ホウレンソウの作期別品種比較試験（PDF形式 351キロバイト）

１
ホウレンソウの作期別品種比較試験
試験の目的
ホウレンソウは，は種時期による品種の使い分けが必要で，かつ，毎年のように新品種
が販売されています。このため「いつ，どの品種を使えば良いのか？」という難しさを
常に抱えていることから，は種時期別に旭川での栽培に適する品種を模索することを目
的として，新品種を中心に比較試験を実施しました。
関係先
旭川青果物生産出荷協議会 ほうれん草部会(以下「部会」と表記します。)
試験作期等
は種
標準品種収穫
栽植密度等
作期 1 作期 2 作期 3 作期 4 作期 5 作期 6 作期 7 作期 8
3/9
4/10
5/10
6/7
7/6
8/6
8/30
9/21
4/26
5/15
6/10
7/4
9/5
9/27
11/2
条間 20cm×株間 6cm＝8,333 株/a，雨よけハウス栽培，２反復
※作期５は全品種で土壌病害多発により試験中止。
供試品種
№
品種名(販売元)
1 ◎ハンター(カネコ種苗)
2 ◎ブライトン(サカタのタネ)
3 ◎サイクロン(トーホク)
4 サンホープセブン(カネコ種苗)
5 チーター(カネコ種苗)
6 SC7-030(サカタのタネ)
7 アグレッシブ(サカタのタネ)
8 カイト(サカタのタネ)
9 トリトン(サカタのタネ)
10 ミラージュ(サカタのタネ)
11 TKH-0322(寺岡種苗園)
作期
1,7,8
2,3,5,6
4
3,4,5,6
7,8
1,7,8
1,7,8
3,4,5,6
2,3,5,6
1,2,6,7
1,2,7,8
№
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
品種名(販売元)
TKH-1125(寺岡種苗園)
プリウスアーリー７(トキタ種苗)
サマートップセブン(中原採種場)
ゴーゴーサマー７(ナント種苗)
ミッキー７(日本農林)
イーハセブン(武蔵野種苗園)
アクセント(渡辺採種場)
スーパートニック(渡辺採種場)
NX-SP230(渡辺農事)
サムライ(渡辺農事)
ピクシー(渡辺農事)
作期
6,7,8
2,3,5,6,7
3,4,5,6
3,4,5,6
1,2,7,8
1,2,6,7
1,2,7,8
3,4,5,6,7
3,4,5,6
1,2,7,8
1,2,7,8
※「◎」は各作期の標準品種
評価時の重視特性
（１）全作期共通の重視特性：収量性，葉色の濃さ，べと病レース抵抗性(1～7 以上)
（２）作型別重視特性：下表のとおり
作型
２月
３月
４月
５月
６月
７月
８月
９月
(は種時期) 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
Ⅰ
Ⅱ
低温での生育
晩抽性
高温での生育
極晩抽性(特に６月)
Ⅲ
対応作期
１
２
３
４
(5)
※作型の分類は，部会の H24 奨励品種一覧表に基づく。
重視特性
６
７
８
試験結果
（１）部会作型Ⅰで良好な品種
・ハンター(カネコ種苗)
既に奨励品種ですが，発芽や生育揃いが良く，収量性及
び収穫作業性もバランスの取れた欠点の少ない品種で
あることが，あらためて確認されました。現在，この品
種を使用していて特に問題が無ければ，積極的に他の品
種へ切り替える必要性は低いと考えられます。
・サムライ(渡辺農事)
発芽が早い上に生育も早く，｢ハンター｣よりも立性で収
穫作業性が非常に良い品種です。葉数が多いため，｢ハ
ンター｣に近い収量があります。この時期の選択肢のひ
とつになり得る品種です。
（２）部会作型Ⅱで良好な品種
・ミラージュ(サカタのタネ)
発芽が極めて良い上，生育が早くて収穫作業性も良い品
種です。土壌病害の発生も，他の品種より少ない結果で
した。収量性が特に優れているわけではありませんが，
非常に栽培しやすいことが特徴です。
・イーハセブン(武蔵野種苗園)
葉数が非常に多くてボリュームがあり，収量性に優れる
品種です。葉色が濃く，外観も良いです。魅力的な特性
の多い品種ですが，生育はやや緩慢な上，水分要求量が
多く，ほ場が乾くと生育が停滞するなど，栽培は難しい
面があります。
（３）部会作型Ⅲで良好な品種
・カイト(サカタのタネ)
晩抽性に優れ，最も抽苔しやすい６月は種でも，ほとん
ど抽苔しません。収量性も高い上に葉色が極めて濃く，
品質面も優れています。夏期は，幅広い時期では種可能
と考えられます。ただし，生育は極めて緩慢で在ほ日数
が長くなり，水分要求量が多くて生育が停滞しやすいな
ど，栽培は難しい面があります。
（４）部会作型ⅡとⅢの境界付近で検討したい品種
・ｺﾞｰｺﾞｰｻﾏｰ 7(ナント種苗)，ｽｰﾊﾟｰﾄﾆｯｸ(渡辺採種場)，NX-SP230(ｱｰﾊﾞｲﾝ)(渡辺農事)
上記｢カイト｣より生育の早い品種を求める場合，抽苔危険期(5 月中旬～7 月上旬)
を避ければ，これら３品種の導入も考えられます。いずれも従来の基幹品種｢ブラ
イトン｣に似た濃緑・多収型の品種です。