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地域住民 へ の 安心 ・ 安全な薬物治療を 戦略 で支 え る

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地域住民 へ の 安心 ・ 安全な薬物治療を 戦略 で支 え る
薬剤部・薬局訪問 第
回 社団法人 全国社会保険協会連合会 社会保険栗林病院
地域住民への安心・安全な薬物治療を
IT 戦略で支える
社会保険栗林病院は、昭和25年(1950年)の開設以来、地域の急性期病院と
94
して住民の信頼を得てきました。薬剤部では、一人でも多くの患者さんに薬剤
管理指導を実施し、安心・安全な薬物治療を提供するために、ITによるシステム
化を積極的に進めています。その取組みについて、薬剤部長の阿部武由先生、
係長の田村智子先生、薬剤師の西山泰史先生に伺いました。
処方チェックシステムを活用し
患者さんに服薬指導を実施
薬 剤 部 の 方 針をお聞かせくだ
さい。
● 病 院
長:前場 隆志
● 病 床 数:271床
● 外来患者数:1日平均450人
● 外来患者への処方せん発行枚数:1カ月平均4857枚
院外処方せん発行率:98.4%
● 薬 剤 師 数:6名
1
〈平成25年10月現在〉
ました
(図表1)
。
患者さんが服用する医薬品の添
付文書情報を、
「 警告」
「禁忌」
「効
能効果」
「用法用量」などの項目別
阿部 薬剤師の役割は、時代の変化
に画面表示。
とともに増大かつ高度化しています。
患者さんごとに登録したキーワー
しかし、
「 薬の有効性と安全性を確保
ド
(例:腎機能障害の既往がある患
する」
という薬剤師の行動指針は変わ
者さんの場合「腎」)が、各項目画
りありません。私はこの行動指針に基
面で強調表示。
づき、地域の方々の信頼に応えるべ
重要と思われる箇所を選択するだ
く、社会と時代に即応した安心・安全な
薬物治療の提供と効率的な業務の推
進にITを活用して取り組んでいます。
けで、服薬指導資料の作成画面に
コピー可能。
これにより、個々の患者さんへの
特 にどの ような
服 薬 指 導 の ポイント
取 組 みに注 力されて
を把握しやすくなり、
いるのでしょうか。
薬剤管理指導の資料
阿 部 安 心して服 薬
作 成 が 容 易になりま
してもらうためには、
した 。当 薬 剤 部 で は
患者さんに対して、医
「全患者さんへの薬
薬品の効能効果や使
剤管理指導」を目指し
用 法などの 詳 細な情
ており、現在、入院患
報提供が必要です。ま
者さんの約87%に薬
た、患者さんの高齢化
薬剤部長 阿部
武由 先生
剤 管 理 指 導を行うま
や多剤併用事例の増加もあり、安心
でに至っています。
の担保には相互作用や慎重投与への
また、チェックシステムの情報に加
注視が不可欠です。
え、個々の患者さんの検査値や体調
そこで、処方内容確認や服薬指導
などを薬剤師の目で詳細にモニタリ
資料作成を的確かつ効率的に行うた
ングすること
め、注射薬も含めた処方チェックシス
で、処方内容
テム(以下、チェックシステム)を導入
の 確 認をよ
開発しました。
り厳 密 に 行
チェックシステムの特徴をお教え
[社団法人 全国社会保険協会連合会 社会保険栗林病院]
香川県高松市栗林町3-5-9
クを容易に、効率的に行えるようにし
っています。
ください。
チェックシス
西山 チェックシステムは医薬品の
テムの 情 報
添付文書をベースに構築しています。
をもとに、投
薬剤師
次のような工夫をすることで、各患者
薬 に 際し 注
西山 泰史 先生
さんが服用する医薬品の相互作用や
意が必要と薬剤師が判断した場合は
慎重投与、使用上の注意などのチェッ
主治医に報告します。
図表1 添付文書を用いた処方チェックシステム
●● ●●
錠剤鑑査システムの導入により
鑑査精度と効率性が向上
①添付文書に記載されている項
目別にタブを設置している。
②各項目のタブを選択すると、患
者さんごとに事前に登録して
おいたキーワード部分が赤く表
示される。
③選択箇所が薬剤管理指導資
料作成画面にコピーされ、資
料が容易に作成できる。
●●●●
①
●●●●●
その他には、
どのような取り組み
●●●●●●
②
をされていますか。
●●●●●
●
阿部 医療安全を確保するには、調
●●●●
剤ミスの回避が絶対条件になります。
●●●●●
●●●●●●●
●●●●
●
●●●
●
調剤ミスは、患者さんに不信感を与
③●●●●●●●
えるだけでなく、直接健康被害につな
●●●●●●
がる可能性もあります。そこで、調剤
●●●●●
●●●●●●
業務に関してもシステム化を進める
ことで、鑑査精度や効率性の向上を
図表2 錠剤監査システム
装置下にある挿入口に錠剤を載せたトレーを入れ、パネル画面
の表示に従って操作すると、装置内のカメラがトレー内を撮影。
マスタ画像及び処方せんデータと薬剤が一致すれば、鑑査結
果の欄に「OK」
と表示され、撮影画像に「○」
が表示される。
図っています。
田村 1998年に、電子天秤とICチッ
プを用いた散薬鑑査システムを導入
したのが、調剤でのシステム化の第一
歩です。これを応用し、2005年、抗
がん剤調製に電子天秤を用いて重量
による鑑査を開始しました。これは、
OKと表示
個々の抗がん剤の比重をもとに容量
(mL)から重量(g)を算出し、ミキシ
ング時にシリンジを計量して抗がん
(fool proof)
を図る、
つまり、誰が行っ
バーとして、院内でのヒヤリハット事
剤 注 射 薬 の 液 量を確 認するもので
ても安全な仕組みを考えることが大
例の検討・対策に携わっています。与
す。一人でミキシングしても、出力し
切だと思います。
薬時のヒヤリハット件数をゼロに近づ
た記録紙をもとに別の薬剤師が鑑査
でき、
また記録が残せるため、追跡調
査できることも特徴です。
更なる信頼を得るよう
医薬品の安全性向上に努める
今後の抱負や展望をお聞かせく
更に、錠剤鑑査も機械による確認
けるためにも、薬剤師の病棟常駐を
進めていきたいと思います。病棟薬
剤師が看護師と協働して医薬品を鑑
査することで、ヒヤリハットの件数減
ができないかと考え、2010年、錠剤
ださい。
少に貢献できるのではないかと考え
鑑査システムを導入しました。このシ
西山 現在、病棟薬剤業務実施加算
ています。
ステムは、取り揃えた医薬
を取得すべく病棟業務に
阿部 名誉にかけても確実な処方チ
品を専用装置のカメラで
力を入れています。病棟に
ェックと調剤、誠実な服薬指導を行う
撮影し、事前登録してある
常駐し、
病棟回診やカンファ
という、強い意志とこだわりを維持す
マスタ画像及び処方せん
レンスでドクターと活発に
ることが薬剤師として肝心だと考え
データと照合させてチェッ
ディスカッションしながら
ています。その実績が評価されること
クします(図表2)
。医薬品
投与設計などに関わり、更
で、患者さんとのより深い信頼関係を
の取り違えの要因として、
に質の高い薬物治療を提
構築でき、安心・安全な薬物治療を推
類似名称や規格違いによ
薬剤部係長
供したいと考えています。
進することができます。これからは、
る思い込みや見間違いが
田村 智子 先生
また医療安全向上の面で
患者さんの視点に立って「地域の薬
あります。錠剤鑑査システムにより、
も、配合変化などの知識を持つ薬剤
物治療に貢献する」
という明確な意志
このようなミスを高い精度で防ぐこと
師が病棟で注射薬を混合調製するこ
を持った薬剤師を育成したいと思い
が可能になりました。
とは大きな意味を持ちますので、積極
ます。そして、地域の患者さんからは
阿部 どれだけ注意しても、人間は間
的に関わっていきたいと思います。
違 いを犯すものです。だからこそ 、
田村 私は現在、MRM(メディカル・
ってもらえるよう、研鑽を積んでいき
システム化によってフールプルーフ
リスク・マネジメント)委 員 会 のメン
たいと考えています。
「栗林病院でもらった薬は安心」と言
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