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鞆地区道路港湾整備事業

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鞆地区道路港湾整備事業
鞆地区道路港湾整備事業
~期待される整備効果~
広島県・福山市
1
はじめに
鞆港は、瀬戸内海のほぼ中央に位置し、その地理的・自然的条件を活かし、古くから潮待ちの港として栄
えてきました。
それぞれの時代に生活していた人々は、町の発展のために、港の整備はもちろん、埋立てや道路整備など
を行ってきました。鞆町の歴史は、そうした先人たちの知恵や努力によって創り出され、引き継がれてきた
ものです。
しかし、現代において、これまで抜本的な都市基盤整備が行われなかった昔ながらの町は、生活していく
うえで様々な問題を抱えています。
鞆地区道路港湾整備事業は、今の鞆町に暮らす人々が、安心して生活でき、そして町を活性化するための
計画であり、これまでの歴史を継承しながら、平成時代のまちづくりとして、後世に引き継いでいきたいと
考えています。
この冊子は、現在の鞆町が抱える様々な課題を整理してお伝えするとともに、本事業により期待される整
備効果を皆さまにお示しするものです。
鞆地区
2
目 次
1. 鞆町の歴史
1
1-1.鞆町の整備の変遷
1
1-2.歴史的港湾施設
2
1-3.歴史的建造物
3
2. 鞆町の現状
4
2-1.人口、産業
4
2-2.道路、港湾施設
5
3. 鞆地区道路港湾整備事業の概要
6
3-1.計画と経緯
6
3-2.整備の基本的な考え方
7
3-3.道路整備案
7
3-4.代替ルート案との比較検討結果
9
3-5.景観形成の基本的な考え方
11
4 鞆町の問題点・課題、期待される整備効果
13
4-1.鞆が抱える問題点・課題
13
4-2.道路交通
15
4-3.生活環境
29
4-4.安全・安心
31
4-5.観光
39
4-6.港湾
43
1
1. 鞆
町
の
歴
史
鞆の浦は、日本最古の歌集である『万葉集』に登場し、瀬戸内海の潮待ちの港として古くから栄えて
きました。江戸時代には朝鮮通信使が寄港し、国内ばかりでなく遠く大陸からの賓客をももてなす迎賓
都市でした。そして現在も、江戸時代からの町並みや港の風景を残す町は、年間 100 万人以上の観光客
が訪れる観光地となっています。
1-1.鞆町の整備の変遷
・江戸時代中期頃の地形図と現在の地形図を重ねると、海岸線の位置が異なります。
・このように、それぞれの時代に生活していた人々は、鞆町の発展のために、港の整備はもちろん、
埋立てや道路整備などを行ってきました。
江戸時代中期頃
沼名前神社蔵(元禄~宝永年間頃と推定)
江戸時代後期頃
現在の地形図に重ねると、江戸時代中期頃の海岸線は、青線の位置にあ
ったと考えられます。
※左2枚の古図は、南を上にして描かれていますが、現在の地形図
に馴染むよう回転させています。
個人蔵(文化年間頃と推定)
1
1-2.歴史的港湾施設
・鞆港には、近世の港湾施設である波止・雁木・常夜燈・焚場・船番所がセットで残っています。
・この5点セットが全て残っているのは日本中で鞆だけと言われています。
・しかし、近年では一部施設には老朽化等により機能が低下しているものがあり、必要に応じて保存・
修復などの措置を講じていく必要があります。
2
1-3.歴史的建造物
・古くから潮待ちの港として栄えた鞆には、かつての繁栄を偲ばせる町屋や浜蔵が数多く残ってい
ます。
・特に、保存予定地区内には、中世の町割を基盤として、江戸時代中期から明治、大正、昭和戦前
の各時代を代表する多様な建築物が、まとまりをもって残り、雁木や常夜燈などの港湾施設と調
和して、歴史的町並みを形成しています。
鞆の歴史的建造物は、市民のかけがえのない文化遺産であり、貴重な文化財であることから、
伝統的建造物等に定め、住民の理解と協力を得ながら、修理・復旧などによる保存に努めてい
く必要があります。
しかしながら、これらの歴史的建造物は、老朽化が著しいため、代替道路の整備などにより、
現在の都市計画道路関江の浦線(W=7m)の変更を行い、重要伝統的建造物群保存地区の選定を
受け、国の補助を受けるなどしながら、歴史的町並みの保存に取り組む必要があります。
①岡本亀太郎本店
江戸時代
②太田家本宅(重文)
江戸時代中期~後期
③平野屋商店
江戸時代後期~昭和戦前
④入江豊三郎本店
明治時代
3
2.
鞆
町
の
現
状
2-1.人口、産業
・人口は、福山市全体では増加傾向にある一方で鞆町は減少傾向にあり、2006 年(平成 18 年)では
5 千人近くにまで減少し、この 30 年間で半減しています。
・また、世帯数も減少が続き、若者世代の流出、高齢世帯の増加が懸念されています。
・65 歳以上の高齢者が占める人口割合は、市全体の 2 倍近い割合となっており、その増加傾向も市全
体に比べて顕著になっています。
・児童数は、1975 年(昭和 50 年)には 1,000 人近くいましたが、現在ではピーク時の約 2 割にまで
激減しています。
・漁業、商業、工業いずれも事業所数、従業員数、売上ともに減少傾向にあります。また、入込み観
光客数も鞆町は伸び悩んでいます。
人口・世帯数が減少し、少子高齢化が急速に進んでいます
鞆町の人口・世帯数
( 人,世帯)
鞆町の高齢化率
(%)
400,000
増加傾向
35.0
福山市全体の人口
350 ,000
40,000
35,000
鞆町 65 歳以上
30.0
30,000
300,000
25.0
250 ,000
20.0
200 ,000
福山市全体の世帯数
100 ,000
5.0
0
12,000
10,000
20,000
福山市全体 65 歳以上
1970
1975
1980
5
1 990
198
減少傾向
1995
8,000
2000
15,000
鞆町 75 歳以上
10,000
5,000
10.0
50,0 00
0
1,000
福山市全体 75 歳以上
1975
1980
1985
減少傾向
1990
1995
2000
2005 (年)
1975
1980
1985
1990
2000
2005 (年)
鞆小学校
500
0.0
2005 (年)
福山市全体
25,000
15.0
150 ,000
鞆町の小学校児童数
(人)
45,000
40.0
450 ,000
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 (年)
0
【資料】住民基本台帳
鞆町の人口
4,000
1995
※福山市全体:合併前の旧福山市の数値
【資料】学校基本調査
6,000
鞆町の世帯数
2,000
0
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005 (年)
【資料】住民基本台帳
産業全体が低迷しています
鞆町の漁業経営体数
鞆町の事業所数、従業者数、製造品出荷額
(億円)
(事業所,人)
1,800
(経営体数)
1,000
300
減少傾向
1,600
800
事業所数
従業者数
出荷額
1,400
250
福山市全体
1,200
200
600
1,000
150
800
400
600
減少傾向
200
100
400
50
鞆町
200
01968
1973
1978
1983
1988
1993
0
2003 (年)
1998
1982
1987
1992
1997
【資料】漁業センサス
800
店舗数
従業者数
販売額
減少傾向
600
-0
(年)
【資料】工業統計調査
鞆町の商店数、従業者数、年間販売額
(店舗,人)
2002
鞆町の入込み観光客数
(億円)
(千人)
200
4,500
4,000
150
3,500
福山市全体
3,000
2,500
400
100
200
50
2,000
1,500
鞆町
1,000
横ばい傾向
500
0
1982
1985
1988
1991
1994
1997
1999
-0
2002 (年)
【資料】商業統計調査
4
0
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005 (年)
【資料】広島県入込観光客の動向
2-2.道路、港湾施設
・鞆町の幹線道路として、主要地方道福山鞆線及び鞆松永線がありますが、市街地内の鞆松永線
で未改良区間があり、通行の大きな支障となっています。
・また、町内には市道が 51 路線認定されていますが、昔ながらの町並みが残る鞆町ゆえに幅員
4m前後と狭小であり、また、部分的に狭くなっていたり、隅切りが無いため曲がれないなど
の状況があちらこちらで存在しています。
・護岸は、高さ不足が原因で、高潮時に浸水などの問題に直面しています。
・漁業関連施設の不足や老朽化などにより、安全で効率的な漁業活動を行うことができません。
鞆町の幹線道路
道路幅員
※高潮に対して高さが確保されているか否か
は、既往最高潮位CDL+4.96mを基準として
います。
※高さは、港湾施設台帳、海岸保全施設調書を
ベースにしています。
港湾施設の状況
5
3.
鞆地区道路港湾整備事業の概要
3-1.計画と経緯
鞆地区道路港湾整備事業の計画と経緯
1983 年 12 月
(昭和 58 年)
1990 年 7 月
(平成 2 年)
1992 年 2 月
(平成 4 年)
~
1993 年 2 月
(平成 5 年)
1995 年 1 月
(平成 7 年)
1995 年 3 月
(平成 7 年)
1995 年 10 月
(平成 7 年)
福山港地方港湾審議会
福山港港湾計画において鞆地区の計画を策定
約 4.6ha を埋立ててふ頭用地、都市機能用地、道路用地を整備する
広島県文化財保護審議会
答申:歴史的景観及び自然景観に配慮すること
埋立ては、常夜燈、雁木等を現状保存、埋立ての縮小を検討すること
架橋部は、景観上トンネル案を再検討すること
鞆地区道路港湾計画検討委員会
埋立て橋梁案、埋立て沈埋トンネル案、山側トンネル案のうち埋立て橋梁案で整備を図る
・湾の形状を損なわないよう最小限の埋立てとする(面積を 1/2 に縮小する案)
その上で、今後後世に残せる歴史的遺産となるよう十分な景観設計を行うこと
・地元住民に対して説明会を早期に開催し、計画の理解を得ること
広島県文化財保護審議会
答申:文化財保護の観点に鑑み、自然景観や歴史的景観及び歴史的建造物に配慮すること
福山港地方港湾審議会
答申:実施にあたり、鞆地区全体のまちづくりのマスタープランを検討すること。地元意見に十分配慮し、歴史的
文化遺産と調和した施設整備を図ること
鞆地区道路港湾計画検討委員会の提案(1992.2)を受け、埋立て面積を約 2.3ha に縮小
鞆地区まちづくりマスタープランの作成
福山港地方港湾審議会の答申(1995.3)を受け、鞆町全体についての総合的なまちづくりの基本方針を示す
・道路交通体系の確立…新たな土地の創出と橋梁の整備
・海上交通網再編成と港湾機能再配置…新たな土地の創出と旅客ターミナル整備 など
鞆地区道路港湾景観検討委員会
1996 年 1 月
(平成 8 年)
~
1998 年 3 月
(平成 10 年)
1998 年 5 月
(平成 10 年)
・全体コンセプトのテーマ『迎賓都市』
・文化財保護、工学の学識経験者やデザインの専門家などにより、整備計画が鞆町の景観や文化に調和したもの
となるよう検討を行う
○橋梁景観形成基本方針
・歴史的景観の伝承と新たな創造
・沖への眺望の確保
○埋立地全域の考え方
・緑のスクリーンの形成
・歴史的背景を考慮(海岸線の線形、建築物の時代性など)
・良好な水質の確保(親水公園、砂浜など)
広島県教育委員会が埋蔵文化財(焚場遺構)の確認調査結果を発表
・遺構の規模は、南北 100m以上、東西 40m以上と考えられる
・現地確認された遺構は、近世の焚場である可能性が極めて高い
福山港地方港湾審議会
2000 年 2 月
(平成 12 年)
・鞆地区道路港湾景観検討委員会(1996.1)の提案を受け、道路法線を海側に移動
・埋蔵文化財(焚場遺構)の確認調査結果(1998.5)を受け、焚場遺構を極力保存するため、埋立て面積を約 2.0ha
に縮小
港湾計画の変遷
1983 年
埋立面積約 4.6ha
1995 年
埋立面積約 2.3ha
6
2000 年
埋立面積約 2.0ha
3-2.整備の基本的な考え方
鞆地区道路港湾整備事業の計画は、道路交通・地域防災・生活環境の改善を図るとともに、
多くの文化財や歴史的建造物を有する瀬戸内海を代表する景勝地である鞆地区の観光レクリ
エーション資源を活用するため、交通機能の改善及び駐車場、フェリーふ頭、小型船だまりふ
頭等を整備することにより、「迎賓都市・鞆」としての発展を図るものです。
整備の基本的な考え方
●交通機能の整備として、円滑な交通の確保、また、生活道路から通過交通を排除することに
よって交通混雑の解消を図るため、幹線道路である県道鞆松永線を整備します。
●観光機能の整備として、観光拠点としての観光客の利便に供する駐車場等の整備を図り、交
流拠点用地を確保します。
●港湾機能の整備として、観光客及び通勤通学等の利用する旅客船ふ頭を計画し、海陸の交通
の結節点を整備します。また、漁船を中心とした小型船だまりを整備します。
●景観との調和・歴史的文化遺産の保全に配慮した整備を行います。
(景観形成の基本的な考え
方は、P.11 をご覧ください)
3-3.道路整備案
(1)鞆地区道路港湾計画検討委員会における検討結果
道路整備計画案については、鞆地区道路港湾計画検討委員会(平成 4 年~5 年)において以
下のとおり検討し、埋立て橋梁案が採用されています。
鞆地区道路港湾計画検討委員会の概要
開催日時
第 1 回:平成 4 年 2 月/第 2 回:平成 4 年 5 月/第 3 回:平成 5 年 2 月
至 福山
整備方法
比較案
①
埋立て橋梁
②
山側トンネル
③
埋立て沈埋トンネル
④
現道拡幅
概 要
鞆港内を一部埋め立て、橋梁を架け、平地区
と鞆地区を結ぶ
鞆地区西側山麓の中腹にトンネルをほりバイ
パスで田尻側と平地区側を結ぶ
鞆港内を一部埋め立て、沈埋トンネルで平地
区と鞆地区を結ぶ
現道の県道鞆松永線沿いに道路を拡幅し平地
区と鞆地区を結ぶ
山側トンネル案
鞆地区
平地区
至 沼隈
整備方法
①
埋立て橋梁
②
山側トンネル
③
埋立て沈埋
トンネル
④
現道拡幅
第1次選定
第2次選定
評価
結論
現道拡幅案
埋立て橋梁案
埋立て沈埋トンネル案
0
0.5km
特 性
・景観検討が必要
・鞆地区中心部とのアクセス性は良い
・港湾整備と一体的整備が可能
・通過交通の排除
・鞆地区中心部とのアクセス性が乏しい
・港湾、駐車場等の整備は別計画になる
・鞆地区中心部とのアクセス性は①より劣る
・側道が必要となる
・取付部において、町並みの破壊
・歴史的町並みを破壊する
・鞆地区中心部とのアクセス性は最も良い
・港湾、駐車場等の整備は別計画となる
「沈埋トンネル」案は、埋立部を活用できない、側道が必要であり鞆地区中心部とのアク
セス性に乏しい、取付部分において町並みを破壊することから、また、
「現道拡幅」案は、
沿道の歴史的町家を破壊することから、整備手法として採用し難い。よって、「埋立て橋
梁」案と「山側トンネル」案について、交通量によるルート比較を行い計画道路としての
整備手法を決定する。
「山側トンネル案」は、「埋立て橋梁案」に比べると通過交通の排除のみの案であり、市
街地内の交通混雑、安全確保には効果がない。
市街地とのアクセス性、観光客の利便性や駐車場等を、総合的に比較すれば、歴史的な景
観に変化をもたらすことになるが、鞆地区の道路の整備としては、「埋立て橋梁案」が地
域の活性化や生活環境の整備に効果が大と考えられる。
埋立て橋梁案で整備を図る
7
(2)山側トンネル案の再検討
今回、「鞆地区道路港湾計画検討委員会」において検討した山側トンネル案について、次のよ
うな手順で再度代替案となる山側トンネル案を作成し、埋立て橋梁案との比較・検証を行いまし
た。代替案となる山側トンネル案は以下の手順で検討しました。
比較ルート案の検討
鞆市街地中心部をはさんで、福山側の改良済み区間の県道、市道、沼隈側の改良済み区間の県道を結ぶ複数
のルート案を検討しました。
至
至
沼隈
福山
凡例
伝統的建造物
神社・仏閣
瀬戸内海国立公園
風致地区
埋蔵文化財含有地
N
比較ルート案の抽出
比較ルート案の中から、
「伝統的建造物群」、
「神社・仏閣」、
「埋蔵文化財」等に配慮して、図のような5つ
のルート案を抽出しました。
至
沼隈
至
福山
凡例
N
伝統的建造物
神社・仏閣
瀬戸内海国立公園
風致地区
埋蔵文化財含有地
代替ルート案の決定
5つのルート案のうち、トンネル坑口位置の地形、現道取付部との交差点交通処理や周辺住居地域等への影
響等を考慮し、最も妥当なトンネルルート案を代替案として選定しました。
至
沼隈
至
凡例
N
8
伝統的建造物
神社・仏閣
瀬戸内海国立公園
風致地区
埋蔵文化財含有地
福山
3-4.代替ルート案との比較検討結果
P.8 で選定した山側トンネル案(代替ルート案)と埋立て橋梁案についての比較検討結果は以下の表
のとおりです。さらに、
「4.鞆町の問題点・課題、期待される整備効果」で記載している「期待され
る整備効果」に示しているように、
「埋立て橋梁案」が「山側トンネル案」に比べて地域の活性化や生
活環境の整備に効果が大きいと考えられます。
埋立て橋梁案
道路規格等
路線延長
道路区分:第3種第3級
設計速度:V=40 km/h
全長約680m(橋梁約180m)
鞆港の一部を埋め立て、整備済み区間まで直接結ぶ計画。道路の埋立部以外の区
間は橋梁。
案の概要
14,000
500
3,500
3,000
3,000
500
3,500
横断構成
道路幾何構造
計画性
施工性
安全性・走行性
景観及び環境への影響
周辺地域への影響
港湾整備計画との関連性
道路整備の概算工事費
・最小曲線半径 R=160m
・最急縦断勾配 I=2.5%
・鞆松永線と福山鞆線の改良済み区間を直接接続し、合理的な計画である。
・工事期間は概ね 10 年で長期となる。
・埋立、護岸、橋梁下部工施工時の海水汚濁対策及び地元漁業関係者との十分な
調整が必要である。
・既存の家屋移転はなく、周辺地域へ与える影響が小さい。(起終点の交差点部
施工時に規制を伴う)
・埋立に伴う土量は約 10 万m3 であるが、海上から施工となり周辺へ与える影響
は小さい。
走行性・安全性は大幅に改善される。高潮や台風など気象の影響を直接受けるこ
ととなるが、既往の最高高潮に対して安全な高さを確保している。
埋立てを伴うことから、景観、焚場、スナガニに対する配慮が必要である。
既存の家屋移転はなく、周辺地域へ与える影響が小さい。
埋立てにより確保される各港湾施設用地と道路とが一体的に整備でき、道路(鞆
松永線・福山鞆線)と各施設用地との連絡性も高い。
全体事業費
9
約55億円
山側トンネル案
道路規格等
路線延長
道路区分:第3種第3級
設計速度:V=40 km/h
全長約2,020m(トンネル約1,520m)
平地区清水橋西側から山側にトンネルを通して、鞆変電所付近の改良済み区間に結ぶ計
画。
案の概要
横断構成
道路幾何構造
計画性
施工性
安全性・走行性
景観及び環境への影響
周辺地域への影響
港湾整備計画との関連性
道路整備の概算工事費
・最小曲線半径 R=160m
・最急縦断勾配 I=3.75% (終点部現道取付部また、トンネル内の縦断勾配 I=1.35%)
改良済み区間の中間地点を接続するため、現道の付替えや交差点の新設により用地買収
が必要となる。
・工事期間は概ね5年で、橋梁案よりも短い。
(ただし別途、家屋移転に要する期間が必
要。)
・福山側トンネル坑口付近に断層が推定されており、補助工法を十分に検討する必要が
ある。
・福山側トンネル坑口付近の交差点改良に伴う家屋移転が必要となり周辺地域へ生活環
境へ与える影響が大きい。また、坑口付近の高圧鉄塔及び砂防施設への影響も懸念さ
れる。
・工事に伴う残土量が約 10 万 m3 であり、残土処理に伴い周辺道路で大型車両の出入り
が多くなり周辺地域へ与える影響が大きい。
・残土処理地の確保が必要
走行性・安全性は大幅に改善される。ただし、トンネル延長が長いために、事故や火災
に対しての安全対策等が必要となる。
・現在の弓形の湾形状に影響を与えない。
・トンネル坑口付近(民家)への騒音、排気ガスの集中に対する対策が必要である。
・風致地区内に切土法面が発生する。
・福山側坑口部では、住居の裏に約 10m程度の長大盛土法面が発生する。
福山側坑口部では、交差点改良及び取付道路設置による家屋移転約 30 戸を生じ、生活
環境に与える影響が大きい。
本道路改良計画とは別に港湾整備が必要であり、道路(鞆松永線、福山鞆線)と港湾施
設用地との連絡性についての配慮が必要である。
全体事業費
約50億円(用地補償費 約12億円含む)
※別途港湾整備が必要
10
3-5.景観形成の基本的な考え方
(1)景観形成について
鞆地区は、江戸時代に造られた雁木や常夜燈などの歴史的な港湾施設が存在し、町のあちこ
ちには永い歴史の名残を留めており、歴史と文化の町にふさわしい景観を創出する事が望まれ
ています。
このため、景観形成については、
「鞆地区まちづくりマスタープラン」を指針とし、
「鞆地区
道路港湾景観検討委員会」での審議・検討結果に基づき整備を進めます。
【景観形成で配慮するポイント】
・「鞆の浦、津は湾の形状である」ことから、湾の形状に沿った形とする。
・雁木や常夜燈及びその周辺海面を残し、鞆の歴史的景観や文化遺産の保全を図る。
・埋立地の東側の水際線に、雁木型式の親水護岸や緑道を整備し修景を図る。
・たで場についてはその歴史的価値に配慮して大部分を保存する。
(2)歴史的建造物への配慮
鞆地区道路港湾整備事業においては、湾内に残る歴史的港湾施設に十分配慮し、文化財保護
審議会の答申を遵守し、たで場の約2割を除いて、すべて現状のまま影響ないよう計画してい
ます。また、事業実施にあたり、工事の影響を受ける部分については、発掘調査により記録保
存するなど適切に対応することとしています。
たで場の約2割を除いて、すべて現状
で保存する計画としています
整備イメージ
11
(3)整備イメージ(フォトモンタージュ)
これら景観形成の基本的な考え方にもとづき整備された鞆の将来像は、背後の歴史的町並み
や歴史的港湾施設と調和しつつ、「平成時代の建造物」として新たな鞆港の風景が創出される
ものと考えます。
■
現
計画橋梁上
況
整備後
このフォトモンタージュは、現在の道路港湾計画をコンピュータ・グラフィックスで可視化し、現況写真と視点を
一致させて重ね合わせ作成しているため、計画の大きさや形状、位置関係などが忠実に表現されています。
なお、計画の色彩や意匠は、1996 年(平成 8 年)鞆地区道路港湾景観検討委員会で提案された「景観形成の基本的
な考え方」に基づいて作成していますが、今後の検討により変更される可能性があります。
※他の視点からのフォトモンタージュについては、別途冊子「鞆地区道路港湾整備事業」をご覧ください。
12
4.
鞆町の問題点・課題、期待される整備効果
これまで、
「福山市 HP」や「鞆町まちづくり意見交換会」などで寄せられた意見をもとに、鞆町が抱
える問題点・課題を整理し、鞆地区道路港湾整備事業により期待される整備効果を検討しました。
4-1.鞆町が抱える問題点・課題
(1)福山市HPに寄せられた意見
鞆町のまちづくりに関する情報発信とそれに対する意見を広く募集するために開設された「鞆町のま
ちづくりホームページ」に寄せられた意見(323 件)について、鞆町の地域課題に関する 93 件の意見
内容を分析しました。
鞆町が抱える課題
全体
観光客
7%
駐車場
13%
港湾
4%
観光客
6%
渋滞
20%
港湾
4%
観光
20%
防災
1%
緊急車両
11%
鞆町住民
駐車場
13%
道路交通
34%
道が狭い
13%
安全・安心
25%
事故
13%
生活環境
17%
大型車
1%
下水整備
3%
過疎
14%
鞆町以外の方
港湾
4%
港湾
4%
観光
19%
観光
33%
道路交通
32%
防災
1%
緊急車両
11%
渋滞
16%
観光客
17%
渋滞
22%
道が狭い
9%
安全・安心
27%
大型車
1%
下水整備
3%
生活環境
18%
過疎
15%
事故
15%
駐車場
17%
道路交通
50%
安全・安心
6%
道が狭い
27%
生活環境
11%
緊急車両
6%
過疎
11%
大型車
6%
※複数意見含む
・鞆町の課題は、
「道路交通」に関するものが最も多く、次いで「安全・安心」
、
「観光」、
「生活環境」、
「港湾」となりました。
・鞆町居住者の意見からは、
「道路交通」、
「生活環境」
、
「安全・安心」、
「観光」、
「港湾」の課題がそれ
ぞれ幅広く占められていました。
・鞆町以外の方の意見からは、
「道路交通」や「観光」に関する課題が多数で占められていました。
(2)「鞆町まちづくり意見交換会」で出された意見
鞆町のまちづくりについて住民の意見交換の場として開かれた
「鞆町まちづくり意見交換会」で出された意見(40 件)について、
地域課題に関する 21 件の意見内容を分析しました。
駐車場
6%
防災
9%
観光客 港湾
3%
3%
渋滞
12%
観光 港湾
9% 3%
道路交通
27%
高潮
9%
道が狭い
12%
大型車
3%
安全・安心
36%
生活環境
25%
下水整備
9%
緊急車両
9%
事故
9%
過疎
16%
鞆が抱える課題
※複数意見含む
・鞆町の課題は、
「安全・安心」に関するものが最も多く、次いで「道路交通」、
「生活環境」、
「観光」、
「港湾」となりました。
13
以上の皆さまから寄せられた「鞆が抱える問題点・課題」
(
「道路交通」
、
「生活環境」、
「安全安心」、
「観光」
、「港湾」)を整理し、本事業の整備により期待される整備効果を検討しました。
鞆の現状と課題
期待される整備効果
交通ネットワーク
沼隈半島を外周する循環線が整備されます
循環線の一部が途絶えています
交通量
交通混雑が解消されます
交通混雑が慢性化しています
道路交通
アクセス性
幹線道路へのアクセス性が向上します
幹線道路へのアクセス性が良くありません
道路幅員
民家の軒下や駐車場が離合箇所に使われています
地区内に広い道路がほとんどありません
旅行速度
離合回数は減少し、住民の不安は軽減されます
交通量の減少で地区内の通行が容易になります
旅行速度が向上します
走行時間が短縮し、定時性が確保されます
自転車並みの低速度です
対向車の状況により思わぬ走行時間を要します
鞆地区までのアクセス、バス交通
自動車の利便性が向上します
バスの通行性・定時性が改善されます
自動車に頼らざるを得ない地区です
バス利用者も事業者も不便を強いられています
生活環境
下水道
下水道工事のための代替路が確保できます
下水道が未整備です
歩行者の安全
歩行者の安全性が向上します
自動車・自転車・歩行者が輻輳しています
安全・安心
緊急車両の通行
緊急車両の通行性が改善されます
緊急車両の通行に不安を感じています
高潮被害
浸水の不安が軽減されます
高潮による浸水被害に不安があります
新たな避難地
土砂災害等への不安が軽減されます
平地に避難地がありません
自動車の来訪
観 光
自動車で訪れる観光客の利便性が向上します
自動車で訪れる観光客にとって不便な地区です
観光施設間の移動
観光客の安全性・快適性が向上します
観光客と自動車が輻輳しています
広域観光
鞆を中心とした広域観光ルートが形成されます
広域観光形成の弊害となっています
港湾
漁業活動・フェリー利用客等の安全性・効率性が
港湾施設の不足
港湾施設不足で様々な問題が発生しています
向上します
14
4-2.
道 路 交 通
(1)交通ネットワーク
現状の問題点・課題
循環線の一部が途絶えています
現
状
・沼隈半島には、半島を外周する循環線((主)鞆松永線、(主)福山鞆線)が通っています。
・しかし、鞆地区を通る(主)鞆松永線の未改良区間は、幅員が狭く、対向車との離合が
困難な場所となっています。
・そのため、大型車などは(主)鞆松永線の未改良区間を避けてわざわざ遠回りせざるを
得ず、循環線の一部が途絶えている状況にあります。
皆さまから寄せられた意見
●鞆町内はいうまでもなく沼隈町へ配達に行くにも 10 から 15 分でいけるところを 30 分も 40 分もかけて大回りをして行っ
ています。
●せまい道路でクルマの渋滞や駐車場が少ないため外部の人達から敬遠の声を多く聞きます。
●大型車は迂回している。
●車社会の今日大型バス行き止まりの町、こんな町の発展はありません。
半島を外周する循環線の一部が途絶えています
沼隈半島の循環線
大型車の多くは(主)鞆松永線の未改良区間を避けて大きく迂回しています
(主)鞆松永線の未改良区間は大型車
の通行が困難なため、大型自動車及び
大型特殊自動車が通行止め(路線バ
ス、マイクロバスは除く)となって
おり、大型車の多くは未改良区間を
避けて大きく迂回しています。
大型車迂回ルート
15
期待される整備効果
埋立て橋梁案 沼隈半島を外周する循環線が整備されます
整備効果
・鞆地区を経由する循環線が整備されることで、山陽自動車道や JR 鉄道等と一体とな
った広域幹線ネットワークが形成されます。
・広域幹線ネットワークが形成されることで、地域間の交流・連携が強化され、災害な
ど緊急時における輸送道路としての役割等も期待されます。
・大型車の通行が可能となることで、走行時間の短縮による物流効率化や、CO2 削減に
より環境負荷が低減されます。
山陽自動車道や JR 鉄道等と一体となった広域ネットワークが形成されます
沼隈半島の循環線
大型車の通行が可能となることで、走行時間の短縮による物流効率化や、CO2 削減により環境
負荷が低減されます
大型車の通行が可能となることで、走行時間が大幅に短縮し、
燃料も節約できます
走行時間の短縮
【資料】H18 交通量調査業務委託(福山地域事務所)
H17 道路交通センサス
燃料の節約
大型トラック(4tディーゼル車
(4km/L)
)が等速度で走行した場合
※鉄鋼団地~常石造船所間で比較
走行時間、燃料消費量は計算上の数値です
大型車通行ルート
山側トンネル案
沼隈半島を外周する循環線が整備されます
・沼隈半島を外周する循環線が整備されることで、山陽自動車道や JR 鉄道等と一体とな
った広域ネットワークが形成されます。ただし、鞆中心部はこの広域ネットワークから外れ
ることになります。
・広域幹線ネットワークが形成されることで、地域間の交流・連携が強化され、災害な
ど緊急時における輸送道路としての役割等も期待されます。ただし、鞆中心部は対象外
となります。
・大型車の通行が可能となることで、走行時間の短縮による物流効率化や、CO2 削減によ
り環境負荷が低減されます。
16
(2)交通量
現状の問題点・課題
交通混雑が慢性化しています
現
状
・
(主)鞆松永線の未改良区間は道路幅員に対して交通量が多く、交通混雑が慢性化して
います。
・特に朝・夕に交通量が集中しており、交通混雑に対して住民は不満をもっています。
皆さまから寄せられた意見
●交通渋滞がひどく、住む気にならない。
●通勤時の交通渋滞が我慢ならない。
●町内にクルマが溢れてあちこちで渋滞しています。
(主)鞆松永線の未改良区間で交通混雑が慢性化しています
交 通 量
混 雑 度
鞆地区の交通量・混雑度
H17 道路交通センサスによると、混雑度 2.0 以上の道路延長は、広島県内の都道府県道で総延長のわずか 2.4%
(主要地方道 0.5%、一般県道 4.0%)に過ぎません。
また、県内で最大の交通量を有する一般国道 54 号(94,594 台/日)でも混雑度は 1.5 以下となっています。
朝夕に交通量が集中しています。
朝は上りルート(福山方面)、夕方は下りルート(沼隈方面)の交通量が多くなります。
可能交通容量:170 台/時
17
【資料】H18 交通量調査業務委託(福山地域事務所)
期待される整備効果
埋立て橋梁案 交通混雑が解消されます
整備効果
・これまで鞆中心部に流入していた交通量(通過交通、観光交通等)の多くが計画道路
を利用するため、交通量は減少し交通混雑は解消されます。
交 通 量
混 雑 度
埋立て橋梁整備後の交通量・混雑度(H42 年予測値)
※H42 年推計では、日交通量が 100 台未満となっているが、混雑度算定にあたっては 100 台/日として算定した
【資料】H18 交通量調査業務委託(福山地域事務所)
山側トンネル案
交 通 量
混 雑 度
交通混雑は解消されませ
ん
・交通量は現状より減少するものの、山側ト
ンネルは通過交通の処理しかできず、鞆中心
部に目的を持つ交通と市街地内の発生交通
が依然として残るため、交通混雑は解消でき
ません。
山側トンネル整備後の交通量・混雑度(H42 年予測値)
18
(3)アクセス性
現状の問題点・課題
幹線道路へのアクセス性が良くありません
現
状
・幹線道路(2車線道路)へアクセスするためには、幅員が狭く混雑状態にある地区内
道路を経由しなければならず、住民は日々不便を強いられています。
鞆中心部に広い道路がほとんどないため、幹線道路までのアクセス性が良くありません
鞆中心部から幹線道路までのアクセス
幹線道路(2車線道路)へ
アクセスするためには、幅
員が狭く混雑状態にある地
区内道路を経由しなければ
いけません
幹線道路(2車線道路)へ
アクセスするためには、幅
員が狭く混雑状態にある地
区内道路を経由しなければ
いけません
幹線道路までのアクセス道路
19
期待される整備効果
埋立て橋梁案 幹線道路へのアクセス性が向上します
整備効果
・鞆中心部の近くに幹線道路が整備されるため、幹線道路までなるべく狭い地区内道路
を使わずにアクセスすることができます。
鞆中心部の近くに計画道路が整備されるため、幹線道路へのアクセス性が向上します
鞆中心部から幹線道路までのアクセス
整備イメージ
山側トンネル案
アクセス性向上は期待できません
・鞆中心部から幹線道路へのアクセスは現状と変わりません
・また、鞆中心部から離れて山側トンネルが整備されるため、トンネル
を利用するためには回り込む必要があります
鞆中心部から幹線道路へのアクセス
20
(4)道路幅員
現状の問題点・課題
民家の軒下や駐車場が離合箇所に使われています
・自動車同士が離合するため、自動車が民家の軒下や駐車場に入り込んでおり、沿線住
民は事故や家屋の損傷に不安を感じています。
現
状
・(主)鞆松永線の未改良区間は自家用車が止まらずにすれ違える区間が殆どなく、慢
性的な混雑状態にある中、いたるところで民地を使って離合せざるを得ない状況にあ
ります。
皆さまから寄せられた意見
●対向車が一台来るだけで、他人の家の敷地へ車を侵入させて、かわさなければたちまち大渋滞になってしまいます。
●バスと離合する時、民地を借りて待避している。
民地を使った離合
民地を使った離合
民地を使った離合
朝の慢性的な交通混雑
朝の混雑状況
自家用車のすれ違いが困難なため、離合
の度に交通混雑が発生しています
朝の慢性的な交通混雑
*図中の数値は混雑度を示す
軒下・駐車場への侵入状況
自家用車が止まらずにすれ違える道路
道路内に設置された電柱が離合をさ
らに困難にさせています。
クルマの侵入防止のため、軒下に
置石をした家も多くあります。
小型自動車幅員 1.7m、すれ違いの余裕幅
0.5m、路肩 0.5m として設定しました。
0.5
1.7
0.5
1.7
0.5
4.9m
【資料】道路構造令の解説と運用(H16)
21
期待される整備効果
埋立て橋梁案 離合回数は減少し、住民の不安は軽減されます
・道路幅員は変わりませんが、地区内の交通混雑は解消されるため対向車との離合回数
も減少し、沿線住民の事故や家屋の損傷といった不安は軽減されます。
整備効果 ・(主)鞆松永線の未改良区間は、交通混雑が解消されることで歩行者の安全性や快適
性に配慮したコミュニティ道路などとしての整備も可能となり、歩行者に優しい道づ
くりが推進されます。
D
B
C
D’
道路幅員は変わりませんが、交通量が
減少することにより、離合回数も減少
し、交通混雑が解消されます
A
整備後の混雑状況
*図中の数値は混雑度を示す
整備後は、交通量・混雑度
が大きく減少することが予
測されます
整備前後の交通量・混雑度の変化
交通量(台/日)
区間
整備前
整備後
A~B区間
4,600
100
B~C区間
3,500 100未満
C~D区間(上りルート)
2,200 100未満
C~D'区間(下りルート)
1,900 100未満
交通特性
混雑度
整備前
整備後
6.9
0.2
3.9
※0.1
3.1
※0.1
1.5
※0.1
【資料】H18 交通量調査業務委託(福山地域事務所)
※H42 年推計では、日交通量が 100 台未満となっているが、混雑度算定にあたっては 100 台/日として算定した
山側トンネル案 離合回数は大きく減少せず、住民の不安は軽減されません
・(主)鞆松永線の未改良区間の交通量は、現状より減少するものの交通混雑は依然として解消されないため(P.18)、対向
車との離合回数も大きく減少せず、沿線住民の事故や家屋の損傷といった不安は軽減されません。
・また、当該区間は、民家、店舗、病院等が密集しているため、現在の町並みを維持しながら新たに待避所を設置することは
困難であり、整備効果も期待できません。
22
現状の問題点・課題
地区内に広い道路がほとんどありません
現
状
・鞆地区内には昔ながらの街並みが残るゆえに、広い道路(自家用車が止まらずにすれ
違える道路)がほとんどありません。
・一度では曲がりきれない交差点も多く、ドライバーは日々不便を強いられています。
皆さまから寄せられた意見
●狭隘な道路で、日々危険な状態にさらされている。
●毎朝通勤で車に乗って出勤していますが、道路が狭いために車の譲り合いで時間がかかります。
●病院への通院も、道路が狭いので本当に大変です。
広い道路(※自家用車が止まらずにすれ違える道路)がほとんどありません
地区内の交通状況
※
自家用車が止まらずにすれ違える道路
小型自動車幅員 1.7m、すれ違いの余裕幅
0.5m、路肩 0.5m として設定しました。
0.5
1.7
0.5
1.7
0.5
4.9m
【資料】道路構造令の解説と運用(H16)
23
期待される整備効果
埋立て橋梁案 交通量の減少で地区内の通行が容易になります
整備効果
・道路幅員は変わりませんが、地区内の交通量が減少するため、対向車との離合回数が
減少し、地区内の通行が容易になります。
地区内の交通量が減少するため対向車との離合回数が減少し、地区内の通行が容易になります
地区内の交通状況
整備前後における交通特性の変化
交通特性
地点
A
B
C
D
E
F
未
改
良
区
間
G
H
I
J
K
交通量(台/日)
整備前
整備後
1,200
400
1,200
300
700
100未満
200
100未満
400
100未満
1,300
100
2,200
100未満
3,500
100未満
3,400
100未満
4,600
100
4,200
100未満
全ての区間で交通量が減少
し、混雑度が低下すると予測
されます
混雑度
整備前
整備後
0.9
0.3
0.9
0.2
0.4
※0.1
0.2
※0.1
0.8
※0.2
1.1
0.1
3.1
※0.1
3.9
※0.1
3.9
※0.1
6.9
0.2
2.4
※0.1
※H42 年推計では、日交通量が 100 台未満となっているが、混雑度算定にあ
たっては 100 台/日として算定した
【資料】H18 交通量調査業務委託(福山地域事務所)
山側トンネル案 地区内の交通混雑は解消されません
・地区内の交通量が減少するため対向車と離合する回数が減少し、地区内の通行が容易になります。
・しかし、(主)鞆松永線の未改良区間には鞆地区を目的とした交通が依然として残るため(P.18)、交通混雑は解消されません。
24
(5)旅行速度
現状の問題点・課題
自転車並みの低速度です
現
状
・(主)鞆松永線の未改良区間は対向車との離合や交通混雑により、平均速度(時速
17km/h 程度)が自転車並みの低速度となっています。
皆さまから寄せられた意見
●もうすぐ家という所で渋滞になり、帰ることができずイライラする事がたびたびあります。
●毎朝通勤で車に乗って出勤していますが、道路が狭いために車の譲り合いで時間がかかります。
旅行速度は県内平均を大きく下回っています
(主)鞆松永線未改良区間の旅行速度は、県内の一般県道や主要地方道の平均値を大きく下回っています。
【資料】H18 交通量調査業務委託(福山地域事務所)
H17 道路交通センサス
現状の旅行速度
対向車の状況により思わぬ走行時間を要します
現
状
・
(主)鞆松永線の未改良区間は幅員が狭く、いたるところで離合が必要なため、交通
量が少ない時間帯でも対向車の状況によって思わぬ走行時間を要します。
・このため地域住民は移動の定時性が確保できず、日々不便を強いられています。
皆さまから寄せられた意見
●毎日通っている人は、どこで車が交せるかわかっていますので待っています。
●地元以外の自動車は、待避する場所を知らないので大変混雑する。
●朝 8:00 頃の鞆の道は、土・日以外はものすごい混雑です。
●平日と日曜では所要時間が全く違う。
交通量が少ない時間帯でも、対向車の状況(離合回数)によって
旅行速度が極端に低下するため、思わぬ走行時間を要します。
A-B区間 上りルート
B-C区間 上りルート
30
300
20
200
交通量(台/時)
400
500
10
100
0
9
10
11
12
13
14
15
16
17
20
200
10
0
18
0
7
8
9
10
11
12
時
30
300
20
200
10
100
0
0
9
10
11
12
13
時
14
15
16
17
18
交通量(台/時)
400
8
15
16
17
18
500
40
旅行速度(km/h)
交通量(台/時)
500
7
14
B-C区間 下りルート
A-B区間 下りルート
対向車との離合状況
13
時
40
400
30
300
20
200
旅行速度(km/h)
8
30
300
100
0
7
40
400
旅行速度(km/h)
40
旅行速度(km/h)
交通量(台/時)
500
10
100
0
0
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
時
10km/h 以下の低速度
【資料】H18 交通量調査業務(福山地域事務所)
25
期待される整備効果
埋立て橋梁案 旅行速度が向上します
整備効果
・埋立て橋梁を利用することで、東西方向の旅行速度が向上し、安全で快適な移動が
実現します。
・通過交通の旅行速度は時速 17.2km から時速 40.0km に
向上すると予測されます
・地区内も交通量の減少により、旅行速度の向上が期待
されます
埋立て橋梁整備後の旅行速度
【資料】H18 交通量調査業務委託(福山地域事務所)
H17 道路交通センサス
埋立て橋梁案 走行時間が短縮し、定時性が確保されます
整備効果
・埋立て橋梁を利用することで、東西方向の走行時間が短縮し、定時性が確保されます。
・現在の(主)鞆松永線の未改良区間は、交通混雑が解消され、安全性が向上します。
上りルート(A-D 間)
下りルート(D-A 間)
埋立て橋梁整備後の走行時間
【資料】H18 交通量調査業務委託(福山地域事務所)
※走行時間は計算上の数値です
山側トンネル案 (主)鞆松永線の未改良区間における走行時間の大幅な短縮は
期待できません
・計画道路を利用することで、鞆地区を経由しない福山市中心部~沼隈方面の移動時間は短縮します。しかし、
(主)鞆松永
線の未改良区間については慢性的な交通混雑は改善されないため(P.18)、走行時間の大幅な短縮は期待できません。
・鞆を通過していた交通が山側トンネルを利用することで、
(主)鞆松永線の未改良区間の交通量は若干減少するものの、交
通混雑は改善されないため(P.18)、旅行速度の大幅な向上は期待できません。
26
(6)鞆地区までのアクセス、バス交通
現状の問題点・課題
自動車に頼らざるを得ない地区です
現
状
・鞆地区には軌道系の交通機関がなく、バスや自家用車等でしかアクセスできません。
・このため、自動車は地区住民の暮らしに欠かせない交通手段となっています。
皆さまから寄せられた意見
●交通が不便なため、若者が鞆を出て行ってしまいます。
鞆地区までのアクセス
バス利用者も事業者も不便を強いられています
現
状
・鞆~福山駅間のバス路線(鞆線)は、
(主)鞆松永線の未改良区間手前の鞆港で折り返
しています。このような中、鞆~松永間のバス路線(沼南線)は 1 日 3 本しか運行し
ておらず、乗客の多くは鞆港から西側へ徒歩等で移動せざるを得ない状況にあります。
・鞆~松永間のバス路線は、通常より小型のバスで(主)鞆松永線の未改良区間を運行
しています。しかし、対向車とのすれ違いが困難で、運行に支障をきたしています。
・鞆地区内を通る唯一の公共交通機関でありながら地区住民は安心して利用できません。
皆さまから寄せられた意見
●車社会の今日大型バス行き止まりの町、こんな町の発展はありません。
●大型のバスが通ることによる交通渋滞もあります。
(主)鞆松永線の未改良区間の時刻表
・路線バスの時刻表は、わずか1kmの区間にもかかわら
ず、離合によるタイムロスを考慮した余裕ある走行時間(8
~10 分)で設定せざるをえません
・※近傍の 2 車線道路における 1km の走行時間は、2 分で
設定されています(鞆車庫前~鞆の浦区間(約 1km))
・そのため、対向車の状況によってはバスが時刻表どおりの
運行とならない場合があり、利用者は不便を感じています
鞆の浦 → 淀媛神社 (走行時間 10 分)
鞆の浦
8:02
11:22
17:32
鞆港
8:04
11:24
17:34
四つ角
8:08
11:28
17:38
江の浦
8:10
11:30
17:40
淀媛神社
8:12
11:32
17:42
淀媛神社 → 鞆の浦 (走行時間 8 分)
淀媛神社
7:36
9:46
17:01
江の浦
7:38
9:48
17:03
四つ角
7:40
9:50
17:05
鞆港
鞆の浦
7:42
7:44
9:52
9:54
17:07
17:09
【資料】鞆鉄道株式会社
27
鞆地区のバス路線
期待される整備効果
埋立て橋梁案 自動車の利便性が向上します
・鞆地区へのバスや自家用車でのアクセスが容易となります。
整備効果
・鞆地区を経由する循環線が整備されることで、自動車の利便性が向上します。
・鞆地区内から主要な駅(福山方面、松永方面)への利便性が向上します。
鞆地区からのアクセス
埋立て橋梁案 バスの通行性・定時性が改善されます
整備効果
・
(主)鞆松永線の未改良区間の交通混雑が解消される(P.18)ことで、バスの通行性・定
時性が向上します。
・「折り返し運転の必要がなくなる」、「運行便数を増便することができる」など、バス
の利便性向上が期待できます。
バスは折り返す必要がなくなります
バス路線の混雑状況の変化
山側トンネル案 自動車の利便性やバスの通行性・定時性が確保されません
・福山~沼隈方面の利便性は向上しますが、鞆中心部から山側トンネルへのアクセス性が低いため、鞆地区内からの利
便性向上は期待できません。
・鞆中心部に目的を持つ交通が狭隘な道路に残る(P.18)ため、バスの通行性・定時性は確保されません。
・鞆中心部へアクセスするバスは引き続き折り返し運転の必要があります。
28
4-3.
生 活 環 境
(1)下水道
現状の問題点・課題
下水道が未整備です
現
状
・鞆地区の下水道は、未整備です。
・汲み取りや浄化槽を使用していますが、匂いの問題や浸水時に便槽が溢れる懸念があ
るなど、環境面にも衛生面にも問題があります。
・(主)鞆松永線の未改良区間の下水道を整備する場合、今のままの道路交通網では迂
回路としての代替路がなく、現状の道路網では整備ができません。
・生活排水がそのまま海に流されており、湾内の水質悪化が懸念されます。
皆さまから寄せられた意見
●出来るだけ早く下水を整備し、海を汚さないようにしなければならない。
●みんなが、水洗トイレにしたり、排水に気を使ってきたが、下水ができれば更に綺麗になると思う。
●鞆学区内の子ども達がいつまでも汲取便所で用をたさないよう、又環境の面からも、生活排水を鞆の海に流さないため
も お願いします。
(主)鞆松永線の未改良区間の下水道を整備するには、最短でも約40日間の車両通行止め
になります
未改良区間の下水道を整備するには、開削工法と推進工法のどちらの工法で施工しても地上より直接土砂を掘削する必
要があり、残された幅員で車両通行ができないことから、少なくとも約 40 日間におよぶ車両通行止めが必要となります(仮
にグリーンラインを利用して A-B 間を移動すると 30 分程度要します)
。
また、車両通行止めにより、通勤や地区内の移動あるいは観光客の入り込みなどへ大きな支障となります。
代替路には
なり得ません
生活排水の排水状況
・下水管敷設、既設地下埋設物(水道、NTT、電
柱など)の位置や歩行者通路確保を考慮す
ると約40日間車両通行止めとなります。
・迂回路としての代替路がありません。
迂回路が
ない区間
道路幅員約 4m
バキュームカーによるし尿収集
下水道整備
施工上の問題点
現在の湾内における海底の泥(底質)は、水産用水基準
を超えています
湾内の底質調査結果
項
目
単位
COD
mg/g
(化学的酸素消費量)
硫 化 物
mg/g
調査結果
水産用水基準
20.7
20以下
0.46
0.2以下
下水管
【資料】広島県福山地域事務所建設局(H17)
29
宅内取付管
未改良区間施工(イメージ)
期待される整備効果
埋立て橋梁案 下水道工事のための代替路が確保できます
・計画道路を下水道工事中の代替路として利用することができます。
・下水道工事中、
(主)鞆松永線の未改良区間を通行止めとしても、生活への影響を最小
限に抑えることができます。
整備効果
・生活排水の垂れ流しや停滞などを要因とする蚊や蝿などの発生の減少、悪臭などが防
止され、衛生環境が改善されます。
・湾内の水質が改善されます。
迂回路が
ない区間
A-B区間の下水道工事中においても、
代替路を利用することにより、A-B区間
の通行に要する時間は変わりません。
下水道工事中の代替路
山側トンネル案
下水道工事のための代替路が確保できません
A-B区間の下水道工事中にトンネルを
代替路として利用すると、A-B区間は
約 10 分の所要時間となります。
・代替路となるトンネルは鞆中心部から離れているため、住民は不
便を強いられます。
・
(主)鞆松永線の未改良区間の混雑は依然として残る(P.18)ため
移動に多くの時間を必要とすることから、住民生活への影響は大
きいものと考えられます。
・A-B 区間の下水道工事中にトンネルを代替路として利用すると最
大で約 10 分を要します。
迂回路が
ない区間
下水道工事中の代替路
30
4-4.
安 全 ・ 安 心
(1)歩行者の安全
現状の問題点・課題
自動車・自転車・歩行者が輻輳※しています
現
状
・
(主)鞆松永線の未改良区間は、自動車交通量とともに自転車・歩行者も多く、自動車
の合間を縫って移動しており非常に危険な状況です。
・通学の時間帯に自動車交通量が増えるため、児童の通学時には特に危険となります。
皆さまから寄せられた意見
●毎日病院へ通っていますが、狭い道路のため車が来れば道端に寄って車が過ぎるのを待って歩いての病院通いです。
●通学の時に、渋滞の車の間をすり抜けて通っているのが日常です。特に低学年の子どもにとっては非常に危険です。
●通学路になっているのに道が狭く危ない。
●登下校の時、交通量が多いので、子供が無事に行ったかと心配になります。
●私の住んでいる所は県道で車が多く、道路を歩くのも安心して歩けません。
自動車・自転車・歩行者が混在し、道路利用者は日々危険を強いられています
朝夕の自動車交通量のピーク時には、歩行者も多いため危険が増します
朝夕の時間帯は歩行者も自動車も増加します
600
100
400
50
200
0
自動車(台)
二輪車(バイク)(台)
歩行者(人) 自転車(台)
未改良区間 時間別交通量
150
0
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
時
【資料】H18 交通量調査業務(福山地域事務所)
全国平均の約 2 倍の歩行者交通量
未改良区間の歩行者交通量は、全国の同規格道路(主
要地方道)に比べ約 2 倍となっています。
通学路の多くは歩道が設置されていません
歩道設置・通学路指定状況
ふくそう
※「輻 輳 」とは:物事が一ヶ所に同時に集中してこみあうこと。
31
期待される整備効果
埋立て橋梁案 歩行者の安全性が向上します
整備効果
・計画道路の両側には歩道が整備され、かつ地区内の交通量も減少する(P.18)ため、地
区内を移動する歩行者の安全性は向上します。
・朝のピーク交通量も大幅な減少が見込まれるため、通学時間帯の安全性向上が期待で
きます。
地区内交通量が減少することで、
地区内を移動する歩行者の安全性
が向上します
計画道路の両側には歩道が整備され、歩
行者の安全性・快適性が向上します。
整備イメージ
地区内交通量(H42 年予測値)と歩道設置状況
山側トンネル案 歩行者の安全性は確保されません
・(主)鞆松永線の未改良区間には鞆中心部に目的を持つ交通が依然として残り交通混雑が解消されないため(P.18)、自
転車・歩行者の安全性は確保されません。
32
(2)緊急車両の通行
現状の問題点・課題
緊急車両の通行に不安を感じています
現
状
・住民は、狭い道路が多いため緊急車両(救急車・消防車)の通行に時間がかかるのではな
いかと不安を感じています。
・万が一、事故・災害などで通行止めになった場合は、迂回路を通行せざるを得ず救助
活動に支障をきたします。
皆さまから寄せられた意見
●いつも自動車が停滞していざ防災の時は困ります。
●私達の住んでいる所から主要道路とつながっている道が一本しかないので、この道が何らかの状況で通れなくなった場合
に我々地域住民の生活が脅かされる事になります。
●母に付き添って救急車で医療センターまで行く時も渋滞でした。
●せまい鞆の町で、交通渋滞だったら人の命も失うと思います。
●渋滞したら救急車も通らない。
住民は、(主)鞆松永線の未改良区間で緊急車両の通行に時間がかかるのではと不安を感
じています
搬送時間の遅れが生死を左右します
地区内は狭い道路が多いため、緊
急車両の通行に時間がかかる不
安があります
カーラーの救命曲線
【資料】M.Cara:1981.「カラーの曲線」一部改変
消防職員からの声
渋滞で救急車が動けなくなることを避けるため、交通
の支障とならないところに停車してストレッチャー
で搬送することが多くあります。
火災延焼の危険性が高い住居地区
住居地区内は木造建物が多く存在するため、火災が発
生すると延焼拡大しやすい状況にあり、緊急車両の通
行性改善が求められています。
住居地区内には木造建物が多く存在
南消防署鞆出張所の管轄エリア
鞆町(平地区含)、田尻町、走島町
鞆の消防署、病院
33
期待される整備効果
埋立て橋梁案 緊急車両の通行性が改善されます
・新たに市街地中心部への進入路が確保され、緊急車両の通行性が改善されます。
整備効果
・計画道路は、災害時における地区内道路の代替路としても活用できます。
・(主)鞆松永線の未改良区間が通行止めになった場合でも、計画道路を利用すること
で平地区や高度医療機関(福山市民病院等)への移動時間が短縮します。
福山市民病院
地区内交通量の減少により、
救急活動が行いやすくなり
ます
この計画と合わせて
新たな鞆中心部への
進入路が予定されて
います
南消防署鞆出張所
・災害時における地区内道路の代
替路としても活用できます
・大型の緊急車両も鞆地区を通過
することができます
・東西方向の移動時間が大幅に短
縮します
緊急車両の通行性
山側トンネル案 緊急車両の通行性の確保とはなりえません
・福山市中心部~沼隈方面の移動時間は短縮します。
・計画道路は、台風や高潮など気象の影響を受けず、災害時における地区内道路の代替路としても活用できます。
・しかし、鞆に目的を持つ交通が狭隘な市街地中心部の道路に残る(P.18)とともに、鞆中心部への新たな進入路が確保で
きないため、緊急車両の進入や通行性への不安は解消されません。
・南消防署鞆出張所から平地区へは、計画道路を利用すると余計に時間がかかるため、緊急車両は山側トンネルを利用し
ません。
34
(3)高潮被害
現状の問題点・課題
高潮による浸水被害に不安があります
現
状
・鞆地区は、台風時において護岸の高さ不足や排水管からの逆流などにより、度重な
る浸水被害を受けており、高潮被害に対して大きな不安を持っています。
・このため、自衛手段として土のうを常時約 2,500 個準備し、台風のたびに地域住民
が土のうで築堤するなど不便を強いられています。
皆さまから寄せられた意見
●鞆に住んで四十五年、幾度となく、くり返す台風、ねむれぬ夜を過した事でしょう。
●去年の台風のときでも床下浸水があった。そういうことで、防災の面からもそういう不安を持っている人もいなくはな
い。
鞆地区の過去の主な浸水被害
被災年月日
要因
S53.9.15
台風 18 号
H16.7.31
台風 10 号
H16.8.30
台風 16 号
H16.9.7
台風 18 号
被災状況
床下浸水 11 戸
床下浸水 28 戸
延床面積 4,380m2
床下浸水 187 戸
延床面積 27,302m2
被災年月日
要因
H16.9.29
台風 21 号
H17.7.02
(豪雨)
H17.9.06
台風 14 号
被災状況
床下浸水 2 戸
延床面積 438m2
床下浸水 5 戸
延床面積 790m2
床下浸水 20 戸
延床面積 2,950m2
床下浸水 10 戸
延床面積 1,460m2
【資料】福山市建設局建設管理部建設政策課の記録
台風時使用後、集められた土のう
土のうストック場所
※CDL とは、概ねこれ以下とならない潮位を基準
(0m)として高さを表示したものです。
平成16年に来襲した台風 16 号で浸水した範囲は以下のとおりです
原因は、護岸未整備、高さ不足、排水管からの逆流などです。
①護岸の高さ不足・未整備の状況
浸水範囲の面積は、
約5万m2です
②護岸未整備の状況
①
②
【資料】福山市建設局建設管理部
建設政策課の記録
35
期待される整備効果
埋立て橋梁案 浸水の不安が軽減されます
・前面を埋立てることにより、高潮の影響を直接受ける区域が減少し、浸水範囲の縮小
が期待されます。
整備効果
・橋梁も埋立地も高潮に対して安全な構造となっています。したがって、高潮時でも、
歩行者・自動車・緊急車輌などの通行が確保されます。
・海岸沿いに隣接する家屋に対する越波の影響が低減されます。
浸水範囲が縮小され、
約3割(約 1.5 万m2)の
浸水が回避されます。
高潮時も安全な通行
が確保されます
浸水の低減が予想される範囲
※浸水回避範囲とは、平成16年に来襲した台風16号の高潮で浸水した範囲を基準と
して、前面を埋立てることによって浸水を防護できる範囲をいいます。
* 海岸整備については、広島沿岸海岸保全基本計画に基づき対応します。
整備イメージ
山側トンネル案 浸水の不安が軽減されません
・浸水の不安を軽減するには、別途対応する必要があります。
36
(4)新たな避難地
現状の問題点・課題
平地に避難地がありません
・現在指定されている避難地は、土砂災害危険箇所と重複していることから、高潮な
どの災害には機能しますが、土砂災害時に対しては、機能しません。
現
状
・昭和 47 年 9 月には、豪雨による土砂災害の発生で甚大な被害を受けました。
・地区住民には、土砂災害等への不安があります。
皆さまから寄せられた意見
●緊急時の安全・安心を第一に考えてほしい。
●今のままで台風が来たら町はどうなるのか。緑地帯を作ったり避難場所を作ったりしなければならない。
【資料】福山消防のあゆみ(福山消防史編集委員会)
避難地の位置及び土砂災害の危険箇所
住民の土砂災害への不安を払拭するには、平地の避難地確保が必要です。
昭和 47 年 9 月 8 日豪雨による土砂災害の状況
区分
鞆 町
全壊
世帯
半壊
人員
22
世帯
96
人員
23
93
床上浸水
世帯
人員
112
415
合 計
世帯
人員
157
604
【資料】災害対策本部の記録
37
期待される整備効果
埋立て橋梁案 土砂災害等への不安が軽減されます
整備効果
・埋立て地内に、新たに平地が確保されます。県道用地を除く面積は、概ね 1 万 3 千m2
確保されることから、災害時に避難地としても有効に活用することができ、土砂災害等
への不安が軽減されます。
・安全な避難路が確保されます
・幹線道路に接した避難地が確保されます
・緊急物資輸送が確保されます
・緊急車両の通行が確保されます
・防災拠点としても活用できます
避難地の位置及び土砂災害の危険箇所
災害時の給水状況(阪神・淡路大震災)
新たに避難地として活用可能な土地
(県道用地
を除き概ね 1 万 3 千m2)
山側トンネル案 新たな避難地は確保できません
・新たな平地は確保されないため、土砂災害時等の不安は依然として残ります。
38
4-5.
観 光
(1)自動車の来訪
現状の問題点・課題
自動車で訪れる観光客にとって不便な地区です
・鞆地区への交通手段は自動車が大多数ですが、中心地に観光駐車場が少ない上にわか
りにくい場所にあります。その結果、地区の道路に不慣れな観光客の自動車が街中に
侵入し、交通混雑が発生しています。
現
状
・第 2 駐車場付近では路上の違法駐車が日常化しており、交通安全上も地区住民の通行
上も問題です。
・観光客数・観光消費額は横ばい傾向です。
皆さまから寄せられた意見
●車が通るほど、他県ナンバーの車で渋滞し、みんなが困っています。
●せまい道路で車の渋滞が発生し、駐車場が少ない。
●鞆の浦が観光でメジャーになれないのは、道路の狭さと駐車場がない事だと思います。
●鞆に来なさいと言っても、駐車場はない。
観光客数、観光消費額は横ばい傾向です
自家用車での来訪割合が多くを占めます
鞆地区の入込観光客数および観光消費額はいずれも横ば
い傾向にあります。
鞆之浦 入込観光客数
交通手段が『鉄道』の
来訪者は、最寄り駅か
らバスや宿泊施設の送
迎車、レンタカーなど
を利用していると考え
られます
鞆之浦 観光消費額
駐車場が不足しています
入込観光客数に対する駐車場割合は、自動車以
外でのアクセスが容易な尾道市の半分程度しか
なく、他地域に比べても駐車場不足が深刻化し
ています。
違法駐車が深刻化してい
ます
駐車場不足により、特に観光シーズン
では路上への違法駐車が常態となっ
ており、観光地としてのサービス機能
が十分でないばかりか、交通安全上の
問題が生じ、地域住民の日常の通行に
も支障をきたしています。
違法駐車の状況(2006 年 5 月 3 日調査時には
最大 88 台/時ありました。)
39
期待される整備効果
埋立て橋梁案 自動車で訪れる観光客の利便性が向上します
・埋立地内に新たな駐車場が確保され、幹線道路沿いに設置されるため、観光客にもわ
かり易く、自動車で訪れる利便性が向上します。
整備効果 ・新たに駐車場が整備されることで、日常化している違法駐車が減少し、交通安全性が
向上します。
・駐車場の整備による観光客の利便性向上により、鞆の観光拠点性が促進され、観光客
数や観光消費額の増加が見込め、地域の活性化が期待できます。
駐車場の新設により、駐車可能台数は
整備前の約 2 倍に増加します。
整備イメージ
※駐車台数は今後変更される可能性があります
主な観光施設と駐車場
山側トンネル案 自動車で訪れる観光客の利便性は向上しません
・新たな駐車場が確保されないため、鞆の観光拠点性は向上しません。
・日常化している違法駐車や地区内への観光客の乗り入れも減少しないため、交通混雑の解消ができず、地区住民やまち
を散策する観光客の安全性の向上も期待できません。
40
(2)観光施設間の移動
現状の問題点・課題
観光客と自動車が輻輳※しています
現
状
・観光施設間の移動は(主)鞆松永線の未改良区間などの狭い道路を利用せざるを得ませ
ん。そのため鞆地区に不慣れな観光客は自動車の合間を縫って歩くなど、危険な状況
となっています。
皆さまから寄せられた意見
●現状の交通事情では観光客等の方は二度と来たいとは思われないはずです。
●車が通るほど、他県ナンバーの車で渋滞し、みんなが困っています。
観光ルートの状況
地区内の主な観光施設
(3)広域観光
広域観光形成の弊害となっています
現
状
・広域観光の形成のため、備後地域の周遊性向上が望まれていますが、福山市や尾道市
から鞆へ向かう大型観光バスは、(主)鞆松永線の未改良区間手前で折り返さざるを得な
い状況にあります。
皆さまから寄せられた意見
●車社会の今日大型バス行き止まりの町、こんな町の発展はありません。
広域観光周遊ルート
ふくそう
※「輻 輳 」とは:物事が一ヶ所に同時に集中してこみあうこと。
41
期待される整備効果
埋立て橋梁案 観光客の安全性・快適性が向上します
整備効果
・新たに道路を整備することで地区内の交通混雑が解消(P.18)され、また計画道路には
両側歩道が整備されることから、観光施設間を移動しながら散策する観光客の安全
性・快適性が向上します。
地区内交通量が減少することで、地
区内を散策する観光客の安全性・快
適性向上が期待されます
計画道路には広い歩道が整備され、海側から町並
みを望む新たな景観ポイントとしても期待され
ます。
整備イメージ
主な観光施設
山側トンネル案 観光客の安全性・快適性は向上しません
・(主)鞆松永線の未改良区間は、依然として交通混雑が残る(P.18)ことから、観光客の安全性・快適性は向上しません。
・山側トンネルは観光中心地である鞆港周辺から離れているため、トンネルを整備しても観光客は未改良区間を利用せざ
るを得ず、観光客の安全性・快適性は向上しません。
(3)広域観光
埋立て橋梁案 鞆を中心とした広域観光ルートが形成されます
整備効果
・計画道路の整備により鞆を中心とした大型バス等による広域観光ルートが形成されま
す。
福山市や尾道市との連携が強化
され、鞆地区の拠点性が向上し
ます
広域観光周遊ルート
山側トンネル案 鞆を中心とした広域観光ルートは形成されません
・福山市中心部~沼隈~尾道の広域観光ルートが形成されます。
・山側トンネルは鞆の観光地から離れており、鞆を避けて通るルートとなっています。このため、鞆を中心とした広域観
光ルートは形成されません。
42
4-6.
港 湾
(1)港湾施設の不足
現状の問題点・課題
港湾施設不足で様々な問題が発生しています
・係留施設・船揚場などが未整備で漁船も沖合に係留するなど作業効率も悪く、高齢化
が進む中、漁業従事者の労働環境は非常に悪くなっています。
・また、荷捌き用地や漁具干場などが未整備のため、仮置きした漁具が散在しています。
現
状
・海域では漁獲物の積み下ろし時に漁船同士・漁船と旅客船が輻輳し危険な状態です。
・陸域では旅客船利用者が物揚場に近接した歩道のない道路を通行するため、漁業関係
者の積み込み作業等と輻輳し危険な状態です。
・施設の老朽化が進んでおり、台風時などに被災する可能性があります。
皆さまから寄せられた意見
の●港は荷揚げのトラブルが絶えません。
の●港は舟の溜り場、ゴミの山の港です。
の●桟橋・岸壁・道路は不法物置、駐車場となっており、他都市では見ることのない雑然として、お客様に恥ずかしい。
③ 漁具干場が未整備
④ 荷捌き用地が未整備
⑤ 係留施設の不足
⑥ 雁木の老朽化
⑥
④
③
②
⑤
⑦ 旅客船と漁船が輻輳※
①
⑦
⑧
港湾施設不足で問題が発生している箇所
② 公共船揚場が未整備
① 係留施設の不足による漁船の沖合い係留
⑧ 漁具干場が未整備
ふくそう
43
※「輻 輳 」とは:物事が一ヶ所に同時に集中してこみあうこと。
期待される整備効果
埋立て橋梁案 漁業活動・フェリー利用客等の安全性・効率性が向上します
・小型船だまりふ頭が整備されることで、高齢化が進む漁業従事者が、安全で効率的な漁
業活動を行うことができるようになります。
整備効果
・保管施設用地や荷捌き用地及び漁具干場などが一体的に整備されることから、景観も向
上します。
・フェリー・旅客船と漁船の輻輳がなくなるため、港内の航行安全性が向上します。
・フェリーふ頭の整備により海上と陸上の交通結節点が確保されるとともに、フェリー施
設利用者と小型船だまり施設利用者を適切に分離できるため安全性や利便性の向上が
図られます
フェリー用係留施設
小型船用係留施設
船揚場
整備される小型船だまりふ頭
整備されるフェリーふ頭
整備イメージ
山側トンネル案 港湾施設は別途確保する必要があります
・小型船だまりふ頭が確保されないため、安全で効率的な漁業活動を行うことができず、仮置きした漁具が散在したままです。
・旅客船利用者と漁業関係作業が分離できません。
・別途、係留施設や荷捌き用地などを確保する必要があります。
44
●お問い合わせ
広島県福山地域事務所建設局
〒720-8511
広島県福山市三吉町1丁目1-1
TEL:(084)921-1311(代表)
福山市建設局土木部港湾河川課
〒720-8501
広島県福山市東桜町3-5 TEL:(084)928-1141(ダイヤルイン)
45
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