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プログラム
―公開シンポジウム―
平成19年度 科学研究費補助金(研究成果公開促進費)
「研究成果公開発表(B)
」
公開シンポジウム 「あなたはどのくらい親知らずを知っているか。」
10月6日(土)14:00∼17:00
講堂
■オーガナイザー
金澤英作(日本大学松戸歯学部)
影山幾男(日本歯科大学新潟生命歯学部)
■シンポジスト
1.親知らずの萌出率の地理的変異と集団間の違い
影山幾男(日本歯科大学新潟生命歯学部)
「日本人と外国人の智歯萌出率について、日本歯科大学学長 中原 泉先生のデータを基に発表する。
豊富なデータより現代の智歯萌出率の地理的変異と集団間の違いと、それらの原因を解説する。」
2.原人と日本人における智歯の“退化”
海部陽介(国立科学博物館人類研究部)
「時代的変遷に関して、一般の人にわかりやすく講演する。縄文人から現代日本人に至る智歯の欠如率
の時代的変遷とその将来についてわかりやすく解説する。」
3.親知らずがある人とない人の歯はどう違うのか?
近藤信太郎(愛知学院大学・歯学部・解剖 2 )
「智歯喪失と他の歯との影響について講演する。智歯の喪失が他の歯の大きさにどのような影響を与え
るかについて解説する。」
4.親知らずはどうしたらいいの?
又賀 泉(日本歯科大学新潟生命歯学部)
「智歯の自家移植に関して講演する。智歯に対する扱いについて臨床の立場より診断と治療の現状を解
説する。」
5.歯科矯正治療で親知らずを抜く理由
寺田員人(日本歯科大学新潟生命歯学部)
「智歯が歯並びに与える影響ついて、豊富な臨床経験を基に解説する。」
■コメンテータ
山田博之(愛知学院大学歯学部)
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S−01 シンポジウム 「海外の人類学関連学会の動向」
10月6日(土)11:00∼13:00
■オーガナイザー
金澤英作(日本大学松戸歯学部)
■総合司会
金澤英作(日本大学松戸歯学部)
■シンポジスト
1.アメリカ自然人類学会の近年の動向
瀬口典子(モンタナ大学ミズーラ校、人類学部)
2.英国における形質人類学関係学会の動向
清水大輔(京都大学霊長類研究所)
3.フランス人類学事情
○奈良貴史(国際医療福祉大学・福岡リハ)、Bruno Maureille (Bordeaux I・Anthropologie)
4.ヨーロッパ人類学会
佐竹 隆(日本大学松戸歯学部)
5.人類学国際組織の動向
金澤英作(日本大学松戸歯学部)
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講堂
S−02 キネシオロジー分科会、ヘルスサイエンス分科会 共催シンポジウム(ランチョンシンポジウム)
「四足歩行から二足歩行へ」
※お弁当は各自ご用意ください。
講堂10月6日(土)11:30∼14:00
112教室
■オーガナイザー
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
中野良彦(大阪大学・人間科学)
岡田守彦(帝京平成大学・ヒューマンケア)
■総合司会
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
中野良彦(大阪大学・人間科学)
岡田守彦(帝京平成大学・ヒューマンケア)
■シンポジスト
1.霊長類の運動機能の個体発達について
中野良彦(大阪大・人間科学・人類)
2.チンパンジーの二足歩行獲得
木村 賛(石川県立看護大学)
3.乳幼児の四足歩行と二足歩行の動作特性
岩田浩子(名古屋女子大学短期大学部)
4.日常的に四足歩行するヒトのロコモーションについて
○松村秋芳(防衛医大・生物学)、 真家和生(大妻女子大・生活科学資料館)、
高橋 裕(防衛医大・生物学)、ムンドロス S.(ベルリン医科大学)、岡田守彦(帝京平成大)
5.ヒトへの進化と遺伝子・ゲノム研究
植田信太郎(東京大学・大学院理学系研究科)
■コメンテータ
岡田守彦(帝京平成大学・ヒューマンケア)
中務真人(京大・院理・自然人類学)
小林 靖(防衛医科大学校 解剖学講座)
針原伸二(東京大・理・生物科学)
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S−03 シンポジウム
「メソポタミアを中心とした西アジア古代人の形質特性」
10月6日(土)14:00∼17:00
アイヴィホール
■オーガナイザー
石田英實(滋賀県立大学)
■総合司会
石田英實(滋賀県立大学)
■シンポジスト
1.西アジア地域出土人骨の頭蓋形態変異
近藤 修(東京大学・大学院理学系研究科)
2.イラクにおける乳歯形態の時代変化について
○北川賀一、真鍋義孝、小山田常一、井川一成、堤田 証、加藤克知、六反田篤(長崎大学・大学院医
歯薬)
3.イラク・ハムリン遺跡群出土頭蓋骨の 3 次元数理形態学的分析
○荻原直道(京都大学・大学院理学研究科)、巻島美幸(龍谷大学)、石田英實(滋賀県立大学・人間看
護学部)
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S−04 シンポジウム
「人類進化における左右差 −右手利きはヒト固有の特徴か−」
10月7日(日)15:00∼17:00
■オーガナイザー
真家和生(大妻女子大学・生活科学資料館
高山 博(慶應義塾大学・文・人類学)
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
■総合司会
高山 博(慶應義塾大学・文・人類学)
■シンポジスト
1.気になる左右非対称性 ―歯の分析例―
溝口優司(国立科学博物館・人類研究部)
2.帯状回後部の機能から見たヒトの脳の左右差
小林 靖(防衛医科大学校 解剖学講座)
3.江戸時代女性人骨に見られた上肢の左右差
○塩野智子・高山 博(慶應義塾大学・文学部・人類学)
4.ゴリラの利き手について
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
5.現代日本人青年の利き手調査と利き手意識は感覚性か運動性かについての検討
真家和生(大妻女子大学・生活科学資料館)
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S−05 シンポジウム
「中等教育(中・高等学校)課程での人類学の導入」
10月8日(月)13:00∼15:30
講堂
■オーガナイザー
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
高山 博(慶應義塾大学・文・人類学)
■総合司会
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
高山 博(慶應義塾大学・文・人類学)
■シンポジスト
1.人間性教育の重要性について
馬場悠男(国立科学博物館・人類研究部)
2.教科書ができるまで
田代直幸(文部科学省)
3.高等学校理科において進化と人類学の学習がもたらす効果について
宮本俊彦(柏崎翔洋中等教育学校)
4.中学・高校における人類学教育のニーズと教育実践
平田泰紀(大阪府立高石高等学校)
5.人類の立ち位置を知るために
市石 博(東京都生物教育研究会/都立国分寺高等学校)
6.人類の起源は理科の教科書でどのように扱われてきたか
○松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)、高山 博(慶応大・文・人類学)、高橋 裕(防衛医科大学
校・生物学)
7.高等学校検定済教科書(日本史・世界史)における人類学記事の時代変化
○高山 博・若林美由紀(慶応大・文・人類学)
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S−06 シンポジウム 「日韓の弥生期における交流を考える」
10月8日(月)13:00∼15:30
■オーガナイザー
吉田俊爾(日歯大・生命歯・解剖 1 )
■総合司会
吉田俊爾(日歯大・生命歯・解剖 1 )
鈴木隆雄(東京都老人総合研究所)
■シンポジスト
1.韓国出土古人骨の研究史
吉田俊爾(日歯大・生命歯・解剖 1 )
2.礼安里古墳群出土人骨
竹中正巳(鹿児島女子短期大学)
3.勒島人骨の歯科人類学的考察
藤田 尚(新潟県立看護大・看護学部・人間環境科学)
4.韓国および日本の弥生時代における結核についての古病理学的検討
鈴木隆雄(東京都老人総合研究所)
■コメンテータ
中橋孝博(九州大学)
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一般演題(口演発表)
10月7日(日)9:00∼11:48
形態 1 (9:00∼10:00)
座長:河野礼子(国立科学博物館
講堂
人類研究部)
O−01 縄文時代人の地域差:頭蓋形態による思考実験
近藤 修(東京大・生物科学・人類)
O−02 山下町第一洞穴人と縄文人の形態比較
藤田祐樹(沖縄県立博物館)
O−03 頭高と脊柱高を考慮した港川人骨の身長推定
馬場悠男(国立科博・人類)
O−04 沖縄県南城市ハナンダー洞穴から出土したリュウキュウジカの齢推定と、ニホンジカ集団との齢
構成の比較
尾崎麦野(東大・理・生物科学)
O−05 港川人1号の上下顎大臼歯の咬耗について
小寺春人(鶴見大・歯・解剖 2 )
形態 2 (10:00∼10:48) 座長:近藤信太郎(愛知学院大学歯学部解剖学
第 2 講座)
O−06 マイクロCTを用いた歯牙の三次元計測による年齢推定ならびに性別判定についての検討
染田英利(東歯大・解剖)
O−07 上顎側切歯先天欠如が残りの歯の歯冠近遠心径に及ぼす影響
山田博之(愛院大・歯・解剖 2 )
O−08 現代日本人における下顎隆起の出現頻度について ―10歳代における観察―
五十嵐由里子(日本大・松戸歯・解剖人類形態学)
O−09 縄文人と現代日本人における下顎骨正中断面内の骨分布とその成長パターン
深瀬 均(東大・理・人類)
形態 3 (10:48∼11:48) 座長:五十嵐由里子(日本大学松戸歯学部
第一解剖学教室)
O−10 頭蓋底の長さに対する脳の大きさが現代人の脳頭蓋形態に及ぼす効果
久保大輔(東大・理・人類)
O−11 脳頭蓋のかたちは顔面構造とは無関係?
溝口優司(科博・人類)
O−12 現代日本人における上腕骨骨頭と三角筋粗面の関係
福本 敬(東大・理・人類)
O−13 真猿類における中手骨、中足骨の形態と手足の把握性
高野 智(財団法人日本モンキーセンター)
O−14 頭骨からみたニホンザルの地域変異
山本亜由美(京都大・霊長研)
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一般演題(口演発表)
10月7日(日)9:00∼11:12・15:00∼16:48
遺伝 1 (9:00∼9:48)
アイヴィホール
座長:太田博樹(東京大学大学院)
O−15 ペルー南海岸における集団の変遷
篠田謙一(科博・人類)
O−16 東北縄文人骨のミトコンドリアDNA解析
安達 登(山梨大学医学部法医学講座)
O−17 ゲノムワイドSNP解析からみたオセアニアにおける遺伝子流動と自然選択
木村亮介(東海大・医学部・法医)
O−18 栽培イネの起源と古代イネDNA分析
熊谷真彦(東大・院理)
遺伝 2 (9:48∼10:48)
座長:隅山健太(情報・システム研究機構
国立遺伝学研究所
進化遺伝研究部門)
O−19 mtDNAとY−STRから見た琉球諸島(宮古・石垣島)住民の遺伝的多様性
松草博隆(東京大・新領域・先端生命)
O−20 新世界ザル色覚多型におけるL−Mオプシン平衡選択の検証:ヒト色覚多型の適応的意義の理解に
向けて
樋渡智秀(東大・院・新領域・先端生命)
O−21 霊長類における単一アミノ酸反復配列の進化
五條堀 淳(東大・理・生物・人類)
O−22 ヒト色覚変異の適応的意義検討に向けたL−Mオプシン遺伝子解析法の開発
白井祐介(東京大学・大学院新領域 創成科学研究科・先端生命科学専攻)
O−23 ヒト染色体間のCpG突然変異率のばらつき
三沢計治(東大・理・生物科学)
生態(10:48∼11:12)
座長:山内太郎(北海道大学・医学部・保健学科)
O−24 狩猟採集民と農耕民との共生関係
池谷和信(国立民族学博物館 総合研究大学院大学)
O−25 生殖管理技術からみた豚の家畜化過程の問題
中井信介(総合研究大学院大学 先導科学研究科)
進化 1 (15:00∼15:48) 座長:海部陽介(国立科学博物館人類研究部)
O−26 狩猟採集キャンプにおける定着と移動 ―カメルーン南東部の狩猟採集民バカの事例より―
林 耕次(国立民族学博物館・外来研究員)
O−27 カメルーン東南部の焼畑農耕民バクエレおよびピグミー系狩猟採集民バカにおける配偶者選択(予察)
大石高典(京都大・理・生物科学・人類進化)
O−28 ユーラシア大陸における絶滅したオナガザル類の進化史について
高井正成(京都大・霊長研)
O−29 ケニア、ナカリ地域における最近の発掘成果
中務真人(京大・院理・自然人類学)
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進化 2 (15:48∼16:48) 座長:中務真人(京都大学大学院理学研究科)
O−30 チョローラピテクスの発見:類人猿とヒトの分岐年代の再検討は必要か?
諏訪 元(東京大・総合研究博物館)
O−31 チョローラピテクス大臼歯形状の機能形態分析
河野礼子(科博・人類)
O−32 Patterns of Middle Pleistocene hominin evolution in Africa and the emergence of modern humans
Mbua Emma(ケニア国立博物館・古生物)
O−33 最古のジャワ原人の問題
海部陽介(国立科博・人類)
O−34 ピテカントロプスⅧ号(Sangiran 17)頭骨の由来層準の検証
松浦秀治(お茶の水女子大学)
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一般演題(口演発表)
9:00∼11:12
先史(9:00∼9:48)
座長:米田 穣(東京大学・新領域・人類進化)
O−35 シリア、デデリエ洞窟にみられる後期ムステリアン石器群の年代的変化
西秋良宏(東京大・博物館)
O−36 ヨルダン南部、タラート・アビーダ出土の前期青銅器時代遊牧民人骨について
橋本裕子(奈文研・環境考古)
O−37 西日本におけるアカホヤ前後の炭素14年代測定
遠部 慎(国立歴史民俗博物館)
O−38 大浦山洞穴の人骨と獣骨資料における損傷パターン比較
佐宗亜衣子(東大・総合研究博物館)
古人骨 1 (9:48∼10:36)
座長:近藤 修(東京大学大学院理学系研究科
生物科学専攻)
O−39 東南アジア人の二層構造仮説の復活に向けて:ベトナムでの先史人骨の例から
松村博文(札幌医大・解剖 2 )
O−40 四肢形態の成長変化から見た古代集団の生活環境
岡崎健治(学振・海外研究員(吉林大学辺境考古))
O−41 愛媛県上黒岩岩陰遺跡出土の縄文早期人骨
中橋孝博(九州大・比較社会文化研究院)
O−42 成長初期における縄文時代人四肢骨の断面形状に関する研究
水嶋崇一郎(東大・理・人類)
古人骨 2 (10:36∼11:12) 座長:近藤 恵(お茶の水女子大学
生活科学部
人類科学講座)
O−43 オホーツク文化期の古食性の復元
米田 穣(東大・新領域)
O−44 古人骨の同位体分析による鎌倉時代由比ヶ浜南遺跡における授乳習慣の復元
下見光奈(東京大・新領域・先端生命)
O−45 古人骨の分析による江戸時代の鉛汚染の研究
柿沼由佳理(東京大・新領域・先端生命)
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一般演題(口演発表)
9:00∼11:48
運動 1 (9:00∼9:48)
アイヴィホール
座長:荻原直道(京都大学大学院理学研究科 動物学教室)
O−46 マリ人と日本人の歩行パラメータの比較
足立和隆(筑波大・人間総合科学・体育)
O−47 健康な高齢者歩行の身体動揺について
木村 賛(石川県看大)
O−48 動物園環境での霊長類ロコモーション定量的解析の試み
平崎鋭矢(大阪大・人間科学・生物人類)
O−49 レッサーパンダ(Ailurus fulgens)の二足行動が示唆するヒト上科における二足歩行能の起源:進
行方向意識転換仮説
松村秋芳(防衛医大・生物)
運動 2 (9:48∼10:36)
座長:平崎鋭矢(大阪大学人間科学研究科)
O−50 水平梯子でのロコモーションにおけるニホンザルの後肢の接地
日暮泰男(大阪大・人間科学・生物人類)
O−51 歩行時の足部形態の計測
河内まき子(産総研・デジタルヒューマン)
O−52 道具使用に伴う感覚運動統合の形成過程
平井直樹(杏林大・医・統合生理)
O−53 中国内蒙古の子どもの皮脂厚の成長
芦澤玖美(大妻女子大・人間生活科研)
霊長 1 (10:36∼11:12)
座長:田中伊知郎(四日市大学環境情報学部)
O−54 火の人類進化考(1)
林 俊郎(目白大・社会学部・社会情報学科)
O−55 野生チンパンジーの投擲行動
西田利貞((財)日本モンキーセンター)
O−56 タンザニア、マハレのチンパンジーによるベッド作成行動と採食行動の関係
五百部 裕(椙山女大・人間関係)
霊長 2 (11:12∼11:48)
座長:高野 智(財団法人日本モンキーセンター)
O−57 テナガザルの音声生成・操作に関する実験的研究
西村 剛(京都大・霊長研)
O−58 Laos北部における霊長類の分布と生息実態
濱田 穣(京大・霊長研・形態)
O−59 ニホンザルにおけるシラミ卵取り行動の発達と毛づくろい相手の行動変化の関連
田中伊知郎(四日市大・環境情報)
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一般演題(ポスター発表)
奇数番号:10月6日(土)17:00∼18:00 偶数番号:10月7日(日)14:00∼15:00 アイヴィホールロビー
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北辺の横穴墓古代人−宮城県矢本横穴墓群出土人骨の形質
瀧川 渉(東北大・医・人体構造)
沖縄県具志川島岩立遺跡西区より出土した縄文人骨の追加例
土肥直美(琉球大・医学部・第 1 解剖)
オホーツク文化人骨の頭蓋形態小変異
米須敦子(琉球大学・医学部・第一解剖学分野)
沖縄島摩文仁出土のヒト化石頭蓋冠破片 ―初歩的観察―
佐倉 朔(科博・人類)
中世人骨と江戸時代人骨の乳様突起計測値に基づく性別判定
長岡朋人(聖マリアンナ医科大・医・解剖)
沖縄県久米島近世人骨の踵骨・距骨関節面の形状
久高将臣(琉球大学医学部形態機能 医科学講座解剖学第一分野)
形態計測データのQモード相関係数に対する欠測値の影響
多賀谷 昭(長野県看護大学)
小型霊長類四肢骨関節部の緻密骨厚の変異
江木直子(日本モンキーセンター)
ヒト錐体鼓室裂の形態観察
佐藤 巌(日歯大・生命歯・解剖 1 )
日本人乾燥頭蓋上顎洞のCT画像による形態計測
小林一広(日歯大・新潟生命歯・解剖 1 )
南シナ海を越えた先史時代の人々:ベトナム中部・ホアジェム遺跡の事例から
山形眞理子(早大・文・考古)
沖縄県具志川島岩立遺跡出土人骨の再検討
片桐千亜紀(沖縄県立埋蔵文化財センター)
東北北部江戸時代人の頭蓋形態
川久保善智(佐賀大・医・解剖人類)
長崎県原城跡本丸出土の人骨 ―1998∼2003年発掘調査分―
分部哲秋(長崎大院・医歯薬学総合研究科・生命医科学)
江戸時代人骨を用いた長骨長計測値によるプロポーションの分析
藤澤珠織(京大・理・自然人類)
沖縄県久米島近世人骨の距骨蹲踞面の形状と脛骨蹲踞面の形状について
蔵元秀一(琉球大学医学部・機能形態学講座 解剖学第一分野)
オホーツク文化人におけるエナメル質減形成及びクリブラ・オルビタリアの出現頻度について
福本郁哉(東京大・理・人類学)
沖縄県久米島ヤッチのガマ・カンジン原古墓群から出土した近世人骨における四肢の変形性関節症
について
山内貴之(琉球大・医・解剖 1 )
江戸時代における特殊な死体利用方法の一例
坂上和弘(科博・人類)
上顎歯に特殊磨耗が認められた江戸時代男性下顎骨のCT画像による検討
吉田俊爾(日歯大・生命歯・解剖 1 )
沖縄県久米島近世人骨資料における歯科疾患
伊禮 究(琉球大学医学部形態機能医科学講座 解剖学第一分野)
沖縄県うるま市具志川グスク崖下地区出土人骨に認められた風習的抜歯
竹中正巳(鹿児島女子短大)
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中世鎌倉人骨のエナメル質減形成
澤田純明(聖マリアンナ医大・解剖)
日本人における乳歯の咬耗の時代変化について(予報)
鈴木敏彦(東北大・院歯・口腔器官構造)
中世日本人における齲蝕状況の地域差
小山田常一(長崎大院・生命医科学講座・顎顔面解剖学)
ブラッシュテイルポッサム上顎臼歯の計測的研究
上野隆治(日歯大・東京短大・歯技工)
ターナー症候群に現れる遠心舌側咬頭の退化傾向について
中山光子(日大・松戸歯・解剖人類形態学)
Root and canal morphology of maxillary premolars and its relationship with the tooth size in a Sri
Lankan population
Peiris Roshan(日本大学・松戸歯学部・解剖人類形態学)
琉球列島におけるヒト歯冠計測値の多様性:琉球列島と他のアジア集団との比較検討
当真 隆(琉球大・医・解剖)
乳歯にみられる円錐歯について
北川賀一(長崎大院・医歯薬・顎顔面解剖学)
正常咬合を有する現代モンゴル人と日本人成人女性の頭蓋顔面形態の基準値 ―セファログラムによる
中原リザ子(日歯大・生命歯・矯正)
正常咬合を有する現代モンル人と日本人成人の歯列弓の形態 ―口腔模型による―
中原リザ子(日歯大・生命歯・矯正)
頭蓋と歯におけるモンゴル人と日本人の比較
影山 幾男(日歯大・新潟生命歯)
Classification of Carabelli trait in the human dentition: what is the best method?
HASEGAWA, Y.(School of Life Dentistry at Niigata, The Nippon Dental University, Niigata, Japan)
現代モンゴル人と日本人の正常咬合者における口腔模型の比較
宇塚 聡(日歯大病院・小児・矯正)
現生霊長類とナチョラピテクスにおける骨盤形態の非計測的特徴による比較
中野良彦(大阪大院・人間科学・人類)
ケニア北部ナチョラ地域のサイ化石
辻川 寛(東北大・医・人体構造)
ペルー、クントゥル・ワシ遺跡から出土したオマキザル類骨格
鵜澤和宏(東亜大・人間科学)
ヒトの精子形成の進化−霊長類の精巣組織の比較から
榎本知郎(東海大・医・基礎医学系)
火の人類進化考(2)
林 俊郎(目白大・社会学部・社会情報学科)
ヒト二足歩行の起源:ロコモーション運動軸転換仮説
藤野 健(東京都老人研・動物施設)
由比ヶ浜南遺跡中世人骨の結核
星野敬吾(聖マリアンナ医大・解剖)
南九州(宮崎県)古墳人のミトコンドリアDNA解析(予報)
佐伯和信(長崎大院・医歯薬学総合研究科・生命医科学・肉眼形態学)
本土日本人のミトコンドリア(mt)DNA多型は地方により大きく異なる:飛騨での例
住 斉(筑波大・物質工学)
日本の大学生における、第三者の異性同胞間近親相姦行動に対する道徳的評価について
露木 玲(東京大・理・人類)
性的選好性の決定機構の進化に関する理論的研究
牧島央武(東京大・理学系研究科・生態人類学)
16
P−47
P−48
P−49
P−50
P−51
P−52
P−53
P−54
P−55
P−56
P−57
P−58
P−59
P−60
P−61
P−62
P−63
配偶者選択における親の影響
能城沙織(東京大・理学部・生物)
目視判定および直接計測による耳介形態の左右一致性に関する一調査報告
矢作麻裕(大妻女子大学家政学部被服学科)
日本における歴史上の人物の身長
矢崎勝巳(矢崎郷土史研究所)
横隔膜の筋線維構成
猪口清一郎(昭和大学)
ヒト下肢諸筋の筋線維構成について
伊藤純治(昭和大学・保健医療学部・理学療法学科)
Collaborative studies on mummies of the Joseon Dynasty, Korea
申 東勳(Dept of Anatomy, Seoul National University College of Medicine)
ブラジル日系人の皮膚色に関する予備調査
山口今日子(東大・理・生物・人類)
鵞足を構成する筋の停止状況が語る下肢の動き:モグラからヒトへ
高橋 裕(防衛医科大・生物学)
北部九州及び沖縄出身者の形質について
宮山 瞳(西九州大学・健康福祉・健康栄養)
カニクイザルにおける生理的筋断面積(Physiological Cross-Sectional Area)の種内個体変異について(予報)
菊池泰弘(佐賀大・医・生体構造機能学)
運動性神経細胞のサイズ
柴田昌和(神奈川県立保健福祉大学・人間総合)
咀嚼運動における筋活動時間の周期性に関するブートストラップ解析
大橋克巳(東京大・医附病・口外)
不安定動作の重心動揺
竹内京子(防衛医大・再生発生)
エリートジュニアサッカー選手は体格、成熟度よりもキック力
高井省三(筑波大・人間総合科学)
熱帯多雨林において“純粋”な狩猟採集生活は可能か
佐藤弘明(浜松医科大学・医学部)
明治前アイヌ人口の推定
葭田光三(日本大・文理・総合文化)
狩猟採集生活における身体活動量 ―アフリカ熱帯雨林に住むピグミー系狩猟採集民の森での生活
山内太郎(北海道大・医・保健( 1 ))
17
プ
ロ
グ
ラ
ム
︵
一
般
演
題
・
ポ
ス
タ
ー
発
表
︶
公開シンポジウム
―公開シンポジウム―
平成19年度 科学研究費補助金(研究成果公開促進費)
「研究成果公開発表(B)
」
あなたはどのくらい親知らずを知っているか。
オーガナイザー
公
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金澤英作(日本大学松戸歯学部)
日時:10月6日(土)14:00∼17:00
会場:講堂(公開シンポジウム)
影山幾男(日本歯科大学新潟生命歯学部)
開催趣旨
近頃、歯並びの悪い子供が目につく。生活習慣、とくに食生活の変化が原因とも考えられるが、確証があ
るわけではない。顎の形(大きさ)と歯の形(大きさ)の関係、歯の生えてくる(萌出)順序の変化、口腔周
囲の筋の機能低下など様々な直接的な要因があげられる。この問題は歯の人類学の課題であると同時に歯科
臨床の問題である。最近では親知らず(智歯)が生えてこない人もいるということを耳にする。しかし、日
本人や外国人の智歯萌出率、智歯欠如率の時代的変遷、智歯と自家移植、智歯と歯並び、智歯喪失と他の歯
との影響、智歯と齲蝕などについて、正確な知識を持っている人は多くは無いであろう。今回、智歯の研究
に関して斯界の第 1 人者に講演をしていただき、智歯に関してわかりやすく解説していただき、今後の歯科
臨床学や人類学を考え、健康増進の一助となることを目的とする。
最初にオーガナイザーである日本大学松戸歯学部金澤英作教授、日本歯科大学新潟生命歯学部影山幾男教
授らが、シンポジウムの趣旨説明と簡単な解説をする。その後、智歯萌出率、縄文人から現代日本人に至る
智歯の欠如率の時代的変遷、智歯と移植、智歯と歯並び、智歯喪失と他の歯との影響について、 5 人の専門
家に講演してもらう。その後、講演者に登壇いただき、パネルディスカッションを行う。一般参加者からの
質疑とこれに対する応答の時間をとった後、講演者による総合討論をして締めくくる。
プログラム
1.親知らずの萌出率の地理的変異と集団間の違い
影山幾男(日本歯科大学新潟生命歯学部)
Geological differences and ethnic group variations on the eruption incidence of the wisdom tooth
KAGEYAMA, I.(Department of Anatomy, The Nippon Dental University School of Life Dentistry at Niigata)
講演の始めに、親知らず(智歯)の人類学的・歯科学的な意義の解説を行う。最近では智歯が生えてこな
い人もいる。しかし、日本人や外国人の智歯萌出率、智歯欠如率の時代的変遷、智歯と自家移植、智歯と歯
並び、智歯喪失と他の歯との影響、智歯と齲蝕などについて、正確な知識を持っている人は少ない。今回は
特に智歯に焦点を絞り講演する。次に日本人と外国人の智歯萌出率について、日本歯科大学学長 中原 泉
先生の膨大な研究を基に、現代の智歯萌出率の地理的変異、集団間の違いを紹介する。日本人のみならず、
タイ人、中国人、スリランカ人などの豊富なデータより現代の智歯萌出率の世界的規模の地理的変異とそれ
らにいたる原因を解説する。
2.原人と日本人における智歯の“退化”
海部陽介(国立科学博物館・人類研究部)
“Devolution”of the wisdom tooth in Homo erectus and Japanese
KAIFU, Y.
智歯(第 3 大臼歯)は、歯冠も歯根も小さく、形態が不安定で変異が大きく、さらに欠如することも多い
ため、著しく退化した歯として知られている。こうした退化が人類進化史の中でどのように生じたかはまだ
十分に明らかでないが、ここではいくつかの鍵となりそうな観察データを紹介したい。智歯の縮小化は、約
200万年前以降の原人において明確になってくるが、この現象はいくつかの地域の原人・旧人集団において
独立に生じた可能性がある。さらに日本列島での智歯の欠如率は、弥生時代から昭和に入るまで緩やかに上
昇するが、平成では逆に下がる傾向が知られている。従って弥生時代以後の変化を、単純に退化とみなすこ
とはできない。
20
3.親知らずがある人とない人の歯はどう違うのか?
近藤信太郎(愛知学院大学・歯学部)
Tooth size in individuals with or without third molars
KONDO, S.
親知らずがある人とない人の歯はどこが違うのでしょうか? 2 つの説明があります。一つは、ヒトには歯
全体が小さくなる傾向があって、その影響で親しらずが無くなったというものです。この場合、他の歯も小
さくなるか無くなるといった傾向があります。もう一つは、親しらずは歯並び全体の大きさを調整している
という説明です。親しらずは最後にできる歯ですが、それ以前につくられた歯が大きいと歯列の大きさを調
整するために親しらずは無くなります。今のところ、どちらの考えが正しいかは分かっていません。そこ
で、親しらずのある人とない人の他の歯の大きさを比較することによって、親しらずの生物学的な意義を考
えてみました。
4.親知らずはどうしたらいいの?
又賀 泉(日本歯科大学新潟生命歯学部)
How to treat wisdom tooth?
MATAGA, I.
親知らず歯(智歯)は、上下左右合計32本ある歯の中でも一番後ろの歯のことです。親知らず歯の語源は、
生えてくる時期が他の永久歯と違って成人して親が知らないうちに生えてくるからこの名前が付いたと思わ
れます。智歯の意味もこれと同じように智恵が付いてから生えるという意味なんです。このように親知らず
歯は長い間骨の中にいますので、生えてきてもその歯はもろいので虫歯になりやすいですし、生えてこない
で骨の中に埋まっている場合も少なくありません。過保護で育った子供さんが大人になったと思ってくださ
い。私は歯科の中でもどうしたら痛くなく安全に歯を抜けるかを考える専門である口腔外科(こうくうげか)
の立場で説明したいと思います。
5.歯科矯正治療で親知らずを抜く理由
寺田員人(日本歯科大学新潟生命歯学部)
Reason of third molar extraction in orthodontic treatment
TERADA, K.
矯正歯科治療の目的は、正しい咬み合わせ、整然とした歯並びと美しく調和のとれた口元や顔貌をつくる
と同時に、口腔の機能を正常にし、体の健康と社会的に健全なこころをもてる状態をもたらすことである。
永久歯の正しい咬み合わせを確立するために行う矯正歯科治療では、第一小臼歯と第三大臼歯(親知らず、
あるいは智歯)を抜くことが他の歯の種類に比べて多い。しかし、親知らずを不要としている訳ではない。
矯正歯科治療において、親知らずを含めて歯を抜く部位を検討している。矯正歯科治療でなぜ歯を抜くの
か、どうして親知らずを抜くのか、親知らずを残すことがないのか、という問題について症例を通して考え
てみる。
パネルディスカッション 16 : 30∼17 : 00
コメンテータ:山田博之(愛知学院大学歯学部)
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シンポジウム
S−01
海外の人類学関連学会の動向
オーガナイザー
日時:10月6日(土)11:00∼13:00
会場:講堂
金澤英作(日本大学松戸歯学部)
開催趣旨
日本人類学会はこのところの会員減、補助金カットなどによる財政危機などにより学会運営にこれまでに
ない逆風を受けている。その要因については政府の科学技術政策や、大学における研究構造の変化などが考
えられるが、学会運営の先行きを見極めるためには海外の形質人類学の動向や研究者の活動などについても
知っておく必要があろう。本シンポジウムでは、先ず自然人類学や文化人類学の分野において世界をリード
するアメリカの動向について、形質人類学会AAPAを中心に現地からの詳しい報告がある。次いでそれぞれ
独特の人類学研究の歴史を持つイギリスとフランスについての報告、また、それらをつなぐ国際組織として
ヨーロッパ人類学会、国際人類学民族学連合について現状と問題点を指摘する。
総合司会
金澤英作(日本大学松戸歯学部)
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プログラム
1.アメリカ自然人類学会の近年の動向
瀬口典子(モンタナ大学ミズーラ校、人類学部)
Recent Trends within the American Association of Physical Anthropologists
SEGUCHI, N.
1930年にハードリチカ(Hrdli ka)によって創設されたアメリカ自然人類学会(AAPA)にはアメリカ国内
だけではなく、外国の研究者を含む約1700名の会員がいる。2006年度の正規会員は788名、学生会員は365
名と学生会員数も多い。AAPAは 3 つの雑誌、the American Journal of Physical Anthropology(AJPA)、the
Yearbook of Physical anthropology、オンラインニュースレターPhysical Anthropologyを刊行している。Journal
Citation Reportによる2004年度のAJPAのImpact Factorは2.693で、人類学の中では 2 番目にランクされており、
the Yearbook of Physical anthropologyは 3 番目であった。2004年−2005年には、骨学・古病理学の論文が一
番多く投稿され、次に、集団遺伝学・集団の歴史、そして霊長類学論文の投稿が多かった。本シンポジウム
では、アメリカ自然人類学会の歴史、財源、現状、動向についての詳細を報告したい。
2.英国における形質人類学関係学会の動向
清水大輔(京都大学霊長類研究所)
Trends of academic societies for physical anthropology in UK
SHIMIZU, D.
英国における形質人類学専門の学会は、意外なことに20世紀末まで存在せず、考古学や解剖学などの関連
諸学会で個別に発表されていた。1998年にUniversity of Bournemouthで開催されたシンポジウム“Human
Osteology : A British Perspective”が契機となり、1998年 9 月に形質人類学をメインテーマにすえた学会「The
British Association for Biological Anthropology and Osteoarchaeology(BABAO)」が発足した。学術大会は年 1
回のペースで開催され、会員数は2005年10月の時点で224名(内73名が学生)を数える。学術雑誌は刊行して
いないが、Annual Reviewという形で学会の動向やショートレポートなどを発行している。
24
3.フランス人類学事情
○奈良貴史(国際医療福祉大学・福岡リハ)、Bruno Maureille(Bordeaux I・Anthropologie)
Things French anthropology
NARA, T., MAUREILLE, B.
フランスの人類学が組織的に活動し始めたのは、1859年、P.BROCAによって設立されたパリ人類学会か
らである。150年近い歴史の中で1832回にも及ぶ例会や会誌の発行などの日常的な学会運営のほかに、フラ
ンス国内のみならずベルギーやスイス等でも開催されるフランス語圏人類学大会の中心的な役割を果たして
おり、英語圏とは一線を画した活動がみられる。1980年頃から会員数の減少に悩まされたが、ここ数年は、
若い会員を中心に増加傾向にある。会員数増加への取り組み方や日本とは違った研究制度・組織である
C.N.R.S.(国立科学研究所)等のフランスの人類学事情について報告したい。
4.ヨーロッパ人類学会
佐竹 隆(日本大学松戸歯学部)
European Anthropological Association
SATAKE, T.
Congress of the EAA(European Anthropological Association)は、二年に一度開催される。1996年ベルギーで
の第10回大会を初めに数回出席したので、Congress を中心にEAAについて報告したい。前回2006年はハン
ガリー・Budapestで第15回大会が開かれた。ハンガリー・Szombathelyでの第 7 回Internatioal Congress of
Auxology(1994年)の会長を務められたProf.Eiben(Eotvos Lorand University)の追悼記念シンポジウムを中心
に開催された。ヨーロッパ人類学会は1976年に創設された。その目的は、ヨーロッパの国々で人類学研究や
人類学教育を推進する事である。会員は現在、主にヨーロッパ諸国の600名ほどである。Congressには200余
名の参加があり、定期的にニュースレターが年 2 − 3 回配布されている。
5.人類学国際組織の動向
金澤英作(日本大学松戸歯学部)
World-wide Organizations of Anthropological Societies
KANAZAWA, E.
人類学の国際組織として最も歴史の古いInternational Union of Anthropological and Ethnological Sciences
(IUAES, 通称ユニオン)は1948年に組織されたものであるが、5 年に 1 回の本会議とその間に配置される中
間会議などの開催準備や調整、またこの組織に登録された専門研究領域(Commission)による国際的研究活
動を行っている。日本が1968年に本会議を、また2002年には中間会議を開催したことは記憶に新しい。一
方、ラテンアメリカの人類学会を中心としたWorld Council of Anthropological Associations(WCAA)が2004年
にブラジルにおいて組織された。この組織は世界の人類学関連学会の連携と協力のため組織で、インター
ネットを活用して研究情報の交換、研究協力などを行うことを目的としている。今のところ国際会議の開催
などは予定されていないとのことである。本講演ではこれらの国際組織の動きと現在生じている問題点など
について情報を提供したい。
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キネシオロジー分科会、ヘルスサイエンス分科会共催シンポジウム
S−02
日時:10月6日(土)11:30∼14:00
四足歩行から二足歩行へ
オーガナイザー
会場:112
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学) 中野良彦(大阪大学・人間科学)
岡田守彦(帝京平成大学・ヒューマンケア)
開催趣旨
ヒトの祖先は樹上四足歩行していた類人猿から、垂直木登りや腕渡りなどの二足歩行の前段階の行動様式
を経て、地上の直立二足歩行を完成させたと考えられている。本シンポジウムでは、現生のヒトや霊長類な
どから見出されてきた種々の知見に着目して、四足歩行と二足歩行という異なった歩行様式の間の相互の関
連性を探る。サルの四足行動の発達の特徴、類人猿の樹上行動、類人猿の歩行様式に関する個体発達の研
究、ヒトの乳幼児の発育発達研究、希に見出された日常的に四足歩行するヒトの変異例の研究、ヒトの進化
と関連した遺伝子の研究などに関する話題提供をもとにして、二足歩行能の起源と進化について再考したい。
総合司会
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
中野良彦(大阪大学・人間科学)
岡田守彦(帝京平成大学・ヒューマンケア)
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シンポジスト
1.11 : 35∼11 : 55
2.11 : 55∼12 : 15
3.12 : 15∼12 : 35
4.12 : 35∼12 : 55
5.12 : 55∼13 : 20
中野良彦 「霊長類の運動機能の個体発達について」
木村 賛 「チンパンジーの二足歩行獲得」
岩田浩子 「乳幼児の四足歩行と二足歩行の動作特性」
松村秋芳 「日常的に四足歩行するヒトのロコモーションについて」
植田信太郎 「ヒトへの進化と遺伝子・ゲノム研究」
総合討論
コメンテータ:岡田守彦
中務真人
小林 靖
針原伸二
プログラム
1.霊長類の運動機能の個体発達について
中野良彦(大阪大・人間科学・人類)
The development of the locomotor function in Primates
NAKANO, Y.(Osaka Univ.)
霊長類は樹上での生活に適応して進化したと考えられている。しかし、樹上空間は物理的にも生態的にも
非常に多様であり、それにともなって、霊長類各種の運動機能にも大きな差がみられている。しかし、それ
らの差が生じる過程においては、当然のことながら、系統発生上の共通段階を経ており、その意味では、霊
長類各種の運動には共有する特徴と派生的に生じた特徴が混在していると考えられる。こうした運動につい
て、その差を精査する一助として、運動機能の個体発達を比較するという方法が考えられる。こうした研究
について、ニホンザルの歩行発達やチンパンジーの木登り運動の発達を中心に考察する。
26
2.チンパンジーの二足歩行獲得
木村 賛(石川県立看護大学)
Acquisition of bipedal walking in chimpanzees
KIMURA, T.(Ishikawa Pref. Nursing Univ.)
チンパンジーはヒトと同じくロコモーションを四足歩行から始める。ヒトは 1 歳齢ごろから二足歩行を獲
得して四足歩行をとらなくなるが、チンパンジーの地上歩行はオトナになっても四足が基本である。しか
し、チンパンジーにおいても 1 歳齢ぐらいから二足歩行もとれるようになる。個体発達における二足歩行獲
得過程がチンパンジーとヒトでどのように異なるか、また個体発達の検討がヒトの系統的二足歩行獲得のモ
デルとしてどのように有効であるか、を検討する。最近のエネルギー消費からみた二足歩行獲得に関する議
論(Sockol et al. 2007, 他)についても考える。
3.乳幼児の四足歩行と二足歩行の動作特性
岩田浩子(名古屋女子大学短期大学部)
Movement characteristics of quadrupedal walking and bipedal walking in human infants
IWATA, H.(College of Nagoya Women's University)
ヒトの移動運動発達開始は乳児期の「這い這い」にあると考えることができるが、這い這いの動作様式
は、腹部が着床した『腹這い』、手掌と膝で体重を支える『膝つき這い這い』、手掌と足底で歩く『四足歩
行』のように大別することができる。発達初期の腹這いでは四肢の動きに特定の運び順はないが、その後の
膝つき這い這いと四足歩行の運び順は「後方交叉型」が一般的である。一方、二足歩行は発達の当初より四
肢の運び順は「前方交叉型」である。また、幼児の遊びや課題動作の中で這い這いの四肢運び順を観察する
と、膝つき這い這いは前方交叉型へと変化するのに対し、四足歩行は後方交叉型のままであり、二足歩行の
発達とは明確な違いがある。
4.日常的に四足歩行するヒトのロコモーションについて
○松村秋芳(防衛医大・生物学)、真家和生(大妻女子大・生活科学資料館)、高橋裕(防衛医大・生物学)、
ムンドロス S.(ベルリン医科大学)、岡田守彦(帝京平成大)
Locomotion of quadrupedal walking humans in their daily life
MATSUMURA, A..,( Natl. Def. Med. Coll.), MAIE, K.,( Otsuma Women's Univ.), TAKAHASHI, Y..,( Natl.
Def. Med. Coll.), MUNDLOS, S..,(Universit tsmedizin Berlin), OKADA, M.(Teikyo Heisei Univ.)
トルコの一家系では、7人兄妹のうちの 5 人が成人しても四足の高這い(膝をつかない四足歩行)を日常
の移動手段として用いている。ナックル歩行ではなく、手のひらをついて歩く。この例は、17番染色体の
DNA塩基配列に変異が見られ、これが小脳の形態変異(発育不全)と関連し、その結果歩行の発達を妨げて
いると考えられている(T rkmen et al., 2006)。今回は、ビデオ画像をもとにして、その姿勢と歩容について
検討した。このような変異の例はヒトの二足歩行の起源と進化に関する研究に何らかの示唆を与えてくれる
可能性がある。
5.ヒトへの進化と遺伝子・ゲノム研究
植田信太郎(東京大学・大学院理学系研究科)
Evolution of Gene, Genome and Human
UEDA, S.(Graduate School of Science, The University of Tokyo)
ヒトにつづき、チンパンジー、そしてマカクと、ヒトならびに近縁な霊長類ゲノムの全容を解明し、ヒト
への進化の遺伝的背景を明らかにしようとする大規模な研究が進められている。一方で、ゲノム情報はその
基盤となっている塩基の並び方の情報にすぎないことから、生体レベルにおける様々な機能の進化に関連し
た遺伝情報の探索を目指した個別的研究も行われている。本シンポジウムでは、霊長類以外を含めたゲノム
研究の現状を概観し、従来の個別的研究のなかから話題となった研究のいくつかを紹介する。また、遺伝子
進化と機能進化の関係は実証データを示さなくては解明されたことにはならないとの立場から私たちが進め
ている研究もお話したい。
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進化人類学分科会 シンポジウム
S−03
メソポタミアを中心とした西アジア
古代人の形質特性
オーガナイザー
日時:10月6日(土)14:00∼17:00
会場:アイヴィホール
石田英實(滋賀県立大学)
開催趣旨
2005年から特定領域研究「セム系部族社会の形成:ユーフラテス河中流域ビシュリ山系の総合研究(代表、
大沼克彦)」が進行中であり、その中の計画研究として、「ユーフラテス河中流域とその周辺地域の住民に
見られる形質の時代的変化(代表、石田英實)」が行われている。この研究の目的は、アッシリアやバビロ
ンなど、西アジア古代王国の創建集団であるセム系民族の一大原郷が、シリア北東部ユーフラテス河中流
域のビシュリ山系であったとする仮説を、古人骨に基づく形質分析から支持されるか否かを検討することで
ある。
そこで、このシンポジウムは、上記研究の基礎的研究として、メソポタミアを中心としたBC3000年紀以
降の西アジア住民の形質を、頭蓋骨形態、歯牙の成長、3 次元解析法の開発などを通じて分析し、その特徴
を探る。
総合司会
石田英實(滋賀県立大学)
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プログラム
1.西アジア地域出土人骨の頭蓋形態変異
近藤 修(東京大学・大学院理学系研究科)
Variations in skull morphology of human remains from Western Asia
KONDO, O.
日本隊によるメソポタミア地域での発掘調査は1950年代に始まる。1960年代の東京大学イラン・イラク調
査団(江上、池田団長)によるイラン・デーラマン地方人骨は東京大学総合博物館に、1970年代の国士舘大
学調査団(藤井団長)によるイラク・ハムリン地域古人骨は京都大学自然人類学研究室にそれぞれ整理の上、
保管されている。これらは総計700体以上に達しており、時代・地域に偏りはあるものの、西アジア地域の
一大現代人骨格コレクションとなっている。
上記の古人骨標本について、頭蓋の形態変異を分析した結果を示し、今後の西アジア古代人の形質の時代
的変化を追う基盤とする。
2.イラクにおける乳歯形態の時代変化について
○北川賀一、真鍋義孝、小山田常一、井川一成、堤田 証、加藤克知、六反田篤(長崎大学・大学院医歯薬)
Morphological characters of deciduous teeth in Iraq: Diachronic evidence of the past 6000 years
KITAGAWA, Y., MANABE, Y., OYAMADA, J., IGAWA, K., TSUTSUMIDA, A., KATO, K., ROKUTANDA, A.
1977年から1980年にかけて、バグダッド北東のハムリン盆地を中心に600体近いイラクの古人骨の発掘・
収集がおこなわれた。時代により資料数にばらつきがあるが、古くはサマッラ期(前 5 千年紀前半)に遡る
資料もあり、この地域における人類の時代変化を探る上で大変貴重な資料である。集団間の類縁性を明らか
にする目的でこの資料の乳歯形態を調査した。資料数の関係で、ウバイド期(前 5 千年紀後半)、ジェムデッ
ト・ナスル期(前3100∼2800)、イシン・ラルサ期∼新アッシリア(前2000∼前 7 世紀)、イスラム期( 7 世
紀∼)の 4 グループで歯冠計測値、非計測的形質の比較・検討をおこなった結果を報告する。
28
3.イラク・ハムリン遺跡群出土頭蓋骨の3次元数理形態学的分析
○荻原直道(京都大学・大学院理学研究科)
、巻島美幸(龍谷大学)
、石田英實(滋賀県立大学・人間看護学部)
Three-dimensional geometric morphometic analysis of the craniums excavated in the Himrin Basin, Iraq
OGIHARA, N., MAKISHIMA, H., ISHIDA, H.
京都大学自然人類学研究室には、国士舘大学イラク古代文化研究所が行ったイラク・ハムリン遺跡群調査
により収集された古人骨資料が保管されている。我々はメソポタミア流域住民の身体形質の時代的・地理的
変遷を明らかにするために、本コレクションの頭蓋骨をCT装置により 3 次元デジタル化し、その形態変異を
詳細に明らかにする試みを開始した。本講演では、数十個体の頭蓋骨の形態変異を、解剖学的特徴点に基づ
く 3 次元数理形態学的手法により分析した結果について報告する。
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S−04
人類進化における左右差
−右手利きはヒト固有の特徴か−
オーガナイザー
真家和生(大妻女子大学・生活科学資料館)
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
日時:10月7日(日)15:00∼17:00
会場:講堂
高山 博(慶應義塾大学・文・人類学)
開催趣旨
人類(ヒト科)の最大の特長を直立二足歩行とする限り、身体に左右の区別が存在することは自明の理で
あろう。さらに、ヒト種(Homo sapiens)においては、旧石器時代から右手優位(利き手)が左手優位より高
頻度(約90%)であることが、洞窟に残された手形などから推測され、21世紀の現在でも多くの調査から示
されている。一方、霊長類の観察から、原猿の左手−右脳系の視覚性到達運動(見た餌に手を伸ばす)から
変化してヒトの右手−左脳優位が得られたこと(MacNeilageらの仮説)、ニホンザル、チンパンジーの利き手
はそれぞれ個体で安定しているが左右の偏りはないことなどが示唆されている。利き手はもとより脳の機能
的左右差に由来するものであるが、右手利き高頻度(左脳優位)がヒト科固有の特徴なのかどうかは、ホミ
ニゼーションとも関連して、人類学の基本課題のひとつと考えられる。このシンポジウム演者は全員、利き
手や左右差を専門的に研究してきた者ではないので、上記の問題意識のもとにいくつかの話題を提供し会場
からの意見をいただき、討議をすすめながら、左右差の起源についての知見を深め、さらなる作業仮説を構
築したいと考えている。
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総合司会
高山 博(慶應義塾大学・文・人類学)
プログラム
1.気になる左右非対称性―歯の分析例―
溝口優司(国立科学博物館・人類研究部)
Right-left asymmetry piquing our interest: Examples of analyses of teeth
MIZOGUCHI, Y.(National Science Museum)
左右対称性・非対称性は、昔から我々の関心を引きつけてきた。これは、一部、左右対称性が我々の生存
に関わっているようにみえるためかもしれない。
約30年前、私は、形態形成の原因とメカニズムを探るための研究対象として歯を選び、多くの研究者と同
様、歯の非対称性の分析も行なった。
Van Valen(1962)は生物の非対称を、1 つの集団内での非対称の存在あるいは分布状態に基づいて、方向性
非対称、反対称、彷徨非対称の 3 つに分類した。私は、永久歯でのこれら 3 種類の非対称性を記述すると同
時に、非対称の歯間の相関も分析した。本シンポジウムでは、それらの結果と、最近の人類学分野での非対
称の研究を紹介する。
2.帯状回後部の機能から見たヒトの脳の左右差
小林 靖(防衛医科大学校 解剖学講座)
The posterior cingulate region: some aspects of the laterality of human brain functions
KOBAYASHI, Y.(National Defense Medical College)
帯状回後部は、ヒトにおいて左側の損傷では言語情報を中心とした健忘症候群(長期記憶の形成障害)を
生じ、右側の損傷では地誌的障害(空間認知と空間記憶の障害)を生じることが知られている。われわれは
この領域の皮質の入出力を解析し、海馬を含む側頭葉内側部、前頭前野、頭頂葉後部(とくに下頭頂小葉)
と密接に連絡していることを明らかにした。これら帯状回後部と連絡を持つ領域は、それぞれ長期記憶の形
成、ワーキングメモリーの処理、空間認知に重要な役割を果たしていることが知られている。こうした所見
にもとづいて、帯状回後部の機能の左右差がどのように生じるのかを考察する。
30
3.江戸時代女性人骨に見られた上肢の左右差
○塩野智子・高山 博(慶應義塾大学・文学部・人類学)
Significant differences of arm bone measurements in Japanese Edo women
SHIONO, T., TAKAYAMA, H.(Keio Univ. Lab. Anthrop.)
人類(現代人)の利き手に関して多くの研究がなされ、日本でも平本、坂上の研究によって、右腕・右手
の計測値が有意に大きいことが報告されてきた。また、生得的な左右差がその成長に応じて変化していくこ
とも、双生児研究等でも指摘されている。さらに、欧米に比べ日本では左利きへの制約が強い文化だといわ
れてきた。本報告では、江戸時代人骨の同一個体の上腕骨、前腕骨計測値を比較した結果、女性人骨では明
らかな有意差が存在するが男性、幼児人骨には有意差があまり現れないことについて、江戸時代から明治中
期まで女性の左利き規制の文献例とともに紹介する。
4.ゴリラの利き手について
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
The dominance of hand in Gorilla
MATSUMURA, A.(National Defense Medical College)
類人猿の利き手に関するデータは、ヒトの脳の進化と機能分化とを考える上で有用と思われる。これまで
チンパンジーやゴリラなどの利き手について、しばしば注目されてきたが、それらは限られた群れなどにつ
いてのデータであり、まだ十分に調べられているとは言えない。今回、ゴリラの利き手の頻度についてしら
べた。インターネットを用いてゴリラの画像を集め、それらの中で左右の手の姿勢に差の認められる112頭
の例について分析した。道具を使用している4例では、すべて右利きと判断された。これに食べ物などを口
に運ぶ例、木の枝などを保持する例を合わせた36例では、72%が右手を用いていた。Schaller(1963)は、72
頭のゴリラのドラミングの手は右利きが69%と報告しているが、今回の結果はこの数値に近い。画像データ
分析と併せて動物園で行動観察を行うことにより、左右の機能分化や利き手についてさらに理解を深められ
るものと期待できる。
5.現代日本人青年の利き手調査と利き手意識は感覚性か運動性かについての検討
真家和生(大妻女子大学・生活科学資料館)
Research on the handedness of the modern Japanese youth: the handedness conscious depends on mobility or
sensory ?
MAIE, K.(Otsuma Women's Univ.)
利き手の判定方法としては、単独の手を使う動作の場合どちらの手を使うのか、道具を用いるのはどちら
の手か、本人が何利きと考えているか、などさまざまな基準で調査項目が設定されてきている。それぞれ、
動作が両側脳によるものか対側脳によるものか分けられていない、支持手と動作手のどちらを利き手とする
のか、側性係数として表現すべき、などの問題点を抱えている。利き手調査として定評のある「中塚・八田
テスト」も現代生活で用いなくなった項目などが含まれるなど、使用にあたって問題が指摘される。そこで
今回、これらを検討した項目を用いて調査を行い(被験者は現代日本人青年)、写像理論を応用して、利き
手意識が感覚を主としているものなのか運動を主としているものなのかを検討した。
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S−05
中等教育(中・高等学校)課程での
人類学の導入
オーガナイザー
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)
日時:10月8日(月)13:00∼15:30
会場:講堂
高山 博(慶應義塾大学・文・人類学)
開催趣旨
私たちは、昨年の第60回日本人類学会大会(高知工科大学)において、「小・中・高校における人類学教育」
と題するシンポジウムを開催し、その概要は、Anthropological Science(Japanese Series)vol.115 No. 1 に紹介
した。小・中・高校の理科や地理歴史の教育は、人類学に関連した基礎知識を一般の人々が理解できるような
かたちで広める場として重要である。前回のシンポジウムでは、初等中等教育段階で人類学の基礎に関連し
た事柄をどの程度、どのように学習しているのか、学習指導要領や教科書では人類学をどのように扱ってい
るのか、講演を通して最新の情報を把握することを試みた。今回は、昨年の成果を受けて、中等教育課程
(12才から18才)の若者たちを対象とした場合、どのような教育・啓蒙活動が可能であるか、を模索するた
めに、関連情報を充実させ、具体的な活動について考える機会としたい。学習指導要領は何を目指し、教科
書にどのように反映されているのか、人類の起源、日本人の起源など人類学の基礎的かつ主要なテーマは、
現時点までにどのように教科書等で扱われているか、またどのように変化してきたか、人類学そのものの教
育はどのように行われているのか、学会として人類学教育を提言していくにはどのようなシステムを構築し
ていくべきかなどについて、皆さんとともに検討を深めたい。シンポジウム会場内からの積極的な提言、ご
意見を歓迎します。
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総合司会
松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)、高山 博(慶應義塾大学・文・人類学)
シンポジスト
司会 松村秋芳
1.13 : 00∼13 : 05 馬場悠男 「人間性教育の重要性について」
2.13 : 05∼13 : 30 田代直幸 「教科書ができるまで」
3.13 : 30∼13 : 45 宮本俊彦 「高等学校理科において進化と人類学の学習がもたらす効果について」
4.13 : 45∼14 : 00 平田泰紀 「中学・高校における人類学教育のニーズと教育実践」
5.14 : 00∼14 : 20 市石 博 「人類の立ち位置を知るために」
6.14 : 20∼14 : 35 松村秋芳 「人類の起源は理科の教科書でどのように扱われてきたか」
7.14 : 35∼14 : 50 高山 博 「高等学校検定済教科書(日本史・世界史)における人類学記事の時代変化」
総合討論 14 : 55∼15 : 30
司会 高山 博
コメンテータ:2 名を予定
32
プログラム
1.人間性教育の重要性について 馬場悠男(国立科学博物館・人類研究部)
Education of the Evolutionary Meaning of Humanity
BABA, H.(National Science Museum)
中学校、高校の生徒たちは、ヒトの成長期間が長いのは多くを学習するためであることを具体的に認識し
てはいない。個体成長曲線で知られるように、幼児期に急速な脳の成長があり、思春期以降に性的成熟があ
る。身体全体は、児童期に長い成長遅滞があり、その間に、可愛い良い子でいて、教育効果が上がるように
なっている。脳成長と身体成長とのズレは知育のため、身体成長と性的成熟のズレは徳育のためである。こ
の二つのズレを適切に充填しないと、まともな自己実現は出来ない。このように手間はかかるが最終的に優
れた適応力を発揮するライフヒストリーこそ人間性の中核であり、それが人類進化の過程でいかに獲得され
たかを教育するのは、人類学研究者の義務だろう。
2.教科書ができるまで 田代直幸(文部科学省・初等中等教育局)
The process of school textbook compilation
TASHIRO, N.(The Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology)
教科書の作成は、学習指導要領及び学習指導要領解説に基づいて行われる。学習指導要領は、目標、内
容、内容の取扱いの 3 つの部分から構成され、扱う内容やその内容の扱い方(程度)が示されている。学習
指導要領解説は、学習指導要領の趣旨や内容の取扱いなどをもう少し具体的に示したものである。教科書会
社が作成した申請本は、執筆されている内容の範囲や程度、学問上の正確性などの観点から、教科用図書検
定調査審議会による審議によって意見が付される。これらの意見に対して適切に修正を加えることで、申請
本は、教科書として認められることとなる。
3.高等学校理科において進化と人類学の学習がもたらす効果について
宮本俊彦(柏崎翔洋中等教育学校)
The educational effect of evolution and anthropology study in high school science
MIYAMOTO, T.(Niigata Prefectural Kashiwazaki Shoyo Secondary Educational School)
自然人類学に限らず、現代科学において進化の概念は重要である。ところが、現状では、多くの生徒がテ
レビ番組等の影響を受けて進化に対して誤った概念を持っている。実際、授業で本来の意味の進化を扱うこ
とができる機会や時間は少ないので、高等学校の生物教員の多くが生徒に正しい概念を十分に伝えるために
ももっと進化を扱ったほうがよいと考えている。人類学は主に生物Ⅱの単元「進化」の一部として扱われて
いるが、人類学の全般に触れる機会はきわめて少なくなっている。一方、「理科」という教科のなかで進化
を理解するという目的をもつとき、人類学は有効に活用できるのではないかと思える。進化の単元の中でヒ
トの進化について興味を持って学ぶことができれば、人間とは何かを知る上でも大きな効果が期待できる。
4.中学・高校における人類学教育のニーズと教育実践
平田泰紀(大阪府立高石高等学校)
Requirement for education of physical anthropology and Practical examples of labo classes in Junior and senior
high-schools
HIRATA, Y.(Osaka Prefectural Takaishi High School)
現行の学習指導要領における人類学の扱いは大きくないが、現場の工夫で扱いの量を増やすことは可能で
ある。その際、中学・高校サイドにとって重要なのは、生徒に人類学を学習させることの教育的効果であ
る。演者は、中学・高校の生徒を対象に動物骨・人骨を用いた実習を実施し、彼らがこの分野のテーマに大
きな興味関心を寄せ、積極的に学習に取り組むことを確認した。また中学教員を対象にした研修では、教科
書に沿ったテーマに肉付けをする材料が求められていることがわかった。本発表では、学校教育における人
類学のニーズについて論じ、授業や研修で行った実習の内容および留意点を紹介する。
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5.人類の立ち位置を知るために
市石 博(東京都生物教育研究会/都立国分寺高等学校)
To understand the humankind position in nature
ICHIISHI, H.(Tokyo metropolitan Kokubunji High School)
高等学校での生物教育の目的について、現在の文部科学省の高等学校学習指導要領では、「生物や生物現
象についての観察、実験などを行い、自然に対する関心や探究心を高め、生物学的に探究する能力と態度を
育てるとともに基本的な概念や原理・法則を理解させ、科学的な自然観を育成する。」と定めている。とこ
ろが、私たち自身が生き物なので、生物学を深く学べば、必然的に我々自身を知ることにつながる。現行の
学習指導要領を超え、地球史という時間軸と環境という空間軸の中での人類の立ち位置を知るという、生物
教育における大切な目的を、人類学の様々な研究成果はかなえてくれるのか。現在の生物教育の現状を報告
するとともに論じてみたい。
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6.人類の起源は理科の教科書でどのように扱われてきたか
○松村秋芳(防衛医科大学校・生物学)、高山 博(慶応大・文・人類学)、高橋 裕(防衛医科大学校・生
物学)
How has the human origin been described in the textbook of the science?
MATSUMURA, A.,( Natl. Def. Med. Coll.)TAKAYAMA, H.,( Keio Univ. Lab. Anthrop.)TAKAHASHI, Y.
(Natl. Def. Med. Coll.)
高等学校理科の検定済教科書における「人類の起源」など自然人類学に関連した記述(1950年以降)につ
いて調査した。これまでの学習指導要領の改訂の機会に学会の新しい情報がどの程度改訂版の教科書に盛り
込まれてきたかについてしらべたところ、更新された記述内容は必ずしもその時代の新しい知見を反映して
いるとは思われなかった。人類の起源と進化について理解し、生物としてのヒトの本質を知るために、どの
ような教材が適切か、どの程度最新の知見を考慮すべきかは難しい問題だが、検討を続けることが重要と思
われる。本報告が人類学会からの教科書執筆者・出版社への働きかけの一助となれば幸いである。
7.高等学校検定済教科書(日本史・世界史)における人類学記事の時代変化
○高山 博・若林美由紀(慶応大・文・人類学)
Anthropological text in textbooks of Japanese history and World history used in senior high school in Japan
TAKAYAMA, H., WAKABAYASHI, M.(Keio Univ. Lab. Anthrop.)
高等学校の日本史・世界史における検定済教科書内の人類学記事(日本人の起源、人類の起源)について
は、今回のシンポジウムでも、高等学校現場から、学会の最新情報からかけ離れていることが指摘されてい
る。本報告では、公立学校への拘束が開始された1960年以降の人類学記事を比較検討することで、日本人類
学会の主要テーマである「日本人の起源」「人類の起源」がどれほど不正確かつ古い情報としてしか記載さ
れていない状況を明らかにしたい。本報告が人類学会としての教科書執筆者・出版社への働きかけの一助と
なれば幸いである。
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S−06
日韓の弥生期における交流を考える
オーガナイザー
日時:10月8日(月)13:00∼15:30
会場:アイヴィホール
吉田俊爾(日歯大・生命歯・解剖 1 )
開催趣旨
1976年に韓国南部の礼安里遺跡から紀元 1 世紀∼ 6 世紀頃の人骨が大量に発見され、慶應義塾大学の江坂
輝弥教授の橋渡しで小片丘彦と吉田俊爾が日韓共同研究に赴き、研究は竹中らに引き継がれ、礼安里人骨と
土井が浜・三津がよく似た形質をもつことがわかった。またこのことは、金関丈夫の弥生時代渡来人との交
流説を後押しするかたちになった。最近になって、韓国勒島からも人骨が出土し、藤田尚と鈴木隆雄が日韓
共同研究に従事している。このような状況の中でこれまでの研究成果を明らかにし、さらに今後、人類学各
専門分野研究者の韓国出土人骨研究の可能性を模索するのが本テーマの趣旨である。
総合司会
吉田俊爾(日歯大・生命歯・解剖 1 )
鈴木隆雄(東京都老人総合研究所)
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プログラム
1.韓国出土古人骨の研究史
吉田俊爾(日歯大・生命歯・解剖 1 )
The background of study on human skeletal remains in Korea
YOSHIDA, S.
1976年、韓国の礼安里遺跡から 2 ∼ 3 世紀に属する人骨が約50体発見された。それまで韓国では忠清北道
黄石里第13号支石墓人骨、慶尚北道北四洞第 2 号古墳人骨、釜山市朝島人骨が各 1 体発見されたに過ぎな
かった。礼安里遺跡は当初、韓国国立中央博物館の姜仁求考古課長(当事)らが発掘調査を開始し、後に国
立釜山大学博物館長金廷鶴教授に引き継がれた。人骨研究は慶応義塾大学江坂輝弥教授(現名誉教授)の橋
渡しにより、聖マリアンナ医科大学の小片丘彦助教授(現鹿児島大学名誉教授)と釜山大学医学部の金鎮晶
教授(現名誉教授)とが共同研究に従事した。その後、勒島からも大量の人骨が発見され、藤田尚新潟県立
大学准教授と鈴木隆雄(都)老人総合研究所副所長が研究に携わっている。
2.礼安里古墳群出土人骨
竹中正巳(鹿児島女子短期大学)
Human skeletal remains from Yean-ri, Kimhae, Korea
TAKENAKA, M.(Kagoshima Women's Junior College)
4 ∼ 7 世紀の朝鮮半島は、高句麗、百済、新羅が鼎立した三国時代にあたるが、半島南部には小国家群の
連合体である伽耶が存在した。釜山市の近郊、金海市に位置する金海礼安里古墳群は、4 ∼ 7 世紀に営まれ
た伽耶人の集団墓地である。1976年以降、釜山大学校博物館の 4 次にわたる発掘調査により、総数210体に
のぼる人骨が出土し、三国時代伽耶人の形質が明らかになった。本発表では、礼安里古墳群から出土した人
骨に関する研究成果を紹介し、日韓の弥生期における交流を考える上での話題を提供する。
36
3.勒島人骨の歯科人類学的考察
藤田 尚(新潟県立看護大・看護学部・人間環境科学)
Dental anthropological studies on the Nukdo human skeletal remains
FUJITA, H.
日本の弥生時代中期相当の、韓国勒島貝塚人骨は、まとまった人骨としては、韓国で最も古く、また、弥
生時代相当ということで、日本人の形成を探る上で、きわめて貴重な人骨である。今回は、歯科人類学的な
見地から、風習的抜歯と齲蝕を中心として発表する。勒島人骨の風習的抜歯は、日本の縄文時代人に見られ
る抜歯と、根本的に異なるようである。しかし齲蝕は、縄文時代や歴史時代に見られる根面齲蝕が多い。抜
歯風習からは、日本の渡来系弥生人および中国出土の古人骨との比較検討から、そのルーツを考察する。ま
た、齲蝕好発部位は、根面であり、これは、従来演者が提唱してきた、現代の高齢者型の齲蝕であることを
再確認するものである。
4.韓国および日本の弥生時代における結核についての古病理学的検討
鈴木隆雄(東京都老人総合研究所)
Pathological Study on Early Prevalence of Tuberculosis in Japan and Korea.
SUZUKI, T.
近年、わが国、韓国および中国から何れも弥生時代に相当する時代の人骨より脊椎結核の症例が報告され
集積されている。日本からは鳥取県青谷上寺地遺跡からの 2 例が確認され、韓国からは半島最南端に位置す
る靭島遺跡出土人骨からは、1 例の脊椎結核が出土している。さらに中国からは古代漢墓(紀元前200年頃)
の女性遺体から肺結核が報告されている。これら比較的同時期に中国、韓国、日本と極東アジアにおいて発
見された結核症例は、結核の流行に深く関与する疫学的な条件(人口増加と混み合い、社会的混乱と人口移
動、等)を考慮することによって、当時の極東アジアにおける結核の流行をよく表していると考えられた。
コメンテータ:中橋孝博(九州大学)
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一 般 口 演
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
テーマ:形態1
座 長
日時:10月7日(日)9:00∼10:00
O− 01∼05
会場:講堂
河野礼子(国立科学博物館人類研究部)
O−01/9 : 0 0∼9 : 1 2
縄文時代人の地域差:頭蓋形態による思考実験
○近藤 修・福本 敬・深瀬 均(東京大・生物科学・人類)
Regional variation of Jomon population based on the cranial morphology
KONDO, O., FUKUMOTO, T., FUKASE, H.
縄文人の起源や形成過程については実物標本による証拠が少ない。およそ均質であるとされる縄文人であ
るが、ある時点における地域差をもともと均質であった集団が地域的に分化していく過程としてとらえる
と、縄文人の地域差を考えることによってその形成過程の一側面を見ることができるかもしれない。ここで
は縄文人の頭蓋計測値より脳頭蓋、顔面頭蓋それぞれの形態変異を日本列島 6 地域(東北、関東、中部、近
畿、中国、九州)間で比較した結果を紹介する。Harpending-Wardモデルを用いて、形態の地域差を集団の
遺伝的分化の指標と仮定すると、脳頭蓋からは九州地方縄文人の特異性が、顔面頭蓋からはそれぞれの地域
の比較的高い特異性が予想される。
O−02/9 : 1 2∼9 : 2 4
山下町第一洞穴人と縄文人の形態比較
○藤田祐樹(沖縄県立博物館)、水嶋崇一郎・近藤 修(東京大学)、海部陽介(国立科学博物館)
Comparison of the morphology between Yamashitacho-man and Jomon
FUJITA, M., MIZUSHIMA, S., KONDO, O., KAIFU, Y.
1968年に沖縄県那覇市の山下町第一洞穴で発見された幼児の右大腿骨および右脛骨は、ヨーロッパの現代
人や旧人などとの比較により、新人であるが古代型人類の形質もモザイク的に持っているとされている。本
研究では、山下町洞人をホモ・サピエンスとして問題ないかを再検討するために、地理的、時代的に近い縄
文人との比較を行った。人骨に付着していた鍾乳石をクリーニングし、形態観察、線計測、マイクロCTに
よる断面形状の比較を行った。縄文人の変異を考慮すると、山下町洞人はほとんどの計測項目において縄文
人と大きな違いはなかったため、ホモ・サピエンスとして矛盾はないと考えられる。
一
般
口
演
O−03/9 : 2 4∼9 : 3 6
頭高と脊柱高を考慮した港川人骨の身長推定
○馬場悠男(国立科博・人類)、瀬口典子(モンタナ大・ミズーラ校・人類)
Stature estimation of the Minatogawa skeletons, taking into account vault and spine heights
BABA, H., SEGUCHI, N.
脊柱と頭の高さを考慮して、港川人の身長を再推定してみた。畿内日本人を基準データとし、既知の身長
から頭高(バジオン・ブレグマ高)と下肢長の近似値(大腿骨最大長+脛骨最大長+距骨中央高)を引くと、
脊柱高の近似値が得られる。港川人骨の保存されている椎骨の椎体背側高合計と、それらに対応する畿内日
本人の椎体背側高合計との比率から、港川人の脊柱高の近似値が得られる。それらに、頭高と下肢長を加え
ると身長が推定できる。結果は、大腿骨を藤井の式に当てはめた推定値と大差なく、1 号男性が153cm、2 号
女性と 4 号女性の合体個体が140cm、3 号女性が145cmとなった。なお、港川人の頭胴長と身長との比率は畿
内日本人とほぼ等しい。
40
O−04/9 : 3 6∼9 : 4 8
沖縄県南城市ハナンダー洞穴から出土したリュウキュウジカの齢推定と、ニホンジカ集団との齢構成の比較
○尾 麦野(東大・理・生物科学)、藤田祐樹(沖縄県博)、諏訪 元(東大・総合研究博物館)
Age estimation of Cervus astylodon from the Hananda Cave, Okinawa: a comparison of age structure with those
of the extant sika deer (Cervus nippon) populations
OZAKI, M., FUJITA, M., SUWA, G.
沖縄県南城市に位置するハナンダー洞穴からは、昨秋の発掘によりリュウキュウジカを中心とした多数の
動物骨が出土した。今回、出土したリュウキュウジカの下顎大臼歯を用い、主に大臼歯の咬耗から年齢推定
を行い、齢構成の復元を試みた。月齢既知の現生ニホンジカ標本を用い、月齢と第三大臼歯歯冠高の回帰式
を求め、これを適用し20標本について月齢を推定した。萌出段階から推定した11標本を合わせ、全31標本か
ら齢構成を得た。その結果、最高齢は284ヶ月で、240ヶ月以上と推定された個体が 9 個体もあり、現生の非
狩猟下にあるニホンジカ集団と比較しても、リュウキュウジカの齢構成はかなり高齢に偏っていたことが明
らかとなった。
O−05/9 : 4 8∼10 : 0 0
港川人1号の上下顎大臼歯の咬耗について
小寺春人(鶴見大・歯・解剖 2 )
On the attrition of the upper and lower molars of Minatogawa 1
KODERA, H.
旧石器時代の化石人骨・港川人 1 号の左側の、上下顎大臼歯M 1 、M 2 、M 3 の咬耗状態を観察すると、上
顎M1とM 2 は咬合面が頬側から舌側に向かって強い傾斜をつくって咬耗している。他の大臼歯はおよそ水平
に咬耗している。したがって、上下顎のM 1 とM 2 は咬合した状態で頬側部分は接触するが、舌側部分には
互いに接触しない空間が生じる。大臼歯の咬耗は上下の歯の間の密接した磨耗運動により生じ、咬合時に上
下の歯の咬合面間に大きな空間が生じることはない。一般に、上下大臼歯の間で咬耗様式の異なる例は見ら
れない。したがって、港川人 1 号の上下顎骨は異個体の可能性がある。
一
般
口
演
41
テーマ:形態2
座 長
日時:10月7日(日)10:00∼10:48
O− 06∼09
会場:講堂
近藤信太郎(愛知学院大学歯学部解剖学第 2 講座)
O−06/10 : 0 0∼10 : 1 2
マイクロCTを用いた歯牙の三次元計測による年齢推定ならびに性別判定についての検討
○染田英利・坂 英樹・松永 智・井出吉信(東歯大・解剖)、橋本 正次(東歯大・法人類学)
Age estimation and sex determination by means of three-dimensional measurement of teeth taken by micro CT
SOMEDA, H., SAKA, H., MATSUNAGA, S., IDE, Y., HASHIMOTO, M.
歯牙による年齢推定ならびに性別判定については、二次元的な計測値を用いた方法が報告されているが、
三次元的な解析による方法はほとんどみられない。そこで、年齢・性別既知の、う蝕、修復、硬組織実質欠
損のない下顎中切歯及び第一、第二小臼歯をマイクロCTにて撮影し、三次元構築後、エナメル質、象牙質、
歯髄腔の体積の計測行った。これらの計測値をもとに歯全体、歯冠部、歯根部の部位別及び歯種別に、年齢
推定のための回帰分析、性別判定のための判別分析を行った。その結果、歯種別の年齢推定では、女性下顎
中切歯において重相関係数0.71、性別判定では下顎中切歯において正答率78.1%と最も高い精度が得られた。
O−07/10 : 1 2∼10 : 2 4
上顎側切歯先天欠如が残りの歯の歯冠近遠心径に及ぼす影響
山田博之(愛院大・歯・解剖 2 )
Studies of the mesiodistal crown diameters of the permanent teeth in the individuals with congenitally missing
maxillary lateral incisor
YAMADA, H.
退化傾向の極端な現象として上顎側切歯の先天欠如がある。この群では他の歯の大きさにどのような変化
があるか調査した。資料は上顎側切歯が 1 歯のみ先天欠如した男性14個体の石膏模型で、中切歯から第 2 大
臼歯までの歯冠近遠心径を計測した。32歯存在群と比較してみると、存在側の上顎側切歯を除くすべての歯
の近遠心径の平均値は大きくなっていた。欠如側と存在側の歯を平均値で比較してみると、上顎中切歯だけ
は欠如側が有意に大きな歯をしていた。その他の歯には欠如側と存在側の間に有意差はみられなかった。ソ
フィアは上顎側切歯先天欠如の調査から代償性作用が歯群内に存在していると記載している。今回の結果も
これを支持するものであった。
一
般
口
演
O−08/10 : 2 4∼10 : 3 6
現代日本人における下顎隆起の出現頻度について−10歳代における観察−
○五十嵐由里子、大関紗織、金澤英作(日本大・松戸歯・解剖人類形態学)
Frequeny of mandibular tori in present day Japanese on the samples of teens
IGARASHI, Y., OOZEKI, S., KANAZAWA, E.
下顎隆起の発現に関しては、遺伝要因と環境要因の両方が関わっていると考えられている。演者らは先
に、現代日本人の歯科患者および学生の歯列模型を用いて、下顎隆起の発達程度と環境因子の相関を調べ
た。その結果、歯数、および年齢が下顎隆起の発達と生の相関にあり、歯の位置異常の程度が下顎隆起の発
達と負の相関にあることがわかった。今回は、10歳代の現代日本人47個体の歯列模型を観察し、乳歯と永久
歯の混合歯列を持つ個体と永久歯列を持つ個体の間で下顎隆起の発現に違いがあるかどうかを調べた。その
結果、乳歯が残存する個体においては、下顎隆起は認められず、永久歯列を持つ個体でのみ下顎隆起が認め
られることがわかった。
42
O−09/10 : 3 6∼10 : 4 8
縄文人と現代日本人における下顎骨正中断面内の骨分布とその成長パターン
深瀬 均(東大・理・人類)
Cortical bone distribution of the symphysis and its growth related changes in prehistoric Jomon and modern
Japanese mandibles
FUKASE, H.
成長期を通じて縄文人と現代日本人の下顎骨正中断面内の骨量及び骨分布パターンを比較し、機能適応的
に解釈されるか調査した。結果として、成人期の縄文人の正中部では骨量や緻密質厚さが現代日本人に比べ
大きいものの、断面二次モーメントの値には有意差がなかった。また、骨量が多い等の成人期でみられる縄
文人下顎骨の特徴は幼年期において既に現れていた。さらに、両集団ともに乳臼歯の咬合後に舌側下方の緻
密質が最も厚くなる傾向が示された。これらの結果から、縄文人下顎骨の頑丈性は加重履歴というよりも遺
伝的な背景を反映していること、及び局所的な咀嚼ストレスが骨分布パターンの形成に調整的な役割を果た
す可能性が示唆された。
一
般
口
演
43
テーマ:形態3
座 長
日時:10月7日(日)10:48∼11:48
O− 10∼14
会場:講堂
五十嵐由里子(日本大学松戸歯学部)
O−10/10 : 4 8∼11 : 0 0
頭蓋底の長さに対する脳の大きさが現代人の脳頭蓋形態に及ぼす効果
久保大輔(東大・理・人類)
The effects of brain size relative to basicranial length on neurocranial morphology in modern humans
KUBO, D.
頭蓋底の長さに対する脳の大きさは、脳頭蓋形態に影響を与える一要因として注目されてきた。頭蓋底の
制約のもとでいかに脳を収容するかという観点から、これまで特に正中頭蓋底の屈曲との関わりが調べられ
てきたが、脳頭蓋腔全体への影響は未知の部分が多い。そこで現代日本人成人男性32個体の頭蓋CTデータ
を対象に、線計測値に基づく主成分分析によって頭蓋腔の主要変異パターンを導出し、それらと頭蓋底の長
さに対する頭蓋腔容積やその他の形態指標との相関関係を調べた。その結果、主要変異パターンのうち、後
頭部が長く中頭蓋窩が短く浅い傾向、および頭蓋底が短く脳頭蓋の幅が広い傾向が、相対的に脳が大きい傾
向と関連づけられた。
O−11/11 : 0 0∼11 : 1 2
脳頭蓋のかたちは顔面構造とは無関係?
溝口優司(科博・人類)
Neurocranial shape is not associated with the facial structure?
MIZOGUCHI, Y.
短頭化現象の原因を探るべく、1992年以来これまで、脳頭蓋計測値と体幹・体肢骨計測値の間の群内での
相互相関を調べてきた。本研究はその一連の分析の続きで、脳頭蓋 3 主径と顔面頭蓋計測値80項目との関連
を主成分分析法ならびにヴァリマックス回転法によって調べたものである。結果として、脳頭蓋 3 主径のい
ずれかと男女ともに有意な関連を示すような顔面計測値は見つからなかった。因子負荷量の変異パターンが
男女で有意に似ている回転因子によって、頭蓋最大長と頬骨上幅が正の関連を持つ傾向にあることなどが示
唆されはしたが、これまでの予測に反して、脳頭蓋の形に及ぼす咀嚼などの影響はそれほど大きくないのか
もしれない。
一
般
口
演
O−12/11 : 1 2∼11 : 2 4
現代日本人における上腕骨骨頭と三角筋粗面の関係
福本 敬(東大・理・人類)
Relationship between humeral head and deltoid tuberosity orientations in modern Japanese
FUKUMOTO, T.
骨において、筋、靭帯の付着部の形状は運動の強度、頻度と関係するという考えのもと、古人骨の生活復
元に利用されてきた。上腕骨の三角筋粗面は、頑丈性、表面形状の複雑さといった視点から研究されてきた
が、上腕骨における位置については具体的に論じられていない。上腕骨では骨頭軸と滑車軸がねじれの位置
関係にあり、三角筋が機能する上で骨頭と三角筋粗面の上腕骨長軸まわりの方向関係は重要である。本研究
では、現代日本人上腕骨を用いて上腕骨頭の関節面と三角筋粗面の上腕骨長軸に対する方向を計測し、その
左右差について検討した。予備的な線計測の結果では骨頭が三角筋粗面と作る角が有意な左右差を示した。
44
O−13/11 : 2 4∼11 : 3 6
真猿類における中手骨、中足骨の形態と手足の把握性
高野 智(財団法人日本モンキーセンター)
Metapodial Morphology and Grasping Capability in Anthropoid Primates
TAKANO, T.
人を含む霊長類の手掌部・足底部は、指とともに支持基体や物体に直に接する部位であり、その形状は移
動様式や物体操作と関わりを持つと考えられる。手掌部・足底部の大半を占める中手骨・中足骨の形態は、
その長さ、湾曲、捻転などにより、手掌部・足底部の立体構造や指の屈曲−伸展方向に影響を与える。本研
究では、ヒトを含む各種真猿類の中手骨・中足骨の形態について検討した。中手骨の捻転角では、ヒトを含
む多くの種において共通のパターンが観察された一方で、チンパンジーなどでは異なるパターンが見られ
た。他方、中足骨ではより多様なパターンが見られた。ヒトが特異なパターンを示すほか、系統による相違
の存在も示唆された。
O−14/11 : 3 6∼11 : 4 8
頭骨からみたニホンザルの地域変異
○山本亜由美・國松 豊(京都大・霊長研)
Geographic variations of skull morphology in Japanese macaque (Macaca fuscata)
YAMAMOTO, A., KUNIMATSU, Y.
頭骨サイズにみられるニホンザルの地域変異のありようと、歯牙サ イズとの関連を明らかにするため、15
地域由来のオトナのニホンザル450個体 を計測した。その結果、頭骨サイズは最寒月の平均気温との相関が
みられ、オス・メスともにもっとも大きい頭蓋を持つのは白山集団、最も小さい頭蓋を持 つのはニホンザ
ル全体としては屋久島集団、M.f.f.としては房総集団であっ た。一方もっとも大きな歯牙を持つのはオスで静
岡集団、メスで下北集団であ り、もっとも小さな歯牙を持つのはニホンザル全体としては屋久島集団、M.f.f.
としては金華山集団であった。頭蓋サイズと歯牙サイズは必ずしも直線 的に一致しないことが示唆された。
一
般
口
演
45
テーマ:遺伝1
座 長
日時:10月7日(日)9:00∼9:48
O− 15∼18
会場:アイヴィホール
太田博樹(東京大学大学院)
O−15/9 : 0 0∼9 : 1 2
ペルー南海岸における集団の変遷
○篠田謙一(科博・人類)
、米田 穣(東大・新領域創成科学・先端生命科学)
、Guillen Sonia(Centro Mallqui)
Population history of the South Andean coastal region
SHINODA, K., YONEDA, M., GUILLEN, S.
チリ国境に近いペルーの海岸砂漠地帯にある形成期(BC1500−100年頃)に属する 6 つの遺跡とチリバヤ
文化期(AD900−1350年)の 3 つの遺跡から出土した人骨およびミイラを対象としてDNA分析を行い、長期
間にわたる集団のDNA構成の変化について考察した。解析した個体は34体で、そのうち形成期の人骨10体
とチリバヤ文化期の17体からDNA情報を得ることができた。解析の結果、形成期とチリバヤ文化期ではミ
トコンドリアDNAのハプログループ頻度に明確な差が観察された。またインカから植民地時代以降の 5 百年
ほどの間に、この地域では山岳地域からの集団の流入によって、ほとんど集団の置換に近い状況が生まれて
いることも明らかとなった。
O−16/9 : 1 2∼9 : 2 4
東北縄文人骨のミトコンドリアDNA解析
○安達 登(山梨大学医学部法医学講座)、篠田謙一(国立科学博物館・人類)、梅津和夫(山形大学医学部
法医病態診断学分野)
Mitochondrial DNA analysis of the Jomon skeletons excavated from the Tohoku region of Japan
ADACHI, N., SHINODA, K., UMETSU, K.
前回までの大会において、我々は従来比較的均質性が高いとされてきた縄文人集団に遺伝的地域差が存在
するのではないか、という可能性を示した。そこで今回の発表では、東北地方の縄文人を対象としてミトコ
ンドリアDNAの遺伝子型を精査し、北海道を中心とする他地域の縄文人のそれと比較検討した。 その結果、
東北地方の縄文人からも北海道縄文人に多くみられたハプログループN 9 bおよびM 7 aが検出され、北日本
の縄文人においてはこれらがミトコンドリアDNAの遺伝子型の中心となっていることが示唆された。
一
般
口
演
O−17/9 : 2 4∼9 : 3 6
ゲノムワイドSNP解析からみたオセアニアにおける遺伝子流動と自然選択
○木村亮介(東海大・医学部・法医、東京大・院・医学系・人類遺伝)、大橋 順(東京大・院・医学系・
人類遺伝)、松村康弘(健康・栄養研・健康栄養情報・教育研究)、中澤 港(群馬大・院・医学系・社会環
境医療)、稲岡 司(佐賀大・農・生物生産)、大塚柳太郎(環境研)、徳永勝士(東京大・院・医学系・人
類遺伝)
Genome-wide SNP analyses on gene flow and natural selection in Oceania
KIMURA, R., OHASHI, J., MATSUMURA, Y., NAKAZAWA, M., INAOKA, T., OHTSUKA, R., TOKUNAGA, K.
ニューギニアのギデラ族およびポリネシアのトンガ人において、Affymetrix社のGeneChip Mapping 500K
Assayを用いてゲノムワイド SNPタイピングを行い、公開されているアフリカ人、ヨーロッパ人およびアジア
人のSNPデータと併せて集団遺伝学的解析をおこなった。系統樹解析により、Australoidは遺伝的にMongoloid
に近いことが確認された。また集団構造解析の結果、ポリネシア人に対する遺伝的寄与はMongoloidが70%、
Australoidが30%であると推定された。ゲノム中に存在する自然選択の痕跡を探索したところ、複数の候補
遺伝子が浮かび上がった。これらの中には、エネルギー代謝関連遺伝子も含まれており、“倹約遺伝子”の
候補として期待される。
46
O−18/9 : 3 6∼9 : 4 8
栽培イネの起源と古代イネDNA分析
○熊谷真彦・植田信太郎(東大・院理)、王 瀝(中国科学院)
Origin of cultivated rice and DNA analysis of ancient rice
KUMAGAI, M., UEDA, S., WANG, L.
古代のイネ(炭化米)は数千年以上前のサンプルであっても、保存状態によりごく微量ではあるがDNAが残
存している。このDNAを分析することにより、古代からの栽培イネの遺伝的背景の変化を明らかにできるこ
とが期待される。本研究ではまずその炭化米が japonica、indica なのか、もしくはそれ以外の野生イネ O.
rufipogon系統由来であるのかを明らかにする。はじめに現代イネの葉緑体ゲノム配列の解析および分子系統
解析を行った。その結果 japonica、indicaは異なる O. rufipogon系統を祖先とすることが明らかになった。ま
た japonica、indica それぞれに特有のDNAマーカーを発見した。これらのマーカーを用いて炭化米のDNA分
析を行った結果を報告する。
一
般
口
演
47
テーマ:遺伝2
座 長
日時:10月7日(日)9:48∼10:48
O− 19∼23
会場:アイヴィホール
隅山健太(国立遺伝学研究所 集団遺伝研究部門)
O−19/9 : 4 8∼10 : 0 0
mtDNAとY−STRから見た琉球諸島(宮古・石垣島)住民の遺伝的多様性
○松草博隆・太田博樹・河村正二(東京大・新領域・先端生命)、羽地都映(羽地歯科口腔外科医院)、
当真 隆・石田 肇(琉球大・医・解剖)
mtDNA and Y-chromosome diversity in the Ryukyu (Miyako and Ishigaki islands) people
MATSUKUSA, H., OOTA, H., KAWAMURA, S., HANEJI, K., TOMA, T., ISHIDA, H.
琉球諸島の文化やヒトの形質は極めて多様である。これまで沖縄本島住民については様々な人類学的調査
がなされてきたものの、他の島々の住民については十分な調査が行われていない。私達は琉球諸島住民(宮
古島66人・石垣島61人・沖縄本島95人)の血液または唾液からDNAを抽出し、遺伝学解析を行った。mtDNA
にもとづくTajima's D検定は、宮古と石垣で異なる人口動態を示した。また、Y染色体STRにもとづくハプロ
タイプ解析では、石垣で宮古・沖縄本島・本州日本との遺伝的交流の低さが示された。これらの結果から宮
古・石垣島住民と沖縄本島・本州日本の人々との系統関係について考察する。
一
般
口
演
O−20/9 : 1 0∼10 : 1 2
新世界ザル色覚多型におけるL−Mオプシン平衡選択の検証:ヒト色覚多型の適応的意義の理解に向けて
○樋渡智秀・岡部友吾・筒井登子・平松千尋(東大・院・新領域・先端生命)、印南秀樹(総研大・院・生
命共生体進化)、河村正二(東大・院・新領域・先端生命)
Test of balancing selection hypothesis on the L-M opsin polymorphism in New World monkeys toward
understanding color vision variation in humans
HIWATASHI, T., OKABE,Y., TSUTSUI, T., HIRAMATSU, C., INNAN, H., KAWAMURA, S.
新世界ザルの色覚は高い種内多型を示し、ヒトの色覚多型の適応的意義を検討する優れたモデルとなる。
これらはX染色体性L−Mオプシンの多型性による。新世界ザルではL−Mオプシンは種を越えた対立遺伝子多
型を示すことから何らかの平衡選択がL−Mオプシンに働いていると考えられてきた。しかし、ヘテロ接合
体である 3 色型色覚の適応的意義は明確でなく、中立多型の持続時間を与える有効集団サイズも未解明であ
る。さらに群れという小集団における遺伝的浮動や集団サイズ変動の遺伝的変異性への効果もこれまで未知
である。そこで野生のオマキザル群とクモザル群のL/Mオプシンの塩基配列レベルの多型性に注目し平衡選
択の存在を証明した。
O−21/10 : 1 2∼10 : 2 4
霊長類における単一アミノ酸反復配列の進化
○五條堀 淳・植田信太郎(東大・理・生物・人類)
Evolution of amino acid repeats in primates
GOJOBORI, J., UEDA, S.
本研究では、単一アミノ酸リピートを持つヒトの658個の遺伝子について、双方向BLAST top hitによりほ
乳類のオルソログ遺伝子を推定し、これらの遺伝子をほ乳類で比較した。その結果、ほ乳類内で単一アミノ
酸リピート数が変化している遺伝子を84個抽出した。このうち霊長類内でリピート数の変化をしている可能
性が高い遺伝子について、オランウータン、テナガザル、ニホンザル、ヨザル、ギャラゴのgenomic DNAを
テンプレートとしたPCR direct sequencing法によってそれぞれの遺伝子の塩基配列を決定した。その結果か
ら霊長類における単一アミノ酸リピートのリピート数の変化とその進化を考察する。
48
O−22/10 : 2 4∼10 : 3 6
ヒト色覚変異の適応的意義検討に向けたL−Mオプシン遺伝子解析法の開発
○白井祐介・岡部友吾・樋渡智秀・太田博樹・河村正二(東京大学・大学院新領域創成科学研究科・先端生
命科学専攻)
Methodological development of analyzing L-M opsin genes toward evaluation of adaptive significance of color
vision variation in humans
SHIRAI, Y., OKABE, Y., HIWATASHI, T., OOTA, H., KAWAMURA, S.
ヒトは狭鼻猿類中唯一高い色覚多型を有する。それらの変異は一般に色覚異常と呼ばれている。近年我々
は、顕著な色覚多型を示す広鼻猿類(新世界ザル)においてヒトの「正常」色覚に相当する 3 色型色覚は「異常
に相当する 2 色型色覚に比べ有利とはいえず、むしろ逆に隠蔽色系の昆虫の採食において劣ることを示した。
我々は、ヒトの高頻度色覚多型は自然淘汰の緩みによるのではなく適応形質であるとする仮説を提示し、こ
れを検証するためにL−Mオプシン遺伝子の塩基多型性を評価する方法を確立することとした。その第一歩
としてL−Mオプシンの遺伝子型を従来法より確実に決定する方法の開発を行ったので報告する。
O−23/10 : 3 6∼10 : 4 8
ヒト染色体間のCpG突然変異率のばらつき
三沢計治(東大・理・生物科学)
Variation in CpG mutation rates among human chromosomes
MISAWA, K.
突然変異は、進化の原動力であり、正確な突然変異率の推定は、系統樹作成や分岐年代推定に必須であ
る。そこで我々は、ヒト・チンパンジー・アカゲザルのcDNA配列の比較から、ヒトの各染色体のCpG突然
変異とCpG以外の突然変異率を推定した。その結果、ヒト染色体間でCpG突然変異率に大きなばらつきがあ
ることがわかった。CpG突然変異はDNAメチル化によって引き起こされるため、このばらつきの原因は染色
体ごとにDNAメチル化の強さが異なっていることであると推定される。DNAメチル化の強さのばらつきと、
その結果として生じるCpG突然変異率の変動が、分子進化速度の一定性を乱す可能性についても考察する。
一
般
口
演
49
テーマ:生態
座 長
日時:10月7日(日)10:48∼11:12
O− 24∼25
会場:アイヴィホール
山内太郎(北海道大学 医学部 保健学科)
O−24/10 : 4 8∼11: 0 0
狩猟採集民と農耕民との共生関係
池谷和信(国立民族学博物館 総合研究大学院大学)
The co-existence between hunter-gatherers and farmers
IKEYA, K.
近年、狩猟採集民ムラブリを対象にした集団遺伝学の研究から、彼らは農耕以前の生活を示しているわけ
ではなく、およそ500−800年前に農耕民から移行したとされた。このような、農耕民から移行した狩猟採集
民としては、ほかにはマダガスカルのミケアが知られている。その一方で、熱帯の狩猟採集民には、ピグ
ミー、アグタ、ラウテのように農耕民とのあいだに共生関係を維持してきた集団が知られている。本研究で
は、このような狩猟採集民と農耕民との共生関係の有無にはどのような条件が影響しているのかについて、
タイ北部の狩猟採集民ムラブリを対象にして、その要因を把握することを目的とする。
O−25/11 : 0 0∼11 : 1 2
生殖管理技術からみた豚の家畜化過程の問題
中井信介(総合研究大学院大学 先導科学研究科)
Question of domestication process of pig from the view-point of crossbreeding control technique
NAKAI, S.
豚の家畜化過程での生殖管理技術については、
(1)雄イノシシとの交配、
(2)繁殖雄豚との自然交配、(3)
繁殖雄豚との管理された交配、が(1)→(2)→(3)と段階を経て進むモデルが考えられている。本研究では
豚の家畜化過程の生殖管理技術モデルへの貢献を目的として、近年「放し飼い」から「ゆるやかな囲い飼
い」へ変化がみられる、タイ北部山地の在来豚飼養における交配時の繁殖雄利用の調査を行った。その結
果、15例の交配事例では(1)2 例、
(2)8 例、
(3)6 例がみられた。この結果は、従来のモデルと異なり、3 種
の交配が混在しつつ家畜化が進むモデルを示唆する。
一
般
口
演
50
一
般
口
演
51
テーマ:進化1
座 長
日時:10月7日(日)15:00∼15:48
O− 26∼29
会場:アイヴィホール
海部陽介(国立科学博物館人類研究部)
O−26/15 : 0 0∼15 : 1 2
狩猟採集キャンプにおける定着と移動 −カメルーン南東部の狩猟採集民バカの事例より−
林 耕次(国立民族学博物館・外来研究員)
Sedentary and migratory of the forest camps among the Baka hunter-gatheres in southeastern Cameroon
HAYASHI, K.
カメルーン南東部に居住するピグミー系狩猟採集民バカは、今日、農耕活動を伴う定住生活を受容してい
る。しかし、おもに乾季を中心に森林でのキャンプを拠点とした長期的な狩猟採集活動を実践している。バ
カの狩猟採集キャンプには、一ヵ所に留まって活動を続けるタイプと、徐々にキャンプ地を変えながら移動
し、各地で生業内容を順応させるタイプが存在する。これらについて、
(1)キャンプの時期と場所、
(2)参加
者の移動パターン、
(3)狩猟を中心とした生業活動の内容、
(4)農耕活動との関係、の 4 点に注目しながら、
バカの狩猟採集キャンプの類型を示し、その戦略について報告する。
O−27/15 : 1 2∼15 : 2 4
カメルーン東南部の焼畑農耕民バクエレおよびピグミー系狩猟採集民バカにおける配偶者選択(予察)
大石高典(京都大・理・生物科学・人類進化)
Mate Preferences among the Bakwele horticulturalists and the Baka hunter-gatherers in Southeast Cameroon
OISHI, T.
近代西欧社会以外の社会、とくに産業化していない生業経済が維持されている社会における配偶者選択の
研究は少ない。特に、狩猟採集生活者において、どのような特性が配偶者選択において重要なのか、それが
農耕化に伴ってどう変わるのか、あるいは変わらないのかは、進化心理学者が主張するように、配偶者選択
が狩猟採集生活の中で形成された進化的形質か否かを議論するうえで非常に重要な問題である。本研究で
は、ともに現在では焼畑農耕を営みながらも、生業上の狩猟採集へのウェイトが異なる 2 集団を対象に、好
ましいとされる配偶者の条件について聞き取り調査を行い、実際の婚姻状況とともに両者を比較することを
試みた。
一
般
口
演
O−28/15 : 2 4∼15 : 3 6
ユーラシア大陸における絶滅したオナガザル類の進化史について
○高井正成(京都大・霊長研)、マシェンコ エフジェニー(ロシア科学アカデミー・古生物研)、西村 剛
(京都大・霊長研)、名取真人(岡山理大・総合情報・生物地球システム)
Evolutionary history of extinct cercopithecines in Eurasian continent
TAKAI, M., Maschenko, Evgeny., NISHIMURA, T., NATORI, M.
ユーラシア大陸におけるオナガザル類(亜科)の進化は、これまでマカク類を中心に語られることが多かっ
た。しかし化石記録によると、マカク以外にもParadolichopithecus やProcynocephalus といった大型の化石種
が、鮮新世から更新世前半にヨーロッパから東アジアまで広範囲に生息していたことがわかっている。こ
の 2 種はかなり大型で地上性であり、歯の形態も現生のマカク類よりもヒヒ類に似た形態パターンを示して
いることから、ヒヒ類と近縁である可能性が指摘されてきた。しかし最近の頭骨の外部形態や内部形態など
の解析は、ヒヒ類よりもマカク類に近縁であるという意見が強い。彼らの系統的位置とその進化史について
考察する。
52
O−29/15 : 3 6∼15 : 4 8
ケニア、ナカリ地域における最近の発掘成果
○中務真人(京大・院理・自然人類学)、國松 豊(京大・霊長研)、仲谷英夫(鹿児島大・理・地球環境)、
辻川 寛 (東北大・医・解剖)、山本亜由美(京大・霊長研)、酒井哲弥(島根大・総合理工)、實吉玄貴
(林原古生物学研究センター)、澤田順弘(島根大・総合理工)
Result of recent excavation in Nakali, Kenya
NAKATSUKASA, M., KUNIMATSU, Y., NAKAYA, H., TSUJIKAWA, H., YAMAMOTO, A., SAKAI, T.,
SANEYOSHI, M., SAWADA, Y.
演者らは、2005年、ケニア中部ナカリ地域において、新種大型類人猿を発見し、その年代を990−980万年
前と決定した。これまで、後期中新世のアフリカ類人猿は960万年前のサンブルピテクスが知られるのみで
あったが、新たに別種の大型類人猿がほぼ同時代から発見されたことは、現生アフリカ類人猿と人類の進化
過程を明らかにする上で様々な示唆を与える。その後の継続調査により、この大型類人猿の追加資料が発見
されるとともに、他の霊長類資料も増加した。今回はナカリの霊長類動物相を中心に最近の発掘成果につい
て発表する。
一
般
口
演
53
テーマ:進化2
座 長
日時:10月7日(日)15:48∼16:48
O− 30∼34
会場:アイヴィホール
中務真人(京都大学大学院理学研究科)
O−30/15 : 4 8∼16 : 0 0
チョローラピテクスの発見:類人猿とヒトの分岐年代の再検討は必要か?
○諏訪 元(東京大・総合研究博物館)、河野礼子(科博・人類)、加藤茂弘(人と自然の博物館)、B. Asfaw
(エチオピア地溝帯研究センター)、Y. Beyene(エチオピア文化観光省)
The discovery of Chororapithecus : reconsidering the antiquity of the human-ape split
SUWA, G., KONO, R., KATO, S., B, Asfaw., Y, Beyene.
本発表では、約1000から1050万年前のチョローラピテクス・アビシニクスの発見と、その意義について概
説する。チョローラピテクスの大臼歯にはせん断的特徴が一部見られ、機能的には繊維質の食性への萌芽的
な適応を意味し、系統的には同種が現生ゴリラを含む分岐群に属することを示唆している。同時に中新世の
化石類人猿の時代的、地理的分布を再検討すると、化石記録側からは、従来考えられてきた以上にヒトと類
人猿の分岐が深かったことが示唆される。この早期分岐仮説をゲノム情報の分析から果たして却下できるの
か、今後注目したい。
O−31/16 : 0 0∼16 : 1 2
チョローラピテクス大臼歯形状の機能形態分析
○河野礼子(科博・人類)、諏訪 元(東大・総合研究博物館)、B. Asfaw(エチオピア地溝帯研究センター)、
Y. Beyene(エチオピア文化観光省)
A functional morphological analysis of Chororapithecus molars
KONO, R., SUWA, G., B, Asfaw., Y, Beyene.
新たに発見されたチョローラピテクス・アビシニクスの大臼歯は、大きさがゴリラ並みであるだけでな
く、上顎大臼歯の近心舌側の張り出しが強いなど、現生ゴリラと共通するいくつかの機能的形態特徴を持つ
ことが明らかとなった。一方で、現生のゴリラと比べ、歯冠が低く咬頭が平坦であり、大臼歯エナメル質が
厚いという、独自の特徴も見出された。ただしエナメル質厚さに関しては、咬耗によるすり減りに供しうる
エナメル体積の大小との視点で評価すれば、現生ゴリラとの差は小さく、咬頭の低さとエナメル質の厚さ
は、現生のゴリラの極端な特殊化以前の状態を示していると思われる。
一
般
口
演
O−32/16 : 1 2∼16 : 2 4
Patterns of Middle Pleistocene hominin evolution in Africa and the emergence of modern humans
Mbua Emma(ケニア国立博物館・古生物)
Over the last two decades different views have emerged on the origin of modern humans and the mode of
Middle Pleistocene evolution in Africa. These mainly range from an evolutionary change within Homo sapiens
over much of the Middle Pleistocene to the existence of two or three different species during this time period. This
paper presents results of a new comprehensive study of the Middle and early Late Pleistocene cranial remains
based on a large number of non-metrical and metrical features of potential phylogenetic relevance. The aim of the
study was to examine whether modern cranial morphology is a result of long-term diachronic changes favouring
an evolving species Homo sapiens, or whether there was multiple species phylogeny. Results from this study
suggest that the origin of modern anatomy is a product of a continuous re-modelling of major aspects of vault and
face from conditions seen in early Middle Pleistocene groups.
54
O−33/16 : 2 4∼16 : 3 6
最古のジャワ原人の問題
○海部陽介・馬場悠男(国立科博・人類)、Indriati Etty・Jacob Teuku(ガジャマダ大)、Aziz Fachroel・
Kurniawan Iwan(バンドン地質調査所)
The question of the oldest Indonesian hominids
KAIFU, Y., BABA, H., Indriati, Etty., Jacob, Teuku., Aziz, Fachroel., Kurniawan, Iwan.
ジャワ原人化石の中でも最古の標本群は、下部更新統下位からの出土とみられ、ホモ属最初のユーラシア
拡散を探求する上で重要である。しかしその形態特徴については不明な点が多く、さらに出土層位に関する
情報不足から、そもそもどの化石を最古のグループに含めるべきかという問題も、十分には解決されていな
い。松浦ら(2005)は、サンギラン 2 号頭骨化石について、一般的な理解とは異なり、これが最古の群に属
する可能性を示唆した。本研究では、これに加えてホモ・エレクトスのタイプ標本であるトリニール 2 号頭
骨、その他数点の化石についても形態学的な吟味を行い、最古のジャワ原人集団の形態特徴と変異について
検討する。
O−34/16 : 3 6∼16 : 4 8
ピテカントロプスⅧ号(Sangiran 17)頭骨の由来層準の検証
○松浦秀治(お茶の水女子大学)、檀原 徹(京都フィッション・トラック)、近藤 恵(お茶の水女子大
学)、竹下欣宏(栃木県立博物館)、兵頭政幸(神戸大学)、Aziz Fachroel・Sudijono(インドネシア地質調
査研究所)、熊井久雄(大阪市立大学)
Verification of the source horizon of the Pithecanthropus Ⅷ (Sangiran 17) skull
MATSUURA, S., DANHARA, T., KONDO, M., TAKESHITA, Y., HYODO, M., Aziz, Fachroel., Sudijono.,
KUMAI, H.
ジャワ島サンギラン地域から1969年に採集されたSangiran 17頭骨は顔面部を保存する希有なジャワ原人資
料である。本頭骨の発見地点はインドネシア日本合同隊によってカブー層の中部凝灰岩の直下(カブー層下
部の最上部)に対比された。しかし、発見地点の直上にはカブー層中部の堆積物が露出し、そこから洗い出
された疑いも指摘され、この可能性に関して骨の化学分析や当該頭骨副鼻腔内残存堆積物の鉱物組成などか
ら検討されてきたが、明瞭な結論は得られていなかった。今回、件の副鼻腔内残存物中の斜方輝石や角閃石
などの屈折率測定から、Sangiran 17が発見地点の層準に由来することを疑う必要は、現時点では消滅したこ
とを報告する。
一
般
口
演
55
テーマ:先史
座 長
日時:10月8日(月)9:00∼9:48
O− 35∼38
会場:講堂
米田 穣(東京大学 新領域人類進化)
O−35/9 : 0 0∼9 : 1 2
シリア、デデリエ洞窟にみられる後期ムステリアン石器群の年代的変化
○西秋良宏(東京大・博物館)、仲田大人(青山学院大・文)、近藤 修(東京大・理・生物科学)、米田 穣
(東京大・新領域・人類進化)、ムヘイセン スルタン(ダマスカス大・文)、赤澤 威(高知工科大・総合研)
Chronological changes of the Late Levantine Mousterian industries at the Dederiyeh Cave, Syria
NISHIAKI, Y., NAKATA, H., KONDO, O., YONEDA, M., Muhesen, Sultan., AKAZAWA, T.
シリア、デデリエ洞窟においてネアンデルタール人骨化石を産出した地区の中期旧石器約 4 万5000点を形
態学的に検査したところ、次の二つの結果を得た。第一は、全15層にわたる当該石器群は全ていわゆるタブ
ンB型の後期ムステリアンに比定できるという点である。これは、後期ムステリアンはネアンデルタール人
によって残されたという、ケバラ、アムッド両洞窟で示唆された仮説を支持する結果である。第二に、下層
の石器群がより典型的な中期旧石器的特徴を示すのに対し、上層では後期旧石器的様相が増加していること
も判明した。この所見は、中期旧石器時代末に生じたネアンデルタール人の行動変化を考察する上で興味深
い論点を提供する。
一
般
口
演
O−36/9 : 1 2∼9 : 2 4
ヨルダン南部、タラート・アビーダ出土の前期青銅器時代遊牧民人骨について
○橋本裕子(奈文研・環境考古)、藤井純夫(金沢大・文・考古)
Human Skeletal Remains of Early Bronze Age Pastoral Nomads from Tal'at Abydah Cairn Field, Southern
Jordan
HASHIMOTO, H., FUJII, S.
中東の前期青銅器時代(紀元前3,500−2,000年頃)は、都市の成立と発展によって特徴づけられる。それ
まで半ば自給自足的であった周辺遊牧社会も、この時代になると、毛皮や肉などの供給源として活性化した
ことが知られている。しかし、定住社会側の人骨が豊富に出土するのに対し、遊牧社会側の人骨は殆ど確認
されていなかった。特にヨルダン南部では遊牧民の人骨出土例は皆無であった。この状況を打破したのが、
ジャフル盆地北西部に位置するタラート・アビーダ遺跡の発掘調査である。この遺跡を構成する20数基のケ
ルン墓のうち 3 基を発掘したところ、その全てから複数の人骨が出土した。本研究ではこれらの出土人骨の
形態的特徴について報告する。
O−37/9 : 2 4∼9 : 3 6
西日本におけるアカホヤ前後の炭素14年代測定
○遠部 慎・宮田佳樹・小林謙一(国立歴史民俗博物館)
Radiocarbon dating just in time of K-Ah in West Japan
ONBE, S., MIYATA, Y., KOBAYASHI, K.
鬼界カルデラに起因するアカホヤ火山灰が、縄文時代社会に大きな影響を与えたことは多くの研究者に
よって指摘されている。アカホヤは広域火山灰として、各地域の編年を整備するうえで、「鍵層」となって
いる。しかしながら、炭素年代でいえば6300BP頃、水月湖の年縞研究では5330calBCと絞りこまれているの
に対し、アカホヤ降下の時期については考古学的には十分に絞りこまれていない。それは、アカホヤ降灰期
前後とされる土器群自体の年代学的研究が十分でないからである。そこで東海系土器群を中心に、土器付着
炭化物のAMS炭素14年代測定を行い、当該期の年代的な整理を行う。
56
O−38/9 : 3 6∼9 : 4 8
大浦山洞穴の人骨と獣骨資料における損傷パターン比較
○佐宗亜衣子(東大・総合研究博物館)、福本 敬(東大・理・人類)、釼持輝久(横須賀考古)、須田英一
(三浦市教委)、諏訪 元(東大・総合研究博物館)
Patterns of damage on human versus faunal skeletal remains from the Yayoi period of the Ourayama sea cave,
Miure peninsula, Japan
SASO, A., FUKUMOTO, T., KENMOTSU, T., SUDA, E., SUWA, G.
食人を伴った特異な解体埋葬として報告された神奈川県大浦山洞穴資料について、
‘05年より再整理や発
掘記録の調査を行っている。人骨資料については、年齢構成に偏りが認められ、部位間の最小個体数におけ
る変動が小さいこと、骨片の約 3 ∼ 4 割に損傷痕が認められること等をすでに報告した。本報告では、人骨
の損傷をより詳細に観察するとともに、同洞窟から出土した獣骨の分析を行った。年齢構成、接合した骨片
間の空間的分布、損傷痕の指向性、骨外表面の非人為的損傷の程度について比較し、両群の損傷パターンに
見られる相違を検討した。これにより、大浦山洞穴資料の性状をより明瞭化する客観的データを提示するこ
とを目的としている。
一
般
口
演
57
テーマ:古人骨1
座 長
日時:10月8日(月)9:48∼10:36
O− 39∼42
会場:講堂
近藤 修(東京大学大学院理 生物科学 人類)
O−39/9 : 4 8∼10 : 0 0
東南アジア人の二層構造仮説の復活に向けて:ベトナムでの先史人骨の例から
松村博文(札幌医大・解剖 2 )
Reviving the 'Two layer' hypotheis in Southeast Asia: based on the prehistoric human remains in Vietnam
MATSUMURA, H.
日本人の成立については二重構造仮説が広く支持されているが、東南アジアでも中国南部からの稲作民拡
散と関連させた同様の仮説(Two Layer Hypothesis)が古くから提唱されているにもかかわらず、最近の形
態人類学的研究の多くはこれを否定し、地域連続説を主張する傾向にある。演者はここ数年ベトナムのホア
ビニアン文化期のHang Cho洞穴ならびに新石器時代後期のMan Bac遺跡の発掘をおこない、二層構造の有無
の論議の鍵となる人骨を発見してきた。その発掘成果はこれまでに断片的に紹介してきたが、以来、周辺集
団も含めてこれらの人骨の形態学的分析を総合的におこなったので、今回はその分析結果を発表する。
O−40/10 : 0 0∼10 : 1 2
四肢形態の成長変化から見た古代集団の生活環境
岡崎健治(学振・海外研究員(吉林大学辺境考古))
Living condition of ancient peoples based on the growth of limb morphology, Japan
OKAZAKI, K.
縄文・弥生・中世・近現代の未成人四肢骨を用い、古代集団の成長変化を比較検討した。年齢は、主に歯
の形成と萌出を基に推定した。縄文人の下肢を特徴づける柱状大腿骨と扁平脛骨が、10−12歳から顕著に
なっていた。それに対し、上肢では、縄文人の発達した前腕骨は、1 − 3 歳にまず表れ、その後、小児期にか
けては一時的に消失していた。また、四肢長径の各年齢における成長到達度を検討した結果、狩猟採集を主
な生業としていた縄文時代から稲作農耕を開始した弥生時代以降にかけて、成長阻害の程度が増した形跡は
認められなかった。
一
般
口
演
O−41/10 : 1 2∼10 : 2 4
愛媛県上黒岩岩陰遺跡出土の縄文早期人骨
○中橋孝博(九州大・比較社会文化研究院)、岡崎健治(吉林大学・辺彊考古研究中心)
On the early Jomon skeletons excavated from Kamikuroiwa-site in Ehime prefecture
NAKAHASHI, T., OKAZAKI, K.
愛媛県の山間部、旧美川村に位置する上黒岩岩陰遺跡は、1961年の発見以来1970年まで 5 次にわたる発掘
調査が実施され、全国的にも貴重な線刻礫や骨鏃による負傷寛骨などと共に、縄文早期に遡る多数の人骨が
出土したことで知られる遺跡である。人骨の概要についてはすでに小片保、森本岩太郎、小片丘彦らによっ
て報告されているが、今回、当遺跡の本報告書を作成する運びとなり、改めて人骨を精査する機会を得た。
25体を数える人骨群の年齢構成や、負傷人骨の性判定、あるいは未成人骨の分析など、幾つか新たな知見も
得られたのでその結果を報告する。
58
O−42/10 : 2 4∼10 : 3 6
成長初期における縄文時代人四肢骨の断面形状に関する研究
水嶋崇一郎(東大・理・人類)
Cross-sectional morphology of the Jomon limb bone diaphyses in the fetal-infant period
MIZUSHIMA, S.
成人の縄文時代人は現代日本人より頑丈な四肢骨の形態特徴をもつことが知られている。この頑丈性は、
活発な狩猟採集の生活様式が反映されたものとして機能適応的に解釈されてきた。本研究では、上記の 2 集
団において、胎児期から乳児期に属すると考えられる個体を対象に、上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、
腓骨の骨幹中央部での断面形状と骨幹長の成長様式を比較した。結果として、いずれの長骨でも、縄文時代
人は現代日本人より太く頑丈な断面形状を示すことがわかった。このことから、縄文時代人の頑丈性のう
ち、少なくとも四肢主要長骨の骨幹部では、従来の機能適応的な解釈に加えて遺伝要因の影響も考慮する必
要があると考えられた。
一
般
口
演
59
テーマ:古人骨2
座 長
日時:10月8日(月)10:36∼11:12
O− 43∼45
会場:講堂
近藤 恵(お茶の水女子大学)
O−43/10 : 3 6∼10 : 4 8
オホーツク文化期の古食性の復元
○米田 穣(東大・新領域)、石田 肇(琉球大・医学部)、向井人史(環境研・地球セ)
Dietary Reconstruction of the Okhotsk Culture
YONEDA, M., ISHIDA, H., MUKAI, H.
オホーツク文化は 5 ∼13世紀頃に北海道、サハリン、千島列島のオホーツク沿岸に展開した、独自の文化
である。従来、銛などの海獣狩猟のための骨角器が数多く出土していることや、海獣類を多く含む動物遺存
体から海獣狩猟を中心とした生業活動が指摘されてきた。一方で、礼文島の香深井A遺跡での動物遺存体の
定量的な研究では、ニシン、ホッケ、マダラなどの大型魚類が中心の食生活という異なる食生態が復元され
ている。本研究では、香深井A遺跡、モヨロ遺跡から出土したオホーツク文化期の人骨および動物骨で炭
素・窒素安定同位体比を分析し、両者を比較することでタンパク質摂取の内容を検討する。
一
般
口
演
O−44/10 : 4 8∼11 : 0 0
古人骨の同位体分析による鎌倉時代由比ヶ浜南遺跡における授乳習慣の復元
○下見光奈(東京大・新領域・先端生命)、長岡朋人・平田和明(聖マリアンナ医大・解剖)、米田 穣(東
京大・新領域・先端生命)
Reconstruction of the Breastfeeding Pattern Based on Isotopic Analysis of the Kamakura Population from the
Yuigahama-Minami Site
SHIMOMI, A., NAGAOKA, T., HIRATA, K., YONEDA, M.
類人猿に比べヒトは授乳期間が短いが、いつこの短縮が起こったかは知られていない。授乳中はホルモン
の作用で妊娠しにくく、授乳短縮は妊娠間隔や集団の人口増加率にも関連する。しかし授乳は人骨や遺物に
は直接反映せず、過去の研究は難しい。一方、例えば弥生時代の初期渡来民など、人口増加率の変化が議論
されている。本研究では、授乳習慣の変化と人口増加率の関係を検討するために、授乳に伴う乳児の窒素同
位体比上昇から過去の授乳習慣を復元する方法を検討した。具体的には、神奈川県由比ヶ浜南遺跡出土の乳
幼児・小児骨( 0 ∼14歳)等48個体で骨コラーゲンの窒素同位体比を測定し、年齢による変化を調べ、方法
の有効性と限界を議論する。
O−45/11 : 0 0∼11 : 1 2
古人骨の分析による江戸時代の鉛汚染の研究
○柿沼由佳理(東京大・新領域・先端生命)、吉永 淳(東京大・新領域・環境システム)、近藤 修(東京
大・理・人類)、米田 穣(東京大・新領域・先端生命)
The research of the lead pollution in Edo Era by the analysis of excavated human bones
KAKINUMA, Y., YOSHINAGA, J., KONDO, O., YONEDA, M.
古人骨の研究から江戸時代には深刻な鉛汚染が存在したことが知られ、文献研究や鉛濃度の男女差から白
粉が主な汚染源と推測されている。しかし陶器釉薬や銀精錬による環境汚染など他の汚染経路は検討されて
いない。鉛汚染は、古代ローマ帝国の衰退に関与したという説もあり、その実態解明は重要だが過去の事例
での系統だった研究はなされていない。江戸時代人骨は個体情報が豊富であり、金属汚染の実態解明の良い
研究事例となりうる。本研究では、東京都池之端七軒町遺跡および京都府伏見城跡遺跡から出土した乳幼児
を含む江戸時代人骨や動物骨で骨中の鉛濃度を測定し、属性(性差・年齢・社会階層・時期等)での比較を
もとに鉛汚染経路を検討した。
60
一
般
口
演
61
テーマ:運動1
座 長
日時:10月8日(月)9:00∼9:48
O− 46∼49
会場:アイヴィホール
荻原直道(京都大学 理)
O−46/9 : 0 0∼9 : 1 2
マリ人と日本人の歩行パラメータの比較
○足立和隆(筑波大・人間総合科学・体育)、楠本彩乃((株)シンエイ)、保坂実千代(京都大学)、川田順
造(神奈川大・日本常民文化研)
Walking parameters of Malian and Japanese
ADACHI, K., KUSUMOTO, A., HOSAKA, M., KAWADA, J.
西アフリカ・マリ共和国の地方町Bougouniにおいて、道路脇に設置したビデオカメラによって日中の人々
の歩行状況を撮影し、画像中から一人歩きの成人男性107名、成人女性159名の歩行パラメータ(歩行速度、
歩調、ステップ長)を測定した。その結果、男女各々、歩行速度は1.32m/s(0.20)、1.18m/s(0.14)、歩調は
1.73steps/s(0.16)、1.73steps/s(0.12)、ステップ長は0.76m/step(0.076)、0.68m/step(0.056)であった(カッ
コ内は標準偏差)。これらの値を東京における歩行測定値と比較したところ、男女とも身長と下肢長が日本
人よりも大きい値を示すマリ人の方が歩行速度は遅く、歩幅は大きく、歩調はゆっくりという結果となった。
O−47/9 : 1 2∼9 : 2 4
健康な高齢者歩行の身体動揺について
○木村 賛・小林 宏光(石川県看大)、中山栄純(北里大)、垣花 渉・橋本智江(石川県看大)
Sway in the walking of healthy elderly
KIMURA, T., KOBAYASHI, H., NAKAYAMA, E., KAKIHANA, W., HASHIMOTO, C.
高齢者歩行の特徴を調べるために、地域在住の健康な高齢者の継続調査を行ってきている。今回は基本的
資料として、高齢者歩行時の身体動揺を取り上げ、若年成人とのちがいならびに加齢との関係を横断的に検
討した結果を報告する。健康な高齢者においては、乳幼児に時折見られるような一脚接地時の前後方向への
動揺は、見ることができなかった。左右方向への動きに関して、遊脚期における足部の側方への振り出し
が、高齢者においては若年成人より少ない。一方、接地期の歩隔は若年より大きい。ただし、つま先の開き
は高齢者、若年ともに性差があり、女性の方が少ない。歩行時の肩部ならびに腰部のねじりは、高齢者が若
年より少ない。
一
般
口
演
O−48/9 : 2 4∼9 : 3 6
動物園環境での霊長類ロコモーション定量的解析の試み
○平崎鋭矢(大阪大・人間科学・生物人類)、高野 智((財)日本モンキーセンター )、熊倉博雄(大阪大・
人間科学・生物人類)
A preliminary study of primate locomotor kinematics in zoo environment
HIRASAKI, E., TAKANO, T., KUMAKURA, H.
野外に準ずる環境で多くの種に容易にアクセスできる動物園において、各種霊長類の自然な身体運動を非
侵襲的に計測することを目標に、そのための計測法の開発を試みた。その結果、動物園環境においても身体
運動の 3 次元的計測、即ち歩幅や歩調、四肢関節角度等の見積が可能であることを確認した。これまで実験
室内に限定されていたこの類の分析を屋外でも行い得ることによって、対象となる動物種が増え、また動物
の本来の動きを知ることが可能となり、研究の幅と可能性は大きく広がる。今回はこれまでに得たいくつか
の分析例を紹介する。この研究は、(財)日本モンキーセンターの協力と、科学研究費補助金(萌芽研究)の
補助を得て継続中である。
62
O−49/9 : 3 6∼9 : 4 8
レッサーパンダ(Ailurus fulgens)の二足行動が示唆するヒト上科における二足歩行能の起源:進行方向意
識転換仮説
○松村秋芳(防衛医大・生物)、藤野 健(東京都老人研)、高橋 裕(防衛医大・生物)
The origin of bipedalism in Hominoidea suggested from bipedal behavior of red panda(Ailurus fulgens)
MATSUMURA, A., FUJINO, K., TAKAHASHI, Y.
レッサーパンダは、二足で立つのみで自発的に二足歩行しない。その背景には、木登りと懸垂行動に関連
した下肢の制御が想定される。本種は、把握した枝を瞬時に放出できる手の構造を遺伝的に持たないため、
類人猿型の腕渡りは発達し得ず、鉤爪に依存した体幹長軸方向の垂直木登り、懸垂行動、二足起立行動を発
達させた。ヒト祖先の類人猿では、樹上での懸垂行動時に体幹の長軸と垂直な矢状方向に前進しようとする
意識転換が起きた。このとき片手で枝の把握と放出ができたので、上下肢を左右交替に動かして運動の意識
を実現する神経制御の適応がなされた。これが樹上の腕渡りを発達させ、地上に降りた後の二足歩行能の進
化に関与したと考えられる。
一
般
口
演
63
テーマ:運動2
座 長
日時:10月8日(月)9:48∼10:36
O− 50∼53
会場:アイヴィホール
平崎鋭矢(大阪大学 人間科学研究科)
O−50/9 : 4 8∼10 : 0 0
水平梯子でのロコモーションにおけるニホンザルの後肢の接地
○日暮泰男・平崎鋭矢・熊倉博雄(大阪大・人間科学・生物人類)
Hindlimb placement during locomotion on the horizontal ladder in Japanese macaques
HIGURASHI, Y., HIRASAKI, E., KUMAKURA, H.
四足動物は、位置を移動するとき、自らの後肢を視野に捉えることができず、そのため、前肢に比べて後
肢を統御するのは難しい、と考えられている。これは、複雑な地形で生活する動物、例えば、樹上に暮らす
霊長類にとって、特に対処するべき問題である。ニホンザルを対象とした本研究では、彼らが、ロコモー
ションに関連した後肢の統御の問題を、どのように解決しているのかを、水平梯子という樹上環境を模擬し
た支持基体を使用して、実験的に調べた。本研究とこれまでの研究の結果から、ニホンザルは、前肢で水平
梯子の横棒を把握して、その位置を確認し、そこに後肢を移動させることで、精度の高い後肢の制御を行う
ことが示唆された。
O−51/10 : 0 0∼10 : 1 2
歩行時の足部形態の計測
○河内まき子・木村 誠・持丸正明(産総研・デジタルヒューマン)
Measurement of foot morphology during walking
KOUCHI, M., KIMURA, M., MOCHIMARU, M.
立位時に右足のボール断面および足長の50%、舟状骨最内側突出点、外果後縁位置を通り足軸に直交す
る 3 つの垂直断面に線を引き、中央部にガラス板をはめ込んだ歩行路の上を歩行させて右足部断面形状をス
テレオカメラ法による計測装置で計測した(14Hz)。同時に床反力垂直分力を計測し(120Hz)、ガラス板の
下方から高速ビデオで足底部画像を撮影した(200Hz)。男女45名ついて計測を行ない、足底部と断面の寸法
を立位時、床反力第 1 ピーク(P 1 )時、ピーク間の谷時で比較した。P 1 時にアーチ長は立位時よりも長く、
足背高は 1 mm程度だがむしろ高くなった。踏まず高の変化は仮にあったとしても小さい(±0.5mm程度)。
一
般
口
演
O−52/10 : 1 2∼10 : 2 4
道具使用に伴う感覚運動統合の形成過程
○平井直樹(杏林大・医・統合生理)、佐々木成人・内藤公卿・本郷利憲(東京都神経科学総合研)
Development of sensorimotor integraion in using hand-held tool in monkeys
HIRAI, N., SASAKI, S., NAITOH, K., HONGO, T.
Learning processes of tool(forceps)-use for taking food in monkeys were examined. The suppression of the
innate behavior to take food with their hand was prerequisite for their learning to use hand-held tool to act on
objects within reach. At the first stage, they learned the trajectory of hand pass to bring forceps to a memorized
food without gaze-shift on target, but the accuracy was improved in trial-by-trial manner. At the second stage, they
accurately brought the endpoint of forceps to food under the visual guidance. At the third stage, they started
processes for grasping food, i.e., a sequence of widening and closure of the aperture in order to pick up food
efficiently while they brought the forceps toward food as they took a food with their own hand, indicating
monkeys have an ability to predict the forthcoming demands for the goal and adjust action accordingly.
64
O−53/10: 24∼10: 36
中国内蒙古の子どもの皮脂厚の成長
○芦澤玖美・棚町徳子(大妻女子大・人間生活科研)、金 鋒(中国科学院・遺伝発育研)、李 玉玲・陸
舜華(内蒙古師範大・生命科学院)
Growth of skinfolds of the children in Inner Mongolia, China
ASHIZAWA, K., TANAMACHI, N., JIN, F., LI, Y., LU, S.
7 −18際の上記被験者1240名の皮脂厚等の測定を行った。結果:男は全年齢を通じて体重、BMI共に北京
より小さいが、女は思春期後は北京と差がない。男子は上腕、背部皮脂厚とも北京より有意に薄い。女子は
思春期後の上腕皮脂厚は北京と差がない。BMIと 2 皮脂厚の相関係数から北京では皮脂厚がBMIに強く寄与
していることが示唆される。背部皮脂厚に対する上腕皮脂厚の比は15歳までは男女とも内蒙古で相対的に薄
い。その後男では上腕皮脂厚が厚くなり、女では上腕と背部の皮脂厚はほぼ同じ厚さになる。Arm Fat Index
は男では12年齢群中 8 年齢で、女では 4 年齢でシリンホトの値が有意に大きかった。
一
般
口
演
65
テーマ:霊長1
座 長
日時:10月8日(月)10:36∼11:12
O− 54∼56
会場:アイヴィホール
田中伊知郎(四日市大学 環境情報学部)
O−54/10 : 3 6∼10 : 4 8
火の人類進化考(1)
林 俊郎(目白大・社会学部・社会情報学科)
A Study of the Human Evolution on Fire(Part 1)
HAYASHI, T.
人類進化上の最大の謎は大脳化現象の要因である。二足歩行が大脳化を促したとする説は半ば定説化した
観にあるが、人類が二足歩行を始めてから200万年以上もの間脳進化は起こっていない。近年の化石研究の
知見を勘案すると脳進化は体型のスリム化とほぼ同時に始まっている。消化器系や体型は食物の内容によっ
て容易に変化する。また、大脳化と大きくなった脳の維持に大量のブドウ糖供給は絶対的必要条件であろ
う。ここでは、火の発見を契機として盲腸をはじめとした消化器官の退行(体型のスリム化)と生デンプン
のα化による脳へのブドウ糖供給によって大脳化が促がされたとする仮説を提案する。
O−55/10 : 4 8∼11 : 0 0
野生チンパンジーの投擲行動
西田利貞((財)日本モンキーセンター)
Throwing behavior of wild chimpanzees
NISHIDA, T.
霊長類の利き手の研究の結果、一側優位性は個体レベルではともかく集団レベルでは見出されなかった。
人類進化と道具との関連から、チンパンジーの道具使用が調べられたが、投擲は未検討だ。投擲が人類の右
手利きを創出したという仮説のもとに、チンパンジーの投擲行動を調べた。岩、石、枝、木切れ、枯葉が投
げられる。1999−2003年に記録した529回の投擲のうち510回は雄であり、性差が大きい。20回以上投擲し
た雄12頭、雌 1 頭のうち優位な左右差を示したのは雄 2 頭だけで、いずれも右利きだった。ヒトなどには
狙って投げることがあるが、同種個体に対しての狙い投げはまれである。
一
般
口
演
O−56/11 : 0 0∼11 : 1 2
タンザニア、マハレのチンパンジーによるベッド作成行動と採食行動の関係
五百部 裕
Relationships between bed-building and feeding behavior by chimpanzees at Mahale, Tanzania
IHOBE, H.
本発表は、チンパンジーの長期継続調査によって、彼らの土地利用や遊動パターンに関する資料が大量に
蓄積されているタンザニア共和国マハレ山塊国立公園において、チンパンジーのベッド作成行動と彼らの土
地利用や遊動パターンの関連を明らかにすることを目的とした一連の研究の成果の一つを報告するものであ
る。本発表では、1995年 8 月∼12月に、ルートセンサスによって収集したベッドに関する資料と、同時期に
チンパンジーの追跡によって得られた彼らの採食行動の資料を合わせて分析し、チンパンジーがベッドを作
る樹種や場所の選択と彼らの採食行動との関連を考察する。
66
一
般
口
演
67
テーマ:霊長2
座 長
日時:10月8日(月)11:12∼11:48
O− 57∼59
会場:アイヴィホール
高野 智(財団法人日本モンキーセンター)
O−57/11 : 1 2∼11 : 2 4
テナガザルの音声生成・操作に関する実験的研究
○西村 剛・香田啓貴・親川千紗子・正高信男(京都大・霊長研)、二本松俊邦(福知山市動物園)
Voice physiology of the song in gibbons
NISHIMURA, T., KODA, H., OYAKAWA, C., MASATAKA, N., NIHONMATSU, T.
テナガザル類は、「ソング」とよばれる特異的な音声を発することで知られている。ヒトを含む他の霊長
類の音声は、通常、複数の共鳴周波数からなる楽音である。しかし、ソングの一連の音声は、ほとんど一つ
の共鳴周波数成分からなる純音的音声である。そのような音声をつくるには、特徴ある音声生理メカニズム
を必要とするだろう。本研究では、その音声生理を検討するために、ヘリオックスガス環境下におけるシロ
テテナガザルのソングを録音し、その音響学的特徴の変成ならびに経時変化を分析した。さらに、その分析
結果から、音声器官の運動の操作性について考察した。
一
般
口
演
O−58/11 : 2 4∼11 : 3 6
Laos北部における霊長類の分布と生息実態
○濱田 穣(京大・霊長研・形態)
、栗田博之(大分市教育委員会)
、Kingsada Phouton・Bounam Pathoumton
(National U of Laos・理・生物 )、Malaivijitnond Suchinda(Chulalongkorn U (Thailand)・理・生物)
Primate Distribution and Present Status in northern Lao PDR
HAMADA, Y., KURITA, H., Kingsada, Phouton., Bounam, Pathoumton., Malaivijitnond, Suchinda.
Lao PDR (Laos, hereafter) is of importance in Primate Zoogeography. However, surveys have not been made,
and the knowledge on their distribution and present statuses is urgently needed because of severe threats on them.
We made round-trip and interview survey in northern Laos in April-May 2005. The two loris species (Nycticebus
bengalensis and N. pygmaeus), three macaque species (Macaca mulatta, M. assamensis, and M. arctoides), and one
langur species (Trachypithecus phayrei) were reported from about a half of 46 interview points. Although with
smaller frequency, the pig-tailed macaques (M. nemestrina leonina) were also found. Gibbons were reported from
about 1/3 of points without specification: Nomascus concolor and N. leucogenys. The certain distribution of the
latter and T. francoisi langur was reported in the Phou Loei NBCA (National Biodiversity Conservation Area) and
a small population of N. concolor could survive in the Nam Ha NBCA. The human impacts will be discussed.
O−59/11: 36∼11: 48
ニホンザルにおけるシラミ卵取り行動の発達と毛づくろい相手の行動変化の関連
田中伊知郎(四日市大・環境情報)
Relation between the development of delousing behavior and changes in groomee behavior during grooming
among free-ranging Japanese macaques
TANAKA, I.
ニホンザルは毛づくろい時にシラミ卵を探し、毛からはずしてつまみ上げ食べる。 そこで、シラミ卵取
り行動の発達と毛づくろい相手の行動変化(相手の毛をかき分ける場合に相手が体を動かす・相手の毛から
シラミ卵はずすときに相手が体を動かす)との関連を志賀A− 1 群のニホンザルを対象に横断調査で調べた。
正規分布が棄却される場合は角変換を行って主成分分析した結果、シラミ卵取りの行動要素と相手の行動変
化指数が年齢上昇よりも強く関連していた。以上から、各行動要素は、相手の反応と組み合わさって学習さ
れると考えられる。また横断調査であることから、シラミ卵取り行動の発達過程が集団内で共有されている
ことが示唆された。
68
一
般
口
演
69
ポスター発表
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
日時:10月6日
(土)
∼ 10月8日
(月)
ポスター発表
説明討論時間
会場:アイヴィホールロビー
10月 6 日(土)17 : 0 0∼18 : 0 0(奇数演題番号)
10月 7 日(日)14 : 0 0∼15 : 0 0(偶数演題番号)
P−01
北辺の横穴墓古代人−宮城県矢本横穴墓群出土人骨の形質
○瀧川 渉(東北大・医・人体構造)、佐藤敏幸(東松島市・教委)
Northeastern protohistoric people:physical traits of human skeletal remains from the Yamoto tunnel burials in
Miyagi Prefecture
TAKIGAWA,W., SATOH, T.
宮城県東松島市(旧矢本町)の矢本横穴墓群は、7 世紀中葉から 9 世紀初頭にかけて造営された古代の墓地
遺跡である。2003年の宮城県北部連続地震によって丘陵斜面が崩壊したことに伴い翌年から発掘調査が行わ
れ、約40基の横穴墓から多数の人骨が出土した。これらの人骨は、全体的に低顔傾向にあるが顔面平坦度は
小さく、頭蓋計測値によるPenroseの形態距離や形態小変異に基づく尤度法を用いた解析では、大半の個体
が西日本弥生・古墳・現代日本人に近接するものの、64号墓出土人骨に関しては縄文・続縄文・アイヌのグ
ループに類似することが判明した。また、平均身長は男性で約160cm、女性で約150cmと推定され、当時と
しては若干低い値を示した。
P−02
沖縄県具志川島岩立遺跡西区より出土した縄文人骨の追加例
○土肥直美(琉球大・医学部・第 1 解剖)、竹中正巳(鹿児島女子短大)、片桐千亜紀(沖縄県立埋蔵文化財
センター)
Additional Jomon skeletons excavated from the Gushikawajima Shiitachi Nishiku site, Okinawa Prefecture
DOI, N., TAKENAKA, M., KATAGIRI, C.
沖縄県立埋蔵文化財センターによる2005・2006年度具志川島岩立遺跡西区の発掘調査において、縄文時代
後期と推定される人骨が出土した。 同遺跡は1989年から1992年に伊是名村教育委員会による発掘調査が行
われており、14体の縄文人骨が出土している(松下、太田:1993)。今回出土した縄文人骨は、前回調査の
さらに下層より検出され、下顎骨の数から少なくとも 9 体分と推定される。南西諸島の先史時代人にはかな
りの形質的変異が認められており、その成り立ちを解明するためには、さらなる資料の充実が望まれてい
た。今回、願ってもない縄文人骨の追加資料が得られたので、それらの概要について報告する。
ポ
ス
タ
ー
発
表
P−03
オホーツク文化人骨の頭蓋形態小変異
○米須敦子(琉球大学・医学部・第一解剖学分野)、埴原恒彦(佐賀大・医学部・解剖人類)、天野哲也・
小野裕子(北海道大・総合博物館)、米田 穣(東京大・新領域創成)、譜久嶺忠彦・石田 肇(琉球大学・
医学部・第一解剖学分野)
Nonmetric cranial variation in human skeletal remains associated with Okhotsk culture
KOMESU, A., HANIHARA, T., AMANO, T., ONO, H., YONEDA, M., FUKUMINE, T., ISHIDA, H.
昨年に引き続き、北大総合博物館に保管されるモヨロ貝塚を中心とするオホーツク文化人骨の頭蓋形態小
変異の19形質を用いた分析を行った。オホーツク文化人骨資料を、北オホーツク群(サハリン及び北海道北
部)と東オホーツク群(北海道東部)として分け、2 群とした。比較資料として、縄文時代人骨、アイヌを始
めとする近隣20集団を用いた。スミスの距離を求めると両者は近いが、Riiでは、差がある。北部オホーツ
クはサハリンアイヌに近く、また、東オホーツクが、北海道アイヌに近づくのではなく、独自の位置を占め
ていることが示された。
72
P−04
沖縄島摩文仁出土のヒト化石頭蓋冠破片 ―― 初歩的観察 ――
佐倉 朔(科博・人類)
Human fossil fragments of cranial vault unearthed at Mabuni, Okinawa Island ― A preliminary observation ―
SAKURA, H.
沖縄島南端の摩文仁が丘付近は第二次大戦末期の激戦地で、石灰岩台地の中腹で海抜40m付近の岩蔭に掘
られた壕の中でも多数の戦死者を出した。同じ地点から、これらの新しい時代の人骨群とは全く異質な頭蓋
冠破片が、大城逸朗氏によって採取されている。この研究は進行中であるが、今回は外見のみを報告する。
頭蓋冠破片は 3 個あるが、そのうち2個は接合が可能である。 3 個とも同一個体に属すると考えられる。1
個は右頭頂骨前内側部小片、他は左右頭頂骨と後頭骨の一部を含む長径81.5mmの破片である。良く化石化
し、またその厚さは著しく、原人段階の化石人類の標準値に匹敵し、病理的肥厚の徴候はない。
P−05
中世人骨と江戸時代人骨の乳様突起計測値に基づく性別判定
○長岡朋人(聖マリアンナ医科大・医・解剖)、静島昭夫(日本大・松戸歯)、澤田純明・塘 総一郎・
星野敬吾・佐藤華子・平田和明(聖マリアンナ医科大・医・解剖)
Sex assessment using the mastoid process measurements of human skeletons from the medieval and early
modern periods
NAGAOKA, T., SHIZUSHIMA, A., SAWADA, J., TOMO, S., HOSHINO, K., SATO, H., HIRATA, K.
人骨の性別判定は人類学の基礎的な情報である。頭蓋に基づく性別判定法は、判別分析を通して人骨鑑定
に常用される。しかし、現代人骨に基づいた従来の判別分析法を古人骨に使うことは三つの理由から難し
い。一点目は、従来の判別法は、頭蓋全体の計測値から判別式を導いているため、欠損部位が多くみられる
古人骨には実用性が乏しい。二点目は、従来法は現代人頭蓋を用いて導いた式であるため、頭蓋形態が現代
人と異なる古人骨の性別判定においては正確性に問題がある。三点目は、計測者による計測誤差である。今
回、鎌倉市由比ヶ浜南遺跡の中世人骨と東京都一橋高校遺跡の江戸時代人骨を資料とし、乳様突起計測値に
基づく性別判定法を検討した。
P−06
沖縄県久米島近世人骨の踵骨・距骨関節面の形状
○久高将臣・土肥直美・譜久嶺忠彦・蔵元秀一(琉球大学医学部形態機能医科学講座解剖学第一分野)、
西銘 章(沖縄県教育庁)、石田 肇(琉球大学医学部形態機能医科学講座解剖学第一分野)
Variation in Talar Joint Facets of the Early Modern Human Calcaneus from Kumejima, Okinawa
KUDAKA, M., DOI, N., FUKUMINE, T., KURAMOTO, S., NISHIME, A., ISHIDA, H.
久米島近世人骨222個体396側を用い、踵骨の距骨関節面形状を 4 型(連続型・くびれ型・分離型・前関節
欠損型)、距骨の踵骨関節面形状も 4 型に分類し分析を行った。結果、1)男女とも左右踵骨の距骨関節面形
状で有意に連関を認めた。2)踵骨の距骨関節面形状の出現頻度左右差は男女とも認めなかった。3)性差では
男性でくびれ型の出現頻度が有意に高く、連続型の出現頻度が有意に低い。4)踵骨の距骨関節面形状と距骨
の関節面との連関は連続型、くびれ型、前関節欠損型の 3 型は 5 %水準で 1 対 1 の対応関係を示し、分離型
は距骨の 2 つの関節面形状に対応した。5)前・中関節面長は分散分析で踵骨の距骨関節面形状間に有意差を
認めた。
ポ
ス
タ
ー
発
表
73
P−07
形態計測データのQモード相関係数に対する欠測値の影響
多賀谷 昭(長野県看護大学)
Effect of missing values on Q-mode correlation coefficient of morphological measurements
TAGAYA, A.
形態計測データをもちいて多変量分析を行う際、欠測データをどのように取り扱うべきかがしばしば問題
になる。欠測項目は個体ごとに異なるため、欠測データの少ない項目を選んだとしても、それらの項目すべ
てに関して欠測データのない資料はかなり少なくなることが多く、古人骨資料では特にそうである。そのよ
うな場合には、欠測データを何らかの推定値で置き換えることが必要になる。推定値としては、単純に全体
の平均値を用いるものや、回帰式によって推定するものなど、いくつかの方法が考えられる。それらの主な
方法について、実データに代えて推定値を用いることによってQモード相関係数に生じる誤差をシミュレー
ションにより評価する。
P−08
小型霊長類四肢骨関節部の緻密骨厚の変異
○江木直子(日本モンキーセンター)、中務真人・荻原直道(京都大・理・自然人類)
Variation in cortical bone structures of limb articulations among small primates
EGI, N., NAKATSUKASA, M., OGIHARA, N.
四肢骨の関節構造は運動行動や荷重環境と関係していると考えられ、外形や海綿骨骨梁の変異について検
討がされてきた。本研究では、小型霊長類の上腕骨と大腿骨の遠位関節部をmicroCTによって観察し、関節
面での緻密骨の厚さを比較した。サンプルは体重60gから 5 kg程度の種を含むが、緻密骨の厚さは体の大き
さにかかわらず、ほぼ一定であった。一方、ロリス科やガラゴ科は真猿類やキツネザルに比べて関節面の緻
密骨が厚く、この傾向は上腕骨でより顕著に観察された。関節内部構造の適応変化としては、海綿骨の走行
方向の変異が注目されやすいが、本観察結果は緻密骨構造も荷重耐性の変化に寄与している可能性を示唆
した。
P−09
ヒト錐体鼓室裂の形態観察
○佐藤 巌・三輪容子・吉田俊爾(日歯大・生命歯・解剖 1 )、浅海利恵子・河合泰輔・代居 敬(日歯大・
生命歯・歯科放射線)、島田和幸(鹿児島大・院医歯総研・神経)
Morphological study of petrotympanic fissure in the human mandibular fossa
SATO, I., MIWA, Y., YOSHIDA, S., ASAUMI, R., KAWAI, T., YOSUE, T., SHIMADA, K.
側頭骨の鼓室部の前壁と下顎窩の後縁には蝶錐体裂につながる錐体鱗裂と錐体鼓室裂が存在する。このう
ち錐体鱗裂は鼓索神経の通路、円板ツチ骨靭帯の通路として知られている。しかし、この部位は関節円板の
一部である後部結合組織が隣接し、顎運動においても重要な部位である。しかし、蝶錐体裂、錐体鱗裂、錐
体鼓室裂の 3 者の形態学的な観察は顎機能と関係するためか、形態は複雑で、変化も大きい。そこで、今回
は上記通路としての機能をもつ錐体鼓室の形態に注目し、日本人骨格標本と献体標本を用いて、詳細な肉眼
観察やCT像による形態学的評価を行った。その結果、この部位の形態は蝶形骨や下顎窩の形態変化がかか
わることが示唆された。
ポ
ス
タ
ー
発
表
74
P−10
日本人乾燥頭蓋上顎洞のCT画像による形態計測
○小林一広(日歯大・新潟生命歯・解剖 1 )、又賀 泉(日歯大・新潟生命歯・口外 2 )、影山幾男(日歯
大・新潟生命歯・解剖 1 )
Morphometry of the maxillary sinuses of Japanese dry skulls using CT images
KOBAYASHI, K., MATAGA, I., KAGEYAMA, I.
上顎洞は顔面頭蓋とともに発達することが知られているが、その形態については十分に解明されていな
い。今回、年齢や性別が明らかな日本人乾燥頭蓋を用いて解析した。日本人乾燥頭蓋43体をCT撮像した後、
上顎洞底部の形態を観察、上顎洞の長径、幅径、高径、犬歯から第2大臼歯部の歯槽頂から上顎洞底間距離
を計測した。洞底部が平坦なタイプFと球形を呈したタイプ Rが88.4%を占めた。タイプF、タイプRの87. 9 %
は左右対称で、 洞底部が不規則なタイプ I は全て左右非対称であった。洞底部の形態と上顎洞の長径、幅
径、高径に有意差は認められなかった。 歯槽頂から上顎洞底間距離を年代別に比較すると30から50歳代は
10から20歳代と比べ有意に大きい傾向であった。
P−11
南シナ海を越えた先史時代の人々;ベトナム中部・ホアジェム遺跡の事例から
○山形眞理子(早大・文・考古)、Bui Chi Hoang(ベトナム南部社会科学院)、松村博文(札医大・医・解
剖 2 )、Nguyen Lan Cuong(ベトナム考古学院)、田中和彦(上智大・外国語)、俵 寛司(東京外大・外国語)
Prehistoric human dispersal across the South China Sea; focusing on the Hoa Diem site in central Vietnam
YAMAGATA, M., Bui, Chi Honag., MATSUMURA, H., Nguyen, Lan Cuong., TANAKA, K., TAWARA, K.
環南シナ海地域における文化と人の交流を探ることを目的として、ベトナム中部カムラン湾周辺の平野に
位置するホアジェム遺跡の日越共同発掘調査を実施した。2007年の調査では面積48平米の発掘区より14基の
甕棺葬、2 基の伸展葬が検出され、そのうち 3 基の甕棺が複数遺体を含むという珍しい葬例を示した。漢の
五銖銭 2 枚が出土していることから、墓地の年代は紀元後 1 世紀頃と推定される。副葬土器はベトナム中部
の他の遺跡から出土する土器とは異なり、フィリピンのマスバテ島カラナイ洞穴の土器と酷似する。出土人
骨の形態学的分析は東南アジア島嶼部人骨との関連を示し、南シナ海を渡った人間集団の存在が想定される。
P−12
沖縄県具志川島岩立遺跡出土人骨の再検討
○片桐千亜紀・小橋川 剛(沖縄県立埋蔵文化財センター)、島袋利恵子(宜野座村教育委員会)、土肥直美
(琉球大・医学部・第 1 解剖)
Reexamination of human skeletal remains from the Gushikawajima Shiitachi site, Okinawa Prefecture
KATAGIRI, C., KOBASHIGAWA, T., SHIMABUKURO, R., DOI, N.
岩立遺跡は沖縄県島伊是名村具志川島に所在する「具志川島遺跡群」の一つである。過去2度にわたって
発掘調査が実施され、貴重な成果が得られた。遺跡は縄文後期相当には崖葬墓となっていた。人骨は源位置
を保っておらず、集骨された状態であった。また、焼けた骨も確認された。これらの人骨資料について再検
討を行った結果、僅か 6 m× 1 m程の調査区から推定個体数で62体の被葬者が確認され、一定の割合で火葬
された被葬者もいることが分かった。本遺跡は沖縄県で一般的に知られている風葬の初源的な様相をもって
おり、これに火葬に類する葬法が加わる。このことから、南西諸島における縄文期の葬法を知る上で重要な
遺跡と考えられる。
ポ
ス
タ
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発
表
75
P−13
東北北部江戸時代人の頭蓋形態
○川久保善智・埴原恒彦(佐賀大・医・解剖人類)、百々幸雄(東北大・医・人体構造)
Cranial morphology of early modern population in northern Tohoku
KAWAKUBO, Y., HANIHARA, T., DODO, Y.
東北地方住民の形成過程については不明な点が多い。古代には和人がこの地を異文化との境界と捉えてい
たことが知られており、近隣の地域、特に北海道のアイヌ民族やその祖先集団との関わりについて人類学者
や考古学者の間で今日も盛んな議論が行われている。東北地方の古代人については人骨資料が不足している
ため、直接その形質を知ることは難しいが、近年、複数の遺跡から近世の人骨が多数発掘され、地域集団の
資料として充実しつつある。今回はこれらの頭蓋計測データを北海道、東北、関東、九州北部の近世∼現代
人のものと比較し、東北地方住民の形成過程を考察する。
P−14
長崎県原城跡本丸出土の人骨−1998∼2003年発掘調査分−
○分部哲秋・佐伯和信・岡本圭史(長崎大院・医歯薬学総合研究科・生命医科学)
Human skeletal remains excavated from the main castle area in the Hara-Jo site, Nagasaki prefecture, between
1998 and 2003
WAKABE, T., SAIKI, K., OKAMOTO, K.
長崎県南島原市南有馬町所在する原城は、島原の乱の最後の舞台となった城であり、1993年以降保存修理
事業による考古学的な発掘調査が開始され現在も継続されている。 本遺跡ではキリスト教信仰を示す遺物
とともに散乱に近い状態の人骨が多数出土し、史実を裏付ける人骨所見もみられており、注目されている。
2006年に報告した1993∼1997年発掘人骨に続き、今回は1998∼2003年の発掘調査により出土した人骨につ
いて受傷の所見を中心に報告を行う。現在のところ推定される人骨数は約80体であり、受傷痕は頭蓋 2 例、
左側上腕骨 1 例、右側大腿骨 7 例、左側大腿骨 2 例に認められている。
P−15
江戸時代人骨を用いた長骨長計測値によるプロポーションの分析
○藤澤珠織・片山一道(京大・理・自然人類)
The Analysis of Limb Proportion Based on Long Bone Measurements of the Edo Period Human Skeletal
Remains
FUJISAWA, S., KATAYAMA, K.
江戸時代人は大腿骨などの長さが他の時代に比べて相対的に短いことが、数々の計測値から示されてい
る。また身長推定値は他のほとんどの時代に比べて低い。この四肢骨が短いという特徴は、江戸時代人の形
態を表す指標の一つにもなっている。江戸時代人骨のプロポーションについては、定量的に分析した研究例
をほとんどみない。膨大なデータが蓄積されつつあるが、四肢骨がすべて破損せずに揃う資料が多くないこ
とも、この種の研究が少ない理由かもしれない。今回の発表では、京都市伏見区で出土した江戸時代人骨に
ついて、長骨長計測値を用いてそのプロポーションを分析する。
ポ
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タ
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発
表
76
P−16
沖縄県久米島近世人骨の距骨蹲踞面の形状と脛骨蹲踞面の形状について
○蔵元秀一・土肥直美・譜久嶺忠彦・久高将臣(琉球大・医・解剖 1 )、西銘 章(沖縄県教育庁)、石田 肇
(琉球大・医・解剖 1 )
The influence of squatting posture on the talus and tibia in early Modern human remains from Kumejima,
Okinawa
KURAMOTO, S., DOI, N., FUKUMINE, T., KUDAKA, M., NISHIME, A., ISHIDA, H.
久米島近世の成人距骨192個体343側、脛骨151個体233側を用い、距骨蹲踞面形状を 5 型{ストレート型、
内側関節面延長型(内側型)、内側蹲踞面型+外側滑車面前方延長型(複合 1 )、内側蹲踞面型(複合 2 )、内
側型+外側滑車面前方延長型(複合 3 )}に、脛骨は外側蹲踞面有りと無しに分類した。結果、1 )距骨外側
蹲踞面単独型は、男女ともに見られなかった。2)性差としては、複合 1 右側のみで男性の頻度が有意に高
かった。3)左右差として、女性の複合 2 で右側の頻度が有意に高かった。4)脛骨に蹲踞面がある場合、距
骨蹲踞面型は男性左側に内側型の頻度が、無い場合に比べ有意に高く、男性複合 1 は右側に高かった。
P−17
オホーツク文化人におけるエナメル質減形成及びクリブラ・オルビタリアの出現頻度について
福本郁哉(東京大・理・人類学)
The appearance ratio of dental enamel hypoplasia and cribra orbitalia in the human remains of Okhotsk culture
FUKUMOTO, I.
オホーツク文化人は約 5 世紀から12世紀にかけて北海道オホーツク海沿岸部を中心に居住した海洋狩猟民
である。本研究では、オホーツク文化期の 4 遺跡(大岬・浜中・モヨロ貝塚・ウトロ神社山)より出土した
人骨資料112例について、栄養障害の指標であると考えられているエナメル質減形成とクリブラ・オルビタ
リアの出現頻度を調査した。エナメル質減形成、クリブラ・オルビタリアともに出現頻度の遺跡間格差が認
められた。また、同様の指標について、縄文、続縄文、近世アイヌとの比較も行い、先史期の北海道におけ
る人類集団の栄養状態について考察した。
P−18
沖縄県久米島ヤッチのガマ・カンジン原古墓群から出土した近世人骨における四肢の変形性関節症について
○山内貴之・土肥直美・譜久嶺忠彦(琉球大・医・解剖 1 )、西銘 章(沖縄県教育庁)、埴原恒彦(佐賀
大・医・人類解剖)、石田 肇(琉球大・医・解剖 1 )
Appendicular osteoarthritis of early Modern human remains from Kumejima, Okinawa
YAMAUCHI, T., DOI, N., FUKUMINE, T., NISHIME, A., HANIHARA, T., ISHIDA, H.
沖縄県久米島ヤッチのガマ・カンジン原古墓群より出土した近世人骨、成人男性60例、女性52例、合計112
例の四肢骨を観察し、変形性関節症の重症度をBridges(1991)の基準に従いScale 0 −4 に分類した。Scale 3 −
4 の頻度を比較したが、男女差、左右差は無く、Scale 4 において女性の右肘関節に有意差を認めた。久米島近
世人骨は肩関節、肘関節、膝関節、股関節に変形性関節症の頻度が高く、その因子として加齢に加えて労働
に起因するものが考えられた。久米島近世社会において農耕、機織という労働、その地方独特の耕器具使用
という生活様式が、四肢の近位関節に変形性関節症の頻度を増加させた原因であると考えられる。
P−19
江戸時代における特殊な死体利用方法の一例
坂上和弘(科博・人類)
A case report of the unique utilization of dead body in Edo period
SAKAUE, K.
人骨に付けられた金属器の痕跡は、縄文時代の居徳遺跡、鎌倉時代の材木座遺跡、弥生時代の大浦山洞
穴、江戸時代の池之端七軒町遺跡など様々な時代の遺跡から出土した人骨において確認されており、これま
で数多くの報告がなされている。ところが、過去に報告されたものとは全く異なる性質をもった刀傷が江戸
時代の湯島 4 丁目遺跡から出土した16号人骨に見られたため、今回報告する。
77
ポ
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タ
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発
表
P−20
上顎歯に特殊磨耗が認められた江戸時代男性下顎骨のCT画像による検討
○吉田俊爾・佐藤 巌(日歯大・生命歯・解剖 1 )、河合泰輔・浅海利恵子・代居 敬(日歯大・生命歯・
歯科放射線)
Reports of the Edo period male lower jaw by the CT image with excessive wear tooth of the upper jaw
YOSHIDA, S., SATO, I., KAWAI, T., ASAUMI, R., YOSUE, T.
第107回日本解剖学会総会(2002年)において、逗子市大墓遺跡から出土した江戸時代男性人骨 1 個体に見
られた上顎歯の特殊磨耗について報告した。湘南地方には「見突き漁」という漁法が存在し、特殊磨耗がこ
の漁法と関連する可能性があることを述べた。本発表では、この上顎に対応する下顎骨を歯科用CT装置で
撮影し、その所見について報告する。CT画像によれば骨体部の海綿骨は細かく密度が高い。これに反して
骨頭の海綿骨の状態は普通である。また、下顎管は異常に細い。これらの所見がいわゆる「見突き漁」の影
響を受け、上顎歯の特殊磨耗と関連するものかどうかはさらなる検討を要する。
P−21
沖縄県久米島近世人骨資料における歯科疾患
○伊禮 究・土肥直美・譜久嶺忠彦(琉球大学医学部形態機能医科学講座解剖学第一分野)、西銘 章(沖
縄県教育庁)、埴原恒彦(佐賀大学医学部生体構造機能学講座解剖学人類学分野)、米田 穣(東京大学大学
院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻人類進化システム分野)、石田 肇(琉球大学医学部形態機能医
科学講座解剖学第一分野)
Dental disease of human skeltal remains of the early modern period from Kumejima Island, Okinawa, Japan
IREI, K., DOI, N., FUKUMINE, T., NISHIME, A., HANIHARA, T., YONEDA, M., ISHIDA, H.
17世紀―19世紀の久米島近世人骨の歯牙資料2316本について歯科疾患を調査したところ436本が齲歯であ
り齲歯率は18.8%であった。この資料の中で年齢と性別がほぼ把握されている男性人骨95例、女性人骨82例
について齲歯率を算出し比較すると頻度は女性に有意に高かった(P<0.05)。また40歳以上と40歳以下のグ
ループに分類し比較すると若年成人では男女間に齲歯率の差はなかったが老年成人では女性に有意に高かっ
た(P<0.01)。また男女とも若年集団より老年集団で齲歯率が有意に高かった(P<0.01)。そのほか生前脱
落歯、エナメル質減形成、歯石についても同様に頻度を算出、比較し考察を行った。
P−22
沖縄県うるま市具志川グスク崖下地区出土人骨に認められた風習的抜歯
○竹中正巳(鹿児島女子短大)、土肥直美(琉球大・医・解剖 1 )、片桐千亜紀(沖縄県立埋蔵文化財セン
ター)
Ritual tooth ablation in Gushikawa-gusuku people, Uruma, Okinawa
TANENAKA, M., DOI, N., KATAGIRI, C.
2004年から 3 年間わたり、沖縄県うるま市具志川グスク崖下地区の発掘調査が、土肥直美を中心に行われ
た。多数の貝塚時代後期の人骨片とともに、貝製装飾品、ガラス小玉、弥生土器、動物骨、貝が出土した。こ
の調査により、崖下地区が再葬墓として使用されていたことが明らかになった。出土したガラス小玉や南九
州の弥生土器は、本土との交流の証であり、出土した人骨片の中には、焼かれたものとそうでないものがあ
る。また、具志川グスク崖下地区に埋葬された人々には風習的抜歯が行われていたことも明らかになってい
る。今回、具志川グスク崖下地区から出土した人骨に認められた風習的抜歯について、その概要を報告する。
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P−23
中世鎌倉人骨のエナメル質減形成
○澤田純明・長岡朋人・星野敬吾・平田和明(聖マリアンナ医大・解剖)
Prevalence of dental enamel hypoplasia in the medieval human skeletons from Kamakura
SAWADA, J., NAGAOKA, T., HOSHINO, K., HIRATA, K.
中世鎌倉人の発育期のストレスを明らかにするため、上・下顎の中切歯と犬歯におけるエナメル質減形成
の出現状況を調査した。材料はこれらの永久歯が植立する中世集団墓地人骨258体、由比ガ浜南遺跡人骨189
体、静養館遺跡人骨29体、上行寺東やぐら群人骨27体、長勝寺遺跡人骨12体である。いずれかの歯に減形成
が出現した個体数は、中世集団墓地122体(47.3%)、由比ガ浜南126体(66.7%)、静養館21体(72.4%)、上
行寺東やぐら群14体(51.9%)、長勝寺 6 体(50.0%)であり、出現率が遺跡により異なる傾向が認められた。
今回、その出現状況の詳細を報告し、出現率の遺跡間相違について考察する。
P−24
日本人における乳歯の咬耗の時代変化について(予報)
鈴木敏彦(東北大・院歯・口腔器官構造)
Temporal changes of the attrition in the deciduous dentition in Japanese - a preliminary report
SUZUKI, T.
咬耗は食物の物性と密接な関連をもち、咬耗の評価は食生活の推測に有用である。しかし古人骨の咬耗を
扱った研究で乳歯を資料に用いたものは数少ない。現代人では、永久歯の咬耗量が以前より減少している一
方で、乳歯においては象牙質に達する咬耗が高頻度に認められるといわれ、永久歯列と乳歯列とでは咬耗の
進行状況に差がある可能性もある。
今回、演者は東京大学、京都大学、聖マリアンナ医科大学に保管されている、縄文、中世および近世の幼
小児骨について乳歯の咬耗調査を行った。所在が確認できた幼小児骨資料の全てについて調査が済んでいる
わけではないが、今回の発表では各時代毎の集団を比較した予備的な結果を報告する。
P−25
中世日本人における齲蝕状況の地域差
○小山田常一・井川一成・北川賀一・真鍋義孝(長崎大院・生命医科学講座・顎顔面解剖学)、加藤克知
( 長 崎 大 院 ・ 理 学 作 業 療 法 学 講 座 ・ 理 学 療 法 学 )、 松 下 孝 幸 ( 土 井 ヶ 浜 遺 跡 ・ 人 類 学 ミ ュ ー ジ ア ム )、
六反田 篤(長崎大院・生命医科学講座・顎顔面解剖学)
Regional difference in the dental caries condition of the medieval Japanese
OYAMADA, J., IGAWA, K., KITAGAWA, Y., MANABE, Y., KATO, K., MATSUSHITA, T., ROKUTANDA, A.
神奈川県鎌倉市由比ヶ浜南遺跡、千葉県流山市三輪野山遺跡、ならびに山口県下関市吉母浜遺跡出土中世
人の齲歯率、生前喪失歯率について比較を行った。それぞれの集団を成年と壮年を含む若年者群と、熟年と
老年を含む高齢者群に分けて齲歯率と生前喪失歯率を比較したところ、若年者群では三輪野山中世人の齲歯
率ならびに生前喪失歯率が由比ヶ浜南中世人、吉母浜中世人に比べて、やや高い傾向が見られた。高齢者群
においては三輪野山中世人、吉母浜中世人の齲歯率ならびに生前喪失歯率は、由比ヶ浜南中世人よりも有意
に高く、また、吉母浜中世人の生前喪失歯率については三輪野山中世人よりも有意に高いという結果が得ら
れた。
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P−26
ブラッシュテイルポッサム上顎臼歯の計測的研究
○上野隆治(日歯大・東京短大・歯技工)・(日歯大・生命歯・解剖 1 )、佐藤 巌(日歯大・生命歯・解剖 1 )、
丸茂義二(日歯大・東京短大・歯技工)、Grant C. Townsend(School of Dentistry, The University of Adelaide)
An odontometric study of the maxillary molars in the Brushtail Possum (Trichosurus vulpecula)
UENO, R., SATO, I., MARUMO, Y., Grant C, TOWNSEND.
Maxillary molar crown size in the Brushtail Possum was measured to determine whether there were any trends
between the sexes or within the molar series. A sample of 10 dry skulls of Brushtail Possum(6 males and 4
females) housed in the Science Centre of The South Australian Museum, Adelaide, Australia, was examined.
Maxillary molar crown dimensions, including buccal and lingual mesiodistal diameters(BMD, LMD) and mesial
and distal buccolingual diameters(MBL, DBL) were measured directly using callipers to 0.1mm. Descriptive
statistics, including mean values, standard deviations(SD) and coefficients of variation(CV), were calculated for
the four maxillary molar teeth. No significant differences in tooth size were noted between males and females. In
both sexes, the fourth molars were significantly smaller overall than the other molars(p<0.05) but they were
relatively more variable in size than the other three molars, except for the male DBL diameter. (Supported by the
Grant-in-Aid for Scientific Research 16590156)
P−27
ターナー症候群に現れる遠心舌側咬頭の退化傾向について
○中山光子(日大・松戸歯・解剖人類形態学)
、Lahdesmaki Raija(オウル大・歯)
、佐々木佳世子・松野昌展・
金澤英作(日大・松戸歯・解剖人類形態学)、Alvesalo Lassi(オウル大・歯)
On the reduction of hypocone in Turner syndrome
NAKAYAMA, M., LAHDESMAKI, R., SASAKI, K., MATSUNO, M., KANAZAWA, E., ALVESALO, L.
これまでの調査で、ターナー症候群(45,X女性,45,X/46XX女性)におけるカラベリ結節の出現が低いこと
が示された。今回は、上顎第1大臼歯(M 1 )及び第 2 大臼歯(M 2 )の遠心舌側咬頭の形態を観察し、X染
色体の欠如が歯冠形態に及ぼす影響をさらに調査した。この結果、M 1 における 3 咬頭歯の出現頻度は45,X
女性で11%、45,X/46XX女性で21%となり、コントロール群で観察される 3 咬頭の出現頻度( 1 %)と比較
した場合に統計学的な有意な差が認められた。しかしながらM 2 では有意な差を認めることができなかった。
このことから、X染色体の欠如はカラベリ結節だけでなく、M 1 における遠心舌側咬頭の発達にも影響を与
えていることが示唆された。
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P−28
Root and canal morphology of maxillary premolars and its relationship with the tooth size in a Sri Lankan
population
○Peiris Roshan・佐々木佳世子・金澤英作(日本大学・松戸歯学部・解剖人類形態学)
PEIRIS, R., SASAKI, K., KANAZAWA, E.
We conducted this study to investigate the root and canal morphology of maxillary premolars of a Sri Lankan
population and to determine its relationship with the tooth size. Two hundred and seventy maxillary premolars
(PM1 & PM2) were used. Mesiodistal and buccolingual diameters of the crowns and height of the roots were
recorded. Root number was also noted. Vacuum injection method was used to make the teeth transparent. In
cleared specimens, the number and type of canals were recorded. PM1 showed positive correlation of root form
and number of apical foramina against buccolingual diameter and crown area. Negative correlation was observed
among root form, number of apical foramina and root height. PM1 with two roots and two apical foramina tend to
have large crowns and short roots. Root and canal morphology of Sri Lankan maxillary premolars are consistent
with those of people of European origin.
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P−29
琉球列島におけるヒト歯冠計測値の多様性:琉球列島と他のアジア集団との比較検討
○当真 隆(琉球大・医・解剖)、埴原恒彦(佐賀大・医・解剖人類)、砂川 元(琉球大・医・歯口外)、
羽地都映(羽地歯口腔外科)、石田 肇(琉球大・医・解剖)
Metric dental diversity of Ryukyu Islanders: a comparative study among Ryukyu and other Asian populations
TOMA, T., HANIHARA, T., SUNAKAWA, H., HANEJI, K., ISHIDA, H.
琉球列島に現存するヒト集団より歯の石膏模型を採取し、歯冠近遠心・頬舌径を調べ、その地域内・地域間
の多様性および他のアジア集団との比較検討を行った。琉球列島の試料は、宮古島ならびに石垣島、沖縄本島
中北部に位置している嘉手納ならびに今帰仁、および徳之島の 5 集団である。歯冠の大きさで琉球列島集団は
アジアの中で中間値を示した。歯冠形態では本土日本に近接するが、他の集団とは独立した位置関係にあ
り、相対的に近遠心径が大きいという特徴を持っていた。FstおよびR-matrix法により検討した結果、それぞ
れの島における人口規模の違いや異なったパターンの遺伝子浮動、遺伝子流入が示唆される結果であった。
P−30
乳歯にみられる円錐歯について
○北川賀一・真鍋 義孝・小山田常一・井川一成・堤田 証(長崎大院・医歯薬・顎顔面解剖学)、加藤克知
(長崎大院・医歯薬・理学療法学)、六反田 篤(長崎大院・医歯薬・顎顔面解剖学)
Conical/Peg-shaped teeth observed in human deciduous dentition
KITAGAWA, Y., MANABE, Y., OYAMADA, J., IGAWA, K., TSUTSUMIDA, A., KATO, K., ROKUTANDA, A.
歯の形態が通常より単純化・矮小化した単錐歯状の変異を円錐歯あるいは栓状歯という。過剰歯を除け
ば、永久歯では上顎側切歯や上顎第3大臼歯にみられるが、なかでも上顎側切歯での出現が多い。一方乳歯
における円錐歯の報告例はきわめて少ないが、その中では上顎乳犬歯での報告が多く、他に下顎乳犬歯や下
顎乳側切歯にもみられるという。今回我々は縄文時代から江戸時代までの日本の資料などで乳歯の円錐歯の
出現状況を調査したが、その結果は従来の報告とほぼ一致するものであった。なぜ永久歯と乳歯では円錐歯
の好発部位が異なるのか、考察をおこなった。
P−31
正常咬合を有する現代モンゴル人と日本人成人女性の頭蓋顔面形態の基準値 −セファログラムによる−
○中原リザ子(日歯大・生命歯・矯正)、宇塚 聡(日歯大病院・小児・矯正)、石川富士郎(日歯大・生命
歯・矯正 )、影山幾男(日歯大・新潟生命歯・解剖 1 )、永田順二(株式会社モリタ製作所)、井口 暁(日歯
大・生命歯・矯正)、中原千絵(日歯大病院・小児・矯正)、長谷川 優・黒木大雄(日歯大新潟病院・矯
正)、小林一広(日歯大・新潟生命歯・解剖 1 )、中原 泉(日歯大)
Normal standards of craniofacial morphology in modern Mongolian and Japanese female adults with normal
occlusions ― by cepharogram ―
NAKAHARA, R., UZUKA, S., ISHIKAWA, F., KAGEYAMA, I., NAGATA, J., IGUCHI, S., NAKAHARA, C.,
HASEGAWA, Y., KUROKI, H., KOBAYASHI, K., NAKAHARA, S.
【目的】セファロ分析で現代日本人とモンゴル人の正常咬合の基準値を求め、2 集 団の頭蓋顔面形態の差
異を分析する。【方法】資料は日本人とモンゴル人成人正常咬合者女性各50人の側面セファログラム。分析
法は(1)Downs法、Northwestern法、(2)Rickettsのfacial pattern分類 6 項目。【結果】(1)の20項目中13、(2)
の 6 項目中 5 に 2 群の有意差があり、ANB、上顎突出度、SN−口蓋平面角、上下顎中切歯軸傾斜角、下顎角、
U 1 −AP、U 1 −NPに有意水準0.001で高度な有意差見られた。【結論】モンゴロイドである両集団の正常咬合
者間で、セファロ分析による頭蓋顔面形態の差異と両者の基準値が判明した。
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P−32
正常咬合を有する現代モンゴル人と日本人成人の歯列弓の形態 −口腔模型による−
○中原リザ子(日歯大・生命歯・矯正)、宇塚 聡(日歯大病院・小児・矯正)、石川富士郎(日歯大・生命
歯・矯正)、影山幾男(日歯大・新潟生命歯・解剖 1 )、長谷川 優・黒木大雄(日歯大新潟病院・矯正)、小
林一広(日歯大・新潟生命歯・解剖 1 )、土持 宇・呉 健一・今野善文(日歯大・生命歯・矯正)、中原 泉
(日歯大)
Morphology of dental arch in modern Mongolian and Japanese adults with normal occlusions ―by dental models ―
NAKAHARA, R., UZUKA, S., ISHIKAWA, F., KAGEYAMA, I., HASEGAWA , Y., KUROKI, H., KOBAYASHI, K.,
TUCHIMOCHI, T., KURE, K., KONNO, Y., NAKAHARA, S.
【目的】歯列弓形態を簡便に表現し、正常咬合者で 2 集団の人種差異を分析する。【方法】資料は日本人
とモンゴル人成人正常咬合者男性、女性各50人のロ腔模型。上下顎歯列左右側をデジタルノギスで計測(直
線距離は(1)中切歯間正中∼犬歯尖頭(2)犬歯尖頭∼第一小臼歯頬側咬頭頂(3)第一小臼歯頬側咬頭頂∼
第一大臼歯頬側遠心咬頭頂等、幅径は両側犬歯、第一小臼歯、第一大臼歯間)。歯列弓平均形態を直線的に
図示。【結果】2 群の高度な有意差は、男性は上下顎とも犬歯から後方側方歯、女性は上顎第一小臼歯から
後方側方歯、幅径は男女の上下顎第一大臼歯間で見られた。【結論】両集団の男性、女性の歯列弓の平均形
態を簡便に表現し形態的差異を明確にした。
P−33
頭蓋と歯におけるモンゴル人と日本人の比較
○影山幾男・中原 泉(日歯大・新潟生命歯)、中原リザ子・石川富士郎・宇塚 聡(日歯大・生命歯)、吉
村 建・小林一広・長谷川 優・黒木大雄(日歯大・新潟生命歯)、塚田真一(明星大学・理工学部)
Comparison between Mongolian and Japanese on the skull and teeth
KAGEYAMA, I., NAKAHARA, S., NAKAHARA, R., ISHIKAWA, F., UZUKA, S., YOSHIMURA, K.,
KOBAYASHI, K., HASEGAWA, Y., KUROKI, H., TSUKADA, S.
モンゴルはロシアと中国に挟まれた国で人口、約240万である。この度、モンゴル国立学社会科学部、人
類学・考古学講座D.Tumen教授とモンゴル健康科学大学、歯学部長Dr.B.Amarsaikhan准教授と共同研究をす
る機会を与えられた。人類史上、モンゴル人は東アジア人の起源を調査・探求する上で欠かすことの出来な
い民族と考えられる。とりわけ、モンゴル人と日本人の相違点や類似点は、興味深い。そこで、モンゴルの
青銅器時代から現代までの発掘頭蓋40個体と、現代日本人乾燥頭蓋105個体について、頭蓋と歯を計測し比
較した。頭蓋の計測項目と歯の計測項目は最大頭長、最大頭幅、頬骨弓幅、他50項目である。歯の近遠心径
と頬舌径において、モンゴル人は日本人より小さな値を示した。
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P−34
Classification of Carabelli trait in the human dentition: what is the best method?
○Hasegawa Yuh(School of Life Dentistry at Niigata, The Nippon Dental University, Niigata, Japan ),Rogers
James・Scriven Graham・Mihailidis Suzanna・Hughes Toby(School of Dentistry, The University of Adelaide,
Adelaide, South Australia, Australia ),Kageyama Ikuo(School of Life Dentistry at Niigata, The Nippon Dental
University, Niigata, Japan ),Townsend C. Grant(School of Dentistry, The University of Adelaide, Adelaide,
South Australia, Australia )
HASEGAWA, Y., ROGERS, J., SCRIVEN, G., MIHALIDIS, S., HUGHES, T., KAGEYAMA, I., TOWNSEND, C, G.
The aim of this study was to compare two commonly-use methods of classification (Dahlberg, 1963 and
Hanihara, 1961) by using both systems to score the expression of Carabelli trait on primary second molars and
permanent maxillary first molars of a sample of Australian twins. A total of 200 sets of dental casts, representing
50 pairs of monozygotic and dizygotic twins, was examined and scored. Assessments were made on two separate
occasions, enabling an estimation of the reliability of both methods to be made. The concordance rates between
scores obtained on two occasions were not significant for both systems. The reliability in scoring concavity
categories was lower than that for convexity categories with both methods. The methods of Dahlberg and Hanihara
can be adopted for assessing Carabelli trait expression in both deciduous and permanent dentitions but some
modifications would be needed to ensure that valid and reliable outcomes are achieved.
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P−35
現代モンゴル人と日本人の正常咬合者における口腔模型の比較
○宇塚 聡(日歯大病院・小児・矯正)、中原リザ子(日歯大・生命歯・矯正)、影山幾男(日歯大・新潟生
命歯・解剖 1 )、長谷川 優・黒木大雄(日歯大新潟病院・矯正)、小林一広(日歯大・新潟生命歯・解剖 1 )、
今野善文・藤澤将人(日歯大病院・小児・矯正)、塚田真一(明星大・理工 )、石川富士郎(日歯大・生命
歯・矯正)、中原 泉(日歯大)
Comparison of dental models in modern Mongolian and Japanese with normal occlusion
UZUKA, S., NAKAHARA, R., KAGEYAMA, I., HASEGAWA, Y., KUROKI, H., KOBAYASHI, K.,
KONNO, Y., FUJISAWA, M., TUKADA, S., ISHIKAWA, F., NAKAHARA, S.
【目的】現代モンゴル人と日本人の歯や歯列弓形態を比較すること。【方法】現代モンゴル人における正常
咬合者100名(男性50名、女性50名)の口腔模型を用いて、歯と歯列弓形態の調査を行った。さらに、現代日
本人の正常咬合者100名(男性50名、女性50名)の口腔模型を用いて民族間の比較を行った。【結果】両民族
において性差が認められる計測項目が多数存在した。民族間では、ほとんどの歯において日本人の方が大き
く、特に小臼歯では有意差が認められた。一方、歯列弓の幅径はモンゴル人が有意に大きかった。【結論】
現代モンゴル人と日本人において、民族間および性差により歯や歯列弓形態に違いがあることが明らかと
なった。
P−36
現生霊長類とナチョラピテクスにおける骨盤形態の非計測的特徴による比較
○中野良彦(大阪大院・人間科学・人類)、荻原直道・巻島美幸(京都大院・理・自然人類)、清水大輔(京
都大・霊長研)、加賀谷美幸(京都大院・理・自然人類)、國松 豊(京都大・霊長研)、石田英実(滋賀県
立大・人間看護)
The comparison of the morphology of pelvis between living Primates and Nacholapithecus fossils from nonmetrical characters
NAKANO, Y., OGIHARA, N., MAKISHIMA, H., SHIMIZU, D., KAGAYA, M., KUNIMATSU, Y., ISHIDA, H.
ナチョラピテクスは日本ケニア合同調査隊によって、ケニア北部、ナチョラ地域より発見された約1500万
年前に生息していたとされる化石類人猿で、これまでに多数の標本が採集されている。それらについては、
四肢骨の形態などから生息環境や運動様式などについての知見が得られている。骨盤の形態については、こ
れまで一般的な形態や坐骨棘について報告してきたが、今回はその他の非形態的特徴を中心に現生霊長類と
比較した結果を報告する。比較に用いた現生霊長類は大型類人猿を含む真猿類42種である。結果として、現
生類人猿と類似した運動姿勢であったことが示唆されるが、異なった傾向も見られており、それらについて
考察する。
P−37
ケニア北部ナチョラ地域のサイ化石
○辻川 寛(東北大・医・人体構造)、中野良彦(大阪大・人間科学)、石田英實(滋賀県大・人間看護)
Rhinocerotidae (Perissodactyla, Mammalia) from the Middle Miocene of Nachola, Northern Kenya
TSUJIKAWA, H., NAKANO, Y., ISHIDA, H.
中期中新世類人猿ナチョラピテクスが発見された、ナチョラ地域のサイ化石を検討した。この地域のサイ
化石は、in situで発見された同一個体に由来する頭蓋と前半身からなる状態の良い標本を含んでいる。これ
まで、ナチョラ産のサイ化石は属種未定(Pickfordら、1987)や Aceratherium acutirostratum(辻川・仲谷、
2005)とされてきたが、アフリカやユーラシアの標本と比較した結果、高歯冠で走行性の強い、アフリカの
固有属Turkanatheriumである可能性が高いことが分かった。これらの標本に基づき、ナチョラピテクスの生
息環境を考察する。
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P−38
ペルー、クントゥル・ワシ遺跡から出土したオマキザル類骨格
○鵜澤和宏(東亜大・人間科学)、関 雄二(民博・先端人類)、高井正成(京都大・霊長研)、加藤泰建(埼
玉大・教養)
The Capuchin skeletal remains from the Kuntur Wasi site, Peru
UZAWA, K., SEKI, Y., TAKAI, M., KATO, Y.
ペルー北部高地、クントゥル・ワシ遺跡(1800BC−50BC)からオマキザル属資料が出土した。オマキザル
類は、ナスカやインカに代表されるアンデス先史文化において繰り返し図像化され、象徴的な意味合いを与
えられてきた。今回同定されたシロガオオマキザル(Cebus arbifrons)は、現在ではアンデス山脈東斜面に棲
息し、西斜面に立地する遺跡周辺には分布しない。全身がそろって出土していること、人に慣れやすい習性
などから推定して、生体で神殿に運ばれ、当地でしばらくのあいだ飼育されていた可能性が考えられる。本
標本は明確な出土例としては最古級であり、オマキザル類の象徴化の起源を考察する上で重要である。
P−39
ヒトの精子形成の進化−霊長類の精巣組織の比較から
○榎本知郎(東海大・医・基礎医学系)、松林清明(京都大・霊長研・人類進化モデル)、中野まゆみ・
花本秀子(東海大・医・基礎医学系)
Evolution of the human spermatogenesis −A comparative histological study
ENOMOTO, T., MATSUBAYASHI, K., NAKANO, M., FUJII-HANAMOTO, H.
霊長類の社会構造を決める要素のひとつに生殖システムがある。これまで精巣のサイズや精子の形状が配
偶様式に関係することが示されてきた。われわれは、各種霊長類の精子形成の様相を比較分析することに
よって、ヒトの生殖システムの進化を明らかにし、先祖の人類の配偶様式を推定する試みを行ってきた。そ
の結果、ヒト科の精子形成では、精祖細胞のリニューアルサイクルが不規則なものが多く、種や個体によっ
て精子産生活動にバラツキが見られることが明らかになった。今回はこれまでの知見を整理し、霊長類の精
子形成の系統的進化の道筋を推定するとともに、ヒトの生殖システムとの関連について考察を加えたい。
P−40
火の人類進化考(2)
○林 俊郎・石丸 梓(目白大・社会学部・社会情報学科)、溝上恭平(副山大・生命工学部・海洋生物工
学科)
A Study of the Human Evolution on Fire (Part 2)
HAYASHI, T., ISHIMARU, A., MIZOKAMI, K.
「火の人類進化考(1)」で火の発見が大脳化を促したとする仮説の概要を報告する。ここでは、火の使用
という文化的進化が人類の脳進化をはじめとした生物学的進化を促したとする根拠を消化・代謝生理の観点
から補足説明する。哺乳動物は基本的にセルロースや生のデンプンを消化する能力を持たず、これらの成分
の消化を腸内微生物に委ねている。火を扱う人類だけがデンプンから効率的にブドウ糖を脳に供給すること
を可能とした。動物が生理的にブドウ糖飢餓の状態にあることは、血糖値を上昇させる機構が多重に配備さ
れていることでも明らかであろう。
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P−41
ヒト二足歩行の起源:ロコモーション運動軸転換仮説
藤野 健(東京都老人研・動物施設)
A new hypothesis on the origin of the human bipedalism as shifting of the locomotor axis orientation
FUJINO, K.
移動様式をその運動軸から考えると、現生類人猿とヒトは全て扁平な胸郭とその背側に乗る肩甲骨並びに
側方に伸張した骨盤を備えて腕渡り能と二足歩行能を保持し、基本的に体長軸周りの反復回転を元に前方推
進力を産生する他に類例のない方法を採用している事が明白である。この運動の腕に注目すればbrachiation、
脚を見ればbipedalism となり機構的に違いはない。即ち二足歩行の起源はテナガザルを派生した共通祖先に
まで遡り、この後、腕渡りに特殊化すればブラキエーター、或る程度の腕渡りの後に地上性を強め二次的に
四足歩行化すればナックルウォーカー、地上での二足歩行の安定性を増すべく改変を強めたものをヒトと呼
ぶに過ぎないと考える。
P−42
由比ヶ浜南遺跡中世人骨の結核
○星野敬吾・五十嵐−右 潤子・澤田純明・長岡朋人・平田和明(聖マリアンナ医大・解剖)
Tuberculosis in the medieval human skeletons from Yuigahama-minami site
HOSHINO, K., IGARASHI-MIGITAKA, J., SAWADA, J., NAGAOKA, T., HIRATA, K.
結核感染は脊椎カリエスという特徴的な形態変化を示すことから、古病理学的診断は容易とされてきた。
演者らはこれまでに由比ヶ浜南遺跡中世古人骨からの結核菌DNAの抽出を試み、骨関節結核と推定される個
体の 1 例からの結核菌DNA抽出に成功し昨年度の本大会で報告を行った。今回、同個体を含む鎌倉市由比ヶ
浜南遺跡の中世人骨を用いて、その結果に対する厳密な追試を行い結核菌DNAの抽出の信頼性を検証すると
ともに、さらに調査個体数を増やして由比ヶ浜南遺跡人骨群における結核菌DNAの有無を検討したので報告
する。
P−43
南九州(宮崎県)古墳人のミトコンドリアDNA解析(予報)
○佐伯和信(長崎大院・医歯薬学総合研究科・生命医科学・肉眼形態学)、吉浦孝一郎(長崎大院・医歯薬
学総合研究科・放射線障害医療・人類遺伝)、新川詔夫(北海道医療大・個体差健康科学研究所)、東 憲章
(宮崎県立西都原考古博物館)、岡本圭史・分部哲秋(長崎大院・医歯薬学総合研究科・生命医科学・肉眼形
態学)
Mitochondrial DNA analysis of the Kofun skeletal remains from southern Kyushu area (Miyazaki pref.).
― preliminary report ―
SAIKI, K., YOSHIURA, K., NIIKAWA, N., HIGASHI, N., OKAMOTO, K., WAKEBE, T.
南九州古墳人の地域的特性と系統関係、また地下式横穴墓に埋葬された被葬者間の類縁関係を総合的に分
析する研究の一環として、現在、宮崎県山間部の地下式横穴墓出土の古墳時代人骨のミトコンドリアDNA解
析を進めている。今回は、分析方法を紹介するとともに、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科肉眼形態学分
野保管の灰塚、日守、大萩および旭台地下式横穴墓群出土古墳時代人骨(約80例)についてのDNA解析の経
過報告を行う。発表では、これまで報告されている縄文人骨、弥生人骨等の成績と対比させながら、本古墳
人骨のDNA増幅率、ハプログループの頻度、同一横穴墓内人骨の関係などについて報告を行う予定である。
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表
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P−44
本土日本人のミトコンドリア (mt) DNA多型は地方により大きく異なる:飛騨での例
○住 斉(筑波大・物質工学、東京大・理・生物科学)、宇津巻竜也・伊藤 繁(名古屋大・理・物質理学、
名古屋大・遺伝子実験施設)、石浦正寛(名古屋大・遺伝子実験施設)、針原伸二(東京大・理・生物科学)
Mitochondrial (mt) DNA polymorphism in the mainland Japanese is largely different among districts: An
example in Hida
SUMI, H., UZUMAKI, T., ITOH, S., ISHIURA, M., HARIHARA, S.
明治大正期まで飛騨はほぼ陸の孤島だったため、それ以前に飛騨で生まれた母親または母方祖母を持つ人
のmtDNAは飛騨内のみで代々伝えられて来たと考えられる。この飛騨人で母系つながりのない90人のmtDNA
Dループの全塩基配列多型を調べた。その多型分布は、日本人の平均と考えられる東京での既知データと大
きく異なる。北海道アイヌと沖縄のみならず、本土においても多型分布は地方により大きく異なることが判
る。本土では縄文人と弥生人それぞれにルーツを持つ人が交じっているとされる(二重構造説)が、この観
測事実は、両者比には今なお大きな地域差があることを示し、日本人成立の歴史の一端を物語っている。現
在、試料数を増やしつつある。
P−45
日本の大学生における、第三者の異性同胞間近親相姦行動に対する道徳的評価について
○露木 玲・青木健一(東京大・理・人類)
Evaluation of moral wrongness on third-party sibling incestuous behaviour among college students in Japan
TSUYUKI ,L., AOKI, K.
近親相姦が多くの文化において禁止されていることは知られているが、それが何故なのかについては確か
な説はない。本研究では、第三者の異性同胞間での近親相姦行動に対して、日本の大学生が道徳的にどのよ
うな評価を下すかについて質問紙調査を行った。特に、本人の道徳的評価と生活史(異性同胞との同居期間
の長さ、子供時代の親しさの度合い、異性とのつきあいに対する親の厳しさなど)との関係から、どのよう
な要素がより強く道徳観に影響するかについて調べた。その結果をふまえて、ヒトの道徳観がヒトが作り出
した文化と生物としての本能両方に基づくという考えから、近親相姦の禁忌について考察する。
P−46
性的選好性の決定機構の進化に関する理論的研究
牧島央武(東京大・理学系研究科・生態人類学)
A theoretical study on the evolution of mechanism for determing mate choice tendency
MAKISHIMA, H.
多くの生物において、配偶者選択の際に何らか基準によって異性を 選り好みをしていることは広く知ら
れている。ではその好みの基準 はどこから来ているのであろうか? 近年、配偶者選択の好みが遺伝 的な要
因のみに因らず、社会的要因によって後天的に影響を受ける 可能性が、理論的、実証的双方の研究から示
唆されている。本研究 では数理モデルを用いて、生得的に好みが決定しているタイプと後 天的に好みが決定
するタイプの 2 種の行動を想定し、両者がどの様 に振る舞うか、特にオスが好みを示す場合とメスが好みを
示す場合 の違いに注目して検証した。その結果、オスが好みを示す場合に後 天的な好みがより獲得されやす
い事が示唆された。
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86
P−47
配偶者選択における親の影響
○能城沙織・北村ゆみ(東京大・理学部・生物)
Parents' influence on mate choice
NOJO, S., KITAMURA, Y.
同類婚の説明の一つに性的刷り込み効果がある。本研究では未婚カップルとそれぞれの異性親の写真を用
いて顔の類似性を測定し、顔に関する同類婚的傾向と性的刷り込み効果の有無を調べると共に、EMBUによ
り幼少時の親との関係が配偶者選択に及ぼす影響を調べた。その結果、全標本に対する検定では、同類婚的
傾向も性的刷り込み効果も見られなかった。また、幼少時の親との関係が配偶者選択に及ぼす影響も見られ
なかった。一方、類似性測定の信憑性が低い標本を除外した場合、カップル同士の顔に有意な類似が見ら
れ、同類婚的傾向が認められた。女性と男性の母親の顔にも有意な類似があり、男性においては性的刷り込
み効果の存在が示唆された。
P−48
目視判定および直接計測による耳介形態の左右一致性に関する一調査報告
○矢作麻裕(大妻女子大学家政学部被服学科)、真家和生(大妻女子大学生活科学資料館)
A report of the coincidence of right and left aurale morphs, based on observation and direct mesurements
YAHAGI, M., MAIE, K.
日本人成年女子103名を対象に、耳介形状の定性的分類および直接計測を行い左右耳介の一致性に関して
検討を行っている。耳介形状の定性的分類すなわち観察項目としては耳輪の巻き込み終了位置や耳珠形状な
どであり、また、日本人の由来との関連で着目されている耳垂の形状などである。現時点で、解析は途中の
段階であり明確な結果は提示できないが、観察項目により一致度に差異のあることが予想される。また、直
接計測の結果からは、右耳の相貌学的耳幅が左耳のそれより大きいこと、また相貌学的耳長に対する比から
も右耳の耳幅比は大きいことが示された。
P−49
日本における歴史上の人物の身長
○矢崎勝巳(矢崎郷土史研究所)、平本嘉助(北里大学・医療衛生学部・解剖)
Stature of a Japan's histrical person
YAZAKI, K., HIRAMOTO, Y.
日本における名だたる歴史上の人物の身長を知ることは、徳川将軍家の人々(鈴木ら、1967)や牧野家(加
藤ら、1986)の例を除けば極めて困難である。四肢骨の長から身長の推定は現在可能であるが、歴史上の人
物の遺骨の出土は少なく遺骨があっても長の計測は困難な例が多い。演者らは著名な人物の肖像画や写真を
利用して身長の復元を試みた。その基となるものはそれらに見られる扇子や着物の襟のサイズで、矢崎はそ
れらが時代的に変化してないことに着目していた。また、共同演者である平本(1972)は日本人の平均身長
の時代的な変化を報告した。そこで演者らは共同して歴史上の人物の肖像画や写真を利用して身長を推定し
た結果を報告する。
P−50
横隔膜の筋線維構成
○猪口清一郎(昭和大学)、江連博光・鈴木雅隆(昭和大学医学部第二解剖学教室)
Myofibrous organization of the diaphragm
INOKUCHI, S., EZURE, H., SUZUKI, M.
Sudan Black B染色を用いて横隔膜の筋線維構成の特徴を明らかにするとともに、他の筋と比較し、 3 つの
筋線維型(白筋線維、中間筋線維、赤筋線維)の頻度と太さによる特徴について検討した。1)横隔膜の 3 つ
の筋線維型の比率は男女、各部位とも白筋線維 2 /3 、中間筋線維 1 /3、赤筋線維 1 /30で他の筋に比べて
赤筋線維の比率が著しく低かった。2)筋線維の太さは一般に白筋線維、中間筋線維、赤筋線維の順に大であ
り、赤筋線維は常に最も小さかった。3)骨格筋の筋線維構成における 3 つの筋線維型の頻度と太さの組み合
わせはいくつかのパターンに分類されるが、横隔膜のパターンは下咽頭収縮筋のそれに最も近かった。
87
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P−51
ヒト下肢諸筋の筋線維構成について
○伊藤純治(昭和大学・保健医療学部・理学療法学科)、猪口清一郎(昭和大学・名誉教授)、森山浩志(昭
和大学・医学部・第 2 解剖)、島田和幸(鹿児島大学大学院・医歯学総合研究科・神経病学講座)、大塚成人
(昭和大学・名誉教授)
Muscle fiber composition of human lower limb
ITO, J., INOKUCHI, S., MORIYAMA, H., SHIMADA, K., OOTUKA, N.
ヒトの下肢筋の機能的特徴を明らかにするために、腸腰筋、大腿四頭筋、大腿屈筋群、前脛骨筋、下腿三
頭筋、足底筋の筋線維構成を計測し、検討した。筋腹横断面積は、ヒラメ筋が最大で、外側広筋、内側広筋
が次ぎ、大腿二頭筋短頭が最小であった。筋線維総数は、外側広筋が最多で、内側広筋が次ぎ、半腱様筋と
大腿二頭筋短頭が少で、その他の筋は中等度であった。筋線維の太さでは、ヒラメ筋が最大、腓腹筋内側頭
が次ぎ、大腰筋、大腿二頭筋短頭が最小であった。ヒトの下肢筋ではヒラメ筋の発達が顕著である。腸腰筋
の発達度は中等度である。大腿四頭筋では広筋群が、大腿屈筋群では大腿二頭筋長頭と半膜様筋がそれぞれ
発達する傾向が見られた。
P−52
Collaborative studies on mummies of the Joseon Dynasty, Korea
○申 東勳・Chang Seok Oh(Dept of Anatomy, Seoul National University College of Medicine)
、Kim Myeung
Ju(Dept of Anatomy, Dankook University College of Medicine)、Spigelman Mark(Kuvin Centre for the Study
of Infectious and Tropical Diseases Hebrew University, Jerusalem)、 Lee Soong Deok( Dept of Forensic
Medicine, Seoul National University College of Medicine)、Lim Do Seon(Eulji University)、Seo Min(Dept
of Parasitology, Dankook University College of Medicine)、 Bok Gi Dae( Seok Joo-Sun Memorial Museum,
Dankook University )
、Lee Eun-Ju(Andong National University)
、Yi Yang Soo(Gyeongju National Museum)
、
Donoghue HD(Centre for Infectious Diseases and International Health, UCL, London, UK)
Shin, Dong Hoon., Chang Seok, Oh., Kim, Myeung Ju., Spigelman, Mark., Lee, Soong Deok., Lim, Do Seon.,
Seo, Min., Bok, Gi Dae., Lee, Eun-Ju., Yi, Yang Soo., Donoghue, HD.
Mummies are frequently found in tombs with a lime-soil mixture barrier typical of the Korean Joseon Dynasty
(1392-1910). We successfully investigated the preservation status of a number of these mummies and discovered
that these Korean wet mummies may be amongst the best-preserved in the world. As a result, we are currently
carrying out paleo-pathological studies using various biomedical techniques, including endoscopy, histology and
molecular biology. Our aim is to obtain invaluable data on the health status and infections of people living several
hundred years ago.
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P−53
ブラジル日系人の皮膚色に関する予備調査
山口今日子(東大・理・生物・人類)
A pilot study on skin reflctance of Japanese Brazilians
YAMAGUCHI, K.
ブラジル北部の日系人を対象に皮膚色に関する予備調査を行った。調査対象はパラー州ベレン市近郊トメ
アスー移住地に住む日系人43人(男性19人、女性24人、9 −78歳)で、身体データ(身長、体重、皮膚反射率)
と人口学的データ(性別、年齢、結婚経歴、出産経歴)を収集した。結果、日本人成人に見られるような皮
膚色反射率の性差が見られなかった。年齢と上腕皮膚反射率にのみ有意な相関がみられたが、日本人とは逆
に、年齢が高いほど肌が明るくなった。これらの結果を今までの日本人データと比較し、環境・文化が皮膚
色に与える影響について考察する。また、皮膚色の変異に関与してきた性淘汰に関する研究の方向性につい
ても考察を加える。
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P−54
鵞足を構成する筋の停止状況が語る下肢の動き:モグラからヒトへ
○高橋 裕(防衛医科大・生物学)、藤野 健(東京都老人研・実験動物)、松村秋芳(防衛医科大・生物
学)、木村邦彦(木村成長研)
Functional Anatomy of Pes anserinus
TAKAHASHI, Y., FUJINO, K., MATSUMURA, A., KIMURA, K.
膝後内側の脛骨に停止する半膜様筋、縫工筋、薄筋は停止部で鵞足(INA,BNA)を構成する。ヒトの場合、
鵞足は内側側副靭帯を補強して膝関節の伸展を制限している。これらの筋の停止状況は進化の過程で地上す
り足歩行のネズミや地下坑道内縦横移動のモグラなど食虫類から霊長類の樹上歩行と枝つかみ縦横移動や地
上 4 足歩行を経てヒトの二足歩行に適応がなされてきた。ネズミやモグラの場合、筋はほぼ一列となって脛
骨前面に筋製に停止している。鵞足を構成する筋の停止形状がその動物の動きを物語る例を幾つか提示する。
P−55
北部九州及び沖縄出身者の形質について
○宮山 瞳・久保山直己・穐吉敏男(西九州大学・健康福祉・健康栄養)
Comparetive studies of anthropological character between native of northkyushu and okinawa
MIYAYAMA, H., KUBOYAMA, N., AKIYOSHI, T.
渡来人(弥生人)の形質を受け継いでいるだろうと考えられる北部九州人と、古代人(縄文人)の形質を
持っているだろうと考えられる沖縄人の形質を調査対象とし、両地区出身の学生の生体計測(体幹・顔面部)
及び観察(耳垂・眼瞼)を行った。
結果、北部九州地区は高身長、高顔、また密着型、一重瞼が多くみられた。沖縄地区はその逆の結果と
なった。このことは弥生人と縄文人の特徴を示しているのではないかと考えられる。
P−56
カニクイザルにおける生理的筋断面積(Physiological Cross-Sectional Area)の種内個体変異について(予報)
菊池泰弘(佐賀大・医・生体構造機能学)
Pilot research for intra-specific variation of Physiological Cross-Sectional Area (PCSA) in Macaca fascicularis
KIKUCHI, Y.
筋重量は、筋が作り出す力学的大きさと相関するものとされ、機能形態学的解釈の材料となっている。し
かしながら、生理的筋断面積(Physiological Cross-Sectional Area、ab.:PCSA)は、筋が産生する力学的大き
さと相関があるとされ、筋重量以上に筋の力学指標値に最適であると考えられる。近年、このPCSAを用い
た研究が散見されるが、体肢の固定状況によりPCSAは変化すると考えられる。しかし、固定状況の観点か
らPCSAの個体変異ついて評価した研究は皆無であるといえる。そこで本研究ではカニクイザル( Macaca
fascicularis)複数頭を対象に、固定の影響によるPCSAの種内個体変異について調査した結果を報告する。
P−57
運動性神経細胞のサイズ
○柴田昌和(神奈川県立保健福祉大学・人間総合)、野中直子(昭和大・歯学部・口腔解剖)、後藤 昇(郡
山健康科学専門学校)、猪口清一郎(昭和大・医学部)
Motor neuron sizes consisting of the pyramidal system
SHIBATA, M., NONAKA, N., GOTO, N., INOKUCHI, S.
ヒト運動性神経細胞の大きさを検討するため、大脳皮質、脳幹、脊髄(頚髄、胸髄、腰髄、仙髄)をフォ
ルマリン固定、クロム酸二次固定の後、セロイジン包埋の連続切片を作成し、KB染色を行って画像解析装
置を用いて観察と計測を行った。本方法での切片標本収縮率は長さで10±0%である。ヒト運動性神経細胞
は計測結果から 3 種類に分けることができた。(1)大細胞群は仙髄前角、顔面神経核、腰髄前角(2)中間細
胞群は三叉神経運動核、ベッツ細胞、動眼神経核、舌下神経核、偽核、頚髄前角(3)小細胞群は胸髄前角、
外転神経核、滑車神経核であった。下位運動ニューロンの神経細胞の大きさは支配する骨格筋の量と関係が
あると考える。
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P−58
咀嚼運動における筋活動時間の周期性に関するブートストラップ解析
大橋克巳(東京大・医附病・口外)
Bootstrap analysis on periodicity of electromyographic activities in masticatory motions
OHASHI, K.
咀嚼など生体運動の解析において、ブートストラップ解析法はあまり行われていない。開閉口を繰り返す
咀嚼運動では、運動制御が時系列に関連して行われるが、開口と閉口を独立と考えてデータサンプリングを
行うことで、咀嚼運動の制御に関する知見が得られる可能性がある。今回は、以前に報告した咀嚼運動の記
録から、筋活動時間と休止時間をそれぞれ独立してリサンプリングしたものと、独立させないデータについ
てブートストラップ法を適用し、比較検討を行った。サンプリングを1000回とした結果、活動時間と休止時
間のブートストラップ平均の分布について、一部で筋活動・休止時間のサンプリング時の独立性による違い
が確認された。
P−59
不安定動作の重心動揺
○竹内京子(防衛医大・再生発生)、松村秋芳(防衛医大・生物)、菊原伸郎(埼玉大・教育・保健体育)、
片山証子(鍼灸治療院エリム)、岡田守彦(帝京平成大・ヒューマンケア)、今城純子(防衛医大・再生発生)
dynamic instability and posturography
TAKEUCHI, K., MATSUMURA, A., KIKUHARA, N., KATAYAMA, S., OKADA, M., IMAKI, J.
重心動揺検査は直立静止姿勢で行うことが多いが、今回は、動的姿勢の安定性の問題と不安定姿勢による
検査の有用性を検討するため、姿勢反射誘発を加えた重心動揺検査を行った。資料は、一般18歳から57歳ま
での男女合計40名から得た重心動揺記録(アニマ社 GS-31)である。方法は、1)立位腕組み静止姿勢(開
眼、閉眼)、2)片脚立位静止姿勢(左右)、3)非軸足側の膝から下の振り出し動作を加えた姿勢(左右)を、
それぞれ30秒ずつ測定した。結果は、動揺パターン、面積軌跡長、パワースペクトル、位置・測度ベクトル
などで検討した。また、足関節不安定テスト、運動歴、障害歴、不安定感等の結果とも比較検討した。
P−60
エリートジュニアサッカー選手は体格、成熟度よりもキック力
○高井省三(筑波大・人間総合科学)、竹内 傑(早稲田中学・高等学校)
Longer kickers are better fitted to elite junior soccer players than husky or early mature boys
TAKAI, S., TAKEUCHI, S.
ジュニア(U12)サッカーチームのエリート選手(24名)と非エリート選手(29名)が選抜された要因を分
析した。身長、体重、皮脂厚、パーセント成人身長、50m走、立ち三段跳び、スローイン、ロングキック、
アジリティテスト、ジグザグドリブル、20mシャトルランの記録に線形判別分析と分類木を応用した。身長、
体重、皮脂厚、50m走、立ち三段跳び、ロングキック、アジリティテストが最小AIC判別モデルを構成した。
パーセント成人身長は含まれていない。bootstrap法による判別率は88%を示した。これらの項目を分類木で
分析したところ、ロングキックの重要度が最も高く、他の体力項目が続いた。しかし、形態項目の重要度は
低かった。
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P−61
熱帯多雨林において“純粋”な狩猟採集生活は可能か
○佐藤弘明(浜松医科大学・医学部)、山内太郎(北海道大学・医学部・保健学科)、稲井啓之(京都大学・
大学院アジアアフリカ地域研究科)、林 耕次(数理研)、川村協平(山梨大学・人間教育科学部)
Is it possible to live a “pure” foraging lifestyle in a tropical rainforest?
SATO, H., YAMAUCHI, T., INAI, H., HAYASHI, K., KAWAMURA, K.
熱帯多雨林において人類は農作物への依存なしに生存することは難しい、といういわゆるWild Yam Question
を検証するために、2003年 8 月(乾季)と2005年10月(雨季)、カメルーン南部の熱帯多雨林においてピグ
ミー系狩猟採集民Bakaの協力を得て、森の野生食物だけで生活する連続20日間の“純粋”な狩猟採集生活を
観察した。両期間で得られた協力者(乾季: 6 夫婦、雨季: 8 夫婦)の体重や健康、採捕食物の種類と量、お
よび、採捕コストに関する資料からは、熱帯多雨林における狩猟採集生活が困難であるという証拠は得られ
なかった。
P−62
明治前アイヌ人口の推定
葭田光三(日本大・文理・総合文化)
Population of the Ainu before Meiji Restoration
YOSHIDA, K.
第59回大会で、「場所(商場)」別人口の推移の検討の結果、明治前のアイヌ人口資料の場所別人口記録に
は人口調査(人別調)の範囲が限られたため、実際の人口よりも少数の人口が記録されている可能性を指摘
した。 その対象地域は東蝦夷地であったが、今回は西蝦夷地においても同様に人口調査範囲が限定された場
所の存在の可能性を指摘し、記録されなかった人口を推定して当該場所の人口を復元する。前回の報告と併
せて東西蝦夷地の明治前人口推移を復元する。 さらに、六箇場所・和人地のアイヌ人口(第60回大会報告)、
および北蝦夷地(樺太)、千島のアイヌ人口の記録を加えて、明治前の全アイヌの人口推移の復元を試みる。
P−63
狩猟採集生活における身体活動量 ―アフリカ熱帯雨林に住むピグミー系狩猟採集民の森での生活
山内太郎(北海道大・医・保健)、林 耕次(国立民族学博物館)、稲井啓之(京都大院・アジア・アフリカ
地域研究)、佐藤弘明(浜松医大・医)、川村恊平(山梨大・教育人間科学)
Physical activity of the Baka hunter-gatherers in the forest camps in Cameroon
YAMAUCHI, T., HAYASHI, K., INAI, H., SATO, H., KAWAMURA, K.
ヒト(個体・集団)の身体活動量の基準値(推奨値)は、近年の疫学研究の成果に依拠している。これに対
し、狩猟採集民の身体活動量を調べることは人類進化の観点から身体活動量の基準値を問い直すという意味
で有意義であり、相補完的である。現代に生きる狩猟採集民は世界に残り僅かであり、また近代化の波が急
速に押し寄せ「純粋な」狩猟採集活動を観察する機会は非常に限られている。1994年より10年以上にわたり
継続的に調査を続けているアフリカ熱帯林に住むピグミー系狩猟採集民とともに森へ入り、連続20日間の参
与観察を行った。狩猟採集生活におけるエネルギー消費量・身体活動量について個人差、性差、季節差に焦
点を当て報告する。
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発
表
91
演
者
索
引
太字は筆頭演者
数字は演題番号
あ 行
太田 博樹
大塚 成人
大塚柳太郎
大橋 克巳
大橋 順
岡崎 健治
岡田 守彦
岡部 友吾
岡本 圭史
荻原 直道
尾
麦野
小野 裕子
親川千紗子
小山田常一
遠部 慎
青木 健一
赤澤 威
穐吉 敏男
浅海利恵子
芦澤 玖美
足立 和隆
安達 登
天野 哲也
五十嵐由里子
五十嵐−右 潤子
井川 一成
井口 暁
池谷 和信
石浦 正寛
石川富士郎
石田 肇
か 行
海部 陽介
石田 英実
石田 英實
石丸 梓
市石 博
井出 吉信
伊藤 繁
伊藤 純治
稲井 啓之
稲岡 司
猪口清一郎
五百部 裕
今城 純子
伊禮 究
岩田 浩子
印南 秀樹
植田信太郎
上野 隆治
鵜澤 和宏
宇塚 聡
宇津巻竜也
梅津 和夫
江木 直子
江連 博光
榎本 知郎
大石 高典
大関 紗織
加賀谷美幸
柿沼由佳理
垣花 渉
影山 幾男
片桐千亜紀
片山 一道
片山 証子
加藤 克知
加藤 茂弘
加藤 泰建
金澤 英作
河合 泰輔
川久保善智
川田 順造
川村 協平
河村 正二
菊池 泰弘
菊原 伸郎
北川 賀一
北村 ゆみ
木村 邦彦
木村 賛
93
木村 誠
木村 亮介
楠本 彩乃
久高 将臣
國松 豊
久保 大輔
久保山直己
熊井 久雄
熊谷 真彦
熊倉 博雄
蔵元 秀一
栗田 博之
呉 健一
黒木 大雄
釼持 輝久
香田 啓貴
河内まき子
河野 礼子
五條堀 淳
小寺 春人
後藤 昇
小橋川 剛
小林 一広
澤田 順弘
塩野 智子
静島 昭夫
篠田 謙一
柴田 昌和
島田 和幸
島袋利恵子
清水 大輔
下見 光奈
白井 祐介
鈴木 隆雄
鈴木 敏彦
鈴木 雅隆
須田 英一
砂川 元
住 斉
諏訪 元
関 雄二
瀬口 典子
染田 英利
た 行
高井 省三
高井 正成
高野 智
高橋 裕
小林 謙一
小林 宏光
小林 靖
米須 敦子
近藤 修
高山 博
多賀谷 昭
瀧川 渉
竹内 京子
竹内 傑
竹下 欣宏
竹中 正巳
田代 直幸
田中 伊知郎
田中 和彦
棚町 徳子
俵 寛司
檀原 徹
塚田 真一
辻川 寛
土持 宇
筒井 登子
堤田 証
露木 玲
寺田 員人
土肥 直美
近藤信太郎
近藤 恵
今野 善文
さ 行
佐伯 和信
坂 英樹
酒井 哲弥
坂上 和弘
佐倉 朔
佐々木佳世子
佐々木成人
佐宗亜衣子
佐竹 隆
佐藤 巌
佐藤 敏幸
佐藤 華子
佐藤 弘明
實吉 玄貴
澤田 純明
当真 隆
94
徳永 勝士
百々 幸雄
塘 総一郎
平井 直樹
平崎 鋭矢
平田 和明
平田 泰紀
平松 千尋
平本 嘉助
樋渡 智秀
深瀬 均
譜久嶺忠彦
な 行
内藤 公卿
中井 信介
長岡 朋人
中澤 港
仲田 大人
永田 順二
中務 真人
中野まゆみ
中野 良彦
中橋 孝博
中原 泉
中原 千絵
中原リザ子
仲谷 英夫
中山 栄純
中山 光子
名取 真人
奈良 貴史
新川 詔夫
西秋 良宏
西田 利貞
西村 剛
西銘 章
二本松俊邦
能城 沙織
野中 直子
福本 郁哉
福本 敬
藤井 純夫
藤澤 珠織
藤澤 将人
藤田 尚
藤田 祐樹
藤野 健
保坂実千代
星野 敬吾
本郷 利憲
ま 行
真家 和生
巻島 美幸
牧島 央武
正高 信男
又賀 泉
松浦 秀治
松草 博隆
松下 孝幸
松永 智
松野 昌展
松林 清明
松村 秋芳
は 行
橋本 智江
橋本 裕子
橋本 正次
長谷川 優
松村 博文
松村 康弘
真鍋 義孝
丸茂 義二
三沢 計治
水嶋崇一郎
溝上 恭平
溝口 優司
宮田 佳樹
宮山 瞳
三輪 容子
宮本 俊彦
向井 人史
持丸 正明
花本 秀子
埴原 恒彦
羽地 都映
馬場 悠男
濱田 穣
林 耕次
林 俊郎
針原 伸二
東 憲章
日暮 泰男
兵頭 政幸
95
森山 浩志
Nguyen Lan Cuong
Peiris Roshan
Rogers James
Scriven Graham
Seo Min
Spigelman Mark
Sudijono
Y. Beyene
Yi Yang Soo
マシェンコ エフジェニー
ムヘイセン スルタン
ムンドロス S.
金 鋒
李 玉玲
陸 舜華
申 東勳
王 瀝
や 行
矢崎 勝巳
矢作 麻裕
山内 貴之
山内 太郎
山形眞理子
山口今日子
山田 博之
山本亜由美
吉浦孝一郎
葭田 光三
吉田 俊爾
吉永 淳
村 建
代居 敬
米田 穣
六反田 篤
わ 行
若林美由紀
分部 哲秋
海 外
Alvesalo Lassi
Aziz Fachroel
B. Asfaw
Bok Gi Dae
Bui Chi Hoang
Bounam Pathoumton
Bruno Maureille
Chang Seok Oh
Donoghue HD
Guillen Sonia
Grant C. Townsend
Hughes Toby
Indriati Etty
Jacob Teuku
Kim Myeung Ju
Kingsada Phouton
Kurniawan Iwan
Lahdesmaki Raija
Lee Eun-Ju
Lee Soong Deok
Lim Do Seon
Mbua Emma
Mihailidis Suzanna
Malaivijitnond Suchinda
96
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