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債券投資マンスリー - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

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債券投資マンスリー - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
債券投資マンスリー
No.263 2015年7月31日
~債券投資ウィークリー;2015年8月のシナリオ特集号~
リサーチ部
≪円債市場分析≫
石井 純
チーフ債券ストラテジスト
[email protected]
六車 治美
シニア・マーケットエコノミスト
[email protected]
戸内 修自
シニア・マーケットエコノミスト
JGB アウトルック
8 月の長期金利&イールドカーブ・シナリオ....................... 3
長期金利は0.40%台前半レンジで保合い継続。根強い「超・需給相場」効果により
0.45%が心理的シーリング、追加緩和期待の低迷で0.40%が心理的フロアに。 (石井)
ファンダメンタルズアナリシス
4-6 月期はマイナス成長、7 月コア CPI は小幅下落(8 月の景気・物価シナリオ)..15
4-6月期実質GDPは最終需要が総じて振るわず、3期ぶり前期比マイナス。7月は設
備投資堅調も全体としては緩やかな回復。コアCPIは7月全国で前年比下落。 (戸内)
[email protected]
ポリシーウォッチ
稲留 克俊
シニア債券ストラテジスト
成長率、インフレ率、内閣支持率の「3 つの率」(8 月の政策シナリオ)..... 25
[email protected]
橘 きくの
アシスタント
[email protected]
≪外債市場分析≫
中沢 剛
シニア外債ストラテジスト
[email protected]
井上 健太
シニア外債ストラテジスト
[email protected]
≪外国為替市場分析≫
植野 大作
チーフ為替ストラテジスト
[email protected]
8月発表になる「3つの率」次第で、秋以降の経済財政・金融政策対応に関する思惑
が浮上しよう。「3つの率」は成長率、インフレ率、そして内閣支持率。
(六車)
債券需給ウォッチ
無難通過が見込まれる 8 月の 10 年利付国債入札................ 35
来週4日(火)の10年利付国債入札は、ボラティリティの落ち着きや国内・景気物価環
境がフォローの材料になって無難な結果になると予想している。
(稲留)
TREASURY アウトルック
7 月 FOMC で利上げ開始へ向けて一歩前進も、残る懸念はインフレ動向に. 39
FOMCの関心は雇用からインフレへシフト。利上げ開始条件のチェックリストに「エネルギ
ー」を再び追加した模様。当方はエネルギー大底割れ回避で9月利上げ予想を維持。 (井上)
欧州債アウトルック
ドイツ長期金利は超低位安定を今後も維持..................... 43
景気・物価の下押し圧力は根強く、ECBはQEを粛々と遂行へ。ドイツ長期金利は概
ねゼロ%台後半で低低位安定へ。各国金利の対独スプレッドは改めて縮小。 (中沢)
外為ウォッチ
■ 内容に関するお問い合わせ先:
⇒ 各執筆担当者
■ eメール/郵送先の追加・変更:
⇒ 弊社営業担当者
緩やかなドル高・円安基調復活、いずれ 125 円超の空中戦へ.......... 55
7月のドル円相場は一旦伸び悩んだが、日米金融政策格差が今後一段と鮮明になる
につれ、緩やかな上昇基調がいずれ復活。早晩1ドル=125円超の空中戦へ。 (植野)
経済指標予想・イベント(8月3日~8月9日).......................70
マーケット・カレンダー(2015年8月~9月分)...................... 72
チャート集.......................................... 74
マーケット・ダイアリー(6月20日~7月24日分)..................... 77
お知らせ
※ 本レポートは2015年7月30日現在のデータをもとに作成されています。
債券マンスリー2015 年 7 月 31 日
-2-
JGB アウトルック
8 月の長期金利&イールドカーブ・シナリオ
チーフ債券ストラテジスト
7 月の長期金利&イールド
カーブ・レビュー
石井 純
7月の長期金利(10年利付国債利回り)は、30日現在、6月末比▲0.040%ポイントの0.415%
と3カ月ぶりに低下している(図1)。月間変動レンジは0.400%(28日)~0.530%(2日)の
0.130%ポイント。ちなみに、6月26日時点の予想レンジは0.420%~0.520%だった。6月、22
年債を境にベア/ブル・フラット化した国債イールドカーブは(図2)、7月は8年債を基点にブ
ル・スティープ化している(図3)。
図1:心理的なフロアの0.40%で下げ渋った7月の長期金利動向〔30日現在〕
0.75
0.70
0.65
0.60
0.55
(%)
13日:ユーロ圏首脳会議、ギリシャへの金融支援の再開について条件付きで合意
7月1日:大企業・製造業の業況判断DI;+3ポイントの+15(6月調査日銀短観)
14日:ギリシャ政府、20年物サムライ債約16億円を期日返済
1日:EUなどによるギリシャへの金融支援が失効、同国は事実上のデフォルト状態に
15日:日銀が15年度以降の成長率と物価上昇率の見通しを
小幅に下方修正(展望レポート・中間評価)
1日:ギリシャのチプラス首相がテレビ演説で、5日の国民投票での反対投票を呼びかけ
2日:10年利付国債入札が順調な落札結果
15日:黒田日銀総裁『(16年度の物価上昇率見通しの)
0.1ポイントという差に大きな意味を持たせる必要はない』
2日:米非農業部門雇用者数;前月比万+22.3万人、米失業率;同▲0.2%pの5.3%
5日:財政緊縮策の受け入れ是非を問うギリシャ国民投票が反対多数≒60%対40%
9日:30年利付国債入札が低調な落札結果
9日:日経平均が上海株式相場に振り回され、622円安(1万9,115円)から117円高(1万9,855円)に切り返して高値引け
11日:ギリシャ議会が財政改革案を承認
7月
0.50
0.45
0.40
20日:ギリシャの銀行が3週間ぶりに営業を再開
0.35
15日:イエレンFRB議長『FOMCメンバーの大半は年末までに
利上げが適切になると予測している』
0.30
22日:20年利付国債入札が順調な落札結果
23日:IMFが年次審査報告書で追加金融緩和を準備するよう要請
16日:5年利付国債入札が順調な落札結果
28日:2年利付国債入札が無難な落札結果
16日:ギリシャ議会が財政改革法案を可決、ECBがギリシャの銀行への追加資金供給を決定
0.25
(月)
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
図3:7月の国債イールドカーブ変化〔30日現在〕
図2:6月の国債イールドカーブ変化
1.6
(%)
(%ポイント)
利回り変化幅(A→B,右軸)
1.4
0.18
1.6
(%)
(%ポイント)
利回り変化幅(A→B,右軸)
0.18
0.15
1.4
0.12
1.2
1.0
0.09
1.0
0.09
0.8
0.06
0.8
0.06
0.6
0.03
0.6
0.03
0.4
0.00
0.4
0.00
0.2
▲ 0.03
0.2
▲ 0.03
0.0
▲ 0.06
0.0
▲ 0.06
▲ 0.2
▲ 0.09
▲ 0.2
A:5月29日(左軸)
0.12
B:6月30日(左軸)
O/N
2
4
6
8
10
0.15
A:6月30日(左軸)
1.2
B:7月30日(左軸)
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
〔残 存 年〕
注: 「O/N」は無担保コールレート翌日物。国債利回りは複利
出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
▲ 0.09
O/N
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
〔残 存 年〕
注: 「O/N」は無担保コールレート翌日物。国債利回りは複利
出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
-3-
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
ギリシャ不 安を巡 る楽観
論台頭で、米独金利の反
発に釣られて月間最高値
0.530%(2 日)に上振れ
7月の長期金利は、6月末からの流れを引き継ぎ上振れのスタートとなり、2日に月間最高値
となる0.530%を付けた。ギリシャが6月30日、国際通貨基金(IMF)からの借入金・約15億ユー
ロを期限返済できず、7月1日にEUなどによる同国への金融支援も失効したため、事実上のデ
フォルト状態に陥った。そして、あろうことか同国のチプラス首相は1日のテレビ演説で、緊縮
策の受け入れ可否を巡る国民投票(5日)での反対投票を呼びかけた。同国と債権団との対
立は先鋭化。ところが、国際金融市場では、両者はいずれ譲歩し妥協に至るとの楽観論が優
勢に。リスクオフ・ムードが急速に後退すると、安全資産逃避で低下していた米独長期金利が
反発に転じ、わが国長期金利もそれに釣られた(図4)。2日の10年利付国債(339回債リオー
プン、クーポン0.4%、発行予定額2兆4,000億円)入札への警戒感からの売りも出たもよう。落
札結果は、応札倍率が2.62倍と前回(6月2日、2.71倍)から低下し、テールが3銭で前回と同じ
で無難だったが(図5・6)、買い戻しの動きは限られた。
図4:7月の日米独長期金利の動向〔30日現在〕
1.1
(%)
(%)
ドイツ(左軸)
1.0
2.7
2.6
7月
0.9
2.5
0.8
2.4
0.7
2.3
米 国(右軸)
0.6
2.2
0.5
2.1
0.4
2.0
日 本(左軸)
0.3
1.9
0.2
1.8
(月)
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
図5:10年利付国債入札の発行予定額と応札倍率
3.5
(兆円)
図6:10年利付国債入札の発行予定額とテール
(倍)
6
3.5
(兆円)
(円)
応札倍率(右軸)
0.5
テール(右軸)
3.0
5
3.0
0.4
2.5
4
2.5
0.3
2.0
3
2.0
2
1.5
1
1.0
1.5
発行額(左軸)
0.2
0.1
発行額(左軸)
1.0
2010
11
12
13
14
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
結局、0.50%台での滞在
日数はわずか 1 日だった
15
0.0
2010
(年度)
11
12
13
14
15
(年度)
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
長期金利は翌3日から急低下に転じると、8日に一時0.405%と6月1日以来の低水準を付け
た。2日発表された米雇用統計の結果(後述)が弱めと受け止められ、FRBの「9月利上げ開始」
観測が後退、米イールドカーブがブル・スティープ化した。ギリシャ国民投票の結果が予想外
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
-4-
の反対多数となって同国債務問題に対する警戒感も再燃。長期金利は買い戻しを受けて急
転回すると、マドを空けて心理的な節目の0.50%を割り込んだ。そして8日には、中国株の大
幅続落を嫌気した日経平均株価が今年最大の下げ幅(683円安、図7)となったことから、安全
資産とされる国債に買いが入り、0.40%台割れ寸前まで低下した。結局、0.50%台での滞在
日数はわずか1日だった(前掲図1)。
強弱まちまちだった 6 月の
米雇用統計(2 日発表)
なお、6月の米非農業部門雇用者数は前月比+22.3万人と市場予想並みだったが、4~5月
分が下方修正された。また、米労働参加率が62.6%と1978年以来の低レベルで引き続き弱含
み。米平均時給は前年同月比+2.0%と市場予想(同+2.3%)を下回った。一方、米失業率は
5.3%と前月から0.2%ポイント低下し、市場予想(5.4%)も下回った。
図7:7月の日米中株式相場の動向〔30日現在〕
21,500
(円,ドル)
(1990年12月19日=100)
日経平均株価(左軸)
21,000
7月
5,500
5,250
20,500
5,000
20,000
4,750
19,500
4,500
上海総合指数(右軸)
19,000
18,500
4,250
4,000
NYダウ(左軸)
18,000
3,750
17,500
3,500
17,000
3,250
5
6
7
8
(月)
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
無難だった 10 年物価連動
国債入札(7 日)
7日に実施された10年物価連動国債(20回債リオープン、クーポン0.1%、発行予定額5,000
億円)入札の結果は、応札倍率が2.33倍と前回(5月8日、2.65倍)から低下したものの、最低
落札価格が106円70銭と市場予想の範囲内だったので(原油安にもかかわらず案外)無難と
評価された。
低調な 30 年債入札結果
(9 日)とリスクオフ・ムード
後退による債券売り
9~14日の長期金利は反発した。9日に実施された30年利付国債入札の結果が後述のとお
り低調だったため、債券売りが広がった。13日のユーロ圏首脳会議では、ギリシャと支援国側
が金融支援の再開について条件付きながら合意に至った 1。14日にはギリシャ政府が20年物
サムライ債、約16億円を期日返済。日経平均株価はこれらを好感する格好で週初に2万円台
を回復し、その後も戻り高値を模索した(前掲図7)。株高を受けたリスクオフ・ムードの後退もま
た、債券売りを誘った。なお、30年債(47回債リオープン、クーポン1.6%、発行予定額8,000億
円)入札の落札結果は、応札倍率が2.21倍と04年4月債(2.03倍)以来の低水準にとどまり、テ
ールも41銭と前回(6月4日、14銭)から拡大した(図8・9)。利回り水準の低下による最終投資
家の需要低迷が改めて映し出された。
1
16 日、ギリシャ議会が財政改革法案を可決し、ECB はギリシャの銀行への追加資金供給を決定した。
-5-
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
図8:30年利付国債入札の発行予定額と応札倍率
1.0
(兆円)
図9:30年利付国債入札の発行予定額とテール
(倍)
1.0
6
(兆円)
(円)
1.5
テール(右軸)
応札倍率(右軸)
0.8
5
0.8
1.2
0.6
4
0.6
0.9
0.4
3
0.4
0.6
2
0.2
0.3
1
0.0
2010
発行額(左軸)
0.2
発行額(左軸)
0.0
2010
11
12
13
14
15
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
月後半は米債高/原油安
を背景に、順調な国債入
札結果を受けて弱含み
(年度)
0.0
11
12
13
14
15
(年度)
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
月後半の長期金利は0.40%台前半の狭いレンジ内で弱含みに推移し、28日に月間最低値
の0.400%を付けた。主な背景は米長期金利の低下傾向(前掲図4)と原油安の進行(図10)だ
った。
米債市場では、「9月利上げ開始」観測がじわり後退し 2、買い戻しの動きが優勢になった。
国内債券市場では、WTI原油先物価格の反落(50ドル/バレル割れ)により物価上昇ペースが
鈍化し、日銀による追加緩和の可能性が高まるとの思惑も浮上し、債券買いを誘った。加えて、
5年利付国債入札(16日)と20年利付国債入札(22日)が順調な落札結果だったことも買い手
掛かりに。5年債(124回債リオープン、クーポン0.1%、発行予定額2兆5,000億円)入札の応札
倍率は3.20倍と前回(6月16日、2.87倍)から上昇し、テールは前回と同じ1銭だった(図11・12)。
20年債(153回債リオープン、クーポン1.3%、発行予定額1兆2,000億円)入札の落札結果は、
応札倍率が3.09倍と前回(6月11日、2.56倍)から上昇し、テールが5銭と前回(11銭)から縮小
した(図13・14)。
図10:再び50ドル/バレルを割り込んだ7月のWTI原油先物価格〔30日現在〕
120
(ドル/バレル)
IMF世界経済見通し
(下方修正)
110
OPEC減産見送り
100
(逆オイル・ショック)
90
80
70
60
50
米国産シェールオイルの採掘コスト
“50ドル/バレル”
40
30
20
(年)
注: 週末値
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
2
イエレン FRB 議長は 15 日の議会証言で『FOMC メンバーの大半は年末までに利上げが適切になると予測している』と述べたが、新味を欠いたた
め、市場の反応は限られた。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
-6-
図11:5年利付国債入札の発行予定額と応札倍率
(兆円)
図12:5年利付国債入札の発行予定額とテール
(倍)
6
3.5
3.0
5
3.0
2.5
4
2.5
3.5
(兆円)
(円)
0.10
応札倍率(右軸)
0.08
0.06
発行額(左軸)
テール(右軸)
2.0
1.5
3
2.0
0.04
2
1.5
0.02
1
1.0
発行額(左軸)
1.0
2010
11
12
13
14
15
0.00
2010
(年度)
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
12
13
14
15
(年度)
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
図14:20年利付国債入札の発行予定額とテール
図13:20年利付国債入札の発行予定額と応札倍率
2.0
11
(兆円)
(倍)
2.0
6
(兆円)
(円)
応札倍率(右軸)
0.5
テール(右軸)
1.6
1.6
0.4
5
1.2
1.2
0.3
発行額(左軸)
4
0.8
0.8
0.2
0.4
0.1
3
0.4
発行額(左軸)
0.0
2010
0.0
2010
2
11
12
13
14
15
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
追加緩和期待を牽制した
黒田日銀総裁(15 日)
(年度)
0.0
11
12
13
14
15
(年度)
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
日銀は15日に公表した「経済・物価情勢の展望<中間評価>」で、15年度以降の成長率と物
価上昇率の見通しを小幅に下方修正した。黒田東彦総裁は16年度の物価上昇率見通しが
1.9%と目標の2%を下回ったことについて、会見で『16年度前半に2%程度に達するという見
通しは変わらない。0.1ポイントという差に大きな意味を持たせる必要はない』と解説し、追加緩
和期待を牽制した。そのため最終週の長期金利は、株式相場の底堅さ(前掲図7)もあって、
このところ心理的なフロアになっている0.40%を前に下げ渋った 3。
無難だった 2 年利付国債
入札(28 日)
28日に実施された2年利付国債(355回債、クーポン0.1%、発行予定額2兆5,000億円)入札
の落札結果は無難だった。応札倍率は3.84倍と前回(6月25日、3.71倍)から上昇し、テール
は3厘に前回(2厘)から拡大した。
なお、7月の利付国債入札での発行予定額による加重平均応札倍率は3.09倍となり、6月
債入札(3.04倍)から持ち直した(図15)。
7 月の TB&短期債・中期
債市場レビュー
7月の国庫短期証券(TB)の利回りは総じて6月からマイナス幅を拡大した(図16)。月間平
均値で比べると、3カ月物は0%から▲0.020%、6カ月物は▲0.015%から▲0.034%、1年物は
▲0.025%から▲0.031%に低下している。一方、2年利付国債利回りは小幅高。月間平均値
は▲0.003%から0.004%に上昇した(図16)。5年利付国債利回りは弱含みに推移し、0.109%
から0.105%に小幅低下。もっとも、日銀当座預金の超過準備付利;0.10%が事実上のフロア
になっている(図16)。
3
この視点に関しては、「JGB 羅針盤(7 月 30 日)No.217」の『「10・30 追加緩和Ⅱ」を巡る長期金利のメイン/リスクシナリオ』で検証した。
-7-
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
7 月の利付国債利回り・主
要年限間スプレッドのレビ
ュー
7月の利付国債利回り・主要年限間スプレッドは、10年-5年が0.30%ポイント台で縮小傾向
だった半面、20年-10年が0.75%ポイント前後、30年-10年が1.00%ポイント前後で横ばいだっ
た(図17)。月間平均値で6月と比べてみても、10年-5年が0.33%ポイントと6月(0.36%ポイント)
から小幅縮小し、20年-10年が0.75%ポイント、30年-10年が1.00%ポイントでほぼ横ばいとなっ
ている。
図15:利付国債入札における応札倍率<発行額加重平均>
8.0
(倍)
バ
ズ
カ
Ⅰ
カ
Ⅱ
ー
バ
ズ
ー
7.5
7.0
6.5
6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
2012
13
14
15
(年度)
注: 利付国債は2年・5年・10年・20年・30年・40年物で、流動性供給入札分と第Ⅱ非価格競争入札分を除く
出所:財務省の資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
図17:7月の利付国債・主要年限間スプレッド〔30日現在〕
図16:7月のTB&短期債・中期債市場〔30日現在〕
0.150
(%)
(%p)
0.60
7月
0.125
0.55
5年利付国債
1.10
7月
30年-10年(右軸)
0.50
(%p)
0.100
1.15
1.05
0.45
1.00
0.050
0.40
0.95
0.025
0.35
0.90
0.075
2年利付国債
0.000
0.30
▲ 0.025
0.25
▲ 0.050
▲ 0.075
TB1年物
0.85
10年-5年(左軸)
0.80
0.20
TB6カ月物
TB3カ月物
▲ 0.100
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
0.70
0.10
(月)
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
0.75
20年-10年(右軸)
0.15
0.65
5
6
7
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
-8-
(月)
8 月の長期金利&イールド
■ 8 月の長期金利&イールドカーブ・シナリオ
カーブ・シナリオ
8 月の長期金利は、基本的には 0.40%台前半レンジでの保合いを続ける。手掛かり材料
難とボラティリティの鎮静化で夏枯れ相場の様相に。ただし、米長期金利が「9 月利上げ開始」
を改めて織り込み 2.50%を目指し上昇する場面があれば、0.40%台後半の水準へと独長期
金利とともに連れ高となる。その場合、国債イールドカーブは 10 年債を境にベア・スティープ/
フラット化する。一方、日銀が盛んに強調している「物価の基調」に先行き不透明感が強まれ
ば、「10・30 追加緩和・第二弾」への期待感が高まり、このところ心理的なフロアになっている
0.40%を割り込んで低下余地を探ろうとする。そのときの国債イールドカーブは 10 年債を境と
するブル・フラット/スティープ化。
【予想レンジ】
0.380%~0.480%
【ポイント】
(1) いずれも固そうな心理的シーリングの 0.450%と心理的フロアの 0.400%
(2) 0.50%超えの火付け役だった独長期金利動向のその後
表1:2015年度~17年度の金利・相場予想レンジ〔7月31日時点〕
日
実質GDP
本
コア消費者物価指数
マネタリー・ベース
無担保コールレート翌日物
短
期
金
利
円TIBOR 3カ月物
2年利付国債
5年利付国債
中
長
期
金
利
10年利付国債
20年利付国債
30年利付国債
外
国
為
替
株
式
ドル円
ユーロ円
日経平均株価
実質GDP
米
FFレート
国
10年国債
NYダウ
ー
ユ
ロ
圏
実質GDP
レポ・レート(リファイナンス・レート)
独10年国債
2015年度 【予 想】
2014年度
2013年度
2016年度 【予 想】
4-9月
10-3月
4-6月
7-9月
10-12月
1-3月
4-6月
7-9月
10-12月
1-3月
―
―
▲ 0.7
2.1
1.2
1.0
1.1
1.1
0.8
1.8
2017年度
【予 想】
―
前期比年率[%]
―
前年度比 [%]
2.1
前年比 [%]
0.8
220
0.044
1.1
253
0.029
0.1
295
0.015
0.1
325
0.010
▲ 0.2
340
0.060
0.2
355
0.030
0.7
375
0.030
0.7
395
0.030
1.0
415
0.030
1.0
435
0.030
1.0
455
0.030
1.2
535
0.050
0.210
0.060-0.145
0.210
0.060-0.085
0.171
▲0.035-0.070
0.170
▲0.020-0.025
0.170
▲0.020-0.025
0.140
▲0.040-0.020
0.140
▲0.040-0.020
0.140
▲0.020-0.040
0.140
▲0.020-0.040
0.140
▲0.020-0.080
0.140
0.020-0.100
0.250
0.050-0.200
0.085
0.130-0.420
0.195
0.455-0.935
0.075
0.145-0.195
0.165
0.485-0.640
0.035
0.000-0.160
0.130
0.200-0.525
▲ 0.005
0.050-0.130
0.110
0.285-0.535
▲ 0.005
0.050-0.120
0.075
0.350-0.550
▲ 0.020
▲0.010-0.080
0.025
0.250-0.500
▲ 0.020
▲0.010-0.080
0.025
0.250-0.500
0.000
0.000-0.100
0.050
0.250-0.550
0.000
0.000-0.100
0.050
0.250-0.550
0.050
▲0.010-0.200
0.150
0.250-0.750
0.100
0.100-0.300
0.250
0.500-0.900
0.150
0.150-0.400
0.350
0.600-1.100
期末残高 [兆円]
期末値 [%]
レンジ [%]
期末値 [%]
レンジ [%]
期末値 [%]
レンジ [%]
▲ 0.9
1.1
1.2
0.6
期末値 [%]
0.625
0.525
0.400
0.455
0.350
0.300
0.350
0.400
0.450
0.600
0.800
1.000
レンジ [%]
1.130-1.775
1.505
1.320-1.500
1.345
0.865-1.360
1.125
1.045-1.285
1.190
1.050-1.300
1.150
1.000-1.250
1.100
1.000-1.250
1.150
1.050-1.300
1.200
1.050-1.300
1.250
1.050-1.500
1.350
1.250-1.650
1.550
1.35-1.850
1.750
1.210-1.900
1.710
1.605-1.715
1.605
1.065-1.650
1.335
1.270-1.535
1.425
期末値 [%]
レンジ [%]
期末値 [%]
レンジ [円/ドル]
期末値[円/ドル]
レンジ [円/ユーロ]
期末値[円/ユーロ]
レンジ [円]
92.57-105.44 100.82-109.85 105.23-122.03 118.50-125.86
103.23
109.65
120.13
122.5
119.11-145.69 135.73-143.48 126.91-149.78 126.10-141.06
期末値 [円]
14,827
16,173
前期比年率[%]
―
―
2.2
期末値 [%]
0.00-0.25
1.63-3.03
2.72
レンジ [%]
期末値 [%]
期末値 [ドル]
1.200-1.450
1.300
1.200-1.450
1.350
1.250-1.500
1.400
1.250-1.500
1.450
1.250-1.700
1.550
1.450-1.850
1.750
1.550-2.050
1.950
119.0-132.0
125.5
123.6-139.9
119.5-132.5
126.0
121.6-138.0
120.0-133.0
126.5
120.9-137.2
120.5-133.5
127.0
120.1-136.4
121.0-134.0
127.5
119.3-135.7
120.5-134.5
127.5
118.7-136.3
120.5-134.5
127.5
118.7-136.3
142.13
138.49
128.91
136.5
134.5
131.8
129.8
129.0
128.3
127.5
127.5
127.5
11,805-16,320 13,885-16,375 14,529-19,778 18,927-20,952 18,500-21,500 18,800-21,800 18,800-21,800 19,000-22,000 19,000-22,000 19,000-22,000 19,000-22,000 19,000-22,500
暦年・前年比 [%]
レンジ [ドル]
1.250-1.500
1.350
118.0-131.0
124.5
126.3-142.6
19,206
20,235
20,500
―
2.3
2.2
2.4
0.00-0.25
2.34-2.80
2.49
0.00-0.25
1.64-2.43
1.92
0.00-0.25
1.80-2.50
2.35
0.25-0.50
1.85-2.45
2.10
14,434-16,588 16,015-17,351 15,855-18,288 17,577-18,351 17,300-18,700
16,458
17,043
17,776
17,620
18,100
前期比年率[%]
―
暦年・前年比 [%]
▲ 0.3
―
20,800
20,800
21,000
21,000
1.6
2.8
2.5
2.8
2.2
―
1.8
0.50-0.75
1.85-2.45
2.10
0.75-1.00
1.85-2.45
2.10
1.00-1.25
1.75-2.35
2.00
17900-19,500
19,000
18400-20,000
19,400
18600-20,400
19,800
2.1
2.0
2.1
1.9
0.9
20,800
20,500
2.7
2.3
―
1.00-1.25
1.75-2.35
2.00
1.00-1.25
1.85-2.45
2.10
1.00-1.25
2.05-2.65
2.30
2.4
1.00-1.25
1.75-2.35
2.00
21,500
2.6
18,800-20,200 19,500-21,000 19,700-21,200 19,700-22,000
19,600
20,400
20,600
21,400
1.7
1.5
1.6
1.8
1.9
―
1.6
期末値 [%]
0.25
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
レンジ [%]
1.20-2.05
1.57
0.86-1.65
0.95
0.16-0.92
0.18
0.04-1.05
0.76
0.30-1.00
0.70
0.10-0.90
0.65
0.10-1.00
0.70
0.10-1.15
0.75
0.10-1.15
0.75
0.20-1.20
0.75
0.20-1.20
0.78
0.20-1.40
0.90
期末値 [%]
注: 1.実績値について ~ 日・米・ユーロ圏の国債利回りは“終値ベース”。日本の2年~30年利付国債は新発物。日経平均株価、ドル円・ユーロ円、NYダウは“ザラ
バ・ベース”
2.予想レンジおよび予想期末値について~ 7月31日時点でアップデート(前回は7月17日時点)。「日本」「短期金利」「中長期金利」「株式」は円債市場分析チーム、
「外国為替」は外国為替市場分析チーム、「米国」「ユーロ圏」は外債市場分析チームによる
3.日本のコア消費者物価指数(前年比)の予想は消費増税の影響を除く
4.米FFレート、ユーロ圏レポ・レートは各中央銀行による誘導目標水準。米国とユーロ圏の実質GDP成長率(暦年)は前年の年間対比
出所:Bloombergなどより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(予想は弊社)
-9-
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
(1) いずれも固そうな心理的シーリングの0.450%と心理的フロアの0.400%
8 月のポイント(1)
長期金利の心理的なシー
リングは「0.450%」
8月の長期金利動向は、0.40%台前半のレンジを中心として膠着感が強まりそうだ。5月以
降、上振れ要因だった米独、特に高騰したドイツの長期金利動向が後述するとおり小康を完
全に取り戻したので、異次元緩和による「超・需給相場」効果が復活し、金利上昇を再び強力
に抑え込むだろう。この観点に基づく長期金利の心理的なシーリングは「0.450%」である。な
んとなれば、それは図18のとおり、昨年10月31日の「展望レポート」会合で追加緩和(黒田バ
ズーカⅡ)が決定され、「超・需給相場」の構図が増強されたときの水準だからだ。同効果のバ
ロメーターである利付国債・ネット供給額の償還超幅を表2で確認しておくと、昨年度が年率▲
29.7兆円だったのに対し、今年度はバズーカⅡにより1.7倍の同▲50.7兆円に拡大している。
図18:0.400%~0.450%のレンジを中心に膠着しそうな8月の長期金利動向
0.60
(%)
6月11日 0.535%
0.55
0.50
0.45
0.40
黒
田
バ
ズ
0.35
4・30「展望レポート」会合
ー
0.30
カ
Ⅱ
0.25
4月24日 0.285%
0.20
1月19日 0.200%
0.15
(月)
15年
2014年
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
表2:2015年度 利付国債・カレンダーベース市中発行分のネット供給額
〔=【A】市中発行額-【B】市中償還額-【C】オペレーション額〕
〔単位;億円〕
2015年度 当初予算ベースの見込み
4月
【A】 市中発行額 合計
市中発行額 計
2年
5年
10年
10年・物
20年
30年
40年
流動性供給入札
6~29年
【B】 ネット償還額
市中償還額 計
2年
5年
10年
15年・変
20年
日銀保有分 計 〔控除要因〕
【C】 オペレーション 合計
日銀・利付国債買入
財務省・買入消却
【A-B-C】 ネット供給額
5月
6月
7月
8月
合 計
9月
10月
11月
12月
102,000
111,000
102,000
102,000
1月
14年度
13年度
3月
2月
1,264,000
1,278,000
1,266,000
103,000
94,000
98,000
99,000
98,000
94,000
103,000
94,000
94,000
99,000
98,000
94,000
1,168,000
1,194,000
1,194,000
25,000
25,000
2 4 ,0 0 0
5,000
12,000
8,000
4,000
25,000
25,000
2 4 ,0 0 0
25,000
25,000
2 4 ,0 0 0
25,000
25,000
24,000
25,000
25,000
24,000
25,000
25,000
24,000
25,000
25,000
24,000
12,000
8,000
4,000
12,000
8,000
12,000
8,000
12,000
8,000
25,000
25,000
24,000
5,000
12,000
8,000
25,000
25,000
24,000
12,000
8,000
4,000
25,000
25,000
24,000
5,000
12,000
8,000
4,000
25,000
25,000
24,000
12,000
8,000
25,000
25,000
24,000
5,000
12,000
8,000
12,000
8,000
4,000
12,000
8,000
300,000
300,000
288,000
20,000
144,000
96,000
20,000
324,000
324,000
2 8 8 ,0 0 0
18,000
144,000
80,000
16,000
348,000
324,000
2 8 8 ,0 0 0
6,000
144,000
68,000
16,000
111,000
102,000
106,000
107,000
106,000
107,000
106,000
102,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
96,000
84,000
72,000
27,955
23,432
117,171
23,892
24,001
138,732
12,847
12,456
123,183
12,155
12,670
117,984
646,478
595,722
589,447
30,948
30,281
174,037
30,481
31,174
180,147
28,994
28,994
177,548
28,990
28,990
184,916
955,500
888,287
831,243
30,948
30,281
31,535
77,042
59,467
5,993
30,481
31,174
30,300
72,081
61,035
5,991
10,740
28,994
28,994
29,818
75,465
64,269
7,996
28,990
28,990
29,945
72,331
64,896
7,992
9,752
360,450
296,919
249,667
27,972
20,492
338,470
305,365
229,111
343,072
249,729
228,249
2,993
6,849
56,866
6,589
7,173
41,415
16,147
16,538
54,365
16,835
16,320
66,932
309,022
15,341
292,565
241,796
91,757
91,200
93,208
92,100
92,100
92,100
92,100
92,100
92,100
98,600
98,600
98,600
1,124,565
978,946
882,196
90,957
89,600
92,408
91,500
91,500
91,500
91,500
91,500
91,500
98,000
98,000
98,000
1,115,965
938,946
858,796
800
1,600
800
600
600
600
600
600
600
600
600
600
8,600
40,000
23,400
▲ 8,992 ▲ 10,101
▲ 128,832
6,053
▲ 2,556 ▲ 113,283
▲ 3,755
▲ 5,270 ▲ 114,584
▲ 507,043
▲ 296,668
▲ 205,643
▲ 8,712 ▲ 12,632 ▲ 104,379
注:
10,193
1.「【A】市中発行額」とは、国債発行計画に基づくカレンダーベース市中発行額のこと。カレンダーベース市中発行額とは、あらかじめ額を定めた入札により定期的
に発行する国債の4月から翌年3月までの発行予定額の総額のこと。ただし第Ⅱ非価格競争入札(4兆3,800億円)は勘案せず
2.「【B】ネット償還額」とは、カレンダーベース市中発行分の償還予定額。ただし日銀買い入れ分(15年5月末現在)を除く
3.「【C】オペレーション額」はオファー日ベース。「日銀・利付国債買入」は予定額の予想。「財務省・国債買入消却(変動利付国債のみ)」はオファー額で、7~9月分
が6月19日に公表された
出所:財務省と日本銀行の資料などより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 10 -
長期金利を「0.450%」超
へと上振れさせる波乱要
因
長期金利を「0.450%」超へと上振れさせる波乱要因としてウォッチすべきは、相場材料とし
ては引き続き海外の長期金利動向である。特に「年内利上げ」がほぼ確実視されている米長
期金利動向であることは言うまでもない。この点は「債券投資ウィークリー(7月24日号)No.262」
のJGBアウトルック(9月利上げ開始後の米長期金利動向を巡る不確実性に戦々恐々の国内
債券市場)で検討した。
「金利とボラティリティの連
鎖的上振れ」という悪循環
メカニズムの蓋然性
もう一つ要注意なのは、長期金利のボラティリティの動静だ。債券市場の旧弊である「金利
とボラティリティの連鎖的上振れ」という悪循環メカニズムが再発してしまえば、さしもの「超・需
給相場」効果もひと溜まりもない。債券市場はそれを、13年4月の異次元緩和ショックで経験済
みである。もっとも、最近のボラティリティ動向を図19で確認すると、5月以降の金利上振れ場
面でも上げ渋り、当該悪循環メカニズムのスイッチをオンにしなかったうえ、ここもとは弱含み
に推移し、「金利とボラティリティの相乗的な低位安定」という好循環メカニズムへの分水嶺に
接近している。悪循環が起動しなかったのは、結局、ボラティリティ上昇に伴う機械(VaRショッ
ク)的な売り物が、日銀による国債大量吸い上げゆえの玉不足のために出てこなかったからだ
ろう。このようにボラティリティや需給の状況から長期金利動向を見通すと、0.450%超、さらに
は0.50%超へと再上昇する可能性は案外低いと言えそうだ。
図19:長期金利とボラティリティとの関係〔7月30日現在〕
0.045
(%ポイント)
(%)
0.55
<悪循環>
0.040
0.50
長期金利(右軸)
0.035
0.45
0.030
0.40
0.025
0.35
0.020
0.015
0.30
<好循環への分水嶺>
0.25
0.010
ヒストリカル・ボラティリティ
(左 軸)
0.005
0.000
0.20
0.15
(月)
2014年
15年
注:
ヒストリカル・ボラティリティは長期金利・前日差の20日間の標準偏差。「悪循環」とは「金利とボラティリティの連鎖的上振
れ」という悪循環メカニズム、「好循環」とは「金利とボラティリティの相乗的な低位安定」という好循環メカニズムのこと
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
長期金利の心理的フロア
は「0.40%」
一方、債券市場がこのところ心理的フロアと意識している「0.40%」も固そうだ。長期金利は
図18のとおり、4月30日の「展望レポート」会合をきっかけに急上昇となり、その後も概ね0.40%
以上で上振れ推移している。急上昇の直接的な原因は米独債券相場の下落だったが、背景
には早期追加緩和への期待感の後退という要因もある。日銀が当該会合で、客観的に見て
『目標達成が困難な情勢になった』にもかかわらず、「物価の基調」論を盾に、追加緩和・第二
弾による『必要な調整』を見送ったためだ。日銀は7月15日に公表した「展望レポート<中間評
価>」でも、15年度以降の成長率と物価上昇率の見通しを小幅ながら下方修正しつつ、黒田
総裁が『(16年度の物価上昇率見通しの)0.1ポイントという差に大きな意味を持たせる必要は
ない』と解説し、市場の追加緩和期待を牽制した。こうしてみると、やはり10月30日の次回「展
望レポート」会合における追加緩和・第二弾への期待感が高まってこない限り、長期金利は心
- 11 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
理的フロアの0.40%割れを躊躇しそうだ。逆に言えば、「10・30追加緩和・第二弾」説がコンセ
ンサス化してゆけば、長期金利は0.40%を割り込んで低下余地を探るだろう。このように、
0.40%台割れの必要条件(の一つ)は、引き続き“早期追加緩和期待の復活”である 4。
8 月のポイント(2)
(2) 0.50%超えの火付け役だった独長期金利動向のその後
5月以降の金利上振れの背景は早期追加緩和期待の後退で、直接的な原因は海外の長
期金利上昇だった。その主犯格は独長期金利の高騰である。何しろ、ECBによる国債大規模
購入によりマイナス圏突入も時間の問題と誰もが覚悟した直後、4月17日の0.05%を大底とし
て急上昇に転じ、6月10日の1.06%まで約1.0%ポイントもの高低差を駆け上がったのだから
(図20)、大いに驚かされた。
図20:日独長期金利動向の局面比較
1.1
(%)
(%)
2カ月
1.0
0.9
日本〔2013年〕
×
異次元緩和導入
0.8
0.7
0.6
ドイツ
ECB国債購入開始
0.5
0.4
+
0.3
0.2
0.1
0.0
(月)
2015年
注:
独長期金利が終値の過去最低値;0.075%を記録した4月20日に、日長期金利が13年当時の過去最低値;0.455%を
付けた13年4月4日を合わせた。「+」印は日長期金利が13年4月5日に記録したザラバ最低値;0.315%、「×」印は13
年5月23日に記録したザラバ最高値;1.000%
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
0.50%超への上振れの原
因となった独長期金利急
騰のレビュー
筆者はその背景・原因として、「債券投資ウィークリー(5月8日号)No.251」のJGBアウトルッ
ク(針のような上影陰線<独長期金利・日足>の出現で小康を得た国内債券市場)で次の3点
を指摘した。①そもそもの発端は、金利低下のスピード警戒感と相場の高値警戒感をインセン
ティブとした現物の利益確定売りや先物のヘッジ売り、②景気の底打ちやインフレ期待の台
頭、量的緩和縮小の可能性、それを示唆する金融当局の金利上昇追認発言などを大義名分
とした売り仕掛け、③ボラティリティ上昇による投資家のリスク許容度(押し目買い余力)の低
下・喪失。要するに、ドイツ版の「金利とボラティリティの連鎖的上振れ」という悪循環がその実
態と捉えた。そして、「債券投資ウィークリー(5月22日号)No.253」のJGBアウトルック(異次元
緩和ショック後のわが国債券市場を彷彿させる独債券市場の動揺ぶり)では、『わが国債券市
場の異次元緩和ショック後(2013年4月~)の経験を参考にすると、日柄調整の期間は2カ月
4
より詳しくは、「JGB 羅針盤(6 月 24 日)No.211」の『長期金利が 0.30%台に再低下するための必要・十分条件』を参照。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 12 -
程度を見ておく必要がある。大地震だっただけに、余震も2カ月間くらいは続くということ』と予
想した。案の定、独長期金利は大よそ2カ月間の日柄調整を経て、値幅調整がすでに十二分
だったこともあってピークアウトとなり、その後はかつてのわが国長期金利よりもやや速いペー
スで低下余地を探る動きとなっている。原因はギリシャ問題絡みのリスクオフ基調だろう。
独長期金利シナリオとの
関係
こうしてみると、独長期金利は、ECBの異次元緩和(=ゼロ金利+マイナス付利+量的緩和)
政策とリスクオフ・ムードを背景に、引き続き0%台後半という歴史的な大底圏で推移していき
そうだ(図21)。本邦独債投資家の昨年度・年間投資コスト<ネット売買高による加重平均>が
0.84%なので、0.80%台以上の金利水準では、押し目・ナンピン買いが入ると見込まれる。と
すると、独長期金利が再び1.0%台へと上振れし、その火の粉が今5~6月のようにわが国債券
市場に飛んでくるという状況の再現は想定されない。国内長期金利も独長期金利とともに上
がりにくい地合いを維持しそうだ。一方、独長期金利が多少上振れする場面があるとしたら、
それはわが国長期金利と同様、米長期金利がFRBの「9月利上げ開始」を織り込んで2.50%を
目指し上昇するときである。なお、米長期金利シナリオについては、「債券投資ウィークリー(7
月24日号)No.262」のJGBアウトルック(9月利上げ開始後の米長期金利動向を巡る不確実性
に戦々恐々の国内債券市場)を参照。
図21:日米独の長期金利シナリオの比較
4.0
(%)
シナリオ
3.5
米国
3.0
2.26%
2.5
2.0
ドイツ
1.5
日本
1.0
0.84%
0.5
0.0
0.52%
▲ 0.5
(年)
注: 実績は週末値、シナリオは四半期末値。数字は本邦投資家の2014年度年間投資コスト<ネット売買高による加重平均>
出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(シナリオは弊社)
(7月31日 15:30)
- 13 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
*** 「JGBアウトルック」と「JGB羅針盤」のバック・ナンバー ***
【JGBレポートのご活用法】
随時発行の「JGB羅針盤」は、債券市場の相場材料やトピックを掘り下げた実証分析レポートです。これに対し、毎週末に定期発行している「JGBアウトルック」
(債券投資ウィークリー/マンスリー/クオータリーに掲載)は、長期金利&イールドカーブ・シナリオの定点観測という位置付けです。シナリオという織物を作成していくうえで、
「JGB羅針盤」はいわば横糸、「JGBアウトルック」は縦糸にあたります。横糸の織り方を変えたとき 、すなわち「JGB羅針盤」で新たなファクトファインディングが
あった場合には縦糸の織り方も変える、すなわち「JGBアウトルック」でシナリオを軌道修正することになります。このように両レポートは密接に連関しております
ので、どちらもお見逃しなく !
タイトル
月
日
7
30
羅針盤
「10・30追加緩和Ⅱ」を巡る長期金利のメイン/リスクシナリオ
29
羅針盤
安倍内閣の「支持率<不支持率」とアベノミクス相場の関係
24
アウトルック
17
アウトルック
6
5
4
9月利上げ開始後の米長期金利動向を巡る不確実性に戦々恐々の国内債券市場
「物価の基調」論の補完狙いか~「生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数」
長期金利の上げ渋り要因と下げ渋り要因の実情把握
じわり広がっている金利先高観の行方~今月末に“0.459%”を下回っているか?
13
羅針盤
7
羅針盤
3
アウトルック
1
羅針盤
不透明な“日銀国債保有残高;年間80兆円増”の持続性
29
羅針盤
ギリシャ危機発のリスクオフによる長期金利への低下圧力
26
アウトルック
24
羅針盤
19
アウトルック
0.30%台への低下・定着のカギは早期の追加緩和期待が息を吹き返すかどうか?
16
羅針盤
再考迫られる国債安全神話を支えてきた“2 つの信認”
12
アウトルック
5
羅針盤
見逃せない“0.50%台乗せ”の背景
「ギリシャ」と「中国」で高まったリスクシナリオCの蓋然性
“札割れ事故”発生後の長期金利の水準訂正メド
5日・ギリシャ国民投票後の同国債務危機の行方と市場への余波の見方
「超・需給相場」効果の回復のカギを握る"触媒"(追加緩和期待)の行方
14・15 日の日銀金融政策会合に向け早期追加緩和期待は息を吹き返すか?
ギリシャ問題の混迷と独長期金利、「9 月利上げ」観測の強まりと米長期金利
長期金利が0.30%台に再低下するための必要・十分条件
“2 カ月&1.0%”で独長期金利の日柄・値幅調整終了なら、日長期金利も天井圏
今年度の長期金利・予想レンジ&イールドカーブ・シナリオの修正
2
羅針盤
政策金利の正常化に伴うベア/ブル・フラット化の示唆とは?
29
アウトルック
6月および2015 年度~17年度の長期金利&イールドカーブ・シナリオ
27
羅針盤
異次元緩和2年目に進行した債券ポートフォリオ・リバランス
22
アウトルック
22
羅針盤
15
アウトルック
14
羅針盤
ファンダメンタルズ・モデルによる推計長期金利<アップデート>
13
羅針盤
「超・需給相場」モデルによる推計長期金利の読み方
8
アウトルック
1
アウトルック
米独金利の修正シナリオと日長期金利シナリオとの関係
日経平均株価の2 万円台定着の再チャレンジが長期金利動向に及ぼす影響
異次元緩和運営の軌道修正のインプリケーションと債券市場
異次元緩和ショック後のわが国債券市場を彷彿させる独債券市場の動揺ぶり
「バズーカⅡ決定時の0.40%台後半」という三たび確認された長期金利の天井感
針のような上影陰線<独長期金利・日足>の出現で小康を得た国内債券市場
米雇用統計を受けて「6月利上げ説」が息を吹き返したときの米長期金利動向
好循環入りを阻み悪循環への逆戻りのトリガーを引きつつある独長期金利の行方
「2年」の後倒し修正が市場心理にじんわり及ぼす余波に要注意
1
羅針盤
黒田日銀が連呼する『物価の基調』と長期金利動向の関係
28
羅針盤
超過準備付利下げ<予想>の国債イールドカーブへの影響
24
アウトルック
「三山」のネックライン;0.300%割れのインプリケーション
今年度も結果的に“期初ピーク”となる公算~2015 年度の長期金利動向
24
羅針盤
「2年で2%」の弾力運用が長期金利動向に与える影響
22
羅針盤
「超・需給相場」効果の伝播による日米欧の異例の低金利
17
アウトルック
4・30日銀「展望レポート」会合に向け、ジワリ高まりそうな「サプライズ緩和」期待
往々にして波乱の芽となる「サプライズ緩和」期待にご用心
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 14 -
ファンダメンタルズアナリシス
4-6 月期はマイナス成長、7 月コア CPI は小幅下落(8 月の景気・物価シナリオ)
シニア・マーケットエコノミスト 戸内 修自
7 月のマクロ経済レビュー:
6 月短観の景況感は大企
業で予想を上回る改善も、
ハードデータは総じて振る
わず
6月調査日銀短観(1日(水))では、大企業・製造業の業況判断DIが前回3月調査比+3pt
の15、同・非製造業は同+4ptの23で、いずれの直前の市場予想を上回る改善(図1)。製造
業は資本財関連が底堅く、非製造業はインバウンド消費増加の恩恵を受けている業種が改
善をけん引。ただし製造業の改善幅は実勢比強めに出ている可能性がある1。また、中堅・中
小企業は製造業で大企業とは対照的に悪化、非製造業は大企業に比べ改善が鈍かった。全
規模・全産業の業況判断DIは、同横ばい。
7月中に公表された主として6月分のハードデータは総じて振るわず、日銀短観での景況感
を参照するなら、大企業よりは全規模・全産業のそれと整合する内容だった。まず海外需要に
関しては、6月の実質輸出が前月比+1.0%と5月の落ち込み(同▲5.1%)に比べ鈍い改善に
とどまり、4-6月期は1-3月期比▲3.6%と4四半期ぶりにマイナス(図2)。米国向けは5月に減少
したのち6月の持ち直しも限定的で、6月に株価が急落に転じた中国向けはそれより前からの
減少基調が継続。なお、実質輸入も足元弱含みながら、4-6月期は前期比▲1.8%と輸出に比
べマイナス幅は小さく、同四半期の実質GDP前期比に対する純輸出(財)の寄与度はマイナ
スが示唆される。6月の訪日外客数は前年同月比+51.8%、インバウンド消費(サービス輸出
の一部)も好調を保ったと推測されるが、財貿易の不振を補うのは難しいと思われる。
図2:4-6月期の実質輸出は前期比マイナス
図1:6月日銀短観の景況感は大企業で改善、全体は横ばい
30
(「良い」-「悪い」、ppt)
見通し
20
125
(10年=100)
(10年=100)
200
120
150
115
100
110
50
-20
105
0
-30
100
-50
-40
95
-100
90
-150
10
0
-10
-50
-60
2000
2002
2004
大企業・製造業
中小企業・非製造業
2006
2008
2010
大企業・非製造業
全規模・全産業
注: 網掛けは景気後退期
出所:内閣府より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
2012
2014
85
2010
(年)
中小企業・製造業
-200
2011
実質貿易収支(右軸)
2012
2013
実質輸出
2014
(同・四半期)
2015
実質輸入
(同・四半期)
注: 日銀試算値
出所:財務省、日本銀行より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
個人消費も、6月は振るわなかった。家計調査での実質消費支出(二人以上の世帯)は5月
に前年比プラスへと持ち直したが、6月は前年同月比▲2.0%と再び前年割れ。季調値前月比
もはっきりした落ち込み(図3)。小売販売額(商業動態統計)は駆け込みの反動が残っている
ためか3ヵ月連続で前年を上回っているが、実勢としてはやはり低調だった模様。名目所得は
緩やかな増加を続けており、少なくとも消費の下押し要因になっているとは考えにくい。6月は
1
素材業種が同横ばい、加工業種は同+2pt にとどまる。前回 3 月調査ではこれと逆のことがみられており、小数点以下も考慮した実勢は緩やかな改善
継続と推測される。
- 15 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
天候不順の影響が指摘され、家計調査ではエアコン等向け支出の減少が顕著。生活必需品
の持続的な値上がりが、消費全体の抑制要因となっている可能性も引き続き意識される。ちな
みに所得面に関するハードデータとしては、5月毎月勤労統計の現金給与総額(一人当たり
賃金)が前年同月比+0.7%。実質賃金は前年比横ばいとマイナスは脱出しているが、プラス
転換はボーナスによる押し上げが期待される6月以降に先送りの形となった。また、15年春闘
妥結結果の最終集計を厚生労働省や連合が公表。定昇を含む賃上げ率はそれぞれ昨年比
+0.19ptの2.38%、同+0.13ptの2.20%(連合は平均賃金方式)2。
設備投資については、輸出や個人消費とは対照的に好調な数字が多くみられた。6月日銀
短観での15年度の大企業設備投資計画(ソフトウェアを含み、土地を除く)は前年比+10.3%
と2ケタ増の計画(図4)。3月調査から+大幅に上方修正され(修正率:+7.0%)、6月調査とし
ては06年度以来の良好な内容。とりわけ、製造業で強めの数字が提示されている(同+
17.3%〔修正率:+10.8%〕)。代表的な先行指標である機械受注<船舶・電力を除く民需(コ
ア受注)>は5月にかけて3ヵ月連続で増加、足元では製造業がけん引している(5月コア受
注:同+0.6%、うち製造業:同+9.9%)。もっとも、一致指標と位置づけられる資本財(除く輸
送機械)出荷は、6月こそプラスだったものの4-6月期は前期大幅増の反動もあり低下。
図4:15年度の大企業設備投資計画は好調
図3:6月の個人消費は天候不順もあって振るわず
116
114
112
110
(2010年=100)
15
(前年度比%)
10
5
108
106
104
102
100
98
96
94
92
0
-5
-10
-15
-20
3月調査
2010
2011
2012
2013
家計調査・実質消費支出<除く住居等>
2014
2015
(年)
商業動態統計・小売業販売額<実質>
注: 季調値(小売業販売額は当方試算)
出所:総務省統計局、経済産業省より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券
6月調査
9月調査
12月調査
実績見込
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
実績
2011年度
注: 日銀短観(15 年 6 月調査」)・「ソフトウェアを含む設備投資(除く土地投資額)」
出所:日本銀行より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券
6月の鉱工業生産は、前月比+0.8%と2ヵ月ぶりにプラス(図5)。ただし、4-6月期は前期比
▲1.5%と3四半期ぶりにマイナスに転じた。国内新車販売の低迷を反映し輸送機械が減少し
たことに加え、14年度後半に堅調だった電子部品・デバイス、はん用・生産用・業務用機械等
も増勢が一服した。在庫・在庫率も、業種別にはまちまちの動きながら全体としては高めの水
準が続き、調整圧力の残存が示唆される。生産予測指数(7月:同+0.5%、8月:同+2.9%)
はプラスで出ているが、これで生産実績を先延ばしすると7~8月は前期比+1.7%と、4-6月期
のマイナスを取り戻す程度にとどまる形。ちなみに、生産関連統計が多く採用されている5月
景気動向指数(速報、6日)では、一致CIに基づく景気判断が「改善」から「足踏み」に下方修
正。昨年8月以来の下方修正で、足元における景気のもたつきを改めて確認させた3。
2
連合によれば、賃上げ分がわかる企業における賃上げ分は 0.69%(14 年は 0.39%)。うち昨年と同一企業の比較では 0.64%(14 年は 0.46%)。
3
24 日(金)開催の景気動向指数研究会では、前回の景気の山が 12 年 4 月から 3 月に改定され、谷は同 11 月で変わらず。一致 CI に基づく暫定的な
判断によれば、その後 14 年 8 月~11 月にかけて景気後退の可能性を示唆する「下方への局面変化」が登場していたが、今回のヒストリカル DI による
判断では景気後退局面との判定にはならなかった。また今回、採用系列の入れ替えも同時に行われている(第 11 次改定)。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 16 -
消費者物価<生鮮食品を除く総合>(コアCPI)は、6月全国が前月から変わらずの前年同
月比+0.1%とプラス圏を維持。一方、7月東京都区部では同▲0.1%と、13年4月以来となる
下落に転じた(図6)。全国・東京ともにエネルギーの下押しを食品・コアコアの上昇が打ち消
す構図であることは共通。ただし東京では原油価格が再び軟調となるなか石油製品が弱含み
で推移したほか、食品価格の値上げ一服が下押し方向に働いたことが、コアCPIのマイナスと
して現れた。CPI上昇率のゼロ近傍推移を背景に、家計・企業の物価予想は横ばいもしくは小
幅低下。6月調査日銀短観での企業の物価見通し(全規模・全産業)は、公表値ベースでは3
年後のみ低下(前年比+1.5%←3月調査:同+1.5%)したが、1年後・5年後見通しも実態とし
ては3月から低下したとみられる。家計に関しては、6月『生活意識に関するアンケート調査』で、
物価上昇を予測する家計の割合がわずかに上昇するにとどまっている。
図5:4-6月期生産はマイナス、予測指数は回復方向
125
図6:7月東京都区部コアCPIは前年比小幅下落
(10年=100)
4
予測指数に
より延長
120
(前年同月比%)
3
115
2
110
1
105
0
100
95
-1
90
-2
85
-3
2006
80
2010
2011
2012
鉱工業生産
2013
出荷
2014
在庫
2015
在庫率
注: 生産の直近 2 時点(15 年 7・8 月)は、実績を予測指数で単純に延長
出所:経済産業省より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
4-6 月期はマイナス成長
の可能性、7-9 月期は持
ち直しを見込むが、生産
予測指数等の改善は緩や
か
(年)
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
コアCPI<全国>
同(消費増税の影響を除く)
コアCPI<東京都区部>
同(消費増税の影響を除く)
2015
(年)
出所:総務省統計局より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
当方では、6月に公表された1-3月期GDP・2次速報の結果を受け、15年度通年の成長率見
通しを据え置く一方、4-6月期については前期比横ばいに下方修正した。その後公表された
主として4~5月分の主要指標は総じて弱い内容のものが目立ったことから、当方では7月17
日発行の『債券投資ウィークリー』において4-6月期の実質成長率見通しを一段と下方修正し、
小幅マイナス(前期比▲0.2%、同年率▲0.7%)との見方に改めた。
4-6月期が当方見通しどおりマイナス成長となってもそれは一時的で、7-9月期以降は回復
基調に戻るとみている。6月生産と同時に公表された7・8月生産予測指数がいずれもプラスで
あること、機械受注が民需にけん引される形で増加基調を維持していること等は、その見方を
サポートすると思われる。ただし、7・8月予測指数は4-6月期の低下分を取り戻す程度のプラス
にとどまる。実績が予測指数から下振れやすい傾向が残っていることも勘案すれば、7-9月期
を通じての回復ペースも緩やかなものとなる可能性が示唆される。
需要サイドでは、設備投資に引き続き明るさ。代表的な先行指標である機械受注<船舶・
電力を除く民需>は、4~5月平均が期初見通しから大幅に上振れての推移。4月は自動車、
5月は鉄鋼からの受注が急増するなど製造業からの受注が相対的に好調で、15年度の設備
投資計画とも整合する動き。4-6月期の一致指標(資本財出荷等)はやや伸び悩んだ格好だ
が、比較的しっかりした伸びを早晩取り戻すことになろう。
他方、個人消費や外需の先行きには、相対的に不透明感がぬぐえず。個人消費について
は、実質賃金がようやく5月に下げ止まり、目先は賞与の好調も手伝って待望のプラス浮上と
なりそうな情勢だが、CPI上昇率が再加速する年度後半には前年割れに戻る可能性が意識さ
- 17 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
れる。そのCPI再加速もいわゆる前年の裏が出るもので、消費者の実感としてはそのことが必
ずしも購買力低下として受け止められないかも知れないが、実勢としても実質賃金の伸びが
着実に高まっていく展開は見込みにくい。
輸出も、4-6月期は先進国・新興国向けを問わず低調。うち先進国の景気自体は底堅く、米
国も4-6月期は年初の停滞を脱し年率+2%台の成長を取り戻していることから、わが国の当
該地域向け輸出も持ち直しが予想される。他方、中国向けは現地景気減速を背景に、数量
ベースで減少傾向が続いている。6月途中から加速した株安が逆資産効果等を通じ追加的に
輸入需要を下押しする可能性は必ずしも高くないとみているが、実態が見えにくい面もあり予
断を許さない。商品市況軟化を通じてCPIを下押しするリスクも想定される。
コアCPIは、7月東京都区部が前年比下落に転じた。7-9月期全国コアCPIはエネルギー安
で前年比下落との見方が市場では支配的であり、ほぼ想定されたとおりの展開。他方、食品
(生鮮食品を除く)やコアコアは上昇が継続中、日銀が公表を開始した「総合(除く生鮮食品・
エネルギー)」はそれを反映し比較的しっかりした動き。食品では7月以降も値上げが控え、コ
アコアでは円安が主因とみられる上昇もうかがえる。ただし、個人消費に力強さがうかがえな
いなかで、コスト上昇を直接のきっかけとする値上げが消費者にスムーズに浸透していくかど
うかは、慎重にみておく必要がある。
今回の『債券投資マンスリー』では、景気・物価のシナリオに変更はない(表1)。15年4-6月
期については、近日中に6月主要指標を踏まえた直前予想を公表予定。15年度実質GDPは
前年比+1.2%で変わらず。年度初はマイナス成長とつまづいた形ながら、7-9月期以降は緩
やかな成長に復帰すると見込んでいる。15年度のコアCPIは、同+0.2%で変更なし。
表1:日本経済見通し
予想
実質GDP
(前期比年率)
(前年比)
国内需要*
民間需要*
個人消費
住宅投資
設備投資
民間在庫*
公的需要*
政府消費
公的固定
純輸出*
輸出
輸入
名目GDP
(前年比)
GDPデフレータ (前年比)
内需デフレータ (同)
CPI・除く生鮮食品(同)
<コア>
同・除く食料・エネルギー(同)
<コアコア>
鉱工業生産 (前期比)
(前年比)
米国GDP(前期比年率)
注:
2014年度
4-6
7-9
10-12
▲ 1.7 ▲ 0.5
0.3
(単位:%)
2015年度【 予想】
1-3
4-6
7-9
10-12
1-3
1.0 ▲ 0.2
0.5
0.3
0.3
2016年度【予想】
13年 度 14年 度 15年 度 16年度 17年度
4-6
7-9
10-12
1-3
【 予想】 【 予想】 【 予想】
0.3
0.3
0.2
0.5
2.1
▲ 0.9
1.2
1.1
0.6
▲ 6.8
▲ 2.0
1.2
3.9
▲ 0.7
2.1
1.2
1.0
1.1
1.1
0.8
1.8
▲ 0.4
▲ 1.4
▲ 1.0
▲ 0.9
0.6
1.7
1.5
0.9
1.5
1.2
0.9
1.2
▲ 2.8 ▲ 0.5
0.0
1.1 ▲ 0.2
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
0.2
0.6
▲ 2.9 ▲ 0.7
0.0
1.2 ▲ 0.2
0.4
0.4
0.3
0.3
0.4
0.3
0.6
▲ 5.1
0.4
0.4
0.4
0.0
0.4
0.3
0.2
0.2
0.3
0.4
1.0
▲ 10.8 ▲ 6.4 ▲ 0.6
1.7
1.5
0.7
0.6
0.8
1.1
1.5
0.6 ▲ 1.0
▲ 4.8
0.1
0.3
2.7
1.0
1.6
0.9
0.8
0.7
0.8
0.9
1.2
1.3 ▲ 0.7 ▲ 0.2
0.6 ▲ 0.4 ▲ 0.1
0.0
0.0
0.0
0.1 ▲ 0.0 ▲ 0.2
0.1
0.1
0.0 ▲ 0.1 ▲ 0.0 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.2 ▲ 0.1
0.0
0.3
0.2
0.3
0.1
0.2
0.1
0.1
0.0
0.1
0.0
0.1
0.2
0.7
1.6
0.1 ▲ 1.5 ▲ 1.4 ▲ 1.5 ▲ 1.8 ▲ 1.6 ▲ 3.0 ▲ 4.6 ▲ 4.1 ▲ 1.0
1.1
0.1
0.3 ▲ 0.2
0.0
0.2
0.0
0.0
0.1
0.1
0.0 ▲ 0.1
▲ 0.0
1.6
3.2
2.4 ▲ 0.7
1.9
0.7
0.9
1.1
1.3
1.4
1.3
▲ 5.2
1.1
1.4
2.9 ▲ 0.6
0.6
0.5
0.6
0.7
0.8
1.2
1.8
0.1 ▲ 0.7
0.8
2.3 ▲ 0.2
0.4
0.2
0.5
0.2
0.3
0.5
0.7
1.8
0.6
1.4
2.5
2.1
3.3
2.6
1.0
1.5
1.3
1.3
1.7
2.2
2.1
2.4
3.4
1.5
1.6
1.0
0.1
0.0
0.1
0.5
0.6
2.5
2.3
2.1
1.4
0.1
0.1
0.2
0.7
0.4
0.5
0.6
0.5
3.3
3.1
2.7
2.1
0.1 ▲ 0.2
0.2
0.7
0.7
1.0
1.0
1.0
( 1.4) ( 1.1) ( 0.7) ( 0.1)
2.3
2.3
2.2
2.1
0.4
0.6
0.6
0.7
0.8
0.9
0.9
1.0
( 0.6) ( 0.6) ( 0.5) ( 0.4)
▲ 3.0 ▲ 1.4
0.8
1.5 ▲ 1.5
1.3
0.9
0.5
0.4
0.5
0.8
1.6
2.7 ▲ 0.8 ▲ 1.5 ▲ 2.1 ▲ 0.6
2.1
2.3
1.3
3.1
2.4
2.2
3.3
4.6
5.0
2.2 ▲ 0.7
2.3
2.2
1.6
2.8
2.5
2.8
2.7
2.3
1. *印は前期比成長率に対する寄与度。米国GDPの年度欄は暦年値
CPIの下段カッコ内は消費税率引き上げ等の影響を除く
2. 前提条件:補正予算を伴う景気対策(カッコ内は公共投資)
…14年度(1兆円)・16年度(2兆円)
消費税率引き上げ(17年4月:8%→10%〔食品に軽減税率〕)
3. 予想は7月31日時点(前回は7月17日)。鉱工業生産等を修正
ドル円レート(年度平均)
原油価格(入着、ドル/バレル)
経常収支(兆円)
同・対名目GDP比(%)
貿易収支(通関、兆円)
出所:内閣府等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 18 -
2.6
1.8
2.5
9.3
4.0
▲ 0.5
0.8
1.6
10.3
▲ 0.5
4.4
6.7
1.8
▲ 1.5
▲ 1.7
▲ 3.1
▲ 11.7
0.4
0.5
0.2
0.4
2.0
0.6
8.0
3.7
1.6
1.0
1.1
1.1
1.8
4.9
▲ 0.3
▲ 0.1
0.5
▲ 4.6
0.2
5.0
3.4
2.2
0.9
1.4
1.4
3.3
3.5
▲ 0.0
▲ 0.5
0.3
▲ 11.0
0.2
4.7
3.2
1.5
0.4
0.4
0.1
▲ 3.6
2.9
0.1
▲ 0.1
0.3
▲ 3.0
0.2
3.8
2.4
2.2
▲ 0.3
0.4
0.8
2.5
2.1
2.8
( 0.8)
2.2
( 0.5)
▲ 0.4
1.1
0.3
0.2
0.3
0.5
0.9
0.6
0.9
1.4
2.6
1.6
1.5
2.0
( 1.2)
2.4
( 1.4)
0.5
0.2
3.2
2.2
2.4
2.2
2.4
2.6
100.1
109.6
0.7
( 0.2)
▲ 13.8
109.9
90.7
7.8
( 1.6)
▲ 9.1
121.9
70.0
16.1
( 3.2)
▲ 3.4
124.3
73.0
16.9
( 3.3)
▲ 3.1
125.0
75.0
19.1
( 3.7)
▲ 1.6
8 月の景気・物価シナリオ
8月中に公表される主として7月分の主要指標は、総じて4-6月期にみられた弱い動きから
持ち直す方向での動き。設備投資関連指標においては、年初からの機械受注の好調が資
本財出荷等にも徐々に反映される。15年度設備投資計画では総じて強めの数字が提示さ
れており、それが実際の投資行動にも現れ始めていることを示唆。個人消費は天候不順等
が災いした6月から幾らか改善、賞与を含めた賃金の緩やかな回復は所得面から消費を一
定程度サポート。海外需要は、新興国向けに弱さが残るものの、先進国向けは4-6月期の
落ち込みを脱する動きとなり、全体としては緩慢ながらも回復。そうしたなか、コアCPIはエネ
ルギー安を主因に小幅前年割れが継続。個人消費の回復が緩やかにとどまるなか、食品・
コアコアの上昇率に加速感は生じにくい。
ポイント
ポイント(1) 4-6 月期 GDP
はマイナス見込み、7 月は
設備投資を中心に緩やか
な持ち直しへ
(1)
4-6月期GDPはマイナス見込み、7月は設備投資を中心に緩やかな持ち直しへ
(2)
不安定な動きの続く中国株、構造調整による下押しへも引き続き警戒が必要
(3)
「新物価指数」(総合〔除く生鮮食品・エネルギー〕)は順調に上昇を続けるか
17 日(月)に、4-6月期GDPが公表される。当方では、同四半期の実質GDPを前期比横ば
いと予想してきた。しかし4~5月分の主要統計が総じて弱含みで推移していたこと等を踏まえ、
17日発行の『債券投資ウィークリー』において実質成長率見通しを小幅マイナス(前期比▲
0.2%、同年率▲0.7%)に下方修正した。今週にかけて公表された6月分主要統計を踏まえた
直前予想は来週初にもご提示する予定であるが、6月家計調査での実質消費のマイナス等も
勘案すると、現時点の感触としてはさらなる下振れが意識される。
1-3月期の高めの成長(前期比+1.0%)のうち、在庫による押し上げが半分近くを占めてお
り(+0.4ppt)、翌4-6月期は在庫でその反動が出ると当方ではみていた。ただし実際の着地は
個人消費や輸出等の最終需要も、全般的に弱めの着地となった公算が高い。個人消費につ
いては悪天候による下押しが指摘されるが、4-6月期を通じた弱さを必ずしも説明できないこと
から、生活必需品の値上げが集中したことも相応の下方インパクトをもたらしたと思われる。輸
出は地域を問わず低調で、好調を維持したインバウンド消費(サービス輸出の一部)をもって
もカバーできなかったと思われる。設備投資は法人企業統計を織り込んで改定される9月の2
次速報で修正が入ろうが、1次速報は伸び悩んだ可能性が高い。仮に4-6月期がマイナスで
の滑り出しとなれば、15年度の出だしでつまづく形になり、同年度に高めの成長を見込む政
府・日銀の景気シナリオ達成に向けたハードルはやや高くなることになる。
ただし当方では、4-6月期の最終需要の弱さは基本的に一過性と判断しており、7-9月期以
降は緩やかな成長軌道に戻るとみている。8月中に公表される主として7月分の主要統計は、
7-9月期景気の行方を占ううえで重要となる。最終需要のうち、設備投資に関してはある程度
の確度をもって7-9月期の回復が期待できそうだ。重要な先行指標である機械受注<船舶・電
力を除く民需>(コア受注)は、ここもと好調に推移。1-3月期の前期比+6.3%に続き、4~5月
平均も1-3月期を+5.6%上回っている(図7)。受注好調にもかかわらず資本財出荷や総供給
(国内向け出荷に輸入を加味したもの)が足元にかけ伸び悩みとなっているのは、受注から出
荷まで比較的長い時間を要する品目が機械受注を押し上げており、生産・出荷への反映が
幾分遅れているため、という面はありそうだ(図8)4。であれば、7-9月期の資本財生産・出荷は、
こうした国内需要の増加に支えられることになりそうだ。
4
図 8 は、内閣府『マンスリー・トピックス~先行指標から見た設備投資』(2014年 1 月)で採用されている手法をもとに、機械受注・民需の機種別受注額を、
受注・出荷間のタイムラグに基づいて 3 カテゴリーに分類し、それぞれ季節調整したもの。
- 19 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
ちなみに設備投資に関しては、8月初に日本政策投資銀行による設備投資調査の公表が
見込まれる。15年度の設備投資計画そのものは、公表済の他のサーベイ同様好調な数字が
示されよう。計画数字以外の調査項目(設備投資動機〔能力増強投資、更新投資等〕、国内・
海外別投資計画(国内回帰)等を通じて今年度設備投資計画好調の背景を確認するとともに、
投資増加の持続性を考えていくうえでも参考になると思われる。
図 7:設備投資関連指標の推移
150
図 8:機械受注・民需(出荷までのタイムラグ別)
(10年=100)
700
140
(10億円)
600
130
500
120
110
400
100
300
90
200
80
100
70
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年)
資本財<除く輸送機械>・総供給
資本財<除く輸送機械>・出荷
SNA民間設備・実質
実質機械受注<船舶・電力除く民需>
注: いずれも季調値(総供給および機械受注の直近は15年4~5月平均)
出所:内閣府、日本銀行、経済産業省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券
0
05
06
07
08
長期(ラグ6ヵ月~)
09
10
11
12
中期(ラグ2~4ヵ月)
13
14
15 (年)
短期(ラグ0~1ヵ月)
注: 機械受注・民需を受注と出荷の間のラグ期間により分類(詳細は脚注4)
出所:内閣府より三菱UFJモルガン・スタンレー証券
個人消費については、6月伸び悩みの一因として天候不順が指摘されることから、7月は一
定の反動が予想される。所得面からは夏季賞与も含め消費のサポート効果が期待されるとこ
ろ(主な夏季賞与サーベイは図9)。今夏の天候について、当初はエルニーニョの影響が懸念
されていたが、7月途中から全国的に気温が上昇。気象庁も直近の1ヵ月予報では、8月の気
温は高めを予想している5。その通りとなれば、夏物商戦を活発化させることで少なくともマイン
ド面では明るさが広がると予想される。ただし、夏場の気温と個人消費の間に、それほど明確
な関係は見て取れない(図10)。夏物商品の売れ行きが伸びる一方でそれ以外の財・サービ
図9:主な賞与関連サーベイ
図10:7-9月期の気温と消費性向の関係
1995~2014年各年の7-9月期のデータ。
消費性向はSNAベース。平均気温は全国8大都市の単純平均値
出所:内閣府、気象庁より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
注:
出所:日本経団連、日本経済新聞等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
5
北日本・東日本で平年を上回る可能性が最も高く、西日本・沖縄奄美でも平年並みもしくは平年より高いとしている。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 20 -
ス向け支出を抑制させることに加え、長期的に気温が上昇傾向をたどるなか、高温がむしろ外
出を手控えさせる傾向が強まっている可能性もあり、過大な期待は禁物かもしれない。
中国株式市場の不安定な動きが、同国経済の見通しを一段と不透明なものにしている。
ポイント(2) 不安定な動き
の続く中国株、構造調整
による下押しへも引き続き
警戒が必要
2014年後半から強含みに転じた中国株式市場は、今年6月12日に直近高値をつけたが、そ
の後急落に転じた(図11)。下落基調が強まるなか当局は6月終盤から株価下支えに本格的
に動き(表2)、流動性供給や規制緩和に加え、株安に拍車をかけたとされる“悪意のある空売
り”等を取り締まる姿勢も表明。7月からは証券会社や証券金融会社を通じた直接的な株価下
支え策も打ち出されており、その「救市資金」の総額は既に1兆元に達しているとも伝えられる。
政策総動員の結果、7月に入ってから幾らか相場は落ち着きを取り戻したようにうかがわれた。
しかし、「救市資金」撤退に関する噂や報道をきっかけに売りが膨らむ場面もあり、なお神経質
な相場展開が続いている。
図 11:不安定な値動きが続く中国株式市場
図 12:信用取引残高の推移
(ポイント)
5,500
25,000
(億元)
5,000
20,000
4,500
4,000
15,000
3,500
3,000
10,000
2,500
2,000
5,000
1,500
J
F M
2014
A
M
J
J
A
S
O N
D
J
F M
A
2015
M
J J
( /月)
0
J F M
2014
上海総合指数<左軸>
A
M
J
J
A
S
O N
D
J F M
2015
A
M
J
J
(年/月)
出所:上海証券取引所、CEIC より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
注: 上海・深セン両取引所での信用取引残高
出所:上海証券取引所、CEIC 等より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
表2:株式市場急落への中国当局・金融業界の対応
日付
6月12日
6月27日
6月30日
7月1日
7月3日
7月4日
7月5日
7月7日
7月8日
7月9日
7月13日
7月20日
7月27日
政策対応等
証券監督管理委員会(証監会)、ネット経由での「場外配資」を禁止
中国人民銀行、追加金融緩和を発表(28日より貸出・預金基準金利、預金準備率引き下げ)
中国基金業協会の私募証券投資基金専門委員会「資本市場の安定的発展が使命」
上海・深セン取引所、A株取引所税等引き下げ(8月より)
証監会、信用取引業務に関する規制緩和
中国証券金融の増資決定
証券会社21社が1200億元のファンドを組成しETF購入へ(⇒市場救済資金①)
上場認可済28社が株式発行延期を発表、募集資金は返済へ
中国匯金公司、流通市場でのETF購入を実施中と表明
中国人民銀行、中国証券金融に流動性支援へ(⇒市場救済資金②との見方)
中国基金業協会、投信会社57社が株式ファンド投資を開始と表明
証監会、5%以上の大株主による株式売却を6ヵ月間禁止
財政部、政府保有の上場企業株を売却しない方針
国有資産監督管理委員会、中央企業に傘下の上場企業株を売却しないよう指示
中国保険監督管理委員会、保険会社による株式投資規制緩和
中国銀行業監督管理委員会、「資本市場の安定的発展の支持」のための措置
(金融機関による株式担保融資の返済条件協議を可能に)
公安部、違法性のある空売り等について調査開始
証監会、場外配資大手(恒生電子)に訪問調査
「市場救済資金の退出検討」との報道(証監会が否定コメント)
「IMFが市場支援策停止を勧告」等との報道(証監会が否定コメント)
出所:新華社等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
- 21 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
中国株価急落が現地の経済にもたらす影響について当方では、総じてみれば限定的であ
るものの、株式市場のメインプレイヤーたる高所得層が中心とみられる高額消費等に一定の
下押し圧力が加わる等の可能性には注意が必要とみていた 6 。7月中に公表された4-6月期
GDPほか6月分主要統計は、とりあえずそうした見方をサポートする内容だった。一部高額消
費(新車販売等)に関しては6月分のデータに弱めの動きも観察される半面、包括的な個人消
費の代替指標である6月の小売売上高はむしろ5月から伸び率が拡大(図13)。小売売上高が
どの程度足元の動きを適切に表しているかは論者により見解が分かれるところながら、前回株
価変動時期(07~08年)と同様、個人消費を含む実体経済への影響はひとまず限定されてい
るとみることができる。
高所得層の消費活動という点からは、最近のわが国への旅行者数急増に多少なりともブレ
ーキがかかる懸念もあった。6月の中国からの来訪者数は前年同月比+167%の46万人と過
去最高を更新、“爆買い”の勢いは衰えていないように見える(図14)。ただし日本政府観光局
は、MERS騒動のあった韓国を敬遠し日本等に行先を変更する観光客もいたと指摘していた
ことから、そうした一時的な押し上げが目先はく落する懸念もある。また株価高騰局面におい
て高所得層以外の家計も株式市場に参入し、最近の相場急落で損失を被っている可能性も
考えられる。関連報道や当局の対応等も丹念にウォッチしていきたい7。
中国経済は昨年以降の株価高騰局面においても減速を続けていた。持続可能な成長の
姿(“新常態”)に向けた構造調整が、投資の抑制をもたらしていたこと等が背景にある。そうし
たなか、4-6月期の実質GDPは1-3月期から横ばいの前年同期比+7.0%と減速にいったん歯
止めがかかった形。月次指標では、先述の小売売上高に加え行程資産投資も足元底打ちの
動きを示しており、鉱工業生産(実質付加価値)も5・6月と持ち直している。しかしGDPの業種
別内訳は、成長率底打ちを保証するものでは必ずしもなかった8。また7月製造業PMIが速報
で悪化。なお構造調整から来る下方圧力が残っていると考えられるほか、既に減速傾向にあ
った自動車販売等が株安で追加的に下押しされていることの現れかも知れない。GDPや月次
指標は下げ止まったものの、目先も下振れの可能性には十分注意が必要を思われる。
図 13:中国の主要月次指標の推移
40
図 14:中国からの観光客数は 6 月も増勢維持
(前年同月比%)
200
(万人)
180
30
160
140
20
120
10
100
80
0
60
40
-10
-20
2007
20
2008
2009
固定資産投資
2010
2011
小売売上高
2012
2013
輸出向け出荷額
2014
2015 (年)
0
2010
出所:中国国家統計局、CEIC等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
2011
2012
2013
うち中国
鉱工業生産
2014
2015
(年)
うちその他
出所:日本政府観光局より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
6
7 月 10 日付レポート『ファンダメンタルス゛・ナビゲーター~中国株急落の景気への影響を考える』をご覧ください。
7
図 12 に示したのは信用取引残高(「融資融券」)で、ピーク時に 2 兆元を超えていた。これ以外にも非正規の信用取引(「場外配資」)が急拡大していた
と言われる。中国証券業協会の 6 月末の発表によれば、「場外配資」規模は 5,000 億元、うち最大のプラットフォームを通じては 4,400 億元。強制決済
となったのは 150 億元と少ない。ただ、複数の民間アナリストは、「場外配資」はこれより多額にのぼるとの推計結果を示している。
8
4-6 月期 GDP については、7 月 17 日付レポート『ファンダメンタルス゛・ナビゲーター~中国 4-6 月期 GDP 下げ止まりは一時的か、持続的か』をご覧く
ださい。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 22 -
7月東京都区部コアCPIは前年同月比▲0.1%と、ほぼ2年ぶりの下落に転じた。食品・コアコ
ポイント(3) 「新物価指数」
(総合〔除く生鮮食品・エネ
ルギー〕)は順調に上昇を
続けるか
アCPIはいずれもプラス圏を維持しているが、足元のガソリン安も手伝ってエネルギーによる下
押しが強まったことで、コアCPIも下振れた形。エネルギーが下押し、食品・コアコアは上昇と
いう構図は全国においても基本的に違いはない。6月全国のコアCPIは同+0.1%とプラス圏
に踏みとどまったが、7-9月期はいったん前年比小幅マイナスの公算が高いと、当方では引き
続き考えている。
同時に、コアCPIが15年度後半に前年比プラスに復帰し、上昇率を拡大させていくとの見方
も、基本的に不変。ここもと国際原油相場が弱含みにて推移しており、目先はガソリン・灯油等
の価格を通じて追加的にエネルギー価格を押し下げる方向に働きそうだ。ただし、国際相場
が今年初めにつけた直近のボトムから下振れるような展開ともならない限り、前年比でみたCPI
への原油安効果が年度後半にはく落するに伴い、コアCPIの対前年騰落率はプラス転換、比
較的速いペースでプラス幅が拡大していくと予想される。
ところで日銀は7月の金融経済月報で、物価の基調をみる新たな指標として「CPI総合(除く
生鮮食品・エネルギー)」の公表を開始した。足元のコアCPIがゼロ近傍で低迷しマイナスも懸
念されるのはもっぱらエネルギーの下落による、ということを視覚的に示すことを狙っていると
考えられる。先述したとおり年度後半にエネルギー安の効果が一巡すれば、新物価指数とコ
アCPIのかい離は縮小してくるはずで、その意味ではこの指数が注目を集めるのは年内いっ
ぱいとも言える9。
この新物価指数は、コアCPI・コアコアCPIに比べれば、足元の動きはしっかりしている。当方
試算では直近6月時点の全国値は前年同月比+0.8%で、ここ数ヵ月は着実に上昇率が拡大
(図15)。昨秋の円安再加速以降食品価格が強含みにて推移しており、コアコアCPIも最近で
は円安等を反映し上昇率がじりじりと高まる展開。それらから構成される新物価指数において
上昇基調が定着しているのも、当然と言える。
ただし、個人消費の回復が足元力強さを欠いていることに照らせば、ここから一段の価格
上昇は必ずしも容易ではないと思われる。例えば7月東京都区部における食品(除く生鮮食
品)は、5ヵ月ぶりに上昇率が鈍化。過去の値上げが一巡したこと(アイスクリーム等)や単月の
図 16:コア CPI 見通し
図 15:CPI 総合(除く生鮮食品・エネルギー)の推移
1.5
(前年比%)
(前年同月比%)
3.5
3.0
当方予想
2.5
1.0
2.0
1.5
0.5
1.0
0.5
0.0
0.0
-0.5
-0.5
-1.0
-1.5
-1.0
-2.0
-2.5
2008
-1.5
11
12
13
14
総合(生鮮食品・エネルギーを除く)・全国
15
同・東京都区部
注: 当方試算
出所:総務省統計局より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
9
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
食料(除く酒類)・エネルギーを除く総合
食料(除く生鮮・酒類)
エネルギー
消費税率引き上げ分
コアCPI
コアCPI(消費税率引き上げの影響を除く)
2017 FY17
出所:総務省統計局より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
コア CPI が下落に転じると言われる局面での新指数公表は、さまざまな思惑を呼んでいる。7 月 23 日付レポート『ファンダメンタルス゛&金融政策ナビゲ
ーター~日銀が「新物価指数」を目標に採用する可能性』をご参照ください。
- 23 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
変動が大きい品目(生鮮肉)の影響と言ってしまえばそれまでであるが、品目別の動きを詳細
に観察すると、やはりコスト上昇分の転嫁ですら必ずしもスムーズに受け入れられているわけ
ではないように思われる。最近ではそのコスト増に伴う食品値上げ報道も一服してきた感があ
る。当方集計によれば、昨年秋以降の一連の値上げによるコアCPIへの押し上げ効果は、こ
の4月および6月に集中。今後も値上げ案件が控えているものの、追加的な押し上げ効果は
減衰していく見込み。コアコア等ではそうしたリリースを必ずしも伴わない品目の値上げが増え
ていく可能性はあるが、少なくとも食品に関してはコスト高を主因とする値上げはピークアウト
が予想される。
本日(31日)の6月全国・7月東京分の実績の結果を受け、当方のコアCPI予想は据え置い
た。15年度は前年比+0.2%、7-9月期は平均すると同▲0.2%といったんマイナス転換、原油
安の影響がはく落する年度後半にはプラスに復帰し上昇率を高めていくが、年度内に+1%
には届かないと引き続き見込んでいる(図16)。
(7月31日 15:00)
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 24 -
ポリシーウォッチ
成長率、インフレ率、内閣支持率の「3 つの率」(8 月の政策シナリオ)
むぐるま
シニア・マーケットエコノミスト 六車 治美
【7 月のレビュー:経済財
政政策】14 年度決算概要
では最終的な剰余金が約
1.5 兆円となった
財務省は7月3日、2014年度決算概要を公表した(表1)。今年2月の補正予算時と比べ、歳
入側では税収が約2.2兆円、税外収入は約0.5兆円上振れした。歳出側では国債費などの不
要額が約1.4兆円にのぼった。財務省は公債金(国債発行)を2兆円減額し、決算は約2.2兆円
のプラス。最終的な剰余金は、地方交付税交付金財源の増加を除いた約1.5兆円となった。
表1:14年度決算概要では最終的な剰余金が約1.5兆円に
(単位:億円)
歳入
歳出
税収
22,447
所得税
9,732
国債費
消費税
6,899
予備費
816
法人税
税外収入
5,186
その他
10,062
辺納金
3,071
日銀納付金
公債金
3,239
5,570
1,185
-20,000
計(①)
①+②
8,017
計(②)
14,118
22,135
地方交付税交付金財源増
差引
6,364
15,770
出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
内 閣 府 が 16 年 度 実 質
GDP+1.7%の参考試算を
提示
内閣府は22日の経済財政諮問会議で、15年度の経済動向についての年央試算、および
16年度の参考試算を示した。今年度の実質GDPは2月時点と同じ+1.5%で、名目GDPは
+2.7%から+2.9%に上方修正された。一方、エネルギー価格の下落を受けて、総合CPIは
+1.4%から+0.6%に大きく下方修正された。16年度については、「実質+1.7%程度、名目
+2.9%程度、総合CPI+1.6%程度」との試算が示された。最終的な政府の16年度見通しは、
予算案とともに年末に決定される。
新たな「中長期の経済財
政に 関す る試 算」 が 明ら
かになった
22日の経済財政諮問会議では、新たな「中長期の経済財政に関する試算」も提示された。
新たな試算には、14年度決算概要(前出の表1)、ならびに6月に政府がまとめた「骨太の方針」
の内容が反映された。従来と同様、「中長期的な経済成長率は実質2%以上、名目3%以上、
CPIは中長期的に2%近傍で安定的に推移」を前提とした【経済再生ケース】(表2、次ページ)
と、「実質1%弱、名目1%半ば程度」の【ベースラインケース】の二通りの試算が示された。
- 25 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
表2:「中長期の経済財政に関する試算」【経済再生ケース】では20年度も▲6.2兆円のPB赤字
14年度
歳 出(兆円)
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
21年度
22年度
23年度
98.8
96.3
98.2
102.3
106.9
112.0
117.3
123.6
130.5
136.9
PB対象経費(①)
76.6
72.9
73.6
75.9
78.5
80.4
81.8
83.8
86.2
88.0
国債費
22.2
23.5
24.6
26.4
28.4
31.6
35.5
39.8
44.3
48.8
62.6
59.5
62.4
66.2
69.8
72.2
74.8
77.5
80.3
83.2
54.0
54.5
57.6
61.3
64.8
67.1
69.5
72.1
74.7
77.5
8.6
5.0
4.8
4.9
5.0
5.2
5.3
5.4
5.6
5.7
税収等(②、兆円)
税収
その他収入
一般会計のPB(②-①、兆円)
▲ 14.0
▲ 13.4
▲ 13.0
▲ 12.0
▲ 10.0
▲ 9.6
▲ 9.1
▲ 8.5
▲ 8.3
国・地方のPB(兆円)
▲ 21.5
▲ 15.4
▲ 12.9
▲ 12.4
▲ 9.5
▲ 8.2
▲ 6.2
▲ 3.6
▲ 2.6
▲ 1.1
▲ 4.4
▲ 3.0
▲ 2.5
▲ 2.3
▲ 1.7
▲ 1.4
▲ 1.0
▲ 0.6
▲ 0.4
▲ 0.2
国・地方のPB対名目GDP比(%)
政府目標値(%)
---
▲ 3.3
---
---
▲ 1.0
---
黒字化
---
---
▲ 7.3
---
出所:内閣府より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
20 年度の PB 赤字額は従
来の▲9.4 兆円から▲6.2
兆円に改善するも、目標
の黒字化は見込めず
新たな試算(【経済再生ケース】)では、PB黒字化(国・地方)の目標年度である20年度につ
いて、赤字額が従来見込みの▲9.4兆円(対GDP比率:▲1.6%)から▲6.2兆円(同:▲1.0%)
に縮小した(図1)。改善の内訳は、14年度税収の上振れ1を受けた歳入見通し改善が1.4兆円、
歳出見通しの下方修正が1.8兆円。後者については、東日本大震災の復興事業向けの支出
(約6千億円)が19年度で終了すること、雇用情勢の改善で生活保護費などの伸びが今後は
鈍化するとの見込みによる。もっとも、今回の試算でも20年度のPBは赤字が残り、18年度の対
GDP比率も▲1.7%と政府の中間目標である▲1.0%を下回っていた。試算結果を受けて、甘
利明・経済財政担当相は記者会見で、『赤字幅は小さくなったが、黒字は達成されていない』
と指摘し、『政府や与党内に歳出拡大の主張が出てくることは厳に慎まなければならない』と
述べたが、黒字化に向けた具体策への言及はなかった。
図1:20年度の国・地方のPB赤字見込みは▲6.2兆円に改善
0
(国・地方のPB赤字額、兆円)
▲5
▲ 10
▲ 15
▲ 20
▲ 25
今回の試算
15年2月の試算
▲ 30
14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度
出所:内閣府より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
1
表 1 の通り、14 年度税収は決算段階で 2.2 兆円程度の上振れ。財務省はその半分は「一時的な要因によるもの」としており、将来の財政試算には
反映させていない。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 26 -
16 年度予算の概算要求
基準が決定、約 4 兆円の
「特別枠」を設定
来年度の予算編成作業がスタートした。内閣府は24日、16年度予算における一般会計の
概算要求基準を閣議了解した。15年度と同じく歳出の上限額は定めず、年金・医療等につい
ては高齢化に伴う増加額(6,700億円)を加算した範囲内での要求を基準とし、義務的経費に
ついては前年度予算額と同額とした。その他の経費(裁量的経費)については1割削減を求め
た。そのうえで、「新しい日本のための優先課題推進枠」(特別枠)を4兆円規模で設けると発
表。1割削減後の裁量的経費を「要望基礎額」とし、その3割までの範囲で特別枠の要望を受
け付けことを決めた。概算要求は8月末に締め切られる。
【7 月のレビュー:金融政
策】 賛 成多 数で 現 状維
持を決定
日銀は7月14日~15日開催の金融政策決定会合で、金融市場調節方針の現状維持を8対
1の賛成多数で決定した。マネタリーベース、および保有長期国債の年間増加ペースを「約80
兆円増」に据え置き、その他の資産買入れ方針も維持した。票決は8対1で木内登英委員が
反対した。以上の結果は、当方を含む市場のコンセンサス通りだった。
中間評価では「コア CPI は
16 年度前半頃に 2%程度
に近づく」シナリオを確認
7月会合では「展望レポート」(経済・物価情勢の展望)の中間評価が実施され、日銀は「成
長率は15年度について幾分下振れる一方、16年度、17年度については概ね不変である。消
費者物価は、概ね見通しに沿って推移する」と述べた(表3)。すなわち、物価については、「コ
アCPIが2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準
から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、16年度前半頃になると予想される」とのシナリオ
が確認された。
表3:中間評価では「2%程度に近づくのは16年度前半頃」とのシナリオを確認
景気
2017年度までの日本経済を展望すると、2015年度から2016年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想さ
れる。2017年度にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、景気の循環的
な動きを映じて、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると予想される
物価
消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面0%程度で推移するとみられるが、物
価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率
を高めていくと考えられる。2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩
やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。その後次第に、これを安定的に持続す
る成長経路へと移行していくとみられる
ー
4
月
展
望
レ
ポ
ト
7月中間評価
成長率は15年度について幾分下振れる一方、16年度、17年度については概ね不変である。消費者物価は、概ね見通
しに沿って推移する
出所:日銀より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
日 銀 は 15 年 度 の 実 質
GDP 見通しを+1.7%に下
方修正、物価見通しの中
央値も小幅低下
政策委員の見通し数値は、15年度の実質GDP見通し(中央値)が4月時点の+2.0%から
+1.7%に下方修正された(表4、次ページ)。16年度と17年度の実質GDP見通しは+1.5%、
+0.2%で不変。コアCPIの見通し(中央値)は、15年度~17年度のそれぞれが4月時点から▲
0.1%ポイント低下し、「15年度:+0.7%、16年度:+1.9%、17年度:+1.8%」と(物価安定の目標
である)2%未満になった。これについて、黒田東彦総裁は会合後の記者会見で、『16年度の
生鮮食品を除く消費者物価の上昇率が1.9%というのは、あくまでも年度全体の数字』とし、
『委員の多数意見では16年度前半頃に2%程度に達する可能性が高いという見通しは変わっ
ていない』と説明した。ただし、『一部の委員が、物価の見通しについて、より慎重な見方をさ
れた』とも明らかにした。また、足もとの輸出と鉱工業生産が弱めに推移していることについて
は、『一時的なものと考えている』との見方を示した。『企業部門・家計部門ともに、所得から支
出への前向きな循環メカニズムは、しっかりと作用し続けている』とも述べた。
- 27 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
表4:日銀のコアCPI見通し(中央値)は15~17年度それぞれ小幅低下した
(%、中央値、< >は大勢レンジ)
実質GDP
1.7
15年度
<
1.5
コアCPI
↓
1.9
~
> <
0.3
2.0
4月時点
<
1.5
~
2.1
> <
0.2
<
1.5
→
1.7
~
> <
1.2
1.5
4月時点
<
1.5
~
2.1
<
0.1
> <
1.2
→
0.5
~
> <
1.4
0.2
4月時点
<
0.1
1.9 ↓
~ 2.1
>
~
2.2
>
1.8 ↓
~ 2.1
>
1.9
~
0.5
> <
1.4
0.6
当室見通し
>
0.9
0.2
17年度
1.2
2.0
1.1
当室見通し
~
0.2
1.5
16年度
>
0.8
1.2
当室見通し
0.7 ↓
~ 1.0
~
0.0
>
1.2
注: コアCPIは当該会合の開催時における直近の値、消費増税の影響を除く
出所:ブルームバーグ・ニュース、総務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
【7 月のレビュー:短期金
融市場】日銀当座預金残
高は本日 230 兆円台乗せ
の見込み
7月の日銀当座預金残高は月央に220兆円台半ばにやや水準を切り下げた後、月末である
本日は230.1兆円と過去最高額を更新する見込みだ(図2)。大きな資金過不足が少ないなか、
日銀による長期国債買入オペ、T-bill買入オペが淡々と実施された。7月は財政等要因が▲
15.7兆円と大きめの不足で、日銀は6月に減額したT-bill買入オペを復元し、1回あたり1兆
7,500億円~2.5兆円で実施した(図3)。
図 2:7 月の日銀当座預金残高は 230 兆円台乗せ
280
(兆円)
図 3:7 月の T-bill 買入オペは増額された
3.5
(兆円)
【7/31(見込み):230.1兆円程度】
240
3.0
非準備預金先
200
2.5
160
2.0
超過準備
120
1.5
80
1.0
40
0.5
準備預金
0
8/1
9/5
10/15
11/20
12/29
2/6
3/16
4/20
5/29
0.0
7/3
(月/日)
出所:日銀より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
「日銀トレード」復活で期
間長め T-bill 利回りがマイ
ナス化
1/1
1/16
1/31
2/15
3/2
3/17
4/1
4/16
5/1
5/16
5/31
6/15
6/30
7/15
7/30
(月/日)
注:実行日ベース
出所:日銀より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
日銀による買入オペの拡大を受けて、今月は期間長めのT-bill利回りがマイナスで取引さ
れた(図4、次ページ)。7月14日に行われた1年物(545回)の入札では、平均落札利回りが▲
0.0189%(前回:▲0.0150%)、最高落札利回りも▲0.0109%(同:▲0.0100%)とマイナスが深
くなり、平均落札利回りは過去最低水準を更新した。週次の3カ月物入札でも、平均落札利回
り、最高落札利回りともマイナス金利が続いた。また、月末にかけてレポ金利がマイナス圏に
急低下した。ブルームバーグ・ニュースによれば、31日受け渡しのレポ金利は▲0.05%~▲
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 28 -
0.15%で取引されたとのこと。これまでも期末にレポ金利がマイナスに転じることはあったが、
四半期末ではない月末にレポ金利がマイナスに転じたのは初めてのこと。市場では、邦銀に
よるレポの売り減退が要因と指摘されている。もっとも、本日は受け渡しが8月に移行し、レポ
金利はプラス圏に戻している。なお、日本円TIBORは3カ月物、6カ月物とも月を通じて横ばい
(図5)。
図 4:期間長めの T-bill 利回りがマイナス化
0.12
図 5:日本円 TIBOR は月を通じて横ばい
(%)
0.32
東京レポ金利
(%)
無担保コール翌日物(加重平均値)
0.10
0.30
0.08
0.28
0.06
0.04
0.26
0.02
0.24
0.00
日本円TIBOR・6カ月物
0.22
-0.02
0.20
-0.04
6カ月物T-bill
-0.06
-0.08
1年物T-bill
0.16
-0.10
8/1
9/1
10/1
11/1
12/1
1/1
2/1
3/1
4/1
5/1
6/1
0.14
7/1
14/7
(月/日)
出所:日銀、ブルームバーグより三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
【8 月のプレビュー:経済
財政政策】国会では安全
保障関連法案の参院審議
が継続
日本円TIBOR・3カ月物
0.18
3カ月物T-bill
14/9
14/11
15/1
15/3
15/5
15/7
(年/月)
出所:ブルームバーグより三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
8月の主な政策関連スケジュールは表5の通り。今国会の会期は9月27日まで延長されてお
り、安全保障関連法案の参院審議が続く。中旬には、安倍晋三首相による戦後70年談話の
発表も予定されている。17日には4-6月期・実質GDP(1次速報)が発表になる。月末31日には
16年度予算概算要求が締め切られる。【7月のレビュー】でみた通り、今年度も歳出の上限は
設けられていない。裁量的経費は1割減が求められているが、削減すれば「特別枠」を要求で
きる。概算要求段階での総額は100兆円を超えるとみられる。
表5:8月の主な政策関連スケジュール~注目は4-6月期・実質GDP(1次速報)
日
月内
中旬?
財政および政治関連
金融政策関連
6
日銀金融政策決定会合<1日目>
7
日銀金融政策決定会合<2日目>、黒田総裁定例記者会見
10
日銀金融経済月報(8月)
12
金融政策決定会合議事要旨(7/14-15開催分)
安全保障関連法案の参院審議
安倍首相の戦後70年談話
17
31
日
4-6月期・実質GDP(1次速報)
16年度予算概算要求の提出期限
28
7月分・全国CPI、8月分・都区部CPI
出所:日本銀行、各種報道資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
(1)市場参加者も注目し
ている内閣支持率の動向
安全保障関連法案の衆院通過の際の混乱などを受けて、7月の各種世論調査では安倍内
閣の支持率が大きく低下。初めて不支持率と逆転したことが市場参加者の間でも関心を呼ん
でいる。日経リサーチによる電話世論調査の結果では、支持率が35%、不支持率は46%だっ
た(図6、次ページ)。支持率は危険水域と言われる30%に近づいてきた。7月28日付の日本
経済新聞は、『安倍晋三首相の戦後70年談話、原子力発電所の再稼働、環太平洋経済連携
協定(TPP)交渉など、賛否が割れる重要課題を抱え、与党内には危機感が広がっている』と
報じている。
- 29 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
図 6:逆転した内閣支持率と不支持率
80
図 7:一方で自民党支持率は下げ渋っている
(%)
(%)
80
安倍
内閣
小泉内閣
第2次・第3次安倍晋三内閣の支持率と不支持率の推移
70
福田
内閣
麻生内閣
鳩山
内閣
菅内閣
安倍内閣
(第2次~第3次)
野田内閣
70
60
内閣支持率
支持率
60
50
50
40
40
30
20
30
不支持率
10
20
与党支持率
0
12/12
13/3
6
9
12
14/3
6
9
12
15/3
6 (年/月)
10
2003
出所:日経リサーチより三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
与党支持率は下げ渋り、
合計支持率は比較的高い
水準を維持
2004 2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015 (年)
出所:日経リサーチより三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
過去の内閣支持率低下の局面とやや異なっているのは、与党(自民党)の支持率は下げ渋
っている点だ。上記図7の通り、自民党支持率は7月調査で32%と前回調査から1%ポイントの
低下にとどまっている。また、内閣不支持率が急上昇している割には、野党支持率は上がっ
ていない(最大野党である民主党の支持率は6%ポイントと1%ポイントの上昇)。このため、合
計支持率(内閣+与党)は67%と、国政選挙での勝敗を左右すると言われる50%までは余裕
がある(図8)。多くの有権者は、安全保障関連法案を巡る内閣の対応には不満を募らせてい
るが、政権交代を望んでいるわけでもないのだろう。
図8:合計支持率(内閣+与党)は比較的高い水準を維持
(%)
130
120
110
100
【参院選】与党敗北
→ねじれ国会
【総選挙】与党勝利
【参院選】
与党勝利
90
【参院選】
与党勝利
→ねじれ解消
80
70
【総選挙】
与党勝利
60
50
【参院選】与党敗北
→ねじれ国会
40
【総選挙】与党敗北
→政権交代
30
【総選挙】与党敗北
→政権交代
20
10
小泉内閣
2003 2004 2005 2006
安倍内閣
2007
福田内閣
2008
麻生内閣
鳩山内閣
菅内閣
2009
2010
2011
安倍内閣(第2次~3次)
野田内閣
2012
2013
2014
2015
(年)
出所:日経リサーチより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
ただし支持率が 30%を割
り込むと求心力の低下は
避けられない
とは言うものの、このまま内閣支持率が30%を割り込むと政権の求心力低下は避けられず、
成長戦略の遂行や16年度の予算編成にも影響が及んでくる。すでに、国会審議の遅れにより、
政府は「高度プロフェッショナル制度」の創設を柱とする労働基準法改正案の今国会成立を
断念した2(表6、次ページ)。こうしたアベノミクス遂行の遅れが株式市場で売り要因と意識され
ることがないかどうか、8月の世論調査の結果とともにポイントになる。
2
今秋の臨時国会で成立させるとの見方と、次の臨時国会の会期は例年より短くなるため、来年の通常国会に先送りするとの 2 つの見方がある。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 30 -
支持率低下が止まらない
と 9 月の自民党総裁選に
向けた思惑も・・・
また、内閣支持率と自民党支持率のギャップが縮小しているため、無風と思われた9月の自
民党総裁選に向けた思惑も浮上する可能性がある。安倍首相の自民党総裁としての任期は
今年9月25日までだが、延長国会の会期中でもあり、無投票での続投がコンセンサス。ただ、8
月も内閣支持率が下げ止まらない場合、危機感を抱いた対立候補が出てくるかもしれない。
安倍首相の総裁選敗北は想定できないが、昨年12月の解散総選挙で封印された対抗勢力
が息を吹き返す可能性に注意したい。
表6:主な法案の審議状況~労働基準法改正案は今国会で成立断念
法案
経過
(7月31日時点)
概要
安全保障関連法案
自衛隊の海外活動を拡大。集団的自衛権の行使を可能に
労働基準法改正案
働いた時間ではなく成果に応じて賃金を払う「脱時間給」制度(ホワ 参院審議入れめど立たず、今国会での成立を断念
イトカラー・エグゼンプション)を導入
→臨時国会or来年の通常国会
参院審議中
労働者派遣法改正案
企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上撤廃
IR法案(“カジノ法案”)
カジノを中心とした統合型リゾート(IR)を推進
参院審議入りめど立たず
民法改正案
明治29年の制定以来となる大規模改正
参院審議入りめど立たず
農協法改正案
JA全中の地域農協に対する監査・指導権の廃止
参院審議中も9/1施行に間に合うか微妙
参院審議中
国家戦略特区法改正案
医療や保育などの規制を地域限定で緩和
地方分権一括法案
大規模農地を商業施設や工場など別の使い道に変える際の許
可権限を国から都道府県に移管
成立
地域再生法改正案
税制優遇などで企業の地方移転を促進
成立
電気事業法改正案
電力会社の送配電部門を20年4月に分社(発送電分離)
成立
医療保険制度改革関連法案
大幅な赤字運営が続く国民健康保険の財政基盤を強化
成立
公職選挙法改正案
選挙権年齢を18歳以上に引き下げ
成立
成立(16年4/1施行)
出所:衆議院、参議院、各種報道資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
(2)4-6 月期・実質 GDP
は 3 四半期ぶりのマイナ
ス成長予想
8月17日、4-6月期・実質GDP(1次速報)が発表になる。当室の予想は前期比▲0.2%、同
年率▲0.7%で、3四半期ぶりのマイナス成長を予想している3。政府・与党は、内閣支持率が
急低下している最中でのマイナス成長の発表が、市場心理に悪影響を与えることがないか警
戒するだろう。政権の今の拠り所は株高と所得増を伴う景気回復(期待)だ。内閣支持率低下
による株価や景気マインドへの影響が小さいのは、「(支持率低下の)主因は安全保障政策で、
経済財政政策との関係は薄く、アベノミクスの方向性に変化はない」と捉えられているため。そ
うしたなか、実質GDPの結果に失望して株式市場が売りで反応したり、アベノミクス効果の賞
味期限切れを指摘する論調が増えれば、政府・与党は警戒感を強め、追加のリフレ策を検討
する可能性が高い。
最低賃金の大幅引き上げ
を促した安倍首相
兆候はすでにみられている。今週29日、最低賃金の今年度の引き上げ目安額が前年度よ
り2円多い18円となることが決まった。4年連続で10円を上回る増加で、時給は798円になる
(全国平均)。新聞各紙は、背景に安倍首相の働きかけがあったと報じている。今月16日の経
済財政諮問会議で、安倍首相が関係閣僚に引き上げ検討を支持し、23日の同会議で大幅引
き上げの流れが決まったとのこと。マイナス成長のインパクトが大きければ、秋の補正予算編
成4を念頭に入れた成長戦略の追加策検討の指示、賃金上昇の浸透・拡大に向けた政労使
会議の再開、成長力強化に資するような減税策の検討指示、などが想定される。
3
ただし、下振れリスクあり。詳しくは本レポートの『ファンダメンタルズアナリシス』を参照。
4
15 年度補正予算は 2 兆円規模と想定しているが、4-6 月の税収実績、および主要企業の中間決算の結果によって財源に上振れ余地が生じる可能
性がある。
- 31 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
【8 月のプレビュー:日銀
金融政策】金融政策は引
き続き現状維持を予想
8月は金融政策関係のイベントが少なく、今のところ、政策委員による講演も予定がない(前
出の表5)。6日~7日の金融政策決定会合では、引き続き賛成多数による現状維持を予想す
る(表7)。今月7月の決定会合における展望レポート・中間評価で、日銀は、「コアCPIの前年
比は16年度前半頃に2%程度に近づく」との見通しを確認済した。輸出と鉱工業生産につい
て、それまでの「持ち直している」に「振れを伴いつつも」を加えたことが目を引いたが、黒田総
裁は『一時的なものと考えている』と述べていた。マイナス成長が見込まれる4-6月期・実質
GDPの発表が17日と決定会合の後になることもあり、8月会合の開催時点では日銀に景気・物
価シナリオの変更を迫る材料に乏しい。
表7:中間評価から日が浅く、8月会合では現状維持の見込み
金融市場調節方針(年間増加ペース)
時 期
MB
13年度
14年度
15年度
0.7
1.4
1.9
7月中間評価
0.6
1.3
1.9
10月展望レポート 「見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度
に達する可能性が高い」
0.7
1.3
1.9
1月中間評価
0.7
1.3
1.9
1.3
1.9
2.1
1.3
1.9
2.1
4月4日
★量的・質的金融緩和の導入
長期国債
約60~70兆円 約50兆円
ETF
J-REIT
1兆円
300億円
4月展望レポート 「見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度
に達する」
13年
コアCPI見通し(%、除く消費税引き上げの影響)
主なイベント
5月30日
2月18日
★貸出増加支援資金供給等の延長・拡充を決定
5月29日
▲長国買入オペ、年限別の買入額調整を発表(金融市場局)
6月18日
▲長国買入オペ、「10年超」セクターの年限細分化を発表(金融市場局)
7月中間評価
10月展望レポート 「見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に
2%程度に達する可能性が高い」 ~★追加緩和決定
15年
17年度
▲長国買入オペ、「1年超5年以下」の年限細分化を発表(金融市場局)
4月展望レポート 「見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い」
14年
16年度
1.2
1.7
2.1
1月中間評価
0.9
1.0
2.2
4月展望レポート 「原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩や
かに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される」
0.8
0.8
2.0
1.9
0.7
1.9
1.8
5月1日
約80兆円
約80兆円
3兆円
900億円
▲企画局が2年間の政策効果を検証した「日銀レビュー」を発表
7月中間評価
注:★~金融政策決定会合の決定事項、▲~担当局の公式発表
出所:日銀より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
日銀会合後に発表される
経済指標が相場材料にな
る可能性
ただし、日銀会合の後、月末にかけて、年度後半における追加緩和の思惑が浮上する可
能性がある。具体的には、4-6月期・実質GDP(17日)、7月分・全国CPI(28日)、7月分・鉱工
業生産指数(31日)などがきかっけとして考えらえる(表8、次ページ)。
GDPについては、【8月のプレビュー:経済財政政策】で述べた通り。7月分・全国CPIは、エ
ネルギー価格の押し下げ寄与が大きくなり、前年同月比でマイナスに落ち込む見込みだ5。日
銀は7月の金融経済月報に「生鮮食品とエネルギーを除く総合指数」を掲載して、「エネルギ
ーの押し下げを除けばコアCPIは前年比+0.7%程度とプラス基調を維持している」ことを示し、
注目を集めた。これは、この夏にコアCPIがマイナスに転じることを念頭に、あらかじめ予防線
を張ったものと推察される。ただ、日銀が目指しているのは「総合CPIの前年比で2%」であるこ
とに変わりない。昨年10月末のサプライズ緩和の教訓もあり、市場参加者は年度後半におけ
る追加緩和への警戒感を高めざるを得ないのではないか。
5
当室では 7-9 月期のコア CPI は前年同期比▲0.2%と予想している。本日発表になった 7 月分・都区部コアCPIは前年同月比▲0.1%だった。詳しく
は当レポートの『ファンダメンタルズアナリシス』の項を参照。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 32 -
表8:8月に発表される経済データ次第で追加緩和の思惑再燃も
7月
1日
8月
9月
短観
7~8日
金融政策決定会合
金融政策決定会合(中間評価)
17日
4-6月期・GDP(1次)
30日
鉱工業生産(6月)
28日
CPI(8月都区部、7月全国)
25日
CPI(9月都区部、8月全国)
31日
CPI(7月都区部、6月全国)
31日
鉱工業生産(7月分)
30日
鉱工業生産(8月)
1日
短観
14~15日
8日
14~15日
10月
6~7日
29日
30日
4-6月期・GDP(2次)
金融政策決定会合
11月
金融政策決定会合
12月
16日
7-9月期・GDP(1次)
8日
7-9月期・GDP(2次)
18-19日
金融政策決定会合
14日
短観
鉱工業生産(9月分)
17-18日
金融政策決定会合
CPI(10月都区部、9月全国)
28日
CPI(11月都区部、10月全国)
25日
CPI(12月都区部、11月全国)
金融政策決定会合(展望レポー ト )
30日
鉱工業生産(10月分)
28日
鉱工業生産(11月分)
出所:内閣府、経済産業省、総務省、日銀、その他資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
「2 つのマイナス」が期待イ
ンフ レ率に 与 える影 響を
注視
エネルギーのマイナス寄与は7-9月期が最も大きくなり、その後は小さくなっていく。当室で
も、コアCPIは10-12月期に+0.2%、来年1-3月期には+0.7%に持ち直すと予想しており、2%は
遠いとしても、マイナスが続くとはみていない。それでも、エネルギー価格のマイナス寄与はく
落だけで「2016年度前半頃に2%程度」は実現しない。日銀は、それに加え、期待インフレ率
が勢いを取り戻し、景気回復と相まってインフレ圧力が台頭するとみている(はずだ)。
日銀が警戒しているのは、一時的にせよ現実のインフレ率がマイナスに転じて予想インフレ
率を押し下げ、「物価の基調」そのものを損なうリスクだ。日銀は、日本における期待インフレ
率は実際のインフレ率に影響される部分が大きいとみており、昨年10月末のサプライズ緩和
は期待インフレ率の改善が止まったタイミングで実施された。8月は、成長率とインフレ率と「2
つのマイナス」が示される可能性が高い。市場参加者は、日銀が10月の「展望レポート」で物
価シナリオを維持できるのかどうか、今後発表になる経済データを吟味していく。
【金融政策メインシナリオ】
10 月後半会合における追
加緩和予想を維持
当室では、10月後半会合での追加緩和シナリオ(長期国債買入れの長期化+付利引き下
げ)を維持している(表9)。「16年度前半頃に2%に近づく」のは困難と判断される状況で、黒
田総裁は「躊躇なく、追加の政策調整」に踏み切ると考えている。
表9:10月後半会合における追加緩和シナリオに変化なし
「量的・質的金融緩和」
の枠組み
マネタリーベース
(年間増加ペース)
長期国債
(年間増加ペース)
月間国債買入額
平均買入年限
導入当初
「10.31追加緩和」の結果
2015年10月
【追加緩和予想】
量的な金融緩
和を推進
約60~70兆円
約80兆円
(据え置き)
イールドカーブ
全体の金利低
下を促す
約50兆円
約80兆円
(据え置き)
約6.5兆円
8~12兆円
(据え置き)
7年程度
7年~10年程度
8年~11年程度【長期化】
ETF:1兆円
J-REIT:300億円
ETF:3兆円
J-REIT:900億円
(据え置き)
(据え置き)
(据え置き)
(据え置き)
0.05%に引き下げ
目 的
ETFとJ-REIT
(年間増加ペース)
資産価格プレミ
アムに働きかけ
る
金融市場調節方針
2%の「物価安定の目標」の実現を目
指し、これを安定的に持続するために
必要な時点まで継続する
当座預金付利金利
0.10%
出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
(7月31日 15:00)
- 33 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
このページに記載はありません
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 34 -
債券需給ウォッチ
無難通過が見込まれる 8 月の 10 年利付国債入札
シニア債券ストラテジスト 稲留 克俊
日銀・長国買入オペ動向
の整理
来週(8月3日~7日)の日銀・長国買入オペの通知回数は、1回か2回のいずれかであろう
(表1)。国債入札の翌日に、発行した国債が含まれる年限を対象にしたオペが実施される傾
向を踏まえ、10年利付国債入札翌日の5日(水)に長期(5-10年)などの通知があることはほぼ確
実。他方、7日(金)は金融政策決定会合の結果発表なので、通知は無い見込み。予想が難し
いのが3日(月)だ。8月は国債入札と日銀会合を除くオペ通知候補日が12日あるので、2日間
がオペ見送り日となる。そのうちの1日に3日(月)がなる可能性はある。ただ、3日(月)を見送り
にしてしまうと来週のオペ通知回数が1週間を通して1回だけになってしまうので、バランスを欠
くスケジュールになってしまう。
日銀・長国買入オペ動向
の影響
約2週間にわたった本格的な国債入札の空白期間は来週初までで終わり、4日(火)の10年
利付国債入札から、国債発行が本格的に再開する。入札の無い好需給環境でも10年・
0.40%という節目の水準を下抜けなかったことで、金利低下観測はやや後退していよう。需給
への注目度が一巡し、8月に入ることもあって、ファンダメンタルズ面への注目度が高まりそう
だ。4-6月期の生産・GDPの前期比マイナス化(見込み)、7-9月期のコアCPIの前年比マイナス
化見込み、などが債券買い材料になりやすい。7日(金)には、日銀・金融政策決定会合の結
果が公表される。7月の金融経済月報の公表以降話題になっている消費者物価指数の「生鮮
食品・エネルギーを除く」指標についての位置付けについての総裁の説明が注目されそうだ
が、政策そのものに関しては、前回会合からまだ日が経っていないこともあって、動きは無いと
みている。日銀・長国買入オペの影響力は、ファンダメンタルズ面のサポートを受けながら、来
週も強い状態になりそうだ。
表1:日銀・長国買入オペ動向の整理
まだ打たれていないオペ
日
2
月
3
火
4
10Y入札
2015年8月
水
5
なし
9
10
16
17
23
24
11
30Y入札
12
なし
18
20Y入札
なし
30
金
7
土
8
なし
決定会合
13
5Y入札
14
15
21
22
28
29
なし
19
なし
25
40Y入札
木
6
流動性供
20
流動性供
なし
26
27
2Y入札
なし
31
短期①:50 0~1,50 0億円
短期②:50 0~1,50 0億円
中期①1-3 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
3-5 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
中期②1-3 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
3-5 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
中期③1-3 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
3-5 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
中期④1-3 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
3- 5: 計4 ,0 00 -10 ,000 億円
中期⑤1-3 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
3-5 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
中期⑥1-3 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
3-5 :計4,00 0- 10 ,0 00 億円
長期①:3,00 0- 6,00 0億円
長期②:3,00 0- 6,00 0億円
長期③:3,00 0- 6,00 0億円
長期④:3,00 0- 6,00 0億円
長期⑤:3,00 0- 6,00 0億円
長期⑥:3,00 0- 6,00 0億円
超長期①1 0-2 5: 計2 ,5 00 -4 ,0 00 億円
2 5- :計2,50 0- 4,000 億円
超長期②1 0-2 5: 計2 ,5 00 -4 ,0 00 億円
2 5- :計2,50 0- 4,000 億円
超長期③1 0-2 5: 計2 ,5 00 -4 ,0 00 億円
2 5- :計2,50 0- 4,000 億円
超長期④1 0-2 5: 計2 ,5 00 -4 ,0 00 億円
2 5- :計2,50 0- 4,000 億円
超長期⑤1 0-2 5: 計2 ,5 00 -4 ,0 00 億円
2 5- :計2,50 0- 4,000 億円
15 年変国: 1,40 0億円
出所:日銀資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
- 35 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
来週8月4日(火)、10年利付国債入札が実施される。最近の落札結果と今次入札の概要は
10 年利付国債入札
【8 月 4 日(木)分】
について
表2と表3のとおり。絶対水準面での魅力は乏しく、相対価値上の割安感もやや薄れた。しかし、
足もとの国内景気・物価環境が債券市場にフォローの流れにあり、一定の需要を集めることは
できるだろう。無難な落札結果を予想している。
表2:10年利付国債入札(8月4日分)の概要
発行予定額
2兆4,000億円(前回債と同じ)
入札方式
価格コンベンショナル方式
発行予定日
2015年8月6日
償還予定日
2025年6月20日(前回債と同じ)
クーポン予想
0.4%(339回債リオープン)
WI取引
0.415%(7月30日(木)の弊社終値)
出所:各種資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
表3:最近の10年利付国債入札の落札結果
回号
クーポン
(%)
入札日
発行予定
落札額
最低落札
テール
応札倍率
最高落札
額(億円)
(億円)
価格(円)
(銭)
(倍)
利回り(%)
評価
334
0.6
14/08/03
24,000
26,804
100.73
1
4.29
0.523
無難
335
0.5
14/09/02
24,000
23,992
99.80
3
3.58
0.521
低調
335
0.5
14/10/02
24,000
23,990
99.83
1
3.48
0.517
無難
335
0.5
14/11/05
24,000
23,994
100.55
2
3.50
0.441
無難
336
0.5
14/12/02
24,000
27,561
100.15
10
3.01
0.484
低調
337
0.3
15/01/08
24,000
27,569
100.01
3
3.42
0.298
無難
337
0.3
15/02/03
24,000
23,999
99.42
45
2.68
0.360
低調
338
0.4
15/03/02
24,000
23,998
99.70
33
2.77
0.431
低調
338
0.4
15/04/02
24,000
27,578
100.25
4
2.75
0.373
無難
338
0.4
15/05/12
24,000
23,997
99.57
10
2.24
0.445
低調
339
0.4
15/06/02
24,000
27,562
99.49
3
2.71
0.453
無難
339
0.4
15/07/02
24,000
26,884
98.89
3
2.62
0.517
無難
注: 「評価」は過熱・順調・無難・低調・不調の5段階で、弊社によるもの。落札額には第Ⅰ非価格競争入札と第Ⅱ非価格競争入札による落札分を含む
出所:財務省等資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
絶対水準 ~ 0.4%台割
れには至らずも魅力薄
昨日引け時点の利回り水準は、カレント339回債複利が0.410%、弊社パーレートが0.418%、
新発債WIが0.415%である。今回債も「前回債クーポンと30bp以上離れていない場合にはリオ
ープンとする」という、いわゆる30bpルールの適用対象なので、0.4%クーポンで339回債リオ
ープンになることがほぼ確実だ。10年金利水準は、前回債入札(7月2日)をピークに徐々に水
準を切り下げてきた。ギリシャ・中国を起点にしたリスクオフムードが債券買いを後押しした形。
10年・0.4%を下抜けてはいないものの、水準面の魅力は乏しい(図1)。
相対価値 ~ SWAP 対
比でやや割安感
前回債入札時と昨日を比較すると、イールドカーブは長期ゾーンを中心にほぼ全年限で金
利が低下した形(図2)。30-10年、20-10年のカーブは各105bp、80bp近傍での推移となってい
る(図3)。10年セクターの割安感は薄れたようにみえる。他方、10年SWAPスプレッドは再び
18bpを下回るレベルに入っており、SWAP対比ではやや割安感が出てきた(図4)。
債券投資マンスリー2015 年 7 月 31 日
- 36 -
図1:最近の10年カレント値動き
0.55
図2:前回債入札時からのイールドカーブ変化
(%)
0.50
0.45
0.40
過去入札
0.35
5/12
5/26
6/9
6/23
7/7
7/21
(月/日)
出所:ロイターより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
図4:10-7年、10年SWAP、5-10-20年バタフライの各スプレッド
図3:10-2年、10-5年、20-10年、30-10年の各スプレッド
80
(bp)
30-10年スプレッド(右軸)
(bp)
30
120
70
(bp)
(bp)
10-7年スプレッド(左軸)
28
5-10-20年バタフライ
スプレッド(右軸)
0
26
60
110
50
100
22
90
20
24
40
10
-5
-10
18
30
20
5
80
10-2年スプレッド(左軸)
14
70
20-10年スプレッド(右軸)
12
(年/月)
10-5年スプレッド(左軸)
0
13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7
出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
超長期ゾーンの金利に連
れ安しない 10 年金利
-15
16
60
10
13/7
-20
10年SWAPスプレッド(左軸)
(年/月)
-25
13/10
14/1
14/4
14/7
14/10
15/1
15/4
15/7
出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
絶対水準面での魅力は乏しく、相対価値上の割安感もやや薄れた格好になっている。7月
後半の金利低下局面で超長期ゾーンが20年・1.2%、30年・1.4%という節目の水準をあっさり
下抜けたにもかかわらず、10年金利だけが下げ渋った状況から、10年金利の下がり難さが意
識されている面もあるだろう。また、入札3日後の7日(金)に公表される米7月雇用統計の結果
次第では、FRB早期利上げを警戒するムードが強まる懸念もあるだろう。
0.42~0.43%程度あれば
無難か
とはいえ、7月前半までに世界的なリスクオフの起点の1つだった中国株の下落が今週に入
って再燃しており(図5)、債券買いを支持する環境は続いている。FRBの利上げに関しても、
「米利上げがあってもインフレが抑制された状況では米長期金利の上げ幅は限られる」いう見
方は強く、過度に警戒する必要はなかろう。引き続き、(1)4-6月期の生産・GDPの前期比マイ
ナス化(見込み)、(2)7-9月期のコアCPIの前年比マイナス化見込み、(3)商品市況軟化によるイ
ンフレ期待の低下、(4)内閣支持率の急低下、(5)IMFからの緩和要求、といった各種材料を背
景に追加緩和観測や債券買いの圧力が強まりやすいと考えられる。また、10年セクターの買
い難さに繋がっていたとみられる金利ボラティリティについても、(相対的な高さは不変だが)絶
対水準は徐々に低下してきている(図6)。昨日の相場調整局面で10年・0.425%から押し目買
いを確認したことも考慮すると、入札実施のタイミングで0.42~0.43%程度の水準があれば十
分に需要を集めることができるだろう。無難な落札結果になると予想している。
- 37 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
図5:中国の株価指数の推移
6500
(pt)
(pt)
35000
6000
5500
上海総合(左軸)
5000
香港ハンセン(右軸)
30000
4500
25000
4000
3500
20000
3000
2500
15000
2000
1500
07/1
08/1
09/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
10000
(年/月)
出所:Bloomberg資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
図6:主要年限の金利ボラティリティの推移
7
(bp/日)
30y
6
20y
5
10y
5y
4
2y
3
2
1
0
12/4
12/10
13/4
13/10
14/4
14/10
15/4
(年/月)
注:ボラティリティは日次金利変化幅の標準偏差(20日間ロール)
出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
(7月31日 15:00)
債券投資マンスリー2015 年 7 月 31 日
- 38 -
TREASURY アウトルック
7 月 FOMC で利上げ開始へ向けて一歩前進も、残る懸念はインフレ動向に
シニア外債ストラテジスト 井上 健太
ポイント



7月FOMCは政策変更なし、4-6月期GDPでは米国景気のモメンタムが上向きであることを再確認
7月FOMC声明文は利上げへ「一歩前進」を示唆:FOMCの関心は雇用情勢から『インフレ』へシフト
FRBは利上げ開始条件のチェックリストに「エネルギー」を再び追加:大底割れ回避で9月利上げ実施へ
4-6 月期 GDP で米国景気
のモメンタムは上向きであ
ることを再確認
7月30日、データ次第で利上げ開始時期を探るFOMC(後述)の意思決定を左右し得る重
要イベント、15年7-9月期・GDP統計が発表された。経済成長率は前期比年率+2.3%となり、
当方並びに市場予想(同+2.5%)とほぼ一致した。毎年4-6月期統計公表と同時に実施される
「年次改訂」の結果、15年1-3月期の成長率が+0.6%へ上方修正(←確報値▲0.2%)となり、
実はマイナス成長を免れていたことが明らかになった1。今回の改定で2012年~2013年の経
済成長率は下方修正となり、これまでの景気回復ペースは想定していたほど加速していなか
ったことになる。一方、2014年の成長率(年ベース)は修正なし。15年初のマイナス成長回避
に加え、寒波を乗り越え4-6月期の成長率が(当方が見込む)潜在成長率(+1.5%)を大きく上
回ったことで、景気のモメンタムは上向きであることが再確認できた。
今回のGDP統計(含む年次改訂)を反映し、当方のマクロ経済モデルを再推計し、米国経
済の成長率見通しを改定した(表1)。
表1:米国経済・金融見通し
予想
実質GDP(前期比年率)
個人消費(PCE)
設備投資
民間住宅投資
政府支出
民間在庫投資*
純輸出*
PCEコア価格指数(前年比)
生産者物価(前年比)
消費者物価(前年比)
消費者物価コア(前年比)
FFレート(誘導目標)
2年国債利回り
5年国債利回り
10年国債利回り
30年国債利回り
2014年
7-9
10-12
+4.3
+2.1
+3.5
+9.0
+3.4
+1.8
▲0.0
+0.4
+1.6
+1.8
+1.8
+1.8
+4.3
+0.7
+9.9
▲1.4
▲0.0
▲0.9
+1.4
+1.2
+1.2
+1.7
1-3
+0.6
+1.7
+1.6
+10.1
▲0.1
+0.9
▲1.9
+1.3
▲0.5
▲0.1
+1.7
2015年
4-6
7-9
+2.3
+2.2
+2.9
▲0.6
+6.6
+1.9
▲0.1
+0.1
+1.3
▲1.0
▲0.0
+1.8
+3.1
+6.4
+15.0
+3.3
▲0.4
▲1.3
+1.3
+0.2
+0.2
+1.4
10-12
+1.6
1-3
+2.8
+2.7
+0.5
+14.7
+0.6
▲0.1
▲0.8
+1.4
+1.1
+1.0
+1.4
+2.8
+5.0
+12.7
+0.9
+0.2
▲0.6
+1.5
+3.0
+2.3
+1.4
2016年
4-6
7-9
+2.5
+2.8
+3.1
+3.2
+13.7
+2.0
▲0.3
▲0.5
+1.5
+2.5
+2.1
+1.2
+1.5
[単位:%]
2015 年 2016 年 2017 年
(予想)
(予想)
(予想)
+2.4
+2.2
+2.4
+2.6
+2.5
+2.5
+1.7
+2.7
+2.5
+1.7
+3.0
+9.5
▲2.9
+0.0
+0.2
+1.5
+1.4
+1.5
+1.8
+2.7
+6.2
+1.8
▲0.6
+0.0
▲0.2
+1.5
+1.6
+1.6
+1.7
+3.0
+2.6
+9.5
+0.6
+0.2
▲0.8
+1.3
▲0.1
+0.3
+1.6
+2.9
+3.4
+13.4
+1.5
▲0.0
▲0.7
+1.6
+2.6
+2.1
+1.5
+2.8
+3.8
+11.4
+1.6
+0.0
▲0.6
+1.7
+2.2
+1.9
+1.8
2013 年
10-12
+2.7
+2.7
+4.3
+14.2
+3.1
+0.1
▲0.8
+1.6
+2.5
+2.1
+1.7
+2.9
+3.4
+12.8
▲0.4
+0.3
▲0.4
+1.6
+2.3
+1.9
+1.7
2014 年
0.00-0.25 0.00-0.25 0.00-0.25 0.00-0.25 0.25-0.50 0.50-0.75 0.75-1.00 1.00-1.25 1.00-1.25 1.00-1.25 0.00-0.25 0.00-0.25 0.50-0.75 1.00-1.25 1.00-1.25
0.57
0.66
0.56
0.64
1.00
1.30
1.50
1.60
1.50
1.50
0.38
0.66
1.30
1.50
2.10
1.76
1.65
1.37
1.65
1.80
1.90
2.00
1.90
1.90
1.90
1.74
1.65
1.90
1.90
2.20
2.49
2.17
1.92
2.35
2.10
2.10
2.10
2.00
2.00
2.00
3.03
2.17
2.10
2.00
2.30
3.20
2.75
2.54
3.12
2.80
2.80
2.70
2.60
2.60
2.60
3.97
2.75
2.80
2.60
2.70
注: 年間成長率は上段が年間対比、下段が第4四半期対比。実質GDPの需要項目は前期比年率、年間対比、*は成長率寄与度。金利は期末値。
出所:米商務省統計等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 (予想は弊社:最終変更日は7月31日)
「内需主導の景気再加速は現在進行中」とみるメインシナリオに変更はないが、2015年の経
済成長率については、スタートダッシュの失敗が想定ほどではなかったことを受け、+0.1%ポ
イント上方修正の+2.2%を予想。16年、17年見通しは内需、特に消費、住宅回りの改善基調
加速を見込み+2.4%、+2.6%へ(ともに従来見通しから+0.3%ポイント)予想を引き上げた。
1
統計上の歪み(例えば毎年 1-3 月期の成長率を押し下げる不十分にも思える季節調整)がマイナス成長の一因とされた。それについて米商務省は
明確な論評は控えるも、可能性を否定はしなかった。季節調整手法について継続的な改善の試みを続けている旨を公表レポート(2015 年 6 月)し、
今回の改定でもサービス消費、在庫投資、国防支出で手続きを見直している。実際のところ、今回の 1-3 月期のマイナス成長回避の主因は投資回
りの上方修正故であり、不十分な季節調整の改良ではなく、年次改訂に合わせて加味した新データの影響と見た方が良さそうだ。
- 39 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
一方、米10年金利見通しに変更はない。景気見通しは足元で上方修正も、賃金上昇誘発
し期待インフレ上昇、イールドカーブのスティープ化を招くような状況にはない、と引き続き判
断している。当方では複数のマクロ計量・クオンツモデル2から得た予想値相互の整合性をチ
ェックしつつ、精度を高める取り組みを実践している。今後、順次それらのモデルを再推計し
潜在成長率、GDPギャップ、イールドカーブ見通しを精緻化・アップデートをしていきたい。そ
れらの結果は逐次、「米国債投資の視点」等で公表していきたい。
今回の4-6月期GDP統計をみて、FOMC参加者は安堵したことだろう。これで『1-3月期のマ
7 月 FOMC でも参加者の
利上げ開始時期の決心は
定まらず
イナス成長は一過性』としたFOMCの判断が妥当だった、との裏付けを得ることができた。さら
には、先行きの成長持続見通しに自信を深める材料も得た。6月26日の講演でダドリーNY連
銀総裁は「4-6月の成長率が+2.5%に達し、7-9月も同程度の成長が見込まれる状況となれば、
年末までには確実に、労働市場のさらなる改善とインフレ目標達成に向けた合理的な確信と
いう、利上げのための2つの要件をめぐって、十分な前進を遂げたと想定できるような堅実な
軌道にあると考えられるだろう」と語った。ダドリー総裁が提示した利上げ開始の前提条件クリ
アーに向け、米国経済は大きく前進したことを4-6月期のGDP統計は意味している。
しかしながら、FOMC参加者は依然として15年9月、12月(あるいはそれ以降)、いずれのタ
イミングで利上げを開始すべきか決心がついていないのが実情に見える(表2)。GDP統計を
確認する前の決定ではあるが、7月28-29日に開かれたFOMCでは大方の予想通り利上げ無
し。利上げ開始のタイミングに関する示唆も見つからなかった。
表2:FOMC参加者の金融政策スタンス予想
中立
主流派
金融緩和積極派(≒ハト派)
金融緩和縮小派(≒タカ派)
Du dley
Kocherlakota
Evan s
Rosengren
Y e llen議長
Mester
Po well
Br ainard
Fisher(退任)
Lac ker
W illiams
Fischer副議長
Lo c khart
注:太 字 メン バ ーは15年FOMCで投票権あり
Bullard
T ar ullo
George
Plosser
(退任)
出所:FRB資料、Bloomberg等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
声明文は利上げへ「一歩
前進」を示唆:FOMC の関
心事は雇用情勢から『イン
フレ』へシフト
FOMC参加者の決心はつかずとも、「15年内」の利上げ開始が依然として「メインシナリオ」
であることに変わりはないようだ。FOMCが利上げ開始時期を決断する論拠は会合毎に精査
する経済データとなる。精査の結果、FOMCの関心事は雇用情勢から『インフレ』へとシフトし
たことが今回7月FOMC声明文から読み取れる。7月の声明文で確認できた(6月会合対比で
みた)小さな変化は以下の4点:
① 労働市場は、堅調な雇用創出と失業率の低下を伴い、改善基調が継続中
← 6月:失業率は横ばいも雇用創出ペースは加速した
2
本稿の予想作成に利用した時系列モデル以外に、確率的動学一般均衡モデル、イールドカーブ分析モデルを並行利用している。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 40 -
② 労働資源の過小利用(≒労働市場のスラック)は年初来、縮小した
← 6月:「幾分」縮小した(7月は「幾分」を消去)
③ 6月声明文にあった「エネルギー価格は安定したようだ」との文言を7月は『削除』
④ 労働市場で更に「幾分か(some)」の改善とインフレ率が中期的に2%の目標に
回帰と合理的に確信するとき、利上げ実施が妥当と判断
← 6月声明には無かった「幾分」を追加
どれも小さな変化に過ぎないとは言え、インパクトに欠けた6月分の雇用統計をみただけで
FOMCが①+②で労働市場の現状認識を上方修正したのは(当方にとっては率直に言って
少し)意外であった。④に示された通り、利上げ前に確認したい「更なる雇用改善」の自信を
FOMC参加者が確信できるまで、「あと一歩」のところまで到達しているのだろう。
FRB は利上げ開始条件
のチェックリストに「エネル
ギー動向」を再び追加
15年中の利上げへと向かうFOMC参加者の懸念材料は『インフレ動向』に絞られた、とみて
良さそうだ。当方も「可能性あり」と予想していたが、足元でエネルギー価格が再び軟調に転じ
たことを受け、7月の声明文から③「エネルギー安定」との記述が消えた。「労働市場の更なる
改善、早い時期のエネルギー価格と輸入価格の下落による一時的な影響がなくなるのに伴い、
中期的にインフレ率は2%に向けて徐々に上昇する」とみるFOMCのインフレ見通し(メインシ
ナリオ)は不変も、リスクシナリオとして(外生要因である)エネルギー動向が再浮上した格好
だ。
図:消費者物価シミュレーション:エネルギー続落回避なら15年央利上げにゴーサイン
推計値
(メインシナリオ)
(%)
4.0
住宅価格下落
シナリオ(09/1~)
3.5
3.0
CPI(総合)
賃金上振れシナリオ
2.5
2.0
(予想値)
1.5
1.0
ドル高シナリオ
(14年の名目ドル実効
相場上昇率の2倍・
17%実質ドル高)
0.5
0.0
-0.5
-1.0
12
13
14
15
注:CPI推計値は財(除く食品)、食品、サービスのECM推計値から算出
出所:FRB、米労働省統計等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
16
ブレント45ドル
一定シナリオ
それでも、現状程度でエネルギー価格が下げ止まれば、15年9月(当方メインシナリオ)の
利上げ開始を阻害する要因とはなり得ない。根拠は当方の消費者物価関数を用いて試算し
たインフレ・シミュレーションにある。15年初からエネルギー価格が持ち直すことなく「1バレル
45ドル」の大底圏で横ばいのまま推移したと想定するリスクシナリオを検討したい。シミュレー
ション結果(図)をみると、15年8月に消費者物価は前年同月比▲0.84%までマイナス幅が拡
大。しかし、その後、16年初には前年比効果剥落で+2.0%近傍へ向けて急上昇する見通しだ。
つまり、FRBがインフレ2%到達に確信を深め、利上げを実施する条件が整った、と判断する
- 41 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
ためには、エネルギー価格が15年初から反発する必要はなく、横ばいで十分、だったことにな
る。足元でエネルギー価格が軟調も、再び15年初の大底割れを試すことがなければ、中期的
にみてインフレ2%回帰の蓋然性は依然高く、9月の利上げ実施は十分可能となる。4-6月期・
GDP統計を確認した今、次回会合までに注視すべきチェックリスト(1)7月・8月分の雇用統計、
(2)小売・生産・インフレ率等の月次指標(→ ここから7-9月期の成長率・途中ラップを推計)
の最後に、重要度が格段に高まった(3)エネルギー価格動向を再度追加し、FOMCは9月利
上げ開始の可否を検討することになりそうだ3。
市場参加者が織り込み切
れていない 9 月利上げ実
施を受け、イールドカーブ
は中短期ゾーンでベア・フ
ラットが一気に進む展開を
予想
その9月会合まで残すところ1か月半。上記(1)~(3)のいずれの指標をみても、市場参加
者が9月利上げ開始見通しについて事前の段階で確信を持つことは、おそらく難しいように思
う。当方は利上げ有、と見るが、マーケットの織り込みは良くて6:4で9月利上げ有、程度だろう。
市場が織り込み切れていない以上、利上げがあろうとなかろうと、マーケットのボラティリティは
大きくなりやすい展開が見込まれる。特に足元、利上げの織り込みが不足気味、且つ、金融
政策動向に反応しやすい2年ゾーンでは、利上げ実施で15年9月末1.0%程度へ向けて、足
元から+30bp程度の上昇余地ありと当方は予想している。一方、長期ゾーンでは近いうちの利
上げ開始をほぼ織り込んでいることに加え、期待インフレはより安定度合いが強まっている(←
理由:特にエネルギー動向)故、9月利上げの有無で大きな反応はないと予想している(表
1)。
(7月31日 13:30)
3
利上げ開始時には「エネルギー安定」という判断が声明文に再登場することになろう。同文言は先行きのインフレ 2%到達に向けた FOMC の確信度
合を示す 1 つのバロメーターだ。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 42 -
欧州債アウトルック
ドイツ長期金利は超低位安定を今後も維持
シニア外債ストラテジスト 中沢 剛
ポイント



ユーロ圏は弱い景気拡大とディスインフレ傾向が今後も続く。ECBはQEを粛々と続け、来秋以降も延長へ
ギリシャは当面の危機を乗り越えたが、今後も危機は再燃しそう。ただ、EMU全体に与える影響は限定的
ドイツ長期金利は概ねゼロ%後半で超低位安定が続きそう。準コア・周辺金利の対独スプレッドは再び縮小
景気全般:景気拡大が続
くが緩やかで 、向かい風
が強い
EMU(ユーロ圏)の景気は緩やかな拡大を続けている。昨年末頃から再加速し、本年初は
低調な米国と対照的にEMUの景気指標の改善が目立っていた。しかし、今春以降のEMUで
は再び、冴えない景気指標の発表が続く。例えばPMIは7月に再び悪化(図1)。景気が失速
したわけではないが加速もしていない状態だ。また、IFO景況感指数の先行き感はギリシャ危
機の一段落によって7月に改善したものの、それまでは暫く悪化傾向にあった。ZEW景況感
指数の先行き感(景気先行指標の代表格)は7月も悪化を続けている。
表1:ユーロ圏経済・金融見通し
予想
実質GDP(前期比年率)
(前期比)
個人消費
総固定資本形成
政府消費
在庫投資*
純輸出*
消費者物価(前年比)
リファイナンス金利
2年ドイツ国債利回り
5年ドイツ国債利回り
10年ドイツ国債利回り
2014年
7-9
10-12
+0.7
+1.4
+0.2
+0.4
+2.0
+1.8
+0.6
+1.5
+0.8
+0.6
▲0.3
▲0.0
▲0.3
+0.1
+0.4
+0.2
0.05
0.05
-0.08
-0.10
0.15
0.02
0.95
0.54
1-3
+1.5
+0.4
+1.9
+3.1
+2.2
+0.3
▲0.9
▲0.3
0.05
-0.25
-0.10
0.18
2015年
4-6
7-9
10-12
+1.8
+1.5
+2.1
+0.4
+0.4
+0.5
+2.0
+1.9
+1.8
+1.6
+2.6
+2.7
+0.4
+0.4
+0.4
▲0.1
+0.1
+0.1
+0.3
▲0.2
+0.4
+0.2
+0.2
+0.7
0.05
0.05
0.05
-0.23
-0.22
-0.24
0.08
0.05
0.00
0.76
0.70
0.65
予想
[単位:%]
2016年
2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
4-6
7-9
10-12
(予想) (予想) (予想)
+2.1
+1.7
+1.6
▲0.3
+0.9
+1.4
+1.9
+1.6
+0.5
+0.4
+0.4
+0.5
+0.9
+1.7
+1.9
+1.4
+1.4
+1.0
+0.9
▲0.6
+1.0
+1.8
+1.6
+0.8
+3.3
+3.2
+3.2
▲2.3
+1.2
+1.8
+3.0
+2.6
+0.4
+0.0
+0.6
+0.2
+0.6
+1.0
+0.4
+0.4
+0.1
+0.0
▲0.2
+0.0
▲0.0
+0.0
+0.1
▲0.1
+0.5
+0.5
+0.6
+0.4
+0.0
▲0.2
+0.3
+0.6
+1.6
+1.4
+1.5
+1.4
+0.4
+0.2
+1.5
+1.2
0.05
0.05
0.05
0.25
0.05
0.05
0.05
0.05
-0.22
-0.20
-0.17
0.21
-0.10
-0.24
-0.17
0.00
0.05
0.07
0.10
0.92
0.02
0.00
0.10
0.30
0.75
0.75
0.75
1.93
0.54
0.65
0.75
0.90
1-3
+2.1
+0.5
+1.7
+3.3
+0.5
+0.1
+0.3
+1.5
0.05
-0.23
0.02
0.70
注: 実質GDPの需要項目は前期比年率、*は成長率寄与度、年間成長率は上段が年間対比、下段が第4四半期対比。金利は期末値。
ドイツ国債利回りはユーロ圏の指標とみなされる。
出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券(最終変更日:7月27日:予想は弊社)
図2:EMUと米国のOECD景気先行指数
(3ヶ月移動平均前期比)
図1:EMUの総合PMI(購買担当者指数)
64
62
60
58
56
54
52
50
48
46
44
42
40
38
36
2.0
(%)
1.5
EMU
1.0
0.5
0.0
‐0.5
‐1.0
米国
‐1.5
‐2.0
‐2.5
‐3.0
99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年)
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
注:総合PMIは製造業とサービス業の合成
出所:INEから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
出所:OECDから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
- 43 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
一つには、EMUの景気にプラス効果をもたらしていた一時期の石油価格下落やユーロ安
が反転した影響がある。これらは米国景気に逆の効果を及ぼし得る要因である(図2)。
それだけでなく、EMUにはそもそも成長の向かい風が強い。それには(1)債務危機の後遺
症(各部門でのデレバレッジ効果)、(2)構造的な成長低迷(特にフランスとイタリア)、(3)中国
など新興国の景気低迷、(4)ウクライナなど地政学問題、(5)政治的な混迷(政治・社会的な
分極化と政策合意形成の困難など)、などがある。ギリシャ危機は(1)と(5)の混合で、今夏は
コンフィデンス悪化等を通じ欧州全般で景気加速を妨げる一因になった。
現在の景気拡大は個人消費主導である。一つには、エネルギー価格を中心としたディスイ
ンフレの恩恵によるもので、この効果は今後剥落していく見込み。雇用・賃金の拡大による名
目所得の増加も消費拡大に貢献しているが、問題は、企業収益が伸び悩む中を雇用者所得
が堅調な伸びを続けていることだ(図3:→労働分配率が上昇)。これは、ドイツ企業が過去の
経営改革の成果を労働者に分配していることにもよるが、欧州独特の「労働市場の硬直性」が
もたらしている面も見逃せない。その元凶は、構造的な低成長に悩むフランスとイタリアだ。こ
のままでは中期的に「持続不能」となりかねないため、両国政府は構造改革に本腰を入れつ
つある。中心となるのは、行政費や福祉費用などの無駄な歳出を削減し、それを財源に企業
や雇用関連の減税を進めて競争力と雇用創出力を向上させることである。政策的な方向性は
着実に代わってきているが、成果が実際に顕れるまでには一定の時間を要しよう。
図3:EMUの雇用者報酬と企業営業余剰(非金融企業)
(名目:前年同期比)
12
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-12
-14
(%)
雇用者報酬
総営業余剰
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
出所:Eurostatから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
11
12
13
14 (年)
図4:EMUのマネーサプライ
(前年同月比)
14 (%)
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
06
07
銀行の民間向け信用
M3
08
09
銀行の民間向け貸出
10
11
12
13
14
15(年)
出所:ECBから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
マネーサプライはM3にせよ銀行貸出にせよ最悪期を脱し持ち直してきているが、まだ弱い
(図4)。持ち直しは(1)銀行の資本増強や不良債権処理等の進展、(2)景気回復(のラグ効
果)、(3)ECBの超金融緩和によるもの。一方、(1)バーゼルⅢやSSM(EMUの単一銀行間機
構)対応による銀行のバランスシート圧縮志向、(2)経済成長の向かい風や不透明感、(3)企
業の貯蓄超過状態(→設備投資等はまず内部留保から)、(4)米国のような消費者の借金文
化の欠如、などの要因が今後も融資の強い拡大を阻害することとなろう。
EMUの景気を中期的にみれば、リーマン・ショックと欧州債務危機の二つの大不況から立
ち直り、設備投資循環の拡大期に入っているとみられるため、大きな失速は当分なさそうだが、
過去の似た局面と比べても低い成長に留まる見込みだ。目先は第2Qの前期比+0.4%に続き
第3Qも同率に留まると予想。最近の月次景気指標の低迷に鑑み、第3Qは先月の本稿での同
+0.5%からやや下方修正した。今年の年間予想も先月時点の+1.5%から+1.4%に下方修正。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 44 -
物価:デフレは回避して
も、ディスインフレ傾向は
今後も続く
EMUの消費者物価上昇率は5月に前年比+0.3%となり、6ヶ月振りでプラスを回復。休日日
程要因に押し上げられた部分もあったため、6月は同+0.2%に反落。さらに7月はエネルギー
価格の低下から同+0.1%まで下げたとみられる。それでもプラス水準は維持しており、「日本
型デフレ」を免れた公算はやはり高い。コア・インフレ率は4月の同+0.6%から5月+0.9%→6月
+0.8%と持ち直し、下げ止まり傾向を一段とみせている。
EMUでは債務危機時に拡大したGDPギャップがまだかなり残っているが、それでもデフレ
にならないのは、上記した「労働市場の硬直性」もあって労働コストで一定の伸びが保たれて
いるのが一因だ(図5)。今後、特にフランスやイタリアは労働コストを抑制し企業競争力を回復
させる形で経済成長を取り戻していく必要があり、これは、景気拡大が進んでもインフレ圧力
はなかなか高まらない可能性を示す。今後、エネルギー価格の前年比効果等によって、本年
末から来春頃にかけてインフレ率は+1%台半ば程度へ急速に上昇する見込みだが(この点、
石油価格の行方次第で下振れリスクあり)、その後は+1%強程度に再び反落しよう(図6)。
図5:EMUのGDPギャップと労働コスト、サービス価格
7
6
5
図6:EMUの消費者物価:見通し (前年同月比)
4.5
(%)
4.0
3.5
3.0
2.5
(%)
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
08
(%)
消費者物価指数:サービス価格
(前年同期比)
単位労働コスト
(前年同期比)
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
GDPギャップ率(AMECO推計)
-4
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15(年)
注:2015年のGDPギャップはAMECO(欧州委員会)推計
出所:Eurostat、欧州委員会から三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
ギリシャ危機と EMU 体
制:ギリシャの目先の危機
は遠のいたが、今後も危
機再燃のリスクが高い。た
だ、EMU の体制危機には
発展せず
見通し
エネルギー
酒・煙草
食品・飲料
コア物価 *
消費者物価
09
10
11
12
13
14
15
16
17
(年)
注:コア物価=エネルギー、食品、酒、煙草を除く
出所:Eurostatから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
ギリシャ危機が今夏の欧州を大きく揺るがした。EMUによる支援計画の期限切れとIMFへ
の返済期限が来る6月末になっても、緊縮政策など厳しい条件の受け入れを拒否するギリシャ
とEMUとの間で対立が続いたまま、ギリシャのツィプラス首相は6月27日、債権者(EU、IMF、
ECB)が提案する支援計画を受け入れるかどうかを問う国民投票の実施を突如宣言。銀行か
ら預金流出が加速する中、ギリシャは6月末から銀行閉鎖など資本統制に追い込まれた。7月
5日に実施された国民投票では「ノー」が6割強となったが、ギリシャへの不信感を強めたEU側
はツィプラス政権に対し「支援計画受け入れかユーロ離脱か」の「最後通牒」を突き付けた。
そこで、選択肢がなくなったツィプラス政権は一転して譲歩し、EUの提案をほぼ丸呑みする
計画案を同9日に提出(表2)。週末11日から13日朝まで続いたEMU財務相会議&サミットで
は、ユーロからの「一時的離脱」論を掲げながら厳しい追加条件を強硬に求めるドイツとギリシ
ャとの間で決裂寸前になりながらも、ギリシャが追加策を早急に法制化することなどを条件に
第三次支援交渉を開始することで決着。ギリシャ議会はその法制化を大差で可決し、17日に
支援計画の交渉開始が最終的に決定した。20日はECBが保有するギリシャ国債35億ユーロ
の償還日であったが、EUによるブリッジ・ローンが供与されたことで無事返済された。その間、
ECBが二度に渡ってELA枠の拡大を決定。銀行営業も20日に再開している。
第三次支援計画は3年間で計820~860億ユーロを想定。EMUとIMFが主に負担する想定
だが、内訳は未定だ。8月20日にECBが保有する別の国債32億ユーロの償還があるため、そ
れまでに支援計画を正式合意し、初回トランシュでこの返済を賄うというのが現在の流れであ
- 45 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
る。ただ、短期間での合意には難しい面が多いため、再びEUによるブリッジ・ローンの供与に
頼ることとなる公算が十分ある。
表2:ギリシャの支援計画:欧州委員会案、ギリシャ政府案、EMUサミット声明
項目
欧州委員会提案(6月26日)
・2015年度補正予算と2016-19年中期計画の採択
・2年間で80億ユーロの財政赤字削減
・プライマリー黒字は2015年から順にGDP比1%→2%→
予算・中期計画
3%→3.5%
・VAT改革、その他税制改革、年金改革、行政改革、徴
税強化等含む
ギリシャ政府提案(7月8・9日)
EMUサミット声明(7月12日)
・7月15日までに法制化すべき4件、同22日までに法制化す
・2年間で120(~140)億ユーロの財政赤字削減
べき2点を提示。ギリシャ議会が前者を施行しサミット声明
・プライマリー黒字は2015年から順にGDP比1%→ 文書を承認したことを確認した上で、各国の承認手続きなど
2%→3%→3.5%
を経て第三次支援計画の交渉が開始
・VATや法人税などの増税、年金を含む歳出削減 ・ギリシャの支援計画提案は、この1年間の経済・財政状況
悪化に鑑み大幅に強化すべき
VAT改革
・VAT改革の法制を7月初から施行
・年間でGDP比1%分の増収
・標準税率23%にレストランやケータリング含む。税率は
三段階
・VATは基本、7月初から23%の基本税率に統一。
軽減税率だったレストランやケータリング等も基本
税率に。他に13%の軽減税率(食品、エネルギー、
・VAT合理化と課税ベース拡大(7月15日までに法制化)
ホテル)と6%の超軽減税率(薬品等)
・離島のVAT30%割引は「大きな島」を除き残すが、
それも徐々に廃止
財政構造改革
・徴税強化。燃料補助金の廃止等
・9月までに(1)個人所得税税控除の簡素化、(2)連帯税
の整理など
・7月初から医療制度改革
・国防費を4億ユーロ削減
・法人税率を現在の26%から28%に増税
・法人税率を現在の26%を28%に増税
・国防費を2015年に1億ユーロ、16年に2億ユーロ削 ・財政評議会を設立し、財政目標を逸脱した場合に自動的
減
歳出削減(7月15日までに法制化)
・娯楽用船舶の贅沢税徴収拡大
年金改革
・2010年年金改革法の完全履行
・7月初から徐々に改革を実施
→年金改革による恒久的な赤字削減を2015年にGDP
比0.5%、2016年に同1%
・補助的年金基金の「赤字ゼロ」条項の完全履行
・早期退職の不利用促進(罰則など)
・貧困層の連帯年金給付を2019年末までで徐々に廃止
(即時に開始)
・年金改革による恒久的な赤字削減をGDP比で
2015年0.25~0.5%→16年1%
・早期退職の抑制(早期退職者の年金支給額削
減、退職年齢の引き上げ、払込期間延長など)
・年金の長期的持続性改善策(7月15日までに法制化)
・低所得者の「連帯年金」を2016年3月から2019年
・さらに野心的な年金改革(ゼロ赤字条項の施行など)
末までに漸進的に廃止
・年金者負担を拡大
・改革は7月初から実施。「ゼロ赤字条項」は10月か
ら実施
行政、司法
反腐敗
・公務員給与制度改革を2016年初から施行
・公務員給与と雇用の上限目標設定
徴税強化
・独立系の徴税機関を設立。徴税制度の改善。電子決
済の促進
金融部門
・企業と家計の倒産・破産法制の改正。関連の司法制度
改革
労働市場
・集団的解雇や労働争議、集団的労働交渉の制度改革
・・・ 改革は債権者による見直し終了後で、いずれに ・集団的労働交渉について今秋に改革を法制化
せよ来年以降
生産市場
民営化
?
・統計局の独立化(7月15日までに法制化)
・司法改革(7月22日までに法制化)
・債権者代表のアテネ駐在(支援計画実行の監督、法案の
事前審査・承認)
・脱税対策のため前倒し徴税強化
・農家の優遇税制を2017年末までに廃止
?
・OECD改革提言の完全実行:特にトラック免許、飲料、
石油製品
?
・制限職種の開放:エンジニア、公証人、保険数理人、検
事
・国有資産開発基金(HRDAF)下にある企業の完全民
営化
・地方空港の売却にコミット
・地方空港や電力、(ピレウスなど)港湾など含む
・テレコム株をHRDAFに移管
(ピレウス&テッサロニキ港の民営化は10月末までに
入札日発表)
ー
・BDDR(銀行の破たん処理を可能にする等)の国内法取り
入れ(7月22日までに法制化)
・金融部門改革(不良債権処理、HFSFのガバナンス強化)
・集団的労働交渉や労働争議などの改革
・前政権で解雇されながら、ツィプラス政権が再雇用した公
務員を再解雇
・行政の非政治化など行政改革
・OECDツールキットⅠを完全施行するための明確な日程表
提示
・ツールキットⅡも実施
・国家資産を基金(在ギリシャ)に移管し、民営化などで500
億ユーロの収益。うち250億ユーロは銀行資本注入の返
済、125億ユーロが公的債務返済、残りが国内投資
・電力ADMIEの民営化
ESM支援など
(第二次支援計画であるため関係なし)
・ESMから3年間で計535億ユーロの支援融資
・支援計画は3年間で計820~860億ユーロ程度
財政措置や民営化等で減額が可能
・来年3月以降もIMF支援の継続をギリシャ政府が申請
・うち、銀行支援に100~250億ユーロ必要(うち100億ユーロ
は即時)
・7月20日までに70億ユーロ、8月央までに追加50億ユーロ
の資金ニーズがあるため、その対応(ブリッジ・ローン)を速
やかに検討
債務再編
(第二次支援計画であるため関係なし)
(債務減免にはそもそも消極的)
・債務再編と成長政策で計350億ユーロ
・2022年以降の債務リプロファイリング(金利減免、
返済期限延長、猶予期間延長など)
(経済相がBBCで債務の3割削減を提唱)
・必要なら猶予期間や返済期間の延長の用意
(新計画の完全な履行等が確認された後)
・元本のヘアカットはない
・成長・雇用促進策に350億ユーロ
出所:欧州委員会、欧州理事会(EUサミット)、(ギリシャ提案は)諸報道から三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
ギリシャ危機は取りあえず後退した。ギリシャ政府も国民も大半はユーロ残留を望み、その
上でハード・ネゴを行ってきただけであるため、7月20日の「絶対的期限」を前にあっ気なく折
れたのもある意味で想定通りだ。現在のギリシャは支援計画合意を最優先しているため、ギリ
シャが孤立する可能性は低く、8月20日のデフォルトを心配する必要はほとんどないであろう。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 46 -
ただ、追加的な債務減免が必要な点では既にコンセンサスが出来ており、EMU側がどれだ
け減免に応じるかが今後の焦点。中でもIMFはギリシャの公的債務が中長期的に持続不能と
した上で、EMUによるかなり思い切った減免を求め、それがなければ自身は追加支援に参加
できないと述べている。一方、EMU側では特にドイツが大幅な減免に反対しており、債務減免
の協議自体、支援計画の第一次査察でギリシャが合格したことを確認してから(=秋以降)と
の立場だ。ギリシャが大きく譲歩したことで、EMU内ではドイツの強硬姿勢が逆に浮き上がり、
それを警戒するフランスやイタリアを中心にギリシャ支援に前向きな勢力が形成されている。
今秋には、ドイツとIMFを中心とした諸陣営間の対立がかなり先鋭化している可能性が高い。
結局、ドイツとIMFの両極端な意見を二で割ったような妥協策となり、将来的にギリシャの債
務危機が(政治危機と連動しながら)再発するリスクを高めることとなりそうだ。ギリシャ自身、
SYRIZA内左派が支援計画受け入れに反発を強めており、9月に開催予定の臨時党大会で
彼らが離党する公算が出てきた。いずれにせよ、支援計画合意後に解散・総選挙が実施され
る見込みで、ツィプラス続投は固いとしても、ギリシャ政治は今後も混とんとしたものが続こう。
ただ、2012年までと異なり、EMUはバックストップの整備や各国の改革、QEなどによって、
ギリシャ危機が深刻な体制危機や市場混乱に繋がらないような耐性を備えてきている。さらに、
ギリシャ危機はEMUの統合深化の必要性を再確認させる契機ともなっている。EUの5機関首
脳が6月末に公表した"Five Presidents' Report"は2025年までのEMU完成を目指し、その前の
段階としてEMU財務省の創設などを提唱した。ギリシャがユーロ離脱に追い込まれる可能性
は極めて低いというのが当方の一貫した強い主張である。
政策・政治(各国):政治リ
スクと絡んだ経済改革遅
延リスクには要注意
ギリシャほど極端でないにせよ、EMUの多くの国で政治リスクに注意が必要だ。政治・社会
的な分極化と流動化、政治の決定能力の低下が政局の不安定と政策的な停滞を招いている。
一国内の諸勢力間のほか、EMUのグループ間(北欧vs南欧、ドイツ陣営vsフランス陣営等)の
対立もある。ギリシャのユーロ離脱阻止に欧州(特に仏陣営)トップが全力を傾けたのは、金融
市場を通じた波及リスクを警戒したというよりも(そのリスクは既にかなり低下している)、政治的
決裂の「パンドラの箱」を開けることが欧州にとってあまりにも危険であるために他ならない。
政治的なイベント・リスクが当面で最も高いのはスペインだ。年末に実施予定の総選挙を前
に、ギリシャのSYRIZAに同調的な路線をとる新興左翼「ポデモス」の人気が高く、緊縮政策の
巻き返し等を主張している。ただ、ギリシャ情勢の窮状によって立場が悪くなっている面もあり、
公的債務の再編要求は7月になって撤回した。ラホイ政権は来年初に予定していた個人減税
を半年前倒しして7月初から実施し、国民の支持確保に努めている。また、規制緩和や競争
力強化等を唱える新興中道派「シウダダノス」の支持も上がっている。結局、改革と成長、国民
生活の両立を図るような比較的穏当な路線に収斂していくと当方はみている。9月27日のカタ
ルーニャ州議会選挙では独立支持派が統一名簿で臨み、事実上の独立住民投票となるが、
州民の関心は同様に実際的な生活向上に向いている模様で、大きな紛糾はなさそうだ。
10月4日の総選挙実施が決定したポルトガルの場合、債務危機打開の経済改革を主導し
てきた中道右派与党連合の社民党・人民党が野党の中道左派・社会党に支持率でやや劣勢。
社会党はギリシャに課された緊縮政策を強く批判し、ギリシャとの連帯を訴えている。ただ、そ
の社会党も現政権の財政再建路線を基本的に堅持する意向を再三表明している(図7参照)1。
現政権の下で国債による資金調達は既にかなり先の分まで完了。かつては「ギリシャの次に
危ない」と言われた同国だが、ギリシャ危機からの波及リスクは明確に低下したと言える。
1
緊縮政策を含む経済改革の成果がかなり現れる一方、国民生活はまだ苦しい面が多いため、改革の成果を社会に還元し、成長を促すとの姿勢は、
社会党の方が相対的に高い。社会党は選挙勝利の暁に、減税実施や、現政権が削減した祝日の復活などを約束している。
- 47 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
図7:ポルトガルの財政収支(中央政府:12カ月累計)
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
-8
-9
-10
-11
-12
-13
-14
-15
図8:ドイツ連邦政府の2016年度予算案:歳出入と収支
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(10億ユーロ)
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(10億ユーロ)
(10億ユーロ)
350
見通し/中期計画
歳出(右目盛)
300
歳入(右目盛)
44.0
34.1
250
純借入額
17.3
22.5
22.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
200
(年)
注:過去の部分は過去の文書(2015年3月発表の補正予算案など)
出所:ドイツ財務省から三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
出所:ポルトガル中銀から三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
一方、ドイツは7月1日に閣議決定した2016年度予算案で、2014年度に達成した財政均衡
(→国債ネット発行ゼロ化)を2019年まで続ける意向が再確認された(図8)。これがドイツ長期
金利の超低位安定を今後も助けることとなろう。ただ、ドイツは経済から政治まで一人勝ちの
状況で、自身の優等生的基準を他国にも押し付ける姿勢がますます目立ち、他国との摩擦を
高めている。仏・伊などのギリシャ支援姿勢は、ドイツ流の規律一辺倒の経済運営よりも、成長
と雇用の増進にも配慮した政策を重視したいとの思惑も背後にある。レンツィ伊首相は7月19
日、居住用住宅の不動産性や法人税、個人所得税の減税(FTの試算で総額350億ユーロ)を
実施していく意向を表明。欧州委員会の柔軟な対応を期待している2。
金融政策:毎月 600 億ユ
ーロの債券購入を粛々と
継続
ECBは国債を中心とした公債の大量購入(PSPP)を3月に開始。昨秋から購入開始している
カバード・ボンド等と合わせた量的緩和(QE)政策として、毎月600億ユーロ程度の購入を少な
くとも来年9月末まで続け、その後も中期的なインフレ目標達成の目途が立つまで購入を続け
る意向を述べている。夏休みシーズンで取引が鈍る8月の購入を少なくするため、5~6月に前
倒しで多めに購入するといった変則を除けば(7月はややペースが落ちている)、これまでほぼ
予定通りの購入を続けている。7月16日の定例理事会後の会見でドラギ総裁は、このような
「着実」な金融政策姿勢を今後も維持し、QE計画を「完全に遂行」すると改めて述べた。当方
は、来年9月まで予定通りの購入が続き、その後も1年程度、テーパリングしながら購入が継続
されると引き続き考えている3。
債券購入計画は「スムーズ」に進んでいるとECBは述べているが、市場の流動性を低下さ
せボラティリティを高めているのは確かだ。ユーロシステムがPSPPで購入している各国公債
(主に国債)と、各国の国債市場とのそれぞれの平均残存期間を比較すると(表3)、独・仏など
コア・準コア諸国では市場平均より短めの、伊・西など周辺諸国では長めの国債がQEで購入
されている。これは、信用力の高いコア・準コア諸国国債の中でも長いゾーンのものが、現在
の環境で希少価値が高くなっているため、それを保有する金融機関の売り惜しみが相対的に
2
EU の財政規則にある「構造改革を実施する国には財政赤字削減規定を柔軟に適用できる」旨の条項を適用するよう、イタリア政府は EU に求めて
いる。また、減税と言っても一方的な財政出動ではなく、特にパドアン財務相は歳出削減で財源を確保すると明言している。現在、省庁経費や医療
費など歳出見直しを 100 億ユーロ程度の規模で進めるべく具体的な詰めが進められている模様。また、120 億ユーロ規模の国営企業民営化計画
の第一弾として、8 月初に郵便局(ポステ・イタリアーネ)の民営化計画が発表される見込みだ。
3
ECB の 6 月のスタッフ経済見通しでは、GDP 成長率予想は 2015 年+1.5%→16 年+1.9%→17 年+2.0%、CPI インフレ率予想は同+0.3%→+1.5%
→+1.8%となっている。中期的にインフレ目標水準へ回帰していくという「中銀らしい」内容になっているが(そのような見通しでないなら追加緩和が
必要)、楽観的すぎると言えよう。当方の 2017 年見通しは成長率+1.6%、インフレ率+1.2%。なお、購入対象の債券市場の流動性低下に配慮し、
(既に進められている)購入対象の一層の拡大や、購入対象の基準緩和等が行われる公算は十分ある。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 48 -
強いことを示唆している4。それでも、ECBが今後も「イールドカーブに中立的な」購入姿勢を
維持するならば、イールドカーブを潰すような形での債券購入が継続される公算が高い。
表3: ユーロシステム(ECB+EMU各国中銀)によるPSPP(公的資産購入計画)での資産購入実績
中銀による
同、シェア
保有残高
(%)
(100万ユーロ)
6月末
総額
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
オランダ
ベルギー
オーストリア
ポルトガル
フィンランド
アイルランド
EU機関
198,148
100.0
46,332
36,292
31,585
22,742
10,345
6,371
5,044
4,496
3,237
3,015
23,870
23.4
18.3
15.9
11.5
5.2
3.2
2.5
2.3
1.6
1.5
12.0
各国の
ECB出資比率
(EMU内:%)
100.0
25.6
20.1
17.5
12.6
5.7
3.5
2.8
2.5
1.8
1.6
ー
3月末
中銀購入分
平均残存期間
(年)
4月末
5月末
国債市場 *
平均残存期間
(年) (b)
6月末(a)
(a)-(b)
(年)
8.56
8.25
8.07
8.00
n.a.
n.a.
8.12
8.22
9.07
11.66
6.71
8.80
7.79
10.96
7.26
9.43
7.26
7.90
7.84
8.41
9.73
6.97
9.10
7.99
10.77
7.15
9.14
8.05
7.11
7.83
8.68
9.71
6.85
9.13
7.84
10.84
7.16
9.61
7.80
6.87
7.83
8.83
9.82
6.82
9.09
7.74
10.61
7.24
9.55
7.43
8.85
8.62
8.37
8.71
8.36
10.02
8.71
7.92
7.63
9.66
n.a.
-1.98
-0.79
0.46
1.12
-1.54
-0.93
-0.97
2.69
-0.39
-0.11
n.a.
注:発行体の所在国別(中小国は省略)。国債の他に機関債を含む(ドイツのKfWなど)。EU機関はEIBやEFSFなど
保有残高は簿価ベースで償却原価法
* 市場における平均残存期間はPSPPによる購入対象銘柄のみで集計(残存期間2年~30年364日。ユーロ建て等)。残高での加重平均。3月末時点
出所:ECBから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
しかもドラギ総裁は7月16日理事会後の会見にて、市場の要因によって金融政策の意図せ
ざる引き締め等が発生するなら、「マンデートの範囲内で利用可能なあらゆる施策を利用して
対処する」と述べた。これは例えば、国債市場の流動性枯渇によって長期金利が不当に跳ね
上がったり、ギリシャ危機等によって(自身に問題がないはずの)周辺国の国債が不当に売ら
れたりした場合に、流動性対策やバックストップ発動、追加緩和など適切な手段で対処すると
の意思を示したものである。実際にそのような策が必要になる現状で想定していないが、ECB
がいざとなれば動くとの安心感だけでも長期金利の低位安定を保証する力となろう。
ECBはドイツ連銀のモデルに基づき物価安定維持を最優先する体制で、その原則そのも
のは堅持されている。ただ、債務危機の後遺症が残る現状で懸念すべきはインフレよりもデフ
レのリスクであるため、ドラギ総裁はドイツ勢の教条主義的な主張を抑え、柔軟な組織運営を
進めている。3年前のOMT導入時に「ユーロを守るためには何でもやる」と宣言した総裁は、
実際に様々な面でそれを実行に移している。この点は、ユーロの体制維持に向けた強い姿勢
にも現れている。ギリシャ危機では、ドイツ流の過度に厳格な規律主義とは一線を画し、ギリシ
ャ政府の改革姿勢が確認できればELA枠の拡大等で報いるスタンスを明確に出した。
長期金利(現状):ギリシャ
危機が進む中、ドイツ長期
金利は超低位安定の新た
な相場レベルを模索
7月までのドイツ長期金利(10年物国債利回り:以下同じ)は、4月末から6月初にかけての2
段階での急反騰で6月10日に1.057%のピークを付けた後、下振れ気味で推移しながら新た
な相場レベルを模索している。その過程で、6月末から暫くの間、欧州市場における話題はギ
リシャ一色となった。ギリシャの国民投票実施が発表されて最初の取引となった6月29日にドイ
ツ金利は急落し、逆に、ギリシャ政府が前夜に提出した支援計画案が大幅譲歩した内容で債
権者に受け入れられるとの期待が高まった7月10日に金利は急騰している。
もっとも、ギリシャ情勢の展開とドイツ金利の動きが常に密接に連関していたとは言えない。
日柄に沿ったアップダウンを繰り返していただけで、ギリシャ情報はその材料として都合よく利
4
特にドイツの場合、短いゾーン(2~3 年程度)の国債の利回りが、購入対象の下限である▲0.20%を上回ったことで購入対象となり、購入した債券の
平均残存期間が 6 月には一段と低下することとなった。7 月は再び利回りが低下しているため、この動きには歯止めが掛かったかもしれない。
- 49 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
用されていただけにもみえる。そもそも、2012年までと異なり、EMUはギリシャ危機でもパニッ
クに陥らないような耐性を備えているため、危機の最盛期でも相場全般への影響は比較的落
ち着いたものであった。一方、目先の危機は乗り越えたものの、ギリシャ問題の根本は何ら解
決していないとの冷静な見方もある。
図9:EMUの長期金利と政策金利(見通し)
4.0
(%)
3.5
3.0
ドイツ10年物国債利回り
2.5
2.0
予想レンジ
1.5
1.0
0.5
ECBリファイナンス金利
0.0
-0.5
09
10
11
12
13
14
15
16
17
(年)
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
ギリシャ問題の霧が取りあえず晴れたことで、欧州市場は通常のファンダメンタルズ的材料
が改めて前面に出ることとなった。ドイツ金利は今春、方向転換のため金利の急反騰が必要
だったが、そのまま金利の上昇局面に入るわけではなく、超低位安定局面に移行したとみら
れる。金利反騰の反動から、当面は金利の下押し圧力が強くなる見込みで、実際、ギリシャ危
機が当面の終息に向かい出した7月央以降の金利は、ギリシャ要因だけなら上昇してもおかし
くないのに、ブル・フラット化でジリジリと低下している。
図10:CRB商品価格指数
380
図11:ドイツと米国の10年物国債利回り
3.2
3.0
2.8
2.6
2.4
2.2
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
(ドル)
360
340
320
300
280
260
240
220
200
180
09
10
11
12
13
14
出所:トムソン・ロイターから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
15
(%)
Jan-14
(年)
(%ポイント)
米国
2.6
2.4
2.2
2.0
米国ードイツ
(右目盛)
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
ドイツ
0.8
Apr-14
Jul-14
Oct-14
Jan-15
Apr-15
Jul-15
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
金利の下押しを招いている主因は言うまでもなく、ECBのQE政策だが、その背後には当然
のことながら、EMU経済に根強く残る成長の向かい風とディスインフレ圧力がある。特に、最
近の景気指標に冴えないものが増えてきた点も金利の下押し要因となった。さらに、(1)一次
産品市況の全般的な下落加速(図10)、(2)中国経済の不安と株価下落、(3)世界的な株価
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 50 -
調整や新興国の通貨下落など、世界経済・市場全般に強まってきた不透明感が足もとで金利
低下を一段と後押しした。一方、利上げが秒読み段階となった米国や英国の中銀が、その利
上げを慎重に進めていく姿勢を示していることもあり、両国の長期金利が安定している影響も
ある。さらに、米(英)の利上げ観測と上記の世界経済・市場の混乱とは全てが互いに連関し
ている面があり、それが独・米国債など安全資産への資金逃避を招いている。最後に、先述し
たとおり、ドイツの均衡財政が日・米・英などにない金利の低位安定要因となっている。
金融政策の方向性の違いがますます強調される割には、米独10年金利のスプレッドは6月
末頃から極めて安定している(図11)。米独10年金利の連動性はもともと極めて高いが、最近
は改めて、世界の諸材料を共同で咀嚼しながら相場が連動して進む局面にあるとも解せる。
周辺国(イタリア、スペイン等)や準コア国(フランス、オランダ等)の長期金利の対独スプレ
ッドは今春から拡大傾向を続けていたが、7月8日頃から一斉に縮小している(図12・13)。この
動きはギリシャ危機の深刻化と鎮静化に沿った部分が確かに大きい。国民投票直後の7月7
日にスプレッドはピーク。その後、同日夜のEMUサミットがギリシャに「最後通牒」を突き付けた
が、これがギリシャの譲歩を促して支援計画の合意に至るとの期待を生み、8日以降の縮小に
つながった(とされる)。その後、実際に合意が成立し、スプレッドは一段と縮小した。
図12:イタリア・スペインの10年物国債利回り対独スプレッド
2.3 (%ポイント)
2.2
2.1
2.0
1.9
1.8
1.7
1.6
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1.0
0.9
0.8
Jan-14
Apr-14
図13:EMU準コア3国の10年物国債利回り対独スプレッド
0.9
(%ポイント)
0.8
ベルギー
0.7
イタリア
0.6
フランス
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
スペイン
Jul-14
Oct-14
Jan-15
Apr-15
0.0
Jan-14
Jul-15
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
オランダ
Apr-14
Jul-14
Oct-14
Jan-15
Apr-15
Jul-15
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
もっとも、ドイツ金利と同様、相場の動きをギリシャ情勢だけで説明するのは無理がある。危
機が最高潮に達したときに市場が先を読んでスプレッドを急激に縮小させるというのもやや不
自然だ。やはり、(1)そもそもギリシャ危機がEMUの市場全体に与える影響は限定的であった、
(2)ユーロ離脱は危険と考える者は「最後には妥協が成立する」と楽観視し、逆にギリシャはそ
もそもユーロにいるべきでないと思う者は「ギリシャを厄介払いすればむしろプラス」くらいに考
えていた、(3)ECBのQE遂行や各国での改革推進などスプレッド縮小を促す要因が底流で続
いていた、などの理由がある。
より大きな流れとして、2012年夏のOMT導入頃から進んでいた各国金利の対独スプレッド
縮小傾向が、今春のQE開始期待でさらにダメ押しされ、取りあえずの達成感が生じたことで
(例:10年物スプレッドでオランダはゼロ近く、フランスは20bp程度、伊・西は100bp程度)、QE
開始による材料出尽くし感から逆に調整圧力が強まり、それがギリシャ危機で加速されたとい
う動きがある。しかし、底流にある中期的なスプレッド調整圧力は変わらないため、ギリシャ危
機による調整進展の加速によって逆に調整一巡感が広がり、危機鎮静化でそれが確認され
たということであろう。当方は、スプレッド拡大の形での調整局面はほぼ峠を越えたと考える。
- 51 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
周辺国の中では、債務危機からの経済復興が目覚ましいスペインの金利がイタリアを下回
る状態が昨年は続いていたが、今春には差がほとんどなくなり、7月はイタリア金利の対西低
位が広がっている。これはまず、スペイン側で新興左翼「ポデモス」の台頭など政治リスクが高
まり、ギリシャ情勢との類似性が認識されていること。さらに、イタリアでも政治・経済改革が進
み、今年は景気指標の改善も目立ってきたことで、市場規模が圧倒的に大きいイタリア国債
に対する投資家の関心が徐々に戻ってきているためとも考えられる。ポルトガル国債の調整も
概ね限定的で、対独スプレッドは既に昨年のレンジ下限(200bp前後)を下回っている5。
長期金利(見通し):ドイツ
金利は超低位安定。周
辺・準コア金利の対独スプ
レッドは改めて縮小へ
8月以降のドイツ長期金利は上記のとおり、「超低位安定」の局面入りを一層印象付ける動
きとなろう。当方は、概ねゼロ%台後半のレンジを想定しているが、ボラティリティは高く、ゼ
ロ%台前半に再び落ちる場面もまだあり得るとみている。成長と物価の下振れ圧力が残る中
を、ECBがQE政策を粛々と続けていくことで国債需給のひっ迫が一層進むと考えられるため
だ。イールドカーブをさらに潰すことはないにしても、カーブの縮小「圧力」は今後も働き続け
よう。一方、短いゾーンではマイナス金利政策や流動性供給策などによってマイナス水準が今
後も当分続く見込みである。
目先は、春に金利が急反騰した反動から、金利の下押し圧力が特に優勢となろう。さらに、
一次産品価格や中国株、新興国通貨などの下落(少なくとも不透明感)が加わり、ドイツ金利
に追加的な下押し圧力を与える見込みだ。米国や英国の利上げ(観測)がこれらの市場の調
整に拍車をかけるならば、自身やドイツの長期金利のさらなる低下要因となり得る。ドイツ金利
は30日の大幅低下(→0.650%)によって、5月末以来の下値抵抗線や、4月末以降の上昇の
38.2%戻し水準を割り込んだため、当面はその50%戻しや200日線がある0.55~0.56%程度
を目指す展開となりそうだ。
図14:ドイツの各年限の国債利回り(期末値:見通し)
4.0
(%)
見通し
3.5
3.0
2.5
10年
30年
2.0
7年
1.5
1.0
0.5
0.0
5年
-0.5
10
11
12
13
2年
14
15
16
17
(年)
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
ギリシャ情勢は、8月20日の国債償還は平穏に乗り切るとみるが、秋には(1)債務減免を巡
る(ドイツとIMFを頂点にした)対立の激化、(2)解散・総選挙による政局の混乱などが予想さ
5
準コア国の中では、構造的な低成長が依然として深刻ながらも、4 月の総選挙で誕生したシピラ新政権が財政再建・構造改悪路線の継続を明確に
しているフィンランドの国債相場が相変わらず好調で、対独スプレッドは一時的にマイナスまで記録。一方、旧ヒポ・アルペ銀行のバッド・バンクであ
る HETA の債券のベイルイン問題が紛糾するオーストリアの国債相場は準コアの中で特にパフォーマンスが悪かった。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 52 -
れる。「危機再燃」というほどではないにせよ、欧州の代表的なリスク要因であるギリシャ問題が
未解決であることが再確認されれば、ドイツ金利の下押しを続ける一つの材料となろう。
ドイツ10年金利の期末予想は第3Q0.70%→第4Q0.75%を維持するが、レンジはそれぞれ
0.30~1.00%→0.10~0.90%とかなり広くとっている(先月よりは縮小したが:図9)。足元で下
振れリスクが再び高まってきたことは確かである。期末見通しのグラフを図14に示す。
図15:EMU各国の10年物国債利回り
見通し(期末値)
7.5
7.0
6.5
6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
図16:EMU各国の10年物国債利回り:対独スプレッド
見通し(期末値)
5.5
(%)
(%ポイント)
(見通し)
5.0
(見通し)
スペイン
4.5
スペイン
4.0
3.5
フランス
3.0
2.5
ベルギー
フランス
2.0
イタリア
ベルギー
1.5
イタリア
1.0
オランダ
0.5
ドイツ
10
11
12
13
14
15
16
オランダ
0.0
17 (年)
10
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
11
12
13
14
15
16
17
(年)
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
準コアや周辺国の長期金利の対独スプレッド拡大は前記のとおり、債務危機終息以来続い
た一本調子の縮小からの調整がギリシャ危機の影響を受けながら一気に進んだものと解せる。
ギリシャ危機が当面の最悪期を脱したことで、調整の峠は既に越えたとみられる。そして、(1)
QEの効果、(2)各国の改革の成果、(3)景気拡大持続によるリスク志向、によって、スプレッド
の中期的な縮小傾向が徐々に再開していくとみる。スプレッド縮小余地は準コア国よりも、出
遅れた周辺国の方で大きいとみられるため、イタリア・スペインの金利は水準的にもまだ下げ
余地が残っていよう(図17・18にイタリア金利見通し)。特にスペインは、経済的な改善がイタリ
アに比べかなり明確であるため、年末の総選挙を過ぎて政治的な安定が確認されたなら、イタ
リア国債相場に対する優位性を回復することになりそうだ。
図17:イタリアの各年限の国債利回り
見通し(期末値)
8
図18:イタリアの各年限の国債利回り:対独スプレッド
見通し(期末値)
5.5
(%)
見通し
7
(%ポイント)
5.0
4.5
6
4.0
5
3.5
見通し
3.0
4
2.5
10年
2.0
3
5年
2
10年
1.5
7年
7年
1.0
1
0.5
2年
0
10
11
12
13
2年
0.0
14
15
16
17
10
(年)
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
11
12
13
5年
14
15
16
17
(年)
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
準コアの中でもフランスやベルギーは、オランダなど「準コア優等生」に比べ対独スプレッド
の縮小余地が相対的に大きいとみられる(図19・20にフランス金利見通し)。フランスは2017年
春の大統領・議会選挙に向けた政局・政策動向がリスク要因となるが、現在のように(イタリアと
- 53 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
共に)着実に改革が進行していくならば、適度に欧州景気の足を引っ張って長期金利の低位
安定を支えると共に、対独スプレッドの漸進的縮小をも促すものとなりそう。本邦投資家にとっ
てフランス国債は今後も、欧州債投資の重要な核の一つであり続けよう。
図20:フランスの各年限の国債利回り:対独スプレッド
見通し(期末値)
図19:フランスの各年限の国債利回り
見通し(期末値)
4.0
1.4
(%ポイント)
(%)
見通し
3.5
1.2
見通し
3.0
1.0
2.5
0.8
2.0
10年
1.5
7年
0.6
1.0
5年
0.4
7年
0.5
2年
2年
-0.5
10
11
12
13
14
15
16
17
10年
5年
0.2
0.0
0.0
10
(年)
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
11
12
13
14
15
16
17
(年)
出所:ブルームバーグから三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)
表4:EMU各国の各年限の国債利回り(予想:期末値)
予想
2014年
7-9
10-12
30年
10年
7年
5年
2年
10年
7年
5年
2年
10年
7年
5年
2年
10年
7年
5年
2年
10年
7年
5年
2年
10年
1.87
0.95
0.42
0.15
-0.08
1.29
0.68
0.33
-0.01
2.33
1.56
1.02
0.36
2.14
1.25
0.90
0.33
1.09
0.57
0.31
-0.03
1.22
(対独スプレッド)
フランス
10年
7年
5年
2年
イタリア
10年
7年
5年
2年
スペイン 10年
7年
5年
2年
オランダ 10年
7年
5年
2年
ベルギー 10年
0.34
0.26
0.18
0.07
1.39
1.15
0.88
0.44
1.19
0.84
0.75
0.41
0.14
0.16
0.16
0.05
0.27
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
オランダ
ベルギー
[単位:%]
予想
1-3
2015年
4-6
7-9
1-3
2016年
4-6
7-9
10-12
10-12
1.39
0.54
0.15
0.02
-0.10
0.83
0.38
0.18
-0.03
1.74
1.43
0.95
0.53
1.50
1.14
0.88
0.40
0.62
0.34
0.09
-0.05
0.77
0.61
0.18
-0.03
-0.10
-0.25
0.48
0.18
0.05
-0.17
1.24
0.93
0.55
0.20
1.21
0.85
0.54
0.50
0.34
0.09
-0.04
-0.20
0.45
1.57
0.76
0.31
0.08
-0.23
1.20
0.63
0.33
-0.16
2.33
1.72
1.25
0.44
2.33
1.72
1.12
0.44
1.10
0.56
0.21
-0.18
1.22
1.25
0.70
0.25
0.05
-0.22
1.00
0.45
0.18
-0.14
1.95
1.30
0.75
0.10
2.00
1.32
0.80
0.10
0.90
0.40
0.09
-0.19
1.00
1.20
0.65
0.20
0.00
-0.24
0.90
0.34
0.10
-0.18
1.85
1.10
0.60
0.03
1.90
0.95
0.52
0.01
0.80
0.26
0.02
-0.22
0.85
1.25
0.70
0.25
0.02
-0.23
0.90
0.35
0.10
-0.18
1.75
1.05
0.57
0.02
1.70
0.90
0.49
-0.03
0.80
0.26
0.03
-0.22
0.85
1.30
0.75
0.30
0.05
-0.22
0.92
0.39
0.12
-0.18
1.70
1.05
0.55
0.01
1.60
0.90
0.42
-0.05
0.80
0.30
0.05
-0.22
0.85
1.35
0.75
0.30
0.07
-0.20
0.88
0.38
0.13
-0.16
1.62
0.95
0.47
0.00
1.45
0.83
0.37
-0.07
0.77
0.30
0.07
-0.20
0.83
0.29
0.23
0.16
0.07
1.20
1.28
0.94
0.63
0.96
0.99
0.86
0.50
0.08
0.19
0.07
0.05
0.23
0.30
0.21
0.15
0.08
1.06
0.96
0.65
0.45
1.03
0.88
0.64
0.75
0.16
0.12
0.06
0.05
0.27
0.43
0.32
0.25
0.06
1.57
1.42
1.17
0.67
1.57
1.42
1.05
0.67
0.34
0.25
0.14
0.05
0.45
0.30
0.20
0.13
0.08
1.25
1.05
0.70
0.32
1.30
1.07
0.75
0.32
0.20
0.15
0.04
0.03
0.30
0.25
0.14
0.10
0.06
1.20
0.90
0.60
0.27
1.25
0.75
0.52
0.25
0.15
0.06
0.02
0.02
0.20
0.20
0.10
0.08
0.05
1.05
0.80
0.55
0.25
1.00
0.65
0.47
0.20
0.10
0.01
0.01
0.01
0.15
0.17
0.09
0.07
0.04
0.95
0.75
0.50
0.23
0.85
0.60
0.37
0.17
0.05
0.00
0.00
0.00
0.10
0.13
0.08
0.06
0.04
0.87
0.65
0.40
0.20
0.70
0.53
0.30
0.13
0.02
0.00
0.00
0.00
0.08
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
1.35
0.75
0.30
0.10
-0.17
0.85
0.37
0.16
-0.13
1.58
0.85
0.43
0.00
1.40
0.75
0.32
-0.07
0.75
0.30
0.10
-0.17
0.83
2.18
1.32
0.76
0.30
-0.02
2.00
1.24
0.63
0.07
4.50
3.78
3.31
1.99
5.27
4.70
4.80
2.99
1.50
0.91
0.43
0.05
2.06
2.76
1.93
1.39
0.92
0.21
2.56
1.83
1.22
0.29
4.13
3.20
2.73
1.26
4.15
3.32
2.73
1.50
2.23
1.34
1.20
0.21
2.56
1.39
0.54
0.15
0.02
-0.10
0.83
0.38
0.18
-0.03
1.74
1.43
0.95
0.53
1.50
1.14
0.88
0.40
0.62
0.34
0.09
-0.05
0.77
1.20
0.65
0.20
0.00
-0.24
0.90
0.34
0.10
-0.18
1.85
1.10
0.60
0.03
1.90
0.95
0.52
0.01
0.80
0.26
0.02
-0.22
0.85
1.35
0.75
0.30
0.10
-0.17
0.85
0.37
0.16
-0.13
1.58
0.85
0.43
0.00
1.40
0.75
0.32
-0.07
0.75
0.30
0.10
-0.17
0.83
1.40
0.90
0.50
0.30
0.00
0.98
0.55
0.34
0.03
1.62
0.98
0.58
0.14
1.45
0.84
0.48
0.07
0.90
0.50
0.30
0.00
0.96
0.10
0.07
0.06
0.04
0.83
0.55
0.33
0.17
0.65
0.45
0.22
0.10
0.00
0.00
0.00
0.00
0.08
0.68
0.48
0.34
0.08
3.18
3.02
3.01
2.00
3.95
3.94
4.51
3.00
0.18
0.15
0.13
0.06
0.74
0.63
0.44
0.30
0.08
2.20
1.80
1.81
1.04
2.22
1.93
1.81
1.29
0.30
-0.05
0.27
0.00
0.63
0.29
0.23
0.16
0.07
1.20
1.28
0.94
0.63
0.96
0.99
0.86
0.50
0.08
0.19
0.07
0.05
0.23
0.25
0.14
0.10
0.06
1.20
0.90
0.60
0.27
1.25
0.75
0.52
0.25
0.15
0.06
0.02
0.02
0.20
0.10
0.07
0.06
0.04
0.83
0.55
0.33
0.17
0.65
0.45
0.22
0.10
0.00
0.00
0.00
0.00
0.08
0.08
0.05
0.04
0.03
0.72
0.48
0.28
0.14
0.55
0.34
0.18
0.07
0.00
0.00
0.00
0.00
0.06
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(予想は弊社:最終変更日7月30日)
(7月31日 14:00)
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 54 -
外為ウォッチ
緩やかなドル高・円安基調復活、いずれ 125 円超の空中戦へ
チーフ為替ストラテジスト 植野 大作
ポイント




7月のドル円相場は120円台では底堅かったが、124円台では伸び悩み、ドル高最長記録の更新は小休止
ギリシャとチャイナの問題が収束、今後は日米金融政策格差を睨んで緩やかなドル高・円安基調が復活
経常収支を重視する円高派と資本収支を重視する円安派の神学論争は、現実の相場展開により決着へ
120円割れが定着しなければ、52週線は右肩上がりの形状をキープ、いずれ1ドル=125円超の空中戦へ
7 月のドル円相場~上旬
は、良好な米経済指標で
上向きスタートの後、ギリ
シャ債務協議の迷走と中
国株の乱高下に巻き込ま
れて荒い値動き
7月のドル円相場は、1ドル=120円台では底堅く反発したものの、124円台では伸び悩む展
開となっている。月初来の動きを振り返ると、上旬は下落後に反発。1日のオセアニア市場で
始値122円50銭を刻んだ後、米6月ADP全米雇用報告が良好な結果を示すと翌2日に公表さ
れる米6月雇用統計への期待が強まり、一時123円73銭まで上昇した。ただ、実際に発表され
た雇用者数の伸びが市場予想を下回ると123円00銭前後へ反落、翌3日は米独立記念日で
薄商いの中、ギリシャ債務協議への不透明感から122円60銭台まで続落した。週末5日のギリ
シャ国民投票で緊縮反対の民意が示されると週明け6日は窓開けオープン、未明に一時121
円70銭界隈まで急落した。その後、ギリシャ協議の決裂が回避されると反発する場面もあった
が123円台の手前が重く、7日にかけては122円台で一進一退。8日のアジア市場で中国株が
暴落すると株安連鎖が日米にも伝染して「リスクオフの円高」が進み、この日公表された米連
邦公開市場委員会(FOMC)議事録が「タカ派的な内容ではではない」との市場解釈も重なっ
て、一時120円41銭と5月19日以来の水準まで下落した。ただ、9日の東京市場では7週間ぶり
に120円台をみた値頃感から国内輸入企業の買いが散見されたほか、中国当局の株価対策
を好感して上海株が反発すると過度のリスク回避懸念が緩和、121円台に持ち直した。続く10
日も本邦実需筋のドル買いが観測されたほか、上海株の連日高やギリシャ政府によるEUへの
緊縮策提出などが好感されると122円台に続伸、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長
が「年内の利上げ開始が適切」との見解を示したことも材料視され、一時122円88銭まで買い
進まれた。122円78銭で週末取引を終了。
7 月のドル円相場~中旬
は、 ギリ シ ャ 債務 協議 の
決裂回避を好感、米国で
強まる年内利上げ期待も
追い風に堅調推移
中旬のドル円相場は堅調。週末12日(日)に開催された欧州連合(EU)首脳会談でギリシャ
債務協議の難航が伝えられると週明け13日は窓開けオープン、未明に一時121円93銭まで差
し込む場面もあったが、122円00銭を割り込むと下値が堅い。その後、ギリシャ政府・議会によ
る緊縮財政の法制化を条件に協議が継続されることが判明すると急騰、翌14日の仲値公示に
向けた国内輸入企業のドル買いなども意識されると一時123円73銭まで値を上げた。同日夜
に発表された米6月小売売上が冴えない結果になると一時122円90銭台に反落する場面もあ
ったが、123円00を割り込むと押し目買いも入って底堅く、15日に公開された米下院での議会
証言テキストでイエレン米FRB議長が「年内の利上げ開始が適切」との見解を示していたこと
が判明すると123円97銭付近まで上昇した。16日に欧米金融政策格差を意識したユーロ売り・
ドル買い圧力が強まると対円でもドルが買い進まれて124円00銭台を回復、同日夜の米失業
保険新規申請者数が強い結果になると124円18銭まで続伸した。その後もドルの上値を試す
動きが続き、17日の仲値公示に向けて本邦の3連休入りを控えた輸入のドル買いが意識され
ると124円23銭まで上昇、週明け20日は日本市場祝日で薄商いの中、ブラード米セントルイス
連銀総裁が「9月に利上げを開始する可能性は50%を上回る」などと発言したことが報じられる
と124円38銭まで続伸した。
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債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
7 月のドル円相場~下旬
は、米 FOMC 声明や 4-6
月 GDP の結果を受けて
続伸したが、「黒田シーリ
ング」の手前で伸び悩み
下旬のドル円相場は続伸後に伸び悩み。21日は本邦連休明けの仲値に向けたドル買いが
先行、海外勢による便乗買いの噂も意識され、一時124円48銭まで上昇した。ただ、6月10日
の日銀総裁発言で急落する直前の高値124円62銭が意識されると上値が重く、翌22日の東
京市場で日本株が軟化すると123円台半ばに押し戻された。もっとも、124円台を割り込むと下
値が堅く、その後は強弱入り混じる米国の経済指標を眺めて明確な方向感を見いだせず、23
日から24日にかけては123円60銭台から124円10銭台までの狭いレンジで推移した。週明け
27日に上海株が急落すると主要国で株価が軒並み軟化、他通貨市場も巻き込んだ円の全面
高が進んで一時123円01銭付近へ差し込む場面もあったが、28日に上海株が下げ止まると
123円台後半に買い戻された。29日にスポ末の実需がドル売り優勢になると123円30銭台に小
緩んだが、上海株が続伸して市場のリスク許容度が緩和すると123円台後半に復帰、同日夜
の米FOMC声明で雇用判断の前進が確認されると米連邦準備制度(FED)による年内の利上
げ観測が強まり、124円00銭台まで上昇した。30日に発表された米4-6月期国内総生産
(GDP)がまずまずの結果になって年内利上げ観測が強まるとドル買いが加速、一時124円58
銭まで吹き上がって月初来高値を更新したが、6月10日の高値が意識されると伸び悩み、月
末の手仕舞い売りも重石となって124円10銭前後に押し戻された。
7 月のドル円相場~ギリシ
ャとチャイナのダブル・パ
ンチで撃墜されても 120
円台で踏み堪え、今後は
日米金融政策格差を睨ん
だファンダメ回帰へ
本稿を執筆している31日(金)の12:20現在、ドル円相場は124円00銭前後で取引されてい
る。初日の始値122円50銭と比較すると、1円以上もドル高・円安の水準にあるため、今晩の
NY市場で月末引けを迎えるまでの約半日で余程の円高ショックに見舞われない限り、月足は
2ヶ月ぶりの陽線になりそうだ。今月のドル円相場は、上旬に強まったギリシャ債務協議の決裂
懸念と上海株暴落騒動の巻き添えを食って一時120円40銭台まで差し込む場面もあったが、
中国政府の株価対策で上海株が下げ止まると反発、中旬まで続いた欧州連合(EU)首脳会
談でギリシャ向け金融支援の継続が決まると再浮上して断続的に124円台を試す展開になっ
ている。国内外の市場関係者を疲弊の極みに追い込んだ「ギリシャ」と「チャイナ」の2大問題
がひとまず収束したとの安堵感が漂う中、この先のドル円相場は日米両国の金融政策を睨ん
だファンダメンタルズ回帰の色彩を強めつつ、日々の市場を行き交う「為替需給トーク」も消化
しながら次の方向感を模索する展開になりそうだ。以下、本稿では今後のドル円相場を展望
する際の着眼点を整理、毎月実施している中長期予測の定期点検の結果を提示したい。
8 月以降のドル円相場~
遅かれ早かれ 125 円超の
空中戦再開へ
2015年8月以降のドル円相場は、日米の金融政策格差が鮮明になるのを確認しつつ、遅か
れ早かれ「1ドル=125円超の空中戦」を再開することになりそうだ。来週から開幕する8月の葉
月相場に関しては、多くの市場関係者が夏休み入りすることが見込まれるほか、米国では年
に4度しかない「FOMC声明の発表が無い月」となる。日本の金融政策も当面は現状維持の可
能性が高いため、目先一気の吹き上がりは期待し難いが、依然として強い勢力を維持してい
る本邦の実需筋やリアル・マネー筋による外貨買い・円売り圧力がドル円相場の下値をサポ
ート、所得収支の黒字拡大による円高圧力を相殺する状況が続くだろう。その後、年内どこか
の時点で「米利上げ開始時期の接近」が間近に意識され始めれば、ドル円相場は目先の上
値抵抗帯となっている124円半ばの「黒田シーリング」を突破、6月5日に記録した約13年ぶり
高値の125円86銭も上抜けする局面を迎えるだろう。変動相場制史上最長となる44ヶ月目に
突入したのち足踏みしているドル高・円安局面の寿命は一段と延びていく可能性が高い。こ
れまで述べてきたことの再確認になるが、以下3つの着眼点を指摘しておきたい。
規格外の量的金融緩和を
オープン・エンドで継続す
る日本銀行
第一に、日銀が現在の枠組みで物価目標2%の安定確保を目指す金融政策運営を堅持し
ている限り、容易なことでは日本円の先安観が解(ほぐ)れない状況が続くだろう。現行の異次
元緩和を開始した後、日銀はホーム・ページの右下隅にマネタリーベースの残高を毎日公表
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 56 -
する欄を設けるようになったが、直近7月30日(木)時点の数値を確認すると、日本のマネタリ
ーベースは既に約322.6兆円と、名目国内総生産(GDP)比で6割超の水準まで膨張している。
古い統計年鑑を用いて太平洋戦争直後の頃まで遡ってみても、日銀券及び銀行預金の合計
で代用されるマネタリーベース(もどき)は、名目国民総支出(GNP)比で推定3割を超えたこと
はなかった(図1)。現時点において、日銀は既に戦後前例の無い強力な量的緩和を実施して
おり、今後も物価目標の達成までは出口戦略について語ることを封印した状態でベースマネ
ーの供給を増やし続けると宣言している。常識的に考えて、これほど強力な金融緩和を実施
している国の通貨が、既に量的緩和を停止している米国の通貨を相手に趨勢的な増価(=円
高)局面に転じる可能性は極めて低い。今後もこの政策を続ける限りにおいて、折に触れて断
続的な円安圧力に晒されやすいとみておくのが妥当だろう。
図1:日本のマネタリーベースと名目国内総生産の推移
120%
600兆円
(予想)
500兆円
100%
名目国内総生産
(GDP、左軸)
80%
400兆円
300兆円
マネタリーベース
(名目GDP比、右軸)
マネタリーベース
(左軸)
60%
200兆円
40%
100兆円
20%
0%
0兆円
1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015
注:1969年までのマネタリーベースは日銀券+銀行預金で代用。1954年まではGDP比ではなくGNP比
出所:日本銀行、ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
現実のプライス・アクション
は、「日銀による量的緩和
の拡充=通貨価値の減価
要因」との連想が平均的
な市場参加者の間で共有
されていることを示唆
「日銀がいくらマネタリーベースを増やしても、その大部分は銀行の準備預金に積み上がっ
ているだけであり、直接市中に出回るマネーの総額が増えるという保証はないので、思惑先行
の株高・円安期待は刺激しても、実体を伴った株高・円安圧力を発生させるとの保証はない」
との意見もあるが、その一方で「日銀は量的緩和で株価指数連動型の上場投資信託(ETF)
や不動産投資信託(REIT)を直接購入しているほか、日本国債の強烈な買占めによって金利
が低下してポートフォリオにロークーポン債を入れるのが忍びなくなった民間等の金融機関が
国内外の株式や外債などのリスク資産を購入せざる得ない状況に追い込まれているので、相
応の株高・円安圧力を発生させている」との意見もある。学術的な観点に立脚した神学論争の
帰趨については、後の経済史家による検証に委ねるしかないが、現実に観察されたプライス・
アクションをみると、日銀が現行の異次元緩和を導入した2013年4月4日には、明らかにそれを
契機に強烈な円安動意が刺激された。2014年10月31日に異次元緩和の拡充措置をアナウン
スした直後にもドル円相場は一気に吹き上がっており、日銀による「量的・質的金融緩和」の
導入と拡充がなかったら、近年の外国為替市場であれだけ大規模な円安動意は促されなか
ったはずだ。為替予測の実務的観点から言えば、実際の市場でこれ程まで明確なマーケット・
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債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
プライスの変動を引き起こした政策を素直に評価しない訳にはいかない。平均的かつ大多数
の市場関係者の間で「日銀による量的緩和の拡充=通貨価値の減価要因」との連想方程式
が共有されている現実は重視するべきだろう。
日銀が現在進めている異
次元緩和は、全ての市場
関係者にとって未体験の
政策であり、長期にわたっ
て続けた場合のインパクト
が完全に織り込まれてい
るとは思い難い
もちろん、為替市場は先読み好きの集まりなので、日銀による量的緩和は現在実施中の
「年率80兆円ペース」なら既に織り込まれている、との考え方は十分に可能だ。この先、日銀
が何らかの追加緩和をアナウンスしない限り、「現状の政策を維持しているだけでは一段の円
安動意は喚起されない」との指摘には傾聴すべき面もある。だが、本当にそうだろうか。昨年
10月31日に異次元緩和の拡充が発表された後、日銀金融政策決定会合の度に「現状維持」
の結果が提示されるのを毎回目撃し続けていると、どうしても感覚的な「慣れ」や「麻痺」が生じ
るのは止むを得ない面もあるが、冷静になって前掲の図1を見直してみると、日銀が現在「オ
ープン・エンド」で行っている量的緩和は、客観的に見て相当無茶な勢いで進んでいる。我々
の円債市場分析チームの見通しによれば、日銀が今の政策を「現状維持」で続けた場合、追
加の施策が一切なくても、黒田日銀総裁の任期満了8日前となる2018年3月31日時点では日
本のベースマネーは535兆円界隈まで増加、当該時点での名目GDP比で100%を超えること
になる。日銀が出口戦略を封印して進めている現在の金融資産爆買い政策は、将に「異次
元」という形容に相応しく、既に他界された我々の大先輩も含めた全ての市場関係者にとって
全く未体験の政策だ。それによってもたらされるマーケット・インパクトについても未知数だと言
わざるを得ず、市場がこれを織り込むのは至難の業だろう。
「日本版のテーパリング・
ストーリー」を日銀が語り
始めるまで趨勢的な円高
トレンドへの転換は起こり
そうにない
あくまで私見だが、傍目にみてやや無理筋ではないかと批評されている「物価目標2%の早
期安定確保」というスローガンを現在の日銀執行部が断じて下ろさず、規格外の勢いでエンド
の見えない量的緩和を続けている限り、一時的な円高ショックが引き起こされても長続きはせ
ず、趨勢的な円高トレンドへの転換は恐らくあり得ないと考えている。仮に何らかの理由で大
規模な円高ショックが生じた場合、物価目標2%の安定確保は一段と難しくなってしまうので、
日銀が現在実施している各種金融資産の爆買い政策は、益々出口が見えない状態に引き摺
り込まれていくからだ。その場合、国内外の市場関係者は「オープン・エンド」の形式で実施さ
れている量的緩和策の行く末とその効果について、一抹の恐怖感を覚えつつ、改めて議論せ
ざるを得なくなる。先述の試算に示されるように、永遠に続けられる政策でないことは自明の理
なので、将来どこかで「日本版テーパリング・ストーリー」が語られる時期は絶対に来るはずだ
が、今のところ黒田日銀総裁の記者会見においてそのような気配は全く漂ってこない。日銀執
行部が物価目標2%の「達成」か「修正」か「撤回」のいずれかを宣言して現行政策の段階的
縮小計画を提示してくるまでは、日本の金融政策の変更が契機になってドル円相場の趨勢が
円高に転舵する可能性は非常に低いだろう。
米国の利上げが、年内ど
こかで遂に始まりそうな気
配が一段と濃厚に
第二に、米国の利上げ開始「Xデー」が、いよいよ指呼の間に接近しつつある。29日(水)に
発表された米FOMC声明文では、具体的な利上げ開始時期に対する示唆はなかったものの、
市場が注目していた雇用情勢に関する判断が前進したことから、「早ければ次回9月、晩くとも
年末12月のFOMCまでの間にはゼロ金利政策が解除される」との見方が一段と強まっている。
今回のFOMC終了後にはイエレン議長の記者会見は行われず、政策金利見通しの更新もな
かったが、前回の6月会合時点で提示された政策金利の予想分布図(通称:ドット・チャート)
では、17名中2名を除く15名が「年内に最低でも1回以上の利上げ」を予想していたことは確認
済みだ(図2)。今月中旬に開催された上下両院での議会証言でも、同議長は「年内の利上げ
開始が適切になる」との見解を維持していた上、今回のFOMC声明文でも雇用情勢に関する
判断が前進していたことを考慮すると、「9月なのか12月なのかは兎も角、今年中の利上げ開
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 58 -
始は多分確実」との見方が市場コンセンサスとして一層固まったと言えるだろう。今年3月の
FOMC声明文から利上げの開始を「忍耐強く待つこと出来る(can be patient)」と表現していた
時間軸文言が削除されて以来、ずっと生煮え状態で市場を徘徊し続けてきた米国の「早晩利
上げ期待」は、ここにきてより具体色の強い「年内利上げ期待」へ煮詰まってきた。
図2:米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の政策金利見通し
4.50
4.50
3.750
【2015年3月18日時点】
4.25
●
4.00
3.75
●
●
●●
●●
●
3.50
●●
●●
4.00
●●●●●●
3.75
●●●●●●●
3.50
●
●●●●
3.00
●●
4.00
●●●●●●
3.75
●●●●●
3.50
●●●
3.25
3.25
3.125
●
●
●
3.00
3.00
2.75
●●●
2.50
●●
●
●
●●●
●
●
●
●●●
2.875
2.50
2.25
●
●
2.00
●●●
●
●
2.00
1.875
1.75
2.25
●
●
2.00
●
●●●●●●
1.75
1.625
●●●
1.50
1.50
1.50
●●
●●●●
1.25
1.25
●
1.25
●
●
1.00
1.00
●●●
0.75
●●●●●●●
1.00
●●●●●
●
●●●●●
0.625
●●●●●
●
0.75
0.625
0.50
0.75
0.50
●
●
0.25
0.50
0.25
●●
2015
2.75
2.50
2.25
1.75
4.50
4.25
●
●●
0.00
●●
●●
●●
●
●
3.25
2.75
3.750
【2015年6月17日時点】
4.25
0.00
2016
2017
長期
0.25
●●
2015
0.00
2016
2017
長期
注:赤いフォントで示した値が、中央値予想(予想提供者17人の場合は9人目の値)
出所:FRB資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
図3:日米中央銀行のマネタリーベース指数とドル円相場
(2008年9月=100)
500
450
↑米国の資金供給膨張↑
↑ドル安・円高↑
(円)
FEDは14年10月
で量的緩和終了、直
近残高を機械的に
延長した未来予想図
60
475
70
(円)
150
450
↑日銀の資金供給量膨張↑
↑円安・ドル高↑
日銀が量的・質的
金融緩和を1 6年末
まで継続する場合
の未来予想図
425
400
400
80
90
ドル円相場
(右軸、逆目盛)
325
300
100
ドル円相場
(右軸、順目盛)
120
110
275
250
250
110
225
100
200
200
175
120
150
100
140
130
375
350
350
300
(2008年9月=100)
500
米連邦準備制度(FED)
マネタリーベース指数
(左軸)
50
90
150
125
130
100
75
140
50
80
日本銀行
マネタリーベース指数(左軸)
70
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
注:左図の網掛け部分は米国の量的緩和第一弾、第二弾の実施時期。右図の網掛け部分は、日本の量的緩和実施時期及び資産買入れ等基金創設以降
出所:ブルームバーグ、セントルイス連銀より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
- 59 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
9 月末のドル円相場の値
は、米利上げ開始の具体
的時期に左右されるが、
利上げ開始後の米国景気
が回復基調を維持する限
り、趨勢的なドル高・円安
トレンドは変わらない
この先、具体的な利上開始の時期については、米国の経済指標を眺めてイエレン議長以
下のFOMCメンバーが最終判断を下すことになるが、景気が突然腰折れでもしない限り、近い
将来における利上げの可能性がほぼ皆無である日本と比べた場合の金融政策の印象格差
は変わらない。衆目に明らかな日米のマネタリーベース格差の拡大に加え、政策金利のベク
トルの違いまでもがこの先一段と鮮明になると見込まれる中、教科書通りに考えれば一段のド
ル高・円安圧力が発生するとみるのが妥当だろう(図3)。「9月末時点」でのドル円相場のピン
ポイント予想値については、米国連邦準備制度(FED)による利上げ開始が9月なのか12月な
のかによって相当変わる可能性があるので非常に悩ましいが、その後来年にかけてのドル円
相場の趨勢を考える上では、米利上げ開始時期の特定作業はあまり重要ではない。今年後
半から来年にかけての米国経済が、緩やかな利上げの継続を正当化できる程度の景気回復
力をキープしている限り、趨勢としてのドル高・円安基調が瓦解することはないだろう。
図4:米国の実質政策金利と経済成長率
11%
10%
9%
8%
7%
6%
5%
4%
3%
2%
1%
0%
1985
8%
米フェデラルファンドレート(A)
(誘導目標水準)
1990
1995
2000
米消費者物価上昇率(B)
(除く食品・エネルギー)
2005
2010
2015
米実質GDP成長率
(4区移動平均近似線)
6%
4%
2%
0%
-2%
米国の実質政策金利
(A-B)
-4%
-6%
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
注:月次データ。米国の政策金利は月末値。網掛けは景気後退期
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
これから米国で始まる利
上げは、「金融政策の正
常 化」 が 目的 で 、 景気 回
復力の保全が大前提
「米国で利上げが始まると、経済は失速する」との懸念も一部に根強いが、これまで何度も
述べてきたように、これからFEDが始めようとしている利上げは、景気の過熱防止を狙って実
施される「金融引き締め」ではない。金利がゼロ%界隈に貼り付いた状態だと上げ下げして行
う通常の金融市場調節ができない異常事態が続くので、将来必要になった時に上下どちらに
も動かせる「のりしろ」を作りに行くための利上げであり、金融政策の「正常化」が目的だ。過熱
気味の景気を減速させることを狙って実施された過去の金融引き締めと、景気回復力の保全
を確認しながら進められる金融政策の「正常化」では目的自体が全く違う。イエレンFRB議長
がこの先の利上げ速度について「経済指標次第(Data-dependent)」だと言っているのは、景気
回復の持続が最優先であり「無条件かつ機械的な利上げ一直線の政策は行わない」と宣言し
ているのとほぼ同義だ。そのような利上げは非常に緩やかに進むので、地味なドル高圧力し
か生まないだろうが、景気を壊す心配が少ない分、逆に安定的なドルの先高観を生むと思わ
れる。名目政策金利がインフレ率以下で推移している「実質水没状態」から1年以上の歳月を
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 60 -
かけて水面上に浮上してくる程度の利上げによって、米国景気が腰折れしたり、米国株式市
場のメンタルヘルスが著しく蝕まれたりする可能性は非常に低いのではなかろうか(図4)。
為替需給の基礎的環境
は、向こう 1 年程度はまだ
円売り優位の状態か
第三に、国際資本移動絡みのデータなど、諸々の状況証拠から類推する限り、円を取り巻
く基礎的な為替環境は依然として円売り・外貨買い優勢の状態が続いており、少なくとも大同
小異の需給環境が向こう1年程度は維持されそうだ。現在、筆者が所属している為替アナリス
ト・ストラテジスト業界では、日本の経常収支黒字の拡大を重視する「円高派」と、資本収支に
よる海外への資金流出圧力の強さを重視する「円安派」が真っ二つに分かれて激しい論争が
展開されているが、今のところ我々は「円安派」の陣営に所属しておくのが無難だと考えてい
る。為替需給の正確な全貌を把握するのは不可能なことを承知の上で、現時点における我々
の推論を述べておきたい。
日本の経常収支は、今の
ところ、第一次所得収支だ
けが黒字の状態で、他は
全て赤字
まず最近目立っている日本の経常収支黒字の増加については、その内訳をみると、現時
点では貿易・サービス収支も第二次所得収支(移転収支)も小幅ながら赤字の状態が続いて
おり、第一次所得収支だけが大幅な黒字拡大を続ける、というかなり偏った構造になっている
(図5)。周知のように、第一次所得収支で黒字として計上されている金額の中には実際には
円転されていない民間の対外証券投資や海外直接投資が生み出した利子・配当収入の現地
滞留・再投資分などが含まれているため、足下で観測されている「年率20兆円」という所得収
支黒字の数字が、そのまま円高圧力に繋がっている訳ではない。全体から何割かは割り引い
てみる必要があるとみられるほか、残りの円転される部分についても、一部はクロス円絡みの
フローだったりするため、全てがドル円直撃系のフローだとは言い切れないだろう。
図5:日本の経常収支の推移
(年率兆円)
30
(年率兆円)
30
経常収支(A+B+C+D)
25
25
第一次所得収支(C)
20
20
15
15
10
10
5
5
0
0
-5
-5
-10
-10
第二次
所得収支(D)
-15
サービス収支(B)
-15
貿易収支(A)
-20
-20
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
注:季節調整済み3ヶ月移動平均
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
貿易収支が黒字化すれば
需給トークの雰囲気も変
わるが、当面は期待薄
職業柄、毎朝出勤すると前日分の海外市場も含めたドル円相場の日記をつけてから仕事
を始める習慣が身についているが、これだけ所得収支の黒字が増えている状況でも日々のマ
ーケットを飛び交っている需給トークの現場において、対外証券投資の利子収入の円転と思
しきフローが存在感のある噂として流布するのは、米財務省証券の四半期入札前後の時期ぐ
- 61 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
らいであり、海外直接投の利益還流に至っては半期末や年度末のリパトリ・シーズンぐらいし
か耳にする機会になかなか遭遇しない。実需絡みのフローとしては、輸出入絡みの貿易決済
の方がイントラ・デーの需給トークの現場に登場する頻度が高いのが実情だが、今のところ、
「ドル円」絡みの部分については決済通貨別の貿易収支から類推される通り(図6)、本邦輸入
企業によるドル買い超過が目立っている印象が強い。あくまで私的な印象論だが、第一次所
得収支が中心の経常黒字の拡大が続いている間は、日々の需給トークの現場で存在感のあ
る「まとまった規模」でのドル売り・円買い注文の姿が見えにくいこともあり、そこから発生する円
高インパクトは数字的にも心理的にも見かけほど大きなプライス・アクションには結びつきにく
いのではなかろうか。今後、日本からの輸出が既往の円安効果でしっかり伸び始めた上、原
油価格の下落と原子力発電所の稼働率上昇の相乗効果で本邦の貿易収支が相応の規模の
黒字状態に戻る場合は、現在とは違うイメージの需給トークが飛び交う姿を思い描く必要に迫
られそうだが、我々の円債市場分析チームでは、少なくとも向こう1年程度は日本の貿易収支
が黒字に転換して定着するとはみていない。
図6:本邦の決済通貨別貿易収支(詳細版)
(年率兆円、3か月移動平均)
(年率兆円、3か月移動平均)
20
20
ユーロ決済
日本円決済
15
15
10
10
5
5
0
0
-5
-5
-10
-10
その他通貨決済
-15
-15
貿易収支
( 季節調整済)
-20
-20
-25
-25
米ドル決済
-30
-30
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
2015
注:通貨別貿易収支は通関輸出入額に貿易取引通貨別比率を乗じて算出。
出所:財務省統計より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
「所得収支黒字の拡大」と
「海外投機筋の円買い戻
し」のダブル・パンチを受
けても底堅いドル円相場
実際、昨年後半から今年にかけてこれだけハッキリと経常収支の黒字が増えてきたにもか
かわらず、実際のドル円相場は円高局面では底堅く、円安局面では値動きが良くなる状況が
続いている。例えばシカゴ通貨先物市場で観測されるドル円のポジション動向をみると、2014
年前半と2015年前半に海外投機筋の円売り持ち高が急速に整理される局面が2回ほど観察
されたが、何故か2度とも大規模な円高にはならずに、ドル円相場は膠着するだけに留まって
いる(図7)。足下では6月9日(火)の▲17.4万枚をピークに円売りポジションの整理が再び始ま
り、7月14日(火)までの5週間で▲8.3万枚へと約9万枚の円の買い戻しが生じているが、ドル
円相場はザラ場の最大高低差でも125円86銭から120円41銭までの下落で踏みとどまり、その
後幾許もなく123円超の水準に復帰している。この間、「所得収支黒字の大幅拡大」と「海外投
機筋の大規模な円の買戻し」という円高需給のダブル・パンチを受けていたにも関わらず、1ド
ル=120円台での滞在時間は約14時間と短命だった。誰かがシッカリとした円売り・外貨買い
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 62 -
のカウンター・パンチを当て続けていないと、こんなプライス・アクションには絶対ならない。一
体誰がその犯人だったのだろうか。
図7:シカゴ通貨先物市場ドル円持ち高とドル円相場(2012年以降)
(万枚)
8
(円)
75
↑円買い持ち超過↑
6
80
ドル円ポジション
(左軸)
4
ドル円レート
(右軸、逆目盛)
2
85
90
0
▲3.3万枚
▲6.8万枚
-2
95
2014/10/31
追加緩和
-4
-6
100
13/4/4
異次元緩和
-8
105
-10
110
-12
115
-14
120
12/12/26
安倍内閣発足
↓円売り持ち超過↓
-16
-18
-20
2012/07
2013/01
2013/07
125
▲15.7万枚
▲18.5万枚
▲17.4万枚
2014/01
2014/07
130
2015/07
2015/01
注:為替持ち高は前週火曜時点での非商業筋と非報告筋の合計。為替相場は週平均値
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
表1:日本からの主体別対外証券投資動向(国際収支ベース)
(億円)
対外証券投資(合計)
一般政府
預金取扱
機関
その他部門
銀行等及び
金融商品取
生命保険
信託銀行
引業者
(信託勘定)
損害保険
投資信託委
託会社等
その他
(暦年)
2010
258,341
124
106,198
152,019
32,425
61,994
39,659
-4,430
49,466
-27,096
2011
61,228
-672
9,048
52,853
15,931
65,302
-1,630
-4,375
5,644
-28,020
2012
146,968
227
88,414
58,327
6,809
64,335
40,818
-1,707
-17,034
-34,894
2013
-60,687
-872
-29,743
-30,071
-33,409
75,569
6,944
1,351
17,820
-98,346
2014
121,218
-727
-31,631
153,575
36,679
103,107
41,244
-130
47,896
-75,220
2014/1
-26,063
7
-28,420
2,350
-2,583
10,325
-2,736
133
4,194
-6,984
2
-5,046
-234
-8,939
4,126
-1,539
7,794
733
329
2,353
-5,543
3
-18,065
-318
-15,231
-2,516
-3,988
6,626
2,169
373
-80
-7,616
4
9,421
-34
-19,583
29,039
4,670
12,334
10,367
-621
6,002
-3,712
5
29,755
14
10,320
19,421
2,660
10,424
3,131
-132
5,856
-2,517
6
31,621
-37
16,461
15,197
2,145
3,073
7,083
58
6,977
-4,140
7
26,213
1
-4,888
31,101
901
13,009
14,565
96
8,065
-5,536
8
23,584
-105
3,671
20,017
10,668
7,502
3,580
153
3,668
-5,553
9
33,363
-110
7,886
25,587
9,296
10,901
8,092
-79
5,030
-7,655
10
12,171
-139
-7,439
19,749
8,212
6,803
1,670
-349
8,430
-5,017
11
19,783
311
21,444
-1,972
3,930
10,153
-630
-292
-6,479
-8,654
12
2015/1
2
3
4
5
-15,517
34,178
34,328
52,642
-1,755
44,692
-81
-62
-65
-290
4
-32
-6,912
8,749
9,375
27,070
-41,106
17,963
-8,524
25,491
25,019
25,863
39,347
26,761
2,306
10,612
10,912
12,283
9,510
2,337
4,162
7,953
7,914
13,589
9,861
10,560
-6,780
4,460
1,541
-3,079
13,887
13,963
200
645
276
656
448
-45
3,880
9,030
12,269
14,026
12,822
8,715
-12,293
-7,210
-7,894
-11,613
-7,181
-8,769
6
-30,768
-257
-32,717
2,205
1,040
5,740
549
-160
3,118
-8,082
注:直近月が斜字体となっている場合は、指定報告機関ベース。一般政府の指定報告機関ベースは公的部門の数字。
出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
- 63 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
金融系リアル・マネー筋の
「御三家」が、強力な円売
りのカウンター・パンチを
当てていた疑いが濃厚
本レポートで再三指摘してきたように、年金、生保、投信などといった金融系のリアル・マネ
ー筋による対外証券投資や少子高齢化に対応して活発化する日本企業の対外直接投資が
犯人だった疑いが濃厚だ。日本の資本収支に目を転じると、昨年1年間では信託勘定を通じ
た年金マネーの対外証券投資が約3.7兆円の流出超過になっていたほか、生命保険会社や
投資信託業界を通じた対外証券投資がそれぞれ4.1兆円、4.8兆円程度の外国有価証券の買
い越しになっており、金融系リアル・マネー筋の「御三家」だけでも、当該期間中の経常黒字を
凌駕できる資本流出の担い手になっていたことが分かる(表1)。今年に入り、年金マネーは1
月から4月までの僅か4ヶ月間で昨年1年間を上回る4兆円以上の対外証券投資の買い越しを
記録したあと、5月以降は急速に買いの勢いが衰えているが、ちょうどその直前の4月から5月
にかけては生命保険会社がたったの2ヶ月間で2.8兆円近い対外証券投資の担い手になって
いたほか、投資信託を通じた個人マネーの海外引っ越しも比較的安定的に続いている。今春
から初夏にかけて観察された急速な円安局面では、リアル・マネー業界における円売りの主
役が年金から生保や投信に交代しながらドル円相場の下値サポートに回る中、4月28日(火)
時点でアベノミクス開始後最低レベルにまで円売りポジションを整理していた海外仮需筋が円
売り投機を再開させると円安が加速、1ドル=125円台後半までの上昇が促されたようだ。
表2:2015年に発表された日本企業による主な海外への企業買収・事業出資案件など
発表日
案 件
金額
1月20日 伊藤忠商事による中国最大の国有複合企業・中国中信への出資
約6,000億円
2月10日 キヤノンによるスウェーデン系監視カメラ最大手アクシス・コミュニケーションズの買収
約3,300億円
2月17日 近鉄エクスプレスによるシンガポール系物流会社APLロジスティクスの買収
約1,400億円
2月18日 日本郵政グループによる豪州物流大手トール・ホールディングスの買収
約6,200億円
2月23日 旭化成による米系燃料電池絶縁材製造ポリポアの買収
約2,600億円
2月24日 日立製作所による伊大手防衛航空フィンメカニカの車両事業会社アンサルドブレダの買収
2月26日 みずほフィナンシャル・グループがRBSからの北米融資関連業務の買い取りを発表
3月6日
損保ジャパン日本興亜による再保険世界大手の仏スコールへの出資
3月19日 楽天が米電子図書館事業最大手オーバードライブを買収
4月3日
トヨタ自動車が中国の広東省、メキシコのグアナファト州に新工場を建設
4月22日 信越化学工業が米ルイジアナ州にエチレン生産工場を新設(傘下の米シンテックの自己資金)
6月4日
(交渉中)日本生命が豪ナショナル・オーストラリア・バンク傘下の保険事業買収交渉開始
約2,500億円超
3,500-4,000億円前後
約1,100億円
約500億円
約1500億円
約14億ドル(1700億円)
2000~3000億円
6月10日 東京海上ホールディングスによる米保険会社HCCインシュアランス・ホールディングスの買収
9400億円
7月24日 日本経済新聞社が英フィナンシャル・タイムズ・グループを全株取得で買収
1600億円
7月24日 明治安田生命が米中堅生保のスタンコープ・フィナンシャル・グループを全株取得で買収
6200億円
7月27日 三菱UFJフィナンシャル・グループ平野CEOが米資産運用会社の買収を検討していると表明
約3,000億円
計 5 兆3 2 5 0 億円
注:買収・出資等の金額は報道時点。買収資金・出資金の調達形態により、為替需給への影響は変化する
出所:各種報道より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
加速する日本企業の海外
M&A絡みの玉も、隠れた
円売り要因となっている可
能性が高い
この間、ステルス性が高いのでハッキリ視認は出来なかったが、年明け以降に相次いで発
表されている巨額の海外M&Aに絡んだ円売り・外貨買いのフローも恐らくドル円相場の下ヒ
ゲ・カットに寄与して可能性が高い(表2)。ごく最近の事例で言えば、6月16日(火)に発行した
外貨投資の視点(No.225)「活発化する本邦金融機関の事業ポートの海外展開とドル円相
場」で主として取り上げた東京海上ホールディングスによる損保業界過去最大の海外(米系)
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 64 -
保険会社の買収発表のあとも、明治安田生命が生保業界では過去最大となる6200億円規模
の米中堅生保の買収、日本経済新聞社がメディア業界では過去最大となる1600億円規模の
英フィナンシャルタイムズ買収に踏み切るなど、類似の動きがむしろ加速しているかのような印
象がある。個別の案件ごとに買収資金の調達方法は千差万別であり、全てが円売り・外貨買
いに直結する訳ではなさそうだが、国内外の専門情報会社の集計などによると今年は過去最
大の勢いで日本企業の海外M&Aが活発化しているようであり、所得収支黒字の拡大による
円高圧力を相殺する一助になっていた可能性が高い。
これまでのところ、現実の
プライス・アクションは、基
礎的需給の円売り優位を
暗示している
いずれにしろ、国際収支絡みの各種統計を使ってどんなに精緻な分析を試みても、主要通
貨別の輸出入の決済比率が公表されている貿易収支を除くとドル円とクロス円に分別して需
給の偏りを推定するのが難しい。第一次所得収支や資本収支の各項目に由来して発生する
為替需給の正確な姿については、本来なら必要不可欠である当該フローの円転・外貨転比
率や内外投資家等の為替ヘッジ比率の把握が難しい以上、ある程度は推測出来ても実際の
ところは分からない。また、国際収支統計では把握できない国内居住者の海外保有資産や非
居住者の国内資産残高に関わる各通貨別の為替ヘッジ比率の変動、あるいは国内外の仮需
筋が司る為替売買の存在まで加味すると、実際には為替需給の正確な姿は誰にも掴み切れ
ていないのが実情だ。結果的に、当該時点における「円高派」と「円安派」が、それぞれ自分
の予測に都合良くハマりそうな部分を強調して論陣を張ることになるが、どちらの意見が正鵠
を得ているのかは、最終的には現実のプライス・アクションに審判を委ねて判断するしかない。
「海外投機筋が円を買い戻す局面ではドル円相場が膠着し、円売り投機が再開されるとドル
円相場が一気に吹き上がる」という傾向が維持されている間は、日本の基礎収支に基づく為
替需給環境が円売り優位に傾いていることの証左だと考えるのが妥当だろう。
図8:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用資産と運用配分
150兆円
83
75
140兆円
75
68
130兆円
90%
運用時価総額(左目盛)
2015年3月末=143.9兆円
68
67
67
67
67
80%
67
70%
国内債券
60
国内株式
120兆円
60%
外国債券
外国株式
110兆円
50%
短期資産
基本ポートフォリオの変更
( 従来→14/12→15/3→将来)
国内債券 (60%→43.1%→39.4%→35%)
国内株式 (12%→19.8%→22.0%→25%)
外国債券 (11%→13.1%→12.6%→15%)
外国株式 (12%→19.6%→20.9%→25%)
短期資産等 (5%→4.3%→5.1%→廃止)
100兆円
90兆円
80兆円
40%
30%
20%
10%
70兆円
0%
60兆円
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
注:各年度末の運用資産残高と目標ポートフォリオ
出所:年金積立金管理運用独立行政法人、各種報道より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
年金の海外シフトは、今後
減速しそうだが、ドル安・
円高局面では下ヒゲ刈り
の役割を果たしそう
問題は、その状態が一体いつまで続くのかだが、上記のうち、年金マネーの海外シフトにつ
いては、5月から6月にかけてかなりの減速が確認されており(前掲の表1)、年金積立金管理
運用独立行政法人(GPIF)による外国有価証券の買いはそろそろ収束しそうな気配が漂い始
めているが、今後は遅くとも秋頃からはGPIFと同じ基本ポートフォリオへの移行に取り組む国
- 65 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
家公務員共済、地方公務員共済、日本私学共済などによる外国有価証券への投資が、為替
ノーガードの形で海外へ分散される可能性がある(図8)。7月10日(金)に公表されたGPIFの
運用状況報告によれば、今年3月末時点では依然として外国債券、外国株式とも目標配分未
達の状況だったことが示されており(図9)、その後4-6月期以降にGPIFが進めた(かもしれな
い)追加の外貨資産購入と資産評価価格の変化などで目標比率からの許容乖離幅を加味し
た下限近くまで達しているとしても、今後もしも派手な円高・外貨安が進んだ場合はパッシブ
運用独特の「リバランスの外貨買い」は出てきやすいだろう。金額的にみて、GPIFが新しい運
用目標下限付近へのキャッチ・アップを目指して動いたときほど派手な需給インパクトはなくな
りそうだが、上記3基金の運用資産シフトが完了するまでの間は、本邦の公的年金が円高進
行のモデレーター、ないしバック・ストップの役割は果たしそうだ。
図9:日本の公的年金基金の基本ポートフォリオの比較
100%
90%
その他 1%
その他 6%
12%
15%
13%
3%
11%
13%
13%
海外債券
22%
60%
13%
15%
国内株式
50%
25%
40%
30%
海外株式
25%
80%
70%
その他 5%
67%
51%
56%
国内債券
20%
35%
10%
0%
国家公務員
地方公務員
日本私立学校振興
年金積立金管理運用
共済組合連合会
共済組合連合会
・共済事業団
独立行政法人(GPIF)
(15年3月末7.8兆円)
(15年3月末=21.0兆円)
(15年3月末=4.2兆円)
(15年3月末=143.9兆円)
出所:年金積立金管理運用独立行政法人、各種報道より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
生保、投信などの外国有
価証券投資も、押し目が
あれば出てきそう
生命保険会社による「オープン外債」への投資や、外貨系の投資信託を通じた個人マネー
の外国有価証券への投資については、ここもとのドル高・円安局面で目線を一気に1ドル=
120円台半ばのレベルに引き上げられたことで、流石に軽い高所恐怖症に罹患した雰囲気が
あり、当面は流出の勢いが鈍りそうだ。ただ、日銀による異常な金融緩和の影響で国内の超
低金利が長期化する中、円債だけではまともな金利収入を確保しにくい運用難の環境はまだ
まだ続くとみられる。今すぐの心理状態では1ドル=120円割れぐらいにならないと国内のリア
ル・マネー筋による押し目買い興味が目立って刺激されることはなさそうだが、ある程度の時
間が経って市場関係者の目線が昨今のレベルに馴染んで来れば、徐々に雰囲気も変わって
くるのではなかろうか。
人口減に対応して出てい
く海外M&Aは為替感応
度が低いのが特徴
他方、日本企業の海外直接投資については、本邦機関投資家の運用フォリオにおける外
貨資産への投資意欲が減退するような為替水準でも、事業ポートフォリオのグローバル展開
に向けた意欲は極めて旺盛だ。今月1日に総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口動
態調査によると、昨年1年間で国内の日本人の頭数は一昨年に比べて▲27万1058人も減少
したそうだ。同じペースで人口が減り続けると、わずか4年間で仙台市の人口にほぼ匹敵する
108万人以上の住民がまるごと消滅するような勢いの人口減が加速している。少子高齢化に
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 66 -
伴う急速な国内市場の収縮に対応して積極化せざるを得ない日本企業の海外進出への取り
組みは、為替相場の水準にあまり左右されないという特徴がある。為替需給を考える上でしば
らく必須のチェック・ポイントの一つであり続けるだろう。
ド ル 高 ・ 円安の 大 局 観 を
今月も維持
以上の要因を加味した上で、これまで我々が標榜してきたドル高・円安の大局観を今月も
堅持しておきたい。テクニカル的にみても、ここもとのドル円相場は、最近の急激な上昇局面
で目先最も重要な上値攻防線とみられていた「リーマン前高値の124円14銭」を上抜けした後、
あまり時間をかけずに「5の倍数節目の125円00銭」もアッサリ突破してしまった。これから先は
「1ドル=130円00銭」という10の倍数節目ぐらいしか、目ぼしい攻防ラインが見当たらない状態
になっているのが実情だ(図10)。実際にそこまでの上値探査に向かうか否かは、今後のファ
ンダメンタルズや為替需給環境の変化によって決まることになるが、ドル円相場に自然体で備
わっているボラティリティーを考慮すれば、ひとまず1ドル=125円00銭台の壁を突き抜けてし
まった以上、「追加5円程度」の上値トライは、「その場の勢い」だけで取り組んだとしても「全く
届かないレベル」というイメージではなくなっている。
図10:ドル円相場(週足)の推移
140円
135円
140円
2002年1月高値
135円15銭
135円
130円
130円
2007/6/22 124.14円(100.0%)
125円
125円
120円
120円
112.63円(76.4%)
115円
110円
115円
110円
105.50円(61.8%)
105円
100円
105円
99.75円(50.0%)
13週移動平均線
95円
90円
85円
100円
93.99円(38.2%)
95円
90円
86.86円(23.6%)
26週移動平均線
85円
80円
80円
52週移動平均線
75円
70円
02年
75円
2011/10/31 75.35円(0.0%)
70円
03年
04年
05年
06年
07年
08年
09年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
1 ドル=120 円割れが定
着しなければ、52 週移動
平均線は右肩上がりの経
常をキープしたまま、米国
の年内利上げ開始を待つ
ことが可能
筆者のようにエコノミスト出身で為替予想に携わっていると、「流石に1ドル=130円台はファ
ンダメ的にはやり過ぎかもしれない」との想いが折に触れて頭を過(よぎ)ったりもするが、為替
売買ファンの中には「ファンダメンタルズも需給も政治も政策も全く考慮せず、チャートの形だ
けを見て大局観を形成し、売買の別や水準を決める」という嗜好を持つプレイヤーも沢山いる。
従前から本レポートで指摘している通り、「ドル円」という通貨ペアは「長期トレンドライン」の利
用者が他の通貨ペアに比べて圧倒的に高いという特徴がある。「昨年の7月に右肩上がりの
52週移動平均線に初めてぶつかり、その直後から一気に吹き上がってドル高の貯金を稼ぐ」
という分かりやすいチャート・フェイスは、テクニカルの教科書に出てくる値上がり局面の模範
演技のような印象がある。昨年同期のプライス・アクションから類推する限り、この先ドル円相場
- 67 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
が一時的な急落による調整に向かったとしても、1ドル=120円割れが定着しなければ、来年
の年明けごろまでは52週移動平均線が右肩上がりの形状を維持したまま、米国の利上げ開
始「Xデー」を待つ時間的余裕が確保される。既往のドル円相場を趨勢的な右肩上がりの局
面に誘(いざな)ってきた「日米金融政策サイクルのズレ」という分かり易いテーマは、年内の
開始が有力視されている米国の利上げによって一段と鮮明になると見込まれるほか、本稿で
縷々述べてきたように、為替需給の基礎的な環境も円売り優位の状態が続きそうだ。いまのと
ころ、「ファンダメ」、「需給」、「テクニカル」が三位一体になって形成されているドル高・円安の
大局観が破綻しそうな兆候を認め難い。
中期でのドル高・円安見
通しを堅持、現時点での
上値目処は、2016 年末=
127 円 50 銭(121 円 00
銭~134 円 00 銭)
このため、具体的な予測値については、前回は6月25日時点で確定していなかった4-6月
期を実績値に改める以外の変更は一切加えず、7-9月期以降の予想をそのまま維持している。
各年末の想定レンジは、2015年末が1ドル=125円50銭(レンジ119円00銭~132円00銭)、
2016年末が同127円50銭(121円00銭~134円00銭)だ。「いずれ1ドル=125円超での空中戦
をみる」との見方は不変であり、いわゆる「オーバーシュートの領域」に踏み込んでいく場合に
は、レンジ上限のイメージとして、定着するかどうかは兎も角、1ドル=130円台前半までの攻
防をカバーしておきたい(図11)。なお、現在提示している2017年以降の為替予測については、
あまりにも不確定要素が多いことを踏まえて明確な判断を引き続き保留、マクロ経済予測への
中立性を重視して、現時点では2016年末の予想レンジを若干上下に広げただけで延長して
ある。日柄的な感覚だけで述べるなら、2017年頃になれば、そろそろドル高・円安局面が反転
に向かっている可能性を意識したいが、現時点ではまだ予測の精度に全く自信が持てない。
今後の予測パターン見直しのプロセスにおいて、2017年の各四半期の想定レンジにも徐々に
肉づけをしていきたいが、いましばらくの考察期間が必要だと考えている。
※次ページに見通しのグラフと予測表を掲載
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 68 -
図11:2015年~17年のドル円相場の見通し
140円
135円
130円
125円
120円
115円
予想レンジ
110円
ドル円相場実績値
105円
100円
95円
90円
85円
80円
75円
70円
07年
08年
09年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
16年
17年
出所:実績はブルームバーグ提供の週末値。予想は三菱UFJモルガン・スタンレー証券
図12:2015年~17年のユーロ円相場の見通し
180円
170円
160円
150円
予想レンジ
ユーロ円相場実績値
140円
130円
120円
110円
100円
90円
07年
08年
09年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
16年
17年
出所:実績はブルームバーグ提供の週末値。予想は三菱UFJモルガン・スタンレー証券
表3:2015年~17年の為替相場の見通し
予想
予想
2015年
ドル円
[円/ドル]
ユーロ円
[円/ユーロ]
ユーロドル
[ドル/ユーロ]
レンジ
2016年
2014 年
2017年
4-6月期
7-9月期
10-12月期
1-3月期
4-6月期
7-9月期
10-12月期
1-3月期
4-6月期
118.50-125.86
118.0-131.0
119.0-132.0
119.5-132.5
120.0-133.0
120.5-133.5
121.0-134.0
120.5-134.5
120.5-134.5
100.76-121.85
2015年
2016年
(予想)
(予想)
2017年
(予想)
115.86-132.0
119.5-134.0
120.5-134.5
期末値
122.50
124.5
125.5
126.0
126.5
127.0
127.5
127.5
127.5
119.78
125.5
127.5
127.5
レンジ
126.10-141.06
126.3-142.6
123.6-139.9
121.6-138.0
120.9-137.2
120.1-136.4
119.3-135.7
118.7-136.3
118.7-136.3
134.14-149.78
123.6-145.48
119.3-138.0
118.7-136.3
期末値
136.54
134.5
131.8
129.8
129.0
128.3
127.5
127.5
127.5
144.85
131.8
127.5
127.5
レンジ
1.052-1.147
1.020-1.150
0.990-1.120
0.965-1.095
0.955-1.085
0.945-1.075
0.935-1.065
0.930-1.070
0.930-1.070
1.210-1.399
0.990-1.211
0.935-1.095
0.930-1.070
期末値
1.115
1.080
1.050
1.030
1.020
1.010
1.000
1.000
1.000
1.210
1.050
1.000
1.000
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成。ユーロドルは小数点以下4桁を四捨五入。。
予想は弊社:最終変更日時は7月3日8:30ое Спасиб
о
- 69 -
(7月31日 12:20)
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
経済指標予想・イベント(2015 年 8 月 3 日~2015 年 8 月 9 日分)
発表日・時刻
8/3
経済指標等
日本 14:00 新車登録台数(7月分)
(月)
海
外
8/4
(火)
(水)
市場予想
コメント
21:30 米個人所得(6月分 市場予想 前月比+0.3%、5月分 同 +0.5%)
21:30 米個人消費(6月分 市場予想 前月比+0.2%、5月分 同 +0.9%)
23:00 米ISM製造業指数(7月分 市場予想 53.5、6月分 53.5)
8:50 マネタリーベース(7月分)
日
本
10:30 10年利付国債入札(発行予定額 2兆4,000億円程度) <12:45 結果発表>
10:30 毎月勤労統計
<現金給与総額>
8/5
予想値と実績値
6月est.
前年比
+0.8%
+0.9% 所定内給与は5月並み、所定外給与も伸
5月
同
+0.7%
4月
同
+0.7%
び悩みそうだが、夏季賞与の増加が押し
上げへ
海外 23:00 米製造業受注(6月分 市場予想 前月比 ▲0.5%、5月分 同 ▲1.0%)
日本 10:20 6ヵ月国庫短期証券入札(発行予定額 3兆5,000億円程度) <12:35 結果発表>
海
外
21:15 米ADP雇用統計(7月分 市場予想 前月比 +22.5万人、6月分 同 +23.7万人)
21:30 米貿易収支(6月分 市場予想 赤字額 427億ドル、5月分 同419億ドル)
23:00 米ISM製造業指数(7月分 市場予想 56.3、6月分 56.0)
10:20 3ヵ月国庫短期証券入札(発行予定額 5兆1,000億円程度) <12:35 結果発表>
8/6
10:30 流動性供給入札(発行予定額 3,000億円程度) <12:45 結果発表>
(木)
14:00 日銀政策委員会・金融政策決定会合(1日目)
14:00 景気動向指数速報
<先行CI>
<一致CI>
日
本
<先行DI>
<一致DI>
海
外
15:00 ドイツ製造業受注
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
6月est.
前月差
+0.2pt
5月
同
+0.1pt
4月
同
+1.5pt
前月差
+0.8pt
6月est.
5月
同
▲2.1pt
4月
同
+2.6pt
構成比
77.8%
5月
同
70.0%
4月
同
70.0%
6月est.
構成比
44.4%
5月
同
35.0%
4月
同
30.0%
6月est.
6月est.
前月比
+0.7%
5月
同
+1.4%
4月
同
+1.1%
- 70 -
+0.5pt
+0.6pt
一致CIはプラス転換も5月のマイナスを取
り戻せず。基調判断は「足踏み」で変わら
ずか。先行CIの動きも鈍い(6月より11次
77.8% 改定を反映した新指数に移行、本欄4・5
月実績のうちCIは新指数を掲載)
50.0%
+0.1% 景気は拡大基調ながら、新興国景気の弱
さなどから反動はありそう。一方、航空機
関連の大型案件が下支えか。
発表日・時刻
8/7
(金)
日
本
経済指標等
予想値と実績値
6月est.
前月比
+0.2%
同
+0.0%
5月
同
+0.6%
前月比
+0.0%
同
+0.4%
4月
15:45 フランス鉱工業生産
6月est.
5月
21:30 米雇用統計
<非農業部門就業者数>
米雇用統計
<時間当り賃金>
米雇用統計
<失業率>
8/8
(土)
8/9
(日)
注:
コメント
15:30 黒田日銀総裁定例記者会見
15:00 ドイツ鉱工業生産
海
外
市場予想
9:00 日銀政策委員会・金融政策決定会合(2日目)
4月
7月est.
同
+19.9万人
6月
同
+22.3万人
5月
同
25.4万人
前月比
+0.1%
6月
同
+0.0%
5月
同
+0.2%
7月est.
5.2%
6月
5.3%
5月
5.5%
海
外
11:00 中国貿易統計(7月分)
海
外
10:30 中国消費者物価・生産者物価(7月分)
関連サーベイは強弱斑模様。緩やかな拡
大基調に見合った数値
+0.2%
関連サーベイは強弱マチマチ。前月の反
動もあり、横ばい見込み
▲'0.8%
前月比
7月est.
+0.3%
+22.5%
雇用者数の伸びは冴えない企業マインド
や生産の伸び悩みを背景に一時的に鈍化
+0.2% も、失業率は着実に低下。FOMCが見込む
15年4Qのレンジ下限に到達を予想する。
まちまちな結果で市場参加者の利上げ観
測を一気に高めるには程遠いものの、当
5.3% 方の9月利上げ開始シナリオを覆すもので
はない、とみる
1.*は未定。est.は予想値。市場予想(中央値)は各種サーベイより集計
2.発表時刻は日本時間
出所:各種報道より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
- 71 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 72 -
30
23
16
9
16年度予算概算要求の提出期限
7月鉱工業生産<速報>( 8:50)
7月住宅着工件数(14:00)
ユーロ圏8月CPI〈速報値〉(18:00)
中国8月製造業PMI〈速報値〉 (10:45)
ユーロ圏8月PMI〈速報値〉 (17:00)
15/2Q・ GDP〈 1次速報〉 (8:50)
6月国際収支(8:50)
7月貸出・預金動向(8:50)
7月消費動向調査( 14:00)
8月日銀金融経済月報(14:00)
7月景気ウォッチャー調査(15:00)*
米6月個人所得・消費支出(21:30)
米7月ISM〈製造業〉 (23:00)
31
24
17
10
3
2
7月新車販売台数(14:00)
27
月
26
注: 7 月 30 日現在。 ( )内の時刻は日本時間。*は日時未定
出所:各種報道より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
8月政府月例経済報告*
【当週】
7月全国スーパー売上高*
7月全国百貨店売上高*
7月東京地区百貨店売上高*
【当週】
中国7月CPI・ PPI( 10:30)
埼玉県知事選挙
日
マーケットカレンダー(2015 年 8 月分)
ドイツ 8月IFO景況感指数(17:00)
米6月S&Pケースシラー住宅価格指数
(22:00)
米7月新築住宅販売件数(23:00)
米8月消費者信頼感指数(23:00)
米2年国債入札(2:00)
40年国債入札(0.4兆円,10:30)
1
25
米7月耐久財受注(21:30)
米2年変動利付国債入札(2:00)
米5年国債入札(2:00)
7月企業向けサービス価格指数(8:50)
米7月CPI(21:30)
FOMC議事録〈 7/28,29〉 (3:00)
米7月住宅着工・許可件数(21:30)
日銀金融政策決定会合議事要旨
〈 7/14,15〉 (8:50)
2ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
6月鉱工業生産〈確報〉( 13:30)
6月第3次産業活動指数(13:30)
中国7月生産・小売・投資(14:30)
米10年国債入札(2:00)
7月企業物価指数(8:50)
7月貿易統計(8:50)
6月全産業活動指数(13:30)
6月景気動向指数〈改定値〉 (14:00)
7月訪日外客数(14:00)
18
11
米6月貿易収支(21:30)
米7月ISM〈非製造業〉 (23:00)
6ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
水
1年国庫短期証券入札(2.5兆円,10:20)
20年国債入札(1.2兆円,10:30)
米15/2Q労働生産性〈速報値〉 (21:30)
米6月卸売在庫(23:00)
米3年国債入札(2:00)
7月マネーストック(8:50)
30年国債入札(0.8兆円,10:30)
4
28
7月マネタリーベース(8:50)
10年国債入札(2.4兆円,10:30)
6月毎月勤労統計〈速報〉( 10: 30)
6月家計消費状況調査〈速報値〉( 14:00)
米6月製造業受注( 23:00)
火
2
26
19
12
5
29
米ジャクソンホール会議(~29日)
米15/2Q・GDP〈改定値〉 (21:30)
ユーロ圏7月マネ-サプライ(17:00)
米7年国債入札(2:00)
3ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
2年国債入札(2.5兆円,10:30)
ギリシャ国債32億ユーロ償還
米8月フィラ連銀製造業指数(23:00)
米7月中古住宅販売(23:00)
米7月景気先行指数(23:00)
米5年TIPS国債入札(2:00)
7月公社債投資別売買高(9:00)
3ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
国債流動性供給入札(0.5兆円,10:30)
米7月小売売上高(21:30)
米7月輸出入物価指数(21:30)
米6月企業在庫(23:00)
米30年国債入札(2:00)
6月機械受注(8:50)
3ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
5年国債入札(2.5兆円,10:30)
〈結果・議事録、インフレーショ ンレポート発表〉
3ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
国債流動性供給入札(0.3兆円,10:30)
6月景気動向指数〈速報値〉( 14:00)
日銀金融政策決定会合( 14: 00)
英BOE金融政策委員会(結果発表)
木
3
27
20
13
6
30
ユーロ圏8月景況感サーベイ(18:00)
米7月個人所得・消費支出(21:30)
7月全国・8月都区部CPI(8:30)
7月家計調査(8:30)
7月完全失業率(8:30)
7月商業動態統計〈速報〉 (8:50)
≪債券投資クォータリー≫
≪債券投資ウィークリー≫
ユーロ圏15/2Q・GDP(18:00)
ユーロ圏7月CPI〈確報値〉 (18:00)
米7月PPI(21:30)
米7月鉱工業生産(22:15)
米8月ミシガン大消費者信頼感指数
〈速報値〉 (23:00)
≪債券投資ウィークリー≫
米7月雇用統計(21:30)
日銀金融政策決定会合( 9: 00)
黒田日銀総裁会見( 15: 30)
≪債券投資ウィークリー≫
金
4
28
21
14
7
31
中国7月貿易統計(11:00)*
中国7月製造業PMI( 10:00)
土
5
30
22
15
8
1
- 73 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
27
20
13
6
30
米8月個人所得・消費支出(21:30)
28
米7月S&Pケースシラー住宅価格指数
(22:00)
米9月消費者信頼感指数(23:00)
ユーロ圏9月景況感サーベイ(18:00)
2年国債入札(2.5兆円,10:30)
29
中国9月製造業PMI〈速報値〉 (10:45)
ユーロ圏9月PMI〈速報値〉 (17:00)
米2年変動利付国債入札(2:00)
米5年国債入札(2:00)
ユーロ圏8月CPI〈確報値〉 (18:00)
米8月CPI(21:30)
FOMC
9月日銀金融経済月報( 14: 00)
8月訪日外客数( 14: 00)
1年国庫短期証券入札(2.5兆円,10:20)
20年国債入札(1.2兆円,10:30)
安倍首相の自民党総裁任期終了
ユーロ圏9月CPI〈速報値〉 (18:00)
8月鉱工業生産<速報>( 8:50)
8月商業動態統計〈速報〉 (8:50)
8月毎月勤労統計〈速報〉 (10:30)
8月住宅着工件数(14:00)
30
23
16
米8月住宅着工・許可件数(21:30)
米15/2Q経常収支(21:30)
米9月フィラ連銀製造業指数(23:00)
米10年TIPS国債入札(2:00)
FOMC〈結果発表〉
15/2Q資金循環統計(8:50)
8月貿易統計(8:50)
3ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
〈結果・議事録〉
米30年国債入札(2:00)
英BOE金融政策委員会〈結果発表〉
1
24
米15/2Q・GDP〈確報値〉 (21:30)
ユーロ圏8月マネ-サプライ(17:00)
8月全国・9月都区部CPI(8:30)
8月企業向けサービス価格指数(8:50)
国債流動性供給入札(0.5兆円,10:30)
≪債券投資マンスリー≫
米8月景気先行指数(23:00)
日銀金融政策決定会合議事要旨
〈 8/6,7〉 (8:50)
≪債券投資ウィークリー≫
米8月PPI(21:30)
米9月ミシガン大消費者信頼感指数
〈速報値〉 (23:00)
≪債券投資ウィークリー≫
米8月雇用統計(21:30)
G20財務相・中央銀行総裁会議
(~5日、トルコ)
4
2
25
18
11
7月家計消費状況調査〈速報値〉( 14:00)
米8月輸出入物価指数(21:30)
米7月卸売在庫(23:00)
17
金
≪債券投資ウィークリー≫
15/3Q法人企業景気予測調査(8:50)
ドイツ 9月IFO景況感指数(17:00)
米8月耐久財受注(21:30)
米8月新築住宅販売件数(23:00)
ECBのTLTRO提供
米7年国債入札(2:00)
22
15
10
3
8月企業物価指数(8:50)
7月機械受注(8:50)
3ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
5年国債入札(2.5兆円,10:30)
米8月中古住宅販売(23:00)
米2年国債入札(2:00)
米8月小売売上高(21:30)
米8月鉱工業生産(22:15)
米7月企業在庫(23:00)
日銀金融政策決定会合( 9: 00)
黒田日銀総裁会見( 15: 30)
9
米7月貿易収支(21:30)
米8月ISM〈非製造業〉 (23:00)
ECB理事会
3ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
国債流動性供給入札(0.3兆円,10:30)
木
8月公社債投資家別売買高(9:00)
3ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
21
14
中国8月CPI・ PPI( 10:30)
米10年国債入札(2:00)
8月マネーストック(8:50)
8月消費動向調査( 14:00)
2
7月全産業活動指数( 13: 30) *
7月第3次産業活動指数( 13: 30) *
7月鉱工業生産〈確報〉 (13:30)
日銀金融政策決定会合( 14: 00)
中国8月貿易統計(11:00)*
米3年国債入札(2:00)
◎米 Labor Day (休場)
8
米15/2Q労働生産性〈改定値〉 (21:30)
米7月製造業受注( 23:00)
米地区連銀経済報告(3:00)
中国8月製造業PMI(10:00)
米8月ISM〈製造業〉(23:00)
水
8月マネタリーベース(8:50)
1
15/2Q法人企業統計調査( 8:50)
10年国債入札(2.4兆円,10:30)
7月毎月勤労統計〈速報〉( 10: 30)
8月新車販売台数(14:00)
火
7月国際収支(8:50)
8月貸出・預金動向(8:50)
15/2Q・GDP〈2次速報〉(8:50)
6ヵ月国庫短期証券入札(10:20)
30年国債入札(0.8兆円,10:30)
8月景気ウォッチャー調査(14:00)*
7
31
7月景気動向指数〈速報値〉( 14:00)
月
注: 7 月 30 日現在。 ( )内の時刻は日本時間。*は日時未定
出所:各種報道より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成
スペイン・カタルーニャ州議会選挙
延長国会会期末
8月全国スーパー売上高*
8月全国百貨店売上高*
8月東京地区百貨店売上高*
7月景気動向指数〈改定値〉 *
9月政府月例経済報告*
【当週】
岩手県知事選挙
【月内】
自民党総裁選
日
マーケットカレンダー(2015 年 9 月分)
安倍首相外遊*
中国8月生産・小売・投資(14:30)
土
3
26
19
12
5
チャート集
国債
イールドカーブ
1.5
イールドカーブの変化
複利(%)
複利変化(%)
0.06
0.04
1.2
0.02
0.9
0.00
-0.02
0.6
-0.04
0.3
-0.06
0.0
-0.08
残存年
残存年
-0.10
-0.3
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
15/7/24
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
15/7/30
1ヵ月前比
パーレート(5 年,10 年)
1.0
パーレート(20 年,30 年)
(%)
2.0
0.8
1.8
0.6
1.6
0.4
1.4
0.2
1.2
0.0
1.0
-0.2
14/07/30
14/10/30
15/01/30
5年
15/04/30
15/07/31
(%)
0.8
14/07/30
14/10/30
10年
15/01/30
20年
スプレッド(10 年-5 年,10 年-7 年)
0.6
先週末比
15/04/30
15/07/31
30年
スプレッド(20 年-10 年,30 年-20 年)
(%)
1.2
(%)
1.0
0.5
0.8
0.4
0.6
0.3
0.4
0.2
0.1
14/07/30
0.2
14/10/30
15/01/30
10年-5年
15/04/30
15/07/31
10年-7年
0.0
14/07/30
14/10/30
15/01/30
20年-10年
15/04/30
15/07/31
30年-20年
出所:三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 74 -
国債(続き)
曲率(5 年-7 年-10 年,10 年-20 年-30 年)
0.5
曲率(5 年-10 年-20 年,7 年-10 年-20 年)
(%)
0.10
0.4
0.05
0.3
0.00
0.2
-0.05
0.1
-0.10
0.0
-0.15
-0.1
14/07/30
14/10/30
15/01/30
5年-7年-10年
15/04/30
15/07/31
(%)
-0.20
14/07/30
14/10/30
10年-20年-30年
クッション(3 ヵ月保有,ローリング基準)
0.05
15/01/30
5年-10年-20年
15/04/30
15/07/31
7年-10年-20年
インプライドフォワードレート(6M)
(%)
(%)
1.4
1.2
0.04
1.0
0.03
0.8
0.6
0.02
0.4
0.01
0.2
0.00
0.0
残存年
-0.01
0
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
15/7/23
年
-0.2
2
15/7/30
8
10
10年国債(15/7/30)
ブレークイーブンインフレ率
(円)
3.5
(%)
#16
3.0
3
2.5
2.0
2
#18
1.5
#19
1.0
1
0.5
0
14/07/30
6
10年国債(15/7/24)
15 年変動利付国債(終値-理論値)
4
4
14/10/30
15/01/30
15/04/30
15/07/31
0.0
14/07/30
#17
#20
14/10/30
15/01/30
15/04/30
15/07/31
出所:三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券
- 75 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
国債(続き)
フェアバリューからのかい離(10 年債中期セクター)
フェアバリューからのかい離(10 年債長期セクター)
(bp)
(bp)
(bp)
3
3
2
2
2
2
1
1
1
1
0
0
0
0
-1
-1
-1
-1
-2
-2
-2
15/7/30
バーチャート:20日平均±1.8σ
#339
#337
#335
#333
#331
#329
#327
#325
-3
15/7/30
ボラティリティ
債券先物 20 日ヒストリカル/インプライド
5
残存年毎の 20 日日次金利変化幅の標準偏差
(%)
6
(bp/日)
5
4
4
3
3
2
2
1
1
0
14/07/30
14/10/30
15/01/30
20日HV
15/04/30
15/07/31
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
四半期物IV
15/6/30
15/7/30
残存年
スワップスプレッド
スワップスプレッド(スワップ-国債パーレート)
0.3
スワップスプレッドの変化
(%)
0.03
(%)
0.02
0.2
0.01
0.1
-0.01
0.00
-0.02
0.0
-0.03
-0.04
残存年
-0.1
-0.05
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
6M最大
75%
50%
25%
6M最小
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
先週末比
15/7/30
先々週末比
残存年
出所:三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 76 -
3
-2
割高
#323
#316
#314
#312
#310
#308
#306
#304
#302
#300
#298
#296
#294
#292
#290
#288
バーチャート:20日平均±1.8σ
-3
#318
割高
-3
割安
#321
割安
#319
3
(bp)
-3
マーケット・ダイアリー(2015 年 6 月 20 日~2015 年 7 月 24 日)
マーケット概況
6/20
(土)
6/21
(日)
6/22
(月)
【東京市場】
・債券先物は 7 営業日ぶりに反落
147.14 円 (-0.05 円)
0.425% (+0.005%)
*長期国債買入オペ(7,817 億円)
国債買入れオペや国債大量償還に伴う好需給、ギリシャ
のデフォルト懸念が相場を下支えも、株高が重しに
・日経平均は続伸
20,428.19 円 (+253.95 円)
好業績銘柄への買いが続いた
・円は横ばい
123.11 円 (0.00 円)
日本経済・金融
・政府の財政健全化計画 、歳出上限
の設定は見送りへ。社会保障費は「年
0.5 兆円・3 年で 1.5 兆円増」への抑制を
明記へ、と読売新聞が伝えた
・政府の財政健全化計画 、一般歳出
について「3 年で 1.6 兆円増」という新目
安を設定へ、と英通信社ロイターが伝え
た
・5 月の公社債投資家別売買高、外
国人は+680 億円と過去 11 ヵ月間で最
少に。都銀は▲5,852 億円と 11 ヵ月連
続の売り越し。地銀・第 2 地銀は+6,891
億円と 3 ヵ月ぶりの買い越し。信託銀行
は+3,346 億円と 8 ヵ月ぶりの買い越し。
生損保は+2,893 億円と 36 ヵ月連続の
買い越し
・日銀 、「債券市場参加者会合」(6/11・
海外経済・金融
・5 月の米中古住宅販売件数、年率
換算 535 万戸と市場予想(同 526 万戸)を
上回った。前月は同 509 万戸
・ギリシャ政府 、累進課税や企業課税の
強化などを盛り込んだ新たな改革案を
提示
・ユーロ圏緊急首脳会合、ギリシャ支援を
巡る結論は先送り
12 開催)の議事要旨を公表。参加者か
ら債券市場の機能度低下などを指摘
する声があった
・政府 、「骨太の方針」の素案を公表。
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.37% (+0.12%)
ギリシャ支援協議の進展期待から、売られた
・NY ダウ:18,119.78 ドル (+103.83 ドル)
ギリシャ支援協議の進展期待から、買われた
・NY 円:123.30 円 (+0.70 円)
米長期金利の上昇を受け、円売り・ドル買いの流れに
6/23
(火)
【東京市場】
・債券先物は続落
「18 年度 PB 赤字 1%」の達成に向け、
「3 年で 1.6 兆円増」という一般歳出の目
安を明記。歳出総額の上限目標設定
は見送り
・政府、成長戦略の素案を公表。企業に
よる社員向け能力開発研修の促進など
を追加
・内閣支持率 、39%と前回調査(45%)
から低下(朝日新聞)
146.75 円 (-0.39 円)
0.455% (+0.030%)
*国債流動性供給入札(第 192 回)
・6 月の中国製造業 PMI(速報)、49.6
と市場予想(49.4)を上回った。前月は
49.2
・6 月のユーロ圏総合 PMI(速報)、54.1
と市場予想(53.5)を上回った。前月は
53.6
(募入最大利回較差:+0.012%)
前日の米債安や株高を受け、売られた
・5 月の米耐 久財受注 、 前 月 比 ▲
・日経平均は 3 営業日続伸
1.8%と市場予想(同▲1.0%)を下回っ
た。前月は同▲1.5%。非国防資本財
受注(除く航空機)は同+0.4%と市場予
想(同+0.5%)を下回った。前月は同▲
0.7%
20,809.42 円 (+381.23 円)
前日の米株高や円安を受け、買われた。約3週間ぶり
に年初来高値を更新
・円は下落
123.68 円 (+0.57 円)
・5 月の米新築住宅販売件数、年率
海外市場における円安・ドル高の流れを引き継いだ
換算は 54.6 万戸と市場予想(同 52.3 万
戸)を上回った。前月は同 53.4 万戸
【ニューヨーク市場】
・パウエル FRB 理事、パネル討議で「9 月
・米国債 10 年:2.41% (+0.04%)
に利上げを開始し、12 月に追加利上
げを行うというのが私の予想だ」
ギリシャ支援協議の進展期待やパウエルFRB理事の発言
を受け、売られた
・NY ダウ:18,144.07 ドル (+24.29 ドル)
ギリシャ支援協議の進展期待が支えに
・NY 円:123.90 円 (+0.60 円)
米長期金利の上昇を受け、円売り・ドル買いが優勢に
- 77 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
マーケット概況
6/24
(水)
【東京市場】
・債券先物は 3 営業日ぶりに反発
146.85 円 (+0.10 円)
0.460% (+0.005%)
*長期国債買入オペ(11,760 億円)
割安感や国債買入オペ等による好需給が背景
・日経平均は 4 営業日続伸
20,868.03 円 (+58.61 円)
前日の欧米株高を受け、買われた。ITバブル期の00年
4月に付けた高値(20,833円)を上回り、96年12月5日
(20,943.90円)以来およそ18年半ぶりの高値を付けた
日本経済・金融
・日銀金融政策決定会合議事要旨
(5/21・22 開催)、「公共投資が緩やか
な減少傾向に転じている中でも経済成
長が続いていることは、前向きな循環メ
カニズムがしっかりと作用している証拠」
(ある委員)
海外経済・金融
・1-3 月期の米 GDP(確定値)、前期
比年率▲0.2%と市場予想どおり。改定
値は同▲0.7%
・ユーロ圏財務相会合、ギリシャ支援再開
に向けた合意に至らず
・国債の決済期間の短縮化に関す
る検討ワーキング・グループ、T+1 化の
実施目標時期を 18 年度上期とする合
意を発表
・円は続落
123.92 円 (+0.24 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.36% (-0.05%)
ギリシャ支援協議の進展期待が一服した
・NY ダウ:17,966.07 ドル (-178.00 ドル)
利益確定目的の売りが出た
・NY 円:123.80 円 (+0.10 円)
6/25
(木)
【東京市場】
・債券先物は反落
146.75 円 (-0.10 円)
0.475% (+0.015%)
*2 年利付国債入札(354 回) 無難
・14 年度一般会計税収、53.9 兆円台
と補正予算(51.7 兆円)から 2.2 兆円上
振れへ、と各紙が伝えた
・ユーロ圏財務相会合、ギリシャ支援協議
を再開も合意に至らず
・5 月の米個人消費支出 、 前 月 比
+0.9%と市場予想(同+0.7%)を上回っ
た。前月は同+0.1%。個人所得は同
+0.5 % と 市 場 予 想 ど お り 。 前 月 は 同
+0.5%。PCE デフレーターは前年同月比
+0.2 % と 市 場 予 想 ど お り 。 前 月 は 同
+0.2%
(クーポン 0.1%/応札倍率 3.71 倍/テール 2 厘)
目立った売り材料はなかったが、2 年国債入札の応札
倍率が3年7ヵ月ぶりの低水準になったことが重しに
・日経平均は 5 営業日ぶりに反落
20,771.40 円 (-96.63 円)
・米新規失業保険申請件数、27.1 万
前日の米株安を受け、売られた
人と市場予想(27.3 万人)を下回った。
前週は 26.8 万人
・円は 5 営業日ぶりに反発
123.76 円 (-0.16 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.41% (+0.05%)
米7年国債入札の結果は良好も、米経済指標の改善
が売り材料視された
・NY ダウ:17,890.36 ドル (-75.71 ドル)
ギリシャ支援協議を見極めたいとのムードが強かった
・NY 円:123.60 円 (-0.20 円)
6/26
(金)
【東京市場】
・債券先物は続落
146.72 円 (-0.03 円)
0.470% (-0.005%)
*長期国債買入オペ(11,556 億円)
前日の米債安を受け、売られた
・日経平均は続落
20,706.15 円 (-65.25 円)
前日の米株安を受け、売られた
・円は続伸
123.36 円 (-0.40 円)
・5 月の消費者物価指数(全国)、生
鮮食品を除く総合(コア)は前年同月比
+0.1%と市場予想(同 0.0%)を上回っ
た。前月は同+0.3%。6 月東京都区部
(コア)は同+0.1%と市場予想どおり。前
月は同+0.2%
・5 月の家計調査、実質消費支出は前
年同月比+4.8%と市場予想(同+3.6%)
を上回った。前月は同▲1.3%
・5 月の労働力調査 、完全失業率は
3.3%と市場予想どおり。前月は 3.3%。
有効求人倍率は 1.19 倍。前月は 1.17 倍
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.47% (+0.06%)
6月米消費者信頼感指数(ミシガン大)の上方修正が売り
材料に
・NY ダウ:17,946.68 ドル (+56.32 ドル)
6月米消費者信頼感指数(ミシガン大)の上方修正が買い
材料に
・NY 円:123.80 円 (+0.20 円)
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 78 -
・6 月の米消費者信頼感指数(ミシガン
大)(確報値)、96.1 と市場予想(94.6)を
大きく上回った。速報値は 94.6
・独仏首脳、ギリシャに対し支援期間を 11
月まで延長する新提案を提示。支援総
額 155 億ユーロ、条件は年金改革や税
率引き上げ等
マーケット概況
日本経済・金融
6/27
(土)
海外経済・金融
・ギリシャ政府 、独仏首脳提案の受入を
巡る国民投票の 7 月 5 日実施を表明。
6 月 30 日の IMF 向け返済約 15 億ユー
ロ分は期限延期を要求
・ユーロ圏財務相会合、ギリシャからの 6 月
30 日の期限延期要求を拒否
・中国人民銀行、0.25%pt の追加利下
げを決定。貸出基準金利を 4.85%、預
金基準金利を 2.00%に。一部銀行に対
しては預金準備率も 0.5%pt 引き下げ
・ ECB 、 キ ゙ リ シ ャ 向 け 緊 急 流 動 性 支 援
(ELA)の拡大見送りを決定
6/28
(日)
・ギリシャ政府、国内銀行の休業と資本規
制導入を発表
6/29
(月)
【東京市場】
・債券先物は 3 営業日ぶりに反発
147.17 円 (+0.45 円)
0.440% (-0.030%)
*長期国債買入オペ(5,402 億円)
ギリシャ支援協議の決裂を受け、買われた
・日経平均は 3 営業日続落
20,109.95 円 (-596.20 円)
ギリシャ支援協議の決裂を受け、売られた。下げ幅は14年2
月4日(610円)以来、約1年5ヵ月ぶりの大きさ
・円は 3 営業日続伸
122.91 円 (-0.45 円)
【ニューヨーク市場】
・内閣支持率 、47%と前回調査(50%)
から低下(日本経済新聞)
・5 月の鉱工業生産(速報)、前月比▲
2.2%と市場予想(同▲0.8)を大きく下回
った。前月は同+1.2%。予測指数は 6
月が同+1.5%、7 月が同+0.6%
・黒田東彦日銀総裁、BIS 年次総会で
「適切な非伝統的政策手段用いれば、
ゼロ金利制約は克服可能」「中央銀行
の間では、長期債を大規模に買入れて
需給に影響を与えることを通じて、ターム
プレミアムを実際に縮小させることができ
るという理解が、次第に広がってきてい
る」
・米国債 10 年:2.32% (-0.15%)
ギリシャ支援協議の決裂を受け、買われた
・NY ダウ:17,596.35 ドル (-350.33 ドル)
ギリシャ支援協議の決裂を受け、売られた
・NY 円:122.45 円 (-1.35 円)
リスク回避目的の円買い・ドル売りとなった
6/30
(火)
【東京市場】
・債券先物は反落
146.97 円 (-0.20 円)
0.455% (+0.015%)
前日のリスクオフムードがひとまず一服
・日経平均は 4 営業日ぶりに反発
20,235.73 円 (+125.78 円)
前日に大きく下げた反動が出た
・円は 4 営業日続伸
122.24 円 (-0.67 円)
海外市場の円買い・ドル売りの流れを引き継いだ
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.35% (+0.03%)
前日のリスクオフムードがひとまず一服
・ 内 閣 支 持 率 、 46.1 % と 前 回 調 査
(53.7%)から低下(産経新聞)
・5 月の毎月勤労統計(速報値)、現金
給与総額は前年同月比+0.6%と市場
予想(同+0.7%)を下回った。前月は同
+0.7%
・日銀、『当面の長期国債買入れの運営
について』を公表。7 月最初のオファー額
は、「3-5 年」を 4,000 億円から 4,250 億
円に増額。その他は据え置き
・政府、「骨太の方針」と成長戦略を閣議
決定。財政健全化計画は、18 年度 PB
赤字 GDP 比▲1%、一般歳出を 3 年で
1.6 兆円増との目安を設定
・NY ダウ:17,619.51 ドル (+23.16 ドル)
前日のリスクオフムードがひとまず一服
・NY 円:122.45 円 (0.00 円)
- 79 -
・4 月の米 S&P ケースシラー住宅価格
指数、前年同月比+4.91%と市場予想
( 同 +5.50 % ) を 下 回 っ た 。 前 月 は 同
+4.94%
・6 月の米消費者信頼感指数(コンファ
レンスボード)、101.4 と市場予想(97.4)を
下回った。前月は 94.6
・フィッシャー FRB 副総裁、オックスフォード大
学で開かれた円卓会議で「実質消費に
関する直近の月間データは消費者の需
要が回復しつつある明るい兆候を示し
ている」「経済活動は 4-6 月に年率約
2.5%のペースで拡大したもようだ」「米金
融政策はデータ次第。今後の FOMC 会
合では、FF 金利誘導目標の調整の可
能性について検討される。検討は今後
入手するデータと経済見通しの精査に
基づいて行われる」
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
マーケット概況
7/1
(水)
【東京市場】
・債券先物は続落
146.75 円 (-0.22 円)
0.480% (+0.025%)
*長期国債買入オペ(8,718 億円)
前日の米債安を受け、売られた。国債買入オペで応札
倍率が上昇したことや株高も売り材料に
・日経平均は続伸
20,329.32 円 (+93.59 円)
前日の米株高と日銀短観の上振れが相場の支えに
・円は 5 営業日ぶりに反落
122.61 円 (+0.37 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.42% (+0.07%)
良好な米経済指標を受け、売られた
・NY ダウ:17,757.91 ドル (+138.40 ドル)
良好な米経済指標を受け、買われた
・NY 円:123.15 円 (+0.70 円)
良好な米経済指標を受け、円売り・ドル買いが優勢に
7/2
(木)
【東京市場】
・債券先物は 3 営業日続落
146.31 円 (-0.44 円)
0.520% (+0.040%)
*10 年利付国債入札(339 回) 順調
(クーポン 0.4%/応札倍率 2.62 倍/テール 3 銭)
前日の米債安が重しに。10年国債入札の結果は順調
も、6月米雇用統計を控え買い戻しの動きは強くならず
・日経平均は 3 営業日続伸
20,522.50 円 (+193.18 円)
前日の欧米株高や円安を受け、買われた
日本経済・金融
・6 月調査日銀短観、大企業・製造業
海外経済・金融
・ギリシャ、6 月 30 日の IMF 向け返済(約
の業況判断 DI は前回調査比+3pt の 15
と市場予想(12)を上回った。先行き 6 月
は 16 と市場予想(14)を上回った
15 億ユーロ)の期限が過ぎ、事実上のデフ
ォルト
〔業況判断 DI: ( )内は前回 3 月調査〕
大 企 業 ・製 造 業
15
(12)
大 企 業 ・非 製 造 業
21
(17)
中 小 企 業 ・製 造 業
0
(1)
中小企業・非製造業
4
(3)
大企業・全産業の 15 年度設備投資計画
(含む土地投資)は、前年度比+9.3%と
市場予想(同+5.3%)を上回った
53.5 と市場予想(53.2)を上回った。前
月は 52.8
・6 月の米 ADP 雇用報告、民間雇用
者数は前月比+23.7 万人と市場予想
(同+21.8 万人)を上回った。前月は同
+20.3 万人
・布野幸利日銀審議委員 、就任記者
会見で「デフレ脱却は前進しているが、
まだ本格的ではない。2%をきっちり達
成していくことが重要」「(為替について)
市場が決めること。企業の持続的成長
にはそういうファクターに依存しないよう、
生産性向上などを身につけていくこと
が肝心」「(追加緩和について)状況が
変われば対策する。薬には必ず副作用
があるので点検しないといけない」
・6 月調査日銀短観・企業の物価見
通し(全規模全産業)、1 年、3 年、5
年後の物価全般見通しは各+1.4%、
+1.6%、+1.5%。「3 年後」は 3 月調査か
ら▲0.1pt 鈍化。「1 年後」、「5 年後」は 3
月調査から横ばい
・生活意識に関するアンケート調査(日
銀)、1 年後の物価見通しの平均値は
+4.8%(3 月調査:+4.8%)。中央値は
+3.0%(同:+3.0%)
・円は続落
123.48 円 (+0.87 円)
海外市場の円売り・ドル買いの流れを引き継いだ
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.38% (-0.04%)
6月米雇用統計の弱めの結果を受け、買われた
・NY ダウ:17,730.11 ドル (-27.80 ドル)
6月米雇用統計は早期利上げ観測の後退を通じて買
い材料となるも、その後に利益確定目的の売りが出た
・NY 円:123.00 円 (-0.15 円)
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
・6 月の米 ISM 製造業景況感指数、
- 80 -
・6 月の米雇用統計、非農業部門雇用
者数は前月比+22.3 万人と市場予想
(同+23.3 万人)を下回った。前月は同
+25.4 万人。失業率は 5.3%と市場予想
(5.4%)を下回った。前月は 5.5%。平均
時給は前年同月比++2.0%と市場予想
( 同 +2.3 % ) を 下 回 っ た 。 前 月 は 同
+2.3%
・5 月の米製 造業受注 、 前 月 比 ▲
1.0%と市場予想(同▲0.5%)を下回っ
た。前月は同▲0.7%。航空機を除く非
国防資本財(コア資本財)受注は同▲
0.4%
マーケット概況
7/3
(金)
【東京市場】
・債券先物は 4 営業日ぶりに反発
146.61 円 (+0.30 円)
0.480% (-0.040%)
*長期国債買入オペ(7,808 億円)
日本経済・金融
・14 年度決算概要(見込み)、国の税
収は 53.9 兆円と補正予算時の見積もり
を約 2.2 兆円上回った。剰余金は 1.6
兆円
海外経済・金融
・中国株下落 、上海総合は前日比▲
5%超の大幅安
前日の米債高や国債買入オペを受け、買われた
・日経平均は 4 営業日続伸
20,539.79 円 (+17.29 円)
週末のギリシャ国民投票が緊縮策の受け入れを示すと
の思惑が相場の支えとなった
・円は 3 営業日ぶりに反発
123.15 円 (-0.33 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:休場(米独立記念日の振り替え)
・NY ダウ:休場(米独立記念日の振り替え)
・NY 円:114.80 円 (+0.30 円)
7/4
(土)
・中国政府 、証券会社による市場安定
7/5
(日)
7/6
(月)
・群馬県知事選挙、無所属で現職の大
沢正明氏が 3 選
【東京市場】
・債券先物は続伸
・内閣支持率 、49%と前回調査(53%)
から低下(読売新聞)
146.86 円 (+0.25 円)
0.465% (-0.015%)
・内閣支持率 、42%と前回調査(45%)
ギリシャ国民投票の結果を受け、買われた
・5 月の景気動向指数(速報値)、一致
・日経平均は 5 営業日ぶりに反落
20,112.12 円 (-427.67 円)
ギリシャ国民投票の結果を受け、売られた
・円は続伸
122.63 円 (-0.52 円)
ギリシャ国民投票の結果を受け、円買い・ドル売りに
から低下(毎日新聞)
化基金設立や IPO 一時中断等の株価
対策を発表
・ギリシャ国民投票 、債権団が求めた財
政緊縮策を否決(反対:61.46%、賛成
38.54%)。チプラス・ギリシャ首相は「ギリシャ
国民はヨーロッパと持続可能な支援策を
交渉する力を与えてくれた」と述べ、EU
側との支援協議再開の意向を示した
・ ECB 、 キ ゙ リ シ ャ 向 け 緊 急 流 動 性 融 資
(ELA)での担保ヘアカット率調整を発表
・6 月の米 ISM 非製造業景況感指
数、56.0 と市場予想(56.4)を下回った。
前月は 55.7
CI は前月比▲1.8pt の 109.2。先行 CI
は同▲0.2pt の 106.2。基調判断は「足
踏みを示している」に下方修正
・ラガルド IMF 専務理事、声明で状況を
・日銀地域経済報告(さくらレポート) 、
・バルファキス・ギリシャ財務相 、辞任を表
北陸の景気判断を引き上げ。他 8 地域
は据え置き
明。「(自身が辞任すれば)支援交渉が
まとまりやすくなるとチプラス首相が判断
した」
【ニューヨーク市場】
注視しており、ギリシャからの依頼があれ
ば、支援をする用意がある」
・米国債 10 年:2.28% (-0.10%)
ギリシャ国民投票の結果を受け、買われた
・NY ダウ:17,683.58 ドル (-46.53 ドル)
ギリシャ国民投票の結果を受け、売られた
・NY 円:122.50 円 (-0.25 円)
- 81 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
マーケット概況
7/7
(火)
【東京市場】
・債券先物は 3 営業日続伸
146.91 円 (+0.05 円)
0.450% (-0.015%)
*10 年物価連動国債入札(20 回) 無難
日本経済・金融
・14 年度地方税収、前年度比+1.7 兆
海外経済・金融
・5 月の米貿易収支、▲419 億ドルの赤
円の 38.4 兆円規模に、と日本経済新聞
が伝えた
字と市場予想(▲427 億ドル)を上回っ
た。前月は▲407 億ドル
・5 月の国際収支(速報)、経常収支は
・中国株下落 、上海総合は前日比▲
+1 兆 8,809 億円の黒字と市場予想(+1
兆 5,702 億円)を上回った。前月は+1 兆
3,264 億円
219.933pt。中国当局による対策にも関
わらず、急落局面が続いた
(クーポン 0.1%/応札倍率 2.33 倍)
ギリシャ問題の先行き不透明感や物価連動国債入札の
無難通過が支えに
・日経平均は反発
20,376.59 円 (+264.47 円)
前日に大きく下げた反動が出た
・円は 3 営業日ぶりに反落
122.72 円 (+0.09 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.26% (-0.02%)
ギリシャ支援協議に目立った進展はなく、買われた
・NY ダウ:17,776.91 ドル (+93.33 ドル)
朝方は大きく下げたが、その後は割安感から買い戻さ
れた
・NY 円:122.50 円 (0.00 円)
7/8
(水)
【東京市場】
・債券先物は 4 営業日続伸
147.35 円 (+0.44 円)
0.415% (-0.035%)
*長期国債買入オペ(12,018 億円)
前日の米債高を受け、買われた。中国株の下落やそれ
に伴う日経平均の大幅安も買いを促した
・日経平均は反落
19,737.64 円 (-638.95 円)
中国株の下落を受け、売られた。約3週間ぶりの2万円
割れ
・円は反発
・6 月の貸出・預金動向(速報)、銀行・
信金計の貸出は前年同月比+2.5%。
前月は同+2.6%
・6 月の景気ウォッチャー調査、現状判断
DI は前月比▲2.3pt の 51.0 と 2 ヵ月連
続の低下。先行き判断 DI は同▲1.0pt
の 53.5 と 7 ヵ月ぶりの低下
121.65 円 (-1.07 円)
に期間 3 年の融資を要請。週内に包括
的な改革案を示す方針も表明
・ウィリアムズ米サンフランシスコ地区連銀総
裁、講演後に記者団に対し「FRB は年
末までに 2 度の利上げを実施する必要
がある。利上げに踏み切った後に市場
で予見不能な動きが出るとは予想して
いない」
・FOMC 議事録(6/16・17 開催) 、「ギ
中国株の下落を受け、リスク回避目的の円買い・ドル売り
が優勢となった
リシャと債権団が見解の相違を解消でき
ない場合、ユーロ圏の金融市場が混乱し
たり、その影響が米国に飛び火したり
する恐れがある」
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.19% (-0.07%)
中国株の下落を受け、買われた
・NY 証券取引所で一時システムダウン、
当局はテロの可能性を否定
・NY ダウ:17,515.42 ドル (-261.49 ドル)
中国株の下落を受け、売られた
・NY 円:120.65 円 (-1.85 円)
中国株の下落を受け、リスク回避目的の円買い・ドル売り
が続いた
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
・ギリシャ政府 、欧州安定メカニズム(ESM)
- 82 -
マーケット概況
7/9
(木)
【東京市場】
・債券先物は 5 営業日ぶりに反落
147.15 円 (-0.20 円)
0.445% (+0.030%)
*30 年利付国債入札(47 回) 低調
(クーポン 1.6%/応札倍率 2.21 倍/テール 41 銭)
30年国債入札の低調な結果や株高を受け、売られた
・日経平均は反発
19,855.50 円 (+117.86 円)
中国株の反発を受け、買い戻された
・円は続伸
121.30 円 (-0.35 円)
日本経済・金融
・5 月の機械受注、船舶・電力を除く民
海外経済・金融
・6 月の中国消費者物価指数、前年
需 は 前 月 比 +0.6 % と 市 場 予 想 ( 同 ▲
4.9%)を上回った。前月は同+3.8%
同月比+1.4%と市場予想(同+1.3%)を
上回った。前月は同+1.2%
・6 月のマネーストック(速報)、M2 は前年同
・IMF 経済見通し、15 年の世界成長率
月比+3.8%と市場予想(同+4.0%)を下
回 っ た 。 前 月 は 同 +4.1 % 。 M3 は 同
+3.1%と市場予想(同+3.3%)を下回っ
た。前月は同+3.3%
見通しを下方修正(15 年:+3.3%〔15 年
4 月時点:+3.5%〕)。16 年は+3.8%で
据え置き
・日銀、7 月展望レポート中間評価で 15 年
度 CPI 見通しを+0.8%に据え置きへ。
15 年度経済成長率見通しは+1%台後
半に引き下げへ(従来は+2.0%)、と日
本経済新聞が伝えた
・ギリシャ政府、財政改革案を提示。5 日
の国民投票でいったん拒否した EU 側
の要求案に沿った内容。見返りに 535
億ユーロの資金支援を求めた
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.32% (+0.13%)
中国株の反発を受け、売られた
・NY ダウ:17,548.62 ドル (+33.20 ドル)
中国株の反発を受け、買い戻された
・NY 円:121.30 円 (+0.65 円)
中国株の反発を受け、円売り・ドル買いが優勢に
7/10
(金)
【東京市場】
・債券先物は反発
147.23 円 (+0.08 円)
0.435% (-0.010%)
*長期国債買入オペ(7,814 億円)
国債買入オペや株安が支えとなった
・5 月の国内企業物価指数、前年同
・イエレン FRB 議長、講演で「年内のいず
月比▲2.4%と市場予想(同▲2.2%)を
下回った。前月は同▲2.1%
れかの時点で FF 金利を引き上げ、金
融政策の正常化プロセスを開始すること
が妥当になると想定している」「経済やイ
ンフレ動向は引き続きかなり不透明な状
況にあることを強調したい」
・日銀、15 日の金融政策決定会合で 15
年度成長率見通しを 1%台後半に引き
下げへ、と英通信社ロイターが伝えた
・日経平均は反落
19,779.83 円 (-75.67 円)
週末にギリシャ支援協議を控え、小幅安で方向感のない
展開
・円は 3 営業日ぶりに反落
122.19 円 (+0.89 円)
海外市場の円売り・ドル買いの流れを引き継いだ
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.40% (+0.08%)
ギリシャ政府による財政改革案の提示を受け、売られた
・NY ダウ:17,760.41 ドル (+211.79 ドル)
ギリシャ政府による財政改革案の提示を受け、買われた
・NY 円:122.70 円 (+1.40 円)
ギリシャ政府による財政改革案の提示を受け、円売り・ド
ル買いの流れが強まった
7/11
(土)
・日銀、15 日の金融政策決定会合で 15
年度成長率見通しを 1%台後半に引き
下げへ、と産経新聞が伝えた
・ギリシャ議会 、政府提示の財政改革案
を賛成多数で承認
・政府、7 月公表の内閣府『『中長期の経
済財政に関する試算』で 20 年度 PB を
黒字へ、と産経新聞が伝えた
7/12
(日)
・ユーロ圏財務相会合、ギリシャ支援協議
で合意に至らず
・ユーロ圏首脳会議 、ギリシャ政府に対し
15 日夜までに財政改革案を法制化す
るように要求。「一時的なユーロ離脱」にも
言及。EU 首脳会議は取り止め、と英通
信社ロイター等が伝えた
- 83 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
マーケット概況
7/13
(月)
日本経済・金融
【東京市場】
海外経済・金融
・6 月の中国貿易統計、輸出額は前年
同月比+2.8%と市場予想(同+1.0%)を
上回った。前月は同▲2.5%。輸入額は
同▲6.1%と市場予想(同▲15.5%)を大
きく上回った。前月は同▲17.6%
・債券先物は反落
147.13 円 (-0.10 円)
0.445% (+0.010%)
株高や国債買入オペがなかったことが重しに
・ユーロ圏首脳会議、ギリシャ向け第 3 次
・日経平均は反発
金融支援(3 年間で 820 億ユーロ)に向け
た協議開始に全会一致で合意。ギリシャ
が 15 日までに財政改革策を法制化す
ることが条件
20,089.77 円 (-309.94 円)
中国株の上昇やユーロ首脳会議への期待感から、買わ
れた。7月7日以来、4営業日ぶりに2万円台を回復
・円は続落
123.32 円 (+1.13 円)
株価の大幅高を受け、円売り・ドル買いが進んだ
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.45% (+0.05%)
ユーロ圏首脳会議の結果を受け、売られた
・NY ダウ:17,977.68 ドル (+217.27 ドル)
ユーロ圏首脳会議の結果を受け、買われた
・NY 円:123.35 円 (+0.65 円)
ユーロ圏首脳会議の結果を受け、リスク回避目的の円買
い・ドル売りが巻き戻された
7/14
(火)
【東京市場】
・債券先物は続落
146.98 円 (-0.15 円)
0.455% (+0.010%)
*国債流動性供給入札(第 193 回)
(募入最大利回較差:+0.023%)
前日の欧米債券安や株高を受け、売られた
・日経平均は続伸
20,385.33 円 (+295.56 円)
・内閣支持率 、39%と前回調査(39%)
から横ばい(読売新聞)
・日銀政策委員会・金融政策決定会
合(1 日目)
・政府 16 年度成長率見通し、実質
+2.9%(2 月比+0.2pt)、名目+1.7%(同
据え置き)程度へ、と日本経済新聞が
伝えた
前日の欧米株高を受け、買われた
・円は 3 営業日続落
123.45 円 (+0.13 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.40% (-0.05%)
6月米小売売上高の下振れを受け、買われた
・NY ダウ:18,053.58 ドル (+75.90 ドル)
6月米小売売上高の下振れがFRBによる早期利上げ
観測の後退につながった
・NY 円:123.35 円 (0.00 円)
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 84 -
・6 月の米小 売売上高 、 前 月 比 ▲
0.3%と市場予想(同+0.3%)を大きく下
回った。前月は同+1.0%。自動車を除
く ヘ ゙ ー ス は 同 ▲ 0.1 % と 市 場 予 想 ( 同
+0.5 %)を 大 きく 下回った 。前 月 は同
+0.8%
・イラン核協議、欧米など 6 ヵ国とイランの
間で最終合意
マーケット概況
7/15
(水)
【東京市場】
・債券先物は 3 営業日ぶりに反発
147.02 円 (+0.04 円)
0.450% (-0.005%)
前日の米債高を受け、買われた
・日経平均は 3 営業日続伸
20,463.33 円 (+78.00 円)
欧米株高を受け、買われた
・円は 4 営業日続落
123.52 円 (+0.07 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.35% (-0.05%)
イエレンFRB議長証言や良好な経済指標が売り材料とな
るも、ギリシャの財政改革法案の採決期限を迎え、改め
てリスク回避目的の買いが出た
・NY ダウ:18,050.17 ドル (-3.41 ドル)
イエレンFRB議長証言が重しに。ギリシャの財政改革法案
の採決期限を迎えたことで様子見ムードも広がった
・NY 円:123.70 円 (+0.35 円)
日本経済・金融
・日銀政策委員会・金融政策決定会
合、金融政策の現状維持を決定(賛成
8 反対 1)。「マネタリーベースを年間約 80 兆
円増加させる」との金融市場調節方針
を継続。資産買入方針にも変更なし。
木内登英審議委員は反対票を投じ、マ
ネタリーベースの増加ペースを年間約 45 兆
円とするなどの議案を提出 (反対多数
で否決)。審議委員のコア CPI 見通し(中
央値)は 15 年度:+0.7%(4 月時点:
+0.8%)、16 年度:+1.9%(4 月時点:
+2.0%)、17 年度:+1.8%(4 月時点:
+1.9%)。実質成長率見通しは 15 年度
を+1.7%(4 月時点:2.0%)に下方修
正。16・17 年度は各々+1.5%、+0.2%
に据え置き
・黒田東彦日銀総裁、記者会見で「4-6
月の成長率は 1-3 月に比べるとかなり
低下する可能性がある。しかし、この若
干の弱い状況が 7 月以降ずっと続くと
は全く見ていない。一種の足元調整と
して 15 年度の成長率がやや下振れし
たということ」
海外経済・金融
・4-6 月期の中国実質 GDP、前年同
期比+7.0%と市場予想(同+6.8%)を上
回った。前期は同+7.0%
・6 月の中国鉱工業生産、前年同月
比+6.8%と市場予想(同+6.0%)を大き
く上回った。前月は同+6.1%
・6 月の米生産者物価指数、前月比
+0.4%と市場予想(同+0.2%)を上回っ
た。前月は同+0.5%。コアは同+0.3%と
市場予想(同+0.1%)を上回った。前月
は同+0.1%
・7 月の米ニューヨーク連銀製造業景気
指数、+3.86 と市場予想(+3.00)を上回
った。前月は▲1.98
・6 月の米鉱工業生産指数、前月比
+0.3%と市場予想(同+0.2%)を上回っ
た。前月は同▲0.2%。設備稼働率は
78.4%と市場予想(78.1%)を上回った。
前月は 77.7%
・米ベージュブック、総括判断は「5 月中旬
から 6 月に全 12 地区で経済活動拡大」
・イエレン FRB 議長、下院金融サービス委
員会で「経済が予想通り前進していけ
ば、年内いずれかの時点で FF レートの
誘導目標引き上げが適切になる可能
性が高い」
・ギリシャ議会、金融支援を受ける条件と
なる財政改革法案を可決
7/16
(木)
【東京市場】
・債券先物は続伸
147.12 円 (+0.10 円)
0.440% (-0.010%)
*5 年利付国債入札(124 回) 順調
(クーポン 0.1%/応札倍率 3.20 倍/テール 1 銭)
前日の米債高や5年国債入札の順調な結果を受け、
買われた
・日経平均は 4 営業続伸
20,600.12 円 (+136.79 円)
ギリシャ議会が財政改革法案を可決したことを受け、買
われた
・円は 5 営業日続落
123.92 円 (+0.40 円)
・7 月の日銀金融経済月報、15 年 1-3
月期の需給ギャップを+0.1%と推計。
10-12 月期の推計(▲0.1%)から改善。
14 年 1-3 月期以来、1 年ぶりのプラス。
景気判断は「緩やかな回復を続けてい
る」に据え置き。物価の現状・先行判断
も据え置き。「消費者物価の基調的な
変動」として新たに「除く生鮮食品・エネル
ギー」ベースの CPI を掲載
・16 年度概算要求基準、特別枠を 4
兆円前後とする方向、と日本経済新聞
等が伝えた
・安全保障関連法案 、衆院本会議で
可決
【ニューヨーク市場】
・ギリシャ議会、金融支援を受ける条件と
なる財政改革法案を可決
・EU 、ギリシャ議会での財政改革法案の
可決を受け、ギリシャに対して 70 億ユーロ
のつなぎ融資を行うことで合意
・ECB 理事会、金融政策の現状維持を
決定。主要政策金利であるリファイナンス
金利を 0.05%に据え置いた。併せてギ
リシャの銀行の資金繰りを支える緊急流
動性支援(ELA)の上限を引き上げると
発表
・ドラギ ECB 総裁、記者会見で「我々は
常に、ギリシャがユーロ圏のメンバーであり続
けるという前提で行動してきた。これに
ついて疑問が生じたことは一度もない」
・米新規失業保険申請件数、28.1 万
・米国債 10 年:2.35% (0.00%)
人と市場予想(28.5 万人)を下回った。
前週は 29.6 万人
動意に乏しい展開
・NY ダウ:18,120.25 ドル (+70.08 ドル)
ギリシャ議会が財政改革法案を可決したことを受け、買
われた
・7 月の米フィラデルフィア連銀製造業景
気指数、+5.7 と市場予想(+12.0)を大き
・NY 円:124.10 円 (+0.40 円)
く下回った。前月は+15.2
- 85 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
マーケット概況
7/17
(金)
【東京市場】
・債券先物は 3 営業日続伸
147.32 円 (+0.20 円)
0.420% (-0.020%)
*国債買入消却(601 億円)
*長期国債買入オペ(11,813 億円)
海外の注目イベントを通過し、日銀の国債買入オペによ
る月内の需給引き締まりが意識された
・日経平均は 5 営業日続伸
20,650.92 円 (+50.80 円)
日本経済・金融
・内閣府『中長期の経済財政に関す
る試算』、20 年度 PB 赤字は 6 兆円程
度と 2 月時点(9.4 兆円)から縮小へ、と
日本経済新聞が伝えた
・政府 7 月月例経済報告、景気判断
海外経済・金融
・フィッシャー FRB 副議長、パネル討議で
「米国のインフレはまだ低過ぎる。我々は
2%へ戻す必要がある」
・6 月の米消費者物価指数、前月比
を据え置きへ、と日本経済新聞が伝え
た
+0.3 % と 市 場 予 想 ど お り 。 前 月 は 同
+0.3%。コアは同+0.2%と市場予想どお
り。前月は同+0.2%
・総務省 、CPI15 年基準への改定案を
・6 月の米住宅着工件数、年率換算
公表。追加 33 品目、廃止 32 品目など
117.4 万戸と市場予想(同 110.6 万戸)を
大きく上回った。前月は同 106.4 万戸
前日の欧米株高が好感された
・7 月の米消費者信頼感指数(ミシガン
大)(速報値)、93.3 と市場予想(96.0)を
・円は 6 営業日続落
124.00 円 (+0.08 円)
下回った。前月は 96.1
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.34% (-0.01%)
良好な米経済指標が重しとなったが、低インフレ環境の
長期化を見越した買いが入った
・NY ダウ:18,086.45 ドル (-33.80 ドル)
原油安を受け、売られた
・NY 円:124.05 円 (-0.05 円)
7/19
(日)
・ 内 閣 支 持 率 、 37.7 % と 前 回 調 査
(47.4%)から低下(共同通信)
・内閣支持率 、35%と前回調査(42%)
から低下(毎日新聞)
7/20
(月)
【東京市場】
休場(海の日)
・内閣支持率 、37%と前回調査(39%)
から低下(朝日新聞)
【ニューヨーク市場】
ォックス・ビジネス・ネットワークのインタビューで
「現時点で、9 月利上げの確率は 50%
以上あると考えている」
・米政府、現在空席の FRB 理事にミシガ
・米国債 10 年:2.37% (+0.03%)
ン大教授のキャサリン・ドミンゲス教授を指名
ブラード米セントルイス地区連銀総裁の発言が重し
・NY ダウ:18,100.41 ドル (+13.96 ドル)
一部米企業の四半期決算が好感された
・NY 円:124.25 円 (+0.20 円)
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
・ブラード米セントルイス地区連銀総裁、フ
- 86 -
マーケット概況
7/21
(火)
【東京市場】
・債券先物は 4 営業日続伸
147.39 円 (+0.07 円)
0.420% (0.000%)
*長期国債買入オペ(4,712 億円)
前営業日に引き続き好需給が意識された
・日経平均は 6 営業日続伸
20,841.97 円 (+191.05 円)
前日の欧米株高や円安を受け、買われた
・円は 7 営業日続落
124.38 円 (+0.38 円)
日本経済・金融
・ 内 閣 支 持 率 、 39.3 % と 前 回 調 査
(46.1%)から低下(産経新聞)
・日銀金融政策決定会合議事要旨
(6/18・19 開催)、「(金融政策決定会
海外経済・金融
・中国株、上海総合は 4 営業日続伸し、
7 月 1 日以来初めて終値で 4,000 ポイン
トを回復。中国政府による一連の株価
対策で投資家心理が持ち直した
合の回数減について)近年、主要中央
銀行で主流となってきており、適切なも
の」(多くの委員)、「このところ長期金利
が一時 0.5%台まで上昇する場面があ
るなど、量的・質的緩和の効果は低減
してきている可能性がある」(複数の委
員)
・6 月の公社債投資家別売買高、外
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.32% (-0.05%)
米株安を受け、買われた
・NY ダウ:17,919.29 ドル (-181.12 ドル)
米大手企業の四半期決算が嫌気された
・NY 円:123.85 円 (-0.40 円)
国人は+4,385 億円と 12 ヵ月連続の買
い越し。都銀は+131 億円と 12 ヵ月ぶり
の買い越し。地銀・第 2 地銀は▲5,304
億円と 2 ヵ月ぶりの売り越し。信託銀行
は+7,661 億円と 2 ヵ月連続の買い越
し。生損保は+4,241 億円と 37 ヵ月連続
の買い越し
・政府 7 月月例経済報告、景気判断
を「緩やかな回復基調が続いている」に
据え置き。生産を「このところ一部に弱
さがみられるものの、持ち直している」
から「このところ横ばいとなっている」に
下方修正。先行きについては「原油価
格下落の影響」を削除。海外経済の下
振れリスクについて「中国経済をはじめと
した」という表現を追加
・英格付け会社 、「消費税 10%見送り
は(日本国債の)格付け評価にマイナス」と
指摘
・黒田東彦日銀総裁 、タイ・バンコクでの
7/22
(水)
【東京市場】
・債券先物は 5 営業日続伸
147.51 円 (+0.12 円)
0.415% (-0.005%)
*20 年利付国債入札(153 回) 順調
(クーポン 1.3%/応札倍率 3.09 倍/テール 5 銭)
20年国債入札の順調な結果や株安を受け、買われた
・日経平均は 7 営業日ぶりに反落
講演で「物価上昇の伸びが加速しつつ
目標を達成すると見込まれる。現時点
で一段の量的緩和は必要ないと判断さ
れるが、必要であれば量的緩和の拡大
を躊躇しない」
・内閣府年央試算、実質成長率見通し
は 15 年度+1.5%、16 年度+1.7%
・内閣府『中長期の経済財政に関す
る試算』、「経済再生ケース」の PB 赤字
(GDP 比)は 18 年度 9.5 兆円(1.7%)、20
年度 6.2 兆円(1.0%)。従来の試算から
改善も、20 年度黒字化の政府目標の
達成は見込めず
・6 月の米中古住宅販売件数、年率
換算 549 万戸と市場予想(同 540 万戸)を
上回った。前月は同 532 万戸
・NY 原油先物価格、09 年 4 月以来約
6 年ぶりに終値で 1 バレル=50 ドルを下回
り、49.19 ドルで引けた
20,593.67 円 (-248.30 円)
前日の欧米株安を受け、売られた
・円は 8 営業日ぶりに反発
123.74 円 (-0.64 円)
利益益確定や持ち高調整目的の円買い・ドル売りが優
勢になった
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.32% (0.00%)
良好な米経済指標が重しも、米株安・原油安が支えに
・NY ダウ:17,851.04 ドル (-68.25 ドル)
米IT大手の四半期決算が嫌気された
・NY 円:123.90 円 (+0.05 円)
- 87 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
マーケット概況
7/23
(木)
【東京市場】
・債券先物は 6 営業日ぶりに反落
147.45 円 (-0.06 円)
0.410% (-0.005%)
*長期国債買入オペ(11,810 億円)
日本経済・金融
・6 月の貿易統計(通関ベース)、▲690
億円の赤字と市場予想(+458 億円)を
下回った。前月は▲2,172 億円
海外経済・金融
・IMF 年次審査報告 、日銀追加緩和
の必要性等を指摘
高値警戒感と円安・株高が重石に
・日経平均は反発
20,683.95 円 (+90.28 円)
前日に大幅安となった反動から買い戻しが入った
・円は反落
123.78 円 (+0.04 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.26% (-0.06%)
米株安・原油安を受け、買われた
・NY ダウ:17,731.92 ドル (-119.12 ドル)
米大手企業の四半期決算が嫌気された
・NY 円:123.90 円 (0.00 円)
7/24
(金)
【東京市場】
・債券先物は反発
147.49 円 (+0.04 円)
0.410% (0.000%)
*国債流動性供給入札(第 194 回)
・政府、16 年度予算の概算要求基準を
・7 月の中国製造業 PMI(速報)、48.2
閣議了解。4 兆円規模の「特別枠」を設
定。歳出総額の上限は 3 年連続で設定
せず
と市場予想(49.7)を大きく下回った。前
月は 49.4
・7 月のユーロ圏総合 PMI(速報)、53.7
と市場予想(54.0)を下回った。前月は
54.2
(募入最大利回較差:▲0.008%)
前日の米債高や株安を受け、買われた
・6 月の米新築住宅販売件数、年率
・日経平均は反落
換算は 48.2 万戸と市場予想(同 54.8 万
戸)を大きく下回った。前月は同 51.7 万
戸
20,544.53 円 (-139.42 円)
前日の米株安や7月中国製造業PMIの低下を受け、売
られた
・FRB 、本来未公開である事務方の経
・円は続落
済予測をウェブに掲載していたことを発
表。15 年末の政策金利は 0.35%
123.91 円 (+0.13 円)
【ニューヨーク市場】
・米国債 10 年:2.26% (0.00%)
6月米新築住宅販売件数の減少が重しも、米株安・原
油安が支えに
・NY ダウ:17,568.53 ドル (-163.39 ドル)
米企業の業績や中国経済指標の弱さが材料視された
・NY 円:123.80 円 (-0.10 円)
※ 7 月 25 日(土)~7 月 31 日(金)分は、8 月分とともに「債券投資クォータリー」2015 年 9 月号に掲載いたします
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 88 -
お知らせ
■円 債 市 場 分 析 チームのレポート
タイトル
発行時期(原則)
債券投資デイリー
毎朝8:00頃
日
MERIT
毎夕17:15頃まで synerGy(掲示
板)
イールドカーブ・グラフ集
毎週末
債券投資ウィークリー
週
債券投資マンスリー
(ウィークリー:シナリオ特集号)
月
債券投資クォータリー
(ウィークリー:シナリオ特集号)
四
半
期
2・5・8・11月の
最終週末
マーケット・ダイアリー
半
期
4月,10月
タイトル
(月最終週末を除く)
MERIT
eメール
synerGy(掲示
板)
Webサイト
Bloomberg
冊子
毎月最終週末
(クォータリー時を除く)
発行時期
MERIT
eメール
synerGy(掲示
板)
Webサイト
Bloomberg
冊子
* 債券市場見通し
* 相場材料
* 債券先物チャート
* イールドカーブ変化
* 年限間/バタフライ/スワップ・スプレッド
ほか
*
*
*
*
長期金利シナリオ、債券トピック分析
景気シナリオ、経済トピック分析
ポリシーウォッチ
債券需給分析
* 向こう1ヵ月の内外金融経済見通し
* 債券・金融・経済トピック分析
* 過去1カ月のマーケット・ダイアリーほか
* 向こう2~3年の内外金融経済展望
* 債券・金融・経済トピック分析
* 過去1カ月のマーケット・ダイアリーほか
* 年度上期/下期の内外相場動向
* 経済統計、財政・金融政策、要人発言な
どの相場材料の全記録
内 容
媒体
MERIT
eメール
synerGy(掲示
板)
JGB羅針盤
内 容
媒体
MERIT
eメール
synerGy(掲示
板)
Webサイト
* 債券市場のトピック分析
金融政策ナビゲーター
* 日銀金融政策に関するトピック分析
財政政策ナビゲーター
* 財政政策に関するトピック分析
ファンダメンタルズ・ナビゲーター
債券需給ナビゲーター
随時
MERIT
eメール
synerGy(掲示
板)
Webサイト
Bloomberg
主要経済指標に対する速報コメント、
* 景気・物価に関するトピック分析
* 債券需給に関するトピック分析
物価連動債のマーケットレビューや
* 入札直前情報・トピック分析等
物価連動債ナビゲーター
債券クオンツ・ナビゲーター
*
- 89 -
金利モデル等を利用した国債イールド
カーブのリラティブバリュー分析
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
■ 外 債 市 場 ・外 国 為 替 市 場 分 析 チームのレポート
タイトル
外債投資ウィークリー
タイトル
発行時期(原則)
週
毎週末
発行時期(原則)
* 米欧を中心とした国際経済・金融の
トピック分析
* 米国・ユーロ圏・英国の金融市場動向
* 為替市場の動向分析
内容
媒体
* 米国の金融政策、主要経済統計、
重要イベントに関する見通し・結果速報
米国債投資の視点
欧州債投資の視点
内容
媒体
MERIT
eメール
synerGy(掲示
板)
Webサイト
随時
MERIT
eメール
synerGy(掲示
板)
Webサイト
Bloomberg
外貨投資の視点
*
*
欧州その他の経済指標、金融・経済政策
イベント、金融市場動向等に関する速報
レポート
時宜に応じた為替市場の動向分析、
旬の注目材料の解説や予測などを提供
※ 各レポートのご要望、eメール/郵送先の変更等に関しましては、弊社営業担当者にお申し付け下さい
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 90 -
■Webサイト
URL(日本語版)
http://www.sc.mufg.jp/wholesale/ws_report/gb_market/index.html
- 91 -
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
■Bloomberg リサーチページ
ティッカー(日本語版)
M U F I
ティッカー(英語版)
M U F E
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
- 92 -
Appendix A
アナリストによる証明
本レポート表紙に記載されたアナリストは、本レポートで述べられている内容(複数のアナリストが関与している場合は、それぞれの
アナリストが本レポートにおいて分析している銘柄にかかる内容)が、分析対象銘柄の発行企業及びその証券に関するアナリスト個人
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内で特定の判断もしくは見解を表明する見返りとして、直接又は間接的に報酬を一切受領しておらず、受領する予定もないことをここ
に証明いたします。
開示事項
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ポートで示された投資判断に反する取引を行ったり、マーケットメーカーとなったり、又は当該証券の発行体やその関連会社に幅広い
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債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
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ます。
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レポートは、MUSI の組織上・管理上の利益相反管理制度に基づいて作成されています。同制度には投資リサーチに関わる利益相反を
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下「MUS-USA」。電話番号:+1-212-405-7000) により配布されます。MUS-USA は、United States Securities and Exchange Commission
(米国証券取引委員会)に登録された broker-dealer(ブローカー・ディーラー)であり、Financial Industry Regulatory Authority(金
融取引業規制機構、
「FINRA」)による規制を受けています(SEC# 8-43026; CRD# 19685)。本レポートが MUS-USA の米国外の関連
会社等により米国内へ配布される場合、本レポートの配布対象者は、1934 年米国証券取引所法の規則 15a-6 に基づく major U.S.
institutional investors(主要米国機関投資家)に限定されております。MUS-USA 及びその関連会社等は本レポートに言及されている
証券の引受業務を行っている場合があります。本レポートは証券の売買及びその他金融商品への投資等の勧誘を目的としたものではあ
りません。また、いかなる投資・取引についてもいかなる約束をもするものでもありません。FLOES は MUS-USA の登録商標です。
IRS Circular 230 Disclosure(米国内国歳入庁 回示 230 に基づく開示):MUS-USA は税金に関するアドバイスの提供は行っておりま
せん。本レポート内(添付文書を含む)の税金に関する記述は MUS-USA 及び関連会社以外の個人・法人が本レポートにおいて研究
する事項に関する勧誘・推奨を行う目的、又は米国納税義務違反による処罰を回避する目的で使用することを意図したものではなく、
これらを目的とした使用を認めておりません。
日本: 本レポートが日本において配布される場合、その配布は MUFG のグループ会社であり、金融庁に登録された金融商品取引業者
である MUMSS(電話番号:03-6742-6750)が行います。
シンガポール: 本レポートがシンガポールにおいて配布される場合、
本レポートは MUFG のグループ会社である Mitsubishi UFJ Securities
(Singapore), Limited (以下「MUS-SPR」。電話番号:+65-6232-7784)とのアレンジに基づき配布されます。MUS-SPR はシンガポール
政府の承認を受けた merchant bank であり、Monetary Authority of Singapore(シンガポール金融管理局)の規制を受けています。本
レポートの配布対象者は、Financial Advisers Regulation の Regulation 2 に規定される institutional investors、 accredited investors、
expert investors に限定されます。本レポートは、これらの投資家のみによる使用を目的としており、それ以外の者に対して配布、転
送、
交付、頒布されてはなりません。本レポートが accredited investors 及び expert investors に配布される場合、MUS-SPR は Financial
Advisers Act の次の事項を含む一定の事項の遵守義務を免除されます。第 25 条:一定の投資商品に関してファイナンシャル・アドバ
イザーが全ての重要情報を開示する義務、第 27 条:ファイナンシャル・アドバイザーが合理的な根拠に基づいて投資の推奨を行う義
務、第 36 条:ファイナンシャル・アドバイザーが投資の推奨を行う証券に対して保有する権利等について開示する義務。本レポート
を受領されたお客様で、本レポートから又は本レポートに関連して生じた問題にお気づきの方は、MUS-SPR にご連絡ください。
香港: 本レポートが香港において配布される場合、本レポートは MUFG のグループ会社である Mitsubishi UFJ Securities (HK) Limited
(以下「MUS-HK」。電話番号:+852-2860-1500)により配布されます。MUS-HK は Hong Kong Securities and Futures Ordinance に
基づいた認可、及び Securities and Futures Commission(香港証券先物取引委員会;Central Entity Number AAA889)の規制を受けて
います。本レポートは Securities and Futures Ordinance により定義される professional investor を配布対象として作成されたもので
あり、この定義に該当しない顧客に配布されてはならないものです。
その他の地域: 本レポートがオーストラリアにおいて配布される場合、MUS-HK 又は MUS-SPR により配布されています。MUS-HK
は Australian Securities and Investment Commission (ASIC) Class Order Exemption CO 03/1103 に基づき、Corporations Act 2001 が
定める金融サービスの提供者によるオーストラリア金融業免許の保有義務を免除されています。MUS-SPR は ASIC Class Order
Exemption CO 03/1102 により同様に義務を免除されています。本レポートはオーストラリアの Corporations Act 2001 に定義される
wholesale client のみを配布対象としております。本レポートがカナダにおいて配布される場合、本レポートは MUSI 又は MUS-USA
により配布されます。MUSI および MUS-USA は international dealer exemption の措置により次の各州において金融取引業者としての
登録を免除されています:アルバータ州、ケベック州、オンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州、マニトバ州(MUSI のみ)
。
本レポートはカナダにおける National Instrument 31-103 によって定義された permitted client のみを配布対象としております。
債券投資マンスリー 2015 年 7 月 31 日
又は本レポートは、インドネシアにおいて複製・発行・配布されてはなりません。また中国(中華人民共和国「PRC」を意味し、PRC
の香港特別行政区・マカオ特別行政区、及び台湾を除く)において、複製・発行・配布されてはなりません(ただし、PRC の適用法
令に準拠する場合を除きます)
。
本レポートは、米国、日本やその他の証券規制法規により配付を制限されている投資家、および個人投資家を対象にしたものではあり
ません。
債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。
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本レポートは MUMSS の著作物であり、著作権法により保護されております。MUMSS の書面による事前の承諾なく、本レポートの
全部もしくは一部を変更、複製・再配布し、もしくは直接的又は間接的に第三者に交付することはできません。
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(商号)
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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号
(加入協会)日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取
引業協会
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ー五年 八月 2010年 5月 日
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