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楠葉平野山瓦窯群出土の素弁八葉蓮華文軒丸瓦の笵傷進行状況

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楠葉平野山瓦窯群出土の素弁八葉蓮華文軒丸瓦の笵傷進行状況
①
①~⑤写真部分
②
ちゅうぼう れん じ
素弁八葉蓮華文軒丸瓦
① 中房・蓮子とも輪郭がまだ鮮明。
② 蓮子が 2 箇所で繋がる。
④
③
③ ②の中房を彫り直し、
繋がった蓮子を分ける。
⑤
④ また蓮子が繋がり、中房の輪郭も曖昧となる。
⑤ 中房・蓮子の輪郭とも不鮮明さを増す。
楠葉平野山瓦窯群出土の素弁八葉蓮華文軒丸瓦の笵傷進行状況
楠葉平野山瓦窯群は大阪府枚方市と京都府八幡市にまたがる男山丘陵南傾斜面に、摂津四天王寺創建
そ べんはちよう
瓦を焼成するために開かれた瓦窯群です。そこから出土する素弁八葉蓮華文軒丸瓦(左上)は、大和法
かわらはん
隆寺若草伽藍の金堂所用瓦のひとつと同じ木製の型(瓦笵)で製作されたことが明らかとなっています。
が とう
瓦当面をみると、当瓦窯群の方に傷みがあり、瓦笵は法隆寺で使用された後、この地にもたらされたと
はんきず
考えられています。さらに、当瓦窯群のものも一様でなく、写真のように傷(笵傷)の進行(①から⑤)
が追えます。これらのことから瓦笵が寺院を超え、長期にわたり繰り返し使用された様子が判り、そし
てそれは、この瓦笵がいかに重要視されていたかを雄弁に物語ります。
さらに笵傷の進んだものが、摂津上町台地上から出土しており、寺院としての詳細は不明ですが、法
円坂廃寺とも呼ばれています。法円坂廃寺のものは、⑤段階もしくはさらに進行したものに限られてお
り、当瓦窯群で役目を終えた瓦笵が上町台地の地に移動した可能性があります。このように楠葉平野山
瓦窯群とそこから出土した瓦は、我国における初期瓦生産、ひいては初期仏教文化などを考える上で欠
くことのできない重要なものです。
(西田敏秀)
文化財ニュース
船橋遺跡第 255 次調査
平成 26 年 5 月 15 日~ 5 月 24 日にかけて、個人住宅建設に先立つ発掘調査を船橋本町 2 丁目 13‐3
において実施しました。
調査地は海抜十数mの低位段丘上に立地し、南側に船橋川が東西に流れる船橋遺跡の北辺部に位置し
ます。船橋遺跡は、旧石器時代~江戸時代までの遺構・遺物が見つかっており、平成 25 年度に実施し
た西側隣接地の調査(第 246 次調査)では、平安時代前期頃の落ち込みが見つかり、土師器や須恵器を
はじめ、鉄製品や石製品など多彩な遺物が廃棄されていることが確認されました。
今回の調査では、掘立柱建物 3 棟、溝 2 条などが見
つかりました。調査区が狭小なため断片的にしか確認
できませんでしたが、掘立柱建物はいずれも主軸を真
北よりやや東に振る南北棟で、梁行 2 間・桁行 3 間に
なると考えられます。出土遺物から 10 世紀頃の建物
と思われ、第 246 次調査で見つかった落ち込みと合わ
せ、この地域における平安時代の宅地利用を考える上
で興味深い資料を提供してくれます。
(枚方市教育委員会 松野元宏)
調査区西半遺構検出状況
枚方上之町遺跡第 101 次調査
今回の発掘調査は、平成 26 年 5 月 9 日~ 30 日にかけて個人住宅建設に先立ち実施したものです。
調査地は市域の南西部で、枚方丘陵の北辺部に立地する弥生時代~室町時代の複合遺跡である枚方上之
町遺跡のほぼ中央付近に位置しています。
調査では、
地表面から -20 ~ 60 ㎝の地層上面で、
奈良時代の建物が 1 棟見つかりました。この建物は、
東西が 6 尺半(約 1.95 m)等間、南北が 5 尺(約 1.55 m)等間を測る東西 2 間・南北 3 間の規模で、
内部に束柱を配した総柱建物です。総柱建物は地面から床を高く持ち上げた構造と考えられ、主に倉庫
とみられています。柱を据えた地層から、8 世紀頃の須恵器が出土したことにより、奈良時代に建てら
れたことがわかりました。
調査地の東側隣接地で実施した第 81 次調査地でも
奈良時代の建物群が見つかっており、今回の調査の建
物もそれらに関連するものと考えられます。調査地の
北から西側には、奈良時代の創建と伝わる万年寺や延
喜式内社である意賀美神社が古代に造営されていたと
みられ、建物群はこれらの社寺と深い関わりを持って
形成された可能性があり、その性格が注目されます。
(井戸竜太)
総柱建物の西半部 ( 東から )
お知らせ
◎旧田中家鋳物民俗資料館 ちょこっと展「みんぐ動物園」
様々な姿で民具の中にいる動物から、人と道具と動物の関わりを考えます。
開 催 期 間:平成 26 年 7 月 19 日(土)~ 10 月 19 日(日)
展示説明会:8 月 1 日(金)13:00 2 日(土)10:00・13:00
開 館 時 間:9:30 ~ 17:00(入場は 16:30 まで)
休 館 日:月曜日(休・祝日の場合は翌日)
入 館 料:無料
◎ジュニア文化財学級「勾玉をつくろう」 要申込 定員:15 名 ( 多数の場合抽選 ) 参加費 250 円
日 時:平成 26 年 8 月 18 日(月)10:00 ~ 12:00 場 所:枚方市立旧田中家鋳物民俗資料館体験工房
対 象:小学 3 ~ 6 年生 ( 持物 筆記用具、飲み物、タオル )
申込方法:往復ハガキ・FAX に、住所・氏名・学校名・学年・電話 (FAX) 番号・イベント名を記して山田
分室まで。8/8(金)消印有効
◎第 17 回輝きプラザきらら文化財展示会「枚方宿遺跡出土品からみるやきものの世界」
期 間:平成 26 年 8 月 19 日(火)~平成 27 年 1 月 26 日(月)
場 所:輝きプラザきらら 2 階 展示ルーム
開館時間:9:00 ~ 17:30(日・祝は 17:00 まで)
休 館 日:毎月第 4 火曜日・年末年始 入 館 料:無料
くらわんか茶碗
交 通:京阪枚方市駅(北口)から京阪バス北片鉾行き「片鉾・中央図書館」下車
◎平成 26 年度文化財連続講座② 要申込 定員 140 名(先着順)
参加費 100 円
内 容:吉田靖雄(大阪教育大学名誉教授)
「河内における行基の活動」
日 時:平成 26 年 9 月 13 日(土)
14:00 ~ 16:00(開場 13:30)
場 所:枚方市立メセナひらかた会館 6 階 大会議室
申込方法:8/1(金)より電話(050-7105-8058)で枚方市教育委員会文化財課へ
◎考古学講座 要申込 定員 20 名(先着順)
参加費 300 円
テ ー マ:
「枚方寺内と枚方宿-枚方市発展の礎を探る-」
日 時:平成 26 年 10 月 3 日・10 日・17 日の各金曜日 13:30 ~ 15:00
会 場:輝きプラザきらら 2 階 学習ルーム
申込方法:往復ハガキに住所・氏名・電話番号・イベント名を記して山田分室まで。9/12(金)消印有効
◎市内歴史ウォーク「歩いてみよう!枚方寺内と枚方宿」
要申込 定員 40 名(多数の場合抽選)
日 時:平成 26 年 10 月 24 日(金) 13:30 ~ 17:00(予定)
参加費 100 円
集 合:13:15 京阪電車「枚方公園駅」
解 散:17:00 京阪電車「枚方市駅」
申込方法:往復ハガキに住所・氏名・電話番号・イベント名を記して山田分室まで。10/8( 水 ) 消印有効
★申込先の山田分室の住所・FAX 番号は表紙をご覧ください。
親子の歴史座談
No.99
親 子 の 歴 史 座 談 、 永 遠 に
長らくお楽しみいただきました『親子の歴史座
宇治田「私の家族、妻と長男と長女です。子供た
談』は前号 No.98「禁野火薬庫と枚方製造所」を
ちの想定年齢は長男が中学 3 年生、長女が小学 6
もちまして、終了いたしました。1989 年の創刊
年生です。
」
号 No.1「枚方に象がいた頃」から足掛け 25 年、
編集子「25 年前、皆様はお幾つでした?」
実に四半世紀に及ぶ大仕事となりました。執筆は
宇治田「私が 42 才、妻が 37 才、長男が 12 才、
当法人職員、宇治田和生さんにご退職後も併せて
長女が 9 才かな。
」
ご担当いただいておりました。本日は宇治田さん
編集子「時の流れを感じますね。差支えございま
に、苦労話や裏話を伺って、№ 99「親子の歴史
せんでしたら、研太くん、文子さんのご近況は ?」
座談、永久に」をお送り致します。
宇治田「研太は、長野県伊那市で木にかかわる仕
編集子「宇治田さん、本当に長期間ありがとうご
事をしています。3 児の父となりました。文子は、
ざいました。身元がバレてしまいましたが、本日
東京都で救急医療センターの看護師で既婚です。
」
はどうぞよろしくお願いいたします。
」
編集子
「御二人ともご立派に成長なさりましたね。
宇治田「いえいえ、これで終わりと思うと、内心
最後に、ご執筆いただいたご感想と当法人に期待
ほっとしています。こちらこそよろしく。
」
されることなど伺えればと思います。
」
編集子「
『親子の歴史座談』
、いろいろとご苦労い
宇治田「本当に 25 年もよく続いたものだと思い
ただいたと思いますが、一番のご苦労を挙げると
ます。これからも文化財を市民の方に判りやすく
したら何ですか。率直なところお願いします。
」
伝えていくために、恒常的な施設を望みます。
」
宇治田「始めた頃は、こんな、25 年間もつづく
編集子「宇治田さま、本当に長期間どうもありが
とは思ってなくて、途中、いつ止めたらよいのか、
とうございました。皆を代表しまして感謝いたし
ゴールが見えなかったことかな。それと、時代を
ます。そして、ご家族のご発展をお祈りいたしま
進めて行くスタイルで書いたので、遡ることがで
す。
」
きなかったこと。
」
編集子「逆に、楽しかったことは?」
宇治田「初めは、書く話題も沢山あり、何を書こ
うか楽しみでした。
」
編集子「父さん・母さん・研太・文子の 4 名が出
てきますが、
これにはモデルがあったのですか?」
インタビューを受ける宇治田さん ( 右側 )
編集後記
表紙で紹介しました、楠葉平野山瓦窯群はその歴史的重要性もさることながら、その調査は当法人設立
1 年目という記念の年に実施しました。現在、この素弁八葉蓮華文軒丸瓦をデザインしたシンボルマーク
を本だより表紙などに使用しています。「いつまでも初心を忘れずに!」という自戒の念も含めて、、、。
おかげさまをもちまして、ここに無事 100 号をお届けすることができました。今後ともどうぞよろしく
お願いいたします。
(T.N)
こひらちゃん
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