社が開発 ン・ミーティングを開催する機会を提供するなど、単 機能を介して近隣に住む有権者同士を結び付け、タウ ( し た ス マ ー ト フ ォ ン ( ブ ラ ッ ク ベ リ ー)が 普 及 し 始 め なるウェブを利用した候補者の宣伝にとどまるのでは ( ( ( 加 え て、 特 筆 す べ き は ウ ェ ブ ペ ー ジ の 利 用 が ネ ガ ティブ広告にも広がりを見せつつあったことではない ( たことも大きな変化の一つであった。 つつあった。 なく、ウェブを介した動員や献金が本格的に着手され このような変化を受けて、二〇〇〇年に行われた大 統 領 選 挙 で は、 ジ ョ ー ジ・ W・ ブ ッ シ ュ、 ゴ ア、 などほぼすべての候補者がウェブサイトを開設し、も だろうか。 フォーブス、ジョン・マケイン、ビル・ブラッドレー はやウェブサイト開設は選挙キャンペーンの常道と化 予 備 選 挙 の 段 階 で ブ ラ ッ ド レ ー 候 補 は moreabout した感があった。ほぼすべての候補者がテレビで流し と い う ウ ェ ブ ペ ー ジ を 立 ち 上 げ、 銃 規 制 等 gore.com の争点をめぐってゴアの政治姿勢をネガティブ攻撃し ペイン語)のページを併設する候補も増えた。 の た。 ゴ ア 側 もこれ に 応酬し、 www.algore2000.com 一 角 に「 ブ ラ ッ ド レ ー 候 補 に 関 す る 情 報 コ ー ナ ー」 ( ( (“ Bradley Information Bureau ” ) を 設 置 し、 ブ ラ ッ ド レーの批判が事実無根であると反撃を加えた。 さらに、ブラッドレー候補のように、限定的地域で の選挙キャンペーンにウェブを介して五〇〇〇人もの ボランティア動員に成功したもの、マケイン候補のよ ( うにインターネットを通じて、一〇〇〇万ドルの献金 ( を募ることに成功したものも現れた。このほか、ブッ ( ( 二〇〇〇年以降、ウェブページを利用したネガティ を加えた。 (( シュ候補はフォーブスに倣って、「ブッシュ税金計算 ” )をウェブに盛り込み、ゴ 機」(“ Bush Tax Calculator を立 る 民 主 党 側 も IKnowWhatYouDidinTexas.com ち上げ、テキサス州知事時代のブッシュの治績に攻撃 を 本選挙でも、共和党が GoreWillSayAnything.com 立ち上げてゴアに対するネガティブ広告を掲げ、対す (( リーミング配信するようになり、英語以外の言語 (ス ているスポット広告をウェブページでもビデオ・スト (( (( (( というコーナーを設置してヤフー・ ア候補も GoreNet メッセンジャーなどのインスタント・メッセンジャー 99 (( 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) 去の失言、政治的変節、公約違反などを訴えるページ ブ広告も常態化していき、選挙のたびに各候補者の過 が加味されたのである。 ( マイクロキャスティング、ナノキャスティングを利 用して、メッセージのカスタム化を効果的にはかるこ ( とができれば、特定の属性や志向性を有する (接戦州 の)少数の有権者集団を効率的に動員し、選挙の結果 すなわち、テレビのようなブロードキャスティング が選挙キャンペーンの主流であった時代、有権者に対 も影響を与えるようになった。 を展開し、アフリカ系有権者からの得票率を九% (二 に反同性婚のメッセージを核とする選挙キャンペーン このようなマイクロターゲティングの一例をあげる と、二〇〇〇年の大統領選挙において、G・W・ブッ を左右することも、いまや不可能ではなくなった。 するメッセージは選挙スポットCMを用いた不特定多 〇 〇 〇 年 )か ら 一 六 % ( 二 〇 〇 四 年 )に 伸 ば す こ と に ( ( 性を考慮したものへと変化していった。すなわち、選 し、選挙キャンペーンはより地域や有権者の社会的属 あたって、有権者に対するアウトリーチの手法も変化 やミートアップ ( MeetUp.org )のようなSNSが急速 ま た、 二 〇 〇 四 年 に は ウ ェ ブ ロ グ ( い わ ゆ る ブ ロ グ ) 以 上 が イ ン タ ー ネ ッ ト を 利 用 す る よ う に な っ て い た。 インターネット利用率の向上は二〇〇〇年以降も継 続し、二〇〇四年時点でアメリカの成年人口の六〇% ・ ハ ワ ー ド・ デ ィ ー ン の 三 躍 進 期 ( 二 〇 〇 四 年 ) 「遺産」 (( 挙キャンペーンにマイクロターゲティングという要素 しかし、マイクロキャスティングとナノキャスティ ングが選挙キャンペーンの中で確かな地歩を占めるに シュ陣営はオハイオ州の保守的なアフリカ系有権者層 数の有権者を対象にするものであり、包括的な性質を 成功している。 ( (( ティング戦略は存在しなかったといってよい。 ( いる有権者を対象にするものであった。そこにターゲ 帯びざるを得ず、たまたまテレビやラジオを視聴して 以上のようなインターネット選挙利用の急速な普及 と拡大は、選挙キャンペーンのターゲティング戦略に ⑷ タ ー ゲ テ ィ ン グ 戦 略 の 変 化・ マ イ ク ロ タ ー ゲ ティングの発達 が開設されるようになっている。 (( 100 に普及し始めており、二〇〇四年の選挙においては、 。 〇万人もの「メンバー」が参加していたといわれる) 加を呼び掛ける運動を展開していた (同組織には一四 ( これらのツールの本格的な選挙利用が注目を集めた。 同 じ 頃、 イ ラ ク 戦 争 に 不 満 を 抱 く 人 々 は「 デ イ ) 、 「 デ イ リ ー・ コ リ ー・ デ ィ ッ シ ュ」( the Daily Dish ブログで戦争に対する不満をぶつけ合うようになって ( 再選されたG・W・ブッシュも選挙戦ブログを開設 していたものの、陣営の日誌・選挙戦の経過報告とし ) 、「マイDD」( MyDD )などの著名な ス」( Daily Kos ( ( ての色彩が強く、読者にコメントを許可しないなど有 ( 権者からの反応は芳しいものではなかった。 がりしか有していなかったこれらの人々は、ブッシュ ( こ れ に 対 し て、 民 主 党 の 泡 沫 候 補 で あ っ た ハ ワ ー ド・ディーンは予備選挙の途中で撤退を余儀なくされ の対抗馬として、反戦を主張していたディーンに注目 ( ( バーなどで小規模なディーン支持集会を開催するよう いた。当初ブログやムーヴオンなど、オンラインの繫 たものの、今なお、組織化や資金調達などの面で「ア す る よ う に な り、 ミ ー ト ア ッ プ を 利 用 し て カ フ ェ や 浴び、これが大統領候補としての躍進の呼び水になっ て い く。 こ の 躍 進 の 背 景 に は、 ブ ロ グ や ム ー ヴ オ ン 反対の声を結集するために一九九八年に作り上げた ムーヴオンは、元々クリントン大統領の弾劾に反発 するシリコン・バレーの実業家ウェス・ボイドが弾劾 された運動の存在があった。 もムーヴオンやブログを介して大量に動員することに 挙費用を調達するとともに、選挙活動のボランティア ら二〇〇四年にかけて三〇〇〇万ドル以上を集めて選 の政治資金を集め始めるなど、SNSを介した政治動 ( ( ネットワークであり、二〇〇三年当時はイラク戦争反 成功している。 内に初歩的なSNSを導入し、SNSを利用して小口 他方、ディーンもブログやムーヴオンでの有権者の ) 動 向 に 鋭 く 着 目 し、 公 式 サ イ ト ( Blog for America (( ( ( メリカ政治に革命をもたらした」と評価されている。 になった。 (( ヴァーモント州知事であったディーンは、G・W・ ブッシュ政権によるイラク戦争を強く批判して注目を (( (( 対派に電子メールを通じた抗議運動や反戦集会への参 ( (( (( 員を軌道に乗せていった。ムーヴオンは二〇〇三年か ( 101 (( ( MoveOn.org )と い う イ ン タ ー ネ ッ ト を 介 し て 組 織 化 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) そのような評価もあながち過大ではないことが理解で ( ( ( ( NSの効果的利用によるところが大きい。 と昇りつめたのは、以上のようにインターネット、S ル以上の資金と五〇万人以上の支持者を有する存在へ かったが、それが一年も経たないうちに四〇〇〇万ド で二〇〇三年九月に出馬を宣言し、ディーン同様ブロ というウェブページを立ち上げると、 draftwesleyclark 反戦派などを中心に、瞬く間に五万人もの賛同者が現 コが二〇〇三年四月に )という出来事があった。リン る ( Draft Wesley Clark ( ( れた。クラーク自身はこの勝手連に背中を押される形 www.extreme-campaigns.com/ サイモン・ローゼンバーグなどの民主党系の戦略家 は、一九九六年以降、共和党と保守勢力の連合は情報 グやミートアップを積極的に利用して資金やボラン ( 化時代に適応した政治マシーンを構築することに成功 ティアを集めたものの結局は振るわず、二〇〇四年二 ( をおさめており、政治的コミュニケーション能力の面 月に選挙戦からの撤退を表明した。 ( ( で民主党を遥かに凌駕しつつあると考えていた。しか なお、ディーン候補のブログやミートアップなどを 効果的に利用した選挙戦術を支えていた選挙スタッフ (( し、二〇〇四年の選挙においてディーン候補は敗北し たものの、民主党がインターネットやSNSを利用し た資金収集や人員の組織化などのインフラストラク チ ャ ー を 強 化 す る き っ か け を 提 供 し、 共 和 党 と の ギャップを大きく縮め、むしろこれを逆転さえしたと ) 、 グ・インスティテュート」( New Organizing Institute は、 選 挙 後「 ブ ル ー・ ス テ イ ト・ デ ジ タ ル 」( Blue 以下BSD) 、「 ニ ュ ー・ オ ー ガ ナ イ ジ ン State Digital; (( 102 いう評価が存在する。上述のディーンの躍進を見れば、 ディーンは最終的に五一〇〇万ドルもの政治献金を 集めることに成功したが、その六一%が二〇〇ドル以 きよう。 ( 下の小口献金であったことは注目に値しよう。また、 ( ミートアップを介してディーン支持を表明した有権者 ( 二〇〇四年の選挙においてはディーン候補の他にも、 ) 民 主 党 系 活 動 家 で あ る ジ ョ ン・ リ ン コ ( John Hlinko ( (( が ウ ェ ブ ペ ー ジ を 用 い て ネ ッ ト 勝 手 連 を 立 ち 上 げ、 二〇〇三年初期、ディーンは選挙資金を殆ど持たず、 ウェズレイ・クラーク陸将を民主党予備選挙に擁立す 僅か四〇〇人ほどの支持者がいるだけの存在に過ぎな は最終的に一八万五〇〇〇人に上った。 (( (( (( (( ( ( )な ど の I T コ ン サ EchoDitto 的な」選挙であり、オバマ候補が参加型双方向メディ 二〇〇八年の大統領選挙がウェブサイト、ブログ、 SNSを大々的に活用した参加型・双方向型の「画期 ・バラク・オバ 四 定着期 (二〇〇八~二〇一二年) マによるSNS利用のデフォルト化 このうち、BSDは二〇〇六年の選挙で二二人の議 員のウェブ選挙に関するコンサルティング業務を請け 負い、二〇人の候補者を当選させることに成功してい アを駆使して有権者からの支持を社会運動へと昇華さ ( る。オバマはこのBSDに早くから注目しており、B ( せることで当選を果たしたという点はすでに数多くの オンライン・データベースを作り上げ、二〇〇六年以 )と い う 有 権 者 の VoterBuilder トやSNSを利用した選挙戦術を集大成したもので 戦術を遺産として受け継ぎ、それまでのインターネッ ( (( 新的であるといってよく、彼が構築したインフラスト このように、ディーンが二〇〇四年の選挙戦でイン ターネットやSNSを活用して躍進を遂げたことは革 歴を記載・閲覧するためだけのものではなく、フェイ のウェブページに見られたような単なる政策公約や経 させた。この公式サイトは一九九〇年代前半の候補者 ( ( ラクチャーは、いわば「遺産」として二〇〇八年のオ ス ブ ッ ク の よ う な S N S 機 能 ( www.mybarackobama. )を充実 としての公式サイト ( www.barackobama.com 助けした。この有権者構築機は二〇〇八年の大統領選 オバマ陣営はBSDから選対本部に選挙顧問を雇い 挙にも受け継がれ、オバマ陣営もこれを利用している。 入れ、有権者・支持者とのインターフェイスとなる核 ( あったことも留意する必要がある。 自に創出したものではなく、直近ではディーンの選挙 しかし、二〇〇八年選挙でオバマ候補が取ったイン ターネットやSNSを利用した戦術はオバマ陣営が独 (( 降の選挙戦でそれを活用し、民主党政治家の当選を手 れ、 「 有 権 者 構 築 機 」( ( ( SDのCEOであったジョー・ロスパースは二〇〇七 ( 論者が指摘している。 ( 年にオバマ陣営のニュー・メディア担当部長に抜擢さ ルティング会社を相次いで設立している。 (( ディーン自身も二〇〇五年二月に民主党全国委員長 に就任し、全国委員会にBSDからスタッフを雇い入 れている。 (( (( バマヘと受け継がれていったのである。 103 「 エ コ ー・ デ ィ ッ ト 」( 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 (( 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) 由に個人ページを持つことが可能であった。マイ・バ )を内蔵しており、サイト内部に支持者自身が自 com キャンペーンのマイクロターゲティング化が加速化し トを所有する有権者を対象に、SNSを駆使した選挙 ラ ク・ オ バ マ・ ド ッ ト・ コ ム は Sをフル活用するとともに、GPS機能の付いた携帯 例 え ば、 二 〇 一 〇 年 の 選 挙 に お い て、 マ サ チ ュ ー セッツ上院議員選挙でスコット・ブラウン候補はSN ている。 、 Flicker 、 Facebook 、 MySpace などの外部SNSと同期させる YouTube ことも可能で、これらSNS網を駆使して、ネット上 ( によってある有権者が近在する他の有権者の位置情報 ( に勝手連を立ち上げるという手法は一九九二年以降の 電話を選挙運動員に持たせ浮動層に対する集票を効率 ( ネット選挙戦略の集大成であるともいえた。 「ポリ 的 に 行 い、 下 馬 評 を 覆 し て 当 選 を 果 た し た。 を取得することが可能となる。この位置情報に有権者 ( ( プリをスマートフォンに入れている場合、GPS機能 さらに、二〇〇八年選挙ではインターネットやSN Sを利用した小口献金の収集が大々的に試みられて大 ( きな成功をおさめ、SNSはもはや選挙戦術の常識と 登録の有無や支持政党などのデータを加えれば選挙運 ( 化した。この点で、二〇〇八年の選挙はSNSの選挙 動員がどの有権者に優先的に話しかければよいのか、 ( ( 利用をさらに大きく前進させたといってよいであろう。 一目瞭然である。 )と い う ア テ ィ カ ル・ グ ラ ビ テ ィ」( Political Gravity ( 後、多 この「オバマ型」の選挙手法は二〇〇八(年以 ( くの候補者に取り入れられていくことになる。 (( (( このように、SNSが本格的に選挙で活用されるよ (( データもあり、これらの位置情報機能付きのガジェッ ている有権者の八三%が有権者登録しているという なった。いまやスマートフォン、タブレットを利用し 数十人単位の有権者に対するアウトリーチが可能に なった。 カスタマイズする手法も既に広く採用されるように や過去の有権者の投票記録などを加味して選挙戦術を のオフライン・データと突き合わせ、有権者登録情報 うになると、ブロードキャスティングのような不特定 また、特定のウェブページを訪問した有権者のクッ 多数の有権者を対象にする包括的メッセージではなく、 キー情報などをもとに有権者の属性や志向性を手持ち (( (( (( 104 イトやスポーツの点数などを見る傾向が強い。このよ り、共和党員は株価や不動産情報、オークション・サ ” )の 設 置 な ど ハ ウ ス 質 問 箱 」(“ Ask the White House シュ政権でも電子メールの積極的な利用や「ホワイト 第二節で述べたように、クリントン政権でホワイト ハウスのウェブサイトが設立され、続くG・W・ブッ 五 拡大期(二〇一〇~現在) ・ 「選挙」から「統治」へ うな情報に基づいて、例えば二〇一二年の選挙ではサ が実現し、インターネットやSNSの利用は選挙にと ン ト ラ ム 候 補 は 検 索 エ ン ジ ン で「 ラ ッ シ ュ・ リ ン どまらず、統治過程にも浸透し始めていた。 党派別にみると、民主党員はオンライン・ゲーム、 求職サイト、出会い系サイトなどを閲覧する傾向があ ボー」というタームを検索した有権者向けの広告を買 い 取 り、 ロ ム ニ ー は 同 じ く「 ジ ョ ー ジ・ ロ ム ニ ー」、 この統治領域へのSNSの浸透をいっそう推し進め オバマは「ウォーレン・バフェット、オバマの誕生日、 たのがオバマ政権である。オバマ大統領はSNSを利 ( 用 し た 二 〇 〇 八 年 の 選 挙 戦 術 が 成 功 裏 に 終 わ っ た 後、 ( オバマの歌、オバマ・ブラケット」を検索した有権者 同技術を政権運営にそのまま応用しようと試みてきた ( 向けの広告枠を買い取っている。 ことも既に指摘されている。 ブック」なるクラウド・ソーシングの試みに着手した。 と称する 政 権 移 行 チ ー ム は 手 始 め に、 Change.gov ウ ェ ブ ペ ー ジ を 設 置 し、「 市 民 の ブ リ ー フ ィ ン グ・ ( このように、蓄積された大量のデータをデータ・マ イ ニ ン グ に よ っ て 分 析 し、 そ れ を 選 挙 に 利 用 す る ( 顕著化した。 のページの訪問者に政策アイディ これは Change.gov ( ( アを投稿させ集約するというものであり、一般国民に ( かくして、二〇一〇年中間選挙・二〇一二年大統領 選挙ではSNSの利用が徹底化するとともに、有権者 ( ( 統治に参加している感覚を付与することが狙いであっ ( (( のネットワーク形成から政治献金の集金まで、SNS ( を中核とする選挙運動が定着した感があった。 (( 確保し、政策決定の質の向上や政治参加の促進を図る た。SNSを積極的に活用することで統治の透明性を (( ――このようなSNSを利用した統治のあり方をオバ 105 (( (( (( 「 ビ ッ グ・ デ ー タ 選 挙 」 は 二 〇 一 二 年 の 選 挙 に お い て 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) S 機 能 を 利 用 し て、 オ バ マ 政 権 が 進 め て い る 政 策 ア 選挙活動ではないかという批判が絶えなかった。選挙 段に偽装した、有権者の組織化や献金を狙う民主党の た。このため、OFAmに対しては、当初から統治手 ジェンダを一般国民に売り込むとともに、有権者の組 終了後の二〇〇九年三月には、二〇〇万ドルもの政治 ( ( 資金がOFAmを経由して民主党全国委員会の負債返 (( よれば、このような試みは政治の開放性・透明性を高 こうして、オバマ政権下で統治領域へのSNSの浸 透が確実に進んだことは確かである。政権側の説明に は二〇一三年には「オーガナイジング・フォー・アク ないだろうか。こうした批判を意識してか、OFAm ことで、統治を侵食している例と考えるのが妥当では ( ( 在するはずはなく、これはSNSが統治に転用される め、国民の政治参加意識を増進することで、民主主義 以下OFAc)という ション」( Organizing for Action; ( を強化し、統治の効率性を高める効果を期待できると ( 無党派を謳う組織へと改組され、民主党全国委員会か (( 106 マ政権は「ホワイトハウス二・〇プロジェクト」と命 ( しかし、このような統治手法には問題がある。例え ば、OFAmは一見すると大統領による政策運営用の ( 名した。 いたのは民主党の全国委員会であり、OFAmの草の サイトのように映るが、このサイトを実際に運営して かくして、政権発足後には、かつてのオバマ候補の 選挙公式サイトが民主党全国委員会主導の「オーガナ 根活動を実際に請け負う組織も民主党の州組織であっ ( ( 織化や献金の窓口にもなっていた。 還のために流用されるなど、OFAmは選挙組織なの ( ( 、 、 、 な ま た、 Facebook Flicker YouTube MySpace どのSNSとホワイトハウスのウェブページとの同期 か、大統領主導の統治手段の一環なのか、議論は絶え ( 化も進められた。他にも、ウェブを介してライブ形式 なかった。 (( イ ン・ タ ウ ン・ ホ ー ル 」( White House Online Town 前 嶋 和 弘 氏 が 指 摘 す る よ う に、 純 粋 に 考 え れ ば、 )の試みも初めて着手された。 「統治のための政治献金」や「有権者の組織化」が存 Hall (( ( で大統領と国民が対話する「ホワイトハウス・オンラ イ ジ ン グ・ フ ォ ー・ ア メ リ カ 」( Organizing for 以下OFAm)へと改良され、メールやSN America; (( (( いう。 (( 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 ら分離された。同時に、非営利団体資格である五〇一 四の資格を米国内国歳入庁に申請・付与されており、 どを実現すべく、草の根で活動を続けている。また、 べく、OFAcをより強力に活用して「ワシントンの オバマ大統領自身も二期目で確実な立法業績を上げる 政治資金収集、選挙キャンペーン、ロビイスト活動等 外からワシントン内部を変革する」方針を明言してい ( ( を合法的に行えるようになっている。OFAcはいま やOFA四・〇の段階に入ったと指摘する論者も存在 る。 ターネットやSNSの利用を統治の領域にまで拡大し する。 すなわち、SNSを活用した選挙戦が行われた二〇 〇 八 年 の 段 階 が 一・ 〇、「 オ ー ガ ナ イ ジ ン グ・ て い る こ と に つ い て、 オ バ マ 大 統 領 が 選 挙 延 長 病 ( ( フォー・アメリカ」が結成された段階が二・〇、二〇 この点、G・W・ブッシュ大統領の選挙参謀であっ たカール・ローヴは、オバマ陣営が選挙におけるイン (( 側面が残る。このようにOFAmやOFAcは、未だ 戦略目標から完全に自立した組織であるとはいい難い バマ選対出身者で占められており、政権や与党の再選 ン・カーソン以下のスタッフもすべてオバマ政権・オ と ミ シ ェ ル・ オ バ マ 大 統 領 夫 人 で あ り、 組 織 長 ジ ョ とはいえ、OFAcの発起人はオバマの二〇一二年 の再選選挙のマネージャーであったジム・メッシーナ )に 憑 り つ か れ て い る 一二年の選挙が三・〇、そして二期目が四・〇である。 ( Extended Campaign Syndrome ( ( と揶揄した。 (( ( 選挙組織と統治機構の「キメラ」的特性を拭い去れて ( いないのが現状である。 (( OFAcは第二次オバマ政権の中心的政策アジェン ダである気候変動問題、銃規制、包括的移民改革案な イトハウスでの処世と大統領選挙での処世は全く異 の 教 訓 を 身 に し み て 感 じ て い る こ と だ ろ う …… ホ ワ ス 入 り す れ ば、 ト ラ ブ ル が 起 き る。 オ バ マ 政 権 は こ …… こ の よ う な マ イ ン ド セ ッ ト の ま ま ホ ワ イ ト ハ ウ に勝利するという〕重圧を感じているだろうから か 考 え な い。 〔 選 挙 に 〕 疲 れ て い る だ ろ う し、 〔選挙 生 き 延 び る こ と し か 考 え な い。 彼 ら は 安 易 な 方 法 し 選 挙 で は、 選 挙 ス タ ッ フ は 来 週 か 次 の 予 備 選 挙 ま で (( な る も の な の だ …… オ バ マ が 選 挙 で 用 い た 手 法 は 大 107 C 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) 統 領 と し て の オ バ マ に は 向 か い 風 に な り 得 る。 し か 害が大きい)ことを示すエピソードではないだろうか。 用しても必ずしも上手くいくとは限らない (むしろ弊 ( ( し、 身 に し み つ い た 悪 癖 は な か な か 消 え て な く な ら 六 結論 メディア技術の発展を選挙に取り入れ、有権者との 円滑なコミュニケーションに成功するか否かが選挙で ないものだ。 同様に、OFAm、OFAcを研究しているバーバ ラ・トリッシュ教授は以下のように評している (引用 の当落を左右する以上、候補者が新しいメディア技術 ( 二 〇 〇 八 年 選 挙 の 遺 産 で あ る オ ー ガ ナ イ ジ ン グ・ 二 〇 〇 九 年 に オ バ マ 大 統 領 が 政 権 入 り し た 時、 彼 は 一九九二年から二〇〇八年にかけてのアメリカの選 挙史は、やや大袈裟にいえば、メディア技術の発展と 略的行動であろう。 ( フ ォ ー・ ア メ リ カ を 民 主 党 全 国 委 員 会 に 取 り 込 も う いう外的環境の変化への候補者・政党の対応の歴史で 0 と し た。 こ れ は オ バ マ 大 統 領 が 民 主 党 を 強 化 し よ う 0 あるといってもよい。候補者・政党がこのような環境 0 と い う シ グ ナ ル の よ う に 思 え た。 選 挙 を 永 続 化 し よ の変化に巧みに適応することで、選挙キャンペーンは ネットやSNSの選挙利用を統治領域にまで単純拡大 0 うというのがオバマ大統領の究極の目標だったのか 文字通り革新されてきた。 「オーガナイジング・フォー・アメリカ」は政権一 期目の目玉であった国民皆保険制度を普及させること したものであるが、円滑な統治を推進するよりも、む 0 も し れ な い が、 オ ー ガ ナ イ ジ ン グ・ フ ォ ー・ ア メ リ にすら非常に手間取ったが、これは選挙と統治が本質 しろ妨げとなっているように思われる。このことにつ のである。前節で見たOFAmやOFAcはインター 的に異なるものであり、前者の手法を後者に単純に応 0 カは民主党の正規の組織の一部になってしまった。 を積極的に選挙に取り入れようとすることは当然の戦 中の傍点は筆者) 。 (( しかし、いまやそれは「選挙の統治領域への侵食」 という思わぬ副産物を生み出しているように思われる (( 108 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 おいて候補者は他者との間に差異を生み出すことで自 とし、選挙では差異を生み出す。その理由は、選挙に エイミー・ガットマンやデニス・トンプソンらが指 摘するように、民主主義は統治において統一性を必要 いて、より考察を深めたい。 想像できる。 も、統治の自立性が損なわれるであろうことは容易に 選挙的手法で統治を進めれば、政策目標は達成できて 交 渉 や 説 得 を 通 じ て 妥 協 形 成 を 促 す の で は な く、 メ を交渉・説得しようとしなくなり、選挙志向の非妥協 ディアを通じて議会を迂回して国民に直接訴えかける らが優位に立つ必要があるが、統治においては対立す このように、選挙が統治を侵食することにより、政 )に 執 着 し て 対 立 者 治家は頑迷に原理原則 ( Principle る勢力との間にも妥協点を見出すことで合意形成を円 ( 滑に行う必要があるからである。 )が植えつけられる 的精神 ( Uncompromising Mindset ことで合意形成が著しく困難となって、円滑な統治を ( 統治に必要とされる妥協とは、現状を打開し必要な 対策を講じるために関係するアクターすべてが合意の 侵害する弊害が生じているとガットマンらは指摘して ( ( 上、何かを犠牲にすることであるとガットマンは定義 いる。 ( する。そのうえで、ガットマンらは近年のアメリカに ( かくして、現在のアメリカ民主主義から円滑な統治 に向けて必要かつ適切な妥協を可能とする政治的礼節 )や中道という徳性が著しく損なわれており、 Civility 議会の外堀を埋め、いわば「搦め手」で政策実現をは ( ( 要な意見であるといえよう。 ( のとなり、それが弊害を招いていることを指摘した重 アメリカ民主主義の中で両者の境界が極めて曖昧なも (( かる「ゴーイング・パブリック戦略」が完全に定着し 前嶋和弘氏が指摘するように、国政レベルでは、い まや大統領がメディアを通じて世論に直接働きかけて ことに注目する。 )と い う 現 象 が 生 じ て い る 挙 」( Permanent Campaign す る こ と な く、 選 挙 活 動 を 継 続 す る「 永 遠 に 続 く 選 ( おいて、政治家が当選後も立法活動や行政活動に傾注 これは、アメリカ民主主義の中で統治と選挙の間に 存在する不断の相克を浮き彫りにし、なおかつ現在の (( アメリカ民主主義が危機に瀕しているという指摘すら ( 109 (( (( ている。このように、大統領が議会など反対勢力への (( 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) ( ( しばしば耳にする。 OFAmやOFAcのような例は、まさに「選挙化 する統治」の弊害がもたらす、アメリカ民主主義の危 機を露呈しているように感じられる。果たして、我々 が目撃しているものはインターネットやSNSの有効 な政治利用なのであろうか。それとも、選挙に侵食さ れ、自立性を失いつつある統治が孕む病理なのであろ ( ” in Jeffry M. Stonecash (ed.) the Context for Parties, New Directions in American Political Parties (New York: Routledge, 2010), p.13. ) Stonecash, “ Social Change in America: the Context ” in Stonecash (ed.) New Directions in for Parties, American Political Parties, pp.14-20. ( ) Danny Hayes, “ Parties and Media: Getting Messages ” in Stonecash (ed.) New Directions in to Voters, ( 5 American Political Parties, p.44. ( ) “ Parties and Media: Getting Messages to Hayes, ” in Stonecash (ed.) New Directions in Voters, ( 6 Rowman and Littlefield, 2011), p.136. American Politics: the Internet Revolution (Lanham: p.22. ) Jason Gainous and Kevin M. Wagner, Rebooting Barack Obama and the Politics of Digital Engagement, Macmillan, 2013), p.22. ) Katz, Barris, and Jain, The Social Media President: Politics of Digital Engagement (New York: Palgrave The Social Media President: Barack Obama and the American Political Parties, pp.44-45. ) James E. Katz, Michael Barris, and Anshul Jain, ( 7 うか。 これがさらなる熟議を要する問題であることに疑い はない。 ( ) Henry E. Brady, Richard Johnston, and John Sides, “ The Study of Political Campaigns, ” in Brady, Press, 2006), pp.1-25; James N. Druckman, Lawrence Effects (Ann Arbor: the University of Michigan of Politics, Volume 66, Number 4 (November 2004), R. Jacobs, and Eric Ostermeier,“ Candidate ” The Journal Strategies to Prime Issues and Image, pp.1180-1202. ( ) Jeffrey M. Stonecash, “ Social Change in America: 3 4 8 (( Johnston, and Sides (eds.) Capturing Campaign 1 2 110 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 ( ) Jennifer Stromer-Galley, Presidential Campaigning in the Internet Age (New York: Oxford University ( ( ) 清 原 聖 子「 ア メ リ カ の イ ン タ ー ネ ッ ト 選 挙 キ ャ ン ペ ー ン を 支 え る 文 脈 要 因 の 分 析 」 清 原 聖 子・ 前 嶋 and Social Media in Election Campaigns, 1952-2012 Press, 2014), p.22. ( ) Darrell M. 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Obama (New York: Oxford University Press, 2012), of Networked Politics from Howard Dean to Barack 38 42 41 40 39 ) 前 嶋 和 弘「 大 統 領 選 挙:『 オ バ マ 現 象 』 の 分 析 」 吉野・前嶋編『二〇〇八年アメリカ大統領選挙』 、三 七頁。 43 ) 前 嶋 和 弘「 ソ ー シ ャ ル・ メ デ ィ ア が 変 え る 選 挙 戦 」 清 原・ 前 嶋 編『 イ ン タ ー ネ ッ ト が 変 え る 政 治 』 、 九頁。 44 三五頁。 45 28 29 30 31 32 33 34 35 36 112 特別記事:平成二六年度慶應法学会シンポジウム インターネット社会における法と政治 ( ) 前 嶋 和 弘「 大 統 領 選 挙: 『オバマ現象』の分析」 吉野・前嶋編『二〇〇八年アメリカ大統領選挙』 、四 〇頁。 ( ) 前 嶋 和 弘「 大 統 領 選 挙: 『オバマ現象』の分析」 吉野・前嶋編『二〇〇八年アメリカ大統領選挙』 、三 八頁。 ) 清原聖子「進化するネット選挙戦略」清原聖子・ 前 嶋 和 弘 編『 ネ ッ ト 選 挙 が 変 え る 政 治 と 社 会: 日 米 ( ) West, Air Wars, pp.7-8. ( 韓に見る新たな「公共圏」の姿』 (慶應義塾大学出版 会、二〇一三年) 、三九頁。 ( ) West, Air Wars, p.9. 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( ) 前 嶋 和 弘「 オ バ マ 政 権 の メ デ ィ ア 戦 略 と 世 論: 『ゴーイング・パブリック戦略』の終焉?」吉野・前 嶋 編『 オ バ マ 政 権 は ア メ リ カ を ど の よ う に 変 え た の か』 、六六頁。 ( ) 前 嶋 和 弘「 オ バ マ 政 権 の メ デ ィ ア 戦 略 と 世 論: 『ゴーイング・パブリック戦略』の終焉?」吉野・前 ( ( ( 嶋 編『 オ バ マ 政 権 は ア メ リ カ を ど の よ う に 変 え た の か』 、六六頁。 ) Katz, Barris, and Jain, The Social Media President, p.51. ) Barbara Trish, “ Organizing for Action, ” Paper prepared for State Party Conference, the Bliss Institute, November 7 & 8, 2013, p.2. ) <http://www.theatlantic.com/politics/archive/2013/ 01/obamas-permanent-campaign-can-he-use-his- reelection-playbook-to-change-washington/272587/> 113 54 55 56 57 58 59 60 46 47 49 48 51 50 52 53 法学研究 88 巻 2 号(2015:2) ( ) “ Organizing for Action, ” Paper prepared Trish, for State Party Conference, the Bliss Institute, <http://www.theatlantic.com/politics/archive/2013/ 年) 、一〇〇頁。 党、制度、メディア、対外援助』 (東信堂、二〇一二 編『 オ バ マ 政 権 と 過 渡 期 の ア メ リ カ 社 会: 選 挙、 政 デ ィ ア の 台 頭 で 変 わ る 選 挙 戦 術 」 吉 野 孝・ 前 嶋 和 弘 November 7 & 8, 2013, p.2. 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