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生命環境実験 II
テーマ;PCR-RFLP による細菌の同定
PCR(Polymerase Chain Reaction)は、目的の遺伝子を in vitro で増幅できる手法である。
この方法の開発により、これまで困難であった遺伝子の多くが手軽に獲得できるようにな
った。また、遺伝子多型解析(RFLP, Restriction fragment length polymorphism)は、遺伝
子を制限酵素で切断し、遺伝子に変異があった場合、その切断断片長が変わることに着目
した方法である。この方法の応用範囲は広く、遺伝子診断(鑑定)などにも応用されてい
る。
ここではこの二つの手法を組み合わせ、細菌の 16S rRNA 遺伝子を PCR で増幅し、その
PCR 産物を制限酵素で切断し、その切断パターンから細菌を同定するものである。16S
rRNA 遺伝子は細菌などの原核生物において幅広く遺伝子の情報があり、進化の系統樹の作
成などに用いられている遺伝子である。遺伝子産物は rRNA であるが、これもまた DNA
によりコードされている。下記に PCR および RFLP の概略、16SrRNA の系統樹を示す。
【実験】
1. PCR による 16S rRNA の増幅(オプション)
PCR の条件は下記の通りである。
76.5 μl
滅菌水
10×反応液
10 μl
dNTP
8
μl
Template (0.1μg /μl)
1 μl
25μM
Upper primer
2 μl
25μM
Lower primer
2 μl
Pyrobest DNA polymerase 0.5μl
100 μl
ここで、用いた Template(鋳型)は、細菌(Escherichia coli, Bacillus stearothermophilus)
の genomic DNA である(各細菌については前期の実験参照)
また、用いた primer は、Upper primer が
5’- ATT CTA GAG TTT GAT CAT GGC TCA -3’
Xba I
(24mer, Tm=53℃)
Lower primer が、
5’- ATG GTA CCG TGT GAC GGG CGG TGT GTA -3’
Kpn I
(27mer, Tm=67℃)
である。
2. 制限酵素による切断
PCR 産物は、そのままでは上記の反応液の組成が影響し、制限酵素で切断することができ
ない。そこで、いったん PCR 産物のみを回収し、制限酵素切断用の条件にあわせなくては
ならない。ここでは時間の都合上、PCR 産物をこちらで処理してある。制限酵素としては
sau3AI を用いる。この酵素は、塩基配列のうち X|GATC の位置で切断する。
制限酵素による切断の条件は、下記の通りである。この組成で37℃、1時間反応させ、
切断された DNA 断片の長さを分析する。
各 PCR 産物(処理済)
10μl
反応液(酵素含む)
10μl
計
20μl
↓
37℃、1 時間消化
↓
アガロースゲル電気泳動へ
3.アガロースゲル電気泳動による DNA 断片の分析
2 で切断した DNA 断片を、アガロースゲルを用いた電気泳動で分析する。DNA はホスホ
ジエステル結合を持つため、1 ヌクレオチドにつき負電荷をひとつ持つ。従って、試料をの
せたゲルに電気をかけると、DNA は正の方向に移動する。しかも電荷の強さは DNA の長
さに依存するため、結果として DNA の長さにより分離する。ここでは 2%ゲルにより、標
準試料と未知試料の制限酵素で切断したものを電気泳動する。そのゲルをエチジウムブロ
マイド(蛍光試薬、発がん性)で染色し、紫外線を照射して検出する。結果を比較検討し、
未知試料がどの細菌かを同定する。
2%アガロースゲルで電気泳動(緩衝液:1×TAE, 100V)
↓
エチジウムブロマイドで 20 分間染色(遮光)
↓
UV 照射下、写真撮影
試料
・ 標準 DNA(Escherichia coli, Bacillus stearothermophilus)の 16S rRNA 遺伝子
増幅断片を Sau3AI で消化した試料
・ 未知試料(1,2,3)の 16S rRNA 遺伝子増幅断片を Sau3AI で消化した試料
・
分子量マーカー
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