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AOSD 制御システム及び明電舎セラミックス無機膜 の新規性・独創性

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AOSD 制御システム及び明電舎セラミックス無機膜 の新規性・独創性
AOSD 制御システム及び明電舎セラミックス無機膜
の新規性・独創性・優位性・有用性
稲森悠平
2014,1,28
1.AOSD 制御システムの要旨:
水系感染性疾患による健康被害、臭気による環境の不健全化、水域の溶存酸素欠乏による
魚類の斃死およびアオコに代表される富栄養化による水利用の価値の低下のような生態系
の劣化の環境要因に対して,これらの環境問題を予防すると同時に保全再生することが排
水処理の主な目的である。現在までに、排水処理プロセスは、有機物・窒素・リン等の懸濁
物質および溶存汚染物質除去を高機能にかつ高度に達成するために先進技術の開発が絶え
間なくなされてきており、大きく発展してきている。
この場合、自然水域の環境保全再生のために、放流水質を高度化し、環境の保護だけでなく
貴重な水資源を確保する上での水循環の考え、および窒素・リン等の除去の高度化を省エネ
ルギー化のための電力削減技法を導入して達成することが極めて重要な位置づけとなって
きている。また、下水処理における一般的な方法は生物学的な細菌・ツリガネムシやラッパ
ムシ等の原生動物・ワムシ類や水生ミミズ等の微小後生動物の食物連鎖を基本とする微生
物生態系から構成される活性汚泥法であるが、電力消費量が多いこと、栄養塩としての窒
素・リン除去能が低コストで達成できていないことによる解決すべき問題点が残されてい
る。アンモニアを硝酸にする生物学的硝化反応、硝酸を嫌気条件で窒素ガスにする生物学的
脱窒反応の効率化および嫌気好気条件の繰り返しでリン蓄積微生物による生物学的リン除
去反応の効率化等を低コストで達成する必要がある。
これらを解決するために、従来の活性汚泥法の連続曝気法或いは曝気と非曝気を経験的な
技法に基づき運転する手法から、微生物の必要とする酸素量のみを供給する嫌気好気運転
技法の導入による電力削減と水質の高度化を両立するコベネフィット技法の確立のための
研究技術開発を実施した。
単一の生物処理反応槽の中で曝気と非曝気を効率的に行うことができれば省エネルギー化
を達成することが可能である。現在の下水処理場の消費電力量の50%近くは生物処理反
応槽に供給する曝気のための電力量であるためその電力量を高度な水質を保持して達成す
ることは極めて重要なことである。曝気効率を適正化する上でのプラント設計のためには、
曝気コントロールシステムを最適管理する必要がある。
そのためには、曝気空気を供給するための送風機のオン/オフ時間を最適化するために制御
センサ-を使用して、単純なタイマ-送風制御からより機能性のあるコンピュ-タプログ
ラム自動送風制御が重要となる。
ほとんどの既存の送風制御システムは、溶存酸素(DO)、酸化還元電位(ORP)、pH、アンモニ
ア性窒素(NH4N)および硝酸性窒素(NO3N)のような物理化学的なパラメ-タ-のコンビネー
ションの閾値に基づき送風機を操作させてきている。しかし、このような制御法はメンテナ
ンスが困難で信頼有る制御も経験値に頼っていることから適切な制御の出来ないことが問
題視されている。
本博士論文研究で導入された革新的技法である微生物の必要とする酸素量を自動的に演算
して供給するシステムとしての AOSD(AUTOMATIC OXYGEN SUPPLY DEVICE)システムは、1サ
イクルを 120 分として、曝気-非曝気の最適な時間を計算するために DO 変化・水温変化お
よび生物処理反応槽に生息する中核となる微生物の硝化反応速度/脱窒反応速度を数式化
してこの式に基づき追従してプログラム制御する新規性・独創性のある技法である。
本技法を導入して数理学的な演算式の実際における性能確保を検証するために処理パフォ
ーマンス、かつエネルギー削減能力の評価を行った。すなわち、本研究では一定温度および
一定流入水量負荷条件での AOSD 制御システムの有効性を水質特性・汚泥特性・生物特性・
省エネルギー特性等から解析と評価を行った。
試験用の生活排水は浄化槽の性能評価の国家基準の BOD200 mg・L-1; TN 45mg・L-1; TP5mg・L1
; SS 150mg・L-1 に標準化調整された実生活排水が用いられた。この実生活排水を用いて AOSD
システム制御システム(120min1サイクル)および固定の曝気/非曝気時間(30-90 分、40
-80 分、60-60 分等の条件)での比較試験が行われた。なお、放流水質・汚泥・生物特性
等は標準下水試験方法によって評価された。
その結果、AOSD 制御システムでは曝気時間は、平均 32 分( 幅 27〜35 分)であった。
この AOSD システム曝気自動調整制御時間において、30、40 および 60 分の固定曝気時間と
比較して、放流水質は良好で生物相も極めて質的にも量的にも豊富で良好かつ多様で安定
化することが明らかとなった。
AOSD システム制御システムの BOD 除去率は 95%以上、 T-N 除去率は 85%以上、T-P 除去率
は 60%程度で有り極めて優秀な高性能の得られることがわかった。
なお、T-N 除去率が増強されたのは、生物学的な硝化作用脱窒反応が必要酸素量の供給条
件下で極めて効率的に推進されたことに起因したからだといえる。すなわち、好気条件の過
程中の硝化反応と嫌気条件の脱窒反応が、酸素利用効率を最大限に増加させ必要酸素のみ
を供給消費するために機能したからといえる。
また、AOSD 制御システムでは、更に、活性汚泥法で満足すべき基本的な条件である沈殿槽
における汚泥の固液分離能を高め良好な処理水を得る上で大きな効果を有していることが
わかった。
AOSD 制御システムにおける送風機稼働の最適演算時間における曝気制限は、二酸化炭素の
排出量の削減およびエネルギ-消費量の削減の両方に大きく貢献することが明らかとなっ
た。
また、AOSD 制御システムでは、温室効果ガス CO2(二酸化炭素)、CH4(メタンガス)および
N2O(亜酸化窒素ガス)の排出量は、固定の曝気/非曝気時間(30-90 分、40-80 分、60-
60 分等の条件)に比較して確実に低減することがわかった。
これらの結果を基に、我が国で最も多く実績のある運転方法である固定の曝気/非曝気時間
60-60 分の条件と比較すると、AOSD 制御システムでは、平均 46%の電力消費量を削減でき
るという驚異的な知見を得ることが出来た。
なお、下水処理システムでは如何に維持管理を容易化するかが重要なる命題となっている
が、AOSD 制御システムは、DO 検出部の自動洗浄方式蛍光電極 LDO を使用することにより生
物反応の管理に対して事実上メンテナンスフリーとなることがわかった。
21 世紀の重要なエネルギー・水質問題は、持続型社会を構築する上で非常に大きな課題で
ある。下水処理システムにおいても消費電力エネルギーの50%近くを占める大量の曝気
エネルギー消費の現状から,省エネルギー化を高度な水質を確保して図ることが緊急課題
となっている。この課題を、省エネルギー化を図るための曝気量の制御の最適化のための
AOSD 制御システムを導入することで、大きく改善することが出来た。
以上の成果から、下水処理プラントの微生物の必要酸素量のみを通気コントロール可能
な AOSD 制御システムは信頼性の大きい環境にやさしいシステムである判断された。
2. AOSD 制御システム審査の要約
21 世紀の重要なエネルギー・水質問題は、持続型社会を構築する上で非常に大きな課
題である。下水処理システムにおいても消費電力エネルギーの50%近くを占める大量
の曝気エネルギー消費の現状から,省エネルギー化を高度な水質を確保した上で図るこ
とが緊急課題となっている。この課題を解決するには、省エネルギー化を図るための曝
気量のシステム制御の導入による最適化が必要である。
本研究において、嫌気・好気時間を微生物の酸素消費速度に応じ自動制御する
AOSD(Automatic Oxygen Supply Device)システム導入下の、完全混合型単槽式活性汚
泥法において、一定水温・流入負荷条件下で、AOSD 自動制御により従来の好気嫌気固
定運転と比べ T-N、BOD の除去性能が向上すると同時に、ブロワの消費電力を削減でき
ることを明らかにできた。なお、水温・流入負荷変動に対する自動制御運転に対して
四季の季節変動の水温変化に追従可能な制御システム構築および窒素・リン栄養塩類
の除去の高度処理の操作条件の構築に対しては、現在検証して問題の無いことが判明
してきているが、AOSD 制御システムの有効性を確実に明らかにできた。
このように、生活実排水を用いて,AOSD システム導入の有無による性能向上効果を
生物化学的に質的量的に比較解析し、国際的に汎用化可能な AOSD システム制御の最適
システムをおおむね構築できたことは極めて重要な成果であるといえる。
上記の研究より、新規性・独創性・有用性のある成果が得られているといえ、内容と
して素晴らしく、優秀なる性能で合格と判断されるものである。
3.明電舎のセラミックス無機膜の国際的な優秀性
明電舎のセラミックス無機膜(MBR)の優秀性については、ここ5年間以上の基
盤・応用試験研究から検証されている。現在の中国で展開されている有機膜は対摩耗
性が弱く定期的に膜を交換することが必要不可欠である。
しかし、明電舎のセラミックス無機膜(MBR)は、極めて耐性が大きく、30 年近く
無交換で運転することが可能である。
初期投資は有機膜に比べて費用は高いが、30 年計画でみると著しくコストが安いとい
える。嘉浄環保公司の将来計画に対して、このことは、極めて重要な特性である。
水の再利用対策においては明電舎のセラミックス無機膜(MBR)に勝るものは存在
しない。
3.1
嫌気性セラミックス無機膜(MBR)に対する脱硫を目的とした
マイクロエアレーションの適用と高効率化
嫌気性処理において発生する硫化水素は,ガスのエネルギー利用の際に障害となるだけ
でなく,極めて高濃度の場合,有機物のメタンへの転換率を減少させたり,阻害を生じた
りする。リアクターへの微量の空気導入 (マイクロエアレーション) は,適切な供給量の
制御の下で,メタン生成菌等への酸素による阻害を生じさせずに,硫化水素濃度の減少に
対して効果的に寄与する。その結果,ガスの品質が改善するとともに,メタン回収率の増
大にもつながる場合がある。この手法は,完全混合タンクを用いた嫌気性処理の研究・実
施設への応用が主である。UASB や MBR といった嫌気性排水処理に使用されるリアクタ
ーに対する応用はまだ報告されていない。また,発生する硫化水素濃度が数千 ppm の低
濃度のケースに適用されることが多く,ある種の工場廃水のように数万 ppm の高濃度の
ケースに対する適用例はほとんどない。
本研究では、硫酸塩濃度が高く、嫌気性処理において、微生物阻害や高い脱硫コスト等が
発生する産業廃水処理等において、嫌気性 MBR を用いたエネルギー回収型の処理を成立
させる事を目的として、嫌気性 MBR に高硫化水素濃度の下でマイクロエアレーションの
適用を試み、ガス中および液中の硫化水素濃度の低減化と阻害軽減による処理速度向上が
確認できた。それとともに高効率で処理できるようにエアレーションシステムの技術改善
ができた。
このような嫌気性処理に於いて明電舎のセラミックス無機膜の優秀性は実証されている。
本研究では現在問題となっているバイオマス廃棄物からのメタンガス等のエネルギー回
収の高度化を、新規膜分離嫌気処理システムにより開発するものであるが、本システムの確
立によりクリーンエネルギーの高速効率的回収・電力変換・バイオマスの資源循環が可能と
なり、低炭素型社会の構築に資する多大の成果が期待され、波及効果は甚大であるといえる。
3.2 セラミック平膜を用いた好気膜分離活性汚泥法におけるファウリング抑制手法
の開発と高効率化
生活排水の排水処理手法として、近年、コンパクト化や汚泥減量化に対応した膜分離活性
汚泥法(MBR)が開発されている。また、MBR は懸濁物質(SS)の流失がなく、病原性大
腸菌等の細菌類がろ過捕捉できることから、透明な水の確保や中水としての再利用にも適
している。しかし、膜の閉塞(ファウリング)を防ぐ曝気操作の電力消費が嵩むため、維持
管理コストが従来法よりも高くなることが課題とされている。2013 年度研究成果では、セ
ラミック平膜の特性を解析し、プロセス条件を変更することで、膜ファウリングを抑制でき
ることを確認した。しかし、生物処理に必要な空気量よりも、スクラビングエアに必要な空
気量が大きく、排水処理性能において、目標の T-N 濃度 10 mg・L -1 以下を達成することが
できなかった。また、有機物の膜表面付着量と浸漬洗浄前の膜間差圧に相関関係が見られず、
膜ファウリング物質のさらに詳細な分析が必要になった。
そこで、2014 年度の研究では、AOSD(Automatic Oxygen Supply Device)システムと
セラミック平膜の併用による膜分離活性汚泥法における電力削減および膜ファウリングの
抑制を目的とする。また、セラミック平膜を用いた排水処理実験によるファウリング原因物
質の特定およびファウリング特性の把握し、ファウリング抑制手法の基本的指針を構築す
る。
AOSD システムを MBR に導入することで以下の成果が期待される。
① スクラビングエア間欠化による維持コストの大幅な削減。
② AOSD システムによる排水の高度処理化
③ 排水の高度処理化に伴う、膜ファウリング抑制効果。
高度処理手法である MBR は水環境保全に貢献する技術である。よって、MBR 普及のボ
トルネックである曝気動力を削減する手法の開発やファウリングを抑制する運転指針を確
立することは排水処理分野への波及効果が期待できる。
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