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平成26年度 海外貿易会議(宇宙)報告 (ドイツ連邦共和国及びトルコ
工業会活動 平成26年度 海外貿易会議(宇宙)報告 (ドイツ連邦共和国及びトルコ共和国訪問) 経済産業省が主催する平成26年度の貿易会議が平成26年9月22日から9月26日までの 5日間にわたり、ドイツ連邦共和国のボン市、ブレーメン市及びトルコ共和国のアンカラ 市において開催された。 これまで経済産業省主催による海外貿易会議(宇宙)(以下、「貿易会議」)では、海外 市場の獲得を見据え、アフリカ、南米、アジア地域等を訪問し、相手国政府関係機関、 企業等との意見交換を実施し、官民一体となったアプローチにより相手国との宇宙分野 における協力関係構築を探ってきている。 このような背景のもと、平成26年度はドイツ連邦共和国及びトルコ共和国を訪問した。 以下その概要を報告する。 1.はじめに 今回の訪問では、日本側から(一社)日本 ・一般財団法人 宇宙システム開発利用推進 機構(JSS) 航空宇宙工業会 宇宙委員会 委員長である株 ・三菱電機株式会社(MELCO) 式会社IHIエアロスペース 木内重基代表取締 ・三菱プレシジョン株式会社(MPC) 役社長を貿易会議団長として、政府側代表者 ・NEC東芝スペース株式会社(NTS) として経済産業省 宇宙産業室 恒藤晃室長(ド ・三菱重工業株式会社(MHI) イツ)、及び内閣府 宇宙戦略室 深井宏参事官 ・川崎重工業株式会社(KHI) (トルコ)以下、宇宙関係団体、衛星メーカ、 ロケットメーカ、宇宙利用関連企業等、16企 業・団体から総勢24名が参加した。 参加企業・団体は以下の通り。 ・経済産業省・宇宙産業室 ・内閣府・宇宙戦略室 ・日本スペースイメージング株式会社(ト ルコのみ)(JSI) ・株式会社日立製作所(HITACHI) ・株式会社パスコ(PASCO) ・株式会社三井物産戦略研究所(ドイツの み)(MSTI) ・独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 ・一般社団法人 日本航空宇宙工業会 (JAXA) (SJAC) ・株式会社IHIエアロスペース(IA) ・株式会社IHI(IHI) 8 (以下、文中における会社名は英語略称の み使用。) 平成26年11月 第731号 2.ドイツ連邦共和国概要 きた。2010年以来の欧州債務危機以降も経済 2.1 国情 的安定を維持してきた強力な経済力を背景 ドイツ連邦共和国(人口8,270万人:2013年 に、近年、ドイツはEUの中で大きな発言力を 国連人口基金データ)の首都はベルリン市で 有しており、ドイツ自身の財政健全化・構造 あるが、東西ドイツ分断時にはケルン市の南 改革の努力により自国経済が順調に推移して に位置するボン市に暫定首都がおかれてい きたことを背景に、各国政府にも財政規律と た。現 在 で も ボ ン 市 に は ド イ ツ 宇 宙 機 関 構造改革を強く要請するようになっている。 (DLR)本部を含む政府機能が一部残されて 2013年のドイツのGDPは2兆4,820億ユーロ いる。国土面積は35.7万㎢で日本とほぼ同じ で、アメリカ、中国、日本に次ぐ世界第4位 面積を持つ国である。 の経済大国であり、EU加盟国では最大の経済 政情は安定しており、キリスト教民主同盟 力を持つ。ドイツの主要産業は工業で、自動 とキリスト教社会同盟の連立政権で、2005年 車、化学、機械、金属、電気製品などである。 11月以降、メルケル首相が政権を担っている。 ドイツと我が国とは、これまで国際社会の ドイツの外交・安全保障政策は、従来から① 問題に対して協調して取り組む政治的パート 欧州統合の積極推進と②NATOを軸とする大 ナーとして、軍縮・不拡散やアフガニスタン 西洋関係のバランスを取ることを基本として 復興支援、国連安保理改革などで密接に協力 ドイツ連邦共和国及びトルコ共和国の位置(Googleマップより) 9 工業会活動 している。 貿易面で、ドイツは日本にとって欧州最大 ・有人・宇宙環境ではESAを通じてISSプロ グラムに参画している。 の貿易相手国であるとともに日本はドイツに ・宇宙輸送分野では、Ariane-5ロケットの とって、中国に次ぐアジア第2位の貿易相手 第2段(液体水素燃料/液体酸素ロケッ 国である。2013年の対独輸出は約1兆8,500億 トエンジン)を製造している。尚、現在 円、対独輸入は約2兆3,200億円となっている。 の世界における液体ロケットの基礎は、 第2次大戦中にドイツのフォン・ブラウ 2.2 宇宙への取組み 2014年現在のドイツの宇宙関連予算は欧州 宇宙機関(ESA)への拠出金が765.7百万ユー ン博士チームが開発したV-2号(アルコー ル燃料/液体酸素ロケットエンジン)で ある。 ロ(ESA参加国中で1位)、及び国内の(民事) 宇宙予算が450百万ユーロで、合計1,215.7百 3.ドイツでの貿易会議概要 万ユーロとなっている。ドイツは欧州域内の ドイツ宇宙機関DLRは、海外との産業協力 協力、米国等との広範囲な国際協力を一貫し にも積極的であり、本年6月にはドイツ企業6 て 重 視 し て き た。尚、(軍 事)宇 宙 予 算 は、 社とともに日本を訪問しており、日本側企業 明らかにされていない。 も参加して日独双方の宇宙活動・企業紹介を 2010年11月に発表されたドイツの宇宙戦略 行っている。 では、「地球観測・通信衛星・測位・惑星探 今回、日本からの宇宙関連企業の官民合同 査ロボットなどの技術向上、宇宙研究分野の の訪問団がドイツを訪問するに当たり、DLR 発展、市場開拓及び法的枠組み整備、国家安 が窓口となり会議、施設訪問の調整を行って 全保障への宇宙利用」などが盛り込まれてい 頂いた。 る。ドイツ航空宇宙センター(DLR:職員約 以下、今回の主要行事である宇宙産業間対 7,000名)が中心となって、軍民の宇宙プログ 話、宇宙関連施設見学についてその概要を報 ラムが計画・実施されている。尚、DLRの研 告する。 究分野には宇宙だけでなく航空、輸送、エネ ルギーも含まれており、最大の予算は宇宙分 3.1 宇宙産業間対話 野(約37%)、次いで航空分野(約27%)となっ (Space Industry Conference) ている。DLRの所轄官庁は複数であるが、主 日本−ドイツの宇宙産業分野における交 に連邦経済技術省(BMWi)が管轄する。 流、意見交換の場として、9月22日にDLRボ 以下に主な宇宙ミッションを紹介する。 ン本部事務所のフォン・ブラウン会議室にて ・地球観測では、レーダ衛星「TerraSAR-X」 や商業地球観測システム「RapidEye」が ある。 ・測位衛星システムとして、「Galileo(ガ リレオ)」に参画しており、OHB社が衛 星を製造している。 ・軍事システムとして偵察衛星「SAR-Lupe」 や通信衛星「COMSATBw」がある。 10 宇宙産業間対話を開催した。 ドイツ側からは経済技術省、DLR、及び企 業11社から30名程度が参加した。日本側から は18名の訪問団に加え、DLR研修中のJAXA 職員1名の参加を得た。 宇宙産業間対話開会にあたり、以下2名よ り開会の挨拶があった。 ・DLR Dr. Gruppe理事 平成26年11月 第731号 日本-ドイツ 宇宙産業間対話参加者 ・貿易会議 木内団長 (写真提供:DLR) 宇宙産業間対話では、内容によりセッショ 日本側代表の木内団長からは、今回の宇宙 ンを分けて発表が行われた。 産業間対話開催にあたり、両国政府関係者に 謝意を示すとともに、本年6月のDLRとドイ ツ企業のミッションの訪日に引き続き、今回 (1)全体セッション ド イ ツ 側 は BMWi(連 邦 経 済 技 術 省)、 (9月)は日本がドイツを訪問する機会を得て、 BDLI(ドイツ航空宇宙工業会)、日本側は経 今後両者の協力関係が緊密になり、発展して 済産業省宇宙産業室・恒藤室長、当工業会・ 行くことを確信しているとの挨拶があった。 秦常務理事より、それぞれの国の宇宙政策、 木内団長とDLRグルッペ理事の記念品交換 11 工業会活動 宇宙産業の状況に関するプレゼンが行われ た。日本、ドイツ共に宇宙産業の人員数が約 8,000名で、共通事項が多いことが確認された。 てが行われている。) 宇宙部門工場では、Ariane-5ロケットの第2 段(液体水素燃料/液体酸素)と衛星用燃料 タンクの製造を行っている。また、国際宇宙 (2)衛星関係 日本側からはJAXA、JSS、MELCO、MPC、 ス テ ー シ ョ ン(ISS)の 欧 州 モ ジ ュ ー ル・ Columbusを製造した実績があり、ISSの欧州 NECが発表を行った。ドイツ側からはドイツ バックアップ管制室もある。メインの管制室 の2大宇宙企業であるAirbus Defense and Space はミュンヘンのDLR施設内にあるが、この (ADS)社、OHB 社 に 加 え、Astro Fein 社、 ADS社バックアップ管制室も機器は常時稼働 Berlin Space Technologies社の発表があった。 状態にあり、ISSの位置モニタ、船外カメラ 画像モニタなどが稼働していた。また、ISS (3)輸送関係 への物資補給機ATV(日本のHTV: 「こうの 日本側からはMHI、IHI/IA、KHIの発表があ とり」に相当する)は予定通りの5機で製造 り、ドイツ側からはEurockot社、ADS Bremen を終了した(2014年7月に最終号機となる5号 社、MT Aerospace社の発表があった。 機の打上げが行われ、ISSにドッキング中。 2015年に大気圏再突入が行われる予定。)現 (4)宇宙利用関係 在は、米国−欧州の共同開発となるMPCV- 日本側からはPASCO、HITACHI、MSTIの ESM(ISS宇宙ステーションへの人員・物資 発表があり、ドイツ側からはTesat社、Jena- 補給用の有人宇宙船)を開発中との事であっ Optronik 社、Infoterra 社、SCISYS 社、MT た。 Mechatronics社の発表があった。 工場ではAriane-5ロケットの第2段組立の様 個々のプレゼンごとに活発な質疑応答が行 われ、今後、双方ともに機会を見つけ共通の 関心分野につき情報交換を行うことで閉会と した。 3.2 Airbus Defense and Space社(ADSBremen)見学 9月23日は、場所をブレーメン市に移し、 午前中にADS社ブレーメン工場を見学した。 工場はブレーメン市街地の南にあるブレーメ ン空港に隣接しており、約44万㎡の広さがあ る。ブレーメン工場の従業員は約4,500名で、 Airbus民間旅客機の翼、高揚力装置、AirbusA400M軍事輸送機の胴体などの製造が行われ ている。(注記:ドイツ・ハンブルグにあるAirbus社ハ ンブルグ工場は、従業員数約15,000名でAirbus機の組み立 12 (写真提供:ADS) MPCV-ESM完成予想図 (注記:円錐形の宇宙飛行士が搭乗する部分は米国担当。 円筒形でロケットエンジンや太陽電池パドルを有する部 分がドイツ(ADS社)担当。) 平成26年11月 第731号 (写真提供:ADS) Ariane-5ロケットの第2段部分(ロケットエンジンと燃料・酸化剤タンク) 子をクリーンルームの窓から見学し、衛星燃 に対する税制優遇策などを実施した。OHB社 料タンク製造現場の見学を行った。 は1985年に宇宙関連事業を開始し、2001年に は売上約15百万ユーロであったが、2013年に 3.3 OHB社見学 は従業員約2,500名、売上約700百万ユーロに 9月23日の午後は同じブレーメン市にある、 成長している。現在では欧州の測位衛星ガリ OHB社の工場を見学した。ブレーメン市は宇 レオの実用タイプ22機を受注して生産を行っ 宙産業の活性化に力を入れており、1990年9 ている。また、Small-Geoと称する、静止通信 月にZARM無重力実験落下塔をブレーメン大 衛星としては比較的小型となる衛星(3トン 学に設置し、新興衛星メーカであったOHB社 級)の製造も行っている。工場見学では、衛 ガリレオ衛星の組み立て (写真提供:OHB) 13 工業会活動 ブレーメン大学内、高さ約150mの無重力実験落下塔(Drop Tower) (打上げ装置を使用して、約9.3秒間の無重力状態を持続) 星組立室(クリーンルーム)内の見学を行っ 各地域の住民の寄付を元に尖塔を持つ寺院 た。ガリレオ衛星は同時に4機、Small-Geoは (モスク)が町の各所にある。この尖塔は、2 同時に2機の製造を行っており、低コスト化 本で1対であり、立派なモスクには4本(又は のカギは同じ種類の衛星を複数機製造するこ 6本)の尖塔がある。また、空港などの公共 とにあると感じた。 施設には足洗い場、礼拝室などがあり、ホテ ルの部屋にもメッカの方向を示す矢印が示さ 4.トルコ共和国概要 4.1 国情 れていたりする。 政治は多党制で三権分立であるが、政党の トルコ共和国(人口7,500万人:2013年国連 離合集散が激しい。また、1960年と1980年に 人口基金データ)の首都はアンカラ市(現在 は軍がクーデターを起こしており、1997年に の人口約440万人。但し、アンカラは首都と も連立政権を崩壊に追い込んだ。陸海空の三 なる直前の1919年時点では人口約2.5万人の地 軍を有するトルコは1952年以降、NATOに加 方の小都市。)である。1923年にイスタンブー 盟している。 ル(現在の人口約1,400万人)から首都がアン 2013年のトルコのGDPは150億トルコリラ カラに移された。国土面積は78.4万㎢で日本 (約8,200億ドル)で世界第18位となっている。 の約2倍の面積を持つ国で、アンカラ市はト 工業分野は繊維・衣類分野の輸出が大きいが、 ルコのほぼ中央部の標高約900mの高原に位置 近年では世界の大手自動車会社との合弁で自 する、乾燥(年降水量約400㎜)した地域で 動車産業も盛んである(トヨタ、フィアット、 ある。 ルノー等)。 宗教は、99%がイスラム教徒と言われる。 14 鉱業も盛んで、石炭(但し自国消費)、マ 平成26年11月 第731号 グネシウム、などが採掘されている。石油の の小型地球観測衛星「RASAT」を開発し、2011 生産は少なく、多くは輸入であり、ガソリン 年8月に打上げた。通信分野では、衛星運用 価格は税金70%を加えて、1リットル約4.5ト 事業者Turksat社が静止通信衛星を使用して通 ルコリラ(現時点で約230円)と高額である。 信・放送サービスを提供している。Turksat- しかし、アンカラの様な大都市では、通勤時 4A及び4Bは2011年3月に三菱電機が受注し、 間帯には車の渋滞が発生している。 4Aは2014年2月15日に打上げられた。 人口の約20%(約1,500万人)が農業に従事 トルコは国際協力も積極的で、欧州宇宙機 しており、農業生産額は約620億ドルでGDP 関(ESA)とは2004年に宇宙協力協定を締結 の約8%となっている。主要作物として小麦、 し、ウ ク ラ イ ナ 宇 宙 機 関(SSAU) 、ロ シ ア 大麦、てんさい、トマト、ジャガイモ、綿花 (FSA) 、ドイツ(DLR)等との協力関係にある。 等が栽培されている。 また日本の文部科学省とトルコの運輸海事通 4.2 宇宙への取り組み 協力文書を締結している。 信省は、2010年12月に宇宙・航空分野に係る トルコの宇宙開発は首相府直下の科学技術 最高会議による政策決定の下、TUBITAK(ト 5.トルコでの貿易会議概要 ルコ科学技術研究評議会)が宇宙分野を含む 5.1 宇宙産業間対話 科学技術プログラムの策定・実施を担い、学 (Space Industry Conference) 術界・産業界と協力して進めている。宇宙分 9月26日の午後、アンカラ市内のトルコ運 野の予算は、2013年:4,900万トルコリラ(約 輸海事通信省で宇宙産業間対話が実施され 22億円)、2014年:約5,000万トルコリラ(約 た。日本側は新たに在トルコ日本大使館、内 23億円)が割り当てられている。 閣府・宇宙戦略室、JAXA新事業促進センター 主な宇宙ミッションのうち、地球観測では からメンバが加わり、24名の会議参加となっ 韓国のSI社から光学カメラの提供を受け、初 た。トルコ側は運輸海事通信省の航空宇宙技 日本-トルコ 宇宙産業間対話参加者 15 工業会活動 術局、TUBITAK UZAY(宇宙技術研究機関)、 Turkish Aerospace Industries(TAI) 、ASELSAN (電 子 装 置 等)、HAVELSAN(Command & Control等)、ROKETSAN(ミサイル等)など から約30名の参加があった。 トルコ側からは運輸海事通信省、日本側か らは内閣府・宇宙戦略室、経済産業省、及び 木内団長から開催に当たっての挨拶があっ た。 その後、日本の宇宙政策・宇宙産業のプレ ゼン及びトルコの宇宙政策・宇宙産業のプレ ゼン(10社)があった。 ト ル コ は 宇 宙 開 発・利 用 を 進 め て お り、 (写真提供:TUBITARK UZAY) Turksat-6A通信衛星の外観図 ンバ、振動試験機、衛星地上局などを保有し て お り、衛 星 の 各 種 装 置 を 開 発 し て い る。 Gokturk偵察衛星シリーズ、Turksat通信衛星シ 2020年には通信衛星Turksat-6A(ドライ質量 リーズを保有・開発している。衛星打上げロ 約1.6トン)を開発する目標を持っている。 ケットの開発、ロケット射場の国内建設など も目標に掲げている。 5.3 ASELSAN社見学 トルコは日本からの宇宙技術導入に関心が 9月25日の午後は、アンカラ市内に位置す あり、次回は、2社間でビジネスマッチング るASELSAN社の工場見学を行った。社名の を行いたいとの提案があった。トルコ運輸海 ASELSAN(発音「アセルサン」)とは、トル 事通信省のKanligoz航空宇宙技術局長からは、 コ語で陸軍・電気・会社の意味を表している。 「今回の様な対話を継続し、ただ製品を売買 社名の通り、軍事用の通信機器などの電子 するだけでなく、日−トルコ共同で製品開発 装置を主要製品としている。従業員数は約 を行い、第3国への販売を行うことを目指し 4,500名で、その内エンジニアが2,700名(約 たい。」との発言があった。 60%)となっている。売り上げは約900百万$ (2012年)で輸出は約17%である。宇宙関係 5.2 TUBTAK UZAY見学 9 月 25 日 の 午 前 中 は、ア ン カ ラ 市 内 の TUBITAK(ト ル コ 科 学 技 術 研 究 評 議 会) UZAY(発音「ウザイ」 :宇宙部門)の施設訪 問を行った。 では、衛星の各種電子装置を開発しており、 Gokturk-3軍事衛星では、SAR、通信装置など を担当している。 関連企業にはROKETSAN(発音「ロケット サ ン」、ロ ケ ッ ト、ミ サ イ ル 製 造)が あ る。 UZAY は 1985 年 に 設 立 さ れ、2011 年 に は ASELSAN工場では、陸軍用の通信装置、艦 RASAT:分解能7.5m、2012年にはGokturk-2: 載型30㎜機関砲の光学照準装置、戦闘車両搭 分解能2.5m(軍事衛星)の開発を行った。 載機関砲のスタビライザ、各種空対地ミサイ TUBITAK全体では約4,500人の職員が在席 ル等が見学対象となっており、輸出に力を入 しており、その内、約250人がUZAYに在席し れていることが伺えた。その先に衛星用PCB ている。UZAYの研究開発設備として、電波 試験装置、クリーンルーム、電波暗室、Φ2.5m 暗室、クリーンルーム、小型の熱・真空チャ のスペースチャンバが設置されていた。衛星 16 平成26年11月 第731号 (写真提供:ASELSAN) 艦載型30㎜機関砲の光学照準装置製造現場 (写真提供:ASELSAN) 地上の衛星通信アンテナ(Gokturk衛星用) 用のフェーズドアレイアンテナなど開発中で あった。衛星の地上システムも担当している。 戦隊(訓練部隊)が駐屯している。 TAI社は軍用機(F-16戦闘機、輸送機、ヘ リコプタ)の生産・改修も行っていることか 5.4 Turkish Aerospace Industries(TAI)社 見学 9月26日の午前、アンカラ市郊外の北西部 ら、今回の貿易会議の工場訪問の中では警備 が一番厳重であった。 TAIはトルコ空軍向けに152機のF-16戦闘機 にあるTAI社の工場見学を行った。TAI社は国 をライセンス生産し、その改善改修を行って 営の航空宇宙防衛機器メーカであり、3,000m いる。F-35戦闘機の国際共同生産プログラム 級滑走路を有するアキンジ空軍基地(Akıncı においては中央胴体の製造担当で、A400M輸 Air Base)が隣接している。なお、このアキ 送機では胴体前方部分と後方部分を担当して ンジ空軍基地にはトルコ空軍の第1戦術空軍・ い る。ま た 民 間 旅 客 機 で は B787 の 昇 降 舵、 第4航空団のF-16C/Dを運用する第141戦隊(戦 A350ではエアルロン等を製造担当している。 闘機部隊)、第142戦隊(爆撃機部隊) 、第143 ヘリコプタ、UAVも開発・製造している。 17 工業会活動 (写真提供:TAI) AITセンターのスペースチャンバ (写真提供:TAI) Gokturk-2衛星画像 (画面中央にTAI工場、及び画面左に空軍基地) 6.所感 今回の訪問国であるドイツ連邦共和国は宇 宙先進国であり、一方のトルコ共和国は宇宙 分野での新興国であるが、自動車、電子機器、 宇宙機器としては、Goktuk-2衛星(光学) 航空・防衛分野において基盤となる技術・産 を 開 発・製 造 し(打 上 げ 2012 年)、現 在 は 業がある。両国ともに日本との宇宙協力のさ Gok turk-3 衛 星(SA R)を 開 発 中 で あ る。 らなる進展を希望しており、今回の訪問は、 Gokturk-4は、高分解能の光学衛星となる予定 そのスタートとしての情報交換の場として、 である。通信衛星としてはTurksat-6A開発を 両国(日−ドイツ及び日−トルコ)にとって 行っている。 有意義であったと言える。 T A I 社 で は、衛 星 の 組 み 立 て・試 験 棟 両国の関係をさらに具体的に拡大していく (Spacecraft Assembly, Integration and Test ためには、関係省庁、企業等による継続的な (AIT)Center)の見学を行った。この施設は、 フォローアップが重要であり、SJAC会員企業 政府資金で建設され(政府所有)、運営をTAI におかれては、今後とも積極的な参加が期待 社が行っている。Φ8mのスペースチャンバ、 されるところである。 振動試験機、EMC試験装置などが設置されて 最後に、今回の貿易会議において、DLR、 いる。このAITセンターの位置は滑走路から 経済産業省並びに在トルコ日本大使館には各 500mしか離れておらず、衛星の輸送に適して 種調整を実施頂き、今回のミッションが成功 いるとの説明があった。 裏に完了したことに対して感謝申し上げる。 〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部長 宇治 勝〕 18