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ニカド/ニッケル水素充電回路の設計

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ニカド/ニッケル水素充電回路の設計
2直セルを2時間で充電する急速充電回路
203
第2-8章
急速充電回路からスイッチング型の高効率充電回路まで
ニカド/ニッケル水素充電回路の設計
木村 好男/小澤 秀清
Yoshio Kimura/Hidekiyo Ozawa
本稿では,実際のニカドまたはニッケル水素蓄電池の充電回路をいくつか紹介します.
一つは,0.5 ∼ 1C の充電電流で 1 時間から 2 時間程度かけて充電を行う急速充電回路です.もう一つ
は,リチウム・イオン蓄電池も充電できるスイッチング方式の高効率な CVCC 充電回路です.
2直セルを2時間で充電する急速充電回路
■ 急速充電回路の基本構成と機能
図 2-8-1 に示すのは,ニッケル水素蓄電池の急速充電回路の一般的なブロック図です.出力 0.5 ∼ 1C
の定電流回路,−ΔV 検出回路,ΔT/Δt 検出回路,タイマ回路などで構成されます.
● −ΔV 検出回路
図 2-8-2 に,ニッケル水素蓄電池の急速充電時の電池電圧の特性例を示します.
電池が満充電状態にあるときの電池電圧の低下(−ΔV )は,ニカド蓄電池よりニッケル水素蓄電池の
ほうが小さく,ニッケル水素の場合 10 mV 程度です.低下分は,充電電流が小さいほど少なくなる傾
電流源
充電電流制御回路
整
流
回
路
満充電検出回路
−⊿V
検出回路
⊿T /⊿t
検出回路
タイマ回路
温度検出回路
〈図 2-8-1〉一般的なニッケル水素充電回路のブロック図
バ
ッ
テ
リ
204
第2-8章 ニカド/ニッケル水素充電回路の設計
1.60
⊿t
60
50
1.50
1.45
1.40
電池:東芝TH-3G(ニッケル水素)
定格容量 1550mAh
充電条件:定電流 850mA
周囲温度 25℃
1.35
1.30
1.25
0
20
40
60
80
100
充電容量(時間)[%]
電池:東芝TH-3G(ニッケル水素)
定格容量 1550mAh
充電条件:定電流 850mA
周囲温度 25℃
⊿V
電池温度[℃]
電池電圧[V]
ピーク電圧から一定の電圧が低下す
1.55
る満充電時の現象を検出する
40
⊿T
⊿t
30
⊿T /⊿ t 検出とは…
単位時間当たりの温度上昇率が高く
なる満充電時の現象を検出する方法
20
120
140
10
0
20
40
60
80
100
充電容量(時間)[%]
120
140
〈図 2-8-2〉急速充電時のニッケル水素電池の充電電圧特性例 〈図 2-8-3〉急速充電時のニッケル水素電池の電池温度特性例
向にあり,電池温度によっても変化します.詳細は電池メーカの資料を参照してください.
● ΔT/Δt 検出回路
図 2-8-3 に,ニッケル水素蓄電池を急速充電したときの電池温度の特性例を示します.
通常 1 ∼ 2 ℃/分で満充電と判断します.正確に電池温度を測定するには,温度センサを電池に密着さ
せる必要があります.
● 保護回路
−ΔV 検出回路やΔT/Δt 検出回路が動作しない場合でも過充電が発生しないように,急速充電回路
には,タイマ回路,温度検出回路,過電圧検出回路といった保護機能が必須です.異常時には,電流源
をシャットダウンします.
温度検出回路
電池の温度管理はとても重要です.充電効率の良い周囲温度は 10 ∼ 30 ℃といわれています.過充電
が続くと電池の温度が上昇してくるので,異常な温度上昇を検出してシャットダウンします.電池メー
カの資料に記載されているカットオフ温度で,急速充電を停止させる必要があります.
過電圧保護回路
タイマ回路と温度検出回路以外に電池電圧も監視して,異常電圧を検出する必要があります.
ニッケル水素蓄電池の公称電圧は 1.2 V/セルですが,充電中は公称電圧よりも高い電圧になります.
充電電流にもよりますが,1.8 V/セル程度まで上昇することがあります.
ところが,電池が異常状態に陥り,内部抵抗が増大したりすると,電池電圧が異常な値(2 V 以上)ま
で上昇します.このような場合,異常電池と見なして急速充電を停止させる必要があります.電池が内
部でショート状態になり,充電電流を流しても電池電圧が上昇しない場合についても同様の処理が必要
です.
タイマ回路
充電時間と−ΔV 検出禁止時間をカウントしています.充電時間の上限を決めるもので,設定時間を
越えたらシャット・ダウンします.
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