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議会活性化(会議の効率化と住民と議会をつなぐ今後の手法)

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議会活性化(会議の効率化と住民と議会をつなぐ今後の手法)
委
員
会
調
査
報
告
書
議会活性化(会議の効率化と住民と議会をつなぐ今後の手法)に
に係る先進地事務調査について
平成27年5月20日から22日までの3日間に当委員会が実施した標記に
関する調査結果を会議条例第78条の規定により報告する。
平成27年6月24日
芽室町議会議会運営委員会
委員長 常 通 直 人
芽室町議会議長
広
瀬
重
雄
様
1
1
調査訪問先および調査項目
訪問月日等
調
査
項
目
午後 3 時 00 分から
午後 5 時 00 分まで
大津市議会
(滋賀県)
「災害時の議会体制・議
会 ICT(情報伝達技術)
・
議会改革・活性化策」に
ついて
午後 2 時 00 分から
5月21日
午後 4 時 30 分まで
飯綱町議会
(長野県)
「議会政策サポーター
制度をもとにした政策
提言の実現化」について
5月20日
2
訪問先
調査の目的
芽室町議会基本条例及び議会活性化計画に基づき、情報通信技術(ICT)の推
進を図りつつ、会議の効率化情報通信技術を進める先進議会の調査研究及び住
民と議会をつなぐ議会運営を進め、
「住民に開かれ、分かりやすく、行動する議
会」に向け、今後の本町議会の活動に資することを目的とするものである(関連
条文:議会基本条例第2条「基本理念」、第8条「町民参加及び町民との連携」、
第9条「議会広報の充実」、第 24 条「議会改革及び活性化の推進」)。
3
事務調査先の概要
(1)
滋賀県大津市
大津市は、近畿地方の水瓶である琵琶湖の南端に位置し自然環境に恵
まれる一方、世界遺産の比叡山延暦寺をはじめ、石山寺、三井寺、義仲寺
などを有し、さらに近江大津宮への遷都、東海道五十三次の宿場町など京
都、奈良に次ぐ文化財の宝庫でもあり、平成 15 年には全国で 10 番目と
なる古都指定を受けた。
大津市は、明治 31 年の市制施行以来、4回に及ぶ市町村合併を経て平
成 18 年には志賀町と合併し、都市基盤を整備し、平成 21 年度に中核市
に移行した。面積 464.10km²、総人口 342,343 人、総世帯数 141,497 人
(平成 27 年 4 月 1 日現在)。市議会議員数 38 人。
(2)
長野県飯綱町
飯綱町は、長野県の北部、飯綱山から斑尾山までの穏やかな丘陵地に位
置し、東西 13.9 ㎞、南北 15.6 ㎞、面積 75.00km²を有する。西南は長野
市、北は信濃町、東は中野市に隣接し、平成 17 年に牟礼村と三水村の2
2
村の合併により町制を施行した。気候は、日本海の影響を受ける積雪寒冷
地で、内陸性のため寒暖の差が大きい。基幹産業は、りんご・水稲をはじ
めとする農業であり、飯綱東高原の温泉、スキー場、ゴルフ場など年間を
通じて多くの観光客が訪れる。総人口 11,833 人、総世帯数 4,162 世帯(平
成 27 年 4 月 1 日現在)。町議会議員数 15 人。
4
滋賀県大津市議会の調査結果の概要
(1) 議会改革・活性化の取組概要
大津市議会は、①議会の政策立案機能の強化、②議会審議の活性化、③
議会活動の透明性向上を目指し、議会活性化検討委員会を設置している。
大津市議会の議会改革・活性化の取組としては、議会基本条例の制定を
はじめ、平政策検討会議の設置による政策立案機能の強化、予算決算常任
委員会の設置、3大学とのパートナーシップ協定締結、会議規則の条例化、
子どものいじめの防止に関する条例制定(議員提案)、通年議会制の導入、
議会 BCP(業務継続計画)策定と災害等対策基本条例の制定(議員提案)
及びタブレット導入等の議会 ICT 推進、平成 25 年度の第8回マニフェ
スト大賞において、
「市議会と大学との連携による議会からの政策提案の
しくみ」で議会グランプリを、平成 26 年度の第9回同賞において「議会
BCP(業務継続計画)策定」により、優秀復興支援・防災対策賞を受賞す
るなど議会改革のトップランナーとして全国の自治体議会から高い評価
を得ている。
(2) 議会業務継続計画(議会 BCP)
大津市議会の議会改革・活性化策中の「議会業務継続計画(Business
Continuity Plan 以下「BCP」という。)の策定は、二元代表制の一翼を
担う議会としての危機管理体制を全国で初めて構築したことで注目を浴
びている。
大津市議会は、平成 23 年3月 11 日に発生した東日本大震災後、全国
の自治体で議会開会とともに専決処分のあり方や議会及び議員の行動指
針が課題とされたことから、議会改革策に位置付け、議事・議決機関、住
民代表機関としての議会が迅速な意思決定と多様な住民ニーズの反映に
資する議会の機能維持を図るべく、議会の組織体制や議員の行動基準な
どを大津市議会業務継続計画(以下「議会 BCP」という。
)として策定し
た。
大津市議会の BCP 計画は、震度5強以上の地震や台風などの風水害を
はじめ、自然災害以外の大規模火災・原子力災害・感染症・大規模テロな
3
どの災害を想定し、災害発生時の議会の業務継続の体制、活動基準を定め
たものである。
大津市議会では、市災害本部の設置後、速やかに議会の災害対策会議を
設置(委員長は議長)する。対策会議は、正副議長と各会派代表者で構成
し、議員の安否確認や災害情報の収集、市災害対策本部との連携、本会議・
委員会の開催や協議事項などを協議する。対策会議の委員長及び議会事
務局長が不在などの場合に備え、4段階の指揮・命令の順位を定めている。
一方、災害時の議員の基本的行動では、対策会議からの参集指示がある
までは、地域における活動に積極的に従事し、市が掌握できない災害情報
について地域活動を通して収集し、対策会議の議員は、対策会議の任務に
当たることなどを列挙している。
災害時に議員が個別に市災害対策本部に情報提供すると、支障となる
ケースもあることから緊急時を除き、可能な限り、議会災害対策会議を窓
口に対して行うこととしている。
BCP 計画は、災害発生後7日から1か月の間で議会機能の早期復旧を
図るとし、東日本大震災後に被災自治体が専決処分を乱発した事態を招
かないようにしている。これらを担保しているのが、後に述べる議会 ICT
(タブレットなど)の導入であり、連絡体制や情報収集・共有に活用して
いる。平成26年度は議場での防災訓練を行い、平成27年度には議会防
災グッズを全議員に配布し終え、机上訓練・図上訓練も行う予定である。
大津市議会「議会 BCP」の体制
4
議会 ICT(タブレット端末機器導入等)
大津市議会の ICT 化は、平成 24 年度から取り組み、本会議場への大
型スクリーン(150 インチ)の設置をはじめ、電子採決システムと個別
賛否表示システムを導入した。平成 25 年度には、本会議場の音響設備
を全面改修し、赤外線マイク・関連資料の電子化によるペーパーレス化
を果たし、議会運営の効率化を図っている。本会議場では、一般質問及
び質疑で補足資料の投影とインターネット配信も開始し、これらの取
組により、録画アクセス件数は飛躍的に伸びた。
平成 26 年度には、SNS(ツイッター・ライン)配信とタブレット端
末・スマートフォンによるインターネット議会中継の視聴を可能とし、
タブレット端末機器を導入した。
大津市議会のタブレット端末機器の導入の目的は、次の3点である。
①環境への配慮 ②情報伝達の即時化 ③議会運営の効率化
大津市議会では、タブレット端末機器の導入により、議会関連資料を
電子化するペーパーレス化と、文書保存・管理の効率化や議会運営の効
率化を図るため、本会議や委員会等で使用する「会議(同期)システム」、
「議事内通信システム」、議会のスケジュールやファイル管理、さら
に災害時の情報収集・緊急時の連絡のためのメールや掲示板などのグ
ループウエアを導入し、多角的な活用を図った。
(3)
(4)
①
議会改革・活性化策
政策検討会議
大津市議会では、平成 22 年度に議会からの条例提案や政策提言を行
う機関として「政策検討会議」を設置した。同会議は、政策提言につい
て、具体的なテーマを提案した会派から座長を選出して議論を進め、全
会派からも当該テーマに詳しい議員をメンバーとして選出し、より深
い議論を行うべく制度設計したものである。
大学との包括連携事業とも連動し、ワークショップ形式を取り入れ、
ポストイットを活用する会議体制へと改革し、議員間討議を進めなが
らまとめ上げた。代表的な成果としては、平成 24 年度の「大津市子ど
ものいじめの防止に関する条例」
、
「議員政治倫理条例」
「災害時対策基
本条例」及び「議会 BCP」の制定などが挙げられる。
②
会議条例と会議規程の整理
議会基本条例制定の前段階として、議決を求めるべき事項及び住民
の直接請求権の対象とすべき事項については「会議条例」に、議決を
5
求めるまでもない事項や先例、申し合わせ事項については「会議規
程」に統合するかたちで「会議規則」を分離し、例規の整備を行っ
た。
③
議会報告会
現在、参加者の固定化や議論内容の個別化の問題から、地域単位か
ら団体・組織単位などへの改正に向けて、整理中である。
大津市議会 ICT 化の取組経緯
議会 ICT 化に向けた経緯
1
・平成 25 年 5 月 赤外線、47 型液晶モニター、議会中継及び投票システムを導入
・平成 26 年 2 月 大型スクリーンを設置、個別賛否表示システムを導入
・平成 26 年 11 月 本会議・常任委員会でタブレット端末機器を導入
第1期議場 ICT 化改修
・平成 25 年 4 月 1 日から同年 5 月上旬 物品入札→リース入札 約 26,500 千円
・ハード部門 赤外線マイク、ハイビジョンカメラ
・ソフト部門 音声・テロップ・カメラの操作が一括可能なタッチパネルソフト
投票ソフト
第2期議場 ICT 化改修
・平成 26 年 1 月上旬から同年 2 月上旬 物品入札→リース入札 約 9,300 千円
・ハード部門 150 インチ大型スクリーン、プロジェクタ―設置
・ソフト部門 議員の個別賛否表示システム導入・速記者を廃止(年間 110 万円節約)
議場 ICT 化の概要
1
2
3
電子採決システムで議員の個別賛否表示を導入 → 議案ごとに各議員の賛否を
公式記録として明示
一般質問等における資料映像等を投影
議場内補足資料を投影 → 傍聴者やインターネット議会中継閲覧者に対して、
分かりやすい議会を示す
大型スクリーンによる議場の多角的活用 → 議会 BCP 運用を視野に入れた災害
対応や議員研修会・視察受入での活用
タブレット端末機器の導入
・会議(同期)システム・グループウエア・議場内通信システムの導入
目的
・「環境への配慮」「情報伝達の即時化」「議会運営の効率化」に寄与する。
内容
・タブレット端末 台数 74 台 LTE モデル(議員、登壇部長、機器防災所管部局等)
・端末モデル プロポーザル審査委員会で決定(iPad Air64GB 日立システムズ(株)
・所有権 大津市(窓口は議会事務局、セルラー会社(au)と市が法人契約)
6
・使用方法
庁内(本会議・委員会等)、庁外(24 時間電源投入、外出時常に携帯)
会議(同期)システム
・タブレット端末を一括に操作
・親機と子機を連携「同期」。会議の円滑・迅速化に寄与。
議場内通信システム
・本会議等におけるタブレット間のメッセージを送受信
・議長、議員、議会事務局、市長・部長、議場外配置間でメッセージを送受信
グループウエア
・メール機能、カレンダー、掲示板、アドレス帳、ファイルサーバー、議会日程などの
スケジュールをカレンダー機能で同期
・メールを活用し、緊急・重要情報を迅速に送信(議会 BCP にも活用)
・議案書や予算・決算資料などをファイルサーバーに保存。随時、保存・閲覧可能
・クラウド上のソフトとし、ID・PW でタブレット以外からでもアクセス可能
その他
・議員の通信費用は、議員個人負担 1/2、政務活動費 1/2 とする。
・適用する会議 本会議、予算決算常任委員全体会・分科会、議会運営委員会、常任委
員会、特別委員会、全員協議会
・電子化する資料 議案書、予算決算資料、委員会所管事務調査資料、その他説明資料
予算
・5 年間総額 約 1,690 万円(通信料除く)
・Wi-Fi 工事、開発等初期導入費 473 万円(5 年間のリース総額)
・クラウド・会議システム・グループウエア利用料 1,217 万円(5 年間のリース料)
2,740 円/1 台・1カ月 202,780 円/74 台・1カ月
・通信料 約 5,960 円/1 台・1カ月(最初の 2 年間)
約 4,860 円/1 台・1カ月(3 年目以降)
5 年間総額 約 2,355 万円/74 台・5 年間
コストメリット
・年間 50 万ページ・約 200 万円以上の紙代、人件費・通信費・電気代のコスト削減化
業者
・システム会社:(株)日立システムズ、サイボウズ(株)
・ソフト名:会議(同期)システム→スマートセッション
議場内通信システム→スマートセッション
グループウエア→サイボウズオフイス
・タブレット端末:アップル製 iPad Air64GB ・セルラー会社:au by KDDI
議場内通信システム
本会議場内で、議長や議員、市長や執行機関説明員の使用タブレット端末に、議場内外
から一斉または個別にメッセージ等を送受信(①議事進行上の指示、会議休憩の連絡)
7
4議会のタブレット導入取組比較(H26-27)
H26 調査
H26 調査
H26 調査
H27 調査
逗子市議会
飯能市議会
流山市議会
大津市議会
目的
ペーパーレス化
会議効率化
ペーパーレス化
市民参加
ペーパーレス化
ペーパーレス化
議会運営の効率化
庁外緊急連絡用
Wi-Fi Cellular モデ
システム面
Wi-Fi Cellular モ
デル
クラウドシステム
ル
NAS(Network
Attached
Storage)
会議同期システム
NAS(Network
クラウドシステム
Attached
会議(同期)システ
Storage)
ム・グループウエア
議場内通信システ
ム
議場を含む本庁舎
2・3・4 階
データ取得
Wi-Fi 機能でも取得
どこでも取得可能
インターネット回
線
本庁舎 4・5 階
本庁舎 4・5 階
Wi-Fi 機能で取得
Wi-Fi 機能で取得
どこでも取得可能
LTE モデル
クラウド上ソフト
ID・PE でタブレッ
ト以外からでもア
クセス化
タブレット機種等
Softback モ バ イ
ル
iPad Retina ディ
スプレイモデル
64GB
Wi-Fi+Cellular
モデル
docomo アロウズ
tab LTE F-01D
端末管理サービス
SPPM2.0
貸与方式
docomo アロウズ
ipad Air 64GB
tab F-01D
日立システムズ(株)
OS:アンドロイド
所有権は大津市
3.2
(窓口は議会局)
64GB
Wi-Fi モデル
セルラー会社(au)と
貸与方式
市が法人契約
運用費用等
貸与方式
通信料
クラウド契約料
通信料・ネットワ
ーク保守料・セキ
ュリティ料
通信料
通信料
クラウド契約料
比較考察
飯能市議会では、議会運営面で環境面からの紙資源の減量化を目的としたタブ
レット端末導入を切り口に議会改革を進め、経費削減を果たし、その効果額を明確
に市民に伝えている。議会が主導しながらも、執行機関側もタブレット端末を導入
し活用していることで流山市議会よりも進んでいるといえる。
逗子市議会も紙資源の減量化に加えて印刷に係る職員の労務コストの軽減を重
8
視し、タブレット端末を導入し、会議そのものの改革に着手している。市長をはじ
め、執行機関と協調しながら、本会議をはじめ各会議で活用し、議論の深化と効率
化につながっている。さらに、クラウド文書共有システムの開発により、議員がス
トックされた情報をもとに市民への議会報告会を行うなど機動力を発揮してい
る。各会議では、タブレット端末とプロジェクターを活用している点も先進的な議
会といえる。
大津市議会の特徴は、同期システム、グループウエア及び議場内通信システムに
ある。これにより会議の無駄な休憩時間を排除し、効率化につながっている。さら
に、災害時における議員による情報収集や議員間の緊急連絡などにも活用し、議会
BCP と連動している点に特徴がある。
4 市議会に共通している点として、執行機関側の理解と協力体制が挙げられ
る。
大津市議会「議会 ICT 化プロジェクト」全体像
議場内通信システム
9
①
③
④
②
⑤
①大津市議会議会局職員
④電子採決パネル
リーン
②説明を聴く本町議会運営委員
③議員に配布する防災グッズ
⑤大津市議会局職員と本町議会運営委員及び事務局職員及び本会議場大型スク
10
5
長野県飯綱町議会の調査結果の概要
(1)
議会改革・活性化の取組概要
飯綱町議会は、住民に信頼される議会を目指して、
「学ぶ議会」を合言
葉に平成 20 年度から8項目を掲げながら議会改革に本格的に取り組んで
いる。平成 22 年度に政策サポーター制度をスタートし、
「政策サポータ
ー制度による政策提言」を行い、平成 24 年度に「3団体協働によるシン
ポジウム開催」、平成 26 年度には「飯綱町集落振興支援基本条例の制定
(議員提案)」するなど、住民参加により政策提案機能を高め、全国の地
方議会から注目を集めている。
議会基本条例では、①住民に開かれた議会、②町長と切磋琢磨する議会、
③住民の声を行政に反映する議会、④飯綱町の民主主義と住民自治発展
の推進力となる議会像を掲げながら改革を進めている。
(2)
「学ぶ議会」への動機
飯綱町は、平成 17 年度に牟礼村と三水村が対等合併により誕生した町
である。合併直後、旧牟礼村側の第3セクター(スキー場)の経営破たん
が表面化し、損失補償していた飯綱町が金融機関から訴訟された。町は全
面敗訴し、約8億円の負債を被り、町議会はチェック機能を果たせず住民
から批判の的となった。
このことが、議会が本格的な議会改革に着手した動機となり、議会運営
のルールづくりを進める一方で、学習や研修、先進地視察、自由討議など
を積極的に行い、議会改革の論点化により8項目の取組課題を定め、議会
改革を住民に約束した。
(3)
政策サポーター制度
飯綱町には 50 の集落が存在する。議会では、15 人の議員があらゆる分
野や階層の住民要望を幅広く把握することが可能か、議会構成が町民の
縮図となっているのかなどが課題とされた。これらの課題解決に向けて、
平成 20 年度に町民による政策サポーター制度を創設し、政策提言に向け
て住民の協力を求め、議会への住民参加を促した。
政策サポーター制度では、まず議会側が研究テーマを設定する。平日の
夜間に政策サポーターと議員が自由討議を行い、政策提言書をまとめ、町
長に提出するものである。
第1回政策サポーター会議(平成 23~24 年度)は、公募2人に要請 10
人の計 12 人のサポーターが、
「行財政改革の推進」と「都市との交流・人
11
口増加」をテーマに議論した。その議論結果をまとめ、政策提言書を作成
の上、町長に提出した。平成 24 年度には、「分権時代に住民自治と町の
発展をめざす」と題したシンポジウムを開催し、人口増対策と集落支援策
を考えるきっかけになった。
第2回政策サポーター会議(平成 25~26 年度)では、公募3人と要請
12 人の計 15 人のサポーターが「新たな人口増対策」をテーマとする会
議(町民7人・福祉文教常任委員7人)と「集落機能の強化と行政との協
働」をテーマとする会議(町民8人・総務産業常任委員7人・議長)を開
催の上、論点化し、町長に政策提言書を手交した。
飯綱町議会「議会政策サポーター制度」概要
12
(4)
議会だよりモニター(57 人)設置
議会だよりモニターは、住民との結びつきを深め、住民の意見を議会だ
より及び議会活動に反映させることを目的に設置している。平成 22 年度
に 10 人を設置したが、平成 26 年度には 57 人に増員した。毎回、アンケ
ートへの回答を求め、併せて議会への要望事項も聴取し、3 年間で 158 項
目の要望が寄せられた。
各議員がモニターにアンケートを直接配布、回収しており、密接な関係
を築いている。寺島渉議長は、モニター制度により議会に興味を持っても
らい、議会への応援団を増やすこともねらいとしている。さらに、議会か
らの政策提言により、執行機関側も政策に取り組みやすくなるのではな
いかと述べている。
飯綱町議会「議会だよりモニター制度」概要
13
(5)
政策提言書の手交
町長への政策提言書の手交は、平成 21 年度から行っている。その直後
の平成 22 年度に政策サポーター制度を導入し、「新たな人口増対策」に
ついて6回の協議により。提案をまとめ、次年度予算に反映させるべく政
策提言書を町長に手交した。
重点施策(事業)として、延長保育料の無料化、保育料の軽減策の導入、
福祉医療費助成対象者の拡充などを提言した結果、延長保育の無料化は
予算化され実現に至った。
「集落機能の強化と行政との協働」の検討は、執行機関側の企画財政課
が中心となり、50 集落を対象とした集落アンケート及び集落懇話会など
を開催し、集落の課題をまとめ上げ、課題解決策について協議の上、提言
した。
「行政の役割と取り組むべき課題等」では、集落の自然環境やインフラ
機能の維持、定住促進に加え、課題ごとに近隣集落と連携の促進、集落支
援室の設置、職員地域担当制の設置による機能化、集落活性化計画の作成
と推進を求めた。
(6)
集落振興支援策
議会としても政策サポーター会議の提言書を踏まえ、集落振興支援基
本条例案を住民との懇談会を経て作成し、平成 26 年度に議員提案の上、
議決した。町長には、集落プログラム作成を求め、財政措置と町民意見の
施策への反映を盛り込むとともに町民への公表を求めた。
(7)
議会改革・活性化策
飯綱町議会は、そのほかに夜間・土日議会の開催、一般質問の進行管理、
町民と議会との懇談会の開催も積極的に進めている。
①
②
③
①飯綱町議会全議員が
対応
②説明する寺島渉飯綱
町議会議長
③寺島議長と本町議会
議運委員等
14
5
調査のまとめと今後の取組
(1) 議会 BCP について
大津市議会 BCP は、災害時における議会の役割を明確にするものであり、
議会として災害時の情報収集をはじめ、対応状況・避難状況・以降の予報と
動向を把握し、早期の災害復旧・復興について、執行機関とともに取り組む
ものである。
議会が、大規模災害時に迅速な意思決定と多様な町民のニーズへの反映
を果たすべく、予め、災害時の議会内の組織体制や議員の役割、行動指針等
を定めておくことは極めて重要である。
大津市議会は、BCP 計画の策定にとどまらず、実効面として、議場内の
避難訓練の実施及びタブレットを活用した訓練を計画している。さらに、自
然災害のほかに大規模事故及び感染症などへの危機管理をも想定したもの
となっている。大津市災害等対策基本条例を議員提案により可決し(平成 27
年2月通常会議)、市民・事業者・市・議会がともに災害や危機に対し、地
域防災力の向上に寄与する姿勢が感じられる。
本町議会においても、災害の初動期に町災害対策本部の活動に支障とな
らないよう体制を十分に考慮しながら、議会 BCP の検討に取り組むべきも
のと考える。
議会 ICT(タブレット導入)について
大津市議会 ICT は、市民への最新の議会情報の提供と議会情報の一元化
を図り、議会および議員活動の積極的展開と事務の合理化・効率化を推進す
るものである。タブレット導入は、議会報告と町民との意見交換で活用する
ことにより、議会のオープン化につながる。その導入には、目的と手段を混
同せず、住民・議会・執行機関との関係を踏まえた上で、多様な民意を吸い
上げ、議論する手段の一つとして有効であると考える。
議会には、議員間討議の不足等の課題があり、この課題解決の方向性とし
て、①議論方法の定式化、②住民参加の導入、③基盤となる情報化の整理が
必要となる。この課題に対して、①議員間討議による政策形成プロセスの定
式化、②住民参加の戦略的活用法、③政策形成プロセスに応じた情報通信技
術の活用等の整備が求められる。
若生幸也氏(本町議会サポーター)は、議会 ICT の取組について、
「住民
と議会との接点拡充」と「議会内部(総務課を含む)の効率化」に大別して
いる。昨年度、調査した3市議会のうち流山市議会については「住民と地方
議会との接点拡充」、飯能市議会および逗子市議会については「議会内部の
(2)
15
効率化」を目指す傾向といえ、今回調査した大津市議会については、
「会議
の効率化(特に議場内通信システム)」に加え、
「議会 BCP との連動性」が
大きな特徴といえる。
なお、本町議会では、議会ホームページのリニューアルと情報の充実化
(コンテンツの充実及びスマートフォン・タブレット対応)のほか、(1)
ウェブサイト(CMS 導入)の一部導入、(3)フェイスブック開始、(4)
動画中継・録画等の実現化により、早稲田大学マニフェスト研究所による議
会改革度調査 2014 年度の調査において、全国トップレベルとの評価を得て
いる。
議会 ICT は、機材及びタブレット端末を導入することではなく、
「町民に
開かれ、町民が参加できる議会」とするための議会改革の一手段である。し
たがって、議会改革・活性化策としての議会 ICT 推進の理念と目標および
手段として議会 ICT 推進計画のバージョンアップを図る必要もある。さら
に、その戦略を議員間で共有し、全議員が使いこなし、町民の福祉向上に向
けることが必然となる。
当委員会では、先進議会を調査し、平成 27 年度総合計画実行計画(議会
費)に計上した。それに呼応するかたちで「芽室町役場 ICT 計画(平成 27
年6月2日決定)」にタブレット導入の計画が盛り込まれたところである。
本町議会としては、先進地事務調査を踏まえて、執行機関と連動しながら、
「芽室町議会 ICT 計画」の実行化を目指すものであるが、その前提として、
町民に対し、十分な説明を果たすことは必然である。
(3)
住民と議会をつなぐ今後の手法について
飯綱町議会は、執行機関に対し政策提言を積極的に行っている。
その提言の根底にあるのが、議会政策サポーター制度及び議会だよりモ
ニター制度であり、これにより町民の要望・提案をくみ取り、政策化するも
のである。町側もまた、議会の姿勢を尊重し、対峙することなく議会提案に
応じ、二元代表制を念頭にしたまちづくりを進めている。
本町議会が、平成 24 年度に設置した議会モニター制度は、主に議会運営
面の改革を念頭に進めてきたが、今後は政策提言をも含めた制度改革の必
要性がある。今年度の議会モニター設置については、今回の調査結果を生か
し、政策提案・立案機能を含め、各常任委員会との連携体制を整備する考え
である。さらに次年度に向けて、増員も検討する。
本町議会は、「町民の思い・願い」を確実に政策化する積み重ねが必要で
ある。政策の実現化により、町民に二元代表制の一翼を担う議会が理解され、
その存在意義が明確になると考える。
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