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第4章のねらい

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第4章のねらい
第
4
章のねらい
第3章で示されたとおり,支援の対象である若者は,さまざまな問題を抱えている。一人の
若者が抱える問題は必ずしも一つではなく,複合的な問題を持つことが少なくない。ユースア
ドバイザーは,こうした問題を切り分けずに,一人の若者に,全人的に関わることが求められ
る。そこで,第4章の前半では,これらの問題に対応するために形成されてきた,さまざまな
行政的な制度について知ることを目的とし,後半では,問題が複合的であることを踏まえ,多
様なアクター5) を巻き込んで,複合的なネットワークを形成することによって,若者支援を組
み立てていく仕方について学ぶことを目的とする。
第4章の前半では,これらの問題に対応するために形成されてきた行政制度のうち,ユース
アドバイザーが知っておいたほうがよい,いくつかの分野における制度について概説した。基
本的な言葉を知っておくなど一とおりの知識を持つことで,困ったときにどこに相談すればよ
いかが分かったり相談したときに相手の話が分かったりする。今回は,主として,行政分野に
限り,社会保障,公的扶助,地域福祉,障害者福祉,児童福祉,教育制度,少年司法,労働環
境(職業紹介を含む。)分野における制度を概説した。
しかし,これ以外にも,医療,消費者保護,(成人の)刑事司法制度などの行政の制度につ
いて知っておくことも大切だし,若者に有用な免許資格,若者に対する体験やサービスを提供
するNPOなど民間団体,企業団体・経済団体,労働組合などの分野における仕組みについて
知っておくことも有用である。
ユースアドバイザーに求められる知識は幅広く,際限がないと感じることもあるだろう。負
担と思うのではなく,一人ひとりの若者に関わることが,より広い社会への扉を開いてくれて
いるのだと感じると,学びがいがあると思う。
第4章の後半では,若者の抱える複合的な問題を解くために,なぜ,どのように,ネットワー
クを構築するのかを学ぶ。ネットワークを構築するのは,実は,若者自立支援が包摂的な社会
づくりそのもの,つながりの再構築だからである。社会における多様なアクターが,共同性を
確認し,協働することにより,社会を改めてつくり直していくことだと言ってもよい。
5)
アクター: 特定の社会的領域(ドメイン)において活動する主体
具体的には,若者支援に先行して形成されてきた,生活保護や子どものメンタルヘルス分野
のネットワークについて学びこれらに範をとること,若者に直接向き合っているさまざまな機
関を知り,ネットワーキングの相手として意識すること,そして,さまざまなネットワーキン
グの事例について学ぶことを,主たる目的とした。
ネットワーク形成において問われるのは,ネットワークがどれだけ包摂的であるか,つまり,
どれだけ協働できるか,どれだけ当事者主体であるか,である。これらの問いは,当事者を含
む,多様なメンバーに対して開かれた,フラットで民主的なネットワーク6) を要請する。
行政を始め,ネットワーク形成の主体たる立場にあるアクターは,そのようなネットワーク
を,これまで形成されてきた縦割り行政の仕組みや,官と民,組織と個人といった線引きを乗
り越えて,柔軟に形成することが求められている。そのための手法を,全国各地の取組と「つ
ながり」合いながら,学び取ってもらいたい。
------------------------------------------------------------------------------- ● 静岡県立 大学 国際関係 学部 准教授
津富宏
6) フラットで民主的なネットワーク: ネットワークの構成員が上下関係なく参加し,対等に意見形成や決定が行えるネットワーク
ユースアドバイザー養成プログラム
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