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次世代システム研究所 - 九州国際大学 Kyushu International University
次世代システム研究所 所 報 第4号 2006.10 学校法人九州国際大学 文化交流センター/次世代システム研究所 次 世代 シ ス テ ム研 究 所 所 報第 4 号 発 刊に よ せ て 平 成 1 3 年 4 月 15 日 の 次 世 代 シ ス テ ム 研 究 所 設 立 か ら 5 年 を 経 過 し た 。 当 研 究 所 設立 の 経 緯 は、 経 済 問 題と 環 境 問 題を 統 合 的 に 解決 す る こ とを 目 的 に 青年 会 議 所 な ど が 中 心 に 展 開 し て き た 市 民 活 動 ・ EC O- ECO 研 究 会 に 起 源 が あ る 。 ECO -EC O( Eco no my as Eco lo gy) 理 論 の 中 か ら は 「 ス ト ッ ク 型 社 会 論 」 と い う 新 概 念 が 形 成さ れ た 。 その 理 論 的 検証 と 具 現 化に 向 け た 理 論形 成 の た めに 、 大 学 ・行 政 ・ 民 間企 業 ・ 研 究機 関 等 か らの 科 学 技 術・ 社 会 技 術 の専 門 家 を 中心 に し た 次世 代 シ ス テ ム 研 究 会 が 平 成 12 年 春 に 発 足 し た 。そ の 各 種 領 域 で の 研 究 成 果 を 政 策 展 開 す る ため に 研 究 拠点 が 求 め られ 、 ( 学 )九 州 国 際 大 学 に 当 研 究 所 が 設 立 さ れ た の で あ る 。こ の 経 緯 は次 世 代 シ ステ ム 研 究 所報 第 1 号 「 次世 代 シ ス テム 研 究 所 報発 刊 に よ せて 」 に 記 した と お り であ る 。 従って当 研究所 のミッ ションは 、上述 の各研 究会をは じめ産 学官民 の研究機 関 ・研 究 者 と とも に 、「ス ト ッ ク型 社 会」に 向 け た 基礎 研 究 ・ 応用 研 究 ・ 政策 展 開 を 実践 す る こ とに 在 る 。 当然 な が ら 、こ れ は ( 学 )九 州 国 際 大学 に お け る組 織 規 程 等に 明 記 さ れて い る ミ ッシ ョ ン で ある 。 そ こ で この 研 究 所 の過 去 5 年 間の 活 動 を 総括 し て み たい 。 つ ま り学 校 法 人 (教 育 機 関 ) の研 究 所 と して 、 地 域 およ び 社 会 全体 に 貢 献 でき る 先 駆 的な 課 題 を 研究 し 、 実 践 的な 政 策 を 社会 に 提 言 ・発 信 で き たか 、 そ の 目的 達 成 度 を概 略 評 価 して み た い 。 ( 環境 ・ 自 然 形成 ・ 資 源 自立 モ デ ル の事 例 ) 平 成 13 年 度 ∼14 年 度の 経 済 産 業省 受 託 研 究事 業 に お い て、 「臨 海 工 業 地帯 に お け る 自 然 共 生 型 環 境 創 生 の た め の 調 査 事 業 」お よ び 「産 業 廃 棄 物 系 資 源 を 活 用 し た 自 然 共 生 技 術 の 調 査 」等 を 実 施 し 、生 物 の 生 息 に 適 さ な い 環 境 で 自 然 形 成 を 促 進 す る 理 論 と 技 術 を 研 究 し た 。 そ の 結 果 は 平 成 15 年 度 の 北 九 州 市 の 「 鳥 が さ え ず る 緑 の 回 廊 計 画 」 と し て 政 策 化 さ れ 、平 成 16 年 度 に 実 行 計 画 ワ ー ク シ ョ ッ プ 、17 年 度 に 設 計 、1 8 年 度 予 算 で そ の 一 部( 響 灘 D 地 区 / 産 業 廃 棄 物 最 終 処 分 場 跡 地 ) が 着 工 し、 基 本 研 究か ら 政 策 策定 、 実 施 まで 一 貫 し た 展開 の 事 例 とな っ た 。 同様 な 事 例 で宗 像 市 に おけ る 環 境 保全 と 地 域 活性 化 モ デ ル 、曽 根 ・ 和 白・ 今 津 等 の干 潟 に お け る 総 生 物 量 測 定 と 保 全 ・ 利 用 技 術 の 研 究 ( 生 物 学 と OR 、 航 空 測 量 ・ 光 分 析 ・ 画 像 処 理 等 の 組 み 合 わ せ )、風 力 発 電 環 境 評 価 モ デ ル の 開 発( バ ー ド ス ト ラ イ ク の 予 測・ 評 価 ) ほか 、 い ず れも 当 研 究 所オ リ ジ ナ ル の理 論 と 技 術を 開 発 し 、そ の 結 果 は社 会 に 受 け入 れ ら れ 展開 ・ 実 施 され て い る 。 ( 中心 市 街 地 再生 / 町 づ くり モ デ ル 事例 ) 当所 報 第 1 号で 述 べ た よう に 、 中 心市 街 地 再 生 /町 づ く り の論 理 モ デ ルに よ る 展 開と し て は 当地 で 最 初 のケ ー ス で ある 。 藤 田 商 店街 で は 、 現在 そ の 具 体的 実 施 の 段 階 に 至 っ て い る 。ま た そ れ ら の 経 験 を 踏 ま え 、平 成 1 6 年 度 に は 文 部 科 学 省 支 援 事業 を 得 て 「街 づ く り 実践 講 座 」 テキ ス ト を 作 成し 、 副 都 心黒 崎 開 発 推進 会 議 関 係者 お よ び 一般 市 民 を 対象 に 、 当 研究 所 に お い て 22 回の 講 座 を 開講 し た 。 1 ( スト ッ ク 型 社会 モ デ ル の研 究 ) 当 研究 所 の 主 テー マ と し て、 社 会 シ ステ ム 転 換 の 必要 性 、 具 現化 技 術 ( ハー ド 面 )、転 換 に 向 け た 経 済 手 法・社 会 制 度 等( ソ フ ト 面 )、転 換 へ の 政 策 プ ロ セ ス 等 々 を 各専 門 分 野 との 協 業 で 幅広 く 展 開 して き た 。 具 体的 に は 、 基礎 領 域 研 究の た め に 平 成 1 4 年 度 の 「 研 究・技 術 計 画 学 会 年 次 大 会 」 を 北 九 州 市 に 誘 致 し 理 論 形 成 を 図 っ た。 そ れ ら を基 に 各 分 野に お い て 応用 研 究 が 進 み、 そ の 結 果は 国 土 形 成計 画 法 プ レ ス タ デ ィ「 20 30 年 の 日 本 の あ り 方 を 検 討 す る シ ナ リ オ 作 成 に 関 す る 調 査 」や 宮 城県 「 み や ぎ型 ス ト ッ クマ ネ ジ メ ント 」 等 に 反 映さ れ て き た。 当 北 九 州市 に お い ても 八 幡 東 区を 対 象 に した ス ト ッ ク型 都 市 圏 モ デル に 関 す る受 託 研 究 が昨 年 度 は 展開 さ れ 、 本年 度 も そ の延 長 上 の 受託 研 究 ( 内 閣官 房 ・ 都 市再 生 本 部 )が 決 ま っ た。 こ れ ら を通 し て 更 に研 究 結 果 を得 、 具 体 的 な政 策 提 言 を行 え る も のと 考 え て いる 。 ( スト ッ ク 型 街区 お よ び 建築 の 研 究 ) 人口 減 少 社 会に 向 け 持 続可 能 な 市 街地 の 形 成 と 社会 の ス ト ック と な る 良質 な 住 宅 市街 地 の 形 成に 向 け 、 スト ッ ク 型 街区 、 ス ト ッ ク型 建 築 の 研究 を 行 な った 。 1 6 年 度 、1 7 年 度 は 北 九 州 市 の 助 成 を 受 け「 ス ト ッ ク 型 社 会 向 け た 社 会 シ ス テ ム の 評価 ・ 格 付 け法 の 研 究 」を 行 な い 、ス ト ッ ク 型 社会 に 向 け た社 会 イ ン フラ の 要 件 を整 理 し 、 住宅 の 評 価 シス テ ム を 構築 し た 。 そ の試 行 お よ び普 及 の た めに 、 北 九 州青 年 会 議 所と 連 携 し て「 北 九 州 スト ッ ク 型 住 宅コ ン テ ス ト」 を 実 施 し、 そ の 成 果 を 日 本 建 築 学 会 技 術 報 告 集 、研 究・技 術 計 画 学 会 年 次 大 会 で 発 表 し た 。ま た 、 同 じく 両 年 度 にわ た っ て 、ス ト ッ ク 型住 宅 の 普 及 促進 の た め に西 日 本 ト ータ ル リ ビ ング シ ョ ー に「 ス ト ッ ク型 住 宅 コ ーナ ー 」 を 開 設し た 。 さ らに そ の 成 果を 踏 ま え 、18 年度 か ら は 北九 州 設 計 監理 協 会 有 志と 「 ス ト ッ ク型 建 築 研 究会 」 設 立 し、 ス トッ ク 型 建 築の 実 用 化 研究 を 行 な って い る 。 ま た 、 17 年 度 か ら 19 年 度 ま で の 3 ヵ 年 計 画 で 国 土 交 通 省 の 助 成 を 受 け た ス ト ッ ク型 建 築 の 要素 技 術 開 発研 究 プ ロ ジェ ク ト 「 ス テン レ ス 鋼 鉄筋 を 使 用 した 長 寿 命 型建 築 構 造 体の 開 発」 ( 社 団 法 人 ス テ ン レ ス 構 造 建 築 協 会 )に 参 加 し 、現 在 そ の 評 価手 法 の 研 究を 行 な っ てい る 。 そ う し た 研 究 お よ び 実 践 活 動 の 成 果 を 踏 ま え 、1 7 年 度 よ り 、良 好 で 持 続 的 な 市 街 地形 成 を は かる た め の 手法 と し て 、ス ト ッ ク 型 建築 と 周 辺 街区 施 設 を 一体 的 に 整 備・運 営 す る ス ト ッ ク 型 街 区 の 整 備 手 法 を 研 究 す る た め に 、 「ス ト ッ ク 型街 区 研 究 会準 備 会 」 を設 立 し 、 新日 鉄 都 市 開発 ・ 新 日 鐵 住金 ス テ ン レス の 受 託 を受 け て 予 備研 究 を 行 ない 、 研 究 報告 書 「 持 続可 能 な 社 会 の形 成 に 向 けた 市 街 地 の整 備 に 関 す る 研 究 」を ま と め た 。18 年 度 は そ の 成 果 を も と に 大 学 と 連 携 し 北 九 州 市 八 幡 東 区を 対 象 に した 「 長 寿 命ス ト ッ ク 型市 街 地 の 事 業化 調 査 」 を都 市 再 生 モデ ル 調 査 に提 案 し 採 択さ れ た 。 現在 そ の 調 査・ 研 究 を 実 施中 で あ る 。 さら に 、 社 団法 人 日 本 プロ ジ ェ ク ト産 業 協 議 会 と連 携 し 、 スト ッ ク 型 街区 の 普 及 のた め の 制 度研 究 会 を 立ち 上 げ る べく 活 動 中 で ある 。 2 ( スト ッ ク 型 社会 転 換 に 向け た 世 論 形成 ) スト ッ ク 型 社会 転 換 は 我が 国 の パ ラダ イ ム 転 換 に相 当 す る ため 、 単 な る理 論 形 成 (シ ー ズ 創 出) で は そ の目 的 を 達 成で き な い 。 その た め 世 論の 啓 蒙 ・ 理解 を 深 め 国民 の 側 か ら求 め ら れ る政 策 ( ニ ーズ 形 成 ) と なる 必 要 が ある 。 そ こ で以 下 の 事 例の よ う な 幅広 い 世 論 形成 を 展 開 して き た 。 次世 代 シ ス テム 研 究 会 は当 研 究 所 発足 以 来 、 隔 月の 定 例 研 究会 を 欠 か さず 、 ま た 年に 一 度 は 九州 経 済 産 業局 や 北 九 州市 産 学 官 連 携セ ン タ ー との 共 催 ・ 後援 に よ る シン ポ ジ ウ ムを 開 催 し てき た 。 次 世代 シ ス テ ム 研究 会 東 京 部会 で は 、 東京 在 住 の 会員 と 内 閣 府・ 国 交 省 等の 現 役 の 官僚 を 交 え た 定期 研 究 会 を継 続 し て 開催 し て き た。 シ ン ポ ジウ ム や 講 演会 は 、 こ の他 に も 各 種 の学 会 ・ 業 界・ 市 民 団 体を は じ め 各地 の 自 治 体や 労 組 等 々か ら の 依 頼を 受 け 開 催 して き た 。 また 高 校 生 をは じ め 大 学生 や 教 員 など 教 育 関 係、 更 に は 霞ヶ 関 ( 国 交 省政 策 研 究 所主 催 ) で 全省 庁 職 員 を対 象 に し た講 演 会 等 、ス ト ッ ク 型社 会 転 換 に 向け た 世 論 形成 も 効 果 的に 展 開 し てき た 。 こ の他 、 こ の 研究 所 報 を はじ め 、 こ の 5 年 間 で 単 著 5 冊 ・ 共 著 1 冊 を 企 画 出 版 で き た し 、各 種 学 会 誌 論 文 や 各 業 界 紙・新 聞 に 連 載・単 載 さ れ て も き た 。 こ のよ う な 活 動を 通 し て 、未 だ 国 民 のマ ジ ョ リ テ ィの 世 論 形 成に は 至 っ ては い な い が、 幅 広 い 層へ の 理 解 と支 持 を 受 けて き た と 考 える 。 ( 政策 展 開 ) 目的 は 日 本 をス ト ッ ク 型社 会 に 転 換す る こ と に 在る 。 そ の ため に は 、 いか に 美 し い理 論 を 構 築し て も 、 また 限 ら れ た範 囲 の 社 会 を対 象 に 世 論を 喚 起 し ても 意 味 は ない 。 そ の ため 先 ず は 中央 省 庁 と の協 業 を 働 き かけ 彼 等 の 政策 立 案 へ の協 力 を し た 。環 境 省 の 白 書 に「 ス ト ッ ク 型 社 会 論 」が 紹 介 さ れ た の は 平 成 11 年 度 で あ る 。 経 済産 業 省 と は前 述 の 活 動に 加 え 、 今後 は ス ト ッ ク型 経 済 モ デル を 議 論 して い く 予 定で あ る 。 国土 交 通 省 とは 国 土 形 成計 画 法 や 住 生活 基 本 法 に関 す る 支 援を し 、 今 後も 定 期 研 究会 を 続 け る予 定 で あ る。 ま た 内 閣 府や 内 閣 官 房の 都 市 再 生委 員 会 等 とも 良 好 な 関係 を 構 築 して き た 。 しか し な が ら 、日 本 を ス トッ ク 型 社 会に 転 換 す ると い う よ うな 、 各 省 庁を 横 断 す る全 体 最 適 に 相当 す る 政 策は 、 立 法 府に よ り の み実 現 可 能 にな る 。 幸 いこ れ ま で の各 省 庁 と の 展開 お よ び 各分 野 ・ 各 種の 世 論 形 成の 効 果 も あり 、 政 権 与党 の 複 数 の政 策 研 究 集 団か ら の 依 頼も あ り 、 本年 度 に 至 り立 法 府 に 対す る 政 策 提言 の 機 会 を得 る こ と が でき た 。 工学 系 ・ 自 然科 学 系 の 研究 所 は 、 社会 に 採 用 さ れた 研 究 成 果の 質 と 量 で評 価 さ れ る。 そ れ は 社会 科 学 系 の研 究 所 に おい て も 同 様 であ る と 考 えて き た 。 従っ て 当 研 究所 の 研 究 結果 は 社 会 の役 に 立 つ 、つ ま り 地 域 社会 や 日 本 社会 の 具 体 的な 活 動 や 政策 と な る べき 研 究 を 目指 し て き た。 そ れ ら の 研究 の 多 く は、 次 世 代 シス テ ム 研 究会 や 九 州 国際 大 学 内 さら に は 産 学官 民 の 多 岐 にわ た る 皆 様と の 協 業 で、 社 会 に 役立 つ も の とし て 具 現 化さ れ 、 ま た今 後 の 社 会 指針 と し て 期待 さ れ る もの も 多 い と思 っ て い る。 社会 科 学 系 の学 校 法 人 に所 属 す る 研究 所 と し て 、次 世 代 シ ステ ム 研 究 所に 与 え ら れた 当 初 の ミッ シ ョ ン は相 応 に 果 たす こ と が で きた し 更 に 今後 も 、 機 能が 存 続 3 す る限 り 継 続 発展 で き る と考 え て い る。 と ま れ 設 立か ら 5 年 とい う 節 目 の研 究 所 報 第 4 号 の 出 版に あ た り 、こ れ ま で の活 動 を 総 括 する と 同 時 に、 今 日 ま で当 所 の 活 動を 共 有 し 支援 し て 頂 いた 方 々 に 心か ら の 感 謝 の意 を 表 し たい 。 平 成 18 年 10 月 1 日 次 世 代シ ス テ ム 研究 所 所長 4 岡本久人 目 次 Ⅰ.次世代システム研究所所報第 4 号発刊によせて····························1 Ⅱ.ストック型社会形成に関する論文········································5 ○ 「国家 50 年の大計」:ストック型社会形成に向けた日本の政策 岡本 久人(学校法人九州国際大学次世代システム研究所 所長) ···························································· 5 ○ ストック型街区の形成に向けて【サスティナブル型街区の構成と整備効果】 五十嵐 健(学校法人九州国際大学次世代システム研究所 主任研究員) ·························································· 25 ○ ストック型街区の形成に向けて【ストック型街区の構成要素について】 岩下 陽市(九州職業能力開発大学校応用課程居住・建築系 教授) ·························································· 44 ○ ストック型街区の形成に向けて【事業性と事業手法の検討】 坂本 圭(株式会社ソリュート総合研究所 代表取締役 学校法人九州国際大学次世代システム研究所 特別研究員) ·························································· 58 ○ 特定の地域をフィールドとした大学の存在意義について −地域連携アンケート調査の結果から− 神力 潔司(九州国際大学学長事務室 課長) ·························································· 73 ○ 大学の地域貢献に対する住民の意識に関する分析 湯淺 墾道(九州国際大学法学部総合実践法学科 助教授) ·························································· 87 ○ ストック型社会転換の中で持続発展可能な次世代都市を目指した技術開発 石田 康(株式会社日立製作所 理事、 都市開発システムグループソリューション統括本部、 羽衣国際大学客員教授) ·························································· 95 ○ 次世代標準浄水器具の技術開発 斉藤 智樹(株式会社クロスポイント 代表取締役、 社団法人北九州青年会議所 副理事長) ························································· 109 ○ ステンレス鋼棒を用いた RC 構造物の評価に関する研究 五十嵐 健(学校法人九州国際大学次世代システム研究所 主任研究員) ························································· 113 Ⅲ.次世代システム研究会公開講座発表····································137 ○ 次世代システム研究会活動 ············································ 137 ○ 次世代システム研究会第32回研究会(平成17年9月12日) 「ストック型、循環型社会への志向と自然配植」 高田 研一(高田森林緑地研究所 所長、 自然配植技術協会 会長 NPO法人森林再生支援センター 常務理事) ······························· 138 ○ 次世代システム研究会第33回研究会(拡大研究会)(平成17年11月12日) 「ストック型社会の形成に向けての講演会」 ······························· 145 ○ 次世代システム研究会第34回研究会(平成18年 1月21日) 「気候変動と災害リスク −ストック型社会の構築に向けて−」 後藤 祐輔(財団法人日本気象協会調査部 主任技師) ······························· 148 ○ 次世代システム研究会第35回研究会(平成18年 3月11日) 「ストック型社会論の展開 地域分散型「田舎の田舎」モデル 集中と分散」 遠松 展弘(株式会社日建設計 上席理事) ······························· 153 ○ 次世代システム研究会総会・第36回研究会(平成18年 5月13日) 「ストック型街区の形成に向けて」 ······························· 158 ○ 次世代システム研究会第37回研究会(平成18年 7月 8日) 「立法府への政策提言」 岡本 久人(学校法人九州国際大学次世代システム研究所 所長) ······························· 163 「長期的課題のための戦略形成」 平澤 泠 (東京大学名誉教授、 学校法人九州国際大学次世代システム研究所顧問) ······························· 173 Ⅳ.受託調査および研究実績··············································174 ○ 平成17年度 国土交通省住宅・建築関連先導技術開発助成事業 『ステンレス鋼鉄筋による建築用超高耐久 RC 造の開発』 ··················· 174 ○ サスティナブル・ストック型街区プロジェクト 『持続可能な社会の形成に向けた市街地の整備に関する研究』 ·············· 177 ○ さつき松原調査研究業務·············································· 182 ○ 平成17年度産学官連携事業 産学官技術交流会『ストック型社会の形成に向けての講演会』··············· 220 Ⅴ.ストック型社会システムに関する講演活動・出版、著作··················228 Ⅵ.次世代システム研究所の概要··········································230 Ⅶ.終わりに····························································233 Ⅱ.ストック型社会形成に関する論文 【ストック型社会の必要性と効果】 ストック型社会 長 寿 命 化 【具現化・転換のためのテーマ】 日本をストック型社会にするための研究 実現するための政策 実現するための技術 社会システム編 技術システム編 研 究 ・ 検 討 領 域 研究・検討領域 税 制 ・ 法 制 素材 建築構造 土木構造 流通基盤 長寿命型 建築物 長寿命型 複合基盤(道路・ 交通・情報・ ライフライン等施設) ライフライン 長 期 金 融 制 度 ー 長 寿 命 型 都 市 圏 設 計 ル 長寿命型産業基盤 食 糧 農業・畜産基盤の保全 水産基盤の再生・保全 森林資源基盤の長期的保全 資 源 循 環 資 源 自 律 型 地 域 圏 設 計 ル ー 自然共生・生物回廊の保全 ル 各 種 社 会 制 度 再 生 保 存 則 ル ス ト ッ 長 寿 命 型 イ ン フ ラ 組 合 せ 技 術 ク 型 ・ 長 寿 命 型 社 会 転 換 対 応 中 長 期 地 価 政 策 新 産 業 連 関 予 測 ・ 評 価 ・ 対 応 新 産 業 構 造 転 換 政 策 各 種 標 準 ・ 指 標 長 寿 命 型 / 新 国 土 政 策 現 状 対 応 街 づ く り 長 寿 命 型 実 験 都 市 の 試 行 各 種 評 価 指 標 世 論 形 成 ス ト ッ ク 型 社 会 転 換 政 策 食 糧 ・ 森 林 資 源 自 律 政 策 統合理論(工学・自然科学・社会科学) 統 合 理 論 ( 社 会 科 学 : 他 科 学 ) 「 国 家 50 年 の 大 計 」: ス ト ッ ク 型 社 会 形 成 に 向 け た 日 本 の 政 策 岡本 久 人 ( 学校 法 人 九 州国 際 大 学 次 世代 シ ス テ ム研 究 所 所長 ) 1 .は じ め に 次世 代 シ ス テム 研 究 所 は、 こ れ ま で に次 世 代 シ ステ ム 研 究 会は じ め ス トッ ク 型 社 会に 関 連 を 持つ 産 学 官 民の 諸 機 関 あ るい は 研 究 者と 、 こ れ が関 係 す る 多岐 に わ た る 分 野 の 研 究・ 実 験 ・実 践 を 行 っ て き た 。そ の 領 域 は 社 会 科 学 、 自 然 科 学・ 工 学 か ら 人 文 科 学 ま で ス ト ッ ク 型 社 会 が 内 包・外 延 す る 広 い 領 域 に 及 ん で い る こ と は 、 こ れま で の 研 究所 報 等 か らも 理 解 い た だけ る も の と考 え る 。 今日 に 至 っ て、 そ れ ら スト ッ ク 型 社 会論 を 構 成 する 一 通 り の要 素 理 論 は出 揃 っ た との 印 象 が ある 。 そ こ でこ の 折 に 、 今日 の 日 本 社会 に 対 し てス ト ッ ク 型社 会 転 換 を目 指 し た 政策 提 言 の かた ち で 、 こ れま で の 研 究活 動 を 総 括し て み た い。 な お 以 下に 記 す 論 文は 、 近 日 中に 次 世 代 シ ステ ム 研 究 会会 員 等 と 共著 で 電 気 書院 か ら 出 版す る 予 定 であ る 。 2 .現 代 社 会 の課 題 か ら みた 政 策 の 要 件 2 −1 . 複 雑 系の 社 会 へ 対応 す る 政 策 前 世紀 か ら の 科学 技 術 ・ 自然 科 学 、 経 済を は じ め とす る 社 会 科学 の 発 展 には 目 覚 し い も の が あ る が 、そ の 背 景 に は 学 問 や 技 術 な ど 各 専 門 分 野 や 社 会 機 能( 社 会 全体 の 組 織 など ) の 専 門分 化 が あ る 。つ ま り そ れぞ れ の 専 門分 野 は よ り小 さ な 専門 単 位 に 更に 分 業 す るこ と で 、 効 率を 高 め 進 歩の 速 度 を 高め て き た 。 だ が一 方 で 、 現在 社 会 は 専門 分 化 が 極 度に 進 み 過 ぎ、 そ の 結 果、 社 会 全 体が 複 雑 系 に な っ て し ま っ た 。複 雑 系 社 会 で は 社 会 の 全 体 系 を 認 識 す る の が 難 し い 。 個 々の 専 門 分 野に 属 す る 専門 家 も 一 般 の人 々 も 、 全体 系 を 認 識で き な い まま に 日 常の 活 動 や 生活 を 営 ん でい る と 言 っ ても い い 。 しか し 個 々 の分 野 の 専 門家 や 個々人の 営みが 、気づか ぬうち に全く 自分と は関係 の無い 他の分野 や世界 の 人 々に 強 い 影 響を 与 え た り害 し た り す るこ と が 大 いに 有 り 得 る。 多 く の 場合 、 自 分達 が 認 識 でき る 世 界 は狭 く 、 そ の 狭い 世 界 を 前提 に し た 個々 の 人 間 の営 み が 交互 に 作 用 して 、 人 間 社会 全 体 や 地 球環 境 全 体 に歪 が 出 て きた 。 そ れ が今 日 の 人間 社 会 の 実情 で は な かろ う か 。 し たが っ て 社 会や 地 球 の 根深 い 問 題 ・歪 は 何 が原 因 か 誰 にも 分 か ら ない の で あ る 。 人 間社 会 の あ らゆ る 組 織 つま り 分 業 も 、複 雑 に 巨 大化 し た 全 体か ら 見 れ ば限 定 され た 範 囲 に収 ま ら ざ るを 得 な い 。 従っ て 国 家 も行 政 機 関 も民 間 機 関 も国 際 機 関 も 、あ ら ゆ る 組 織 は 現 実 に は 全 体 を 前 提 に し た 分 業・協 業 に は な り に く い 。 そ のた め 社 会 全体 に 向 け た目 的 を 達 成 でき ず 、 よ くて 自 分 の 分野 が 掲 げ る中 間 目 的 を 達 成 で き る だ け だ 。そ れ が 全 体 に と っ て 意 味 あ り か ど う か の 保 証 は な い 。 つ まり 「 部 分 最適 解 の 総 和は 必 ず し も 全体 の 最 適 解に は な ら ない 」 の で ある 。 専 門分 化 の 典 型と し て の 行政 組 織 ・ 各 省庁 か ら 提 案さ れ る 個 々の 政 策 は 、部 分 1 と して み れ ば 社会 が 目 指 す目 的 に 合 致 して い る 。 だが そ れ ら 個々 の 政 策 の積 み 上 げの 結 果 が 、社 会 全 体 を最 適 解 に 導 く保 証 は な い。 そ の 部 分最 適 解 の 総和 は 必 ずし も 全 体 最適 に は な らず 、 個 々 の 政策 ( 省 庁 )間 に 重 複 した 多 く の ムダ が で た り 、組 織 の 谷 間 で の 重 要 機 能 の 欠 落 な ど 危 機 的 状 況 が 生 じ る 可 能 性 も あ る 。 そ こで 全 体 系 を認 識 で き ない 状 況 下 で の人 間 の 活 動や 営 み を 、こ の 誤 謬 から 回 避す る に は どう す れ ば 良い か を 考 え る必 要 が あ る。 こ れ を 回避 す る た めの 論 理 は、 人 間 社 会の 活 動 や 営み を 最 上 位 概念 、 つ ま り社 会 全 体 の究 極 の 目 的か ら 考 える こ と で ある 。 最 上 位概 念 と は 最 も基 本 的 な 政策 で 、 例 えば 「 人 々 の生 活 を 豊か に す る 」と か 「 日 本の 経 済 構 造 を健 全 な も のに す る 」 とか 「 地 球 環境 を 持 続的 に 保 全 する 」 と 言 った 、 全 て の 活動 の 基 本 的な 目 的 を 同時 に 達 成 でき る 広 視 野 ( W/ R: Wi de Ra ng e) の 総 合 的 概 念 で あ る と 思 わ れ る 。 そ れ も 具 体 的 か つ 実 効 的 手 段 を 伴 っ て い な け れ ば な ら な い 。後 項 の 図 − 1 1 で 示 す よ う に ス ト ッ ク 型 社 会 転 換 は 、こ の 一 つ の 政 策 で 生 活 ・経 済 ・環 境 等 々 の 複 数 課 題 を 解 決 ( 複 数 の 目 的 達 成 ) で き る 広 視 野( W / R )の 概 念 に 立 っ た 政 策 で あ る 。ま た こ れ ま で の 各章 で の 述 べら れ て き たよ う に 実 現 可能 な 政 策 であ る 。 2 −2 . 急 速 に変 化 す る 現代 社 会 に 対 応す る 政 策 の要 件 現 在と い う 時 代を 取 り 巻 く状 況 は 、 激 動し て い る 。極 め て 近 い未 来 た と えば 私 達の 子 や 孫 の時 代 ま で には 、 人 間 社 会は 極 め て 危機 的 な 状 況に 至 る こ とが 考 え ら れ る 。そ の 理 由 は 現 代 人 類 が 、技 術 を は じ め 社 会 の あ ら ゆ る 営 み を 急 速( 指 数 的) に 進 展 させ て い る から で あ る 。 人類 は 一 人 当た り 資 源 消費 量 や 廃 棄物 ・ CO 2 排 出 量 を 指 数 的 に 増 加 さ せ な が ら 、 世 界 人 口 も 指 数 的 に 増 加 さ せ て い る 。 世 界人 口 を 「 増加 さ せ て いる 」 と 表 現 する 理 由 は 、増 加 の 原 因が 私 達 人 類自 ら が 産み 出 し た 医学 ・ 生 産 技術 ・ 通 信 輸 送な ど の 科 学技 術 と 経 済活 動 に よ るか ら で あ る 。日 本 な ど 少 数 の 先 進 国 の 人 口 が 減 少 傾 向 に 転 ず る 中 で 、現 在 6 5 億 人 の 世 界 人 口 は 205 0 年 に は 9 0 億 人 に 至 る と 予 測 さ れ て い る 。 第 2 次 大 戦 直 後 の 世 界 人 口 が 30 億 人 を 下 回 っ て い た こ と を 考 え れ ば 、現 在 の 世 界 人 口 の 増 加 傾 向 は 異 常で あ る と 考え ざ る を 得な い 。 一 方、 指 数 的 に増 加 す る 世界 人 口 の 受 け皿 で あ る 地球 の 収 容 能力 は ど う であ ろ うか 。 表 面 積一 定 の 地 球に 注 が れ る 、生 命 の 素 であ る 太 陽 エネ ル ギ ー の供 給 量 も一 定 で あ る。 つ ま り 毎年 一 定 量 供 給さ れ る 太 陽エ ネ ル ギ ーを 素 に 生 きて き た 地 球 上 の 生 物 量 も 、 一 定 で あ る 。 太 陽 エ ネ ル ギ ー を 直 接 利 用 し C O2 を 有 機 物 に 固定 す る 植 物も 、 そ の 植物 を 利 用 す る動 物 も 、 外観 的 に は 太陽 エ ネ ル ギー を 分 かち 合 っ て 進化 し て き た。 地 球 表 面 の生 物 圏 が 持続 的 で あ る要 件 は 、 太陽 エ ネ ルギ ー を 素 にし た 植 物 の生 産 量 と そ れを 基 に し た動 物 の 消 費量 の 収 支 が均 衡 し て い る こ と で あ る 。現 実 に は そ の 中 に 激 し い 生 存 競 争 が 存 在 す る の で あ る が 、 少 な く と も 現 在 は 私 達 ヒ ト 科 動 物 の 一 人 勝 ち で 、 陸 上 動 物 の 総 生 物 量 の 80 % ( ヒト と 家 畜 )を 人 類 が 独占 す る よ う にな っ た と 推定 さ れ る 。広 大 な 地 表面 積 と 太陽 エ ネ ル ギー を 必 要 とす る ヒ ト が 増加 し て い けば 、 野 生 生物 が 自 然 界で 残 存 でき る 余 地 はも う 無 い 。だ が 更 に ヒ トの 増 加 は 指数 的 に 続 くの で あ る 。 2 指数的に増加する世界人口 限界収容能力 持続的世界人口 (出典: 統計で見る世界 21世紀へ の展 望) 図 −1 指 数 的に 増 加 す る世 界 人 口 生 物 シ ス テ ム の 中 で ヒ ト が 生 き て い る 限 り 、 2050 年 に 到 達 す る 90 億 人 と い う 人口 は 有 り 得な い 。 す なわ ち そ こ に 至る 過 程 で 地球 上 の ヒ トは 食 料 ・ 淡水 ・ エ ネル ギ ー を 始め と す る 資源 が 不 足 し 、激 し い 資 源獲 得 競 争 が生 じ た り 、最 悪 の 場合 に は 大 規模 な 戦 争 に至 る か も し れな い 。 戦 争は ヒ ト 科 動物 が 歴 史 上常 套 的 に使 っ て き た個 体 数 ( 人口 ) 調 整 の 手段 で あ る 。 私 達の す ぐ 後 の世 代 に 、 この よ う な 悲 惨な 状 況 を 回避 で き る か否 か は 現 在の 私 達の 世 代 の 政策 ひ と つ にか か っ て い る。 先 ず 地 球能 力 ・ 人 間社 会 の 動 向に つ い て 全 体 系 を 正 し く 認 識 す る こ と 。例 え ば 205 0 年 ま で の 地 球 の 環 境 推 移 や 資 源 供 給能 力 の 推 移と 人 間 社 会全 体 の 動 向 を予 測 し 、 それ を 前 提 に現 在 な す べき 事 柄 を自 然 と 共 生し な が ら 、人 類 が ほ ど ほど の 肉 食 をす る よ う な、 つ ま り 適当 な 贅 沢を し な が ら持 続 的 に 維持 で き る 世 界人 口 は 、35 億 人程 度 と 言 われ て い る。 も しす べ て の 人類 が 肉 食 をあ き ら め 菜 食中 心 に 転 換で き る な らば 、 地 球 上の ヒ ト の 人 口 は 50 億 人 程 度 ま で 許 容 で き る と も 言 わ れ て い る 。そ れ ら の 限 界 を 超 え て 現 在 の 65 億 人 の 人 口 を 維 持 で き て い る 理 由 は 、太 古 に 生 物 が 太 陽 エ ネ ル ギ ー を 固定 し た 化 石燃 料 を 私 達が 使 っ て い るか ら だ 。 化石 燃 料 の 使用 の 結 果 で増 加 す る CO 2 排 出 量 は、 現 在 の 地 表 の 植物 の 固 定 能 力 を 超え 、 地 球 温 暖 化 の原 因 に なっ て い る こと は 周 知 の通 り で あ る 。 表 面積 一 定 の 地球 上 に ど れだ け の ヒ ト (世 界 人 口 )が 収 容 で きる か と い う計 算 につ い て は 、食 料 ・ 淡 水・ エ ネ ル ギ ー等 々 を 指 標に 多 く の 前提 条 件 を 振り な が ら少 な か ら ぬ試 み が な され て き た 。 この 世 に 生 まれ て き た 全て の 人 々 は豊 か な 生活 を 求 め る。 だ が す べて の 人 々 が 現在 の 先 進 国並 の 生 活 をす る と す れば 、 例 え 50 億 人 の人 口 で あ って も 資 源 収 支か ら 地 球 も人 間 社 会 も持 続 的 に はな ら な い。 ど の よ うに 科 学 技 術を 発 展 さ せ ても 、 太 陽 エネ ル ギ ー を素 に し た 政策 と し て実 行 し て いく 。 人 間 社会 と 地 球 環 境が 破 局 の プロ セ ス に 向か う こ と を回 避 さ せ 、 双 方 を 持 続 的 に す る た め に は 、相 応 の 長 期 的 視 点 ( L / T : L on g-T er m) に 立 っ た バ ッ ク キ ャ ス テ ィ ン グ 政 策 が 不 可 欠 で あ る 。ス ト ッ ク 型 社 会 へ の 転 換 は 、 そ うし た 考 え 方の 結 論 の 一つ で あ る 。 3 2 −3 . グ ロ ーバ リ ゼ ー ショ ン の 先 を 行く 政 策 旧 ソ 連 の 崩壊 を 機 に 始ま っ た グ ロ ーバ リ ゼ ー ショ ン は 先 ず経 済 か ら 始ま っ た。 資 本の 移 転 ・ 技術 の 移 転 が自 由 に な り 、世 界 の 企 業ひ い て は 産業 ご と に どの 国 や 地域 に も 自 由に 移 転 で きる よ う に な った 。 そ の 結果 企 業 は 、先 ず 賃 金 がよ り 安 価な 国 や 地 域に 、 安 価 な資 源 が 大 量 にあ る 国 や 地域 に 移 転 しは じ め た 。当 然 な がら 日 本 の 企業 も こ の 世界 規 範 の 流 れに 乗 ら ざ るを 得 な か った 。 そ の 結果 国 内 では 、 と り わけ 第 1 次 産業 と 第 2 次 産業 へ の 影 響は 大 き い 。海 外 進 出 を果 た し た企 業 は 安 泰で 、 ま た 海外 か ら 輸 入 した 安 価 な 商品 を 購 入 する 消 費 者 はグ ロ ー バリ ゼ ー シ ョン の 結 果 を相 応 に 享 受 して い る 。 だが 日 本 国 内の 産 業 空 洞化 ・ 雇 用消 失 ・ 労 働効 率 / 競 争激 化 が 著 し くな っ た 。 経済 の グ ロ ーバ リ ゼ ー ショ ン は この よ う に 、日 本 国 内 に大 き な 影 響 を生 み 出 し てき た の で ある 。 さ ら に 経 済の グ ロ ー バリ ゼ ー シ ョ ンは 地 球 規 模の 環 境 問 題を 生 み 出 して き た と 言 え る 。 つ ま り 製 造 業 の 世 界 へ の 拡 散 は 、 CO 2 を は じ め 温 暖 化 ガ ス や 汚 染 源 を 地球 規 模 に 拡散 し た こ とに 等 し い 。 化石 エ ネ ル ギー だ け で なく 、 あ ら ゆる 資 源 の国 際 移 転 も激 し く な った 。 と り わ け食 料 や 木 質資 源 の 移 転は 、 本 来 は地 域 ご とに 地 域 内 部で 循 環 す るは ず の 栄 養 塩類 の 流 れ を、 大 陸 を 超え て 偏 流 させ つ つ あ る 。こ の 地 球 規 模 の 生 態 系 の 急 速 な 変 化 が 生 み 出 す リ ア ク シ ョ ン に 対 し て 、 後 の世 代 は ど のよ う な 補 正対 応 を 迫 ら れる の か 予 測は 難 し い 。 急 速 な 経 済の グ ロ ー バリ ゼ ー シ ョ ンは 、 価 値 観の 急 速 な 国際 偏 流 を も生 み 出 し た。 そ の 結 果、 価 値 観 のギ ャ ッ プ が 地域 に よ っ ては 「 文 明 の衝 突 」 さ なが ら の 混乱 を 引 き 起こ し て い るこ と は 周 知 の通 り で あ る。 こ の よ う に 捉 え る と 現 代 社 会 の 経 済 ・地 球 環 境 ・文 明 に 関 わ る 諸 問 題 は 、 「人 間 社会 ・ 地 球 環境 が グ ロ ーバ ル に 指 数 的変 化 し て いる こ と 」 を背 景 に 拡 大し て い るよ う に 思 われ る 。 も ちろ ん こ の グ ロー バ ル な 指数 的 変 化 はヒ ト の 活 動・ 営 み の結 果 で あ り、 そ れ に 対す る リ ア ク ショ ン つ ま り人 間 社 会 や地 球 へ の ダメ ー ジ は、 対 応 が 遅れ る ほ ど 大き く 致 命 的 にな る 。 そ の結 果 、 現 在の 秩 序 あ る国 際 競 争も や が て は秩 序 の 均 衡を 維 持 で き ず、 過 激 な 国際 競 争 を 経て 国 際 闘 争( 武 力 闘争 ) へ と 展開 す る こ とも 危 惧 さ れ るの で あ る 。 こ の よ う な背 景 の 中 でス ト ッ ク レ スの 日 本 型 社会 が 、 危 機を 回 避 し 持続 的 に 存 続す る た め の選 択 肢 が スト ッ ク 型 社 会へ の 転 換 政策 で あ る 。 4 太陽エネルギー sustaina ble 物理・化学システム 技術移転の自由化 ○経済システム 生物システム 資本移転の自由化 資源循環シ ステ ム 植 物・・・ 分解 CO2 発生源の急速拡大 原因 2 人 類の 大繁栄 消費 ①指 数変化 結果 原因3 ヒト第 2の行 動特性 個体数 (人 口)の 急増 限界 ギャップ (行動圏拡 大) ヒト経済 システムの 虚構化 ・資本主 義経済 ・社会主 義経済 ○貨幣経 済 ○市場経 済 行 動特性 欲 望原理 行動 :欲 求原理 ヒト科 動物の大 繁栄 圧力増 大 既存倫 理 個体当り資 源消費量の 急増 未来 既存価値観 現状 日本型社会を 持続可能にする選択肢 グ ロ ーバ リ ゼ ー ショ ン の 影 響 ③グ ローバル化 経済・産 業 ・・・動物 価値観の急速な国際編流 ※ ②細 分化・多様化 文化・社会 自 然の経済システム (文明の衝突) ヒト社 会の傾向 科学 技術の発達 原因1 生理 特性 大 脳の発達 ○価値観 図 −2 人間系 生産 資源移転の拡大 (栄養塩類の地球規模偏流) (Economy as Ecology) ・・ ・ ・ ○資源循環 (地球環境) マクロ的サマリー : EC O-ECO視点 (地球:人間) 地 球 能 力一 定 則 地球システム ・・・国際競争から国際闘争への危惧 グローバル化 図−3 環境と動物の行 動(認知・思考・競争 /行動) ストック型社会 地 球 圏 と 人間 圏 の ギ ャッ プ 3 .現 在 の 日 本の 課 題 一 連の ス ト ッ ク型 社 会 論 の展 開 の 中 心 テー マ に 置 かれ て き た のが 、 現 在 の日 本 の 課題 で あ る 。そ の 要 約 を概 括 し て み たい 。 現 在 の 日 本 は 経 済 大 国 で あ る 。 一 人 当 た り の GD P も 賃 金 も 文 字 通 り 世 界 の ト ッ プ ク ラ ス で 、20 05 年 の 世 界 国 勢 図 会 に よ れ ば 例 え ば フ ラ ン ス は 日 本 の 約 5 0 % 、中 国 は 日 本 の 約 3% で あ る 。 一 方 、 そ れ ぞ れ の 国 民 の 生 活 コ ス ト も 、 日 本 と の 比 較 に お い て 概 略 同 じ よ う な 比 率 で あ る 。経 済 学 で 言 う 購 買 力 平 価 が 同 じ で あ っ て も 、 日 本人 と フ ラ ンス 人 の 暮 らし ぶ り は 遥 かな 違 い が ある 。 そ の 違い は 、 一 度当 地 で 生 活し た 者 な ら誰 で も 体 験す る 。 例 え ばヨ ー ロ ッ パの 殆 ど の 国で は 、 全 ての 国 民 が 毎年 1 ヶ 月 以上 の バ カ ンス を と る こ とが で き る 。こ れ は 全 ての 国 民 が 、自 分 の 自 由に な る 人 生時 間 を 手 にす る こ と を 保障 し た 制 度の よ う な もの で あ る 。こ の よ う な 制 度 が 出 来 る か ど う か は 、 GD P や 賃 金 収 入 の 多 寡 と は 関 係 な い 。 彼 等 に は ス ト ック が あ る から で あ る 。 ストック(EX.家屋)の寿命 ストック型社会と国民生活(生涯収支比較) この収支構造は為替レートとは関係ない 国別比較 日本人の生涯収支 ・・・ストック型社会 ヨーロッパ人の生涯収支 生涯コスト ゆとり ストック戸数をフロー戸数で除いた値(年)の国際比較 0 50 生涯コスト 100 アメリカ(91年) 150 ゆとり・・ ・・・・Buffer 10 3 イギリス(91年) 当世代収支 生涯収入 ≒2億4千万円 生涯収入 実質生 活 14 1 フランス(90年) 86 住宅 ≒6千万円 ※ 第二次世 界大戦で独・仏 は戦災にあっ た。 前世代 からの ストック 戦後 復興のプレファブ家屋が更 新期にあり ドイツ(87年) 79 そのデータ が含まれていると思われ る。 世代間ストック 日本(93年) 実質生活 30 住宅 次世代 への ストック 個 人 も 国・ 地方自 治体も 出典: 住宅の寿 命分布に関する調査 研究(2)(別 紙)加藤裕 久 「 住宅研究 財団研究年 報」 No.18 1991 図 −4 ス ト ック の 寿 命 国別比較 ストック型社会: 収入格差があっても豊かな生活 図−5 5 〒 805-0059学校法人 九州国際大学 次世代シ ステ ム研究所 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 F ax 093-663-1612 スト ッ ク 型 社会 と 国 民 生活 図 −4 で 示 し たよ う に 、 彼等 に は 数 世 代の 使 用 に 耐え る 価 値 の高 い ス ト ック が あ る。 家 屋 や 家具 な ど の 個人 資 産 も 、 建物 ・ 道 路 ・各 種 イ ン フラ な ど の 社会 資 本 も 質が 高 く 寿 命も 長 い ス トッ ク 型 の 資 産で あ る 。 一方 、 戦 後 の日 本 は 政 策的 に モ ノ が短 寿 命 型 に造 ら れ 、 個人 資 産 も 社 会資 本 も 毎 世代 更 新 す る経 済 構 造 にな っ て い る。 戦 後の 復 興 過 程で 威 力 を 発揮 し た 回 転 型( ス ト ッ クレ ス ) の 経済 政 策 は 、も は や 社会 に と っ ても 国 民 に とっ て も 何 の 意味 も 無 い 。各 世 代 が 繰り 返 し 更 新の 負 担 を 強い ら れ る だけ で あ る 。世 界 ト ッ プ クラ ス の 高 賃金 で あ っ ても 、 日 本 のよ う な ス トッ ク レ ス の国 に お い ては 労 働 者 が 相応 の 享 受 を受 け る こ とは な い 。 前項 の グ ロ ーバ リ ゼ ー ショ ン で 述 べた よ う に 、 国際 競 争 下 での 高 賃 金 ・高 生 産 コ スト の 構 造 では 超 高 密 度労 働 に な った り 、 産 業 の空 洞 化 を 招き 労 働 者 の基 盤 で あ る雇 用 を 失 うこ と に な るか ら だ 。 これ は 第 1 次 産業 に お い ても 同 じ で ある 。 日 本 の賃 金 の 30 分 の 1 の 中 国 で も 、ネ ギ も シ イ タ ケ も 日 本 と 同 じ よ う な 品 質 で 作 れ る か ら で あ る。 日 本国 内 に は 農林 水 産 資 源( 生 物 資 源 )を 自 給 で きる 基 盤 や 気候 条 件 が ある 。 現 在そ れ が で きな い 理 由 は、 単 に コ ス トだ け に 在 ると 考 え て よい 。 そ の よう な 日 本 の高 コ ス ト の背 景 に は スト ッ ク レ ス の日 本 の 経 済構 造 が 存 在す る か ら だ。 個 人 資 産や 社 会 資 本を 短 寿 命 にし 、 世 代 ご とに モ ノ を 作り 替 え る 経済 構 造 で は、 世 代 当 たり の 資 源 消費 量 も 相 応に 高 く な る 。例 え ば 立 派で 長 持 ち する よ う な 家屋 や 家 具 を作 れ ば 、 数世 代 に 一 度森 を 切 り 木 材を 消 費 す るだ け で 済 む。 毎 世 代 森林 資 源 を 消費 す る 必 要は な い 。 鉄や コ ン ク リ ート の よ う な非 生 物 資 源も 数 世 代 使え る よ う に す れ ば 、 素 材 や 建 設 に 要 す る エ ネ ル ギ ー の 消 費 と C O2 発 生 量 を 相 応 に 削 減 で き る 。現 在 の 日 本 の 資 源 消 費 量 の 約 5 0 % は 産 業 用 で あ る が 、単 純 に 考 え て モ ノ の 寿 命 を イ ギ リ ス 並 に 5 倍 に で き る と 、 産 業 用 エ ネ ル ギ ー の 消 費 量 と CO 2 発 生 量 を 5 分の 1 に 削 減で き る 理 屈に な る 。 も ちろ ん 鉄 ・ コン ク リ ー トを は じ め とす る 非 生 物資 源 を 長 寿命 化 し て 使え ば 、 そ の こと 自 体 が 資源 の 備 蓄 を意 味 す る 。つ ま り 日 本の よ う な 資源 が 少 な い国 が 採 る べ き基 本 的 な 政策 に な る はず だ 。 ス トッ ク 型 社 会へ の 転 換 が進 め ば 、 エネ ル ギ ー も 含め 資 源 的 な完 全 自 立 の地 域 圏 も 夢で は な い 。世 界 人 口 増加 を は じ め今 後 の 動 向 から 見 る と 、資 源 的 自 立は 後 の 世 代の 生 存 権 を保 証 す る 安全 保 障 の 一つ と な り そ うだ 。 戦後 の 経 済 成長 の 結 果 、世 界 ト ッ プ クラ ス の 経 済大 国 と 言 われ る よ う にな っ て 久 しい が 、 そ の間 、 日 本 のど の 地 域 で どれ ほ ど の 資産 を 残 せ ただ ろ う か ?私 達 が 後 の世 代 に 残 した 社 会 資 本の 多 く は 一 世代 限 り の 短寿 命 の 資 産で あ る 。 その た め 後 の世 代 は そ れら の 老 朽 更新 を 負 わ さ れ、 新 規 投 資の 機 会 は 奪わ れ て い る。 更 に そ のよ う な 短 寿命 の モ ノ を作 り に 終 始 した 折 の 借 金ま で 背 負 わさ れ て い る。 加 え て そん な 短 寿 命の 資 産 を 残し た 世 代 は 高齢 化 し て 、年 金 ・ 介 護費 と 追 い 討ち を か け るよ う に 後 の世 代 に 負 担を か け る 。 結果 的 に 世 代間 倫 理 に 反す る 経 済 構造 を 造 っ てし ま っ た 。 6 公共投資に占める老朽更新コスト 世代間倫理:後世代に負担を強いる短寿命型資産ほか (億円) 1,800 社会資本ストックの維持管理・更新投資推計 1,600 現在 2005年 (平成17年) ①580億(79.7%) ②19億(2.7%) ③93億( 12.8%) ④35億(4.8%) ①新規建設費 ②更新費 1,400 ③維持修繕費 10年後 2015年 (平成27年) ①524億(71.9%) ②39億(5.3%) ③130億(17.8%) ④36億(5.0%) ④災害復旧費 1,200 20年後 2025年 (平成37年) ①391億(53.7%) ②156億(21.4%) ③145億(19.9%) ④37億( 5.1%) 1,000 800 30年後 2035年 (平成47年) ①0(0%) ②541億(74.2%) ③150億(20.6%) ④37億(5.1%) 600 400 200 (30年後 )2035 2031 2033 2027 2029 2021 2023 (20年後)2025 2017 2019 (10年後)2015 2011 2013 2007 2009 (現在) 2005 2001 2003 1997 1999 1993 1995 1989 1991 1985 1987 1981 1983 1977 1979 1973 1975 1969 1971 1965 1967 0 出所 : 2005年 宮城県資料 図 −6 公 共 投資 に 占 め る老 朽 更 新 コ スト こ のよ う に 現 在の 日 本 の 課題 を ま と め ると 、 ス ト ック レ ス の 日本 を ス ト ック 型 社 会へ 転 換 す る政 策 が 極 めて 重 要 な 命 題に な る 。 これ こ そ 図 −7 に 整 理 した よ う に 、日 本 人 の 生活 、 経 済 問題 、 環 境 問 題等 を 統 合 的に 解 決 で きる 政 策 で ある 。 つ ま り 部 分 最 適 解 型 の 社 会 に お い て 、ま た 急 速 に 変 化 す る 人 間 社 会 の 将 来 か ら 見 た 、 広 視 野 ・ 長 視 点 ( W / R & R/ T ) の 政 策 で あ る と 言 え る 。 ストック型社会転換の必要性/サマリー (日本の課題連関図) 持続できない地球環境 環 境 資源大量消費(大量生産) CO 2 大量廃棄物処理 短寿命 ストックレス 森林減少 ゆとりの欠如 賃金・GDP世界一 生 活 生活不安 教育・サービス だが,豊かさのない生活 (高社会コスト) 高生活コスト (社会不安) 食料自給率低下 食料など 海外依存 雇用不安定 高生産コスト 高賃金 リストラ・非正規社員・賃金格差 日本人を 産業空洞化 経 済 活かせない (第一次、第二次、第三次) 産業災害多発 大型プロジェクト失敗 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 財政枯渇 図 −7 〒 805 -0059 北九州 市八幡 東区尾倉二丁目6番1号 T el 0 93-661 -8772 Fax 093-663-1612 ス ト ック 型 社 会 転換 の 必 要 性 /サ マ リ ー 7 4 .ス ト ッ ク 型社 会 転 換 の具 体 的 展 開 4 −1 . 持 続 発展 の 条 件 :ス ケ ル ト ン &バ ッ フ ァ ー理 論 ス ト ック 型 社 会 と は、 先 ず 長 寿 命型 の 資 本 蓄 積 を目 指 す 社 会 であ る 。 こ れ は 言 う なら ば 世 代 間 の「 ゆ と り 」 の蓄 積 を 意 味 す る。 世 代 が 進 むに つ れ 人 々 の生 活 が 豊か に な っ て いく 社 会 で あ る。 長 寿 命 型 の 資本 蓄 積 は 、 各種 の 資 源 を 多世 代 に わた り 蓄 積 す るこ と を 同 時 に意 味 し 、 毎 世 代モ ノ を 作 り 変え る 場 合 に 比べ 世 代 当た り の コ ス ト負 担 も 資 源 消費 量 も 削 減 で きる 。 今 世 紀 末ま で に 日 本 の人 口は 7 千 万 人 ま で減 少 す る こ とが 予 測 さ れて い る が 、そ の 人 口 に対 し て 日 本は 植 物 の生 育 に 有 利 な気 候 に 恵 ま れて い る た め 、 日本 の 国 土 で 食料 や 森 林 資 源な ど 生 物資 源 は 十 分 に自 給 で き る 。世 界 人 口 が 急 速に 増 加 し 、 資源 枯 渇 と 資 源獲 得 競 争が 熾 烈 に な る中 で 、 今 か らス ト ッ ク 型 社 会転 換 政 策 に 着手 す れ ば 日 本は 資 源 自立 圏 を 形 成 でき る 。 前 述 のよ う に こ の こ とは 次 世 代 の 資源 的 安 全 保 障そ の もの で あ る 。 この 考 え 方 ・ 政策 を 世 界 の スト ッ ク レ ス 型の 国 々 に も 発 信で き れ ば 、 真に 持 続 可能 な 人 間 社会 と 地 球 環境 を 実 現 で きる の で あ る。 近未来の課題(日本と世界) バック・キャスティング 現 在 日 将 来 (限 界) 本 生産力低下 少子化・高齢化 人 間 世 ※ 日本の持続的人口は7千万人 界 人口増加・途上国経済発展 資源(資 産)蓄積 (非生物資源ストック) 資源枯渇 (資源の取り合い) 資源自立 (食料自給・生物資源基盤) ※ 世界人口:2050年に90億人 地 球 温暖化・気候変 動 その他いろいろ 海面上昇 天災の増加 安全・安心のインフラ・ 都市・地域設計 学校法人 九州国際大学 次世代システム 研究所 〒 805-0059 北九州市八幡東区 尾倉二 丁目6 番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 図 −8 近 未 来の 課 題 ( 日本 と 世 界 ) ス ト ック 型 社 会 転 換の 技 術 や フ ァイ ナ ン ス の 手 法等 具 体 的 な 要素 理 論 に つ い て は 、あ え て 触 れ ない が 、 そ れ らの 骨 格 と な る 考え 方 「 ス ケ ルト ン & バ ッ ファ ー 理論 」 に つ いて の み 確 認し て お き た い。 数 世 代の 利 用 に 耐 える 長 寿 命 型 のモ ノ を 造 る と いう こ と は 、 技術 や 価 値 観 が 急 速 な変 化 を 続 け る現 代 に お い ては 、 こ と に よ って は 後 世 代 に不 用 の 長 物 ・負 の 遺 産を 遺 す こ と にも な り か ね ない 。 そ こ で 建 物や 各 種 イ ン フラ 等 、 資 源 量が 大 き なモ ノ に つ い て、 ス ケ ル ト ン部 分 と バ ッ フ ァー 部 分 を 分 けて 考 え る 。 つま り モ ノの 構 成 要 素 のう ち 、 時 代 を経 て も 技 術 が 進歩 し て も 価 値観 が 変 わ っ ても 変 化 しな い 部 分 ・ 不易 な 部 分 を スケ ル ト ン と し 長寿 命 型 に す る。 つ ま り こ こで 8 言 う スケ ル ト ン と は、 不 確 実 な 未来 に お い て も 価値 や 機 能 が 不変 な 共 通 骨 格で あ る 。建 物 な ら ば 基礎 ・ 柱 ・ 梁 ・床 ・ 等 々 が こ れに 相 当 す る 。こ れ に 対 し て技 術 の 進歩 や 時 代 の 変化 で 変 化 が 予測 さ れ る 部 分 は、 将 来 に お いて フ レ キ シ ブル に 機 能を 変 え た り 異な る 目 的 に 転用 で き る よ う にし て お く 。 この 部 分 を バ ッフ ァ ー と称 す が 、 言 わば 現 在 で は 予見 で き な い 将 来の イ ン パ ク トを 吸 収 し 、 将来 の 発 展の 可 能 性 を 保障 す る 部 分 であ る 。 建 物 な らば 外 観 ・ 内 装・ 設 備 ・ 等 々が こ れ に 相 当 す る 。し か し な が ら ス ト ッ ク 型 社 会 論 に お い て 言 う 「 ス ケ ル ト ン & バ ッ フ ァ ー 理 論 」 は 、建 物 は じ め 各 種 構 築 物 な ど 単 体 の モ ノ に 限 ら ず 、街 区 ・ 都 市 計 画 ・地 域 設 計 、 ある い は 税 制 ・法 制 等 各 種 ソ フト 面 に も 対 応す べ き 概 念 であ る。 持続的発展の条件:スケルトン 不易なもの (予測可能) 変化するもの (予測困難) スケルトン バッファー *ハード・ソフト両面の概念 & バッファー 理論 不変の共通骨格 (不確実な未来に向けて スケルトンのみを長寿命化) フレキシビリティ機能 ・異なる目的に転用可能 ・目的そのものを変更可能 変わることを前提にした 機能設計 ・発展の可能性の保障 ・予見できない将来の社会 インパクト 自然インパクトの吸収 学校法人 九州国際大学 次世代システ ム研究所 〒 8 05 -0 05 9 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1 号 Tel 09 3-66 1-87 72 Fa x 0 93 -6 63 -1 61 2 図 −9 ス ト ック 型 社 会 の基 盤 / ス ケ ルト ン & バ ッフ ァ ー 理 論 4 − 2 . W/ R & R / T 上 位 概 念か ら の 計 画 ・設 計 例 えば ス ケ ル トン & バ ッ ファ ー 理 論 に よる 長 寿 命 スト ッ ク 型 の建 物 が 、 従来 仕 様の 街 区 や 住宅 地 の 中 に一 戸 だ け が 建て ら れ た とし て も 、 将来 の 区 画 整理 や 都 市計 画 の 変 更で 、 そ の 建物 が 立 ち 退 きに な っ た り不 調 和 な 存在 に な る 可能 性 が 高い 。 つ ま りス ト ッ ク 型資 本 の 整 備 は「 個 」 の 側・ 一 戸 の 建物 単 独 か ら始 め る ので は な く 「全 体 」 の 設計 ・ 街 区 や 住宅 地 全 体 の設 計 か ら スタ ー ト す る必 要 が ある 。 個 々 の建 物 の デ ザイ ン を 考 え る場 合 も 同 様に 、 よ り 上位 の 街 区 や住 宅 地 全体 の 景 観 、さ ら に は 地域 の 風 景 か ら先 に 設 計 され る の が 望ま し い 。 ま た数 世 代 に わた り 使 用 され る 建 物 群 つま り 街 区 や住 宅 地 も 、当 初 は 現 在の 地 価や 人 口 等 を前 提 に 整 備さ れ る 。 だ が後 世 代 で は日 本 の 人 口も 減 少 し 地価 も 世 界水 準 ま で 均さ れ る と すれ ば 、 現 時 点で 建 設 す る全 て の 建 築物 を 長 寿 命型 に し てお く 必 要 はな い 。 先 ず人 口 減 少 な ど将 来 の 条 件を 基 準 に 、長 寿 命 型 仕様 の 建 物群 と ス ペ ース を 配 置 し、 次 に そ の スペ ー ス に 現在 の 要 求 に合 っ た 戸 数を 従 来 仕様 で 建 設 する 。 世 代 が進 む に つ れ 、後 の 世 代 に合 っ た 理 想的 な 資 産 を残 す こ とが で き る ので あ る 。 9 気候・風土 *W/R&L/Tの設計 (地域) 建築物・構造物 資源・資産・環境 風景 × 景観 こちら側から × デザイン *政策の基本:演繹的思考 文化・社会 図 −1 0 ︵個・ 現在の側︶ ︵ 全体・未来 の側 ︶ 地球 × 都市 × 街区 × 工法 × 素材 個別政策から始めない! ス トッ ク 型 社 会形 成 の プ ラ イオ リ テ ィ ま た 森林 資 源 や 食 料等 の 生 物 資 源は 、 地 域 や 地 方圏 内 で 生 産 と消 費 の 収 支 の 均 衡 を保 つ 、 い わ ゆる 地 産 地 消 の考 え 方 が 反 映 され る べ き で ある 。 鉄 や 各 種金 属 類 、あ る い は コ ンク リ ー ト や レン ガ 等 の 非 生 物資 源 も 、 長 寿命 化 に よ り 世代 的 に 見れ ば 資 源 備 蓄に な り 、 そ れら の 資 源 生 産 時の エ ネ ル ギ ーの 世 代 当 た り消 費 量 も大 幅 に 削 減 でき 外 部 依 存 を回 避 で き る 。 この よ う な 観 点に 立 て ば 、 繰り 返 す が地 域 の 資 源 的自 立 を 図 れ ると こ ろ も あ り 得よ う 。 重 要 なこ と は 、 こ れか ら 行 う 政 策 は 常 に W/ R & R / T の 上 位 概 念 か ら 計 画 ・ 設 計 す る と い う こ と で あ る 。つ ま り 50 年 後 、10 0 年 後 の 条 件 に 合 わ せ て 、 理 想 的 な 全 体 像 を 先 に 設 計 す る こと で あ る 。 4 −3 . 世 代 を経 て も 「 時の 浸 食 に 耐 える 資 産 」 の形 成 全て の 人 工 物 は劣 化 す る 。 また ど ん な に 堅固 な も の で あ って も 、 一 時 期に ど ん な に流 行 っ て も 、後 の 世 代 で 価値 の 持 続 が 無 けれ ば 失 わ れ てし ま う 。 そ れぞ れ の 地域 に お い て 、こ れ か ら 先 にメ ン テ の 手 を 加え な が ら も 何世 代 も 使 っ ても らえるモ ノを作 るの は容易 ではな い。だ がその 時代に 地域 に生き る人々 の知 恵・ 技 術・ 文 化・ 気 概 な ど を 総 合 で き て 、「 時 の 浸 食 に 耐 え る 資 産 」 は 創 れ る も の だ 。そ れ に よ り 日本 の 資 産 は 蓄積 さ れ 資 源 的 自立 も 成 立 す る。 そ う す る こと で 人 間社 会 と 地 球 環境 が 急 速 に 変化 す る 中 で も 、後 世 代 の 生 存権 を 保 障 す るこ と がで き る 。 急 速 に変 化 す る 時 代環 境 の 中 で も、 今 か ら 着 手 すれ ば 間 に 合 う。 日 本 の そ れ ぞ れの 地 域 に 「時 の 浸 食 に耐 え る 資 産 」を 創 る 過 程か ら 日 本 の再 生 は 始 まる 。 10 5 .ス ト ッ ク 型社 会 に 向 けた 日 本 の 政 策: 今 こ そ 必要 な 「 国 家 50 年の 大 計 」 5 −1 . ス ト ック 型 社 会 転換 に 向 け た 政策 体 系 「 国 家 1 00 年 の 大 計 」 と い う 言 葉 が あ る が 、 今 後 の 10 0 年 間 が ど の よ う に 推 移 す る か を 考 え ず に そ れ を 議 論 し て も 意 味 が な い 。 こ れ ま で の 1 00 年 は 世 の 中 が 徐 々に 変 わ る 直線 変 化 で あっ た が 、 前 述の よ う に これ か ら は 世の 中 が 倍 々に 変 わ る 指 数 変 化 の 時 代 に な っ た 。 10 0 年 後 ど こ ろ か 50 年 後 3 0 年 後 さ え ど う な る か 分か ら な い 時代 だ 。 加 えて 人 間 社 会 は多 様 化 ・ 細分 化 し な がら 複 雑 に なり 、 混 沌の 中 で 急 速に 変 化 し 始め た た め 、 ます ま す 全 体を 認 識 す るこ と が 困 難に な っ てき た 。 だ から こ そ 近 未来 を 前 提 に 、日 本 が 今 から と る べ き行 動 を 設 計す る こ とが 不 可 欠 なの で あ る 。 これ ま で に 述 べて き た よ う に、 ス ト ッ ク 型社 会 へ の 転 換 は現 在 の 日 本 社会 が 抱 え る 矛 盾・ 課 題 を 一 括 し て 解 決 に 導 く 政 策 で あ る 。 つ ま り 図 − 11 に 示 す よ う に 、 この 転 換 は 複 数の 目 的 を 達 成で き る 政 策 で ある 。 ま た こ の図 か ら 、 ス トッ ク 型 社会 転 換 政 策 が生 活 ・ 経 済 ・資 源 / 環 境 ・ 等々 の 課 題 に 対し て 、 い わ ゆる ワ ン ステ ッ プ 理 論 で対 応 し て い るこ と が 理 解 で きる は ず だ 。 つま り そ れ ぞ れの 異 な る分 野 に 関 わ る人 々 に 対 し ても 、 ス ト ッ ク 型社 会 転 換 が 統合 的 な 政 策 であ る こ とを 説 明 し や すい 。 こ の よ うな 統 合 的 な 政 策は 、 中 間 解 がな い 。 つ ま り国 に お いて も 地 方 自 治体 に お い て もト ッ プ ダ ウ ン の立 法 で し か ない 。 従 っ て この 立 法 化は 各 省 庁(行 政 府)や 民 間 から の 提 案 で は なく 、 立 法 府 が直 接 審 議 し その 強 力な 指 導 力 に基 づ い て 法制 化 さ れ る のが 望 ま し い。 ストック型社会政策 生活の豊かさ CO 2 固定 CO 2 減少 人間 社会 次 世代の安 全・ 安心 生物資 源 地 球 環 境 保全 長寿命・ストック型社会 森林減少 STOP 自 然保全 資源蓄積 資源的自立 リデュース 高品質・ 景気 浮揚・安定 雇用 少量生産 資 源 リサイクル コスト減少 生 廃棄物 減少 経 済 の 安 定 産 日本のコストの 健全化 エ ネルギー 日本人を活か せる社会 学校法 人 九州国際 大学 次世 代システム研究 所 〒 805-0059 北九州市 八幡東区尾倉 二丁目6番 1号 Tel 093-661 -8772 Fax 09 3-663-1612 図 −1 1 ス トッ ク 型 社 会政 策 11 こ の 転 換 を 実 現 す る た め の 政 策 の 構 成 要 素 を 体 系 化 す る と 図 − 12 の よ う に ま と める こ と が で きる 。 図 に 示 すよ う に 、 こ れは 国 と し て の 政策 (立法 )と 地方 自 治 体 の 体 制 の 両 輪 が そ ろ っ て 、実 効 的 な 政 策 に な る 。 以 下 の 項 で は 図 − 1 2 に 示 す構 成 要 素 の政 策 に つ いて 説 明 し て いき た い 。 ス ト ッ ク型 社 会 政 策イ メ ー ジ ・ ・ ・ ・・ 国民 へ の 呼び か け ( 国) (地 方 ) ① 次 世代 社 会 形成 法 地 方 分権 化 ・ 三 位一 体 改革 既 成 個 別 法の 統 合法 (2 05 0年 計画 法) 地 方圏 2 05 0年 計 画 * 部 分 最 適化 の 回 避 内 閣 府? 2050年 計 画庁 ・国 民生 活の * ゴ ール 調 整& マ クロ 傾向 分 析 (バ ック ・ キャ ス テ ィ ング) (ス トッ ク型地 方社 会) 〈 資産 蓄積〉 日 本の 構造 改 革 のゴ ール の 明示 ス ト ック 型社 会 ハ ー ド面 ・ソ フト 面の ス トッ ク 型 社会 転 換 年次 地方 自治の ゴー ルの 明示 (消 費 税 u p) ・世 界 一美 し い ま ち づく り ・地 方財 政の ゆ とり 理 論 的・技 術 的 How to 計 画( 10% 法) 豊 かさ 〈 日 本の 生産 コス ト の 健全 化〉 ・経済 構 造の 健全 化 /地 域国 際競 争力 ・世 界に誇 れる 長 寿 命型 都 市・ 農 村 ・漁村 ・ 山村 (日 本人 を活か せる 社会) ③ 資 源 自立 基 盤 整 備 法 ・安 全 ・安心 な 国民 への夢 と 希望 の提示 〈資 源自 立圏 〉 * 次世 代 の 安心 ・ 安全 社 会の 実 現 ・ 地球 環境の 持続 的 保全 ② 多 世 代資 産 形 成 法 ・ 資 源的 安全保 障 防 災 型都 市 ・ 農 村 ・漁 村 ・ 山村 ( 転換 事 業) ・ 日 本の 資 金 で 日本 の 資産 を 造る ・健 全 内 需 拡大 の 全国 的 展開 ( 郵政 民営 化後 の 金融 資産 の海 外 流出 の回 避、 民間 資金 の地 域 への 誘導 、不 動 産証 券国 際化 ) 全 国的 な景 気浮 揚 ,雇 用 促進 公 共投 資か ら国 民 投資 へ 図 −1 2 国 と国 民 へ の 政策 提 言 5 − 2 . 仮 称 : 次 世 代 社 会 形 成 法 ( 20 50 年 計 画 法 ) / 地 域 ご と の 205 0 年 の 社 会 設 計 5 −2 − 1 . 国と し て の 立法 の 意 義 と 対応 「 シ ェイ プ ア ッ プJ A P A N」 こ の と こ ろ 各 省 庁 か ら 立 法 府 に 出 さ れ る い く つ か の 法 案 (内 閣 法 ) の 中 に は 、 ス ト ッ ク 型 社 会 転 換 と 合 致 し た 流 れ が 見 ら れ る 。事 例 で 見 る と 国 土 形 成 計 画 法 、 住 生活 基 本 法 、景 観 三 法 、地 域 再 生 法 、各 種 環 境 関連 法 、 財 政投 融 資 制 度改 革 関 連、 農 林 水 産関 連 、 国 民生 活 経 済 関 連、 等 々 の 法案 は 、 個 別に 見 る と それ ぞ れ がス ト ッ ク 型社 会 転 換 のた め の 構 成 要素 の 一 つ にな っ て い る。 だ が ス トッ ク 型 社会 転 換 と いう 上 位 概 念か ら 見 る と 、そ れ ら 個 々の 政 策 を 集め て も 部 分最 適 解 総和 型 に な る。 つ ま り それ ら 個 々 の 政策 を 上 位 の側 か ら 束 ねる 立 法 が 必要 で あ る 。 こ れ を 仮 称: 次 世 代 社 会 形 成 法 ( 20 50 年 計 画 法 ) と 呼 ぶ こ と に す る 。仮 に 205 0 年 が な じ ま な け れ ば 、20 30 年 計 画 法 で も よ い 。勿 論 こ の 統 合 法 の 側 か ら 見 れ ば既 存 の 個 々の 政 策 ・ 法律 だ け で は 全体 目 的 を 達成 で き な い。 更 に 空 隙を 満 た す 立 法 が 必 要 で あ る と 思 わ れ る 。仮 称 : 次 世 代 社 会 形 成 法 (2 05 0 年 計 画 法 ) と は 、国 お よ び 各 地 方 自 治 体 が 20 50 年 ま で に 作 り 上 げ て お く べ き 国 家 の 姿・地 方 圏 の 姿 を 設 計 す る た め の 法 律 で あ る 。 つ ま り 統 合 的 視 野 ・ 長 期 的 視 点 ( W / R &L /T) に 立っ た 、 日 本の 最 上 位 概念 の 一 つ に 位置 す る 政 策で あ る 。 こ の 2 05 0 年 ゴ ー ル に 向 け て 、世 界 の 動 向 や 地 方 圏 の 進 捗 を 見 な が ら 、国 全 体 と して の 調 整 を司 る 機 能 ・機 関 が 必 要 であ ろ う 。 それ は 例 え ば次 世 代 社 会庁 あ る い は 20 50 年 計 画 庁 と で も 称 す べ き 、立 法 府 直 属 の 機 関 と し て 設 置 す る 必 要 が 12 あ るか も し れ ない 。 そ の 機関 は 既 存 の 各省 庁 か ら の出 向 者 で 構成 さ れ る 現在 の 内 閣府 や 内 閣 官房 の 直 属 機関 と は 異 な る機 構 で あ るこ と が 求 めら れ る だ ろう 。 そ の 理 由 は 世 界 動 向 調 査 ・未 来 予 測 ・20 50 年 ゴ ー ル へ の 調 整 を 司 る こ の 機 能 が 部分 最 適 解 総和 型 に 陥 るこ と を 回 避 させ る こ と にあ る 。 つ まり 偏 り の ない バ ッ ク キ ャ ス テ ィ ン グ に よ る 政 策 を 遂 行 す る た め だ 。既 存 の 社 会 シ ス テ ム の 中 で 、 ス トッ ク 型 社 会転 換 の た めの 施 策 を 急 速に 行 う こ とは 現 実 的 では な い 。 つま り や れる 範 囲 ・ でき る 部 分 から 徐 々 に 転 換し て い く こと に な ろ う。 例 え ば 個別 の 政 策 や 予 算 規 模 で 毎 年 10 % 程 度 の 前 進 が あ れ ば 理 想 で あ る 。 こ れ ま で の 構 造 改 革 は 、い わ ば 国 の 贅 肉 を 落 と し て き た 。だ が そ の 結 果 、処 々 に 明暗 も 見 え てき た 。 今 後も 日 本 の 構 造改 革 を 続 ける 必 要 が ある と す れ ば、 改 革 のゴ ー ル の 姿を 具 体 的 に国 民 に 示 す 必要 が あ る 。贅 肉 を 落 とし た 後 に 国を 健 康 体に 改 革 す るに は 、 次 は堅 固 な 骨 格 とフ レ キ シ ブル な 筋 肉 を作 り あ げ 、均 整 の と れ た 美 し い 姿 に で き る よ う 導 か な け れ ば な ら な い 。2 05 0 年 ゴ ー ル の 設 計 は そ のた め の 設 計図 で あ る 。そ れ は 国 民 に将 来 へ の 期待 、 夢 と 希望 を 具 体 的に 指 し 示す 設 計 図 でも あ る 。 5 −2 − 2 . 地方 圏 と し ての 意 義 と 対 応 「 地 方 自治 体 の 目 標設 計 」 この と こ ろ 道 州制 を 含 め た 地方 分 権 の 強 化や 三 位 一 体 改 革が 議 論 さ れ てい る 。 だ が 具体 的 な 目 標 も目 指 す べ き ゴー ル も 明 確 で ない ま ま の 地 方分 権 化 は 、 地方 圏 だ けで な く 国 体 をも 弱 体 化 さ せる こ と に な る かも し れ な い 。そ の た め 国 側が 策 定 し た 仮 称: 次 世 代 社 会 形 成 法 (2 05 0 年 計 画 法 ) に 従 っ て 、 地 方 側 が 地 方 圏 の 205 0 年 計 画 を 策 定 す る 。そ れ は 図 − 1 3 に 示 す よ う に 道 州・県 レ ベ ル か ら 市 町 村 レ ベ ル、 さ ら に は 街区 や 住 宅 域 のレ ベ ル ま で 、 それ ぞ れ の 地 域の 産 学 官 民 が時 間 を か け て 、 20 50 年 ゴ ー ル と な る 「 愛 す べ き 郷 土 」 の 設 計 を す れ ば よ い 。 北 海 道 か ら 沖縄 ま で 、 地 域に よ っ て 異 なる 気 候 ・ 風 土 ・文 化 、 地 域 ポテ ン シ ャ ル を反 映 し た地 域 オ リ ジ ナル の ハ ー ド とソ フ ト を 、 地 域の 人 々 が 自 ら描 く 。 そ の 未来 設 計 の過 程 に 、 将 来を 担 う 若 い 世代 が 中 心 的 な 位置 を 占 め て いる こ と が と りわ け 重要 で あ る。 ス トック 型 地 域 圏 の 創 り方 ・・ ・ ・ ・ 手順−1 ・ ・・ ・ シ ャ ン グ リ ラ - 2 05 0 こ の 考 え 方 ・ 意 義 を 国 民 ・ 県 民 ・ 市 町 村 民 に 理 解 さ せる ( 稚 内 か ら 与 那 国 ま で ) ・・ ・ ・ 国 民 主 体 ・ 国 民 主 動 の 改 革 行 動 ・ ・ ・ ・・・ ・ ・・ ・・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ 手 順− 2 時 間を か け て / 2 0 5 0 年 の ゴー ル ( 愛 す べ き 自 分 の郷 土 ) の 設 計 図 特 別 地 域 モ デル ( 国 が直 接 関 与 ) 県モデ ル * 地 域 オ リ ジ ナ ル の ハー ド とソ フ ト * 若 者 ・ 団塊 の世 代 等 市 ・町 ・村 モ デル 多 世 代 の 人 々 の参 加 街 区 モデ ル 各 地 域の 産 学 官 民 が 農村モデ ル 漁 村 モ デル 山 村 モ デル 計 画 的 に 時 間 をか け て 自 分 達の 基 盤 を つ く る 。 手順−3 設 計図 に 基 づ い た 健 全 型 内 需 政 策 図 −1 3 * 市 町 村/ 一理 論 ・一 技 術 ス トッ ク 型 地 域圏 の 創 り 方 13 民つ ま り 町 方 の立 場 と し て は自 分 達 の 郷 土に 対 し て 、 例 えば 「 世 界 一 美し い ま ち づ く り 」の 視 点 や 、自 然 災 害 の 多 い 地 域 で は 「 世 界 一 安 全 ・ 安 心 の ま ち づ く り 」 の 観 点 な ど か ら 参 画 す れ ば よ い 。そ の 考 え 方 の 指 標 は 、こ れ ま で に 議 論 さ れ て いる 通 り で ある 。 あ と は 図 − 1 4 に 示 す よ う に 各 地 方 自 治 体 単 位 に 稚 内 か ら 与 那 国 島 ま で 、必 要 な ら ば街 区 や 住 宅 域単 位 の レ ベ ルま で 、 あ る い は長 寿 命 型 ス トッ ク 量 や 資 源自 立 な ど ゴ ー ル と な る テ ー マ 単 位 に 、 20 50 年 ま で の 転 換 過 程 を ま と め る 。 次 に そ の 実 現 の た め の 分 業 と 協 業 、 つ ま り 組 織 や 人 の 分 担 を 割 り 振 る 。 20 50 年 の ゴ ー ル を 目指 し 実 現 可 能な 部 分 か ら 着手 し て 、 そ れ ぞれ の 地 域 単 位に ス ト ッ ク 型社 会 への 転 換 を 図る 。 世界と国内 フォア・キャスト(予測) 20 10 2020 2030 2040 目標1 目標2 目標3 目標4 バックキャスト 目標5 20 50の設計図 EX. 従来システム 水産 畜産 資源自立(ストック型社会) 森産 エネルギー 2100年 ゴール (目的 指標) EX . 国民 生活 長寿 命型資 産ストック量 生活 の豊かさ 生活の 安全・安心 夢・ 希望・可能 性 安定 型産学 経済構造 ) 〈第2次・第3次産業圏〉 EX. ・長寿命型都市域/家・建物 従来システム ・長寿命型交通通信/ライン 資源蓄積(ストック型社会) ・長寿命型各種社会イ ンフラ 分業と協業 分業と協業 分業と 協業 分業と協業 分業と 協業 ・大学 ★社会科学分野 ★自然科学分野 総合 総合 総合 総合 総合 マネジメント マネジメント マネジメント マネジメント マネジメント ・立法・行政(官) 調整 世界と国内 図 −1 4 資源 自立 ・エネルギー需給構 造 ・非 生物資源スト ック量 産業 経済 ・生 物資源再生 産基盤 (資 源再生産基 ) 経済 活力 ・国 際コスト競 争力 ・国 際的地位 調整 (予測) 調整 各 種社 会システムの姿 who ・国民・市民・個人 ・地域民・団体 ・産業界 ★工学分野 都市 や人 間社 会の姿 (非生物資源蓄積 資 産蓄 積 W hat : ストック型社会 資源自 立 食料 農業 資源 生産 基盤の姿 〈第1次産業ポテンシャル〉 2050年のゴール 社 会的安全・安 心度 社会 長 寿命型 社会資本 スト ック量 公 的財政構 造 温暖化ガス発生量 環境 資源総消 費量 自然環境ストック量 調整 調整 (予測) (予測) ス トッ ク 型 地 域圏 の 形 成 プ ロセ ス その 転 換 の 過 程は 次 世 代 に 向け た 資 産 形 成と い う 、 い わ ば健 全 型 の 内 需拡 大 の よ うな も の で あ る。 従 っ て こ の展 開 は 稚 内 か ら与 那 国 島 ま で全 国 規 模 の 事業 創 出・ 雇 用 創 出で あ り 、 首都 圏 等 に 偏 るこ と の な い景 気 の 浮 揚が で き る 。 5 −3 . 仮 称 :多 世 代 資 産形 成 法 / 日 本の 資 金 で 日本 の 資 産 を造 る 現 在 日 本 に は 5 00 0 兆 円 を 超 え る 金 融 資 産 が あ る が 、そ れ ら は 通 貨 ・ 株 式 ・ 証 券 ・ 債券 等 い ろ い ろな 形 を と り なが ら 複 雑 に 流 動し て い る 。 また そ の よ う な資 金 は 国内 だ け で な く、 現 在 で は 国際 規 模 で 広 範 囲に 流 動 し て いる 。 そ れ は あた か も 餌を 求 め て 動 き回 る 動 物 の よう に 、 魅 力 的 な投 資 先 を 求 めて 流 動 し て いる よ う にも 見 え る 。 この と こ ろ の 日本 を 生 態 系 に 例え れ ば 、 資 金と い う 動 物 にと っ て 魅力 的 な 餌 ( 投資 先 ) が 少 ない ら し く 、 国 外を 指 向 し て いる ら し い 。 日本 か ら の 資 金 流 出 の 実 情 を 、 銀 行 の 資 金 流 通 の 傾 向 か ら 推 測 し て み た い 。 図 − 15 14 の 日 銀の デ ー タ は 各地 域 圏 お よ び日 本 国 内 全 体 の預 貸 率 を 示 して い る 。 こ の全 国 圏 の デ ー タ で 見 る 限 り 、2 00 5 年 で は 25 % が 国 内 貸 出 で は な く 、国 債 等 に 向 け ら れ た以 外 は 国 外 に流 出 し て い ると 想 定 で き る 。そ の 資 金 の 行き 先 は 、 お そら く は アメ リ カ な ど 海外 の 銀 行 や 投資 機 関 を 経 て 、発 展 が め ざ まし い 中 国 や イン ド に 向か っ て 行 っ てい る と 思 わ れる 。 だ と す れ ば、 そ れ は 日 本の 資 金 で 中 国や イ ン ド の 資 産 を 造 っ て い る こ と を 意 味 し て い る 。例 え ば 賃 金 が 日 本 の 30 分 の 1 の 中国 で は 、 人件 費 に 関 して は 日 本 の 30 倍 の効 率 で 自 国の 資 産 を 形成 で き る 。 資金の圏内流通傾向 (日本の資金が国外流出しているか?) 銀行の所在圏内における預貸率(圏内貸出残高/圏内預金残高) 全国圏 関東圏 近畿圏 九州・沖縄圏 130 % 120 % 110 % 100 % 90 % 80 % 70 % 60 % 1 9 99 20 0 0 2 00 1 2002 2 00 3 2 0 04 20 0 5 日本銀行HP統計・データより作成 図 −1 5 資 金の 圏 内 流 通傾 向 日 本 国内 に 魅 力 的 な投 資 先 さ え 作れ ば 、 日 本 の 資金 で 日 本 の 資産 を 造 る こ と が で きる 。 魅 力 的 な投 資 先 を 創 り出 す こ と が で きれ ば 、 国 内 の資 金 だ け で なく 海 外 の資 金 さ え 日 本の 資 産 形 成 に一 役 か っ て く れる か も し れ ない 。 各 地 域 の英 知 を 絞っ て 設 計 さ れた ス ト ッ ク 型地 域 圏 の 長 寿 命型 社 会 イ ン フラ 等 こ そ 、 その 魅 力的 な 投 資 先で は な か ろう か 。 図 − 1 6 に 示 し た よ う に 、2 05 0 年 ゴ ー ル の 設 計 図 の 中 の 個 々 の 長 寿 命 型 イ ン フ ラ 等 が 投 資 の 対 象 に な る 。 勿 論 、 205 0 年 ゴ ー ル の 設 計 図 が 魅 力 的 な も の ほ ど 資 金 が集 ま り や すい こ と は 言う ま で も な い。 15 ストック型社会に向けたファイナンスの事例と経済連関 2050ゴール・設計図 (国) ・ ・・ 健全内需拡大 稚内から与那国まで (景気の浮揚・雇用創出) 国内資産蓄積 長寿命型インフラ整備 スケルトン 経済の健全化 (地域) 各種リサイクル法 (国内産業) 高級長寿命型製品 海外技術移転 自由化圧力(WTO) (低価格外国製品の流入) リース型産業 オフバランス対応 産業ルート 金融機関 (民間) (郵政民営化) 証券化(価値不変 ) 民間金融ルート 郵貯・簡保 年金ファンド 預貯金 × (国民) その他のカード リターン(リース料) 国民ルート 安全な資金運用 株式投資 × 外為投資 × 〒 805-0059 学校法人 九州国際大学 次世代システム 研究所 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 図 −1 6 長寿命型不動産の 公共債 日本の資金の 海外流出 ? ス トッ ク 型 社 会に 向 け た フ ァイ ナ ン ス の事 例 と 経 済連 関 こ の よう に 資 金 を 資産 に 置 換 す る際 の 、 キ ー ワ ード の 一 つ が 不動 産 証 券 化 で あ る。 不 動 産 証券 は J リ ー ト のよ う に 、 すで に 知 ら れて い る 手 法も あ る 。 だが 長 寿 命型 の 不 動 産 を対 象 に す る 場合 、 モ ノ が 劣 化し な い の で 証券 価 値 も 劣 化し な い 。長 寿 命 型 不 動 産 証 券 は 、利 回 り が 少 々 落 ち て も 証 券 価 値 が 下 が ら ず 安 定・ 安 心 なの で 、 投 資 先と し て は 相 応の 魅 力 を 有 す るは ず だ 。 こ の種 の 証 券 は 、高 級 長 寿命 型 の 製 品 や設 備 等 を 民 間企 業 が 保 有 し たり リ ー ス す る場 合 に 、 多 額の 資 産保 有 を オ フバ ラ ン ス する 際 に も 有 効で あ る 。 長 寿 命型 資 産 形 成 に向 け た フ ァ イナ ン ス ・ カ ー ドと し て は 、 この 他 に も 図 − 17 に 示 す よ う に 多 種 多 様 な 手 法 が 想 定 で き る 。年 金 フ ァ ン ド は 、目 的 か ら し て 極 め て妥 当 な カ ー ドで あ ろ う 。 また 地 方 自 治 体 など 社 会 資 本 を整 備 す る 際 に、 長 寿 命の ス ケ ル ト ン部 分 の 投 資 額に 相 当 し た 地 域通 貨 を 発 行 する 手 法 も あ り得 る か もし れ な い 。 この 通 貨 は 劣 化し な い ス ケ ル トン が 実 質 価 値を 保 証 す る 、い わ ば兌 換 通 貨 のよ う な も のだ 。 あ る いは 大 量 に リ タイ ア す る い わゆ る 団 塊 の 世 代の 人 達 が 、 例え ば 自 分 達 の 「 ふ るさ と 創 生 」 など の フ ァ ン ドを つ く り 、 若 干の 投 資 と 実 務供 出 で 人 生 再創 出 と いう よ う な 智 恵も 出 て く る かも し れ な い 。 人間 は 意 味 ア リの こ と に 貴 重な 人 生の 時 間 と 金を 使 っ て みた く な る も のだ 。 16 ストック型社会転換(魅力的投資先の創出)/ファイナンス・カード ストック(スケルトン)兌換型ファイナンス:あるべき国の姿・愛すべき郷土の姿を具体的に 描き、その長寿命型ストック(スケルトン)を 対象に民間が参画を望むファイナンス *小口 化でより多くの国 民参加 不動産 証券の 動向 *利回り は少し落ちるが価値が 不動産投資 市場の 拡大 長寿命 化 劣 化しない安全・安 心の証券 (ストック型) 不動産 証券市場の国際化 の要 不動産 価値・評価の国際化 年金ファンド ストック(スケルトン)兌換地域通貨 団 塊の世代の生 き方カード(自分の地域づくり ファンド) 民間企 業の長寿命型 資産:オフバ ランス対応 証券 税制上の 上 下水道・ガス・電気 ・通信の共同 空間利用カード インセンティブ 図 −1 7 その他 ス トッ ク 型 社 会転 換 / フ ァ イナ ン ス ・ カー ド こ こ で言 う 多 世 代 資産 形 成 法 と は以 上 の よ う な 内容 を 含 ん だ 、日 本 人 の 資 金 で 日本 人 の 長 寿命 型 資 産 を造 り 、 ス ト ック 型 社 会 へ導 い て い く政 策 で あ る。 5 −4 . 仮 称 :資 源 自 立 基盤 形 成 法 5 −4 − 1 . 非生 物 資 源 の自 立 : 長 寿 命化 に よ る 資源 蓄 積 建 物 、道 路 、 各 種 構築 物 、 製 品 等、 モ ノ を 長 寿 命化 す る こ と は、 そ れ を 構 成 す る 金属 類 や セ メ ント ・ 石 材 等 々の 素 材 、 つ ま り多 く の 非 生 物資 源 を 世 代 を超 え て 蓄積 す る こ と を意 味 す る 。 また 同 時 に そ の 再生 産 に 要 す る世 代 当 り の エネ ル ギー の 消 費 量を 削 減 で きる 。 こ の よう に し て 世 代当 た り 資 源 の大 量 消 費 が な けれ ば 、 新 た に必 要 と す る 少 量 の 資源 は 蓄 積 さ れた 資 源 の リ サイ ク ル や リ ユ ース で ま か な える 可 能 性 が 高く な る 。そ れ も 例 え ば 、建 築 物 や 構 造 物 の 梁 や 柱 や 基 礎 部 材 の 仕 様 を 標 準 化 し て 、 組 み 込み や ボ ル ト 締に し て お く と資 源 を そ の ま まリ ユ ー ス で き、 リ サ イ ク ル時 に 要 す る エ ネ ル ギ ー 消 費 を 回 避 で き る 。こ の 法 律 は 素 材 か ら 土 木・建 築・設 計 ・ 利 用 ・再 生 ま で 全 ての 分 野 の 活 動を 、 資 源 自 立 の視 点 か ら 統 合的 に ま と め るこ と を目 指 し た もの で あ る 。 205 0 年 の 設 計 図 に 示 さ れ る 建 物 、 道 路 、 各 種 構 築 物 、 等 々 の ハ ー ド は 、 こ の よ うな 観 点 か ら長 寿 命 性 を保 証 さ れ る のが 望 ま し い。 5 −4 − 2 . 生物 資 源 の 自立 : 資 源 再 生産 の た め の基 盤 整 備 農 林 水 産 に関 す る 生 物資 源 、 具 体 的に は 森 林 資源 と 食 料 の自 立 を 目 指し た も の であ る 。 日 々の 生 活 で 消費 さ れ る 食 料や エ ネ ル ギー は 、 い わば フ ロ ー の資 源 17 で ある 。 そ の 供給 が 絶 た れる と 私 達 は 生き て は い けな い 。 い かな る 国 際 情勢 に な ろう と 、 そ れら の 資 源 の自 給 が 可 能 な基 盤 を 整 備し て お く こと は 、 国 民の 生 命 を守 る と い う国 家 安 全 保障 を 考 え る 上で の 基 本 的な 要 素 で ある 。 し か しな が ら 現 在 の 日 本 の 食 料 自 給 率 は カ ロ リ ー ベ ー ス で 40 % 程 度 と 言 わ れ て い る 。も と も と日 本 の 温 暖多 雨 の 気 候は 植 物 の 生 育に 適 し 、 太陽 エ ネ ル ギー を 素 に した 生 物 の再 生 産 シ ステ ム に は 恵ま れ た 条 件 が備 わ っ て いる 。 日 本 の第 1 次 産 業は 基 本 的な 条 件 に は恵 ま れ て いる の だ 。 そ れが 振 る わ ない の は 主 に経 済 シ ス テム 面 の 制約 か ら で ある 。 例 え ば私 達 の 通 貨「円」の 為 替 レー ト が 、 実勢 価 値 と いわ れ る 1 ド ル = 1 60 円 程 度 だ と す れ ば 、 食 料 は 輸 入 量 が 減 少 し 自 給 率 が 高 く な る 。 日 本の 気 候 や 地形 地 質 等 の条 件 か ら 生 物資 源 の 再 生産 能 力 で 、自 然 共 生 を図 り な がら も 、 7 千 万 人 の 人口 を 養 い 得る と 言 わ れ てい る 。 こ こ で 自 然共 生 つ ま り自 然 保 護 や 生物 多 様 性 保全 は 、 決 して 情 緒 的 なテ ー マ で はな い 。 地 域の 生 物 資 源の 自 立 を 図 る上 で は 、 ヒト が 食 料 その 他 の 資 源と し て 利用 す る 生 物資 源 と 、 野生 の 生 物 は 連鎖 ・ 連 続 の系 と し て 存在 し て い る。 そ の ため 地 域 圏 のヒ ト が 利 用す る 生 物 資 源の 生 産 を 安定 的 か つ 持続 的 に す るた め に は 、自 然 共 生 の 観 点 は 不 可 欠 で あ る 。つ ま り 2 05 0 年 の 設 計 図 に 自 然 環 境 の 保 全 を明 確 に 位 置付 け る こ とが 、 ヒ ト 社 会の 持 続 性 を保 障 す る こと に な る 。 今 世紀 末 に 落 ち着 く 日 本 の人 口 が 7 千 万人 と 予 測 され る 中 で 、日 本 の 国 土へ の 生物 資 源 供 給能 力 が 7 千万 人 分 と 言 うこ と は 、 第 1 次 産 業 の国 内 的 な 地産 地 消 の均 衡 を 図 るこ と が で きる と 言 う こ とで あ る 。 第 1 次 産 業 つま り 生 物 資源 の 再 生産 基 盤 は 、放 置 す れ ば生 産 能 力 が 減衰 す る 。 現在 の 日 本 では 経 済 シ ステ ム 起 因で の 放 置 が、 林 業 で も農 業 で も 見 られ る 。 世 界人 口 が 日 本と は 逆 に 指数 的 に 増 加 する 中 で 、 近未 来 に お いて 生 物 資 源の 枯 渇 は 必 至 で あ る 。そ の た め 2 05 0 年 の 設 計 図 は 、地 域 圏 内 で の 地 産 地 消 を 前 提 に する 必 要 が ある 。 そ の 認識 を 基 に 、 現在 の 第 1 次産 業 の 再 生産 基 盤 の 整備 が 見 直さ れ る こ とに な ろ う 。そ の 地 域 の 将来 の 予 想 人口 に 供 給 でき る 、 最 低限 の 食 料や 森 林 資 源な ど の 生 産基 盤 を 確 保 する こ と は 、と り も な おさ ず 次 世 代の 生 存 権を 保 障 す るこ と な の だか ら 。 そ の意 味 か ら 、生 物 資 源 の生 産 基 盤 と して は 、 現 在社 会 で 利 用さ れ て い ない 部 分の 活 用 も 考慮 す べ き であ る 。 例 え ば河 川 ・ 池 沼な ど 内 水 面の 水 産 資 源基 盤 と して の 検 討 、あ る い は 森林 境 界 に お ける 動 植 物 の資 源 的 利 用技 術 な ど 、現 在 の 日本 社 会 で 未利 用 あ る いは 忘 れ ら れ た資 源 利 用 の可 能 性 ま で、 現 時 点 から 研 究 して お く 必 要が あ り そ うだ 。 そ の よ うな 利 用 と 自然 共 生 と が相 反 す る こと は な い。 5 −5 . 全 体 政策 か ら 部 分政 策 へ の 展 開 地 方 圏 の 将 来 の 到 達 す べ き ゴ ー ル・ 2 05 0 年 の 全 体 の 設 計 図 を 先 ず 描 き 、そ の 中 の やれ る 部 分 か ら徐 々 に 実 行 して い く の が 基 本的 な 政 策 展 開で あ る 。 全 体の 設 計図 中 の 部 分つ ま り 構 成要 素 は、図 −14 の 右欄 に 示 さ れて い る よ うな 、生活 ( ラ イ フ ス タ イ ル )、地 域 設 計 ( ア ロ ケ ー シ ョ ン ) 、都 市 構 造 、資 源 構 造 、産 業 経 済 構 造、 等 々 か ら なる 。 勿 論 こ の分 類 ・ カ テ ゴ リー の 内 容 も 当事 者 達 が 自 由に 18 設 計 でき る 。 そ の 設計 図 は 地 域 ごと に 多 様 な も のに な る は ず だ。 地 域 の 地 理的 位 置 、気 候 、 文 化 ・風 土 等 が 、 多様 な も の で あ るか ら だ 。 そ の多 様 性 が 地 域の 価 値 を創 出 す る こ とに も な る か もし れ な い 。 例 えば 地 方 都 市 はそ の 地 域 の 条件 に 従 って 、 都 市 計 画の 思 想 ・ 技 術・ 景 観 ・ デ ザ イン な ど は 独 自の も の に な る。 そ れら を 図 −13 に示 し た よ うに 、地域 全 体 か ら町 村・街 区 の 単 位ま で 展 開 して い く。 ま た 生物 資 源 の 基 盤整 備 モ デ ル も地 域 特 性 に よ って 多 様 な も のに な る は ず だ。 そ こ で は 前 述 の 、現 在 の 日 本 社 会 で 未 利 用 あ る い は 忘 れ ら れ た 資 源 利 用 の 開 発 、 例 え ば未 利 用 の 内 水面 や 森 林 境 界で の 食 材 の 開 発の よ う な こ とが 織 り 込 ま れる 必 要 があ ろ う 。 そ の理 由 は 、 急 速な 変 化 を 遂 げ る現 在 の 人 間 社会 の 、 緊 急 時へ の 対 応策 と し て 不 可欠 で あ る か らだ 。 事 例 を 探 すと 、 昔 の 人 達が 食 べ て い たナ マ ズ やフ ナ 等 の 川 魚、 あ る い は シカ や ウ サ ギ な どを 現 在 の 日 本人 は 食 材 と して 考 え ては い な い 。 だが ヨ ー ロ ッ パや 東 南 ア ジ ア ・中 央 ア ジ ア では 日 常 の 食 文化 と し て定 着 し て い る。 日 本 の 国 土に は そ れ ら の 食材 を 資 源 と して 生 産 す る ポテ ン シ ャル は あ る が 、そ の 利 用 は 定着 し て い な い 。世 界 人 口 の 指数 的 増 加 を 見れ ば 近 い将 来 、 あ る とき 突 然 に 食 料不 足 が 生 じ る かも し れ な い 。そ の た め 地 方圏 の ど こか で 、 こ れ らの 未 利 用 の 資源 利 用 技 術 や 文化 を 担 保 し てお く こ と が 重要 で あ る。 も ち ろ ん これ は 食 材 に 限ら ず 、 エ ネ ル ギー を は じ め 、あ ら ゆ る 資 源に つ いて も 同 じ であ る 。 地 域 の多 様 な 文 化 も、 モ ノ と 同 じよ う に ス ト ッ クで あ る 。 有 形で あ ろ う と 無 形 で あろ う と 、 魅 力的 な 枠 組 が あれ ば フ ァ ン ド を組 ん で 事 業 化で き る こ と は前 に も 述 べ た 。私 達 は 2 05 0 年 ゴ ー ル の 設 計 図 に 描 い た プ ラ ン を 、短 期 間 に 一 度 に 果 た すこ と が で き ない 。 そ の た め、 地 域 圏 内 の 特定 の 技 術 や シス テ ム あ る いは 文 化 を前 述 の よ う な枠 組 み で ま とめ る 。 次 に 地 域圏 内 で テ ー マに 偏 り が 生 じな い よ うに 、 全 体 的 視点 か ら 地 域 内に お け る テ ー マの 調 整 、 つ まり 分 業 と 協 業を 行 う 。そ れ は 例 え ば、 一 市 町 村 :一 技 術 ・ 一 理 論な ど の 基 準 を作 り 、 地 方 圏の ど こ か で 担 保 し て お く 。 そ う す る こ と で 、 20 50 年 ま で の 転 換 過 程 で 緊 急 事 態 に 遭 遇 して も 、 個 々 に担 保 し て き た技 術 や 理 論 を 全体 に 普 及 で きる 。 そ れ は いわ ば 地域 全 体 と して の 安 全 保障 を 担 保 す るこ と に 他 なら な い 。 6 .日 本 へ の 政策 提 言 : サマ リ ー 日 本と い う 国 家 およ び 日 本 国 民に 対 し て 、 スト ッ ク 型 社 会 への 転 換 政 策 を提 言 し てき た 。 本 章の 最 後 に 当た り こ の 提 言の 意 義 を 総括 し て み たい 。 6 −1 . 日 本 が目 指 す 社 会構 造 の 改 革 ① 国民 の 生 活 を豊 か に す る。 ② 経 済構 造 を 健 全 化し 、 日 本 の 国際 コ ス ト 競 争 力を 回 復 す る こと 。 つ ま り 生 活 レ ベル を 下 げ ず に賃 金 と 生 活 コ スト を 国 際 水 準に 戻 す 。 結 果と し て 国 際 社 会で 日 本 人 を活 か せ る 条件 を 回 復 す る。 ③ 資源 自 立 圏 を形 成 し 、 次世 代 の 生 存 権・ 安 全 を 保障 す る 。 ④ 地球 環 境 問 題へ の 本 質 的な 対 応 。 19 6 −2 . 当 面 の経 済 政 策 から の 意 義 ⑤ 日 本 の 金 融 資産 の 海 外 流 出 を 回 避 す る 。 特 に郵 政 民 営 化 後 、 日 本 の 資 金を 国 内の 資 産 形 成に 向 け る こと 。 安 定 し た魅 力 的 な 投資 先 を 国 内に つ く る 。 ⑥ 安 定 ・ 持 続 型の 国 づ く り ・ 地 域 づ く り を 急 ぐ。 次 世 代 の 資 産 形 成 と い う健 全 な 内 需 拡 大 を通 し て 、 国 内 の 景 気 浮 揚 と 全 国 規模 の 安 定 型 雇 用 を 創 出 す る。 ⑦ 不 動 産 証 券 市場 の 国 際 化 。 世 界 の ど こ で あ って も 不 動 産 価 値 の 国 際 評 価を 受 け る 時 代 に 至る 。 従 っ て 国 内 の ど こ で あ ろ う と地 域 の 価 値 を 高 め る た め の 政策 が 不 可 欠に な る 。 6 −3 . 今 日 的な 政 策 ニ ーズ ⑧ 国 民 に 改 革 の具 体 的 ゴ ー ル 、 将 来 の ビ ジ ョ ン・ 夢 ・ 希 望 を 明 示 す る こ と。 国 民は 未 来 志 向の 政 策 を 期待 し て い る 。 ⑨ 個 別 の 新 法・新 政 策 は ス ト ッ ク 型 社 会 転 換 に 合 致 す る 方 向 に 向 か っ て い る 。 Ex. 住 生 活 基 本 法 、 国 土 形 成 計 画 法 、 景 観 三 法 、 地 域 再 生 法 、 各 種環 境 関 連 法、 財 政 投 融資 制 度 改 革 関連 、 農 林 水産 関 連 、 国 民生 活 関 連 ・・ ・ 。 ⑩ だ が こ れ ら の新 法 ・ 新 政 策 も 個 別 に 展 開 す れば 、 部 分 最 適 解 の 総 和 型 にな る 。そ の た め 、こ れ ら を 束ね る 政 策 が 必要 で あ る 。 ⑪ 地 方 分 権 化 ・三 位 一 体 の 改 革 に は 、 地 方 圏 が主 体 的 か つ 自 発 的 に 展 開 でき る 政策 が 必 要 であ る 。 ⑫ 団塊 の 世 代 の活 動 の 場 を拓 く 必 要 が ある 。 国 民 参 加 の 下 で、 今 後 の 日 本 の あ る べ き 姿 を 設計 し 、 そ れ を 自 ら 実 現 し てい く プ ロ セ ス とし て の 「 ス ト ッ ク 型 社 会 転 換 」を 、 こ の 国 の 政 策 と し て 打 ち出 す こ とを 提 言 す るも の で あ る。 以上 20 ス トッ ク 型 街 区の 形 成 に 向け て 【 サス テ ィ ナ ブス ト ッ ク 型街 区 の 構 成と 整 備 効 果 】 五 十嵐 1 健 ( 学校 法 人 九 州国 際 大 学 次世 代 シ ス テ ム研 究 所 主任 研 究 員 ) 研究の目的 1 −1 . サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型住 宅 の 形 成 日 本の 人 口 は これ か ら 減 少に 転 じ 、21 世 紀末 に は 半 減す る と 言 われ て い る。 そ うし た 社 会 の成 熟 化 の 中で 、 利 便 施設 の 整 っ た都 心 居 住 に対 す る ニ ーズ が 高 ま って お り 、 集積 度 の 高 い「 街 な か 」に 環 境 負 荷や 行 政 コ スト が 少 な くか つ 生 活 利便 施 設 が 整っ た 良 質 で持 続 的 な 住宅 市 街 地 を 形成 す る 必 要が あ る 。 さ ら に 、 出生 率 を 高 め人 口 の 減 少に 歯 止 め を かけ る た め には 長 期 的 な生 活 の 安 定も 不 可 欠 で、 そ の た めに も 良 質 な住 宅 ス ト ッ クの 整 備 は 必要 で あ る 。こ こ で は、 堅 固 な 構造 と 適 正 な規 模 を 持 ち、 世 代 を 超 えて 長 く 使 うこ と が 出 きる 住 宅 を“ ス ト ッ ク型 住 宅 ” と呼 ぶ 。 ス トッ ク 型 住 宅 は、 構 造 部 材の 長 寿 命 化や ラ イ フタ イ ル の 変化 に 合 わ せて 間 取 の 変更 を 行 な う フレ キ シ ビ リテ ィ 、 部 材や 設 備 機器 の 更 新 のた め の 配 慮な ど を 行 なう た め 初 期 コス ト は 割 高と な る が 、解 体 更 新が 無 く ま た改 修 も 容 易で ラ イ フ サイ ク ル コ ス トで は 経 済 性が 高 い 。 今 日の 日 本 の 住宅 は 、 平 均寿 命 が 30 年 以 下 と いわ れ る よ う に、 欧 米 に 比較 し 極 端 に 短 く 、8 0 年 の 生 涯 に 2 度 の 建 替 え を 行 な う 計 算 に な る 。そ の た め に 生 涯 に 要 す る 住 宅 コ ス ト は 、 生 涯 収 入 の 20 % ∼ 3 0% と い わ れ る 程 高 い 。 ま た 、 そ の 建築 の 度 に 多大 の 資 源 が使 わ れ 廃 棄さ れ る こ と にな る 。 そ のた め 、 解 体更 新 の 不要 な ス ト ック 型 に 転 換す れ ば 生 涯の 住 宅 コ ス トは 軽 減 さ れ、 環 境 負 荷も 少 な くな る 。 さ らに 、 そ う した 住 宅 を 継承 し た 次 世 代の 生 涯 住 宅コ ス ト も 大き く 軽 減さ れ る た め、 こ れ か ら人 口 減 少 資に 向 か う 日 本社 会 が 持 続性 を 高 め るこ と に もつ な が る 。 特 に、 近 年 そ の割 合 が 増 加し 、 建 設 され る 住 宅 の半 分 を 占 め ると い わ れ る集 合 住宅 は 、 個 人の 意 思 で 建替 え を 行 なう こ と が 出 来ず 、 住 民 の総 意 に 基 づい て 行 なう 必 要 が あり 建 替 え 更新 が 難 し い。 そ の た め に、 老 朽 化 し空 室 の 目 立つ マ ン ショ ン も 増 えて い る 。 また 、 集 合 住宅 居 住 者 に とっ て 、 建 替え 更 新 は 建築 費 以 外に 仮 住 宅 の確 保 な ど もあ り そ の 経済 的 負 担 は 大き く 、 特 に年 金 以 外 に収 入 が 無い 高 齢 期 での 建 替 え は難 し い 。 その た め に 、 早め に マ ン ショ ン を 売 り抜 け る とい う い わ ば“ 住 宅 の ババ 抜 き ゲ ーム ” も 起 き てい る 。 こ うし た 状 態 は高 齢 化 社会 の 進 展 の中 で 社 会 の不 安 要 素 とな り 、 そ の 解消 の た め にも 集 合 住 宅の 長 寿 命化 は 不 可 欠で あ る 。 1 1 −2 . 良 好 で持 続 的 な 街な か の 形 成 しかし、単に建築物を長寿命化させるだけでは良好な市 街地は形成されず、 時 間の 経 過 と とも に 居 住 環境 が 悪 化 し、 マ ン シ ョ ン立 ち 枯 れ 問題 の よ う な社 会 問 題が 発 生 す る。 そ れ を 避け る た め には 、 都 市 住 宅は 社 会 資 本の 整 備 で ある と 言 う視 点 に 立 ち、 敷 地 周 辺の 都 市 イ ンフ ラ と の 一 体整 備 、 持 続的 な エ リ アマ ネ ジ メン ト シ ス テム の 構 築 など 、 良 好 で持 続 的 な 街 区の 形 成 を 行な う 必 要 があ る 。 そ うし た 街 区 をサ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区 と呼 ぶ 。 19 60 年 代 以 降 、モ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン の 進 展 に 伴 い 住 宅 市 街 地 の 郊 外 化 が 進 ん だ 。そ の た め に郊 外 の 交 通適 地 に 商 業施 設 や 生 活 利便 施 設 が つら れ 、 周 辺市 街 地 が活 性 化 す る中 で 既 成 市街 地 が 空 洞化 し て い っ た。 し か し 、自 動 車 に 依存 し た 生活 は で 高 齢期 の 生 活 に不 安 が あ り、 分 散 型 の 都市 構 造 で は福 祉 サ ー ビス や 社 会基 盤 施 設 の維 持 更 新 など 社 会 的 なサ ー ビ ス の コス ト も 大 きい 。 社 会 基盤 施 設 が整 い 駅 を 中心 と し た 歩行 に よ る 生活 が 可 能 な 街な か 居 住 が進 め ば 、 社会 コ ス トや 環 境 負 荷の 軽 減 に も役 立 つ 。 一 方 、 集 合住 宅 な ど 良質 な 住 宅 スト ッ ク の 整 備に 伴 い 、 利便 施 設 の 整っ た 街 な かに 都 心 居 住に 対 す る ニー ズ も 高 まっ て い る 。 持続 可 能 な 市街 地 の 形 成の た め には 、 成 熟 型社 会 に 移 行す る 今 後 は、 集 積 度 の 高い 「 街 な か」 に 環 境 負荷 や 行 政コ ス ト が 少な い 街 な かに 、 ス ト ック 型 住 宅 と 生活 利 便 施 設や 街 区 イ ンフ ラ が 一体 と な っ たサ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 街 区 を 、面 的 に 再 整備 し 運 営 して い く こと に よ り 、都 市 経 営 コス ト ・ 地 球環 境 負 荷 ・ 生涯 住 宅 コ スト を 軽 減 して 持 続 可能 な 市 街 地の 形 成 を 行な い 、 安 心・ 安 全 な 社 会を 実 現 す る こ と が 出 来 る 。 こ れま で 、 多 くの 時 間 と 労力 を か け て行 な っ て きた 都 心 の 商 業再 開 発 が 、わ ず か 20 年 程 度で 商 業 活 動の 変 化 に 伴い 閉 鎖 さ れ る事 態 も 生 じて い る 。 また 、 そ うし た ビ ル がコ ン バ ー ジョ ン に よ り住 宅 や 老 人 施設 に 改 装 され る な ど 、建 築 施 設の 機 能 変 化は 激 し い 。ま た 団 地 に整 備 さ れ た 児童 公 園 や 学校 が 住 民 の高 齢 化 とと も に 不 要と な り 、 緑の 多 い ポ ケッ ト パ ー ク や福 祉 施 設 に造 り か え られ る 事も珍しくない。サスティナブル・ストック型街区の建築や社会 基盤施設は、 そ うし た 社 会 や都 市 の 環 境変 化 に 伴 い機 能 の 変 更 を行 な い な がら 、 使 わ れ続 け て いく こ と が 出き る フ レ キシ ビ リ テ ィを も つ っ て いる 必 要 が ある 。 し かし 、 戦 後 の急 速 な 発 展に あ わ せ 、そ れ を 後 追い す る 形 で 整備 さ れ て きた 今 日 の 日 本 の 都 市 は そ う し た 構 造 に な っ て い な い 。21 世 紀 の 持 続 的 な 成 熟 型 社 会 に向 け て 、 今後 そ う し た持 続 的 な 市街 地 の 形 成 の研 究 を 行 なう 予 備 研 究と し て 、本 研 究 で はス サ ス テ ィナ ブ ル ・ スト ッ ク 型 の 構成 要 件 と その 整 備 効 果に つ い て検 討 を 行 なう 。 2 2 サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区形 成 の 課 題 2 −1 . 住 宅 の長 寿 命 化 の効 果 200 5 年 、日 本 の 人 口 が は じ め て 前 年 を 下 回 っ た 年 に な っ た 。今 後 人 口 は 長 期 に わ た っ て 減 少 し 、 2100 年 に は 70 00 万 人 に な る と 言 う 。 そ の 原 因 は 出 生 率 の 低 下に あ り 、 社会 の 成 熟 化に よ る 経 済活 力 の 低 下 や将 来 に 対 する 不 安 が その 要 因の一つに挙げられている。現実に、バブル崩壊後の企業の倒産 とリストラ、 デ フレ ス パ イ ラル 経 済 の なか で 、 住 宅基 盤 の 脆 弱 性の た め に 収入 の 減 少 によ る 住 居の 喪 失 や 住宅 ロ ー ン によ る 破 産 の恐 怖 を 味 わ った 人 は 多 い。 生 活の 基 盤 で ある 住 宅 を 長寿 命 化 し 次世 代 へ 資 産 を継 承 す る こと に よ り 、生 涯 住宅 コ ス ト を軽 減 し 生 活の 安 定 を 図る こ と が 出 来る 。 特 に 、長 寿 命 型 の住 宅 を 継承 し て 使 う次 世 代 で は生 涯 住 宅 コス ト を 半 減 でき 、 持 続 可能 な 市 街 地の 形 成 と長 寿 命 型 住宅 の 整 備 は少 子 高 齢 化対 策 と も な る。 ま た 、地 球 環 境 問 題 へ の 関 心 が 高 ま り 、 COP 3 の 達 成 の た め 建 築・ 都 市 分 野 で も C O2 の 削 減 が 課 題 と な り 、 さ ま ざ ま な 施 策 が 展 開 さ れ て い る 。 た だ 、平 均 寿 命 が 30 年 以 下 と 欧 米 に 比 べ 建 築 の 寿 命 が 極 端 に 短 い 日 本 で は 、 そ の解 体 更 新 によ る 多 大 の資 源 の 消 費も 問 題 で あ る。 そ の た め、 日 本 に おけ る 環 境負 荷 の 軽 減策 と し て は、 資 源 の 再利 用 や 生 活 エネ ル ギ ー の軽 減 だ け では 不 十 分で 、 持 続 型都 市 の 基 本と な る 建 築物 の 寿 命 を 長命 化 さ せ る必 要 が あ る。 そ れ に よ っ て 、 1 世 紀 後 に は 建 築 生 産 活 動 に 伴 う CO 2 の 発 生 を 半 減 さ せ る こ と が 出 来る こ と が 分か っ て い る。 2 −2 . サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 形 成 の 課題 期 間当 た り コ スト を 顕 在 化さ せ る 事 業手 法 こ れ ま で 日本 に お け る都 市 整 備 の課 題 は 、 増 加す る 都 市 人口 と 拡 大 する 機 能 を 充足 さ せ る ため の 住 宅 建設 や 都 市 イン フ ラ の 整 備で あ り 、 周辺 環 境 の 変化 や ラ イフ ス タ イ ルの 変 化 に 応じ 、 そ れ を運 営 し 機 能 を変 更 し て いく と 言 う こと に あ まり 関 心 を 払っ て こ な かっ た 。 し かし 、 社 会 の 成熟 化 に と もな い 良 好 な住 環 境 やコ ミ ュ ニ ティ の 整 備 され た と こ ろは 良 い 人 が 集ま り 地 価 が上 が り 、 そう で な いと こ ろ は スラ ム 化 し てい く と い う、 モ ザ イ ク 状の 街 が 形 成さ れ る 欧 米型 の 都 市構 造 に 変 化し て い く もの と 思 わ れ、 住 宅 の 資 産価 値 を 上 げて 投 資 性 向を 高 め ると 言 う 意 味で も エ リ アマ ネ ジ メ ント は 重 要 に なる 。 ま た 、 現 に 欧 米 の 建 築 の 寿 命 は 10 0 年 以 上 有 り 、 集 合 住 宅 の 長 寿 命 化 は 技 術 的 には 十 分 可 能で あ る 。 また 、 建 築 基準 法 の 性 能 規定 へ の 改 定、 品 質 確 保法 の 制 定な ど 、 建 築物 の 基 本 性能 や 品 質 の確 保 を 目 指 す制 度 の 整 備も 進 め ら れて い る 。し か し 、 超高 層 住 宅 など で SI 住宅 の 採 用 は 増え つ つ あ るが 、 一 般 の集 合 住 宅で は 厳 し いコ ス ト 削 減の な か で 、そ の 普 及 は 全体 と し て 進ん で い な い。 逆 に不 況 に よ る厳 し い 供 給コ ス ト 競 争の 中 で 、 一般 的 に は 現 在の 機 能 や 間取 りの条件 は重視 するが目 に見え ない耐 久性や 耐震性 は軽視す るよう な造り 方 3 の 方向 に 進 ん でい る 。 昨 年 12 月 に 発生 し た 耐 震 偽装 事 件 は 、そ う し た 状況 の 中 で発 生 し た 問題 で あ る 。 こ うし た 状 況 を改 善 す る ため に は 、 期間 あ た り のコ ス ト を 顕 在化 さ せ る よう な 事業 手 法 や 供給 方 法 の 整備 も 必 要 であ る 。 官 民連 携 に よ る街 づ く り こ れ ま で 日 本 の 都 市 整 備 は 、都 市 イ ン フ ラ の 整 備 と 敷 地 内 建 物 の 整 備 は 個 別 に行 な わ れ てき た 。 こ のた め 、 建 築は そ の 場 その 時 の 機 能に 特 化 し て効 率 性を 追 及 し 、良 好 な 街 並み の 形 成 とい う 視 点 が欠 け て い た。 ま た 、 都市 イ ンフ ラ に も 相互 の 関 係 性が 欠 落 し てい た た め 、建 物 の 工 事が 行 な わ れる ご とに 道 路 の 掘り 返 し が 発生 し た 。 また 、 せ っ かく 長 寿 命 型の 建 築 施 設を 建 設し て も 、 隣設 す る 建 物や 道 路 と の関 係 性 が 悪く 、 そ の 寿命 を ま っ とう せず に取 り 壊さ れる こ とが 多か っ た。 こ の半 世 紀、 日 本 は 経 済の 発 展 に 合わ せ て、 機 能 的 で快 適 な 都 市を 効 率 よ く 造 るこ と に 努 めて き た 。 それ は 一 定 の成 果 を あ げ たが 、 社 会 の成 熟 化 や 地球 環 境 問題 の 顕 在 化の 中 で 、 今後 は そ う した ス ク ラ ッ プア ン ド ビ ルド 型 の 街 づく り は 難 し い 。 ま た 、「 小 さ な 官 」 を め ざ し 都 市 経 営 の 効 率 化 を す る た め に も 、 建 築 と街 区 の 基 盤施 設 ( 街 区イ ン フ ラ )と が 一 体 化 しか つ 可 変 性の 高 い 日 本型 の 街 区建 築 の あ り方 を 追 求 して い く 必 要が あ る と 考 えて い る 。 こ のた め 本 研 究は 、 地 元 自治 体 及 び 企業 と の 連 携の も と に 、 具体 的 な 整 備適 地 にサ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 の 住宅 街 区 を 整 備し 、 そ う した サ ス テ ィナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 の 実 証と 事 業 手 法の 研 究 を 目 指す も の で ある 。 4 3 サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区の 構 成 と 想 定効 果 3 −1 . サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 の 構 成 サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区と は 、 こ れ まで 都 市 − 建築 と い っ た 2 元 論 で 構 成 さ れ て き た 日 本 の 都 市 に 中 間 領 域 と し て の 「 公 空 間 ( コ モ ン )」 と い う 概 念を 導 入 し 、そ の 整 備 を通 じ て 良 好で 持 続 的 な 市街 地 の 形 成を 目 指 し た街 区 で 、 既 成 市 街 地 内 の お お む ね 数 ha か ら 数 十 h a の 一 団 の 地 区 を 対 象 と す る 。 サ ステ ィ ナ ブ ル・ ス ト ッ ク型 街 区 の 要件 ① 建設 に多大 の費用と エネル ギーを 要する 住宅や 街区イン フラの 骨格部 分 ( スケ ル ト ン )を 高 耐 久 にす る と と もに 、 技 術 の進 歩 や 社 会 の変 化 に よ っ て その 機 能 を 更新 ・ 変 更 でき る フ ロ ー部 分 を 組 み合 わ せ る こ とに よ っ て 持 続 性 を 高 め た 街 区 の 構 造 。( ス ト ッ ク 部 分 と フ ロ ー 部 分 に よ る 構 成 ) ② 都 市 環 境 負荷 を 軽 減 しコ ミ ュ ニ ティ や 日 常 生 活を 支 援 す る機 能 の 強 化。 特 に 街区 を ま た がり 、 地 域 の安 全 性 や 快適 性 を 高 める ネ ッ ト ワ ーク 型 施 設 や 環 境配 慮 形 施 設の 整 備 、 街並 み の 一 体感 を 醸 成 する 低 層 部 の 生活 利 便 施 設 や 外壁 の 構 成 など に 対 す る配 慮 。 ③ そう した施 設が良好 に保た れるた めの持 続的な 街区マネ ジメン トシス テ ム の存 在 。 が 必要 と な る 。 街区の持続性に関する考え方 ストック型街区の対象範囲 サ ステ ィ ナ ブ ル・ ス ト ッ ク型 街 区 の 概念 図 5 街 区の 持 続 性 の構 成 要 素 街 区 が 持 続 す る た め に は 、敷 地 内 の 建 築 施 設 だ け で な く 、周 辺 と の ア ク セ ス 、 供 給処 理 施 設 が整 っ て お り、 ま た 近 隣街 区 と 連 携 して 有 効 に 機能 す る 生 活利 便 施 設や 業 務 施 設も 低 層 部 に整 備 さ れ てい る 必 要 が ある 。 ま た 、そ う し た ハー ド ( 施設 ) の 骨 格部 分 は 長 寿命 性 を 持 ちな が ら 、 中 のコ ン ポ ー ネン ト ( 装 置) は 時代のニ ーズに 対応し変 えてい くこと ができ るフロ ー型の構 成にな ってい る 必 要が あ る 。 ま た 、 街 区の マ ネ ジ メン ト 体 制 もそ う し た 施 設を 常 に 良 好に 維 持 し 、必 要 な 修 繕や 変 更 を 効果 的 に 行 なえ る 必 要 があ り 、 事 業 化の 仕 組 み とし て は 、 街区 の 良好性を 資産価 値と期間 あたり の経済 性を具 現でき る事業ス キーム を備え る 必 要が あ る 。 そう し た 街 区の 持 続 性 の構 成 要 素 を 現段 階 で 整 理す る と 以 下の も の が想 定 さ れ る。 街区の 持続 性に関 する 考え方 ストック型街区の対象範囲 建 築レ ベル ハード ︵施 設︶ 世 う ( 分 代を 超え て使 長寿 命の 骨格 スト ック 部 ) 時 対 の ( 代の ニー ズに 応し た短 寿命 装置 フロ ー部 分) 街 区( コモ ン) レベ ル 街 区ス 建物 歩行 敷地 街区 緑地 など 建 築ス ケル トン 構造 躯体 共 同 ユ ー テ ィ テ ィ 住 棟 内 移 動 空 間 など ケル 外装 者用 内共 共用 ・樹 建 築イ ンフ ィル 住 戸内 装・ 設備 業 務施 設内 装 ・ 設備 ( 個人 の維 持・ 管 理部 分) トン 都 市レ ベル 都 市 イ ン フ ラ 住 宅 市 街 地 道 路 ・鉄 道 都市 施設 産業 基盤 など 空間 用施 設 施設 木 商 産 供 な 街 区イ ンフ ィル 屋外 装置 プ レ イ ロ ッ ト 内 施設 生活 利便 施設 駐 車 ・ 駐 輪 施 設 など ソフト ︵運 営︶ タ ウ ン マ ネ ジ メ ン ト 建 築ス ケル トン とコ モン 一体 的管理 ・運 営に よる 機能 ・サ ービ スの向 上 → コス ト& 環境 負荷 の最 小化 /価値 ・サ ービ スの 最大 化 ( 街区 運営 会社 によ る一 体的 管理の 仕組 み、 住民 参加 の仕 組み ) 事 業ス キー ム S I型 施設 の資 産価 値と 使用 コスト を顕 在化 させ る所 有・ 運営 の仕組 み →不 動産 から 流動 資産へ 、価 格評 価の 客観 性・ 妥当 性の担 保 ( V/ Cと Q/ Lの 評価 ) 6 公 共に よる 運 営・ 管理 業・ 業務 施設 業施 設 給処 理施 設 ど 個 別事 業主 体に よ る運 営・ 管理 3 −2 . 現 段 階で 想 定 さ れる 効 果 そ うし た サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 の 現 段階 で 想 定 さ れる 効 果 は 、以 下 に示 す と お りで あ る 。 【 主要 な 効 果 】 ① 街 な か に 良好 な 都 市 イン フ ラ を そな え た サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 を 整 備 す る こ と に よ り 、「 安 心 ・ 安 全 な 暮 ら し 」 の 場 を 提 供 す る 。 ② 持 続 性 の 高い 集 約 的 な市 街 地 を 街な か に 整 備 する こ と に より 、 自 動 車交 通 量 の 削 減 、 都 市 経 営 コ ス ト の 削 減 が 図 れ る 。( コ ン パ ク ト シ テ ィ の 実 現 ) ③ 街 区 と 建 築施 設 の 構 造を 低 環 境 負荷 の 構 造 ・ 設備 に す る とと も に 、 資源 消 費 量の 大 き い 建築 構 造 物 を長 寿 命 化 とす る こ と で、 建 築 生 産 によ っ て 発 生 す る C O2 の 発 生 量 を 長 期 的 に 半 減 で き る 。 ④ 建 築 の 長 寿命 化 、 維 持管 理 の 効 率化 な ど に よ り生 涯 住 宅 コス ト が 低 減で き る。 ⑤ 面 積 に ゆ と り の あ る 非 所 有 型 住 宅 の 普 及 が 可 能 と な る 。( 日 本 2 1 世 紀 ビ ジ ョ ン : 20 30 年 に 首 都 圏 で 10 0 ㎡ の 賃 貸 住 宅 ) 【 付加 的 効 果 】 ⑥ 不 動 産 の 所有 と 使 用 を分 離 す る こと に よ り 、 長期 安 定 的 な投 資 先 の 創出 が で きる 。 ⑦ 同様に、長期の借り入れによる不動産所有が困難な若年層と 高齢者層に、 良 質な 住 宅 を 供給 す る こ とが で き る 。 ⑧ サ ス テ ィ ナ ブ ル・ス ト ッ ク 型 住 宅 の 普 及 に よ り 、中 古 住 宅 の 市 場 の 活 性 化 、 維 持・ 管 理 事 業の 高 度 化 、地 産 地 消 型の 建 材 の 普及 が 進 み 、 地域 に 根 ざ し た 自立 的 な 産 業連 関 が 形 成さ れ る 。 □ サス テ ィ ナ ブル ・ ス ト ック 型 街 区 の形 成 に よ る 効果 主 要な 効 果 ① .「 安 心 ・ 安 全 な 場 の 提 供 」 ② .都 市 経 営 コス ト の 軽 減 ③ .地 球 環 境 負荷 の 半 減 ④ .生 涯 住 宅 コス ト の 低 減 付加的な効 ⑤ .長 期 安 定 的 な 投 資 市 場 の 創 出 ⑥ .若 年 層・高 齢 者 層 の 住 宅 確 保 ⑦ .自 立 的 な 地域 産 業 の 創出 7 4 サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区の 整 備 に 向 けた 検 討 項 目 4 −1 . サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 の 検 討 項目 サ ステ ィ ナ ブ ル・ ス ト ッ ク型 街 区 の 整備 は 、 既 成市 街 地 の 街 なか を 対 象 とす る もの で あ る が、 そ う し た街 区 の 長 寿命 化 を 意 図 した 整 備 手 法に 付 い て はい ま だ 確立 さ れ て いな い 。 本 研究 で は 、 街区 の 整 備 効 果と そ の 手 法を 街 区 レ ベル の プ ロジ ェ ク ト でケ ー ス ス タデ ィ を 行 ない 、 整 備 手 法の 確 立 を 目 的 と し て い る 。 そ の主 要 な 検 討項 目 は ① 良 好 で 持 続可 能 な 街 区( 複 数 ) を形 成 す る た めの 整 備 手 法の 研 究 。 ② 街づ くり会 社による 街区の 維持管 理と生 活サー ビスの効 率的運 営によ る 良 好な 街 区 の 持続 性 と 価 値の 向 上 を 行な う タ ウ ン マネ ジ メ ン トの 研 究 。 ③ スケ ルトン の長寿命 化技術 や可変 型イン フィル システム など建 築の持 続 性 を高 め る 長 寿命 化 の た めの 要 素 技 術の 開 発 ・ 活 用研 究 。 ④ 不 動 産 の 「所 有 」 と 「使 用 」 の 分離 な ど 、 価 値の 持 続 性 や向 上 性 と 期間 あ た りの 使 用 コ スト の 優 位 性を 顕 在 化 させ る 事 業 ス キー ム の 検 討。 な どが あ る 。 そ の関 係 は 下 図の よ う に 、ま た そ の 具体 的 検 討 項 目は 次 頁 の よう に な る 。 「ストック型街区研究」の研究テーマ 1.目 05.11.25. 的 2.効 果 サスティナブ ル・ ストック型街区(=持 ①.街なかの再整備による良好な生活環境の提供と 続可能な街区)の研究 所有および維持コストの削減 ②.スクラップア ンドビルドの減少と都市環境 負荷軽減に よるCO2発生量の削減 3.研究テーマ Ⅰ.整備手法 Ⅰ.整備手法 Ⅱ.タウンマネジメント Ⅱ.タウンマネジメント 良好で持続可能な街区(複数)を形成 良 好で 持続 可能な 街区 (複 数)を 形成 す るための研究 するための研究 街区イン C F: 街区ス ケル トン 施設 と街区 イン CF:街区スケルトン施設と 事例研究→汎化に フ ィル 施設の 事例 研究 →汎化 に フィル施設の よ る整備手法 の研究 整備手法の研究 よる 持続の仕 組み 持続の仕組み パブリック スペース 都市(都市 インフラ、公共 施設) コモン スペース 街区(街 区インフ ラ、共用 施設) プラ イベート スペース 建築(専用空 間、専用使 用 施設) 街街づくり会社による街区の づ く り会 社 に よ る街 区 の 維維持管理と生活サービス 持 管 理と 生 活 サ ービ ス のの 効効率的運営による良好 率 的 運 営に よ る 良好 なな街 街 区の持続 区の 持続 サスティナブル・ストック街区 実現の技術 建築共用施設 (躯体構造、通路、共用設備 など) 街区インフラ (人工地盤、ペデストリアンデッキなど) 普及拡大の仕組み 街区インフラ (広場、緑地、生活利便施設など) Ⅲ.要素技術開発 Ⅳ.事業スキーム スケルトンの長寿命化技術、低環境負 荷街区形成技術 、可変型インフィル・ システムの開発および既存技術の活用 促進 普及拡大の仕組み 8 「所有」と「使用」の 分離による使 用コストによる経済的な施設整備と コモンスペースの持続的管理の実現 CF:住宅リース事業、居住型証券 化事業など 研 究テ ー マ と 検討 事 項 期待効果 効果: ① 街 中 の 再 整 備 に よ る 良 好 な 生 活 環 境 の 提 供 と 維 持 コ ス トの低減 ② ス ク プ ア ビ ル 減 少 市 環 荷 軽 よ る 発 生 削減 ラ ッ ン ド ド の と 都 境 負 減 に CO 2 量 の ③ 住 宅 の 長 寿 命 化 に よ る 生 涯 住 宅 コ ス トの軽減 研究テーマ サ ス テ ィ ナ ブ ル・ス ト ッ ク 型 街 区 の 整 備手法 タウンマネ ジメント 事業スキー ム 要素技術開 発 ( 既 存 技 術 の活用) 研究の内容 都 市 と 建 築( 住 戸 )の 間 に 、複 数 街 区 か ら な る中間領域を設定し、 良好で持続可能な街 区 を 形 成 す る た め 、官 民連携による街区の コモンスペースのあ り方と整備手法を研 究 し 、ト リ ガ ー プ ロ ジ ェクトで実証する。 タウンマネジメント 会社によるコモンス ペースと生活サービ スの効率的運営によ る良好な街区の持続 の仕組みを研究する。 (良好な街区の維持 は経済的価値の向上 に 繋 が る 。) サ ス テ ィ ナ ブ ル・ス ト ック型街区の実現は 初期投資額の増大を 伴うが、 使用期間の長期化に よる期間当りの使用 コストの低減を顕在 化させる仕組みをつ くり、 「 環 境 か 経 済 か 」の 2 者択一によらない自 立・持 続 的 な 普 及 拡 大 を図る。 生産時のエネルギー 消費量の大きい建築 躯体の長寿命化によ る 建 築 生 産 CO 2 の 半 減。 パッシブで持続的な 環境共生型街区の構 築 技 術 の 開 発・適 用 に よ る 使 用 時 CO 2 の 30% 削 減 。 モデル地域での検討事 項 高耐久建築インフラ の経済成立 性・環境負荷低減効果 の検討。 複合型街区ネットワ ーク施設: 移動・エネルギー・ 情報システ ムの一体的整備手法の 検討* 街区価値向上施設: 景観施設・ 生活利便施設・ 安心安全の 向上 施設の事例研究。 街区の一体管理にふ さわしい事 業スキームの研究と試 行適用。 街区の一体管理によ るエネルギ ー の 効 率 利 用 と CO2 発 生 量 の 削 減効果の検討。 ( CASBEE 街 区 版 の 検 討 ) リ ー ス 事 業 、不 動 産 証 券 化 、P F I 、 リバースモーゲ ージなど近 年整 備されつつある 事業手法の フィ ージビティスタ ディを行い 、実 現性を検証。 スケルトンの長寿命 化のメリッ トを発揮できる 税制や保証 の仕 組みを検討。 高齢者・若者向け住 替えシステ ムの構築。 躯体長寿命化技術: 高耐久構造 構築技術の開発 ・高耐久外 壁シ ステム等 インフィルシステム 建築技術: 可変型内装・設備シス テム等 低環境負荷街区構築 技術:街区 内発生エネルギーの 有効利用、 自然エネルギー活用 * 駅 を中 心 に、 公 ・ 民有 地 に ま たが る 歩 行 者ネ ッ ト ワ ーク 施 設 を 形成 し 、地 域 の 安 心・ 安 全 確 保と 自 動 車 利用 軽 減 を 図る 。 * 美 観・ 可 変 容易 性 ・ 経済 性 を 考 慮し た ス マ ート ( エ ネル ギ ー ・情 報 ) ネッ ト ワ ー ク施 設 の 整 備 9 5 .サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区の メ リ ッ ト と課 題 の 整 理 サス テ ィ ナ ブル ・ ス ト ック 街 区 が 今後 世 の 中 に 定着 し て い くに は 、 居 住者 ( 利 用 者 )、投 資 家 、社 会 に と っ て 、メ リ ッ ト が あ る こ と が 必 要 条 件 と な る 。本 章 で は そ うし た 研 究 のま と め と して 、 そ の 得失 を 分 か り やす く 示 す ため に 、 こ れま で 3 章 か ら 5 章 ま で 行 な っ て き た 、① サ ス テ ィ ナ ブ ル・ス ト ッ ク 型 街 区 の 構 成 要 素( P 44 ∼ P 57、② 建 築 物 の 長 寿 命 化 に よ る 環 境 負 荷 軽 減 の 効 果( 研 究 所 所 報 第 3 号 に 掲 載 )、 ③ サ ス テ ィ ナ ブ ル・ス ト ッ ク 型 街 区 の 経 済 性 と 事 業 手 法 に 関 す る 検 討( P5 8∼ P7 2) を 受け て 、 従 来型 手 法 に よる 街 区 と の比 較 に よ り 、そ の メ リ ット と 今 後 の検 討 課 題 を整 理 す る 。 5 −1 . 設 定 条件 サ ステ ィ ナ ブ ル・ ス ト ッ ク型 街 区 の メリ ッ ト を 分か り や す く 比較 す る た めに 、 4 章 で 用 い た 住 宅 戸 数 1 ,000 戸 の 住 宅 街 区 を 民 間 施 設 と 公 共 施 設 ( 公 園 ) を 個 別 に整 備 し か つ従 来 型 の 住宅 を 建 設 する 場 合 ( 従 来型 住 宅 街 区) と 、 同 じ施 設 を 民間 施 設 と 公共 施 設 を 一体 的 に 整 備 し SI 住 宅 の住 宅 を 建 設す る 長 寿 命型 の 街 区( サ ス テ ィナ ブ ル ・ スト ッ ク 型 街区 ) の 二 つ のモ デ ル を 想定 し て 、 その 得 失 を比 較 す る 。 企 画の 条 件 お よび 詳 細 は 5章 で 述 べ たと お り で あ るが 、 そ の 概略 は 以 下 の通 り であ る 。 各 街 区 の 敷 地 面 積 は 同 一 ( 住 宅 敷 地 12, 50 0 坪 + 公 園 敷 地 1 ,2 50 坪 ) と し 、 サ ステ ィ ナ ブ ル・ ス ト ッ ク型 街 区 ( 以下 ス ト ッ ク 型街 区 と 呼 ぶ) の 住 宅 戸数 は 公 園を 人 工 地 盤上 に 造 り 下部 を 駐 車 場と し て 利 用 する た め 、 住戸 数 を 1 割増 の 1,1 00 戸 建 設 で き る も の と す る 。 建 設 費 は 、 従 来 型 住 宅 が 1 住 戸 あ た り 2,0 00 万 円 ( 25 坪 × 80 万 円 / 坪 ) に 対 し 、 SI 住 宅 は 構 造 躯 体 や 共 用 設 備 の 長 寿 命 化 の ため に 1 割 多く か か る 設定 と し た 。ま た 、 公 園 の事 業 費 は 従来 型 住 宅 街区 で 用 地 費 20 億円 + 施 設 整備 費 1 億 円 、ス ト ッ ク 型 街区 で は サ ービ ス 提 供 型で 民 間 に 費 用 20 億 円 で 委 託 す る 設 定 と し た 。 な お、 比 較 す るに あ た っ て、 ス ト ッ ク型 街 区 に 関し て 以 下 に 示す 、 大 き な仮 定 条件 を 2 つ おい た 。 事 業検 討 上 の 仮定 条 件 ① 官 民が 融 合 し て、 高 耐 久 の施 設 を 計 画・ 建 設 し 、地 域 住 民 が 参加 し て 適 切 な 管 理 が な さ れ 、 住 環 境 が 良 く な る も の と し て 、住 宅 の 賃 料 は 耐 用 期 間 で あ る 3 世 代 に 渡り 原 則 高 い賃 料 は 維 持さ れ 続 け る もの と 仮 定 する 。 ② 中 古住 宅 の 市 場が 整 備 さ れた 状 態 に あり 、 耐 用 期間 内 の 住 宅 の中 古 価 格 は そ の後 の 賃 料 と残 存 価 値 から 算 出 で きる 収 益 価 格 に近 似 し 、 市場 に お け る そ の中 古 価 格 の流 動 性 は 維持 さ れ 、 住宅 の 証 券 市場 も 形 成 さ れて い る も の と 仮定 す る 。 10 5 −2 . 単 純 事業 モ デ ル によ る 両 者 の得 失 の 検 討 そ うし た 条 件 で従 来 型 の 街区 モ デ ル (民 間 施 設 と公 共 施 設 の 分離 型 ) と スト ッ ク 型 街 区 モ デ ル ( 民 間 施 設 と 公 共 施 設 の 融 合 型 ) の 比 較 を お こ な い 、 表 6 -1 の よう に ま と めた 。 縦 軸 に は 居住 者 、 投 資家 、 社 会 と、 街 区 に 関 連す る 各 ス テー ク ホ ル ダー か ら 見 た評 価 項 目 で評 価 し た 事項 を 挙 げ た。 ま た 、 事 業方 式 欄 の スト ッ ク 街 区の 項 は 、そ の 得 失 から 考 え た 好ま し い 整 備手 法 を 挙 げ てい る 。 備 考 欄 に は、 ス ト ッ ク型 街 区 の メリ ッ ト の 派 生要 因 、 ス トッ ク 型 街 区の 形 成 を 促進 す る た めの 制 度 整 備な ど 、 こ の比 較 の 検 討 にあ た っ て 討議 し た こ とを 記 し た。 こ の 表 を参 考 に し なが ら 以 下 の文 を 読 ん で もら い た い 。 ス トッ ク 型 街 区は 、 各 ス テー ク ホ ル ダー に 対 し て従 来 型 街 区 に比 較 し 、 以下 の メリ ッ ト が ある 。 ( 1) 居 住者 サ イ ド ① 良好 な 居 住 環境 図 で 分 かる よ う に 、 公 園 が人 工 地 盤 上 に 住 宅 棟と 一 体 的 に 整 備 され か つ 駐 車 場 が地 下 に 配 置さ せ る た め、 住 宅 地 とし て の 環 境 は良 好 に な る。 ② 生涯 住 宅 コ スト の 軽 減 両 者 の 住 宅 建 設 コ ス ト は 従 来 型 住 宅 が 戸 当 た り 4, 00 0 万 円 、 長 寿 命 型 住 宅 が 4,1 00 万 円 と な る が 、 4 5 年 間 あ た り の 維 持 ・ 修 繕 費 を 含 め た ラ イ フ サ イ ク ル コ ス ト は 、従 来 型 街 区 が 7 ,40 0 万 円 で あ る の に 対 し 、5 ,60 0 万 円( 第 1 世 代 )、5 ,3 00 万 円 ( 第 2 世 代 )、 6 ,0 00 万 円 ( 第 3 世 代 ) で あ り 、 約 3/ 4 に 軽 減 さ れ る 事 が わ かる 。 ま た 、 景観 、 広 場 、 緑 な どの 観 点 か ら も 、 良 質な 居 住 環 境(コ モ ン 空 間)、 個 性 に合 わ せ た 居住 空 間 を 確保 し 、 住 み替 え の 容 易 性も 維 持 で きる な ど 、 スト ッ ク 型街 区 は 良 質な 住 宅 を 比較 的 低 価 で確 保 で き る こと が 分 か る。 ( 2) 投 資 家 サイ ド ① 長期 安 定 型 投資 先 こ の 事 業を 投 資 家 か ら 建 設 資金 を 集 め 賃 貸 事 業と し て 行 な う 場 合 の採 算 性 を 比 較 す る と 、 従 来 型 街 区 の 内 部 収 益 率 が 3 .9 % で あ る の に 対 し 、 ス ト ッ ク 型 街 区 が 5 .2 % に な り 、 3 割 以 上 の 収 益 率 の 向 上 が あ り 、 今 後 の 事 業 環 境 の 整 備 次 第 では 、 年 金 事業 な ど 長 期安 定 型 の 投資 先 と し て 有望 で あ る こと が 分 か る。 11 ② 高齢 者 居 住 ま た 居 住 型 証 券 化 手 法 の 場 合 、 居 住 者 が 証 券 の 形 で 購 入 し て い る の で 、老 後 に 必 要が 生 じ た 場合 に は 資 産( 証 券 ) を一 部 売 却 す るこ と に よ り、 資 金 を 確保 す る こと が で き る。 他 に 収 入の 無 い 高 齢者 に と っ て 、居 住 を 保 障さ れ な が ら換 金 性 のあ る 居 住 の形 態 は 、 安心 社 会 の 形成 に 重 要 で ある 。 ま た 、少 子 化 社 会で 複 数 の住 宅 を 継 承す る 可 能 性が 高 い 次 の世 代 に と っ ても 、 賃 貸 収益 が 入 り 換金 性 の 高い 資 産 を 継承 す る こ とは 好 ま し いこ と で あ る 。こ れ か ら 人口 減 少 社 会に 入 り 、高 齢 者 の 割合 が 増 加 する が 、 こ うし た 換 金 性 の高 い 安 定 投資 型 の 居 住形 態 の 整備 は 重 要 であ る 。 ③ 持続 的 な 居 住空 間 の 形 成 一 方 、 成熟 型 社 会 で は 全 体 的な 地 価 の 高 騰 は 望め ず 、 良 好 な 街 区 への 居 住 ニ ー ズの 集 中 に より 地 価 の 二極 化 が 進 む。 そ う し た 状況 の 中 で 良好 な 住 環 境を 維 持してい くこと が不動産 として の価値 を高め るため の重要な 要素に なると 思 わ れ、 投 資 家 でも あ る 居 住者 が 多 く いる こ と は 、 その 街 区 に 我が 街 ・ 我 が住 居 と 言う 愛 着 が 沸き 、 良 好 な街 づ く り に積 極 的 に 参 加す る こ と が考 え ら れ るな ど 、 住 宅資 産 の 維 持・ 向 上 を 図る こ と が 出来 る 。 ( 3) 社 会サ イ ド ① 安心 安 全 な 街づ く り 街 区 お よび 街 区 内 の 建 築 を 高耐 久 の 高 い ス ト ック 部 分 と 、 変 更 が 可能 な フ ロ ー 部分 と で 構 成す る こ と によ り 、 ラ イフ ス タ イ ル や周 辺 環 境 の変 化 に 対 応し た 機 能更 新 や 用 途変 更 が 可 能な 街 区 を 形成 で き る 。 また 、 街 区 とし て 一 体 的に 整 備 運営 す る こ とに よ っ て 、民 間 ・ 公 共融 合 化 に よ る街 区 形 成 と運 営 の 全 体最 適 の 追求 も 可 能 とな る 。 良 好な 街 区 形 成が 行 な わ れ 、安 心 ・ 安 全な 利 用 し やす い 広 場・ 緑 な ど の生 活 環 境 の実 現 が 出 来、 そ う し た 街区 が 持 続 的に 維 持 管 理さ れ て いく こ と は 、魅 力 あ る 地域 づ く り や安 心 ・ 安 全 な社 会 の 形 成 に も 貢 献 す る 。 ② 地域 経 済 の 活性 化 さ ら に 、地 域 の 投 資 家 が ス トッ ク 型 街 区 の 証 券を 買 う こ と に よ り 街区 に 愛 着 が 生ま れ 、 地 域の 魅 力 づ けや 資 産 価 値の 増 進 に 努 め、 そ の 成 果配 分 を 獲 得す る と いう 地 域 内 での 資 金 循 環の 仕 組 み が生 ま れ 、 地 域経 済 の 活 性 化 に つ な が る 。 ③ 安定 し た 成 熟型 社 会 の 形成 区 分 所 有法 の 制 定 以 来 約 半 世紀 が 経 過 し 、 都 市居 住 の 一 つ と し て マン シ ョ ン が 普及 し 、 現 在で は 建 設 され る 住 宅 の半 分 を 占 め るま で に な った 。 し か し、 こ れ から 築 後 30 年 以 上 経 過し 更 新 期 を迎 え る マ ン ショ ン が 多 くな る が 、 建替 え 費用の捻 出や建 替え後の 建物の あり方 を巡る 住民の 意志統一 など難 しい問 題 も 多く 、 マ ン ショ ン 建 ち 枯れ 問 題 が 社会 問 題 化 す るこ と が 考 えら れ る 。 ま た 、 そう し た 建 替 え 費 用 の捻 出 は 年 金 以 外 に収 入 の な い 高 齢 居 住者 に と っ 13 て 心配 の 種 で もあ り 、 居 住空 間 の リ フォ ー ム を 繰 り返 し て 長 期に 住 む こ とが 可 能 な 、「 建 替 え の 心 配 の 無 い マ ン シ ョ ン 」 の 開 発 は 安 定 し た 社 会 の 形 成 に 重 要 で ある 。 ま た 、 リー ト な ど 不 動 産 投 資型 金 融 商 品 の 普 及に よ り 不 動 産 へ の 投資 が 盛 ん に なっ て い る が、 短 期 的 な視 点 で ハ イリ タ ー ン を 指向 す る 商 品が 多 く 、 その 裏 に は高 い リ ス クが あ り 、 社会 の 安 定 性に と っ て 好 まし い こ と では な い 。 これ に 対 し、 長 期 に わた っ て 安 定的 な 需 要 が見 込 め る 住 居を 提 供 し 、同 時 に 市 場規 模 の 大き い ロ ー リス ク の 安 定投 資 先 を 創出 で き る ス トッ ク 型 街 区の 開 発 は 、社 会 の 安定 性 に 貢 献す る こ と にな る 。 ④ 地球 環 境 負 荷の 軽 減 現 在 の 日 本 の 建 築 は 平 均 寿 命 が 30 年 前 後 と 短 く 、そ の た め に 大 量 の 資 源 の 消 費 と廃 棄 が 発 生す る 。 ス トッ ク 型 街 区は 、 建 築 物 の物 理 的 な 耐久 性 を 高 める だ け でな く 、 良 好な 居 住 環 境や 資 産 価 値の 持 続 を 図 るこ と に よ り社 会 的 な 長寿 命 化 を担 保 す る こと に よ っ て、 建 築 物 の長 寿 命 化 を 確実 化 し て いる 。 こ れ に よっ て 、 4 章 で 検 討 した よ う に 、 資 材 の生 産 か ら 建 設 ま で に派 生 す る CO 2 を 半 減 す る こ と が 出 来 、 地 球 環 境 問 題 の 解 決 に 大 き く 貢 献 す る 。 6 .実 現 に 向 けた 課 題 と 今後 の 検 討 方法 6 −1 . 実 現 に向 け た 課 題 ① 官民 一 体 の 街区 整 備 の 仕組 み こ れ ま で の 開 発 事 業 で は 、開 発 施 設 に 付 帯 す る 公 的 施 設 の 整 備 は 受 益 者 負 担の 原 則 か ら開 発 者 が 負 担し 、 そ の 施設 の 購 入 者や 賃 貸 者 に転 化 さ れ る 事が 一 般 的 であ っ た 。 新 市街 地 の 開 発や 未 利 用 地の 場 合 は それ で も 開 発 のメ リ ッ ト が大 き く 、 事 業と し て の 魅力 は あ っ た。 ま た 、 最近 の 都 心 業 務開 発 で は 容積 率 の 割 増で そ う し たイ ン セ ン ティ ブ を 付 加し て い る が、 都市 環境 の 悪化 など 問 題も 発生 し てい る。 し か し 、居 住 環 境 を 重 視 す る 住 宅 市 街 地 の 場 合 、大 幅 な 容 積 率 の 付 加 も 難 しい 。 そ の ため 既 成 市 街 地の 再 開 発 の場 合 は 事 業メ リ ッ ト が少 な く 整 備が 進ま な いま ま、 中 心市 街地 の 空洞 化が 進 んで い るの が現 状 であ る。 人口 減少 社 会に 対応 し て、 市街 地の 集 約化 を図 り 都市 経 営コ スト の 効 率 化を は か る ため に は 、 既 成市 街 地 の 再整 備 は 不 可欠 で あ る 。そ れ に 合 わ せて 、 更 新 期が 来 て い る 街区 内 の 公 共施 設 の 改 修を 行 な い 、以 降 の 維 持 管理 を 街 区 の管 理 事 業 に 委託 す る こ とに よ り 、 その 後 の 維 持管 理 費 の 軽減 にも 資 する 。 開 発 メ リッ ト の 少 な い 既 成 市街 地 の 整 備 を 促 進 する た め に は 、 そ う した 都 市 経営 コ ス ト の効 率 化 の 見込 み 効 果 を、 街 区 開 発時 に 付 与 で きる よ う な 街区 整 備の 仕 組 み を考 え る 必 要も あ る 。 14 ② 持続 発 展 的 な管 理 運 営 の手 法 ま た 、 現 在 の 区 分 所 有 法に よ る マ ン シ ョ ン 整 備 は 、 個 人 の 権 利 が 強 く 時代 の 変化 に 応 じ た共 用 部 分 の用 途 変 更 や機 能 更 新 が 難し い た め 、街 区 お よ び街 区内建築 施設の 共用部 分を一 体的に 管理運 用でき るよう な事業 の仕組 みも 必 要で あ る 。 現 在 、 公 共 施 設 の 運 営 をバ リ ュ ー フ ォ ー マ ネ ー の 観 点 か ら 民 間 に 委 託 する 制 度と し て 指 定管 理 者 制 度が あ る が 、街 区 の 官 民施 設 の 一 体 的管 理 の 場 合に は 、開 発 事 業 者や 住 民 の 意向 反 映 の 仕組 み を 取 り入 れ な が ら 、良 好 な 住 環境 の持続と 管理運 営の効 率性の 追求と 言うバ リュー フォー マネー の原則 を遂 行 でき る よ う な仕 組 み を 造る 必 要 が ある 。 ③ 期間 コ ス ト の優 位 性 を 顕在 化 さ せ る仕 組 み し か し 、 そ う し た 持 続 可能 な 街 区 の 形 成 や 長 寿 命 型 住 宅 は 、 期 間 あ た りの 使 用コ ス ト は 安く な る が 、構 造 躯 体 の長 寿 命 化 や機 能 の 更 新 性を 高 め る ため 建 設コ ス ト が 割高 と な る ため 、 現 実 には あ ま り 進 んで い な い 。 そ れ ど こ ろ か 、 耐 震 構 造の 偽 証 問 題 で 明 ら か な よ う に 、 厳 し く な る コ スト 競 争の 中 で 、 現在 の 機 能 は満 足 す る が将 来 変 化 や災 害 へ の 配 慮の 少 な い 短寿 命 の住 宅 供 給 が行 な わ れ てい る の が 現実 で あ る 。こ う し た 流 れを 転 換 す るた め には 、 期 間 あた り の 経 済性 を 顕 在 化さ せ る よ うな 事 業 手 法 の開 発 も 必 要に な る。 ④ 所有 と 利 用 の分 離 さ ら に 今 日 的 課 題 と し て、 高 齢 化 の 進 行 や 雇 用 環 境 の 流 動 化 に よ り 、 若年 層や高齢 者が長 期のロ ーンを 組んで マンシ ョン購 入を行 なうこ とが難 しい 状 況が 生 じ て いる 。 特 に 、高 齢 者 に とっ て 生 活 環境 が 整 い 車 に頼 ら な い 生活 が 可能 な 街 な かの マ ン シ ョン 生 活 は 魅力 的 で 、 そう し た 世 代 が郊 外 の 戸 建て 住 宅を 売 っ て 都心 に 住 む 例も 増 え て いる が 、 所 有不 動 産 の 処 分や ロ ー ン の設 定 難な ど か ら 、購 入 可 能 者は 一 部 に 限ら れ て い る 。 ま た 、 老 後 の 資 金 を 蓄 えて い る 人 に と っ て も 、 そ の 全 て を つ ぎ 込 ん で のマ ン ショ ン 購 入 は、 い ざ と いう と き の 資金 の 手 当 てに 困 る こ と から た め ら う人 も 多い 。 成 熟 型社 会 を 迎 え、 そ う し た層 に 安 心 でき る 住 宅 を 提供 し て い くた め には 、 良 質 な賃 貸 住 宅 の整 備 は 社 会資 産 の 形 成で あ る と 考 え、 郵 便 貯 金に 代 わる 民 間 の ロー リ ス ク ・ロ ー リ タ ーン を 志 向 した 資 金 の 活 用に よ る ス トッ ク 型街 区 の 資 金調 達 の 手 法整 備 が 急 がれ る 。 ⑤ 長期 安 定 型 投資 事 業 の リス ク ヘ ッ ジの 仕 組 み ま た現 在 、 不 動産 の 小 口 証券 化 が 普 及し 、 大 都 市の 中 心 市 街 地で は 高 層 ビ ル の建 設 や 中 古ビ ル の リ ニュ ー ア ル が盛 ん で あ る が、 そ う し た投 資 は 短 期の 利 益追 求 と い う視 点 で 行 なわ れ て い るた め 破 行 性 が著 し く 、 超高 層 ビ ル 群の 林立によ る都市 の温暖 化や預 金金利 の上昇 による 仕組み の破綻 などの 問題 15 が ある 。 少 子 高 齢 化 の 進 む 中 で社 会 の 安 定 性 と 経 済 の 持 続 性 を 高 め て い く た めに は 、 民 間の 長 期 安 定型 資 金 を 活用 し て 、 地域 に 良 好 な社 会 ス ト ッ クを 形 成 し て行 く 必要 が あ る 。そ れ に よ って 持 続 型 の経 済 の 仕 組 みが 作 ら れ る。 し か し 、 そ う し た 長 期 の社 会 資 産 へ の 投 資 に つ い て は 、 こ れ ま で は 郵 便貯 金を活用 した財 政投融 資など 主とし て官側 が行な ってき たため に民間 に経 験 が無 く 、 民 間金 融 機 関 は安 定 成 長 によ り 景 気 変動 が 激 し く なる 中 で 、 長期 の 投資 を 敬 遠 する き ら い があ る 。 し か し 、 安 定 成 長 下 で のそ う し た 投 資 は 日 本 の 豊 か さ 持 続 の た め に も 必要 であり、その長期リスクを軽減するための保証や評価シ ステムの構築など、 仕 組み の 整 備 が必 要 で あ る。 中 で も 、市 街 地 の 良好 な 環 境 を 持つ 住 宅 街 区の 整 備は 安 定 し た需 要 が あ り市 場 規 模 も大 き い た め、 そ う し た 投資 先 と し て有 効 であ る 。 ⑥ 長寿 命 化 を 促進 す る 税 制の 整 備 不 動 産 保 有 税 、 都 市 計 画税 、 相 続 税 な ど 資 産 に 対 す る 現 在 の 課 税 方 式 は、 そ の価 値 に 対 する 割 合 で 課税 さ れ て いる 。 こ の ため 償 却 期 間 の長 い 長 寿 命型 施 設の 場 合 、 資産 価 値 の 低減 が 少 な く税 制 上 不 利に な る 。 建 築物 の 長 寿 命化 や 付帯 す る コ モン 施 設 の 整備 は 社 会 的な 有 益 性 も 高い た め 、 課税 方 式 も これ を 促進 す る よ うな 方 向 に 改善 す る 必 要が あ る 。 特に 、 税 率 の 高い 相 続 税 につ い ては 、 一 定 の条 件 の 長 寿命 型 住 宅 を建 設 ・ 購 入し た 場 合 に はそ の 分 の 課税 を 繰り 延 べ る など の 思 い 切っ た 改 正 を行 な え 、 その 普 及 は か なり 進 む も のと 思 われ る 。 6 −2 . 実 現 のた め の 事 業方 式 の 事 例 前 項 で 述 べた 課 題 の 実現 方 法 は 街区 開 発 の 事 業ス キ ー ム によ っ て 異 なる と 思 わ れる 。 こ こ では 、 ス ト ック 型 街 区 開発 の 直 接 的 動機 に な る と思 わ れ る ③④ ⑤ の 課題 解 決 に 有効 な 事 業 方式 の 事 例 を考 え て み た い。 ① 住宅 リ ー ス 事業 地 価 の 持続 的 上 昇 の 終 焉 し た現 在 、 土 地 所 有 の 魅力 は 低 下 し て い る 。 一 方、 高 齢 世 代の 増 加 や 雇 用の 流 動 化 の中 で 長 期 のロ ー ン 設 定を 組 ん だ 住 宅の 所 有 が 困難 な 層 も 拡 大し て い る 。し か し 、 民間 の 賃 貸 住宅 は 狭 小 で 短期 の 居 住 を対 象 と し た 物が 多 く 、 規模 も 小 さ いた め 周 辺 の街 区 環 境 も悪 い。 高 齢 世 帯 や 独 身 女 性 、 子育 て 世 代 な ど 、 良 好 な 環 境 の 安 定 し た 住 環 境 を望 む 層 は 多 く 、 昨 年 総 理 府 が 出 し た 日 本 21 世 紀 ビ ジ ョ ン で も 、 25 年 後 の 目 標 と し て 首 都 圏 で 4 人 家 族 1 00 ㎡ の 賃 貸 住 宅 の 整 備 を 目 標 に 上 げ て い る が 、 そ う した 住 宅 の 供給 は 非 常 に少 な い 。 ス ト ッ ク 型 街 区 整 備 に よる 住 宅 は 期 間 あ た り の コ ス ト が 安 く 、 住 み 手 の変 16 表6−1「単純事業モデルによる既存街区とサスティナブル・ストック型街区との比較」 サスティナブル・ストック型集合住宅街区が、従来型に比較して、居住者にとって、社会(行政)にとって、投資家にとって、メリットがあることを仮定単純モデルにより仮検証 在来型住宅街区―民間施設・公共施設分離型 サスティナブル・ストック型住宅街区―民間施設・公共施設融合型 イメージ図 前提条件 事業規模 事業明細 民間事業 400 億円(1000 戸) 公共事業 21 億円 サービス提供型民間 事業 20 億円 民間事業 452 億円(1100 戸) 用地費 200 億円(12500 坪×160 万) 用地費 20 億円(1250 坪) 用地費 210 億円( (12500+1250 坪×0.5)×160 万) 区分地上権(容積対 象外) 10 億円 建設費 200 億円(25 坪×1000 戸×80 万) 建設費 建設費 5億円 1 億円 建設費 242 億円(2200 万円/戸) 戸当り: 4000 万円 戸当り: 4100 万円 居住者サイド 居住者利便・快適性 投資家サイド 駐車場により広場・緑の確保が困難 景観・広場・緑など良質なコモン空間の確保③ 固定的・標準的な居住空間 個性に対応した居住空間の確保・住み替えの容易性①② 居用者費用負担方式 購入価格 維持費を含む総支出 額 賃貸の場合の支払賃 料総額 購入価格 維持費を含む総支出 額 第一世代総費用(45 年) 4000万円 7400万円(45年目解体) 10500 万円 4100万円 5600万円(45年目売却) 第二世代総費用 4000万円 7400万円( 同 上 ) 10500 万円 3800万円 5300万円(90年目売却) 第三世代総費用 4000万円 7400万円( 同 上 ) 10500 万円 3700万円 6000万円(135 年目解体) 内部収益率(IRR) 3.9% 5.2% 〔評価に対するコメント〕 資産価値 評価額(収益価格) 賃料水準 評価額(収益価格) 賃料水準 分譲価格 4000 万円相当 0 年時 3000万円 0 年時 22万円 0 年時 23万円 0 年時 3800万円 新築時の収益価格 3000 万円 45年後 1700万円 45年後 15万円 45 年後 23 万円 45年後 3800万円 解体時には 1700 万円(土地 90 年後 23 万円 90年後 3700万円 持分−解体費) 135年後 21万円 135 年後 2200万円 社会性 社会サイド 建替え更新時の資金負担が心配(→マンシ ョン立ち枯れ問題) 行政コスト 事業方式 通常の都市公園・歩道 用地購入型の公共事業 区分所有権分譲方式 *区分所有者の権利が強く周辺環境や時 代変化に対応した共有分の変更が困難 *収入の不安定な若年層や高齢者の取得 が困難(安定成長期に入り土地価格の上 昇による資産形成効果が減少) 賃貸の場合の支払賃 料総額 12400 万円 12400 万円 12000 万円 〔評価に対するコメント〕 分譲価格 4100 万円相当 転売価格が高い 賃料が落ちない 備 考 メリット派生要因分類 ①ストック化 (高耐久スケルトン+可変インフィル) ②リース事業・居住型証券化によ る新事業創出・市場拡大 ③民間・公共融合化による街区形 成と運営の全体最適の追及 課題:ストック型促進の制度整備 *リース事業を念頭に置いた定期 借地制度の改定、注1 *居住型証券化の制度整備、注2 *評価・補償制度の整備(リスク の軽減) *長寿命化を促進する税制改定 *優遇金利 居住者が投資家になることのメリット *資産の流動性(証券の売却)に よる老後の資金の確保 *街づくり参加による資産形成効 果(街区の価値の維持・向上) 安心・安全な利用しやすい広 *ストック型のコモン施設:街区 良好な街区形成と生活環境の実現①③ 内道路、広場、緑地、供給処理 場・緑の確保③ 安定した成熟型社会の形成(建替えの心配を解決)①② 施設など 時代変化に対応した生活利 長期安定型投資先の創出による経済活性化①② *フロー型のコモン施設:時間の 住宅・都市の長寿命化により更新によるCO2発生を半減 便施設の変更①② 経過により変わる生活利便施設 ①②(短命な建築の日本特有の課題) サービス提供型事業 維持管理コストの減 住宅との一体管理による減 *リース事業方式によるリスクの軽減と居住コストの 軽減←つくば方式(区分地上権型SI住宅)の発展 形 安定・巨大な新事業分野の創出(安定投資先) 所有から利用へのニーズ転換に対応 *居住型証券化により小口証券化事業の拡大 所有者の生前における居住資産の一部処分が可能に 12 注記 1リース事業方式:長寿命型住宅 の安定的期間リース事業 2居住型証券化:居住者の配当や 居住中の証券の一部処分などに 配慮した不動産小口証券化手法 更 によ る 間 取 り変 更 や 設 備更 新 も 容 易な た め 賃 貸 型の 住 宅 に 適し て お り 、ま さ に 日 本 21 世 紀 ビ ジ ョ ン で 挙 げ た 住 宅 の 整 備 に 相 応 し い 。そ う し た 住 宅 を 、 リース事 業で貸 し出す ことに より居 住コス トの優 位性を 顕在化 できる だけ で なく 、 期 間 内の 権 利 が 保障 さ れ 転 貸事 業 も 可 能と な る な ど 、資 金 的 に は余 裕 があ る が 病 気な ど に よ る生 活 リ ス クの 高 い 、 高齢 者 の 住 ま いと し て 適 して い る。 現 在 、 リ ー ス 事 業 は ビ ルや 航 空 機 、 自 動 車 な ど 様 々 な 分 野 で 行 な わ れ てい る 。最 近 の 自 動車 需 要 の 活発 な 創 出 は、 自 動 車 メー カ ー が 積 極的 に リ ー ス方 式 を展 開 し て いる こ と も 一因 で あ る 。リ ー ス 方 式に よ る 住 宅 の供 給 は 長 期安 定 型の 投 資 先 とし て 有 望 であ り 、 民 間の 膨 大 な 余剰 資 金 の 活 用先 と し て も期 待 でき る 。 現 在 、長 寿 命 型 住 宅 で あ る S I 住 宅 の 事 業 方 式 と し て 、定 期 借 地 権 方 式 に よ る 賃貸 住 宅 事 業が あ る が 、農 家 の 遊 休地 の 活 用 など 一 部 で 行 なわ れ て い るだ け で、 定 期 借 地後 の 資 産 の継 承 な ど 制度 面 の 問 題 もあ る 。 リ ー ス 事 業 は 現 在 の 定 期借 地 制 度 の 部 分 的 な 改 正 で 対 応 す る こ と が 可 能で あ り、 資 金 調 達力 が 大 き く持 続 性 の 高い 企 業 に よる 街 区 開 発 への 適 用 は 可能 性 の高 い 事 業 方式 で あ る 。 ② 居住 型 証 券 化の 制 度 整 備 ス ト ッ ク 型 街 区 の 事 業 方式 の も う 一 つ の 可 能 性 と し て 、 居 住 型 証 券 化 の手 法 が考 え ら れ る。 今 日 の 不動 産 事 業 の活 性 化 は 、不 動 産 の 証 券化 に よ る とこ ろ が大 き い 。 これ を ス ト ック 型 街 区 の住 宅 に 適 応し 、 不 動 産 の証 券 を 購 入し た 人が そ の 建 物を 使 用 す ると し た 場 合、 家 賃 を 払い な が ら 証 券の 配 当 を 受け 取 るこ と に な る。 証 券 は 不 動 産 物 件 よ り 換金 性 が 高 く し か も 小 口 で 売 買 が 可 能 な た め 、 資金 が必要な 場合に はその 一部を 売却し ながら 継続し て居住 するこ とが可 能で か つ安 定 し た 投資 先 で も 有る た め 、 高齢 者 が 将 来の 生 活 の た めに 準 備 し た資 産 を投 入 し て の住 宅 の 取 得形 態 と し て適 し て い る 。 ま た 、 そ う し た 所 有 形 態は 単 な る 賃 貸 住 宅 と 異 な り 、 我 が 街 ・ 我 が 住 居と 言 う愛 着 が 沸 くた め 、 良 好な 街 区 や コミ ュ ニ テ ィの 形 成 に も 役立 ち 、 か つ建 物の長寿 命化に よる期 間コス トの優 位性を 顕在が させる ことが 出来る 事業 手 法で あ る 。 た だそ の 普 及 の ため に は 、 長期 に わ た るこ と に よ る リス ク に 対 する 投 資 家の 不 安 心 理を 払 拭 す る 、評 価 手 法 や保 証 の 仕 組み を 構 築 する 必 要 が あ る 。 し か し 、100 年 ・200 年 と い う 長 期 の 事 業 に 対 す る 保 証 は 一 企 業 で は 不可 能 で あ り、 公 的 機 関 や企 業 組 合 など 地 域 や 国内 の 一 定 規模 の 住 宅 街区 を統 合 して それ を 保証 する 仕 組み の構 築 が必 要 であ る。 ま た 、 街 区 イ ン フ ラ な どを 含 め 一 体 化 し て 運 営 管 理 す る 場 合 、 街 区 全 体と し ての 証 券 化 も考 え ら れ 、そ の 場 合 、住 民 ・ 開 発会 社 ・ 自 治 体・ 地 域 独 占企 業 ・投 資 銀 行 など が 劣 後 部分 の リ ス クを ど の よ うに 分 担 し て いく か の 工 夫も 17 必 要に な る 。 6 −3 . 今 後 の検 討 方 法 ス ト ッ ク 型 街 区 の 形 成 に 付 い て は 、以 上 述 べ た よ う な メ リ ッ ト も 多 く あ る が 、 分 譲事 業 か ら 運営 事 業 へ の事 業 転 換 をど う 図 る か 、長 期 に わ たる リ ス ク をど う 回避していくかの手法が現状の社会システムのなかで組み立てら れないため、 その良さ や必要 性は理解 しても 民間企 業が単 独で事 業化に踏 み切れ ないの が 現 状で あ る 。 ま た、 そ う し た事 業 を 投 資事 業 と し て組 み 立 て てい く た め に は、 建 物 か ら街 区インフラまで多岐にわたる施設の開発から維持管理までを含め たコストと、 社 会的 効 果 の 把握 が 必 要 にな る 。 こ のた め 、 今 後は 具 体 の 街区 モ デ ル での 実 践 的 研究 と 、 そ の 事業 手 法 の 促進 の ため の 法 整 備の 研 究 を あわ せ て 行 なう 必 要 が あ ると 考 え て いる 。 特 に そ の 初期 段 階 で は、 ま ず 現 状の 技 術 で 可 能な ス ト ッ ク型 の モ デ ル街 区 を 造 り、 そ こ で 実証 的 な デ ータ の 収 集 と、 促 進 の た めの 問 題 点 を明 ら か に して い く 必要 が あ る 。そ の 際 重 要な こ と は 単に 長 寿 命 や 環境 負 荷 の 軽減 を 図 る だけ で な く、 ス ト ッ ク型 街 区 に ふさ わ し い 外観 や コ モ ン 施設 の 整 備 を行 な い 、 スト ッ ク 型街 区 の 良 さを 理 解 さ せる よ う な モデ ル 街 区 を 造る 必 要 が ある 。 そ れ と 平 行し 、 持 続 性の あ る 官 民協 力 の 研 究 会組 織 を 立 ち上 げ 、 各 地域 に あ る 実現 可 能 な プロ ジ ェ ク ト毎 の 研 究 体制 を つ く り 、そ の 連 携 を取 り な が ら進 め て いく 必 要 も ある と 考 え てい る 。 18 7 .ま と め 日 本は 現 在 、 人口 の 長 期 的減 少 と 高 齢化 の 進 展 、 地球 環 境 問 題な ど の 大 きな 社 会 環境 の 変 化 の中 で 、 社 会の 成 熟 化 を向 か え て い る。 そ う し た状 況 の 中 での 今 後 の 大き な 流 れ とし て 、 個 人の 豊 か さ の実 現 と と も に地 域 の 自 立・ 活 性 化 ・魅 力 づ け が求 め ら れ てい る 。 本 年度 の 「 ス トッ ク 型 街 区研 究 」 は 、ス ト ッ ク 型 街区 の 形 成 によ る 効 果 の憂 い ③ 地球 環 境 負 荷の 削 岩 と 生涯 住 宅 コ スト の 削 減 を 検証 し 、 そ れを 顕 在 化 させ る た め の構 成 要 素 と事 業 手 法 の検 討 を 行 なっ た も の で ある 。 そ の 結果 、 ス ト ック 街 区 は その 実 現 の 有力 な 手 段 であ る 事 が わか っ た 。 現 在、 民 間 事 業者 も 資 金 の回 転 と い う制 約 は あ る もの の 、 こ の様 な 問 題 に目 を 向 け始 め て お り、 自 治 体 も自 ら に よ る地 域 の 活 性 化・ 地 域 の 魅力 づ け に 方向 転 換 し 始め 、 国 も 地球 環 境 問 題や 地 域 の 自立 に 向 け た 施策 を 展 開 し始 め て お り、 課 題 は 個別 的 に 徐 々に 解 決 は され つ つ あ る。 国から地方へ、官から民へという大きな流れの中で、今後の進め 方としては、 地 域の 総 意 と 地域 の リ ー ダー に よ る 指揮 の 下 で 、 地域 の 代 表 とし て の 自 治体 と 地 域 の経 済 を 担 う民 間 企 業 が連 携 し て 、場 所 を 特 定 し、 総 合 的 に検 討 し た 後で 、 現 在 、民 間 単 独 で は 出 来 な い こ と 、 地 域 単 独 で は 出 来 な い こ と 、即 ち 、官 と 民 の 役 割 、 国 と地 方 の 役 割を 明 か ら にす る こ と が、 実 現 へ の 有力 な 第 一 歩で あ ろ う 。 今 後は 、 よ り 具体 化 に 向 けた 検 討 を 進め る た め 、 具体 的 な プ ロジ ェ ク ト にお い て 個別 の メ リ ット や 課 題 を沖 ら か に し、 官 民 連 携 によ る 事 業 手法 の 検 討 を進 め る 必 要が あ る と 考え る 。 19 ス トッ ク 型 街 区の 形 成 に 向け て 【 スト ッ ク 型 街区 の 構 成 要素 に つ い て】 岩下 陽 市 ( 九州 職 業 能 力開 発 大 学 校 応 用課 程 居 住 ・ 建築 系 教 授 ) 1 .は じ め に 東京 ・ 大 阪 ・名 古 屋 都 市圏 に 人 口 や経 済 活 動 が 集中 し て い く中 で 、 地 方都 市 は 経 済活 動 の 低 迷さ や 、 人 口減 少 と 少 子・ 高 齢 化 を 迎え て 、 そ の「 街 な か 」は 「 シ ャ ター 街 」 と いわ れ る 店 舗等 の 閉 鎖 や空 地 ・ 駐 車 場が 目 だ っ てき て い る 。 生産 人 口 の 若い 世 代 は 近隣 の 中 核 都市 や 地 方 中 心都 市 に 流 出し て い る 現象 が み ら れる 。 街区 は 住 民 ・国 民 の 生 活基 盤 で あ る場 で あ る が 、そ の 安 全 性、 ゆ と り 、潤 い 、 活 性化 等 が 失 われ つ つ あ る。 社 会資 産 の ス トッ ク と し ても 陳 腐 化 が目 立 ち 、 街 区の 空 洞 化 も 進 み つ つ あ る 。 街 に対 す る 魅 力が 急 激 に 失わ れ て い る。 地 方 都 市 での こ の 悪 循環 に 歯 止 めを か け なが ら 、 そ の地 域 の 人 々が 自 立 し て持 続 可 能 な 生活 ・ 経 済 活動 を 続 け てい け る た めの サ ス テ ィナ ブ ル ・ スト ッ ク 街 区の 整 備 手 法 につ い て 考 察を 行 う 。 持 続可 能 な 社 会を 形 成 し てい く に あ たり 、 街 区 に つい て も 都 市計 画 上 で の視 点 だ け で は 前 出 の 問 題 解 決 に は 歯 止 め が か か ら な い 状 態 で あ り 、生 活 、経 済 ・産 業 活 動 等と 連 動 さ せ、 総 合 、 統合 し て い く都 市 の グ ラ ンド デ ザ イ ンに つ な が るも の で あ る。 人 口 10 万 以 下の 都 市 で は人 口 構 造 、経 済 構 造 、 産業 構 造 等 が歪 な 状 態 にな り つ つあ る 。 大 都市 圏 に お いて も 歪 な 状態 が 生 じ てき て い る 。 過度 な 人 口 集中 、 都 市 環境 の 悪 化、 余 裕 の ない ・ 安 全 性を 見 失 い つつ あ る 経 済 ・産 業 活 動 など が あ げ られ る 。 東 京 ・ 大 阪 ・名 古 屋 の 大 都 市 圏 及 び い く つ か の 中 枢 都 市 圏 に ヒ ト ・ モ ノ ・ カ ネ の 集中 す る 傾 向が 強 く み られ る が 、 地方 都 市 等 に この 悪 循 環 の歯 止 め が かか ら な け れば 、 健 全 な国 土 形 成 がで き な い ばか り で な く 、将 来 多 大 な公 的 資 金 を投 入 し て 、そ の 地 方 圏の 生 活・産 業・経 済 等 へ維 持 す る も 、地 域 格 差 、所 得 等 階 層格 差 が 生 じ、 持 続 可 能な 社 会 、 国土 の 形 成 にと っ て 大 き な負 の 要 因 にも な り か ねな い 。 統 合的 な 都 市 デザ イ ン の 中で 、 サ ス ティ ナ ブ ル ・ スト ッ ク 街 区を 今 生 き る人 々 の 糧と す る の では な く 、 現在 を 含 め てこ れ か ら の 日本 の 糧 と する こ と が 必要 で あ る。 今ま で は 、 都市 計 画 、 地区 計 画 等 の広 い 面 を 取 り扱 っ て く るこ と が 一 般的 で あ っ たが 、 生 活 圏の 基 盤 と なる 、 都 市 の最 小 単 位 、 都市 の 細 胞(セ ル)と し ての 「 街 区 」に つ い て 統合 的 に 考 えて い く 。 1 2 .街 区 の 種 類 2 −1 . 街 区 の位 置 付 け 単体 の 住 宅 や建 築 、 そ の宅 地 ・ 敷 地で み る の では な く 、 それ ら の 群 、集 ま り と して 街 区 を とら え る 。 単体 で は 都 市に お い て 景観 の 構 成 にも 、 資 産 の形 成 に も 、都 市 空 間 の機 能 性 に もつ な が ら ない 。 街 区 の 位 置 付 け は 図 2 -1 に 示 す 。面 開 発・整 備 の 最 小 単 位 と な る も の で あ る 。 宅 地・敷 地 − 街 区 − 街 区 群 − 地 区 − 都 市 と 面 拡 大 の 有 機 的 な つ な が り で あ る 。 都 市か ら 地 区 をみ て い く 鳥瞰 的 な 見 方と 街 区 か ら 地区 ・ 都 市 と俯 瞰 的 に 、生 活 の 視点 か ら 見 方も 必 要 と なる 。 俯 瞰 的視 点 に は 住 民・ 市 民 が 都市 と ど う 関わ っ て いく か 、 持 続可 能 な 社 会と つ き あ って い く か が 期待 で き る 。 図 2− 1 街 区の 位 置 付 と関 連 法 規 ・事 業 手 法 2 −2 . 街 区 の大 別 街 区 の 定 義は 一 般 的 に「 市 街 地 で道 路 に 囲 ま れた 一 区 画 」と さ れ て いる 。 こ こ で は 図 2- 2 に 示 す よ う に 、 都 心 街 区 、 一 般 街 区 、 住 宅 地 の 3 区 分 に 大 別 す る が 、住 宅 地 に つい て は 深 くふ れ な い 。 2 住宅地 一般街区 一般街区 交通幹線 都心街区 一般街区 住宅地 一般街区 都心街区 住宅地 一般街区 一般 街区 都 心街 区 : 都 心部 に あ り 業務 、 商 業 、行 政 ・ 公 共 等施 設 の 集 積度 の 高 い 区 一 般街 区 : 都 心部 街 区 の 周辺 に あ る 街区 で 業 務 、 商業 等 と 住 居の 混 在 し た街 区 住 宅地 : 郊 外 の住 宅 街 区 図 2− 2 街 区模 式 図 都 心街 区 は 業 務、 商 業 、 行政 ・ 公 共 等施 設 群 の 集 積度 の 高 い 街区 で あ り 、都 市 の 中 心 市 街 地 と す る 。 ス ケ ル ト ン ・ イ ン フ ィ ル ( SI )構 法 で の 長 寿 命 化 と コ ン バ ー ジョ ン 機 能 が必 要 と さ れる 。 一般 街 区 や 都心 街 区 は イン ナ ー シ ティ ・ プ ロ グ ラム と い わ れる 代 表 的 な事 例 の 空 洞化 現 象 が 生じ や す い 街区 で あ る 。 「 街 な か 再生 」 の 課 題そ の も の で、 時 代 の 変 化に 対 応 で きて い な い 都市 再 生 を 具現 化 し て いく た め に は、 そ の 最 小単 位 で あ る 街区 再 生 が 不可 欠 と な って く る。 よっ て 長 寿 命の 生 活 基 盤と な り え る街 区 再 生 の 整備 手 法 の 開発 は 急 務 であ る 。 3 .持 続 可 能 な社 会 で の 街区 3 −1 . 街 区 の抱 え る 問 題と 課 題 こ れ ま で の街 区 に 対 する 建 築 生 産行 為 は 都 市 計画 法 上 で の土 地 利 用 で用 途 別 に その エ リ ア を決 め て い き、 定 め ら れた 建 蔽 率 、 容積 率 の 範 囲の 中 で 建 築群 が 建 てら れ て き た。 3 現 在 で も C .A .Pe rr y の 近 隣 住 区 の 考 え 方 を 強 く 引 き 継 い で い る 地 区 計 画 が 都 市 計画 の 重 要 な構 成 要 素 とさ れ て い る。 そ の 地 区 内で 生 活 が 完結 す る 考 え方 で 、 住 宅戸 数 、 住 人数 に 応 じ て施 設 、 空 間配 置 が 計 画 的に 決 め ら れて い る 。 街 区 に つ いて は 、 こ の地 区 計 画 の中 に 取 込 ま れて お り 、 単独 に 考 え られ る こ と はな か っ た 。 地 区 計 画 は 新 し い 都 市 を 創 っ て い く 昭 和 40 年 代 に は 一 定 の 施 設・空 間 配 置 を お こな っ て い くガ イ ド ラ イン と し て は大 き な 役 割 を果 た し て きた 。 そ して 、 経 済 活動 最 優 先 の中 で 建 て られ て き た 建築 群 が 機 能 的に 対 応 で きず に スク ラ ッ プ アン ド ビ ル ドで 短 期 間 にそ の 様 相 を 変え て き た 。そ れ が で きた の は 地価 は 上 昇 する と い う 前提 の 考 え 方が あ っ た か らで あ る 。 し か し 、 現在 は 昭 和 40 年 代か ら 続 い た右 肩 上 が り の活 動 に 終 止符 が 打 た れ、 高 原状 態 か 右 肩下 が り の 状況 に 入 っ て久 し い 。 ま た 、そ の 取 り ま く 状 況 が 大 き く 変 わ り つ つ あ る 。人 口 減 少 、少 子・高 齢 化 、 地 球環 境 問 題 、エ ネ ル ギ ー・ 資 源 の 消費 抑 制 等 の 新た に 解 決 して い か な けれ ば な らな い 大 き な課 題 が 現 れて い る 。 地区 を 構 成 して い る 街 区に 対 し て スポ ッ ト を あ てら れ る こ とは 少 な か った 。 シ ャ ッ タ ー 街 や 空 地 、 駐 車 場 等 が 街 な か 、 街 区 内 で 199 2 年 の バ ブ ル 崩 壊 以 降 目 立 ちは じ め 、 特に 商 店 街 の沈 下 が 表 われ は じ め て 、注 目 さ れ るよ う に な る。 同時 に 街 区 の中 に 取 り 残さ れ た 老 朽化 建 築 物 、 密集 市 街 地 、中 小 規 模 の低 未 利 用 ・未 利 用 地 等の 存 在 は 安全 ・ 防 災 の上 か ら も 良 質な 都 市 環 境を 阻 害 す るも の で ある 。 こ の 衰 退 傾向 を も ち はじ め て い る都 市 の 再 生 とし て 街 区 、地 区 レ ベ ルの 浮 揚 策 が重 要 と な って く る 。 街 区 − 街 区 群 − 地 区 − 都 市 − 都 市 圏 の 活 性 化 に 直 結 し 、こ れ か ら 1 00 年 、2 00 年 の生 活 基 盤 のも と に な る街 区 の 質 の向 上 と 保 全 ・再 生 ・ 創 出が 都 市 再 生の 一 翼 を担 う も の であ る 。 都 市 再 生 のイ ン セ ン ティ ブ と し て住 宅 ・ 建 築 ・都 市 と い うハ ー ド の みで は 対 応 でき な い 。 社会 ・ 生 活 ・雇 用 ・ 文 化等 の 総 合 的 な観 点 で の リン ク を 含 めて 考 え てい く こ と が極 め て 重 要と な る 。 ま た 、 近 年、 温 暖 化 の影 響 を 受 けて 、 都 市 部 のヒ ー ト ア イラ ン ド 現 象、 ピ ン ポ イン ト の 集 中豪 雨 、 都 市水 害 が 多 発し て い る 。 それ に 対 応 して い か な けれ ば な らな い 「 街 区づ く り 」 も必 要 に な って き た 。 3 −2 . 持 続 可能 な 社 会 での 街 区 持 続 可 能 な社 会 の 中 で社 会 的 機 能を も つ 単 位 とし て の 街 区は 前 出 の 定義 に あ る よう に 「 道 路に 囲 ま れ た一 画 」 の 物理 的 な 域 か ら、 生 き た 生活 の 感 覚 を取 入 れ 、社 会 的 機 能を 果 た せ るよ う な 都 市の セ ル の ひ とつ と し て 、生 命 体 と して と ら える べ き で ある 。 そ の 街 区 に元 気 が な くな れ ば 、 街区 の 集 合 体 であ る 地 区 も活 性 化 は なく 、 そ の 大き な 有 機 的集 合 体 で ある 都 市 も 病ん だ 状 態 と なる 。 4 生 命 体 と して の 活 動 ので き る 街 区の 見 直 し 、 再生 ・ 創 出 がな い と 都 市自 体 が 老 朽化 し 、 衰 退し て い く 。 現 在 、 衰 退し て い っ てい る 都 市 の市 街 地 は シ ャッ タ ー 街 や未 利 用 地 が多 く 、 人 口流 出 や 人 口減 少 の 問 題を 抱 え 、 生命 体 と し て は健 康 な 状 態 と は 言 え な い 。 健 康 な 都 市 や 街 区 と し て の 要 件 は「 住 み 続 け た い と い う 魅 力 」が 大 切 で あ り 、 そ れを 満 た す 要素 群 は 、 ① 安 全・ 防 災 、 ゆと り 、 う るお い ② 中 心市 街 地 の 活性 化 ③ 少 子・ 高 齢 化 への 対 応 ④ 土 地・ 社 会 資 産の 有 効 活 用 ⑤ 多 様な 個 性 を 重視 ⑥ 環 境共 生 型 ⑦ エ ネル ギ ー 消 費型 か ら 循 環シ ス テ ム 型へ ⑧ 賑 わい 、 地 域 コミ ュ ニ テ ィの 再 生 ⑨ 公 共サ ー ビ ス の効 率 化 ⑩ 安 定雇 用 ・ 職 住近 接 ⑪ エ ネル ギ ー 等 供給 ・処理 施 設 ⑫ ボ ラ ン テ ィ ア 、 NP O 等 を と お し て 持 続 的 コ ミ ュ ニ テ ィ を 形 成 で き る ネ ッ ト ワ ー ク ⑬ 街 区を 精 神 的 、物 理 的 に つな ぐ し く み ラ ン ダ ム に以 上 の こ とが あ げ ら れる 。 生 活 基 盤 とし て の 街 区は ひ と つ の街 区 で 生 活 を完 結 す る もの で は な く、 複 数 の 街区 に よ っ て補 完 さ れ る。 街 区 を 単体 で み る の では な く 、 単位 街 区 と その 有 機 的な つ な が りを も つ 街 区群 と し て みて い く 必 要 もあ る 。 い く つ か の機 能 が 混 在す る こ と によ り 、 一 定 の共 生 状 態 を生 み 出 す 。 「 街 な か 回帰 」 に よ り多 様 な 世 帯・ 世 代 の 「 街な か 居 住 」を と り も どし て い く こと が 必 要 にな る 。 上 記 の「 住 み 続 け た い と い う 魅 力 」の 要 素 群 が 備 わ っ て い け ば 、 「 最 低限 の 生 活 の場 と し て の街 区 」 か ら「 安 定 し た生 活 の 場 と して の 街 区 」へ 、 更 に 「豊 な 生 活の 場 と し ての 街 区 」 へと 魅 力 を もつ よ う に な る。 5 4 .サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区の 構 成 要 素 4 −1 . 持 続 可能 な 社 会 での 街 区 を 構成 す る 概 念 要素 「 持 続 可 能 な 社 会 で の 街 区 を 構 成 す る 概 念 要 素 」 を 図 4- 1 に 示 す 。 従 来 は 技 術 的な 要 素 で の考 え 方 が 強か っ た が 、持 続 可 能 な 要件 を 満 た すに は 技 術 を含 め て 新た な 要 素 を取 込 ん で いか な け れ ばな ら な い 。 社 会・時 代・生 活 の 大 き な 変 化 の 中 で 新 た な パ ラ ダ イ ム が 生 ま れ て き て い る 。 持 続 可 能 とい う こ と はパ ラ ダ イ ムが 変 わ っ て も柔 軟 に 新 たな 枠 組 み を見 直 し、 そ の変 化 に 対 応で き る こ とで あ る 。 そ の枠 組 み は 部分 最 適 解 的発 想 で は 納ま り き れ な い状 態 で あ り、 い た ず らに 社 会資 産 の 短 命化 を 招 く だけ に な る 。 街 区 住 宅 ・ 建 築 地 都 建 区 市 築 社会 時代 生 産 生活 社会的なサスティナブル要素 人口動態 世帯構造 少子・超高齢化 の変化 子供の安全 年金 所得格差 結婚観・夫婦観・家族観 労働観 労働力不足等 技術的なサスティナブル要素 長寿命・安全 パッシブデザイン 省エネ メンテナンス 持続可能な空間構成技術 社会資産 技術と生活に関係するサスティナブル要素 エネルギ−負荷抑制 CO?排出抑制 安全 快適性 地球環境・資源・エネルギ−、関連事項 パッシブ 省エネ 地材地建 環境配慮型 温熱環境 循環型 歴史観、意識、価値観、 土地等の歴史 サスティナブルへの意識 新しい価値観 次世代への資産 住民の誇り 歴史資産 ほっとする空間環境 図−4-1 図4 1 持続可能な社会での街区を構成する概念要素 持 続可 能 な 社 会で の 街 区 を構 成 す る 概 念要 素 6 4 − 2. 中 心 市 街地 再 生 の スキ ー ム 国 交省 も そ れ ぞれ の 都 市 の中 心 市 街 地が そ の エ リ アの 生 活 、 経済 活 動 、 都 市 機 能 等 を む し ば ま れ て い る 現 象 を 見 て と り 、 そ の 対 策 と し て 図 4- 2 に 示 す 基 本計 画 を 立 案し て い る 。 こ の ス キー ム に 基 づい て 今 後 、各 方 面 で 具 体化 が は か られ る 。 図 4− 2 国 交 省 中 心市 街 地 活 性化 支 援 事 業全 体 ス キ − ム図 (出 典 国 交 省 白 書 20 06 ) 7 4 −3 . サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 の 構 成 要素 サ ス テ ィ ナ ブ ル ・ ス ト ッ ク 型 街 区 を 構 成 す る 要 素 は 図 4- 3 に 示 す 。 「 社会 資 産 + 歴史 ・ 景 観 資産 + ミ ニ 自然 資 産 」 を 有す る 街 区 であ る 。 住宅・建築 街区・街区群 安全で長寿命 複数街区・地区・都市 普遍的な価値を持ち続けられる 住み続けたい魅力 居住・生活・利用・使用にあたりエネルギ−負荷が少なく、 CO?排出抑制で快適性をもつ 自然を感じられる、緑地、水辺、樹木、環境緑地、コミュニティ ガ−デン その地の面影を残し伝えていく景観 (自然・建築・人工物) コモン、「互いに役立ち得る」概念を有するもの、空間 壊れかけ、失われつつあるコミュニティを復活させる仕掛けと場 リザ−ブスペ−ス 長寿命のフレ−ム 内外装改装の容易さ 設備系メンテナンスの容易さ 空間的余裕・健康的空間 ユニバ−サルデザイン 温熱環境(パッシブデザイン、省エネ) 普遍的なデザイン・価値 良質な住環境 自然との共生 職住近接 社会資産 図 4− 3 居住部分 都市基盤 住居施設、複合施設 居住施設群 生活支援・サ−ビス施設 生活基盤群 道路、都市設備共同溝(上下水道、エ ネルギ−、通信・情報) 広場、公園、緑地、コミュニティガ −デン、樹木、環境緑地、水辺 リザ−ブスペ−ス 文化・教育 商業・金融・業務・物流 医療・福祉 通信・情報・交通 公益・公共・行政 都市基盤群 リザ−ブスペ−ス 社会資産+歴史・景観資産+ミニ自然資産 社会資産群+歴史 ・景観資産群+自然資産群 図 4−3 サスティナブル・ストック型街区の構成要素 サ ステ ィ ナ ブ ル・ ス ト ッ ク型 街 区 の 構 成要 素 こ れ ま で の街 区 は 結 果と し て 経 済優 先 で 高 密 度に つ く ら れ、 ゆ と り の部 分 が 欠 如し て 形 成 され て き た 。言 い 換 え れば 、 宅 地 ・ 敷地 の 分 筆 を繰 り 返 し 、細 分 化 され て き た が、 そ れ は 土地 を 商 品 視し て き た 結 果で あ る 。 そ し て 、 ゆと り の な い状 態 で つ くら れ て き た 住宅 ・ 建 築 は資 産 価 値 の低 い も の とな り 、30 年 サイ ク ル で 建替 え て い く仕 組 と し て 定着 し て き た。 少 し 余 裕 の あ る 土 地 で 丁 寧 に つ く り 、適 切 な メ ン テ ナ ン ス が 施 さ れ て い れ ば 、 十 分に 長 寿 命 化が は か れ る。 そ れ が で きて い な い のが 現 在 の 街区 で あ る。 「 街 な か 再 生 」は ゆ と り の あ っ た 時 の街 区 の 復 活と み る こ とも で き る 。 人 口 減 少 に伴 い 、 近 い将 来 に 減 築と い う 建 築 行為 も で て くる 。 サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区は こ れ か ら 新た に 創 っ てい く 場 合 と現 在 あ る もの を つ く り直 す と い う再 生 の 2 つの 手 法 で お こな っ て い く必 要 が あ る。 こ れ か ら の人 口 減 少 を考 え て い けば 、 新 た に 建造 物 を つ くり 込 ん で いく 場 合 と 、余 裕 を 持 って い た 時 代の 街 区 を 取り 戻 し 、 新 しい 時 代 に 応え て い く こと に な る ( 図 4 -4 )。 こ の サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 の 構 成 要素 と し て 、社 会 資 産 、歴 史 ・ 景 観資 産 、 ミ ニ自 然 資 産 をあ げ る 。 社 会 資 産 は住 宅 ・ 建 築で あ る が 、こ れ は 安 全 で長 寿 命 で あり 、 メ ン テナ ン ス の しや す さ と 、普 遍 的 な デザ イ ン 及 び価 値 を 有 し 、温 熱 環 境 に優 れ 、 環 境配 慮 8 型 のつ く ら れ 方が な さ れ 、高 い 可 変 性を 持 つ こ と が必 要 で あ る。 ま た、 質 の 高 い都 市 基 盤 の整 備 は 不 可欠 と な る 。 歴 史 ・ 景 観資 産 は そ の土 地 の 歴 史性 を も つ も のや 街 区 の もつ 質 の 高 い景 観 を 住 民・ 市 民 の 共通 財 産 と し、 そ こ に 住む 人 々 の 誇 りに つ な が り、 共 通 認 識に な る。 そ こ に 住 み続 け た い 要因 の ひ と つに な る 。 特 に景 観 づ く り、 景 観 形 成は 大 き な 財産 と な る 。ま た 、 親 、子 、 孫 と 共通 し て 認 識 でき る 景 観 や風 景 、 空 間、 ま た 歴史 性 の も のは 時 間 が たて ば 地 域 文化 を 形 成 す る可 能 性 を もつ 。 ミ ニ 自 然 資産 は 緑 地 、大 き な 樹 木、 環 境 緑 地 、水 辺 等 の 存在 は 安 全 、防 災 上 有 効で あ り 、 また ゆ と り 、や す ら ぎ の源 に も な る 。 地 面 が ア スフ ァ ル ト やコ ン ク リ −ト で 固 め ら れた 場 所 で は幼 児 ・ 児 童の 遊 び 場 にも な り に くい 。 子供たち が少し でも自 然に接 するこ とので きる場 所が住 居から 近い所 にあ る こと の う る おい さ は 貴 重で あ る 。 都市 に お け る 子供 空 間 の 復権 を 目 指 すこ と も 必要 で あ る 。 緑 の 空 間 等は 風 の 道 にも な り 、 都市 環 境 に も 大き な 役 割 を果 た す 。 一方 で 都 市 計画 上 は 未 利用 地 的 な 見ら れ 方 も する が 、 税 制 等の 面 で 自 然資 産 に 対 して は 優 遇策 か 、 自 然資 産 の も つ別 の 新 た な価 値 の 評 価 も検 討 し て いく 時 期 に 入っ て い る。 同 様 に リ ザー ブ ス ペ ース の 確 保 ・維 持 も 自 然 資産 に 見 合 う評 価 法 が 必要 と な る。単に遊休地として経済活動のみに寄与しているか否かの見方 だけでなく、 新 しい 価 値 評 価の 確 立 も 急が れ る 。 コ モ ン と いう 概 念 も 現代 の 時 間 枠の 中 だ け で 見る の で は なく 、 現 在 と 30 年、 50 年 先 の 人 々 と の 間 で 互 い に 役 立 ち 得 る と い う 見 方 も で き る 。 図 4− 4 街 区要 素 の 変 化 9 4 −4 . サ ス ティ ナ ブ ル ・ス ト ッ ク 型街 区 の 施 設 構成 要 素 か ら 更 に 具 体 的 に 街 区 の 施 設 構 成 を 示 す と 表 4 -1 の よ う に な る 。 表 4− 1 サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区の 施 設 構 成 構成 居住施設 社 会 資 産 生 活 支 援・ サ −ビス施設 〔複数街区、 地区等では生 活基盤として と らえ る〕 都市基盤 リザーブ スペース 歴 史 ・ 景 観 資 産 ミ ニ 自 然 資 産 歴史 内 容 多 様 な 世 代 ・ 世 帯 に 対 応 で き る 住 居 パ タ − ンを も つ 低中 層 の 住 居 長寿命・高品位・安全 性・可変性をもつ 住替えのシステム コ レ ク テ ィ ブ 機 能 (単 身 、 ミ ニ 家 族 等 ) 時代・社会の システム 変化に対応 できる可 変性・コン バ−ジョ ン機能を持つ 多 機 能 小 売・サ ー ビ ス 店 舗 (振 込・商 品 受取・宅 配・日 用 品 販売 等) 少 子 高 齢 化 対 応 福 祉 施 設 (保 育 施 設 ・ 学 童 保 育 ・ デ ィ ケ ア 施 設 ) 診 療 所 (ホ ー ム ド ク タ ー 制 ) 地域密着型小規模商店 地域密着型事業所 多機能集会所 公共機関ミニ出先コ ーナー 各 種 NPO 巡 回 サ テ ラ イ ト 育児・子育て・ひき こもり相談サテラ イト 雇用・就職・能力開 発相談サテライト ・能力開発ショ ップ 健康・介護相談サテ ライト 狭域循環エコバス停留 所 ※ 上 記 事 業 の タ ウ ン ・マ ネ ジ メ ン ト 化 の 検 討 ゴミ保管場 道路・生活道路・歩道・一部ペデ ストリアンデッキ 都 市 設 備 共 同 溝 (上 下 ・ 中 水 道 、 ガ ス ・ 電 気 、 通 信 ・ 情 報 ) 自 然 エ ネ ル ギ ー 活 用 ミ ニ 施 設 (風 力 ・ 太 陽 光 発 電 等 機 能 雨 水 ) 緑 地 等 (広 場 ・ 公 園 ・ コ ミ ュ ニ テ ィ ガ ー デ ン ・ 樹 木 ・ 環 境 緑 地 ・ 水 辺 ) 〔 基 本 的 に は 利 用 変 更 は 行 わ れ ず 景 観 空 間 と し て 10 0∼ 20 0 年 変 化さ せ な い 一定 の 都 市 自然 空 間〕 ※ 上 記 事 業 の タ ウ ン ・マ ネ ジ メ ン ト 化 の 検 討 緑地等とは異 なり、街 区の拡充・ 発展や将 来計画のリ ザーブ、 既存の機能の 見直しが でて、新た にサステ ィナブル建 築群の新 設への対応と して予め 公共地とし て確保さ れた場。リ ザーブの 間は多目的に 活用し、 緑地等同様 に都市災 害、イベン ト等で活 用する。 その土地の歴 史・文化 遺産があれ ば保護し 、その地に 住む人々 の誇りになるようにす る。 景観 景観としては 緑 地 等 に 含 ま れ る 各 空間 が 時 を 越 えて 変 わ ら ぬ 景 観資 産 を も つ 。ま た 質 の 高 い 長 寿 命 の 建 築 群 と 緑 地 等 の 空 間 群 と で 、 「住ん でみたい魅力」をもつ 景観に育てていく 。 自然 その地に社の 杜や雑木 林、川や池 、海岸線 、海、里山 、山並み 等が身近にあ れば、そ の自然と歴 史・景観 資産の組合 せで街区 の魅力から都市の大き な魅力へと期待で きる。 10 サ ス テ ィ ナブ ル ・ ス トッ ク 型 街 区の 施 設 構 成 は社 会 資 産 の区 分 に 概 ね集 中 さ れ る 。 住 宅 、 建 築 物 、 都 市 基 盤 は 持 続 可 能 な 建 築 要 素 (長 寿 命 ・ 高 耐 久 ・ 高 品 位・安全、可変性、設備メンテナンス性、温熱環境配慮、持続可 能な構工法、 住 みご こ ち)を 有 す るこ と が 必 要に な る 。 居 住 施 設 に つ い て は 、現 在 集 合 住 宅 で 100 0 万 戸 と 言 わ れ て い る が 、そ ろ そ ろ 30 ∼ 4 0 年 で 建 替 期 に 入 り つ つ あ る 。こ れ ら は 老 朽 ・ 狭 小・ 耐 震 性 等 で 現 在 の 水 準 に達 し て い ない 。 ま た、 ス ト ッ クで 集 計 さ れて い る 住 宅 は 4 人 家 族を モ デ ル に して 供 給 さ れ続 け た の で 、 2 LD K、 3D K、 3L DK タ イ プ の 住 戸 が 大 半 を 占 め て い る 。 世 帯 構 造 の変 化 が 激 しい 現 在 で は、 も っ と バ リェ − シ ョ ンが 求 め ら れて き て い る。 長 寿 命 ・安 全 ・ 可 変性 は 言 う まで も な い が 、プ ラ ン や 住替 え や す さ、 多 様な住み 方がで きること に対応 する社 会のし くみ含 めての技 術対応 が求め ら れ るこ と に な る。 ま た 、 特 定の 限 ら れ た街 区 で は 高層 建 築 物 が 必要 に な る が、 一 般 的 には 低 ・ 中 層の 建 築 群 の方 が 防 災 ・安 全 ・ 景 観・ メ ン テ ナ ンス コ ス ト ・ヒ ュ ー マ ンス ケ ー ル等 で 優 れ てい る 。 生 活 支 援 ・サ ー ビ ス 施設 に つ い ても 持 続 可 能 な建 築 要 素 で技 術 的 に 対応 し て い く こ と と 同 時 に 持 続 可 能 な 社 会 要 素 ( 人 口 動 態 、少 子 ・高 齢 化 、労 働 力 不 足 、 所 得格 差 等)を 十 分 取上 げ る 必 要が あ る 。 こ れ は 現 在、 大 き な 社会 問 題 に なっ て い る 、 なり つ つ あ る項 目 で あ るが 、 将 来 解決 し て い ける も の も ある が 、 深 刻化 し て い く 項目 も あ る 。 基 本的 に も 、 その 社 会 問 題を 解 決 し てい く た め の社 会 ・ 生 活 行為 で あ る ため 従 来の 建 築 の 概念 で 対 応 でき る も の であ る が 、 特 に空 間 へ の 可変 性 、 コ ンバ ー ジ ョン 機 能 を 十分 も た せ るこ と が 必 要に な る で あ ろう 。 施 設の 内 容 と して は 地 域 密着 型 の 商 店や 事 業 所 、多 機 能 性 を もつ 小 売 ・ サー ビ ス店 舗 、 集 会施 設 が 考 えら れ る 。 多 機能 小 売 ・ サー ビ ス 店 舗は 利 便 性 が上 が り 、 今後 も っ と サ ービ ス の 種 類が IT 技 術 に 支 え ら れ て 増 え て い く 。 ま た、 多 機 能 集会 所 は 地 域住 民 の 集 会だ け で な く、 日 替 わ り 、サ ー ビ ス 時間 帯 等に 弾 力 性 をも た せ た 運営 で 、 公 共機 関 サ ー ビ スや 現 代 の 社会 問 題 に なっ て い る、 な り つ つあ る 事 項 のコ ー ナ ー やサ テ ラ イ ト を取 入 れ 、 相談 や ケ ア をお こ な う。 多 機能 小 売 ・ サー ビ ス 店 舗や 少 子 ・ 高齢 化 対 応 福祉 施 設 、 多 機能 集 会 所 、地 域 密着 型 小 規 模商 店 等 で は住 民 と の フェ ー ス ・ ツ ー・ フ ェ ー スで コ ミ ュ ニケ ー シ ョン の 機 会 を増 し 、 そ れが 発 展 し てコ ミ ュ ニ テ ィ形 成 に つ なが る し く みを 導 入 する 。 章末 に そ の イメ ー ジ を 参考 図 と し て示 す 。 11 5 .お わ り に 現代 の 経 済 活動 の 視 点 から は 難 し いま と め に な るが 、 短 時 間で 創 り あ げら れ る も のと 時 間 を かけ な け れ ばで き な い もの が あ る 。 都市 と い う もの は ま さ に時 間 を か けて 形 成 さ れ てい く も の では な か ろ うか 。 日 本 の 国 土 に お い て も 成 長 の 限 界 を 越 え た 状 態 に あ る の か も し れ な い 。戦 後 60 余 年の 中 で 人 口は 約 2 倍 に増 加 し た 。こ の 急 激 な 指数 的 変 化 の中 で 、 短 期間 に 住 宅 、建 築 、 都 市と つ く っ てき た が 、 結果 は 良 質 な スト ッ ク と は成 り え て はな い よ う だ。 未だ に 終 戦 直後 の 戦 災 復興 の 法 律 に呪 縛 さ れ た かた ち で 「 量」 が 亡 霊 のご と く つ きま と っ て いる 。 大 胆 な「 質 」 へ のパ ラ ダ イ ム・シ フ トが 必 要 で ある 。 住宅 に し ろ 、都 市 に し ろ、 そ れ は 人間 、 生 活 を 入れ る 器 で ある 。 技 術 のス ピ − ド に人 間 や そ の生 活 の ス タイ ル は つ いて こ れ な か った の か も しれ な い 。 その 加 速 さ れた 技 術 や その 進 歩 を 受容 れ ざ る を得 な い 未 熟 な社 会 シ ス テム の た め 別の 問 題 が 複合 的 に 発 生し て は い ない だ ろ う か。 そ の 過 度 な精 神 的 ス トレ ス の た め、 未 熟 な 成長 の た め 、メ ン タ ル ケア や そ の ため の 相 談 ・ 療養 施 設 が 増加 し 、 公 的な 資 金 を 想定 外 の 分 野で つ か っ てい か な け れば な ら な い 現象 が で て きて い る 。 それ は 労 働 時間 の 損 失 であ り 、 日 本の 生 産 性 の損 失 で も あ る。 ま た 、 中高 年 の 自 殺率 の 異 常 さも 家 族 生 活、 労 働 力 再生 産 の 観 点か ら も 大 き な損 失 に つ なが る 。 フリ ー タ ー やニ ー ト の 問題 も 同 根 かと 思 え る 。 ひと つ の こ とが 特 化 さ れす ぎ 、 調 和の な い 牽 引力 と し て 社会 に 入 っ てく る と 、 タ イム ラ グ を 経て 、 新 た な現 象 が 生 じ、 社 会 問 題へ と 発 展 し、 国 の 損 失へ と つ な が る模 式 が 浮 び上 が っ て くる 。 社会 制 度 に おい て も 人 口の 指 数 的 変化 に 対 応 し きれ て い な い。 対 策 国 家か ら 政 策 国家 へ 大 き く枠 組 を か えて い く 必 要が あ る 。 サス テ ィ ナ ブル ・ ス ト ック 型 街 区 の形 成 も 未 来 から 振 り 返 った 時 に 、 社会 資 産 群 、歴 史 ・ 景 観資 産 群 、 自然 資 産 群 とし て 有 用 に 活用 さ れ て いる も の で あり 、 将 来 の社 会 資 産 等を ど う 形 成し て い く のか を 準 備 す るの が 現 代 の使 命 で も ある 。 今、 未 来 の 社会 資 産 に なる た め の 基盤 づ く り は じめ た と こ ろで あ る 。 この 視 点 が 大切 で 、 そ の地 の 人 々 が安 心 し て 住 める 、 住 み 続け た い 魅 力に つ な が るも の で あ ると 考 え る 。 まだ 、 具 体 的な ケ ー ス ・ス タ ー デ ィに は 至 っ て ない が 、 社 会構 造 の 変 化、 地 球 環 境問 題 か ら 派生 し て く る建 築 生 産 への 課 題 や 国 民の 生 活 、 日本 人 の 資 金に よ る 日 本の 社 会 資 産づ く り 、 新た な タ ウ ン・ マ ネ ジ メ ント 、 建 築 社会 学 的 な 要素 等 を 織 り交 ぜ な が ら都 市 の 最 小基 本 単 位 とし て の 街 区 につ い て の 研究 を 八 幡 東区 を か わ きり に 北 九 州市 、 広 域 圏、 日 本 へ と拡 げ て 、 そ れぞ れ の 「 街づ く り 」 に資 す る 研 究と し た い 。 12 参考図:街区群イメージ図 リザーブスペース 駐車場 駐車コーナー 社の杜 幹線 道路 緑地 ・イベントエリア 駐車コー ナー 駐車 場 緑地 : 居住施設 13 : 生活支援・サービス施設 : 業務・複合施設 参 考図 道路 ゴ ミ保管場 循環エコバス 停 緑地等 商店 中層居住施設 ← 地下駐車場へ 低 低層 居住 居住 施設 施設 リザーブ スペース 施設 緑地等 幹線道路 層 居住 サービス駐車ポート 中層居住施設 低 層 低層居住施設 生活支援サービ ス施設 サービス駐車ポート 幹線道路 ペデストリアンデッキ 駐車 スペース 緑地等 道路 中層居住施設 住戸 中層居住施設 住戸 住戸 低層居住施設 住戸 住戸 低層 居住施設 住戸・事務所 歩道・ペデストリアンデッキ 住戸 生活支援・サービス施設 共同溝 幹線道路 設備共同溝 生活支援・サービス施設 地下駐車場 生活支援・サービス施設 地下駐車場 共同溝 幹線道路 リザーブスペース 道路 街区 道路 中層居住施設 中層居住施設 リザーブ スペース 低層居住施設 低層居住施設 緑地等 商店 生 中 層 居 住 施 活 支 援 サ ー ビ 設 リザーブ スペース 設 ス 施 低 層 居 住 施 緑地等 設 14 共同溝 ス トッ ク 型 街 区の 形 成 に 向け て 【 事 業 性 と 事 業 手 法 の 検 討 】 坂本 圭 ( 株 式会 社 ソ リ ュー ト 総 合 研究 所 代 表 取締 役 、 学 校法 人 九 州 国際 大 学 次 世代 シ ス テ ム 研究 所 1. 目 特 別研 究 員 ) 的 ス トッ ク 型 マ ンシ ョ ン は 、建 築 コ ス ト等 の 初 期 投 資額 は 増 大 する も の の 、長 期 的 には 、 使 用 期間 当 た り のコ ス ト は 、低 減 す る こ とが 予 想 さ れる 。 こ こで は 、 以 下の よ う な 項目 に つ い て、 ス ト ッ ク 型マ ン シ ョ ンの 事 業 性 の評 価 及 び事 業 ス キ ーム の 検 討 を行 っ た 。 ① 投 資 採 算 性の 評 価 ス トッ ク 型 マ ンシ ョ ン の 投資 家 サ イ ドか ら の 投 資 採算 性 の 評 価 ② 利 用 者 の 生涯 支 出 の 評価 ス トッ ク 型 マ ンシ ョ ン を 利用 す る 利 用者 サ イ ド の 生涯 支 出 の 評価 ③ 事 業 ス キ ーム の 検 討 と課 題 の 整 理 ス トッ ク 型 マ ンシ ョ ン を 広く 導 入 ・ 普及 す る た めの 事 業 ス キ ーム の 検 討 2. 方 法 2 −1 . 投 資 採算 性 の 評 価 ① モ デ ル 住 宅の 想 定 80 ㎡ の 区 画 を 想 定 。 ス ト ッ ク 型 は 、 単 独 の 場 合 ,街 区 全 体 で 整 備 し た 場 合を 想 定 。 ② モ デ ル 住 宅に 係 る 初 期投 資 額 及 び改 修 費 の 査 定 初 期投 資 額 ( 土地 価 格 , 建物 価 格 等 )及 び 改 修 費( 部 分 改 修 ,大 規 模 改 修) を 査 定 。 ③ 賃 料 収 入 及び 必 要 諸 経費 等 の 査 定 賃 料収 入 及 び 必要 諸 経 費 等を 査 定 。 ④ 耐 用 年 数 にわ た る キ ャッ シ ュ フ ロー の 査 定 想 定し た モ デ ル住 宅 の 耐 用年 数 に わ たる キ ャ ッ シ ュフ ロ ー を 査定 。 ⑤ 投 資 採 算 性の 評 価 想 定 し た モ デ ル 住 宅 に 係 る I RR ( 内 部 収 益 率 ) を 査 定 。 1 2 −2 . 利 用 者の 生 涯 支 出の 評 価 ① モ デ ル 住 宅の 想 定 「 2− 1 . 投 資採 算 性 の 評価 」 と 同 一の マ ン シ ョ ンを 想 定 。 ② モ デ ル 住 宅に 係 る 取 得価 額 等 の 査定 モデル 住宅を 取得又 は賃 借して 利用 する場 合の取 得価 額や賃 料を 査 定。 ③ 使 用 期 間 にわ た る キ ャッ シ ュ フ ロー の 査 定 モ デル 住 宅 の 使用 期 間 に わた る キ ャ ッシ ュ フ ロ ー を査 定 。 ④ 利 用 者 の 生涯 支 出 の 評価 利 用者 の 生 涯 支出 を 集 計 ・評 価 。 2 3. 長寿 命 住宅 の投 資 採算 性の 評 価 3 −1 . モ デ ル住 宅 の 想 定 表 −1 構 床 面 モ デ ル住 宅 の 想 定 従 来 型マ ンシ ョン ス ト ック 型マ ンシ ョン ( 単 独建 築) ス ト ック 型マ ンシ ョン ( 街 区整 備) 造 鉄 筋 コン クリ ート 造 超 高耐 久 ・ S I 超 高耐 久 ・ S I 積 80. 0 ㎡ 80. 0 ㎡ 80. 0 ㎡ 45 年 135 年 135 年 耐 用 年 数 3 −2 . 初 期 投資 額 及 び 改修 費 の 査 定 表 −2 モ デ ル住 宅 の 初 期投 資 額 ( 取得 原 価 ) の 査定 〔 関東 周 辺 〕 従来型集合住宅 ストック型集合住宅・単 比率 ストック型集合住宅・街 比率 土地価格 18,320,000 円 51.1% 18,320,000 円 48.6% ±0.0% 17,400,000 円 47.3% 建物価格 15,100,000 円 42.2% 16,800,000 円 44.5% +11.3% 16,800,000 円 45.7% +11.3% 諸経費等 2,400,000 円 6.7% 2,600,000 円 6.9% +8.3% 2,600,000 円 7.1% +8.3% 取得原価 35,820,000 円 100.0% 37,720,000 円 100.0% +5.3% 36,800,000 円 100.0% +2.7% 4,200,000 円 11.4% +7.7% 41,000,000 円 111.4% +3.2% 販売利益 3,900,000 円 10.9% 4,300,000 円 販売価格 39,720,000 円 110.9% 42,020,000 円 11.4% +10.3% 111.4% +5.8% △5.0% 〔 北九 州 周 辺 〕 従来型集合住宅 ストック型集合住宅・単 土地価格 5,200,000 円 29.2% 5,200,000 円 建物価格 11,200,000 円 62.9% 諸経費等 1,400,000 円 7.9% 取得原価 17,800,000 円 100.0% 26.4% 比率 ストック型集合住宅・街 4,940,000 円 12,900,000 円 65.5% +15.2% 12,900,000 円 1,600,000 円 8.1% +14.3% 1,500,000 円 7.8% +7.1% 19,700,000 円 100.0% +10.7% 19,340,000 円 100.0% +8.7% 販売利益 2,500,000 円 14.0% 2,800,000 円 14.2% +12.0% 2,800,000 円 販売価格 20,300,000 円 114.0% 22,500,000 円 114.2% +10.8% 22,140,000 円 ※ ※ 25.5% 比率 ±0.0% △5.0% 66.7% +15.2% 14.5% +12.0% 114.5% +9.1% 街 区 の 場 合、 土 地 の一 部 に 区 分地 上 権 を 設定 し 、公 共 施 設 を整 備 す る た め 、土 地 価 格 が△ 5%低 下 す る 。 本 節 で は 上 記 「 取 得 原 価 」 を 採 用 す る 。 な お 、「 販 売 価 格 」 は 、 次 節 で 使 用す る 。 3 表 −3 モ デ ル住 宅 の 改 装費 の 査 定 〔 関東 周 辺 〕 従来型集合住宅 ストック型集合住宅 比率 建 物 寿 命 45 年 0年後 15,100,000 円 新築 16,800,000 円 新築 15年後 4,700,000 円 改装 3,900,000 円 改装 30年後 8,100,000 円 改装 5,800,000 円 改装 45年後 16,900,000 円 解体+新築 5,900,000 円 改装 60年後 4,700,000 円 改装 5,800,000 円 改装 75年後 8,100,000 円 改装 3,900,000 円 改装 90年後 16,900,000 円 解体+新築 7,800,000 円 改装 105年後 4,700,000 円 改装 3,900,000 円 改装 120年後 8,100,000 円 改装 5,800,000 円 改装 135年後 1,800,000 円 解体 2,000,000 円 解体 計 89,100,000 円 61,600,000 円 △30.9% 45 年 当 た り 29,700,000 円/45年 20,533,333 円/45年 △30.9% 1年 当た り 660,000 円/年 456,000 円/年 △30.9% 経 過 年 数 合 135 年 +11.3% 〔 北九 州 周 辺 〕 従来型集合住宅 ストック型集合住宅 建 物 寿 命 45 年 0年後 11,200,000 円 新築 12,900,000 円 新築 15年後 3,500,000 円 改装 3,000,000 円 改装 比率 135 年 +15.2% 30年後 6,000,000 円 改装 4,400,000 円 改装 45年後 12,500,000 円 解体+新築 4,500,000 円 改装 60年後 3,500,000 円 改装 4,400,000 円 改装 75年後 6,000,000 円 改装 3,000,000 円 改装 90年後 12,500,000 円 解体+新築 6,000,000 円 改装 105年後 3,500,000 円 改装 3,000,000 円 改装 120年後 6,000,000 円 改装 4,400,000 円 改装 135年後 1,300,000 円 解体 1,500,000 円 解体 計 66,000,000 円 47,100,000 円 △28.6% 45 年 当 た り 22,000,000 円/45年 15,700,000 円/45年 △28.6% 1年当 たり 489,000 円/年 349,000 円/年 △28.6% 経 過 年 数 合 3 −3 . 賃 料 収入 及 び 必 要諸 経 費 等 の査 定 街 区全 体 を ス トッ ク 型 街 区と し て 整 備す る ケ ー ス では 、 良 好 な住 環 境 が 整備 さ れ、 そ れ が 長期 に わ た り持 続 ・ 熟 成し て い く こ とを 考 慮 し 、賃 料 は 新 築時 に お い て 5% 弱高 く 、 か つ、 そ れ が 長期 に わ た って 持 続 す る こと を 想 定 した 。 3 −4 . 投 資 採算 性 の 評 価 以 上よ り 、 ス トッ ク 型 マ ンシ ョ ン を 賃貸 用 不 動 産と し た 場 合 の投 資 家 サ イド か ら見 た 投 資 採算 性 を 以 下の と お り 評価 し た 。 4 表 −4 投 資 採算 性 の 評 価 〔 関東 周 辺 〕 スト ック型マ ンシ ョン・単 体 従 来型マン ショ ン 投 資 初 期 期 間 投 全期間(135年間) 第1期(45年間 ) スト ック型 マンシ ョン・街 区 全期間(135年間) 資 35,820,000 37,720,000 36,800,000 地 価 格 18,320,000 18,320,000 18,320,000 建 物 価 格 15,100,000 16,800,000 16,800,000 費 2,400,000 2,600,000 2,600,000 経 収 入 115,665,400 304,830,400 131,812,510 371,141,520 155,507,804 賃 料収 入( 期 間中 ) 99,695,000 289,060,000 104,710,000 350,040,000 117,990,000 売 却収 入 ( 終 期) 15,970,400 15,770,400 27,102,510 21,101,520 37,517,804 計 36,231,950 113,090,600 39,178,200 108,900,450 37,570,450 21,970,450 支 出 経 合 常 的 費 23,431,950 70,290,600 23,578,200 66,100,450 大 規 模 修 繕 費 12,800,000 42,800,000 15,600,000 42,800,000 15,600,000 C 79,433,450 191,739,800 92,634,310 262,241,070 117,937,354 F 経 合 計 4.08% 内 部 収 益 率 (irr) 3.84% 4.13% 備考 第 1期(45年間 ) 土 諸 N 全 期間(45年間) 5.29% 45年 後売却(R=4.5%) 5.23% 45年 後売却(R=5.0%) 5.20% 4.01% 〔 北九 州 周 辺 〕 スト ック型マ ンシ ョン・単 体 従 来型マン ショ ン 投 資 初 期 ◇ ◇土 ◇建 期 間 投 全期間(135年間) 第1期(45年間 ) スト ック型 マンシ ョン・街 区 全期間(135年間) 資 17,800,000 19,700,000 価 格 5,200,000 5,200,000 5,200,000 物 価 格 11,200,000 12,900,000 12,900,000 諸 経 19,340,000 1,600,000 1,600,000 費 1,400,000 入 60,519,000 167,849,000 72,375,683 202,907,200 85,358,629 賃 料収 入( 期 間中 ) ◇ 56,775,000 164,305,000 59,680,000 197,850,000 66,690,000 期) 3,744,000 3,544,000 12,695,683 5,057,200 18,668,629 計 25,864,550 83,923,800 28,989,200 80,378,500 27,690,150 費 16,364,550 51,223,800 17,089,200 47,678,500 15,790,150 規 模 修 繕 費 9,500,000 32,700,000 11,900,000 32,700,000 11,900,000 34,654,450 83,925,200 43,386,483 122,528,700 売 却収 入 ( 終 支 出 経 ◇大 ◇ C ◇ 合 常 F 的 経 合 計 3.67% 内 部 収 益 率 (irr) 3.57% 3.79% 備考 第 1期(45年間 ) 地 収 N 全 期間(45年間) 57,668,479 5.02% 45年 後売却(R=4.5%) 4.96% 45年 後売却(R=5.0%) 4.96% 3.61% ◇ こ れ に よ る と 、北 九 州 周 辺 の ケ ー ス は 、関 東 周 辺 に 比 べ 、各 ケ ー ス と も 0 .3 ポ イ ン ト 程 度 I RR ( 内 部 収 益 率 ) が 低 下 し て お り 、 投 資 効 率 が 若 干 低 い と い う結 果 が 得 られ た 。 ◇ 従 来 型 マ ン シ ョ ン に 比 べ 、ス ト ッ ク 型 マ ン シ ョ ン は 、 初 期 投 資 額 は 増 加 す る も の の 、 N CF ( ネ ッ ト ・ キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー ) も 増 加 す る 。 NCF は 、 第 1 期 の 45 年 間の み で 比 較し て も 、 スト ッ ク 型 マン シ ョ ン の方 が 、 従 来型 マ ン ショ ン よ り も大 き い 。 ◇ IRR ( 内 部 収 益 率 ) は 、 ス ト ッ ク 型 マ ン シ ョ ン を 単 独 で 整 備 し た 場 合 、 従 来 型 に 比 べ 、 0 .2 ポ イ ン ト 程 度 の 改 善 に 過 ぎ な い が 、 街 区 全 体 で 整 備 し た 場 合 に は 、 従 来 型 に 比 べ 1 .3 ポ イ ン ト 程 度 の 改 善 と な る 。 5 4. 利用 者 の生 涯支 出 の評 価 4 −1 . モ デ ル住 宅 の 想 定 「 投資 採 算 性 の評 価 」 の 場合 と 同 一 の住 宅 を 想 定 。 4 −2 . モ デ ル住 宅 に 係 る取 得 価 額 等の 査 定 ① 利 用 者 の 権利 関 係 の 想定 通 常取 得 ・ モ デル 住 宅 を 通常 の 分 譲 マン シ ョ ン とし て 取 得 。 通 常賃 貸 ・ モ デル 住 宅 を 通常 の 賃 貸 マン シ ョ ン とし て 賃 借 し 、45 年 間 使 用 。 証 券取 得 併 用 型賃 貸 ・ モ デル 住 宅 を 証券 化 し 、1 区 画 相 当分 を 証 券 とし て 取 得 。 ・ 賃 貸 住 宅 と し て 賃 借 し 使 用( 賃 料 を 支 払 う 一 方 で 、証 券 の 配 当 を 得 る 。) ② 取 得価 額 の 査 定 表 −5 分 譲 マン シ ョ ン を想 定 し た 場合 の 取 得 価 額 〔 関東 周 辺 〕 従来型集合住宅 ストック型集合住宅・単 ストック型集合住宅・街 第1 世代 39,720,000 円 新築 42,020,000 円 新築 41,000,000 円 新築 第2 世代 39,720,000 円 新築 27,102,510 円 中古 37,517,804 円 中古 第3 世代 39,720,000 円 新築 25,719,608 円 中古 36,424,703 円 中古 〔 北九 州 周 辺 〕 従来型集合住宅 ストック型集合住宅・単 ストック型集合住宅・街 第1 世代 20,300,000 円 新築 22,500,000 円 新築 22,140,000 円 新築 第2 世代 20,300,000 円 新築 12,695,683 円 中古 18,668,629 円 中古 第3 世代 20,300,000 円 新築 11,865,914 円 中古 17,817,669 円 中古 ※ 中 古 マ ン シ ョ ン の 価 格 は 、 割 引 率 5 .0 % と し て DC F 法 に よ り 求 めた 収 益 価 格 6 4 −3 . 利 用 者の 生 涯 支 出の 評 価 ● ま ず 、分 譲 マ ン シ ョ ン と し て 通 常 取 得 す る 場 合 の 第 1 世 代 に つ い て 見 る と 、 ス ト ッ ク 型 マ ン シ ョ ン は 、取 得 時 の 価 格 は 高 い も の の 、 使 用 期 間 満 了 時 の 中 古価 格 も 高 いた め 、売 却価 格 を 含 める と 、生涯 支 出 は スト ッ ク 型 マン シ ョ ンの 方 が 低 くな る 。 関 東 : 74, 81 4 千 円 → 単 体 7 0, 59 0 千 円 , 街 区 5 7, 23 0 千 円 北 九 州 : 49, 63 7 千 円 → 単 体 4 7, 34 3 千 円 , 街 区 3 9, 66 6 千 円 ● た だ し 、 使 用 期 間 中 の 支 出 総 額 は 、逆 に ス ト ッ ク 型 マ ン シ ョ ン の 方 が 高 く な る 。す な わ ち 、 第 1 世 代 の 存 命 中 の 支 出 は 、従 来 型 マ ン シ ョ ン の 方 が 低 く 、加 えて 、中 古 住 宅 の 売却 価 額 の 不確 実 性 を 考慮 す る と 、こ の点 が 、ス ト ック 型 マ ン ショ ン の 普 及の 阻 害 要 因と な ろ う 。 関 東 : 90, 78 5 千 円 → 単 体 9 6, 88 0 千 円 , 街 区 9 3, 62 2 千 円 北 九 州 : 53, 38 1 千 円 → 単 体 5 9, 65 8 千 円 , 街 区 5 7, 77 5 千 円 ● 証 券 化 さ れ た モ デ ル 住 宅 を 取 得 ( 証 券 を 取 得 ) し 、 賃 料 を 支 払 う 一 方 で、 証 券 の 配 当 を 受 け る こ と を 想 定 し た 場 合( ケ ー ス 1-3 ,2- 3 ,3 -3 )、ス ト ッ ク 型 マ ン シ ョ ン で あ っ て も 、従 来 型 の 分 譲 マ ン シ ョ ン を 取 得 す る 場 合 に 比 べ 、生 涯 支 出 ,使 用 期 間 中の 支 出 総 額と も 高 く な る。 関 東 生 涯 支 出 : 7 4,8 14 千 円 → 単 体 82 ,0 94 千 円 , 街 区 81 ,0 78 千 円 使 用 中 支 出 : 9 0,7 85 千 円 → 単 体 98 ,0 64 千 円 , 街 区 97 ,0 48 千 円 北 九州 生 涯 支 出 : 4 9,6 37 千 円 → 単 体 53 ,9 66 千 円 , 街 区 53 ,5 67 千 円 使 用 中 支 出 : 5 3,3 81 千 円 → 単 体 57 ,7 10 千 円 , 街 区 57 ,3 11 千 円 ● た だ し 、優 遇 金 利 に て 取 得 費 の 融 資 が 受 け ら れ る 場 合( ケ ー ス 2 -4 ,3 -4)、 生 涯 支 出 , 使 用 期 間 中 の 支 出 総 額 は 、 単 体 の 場 合 で 従 来 型 と 同 程 度 、街 区 整 備の 場 合 は 従来 型 よ り 低く な る 。 関 東 生 涯 支 出 : 7 4,8 14 千 円 → 単 体 74 ,0 65 千 円 , 街 区 73 ,2 40 千 円 使 用 中 支 出 : 9 0,7 85 千 円 → 単 体 90 ,0 35 千 円 , 街 区 89 ,2 10 千 円 北 九州 生 涯 支 出 : 4 9,6 37 千 円 → 単 体 49 ,6 67 千 円 , 街 区 49 ,3 36 千 円 使 用 中 支 出 : 5 3,3 81 千 円 → 単 体 53 ,4 11 千 円 , 街 区 53 ,0 80 千 円 7 5. 事業 ス キー ムの 検 討と 課題 の 整理 5 −1 . 検 討 の視 点 ① 経 済 性 の 確保 ス トッ ク 型 マ ンシ ョ ン が 潜在 的 に 内 包し て い る 優 れた 経 済 性 を、 導 入 段階から 耐用 年数満 了まで の間に わた り顕在 化でき るよう なス キー ム を 検討 す る 。 ② 公 平 性 の 確保 第 一世 代 の 使 用期 間 が 当 人の 死 亡 に より 満 了 す る よう な 場 合 、価 値 の 高 い中 古 住 宅 のメ リ ッ ト は、 残 存 資 産を 相 続 し た第 二 世 代 が 享受 す る こ と とな る 。 事 業ス キ ー ム の検 討 に あ たっ て は 、 各世 代 が よ り 公平 に メ リ ッ トを 享 受 し 、費 用 を 負 担す る よ う なス キ ー ム を 検討 す る 。 ③ 持 続 性 の 確保 既 存の マ ン シ ョン の よ う に「 区 分 所 有方 式 」 を とっ た 場 合 、 維持 管 理 や 大規 模 修 繕 にあ た っ て は、 区 分 所 有者 で 構 成 され る 管 理 組 合で の 合 意 形 成が 必 要 で あり 、 必 ず しも 適 切 な 措置 が 取 ら れる と は 限 ら ない 。 事 業 ス キー ム の 検 討に あ た っ ては 、 仕 組 みと し て 、 持続 的 な 利 用 がさ れ や す く なる ス キ ー ムを 検 討 す る。 ④ 自 立 性 の 確保 ス トッ ク 型 マ ンシ ョ ン に つい て も 、 普及 の 初 期 段階 に お い て は、 同 様 の 公的 支 援 も 必要 で あ ろ うが 、 事 業 スキ ー ム の 検討 に あ た っ ては 、 継 続 的 な公 的 負 担 を前 提 と す るこ と な く 、民 間 レ ベ ル・ 市 場 レ ベ ルで 自 立 で き るス キ ー ム の検 討 を 行 う。 ⑤ 地 域 性 の 確保 不 動産 の 経 済 価値 は 、 個 々の 不 動 産 が有 す る 内 部要 因 の み で 定ま る の も ので は な く 、当 該 不 動 産の 周 辺 環 境と の 適 合 の状 態 を も 考 慮さ れ て 形 成 され る 。 事 業ス キ ー ム の検 討 に あ たっ て は 、 こう し た 地 域的 な 取 り 組 みが 促 進 さ れる よ う な スキ ー ム の 検討 を 行 う 。 8 な ぜ街 区 レ ベ ルで の 対 応 が必 要 な の か? 表 −6 時 間 の経 過 と 不 動産 の 価 値 価値 物 理 的 寿 命( 物 理 的 耐 用 年 数 ) 物 理的 減価 機 能 的 価 値 再調達 原価 物 理的 価値 潜 在的 経済 価値 機 能的 減価 経 済的 減価 市 場 価値 時間 経 済 的 寿 命( 経 済 的 耐 用 年 数 ) ・ 新 築 時に 投 入 さ れ た費 用 の 合 計 であ る 「 再 調 達原 価 」 を 最 大値 と し て 、 時 の 経過 と と も に 、摩 滅 や 老 朽 化が 進 み 、 物 理的 減 価 ( 物 理的 要 因 に 基 づ く減 価 ) が 生じ る 。 ・ ま た 、ラ イ フ ス タ イル の 変 化 等 に応 じ て 、 あ る時 点 か ら 機 能的 な 陳 腐 化 が 急速 に 進 み 、機 能 的 減 価( 機 能 的 要因 に 基 づ く 減価 ) が 生 じる 。 ・ 再 調 達原 価 か ら 、 物理 的 減 価 及 び機 能 的 減 価 を控 除 し た 残 余の 価 値 は 、 潜 在 的経 済 価 値 で あり 、 中 古 不 動産 の 市 場 価 値は 、 最 大 で この 潜 在 的 経 済 価値 ま で は 形成 さ れ 得 る。 ・ し か し 、周 辺 不 動 産 と の 比 較 に お け る 市 場 性 の 減 退 な ど 、経 済 的 減 価( 経 済 的 要因 に 基 づ く 減価 ) が 生 じ 、潜 在 的 経 済 価値 か ら 、 こ の経 済 的 減 価 を 控除 し た 残 余の 価 値 が 、中 古 不 動 産の 市 場 価 値 とな る 。 ・ 経 済的 減 価 の 要因 の 例 − 地 域 の衰 退 − 不 動 産と 周 辺 環 境の 不 適 合 − 周 辺 不動 産 と の 比較 に お け る市 場 性 の 減退 ・ こ れ らの 要 因 は 、 いず れ も 個 々 の不 動 産 単 独 では な く 、 そ の不 動 産 が 属 す る地 域 と の 関連 で 生 じ る。 9 5 −2 . 事 業 スキ ー ム の 検討 長寿 命対 応 型長 期リ ー ス制 度 ① 既 存 制度 の 問 題 点 10 0 年 を 超 え る よ う な 長 寿 命 マ ン シ ョ ン を 想 定 し た 場 合 、 既 存 の 分 譲 方 式 の 場合 、 1 次 取得 者 は 、 マン シ ョ ン の区 分 所 有 権を 権 原 と し て、 土 地 の 永続 的 な 利 用 権 と 1 00 年 を 超 え る 建 物 の 利 用 権 を 取 得 す る こ と と な り 、 必 然 的 に そ の対 価 も 高 いも の と な る。 こ のた め 、 所 有と 利 用 を 分離 し 、 利 用者 は 、 必 要と す る 期 間 の利 用 権 に 応 じ た対 価 を 支 払う よ う な 仕組 み が 必 要で あ る 。 ② 「 長 寿命 対 応 型 長期 リ ー ス 制度 」 の 提 案 ① 制 度 の 視 点 所有と 利用を分 離し、利 用者の費 用負担が 、自己が 利用す る期間に応じたものと なるようにする。 ② 利用者 に対し、 通常の分 譲(区分 所有建物 の所有権 )方式 に近い権利・義務を負 う。 ・ 既 存 の 定 期 借 地 マ ン シ ョ ン を 同 程 度 ( 45∼ 6 0 年 ) 程 度 の 長 期のリース契約とする 。 ・ ただし、更新しないこ とを趣旨とはせず 、期間満了によ り、 期 間 原 契 約 は 終 了 す る が 、利 用 者 の 申 出 に よ り 再 契 約( 再 リ ー ス ) できることを前提する 。 ・ ま た 、終 身 リ ー ス も オ プ シ ョ ン と し て 選 択 可 能 と す る 。こ の 場 合 、契 約 者 の 年 齢 に 応 じ 、最 低 定 期 期 間 及 び 予 想 使 用 期 間 を明確にし、契約時に 利用権の資産総額 を明確にする。 ・ リ ー ス 方 式 で 借 料 を 支 払 う ( 頭 金 や 一 括 払 い も 選 択 可 能 )。 賃 料 まず、リース期間に応 じた利用権の資産 価値を明示し 、 これに資産保有税や金 利を考慮して、リ ース料を算定 。 ・ 原則として、中途解約 はできないものと する。 ・ ただし、利用権の譲渡 や転貸は可能とす る。 中 途 解 約 ・ 通 常 の 分 譲 の 場 合 、当 初 の 売 買 契 約 は 解 約 で き な い が 、賃 貸 や 転 売 は 可 能 で あ る た め 、こ れ と 同 様 の 効 果 を も た ら す こ と を狙いとしている。 権 利 の 譲 渡 ・ 転 貸 ・ 原則として、利用権の 譲渡や転貸は可能 とする。 ・ 終 身 の 場 合 、当 初 設 定 し た 最 低 定 期 期 間 の 残 存 期 間 の 利 用 権 を譲渡したものとする 。 ・ 修 繕 等 の 管 理 権 原 は 、リ ー ス 会 社 に あ る が 、一 定 の 監 視 ・ 監 査機能を設ける。 管 理 権 原 ・ 区分 所有 法 の管 理組 合 にお ける 区 分所 有者 の 議決 権の よう な 権 利 は な く 、リ ー ス 会 社 が 計 画 的 に 適 切 な 管 理 を 行 う こ と を前提にする。 10 優先 利用 権 付証 券化 前 述の 「 長 寿 命対 応 型 長 期リ ー ス 制 度」 で も い える こ と だ が 、所 有 と 利 用を 分 離 し た 場 合 、 10 0 年 を 超 え る 耐 用 年 数 を 持 ち 、 か つ 自 ら に は 利 用 権 の な い 建 物 を一 体 誰 が 所有 す る の かと い う 点 が問 題 と な る 。 所 有者 の 候 補 者の 1 つ に 、市 町 村 , 住宅 供 給 公 社, 都 市 再 生 機構 な ど が 考え ら れる 。 国 土 交通 行 政 の 施策 と し て も、 住 宅 市 場 にお い て 十 分に 供 給 さ れな い 住 宅 サ ー ビ ス 等 に 対 し て 、「 公 的 賃 貸 住 宅 制 度 等 の 活 用 」 を 位 置 づ け て い る と こ ろで あ る 。 しか し 、 あ くま で 、 市 場補 完 的 な 性 格の 施 策 で あり 、 ま た 、現 在 の 財政 状 態 か ら見 て 、 主 たる 供 給 者 とし て 位 置 づ けら れ な い のが 現 実 で あろ う 。 そ こで 、 所 有 と利 用 の 分 離策 の 切 り 札と な る の が 、不 動 産 証 券化 で あ る 。 ① 不 動 産証 券 化 の 概要 不 動産 の 証 券 化は 、 平 成 9 年以 降 、 急 速に 拡 大 し て おり 、 平 成 16 年 度 末 まで の 累 計 資産 額 は 、 約 20 兆円 と い わ れて い る 。 不 動産 の 証 券 化は 基 本 的 には 、 下 図 のよ う な ス キ ー ム で 行 わ れ て い る 。 金融 市場 不動 産市場 S P C・ 投 資 法 人 等 B/S 投 融 資 代 売 金 デット (負債) 不動産 主 不 動 産 所 有 権 信託受 益権 エクイティ (資本) 金融機関 証 券 元利払い 投資家 配 当 賃料等 利用 図− 1 不 動産 証券 化 の基 本ス キ ーム 11 不 動 産 の 証 券 化 に お い て は 、 法 律 上 の 所 有 者 を 「 S PC」( 特 定 の 目 的 で 設 立 さ れ る 法 人 で 、ペ ー パ ー カ ン パ ニ ー の よ う な も の と 思 っ て も ら え ば よ い 。)に 置 き 、資 産 保 有 の 対 価 を 負 担 し 、収 益 や 利 息 を 得 る「 投 資 家 」や「 金 融 機 関 」、賃 料 を 支 払 っ て利 用 す る 「利 用 者 」 が分 離 さ れ てい る 。 「SPC」 に は 寿 命 の 概 念 が な く 、 ペ ー パ ー カ ン パ ニ ー で あ る た め 、 自 ら が 所 有 し てい る 不 動 産を 利 用 し ない 。 「 投 資 家 」も 一 定 の 利 益 さ え 得 ら れ れ ば よ く 、所 有 や 利用 の 願 望 はも っ て い ない 。 そ こで 、 前 述 の「 長 寿 命 対応 型 長 期 リー ス 制 度 」 にお い て も 、不 動 産 の 法律 上 の 所 有 者 を「 SP C」 に 置 き 、 そ こ か ら 委 託 を 受 け た「 リ ー ス 会 社 」 と 、 リ ー ス 料 を 支 払っ て 、 物 件を 一 定 期 間使 用 す る 所有 権 の な い 「利 用 者 」 とい っ た 構 図が 成 立 し え る 。た だ し 、建 設 コ ス ト や 維 持 管 理 コ ス ト と 、リ ー ス 料 の 収 支 バ ラ ン ス が「 投 資 家」 に と っ て魅 力 的 で ある 必 要 が ある 。 さ らに 次 に 提 案す る 「 優 先利 用 権 付 証券 に よ る 証 券化 制 度 」 は、 こ の 不 動産 証 券 化の 応 用 版 であ り 、 持 家志 向 や 生 活の 安 定 性 な どを 確 保 し つつ 、 1 次 取得 者 の 負 担 を 適 切 な も の( 利 用 期 間 に 応 じ た 負 担 )と す る こ と を 狙 い と し た も の で あ る 。 ○ こ れ に よ り、 利 用 者 は、 通 常 の 分譲 マ ン シ ョ ンを 購 入 代 りに 、 同 額 程度 の 証 券化 さ れ た 不動 産 の 証 券を 取 得 し 、持 家 志 向 や生 活 の 安 定 性を 確 保 す る こ とが で き る 。 ○ 長 寿 命 マ ンシ ョ ン を 通常 の 分 譲 方式 で 取 得 す ると 、 取 得 時の 価 額 が 通常 の マ ンシ ョ ン よ り高 く な る 。た だ し 、 中古 不 動 産 の 価値 も 相 当 に高 く 、 1 次 取 得者 の 実 質 的な 負 担 は その 差 額 と なり 、 通 常 のマ ン シ ョ ン に比 べ 、 負 担 が 小さ く な る と予 想 さ れ るが 、 通 常 の分 譲 マ ン ショ ン の 場 合 、自 ら が 居 住 し てい る マ ン ショ ン を 存 命中 に 売 却 する こ と は 困 難で あ る 。 ○ し か し 、 証券 化 さ れ てい れ ば 、 保有 す る 証 券 の一 部 を 存 命中 に 売 却 する こ と によ り 、 中 古不 動 産 と して の 価 値 の高 さ に よ るメ リ ッ ト を 、自 ら が 享 受 で き る ( 実 質 負 担 が 軽 減 で き る )。 ○ 計 算 上 、 利用 期 間 中 の負 担 は 、 支払 っ た 賃 料 と受 け 取 っ た配 当 と の 差額 と な り、 そ の 額 は、 維 持 管 理費 や 固 定 資産 税 な ど 、通 常 の 分 譲 マン シ ョ ン を 区 分所 有 し て いる 場 合 の 必要 諸 経 費 と同 程 度 と な るが 、 配 当 所得 が 課 税 さ れ る場 合 、 そ の税 金 が 負 担増 と な る 。こ の た め 、自 ら が 利 用 して い る 不 動 産 の配 当 に つ いて は 、 非 課税 と す る よう な 措 置 が 必要 と な る 。 12 ・ 長 寿 命 マ ン シ ョ ン の 所 有 権 を SPC に 移 し 、 こ れ を 証 券 化 す る 。 ・ 利 用 者 は 、原 則 と し て 、 利 用 す る マ ン シ ョ ン の 価 額 に 応 じ た 証 券 を 取 得 す る ( 分 譲 マ ン シ ョ ン で は 区 分 所 有 権 を 取 得 す る が 、そ の 代 り に 同 程 度 の 証 券 を 取 得 す る 。)。 ・ 長 寿命 マン シ ョン の利 用 契約 は、通常 の賃 貸 借と 同様 と する が、利用 する部屋の価額の過半以上の証券を保有する者が優先的に賃借でき るも のと す る。 ・ た だ し 、 賃 料 は 支 払 う が 、管 理 費 等 を 控 除 し た 残 額 は 、 保 有 す る 証 券 の配 当と し て受 け取 る (ネ ット の 支出 は、 通 常の 分譲 方 式の 維 持費 ・ 管 理 費 や 固 定 資 産 税 な ど の 必 要 経 費 に 近 い も の と な る 。)。 ・ 証 券 につ いて は 、自 由に 譲 渡で きる 。 管 理委 託 管 理会 社 証 券取 得 S PC 所有 代金 配 当等 利用 賃料 原則 図− 2 例外 「 優先 利用 権 付証 券に よ る証 券化 制 度」 の 概要 13 「ス トッ ク 型建 築物 等 促進 地区 」 の指 定 「 都市 計 画 法 」に お い て 、以 下 の よ うな 「 ス ト ック 型 建 築 物 等促 進 地 区 」を 指 定し 、 長 寿 命建 物 の 建 築を 面 的 に 誘導 す る 。 ○ スト ッ ク型 建築 物 等促 進地 区 指 定す べ き 地 区: 市 街 化区 域 内 に おい て 、 市 街地 と し て 長 期的 に 利 用 さ れ るこ と が 見 込ま れ 、 か つ、 ス ト ッ ク型 社 会 資 本 の整 備 を積 極 的 に 行う 地 区 地 区指 定 の 効 果: ス ト ック 型 建 築 物( 一 定 以 上の 物 理 的 な 耐久 性 と 機 能 的 な柔 軟 性 が 認め ら れ る 建物 ) を 建 築す る 場 合 、 容積 率 を上 乗 せ す る。 建 築の 制 限 等 : ス ト ック 型 建 築 物と し て 、 容積 率 の 上 乗 せを 受 け て 建 築 され た 建 物 を短 期 間 で 建て 替 え る 場合 、 建 替 後 の建 物 の容 積 率 の 制限 や 、 都 市計 画 税 を 重課 税 す る な ど、 ペ ナル テ ィ を 課す 。 ストック型建 築 従 来型 建築 物 ス トッ ク型 に 建替 え 長 期利 用 指 定容 積率+ α 指 定 容積 短 期間 での 取 壊し ・建 替え ま たは 指 定容 積率− α 図− 3 重 い都 市計 画税 「 スト ック 型 建築 物等 促 進地 区」 の アメ と ムチ 14 その 他の 施 策 ● PF I や 指 定 管 理 者 制 度 を 活 用 し た 街 区 レ ベ ル で の 管 理 体 制 の 整 備 建 物は 、 そ の 経済 価 値 が なく な れ ば 、取 り 壊 さ れ、 価 値 の あ る建 物 に 建 替え ら れ る 。こ の た め 、個 々 の 長 寿命 建 築 物 が、 物 理 的 耐 用年 数 に わ た り継 続 的 に 利用 さ れ る ため に は 、 その 経 済 価 値も 長 期 的 に 持続 さ れ る こ とが 必 要 で ある 。 さ ら に、 個 々 の 建築 物 を 適 切に 維 持 管 理 して も 、 周 辺 環境 と の 不 適合 が 生 じ れば 、 そ の 価値 も 減 じ るた め 、 経 済 価値 の 持 続 に 向け て は 、 面的 な 管 理 体制 、 少 な くと も 街 区 レベ ル で の 管 理体 制 を 整 備 する こ と が 必要 で あ る 。 ま た、 街 区 内 は、 道 路 や 公園 な ど の 公共 財 も 存 する こ と か ら 、こ れ ら の公共財 を私 有財産 である ストッ ク型 マンシ ョン等 と併せ て維 持管 理 す るこ と に よ り、 よ り 効 率的 な 管 理 が可 能 と な る 。 こ のた め 、PFI や 指 定 管 理者 制 度 を 活用 し 、 公 共財 と 私 有 財 産を 街 区 レ ベ ル で 総 合 的 に 管 理 す る T MO な ど の 設 立 が 必 要 で あ る 。 ● ス ト ッ ク 型マ ン シ ョ ン等 の 認 定 制度 各 種優 遇 措 置 を講 じ る た めに は 、 ま ず、 ス ト ッ ク型 マ ン シ ョ ン等 を 認 定 する こ と が 必要 で あ り 、そ の た め には 、 技 術 基準 等 を 整 備 する と と も に 、認 定 機 関 を設 置 す る こと が 必 要 であ る 。 ま た、 こ の 制 度は 、 ス ト ック 型 マ ン ショ ン の 中 古市 場 で の 優 位性 を 確 保 する た め に も必 要 と 考 えら れ る 。 ● 事 業 者 認 定制 度 ス トッ ク 型 マ ンシ ョ ン の 証券 化 や リ ース 事 業 を 行 う事 業 者 、 ある い は 街 区レ ベ ル で の管 理 を 行 う事 業 者 は 、長 期 的 に 安定 し て 事 業 を継 続 す る こ とが 必 要 で あり 、 ま た 公益 的 性 格 を有 す る こ と が必 要 で あ る。 こ のた め 、 こ れら 事 業 者 の審 査 ・ 認 定を 行 う と とも に 、 法 人 税の 減 免 な ど、 必 要 な 措置 を 講 じ る。 ● コ モ ン ス ペー ス に 対 する 優 遇 制 度 ス トッ ク 型 街 区の 整 備 に おい て は 、 街区 内 に 、 コモ ン ス ペ ー ス( 半 公 共 ・半 私 有 的 なス ペ ー ス )を 整 備 す る方 策 が 有 効 であ る 。 コ モン ス ペ ー スの 整 備 を 促進 す る た め、 固 定 資 産税 の 減 免 や 公共 的 性 格 の強 い 部 分 への 助 成 な ど、 優 遇 制 度を 整 備 す る 。 15 特定の地域をフィールドとした大学の存在意義について −地域連携アンケート調査の結果から− 神力 潔司(九州国際大学学長事務室 課長) 1.はじめに 近年は、 産業構造の変化や雇用の急速な流動化により、勤労者自らがより高 い職業の知識や技能を習得しなければならない時代を迎えたと言われている。ま た、少子・高齢化や社会環境の一層の進展に伴い、改正男女雇用機会均等法の成 立や改正高年齢者雇用安定法の施行に見るように女性や高齢者の就労機会も増大 することが予想されている。さらにこのことは、地域社会における学習機会・教 育資源である教育機関への期待が高まるものと受け止めている。 一 方 、大 学 等 高 等 教 育 機 関 に 目 を 向 け る と 、1 8 歳 人 口 の 減 少 や 大 学 進 学 率 の 頭 打ち等による市場規模の縮小に伴い、大学間競争の激化の波に余儀なく巻き込ま れる状況となっている。 この様な状況を予測した文部科学省は、各大学が目標を定め自律的に運営する ことを推奨し、大学の設置認可申請に関する弾力化や規制緩和による対応をおこ なってきた。あわせて大学改革を推進し、教育内容の改善のほか運営面について も効率性を強く求めるとともに、自己点検・評価や第三者評価を義務化するなど 個性あふれる魅力的な大学づくりを目指してさまざまな政策提言を実施してきた。 中 で も 産 学 官 連 携 や 地 域 連 携 に つ い て は 、 平 成 7 年 に 通 商 産 業 省 (現 経 済 産 業 省 )が 産 学 連 携 政 策 を 打 ち 出 し 、次 い で「 科 学 技 術 基 本 法 」が 施 行 さ れ 、文 部 省 (現 文 部 科 学 省 )の 科 学 技 術 創 造 立 国 に 向 け た 取 り 組 み と し て 平 成 8 年 に「 科 学 技 術 基 本 計 画 」が 策 定 さ れ 、大 学 政 策 や 大 学 改 革 自 体 と し て の 意 味 を 持 つ よ う に な っ た 。 具体的には、平成 7 年に通商産業省(現経済産業省)は大学等連携推進室を設 置 し 、 平 成 10 年 に は T L O ( T e c h n o l o g y L i c e n s i n g O f f i c e) と 呼 ば れ る 技 術 移 転 の観点でのひとつのスキームが実現した。これにより、大学をはじめとした高等 教育機関における産学連携関連施策が進むと、企業からの研究員や研究契約、知 的財産に関する産学連携が開始された。 このような背景の下、本学園も社会的貢献・地域連携など地域との社会的つな が り や 諸 制 度 へ の 対 応 が 今 後 の 重 要 課 題 で あ る と の 認 識 に よ り 、平 成 1 3 年 4 月 に 文化交流センターを開設したが地域との連携は十分なものとは言い難い状況であ る。 現 在 、本 学 園 は 、大 学 院 ( 法 学 研 究 科 ・ 企 業 政 策 研 究 科 の 2 研 究 科 )、 大 学 ( 法 学 部 ・経 済 学 部 ・国 際 関 係 学 部 の 3 学 部 )、高 等 学 校( 男 子 部 ・女 子 部 ・一 貫 部 )、 中学校、文化交流センターを設置する教育機関である。 今後の学園の発展を目指し、地域の住民諸氏ならび企業との連携を図りながら、 教育・研究の推進、地域の活性化やその連携のあり方について総合的に調査を進 めるとともに、地域発展のため重要な役割を担える地域の教育機関へと発展して いくことを目指したいと筆者は考えている。 1 2.時代背景の認識 20 世 紀 型 の 大 量 生 産 ・ 大 量 消 費 型 の 近 代 工 業 社 会 ( も の づ く り 社 会 ) で は 、 大 量に安く良い製品を作ることを目的とした社会であった。そのためには、教育レ ベルが均質で、協調性のある人材が求められていた。これにより、平均的で教育 レベルの高い人材が生み出され、平等を尊重し、突出することを嫌う社会の精神 風土やキャッチアップ型の近代工業社会が成熟していった。 今後は、知識を資本として活用する創造性のある人材を社会が求めることとな る。 21 世 紀 型 の 知 識 資 本 社 会 が 現 実 に な る 中 、こ れ か ら の 企 業 人 の 多 く に 求 め ら れ る の は 、「 自 ら 考 え 、 仕 事 を デ ザ イ ン し て い く 力 ( 課 題 形 成 力 ・ 想 像 力 ) で あ り 、 そ の キ ー ワ ー ド は 「 外 部 ( 顧 客 ・ マ ー ケ ッ ト ) 志 向 」、「 未 来 志 向 」、「 目 的 志 向 」 と言える。 つ ま り 、「 H o w to to d o( ど の よ う に や る か )」 を 考 え る ス キ ル で は な く 、「 W h at do( 何 を す る か )」 を 考 え る ス キ ル で あ る (「 表 − 1 近 代 工 業 社 会 か ら 知 識 資 本 社 会 へ の 変 化 の 概 況 」 参 照 )。 こ の よ う に 、「 知 の 世 紀 」 と い 呼 ば れ る 2 1 世 紀 を 迎 え た 現 在 は 、 国 際 環 境 や 経 済・社会情勢の変化、科学技術に対する社会の要請の変化などを踏まえ、新たな 視点で政策を展開する必要に迫られてきている。また、少子高齢化と人口減少の 社会では、人材や技術など知的資産の国際獲得競争の激化など科学技術と社会の 相互作用の高まり、高度知識社会への移行、国民の科学技術への関心の低下など 社会情勢の変化が見受けられる。さらに、社会の要求は科学技術に対する期待が 経済発展のみならず、安全・安心な社会構築への貢献や心の豊かさの実現などに 多様化してきている。 こ の よ う な 社 会 の 到 来 が 予 測 さ れ て い る 中 、 本 学 園 の 大 学 は 平 成 11 年 4 月 に 現在の北九州市八幡東区の平野地域へ移転をした。 囲いや塀のない大学で地域開放をコンセプトに校舎やその他の設備が設計さ れたことは、今後の地域との関係を意識してのことであったと思われる。その象 徴的な対応としてエクステンションセンターでは語学や情報技術などの一般教養 的な講座から資格取得に関する各種の講座を実費経費負担にとどめる格安の受講 料で開放している。 また、図書館やネットワーク接続機器など各種の情報メディアが地域住民や市 民に解放されている。 しかし、その思想を教育や研究の中にまで浸透させるには至っていないのが現 状である。今後は、教育や研究の中に地域からの要求をいかに取り込むのかが今 まさしく求められているのが本学園である。 2 表−1 特 徴 人 材 職 業 教 育 20 世 紀 の 近 代 工 業 社 会 ものづくり 高い平均教育レベル 21 世 紀 の 知 識 社 会 知識づくり より高い平均教育レベル 突出した人材 個性 研究者、専門職、技術者 独立性 複線型 個性化 リカレント教育 協調性 研究者と技術者 組織帰属 単線型 平均化、マニュアル化 企業内教育 変化のスピード 製 品 や サービスの寿命 経 営 資 源 企 業 評 価 尺 度 ビジネスルール 問 題 解 決 経 営 戦 略 組 近代工業社会と知識資本社会への変化の概況 織 仕 事 の 進 め 方 求 め ら れ る 人 材 像 重視される能力 20 世 紀 の 近 代 工 業 社 会 遅い 速い 長い 短い ヒト・モノ・カネ 収益・規模 (アセットバリュー) 競争・自社主義 正しい解がある/解を誰 かが知っている プロダクト志向 ・多階層ピラミッド型 ・ 単 純 化 、専 門 化 、標 準 化 ・管理と統制 知識・ノウハウ・付加価値 オプションバリュー ・決 め ら れ た 課 題 を 決 め ら れたやり方で正確に効 率的に実行する ・ 計 画 、手 順 、効 率 を 重 視 ・率先垂範 ・優秀なオペレーター 所 与 の 戦 略・目 標 を 実 現 す る た め 、効 率 的 に 物 事 を 進 めていく力 3 21 世 紀 の 知 識 社 会 共生・相互依存 正しい解が見えない/誰も解を 知らない マーケット志向 ・フラット型、ネットワーク型、 ルースリー・カップリング ・変 化 を 取 り 込 み 柔 軟 に 構 造 や 仕 組 み を 変 え て い け る( 自 己 組 織 性) ・自 立 と 協 働 、エ ン パ ワ ー メ ン ト ・目 的 と 状 況 に 照 ら し て 、何 が 課 題かを考え、関係者と共有し、 実験と検証を繰り返す。 ・仮説、実験、検証を重視 ・価値創造者、意味創造者 ・データを“情報に”変える ・自ら仕事をリデザインする お か れ て い る 状 況 か ら“ 何 を ”す べきかを自ら考え設定する力 3.課題設定 21 世 紀 の 知 識 社 会 と い う 時 代 背 景 の も と で は 、教 育 機 関 に と っ て 非 常 に 大 き な キーファクターとなるであろう“地域”というキーワードにフォーカスをあて、 持続可能な地域コミュニティの構築と大学の地域発展活動との関係について以下 の点から考察を試みたい。 ① 大 学 の 「 人 的 資 源 」、「 校 地 ・ 校 舎 と い う 施 設 設 備 資 源 」、「 広 域 の ネ ッ ト ワ ークによる最先端の知識資源」は大学の最大の魅力であると思われる。 ② 中でも、いずれの資源が地域における財産と認識され期待されており、そ れを実現可能とする具体的な活動は何か。 具体的には、教育機関は特定の地域に立地し、教職員・学生・生徒の多くはそ の地域の住民であり、地域はその生活圏である。地域にとって見れば、教育機関 の 設 置 主 体 が ど こ で あ れ 、地 理 的・物 理 的 に は 身 近 な 資 源 で あ る 。そ れ と 同 時 に 、 教育機関にとって地域は教育・研究・貢献のためのもっとも身近で強固な市場あ り、顧客であると考えられる。よって、この地域という社会の資産(ハードウェ アやソフトウェアを含む)活かさずに全く別方向を向いていれば、教育機関はそ の特定に地域に立脚する意味が大きく減じられることになる。これは教育機関が 特定の地域に立脚していることを意味しているものと考える。 その前提として、大学と地域社会との関係における大学の仕組みについて、筆 者 の こ れ ま で の 職 務 上 の 活 動 や 経 験 に よ り 、 下 図 (「 図 − 1 大 学 の 仕 組 み 」 参 照 ) のとおり捉えるものとする。 そ こ で 本 考 察 で は 、 筆 者 が 本 学 園 の 文 化 交 流 セ ン タ ー に お い て 平 成 17 年 に 実 施 し た「 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト( 地 域 と 学 校 の 連 携 に 関 す る 調 査 )」の 調 査 結 果 を 集 計・分析することにより考察を試みたい。 ただし、この考察は学校法人九州国際大学の『特定の地域における大学の存在 意義』について確認するための初の試みであり、教育・研究等に関する諸制度に ついては言及しない。 4 優良 入学 (仕入) 卒業 良 進学 ズ サポート (販 売 納品) 出身校 (教員・保護者) 社 会 ニ ー 志願者 (素材) 教 育 (加工) 教育機関 (大学) 不良 地域社会 (企業団体住民) 大 学 は 、「 学 生 ・ 生 徒 」 と い う 「 志 願 者 」 を 「 素 材 」 と 捉 え 、「 入 学 試 験 」 と い う 取 引 で 「 仕 入 れ 」、 教 育 と い う 「 加 工 」 を 施 し 、 社 会 と い う 「 顧 客 」 へ 卒 業 と いう品質で「販売・納品」する。 図−1 大学の仕組み 5 4.地域連携アンケート集計結果 地域連携アンケートは、大別して個人版と企業版の 2 種類のアンケートを実施 した。 個人版については、企業・諸団体の構成員や近隣商店街の店主を中心に、地域 に お け る 教 育 機 関 の 役 割 に 関 す る 2 7 項 目 に つ い て そ の 期 待 度 を 「 大 い に 期 待 」、 「 少 し 期 待 」、「 あ ま り 期 待 し な い 」、「 ま っ た く 期 待 し な い 」 か ら 選 択 さ れ た 回 答 結果ならびに、本学が地域と連携協力してほしい事柄の選択肢 8 項目から 3 つを 選択された回答結果を分析に用いた。 企業版については、企業・諸団体の代表者等に組織内における人材育成の取り 組 み 状 況 か ら 大 学 と の 連 携 に よ る 人 材 育 成 へ の 期 待 に 関 し て 1 2 項 目 、地 域 に お け る 教 育 機 関 の 役 割 に 関 す る 37 項 目 等 に つ い て そ の 期 待 度 を「 大 い に 期 待 」、 「少し 期 待 」、「 あ ま り 期 待 し な い 」、「 全 く 期 待 し な い 」 か ら 選 択 さ れ た 回 答 結 果 な ら び に 、生 涯 学 習 や 地 域 づ く り の た め の 条 件 や 重 要 事 項 に 関 す る 2 1 項 目 に つ い て そ の 重 要 度 を 「 非 常 に 重 要 」、「 重 要 」、「 あ ま り 重 要 で な い 」、「 全 く 重 要 で な い 」 か ら 選択された回答結果を分析に用いた。 そ れ ぞ れ の ア ン ケ ー ト 調 査 の 規 模 に つ い て は 、 個 人 版 が 381 件 の 調 査 依 頼 に 対 し て 251 件 の 回 答 で 約 66 パ ー セ ン ト と い う 非 常 に 高 い 回 収 率 で あ り 、企 業 版 に つ い て は 425 件 の 調 査 依 頼 に 対 し て 1 0 5 件 の 回 答 で 回 収 率 2 5 パ ー セ ン ト と な っ て い る 。「 地 域 ア ン ケ ー ト ( 地 域 と 学 校 の 連 携 に 関 す る 調 査 )」 の 詳 細 に つ い て は 、 学 校法人九州国際大学文化交流センターのホームページ参照されたい 1) 。 4−1.個人版アンケートの結果 ここでは、アンケートの回答の中でも特に持続可能な地域コミュニティの構 築と大学の地域発展活動に関する項目のアンケート結果について考察をおこ なう。 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 個 人 版 ) の 問 5「 教 育 機 関 が 取 り 組 む べ き 事 柄 に つ い て本学園にどの程度期待していますか」ということについて「各種講座につい て 」、「 地 域 活 動 へ の 参 加 に つ い て 」、「 学 校 の 改 革 に つ い て 」、「 施 設 に つ い て 」 の 4 つの分野についてそれぞれ質問をしたところ、各分野の回答の平均値で言 えば「大いに期待している」と「少し期待している」の合計が全ての分野にお い て 50 パ ー セ ン ト を 上 回 っ て い る(「 表 − 2 − 2 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト( 個 人 版 ) 問 5 の 集 計 結 果 ( 抜 粋 )」 参 照 )。 このようにアンケートの集計結果からも読み取れるように、地域活性化活動 への参画に大きな期待が寄せられているとともに、勤労者自らも高い職業の知 識や技能を習得しなければならない時代であると考えていることを物語って いる。大学周辺の地域は、北九州地域でも特に少子・高齢化率の高い地域であ り 2) 、地域社会の活性化には、本学園の構成メンバーである生徒・学生・教職 員の参画への期待が高まると同時に、本学園が地域活性化のための学習・教育 機会を提供することへの期待が高まるものと受け止めている。特に教育機関の 6 ハードウェアである校地・校舎という施設設備資源の活用に関しては全ての項 目において高い注目を集めていることが分かる。 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 個 人 版 ) の 問 6「 本 学 園 と 地 域 と が 連 携 ・ 協 力 し て ほ し い と 思 わ れ る 事 柄 は な ん で す か 」 と い う 問 で は 、「 ま ち づ く り ・ 地 域 づ く り 活 動 」の 23% に つ い で 、 「 ボ ラ ン テ ィ ア や 地 域 リ ー ダ ー な ど の 人 材 育 成 」が 1 8 % 、 「 地 域 の 抱 え る 諸 課 題 を 解 決 す る 仕 組 み づ く り 」 が 1 6 % 、「 公 開 講 座 や 出 前 講 座 な ど 大 学 開 放 」が 15% と な っ て い る(「 表 − 3 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト( 個 人 版 ) 問 6 の 集 計 結 果 」 参 照 )。 ま た 、本 学 園 の 大 学 が 所 在 す る 地 域 で は 、明 治 2 2 年 町 村 制 実 施 の 際 、尾 倉 、 大 蔵 、 枝 光 の 三 村 を 合 併 し て 八 幡 村 と な り 、 明 治 33 年 に 官 営 八 幡 製 鉄 所 東 田 高炉の創業が開始され、鉄鋼業を軸に、北九州工業地帯における重工業の中心 地 と し て 栄 え 、 昭 和 40 年 に は 旧 八 幡 市 の 人 口 は 約 3 5 万 人 ( 現 在 で い う 八 幡 東 区 で は 約 15 万 人 ) に ま で 達 し て い る 。 こ の 3 5 万 人 の 台 所 を 支 え る た め 、 旧 八 幡市内の各所に商店街が誕生したものであり、大学近隣の商店街も例外ではな い 。 し か し 、 製 鐵 所 の 合 理 化 と と も に 、 現 在 の 八 幡 東 区 の 人 口 は 7.5 万 人 と な り 、 近 年 の 40 年 間 で 半 減 し た と い え る 。 その結果、大学の周辺においても商店街を中心とした中心市街地の衰退化へ の 対 策 を 求 め る も の が 多 い 。 い わ ゆ る 、「 地 域 社 会 に 必 要 な 機 能 と そ の 機 能 の 再生に関する潜在的な問題の顕在化」がアンケート集計結果からも読み取られ る。 7 8 <施設について> <学校の改革について> <地域活動への参加について> <各種講座について> 問5-5 問5-6 問5-7 問5-8 5)資格や免許を認定する講習を実施すること 6)生涯学習の推進に関わる相談に対応すること 7)生涯学習や教育の最新の動向等について情報提供を行うこと 8)地域活性化などまちづくり人材の養成講座を実施すること 問5-24 問5-25 問5-26 問5-27 25)コンピュータやインターネット設備の利用・開放を推進すること 26)体育館やスポーツ施設等の利用・開放を推進すること 27)食堂や売店・生協の利用・開放を推進すること 問5-22 22)卒業生が仕事上の相談に訪れることができる環境をつくること 24)図書館の利用・開放を推進すること 問5-21 21)優秀な生徒・学生の確保(芸術活動)を推進すること 問5-23 問5-20 20)優秀な生徒・学生の確保(文化活動)を推進すること 23)教室や会議室の利用・開放を推進すること 問5-19 問5-16 16)まちづくり協議会など地域諸団体への生徒・学生・教職員の参加 問5-18 問5-15 15)地域文化を全国に発信する際の手助けをすること 19)優秀な生徒・学生の確保(スポーツ活動)を推進すること 問5-14 14)地域のイベントやお祭り等への生徒・学生・教職員の参加 18)学部、大学院で取得できる資格、免許を増やすこと 問5-13 13)環境美化活動への生徒・学生・教職員の参加 問5-17 問5-12 12)留学生と地域社会との交流をすすめること 17)社会人入学の定員を増やすこと 問5-11 11)生徒・学生の社会貢献活動(ボランティア活動等)を推進すること 問5-10 問5-4 4)一般の方が大学の授業を聴講できるようにすること 10)教職員が市町村の各種委員会の委員となること 問5-3 3)小・中・高校生を対象にした講演会やセミナーを実施すること 問5-9 問5-2 2)地域住民向けの講座・講演会の実施に関すること 9)教職員を市町村の事業の講師や助言者として派遣すること 問5-1 1)公開講座メニューの充実 問5】 教育機関が取り組むべき以下の事柄について、あなたは、本学園にどの程度の期待をしていますか。 0% 43 27 45 44 37 71 71 64 65 70 129 71 94 115 105 96 83 65 64 97 86 74 68 79 68 60 54 47 20% 84 63 20 8 44 4 4 4 22 7 95 16 7 85 20 6 37 43 6 9 6 5 10 25 10 45 55 6 80% 16 6 21 17 8 7 23 4 33 39 42 5 9 9 5 7 40 28 43 57 55 36 38 45 40 60% 58 66 73 68 77 76 70 79 93 83 80 79 73 72 86 71 94 81 72 80 72 76 95 73 90 40% 60 59 57 54 56 56 60 59 57 63 65 58 64 56 59 56 56 61 62 53 62 69 65 60 64 60 69 大いに期待している 少し期待している あまり期待していない 全く期待していない 無回答 100% 表−2−1 地域連携アンケート(個人版)問 5 の集計結果 表−2−2 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 個 人 版 ) 問 5 の 集 計 結 果 (抜 粋 ) <各種講座について> 資格や免許の認定講習会実施 地域活性化や街づくり人材の養成講座の実施 <地域活動への参加について> 生徒・学生の社会貢献活動を推進すること 留学生と地域社会との交流を進めること 環境美化活動への生徒・学生・教職員の参加 地域のイベントやお祭りへの生徒・学生・教 職員の参加 街づくり協議会など地域諸団体活動への生 徒・学生・教職員の参加 <学校の改革> 卒業生が仕事上の相談に訪れることができる 環境づくり <施設について> 教室や会議室の利用・開放を推進すること 図書館の利用・開放を推進すること コンピュータやインターネット設備の利用・ 開放を推進すること 体育館やスポーツ施設等の利用・開放を推進 すること 食堂や売店・生協の利用・開放を推進するこ と 表−3 大いに期待 31% 27% 大いに期待 39% 30% 34% 少し期待 29% 34% 少し期待 30% 37% 32% 合計 60% 61% 合計 69% 67% 66% 33% 31% 64% 26% 34% 60% 大いに期待 少し期待 合計 28% 33% 61% 大いに期待 38% 54% 少し期待 29% 22% 合計 67% 73% 42% 26% 68% 46% 25% 71% 38% 27% 65% 地域連携アンケート(個人版)問 6 の集計結果 問6 1.公開講座・出前講座など大学開放 1% 13% 2.まちづくり・地域づくり活動 1 5% 3.地域住民の生涯学習ニーズの把握などの調査研究 7% 4.地域の抱える諸課題を解決する仕組みづくり 23% 18% 5.ボランティアや地域リーダーなどの人材育成 6.学校を舞台にした学社連携・学社融合 7.地域における幅広い人的ネットワークの構築 16% 7% 8.その他 9 4−2.企業版アンケートの結果 ここでは、アンケートの回答の中でも特に人材育成としての研修に関する期 待とその期待に応えるための大学の可能性ならびに持続可能な地域コミュニ ティの構築と大学の地域発展活動に関する項目のアンケート結果について考 察をおこなう。 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 企 業 版 ) の 問 9「 大 学 と 連 携 し た 研 修 を す る う え で ど のようなことが問題点になっていますか」で第1位は「研修への時間的余裕が な い 」が 28% 、つ い で「 研 修 に 関 す る 情 報 が 少 な い・相 談 で き る と こ ろ が な い 」 が 22% 、 第 3 位 が 「 業 務 内 容 に 沿 っ た 研 修 が 企 画 実 施 さ れ な い 」 が 1 9 % と な っ て い る (「 表 − 4 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 企 業 版 ) 問 9 」 参 照 )。 問 10 の 「 ど の よ う な 内 容 が あ れ ば 、 大 学 と 連 携 し た 研 修 が よ り 進 む と 思 い ますか」という問に関しては、 1.職業別研修 「 営 業 ・ マ ー ケ テ ィ ン グ 」 が 2 7 % 、「 ビ ジ ネ ス マ ナ ー 」 が 1 6 % 、「 経 理 財 務 税 務 」 が 12% 2.目的別研修 「 ビ ジ ネ ス マ ナ ー 」 が 19% 、「 経 営 分 析 」 と 「 リ ー ダ ー シ ッ プ 」 が そ れ ぞ れ 18% 3.階層別研修 「 中 堅 社 員 」 と 「 新 入 社 員 」 が そ れ ぞ れ 2 8 % 、「 管 理 職 」 の 2 0 % 4.自己啓発研修 「 情 報 技 術 」 が 29% 、「 各 種 資 格 取 得 」 が 2 8 % と な っ て い る (「 表 − 5 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 企 業 版 ) 問 1 0 」 参 照 )。 ま た 、 問 11 の 「 ど の よ う な 方 法 ・ 形 態 が あ れ ば 、 大 学 等 と 連 携 し た 研 修 が よ り 進 む と 思 い ま す か 」 と い う 問 に 関 し て は 、「 大 学 等 の 施 設 の 地 域 開 放 に も と づ く 公 開 講 座 や 講 習 会 を 利 用 」が 6 1 % と も っ と も 高 い 数 値 と な っ て い る(「 表 −6 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 企 業 版 ) 問 1 1 」 参 照 )。 こ の よ う に 、企 業 ・ 諸 団 体 の 代 表 者 か ら 見 て も 、2 1 世 紀 の 知 識 社 会 に 対 応 す る た め の 人 材 育 成 を 大 学 の「 人 的 資 源 」、 「 校 地・校 舎 と い う 施 設 設 備 資 源 」、 「広 域のネットワークによる最先端の知識資源」を活用することに期待が高いこと がわかる。 さ ら に 、地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 個 人 版 ) と 同 様 に 問 1 3 で「 教 育 機 関 が 取 り 組 む べき事柄について本学園にどの程度期待していますか」ということについて 「 人 材 育 成 」、「 各 種 講 座 に つ い て 」、「 地 域 活 動 へ の 参 加 に つ い て 」、「 学 校 の 改 革 に つ い て 」、「 施 設 に つ い て 」 の 4 つ の 分 野 に つ い て そ れ ぞ れ 質 問 を し た と こ ろ、各分野の回答の平均値で言えば「大いに期待している」と「少し期待して い る 」 の 合 計 が ほ ぼ 全 て の 分 野 に お い て 5 0 パ ー セ ン ト を 上 回 っ て い る (「 表 − 7 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 企 業 版 ) 問 1 3 の 集 計 結 果 ( 抜 粋 )」 参 照 )。 10 表−4 地域連携アンケート(企業版)問 9 問9 1.貴社・団体の所在地の近隣で研修が実施されない 5% 1% 4% 8% 2.研修の時期や時間が不適当 19% 3.研修への時間的余裕がない 4.保育・託児施設がない 28% 5.研修に関する情報が少ない・研修の導入や進め方について相談できるところがない 6.研修への経済的支援ができない 12% 7.貴社・団体の業務内容や希望に添った研修が企画・実施されない 8.適当な講師や指導者がいない 1% 9.その他 22% 表−5 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 企 業 版 ) 問 10 1 0- 1 .職業別研修 9% 10-2 .目的別研修 4% 16% 1.営業・マーケティング系 1% 19% 1.ビジネスマナー 2.人事・労務系 2 7% 2.自己改革 3.総務・法務系 16 % 3.経営分析 4.経理・財務・税務系 5.製造・技術・情報系 4.プレゼンテーション 18% 16% 6.物流・貿易系 3% 8% 6.コミュニケーション 8.企画系 11% 10 % 7.その他 12% 9.その他 12% 18% 1 0 -3 .階層別研修 4% 5.リーダーシップ 7.ビジネスマナー 1 0-4 .自己啓発研修 6% 14% 9% 1.内定者 28 % 4% 1.各種資格取得 28% 2.新入社員 1 2% 3.中堅社員 20% 3.語学力 4.管理職 4.スポーツ・トレーニング 5.経営者・経営幹部 18 % 6.その他 5.介護・福祉 2 9% 28% 表−6 2.情報技術 6.その他 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 企 業 版 ) 問 11 問1 1 3% 7% 5% 1.テレビ・ラジオなど放送メディアを利用 2.放送大学などの通信教育制度を利用 24% 3.インターネットによる教育・学習コンテンツ配信を利用 4.大学等の施設の地域開放にもとづく公開講座や講習会を利用 61% 5.その他 11 12 <施設について> <大学の改革について> <地域活動への参加について> <各種講座について> <人材育成について> <研究の推進について> 14 51 42 37)食堂や生協の利用・開放を推進すること 36)体育館やスポーツ施設等の利用・開放を推進すること 35)コンピュータやインターネット設備の利用・開放を推進すること 34)図書館の利用・開放を推進すること 33)教室や会議室の利用・開放を推進すること 32)卒業生が仕事上の相談に訪れることができる環境をつくること 31)複数の大学・短大が連携してコンソーシアムなどをつくり、地域貢献を進めること 30)優秀な学生の確保(芸術活動)を推進すること 問13-37 問13-36 問13-35 問13-34 問13-33 問13-32 21 24 34 46 問13-30 23 32 問13-29 28)優秀な学生の確保(スポーツ活動)を推進すること 38 40 27 問13-28 27)学部、大学院で取得できる資格、免許を増やすこと 問13-31 41 27 問13-27 29)優秀な学生の確保(文化活動)を推進すること 26 問13-26 26)他大学・短大との単位互換を進めること 46 46 37 40 問13-25 25)学部や大学院の夜間開講(夜間主コース)の授業の実施 24 問13-24 24)社会人入学の定員を増やすこと 21 33 38 36 38 36 33 問13-23 23)地域文化を全国に発信するさいの手助けをすること 37 36 42 35 34 42 41 問13-22 36 27 26 30 22 16 15 27 15 15 10 14 18 16 17 20 21 21 25 18 8 1 1 1 1 1 2 1 2 1 1 1 6 1 1 4 1 8 6 4 4 2 3 4 3 2 3 3 3 3 1 12 2 2 4 5 3 9 6 11 11 9 9 80% 10 9 11 11 14 19 22 70% 3 11 19 19 19 19 20 20 20 19 20 20 20 20 21 21 17 16 16 17 10 12 16 18 18 19 18 20 20 21 21 18 20 3 2 16 15 15 14 15 90% 大いに期待している 少し期待している あまり期待していない 全く期待していない 無回答 24 22 23 30 32 34 41 問13-21 36 22)地域のイベントやお祭り等への生徒・学生・教職員の参加 21 21)環境美化活動への生徒・学生・教職員の参加 40 38 47 44 40 60% 問13-20 25 28 44 49 37 44 37 50% 34 20)留学生と地域社会との交流をすすめること 問13-16 16)生涯学習や教育の最新の動向等について情報提供を行うこと 24 29 40 36 40% 問13-19 問13-15 15)生涯学習の推進に関わる相談に対応すること 28 29 30% 19)生徒・学生の社会貢献活動(ボランティア活動等)を推進すること 問13-14 14)資格や免許を認定する講習を実施すること 22 18 33 54 49 46 20% 18)教職員が市町村の各種委員会の委員となること 問13-13 13)自治体職員や教員の研修の機会を大学が設けること 26 28 28 33 34 問13-18 問13-12 12)公開授業の実施(企業等社会人の方が学部の授業を聴講できるようにすること) 19 19 10% 問13-17 問13-11 11)小・中・高校生を対象にした講演会やセミナーを実施すること 0% 17)教職員を市町村の事業の講師や助言者として派遣すること 問13-10 10)地域住民向けの講座・講演会の実施に関すること 問13-8 8)実践に役立つ専門的な知識・技能を有する人材の養成 問13-9 問13-7 9)公開講座メニューの充実 問13-6 7)幅広い教養を身につけた人材の養成 問13-5 問13-4 問13-3 問13-2 問13-1 6)人間性豊かな人材の育成 4)研究成果をわかりやすく公開すること 5)貴社・団体の研究者(自治体職員や企業人)が研究員等の形で、 定期的に大学等で研究や研修を行えるようにすること 3)貴社・団体の活性化のためのプログラム開発に関する研究の推進 2)実際的、または実践に直結する研究の推進 1)基礎的、理論的な研究の推進 問13】教育機関が取り組むべき以下の事柄について、貴社・団体は、本学園にどの程度の期待をし ていますか。 100% 表−7 地 域 連 携 ア ン ケ ー ト ( 企 業 版 ) 問 13 4−3.アンケート集計結果からの考察 今回の地域連携アンケート(地域と学校の連携に関する調査)の実施結果に より、大学等高等教育機関の所有する校地・校舎という施設設備資源を活用す ることへの期待が最も高い。あわせてこれらの資源を活用した地域活動への参 画を通して、まちづくりや地域づくりのための人材育成など地域の活性化へ向 けた実践活動で直接的な地域連携が強く求められているといえる。これらの諸 活動を通じて、地域における大学の存在意義を高めるとともに、地域の活動に 有用な人材を育成することが大学の使命であり、地域社会から期待されている。 そのためには、大学がキャンパス内のみで教育を行なうのではなく、地域と いうステージを活用し、調査・研究活動を通じて更なる課題を発見するととも に、その成果を活用して、教育を実施する必要がる。 こ の こ と に よ り 、 大 学 の 有 す る 「 人 的 資 源 」、「 広 域 の ネ ッ ト ワ ー ク に よ る 最 先端の知識資源」の存在をもアピールすべきである。そのひとつの方法として は、学生のみならず教職員がともに参画する地域貢献・交流事業を手始めに、 大学本来の活動目的である人材の養成・育成について、地域をフィールドとし て実施できるよう学内体制を整えるべきである。これは、キャンパスが住民に 開放されると言う物理的な問題よりも、大学の持つ資源や機能が地域社会に期 待され解放され役に立っているかが問題である。 5.今後の課題 教育機関が地域に根付いていることの意味を再検討し、さらには教育機関と地 域が相互に刺激しあえるようそのニーズを探る必要があると感じている。 そ の キ ー ワ ー ド は 、「 建 学 の 理 念 」、「 教 育 目 標 」、「 教 育 の 理 念 」、「 教 育 方 針 」 で あ り 、 そ の 再 確 認 と そ れ を 実 行 す る た め の 具 体 的 政 策 と し て 「 カ リ キ ュ ラ ム 」、 「 教 育 技 術 」、 「 サ ポ ー ト シ ス テ ム 」を 論 じ て い か な け れ ば な ら な い と 感 じ て い る 。 5−1.地域の活性化のために役に立つ人材育成に必要なカリキュラム 大学を取り巻く環境は、学生の学力の低下やコミュニケーション能力の不足 など深刻な問題が山積している。とりわけ問題発見能力、課題解決能力、論理 的思考、表現力などの能力低下が挙げられる。これに対応するためには、大学 における教育目標・教育理念を再確認することにより、教育内容、教育方法、 教育環境など教育システム全般を見直す必要に迫られている。 キャンパスを飛び出て、従来の大学の講義・演習の形式にとらわれずフィー ルド体験型の実践教育を充実させ、学生に考えるためのきっかけを提供する必 要 が あ る 。こ れ ら を 、学 生 の 成 功 体 験 学 習 と し て 位 置 付 け 、そ の 成 功 の 秘 訣( 正 のスパイラル)について今後は検証を深めていきたい。 そのためには、現在の教育・研究の仕組みの中の次の要素を新たに加えるこ とが必要となる。 ① 「地域に開かれた学園づくり」を支援する。 ② 多様な生涯学習ニーズに応えるための体制づくりを支援する。 13 ③ ユ ー ザ ー( 社 会 、学 生・生 徒 )の 視 点 を 的 確 に 捉 え 、学 生・生 徒・教 職 員 の 特技を活かした地域への貢献に積極的に参加することを支援する。 ④ 上 記 の 活 動 に よ り 得 ら れ た 情 報 を 活 用 し 、社 会 に 対 し て 新 た な 提 案・提 言 を 積極的に行い、次世代の形成に働きかけていく学園づくりを支援する。 このように、教育の骨格にあたるカリキュラムとその運用・制度に関する議 論を深めることは非常に重要ことである。また、カリキュラムは時代の要請に より変化するものでなくてはならない。しかし、このカリキュラムという表現 をどのように解釈するかによって、この意味は大きく異なったものとなる。 更なる大学の存在意義獲得のために、そして「教育機関としてあるべき姿を 実現する」ためのカリキュラムは、その教育内容であり、科目名を示すのもで は な い 。さ ら に 言 及 す る な ら ば 、シ ラ バ ス( Syllabus 年 間 授 業 計 画 書 )で は な く 、「 Cou r s e D e s c r i p t i o n 何 を ど の よ う に 教 育 し 、 ど の よ う な 成 果 ・ 効 果 が あ るのか」ということと教育方法の工夫である。 そのためには、教育という加工技術やそのサポート体制への調査・研究・育 成投資をしなければならない。さもなければ、必然的にその商品の輝きは社会 の要請には評価されず価値が薄れていくであろうし、単に表面的なメッキ加工 を施しただけであれば、その輝きはすぐにほころぶこととなる。情報システム を如何に駆使しようともカリキュラムの中身を作ることはできない。そこには 必ず先達者である教職員の力と工夫が必要である。 <注> 1)学校法人九州国際大学文化交流センターホームページ http:/ / w w w . f s s - k i u - a c . j p / c e c / t i i k i r e n k e i . h t m l 2)北九州市 総務市民局情報政策室ホームページ http:/ / w w w . c i t y . k i t a k y u s h u . j p / p c p _ p o r t a l / P o r t a l S e r v l e t ? D I S P L A Y _ ID =D I R E C T & N E X T _ D I S P L A Y _ I D = U 0 0 0 0 0 4 & C O N T E N T S _ I D = 1 3 12 <参考文献> 1.コミュニティ機能再生とソーシャル・キャピタルに関する研究調査報告書 Social C a p i t a l f o r C o m m u n i t y R e g e n e r a t i o n 平 成 17 年 8 月 内閣府経済社会総合研究所編 2 . 平 成 15 年 度 商 店 街 実 態 調 査 の 概 要 経済産業省中小企業庁 3.地域を活性化し、地域づくりを推進するために 平 成 16 年 8 月 −人づくりを中心としてー 文部科学省生涯学習政策局政策課地域づくり支援室 14 大学の地域貢献に対する住民の意識に関する分析 湯淺 墾道(九州国際大学法学部総合実践法学科 助教授) 1.はじめに 「まちづくり」等の地域づくりは、住民の意思を十分に反映して住民主体で推 進されるべきものである。 こ の こ と は 近 年 で は 半 ば 常 識 と し て 認 識 さ れ つ つ あ る が 、以 前 は 必 ず し も そ う ではなかった。自治体や地権者等の特定関係者の利害が先行して、住民不在のま まに地域づくりがおこなわれた例は、決して少なくない。 その背景には、従来の地域づくりの過程において、地域づくりの計画が都市計 画や市街地再開発等と連動して行政主導によって策定され実行に移されることが 多 か っ た と い う 事 情 が あ る 。こ の た め 、地 域 住 民 の 意 思 が 十 分 に 反 映 し て い な い 、 策定される圏域と実際に地域の生活空間とのずれが生じている、一部地権者の利 害 ば か り 反 映 さ れ た 等 の 問 題 が 各 地 で 発 生 し て い る の で あ る 1 。ま た 、大 規 模 な 都 市再開発が行われても、結局地元の小規模な商工業者等にはほとんどその恩恵が 及んでいないという事例もみられる。黒崎駅西地区再開発事業によって建設され た商業施設「黒崎コムシティ」の商業部門を運営する第三セクター「黒崎ターミ ナ ル ビ ル 」が 、オ ー プ ン 後 わ ず か 1 年 半 で 約 1 3 0 億 円 の 負 債 を 抱 え て 破 綻 す る( 2 0 03 年 6 月)に至った経緯は、その好例であるといえよう。このような事情から、地 域づくりにおける住民意思の反映の重要性が指摘されるようになってきている。 ところで、近時大学の地域貢献・地域連携の重要性がにわかに強調されるよう に な っ て き た が 2 、大 学 の こ の よ う な 活 動 に お い て も 、地 域 づ く り に お け る 問 題 点 への反省を十分に踏まえる必要があると思われる。大学主導の地域貢献・地域連 携は、地域住民の意思を反映していない独りよがりのプログラムと化すおそれが あるからである。 しかし、大学や教職員・学生等がどのように地域との連携を図っていくことが 適切であるのかについては、いまだ明快な答えは出ていないと思われる。地域の 住民が本当に大学に対して望んでいることは何か―生涯学習機能等のソフトウェ ア機能なのか、施設の開放や活動の場所の提供等のハードウェアなのか、それ以 外にも存在するのか―については議論の最中であるといえよう。 1 佐 藤 快 信「 地 域 づ く り に お け る 地 域 連 携 と 地 域 資 源 」 『長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所研究紀 要 』 1 巻 1 号 ( 2003 年 ) 1 頁 以 下 。 2 た と え ば 、平 成 1 6 年 度 に 文 部 科 学 省 が 開 始 し た「 現 代 的 教 育 ニ ー ズ 取 組 支 援 プ ロ グ ラ ム 」で は 、 「地 域 活 性 化 へ の 貢 献 」、「 知 的 財 産 関 連 教 育 の 推 進 」「 仕 事 で 英 語 が 使 え る 日 本 人 の 育 成 」、「 他 大 学 と の 統 合・連 携 に よ る 教 育 機 能 の 強 化 」、 「 人 材 交 流 に よ る 産 学 連 携 教 育 」、 「 IT を 活 用 し た 実 践 的 遠 隔 教 育 」 が 支 援 の 対 象 と な っ て お り ( 平 成 1 6 年 度 の 場 合 )、 地 域 活 性 化 へ の 大 学 の 貢 献 が 求 め ら れ る よ う に な ってきたことを象徴している。 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/needs/boshu/04062902.pdf 1 たとえば開学以来「地域と共生する大学」を理念に掲げている松本大学(長野 県松本市)の場合、大学の地域社会への貢献としては次のようなものが考えられ る と い う 3。 【 1】 大 学 の ソ フ ト ウ ェ ア 機 能 を 生 か す も の ( a)生 涯 学 習 機 能 (1)公 開 ( 開 放 ) 講 座 の 開 催 (2)公 開 授 業 の 開 催 (3)講 演 会 ・ シ ン ポ ジ ウ ム の 開 催 (4)注 文 授 業 の 受 託 ( b)高 大 連 携 、 地 域 大 学 連 携 (1)出 前 授 業 (2)講 師 ・ ア ド バ イ ザ ー の 派 遣 ( c)地 域 へ の 人 材 派 遣 (1)ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 (2)行 事 へ の 友 情 出 演 【 2】 大 学 の ハ ー ド ウ ェ ア 機 能 の 提 供 ( a)大 学 の 教 室 等 の 利 用 (1)地 域 の 諸 活 動 の 場 の 提 供 (2)各 種 大 会 の 開 催 (3)各 種 行 事 の 共 同 開 催 ( b)大 学 の 体 育 施 設 の 開 放 (1)各 種 ス ポ ー ツ 大 会 の 開 催 (2)体 育 施 設 な ど の 貸 し 出 し 松本大学は、社会科学系の学部だけを擁する地方私立大学である。上述の項目 は、同じような環境にある大学において現時点で地域社会への貢献として考えら れる項目を、ほぼ網羅しているように思われる。財政的にも人的にも豊富なリソ ースを擁する大学とは異なり、地方私立大学が地域社会に対する貢献に割きうる リソースは限られている。その中で、どのような貢献を行うのが効果的であるの かを検討する必要がある。 また、なぜ大学は地域貢献・地域連携を行わなければならないのか、どの程度 の地域貢献・地域連携を行うことが適当であるかという点についても、議論の余 地がある。 大学の場合、近隣地域や住民もステークホルダーの一員であることについて認 識されるようになったのは、ごく最近のことである。これは、企業がいわゆる企 業 の 社 会 的 責 任 (CS R = C o r p o r a t e S o c i a l R e s p o n s i b i l i t y ) を 果 た す 上 で 地 域 貢 献 ・ 地 域 連 携 活 動 が 評 価 さ れ て き た と い う 事 情 4と は 対 照 的 で あ る 。 3 住 吉 広 行「 文 部 科 学 省「 特 色 あ る 大 学 教 育 支 援 プ ロ グ ラ ム 」に 選 定 さ れ た : 「 多 チ ャ ン ネ ル を 通 し て培う地域社会との連携 : 地域社会で存在感のある大学を目指して」 『 地 域 総 合 研 究 』3 号( 2 0 0 3 年 ) 39 頁 。 4 もっとも、 「 企 業 の 社 会 的 責 任 」と い う 概 念 は 企 業 経 営 者 の 団 体 が み ず か ら 提 言 し た こ と に よ り 広 ま っ た も の で あ る と い う 。 滝 川 好 夫 「 な ぜ 地 域 金 融 機 関 は 地 域 貢 献 活 動 を 行 う の か 」『 神 戸 大 学 経 済 学 研 究 』 51 巻 ( 2004 年 ) 1 頁 。 2 このように大学の地域貢献・地域連携への取組が遅れた一因として、大学を含 む日本の学校法人の多くが、収入面で学生・生徒の納付金(入学金、授業料等) に依存しており、在籍している学生・生徒を優先せざるをえないということも挙 げ ら れ よ う 5 。実 際 に 、私 立 大 学 の 多 く は 収 入 の 8 割 を 学 生 か ら の 納 付 金 に 頼 っ て お り 6 、地 域 か ら の 寄 付 や 協 力 等 に 依 存 す る 割 合 は 高 く な い の が 現 状 で あ る 。こ の ような現状を背景として、学生から納付された授業料等は学生の教育に使うこと を第一義とすべきであるとし、学生以外の地域住民等のために支出することにつ いて批判的な声も聞かれる。仮に財政的な余裕があったとしても、地域貢献・連 携に対して割きうるリソースがあるのであれば、その分を在学生のために使うべ きであるとの声は意外に根強い。 本 稿 で は 、こ の よ う な 状 況 を 背 景 と し て 、地 域 に お け る 大 学 の あ り 方 に 関 し て 、 住民がどのような意識を持っているのかについて考察してみることにする。具体 的には、学校法人九州国際大学文化交流センターが実施したアンケート調査の結 果をもとに、地元の住民が地域貢献・地域連携に関して大学に寄せる期待につい ての分析を行ってみることにしたい。 2.アンケートの概要 分 析 に 使 用 す る デ ー タ は 、学 校 法 人 九 州 国 際 大 学 文 化 交 流 セ ン タ ー が 、 「地域と 学校との連携に関するアンケート」として北九州市八幡東区周辺地区の住民およ び 事 業 所 に 対 し て 実 施 し た ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 で あ る 。こ の 調 査 は 平 成 1 7 年 5 月に行われ、大学周辺地域の住民および事業所(企業等)を対象として実施され たものである。 個人を対象としたアンケートと事業所を対象としたアンケートとでは設問内 容が異なり、本稿で分析に使用するデータは、個人を対象としたアンケートの分 で あ る 。個 人 を 対 象 と し た 分 の 調 査 対 象 者 は 3 8 1 名 で 、回 収 率 は 6 5 . 9 パ ー セ ン ト (N=251) と な っ て い る 。事 業 所 を 対 象 と し た 分 の 調 査 対 象 者 は 4 2 5 名 で 回 答 者 は 各 事 業 所 の 代 表 者 で あ る が 、回 収 率 が 2 4 . 7 パ ー セ ン ト ( N = 1 0 5 )に と ど ま っ て い る の に比較すると、個人を対象とした分の回収率はかなり高い。 た だ し 、今 回 の ア ン ケ ー ト の 調 査 対 象 者 は 大 学 周 辺 地 域 の 商 店 主 、企 業 経 営 者 、 学校等の教育機関関係者としており、無作為抽出は行っていない。このため、本 稿で使用するデータにみられる住民の意識と一般住民の意識とは必ずしも同一の ものではない可能性がある。本稿で使用するデータの制約として、あらかじめお 断りしておきたい。 なお、アンケート調査の概要については、ホームページ上で公開されている調 査 報 告 書 を 参 照 さ れ た い 7。 5 小 松 隆 二 「 大 学 に と っ て 地 域 と は 何 か 」 伊 藤 眞 知 子 ・ 小 松 隆 二 編 『 大 学 地 域 論 』( 論 創 社 、 2 0 0 6 年 ) 16 頁 。 6 各 大 学 の 納 付 金 依 存 率 の 一 覧 と し て 、た と え ば「 本 当 に 強 い 大 学 」 『 週 刊 東 洋 経 済 』2005 年 10 月 15 日 号 ( 2005 年 ) 39 頁 の 表 を 参 照 。 7 http://www.fss-kiu-ac.jp/cec/houkoku.html 3 3.アンケート結果の分析 3−1.住民が期待する内容 はじめに、住民が大学との連携について具体的に期待している内容はいかな るものであるのかを検討するために、地域連携の内容に関する設問の回答結果 を分析してみよう。アンケートの中では、地域連携の具体的内容を次のような 設問により尋ねている。 本学園と地域とが連携・協力してほしいと思われる事柄はなんですか。次の 項目の中から 3 つ選んで○をつけてください。 1. 公開講座・出前講座など大学開放 2. まちづくり・地域づくり活動 3. 地域住民の生涯学習ニーズの把握などの調査研究 4. 地域の抱える諸課題を解決する仕組みづくり 5. ボランティアや地域リーダーなどの人材育成 6. 学校を舞台にした学社連携・学社融合 7. 地域における幅広い人的ネットワークの構築 図−1は、各項目に○をつけた人数を集計したものである(回答者は、3 つ の 項 目 を 複 数 回 答 す る こ と に な っ て い る )。 地域における幅広い人的ネットワークの構築 学校を舞台にした学社連携・学社融合 ボランティアや地域リーダーなどの人材育成 地域の抱える諸課題を解決する仕組みづくり 地域住民の生涯学習ニーズの把握などの調査研究 まちづくり・地域づくり活動 公開講座・出前講座など大学開放 0 20 40 60 80 100 120 140 図−1連携・協力希望内容の集計結果 この結果をみると、まちづくり・地域づくり活動に関して大学と連携を望ん でいる住民が最も多く、次にボランティアや地域リーダーなどの人材育成が期 待されていることがわかる。このことは、教育機関としての大学の役割に対す 4 る地域住民の期待の高さを示すものであるといえる。大学は高齢化が進む中で 例外的に若年層を多く抱える組織であり、まちづくり・地域づくり活動に関し ては、そのような特質を活かして学生や教職員など「人」の派遣・参加を行う ことが求められていると思われる。 また、地域の抱える問題を解決する仕組みづくり、人的ネットワークの構築 への期待も低くないことから、大学は地域の諸問題を解決する上でのコーディ ネーター役を果たすことも求められていると考えられる。 その反面で、学社連携・学社融合、調査研究などについての住民の期待はさ ほど高くない。本学が法学部、経済学部、国際関係学部という社会科学系の学 部だけを有する大学であり、理系、医薬系、社会福祉系の学部をもたないこと も関係していると思われるが、研究機関として研究成果を積極的に発信するこ と 8に 課 題 を 残 し て い る こ と を 如 実 に 物 語 っ て い る と も い え よ う 。 3−2.地域住民の大学の地域貢献に対する期待 次 に 、地 域 に お け る 教 育 機 関 の 役 割 に 関 す る 住 民 の 意 識 を 尋 ね る 設 問 の 回 答 結果を用いて、地域住民の大学に対する期待の要因についての分析を行ってみ よう。 ア ン ケ ー ト の 中 で は 、「 教 育 機 関 が 取 り 組 む べ き 以 下 の 事 項 に つ い て 、 あ な た は 本 学 園 に ど の 程 度 の 期 待 を し ま す か 」 と い う 問 い を 設 け 、「 各 種 講 座 に つ い て 」、 「 地 域 活 動 へ の 参 加 に つ い て 」、 「 学 校 の 改 革 に つ い て 」、 「施設について」 の 4 カ テ ゴ リ ー に 分 け て 合 計 27 の 項 目 を 尋 ね て い る 。 回 答 者 は 各 項 目 に つ い て、大いに期待している、少し期待している、あまり期待していない、全く期 待していない、の中から選択して回答する。カテゴリー別の項目の内容は次の 通りである。 各種講座について (1)公 開 講 座 メ ニ ュ ー の 充 実 (2)地 域 住 民 向 け の 講 座 ・ 講 演 会 の 実 施 (3)小 中 高 校 生 を 対 象 と し た 講 演 会 や セ ミ ナ ー (4)一 般 市 民 の 大 学 の 講 義 聴 講 (5)資 格 ・ 免 許 の 取 得 講 座 (6)生 涯 学 習 の 相 談 (7)生 涯 学 習 や 教 育 の 最 新 動 向 等 に つ い て の 情 報 提 供 (8)地 域 活 性 化 等 ま ち づ く り 人 材 の 養 成 講 座 地域活動への参加について (9)教 職 員 を 市 町 村 の 事 業 の 講 師 と し て 派 遣 (10) 教 職 員 が 市 町 村 の 各 種 委 員 会 委 員 に 就 任 8 社会科学系の大学では研究成果の社会への還元にも自ずと制約があるが、各種相談(リーガル・ク リ ニ ッ ク 等 ) の 実 施 、 研 究 紀 要 の PDF フ ァ イ ル に よ る イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で の 公 開 等 、 地 域 住 民 向 け の 情報発信の方法は存在しないわけではない。ただし、大学全体の経営環境が厳しくなり、リソースの 増加は望めない環境の下で、予算と人員をどのようにして割くかが問題である。 5 (11) 学 生 の 社 会 貢 献 活 動 の 推 進 (12) 留 学 生 と 地 域 社 会 と の 交 流 (13) 環 境 美 化 活 動 へ の 学 生 ・ 教 職 員 の 参 加 (14) 地 域 の イ ベ ン ト や お 祭 り 等 へ の 学 生 ・ 教 職 員 の 参 加 (15) 地 域 文 化 を 全 国 に 発 信 す る 手 助 け (16) ま ち づ く り 協 議 会 等 地 域 諸 団 体 へ の 学 生 ・ 教 職 員 の 参 加 学校の改革について (17) 社 会 人 入 学 の 定 員 を 増 や す (18) 学 部 、 大 学 院 で 取 得 で き る 資 格 、 免 許 を 増 や す (19) 優 秀 な 学 生 の 確 保 の 推 進 ( ス ポ ー ツ 活 動 ) (20) 優 秀 な 学 生 の 確 保 の 推 進 ( 文 化 活 動 ) (21) 優 秀 な 学 生 の 確 保 の 推 進 ( 芸 術 活 動 ) (22) 卒 業 生 が 仕 事 の 相 談 に 来 学 で き る 環 境 整 備 施設について (23) 教 室 や 会 議 室 の 利 用 ・ 開 放 の 推 進 (24) 図 書 館 の 利 用 ・ 開 放 の 推 進 (25) コ ン ピ ュ ー タ や イ ン タ ー ネ ッ ト 設 備 の 利 用 ・ 開 放 の 推 進 (26) 体 育 館 や ス ポ ー ツ 施 設 等 の 利 用 ・ 開 放 の 推 進 (27) 食 堂 、 売 店 、 生 協 の 利 用 ・ 開 放 の 推 進 回答結果を分析するために、まず各項目への回答を、大いに期待している= 3、 少 し 期 待 し て い る = 2、 あ ま り 期 待 し て い な い = 1 、 全 く 期 待 し て い な い = 0 と し て 点 数 化 し た 。次 に 、 「 各 種 講 座 に つ い て 」、 「 地 域 活 動 へ の 参 加 に つ い て 」、 「 学 校 の 改 革 に つ い て 」、「 施 設 に つ い て 」 の 各 カ テ ゴ リ ー 内 の 項 目 の 合 計 点 を 算出して、これを各カテゴリーに対する地域住民の期待の大小を示す指標とし て用いることにした。 こ の よ う に し て 得 ら れ た「 各 種 講 座 に つ い て 」、 「 地 域 活 動 へ の 参 加 に つ い て 」、 「 学 校 の 改 革 に つ い て 」、「 施 設 に つ い て 」 の そ れ ぞ れ の 合 計 点 を 従 属 変 数 と し て 、 重 回 帰 分 析 を 行 う こ と と し た 。 独 立 変 数 に は 、 性 別 ( ダ ミ ー )、 年 齢 、 居 住地から大学への距離、自治体・市民センターが開く講演会・講座・サークル へ の 参 加 の 有 無 ( ダ ミ ー )、 大 学 や 短 大 が 実 施 す る 公 開 講 座 ・ 講 演 会 ・ 生 涯 学 習 講 座 へ の 参 加 の 有 無 ( ダ ミ ー )、 ス ポ ー ツ な ど 身 体 を 動 か す イ ベ ン ト や 大 会 へ の 参 加 の 有 無 ( ダ ミ ー )、 地 域 の 集 ま り や ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 へ の 参 加 の 有 無 (ダミー)を投入した。 表−1は、重回帰分析の結果を示したものである。 6 表−1 性別 年齢 大学への距離 自治体、市民センター が開く講演会・講座・ サークルへの参加 大学や短大の公開講 座・講演会・生涯学習 講座への参加 スポーツなど身体を動 かすイベントや大会へ の参加 地域の集まりやボラン ティア活動への参加 Constant Adjusted R Square N * p < 0.1 大学の地域貢献に対する住民の期待の重回帰分析結果 各種講座の充実 -0.03 -0.45 ** 0.04 標準化済回帰係数 地域活動への参加 学校の改革 -0.85 -0.01 -0.43 ** -0.38 ** 0.01 0.01 施設利用 -0.01 -0.48 ** 0.03 0.12 0.17 ** 0.10 * 0.11 * 0.04 0.39 0.03 0.09 -0.05 -0.09 -0.07 -1.30 * 0.19 ** 0.23 ** 34.90 0.29 251 37.01 0.27 251 0.14 ** 25.04 0.19 251 0.16 ** 25.64 0.29 251 ** p < 0.01 分析結果を検討してみよう。 まず、全カテゴリーについて、年齢が強い負の影響を与え、かつ有意である ことが注目される。 今 回 の ア ン ケ ー ト を 実 施 し た 北 九 州 市 は 、全 国 の 政 令 指 定 都 市 の 中 で も 最 も 高齢化率が高いことで知られる。今回のアンケートについても、回答者の平均 年 齢 は 52.9 歳 で あ る 。 こ の よ う な 事 情 が あ る 中 で 、 年 齢 の 若 い 層 ほ ど 大 学 の 地域貢献に対する期待が高まっていることは、大学が地域との連携を図り地域 社会の活力維持に貢献するための方策を立案する上で、看過できない点である といえよう。 また、居住地から大学までの距離は、回帰係数が小さく有意な結果も得られ ていない。ただし、前述したように今回のアンケートでは回答対象者の多くが 大学周辺に居住しており、大学へのアクセスに要する時間はほぼ全員が 1 時間 以内と思われる。このため、大学に対する期待と大学へのアクセスとの関係に ついては、別に検討を加える必要がある。 地域の集まりやボランティア活動への参加経験は、すべてのカテゴリーにつ いて正の影響を与えており、有意であるところから、地域活動に積極的に参加 している住民は自らの知識を高めたりさらに積極的な活動を行ったりするた めに、大学に対しても期待を向けていることが窺われる。今後の大学の地域貢 献を検討する際には、このような住民との連携を図り、住民の期待に対して応 えうるような内容を提供することが重要であるといえる。 自治体、市民センターが開く講演会・講座・サークルへの参加経験は、各種 講座の充実を除いて各カテゴリーで有意な影響を与えている。各種講座の充実 7 が有意とならなった理由は、すでにこのような講座等に参加しているために、 大学が開催する各種講座にはさほど期待を持っていないという事情があるの かもしれない。したがって大学としては、これまで講演会・講座・サークル等 に参加した経験をもたない住民も視野に入れながら各種講座の企画を検討す る必要があるといえる。 大学や短大の公開講座・講演会・生涯学習講座への参加経験は、全カテゴリ ーについて有意な結果が得られていない。ただし、有意ではないものの、学生 や教職員が地域の活動に参加することへの期待については、やや大きな影響を 与えている。大学が開催する各種講座に参加することにより、学生や教職員の 姿を身近なものとして感じているという事情が関係しているのかもしれない。 4.おわりに 本研究で用いたデータは、無作為抽出を行わずに実施したアンケート結果に基 づくものであり、データ分析にも制約・限界がある。 し か し 、各 種 の 地 域 活 動 に 積 極 的 に 参 加 し て い る 住 民 ほ ど 大 学 に 対 す る 期 待 も 高い、若年層ほど大学の地域貢献に対する期待が高まっているといった知見は得 られた。また、まちづくり・地域づくり活動に関して住民がどのような分野で大 学と連携することを望んでいるのかについても明らかとなった。 こ の よ う な 住 民 の 期 待 に 対 し て 、大 学 が 限 ら れ た リ ソ ー ス を 有 効 に 活 用 し て 効 果的に応えることによって、地域と大学との連携を図る必要がある。それによっ て、地域の活性化に向けたシナジーを創出することも可能となると思われる。 8 ス トッ ク 型 社 会転 換 の 中 で 持 続発 展 可 能 な次 世 代 都 市を 目 指 し た技 術 開 発 石田 康 ( 株 式会 社 日 立 製作 所 理 事 、都 市 開 発 シ ステ ム グ ル ープ ソ リ ュ ーシ ョ ン 統 括本 部 、 羽 衣国 際 大 学 客員 教 授 ) 1 .持 続 的 発 展可 能 都 市 とは 1 99 2 年 の 環 境 サ ミ ッ ト で 持 続 可 能 な 開 発 ( Su st ain ab le De vel op men t ) が 国 際 的 な 目 標 と し て 提 示 さ れ て 、す で に 1 0 年 が 経 過 し よ う と し て お り 、環 境 や エ ネ ル ギ ーに 対 す る 取組 み は 理 念を 議 論 す る段 階 か ら 、 具体 的 な 対 応を 設 計 す る段 階 に 移 行し て い る 。そ の 解 決 手段 と し て 大き な 期 待 が 持た れ る の が大 量 消 費 の社 会 か ら スト ッ ク 型 社会 へ の 転 換で あ り 、 循環 型 社 会 に 大き く 変 え てい く こ と が挙 げ ら れ る。 し か し 、あ る 面 で は都 市 の 持 続的 な 経 済 発 展と の ト レ ード オ フ も 懸念 さ れ る が、 都 市 と して の ソ フ ト面 で の 魅 力や 価 値 を 一 層向 上 さ せ るこ と に よ り実 現 可 能 と 考 え る 。 特 に 、 20 05 年 度 か ら 進 行 し 始 め た 少 子 高 齢 化 が 進 み 、 国 際 化 が 進 む 中 、都 市 が 今 まで 以 上 に 発展 し て い くた め に は 世 界か ら 評 価 され る 新 し い価 値 を 生 み 出 し 、そ し て 発 信 し 続 け な く て は な ら な い 。本 稿 で は ス ト ッ ク 社 会 に 転 換 し 、 さ らに 持 続 発 展す る 都 市 を実 現 あ る いは 支 援 す る 技術 に つ い て述 べ る 。 2 .ス ト ッ ク 型社 会 と フ ロー 型 社 会 2 −1 . 現 状 の都 市 の 課 題と ス ト ッ ク型 都 市 の 機 能 我 々 が 現 在 住 ん で い る ま ち は 、ほ ぼ 40 年 間 で つ く り あ げ て き た と 言 わ れ て い る 。そ の 間 、 壊し て は 造 り、 造 っ て は壊 し と い う こと を や り なが ら も 、 それ な り に壮 大 な 都 市を つ く っ てき た 。 そ れは ひ た す ら 都市 を 拡 大 して き た 時 代で あ り 、『 都 市 化 の 時 代 』『 都 市 の モ ダ ニ 』 で あ る 。「 フ ロ ー 」 と か 「 ス ト ッ ク 」 と い う言 葉 は 、 元来 、 有 形 財( モ ノ ) を中 心 に し た 経済 学 の 用 語で あ る 。 そし て こ れま で 日 本 は、 道 路 や 橋、 ビ ル な どの イ ン フ ラ を、 社 会 資 本と い う ス トッ ク になると思って、整備してきたのであった。しかし現実に街で見 るその姿は、 箱 モノ と 呼 ば れる 建 物 か らは じ ま り 、全 国 至 る と ころ で 常 に 見う け ら れ る道 路 工 事 、建 て 直 し 工 事 に 至 る ま で 、結 局 、全 て の モ ノ づ く り は 消 費 で し か な く( い つ も 壊 さ れ て い る )、 フ ロ ー ( 消 費 の み の 流 れ ) で あ っ た こ と へ の 確 認 で あ っ た 。 20 世 紀 は 大 量 生 産・ 大 量 消 費 を も と に し た フ ロ ー 型 社 会 で あ っ た が 、そ れ は 大都 市 に お いて は 深 刻 な環 境 問 題 、エ ネ ル ギ ー 問題 、 都 市 間の 競 争 、 セキ ュ リ ティ ー 問 題 、騒 音 問 題 、大 都 市 の 交通 渋 滞 、 都 市イ ン フ ラ の老 朽 化 、 加速 す る 高 齢 化 、地 震 な ど の 災 害 を 、一 方 、地 方 都 市 に お い て は 過 疎 化 、財 政 の 悪 化 、 遊 休地 の 拡 大 や経 済 活 動 の低 迷 化 、 店舗 の 閉 鎖 、 公共 サ ー ビ スの 劣 悪 化 など の 問 題 を 引 き 起 こ し た 。( 図 − 1 ) 今 後は 、 こ れ ら解 決 の た めに わ れ わ れが つ く り あげ て き た 都 市を 、 こ れ から 1 は 環境 負 荷 を 考慮 し つ つ 維持 し 、 改 良し 、 利 用 し 、あ る い は 活用 し て い く時 代 に なっ た 。 す なわ ち 持 続 可能 な 地 球 環境 社 会 の 実 現の た め に は蓄 積 さ れ た資 本 や資源の 効率的 かつ循環 的な利 用に基 づくス トック 型社会へ の転換 が求め ら れ てい る 。 ま た今 後 は 、 少子 高 齢 化 が進 み 、 国 際化 が 進 む 中、 都 市 が 今 まで 以 上 に 発展 していく ために は世界か ら評価 される 新しい 価値を 生み出し そして 発信し な く ては な ら な い。 又 、 地 方都 市 と の 格差 を 是 正 す る為 に は 大 都市 と 地 方 都市 の 人 ・も の ・ 金 ・情 報 の 交 流サ イ ク ル を如 何 に 行 っ てい く か に 掛か っ て い る。 こ う いっ た 課 題 の解 決 と し てハ ー ド 面 とと も に ソ フ ト面 の 対 策 が 重 要 と 考 え る 。 地方都市 地方都市 大都市 大都市 交流 交流 移動 移動 ・人口減少 ・人口減少 ・財政悪化 ・財政悪化 ・交通渋滞 ・交通渋滞 ・都市間競争激化 ・都市間競争激化 ・市町村合併 ・市町村合併 ・公共サービスの悪化 ・公共サービスの悪化 ・店舗・商店街の縮小 ・店舗・商店街の縮小 及び閉鎖 及び閉鎖 ・空きビルの増加 ・空きビルの増加 交流 交流 移動 移動 図 −1 ・環境の悪化 ・環境の悪化 (ゴミ、空気、騒音等) (ゴミ、空気、騒音等) ・セキュリティ・テロ ・セキュリティ・テロ ・高齢化加速 ・高齢化加速 ・都市インフラの老朽化 ・都市インフラの老朽化 (情報、上下水、エネルギー、 (情報、上下水、エネルギー、 公共施設) 公共施設) 都 市 のか か え る 課題 2 −2 . ス ト ック 型 都 市 機能 の 仕 組 み 物 理 的 な スト ッ ク と して は 、 都 市レ ベ ル で の イン フ ラ 基 盤( 情 報 、 エネ ル ギ ー ・ 上 下 水 、 公 共 施 設 、 交 通 等 )、 街 区 レ ベ ル で の イ ン フ ラ 基 盤 ( 上 下 水 道 、 公 園 、 道 路 、 住 居 等 )、 住 宅 ・ 建 築 レ ベ ル ( 空 調 、 電 気 、 衛 生 、 家 電 品 、 PC 、 通 信、 建 築 ) があ げ ら れ る。 物 理的 な 設 備 や建 物 の ス トッ ク の ほ かに 、 ソ フ ト面 の ス ト ッ クと し て の その 地 域の 歴 史 、 文化 、 芸 術 、 哲 学 や 安心 安 全 、 自 然と の 調 和 環境 と い っ た、 地 域活動をストックとみる考え方も重要である。 それは人間自身がフローとな っ て 、人 間 が 人 間 を 介 し て 行 う 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン や 教 育 と い う 行 為 に よ り 、 歴 史 、文 化 、 芸 術 、 哲 学 と い っ た 知 的 財 産 の 洗 練 化 と 継 承 を 、人 間 そ の モ ノ 、 を 介し て 図 り また 新 し い 価値 を 発 信 する 都 市 で あ る。 ま た 、 美し い 街 を 作る デ ザインや 障害を 持った人 を差別 しない バリヤ ーフリ ーのデザ インな ども重 要 で ある 。 こ の よう な 、 ハ ード と ソ フ トの フ ィ ー ド バッ ク に よ りス ト ッ ク の見 直 しや付加 価値付 けがたえ ず繰り 返され お互い が相乗 効果を発 揮する ことに よ り 、は じ め て 持続 発 展 可 能な 都 市 と して い き 続 け るこ と が 出 来る 。 こういっ た永続 的なフ ィード バック は環境 負荷や コスト も少な くしか も効 率 的な 形 で 実 現で き な い とい け な い 。都 市 の 構 築 にあ た り 、 こう い っ た こと を 2 念 頭に 設 計 ・ 施工 す る こ とと 、 竣 工 後の メ ン テ ナ ンス や リ ニ ュー ア ル で 柔軟 な 対 策 の 2 面 で 対応 を 考 え るこ と が 重 要で あ る 。 具 体的 に は 、 環境 負 荷 が 少な い 循 環社 会 都 市 を構 築 し 、 設計 段 階 か ら長 寿 命 化 や リニ ュ ー ア ルが 容 易 に 行え る 対 策を 行 っ て おく こ と と 、情 報 イ ン フラ な ど も 柔 軟な 拡 張 が 行え る よ う 計画 し て お く こ と が 重 要 で あ る 。( 図 − 2 ) ハード ハード <街区> ・ 街区インフラ(情報、エネルギー、上水) ・ 公園、交通、公共施設 ・ 福祉、コミュニティ施設 コンビニ ・都市インフラ(情報、エネルギー、上下水)・ 体育館、 <都市> ・交通、公共施設、公園 ・物流、金融、商業、文化施設 ・高速道路 コミュニケーション (空調、衛生、電気、情報) ・家電、OA機 器、PC 環境負荷の低減 長寿命な設備・建築 人間 <ビル・ 設備> ・マンション、オフィスビル、工場、ビル設備、 ・昇降機 ・建築 人間 容易なリニューアル ・ 歴史 自然エネルキ ゙ーの活用 ・ 伝説 フレキシブルな情報インフラ コミュニケーション ・自然との調和 ・植物との調和 ・山、海との調和 ・ 地域ブランド ・ 名所 ・ 文化 ・ 教育 ・ 芸術 ・ スポーツ ・ 伝統 ・ レジャー ・建物との調和 ・人との調和 (バリアフリーなど) ・ 哲学 ・ デザイン ソフト ソフト 図 −2 ス ト ック 型 都 市 の機 能 3 .持 続 可 能 なス ト ッ ク 型都 市 を 実 現す る 施 策 と 支援 技 術 3 −1 . 持 続 発展 ス ト ッ ク型 の 都 市 の実 現 施 策 前述し た考え 方を元 にストッ ク型都 市にお いて持続 的に発 展する ためには 「 ス ト ッ ク ・ メ ン テ ナ ン ス 」 へ と 時 代 と 大 き く 変 革 す る 必 要 が あ る 。「 持 続 可 能 性 」 に は 、 大 き く 分 け る と 「 社 会 的 持 続 可 能 性 」「 経 済 的 持 続 可 能 性 」「 環 境 的 持 続 可 能 性 」「 文 化 的 持 続 可 能 性 」 の 4 つ の 側 面 が あ る 。 こ の 中 で 、 ハ ー ド の 世界 で は 次 のよ う な 観 点に 立 っ た 具体 的 な 施 策 が必 要 で あ る。 ① ラ イ フ サ イ ク ル ・ コ ス ト ( LC C ・ LC A ) の 重 視 ② リ フォ ー ム 市 場の 活 性 化 ③ 更 新 等 を 契 機 と し た ユ ニ バ ー サ ル・デ ザ イ ン の 導 入 等 、新 し い ニ ー ズ へ の 対 応 ④ 安 全性 ・ 耐 久 性に 優 れ た 都市 構 造 へ の対 応 ⑤ 循 環 的・ ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン は 、モ ノ や 建 築 や 都 市 に つ い て 生 産 -消 費 -廃 棄 の 3 全 過 程 を 視 野 に 入 れ た 見 方 で 、排 出 さ れ る 廃 棄 物 や 排 出 物 を ゼ ロ に す る と い う 概念 ・ 思 想 ・運 動 。 ⑥ フ レッ キ シ ブ ルで 先 端 情 報基 盤 の 構 築 一 方、 ソ フ ト の世 界 で は 、さ ま ざ ま な要 因 が 挙 げら れ る し 、 また 一 般 的 な解 は 無い 。 し か し都 市 や 地 域が 発 展 し てい く た め に は下 記 に 挙 げる ソ フ ト の開 発 や 向上 に 対 し 、都 市 を 取 り巻 く ス テ ーク ホ ー ル ダ ーの 努 力 が 不可 欠 で あ る。 1 )ど の よ う な都 市 文 化 が花 開 く か は、 そ の 都 市 が立 地 す る 風土 民 族 ・ 宗教 に よ る面 が 強 い 。そ れ ぞ れ の都 市 が 立 地す る 地 域 の風 土 、 自 然 をは じ め と す る 文化 の 特 長 を生 か す こ とが 重 要 で ある 。 2 ) 生 活 様 式 や ラ イ フ ス タ イ ル が 価 値 中 立 的 な 概 念 で あ る の に 対 し 、「 生 活 の 質 」 は 、 ス ト ッ ク に 関 す る 価 値 判 断 、「 望 ま し さ 」 に 関 す る 価 値 判 断 を 含 ん で お り 、 こ の 生 活 の 質 ( Qo L) の 向 上 が 重 要 で あ る 。 質 の 向 上 と し て は I T 利用 も あ れ ば、 食 の こ だわ り や 、 職業 な ど の 満足 度 な ど 、 さま ざ ま な 価 値 観に よ る と ころ が 大 き い。 3 )コ ミ ュ ニ ティ 生 成 と して ① 共 有 され た 感 情 的 結び つ き ② 近隣 あ る い は場 所 に 対 す る 愛 着 ③ メ ン バ ー シ ッ プ 所 属 し て い る と い う 心 理 ④ 影 響 i nf lue nc e グループ の一致 性に関 連⑤ 強化お 互いの 助け合 いなど で⑥場 所性環 境 へ の 感じ 方 が 醸 成さ れ る こ とが 大 切 で ある 。 昨 今 は 地 方や 都 心 で 色々 な 試 み が試 行 さ れ て おり 、 コ ン パク ト シ テ ィも そ の 解 決策 と し て 注目 さ れ て いる 。 コ ン パク ト シ テ ィ とは 、 従 来 の成 長 拡 大 志向 に よ って 、 い わ ば外 向 き に 発散 し が ち であ っ た 都 市 づく り に か ける エ ネ ル ギー の 方 向を 、 質 的 な充 実 を 図 る視 点 な ど 内側 へ と 集 中 させ る こ と によ り 、 無 制限 な 行 財政 需 要 の 拡大 を 招 く 恐れ の あ る 投資 を 抑 え 、 これ ま で 培 って き た 都 市の ス ト ック を 有 効 に活 用 す る とと も に 、 環境 と の 共 生 など を 目 指 すも の で あ る。 コ ストを考 えた都 市経営の 視点と 効率的 な都市 サービ スの高度 化の両 立を図 る た め、 持 続 可 能な 都 市 づ くり を 進 め ると い う 理 念 に基 づ い て いる 。 コ ンパ ク ト シ ティ が 注 目 され る 背 景 には 、 中 心 市街 地 の 衰 退 、特 に 商 店 街の 著 しい 地 盤 沈 下に あ る 。 多く の 地 方 都市 で 、 か つ て、 賑 わ い と活 気 に あ ふれ て い た中 心 市 街 地の 面 影 は ない 。 車 社 会の 進 展 、 人 口の 郊 外 流 出、 大 型 商 業施 設 の 郊外 へ の 出 店に 加 え 、 病院 、 学 校 とい っ た 公 共 施設 の 郊 外 拡散 が 、 結 果と し て 中心 市 街 地 のに ぎ わ い を奪 い 、 商 業の 衰 退 を 招 いた と 言 わ れて い る 。 しか し コ ンパ ク ト シ ティ も 地 方 、大 都 市 、 発展 途 上 地 区 など 規 模 ・ 機能 ・ 配 置 ・密 度 で さま ざ ま な 形態 が あ り 内容 も 異 な る。 た と え ば 、コ ン パ ク ト な 居 住 、す な わ ち 徒 歩 に よ る 移 動 性 の 確 保 、職 住 近 接 ・ 建 物の 混 合 利 用・ 複 合 土 地利 用 と い った 様 々 な 都 市機 能 の 混 合化 、 建 物 の中 高 層 化に よ る 都 市の 高 密 化 、は っ き り とし た 都 市 の 境界 や 独 自 性を 有 す る こと 等 が 挙げ ら れ る が、 各 所 で “歩 い て 楽 しい ま ち づ く り” や 先 端 的情 報 技 術 活用 に よ るコ ン パ ク ト・ シ テ ィ 、産 業 転 換 によ る コ ン パ クト ・ シ テ ィな ど 試 行 され て い る。 4 3 −2 . 支 援 技術 1 )サ イ ク ル 化に よ る 環 境負 荷 の 低 減 建 築物 の 利 用 に伴 っ て 発 生す る 環 境 負荷 の 小 さ な、 環 境 効 率 の高 い 循 環 型社 会 を形 成 す る には 、 建 設 副産 物 の 特 性に 応 じ て 、 より 高 い 水 準の リ サ イ クル パ ス で再 資 源 化 する 、 カ ス ケー ド の リ サイ ク ル シ ス テム を 実 現 する こ と が 望ま し い 。2 1 世 紀 の 前 半 に 施 設 の 更 新 の ピ ー ク を 迎 え る 、す で に 立 地 し て い る 建 設 物 に つい て は 、 資源 の 再 生 ・再 利 用 を 考慮 し て い な い設 計 で あ るた め 、 再 利用 や 部 品の リ サ イ クル よ り も マテ リ ア ル リサ イ ク ル を 志向 す る 。 その た め に は、 都 市 近郊 型 の 再 資源 化 基 盤 施設 と 廃 棄 物輸 送 と リ サ イク ル 資 材 輸送 、 都 市 内の ス ト ック ヤ ー ド など の 逆 ロ ジス テ ィ ク スの 都 市 循 環 基盤 の 整 備 と、 効 率 的 な分 別 技 術の 確 立 な どリ サ イ ク ルの 社 会 的 費用 を 低 減 す るシ ス テ ム の整 備 、 リ サイ ク ル 資 材 の 利 用 を 義 務 づ け る 制 度 シ ス テ ム の 整 備 を 用 意 す る 。一 方 で 、2 1 世 紀 以 降 に着 工 さ れ る建 設 物 に つい て は 、 構造 物 に つ い ては 機 能 需 要の 変 化 に 対応 で き る 、 S kel et on- In fil l 型 の フ レ キ シ ブ ル 設 計 や 、鉄 鋼 材 や プ レ キ ャ ス ト コ ン ク リ ー ト 、 木 材 な ど を 再 利 用 で き る 易 解 体 等 の 環 境 配 慮 型 設 計 ( De si gn f or Env iro nm en t ま た は De si gn fo r D is ass em bly ) を 設 計 に 導 入 す る た め の 制 度 、 経 済イ ン セ ン ティ ブ の 都 市環 境 政 策 計画 へ の 導 入 が求 め ら れ る。 家 電 製 品や 自 動 車な ど の リ サイ ク ル で はリ サ イ ク ルの 法 整 備 の 元、 (1)対 象機 器 の 廃 棄物 か ら部品及 び材料 を分離し 、これ を製品 の原材 料又は 部品とし て利用 するこ と (2 )対 象 機 器 の 廃 棄 物 か ら 部 品 及 び 材 料 を 分 離 し 、 こ れ を 燃 料 と し て 利 用 す る こ とを 実 施 し てい る 。 こ の内 、 原 材 料と し て の 再利 用 に 関 して は 、 金 属、 ガ ラ ス 及 びプ ラ ス チ ック か ら な る 廃 棄 物 を 金 属 、ガ ラ ス 及 び プ ラ ス チ ッ ク 原 料・材 料 へ 再 生 利 用 す る 等 、 原 材料 と し て その ま ま 再 生利 用 す る 「材 料 リ サ イ クル 」 と 、 廃棄 物 を そ のま ま 材料とし て利用 するので はなく 何らか の科学 的な処 理をした 上で再 利用を す る 「ケ ミ カ ル リサ イ ク ル 」と に 分 け られ る 。 ま た 、燃 料 と し ての 利 用 に 関し て は 、対 象 家 電 品か ら 分 離 され た 部 品 ・材 料 の 内 、 再商 品 化 さ れた 以 外 の もの に つ いて 、 燃 焼 させ て 熱 エ ネル ギ ー を 得る た め に 利 用す る も の であ る 。 2 )建 物 ・ 設 備の リ ニ ュ ーア ル リ ニ ュ ー アル に 関 し ては 老 朽 化 によ る 耐 震 や 劣化 対 す る 補強 対 応 の リニ ュ ー ア ルと 、 攻 め のモ ダ ニ と して は エ ネ ルギ ー の 効 率 化や 先 端 デ ザイ ン 、 先 端技 術 を 装備 す る と いっ た 2 種 類が あ る 。 老朽 化 や 耐 震 劣化 に よ る リニ ュ ー ア ル更 新 と し て は LC C( ラ イ フ サ イ ク ル コ ス ト )と し て の よ り 客 観 的 な デ ー タ に 基 づ き 実 行 す る こ と が 求 め ら れ る 。 設 備 の LC C は ( 図 − 3 、 図 − 4 ) の 通 り で あ り リ ニ ュ ー アル の 時 期 、内 容 を 設 備の 一 生 と して 最 適 に 管 理し て い く こと が 重 要 であ る 。 機 器部 材 の 残 存寿 命 算 定 、長 期 保 全 計画 作 成 、 リ ニュ ー ア ル 計画 作 成 を 元に 電 力 料金 低 減 、 熱源 機 器 運 転効 率 向 上 、空 調 コ ス ト 低減 や 経 年 劣化 更 新 性 向上 技 術 によ り 長 寿 命化 を 推 進 して い く こ とが 可 能 に な る。 ま た 建 物の 用 途 変 更の た めのコン バージ ョンも今 後重要 となっ てくる 。ライ フサイク ルアセ スメン ト 5 (LCA) は 企 画 ・ 設 計 ・ 建 築 -維 持 管 理 -解 体 ・ 廃 棄 ま で の 総 額 。 建 設 だ け に 偏 っ てい た こ れ まで の や り 方を 改 め 「 循環 的 」 な 考 え方 を 入 れ たも の 。 3 )長 寿 命 化 技術 ビ ル の 設 備や 家 電 に 使わ れ る 設 備の 長 寿 命 化 は、 大 き く 以下 の 4 つ に分 類 さ れ る。 ・ 継続 的 な 使 用を 前 提 と した 製 品 自 体の 長 寿 命 化 ・ 技術 の 革 新 等に 合 わ せ て部 品 の 交 換を 行 う こ と によ る 使 用 期間 の 長 期 化 ・ 一定 期 間 使 用 後、 回 収 さ れ た製 品 を 再 生 させ る こ と に よる 部 品 レ ベ ルの 長 寿 命化 ・ 廃棄 さ れ た 設備 の 分 解 によ る リ サ イク ル コ ス ト 企画 設計 建設 運用管理 解体 再利用 経年 図 −3 LC C の 考 え 方 トータルコスト ①企画設計コスト 建設企画コスト 現地調査コスト 用地取得コスト 設計コスト ②建設コスト ③運用管理コスト 工事契約コスト 建設工事コスト 建設工事 電気設備工事 受変電 自家発、蓄電池 監視制御、一般 電気 構内配線、消防 保全コスト 解体コスト 修繕コスト 再利用・処分コスト 改善コスト 環境対策コスト 運用コスト 機械設備工事 環境管理コスト 効果分析コスト 設計支援コスト 熱源、空気調和 換気 排煙、給排水衛生 監視制御、EL 工事監理コスト 一般管理コスト 運用支援コスト 工事現場管理 工程管理 機器材料検査 監督記録 環境対策コスト 図 −4 LC C の 分 類 6 ④解体再利用コスト ① 製品 自 体 の 長寿 命 化 修 理・ 点 検 の 機能 強 化 に より 、 設 備 、製 品 の 使 用可 能 期 間 の 延長 を 図 る こ と が考 え ら れ る。 一 方 で 、空 調 機 器 や受 電 設 備 とい っ た 建 造 物に 組 み 込 まれ る よう な 電 気 機器 類 に つ いて は 、 遠 隔設 備 監 視 など に よ り 、 継続 的 な 稼 動状 況 の管 理 を 実 施す る こ と で、 故 障 発 生前 の 効 果 的な 部 品 交 換 とい っ た 効 率的 な 保守 が 可 能 とな り 、 製 品寿 命 の 長 期化 に 繋 が る 。 ② 技術 革 新 等 に合 わ せ た 部品 の 交 換 によ る 使 用 期 間の 長 期 化 パ ソコ ン の よ うに モ デ ル チェ ン ジ が 早く 、 短 期 間の 内 に 相 対 的な 機 能 の 低 下 を 招 い て し ま う 製 品 に つ い て は 、メ モ リ や C PU 、ハ ー ド デ ィ ス ク 等 の 追 加 ・ 交換によ って最 新のモ デルに 近い性 能にア ップグ レード させる ことで 使用 期 間を 長 期 化 させ る こ と が考 え ら れ る。 ③ 回収 し た 製 品の 部 品 レ ベル で の 再 生 リ ユー ス 可 能 な部 品 を モ ジュ ー ル 化 して 、 回 収 し、 必 要 に 応 じて 再 生 さ せ る こと で 、 再 び製 品 と し て利 用 さ れ るも の も あ りま す 。 コ ピ ー機 や プ リ ンタ の トナ ー 等 の よう に 、 使 用後 、 回 収 しト ナ ー を 再充 填 さ せ る こと で 再 利 用を 可 能と し て い るも の や 、 レン ズ 付 フ ィル ム の よ うに 一 部 の 部 品を 交 換 す るこ と によ っ て 再 利用 を 可 能 とし て い る もの 、 そ の 他、 オ フ ィ ス 用コ ピ ー 機 のよ う に製 品 系 列 毎の モ ジ ュ ール を 共 通 化す る こ と に よっ て 、 再 利用 化 を 推 進し て いる 事 例 が あげ ら れ る 。こ の モ ジ ュー ル 化 の 推進 に よ る 再 利用 は 、 自 動車 や 工作 機 械 へ の適 用 推 進 が望 ま れ て いる 。 ④ 部品 の 再 利 用・ 再 生 業界団体 が共通 的にリ ユー ス可能 な部品 のモジ ュール 化を推 進する こ と が 理想 で あ る 。一 方 で 、 再利 用 コ ス トを 削 減 す るた め の 部 品 の効 率 的 な 回収 方 法や 、 高 効 率な 洗 浄 ・ 検査 技 術 の 開発 も 重 要 な 取り 組 み 課 題で あ る 。 ま た、 部 品 の 再利 用 を 行 なう た め に は、 以 下 の 条 件を 満 た す こ と が 必 要 。 (a) 再 生部 品 の 余 寿命 > 再 生 部品 を 使 用 する 製 品 の 寿 命 (b) 再 利用 周 期×再 利 用 世代 数 > 製 品寿 命 こ の 際 、 回収 し た 再 利用 対 象 部 品が 、 そ れ 以 前に 利 用 さ れて い た 回 数を 確 実 に管 理 で き るよ う な 仕 組み と 体 制 作り も 必 要 と なっ て き た 。 一 方で 、 リ サ イク ル の 新 しい 社 会 モ デル そ の も のを 構 築 す る こと を 提 言 す る。 ⑤ 新し い 環 境 社会 モ デ ル の提 言 筆 者は 企 業 、 市民 、 地 方 自冶 体 の 協 力と 意 識 の 向上 に よ り 、 設備 の 環 境 負 荷 低減 を 可 能 に出 来 る 社 会経 済 の 将 来モ デ ル を 提 言す る 。 モ デ ル の 概要 と 環 境 を意 識 し た 変化 は 下 記 の 通り 。 ・市 民( ユ ー ザ ー ): ユ ー ザ ー の モ ノ( 家 電 ・ 設 備・ 家 具 等 )の 保 有 形 態 を「 買 う 」か ら 「 借 りる 」 に 転 換 ・ 企 業 ( メ ー カ ): 解 体 ・ 修 理 の 容 易 性 を 考 慮 し た モ ノ の 製 作 ビ ジ ネ ス は 「 売 る 」 か ら 「 貸 す 」、 ・ 企 業 ( 販 売 店 ); 不 用 に な れ ば 「 引 き 取 り 」「 修 理 又 は リ ユ ー ス 」 に て 「 再 販 売」 7 ・ 自冶 体 ; 不 法投 棄 の 監 視と 罰 則 の 設定 。 リ サ イ クル 施 設 の 設置 。 こ こ で 将 来 モ デ ル に 導 入 さ れ る グ ッ ズ( G oo ds )と バ ッ ズ( Ba ds )の 概 念 を 紹 介 する 。 こ こ で グ ッズ と 言 う のは 通 常 財 の事 で あ る 。 財は 有 価 物 とし て 対 価 を支 払 っ て も手 に 入 れ たい も の 。 その 一 方 で バッ ズ は 対 価 を払 っ て 引 き取 っ て も らう も の で、 も の の 異動 す る 方 向と 金 銭 の 移動 す る 方 向 が一 致 し て いる と 言 う 点で あ る。 こ の 社 会 モデ ル は ス トッ ク 社 会 の典 型 で あ り 、従 来 の モ ノの 売 買 社 会か ら 脱 却 し、 企 業 は より 良 い サ ービ ス へ と ビジ ネ ス を 転 換し て い く 事に よ り 経 済と 環 境 の両 立 を 図 ろう と す る もの 。 こ の 様な モ デ ル 社 会を 世 界 に 先駆 け 実 験 的に 推 進 する 事 が 望 まれ る 。 グ ッ ズ ( Go o ds): 対 価 を 支 払 っ て 購 入 す る も の バ ッ ズ ( B ads): 対 価 を 払 っ て 引 き 取 っ て も ら う も の バ ッズ グ ッズ 企業 市民 市民 企業 ¥ ¥ 図 −5 グ ッ ズと バ ッ ズ の定 義 4 )自 然 エ ネ ルギ ー 活 用 技術 ( マ イ クロ グ リ ッ ド ) 利便 性 を 維 持し な が ら 、環 境 負 荷 を低 減 さ せ る とい う 人 類 の永 遠 の 課 題を 解 決 す るた め に は 、地 域 の 特 性に 応 じ て 太陽 光 、 風 力 、バ イ オ マ スや ゴ ミ 発 電な ど の 新 エネ ル ギ ー と蓄 エ ネ ル ギー を 最 適 にミ ッ ク ス し た、 あ る い はそ れ ら の ハイ ブ リ ッ トを も 視 野 に入 れ た 新 しい エ ネ ル ギー ベ ス ト ミ ック ス の コ ミュ ニ テ ィ を地 域 ご と に作 っ て い くこ と が 必 要で あ る 。 この 新 し い 意 味で の ベ ス トミ ッ ク ス は、 各 地 域 で最 も 環 境 負荷 が 小 さ くか つ エ ネ ルギ ー コ ス ト が最 小 に な るよ う な 最 適な 解 で も ある 。 こ う した エ ネ ル ギー シ ス テ ムの 再 構 築 こ そ今 ま さ に 望ま れ て い る。 そ の 一 つの ソ リ ュ ーシ ョ ン が マイ ク ロ グ リッ ド ( 需 要 地系 統 ) と もい わ れ る 新し い ネ ッ トワ ー ク 概 念の 導 入 で ある 。 さ て、 こ の マ イク ロ グ リ ッド と は ど うい う も の な のか 。 一 口 で言 え ば 、 さま ざ ま な 新エ ネ ル ギ ーを 組 み 合 わせ て IT 技術 を フ ル に 活用 し て 制 御・ 運 用 し 、安 定 し た 電力 ・ 熱 供 給を 行 う シ ステ ム の こ とで あ る 。 す でに 述 べ た よう に 一 般 に新 エ ネ ル ギ ー は 出 力 が 安 定 し な い 等 、系 統 側 に 影 響 を 与 え る と い う 課 題 を 抱 え て い る が 、 変 動電 源 で あ る自 然 エ ネ ルギ ー と そ の他 の 新 エ ネ ルギ ー を 適 切に 組 み 合 わせ 、 こ れらを制御 するシ ステム を開発す ること により 、コミュ ニティ 内で安 定した電 8 力 ・熱 供 給 を 行う こ と が 可能 と な り 、既 存 の 主 系 統へ 及 ぼ す 負荷 を 低 減 させ る こ と が で き 、ま さ に 系 統 と 分 散 型 の 双 方 に wi n− wi n の 関 係 を も た ら す こ と に な る 。 マ イク ロ グ リ ッド は 、 対 象エ リ ア の 分散 型 電 源 と 負荷 を 組 み 合わ せ て 自 立的 に 運 用 する も の で 、グ リ ッ ド 内の 需 給 制 御が 重 要 な 課 題と な っ て いる 。 こ の よう な 課 題 に対 応 す る ため 、 日 立 製作 所 で は 、高 追 従 型 需 給制 御 シ ス テム を 開 発 した 。 こ のシ ス テ ム では 、 負 荷 変動 に 対 す る高 い 追 従 性 を実 現 す る ため 、 高 精 度の 短 期 需要 予 測 に 基づ く 発 電 目標 の 設 定 や、 分 散 型 電 源の 出 力 応 答が 遅 れ る こと な ど に よっ て 生 じ る累 積 偏 差 を補 正 す る 方法 を 採 用 し てい る 。 リ アル タ イ ム シミ ュ レ ー タで 分 散 型 電源 を 模 擬 した 検 証 試 験で も 、 マ イ クロ グ リ ッ ド内 の 分 散 型電 源 と 負 荷 に 対 し 、 短 い 時 間 間 隔 で 需 給 バ ラ ン ス が 取 れ る こ と を 確 認 し た 。( 図 − 6 ) 地 域の エ リ ア 開発 へ の 広 い適 用 を 図 る為 、 規 制 の 緩和 と と も に低 コ ス ト の機 器 開 発や 高 密 度 大容 量 蓄 電 装置 の 開 発 が必 要 で あ り 更な る 研 究 開発 を 進 め て行 き た い。 図 −6 高 追 従型 需 給 制 御シ ス テ ム を応 用 し た マ イク ロ グ リ ッド 5 )都 市 の 情 報イ ン フ ラ と都 市 の 設 備を 見 守 る セ ンサ ー ネ ッ ト技 術 ① ユビ キ タ ス 社会 を 実 現 する 情 報 イ ンフ ラ サ ー ビ スプ ラ ッ ト フォ ー ム 情 報・ 通 信 技 術が 日 常 生 活の さ ま ざ まな 物 や 空 間に ま で 浸 透 し始 め て お り、 誰もが時 間や場 所の制 約を受 けずに 情報シ ステム を利用 するこ とが可 能に な りつ つ あ る 。し か も 、 変化 が 予 測 でき な い 社 会で の 情 報 イ ンフ ラ の 構 築は 個々の機 器やソ フトを 柔軟に 組み合 わせる ことに よりい つの時 代も対 応可 能 なイ ン フ ラ でな く て は なら な い 。 この よ う な ユビ キ タ ス 情 報社 会 と 呼 ばれ る 時代 を 先 取 りし 、 総 合 力に 基 づ い た多 く の ユ ビキ タ ス 関 連 ソリ ュ ー シ ョン を 開発 が 進 み 、同 時 に 、 さま ざ ま な 生活 空 間 か らの ア ク セ ス を充 実 さ せ るた め 、サ ー ビ ス プラ ッ ト フ ォー ム の 開 発、 拡 充 が 進ん で い る 。 その 目 的 は 、単 に 個別 の サ ー ビス や ア ク セス 手 段 の 数を 豊 富 に す るこ と で は なく 、 多 種 多様 な 応用 分 野 の 範囲 を 横 断 して 、 誰 も が安 全 か つ 容 易に 利 用 で き る IT 基 盤を 9 実 現す る こ と にあ る 。 ユ ビキ タ ス ア クセ ス フ レ ー ムワ ー ク と 呼ぶ こ の IT 基 盤 は、 電 子 タ グや 車 載 端 末な ど の デ バイ ス 群 と 企業 情 報 シ ス テム と を セ キュ ア に、 か つ シ ーム レ ス に 接続 、 連 携 する ソ フ ト ウェ ア 群 で あ り、 ユ ビ キ タス 情 報社 会 で の ビジ ネ ス や 生活 を 広 く 支援 し て い く 。 ② ビル 内 統 合 IP ネ ット ワ ー ク ビ ル内 の ネ ッ トワ ー ク も 従来 の 音 声 ・電 話 系 、 映像 系 、 デ ー タ系 と 分 か れ た ネ ッ ト ワ ー ク が I P 化 に よ り 一 本 化 に 統 合 さ れ る 方 向 に あ る 。こ れ に よ り 、 コストの 低減と ともに 将来へ の拡張 性や変 更への 対応が 格段に 容易に なる と とも に 、 音 声と 映 像 や デー タ の 混 合し た 情 報 の取 扱 い が 飛 躍的 に 向 上 し更 な る 価 値 を 高 め た コ ン テ ン ツ と し て 利 用 で き る 。IP 化 ハ ー ド の 開 発 と と も に 、 ミ ック ス し た 情報 を 扱 え るフ ュ ー ジ ョン ・ デ ー タベ ー ス 、 ネ ット ワ ー ク 管理 な どの 開 発 を 推進 し て い く予 定 で あ る。 図 −7 生 活 と IT とを つ な ぐ 新要 素 を サ ービ ス プ ラ ッ トフ ォ ー ム ③ セン サ ネ ッ ト応 用 社 会 シス テ ム 人 ・モ ノ ・ 環 境の 情 報 を 、セ ン サ ネ ット ワ ー ク で網 羅 的 に 取 得・ 伝 送 す る こ と に よ り 、都 市 の 安 全 、安 心 、快 適 を 実 現 す る シ ス テ ム 開 発 を 進 め て い る 。 ノ ー ド と 言 わ れ る 中 に 温 度 や 振 動 、脈 拍 、ひ ず み な ど を 計 測 す る セ ン サ ー と 、 マ イ コ ン 、伝 送 す る 無 線 が 組 み 込 ま れ 、あ ら ゆ る も の や 人 、設 備 に つ け ら れ 、 それらは お互い にネッ トワー クを構 成し社 会シス テムを コント ロール する こ とが 可 能 と なる 。 現 在 は、 ノ ー ド の大 き さ や 無線 の 標 準 化 、電 池 の 寿 命な ど 課 題 が あ る が 2 01 0 年 に 向 か い 実 用 化 が 進 む べ く 開 発 を 進 め る 予 定 で あ る 。 10 図 −8 図 −9 ビ ル 内統 合 I P ネッ ト ワ ー ク セ ン サネ ッ ト を 応用 し た 社 会シ ス テ ム ④ 賑わ い ・ コ ミュ ニ ケ ー ショ ン 技 術 「 持 続 発展 可 能 な 街」 づ く り の目 標 は 、 都 市に 住 む す べて の 人 々 が豊 か な 経 済生 活 を 営 み、 優 れ た 文化 を 共 有 し、 魅 力 あ る社 会 を 持 続 的、 安 定 的 に維 持 す る こ と を 可 能 に す る 社 会 基 盤 を 構 築 す る こ と で あ る 。 そ れ は 、「 都 市 を 人 間の 手 に 取 り戻 す 」 取 組み と 言 い 換え る こ と もで き る 。 そ のた め に は 都市 に 暮ら す 様 々 な世 代 の 人 々、 外 国 人 や体 の 不 自 由な 人 も 含 め たそ の 都 市 を訪 れ る様 々 な 人 々が 、 安 全 、安 心 、 快 適に 過 ご す こと が で き る ため に は 、 スト ッ ク型 都 市 で 、ハ ー ド と ソフ ト の フ ィー ド バ ッ クに よ り ス ト ック の 見 直 しや 付 加価 値 付 け がた え ず 繰 り返 さ れ 、 お互 い が 相 乗効 果 を 発 揮 する こ と に より 、 は じめ て 持 続 発展 可 能 な 都市 と し て いき 続 け る こ とが 出 来 る 。そ こ に は 人間 11 の 交流 の 元 、 文化 、 伝 統 、芸 術 、 デ ザイ ン 、 自 然、 サ ー ビ ス など 住 む 人 ・働 く 人が 得 ら れ る価 値 が 評 価さ れ る 。 賑わ い と か 安心 安 全 、 高 齢化 社 会 で の福 祉 サー ビ ス や 芸術 ・ 文 化 、コ ミ ュ ニ ケー シ ョ ン がま す ま す 必 要と な り 技 術面 の 開発 も 必 要 とな っ て い る。 (a) 集客 を 支 援 する デ ィ ス プレ ー 技 術 賑 わ い や 潤い を 求 め て人 が 集 ま る仕 掛 け は 街 づく り そ の もの で あ る 。そ の 為 に は 、「 コ ア 」 の 魅 力 の 創 出 、 ビ ジ タ ー に も 利 用 し や す い 街 づ く り 、 プ ロ モ ーシ ョ ン 及 び PR 活 動 、人 材 育 成 とホ ス ピ タ リテ ィ の 醸 成 など 様 々 な 仕組 み とそ れ を 支 える ハ ー ド とソ フ ト が 必要 で あ る 。そ の 一 つ の 手段 と し て 、人 と のコ ミ ュ ニ ケー シ ョ ン を行 う 情 報 が重 要 と な っ てお り 、 映 像や 音 声 を 分か り 易く 楽 し く 伝え る 大 型 ディ ス プ レ ーが 開 発 さ れ てい る 。 例 えば 、 街 や 施設 、 ス ト リー ト を イ ンタ ラ ク テ ィブ に 結 び つ ける ユ ビ キ タ ス デ ィ ス プ レ ー や ミ ラ グ ラ フ ィ ー は P DP を 応 用 し た 新 時 代 の 参 加 型 情 報 端 末 で ある 。 ま た 紙の よ う に 街中 に 貼 れ ば、 時 間 帯 や時 間 帯 や 状 況に 応 じ た 情報 提供が実 現でき る電子 ペーパ ーは紙 の利便 性と書 き換え 自在な 液晶デ ィス プ レー の 特 性 を兼 ね 備 え た反 射 型 デ ィス プ レ ー 装 置で あ り 、 将来 紙 の 広 告媒 体 に置 き 換 わ る可 能 性 が 高い 。 こ れ らの 普 及 に より 、 消 費 型 の紙 媒 体 が 大幅 に 削減 で き る とと も に 3D や 超 大 型 表示 の 開 発 によ り 分 か り やす い 便 利 な案 内 ・表 示 端 末 が普 及 し て いく も の と 期待 す る 。 (b) 安 心・ 安 全 生 活支 援 セ キ ュリ テ ィ ー 技術 家 や マ ン ショ ン な ど 自宅 に い る とき は も ち ろ んの こ と 、 旅行 に 出 か ける 際 も 安心 し て 自 宅を あ け ら れる 環 境 、 さら に は 都 市を 構 成 す る 街路 、 公 園 など も 含 め た 公 共 空 間 の 安 全 確 保 の た め に 、「 く ら し 安 心 ソ リ ュ ー シ ョ ン 」「 エ リ ア 安 全 ソ リ ュ ー シ ョ ン 」 が 必 要 と な る 。 そ の 代 表 例 と し て ( 図 − 10 ) に 示 す ス ーパ ー 防 犯 灯を 開 発 中 であ る 。 小学校や 公園な どの路 地な どに低 層のカ メラ付 きの防 犯灯を 効果的 に 配 置し、不審者の監視とともに市民の見守りサービスを行 うシステムである。 従 来の 防 犯 灯 より も 低 層 で美 観 に 優 れ、 複 数 の ポー ル を シ ス テム 的 に 機 能さ せ より 高 い 防 犯機 能 を 発 揮す る の が 特徴 で あ る 。将 来 的 に は 無線 に よ る 動画 配 信で よ り 汎 用的 な 拡 張 性を 持 た せ る予 定 で あ る 。 12 図 −1 0 ス マー ト 防 犯 灯 3 −3 . 医 療 ・福 祉 支 援 技術 い つ で も どこ で も 個 人の 健 康 状 態を 見 守 る サ ービ ス の 実 用化 も 出 来 つつ あ る。 自 宅(健 康マ ン シ ョ ン)や 仕事 場 に い なが ら 健 康 状 態を 継 続 的 に管 理 し 、 疾病 の 早期発見 や未然 防止に繋 げるセ ンサー や監視 するセ ンターの 設備や いざと い う 時の 救 急 処 置を 行 う 機 関も 整 備 さ れつ つ あ る 。 こ こ で は 図 − 1 1 に マ ン シ ョ ン 内 に 健 康 管 理 セ ン タ ー を 設 け 、部 屋 内 の ト イ レ 等 に 設置 し た セ ンサ ー か ら 健康 情 報 を 収集 。 各 人 向 け の HP を 通じ て 、 健 康状 態 に 関す る 情 報 や、 改 善 提 案等 を 行 う 計画 を 示 す 。 健康情報管理センタ @部屋 ・健康モニタリング @トイレ ・排泄物・体重等計測 ・健康情報入力 @食事 ・メ ニュー情報収集 健康管理 DB ↓各人向けHPコンテンツ PC データ 分析 ↑血圧等測定結果 @健康管理センタ ・詳細健康診断等 ・総合的健康管理業務 不足栄養素の サプリメント提供 →各人の計測データ ←健康診断結果 分析結果 →各人の トレーニングメニュー ←トレーニング内容 健康診断結果 ↑排泄物計測結果 ↓各人の健康管理情報 (ITボード) 健康モニタリング端末 トイレ 健康管理センタ 健康相談 計測データ分析 健康診断 予防・改善提案 トレーニングジム トレーニング内容 健康診断 ←食事内容データ 食事 食事のメニューから 過剰要素と不足栄養素 を分析 牛しゃぶサラダ 推奨メニューを提示 豚肉野菜炒め HPにて 健康情報提供 (計測データ分析) 自宅にて血圧等 を測定し、 結果をセ ンタに送信 図 −1 1 排泄物等から健康情報収集 ITボードにて 健康情報入力 本人向けに情 報提供 医 療福 祉 シ ス テム 13 冷やし中華 自宅の P Cから入力 3 −4 . 通 訳 サー ビ ス 技 術 外 国 人 な ど が 訪 れ る ホ テ ル や 観 光 地 、駅 な ど に テ レ ビ 会 議 の 仕 組 み を 構 成 し 、 通 訳 を 介 し 案 内 サ ー ビ ス を 支 援 す る 事 業 と し て ( 図 − 12 ) に 示 す マ ル チ リ ン ガ ルサービスを開発した。本システムは、自宅にいる通訳者を事業 者が契約し、 IP テ レ ビ 電 話 を 介 し て 必 要 な と き に 通 訳 支 援 を 行 う も の で あ る 。 最 近 の 中 国 、 韓 国の 観 光 ブ ーム 傾 向 の 中、 観 光 立 国を 達 成 す る 為に も 必 要 な も の と 考 え る 。 図 −1 2 マ ルチ リ ン ガ ルサ ー ビ ス 4 .終 わ り に 都 市 や ま ち は 、本 来 そ れ ぞ れ 独 自 の「 顔 」を も た な く て は な ら な い 。そ の 顔 は 、 生 き生 き と 魅 力的 で 価 値 を発 信 し 続 けな く て は な らな い 。 ス トッ ク 型 社 会で の 都 市 が持 続 発 展 して い く た めに は 、 循 環型 環 境 、 長 寿命 の イ ン フラ 整 備 、 リニ ュ ー ア ル の 容 易 な 設 備 計 画 の ほ か 、ソ フ ト 面 で の デ ザ イ ン 、シ ン ボ リ ッ ク な 自 然 環 境 、 そ こで 過 去 に 展開 さ れ た 物語 な ど 、 芸術 、 文 化 、 行き 来 す る 人の コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン、 住 む 人 の生 活 習 慣 が重 要 で あ る。 そ し て 、 競合 す る 都 市と の 交 流 や地 方 都 市 との コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ンを 通 し 新 たな 創 造 と 進 化を 行 う べ く努 力 が 必 要で あ る。 経 済理 論 優 先 の民 間 企 業 任せ の 地 域 開発 を 進 め た 為の 弊 害 は 日本 国 内 で 数多 く 見 受 けら れ る 。 他の 都 市 や 国際 的 な 都 市と 差 別 化 す るテ ー マ を 、新 た に 設 定し 、 広 く 評価 さ れ る よう に す る こと は 容 易 では な い が 、 中期 ・ 長 期 的な 視 点 と 周辺 の 都 市 との 一 体 計 画に 基 づ く 視点 に 立 っ た街 づ く り 計 画を 立 案 し てい く こ と が求 め ら れ る。 街づ く り 支 援の た め に 新し い 情 報 、映 像 、 環 境 、省 エ ネ 、 保全 に 関 す るソ リ ュ ー ショ ン 技 術 が貢 献 す る こと を 期 待 する 。 14 次世代標準浄水器具の技術開発 斉藤 智樹(株式会社クロスポイント 代表取締役、 社団法人北九州青年会議所 副理事長) 1.背景 戦後の日本において水道の普及率はまだ低く、腸チフス、赤痢、コレラなどの 水 系 感 染 が 時 折 発 生 し て い た 。 GH Q の 指 示 に よ り 塩 素 消 毒 の 強 化 が 行 わ れ 、 水 道 水には塩素の注入が義務づけられた。水道には常時塩素を注入することが一般的 に な り 水 系 感 染 は 著 し く 減 少 し た 。ま た 量 的 な 対 応 を す る 為 に 旧 来 の 緩 式 濾 過( 図 − 1) か ら 急 速 濾 過 (図 − 2)の 浄 水 シ ス テ ム に 推 移 し て き た 。 現 在 、 わ が 国 の 水 道 水は、水道法により塩素または結合塩素で消毒を行い、給水栓水での遊離残留塩 量 が 0.1ppm 以 上 た だ し 、病 原 菌 に よ る 汚 染 の 疑 い が あ る と き や 水 系 感 染 流 行 時 は 遊 離 残 留 塩 素 0.2ppm 以 上 と 定 め ら れ て い る 。 図−1 緩速ろ過方式 図−2 急速ろ過方式 1 2.塩素消毒の長所と問題点 2−1.塩素消毒の長所 大量の水に対して安価で容易に消毒でき、残留効果があるため消毒効果が末 端まで行き届くこと。また遊離残留塩素の測定が容易で維持管理が容易なこと。 2−2.塩素消毒の問題点 しかしわが国では、戦後の産業の急激な進展に伴い自然環境の汚染が進み、 河川湖沼などの表流水や地下水の汚濁が起こった。特に大都市は地理的に河川 の下流域に位置することが多く、水源地も上流域の生活排水の流入など有機物 や、合成洗剤などによる界面活性剤の混入があり、原水として劣化は否めず塩 素の注入量も増加し、その増加と共にいろいろな問題が起こるようになった。 ま ず 水 道 水 中 に 発 癌 性 物 質 で あ る ト リ ハ ロ メ タ ン ( 図 − 3) の 発 生 が 起 こ っ た。 また工業排水などに混入することのあるフェノール類は、極微量でも塩素と 反応して強い臭気を持つクロロフェノールとなる。このように原水の劣化が進 むほど塩素化合物が発生するという悪循環が起こっている。 図−3 トリハロメタン 2 3.環境改善に向けて現状の問題点と解決策 現在、行政機関及び各地方自治体、民間団体により環境対策や水質保全に取り 組んでいるが、即効性は期待できない。 3−1.現状の問題点 日本の水道水は、飲料可能な水で、また通常は不自由無く利用出来る点は世 界 的 に 見 て も 大 変 優 れ て い る 。 し か し 2-2 で ふ れ た 事 の 他 に も 、 ビ ル や マ ン シ ョンなどでは受水槽に起因するカビ臭や配管の老朽化による鉄さびや赤水等、 必ずしも美味しくて安全な水とは言えなくなった。特に塩素は給水時において は消毒上必要であるが、家庭での使用時には高濃度の塩素は必要ない。塩素は 強力な酸化力を持っている為、ビタミン類を破壊し、元気な細胞を衰えさせる といわれている。水道水を加温した風呂やシャワーには過剰な塩素やトリハロ メタンが含まれている。かゆみや皮膚の赤みがひどくなるなど、アトピー性皮 膚炎や敏感肌の症状が悪化するのは、水道水に含まれるこうした有害物質が原 因ではないかと指摘されている。また塩素やトリハロメタンは温度が上がると 気化する為、湯気と一緒に吸引してしまうことなり、体内に侵入し蓄積した場 合などの影響も心配である。また生活様式の変化に伴い、住宅への温水洗浄便 座 の 普 及 率 ( 図 − 4) は 年 々 増 加 し て い る 。 身 体 の デ リ ケ ー ト な 箇 所 を 清 潔 に 保つために欠かせないものとなっている。水道水が洗浄する箇所は毛細血管が 集まった粘膜なので、有害物質は避けたいものである。さらに薄い皮膚を通し て体内に浸透するといわれており、温水にすることで有害物質の濃度も上昇し、 危険性も高まると指摘されている。 図−4 温水洗浄便座の普及率 3−2.水環境の現状の解決策 現代の水環境のなかで長年生活していくことは決して健康には良いもので はない。 飲料水は旧来の浄水器や、ミネラルウオーターなど自衛手段があるが、生活 水全体の水質改善には家屋の直前にてオール浄水の生活を実現するセントラ ル浄水器の開発が必要となってきた。 3 4.従来の浄水器とセントラル浄水器の違い セ ン ト ラ ル 浄 水 器 ( 図 − 5) は 従 来 の 卓 上 浄 水 器 や 、 ア ン ダ ー シ ン ク 型 浄 水 器 と大きな違いとして一日の使用量の違いがある。飲料専用の浄水器は濾過流量も 少 な く 、 使 用 量 も 30L/ 日 が 標 準 的 な 設 計 と な っ て い る が 、 セ ン ト ラ ル 浄 水 器 は 最 大 で 25L/ 分 、 浄 水 能 力 は 1 0 0 0 L/ 日 の 使 用 量 の 違 い が あ る 。 図−5 セントラル浄水器 5.まとめ 現代社会では、さまざまな要因による水源地の水質汚染が問題となり、対策が 急がれている。しかし現実の問題として半世紀にかけて汚染された環境は、一足 飛びには改善されない。各自治体による水道局も最善を尽くし安価で安全な水道 水の供給に取り組んでいる。環境悪化と塩素消毒に起因する有害物質の発生。供 給時には必要で、使用時には必要が無い塩素。そのような矛盾を抱えた水環境を 背景に、時代の消費者ニーズに対応する器具としてセントラル浄水器は誕生し、 次世代標準浄水器具として普及が始まっている。 4 ス テ ン レ ス 鋼 棒 を 用 い た RC 構 造 物 の 評 価 に 関 す る 研 究 五 十嵐 健 ( 学校 法 人 九 州国 際 大 学 次世 代 シ ス テ ム研 究 所 主任 研 究 員 ) 1 .研 究 の 位 置付 け 17 年 度 4 月 か ら 3 ヵ 年 間 で 国 土 交 通 省 住 宅・建 築 関 連 先 導 技 術 開 発 助 成 事 業 と し て ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 に よ る 建 築 用 超 高 耐 久 RC 造 の 開 発( 以 下 、共 同 開 発 と す る ) を ス テ ン レ ス メ ー カ ー 3 社・建 設 メ ー カ ー 2 社・ス テ ン レ ス 構 造 建 築 協 会 と 共 に 行 っ てい る 。 本 稿は 、 同 共 同研 究 に お いて 、 次 世 代シ ス テ ム 研 究所 が 担 当 した ス テ ン レス 鋼 棒 を 用 い た RC 構 造 物 の 評 価 に 関 す る 研 究 の 初 年 度 ( 17 年 度 ) の 実 施 内 容 ・ 成 果 お よび 共 同 開 発計 画 予 定 につ い て ま とめ た も の で ある 。 共 同開 発 は 、 コン ク リ ー トの 中 性 化 、外 部 か ら 侵 入す る 塩 化 物イ オ ン に より 鉄 筋 が 早期 に 腐 食 し、 コ ン ク リー ト が 予 想以 上 に 劣 化 する 現 象 が 建築 、 土 木 分野 に お い て観 察 さ れ てい る 。 一 方で 現 在 の 日本 に お け る 「ス ク ッ ラ プア ン ド ビ ルド 型 」 の 建築 物 か ら 、高 耐 久 ・ 長寿 命 で 良 好な 社 会 資 本 とな る 「 ス トッ ク 型 」 建築 物 へ の 転 換 が 求 め ら れ て い る 。ス ケ ル ト ン 住 宅 ( S I 住 宅 ) は 、 そ の 社 会 的 要 求 に 応 え る べく 提 案 さ れた も の で 、柱 や 梁 の よう な 構 造 的 な部 分 ( ス ケル ト ン ) を長 寿 命 化 し、 時 代 に より 要 求 が 変化 す る 内 装・ 設 備 部 ( イン フ ィ ル )の み を 造 り直 す こ と に よ り 建 物 全 体 を 長 持 ち さ せ 、 建 替 え に よ る 多 量 の 産 業 廃 棄 物 、 C O2 放 出 に よ る 環境 負 荷 を 低減 し て い こう と い う 試み で あ る 。 共 同開 発 で は 、ス テ ン レ ス鋼 鉄 筋 に よる 建 築 用 超 高耐 久 RC 造の 開 発 を 目的 と し て 、 そ の 鉄 筋 お よ び RC 構 造 物 に お い て ① 設 計・ 施 工 上 必要 と さ れ る基 本 特 性 の把 握 ② 耐 久性 の 定 量 評価 ③ RC 構 造 体 の 構 造 性 能 評 価 ④ 経 済的 、 環 境 負荷 上 の メ リッ ト の 算 出 を 実 施 し 、建 築 用 超 高 耐 久 R C 造 を 実 現 さ せ る 設 計・施 工 指 針 に つ な が る マ ニ ュ ア ル 案の 策 定 を 目標 と し て いる 。 2 .研 究 の 概 要 平 成 17 年度 実 施 内 容と し て ( 1) ス テ ン レス 鋼 鉄 筋 RC 造 集合 住 宅 の 経済 性 の 検 討 を行 い ・ 文 献 資 料 と 関 係 機 関 へ の ヒ ア リ ン グ に よ る RC 造 集 合 住 宅 の LC コ ス ト の 構 成 要 素 の 把 握 と 諸 元 の 設 定 を 行 い 、 概 略 L C コ ス ト 算 定 を 実 施 し て LC で の 経 済 特 性を 把 握 し た。 ( 2) ス テ ン レス 鋼 鉄 筋 RC 造 集合 住 宅 の 環境 性 能 の 検 討 ( 3 )( 1 ) の LC コ ス ト デ ー タ を 用 い て LC CO 2 ・ エ ネ ル ギ ー の 算 定 ・ 躯体 の 長 寿 命化 に よ る RC 構 造物 の 環 境 負荷 軽 減 効 果 を把 握 し た 。 1 技 術開 発 成 果 ( 1) ス テン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 造 集 合 住 宅の 経 済 性 の検 討 ・ ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 造 集 合 住 宅 の 建 設 コ ス ト は 、 S US − 4 10 を 使 用 し た 場 合 普 通鋼 鉄 筋 の 場合 と 比 較 し て 1 割 上 昇 する が 、LCC 現 在 価 値 (割 引 率 2%) で は 91 年 目以 降 か ら 1 割下 が り 、 長期 間 の 経 済性 に 関 す る 有効 性 が 検 証で き た。 ・S US − 3 04 の 場 合 は 、極 め て 耐 久 性 能 は 高 い も の の 普 通 鋼 鉄 筋 の 場 合 と 比 較 し て 、 建 設 コ ス ト で 2 割 以 上 上 昇 し 、 LCC 現 在 価 値 で の 効 果 も 少 な く 、 そ の 使 用 方法 、 使 用 部位 ・ 分 野 など を 検 討 する 必 要 が あ るこ と が 分 かっ た 。 ( 2) ス テン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 造 集 合 住 宅の 環 境 性 能検 討 ・RC 構 造 物 の 長 高 耐 久 化 に よ り 、 解 体 更 新 周 期 が 大 幅 に 長 く な る 事 に よ っ て LCC O 2 は 、 91 年 以 上 使 用 す る と 発 生 量 は 、 普 通 鋼 鉄 筋 の 場 合 と 比 較 し て 半 減 し その 効 果 が 大き い こ と が分 か っ た 。 以 上 、 H1 7 年 度 は 、 実 施 計 画 通 り の 成 果 が 得 ら れ た 。 H1 8 年 度 は 下 表 に 示 す 通 り 、よ り 高 強 度な ス テ ン レス 鋼 鉄 筋 の材 料 特 性 の 把握 、 促 進 試験 に よ る コン ク リ ー ト 中 ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 の 腐 食 特 性 の 把 握 、ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 梁 部 材 の 詳 細 な 構 造 性 能 の 把 握 、お よ び ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 に よ る R C 造 建 物 の 経 済 性 と 環 境 性 能 の 詳 細な 研 究 開 発を 実 施 す る予 定 で あ る。 表 −1 開発目標 年度 【 開発項目1】 SUS鉄筋の仕様 3 ヵ年 開 発 計 画 ①SUS鉄筋SSBA案の設定と大臣材料認定を取得準備 ②部位部材を特定し設計マニュアル案の作成 H17 H18 H19 SUS鉄筋鋼種選定の 高強度SUS(3 04N2・ 鉄筋継手・異種鋼材 ための機械的・物理的 4 10系)鉄筋材料特性 組合せ検討、性能 物性データの収集 データ収集・評価 データ評価 腐食環境下コンクリー ト中各種SUS鉄筋の 【 開発項目2】 コンクリートとSUS鉄筋 発錆状況基礎データ 収集準備と初期値採 との適合性 取 予定成果 ①SUS鉄筋の機械的・ 物理的物性データ集、 ②SUS鉄筋RC建物用 鉄筋仕様 腐食環境下コンクリー ①SUS鉄筋RC用コン 腐食環境下コンクリー ト中各種SUS鉄筋発 クリート工事マニュア ト中各種SUS鉄筋の 錆データ評価、コンク ル粗案 継時発錆・促進発錆 リート工事マニュアル データ収集 案作成 SUS鉄筋RC梁部材構 SUS鉄筋RC梁部材構 SUS鉄筋RC柱部材構 【 開発項目3】 造性能-靭性・せん断 造性能-靭性・せん断 造性能評価、設計法・ SUS鉄筋補強RC部材 強度・付着強度-の基 強度・付着強度・耐火 解析法のひょうか の部材性能 性能-の評価 礎データ採取 ①LCコストの構成調 ①SUS鉄筋RC建物の 経済性評価手法の検 査と諸元設定 【 開発項目4】 SUS鉄筋を用いたRC ②RC造建物のCO2・ 討 エネルギー原単位およ ②CASBEEによる構工 構造物の評価 びアルゴリズム検討 法システム改善検討 2 ①SUS鉄筋RC建物の 経済優位性市場形成 手法の検討 ②高耐久性技術の社 会効果検討 ①SUS鉄筋加工マニュ アル粗案 ②SUS鉄筋RC設計マ ニュアル粗案 SUS鉄筋RC建物の ①経済性検証資料 ②環境性能評価資料 ③市場戦略案 3 .ラ イ フ サ イク ル コ ス トの 諸 元 の 設定 と 割 引 現 在価 値 に よ る経 済 性 の 予備 検 討 3 −1 . 検 討 方法 お よ び 条件 の 設 定 a. LCC の 算 定 条 件 建 築 の L CC の 発 生 は 建 築 物 の 種 別 に よ っ て 異 な る が 、 こ こ で は R C 構 造 の 主 要 用 途 で あ り 、 か つ LCC の 発 生 パ タ ー ン お よ び C O 2 の 発 生 量 が 把 握 し や す い 集 合 住 宅 で 検 討 を 行 な う 。 な お 、 L CC の 発 生 パ タ ー ン と 発 生 量 に つ い て は 「 住 宅 と 長 寿 命 化 と 資 源 の 循 環 使 用 の 効 果 」 2 )( 以 下 「 長 寿 命 化 の 効 果 」 研 究 と呼 ぶ ) で 使用 し た 設 定条 件 を 準 用す る 。 ス テ ン レ ス 鋼 RC 造 構 造 物 の 耐 久 性 は 物 理 的 に は 2 00 年 以 上 あ る と 言 わ れ て い る が 、現 在 の 日 本 に お け る R C 造 集 合 住 宅 の 平 均 寿 命 は 4 5 年 程 度 3) であ り 、解 体 ・ 更 新を 行 な わ ない こ と に よる 経 済 特 性が 安 定 的 に 現れ る 期 間 を考 慮 し 、 従 来 型 R C 造 集 合 住 宅 の 3 更 新 期 間 で あ る 18 0 年 間 で 検 討 を 行 な う 。 算 定式 は 表 − 2 を 使 用 し 、利 子 率 に つい て は 、 安定 成 長 期 の 指標 と し て 使 わ れ て い る 実 質 利 子 率 2% を 使 用 す る 。 ( 実 質 利 子率 は 利 子 率 から 物 価 上 昇率 の 影響 を 除 外 した も の で 、工 事 費 の デフ レ ー タ ―が ほ ぼ 物 価 のそ れ に 連 動す る 建 築 工 事 の L CC を 検 討 す る 場 合 、 将 来 の 発 生 コ ス ト を 現 価 で 適 用 す る こ と が 出 来 る 。 4 )) 表 −2 LC C の 算 定 式 LCC現在価値の算定式 T Ct 1) ( C p (1 i t 1 * ( t 1) ) LCC年等価額の算定式 実質金利の算定式 i* (1 i* ) T T Ct C (2) R * T (1 i ) 1 t1 (1 i* ) t (1 i ) (1 j ) x (3) i* 1 ただし、CpはLCC現在価値、Crは年等価額、t年後に発生する費用 をCt、実質利子率をi*、検討期間をT、物価上昇率をJ、貸出金利をix とする。 3 b. 改 装 ・ 更 新 モ デ ル と 工 事 費 割 合 の 設 定 集合住宅の改装工事には、各自が個別に行なうイ ンフィル部分の工事と、 管 理組 合 が 主 体と な っ て 行な う 共 用 部分 の 工 事 が ある 。 イ ン フィ ル 部 分 の工 事 は家 族 の ラ イフ ス テ ー ジの 変 化 に 応じ て 行 な わ れる 事 が 多 いが 、 共 用 部分 の 大 規 模 修 繕 は 13 年 ∼ 18 年 周 期 で 各 部 位 の 機 能 の 劣 化 に と も な っ て 行 な わ れ る 。こ こ で は そ の 両 者 を 図 − 1 の よ う 15 年 毎 の 発 生 に 設 定 し 、イ ン フ ィ ル 部 分の 改 装 は 結婚 に よ る 住宅 取 得 、 子供 の 成 長 によ る 子 供 部 屋確 保 等 の ため の 部分 改 装 、 子供 の 独 立 を機 に 行 な う成 熟 期 の 生活 に む け た 改装 と 機 器 の更 新 、後 期 高 齢 期 の 介 護 の た め の 部 分 改 装 、8 0 代 後 半 で の 住 み 手 の 死 亡 に よ る 次 世 代 へ の 継 承 に よ っ て 行 わ れ る 改 装 と い う 60 年 の サ イ ク ル 設 定 し た 。( 図 − 1 参 照 )。 な お、 光 熱 費 およ び 維 持 管理 費 は 従 来型 集 合 住 宅と 同 一 条 件 で発 生 す る た め 検討 対 象 か ら除 い た 。 20代後半 ライフステージ 従来型集合住宅―45年更新 長寿命型集合住宅 図 −1 40代前半 50代後半 △ (子供の結婚) △ (結婚自立) ○ 70代前半 80代後半 (夫婦ともに死亡) ○ × 新築 ○ 部分改修(2) 部分改修(1) △ △ 建替え □ 新築 部分改修(2) 部分改修(1) 大規模改修 部分改修(2) * 継承 住 み 手の ラ イ フ ステ ー ジ と 改装 ・ 建 替 え のパ タ ー ン 従 来 型 集 合 住 宅 は 、 現 状 の 集 合 住 宅 の 平 均 寿 命 と さ れ て い る 45 年 を 更 新 周 期 と し て 設 定 し 、 ス テ ン レ ス 鋼 RC 造 構 造 物 は 1 80 年 間 の 検 討 期 間 内 は 更 新 しな い も の とす る 。 改 修・ 更 新 の 工事 内 容 に つ いて は 表 − 3 の よ う に 設定 し た。 表 −3 改 善 ・更 新 の 工 事内 容 名称 工事内容 新築(各住宅共通) 既存建屋の解体と新材による建築 長寿命型住宅 従来型集合住宅 大規模改修 (45年周期) 外部要因に よる躯体の一部変更、住戸および共用部外 装の分解・補修と、世代交代に よる住戸内装の解体と 全面更新 部分改修 (1) (30年周期) 外装の補修、家族構成の変化による住戸間仕切の変 更、内装・住宅機器の更新 部分改修 (2) (15年周期) ライフステージの変化による住戸間仕切の一部変更、 内装仕上の更新 部分改修 (1) (30年周期) 外装仕上の更新、家族構成の変化による住戸間仕切り の変更、内装・住宅機器の更新 部分改修 (2) (15年周期) 外装仕上の更新、ライフステージの変化に よる住戸間 仕切の一部変更、内装仕上の更新 4 改 装 工 事 費 は 新 築 工 事 費 を 100 と し た 指 数 で 表 し 、 表 − 4 に 示 す 。 長 寿 命 型 集 合 住 宅 の 躯 体 部 分 は 1 80 年 間 解 体 更 新 を 行 な わ な い が 、 共 用 部 分 は 従 来 型 集合 住 宅 と 同一 条 件 と する た め 46 年 目 ご と に全 面 改 修 を 行な う 設 定 とし た 。た だ し 、 共用 仕 上 げ につ い て は 、鉄 筋 の 発 錆に よ る 躯 体 のひ び 割 れ が無 い た め 外 壁 の 損 傷 が 少 な く な る こ と を 考 慮 し 、 部 分 改 修 (1 )( 2 ) に つ い て は 従 来 型 の 改 修 費 が 新 築 工 事 費 の 1 / 2 で あ る の に 対 し 1/ 4 に 低 減 し た 。ま た 、 イ ンフ ィ ル 部 分で あ る 住 戸内 装 ・ 設 備は 、 家 族 のラ イ フ ス テ ージ の 変 化 に応 じ てお こ な わ れる た め 、 従来 型 集 合 住宅 と 同 一 条件 で 行 な わ れる も の と した 。 集 合住 宅 の 部 位別 の コ ス ト割 合 に つ いて は 、 最 近の 建 設 社 会 にお け る コ スト 計 画資 料 と 文 献 5) を 参 考 に表 − 5 のよ う に 設 定し た 。 表 −4 名称 新築(各住宅共通) 大規模改修 (46年目) 部分改修 (1) 長寿命型集合住宅 (31年目) 部分改修 (2) (16年目) 部分改修 (1) (31年目) 従来型集合住宅 部分改修 (2) (16年目) 表 −5 改 修 ・更 新 工 事 割合 工事割合(新築時の部位別コストに対する) 躯体構造 共用仕上 共用設備 住戸内装 住戸設備 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 0.25 1.00 1.00 − − − 0.25 0.50 1.00 1.00 − 0.25 0.50 0.50 0.50 − 0.50 0.50 1.00 1.00 − 0.50 0.50 0.50 0.50 集 合 住宅 の コ ス ト構 成 共用部分(スケルトン) 構造躯体 共用仕上げ 共用設備 コスト割合 35 15 10 部位 5 住戸部分(インフィル) 住戸内装 住戸設備 30 10 c. ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 と コ ン ク リ ー ト の 価 格 設 定 従 来型 集 合 住 宅の 建 築 コ スト は 、 文 献資 料 6) よ り 2 00 4 年 度 の マ ン シ ョ ン 工 事 価 格 の 全 国 平 均 15 . 4 万 円 / ㎡ を 参 考 に 1 5 万 / ㎡ に 設 定 し た 。 構 造 躯 体におけ る鉄筋 の価格 はメー カーヒ アリン グより 実際に 使われ ている 鉄筋 価 格 ・ 鉄 筋 量 を 参 考 に 普 通 鋼 鉄 筋 5 万 円 / t 、 S US -410 鉄 筋 20 万 円 / t 、 SUS -30 4 鉄 筋 4 0 万 円 / t に 設 定 し 、建 築 構 造 物 の 建 築 単 価 を 算 定 す る と 表 -6 の よう に な る 。ス テ ン レ ス鋼 鉄 筋 を マン シ ョ ン 建設 工 事 に 与 える 影 響 と して 、 従 来 型 集 合 住 宅 に 対 す る 建 築 価 格 の 上 昇 は 、 S US − 41 0 鋼 で は 11 . 0% 、 SUS − 3 04 鋼 で は 25 . 7 % と な る 。 こ れ を も と に 、 各 集 合 住 宅 の 部 位 別 コ ス ト 構 成 をま た 、表 −8 の よ うに 設 定 し た。な お 、躯体 工 事 に 与え る 影 響 は、表 −7 の よ う に SU S-4 10 鋼 で は 2 7 . 5 % 、 SU S- 30 4 鋼 で は 64 . 2 % の 上 昇 と な る 。 表 −6 鉄 筋 単価 の 建 築 単価 に 与 え る影 響 種別 価格(円/t) 価格(円/㎡) 価格差(円/㎡) 建築単価上昇率 鉄筋単価 50000 5500 0 − SUS-410 200000 22000 16500 11.0% SUS-304 400000 44000 38500 25.7% 建築単価=15万円/㎡(集合住宅単価)出展:JBCI2004版による 鉄筋量=0.11t/㎡ (材料歩掛り:メーカーヒアリングによる) 表 −7 鉄 筋 単価 の 躯 体 工事 単 価 に 与え る 影 響 種別 価格(円/t) 鉄筋単価 50000 SUS-410 200000 SUS-304 400000 躯体単価=15万円/㎡×0.4=6万円 表− 8 部位 従来型集合住宅 SUS-410 SUS-304 価格(円/㎡) 価格差(円/㎡) 躯体単価上昇率 5500 0 − 22000 16500 27.5% 44000 38500 64.2% 住 宅の 部 位 別 コス ト 構 成 共用部分(スケルトン) 構造躯体 共用仕上げ 共用設備 35 15 10 46 15 10 61 15 10 6 住戸部分(インフィル) 住戸内装 住戸設備 30 10 30 10 30 10 3 − 2 . LC C の 比 較 a. LCC 累 計 値 検 討 に 当 た っ て 、 ま ず 1 80 年 間 の L CC の 累 計 値 を 算 定 す る と 、従 来 型 集 合 住 宅 と SU S − 41 0 鋼 、SU S − 30 4 鋼 の 2 種 類 の ス テ ン レ ス 鋼 を 使 用 し た R C 造 集 合 住 宅 ( 以 下 、 SU S − 410 集 合 住 宅 、 SU S− 304 集 合 住 宅 ) の LCC 累 計 値 は 図 − 2 の よ う に 、各 ス テ ン レ ス 鋼 RC 造 集 合 住 宅 の 従 来 型 集 合 住 宅 に 対 す る 比 は 図 − 3 の よ う に な る 。初 期 段 階 で は 、ス テ ン レ ス 鋼 RC 造 集 合 住 宅 は 従 来 型 集 合 住 宅 よ り 不 利 に な る が 、 従 来 型 住 宅 の 1 回 目 の 更 新 期 で あ る 46 年 目 以 降 は 有 利 に な り 、2 回 目 の 更 新 期 で あ る 9 1 年 目 以 降 は 2 割 近 く 有 利 に な る 事 が わ かる 。 各住宅の新築コストを100とした指数 800 SUS-410 700 SUS-304 LCC累計値 600 従来型集合住宅―45年 500 400 300 200 100 0 1 16 31 図 −2 46 61 76 91 106 121 136 151 166 181 年 各 集 合 住 宅 の LC C 累 計 値 ( 1 80 年 間 ) 実効利子率0% 1.40 1.20 1.00 0.80 0.60 0.40 SUS-410 SUS-304 従来型集合住宅―45年 0.20 0.00 0 図 −3 20 40 60 80 100 120 140 160 180 年 従 来 型 集 合 住 宅 対 す る LC C 累 計 値 の 比 ( 1 80 年 間 ) 7 b. LCC 現 在 価 値 ( 実 質 利 子 率 2 % ) し かし 、 経 済 環境 を 安 定 性長 期 と し た場 合 の 実 質 利子 率 を 2%で 各 住 宅 の LC C 現 在 価 値 を 算 定 し 図 − 4 に 示 し 、 従 来 型 集 合 住 宅 に 対 す る 2 つ の ス テ ン レ ス 鋼 R C 造 集 合 住 宅 の 比 を 図 − 5 に 示 す 。 S US − 4 10 集 合 住 宅 は 、 初 期 段 階 で は、 従 来 型 集合 住 宅 よ り不 利 に な るも の 1 回 目 の 更新 期 と し た 46 年 目に お い て 有 利 に な り 、 18 0 年 間 で は 8 % 程 度 有 利 に な る 。 こ れ は 、 毎 年 の 住 宅 コ ス ト の 負 担 ( 年 等 価 額 ) が 8 % 軽 減 さ れ る こ と を 表 し て い る 。 ま た SU S− 30 4 集 合 住 宅 は 2 回 目 の 更 新 期 で あ る 91 年 目 か ら 有 利 に な る が わ ず か で あ り 明 確な 優 位 性 はで な い 。 各住宅の新築コストを100とした指数 300 LCC累計値 250 200 150 100 SUS-410 SUS-304 従来型集合住宅―45年 50 0 1 16 31 図 −4 46 61 76 91 106 121 136 151 166 181 年 各 集 合 住 宅 の LC C 累 計 値 ( 1 80 年 間 ) 実効利子率2% 1.40 1.20 1.00 0.80 0.60 0.40 SUS-410 SUS-304 0.20 従来型集合住宅―45年 0.00 1 16 図 −5 31 46 61 76 91 106 121 136 151 166 181 年 従 来 型 集 合 住 宅 対 す る LC C 累 計 値 の 比 ( 1 80 年 間 ) 8 c. ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 の 使 用 を 半 分 に し た 場 合 SUS − 3 04 集 合 住 宅 に お い て は 、現 在 価 値 で の 明 確 な 優 位 性 が み ら れ な か っ た ため 、 ス テ ンレ ス 鋼 鉄 筋の 使 用 を 半分 に し た 場合 に つ い て も検 討 す る 。こ れ は、 ス テ ン レス 鋼 の 使 用が 発 錆 に よる 劣 化 の 防止 に あ る と する な ら 、 雨水 侵入の少 ない住 戸内の 隔壁や 梁には 普通鉄 筋を使 用する ことを 想定し たも の で あ る 。 そ の 18 0 年 間 の LC C 現 在 価 値 を 図 − 6 に 、 従 来 型 集 合 住 宅 に 対 す る ス テ ン レ ス 鋼 R C 造 集 合 住 宅 の 比 を 図 − 7 に 示 す 。 S US − 4 10 集 合 住 宅 、 SUS − 3 04 集 合 住 宅 と も に 初 期 段 階 で 従 来 型 集 合 住 宅 よ り 不 利 に な る が 、 第 一 回 目 の 従 来 型 集 合 住 宅 の 更 新 期 で あ る 46 年 目 以 降 は 有 利 と な る 。 そ の 優 位 性 は 、 SU S − 410 集 合 住 宅 で 1 3 % 、 SU S− 304 集 合 住 宅 で 8 % と も 1 割 前 後 に な る。 各住宅の新築コストを100とした指数 300 LCC累計値 250 200 150 100 SUS-410 1/2 SUS-304 1/2 従来型集合住宅―45年 50 0 1 図 −6 16 31 46 61 76 91 106 121 136 151 166 181 年 実 質 利 子 率 2 % と し た と き の LC C 累 計 値 ( 18 0 年 間 ) 実効利子率2% 1.20 1.00 0.80 0.60 0.40 SUS-410 1/2 SUS-304 1/2 0.20 従来型集合住宅―45年 0.00 1 図 −7 16 31 46 61 76 91 106 121 136 151 166 181 年 実 質 利 子 率 2 % と し た と き の LC C 累 計 値 比 ( 18 0 年 間 ) 9 4 . 築 の 長 寿 命 化 に よ る C O2 削 減 効 果 の 検 討 4 −1 . 検 討 方法 お よ び 条件 の 設 定 a CO 2 発 生 量 の 算 定 方 法 次 に ス テ ン レ ス 鋼 RC 造 構 造 物 の 長 寿 命 化 に よ る CO 2 の 発 生 量 の 削 減 効 果 を 検 討 す る 。 た だ し 、 ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 と 普 通 鋼 鉄 筋 の 生 産 時 の CO 2 の 発 生 量 は 同 一 で 前 項 で 算 出 し た 新 築 価 格 15 万 円 / ㎡ と し 、 従 来 型 集 合 住 宅 と 長 寿 命 型 集 合 住 宅 の 改 装 ・ 建 替 え の LCC コ ス ト の 違 い か ら CO 2 の 発 生 量 を 算 定 す る。 建 設 コ ス ト か ら C O2 の 発 生 量 を 算 定 す る 方 法 に つ い て は 「 良 質 な 住 宅 の 普 及 に よ る CO 2 削 減 効 果 の 考 察 」7 ) で 行 な っ た 方 法 に 準 拠 し 、産 業 連 関 表 を 使 っ て算 出 し た 各材 料 の 生 産・ 輸 送 の プロ セ ス で 使用 し た エ ネ ルギ ー の 石 油換 算 値 か ら 発 生 し た C O2 の 値 8 ) を 使 用 し 、 今 回 使 用 し た 各 部 位 の 主 要 製 品 と CO 2 発 生 量 を 表 − 9 に あ げ る 。な お 、鉄 筋 コ ン ク リ ー ト の CO 2 発 生 単 位 は 、主 材料であ る生コ ンクリ ートと 鉄筋の 発生炭 素量を コスト 比から 求めた 値を 使 用し 、 そ の 値を 表 −10 に 示す 。 以 下の 検 討 で はこ の 部 位 別発 生 量 を 使用 す る。 な お、 建 築 価 格は 時 間 と と も に 変 化 す る が 、 こ こ で は 現 在 の 産 業 規 模 や CO 2 発 生 量 と の 比 較 を 目 的 と し て い る た め 、 建 設 単 価 は 現 状 の ま ま 変 化 し な い も の と 仮 定 し 、 LC C の 算 定 は 改 装・ 更 新 コ スト の 累 計 値を 用 い る 。 ま た 、 CO 2 発 生 量 の 大 気 中 で の 滞 留 期 間 は 最 大 2 00 年 と さ れ て い る た め 、 検 討 期 間 に つ い て LC C 算 定 設 定 条 件 と 同 じ く 18 0 年 間 で 検 討 を 行 な う 。 表 −9 部位 CO 2 発 生 量 の 部 位 別 設 定 原 単 位 構造躯体 産業部門名称 共用仕上げ 共用設備 その他の建設用土 生コンクリート 石製品とその他の 配管工事付属品・粉 +鉄筋 非鉄金属製品の平 末治金製品・道具 均値 CO2排出量 (kg−CO2/百万円) 4,767 1,714 表 −1 0 種別 コンクリート 鉄筋 構造躯体 1,474 住戸内装 住戸設備 木製建具 配管工事付属品・粉 末治金製品・道具 1,111 1,474 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト の CO 2 発 生 量 単価 (円/㎥,円/t) 量 (㎥/㎡、t/㎡) 単価 (円/㎡) CO2排出量 (kg−CO2/百万円) 13,000 50,000 ー 0.61 0.11 ー 7,930 5,500 ー 3,351 1,518 2,600 10 ま た、 設 定 の 妥当 性 を 検 証す る た め に、 住 宅 建 築( 非 木 造 ) と各 部 位 か ら算 定 し た CO 2 発 生 量 の 値 を 算 出 し 図 − 8 に 示 す 。2 つ の 値 を 比 較 す る と 、全 体 の 単 位 あた り 発 生 量の 差 が 1 割以 下 で あ るこ と 、 部 位 別発 生 割 合 の中 で 大 き な値 を 占める構造躯体が全体の約 7割で文献データ9) とも近似していることなどか ら 、本 検 討 レ ベル の 原 単 位の 設 定 と して は 概 ね 正 しい と し て 、以 下 の 検 討で は こ の部 位 別 発 生量 を 使 用 する 。 住宅建築(非木造) 構造躯体 部位別累計値 (kg-CO2/100万円) 共用仕上げ 共用設備 住戸内装 住戸設備 1668.544993 住宅建築(非木造) 0 600 CO2 発生量(kg−CO 2 /100万円) 図 −8 1,200 1,800 2,400 部 位 別累 計 値 と 非木 造 設 住 宅の 比 較 11 3,000 4 − 2 . 長 寿 命 型 集 合 住 宅 の CO 2 削 減 効 果 の 算 定 a. LCC O 2 の 算 定 LCC の 値 か ら 表 − 8 の 原 単 位 を 使 っ て LC CO 2 の 値 を 算 定 し 、累 計 値 を 示 し た の が図 − 9 で あり 、 長 寿 命型 集 合 住 宅の 従 来 型 集合 住 宅 に 対 する 割 合 を 示す と 図 − 10 の よ う に な る 。 更 新 頻 度 の 違 い に よ る 累 計 発 生 CO 2 量 は 、 長 寿 命 型 集 合 住 宅 は 長 期 的 に は 6 割 程 度 に 削減 さ れ る こと が わ か る。 3000 炭素発生量(kg-C0 2 /㎡) 長寿命型集合住宅 2500 従来型集合住宅―45年 2000 1500 1000 500 0 1 16 31 46 61 図 −9 76 91 106 121 136 151 166 181 経過年数(年) 住 宅 の 累 計 CO 2 発 生 量 従来型集合住宅に対する累計発生比 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 長寿命型集合住宅 0.2 従来型集合住宅―45年 0.0 1 16 31 46 61 図 −1 0 76 91 106 121 136 151 166 181 経過年数(年) 住 宅 の 累 計 CO 2 発 生 量 の 比 12 さ ら に 、 18 0 年 間 の 部 位 別 の C O 2 発 生 量 の 累 計 値 を 図 − 1 1 に 示 す 。 こ の 図 を 見 る と 長 寿 命 型 集 合 住 宅 の 構 造 躯 体 の 累 計 CO 2 量 は 従 来 型 集 合 住 宅 の 構 造 躯 体 と 比 較 し て 4 割 に 程 度 に な り 、 そ の こ と が 長 寿 命 型 集 合 住 宅 の CO 2 の 発 生 量を 削 減 さ せる こ と に 影響 を 与 え てい る こ と が 分か り 、 建 築の 構 造 躯 体の 長 寿命 化 は 地 球環 境 負 荷 の削 減 に 有 効で あ る こ と が分 か る 。 構造躯体 共用仕上 共用設備 住戸内装 住戸設備 従来型集合住宅 長寿命型集合住宅 (Tr=1.1) (kg−CO 2 )/㎡ 0 図− 1 1 600 1200 1800 2400 3000 1 80 年 間 の 各 住 宅 の 部 位 別 累 計 C O 2 発 生 量 b. 環 境 負 荷 軽 減 効 果 そ うし た 環 境 負荷 の 削 減 効果 を 分 か りや す く 理 解 する た め に 、一 つ の 住 戸 を 長 寿 命 型 集 合 住 宅 に し た 場 合 の 年 間 あ た り の C O2 の 削 減 量 を 算 出 し 、 そ の 値 を 自 家 用 車 の 使 用 に よ り 発 生 す る C O2 の 発 生 量 に 換 算 し 、 そ の 効 果 を 見 て み た い 。 一 住 宅 の 規 模 を 1 00 ㎡ よ し た と き 、 従 来 型 集 合 住 宅 と 長 寿 命 型 集 合 住 宅 の 18 0 年 間 の CO 2 の 発 生 量 を 算 定 す る と 表 − 1 1 の よ う に な る 。 こ の 表 を み る と 、 従 来 型 集 合 住 宅 は 26 6t on − C O 2 で あ る の に 対 し 、 長 寿 命 型 集 合 住 宅 は 15 7t o n − C O 2 で と な る 。 ま た 、 年 間 の 炭 素 排 出 量 は 、 従 来 型 集 合 住 宅 で 148 0kg -C O 2 / 年 、 長 寿 命 型 集 合 住 宅 で 8 72 kg -C O 2 /年 と な っ た 。 そ の 差 は 、 年 間 60 7 k g- CO 2 / 年 で 、 こ の 値 は 乗 用 車 が 1 リ ッ ト ル あ た り 1 0km 走 り 、 年 間 1 万 km 走 行 す る と 仮 定 す る と 、 年 間 の ガ ソ リ ン 燃 料 に よ り 排 出 さ れ る 炭 素 量 を 23%抑 え た こ とと 等 し く なる 。 表−11 各 住 戸 の 生 涯 コ ス ト の C O2 排 出 量 換 算 値 CO2発生量 (ton-CO2 ) CO2 発生量 (kg-CO 2/年) 従来型集合住宅 266 1480 長寿命型集合住宅 157 872 注記:1住戸の面積は100㎡としている 自動車の炭素排出量は1リットルあたり2.691ton-CO2 で算定 13 5 .建 築 の 長 寿命 化 に よ る賃 貸 住 宅 の経 済 性 の 検 討 5 −1 . 検 討 の目 的 お よ び検 討 方 法 3 . の L CC に よ る 経 済 性 の 予 備 調 査 で 長 期 間 に わ た る 経 済 メ リ ッ ト は 明 ら か に なっ た が 、 そ うし た 経 済 性 の効 果 が 工 法 の選 定 に 強 く 影響 を 与 え る のは 不 動 産 の賃 貸 事 業 であ る 。 その た め 本 項で は 、 ス テン レ ス 鋼 RC 造 集合 住 宅 ( 以 下、 長 寿 命 型集 合 住 宅 ) と 従 来 型 集 合 住 宅 を 賃 貸 住 宅 と し て 使 用 し た 場 合 の 内 部 収 益 率( I RR)に よ る 投 資 採算 性 の 検 討を 行 な う 。 検 討 に あ た っ て は 、 住 宅 の LC C に つ い て は 3 . で 設 定 し た 値 を 使 用 し 、 賃 料 収 入 、 必 要経 費 等 は 不 動 産 鑑 定 士 によ る 市 場 価 格 を 参 考 にし た 設 定 値 を 用 い て 行 なう 。 投 資 採 算性 の 評 価 に 使 用 す る キ ャッ シ ュ フ ロ ー の 査 定 は、 設 定 し た モ デ ル 住 宅 の 書 く 耐用 年 数 に わ た る ( 投 資 用賃 貸 不 動 産 を 保 有 す る投 資 家 サ イ ド の キ ャ ッ シ ュ フ ロー ) を 査 定 し 、 投 資 採 算性 の 評 価 と し て 、 想 定し た モ デ ル 住 宅 に 係 る I RR ( 内 部 収 益 率 ) を 査 定 す る 。 5 −2 . 長 寿 命住 宅 の 投 資採 算 性 の 評価 a .モ デ ル 住 宅の 想 定 従 来 型 集 合 住 宅 及 び 長 寿 命 型 集 合 住 宅 ( SU S- 41 0 を 使 用 す る 場 合 , SUS -30 4 を 使 用 す る 場 合 )の そ れ ぞ れ に つ い て 、モ デ ル 住 宅 と し て 以 下 の よ うな 区 画 (1 室 ) を 想定 し た 。 表 −1 2 b. ◆ モ デル 住 宅 の 想定 従来型集合住宅 SUS-410集合住宅 SUS-304集合住宅 構造 RC造 ステンレス鋼RC造 (SUS-410鉄筋) ステンレス鋼RC造 (SUS-304鉄筋) 床面積 80.0㎡ 80.0㎡ 80.0㎡ 耐用年数 45年 180年 180年 初 期 投 資額 の 設 定 土 地 価 格 (各 モ デ ル 住宅 共 通 ) 14 表 −1 3 土 地価 格 の 査 定 想 定 土 地 価 格 単 価 数 量 総 額 想 定 容 積 率 延 床 面 積 有 効 率 専 有 面 積 専 有面積当り土地価格 1 戸( 80㎡) 当り土地価格 ◆ 350,000 1,000 350,000,000 180 1,800 85.0 1,530 229,000 18,300,000 円/㎡ ㎡ 円 % ㎡ % ㎡ 円/㎡ 円/戸 建物価格 3 .の 設 定 を 用い る 。 ◆ 初 期 投 資 額( 取 得 原 価) さ らに 、土 地 取 得 及び 建 築 に 係る 諸 経 費 等を 加 え 、各 モ デル 住 宅 の 初 期 投資 額 を 以 下の と お り 設定 し た 。 表 −1 4 従来型集合住宅 土地価格 18,300,000 円 51.1 建物価格 15,100,000 円 42.2 諸経費等 2,400,000 円 6.7 取得原価 35,800,000 円 100.0 モ デル 住 宅 の 初期 投 資 額 (取 得 原 価 ) の査 定 % % % % SUS-410集合住宅 18,300,000 円 48.5 16,800,000 円 44.6 2,600,000 円 6.9 37,700,000 円 100.0 比率 % 0.0 % % 11.3 % % 8.3 % % 5.3 % SUS-304集合住宅 18,300,000 円 45.6 19,000,000 円 47.4 2,800,000 円 7.0 40,100,000 円 100.0 比率 % 0.0 % % 25.8 % % 16.7 % % 12.0 % b .改 修 費 の 査定 モ デル 住 宅 の 改修 費 ( 部分 改 修 ,大 規 模 改 修) に つ いて は 、3 . の 更 新 工 事 割 合 (「 表 − 4 項 改 修 ・ 更新 工 事 割 合」 参 照) を 採 用 して 、 次 表 のと お り 設 定し た 。 な お 、 耐 用 年 数 満 了 時 に お い て は 、 各 モ デ ル 住 宅 と も 、 1,5 00 ,00 0 円 の 解体 費 を 計 上し た 。 c .賃 料 収 入 およ び 必 要 諸経 費 等 の 査定 ◆ 賃 料 収 入 の査 定 賃 料 収 入 は 、 新 築 時 の 月 額 支 払 賃 料 を 2 20 ,00 0 円 と し 、 以 降 、 経 年 とと も に 下 表の と お り 低下 す る も のと し た 。 15 表 −1 5 新 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ◆ 築 5 20 30 40 45 135 150 165 180 時 年 年 年 年 年 年 年 年 年 賃 料収 入 の 査 定 従来型集合住宅 1.00 1.00 0.95 0.90 0.80 0.70 - 長寿命型集合住宅 1.00 1.00 0.95 0.90 0.90 0.90 0.90 0.85 0.80 0.70 必 要諸 経 費 等 の査 定 賃貸借契約の継続に係る必要諸経費等につ いては、以下のとおり 査 定し た 。 表 −1 6 月払賃料 空室率 維持費 ・修繕費 管理諸経費 PMフィー 新築時 220,000 円 5.0 % 358,000 円 79,200 円 79,200 円 必 要諸 経 費 等 の査 定 以降の変化 一定率で推移 従来型:築後30年一定,31年目以降20%増 長寿命型:築後165年一定,166年目以降20%増 賃料総収入の3.0%の一定率で推移 賃料総収入の3.0%の一定率で推移 d .耐 用 年 数 にわ た る キ ャッ シ ュ フ ロー の 査 定 以 上 よ り 、 想 定 し た各 モ デ ル 住 宅 の 耐 用 年 数 に わ た る キ ャ ッ シ ュフ ロ ー ( 投 資 用 不 動産 を 保 有 す る 投 資 家 サ イ ド の キ ャ ッ シ ュフ ロ ー ) を 別 表 1∼ 3 の と お り 査定 し た 。 16 e .投 資 採 算 性の 評 価 以 上 よ り 、長 寿 命 型 集 合 住 宅 を 賃 貸 用 不 動 産 と し た 場 合 の 投 資 家 サ イ ド か ら見 た 投 資 採算 性 を 以 下の と お り 評価 し た 。 表 −1 7 従来型集合住宅 投 資採 算 性 の 評価 長寿命型集合住宅・SUS-410 長寿命型集合住宅・SUS-304 投 資 期 間 全期間(45年間) 全期間(180年間) 第1期(45年間) 全期間(180年間) 第1期(45年間) 初 期 投 資 35,800,000 37,700,000 40,100,000 土 地 価 格 18,300,000 18,300,000 18,300,000 建 物 価 格 15,100,000 16,800,000 19,000,000 費 2,400,000 2,600,000 2,800,000 諸 経 収 入 115,946,000 賃 料 収 ( 期 間 中 売 却 収 ( 終 期 支 出 合 入 ) 入 ) 計 N 412,501,000 136,914,000 412,501,000 136,817,000 99,695,000 396,250,000 104,710,000 396,250,000 104,710,000 16,251,000 16,251,000 32,204,000 16,251,000 32,107,000 36,286,400 153,747,200 39,923,200 155,247,200 40,423,200 経 常 的 経 費 23,486,400 90,547,200 22,723,200 90,547,200 22,723,200 大規 模 修繕 費 12,800,000 63,200,000 17,200,000 64,700,000 17,700,000 C 79,659,600 258,753,800 96,990,800 257,253,800 96,393,800 F 合 計 4.11% 内 部 収 益 率 (irr) 3.84% 4.18% 備考 3.75% 45年後売却(R=4.5%) 3.68% 45年後売却(R=5.0%) 3.89% 4.03% こ れ によ る と 、 従 来型 集 合 住 宅 に比 べ 、 長 寿 命 型集 合 住 宅 は 、初 期 投 資 額 は 増 加 す る も の の 、 NC F ( ネ ッ ト ・ キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー ) も 増 加 す る 。 NC F は 、第 1 期 の 4 5 年 間 の み で 比 較 し て も 、長 寿 命 型 集 合 住 宅 の 方 が 、従 来 型 集 合住 宅 よ り も大 き い 。 た だ し 、 内 部 収 益 率 を 見 る と 、 SUS − 410 を 使 用 し た 場 合 の 長 寿 命 型 集 合 住 宅 は 、 従 来 型 に 比 べ 、 内 部 収 益 率 ( IRR ) が 高 く な る が 、 SUS − 30 4 を 使 用 した場合の長寿命型集合住宅は、初期投資額の負 担が相対的に大きく、従 来 型 に 比 べ 、 内 部 収 益 率 ( IR R ) は 全 期 間 で 同 程 度 , 第 1 期 で は 低 く な る こ と が分 か っ た 。 5 −3 . 利 用 者の 生 涯 支 出の 評 価 a .モ デ ル 住 宅の 想 定 従 来 型 集 合 住 宅 及 び 長 寿 命 型 集 合 住 宅 ( S US − 41 0 を 使 用 す る 場 合 ) の モ デ ル 住 宅 に つ い て は 、 前 項 と 同 様 と し 、 S US − 3 0 4 を 使 用 す る 長 寿 命 型 集 合 住 宅 に つ い て は 、従 来 型 住 宅 よ り 不 利 と な る た め 本 項 で の 検 討 は 行 な わ ない 。 17 b .モ デ ル 住 宅に 係 る 取 得価 額 等 の 査定 利 用者 の 権 利 関係 と し て 、以 下 の 4 つの ケ ー ス を 想定 し た 。 ケ ー ス 1: 分譲 取 得 従 来 型 集 合 住 宅 ( ケ ー ス S − 1) ・ モ デ ル 住 宅 を 通 常 の 分 譲 マ ン シ ョ ン と し て 取 得 し 、45 年 間 使 用 。 ・ 45 年 間 の 使 用 後 、 建 物 を 解 体 し 、 土 地 持 分 を 売 却 。 長 寿 命 型 集 合 住 宅 ( ケ ー ス L -1 ) ・ 第 1 世 代 は 、モ デ ル 住 宅 を 通 常 の 分 譲 マ ン シ ョ ン と し て 取 得 し 、 45 年 間 使 用 。 ・ 45 年 間 の 使 用 後 、 時 価 ( 収 益 価 格 ) で 売 却 。 ・ 第 2 世代 及 び 第 3 世 代は 、 中 古 マン シ ョ ン とし て 、 時 価( 収 益 価 格 ) で 取 得 し 、 45 年 間 使 用 後 、 時 価 ( 収 益 価 格 ) で 売 却 。 ・ 第 4 世 代 は、 中 古 マ ンシ ョ ン と して 、 時 価 (収 益 価 格 )で 取 得 し 、45 年 間 使 用 後、 建 物 を 解体 し 、 土 地持 分 を 売 却 。 ※ 各 世 代 は 45 年 間 と し た 。 ケ ー ス 2 : 通 常 賃 貸 ( 従 来 型 : ケ ー ス S- 2 , 長 寿 命 型 : ケ ー ス L- 2) ・ モ デ ル 住 宅 を 通 常 の 賃 貸 マ ン シ ョ ン と し て 賃 借 し 、4 5 年 間 使 用 。 ・ 長 寿命 住 宅 に つい て も 、 第 1 世 代 の み査 定 し た 。 ケ ー ス 3: 証券 取 得 併 用型 賃 貸 ( 従 来 型 : ケ ー ス S- 3 , 長 寿 命 型 : ケ ー ス L-3 ) ・ モ デル 住 宅 を 証券 化 し 、1 区 画 相 当分 を 証 券 とし て 取 得 。 ・ 45 年 間 賃 貸 住 宅 と し て 賃 借 し 使 用 ( 賃 料 を 支 払 う 一 方 で 、 証 券 の 配 当 を 得 る 。) ・ 31 年 目 以 降 、 保 有 し て い る 証 券 を 徐 々 に 売 却 し 、 売 却 収 入 を 得 る ( 第 1 世代 の 存 命 中に 証 券 を 売却 す る こ とで 、 老 齢 時の 負 担 を 少な く す る とと も に 、 第 1 世 代の 初 期 投 資の 負 担 増 を存 命 中 に 軽 減 す る )。 ・ 長 寿命 住 宅 に つい て も 、 第 1 世 代 の み査 定 し た 。 ケ ース 4 : 証 券取 得 併 用 型賃 貸 ・ 優 遇 金 利 ( 長 寿 命 型 : ケ ー ス L -4 ) 証 券 は 、 実 物 不 動 産 に 比 べ 資 産 の 流 動性 が 高 い こ と か ら 、 証 券 取 得 に 際 し て は 、 優 遇 金 利 で 融 資 が 受け ら れ る も の と し た ( 年 利 3 .0 % → 年 利 2. 0 % ) ・ 長 寿命 住 宅 の 第 1 世 代 の み査 定 し た 。 18 ◆ 取 得 価 額 の査 定 分 譲マ ン シ ョ ンと し て 各 世代 が 取 得 する 価 額 は 、3 . ライ フ サ イ ク ルコスト の諸元 の設定 と割引 現在価 値によ る経済 性の予 備検討 を基 礎 に 、次 表 の と おり 設 定 し た。 表 −1 8 分 譲マ ン シ ョ ンを 想 定 し た場 合 の 取 得 価額 ◆ 第一世代(新築物件の取得価額) 従来型集合住宅 長寿命型集合住宅SUS-410 比率 土 地 価格 18,300,000 円 51.1% 18,300,000 円 48.5% ±0.0% 建 物 価格 15,100,000 円 42.2% 16,800,000 円 44.6% +11.3% 諸 経 費等 2,400,000 円 6.7% 2,600,000 円 6.9% +8.3% 取 得 原価 35,800,000 円 100.0% 37,700,000 円 100.0% +5.3% 販 売 利益 3,900,000 円 10.9% 4,300,000 円 販 売 価格 39,700,000 円 110.9% 42,000,000 円 11.4% +10.3% 111.4% +5.8% ◆ 第二世代以降(中古物件の取得価額) 従来型集合住宅 長寿命型集合住宅SUS-410 第 ニ 世代 − 33,200,000 円 第 三 世代 − 32,500,000 円 第 四 世代 − 27,600,000 円 ※ 価格は、割引率を4.5%として査定した収益価格 ◆ 賃 料 等 の 査定 賃 料等 に つ い ては 、 下 表 のと お り 設 定し た 。 表 −1 9 賃 料等 の 査 定 査定の内容 「2.4.2 ライフサイクルコストの諸元の設定と割引現在価値に 保有時の維持費等 よる経済性の予備検討」で査定した改修費(部分改修,大規模改 修),維持費・修繕費を所有者が負担するものとした。 支払賃料 「2.4.2 ライフサイクルコストの諸元の設定と割引現在価値に よる経済性の予備検討」で査定した賃料を賃借人が支払うものと した。 証券配当 「2.4.2 ライフサイクルコストの諸元の設定と割引現在価値に よる経済性の予備検討」で査定したNCF(ネット・キャッシュ・フ ロー)の全額が配当されるものとした。 19 c .利 用 者 の 生涯 支 出 の 評価 以 上 よ り 、長 寿 命 型 集 合 住 宅 を 使 用 す る 場 合 の 利 用 者 の 生 涯 支 出 は 、表 − 2 0 、 表 − 21 の と お り 求 め ら れ た 。 ま ず 、 分 譲 マ ン シ ョ ン と し て 通 常 取 得 す る 場 合 の 第 一 世 代 に つ い て 見 る と 、長 寿 命 型 集 合 住 宅 は 使 用 期 間 満 了 時 の 中 古 価 格 が 高 い た め 、売 却 価 格 を 含 め る と 、生 涯 支 出 は 長 寿 命 型 集 合 住 宅 の 方 が 低 く な る ( 7 4, 50 3 千 円 → 6 5, 39 0 千 円 )。 た だ し 、使 用 期 間 中 の 支 出 総 額 は 、逆 に 長 寿 命 型 集 合 住 宅 の 方 が 高 く な る ( 90 ,7 54 千 円 → 97, 594 千 円 )。 す な わ ち 、 第 一 世 代 の 存 命 中 の 支 出 は 、 従 来 型 集 合 住 宅 の 方 が 低 く 、加 え て 、中 古 住 宅 の 売 却 価 額 の 不 確 実 性 を 考 慮 する と 、 こ の点 が 、 長 寿命 型 集 合 住宅 の 普 及 の 阻害 要 因 と なろ う 。 ま た 、第 二 世 代 以 降 に つ い て は 、表 − 2 2 ∼ 表 − 24 ま で と な り 従 来 型 の 新 築 の分 譲 マ ン ショ ン を 取 得す る 場 合 にく ら べ 、 長寿 命 型 の 中 古マ ン シ ョ ン を 取得 す る 方 が、 使 用 期 間中 の 支 出 総額 及 び 中 古住 宅 の 売 却 価額 を 加 え た 生 涯支 出 と も 低く な る 。 各モ デ ル 住 宅を 賃 借 す る場 合 、 長 寿 命型 集 合 住 宅 は、長期にわたって高い賃料水準が持続されるた め、賃料の支払総額は、 従 来 型 集 合 住 宅 に く ら べ 高 く な る ( 1 04, 94 0 千 円 → 11 0,2 20 千 円 )。 ま た、 分 譲 マン シ ョ ン とし て 取 得 す るケ ー ス に 比べ 、 生 涯支 出 は 、従 来 型集合住宅及び長寿命型集合住宅とも、賃借する ケースの方が高くなる。 証券化されたモデル住宅を取得(証券を取得)し 、賃料を支払う一方で、 証 券 の 配 当 を 受 け る こ と を 想 定 し た 場 合 ( ケ ー ス S -3 、 L-3 )、 長 寿 命 型 集 合 住宅 で あ っ ても 、 従 来 型の 分 譲 マ ンシ ョ ン を 取得 す る 場 合 に比 べ 、 生 涯 支 出 ,使 用 期 間 中 の 支 出 総 額 と も 高 く な る( 生 涯 支 出:7 4, 50 3 千 円 → 78, 22 9 千 円 , 使 用 期 間 中 支 出 : 9 0,7 54 千 円 → 9 4,4 80 千 円 )。 た だ し 、優 遇 金 利 に て 取 得 費 の 融 資 が 受 け ら れ る 場 合( ケ ー ス L- 4)、生 涯 支 出 , 使 用 期 間 中 の 支 出 総 額 と も 低 く な る ( 生 涯 支 出 : 7 4 ,50 3 千 円 → 70, 20 4 千 円 , 使 用 期 間 中 支 出 : 90 ,75 4 千 円 → 86 ,4 55 千 円 )。 20 表−20 従来型集合住宅における利用者の生涯支出の比較 (千円) ケースS−1 通常取得 1∼15年 元 本 支 払 15,520 支 払 利 16∼30年 31∼45年 処分時 24,180 ケースS−2 通常賃貸 合計 5,370 5,370 6,450 17,190 処 分 価 格 合 計 38,280 -16,251 40,652 43,652 6,450 90,754 -16,251 36,300 30,360 合計 -16,251 74,503 104,940 38,280 36,300 30,360 104,940 0 -23,803 -19,037 -20,568 -63,409 44,859 47,645 9,792 0 38,280 36,300 104,940 30,360 0 104,940 102,295 ※ 支出額を正数で、収入を負数で表示している。 表−21 処分時 21,064 維 持管 理諸 経費 当 31∼45年 6,202 12,800 配 16∼30年 14,862 0 券 1∼15年 21,064 6,202 7,900 証 合計 39,700 4,900 料 処分時 24,180 14,862 賃 31∼45年 15,520 息 払 16∼30年 39,700 大 規 模 改 修 費 支 1∼15年 ケースS−3 証券取得併用賃貸 長寿命型集合住宅(SUS−410)における利用者の生涯支出の比較 21 -16,251 -16,251 -16,251 86,044 表 −2 2 第 二世 代 に お ける 通 常 取 得 ケースL−1 通常取得(第ニ世代) 46∼60年 61∼75年 76∼90年 元 本 支 払 12,979 20,221 支 払 利 処分時 合計 33,200 息 12,429 5,187 大 規 模 改 修 費 4,300 7,300 5,600 17,200 維持管理諸経費 5,370 5,370 5,370 16,110 35,078 38,078 10,970 支 払 賃 料 証 券 配 当 処 分 価 格 合 計 17,615 84,125 -31,525 -31,525 -31,525 52,600 ※ 支出額を正数で、収入を負数で表示している。 表 −2 3 第 三世 代 に お ける 通 常 取 得 ケースL−1 通常取得(第三世代) 91∼105年 106∼120年 121∼135年 処分時 合計 元 本 支 払 12,705 19,795 32,500 支 払 利 息 12,166 5,077 17,244 大 規 模 改 修 費 4,300 7,300 0 11,600 維持管理諸経費 5,370 5,370 5,370 16,110 支 払 賃 料 証 券 配 当 処 分 価 格 合 計 34,542 37,542 5,370 77,454 -26,772 -26,772 -26,772 50,682 ※ 支出額を正数で、収入を負数で表示している。 表 −2 4 第 四世 代 に お ける 通 常 取 得 ケースL−1 通常取得(第四世代) 146∼150年 151∼165年 166∼180年 元 本 支 払 10,790 16,810 支 払 利 処分時 合計 27,600 息 10,332 4,312 大 規 模 改 修 費 4,300 7,300 0 11,600 維持管理諸経費 5,370 5,370 5,370 16,110 30,792 33,792 5,370 支 払 賃 料 証 券 配 当 処 分 価 格 合 計 69,954 ※ 支出額を正数で、収入を負数で表示している。 22 14,644 -16,251 -16,251 -16,251 53,703 6 .結 論 ( ま とめ 、 今 後 の課 題 、 次 年度 以 降 検 討 ) ( 1 ) LC コ ス ト に よ る 経 済 性 の 検 討 ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 の 使 用 に よ る RC 造 集 合 住 宅 の 建 設 コ ス ト は 、 S US − 410 で 1 割 上 昇 す る が 、 LCC 現 在 価 値 ( 割 引 率 2% ) で は 91 年 以 降 1 割 下 が り 、 長 期間 の 経 済 性に 関 す る 有効 性 が 検 証で き た 。 た だ し SU S − 30 4 で は 、建 設 コ ス ト で 2 割 以 上 上 昇 し 、LC C 現 在 価 値 で 効 果 も 少な く 、 今 後、 そ の 使用 方 法 ・ 使用 分 野 な どを 検 討 す る必 要 が あ るこ と が 分 かっ た 。 ( 2 ) LC CO 2 ・ エ ネ ル ギ ー の 原 単 位 と ア ル ゴ リ ズ ム の 検 討 RC 構 造 物 の 超 高 耐 久 化 に よ り 、 解 体 更 新 を な く す こ と に よ る L CC O 2 の 削 減 効 果 は 、 91 年 以 降 半 減 し そ の 効 果 が 大 き い こ と が 分 か っ た 。 ( 3) 賃 貸 住 宅事 業 に よ る経 済 性 の 検討 ス テン レ ス 鋼 鉄筋 の 使 用 によ る RC 造 集 合 住 宅に よ る 賃 貸事 業 は 、 欧米 型 の 中 古 市 場 が 整 備 さ れ て そ の 価 値 が 使 用 価 値 に 連 動 す る 場 合 、S US − 4 10 で は メ リ ッ ト は あ る が 、現 状 の 市 場 構 造 で は 不 確 実 性 が 高 い 。SU S− 30 4 で は メ リ ッ トが 無 く 、そ の 使 用 方法 ・ 使 用 分野 な ど を 検討 す る 必 要が あ る こ とが 分 か っ た。 ( 4) 今 後 の 課題 RC 構 造 物 の 超 高 耐 久 化 に よ り 、 解 体 更 新 を な く す こ と に よ る LC CO 2 の 削 減効果は長期的に大きいことが分かったが、経済 面ではその効果が顕著で なく、現市場での普及を図るためには製造・販売 コストの見直しや使用方 法 ・使 用 分 野 など を さ ら に検 討 す る 必要 が あ る こ とが 分 か っ た。 ( 5) 次 年 度 以降 検 討 次 年 度 以 降 は 、 LC CO 2 の 削 減 効 果 を 建 築 構 造 物 の 評 価 に 位 置 付 け る た め 、 CAS BE E を 用 い た 評 価 を 行 な う 。 市場性に対する評価については、構造物として優位性のある使用方法・仕 様 分野 な ど に つい て さ ら に検 討 を 行 なう 。 23 表 −2 5 3 ヵ 年 の 研 究計 画 平成17年度 平成18年度 検討項目 1.経済性 SUS鋼RC造のLCコ SUS鋼RC造の経済 ストの構成調査と 評価 性評価手法 の検討 諸元の設定 経済特性からみた 割引現在価値によ 優位市場の検討 る 経済性予備検討 2.社会効 SUS鋼RC造の 採用 CASBEEによる検 果の評価 によるCO2削減効 討 果の検討 システム改善につ いての提案 平成19年度 実験成果を反映し た経済性評価の 算定 経済優位市場の 形成手法の検討 環境共生型(or高 耐久型)技術とし ての社会効果の 検討 特性評価と市場戦 略 3.まとめ 参 考資 料 1) 伊 香 賀 、村 上 、加 藤 、白 石:我 が 国 の 建 築 関 連 C O 2 排 出 量 の 20 50 年 ま で の 予 測 , 日 本 建 築 学 会 論 文 報 告 集 , 第 53 5 号 , 20 00 年 9 月 2) 五十 嵐: 住 宅 の 長寿 命 化 と 資源 の 循 環 使用 の 効 果 , 日本 建 築 学 会 第 19 回 建 築 生 産 シ ン ポ ジ ュ ウ ム , 2 00 3 年 7 月 3) 小松 幸夫 ,加 藤 裕 久 ,吉 田 倬郎 、野 城 智 也 :建 物 寿命 の 推 計 ,社 会 資産 と し て の 建 物 の あ り 方 を 考 え る − 日 本 の 建 築 物 は 短 命 か ,7 − 23 ,日 本 建 築 学 会 建 築 経 済 委 員 会 ・ 耐 用 年 数 小 委 員 会 刊 , 199 2 年 8 月 4) 五十 嵐、嘉 納: 資源 循 環 型 集合 住 宅 の ライ フ サ イ クル コ ス ト の評 価 − 資 源 循 環 型 社会 に 向 け た住 宅 シ ス テム の 経 済 性評 価 に 関 す る研 究 , 日 本建 築 学 会 計画 系 論 文 集 , 第 56 8 号 , 20 03 年 6 月 5) 建 設 物 価 調 査 会 積 算 委 員 会 : 建 築 コ ス ト 情 報 ,財 団 法 人 建 築 物 価 調 査 会 , 20 0 2 年 1月 6) 建築 物価 調 査 会 総合 研 究 所 :ジ ャパ ン ・ビ ル ディ ン グ ・コ スト イ ン フ ォメ ー シ ョ ン 2 00 4, 財 団 法 人 建 築 物 調 査 会 , 2 00 4 年 7 月 7) 五 十 嵐 : 良 質 な 住 宅 ス ト ッ ク の 普 及 に よ る CO 2 削 減 効 果 の 考 察 , 日 本 建 築 学 会 第 2 1 回 建 築 生 産 シ ン ポ ジ ュ ウ ム , 20 05 年 7 月 8) 横 山 健 司 ,岡 建 雄 ほ か: 199 5 年 表 に よ る エ ネ ル ギ ー 消 費 量 と 炭 素 排 出 量 の 原 単 位 − 産 業 連 関 表 に よ る 建 築 物 の 評 価 ( そ の 8 ),日 本 建 築 学 会 計 画 系 論 文 集 ,第 5 31 号 , 75 − 80 , 2 00 0 年 5 月 9) 建 設 省 総 合 技 術 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト :省 資 源 ・省 エ ネ ル ギ ー 型 国 土 建 設 技 術 の 開 発 , 建 設 省 , 1 99 6 年 1 0 月 24 Ⅲ.次世代システム研究会公開講座発表 【ストック型社会の必要性と効果】 ストック型社会 長 寿 命 化 【具現化・転換のためのテーマ】 日本をストック型社会にするための研究 実現するための政策 実現するための技術 技術システム編 社会システム編 研 究 ・ 検 討 領 域 研究・検討領域 税 制 ・ 法 制 素材 建築構造 土木構造 流通基盤 長寿命型 建築物 長寿命型 複合基盤(道路・ 交通・情報・ ライフライン等施設) ライフライン 長 期 金 融 制 度 ー 長 寿 命 型 都 市 圏 設 計 ル 長寿命型産業基盤 食 糧 農業・畜産基盤の保全 水産基盤の再生・保全 森林資源基盤の長期的保全 資 源 循 環 資 源 自 律 型 地 域 圏 設 計 ル ー 自然共生・生物回廊の保全 ル 各 種 社 会 制 度 再 生 保 存 則 ル ス ト ッ 長 寿 命 型 イ ン フ ラ 組 合 せ 技 術 ク 型 ・ 長 寿 命 型 社 会 転 換 対 応 中 長 期 地 価 政 策 新 産 業 連 関 予 測 ・ 評 価 ・ 対 応 新 産 業 構 造 転 換 政 策 各 種 標 準 ・ 指 標 長 寿 命 型 / 新 国 土 政 策 現 状 対 応 街 づ く り 長 寿 命 型 実 験 都 市 の 試 行 各 種 評 価 指 標 世 論 形 成 ス ト ッ ク 型 社 会 転 換 政 策 食 糧 ・ 森 林 資 源 自 律 政 策 統合理論(工学・自然科学・社会科学) 統 合 理 論 ( 社 会 科 学 : 他 科 学 ) 次 世代 シ ス テム 研 究 会 活 動 内容 開催日 テーマ 発表者 所属 第32回研究会 平成17年 ストック型、循環型社会への志向と自然配植 9月10日 高田森林緑地研究所 高田 研一 自然配植技術協会 NPO法人森林再生支援センター 所長 会長 常務理事 岡本 久人 九州国際大学次世代システム研究所 川上 征雄 内閣府政策統括官付(社会基盤担当) 高藪 裕三 社団法人日本プロジェクト産業協議会 所長 参事官 専務理事 川井 秀一 京都大学生存圏研究所 武田 浩 日本政策投資銀行九州支店企画調査課 片山 憲一 北九州市企画政策室 所長 調査役 室長 坂本 圭 株式会社ソリュート総合研究所 五十嵐 健 九州国際大学 次世代システム研究所 岩科 健一 株式会社新日鉄都市開発九州支店 代表取締役 主任研究員 取締役支店長 後藤 祐輔 財団法人日本気象協会調査部 主任技師 遠松 展弘 株式会社日建設計 上席理事 五十嵐 健 岩下 陽市 坂本 圭 大村 圭一 五十嵐 健 主任研究員 教授 代表取締役 室長 主任研究員 第33回研究会 ストック型社会の形成に向けての講演会 基調講演1.2.3 資源自立・長寿命ストック型社会とは ∼ECO-ECO理論∼ 21世紀の日本政策課題 産学官連携による地域経済圏の形成 日本の政策をとおして九州の未来を探る 平成17年 木質資源を中心とした資源自立圏の構築に向けて 11月12日 地域経済と新たな地域金融手法 広域地域圏と北九州の未来 あなたの地域の未来が見える ストック型街区の事業メリット 人口減少社会の街づくり 豊かな環境にやさしい街づくり 第34回研究会 平成18年 気候変動と災害のリスク ∼ストック型社会の構築に向けて∼ 1月21日 第35回研究会 平成18年 ストック型社会論の展開 地域分散型「田舎の田舎」モデル 集中と分散 3月11日 第36回研究会 ストック型街区の形成に向けて (1)はじめに 平成18年 (2)ニーズと構成要素 5月13日 (3)事業性と事業手法 (4)高耐久建築構造素材としてのステンレス鋼の適用性 (5)メリットと課題 九州国際大学次世代システム研究所 九州職業能力開発大学校 株式会社ソリュート総合研究所 新日鐵住金ステンレス株式会社商品技術部商品技術室 九州国際大学次世代システム研究所 第37回研究会 立法府への政策提言 平成18年 7月8日 長期的課題のための戦略形成 岡本 久人 九州国際大学次世代システム研究所 平澤 ? 九州国際大学次世代システム研究所 所長 東京大学名誉教授 顧問 ストック型、循環型社会への志向と自然配植 次世代システム研究会第32回研究会 平成17年 9月 10日 高田 研一 自然配植技術協会 会長 高田森林緑地研究所 所長 NPO法人森林再生支援センター 1 常務理事 社会的にストックする意味は何? もともとは、農業生産から発生する余剰生産物、ないしは、 余剰労働人口がもたらすもの ストックの意味:①不足時への備え ②生産性の確保、向上 ③耐久消費財整備 ④資源有効利用 ⑤一見ムダなストック なぜストックか?誰にとってのストックか? ストック型、循環型社会への志向と 自然配植 競争的市場主義を克服する 「すみ分け」主義の社会的実践 ストック型社会は実現可能か? ストック型社会は実現可能か? 大量生産、大量消費の市場経済は、 ストックの源泉=安価な食糧は持続的供給可能か? プラグマティズムと還元論が支える ・食糧経済の基盤としての米生産:単位収量拡大の限界 ⇒ 自然収奪型か循環型か ・大きな母集団の中のごく小さな実証サイズ ・成果や品質は数量的、「客観的」に評価される *収奪を可能にしたものは、水とエネルギー、ヒト 必然的に発生する余剰原資、余剰労働人口 失われるものは、不確定性、相互性、つまり、 社会的安定のためのムダな労働へも(社会的分配) 長期によって評価されるもの、総合評価されるべきもの ストック型社会は実現可能か? ストック型社会は実現可能か? 雇用の現況(動向) 企業利益 ⇒ 株主への還元 金融システムを通じてアメリカへの還流 競争 → 労働コストの圧縮;正規雇用の減少 賃金格差の拡大 ⇒ 中間層の没落、右傾化 高付加価値型産業の投資と雇用: 高い集中性と少雇用 ⇒ 地方の疲弊・没落、非正規雇用の拡大 所得格差: 地域格差: 政策的格差(富裕層の育成) 中産階級の没落、「共同幻想」への志向 ⇒ 政府の右傾化、小さな政府論 小さい⇒大部分の分野での専門家の減少 資源分配型投資の圧縮 稼げる「地域」、稼げない「地域」 経済の活力の源泉とは何か? 資本と情報の独占?社員のやる気か? 社会的にストックする意味は再度、何? 資源論からみたストック型社会 • 資源とその変動量 社会資本ストックの社会的波及効果 生物量は資源の変動下限量で決まるが。 ⇒ 原資の再配分、有効利用 労働の地理的分散 長期的には需要抑制 消費型技術対ストック型技術の相克 • 資源利用者とその多様性 ・資源利用者の多様性は資源利用の効率化、 安定化をもたらす ・スペシャリスト(異なる資源利用者)の競争は起こりにくい *報酬は、モノへの代価か、ヒトの労働、技術への代価か • 生態的地位 ・わが国におけるフロー型社会の利点 ・変動する資源と「場」に対する 世代交代可能な生存選択肢 =災害多発国、資金流動が経済活力、柔構造社会 2 資源論からみたストック型社会 循環型社会の循環を考える • 生態的地位 • 安定的多様性の原理:地理的すみ分けから垂直 • 循環の意味:より緩やかなエントロピー増大へ 廃棄物有効利用が循環になる? 生産システム自体が循環的なものへ? 的すみわけ、さらに同所的すみ分けへ *競争的共存は競争排除へ向かう *競争は全面的に起こらず、部分的に起こる 結果として、資源の未利用を招くことがある (バイオマスを最大化しない) • 循環の本質: 非循環的な人類存在の否定はできない より持続的、循環的へ ⇒ 場の条件、時の条件に合わせる • 資源配分の原理:競争強者の資源独占は不安定 持続的循環型、ストック型社会の INTEGRATION 持続的循環社会の問題点 従来の環境経済学論 市場経済は新たなパラダイム= 市場経済は新たなパラダイム=環境になじむか? 環境になじむか? • ストックと循環は異なる意味で消費の効率化 • 循環を考慮しないストック型社会はない 循環の規模、ストックの内容を考える 専門性の高いコーディネーターの養成が必要 変動期のフロー型、安定期のストック型 フロー部分とストック部分の仕分け 共有(公的)財産の私的所有意識化 生産量変動と消費者量変動にはタイムラグがあり、 これを埋めるのがストック • 還元技術のない自然収奪型の循環はない • 循環の規模を技術論として議論すべき 非金銭兌換的労働の共有が重要 目指すべき社会の構図 自然配植の基礎理論と技術 市場経済と環境(新計画)経済のベストマッチング すべてを市場原理に委ねる危険性 人も社会も専業化、専門家 への方向へ 人も社会も専業化、専門家への方向へ 哲学的基礎:現象学 ⇒ 客観への懐疑 主観の統合 基礎的方法論: 資源とその利用者の最大化、持続化 資源、利用者、場のポテンシャル、固有性評価 長期的変動の予測評価 相互関係の予測評価 ⇒ 多様化、すみ分け化、地域化 地理的すみ分けを可能とする重層的構造をもった 地域社会共同体へ 地域社会共同体へ 底辺技術を低負荷型、集中・分散組合せ型、 達成感型、経験型、自然適合・地域固有型へ 自然配植の基本的な方法論 自然配植の基本的な方法論 社会構築戦略: 持続可能な資源確保と最適分配システム 地域主義的な専門化、専業化システム 市場原理になじみにくい分野(環境、医療、 社会福祉、教育、農業)からの一点突破 自然配植の対象 =環境形成、修復、維持管理 自然、社会条件、素材の性状に応じたきめ細かな配置による 自然主義(小規模多様)的緑化、造園、造林、治山、土木の 手法 (将来は社会構築のパラダイムへ) 非数量化価値の評価 自然配植の原資 ・システム効率化による余剰原資の開発 ・ 価値を高める(負荷抑制、付加向上)環境投資 ・中長期的価値重視による初期投資削減(全体的に) 効率性と有効性は異なる:数を稼いで良しとせず 3 自然配植の基本的な方法論 近代的価値(欧米主義的)と自然的・歴史的 価値の見直し 基本知識の共有と地域固有性の実現 異齢的構造の重視 資源動態予測、利用者・素材動態予測 ヒト中心、技術中心(モノ中心に対して) 多機能重層性、相互性重視 NO.18 自然配植による自然の見方 自然配植による自然の見方 □評価軸を根本的に見直す 1.地形、地質、土壌 地形:集水・ 地形:集水・排水性、水みち、受光、風当り、 表層地質の硬・軟・粘、景観性 地質:岩質、風化、層理勾配、互層構造など 土壌:粒径組成、土層厚、崩・ 土壌:粒径組成、土層厚、崩・運・残積土別、 表土勾配、土壌型、含礫状態、pH • 土壌ストレスによる微生物相発達の違い 自然配植による自然の見方 自然配植による自然の見方 • 根系の見方 • 樹形と個体相互関係の見方 ストレス:寒冷、水分、養分、(塩分など) • 土壌の微生物性と土壌型の発達 合成型 →(合成発酵中間型)→ (合成発酵中間型)→ 発酵型 ↓ (浄菌発酵中間型) → → → → 浄菌型 *近年、合成型⇒ *近年、合成型⇒浄菌型発達を意識化しなかった ・岩盤に対する樹種ごとの反応差 ⇒ 岩盤貫入型、非貫入型 ・障害物(・滞水)に対する樹種ごとの反応差 ⇒ 根系自由度 ※「押す根」、「抱える根」 ・菌根特性: 外生(内外生)菌根依存型、MA菌根依存型 ・自形性と他形性 種特性としての自形性・ 種特性としての自形性・他形性 発達段階としての自形性・ 発達段階としての自形性・他形性 ・自形性と他形性組み合わせ による ・自形性と他形性組み合わせによる 空間構成、植生遷移 ・自形性・ ・自形性・他形性と景観、防災(群落安定性) 他形性と景観、防災(群落安定性) 自然配植による自然の見方 自然配植による自然の見方 • 植物の光利用特性 • 植生遷移と先駆種 ・葉の利用光強度 ・林冠木の利用光強度が群落構造に影響 ・遷移段階と樹木の利用光強度 ・生物多様性と光利用強度 ・稚樹期から幼木(上伸)期への光利用強度 ・群落内の「こもれび」の設計 ・立地、種子供給源により植生遷移には大差 ・先駆相(群落形成期)は競争的段階、 極相(安定期)はすみ分け的段階 ・先駆種は競合種排除システムをもつ ・先駆種は合成型タイプ、合成・ ・先駆種は合成型タイプ、合成・浄菌型タイプ ・多くの先駆種が美しくない理由 4 自然配植の緑づくりの基本技術 九州の自然風景をつくる 自然立地評価法 社会的立地評価法 美の技術 多様性技術 苗木活着技術 食害回避技術 人材育成技術 自然配植による森づくり、緑づくり、人づくり ※自然配植の基本ルール ①地方の人と自然のあり方を大切に ②昔の知恵から学ぶ ③目先の利益だけを考えない ④それぞれの生命力を引き出す ⑤かかわりを大切にする ⑥立つ瀬を守る 人のためにこそ、木を植えよう 人のためにこそ、木を植えよう 「美しさ」を見直そう 人が発明した『美』、自然が持つ『美』 幾何学的な美しさ、不定形な美しさ 自然を外から見る、内側から見る ■素材を選ぶ 苗木から育てる 成木を植える タネを蒔く *それぞれの良さを区別し、場に応じて 九州固有の自然の美しさ ex.針葉樹、常緑広葉樹の組み合わせ景観 紅葉の混じる風衝植生、雄大な草地 ■九州の自然は危機にある モウソウチクの侵略、鹿の食害 ※短期成果主義から脱皮することの大切さ いのちを守る「緑」づくり 時をかけて風景を醸成する V • 安全・安心な山づくり 昔、災害に備える暮らし方、 森の作り方があった。 災害につよい木を植えよう 立地によって災害に強い樹種が違う そのために、まず場所をよく見よう。 稼ぐための 「緑」 をつくる 今稼げない造林地もやがては。 どんな形にしておく? 地域個性に応じた稼ぎ方がある 今は無理か? 知恵の絞り方 公共が無理なら、民間で 人の都合だけ考えてはダメ 目的に応じて、場所に応じて樹種を選ぶ 一つの樹種だけがはびこる森はない ランダム集中植栽による 自然配植緑化(のり面編)の紹介 それぞれの苗木が喜ぶ育ち方がある 助け合いの森の形が美しい 5 2)巣植え ランダム集中植栽による 自然配植緑化とは 自然配植緑化とは 側枝が触れる距離で密植 a. 同種苗木を数本まとめ植える植樹法 b. 苗木の頂芽優勢により上伸成長が促 進される 1)多樹種幼苗植栽 2)巣植え 2~20本 c. 風雨、雪害によく耐え、虫害が少ない 3)樹冠想定 自形性・他形性 d. もっとも成長のよいものが残り、ほか は10? 20年程度の間に枯損していく。 4)ランダム集中植栽 5)岩盤評価 6)微気候を生む微地形を備えた植生基盤の造成 7)簡易法面植栽柵を用いた法面苗木植栽 徐々に苗木どうしの競争が起こ りやがて一本だけが育つ 3)樹冠想定 自形性・他形性 4)ランダム集中植栽 a. 森の骨格となる樹冠木および植栽密度を決める。 b. 樹冠(枝の広がり)が鈍化する50年程度経過後の樹冠の予 想を行う。 c. 樹冠の十分な欠損部(樹冠木の樹冠が広がらない場所)を 確保。 d. 植生遷移後期の発達した森で低木・亜高木が十分生育でき る光分布を予想する。 e. その場所に遷移後期性低木・亜高木の苗木を植栽密度を考 慮し、植栽する。 a. 従来の造林的緑化では同齢林構造となり人工感の強い 環 境をもたらす b. 自然回復過程に見られる異齢林構造にすることで、景観的 に自然性を高める c. 自然界でも一般的に見られる空間分布構造 d. 成長速度にばらつきがでるため林内下層、林床の受光量が 増加し、多様な種の生育が可能 他形性樹種 自形性樹種 近づけてよい 3? 5本の巣植えを行う 離す [将来の想定樹冠 → 従来の造林的配植 [植え付け時の計画] ランダム集中植栽 5)岩盤評価 (岩盤法面の植栽基盤の 適合性評価調査) a. 岩盤法面の摂理、亀裂、湧水などの調査 b. 植物生育基盤としての適合性を検討 c. 植栽の計画設計を実施 岩盤評価図 7)簡易法面植栽柵を用いた 法面苗木植栽 ・針葉樹および広葉樹 繊維板をアンカー で固定する。 ・施工後3年あたりから腐食し、土に還元 岐阜県白川町道路(植栽直後) 6 メーカーカタログ及びHP より 岐阜県・多治見市道路 切土盛土法面植栽施工事 岐阜県・多治見市道路 切土盛土法面植栽施工事 植栽直後 植栽後6年経過 岐阜県・多治見市道路 切土盛土法面植栽施工事 岐阜県・白川町道路 切土法面植栽施工事 植栽後6年経過 林内の状況 植栽後6年経過 林内状況 簡易法面植栽柵 一ヶ所あたり3本づつ植栽されている 施工後5年 簡易法面植栽柵の原型が残る 緑化における自然配植 • 基本的考え方: 三方一両得の思想:享受する人、つくる人、 安定的自然(多様な生物) 人の願い、「地」の赦し 人の立つ瀬、自然の立つ瀬を守る 小さな負荷でヒトが利用できる資源をつくる 7 産学官技術交流会 『 ス ト ッ ク 型 社 会 の 形 成 に 向 け ての 講 演 会 』 ( 平 成 17 年 度 産 学官 連携 事 業) 次 世 代 シ ス テ ム 研 究 会 第3 3 回 研 究 会 (拡 大 研 究 会 ) 平成17年 11月 ※ こ こで は 概 要 を記 載 し 、 具体 的 な 内 容は 「Ⅳ 受 託 調 査お よ び 研 究実 績 」 平 成1 7 年 度 産学 官 連 携 事業 産 学官 技 術 交 流会 『 ス ト ック 型 社 会 の形 成 に 向 け ての 講 演 会 』 (P ∼P )に 掲 載 い たし て お り ます 。 1 12日 産 学官 技 術 交 流会 実 績 につ い て ( スト ッ ク 型 社会 の 形 成 に向 け て の 講演 会 ) 1 .実 施 日 ・ 開催 場 所 実 施 日 時 : 平 成 17 年 11 月 12 日 ( 土 ) 講 演会 13 : 0 0∼ 17 : 0 0 交流会 1 7: 00 ∼ 1 8 : 3 0 開 催 場 所 :学 校 法 人 九州 国 際 大 学文 化 交 流 セ ンタ ー 多 目的 ホ ー ル 、2 0 3 教 室 2 .参 加 者 実 績: 講 演 会 参 加 者 : 12 7 名 交 流会 参 加 者 : 55 名 ( 内 10 名 は 講 師 ) 講 師等 ( 講 師 、挨 拶 者 、 司会 者 等 ) 産 産 4 学 4 官 2 産の経 営層 (企 業、 個人 企 22 業) 産 (会 社 員 ) 44 学 大 学等 関 係 者 17 官 官 (自 治 体 等 ) 8 官(公 設試 、自 治体 の研 究 4 者) そ の他 ( 団 体 ) 事 務局 合 17 K IA C ( 産 ) 3 大学 1 官 (九 経 産 局 、公 設 試 等 ) 1 計 産 73 学 22 官 15 そ の他 17 総計 2 127 13:00∼13:05 共催挨拶 : 財団法人九州地域産業活性化センター 常務理事 清水 正行 13:05∼ 多目的ホール(1F) 講演内容 講演者 講演時間 テーマ解説 テーマの解説 九州国際大学次世代システム研究所 顧問 平澤 13:05∼13:20 基調講演1 『資源自立・長寿命ストック型社会とは 九州国際大学次世代システム研究所 所長 岡本 久人 13:20∼13:55 川上 征雄 13:55∼14:30 専務理事 高藪 裕三 14:30∼15:05 ∼ECO-ECO 理論∼』 基調講演2 『21世紀の日本の政策課題』 内閣府政策統括官付(社会基盤担当)参事官 基調講演3 『産学官連携による地域経済圏の形成』 社団法人日本プロジェクト産業協議会 15:15∼(各35分) 多目的ホール(1F) =躍進する未来の部= 日本の政策を通して九州の未来を探る A 『木質資源を中心とした資源自立圏の構築に向けて』 京都大学生存圏研究所 所長 B 『地域経済と新たな地域金融手法』 日本政策投資銀行九州支店企画調査課 調査役 武田 浩 15:50∼16:25 C 『広域地域圏と北九州の未来』 北九州市企画政策室 16:25∼17:00 室長 川井 秀一 片山 憲一 15:15∼15:50 15:15∼(各35分) 203教室(2F) =持続可能な地域の部= あなたの地域の未来が見える D 『ストック型街区の事業メリット』 株式会社ソリュート総合研究所 代表取締役 坂本 E 『人口減少社会の街づくり』 九州国際大学次世代システム研究所 主任研究員 五十嵐 F 『豊かな環境にやさしい街づくり』 株式会社新日鉄都市開発九州支店 取締役支店長 岩科 3 圭 15:15∼15:50 健 15:50∼16:25 健一 16:25∼17:00 気候変動と災害リスク −ストック型社会の構築に向けて− 次世代システム研究会第34回研究会 平成18年 1月 21日 財団法人日本気象協会調査部 主任技師 1 後藤 祐輔 本日の内容 地球温暖化について 気候変動と災害リスク ・メカニズム ・過去100年間はどうだったのか ∼ストック型社会の構築に向けて∼ ・今後100年間はどうなるのか ハザードマップについて ・ハザードマップとは ・ハザードマップの効果と限界(問題点) 財団法人 日本気象協会 後藤 祐輔 社会基盤整備について ・温暖化対策としての社会基盤整備 ・気候変動による災害等のリスクを考慮した社会基盤整備 2006/01/21 地球温暖化とは? 地球温暖化とは? 本当に気温は上昇しているのか 1.0℃/100年の上昇 地球温暖化とは 、人 地球温暖化とは、 間活動の拡大により 二酸化炭素、メタン、 二酸化炭素、メタン、 亜酸化窒素などの温 室効果ガスの大気中 の濃度が増加し、地 表面の温度が上昇す ることをいいます。 高温を記録した年が 1990年以降に集中 棒グラフは平均気温の平年差 赤線は5年移動平均 緑線は長期的傾向 日本の年平均地上気温の経年変化(1901∼2000年):気象庁調査 過去100 年間の 過去100年間の 年降水量は減少傾向 年降水量は減少傾向 気温上昇は地域によって異なる 地域 地点名 北日本 旭川,網走,札幌,根室,寿都,山形, 石巻,福島 東日本 伏木,長野,高山,前橋,熊谷,水戸, 敦賀,岐阜,飯田,銚子,津,浜松,東 京,横浜 西日本 境,浜田,彦根 ,下関,神戸,和歌山, 境,浜田,彦根,下関,神戸,和歌山, 福岡,宮崎,松山,多度津,高知,徳島 南西 諸島 日本の年降水量の経年変化 (全国51地点の平均値) 名瀬,石垣島 各観測地点の100年あたりの 年降水量の変化率(単位:%/100年) 36地点の100年当たりの年平均気温の上昇率(単位:℃/100年):気象庁調査 (気象庁資料) 50mm以上の降雨日数は 50mm以上の降雨日数は 地域によって増減あり 日雨量・時間雨量は増えている 40 35 1時 間 降 水 量 :χ 2 =40.8> χ 2 5% =9.5 2 2 日 降 水 量 : χ =13.8> χ 5% =9.5 ︵ 発 30 生 25 頻 度 20 1時 間 降 水 量 日降水量 1時 間 降 水 量 回 帰 式 日降水量 回帰式 ︶ % 15 10 5 0 1901-1920 1921-1940 1941-1960 1961-1980 1981-2000 期 間 全国60カ所での100年間の上位3位までの期間別発生頻度 「20世紀の日本の気候」引用 2 降雪量の変動傾向 渇水の頻度は増えている 北海道では変動が小さく、毎年同程度の降雪がある。 北陸地方では、変動が激しく最近は少雪傾向を示す 「20世紀の日本の気候」引用 「平成13年版 日本の水資源」を加筆 気候変動を予測する40 のシナリオ 気候変動を予測する40のシナリオ 気候変動予測モデル SRES(Special Report of Emission Scenarios)シナリオと 呼ばれています。それらのシナリオは,4つ(A1,A2,B1, B2)のシナリオファミリーに大別されます。 大気海洋結合モデルのイメージ 「IPCC 第三次評価報告書」を引用 温暖化ガス排出量予測 今後 気温はどれくらい上昇するのか 気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の第三次評価報告書 (2001)によれば,2100年の地球の 気温は1990年比べて 1.4℃∼5.8℃上昇,平均海面水位は9∼88cm上昇す ると予測している。 「IPCC 第三次評価報告書」を引用 「IPCC 第三次評価報告書」を引用 真夏日の日数は増加する 集中豪雨は増大する地域がある 1900年∼2100年までの日本の真夏日日数 現状と100年後のそれぞれ20年間 の年最大日降水量を基にして、100 年確率雨量を算定。 (2001年以降についてはシナリオ「A1B」を用いた結果) それらの値を同じ地域同士で比較し 比ををとったもの。 北陸・東北地方の日本海側で増大 するという結果。 日本列島を覆う格子(100km×100km程度)のうち一つでも最高気温が30℃ を超えれば、真夏日1日と数えた。都市化が考慮されていないこと、広い面 積の平均を基にしていることから、絶対値は観測データと直接比較できな い。相対的な変化のみが重要。 東京大学気候システム研究センター http://www.ccsr.u-tokyo.ac.jp/what_is_new/PressRelease040916.htm 100年確率最大日降水量の変化率 岩井法(100年後/現在) より引用 3 「地域気候モデルを用いた地球温暖化に伴う洪水・渇水リスクの評価に関する考察」 和田和範・村瀬勝彦・冨澤洋介 水工学論文集第49巻 2005年2月 より引用 降雪量は減少する 温暖化による降水パターンの変化の影響 温暖化による降水パターンの変化の影響 年間降雪量の変化量 年間降雨量 の減少 ●干ばつ ●渇水 ●生態系の変化 ●土壌の変質 短時間降雨量 の増加 ●洪水の被害(浸水,氾濫) ●流出量の変化 ●流出土砂量の変化 降雪量の影響 ●積雪によるストック水量の減少 ●融雪流出のピークが冬季に 注) [2081 ∼ 2100 年平均値]−[1981 ∼ 2000 年平均値] 「地球温暖化予測情報 第6 巻(気象庁)」より引用 地球温暖化が 地球温暖化が与える様々な影響( 与える様々な影響(2) 地球温暖化が 地球温暖化が与える様々な影響( 与える様々な影響(1) 脆弱な分野 対象,システム 閾値 自然生態系 高山植生 マングローブ 0∼2℃で生息域縮小 海面上昇約50cm/100年で沈水 農林水産業 稲 開花時35℃を超えると高温障害 海洋環境 サンゴ礁 1∼2℃水温上昇により白化現象 海面上昇40cm/100年で沈水 沿岸域インフラ 社会システム 砂浜 港湾・海岸施設 30cmの海面上昇で56.6%、1mで 90.3%の砂浜減少 1mの海面上昇で対策費11.5兆円 人間の健康 高齢者 (65歳以上) 日最高気温が33∼35℃を超える と死亡率増(地域により変化) 洪水ハザードマップにまつわる近年の流れ ハザードマップとは (別名で、避難地図) 平成6 平成6年:建設省河川局通達 洪水ハザードマップの作成推進 想定外力(ポテンシャル) たとえば ・河川氾濫・津波・高潮による浸水深 ・土砂災害の危険地域 ・過去の災害発生地域 ・想定地震の震度分布図 避難活用情報 ・避難所位置 ・避難経路 ・避難経路上の危険箇所 ・情報伝達の系統図 平成13 年:水防法改正 平成13年:水防法改正 あくまで想定外力な ので、想定外の自然 現象が起こり得る事 を明記。 一級河川における洪水ハザードマップ作成・整備の義務化 平成17 年:水防法改正 平成17年:水防法改正 主要中小河川における浸水想定区域の指定 洪水予報等の情報伝達方法、避難場所の周知徹底 ⇒ 住民避難対策の一層の拡充 災害学習情報 ・緊急時の行動について ・緊急時連絡先 ・現象発生のメカニズム ・平常時の心構え ・持ち出し品 ハザードマップの目的 洪水ハザードマップの例(1) 洪水ハザードマップの例(1) 災害対策 • ハード対策ー防災 Prevention (防ぎきる (防ぎきる)) 洪水・津波を市街地へ氾濫させないことを前提 ・計画規模を上回る災害には対応していない ・被災ポテンシャルの高まり ・住民が災害から遠ざかる(災害過保護)→ ・住民が災害から遠ざかる(災害過保護)→過度な行政依存 • ソフト対策ー減災 Mitigation 洪水・津波の氾濫の発生を前提 ・人的被害を最小限に食い止めることを目的 ハザードマップ:ソフト面での災害対策として位置付け <ハザードマップの役割> ・予測浸水深の地図表示(浸水予測図) ・災害情報の伝達方法、避難所の位置等の避難情報の提供(避難活用情報) ・自然現象の理解を促すための災害教育の教材(災害学習情報) 新宿区 http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/bousai/hazard%20map/mapkouhyou.htm より引用 4 ハザードマップの公表効果 地震による災害想定図 福島県郡山市の例 平成10 年 洪水ハザードマップの作成 平成10年 平成10 年 東日本豪雨災害 平成10年 平成12 年 洪水ハザードマップの改訂 平成12年 平成14 年 台風6 平成14年 台風6号 ○ 危機管理効果(行政側) ・ハザードマップ作成による要避難人口の把握 ・適切な避難所配置や避難情報発令タイミングの決定 ⇒円滑な住民避難の誘導を実現 ○ 公表効果(住民側) ・住民の避難率の向上(+10 %) ・住民の避難率の向上(+10%) ・住民の早期避難(避難開始のタイミングが1 ・住民の早期避難(避難開始のタイミングが1時間早かった) ・家財保全行動や情報取得行動の促進 大阪市管理室 http://www.city.osaka.jp/kikikanrishitsu/bousai/jishin/soutei/html/os0614.html より引用 気候変動などによる災害リスクを 考慮した社会基盤整備 温暖化対策としてのインフラ整備 ・新エネルギーを電力供給の軸としたエコエリアの形成 (風況マップや日射量・水資源賦存量マップ) 既存の多目的な防災構造物の紹介 ・避難ビル ・循環型社会へシフト ・ペデストリアン・デッキ ・温室効果ガス排出削減への集中的な取り組み ・スーパー堤防 避難ビル、ペデストリアンデッキ スーパー堤防 津波発生時に津波到達時間いないに高台に避難できない地 域を対象としてを避難所としての避難ビルの指定する取り組 みがある(高台を点で確保) ペデストリアンデッキは、歩道 の確保、人車分離効果(車から の排ガスの抑制、交通事故の 削減対策)などを目的として建 設されているが、安全な避難路 として活用することも出来る。 沿岸部においては、高台を線 で確保することが可能。 妙典地区 (国土交通省 江戸川河川事務所HPより) ・河川堤防の強化をするために、堤防の外側を幅広く緩やか に盛り土することで、決壊を防ぐ取り組みが始まっている。高 規格堤防(スーパー堤防)と呼ばれている。 下関駅周辺のペデストリアンデッキ (http://www7.plala.or.jp/tower/shimonoseki/kaikyoyumetower.html) 5 ストック型社会論の展開 地域分散型「田舎の田舎」モデル 集中と分散 次世代システム研究会第35回研究会 平成18年 3月 11日 株式会社日建設計 上席理事 1 遠松 展弘 展開への課題とチャンス 選択と集中モデル インフラの長寿命化投資は 選択と集中が前提 「100年建築のゴーストタウ ン化は避けたい。」 ストック型社会論の展開 地域離散型「田舎の田舎」モデル 集中と分散をつなぐ経済的還流 海外新たな兆候 木材市場と石油市場 セフティーネット 集中と分散(地域)の セットモデルで展開 荒廃する森林 中国輸入量 木材 世界輸入量 96 97 C重 油価 格 98 99 0 1 2 50 00 0 45 00 0 C重油 40 00 0 35 00 0 30 00 0 円/ ? • ・防御策 森林の公益性確保 秩序ある開発 • ・振興策 木材市況の回復 (民間資金還流) 生物資源の高騰シナリオ 一次産業再生のチャンス 選択と集中の実施は「痛み と抵抗」が予想され、往々 にして実施が遅れ、タイミン グを失う恐れ大 集中と分散 Think global act local 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 生物資源(森林・農産物・漁 業)は有限 枯渇の恐れ 25 00 0 20 00 0 15 00 0 10 00 0 森林整備の緊急性 2 005年 4月 20 0 4年4 月 20 03 年4 月 2 00 2年 4月 2 00 1年 4月 2 00 0年4 月 19 99 年4月 19 98 年4月 1 997年 4月 19 9 6年4 月 19 9 5年4 月 0 19 94 年4 月 5 00 0 林業就業者の推移 立木価格の低迷 住宅着工件数 木材の供給量 ・人口減 1400000 ・地方、郊外の 減少幅 大 1200000 1000000 ・リサイクル、 長寿命の影響 800000 最大供給量? 600000 非木造 400000 木造 200000 木造住宅減少 0 平成10年 2 12年 14年 我国人口林の林齢別面積 林齢の偏在 今後15∼20年 2040年の樹齢別蓄積量 林齢別面積 ピークはストックとして 次世代へ 万ha 180 万? 160 140 70000 120 本伐のピーク 60000 100 80 50000 60 40 40000 2005年 2040年 20 91∼ 86∼90 81∼85 76∼80 71∼75 66∼70 61∼65 56∼60 51∼55 46∼50 41∼45 36∼40 31∼35 26∼30 21∼25 16∼20 1∼5 6∼10 11∼15 そのまま市場に 出ると価格暴落 30000 0 20000 林齢 10000 間伐期間 搬出可能な木材(45年)累積量 91∼ 86∼90 81∼85 76∼80 71∼75 66∼70 61∼65 56∼60 51∼55 46∼50 41∼45 36∼40 31∼35 26∼30 21∼25 16∼20 1∼5 6∼10 実はストック 11∼15 0 ストックの谷間(負の遺産) 樹齢別、林齢別炭素吸収量 搬出可能な木材量/年 10000 5 スギ、ヒノキは 4.5 11∼30 ピーク 3.5 12000 4 スギ ヒノキ カラマツ クヌギ ブナ 3 2.5 8000 2 1.5 老齢化に入る→ 0.5 1 2015 2025 年 2035 71∼80 61∼70 51∼60 41∼50 若齢林に切替 0 2005 31∼40 0 2000 21∼30 4000 04年の国産 製材・合板 供給量 約1150万? /年 日本の人口林は 11∼20 6000 0∼10 04年の製材・合板用需要 総量(丸太換算) 約4750万? /年 2045 長野県主要樹種林分材積表に基づき林野庁試算 直川村地域新エネルギー詳細ビジョン 伐採による炭素吸収量の影響 炭素吸収総量/年 3000 木質バイオマス発電 炭素吸着量 2500 3000 2000 2500 炭素量t 炭素吸収量の試算 2003年程度伐採と植林 が継続されたケース (人口林) 1500 • 木材の新規需要 1000 500 2000 0 年 • 林業復興 1500 万t 13百万t上限 大分県 1000 炭素吸収量は現在が ピーク • CO2削減 500 0 2005 宮崎県 2025 2045 年 2065 2085 バイオマスガス化発電 施 設 計 画概 要 ケ ース Ⅰ 対 象 森 林面 積 広 域 5市 町 村 発電出力 1500kw 送電電力 1280kw 運転形態 24h/日 × 330日 間伐材量 12432t/年 廃 材 量 (バ ー ク) 4200t/年 対 象 バ イオ マス 合計 16632t/年 A) 同 上 (廃 材 除 く)12432t/年 処理能力 2100kg/h 年 間 送 電量 10135294kwh 温 水 回 収量 2085kwh 炭発生量 713t/年 灰発生量 7.4t/年 概 算 建 設費 13億 円 維 持 管 理費 21100千 円 施設面積 1750㎡ ケー スⅡ 直川 村 程 度 650kw 515kw 同左 3324t/年 4200t/年 7524t/年 3324t/年 /年 950kg/h 4082050 897kwh 515t/年 3.0t/年 8億 円 10200千円 1125㎡ ロータリーキルン式ガス化発電 バイオマス原料 ケ ース Ⅲ 廃材除外 3 伐採フロー図 間伐材腑存量 山 森林組合 市場 循環利用林 5688ha (助成金) 運搬15km 2.6%/年 バーク材 山土場 ) 搬出(0.5km) 3500 運搬(15km) 1800 助成金方式 切捨残材売却(2600×0.65+2878)? ×10000円/? =45680千円 スギ 2600? × (11315円+4200円)/? スギ・ヒノキ 助成金 間伐材市場売却 2600? ×0.35×14500円/? =13195千円 ヒノキ =40339千円 伐採量万? 50ha/ 年 用材供給量(丸太)/ 年 製材供給量(丸太)/ 年 間伐供給量(万? )/ 年 本伐切捨て量(? 流 用)/年 木質資源(燃料)供 3500.0 3000.0 万? 2500.0 2000.0 1500.0 間伐業務は現在が ピーク 100年サイクルの森 10万ha/年の本伐 製材・合板用丸太 400.0 間伐材 売却10000 円/? 収入 残材 売却10000円 /? 収入 収入合計 現在の供給量 200.0 収支 600.0 0.0 年 2005年 バイオマスガス 発電用木質材供 給量 2040年 2035年 2030年 2025年 2020年 2015年 2010年 2005年 0.0 発電事業収入と間伐材購入費 バイオマスガス発電・費用負担の仕組 国民・企業 売電収入 (15円/kwh) 億円 間伐購入費 公益性(防災、景観、生態) 0.15円/kwh 1200 1000 他の自然エネルギー発電 とは異なる。 800 600 電力会社 →有償材で発電 400 2040年 2035年 2030年 2025年 2020年 2015年 2010年 0 2005年 間伐加算 広く国民、企業が負担す べき事項 200 1000.0 800.0 500.0 1400 間伐業務 経費133 00円/? 残材搬出・運搬経費53 00円/? 経費合計 1400.0 1200.0 当面収支は低いが 将来は改善される。 1000.0 1600 1600.0 余剰金 NPO CO2削減 バイオマスガス発 電事業者 ば 売電15円/kwh い 加算32.82円/kwh お ま 監視 す 支援 機器開発 メーカー バイオマスガス化発電・試算 →廃棄物利用で収支を図る 例が多い。 バーク 間伐材費 灰処理費 一般管理費 人件費 メンテナンス ユーティリティー 元本返済 金利 原価償却 電力会社接続料金 25 円/kwh 一般25円 20 業務用15円 原価償却と金利で30%弱 新たな支援の仕組必要 • • • • • • • 40 30 電力料金 木質系燃料購入 10000円/? バイオガス発電原価 /kwh 45 35 15 10 市場価格 林地所有者 委託 5 0 1 4 配当 森林施業企業 小口径材 残材(森林整備) 大分県佐伯市旧直川村地区 施設設備費13億円 補助率75% 自己資本1億円 間伐材購入費が60%占める。 製材・市場 大口径材 基金 バーク(樹皮)は廃棄物=0円 2040年 4000.0 合計=58875千円 2035年 4500.0 < 間伐・搬出業務の収支試算 木材供給計画 木材供給量 計=5756? 搬出率 50% 2878? バイオ発電売却方式 間伐材売却+助成金 4200 5300 B=4710? 60? /ha 2030年 8000 助成金 市場売却 (材積換算) 切捨て材積量 A=1047? 2025年 小計 • 5500 500 2000 60% 2015年 伐倒・玉切り 機会損料 木寄せ 間伐切捨て 面積78ha 131ha 運搬15km 2020年 間伐作業経費(円/? • • • 発電所 間伐・残材 2600? 20? /ha 間伐対象面積 40% 木質廃材 2010年 0.5km 50? /ha 搬出材積量 原木 搬出0.5km 伐倒・玉切 間伐・搬出面積 52ha 面積8000ha 森林面積7276ha 人口林 5200ha 林家数352戸 人口3000人 就業人口1000人 産業 農林、サービス 総生産量58億円 田舎の田舎モデル 結び • 林業就業者は6万人 • 新規木材需要 1400億円の創造 • 全国で3万人雇用創出 • 小規模業種、1000万h aの森林への投資効果 は大 • モノよりヒトを大切に (1400億円は人件費) • 田舎の田舎の風景は そのままが良い。持続 することが価値である。 • 森林は国民の共通財 産、林業や森林問題を 地域に押付けない。 • 森林樹齢のピークは次 世代のストックとして生 かす戦略が必要 5 ストック型街区の形成に向けて 次世代システム研究会第36回研究会 平成18年 5月 13日 1)はじめに 学校法人九州国際大学次世代システム研究所 主任研究員 五十嵐 健 2)ニーズと構成要素 九州職業能力開発大学校 居住・建築系教授 岩下 陽市 坂本 圭 大村 圭一 3)事業性と事業手法 株式会社ソリュート総合研究所 代表取締役 4)高耐久建築構造用素材としてのステンレス鋼の適用性 新日鐵住金ステンレス株式会社商品技術部商品技術室 室長 5)メリットと課題 学校法人九州国際大学次世代システム研究所 ※ 主任研究員 五十嵐 1 )、 2 )、 3 )、 5 ) の 内 容 に つ き ま し て は 「Ⅱ ストック型社会形成に関する論文」 『ストック型街区形成に向けて』P 1 ∼ P に掲載いたしております。 健 高耐久建築構造用素材としてのステンレス鋼の適用性 次世代システム研究会第36回研究会 平成18年 新日鐵住金ステンレス株式会社 13日 商品技術部商品技術室 室長 2 5月 大村 圭一 1. ステンレス鋼の概要 高耐久建築構造用素材として のステンレス鋼の適用性 1-1. ステンレス鋼の定義 ○ 1988年1月に、下記定義に国際統一 ・炭素(C);1.2%以下 で 1. ステンレス鋼の概要 2. ステンレス鋼の種類 3. ステンレス鋼の製造方法 4. ステンレス鋼の用途例と機能 5. 高耐久建築構造用材としての適用性 ・クロム(Cr);約10.5%以上を含む ・合金鋼 (鉄基合金) 図1.1 Fe-Cr合金の人工海水中浸漬後の外観 (25℃、人工海水中、3ヶ月間) ○ ステンレス(Stainless Steel)とは Stain Less Steel = 「錆び難い鋼」であり、 ∼建築・土木分野での適用拡大にむけて∼ 全く錆びない訳ではない 平成18年 5月13日 新日鐵住金ステンレス株式会社 商品技術部 商品技術室 大村 圭一 図1.2 Fe-Cr合金の10年間の暴露試験結果 ( Schmitらの実験結果、参考文献(1))、(1mil=0.0254mm) 2. ステンレス鋼の種類 1-2. ステンレス鋼の耐食性 2-1. 分類 ∼ ステンレス鋼の不動態皮膜構造の模式図 ∼ O 環境 O H H O H O H O H O Cr O H H H O O 不動態 皮膜 10∼30Å O O O Cr Cr Cr O O ○素地中のクロム(Cr)が外界の酸素(O)と 結合し、表面に厚さ10∼30Åの薄い不 動態皮膜(保護皮膜)を形成 ○不動態皮膜はCr2O 3・nH 2Oで表される網 目構造の酸化皮膜 ○この不動態皮膜が腐食の進行を防止 ○不動態皮膜は、一般環境下では自己補 修能があり、物理的に破壊されても瞬 時に再生するため、耐食性が維持され る O O O O O ステンレス鋼素地 図1.2 分類 Fe-Cr系(クロム系;JIS400番台) 主要 成分 13Cr 18Cr 18Cr-8Ni 25Cr-5Ni -1.5Mo 17Cr-7Ni -1Al 金属 組織 マルテンサイト フェライト オーステナイト オーステナイト + フェライト(二相) オーステナイト 非硬化(高耐 力) SUS 329J系 析出硬化 貯水タンク 化学工業 海水熱交換器 バネ、ボルト バルブ 硬化性 ステンレス鋼の不動態皮膜の模式図 焼入硬化 非焼入硬化 冷間加工硬化 代表 鋼種 SUS 410 SUS 420系 SUS 430 SUS 444 SUS 445 SUS SUS SUS SUS 主な 用途 刃物、ボルト、 バネ、軸受 厨房・家庭用品 家電、排ガス材 外装建材 建材、化学工業 原子力、車両 食品工業 <溶解> 線膨張係数 2 -6 炭素鋼 SUS 410 SUS 430 SUS 304 アルミニウム 比抵抗 密度 (μΩ㎝) (g/㎝ 比熱 3) 0.58 11 9.71 7.87 0.42 0.25 0.26 9.9 10.4 57 60 7.75 7.75 0.46 0.46 0.16 17.3 72 7.93 0.50 1.95 23 2.69 2.70 0.88 <精錬> <鋼塊/半製品> <連続鋳造> スラブ;板製品向 転炉 VOD スクラップ フェロアロイ 2-3-3. 耐食性(孔食電位) 降伏強さ 引張強さ 伸び (N/㎜2) (N/㎜2) (N/㎜2) (%) 196 323 42 205,000 265 480 32 200,000 304 490 30 SUS 304 193,000 284 637 55 アルミニウム1100 70,300 31 93 40 SUS 430 孔食電位 (V vs S.C.E.) ヤング率 0.6 ビレット;棒線、型鋼向 電気炉 0.7 210,000 <加熱炉> 高炉銑 3 (10 x(J/kg℃)) 2-3-2. 機械的性質 普通鋼SPCC SUS 410 SUS 630 SUS 631 3-1. 製造工程の概要 2-3-1. 物理的性質 熱伝導率 304 316 310S 301 3. ステンレス鋼の製造方法 2-3. ステンレス鋼の特性 (10 x(W/m.℃)) (10 /℃) Fe-Cr-Ni系(ニッケル系;JIS 300番台、600番台) AOD <熱間圧延> <熱延コイル焼鈍酸洗> <熱間圧延> <熱処理> <冷延圧延> <冷延コイル焼鈍酸洗> (3.5%NaCl、30℃) 0.5 0.4 薄板 0.3 0.2 <酸洗> <調質圧延> 0.1 薄板製品 0 厚板 -0.1 10 15 20 25 孔食指数 (Cr+3.3Mo) (%) 厚板製品 <熱間圧延> 30 線材製品 棒線 4. ステンレス鋼の主な用途例と機能 3-2. ステンレス鋼のリサイクル性 (1) 建築外装材 (2). 海洋構造物ライニング (3). 家電製品 (4). 精密機器 1999年度 年産300万㌧での、ステンレス鋼のリサイクルフロー 溶銑;60万㌧ 鋼材 輸出 120万 ㌧ 転炉 フェロクロム;75万㌧ フェロニッケル;12万㌧ (5) 家庭用厨房 炭素鋼スクラップ;38万㌧ 輸入スクラップ;12万㌧ 国内向け 出荷 150万㌧ 電気炉 国内消費 130万㌧ 加工スクラップ;10万㌧ 加工スクラップ;10万㌧ 工場発生スクラップ;45万㌧ ステンレスのリサイクル率は約50% 鋼種;SUS312L /高耐食・耐久性 (6) 食品タンク 輸入スクラップ;12万㌧ リサイクルスクラップ;45万㌧ リサイクルスクラップ;45万㌧ 工場発生スクラップ;45万㌧ 鋼種;SUS 445J1 /耐銹性、意匠性、低熱膨張 スス クテ ラン レ プス 鋼種;SUS 301等 /バネ特性、耐食性 鋼種;SUS 430LX /耐食性、意匠性、防汚性 (7) 自動車排気系 ッ リ サ イ ク ル 5 0 % 海外発生スクラップ 製品輸出;10万㌧ ステンレス 鋼材生産量 ;270万㌧ 鋼種;SUS 304J1等 /耐食性、プレス成形性 出展;ステンレス協会 3 鋼種;SUS 304等 /耐食性、清浄性 鋼種;SUH 409L, SUS 430J1L, SUS436L等 /耐熱性、耐食性、成形性、溶接性 5. 高耐久建築構造用材としての適用性 5-2. 建築・土木構造用ステンレス鋼の課題と取組み ∼ 建築・土木 構造材分野での適用拡大にむけて ∼ 5-2-1. 課題 (1)ライフサイクルコスト(LCC)は有利 との試算はある(図1)が、鋼材価格 高による初期コスト増が顕著 5-1. 従来の建築・土木分野へのステンレス鋼の適用 (1)外装建材(塩害地区屋根・壁材); ・SUS304、SUS316、SUS445J2、SUS312Lなど (2)内装建材; ・SUS304、SUS316など (3)モニュメント、ストリートファーニチャー; ・SUS304、SUS316、SUS312Lなど (4)土木;ダム戸当り、高架道ルーバー、トンネル内装、海洋構造物ライニングなど ・SUS304N2、SUS304、SUS436L、SUS312Lなど (5)建築(土木)構造用; ・2000年に、JIS G 4321(建築構造用ステンレス鋼材4種;下記)が新設されたが、 使用量は1000㌧/年程度にとどまっている。 <SUS304A、SUS304N2A、SUS316A、SCS13AA-CF> ・試算結果; SUS304冷間成形型鋼コストは、 亜鉛めっき鋼材の4∼5倍 (2)建築構造用JIS規格鋼種(G 4321) はいずれもオーステナイト系であり、 通常の建築構造用鋼材とは、 図1 ・機械的引張挙動が異なる ・線膨張係数が大きい ・Ni含有のため高価 (性能的にもオーバースペック) 5-2-2. 取組み (2) 11Cr鋼の耐穴あき寿命の評価 (1) 視点;耐銹性よりも耐久性(耐穴あき寿命)を優先した材料の可能性 → 11Cr系(410Lクラス)の適用 33ppmNaCl溶液、50℃、12hr→60℃x12hr 乾燥、3サイクル後の外観 11Cr鋼 海浜環境(赤穂市)10年間曝露後の外観 11Cr鋼 SUS304 (18Cr-8Ni) SUS304 (18Cr-8Ni) 11Cr鋼 図2 屋外長期大気曝露試験での侵食深さ経時変化 <参考> 普通鋼の寝食速度=約100μm/year 図3 海浜環境(赤穂市)大気曝露試験 での侵食深さ経時変化 <屋外長期大気曝露試験結果からの推定> ・塩害環境(赤穂市)の実測データから、11Cr鋼の侵食量(最大孔食深さ)は、 普通鋼(SS400) 11Cr鋼 11Cr鋼 18Cr-8Ni鋼(SUS 304) 50年後で約0.4㎜、100年後で0.6∼0.7㎜ 程度 11Cr鋼の耐銹性は304に劣るが、普通鋼に対しては優位 (4)機械的性質(つづき) (3)建築(土木)構造用としての11Cr鋼の合金設計 (5)一般屋外環境での耐久寿命推定 引張特性:YUS410W-MSは普通鋼と同挙動 ①11Cr鋼は耐銹性には劣るが、耐穴あき寿命は十分 ②溶接性、溶接部靭性を考慮して、低Cマルテンサイト生成系とする ③構造用普通鋼と同様の引張強度特性を考慮して、焼鈍時完全フェライト系とする YUS410W-MS (11Cr-0.4Ni-低C、N) 5-3. 建築(土木)構造用YUS410W-MSの特長 (1)位置付け 図4 引張S-S曲線 (2)化学成分 図5 一般屋外環境での腐食進展の予測試験結果 構造用ステンレス鋼 耐久性 (6) 建築構造用鋼材としての大臣認定 (SUS304A 等) ・比較材;無塗装炭素鋼 (1)建築構造用鋼材として、建築基準法第37条認定取得 ・認定番号;MSTL-0084、MSTL-0085 建築構造用クロム鋼 亜鉛めっき(360mg/㎡) ・比較材は減肉厚さ、 (2)住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)第52条第1項 (YUS410W-MS) 「等級3」認定 ・認定番号;406 → 鉄鋼系無塗装材では初 ・75∼90年耐久保証住宅構造用鋼材 ・端面補修、ボルト穴補修、取り扱い疵補修、溶接補修が不 要 構造用炭素鋼材 (防食処理) YUS410W-MSは最大孔食深さ ・Y410-MSは100年間で0.1㎜程度 価格イメージ (7) 適用例 (9) 11Cr鋼の鉄筋への適用 (8) 品揃え 鉄筋腐食による鉄筋コンクリート構造物の劣化 アルカリ性のコンクリート中では鉄筋は一般には腐食しませんが、外部からの水分、塩分、酸素等がコンクリートを透過し、 鉄筋表面まで浸入すると腐食する場合があります。鉄筋腐食が進むと鉄筋自体が細くなるとともに、覆っているコ ンクリートが剥がれ、構造物としての性能、耐久性が劣化し、場合によっては大規模な補修工事が必要となります。 水分 酸素 溶接H形鋼 リップ付溝形鋼 中性化 塩分 錆発生 鉄筋 空隙、微小ひび 割れを通じて浸 入し、鉄筋腐食を 誘発する。 コンクリート ・ YUS410W-MSは、 ①高耐久 ②優れた施工性 ③低コスト ④環境負荷小 ⑤多様な品揃え の特長を有してる。 錆拡大 角鋼管 鉄筋 ・ステンレス鋼の新たな需要分野である建築・土木分 錆の進行、体積 膨張により、ひび 割れの拡大、コ ンクリートの剥離 を招く。 塩害を受けた海岸近くのコンクリート構造物 矢印がコンクリートが剥れ、錆びた鉄筋 が露出した部位 ステンレス鉄筋の適用 野において、今後適用拡大することによって、建築構 ・ステンレス鉄筋のJIS化・設計施工指針の作成:ステンレス協会 造物の高耐久化・信頼性向上に貢献可能と考えている ・コストパフォーマンスに優れたクロム系ステンレス異形鉄筋の普及 : NSSC 4 クロム系ステンレス異形鉄筋のコンセプト クロム系ステンレス異形鉄筋(NSSD410-295)の特長 ニッケル系ステンレス鉄筋 <塩化物を含むコンクリート中での長期耐久性> (SUS304等で国内で非磁性を 求められるような特殊な用途に 使用) 価格 イメージ <使用例> a) クロム系ステンレス異形鉄筋(NSSD410-295) クロム系ステンレス異形鉄筋 高耐久性鉄筋 エポキシ樹脂被覆鉄筋 (加工性、疵部 の耐久性に課題) b) 普通鉄筋 普通鋼鉄筋 写真 . 鉄筋コンクリート暴露試験後の鉄筋外観写真 耐久性 場所:新潟市東港内 暴露期間:18年 コンクリート内初期塩分量:0.5% 被り厚:25mm 表 鉄筋の機械的性質 0.2%耐力 引張強さ (N/mm2) (N/mm2) 295∼390 ≧440 規格 代表値 (D19) 337 481 伸び (%) ≧16 25 コンクリート環境で抜群の耐久性を有し、 鉄筋コンクリート造の耐久性を飛躍的 に向上させます。 曲げ性 180°曲げ (2号試験片) 公称直径の2倍 JIS G 3112 SD295B相当 普通鉄筋(SD295B)の 強度規格を満足 良好 NSSC光製造所・護岸堤防工事に使用 (平成17年7月) →NSSD410-295は建築基準法37条の大臣認定を受けております。 クロム系ステンレス鉄筋の適用先 コンクリート構造物の経年劣化を防止できる高耐久性鉄筋として ①海岸近く等の鉄筋腐食の生じやすい、またはメンテナンスの難しい 建築・土木構造物への適用 ②長寿命、高耐久性の要求される建造物への適用 (神社仏閣、博物館等) ③今後、社会的ニーズの高くなる高耐久性集合住宅等への展開 →スクラップ・アンド・ビルト型からの脱却による環境負荷低減(廃棄物、 CO2等) 国土交通省 住宅・建築関連先導的技術開発助成事業 「ステンレス鋼鉄筋による建築用超高耐久RC造の開発」 →クロム系ステンレス異形鉄筋も取り込み、その特長を最大限活用 できる設計施工技術の開発にも展開 5 立法府への政策提言 次世代システム研究会第37回研究会 平成18年 7月 8日 学校法人九州国際大学次世代システム研究所 所長 1 岡本 久人 B 現在の日本の課題 ストック型社会 転換の必要性/サマリー C 近未来の課題(日本と世界) (日本の課題連関図 ) ストック型社会転換の必要性/サマリー (日本の課題連関図) 近 未来の課題(日本と世界) 持続できない 地球環境 環 境 資源大量消費 (大量生産) CO 2 短 寿命 ストックレ ス 持続できない地球環境 バック・キャスティング 大量廃棄物処 理 現 在 環 将 来 ( 限 界) 森林減少 ゆとりの欠如 生 活 日 賃金・GDP世界一 生活不安 教育・サービス だ が,豊かさのない 生活 本 資源(資産)蓄積 (非生物資源ストック) 生産力低下 高生活コスト (高社会 コスト) (社会不安) 少子化・高齢化 人 間 食料自給率低下 高賃金 高生産コスト ※ 界 (食料自給・生物資源基盤) ※ 資源大量消費(大量生産) 世界人口:2050年に90億人 リ ストラ・非正規社員・賃金 格差 短寿命 CO2 日本の持続的人口は7千万人 資源自立 資源枯渇 (資源の取り 合い ) 人口増加・途上国経済発展 境 世 食 料など 海 外依存 雇用不安定 ストックレス 大量廃棄物処理 日本人を 産業空洞化 経 (第一次、第 二次、第三次) 済 産業災害多発 活かせない 地 温暖化・気候変動 その他いろいろ 球 大型プロジェ クト失敗 森林減少 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒8 05-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号Tel 0 93-661-8772 Fax 0 93-663-161 2 学校法人 九州国際大学 次世代シス テム研究所 財政枯渇 安全・安心のインフラ・ 都市・ 地域 設計 海面上昇 天災の増加 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6 番1号 Tel 093 -66 1-8772 Fax 09 3-663- 161 2 日本の未来を具体的に設計する 部分最適型社会から総合最適型社会へ D ストック型社会 ゆとりの欠如 日本の諸課題を統合的に解決する 生 ストック型社会政策 次世代 の安全・安 心 人間社会 教育・サービス だが,豊かさのない生活 生物 資源 地球環境保全 (社会不安) 長寿 命・スト ック型社 会 森林減少 STOP 食料自給率低下 資源蓄積 資源的自立 高品質 ・ 高生活コスト (高社会コスト) 活 C O2 減少 自然保 全 賃金・GDP世界一 生活不安 生活 の豊か さ C O2 固定 食料など リデ ュース 景気浮揚 ・安定雇用 高賃金 少量生 産 資 源 リサイクル コスト減少 廃棄物 減少 雇用不安定 日本のコス トの健全 化 日本人を 活かせる 社会 高生産コスト 海外依存 経 済 の 安 定 生 産 エネル ギー 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 09 3-661 -8 772 Fax 093-66 3-1 612 ストック型社会のつくり方−1(ハード編) E ストック型社会のつくり方−2 ストック型社会に向けたファイナンスの事例と経済連関 2050ゴール・設計図 (国) 稚内から与那国まで ・ ・ ・ 健全内需拡大 (景気の浮揚・雇用創出) (ソフト編) ス トック 型社 会政 策イ メージ 各種リサイクル法 ハード面 ・ソフト面 の 〒 805 -0059学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1 号 Tel 093-661 -877 2 Fax 093-66 3-1 612 地方自 治の ゴール の明示 (消費 税up ) 計 画(10%法) 株式投資 × 外為投資 × 公共債 ? ・世界 に誇れる 〈日本の 生産コス ト の健全化 〉 ・経済構 造の健全 化 /地域国 際競争力 山村 防災型 都市・ 〈 資源自 立圏〉 ②多世 代資 産形成 法 山村 ・ 資源的 安全保障 産業災害多発 大型プロジェクト失敗 農村・漁村・ ・地 球環境の 持続的 保全 ( 転換事 業) ・日 本の資 金で日 本の 資産を 造る 日本の資金の 海外流出 農村・漁村・ ・安 全・ 安心な 国民へ の夢と 希望の 提示 活かせない (第一次、第二次、第三次) 長寿命 型都市・ (日本 人を活 かせる 社会) ③資源 自立基盤整備法 リターン(リース料) 国民ルート 安全な資金運用 ゆとり 理論的・ 技 術的 How to スト ック型社会 転換年 次 その他のカード * 次世代 の安心 ・安全 社会 の実現 × まち づくり 豊か さ ・地方財 政の 済 年金ファンド 預貯金 長寿命型不動産の 証券化(価値不変 ) 民間金融ルート ・世 界一美 しい 経 産業ルート 金融機関 郵貯・簡保 日本人を ( ス トッ ク型地方社 会) 〈 資産 蓄積〉 ・国民生 活の 日 本の構造 改 革のゴール の 明示 ストック 型社会 (バッ ク・キ ャス ティング) オフバランス対応 (国民) 地方 圏205 0年計 画 * 部分最 適化の 回避 内閣 府?2 05 0年 計画庁 (低価格外国製品の流入) (郵政民営化) 地方 分権化 ・三位 一体改 革 *ゴ ール調整& マクロ 傾向分 析 リース型産業 産業空洞化 (地方) 既 成個別 法の統 合法 (2 050 年計画法 ) 高級長寿命型製品 自由化圧力(WTO) (民間) 国民へ の呼び かけ ①次 世代社 会形成 法 (地域) (国内産業) 海外技術移転 ・ ・・・ ・ ( 国) 長寿命型インフラ整備 スケルトン 経済の健全化 リストラ・非正規社員・賃金格差 F 政策提言:日本のゴール/ストック型社会転換 国内資産蓄積 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 ・健全 内需 拡大の 全国的 展開 (郵政 民営化 後の金融 資産の海 外流出の 回避、 財政枯渇 全国 的な景 気浮揚, 雇用促 進 民間 資金の 地域への 誘導、不 動産証券 国際化 ) 公共 投資か ら国民投 資へ 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 学 校 法 人 九 州 国 際 大 学 次 世 代 シス テ ム 研 究 所 〒 805 -0 0 59 北 九 州 市 八 幡 東 区 尾 倉 二 丁 目 6 番 1 号 Te l 093 -66 1- 87 72 F ax 0 93 -66 3-1 612 一 人 当 た り の 家 計 の 最 終 消 費 支 出 (米 ド ル 表 示 ) (2 0 00 年 ) 日 本 を 1 0 0 と し た 主 要 国 の 賃 金 (製 造 業 ) (2 0 0 1 年 ) 0 20 40 60 80 100 デ ン マ ー ク 0 120 1 1 8 .7 ス イ ス 5 ,0 0 0 1 0 ,0 0 0 1 5 ,0 0 0 2 0 ,0 0 0 2 5 ,0 0 0 2 0 ,4 6 8 日 本 1 1 1 .3 日 本 1 0 0 .0 ノ ル ウ ェ ー 1 5 ,3 7 4 イギ リス 8 3 .2 ア メ リ カ 8 0 .6 イ ギ リ ス 1 4 ,0 1 4 デンマ ーク 7 2 .7 ド イ ツ ス ウ ェー デ ン (1 9 9 9 ) 7 0 .1 オ ラ ン ダ 6 8 .3 オ ー ス ト リ ア 6 5 .1 カ ナ ダ 1 3 ,3 5 1 1 2 ,8 1 0 ドイツ 6 5 .1 ス ウ ェ ー デ ン 6 3 .4 オ ー ス ト ラ リ ア 6 2 .3 ベ ル ギ ー オ ランダ (1 9 9 9 ) 1 2 ,4 9 4 カナダ 1 2 ,4 0 5 6 0 .9 シ ン ガ ポ ー ル 5 8 .1 フ ラ ン ス 5 0 .9 韓 国 オ ー ス トリ ア 4 4 .0 ス ペ イ ン 1 2 ,2 4 5 3 9 .4 台 湾 ポ ー ラ ン ド 1 1 ,8 1 2 フランス 3 7 .9 1 3 .7 フ ィ リ ピ ン 1 1 ,1 8 8 イタリア 6 .7 タ イ 4 .4 中 国 ギ リシ ャ 2 .6 パ キ ス タ ン 1 .6 ロ シ ア 1 .5 イ ン ド 1 .0 7 ,2 2 6 タイ (1 99 9) 1 ,1 4 0 世界国勢図会 2004/05 p114より ストック(EX.家屋)の寿命 総務省統計局 世界の統計 2004 p72,73より 国別比較 ストック型社会と国民生活(生涯収支比較) この収支構造は為替レートとは関係ない ・・・ストック型社会 ヨーロッパ人の生涯収支 日本人の生涯収支 生涯コスト ゆとり ストック戸数をフロー戸数で除いた値(年)の国際比較 生涯コスト 0 50 100 アメリカ(91年) 150 ゆとり・・・・・・Buffer 103 当世代収支 イギリス(91年) 生涯収入 ≒2億4千万円 実質生活 生涯収入 実質生活 141 フランス(90年) 住宅 ≒6千万円 86 ※ 第二次世界大戦で独・仏は戦災にあった。 戦後復興のプレファブ家屋が更新期にあり ドイツ(87年) 住宅 前世代 からの ストック そのデータが含まれていると思われる。 79 世代間ストック 次世代 への ストック 30 日本(93年) 個人 も 出典:住宅の寿命分布に関する調査研究(2)(別紙)加藤裕久 国・地方自治体も ストック型社会: 収入格差があっても豊かな生活 「住宅研究財団研究年報」No.18 1991 〒 805-0059 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 公共投資に占める老朽更新コスト ストック型社会と生涯時間模式図 世代間倫理:後世代に負担を強いる短寿命型資産ほか (億円) 1,800 ヨーロッパ人の生涯時間 社会資本ストックの維持管理・更新投資推計 1,600 人生同じ75年でも ③維持修繕費 1,000 生涯コスト ゆとり 労働 支 出 生涯収入 生 涯 800 30年後 2035年 (平成47年) ①0(0%) ②541億(74.2%) ③150億(20.6%) ④37億(5.1%) 600 労働 400 200 2 2033 2031 出所 : 2005年 宮城県資料 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 (30年後)2035 2029 2027 2023 2021 (20年後)2025 2019 2017 2013 2011 2009 2007 2003 2001 (現在) 2005 1999 1997 1995 1993 1991 1989 1987 1985 1983 1981 1979 1977 1975 1971 (10年後)2015 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 1969 ストック 1967 0 ストック 1965 生 涯 支 出 自己時間 10年後 2015年 (平成27年) ①524億(71.9%) ②39億(5.3%) ③130億(17.8%) ④36億(5.0%) ④災害復旧費 1,200 ゆとり 生涯収入 ②更新費 1,400 睡眠 睡眠 生涯コスト 20年後 2025年 (平成37年) ①391億(53.7%) ②156億(21.4%) ③145億(19.9%) ④37億(5.1%) 現在 2005年 (平成17年) ①580億(79.7%) ②19億(2.7%) ③93億(12.8%) ④35億(4.8%) ①新規建設費 1973 日本人の生涯時間 日本の生産コストと賃金連関 連関コスト:累積人件費 経済:国際競争力の低下(生産コスト比較) 中間財製造コスト(設備) アジア 他の中間財(省略) 最終財生産コスト そ の 他 賃金の安い国 人件費以外のコスト 1 2 3 4 5 6 7 8 人数=10 9 10 設備償却費 人数=3 賃金の高い国 中間財生産コスト(鉄) 営 業 費 賃金=1 賃金=5 7% 8% 7% 人件費 設 計 費 人件費 80% 人件費以外のコスト 1 2 3 エネルギー 10% 累積人件費 20% (60∼70%) その他の素材 原料・燃料 据付作業費 土地代・金利 8% 内装品 設備償却費 加工作業費 税金・公共費 7% 設備償却費 その他 税金・公共費 土地代・金利 18% 日本国内 その他 5% 10% 素材・エネ コスト差 素材費 20% 鉄 15% 20% 管理 5% 人件費 自動化に要したコスト 管 理 費 (同一企業・同一品質・同量生産) 外注作業費 人件費 管 理 費 40% 20% 直営作業費 ライン 15% 人件費=人数×賃金 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 ストック型社会と地球環境問題 地球の資源生産と人間の資源消費の不一致 EX.再生産期間200年 全自然系 人間社会 人間の利用 森林消滅 利用期間30年 廃棄 (再建時CO2発生) × CO2固定機能消失 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 日本のエネルギー消費構造 日本のCO2排出量の比率 (2003年度 部門別最終エネルギー消費) わが国の二酸化炭素排出量の部門別内訳 (2003年度) 運輸部門 非製造業 2349 産業部門 7637 工業プロセス 貨物 2614 6850 エネルギー 転換部門 廃棄物・その他 1.8 その他 1464 3.8 最終エネルギー消費 製造業 鉄 (二酸化炭素換算) 3813 旅客 787 6.8% 15,912 1750 (単位:10^15J〔PJ〕) 化学 運輸部門 業務 2486 20.7 2374 12億5530 産業部門 万t 37.9 家庭 2088 民生部門 民生 業 4462 部門 務 政策課題: 29.0 15.7 CO2排出基準の 家庭 13.3 世代的認識 資源エネルギー庁 総合政策課 『2003(平成15)年度におけるエネルギー需給実績について』 よりグラフ化 (出典 : 日本国勢図会 B 現在の日本の課題 ストック型社会転換の必要性/サマリー (日本の課題連関図) ストック型社会 転換の必要性/サマリー 2005/06) C 近未来の課題(日本と世界) (日本の課題連関図 ) 近 未来の課題(日本と世界) 持続できない 地球環境 環 境 持続できない地球環境 資源大量消費(大量生産) 短 寿命 CO2 ストックレ ス バック・キャスティング 大量廃棄物処 理 現 在 境 短寿命 CO2 生 活 環 将 来 ( 限 界) 森林減少 ゆとりの欠如 資源大量消費(大量生産) ストックレス 日 賃金・GDP世界一 生活不安 教育・サービス だ が,豊かさのない 生活 (社会不安) 世 高賃金 高生産コスト 海 外依存 雇用不安定 ※ 界 人口増加・途上国経済発展 日本の持続的人口は7千万人 資源自立 資源枯渇 (資源の取り 合い ) (食料自給・生物資源基盤) ※ 世界人口:2050年に90億人 リ ストラ・非正規社員・賃金 格差 日本人を 産業空洞化 経 (第一次、第 二次、第三次) 済 森林減少 産業災害多発 活かせない 地 温暖化・気候変動 その他いろいろ 球 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒8 05-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号Tel 0 93-661-8772 Fax 0 93-663-161 2 学校法人 九州国際大学 次世代シス テム研究所 財政枯渇 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6 番1号 Tel 093 -66 1-8772 Fax 09 3-663- 161 2 日本の未来を具体的に設計する 部分最適型社会から総合最適型社会へ ゆとりの欠如 賃金・GDP世界一 D ストック型社会 生 教育・サービス だが,豊かさのない生活 活 (高社会コスト) 安全・安心のインフラ・ 都市・ 地域 設計 海面上昇 天災の増加 大型プロジェ クト失敗 生活不安 資源(資産)蓄積 (非生物資源ストック) 少子化・高齢化 人 間 食料自給率低下 食 料など 大量廃棄物処理 本 生産力低下 高生活コスト (高社会 コスト) 日本の諸課題を統合的に解決する ストック型社会政策 高生活コスト 生活 の豊か さ C O2 固定 C O2 減少 次世代 の安全・安 心 人間社会 生物 資源 (社会不安) 地球環境保全 食料自給率低下 長寿 命・スト ック型社 会 森林減少 STOP 食料など 雇用不安定 海外依存 資源的自立 自然保 全 高生産コスト 高賃金 資源蓄積 高品質・ リデ ュース 景気浮揚 ・安定雇用 少量生 産 資 源 リサイクル コスト減少 廃棄物 減少 経 済 の 安 定 生 産 エネル ギー 日本のコス トの健全 化 日本人を 活かせる社会 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 09 3-661 -8 772 Fax 093-66 3-1 612 ストック型社会のつくり方−1(ハード編) リストラ・非正規社員・賃金格差 経 (第一次、第二次、第三次) E ストック型社会のつくり方−2 日本人を ストック型社会に向けたファイナンスの事例と経済連関 2050ゴール・設計図 (国) 健全内需拡大 ・ ・ ・ 産業空洞化 稚内から与那国まで (景気の浮揚・雇用創出) (ソフト編) F 政策提言:日本のゴール/ストック型社会転換 ス トック 型社 会政 策イ メージ 国内資産蓄積 長寿命型インフラ整備 スケルトン 経済の健全化 活かせない 各種リサイクル法 (国内産業) 海外技術移転 * 部分最 適化の 回避 (バッ ク・キ ャス ティング) リース型産業 済 大型プロジェクト失敗 産業ルート 金融機関 郵貯・簡保 安全な資金運用 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 財政枯渇 年金ファンド 預貯金 (国民) 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1 号 Tel 093-661 -877 2 Fax 093-66 3-1 612 日 本の構造 改 革のゴ ール の 明示 (消費 税up ) 計 画(10%法) ③資源 自立基盤整備法 × 外為投資 × 公共債 ? ・経済構 造の健全 化 /地域国 際競争力 〈 資源自 立圏〉 ・地 球環境の 持続的 保全 ・日 本の資 金で日 本の 資産を 造る (郵政 民営化 後の金融 資産の海 外流出の 回避、 民間 資金の 地域への 誘導、不 動産証券 国際化 ) ・世 界一美 しい まち づくり ・世界 に誇れる 長寿命 型都市・ 農村・漁村・ 山村 ・安 全・ 安心な 国民へ の夢と 希望の 提示 ②多世 代資 産形成 法 日本の資金の 海外流出 〈日本の 生産コス ト の健全化 〉 (日本 人を活 かせる 社会) リターン(リース料) × 豊か さ ・地方財 政の ゆとり 地方自 治の ゴール の明示 * 次世代 の安心 ・安全 社会 の実現 学 校 法 人 九 州 国 際 大 学 次 世 代 シス テ ム 研 究 所 〒 805 -0 0 59 北 九 州 市 八 幡 東 区 尾 倉 二 丁 目 6 番 1 号 Te l 093 -66 1- 87 72 F ax 0 93 -66 3-1 612 3 その他のカード 国民ルート 株式投資 〒 805 -0059学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 長寿命型不動産の ( ス トッ ク型地方社 会) 〈 資産 蓄積〉 ハード面 ・ソフト面 の スト ック型社会 転換年 次 証券化(価値不変 ) 民間金融ルート 地方 分権化 ・三位 一体改 革 地方 圏205 0年計 画 ・国民生 活の ストック型社会 理論的・ 技 術的 How to オフバランス対応 (郵政民営化) 既 成個別 法の統 合法 *ゴ ール調整& マクロ 傾向分 析 (低価格外国製品の流入) (民間) 国民へ の呼び かけ (地方) (2 050 年計画法 ) 内閣 府?2 05 0年 計画庁 高級長寿命型製品 自由化圧力(WTO) 産業災害多発 ・ ・・・ ・ ( 国) ①次 世代社 会形成 法 (地域) ・ 資源的 安全保障 ( 転換事 業) ・健全 内需 拡大の 全国的 展開 全国 的な景 気浮揚, 雇用促 進 公共 投資か ら国民投 資へ 防災型 都市・ 農村・漁村・ 山村 近未来の課題(日本と世界) バック・キャスティング 現 在 将 来 (限 界) 日 本 生産力低下 少子化・高齢化 人 間 ※ 世 界 人口増加・途上国経済発展 基礎技術 指数的発展 資源(資産)蓄積 (非生物資源ストック) 資源枯渇 (資源の取り合い) 日本の持続的人口は7千万人 資源自立 (食料自給・生物資源基盤) ※ 世界人口:2050年に90億人 マイクロプロセッサーの進展 (MIPS) (Byte) 10000 100 9000 90 8000 80 7000 温暖化・気候変動 その他いろいろ 地 球 海面上昇 天災の増加 安全・安心のインフラ・ 都市・地域設計 70 パソコンの主メモ リー容 量 (Mbyte) 6000 60 5000 50 4000 40 3000 30 2000 マイクロプロセッサー性能 (MIPS) 1000 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 0 1985 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 20 10 0 1990 1995 2000 2005 指数的に増加する一人当たり資源量 例:エネルギー消費量(一人当たり)の推移 応用分野 2500 ・指数的発展 ・指数的増加 2000 (消費資源量) 指数的増加 1500 1000 500 1950 2000 ×103 Kcal0 (出典: 統計で見る世界 21世紀への展望) 指数的に増加するCO2濃度 指数的に増加する世界人口 二酸化炭素 濃度 (ppm) −375 −350 −325 限界収容能力 −300 持続的世界人口 −275 1850 (出典: 統計で見る世界 21世紀への展望) 1860 1870 1900 1920 1950 1965 2000 2005 (年) 出典:NATIONAL GEOGRAPHIC 2004.9 他を参照 世界の将来の課題 原因 予測課題 世界人口増大 資源枯渇 途上国経済発展 地球環境問題 国際間闘争激化 日本の現代と将来の課題 原因 結果(別紙) シャングリラ-2050 (ストック型社会とは) ストック型社会転換 ・長寿命型資産(資源)蓄積 ・資源自立圏 ・世代を超えた安心・安全 ・長寿命型社会資本の世代間蓄積(ゆとりの蓄積) ・資源自立圏形成と次世代の資源的(国家)安全保障 ストックレス = 経済問題 高人件費 = 生活問題 *先に設計図(ゴール)を作る ・持続可能な人間社会と地球環境 *やれる部分から変える 高生産コスト = 環境問題 高資源消費量 少子高齢化 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 4 B 現在の日本の課題 ストック型社会 転換の必要性/サマリー C 近未来の課題(日本と世界) (日本の課題連関図 ) ストック型社会政策 近 未来の課題(日本と世界) 持続できない 地球環境 環 境 資源大量消費 (大量生産) CO 2 短 寿命 ストックレ ス バック・キャスティング 大量廃棄物処 理 現 在 将 来 ( 限 界) 森林減少 ゆとりの欠如 生 活 日 賃金・GDP世界一 生活不安 教育・サービス だが,豊かさのない生活 本 少子化・高齢化 人 間 食料自給率低下 世 食 料など 高賃金 高生産コスト 海 外依存 雇用不安定 ※ 日本の持続的人口は7千万人 界 人口増加・途上国経済発展 生活の豊かさ CO2 固定 資源(資産)蓄積 (非生物資源ストック) 生産力低下 高生活コスト (高社会 コスト) (社会不安) 資源自立 資源枯渇 (資源の取り 合い ) CO2 減少 (食料自給・生物資源基盤) ※ 世界人口:2050年に90億人 リ ストラ・非正規社員・賃金 格差 日本人を 産業空洞化 経 (第一次、第 二次、第三次) 済 産業災害多発 活かせない 地 温暖化・気候変動 その他いろいろ 球 〒 805 -00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6 番1号 Tel 093-66 1-8772 Fax 093-6 63-161 2 次世代の安全・安心 人間社会 生物資源 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒8 05-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号Tel 0 93-661- 8772 Fax 0 93-663-161 2 学校法人 九州国際大学 次世代シス テム研究所 財政枯渇 安全・安心のインフラ・ 都市・ 地域 設計 海面上昇 天災の増加 大型プロジェ クト失敗 日本の未来を具体的に設計する 部分最適型社会から総合最適型社会へ D ストック型社会 地球環境保全 日本の諸課題を統合的に解決する 長寿命・ストック型社会 ストック型社会 政策 生活 の豊か さ C O2 固定 C O2 減少 森林減少 STOP 次世代 の安全・安 心 人間社会 生物 資源 地球環境保全 長寿 命・スト ック型社 会 森林減少 STOP 資源蓄積 資源的自立 自然保 全 リデ ュース 景気浮揚 ・安定雇用 高品質 ・ 少量生 産 資 源 リサイクル コスト減少 廃棄物 減少 自然保全 日本のコストの健全 化 日本人を 活かせる 社会 資源蓄積 資源的自立 経 済 の 安 定 生 産 エネル ギー リデュース 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 09 3-661-8 772 Fax 0 93-66 3-1612 高品質・ ストック型社会のつくり方−1(ハード編) E ストック型社会のつくり方−2 ストック型社会に向けたファイナンスの事例と経済連関 2050ゴール・設計図 (国) 稚内から与那国まで ・ ・ ・ 健全内需拡大 (景気の浮揚・雇用創出) (ソフト編) F 政策提言:日本のゴール/ストック型社会転換 ス トック 型社 会政 策イ メージ 国内資産蓄積 長寿命型インフラ整備 ①次 世代社 会形成 法 スケルトン 経済の健全化 各種リサイクル法 既 成個別 法の統 合法 (2 050 年計画法 ) * 部分最 適化の 回避 ストック 型社会 (バッ ク・キ ャスティング) ハード面 ・ソフト面 の (郵政民営化) ③資源 自立基盤整備法 その他のカード 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1 号 Tel 093- 661 -877 2 Fax 09 3-66 3-1612 地方自 治の ゴール の明示 株式投資 × × 公共債 ? 〈 日本の 生産コスト の健全化 〉 ・経済構 造の健全 化 /地域国 際競争力 ・世 界一美 しい まち づくり 生 ・世界 に誇れる 経 済 の 安 定 産 エネルギー 長寿命 型都市・ 農村・漁村・ 日本のコストの健全化 山村 〈 資源自 立圏〉 ②多世代資 産形成 法 日本人を活かせる社会 ・安 全・安心な 国民へ の夢と 希望の 提示 ・地 球環境の 持続的 保全 ・ 資源的 安全保障 防災型 都市・ 農村・漁村・ 山村 ( 転換事 業) ・日 本の資 金で日 本の 資産を 造る 日本の資金の 海外流出 廃棄物 減少 (日本 人を活 かせる 社会) リターン(リース料) 外為投資 豊か さ ・地方財 政の ゆと り * 次世代 の安心 ・安全 社会 の実現 × 国民ルート 安全な資金運用 〒 805 -00 59学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 (消費 税up ) 計 画(10%法) 証券化(価値不変) 年金ファンド 預貯金 (国民) ストック型社会 転換年 次 長寿命型不動産の 民間金融ルート 郵貯・簡保 日 本の構造 改 革のゴ ール の 明示 理論的・ 技 術的 How to 産業ルート 金融機関 (民間) リサイクル コスト減少 (ス トッ ク型地方社 会) 〈 資産 蓄積〉 ・国民生 活の *ゴ ール調整& マクロ 傾向分 析 リース型産業 (低価格外国製品の流入) オフバランス対応 源 地方 分権化 ・三位 一体改 革 地方 圏205 0年計 画 内閣 府?20 50年 計画庁 高級長寿命型製品 自由化圧力(WTO) 資 国民へ の呼び かけ (地 方) (地域) (国内産業) 海外技術移転 ・ ・・・ ・ (国) 景気浮揚・安定雇用 少量生産 (郵政 民営化 後の金融 資産の海 外流出の 回避、 民間 資金の 地域への 誘導、不 動産証券 国際化 ) ・健全 内需 拡大の 全国的 展開 全国 的な景 気浮揚, 雇用促 進 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 公共 投資か ら国民投 資へ 学 校 法 人 九 州 国 際 大 学 次 世 代 シス テ ム 研 究 所 〒 8 05- 00 59 北 九 州 市 八 幡 東 区 尾 倉 二 丁 目 6 番 1 号 Te l 09 3-6 6 1- 8 772 F ax 093 -66 3-1 612 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 <持続的発展の条件> 長寿命型 インフラ 資源自立・自然共生 持続的発展の条件:スケルトン 不易なもの (予測可能) 資産・文化の蓄積 スケルトン 次世代の生活安全保障 変化するもの (予測困難) バッファー & バッファー 理論 不変の共通骨格 (不確実な未来に向けて スケルトンのみを長寿命化) フレキシビリティ機能 ・異なる目的に転用可能 ・目的そのものを変更可能 変わることを前提にした 機能設計 ・発展の可能性の保障 ・予見できない将来の社会 インパクト 自然インパクトの吸収 発展・進歩の可能性 *ハード・ソフト両面の概念 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 「スケルトン&バッファー」の概念による住宅・建物構想 「スケルトン&バッファー」の概念による街区・町域構想 cf.住生活基本法 従来仕様 長寿命型 (こちらを先に設計する) スケルトン(基礎・柱・床・針は長寿命化して使用) ※ 家一軒が長寿命でも意味がない。町域全体が長寿命の要 バッファー(家族構成・用途に応じて内外装間取り・デザインを自由に変更) ストック型街区 都市域のアロケーション 「スケルトン&バッファー」 将来建物単位の資源循環, 自然エネルギー利用 地震(活断層) ハザードマップ 調和された 景 観 津波ハザードマップ 温暖化による 海面上昇 風の道 用途変換自由空間 スラブ道路 将来歩道 G.L バッファー バッファー バッファー 従来仕様 インフラ基盤 長寿命型 (S・I 建築) (エネルギー、上下水) (将来消失) 長寿命型 長寿命型 (S・I 建築) (S・I 建築) 5 洪 水 ハザード マップ 地質マップ 都市構造のスケルトン&バッファー 気候・風土 都市地域の100年整備イメージ バッファーゾーン 中心市街地 スケルトンゾーン スケルトン交通・ 山地 ︵個・現在の側︶ ︵全体・未来の側︶ 通信ライン コア・スケルトンゾーン *W/R&L/Tの設計 地球 × 都市 × 街区 × 工法 × 素材 (地域) 海 建築物・構造物 資源・資産・環境 風景 × 景観 × こちら側から デザイン *政策の基本:演繹的思考 文化・社会 個別政策から始めない! cf.ハザードマップ ※ 長寿命型 インフラ 資源自立・自然共生 資産・文化の蓄積 次世代の生活安全保障 *非生物資源は長寿命化で蓄積 地域資源の生産・消費の同調 <持続的発展の条件> 発展・進歩の可能性 出典 : 京都大学生存圏研究所 北九州域内における自然系スケルトン−2(海) *食料の自立 沿岸魚(スズキ・ボラ)の回遊ルート模式図 外 グリーンエネルギーでの地域自立モデル *長寿命型資源ストックで ≒自然共生 洋 風力発電でできた電気で 世代間の省エネ・省資源が可能 電気分解し水素(H 2)へ 水素(H 2)を蓄積 大 型 燃料電池 生物エネルギー 河 エタノール 湾 (水素エンジン) メタノール 川 排出物は水(H2O) 廃棄物は水(H2O) EX.地産地消モデル 内水面活用モデル 山林モデル(ラビットファーム) B 現在の日本の課題 ストック型社会・ゴールの設計(シャングリラ-2050) ストック型社会 転換の必要性/サマリー C 近未来の課題(日本と世界) (日本の課題連関図 ) 近 未来の課題(日本と世界) 持続できない 地球環境 環 資源大量消費(大量生産) 境 短 寿命 CO2 ストックレ ス バック・キャスティング 大量廃棄物処 理 現 在 将 来 ( 限 界) 森林減少 ゆとりの欠如 生 活 2050年 既存の都市も町も ゴール 日 賃金・GDP世界一 生活不安 教育・サービス だ が,豊かさのない 生活 (社会不安) 資源(資産)蓄積 (非生物資源ストック) 少子化・高齢化 人 間 食料自給率低下 世 食 料など 高賃金 高生産コスト 海 外依存 雇用不安定 本 生産力低下 高生活コスト (高社会 コスト) ※ 界 人口増加・途上国経済発展 日本の持続的人口は7千万人 資源自立 資源枯渇 (資源の取り 合い ) (食料自給・生物資源基盤) ※ 世界人口:2050年に90億人 リ ストラ・非正規社員・賃金 格差 理想系に再設計。 日本人を 産業空洞化 経 (第一次、第 二次、第三次) 済 産業災害多発 活かせない 地 温暖化・気候変動 その他いろいろ 球 大型プロジェ クト失敗 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒8 05-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号Tel 0 93-661-8772 Fax 0 93-663-161 2 学校法人 九州国際大学 次世代シス テム研究所 財政枯渇 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6 番1号 Tel 093 -66 1-8772 Fax 09 3-663- 161 2 日本の未来を具体的に設計する 部分最適型社会から総合最適型社会へ 国家モデル 安全・安心のインフラ・ 都市・ 地域 設計 海面上昇 天災の増加 D ストック型社会 日本の諸課題を統合的に解決する ストック型社会政策 道州モデル 地域モデル 生活 の豊か さ C O2 固定 C O2 減少 次世代 の安全・安 心 人間社会 生物 資源 地球環境保全 長寿 命・スト ック型社 会 都道府県モデル 森林減少 STOP 資源的自立 自然保 全 特別地域 資源蓄積 高品質・ リデ ュース 景気浮揚 ・安定雇用 少量生 産 資 源 リサイクル コスト減少 地域モデル モデル 廃棄物 減少 経 済 の 安 定 生 産 エネル ギー 日本のコス トの健全 化 日本人を 活かせる社会 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 09 3-661 -8 772 Fax 093-66 3-1 612 ストック型社会のつくり方−1(ハード編) 都市モデル 市町村・街区モデル E ストック型社会のつくり方−2 ストック型社会に向けたファイナンスの事例と経済連関 *「ゆとり」の生活 2050ゴール・設計図 (国) ・ ・ ・ 健全内需拡大 稚内から与那国まで (景気の浮揚・雇用創出) (ソフト編) F 政策提言:日本のゴール/ストック型社会転換 ス トック 型社 会政 策イ メージ 国内資産蓄積 長寿命型インフラ整備 スケルトン 経済の健全化 各種リサイクル法 (国内産業) 海外技術移転 *地域の風土・文化(風景・景観) *地域の産業・経済 * * 部分最 適化の 回避 (バッ ク・キ ャス ティング) リース型産業 (低価格外国製品の流入) 防災の視点 産業ルート 郵貯・簡保 年金ファンド 預貯金 (国民) 安全な資金運用 〒 805 -0059学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1 号 Tel 093-661 -877 2 Fax 093-66 3-1 612 日 本の構造 改 革のゴ ール の 明示 (消費 税up ) 計 画(10%法) ③資源 自立基盤整備法 × 外為投資 × 公共債 ? ・経済構 造の健全 化 /地域国 際競争力 〈 資源自 立圏〉 ・地 球環境の 持続的 保全 ・日 本の資 金で日 本の 資産を 造る (郵政 民営化 後の金融 資産の海 外流出の 回避、 民間 資金の 地域への 誘導、不 動産証券 国際化 ) ・世 界一美 しい まち づくり ・世界 に誇れる 長寿命 型都市・ 農村・漁村・ 山村 ・安 全・ 安心な 国民へ の夢と 希望の 提示 ②多世 代資 産形成 法 日本の資金の 海外流出 〈日本の 生産コス ト の健全化 〉 (日本 人を活 かせる 社会) リターン(リース料) × 豊か さ ・地方財 政の ゆとり 地方自 治の ゴール の明示 * 次世代 の安心 ・安全 社会 の実現 学 校 法 人 九 州 国 際 大 学 次 世 代 シス テ ム 研 究 所 〒 805 -0 0 59 北 九 州 市 八 幡 東 区 尾 倉 二 丁 目 6 番 1 号 Te l 093 -66 1- 87 72 F ax 0 93 -66 3-1 612 6 その他のカード 国民ルート 株式投資 *地域の資源・環境 長寿命型不動産の ( ス トッ ク型地方社 会) 〈 資産 蓄積〉 ハード面 ・ソフト面 の スト ック型社会 転換年 次 証券化(価値不変 ) 民間金融ルート 地方 分権化 ・三位 一体改 革 地方 圏205 0年計 画 ・国民生 活の ストック型社会 理論的・ 技 術的 How to オフバランス対応 (郵政民営化) 既 成個別 法の統 合法 *ゴ ール調整& マクロ 傾向分 析 金融機関 国民へ の呼び かけ (地方) (2 050 年計画法 ) 内閣 府?2 05 0年 計画庁 高級長寿命型製品 自由化圧力(WTO) (民間) ・ ・・・ ・ ( 国) ①次 世代社 会形成 法 (地域) ・ 資源的 安全保障 ( 転換事 業) ・健全 内需 拡大の 全国的 展開 全国 的な景 気浮揚, 雇用促 進 公共 投資か ら国民投 資へ 防災型 都市・ 農村・漁村・ 山村 ストック型社会に向けたファイナンスの事例と経済連関 2050ゴール・設計図 稚内から与那国まで (景気の浮揚・雇用創出) 健全内需拡大 スケルトン 経済の健全化 手順−1 この考え方・意義を国民・県民・市町村民に理解させる (稚内から与那国まで) 手順−2 時間をかけて/2050年のゴール(愛すべき自分の郷土)の設計図 (地域) 各種リサイクル法 (国内産業) (低価格外国製品の流入) オフバランス対応 証券化(価値不変) 民間金融ルート 郵貯・簡保 × 〒 805-0059 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 093-661-8772 Fax 093-663-1612 株式投資 × 外為投資 × 公共債 ? 2010 2020 2030 2040 目標1 目標2 目標3 目標4 日本の資金の 海外流出 水産 畜産 従来システム 資源自立(ストック型社会) 資源生産基盤の姿 農業 多世代の人々の参加 街区モデル 農村モデル 漁村モデル 山村モデル 設計図に基づいた健全型内需政策 手順−3 資金の圏内流通傾向 目標5 森産 エネルギー 2050年のゴール 2100年 ゴール (日本の資金が国外流出しているか?) 銀行の所在圏内における預貸率(圏内貸出残高/圏内預金残高) (目的指標) EX. *市町村/一理論・一技術 長寿命型資産ストック量 生活の豊かさ 国民 生活 全国圏 関東圏 近畿圏 九州・沖縄圏 130 % 生活の安全・安心 夢・希望・可能性 120 % 安定型産学経済構造 ) 〈第2次・第3次産業圏〉 EX. ・長寿命型都市域/家・建物 従来システム ・長寿命型交通通信/ライン 資源蓄積(ストック型社会) ・長寿命型各種社会インフラ 資源自立 ・エネルギー需給構造 ・非生物資源ストック量 110 % ・生物資源再生産基盤 (資源再生産基) 100 % 産業 経済 経済活力 ・国際コスト競争力 90 % ・国際的地位 分業と協業 分業と協業 分業と協業 分業と協業 分業と協業 who ・産業界 ★工学分野 ・大学 ★社会科学分野 総合 総合 総合 総合 総合 マネジメント マネジメント マネジメント マネジメント マネジメント ★自然科学分野 ・立法・行政(官) 調整 調整 調整 各種社会システムの姿 ・国民・市民・個人 ・地域民・団体 世界と国内 都市や人間社会の姿 (非生物資源蓄積 資産蓄積 What : ストック型社会 資源自立 食料 *若者・団塊の世代等 自分達の基盤をつくる。 バックキャスト EX. *地域オリジナルのハードとソフト 市・町・村モデル 計画的に時間をかけて 2050の設計図 〈第1次産業ポテンシャル〉 特別地域モデル (国が直接関与) 県モデル 各地域の産学官民が リターン(リース料) 国民ルート 安全な資金運用 フォア・キャスト(予測) その他のカード 年金ファンド 預貯金 世界と国内 長寿命型不動産の 産業ルート 金融機関 (国民) ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ リース型産業 自由化圧力(WTO) (郵政民営化) ・・・・国民主体・国民主動の改革行動 高級長寿命型製品 海外技術移転 (民間) ・・・・シャングリラ-2050 ストック型地域圏の創り方 国内資産蓄積 長寿命型インフラ整備 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (国) 社会 長寿命型社会資本 ストック量 70 % 公的財政構造 60 % 温暖化ガス発生量 環境 資源総消費量 1 9 99 自然環境ストック量 調整 (予測) 80 % 社会的安全・安心度 20 00 20 0 1 2 00 2 2 00 3 20 05 日本銀行HP統計・データより作成 調整 (予測) 2 0 04 (予測) B 現在の日本の課題 ストック型社会転換(魅力的投資先の創出)/ファイナンス・カード ストック型社会 転換の必要性/サマリー C 近未来の課題(日本と世界) (日本の課題連関図) 近 未来の課題(日本と世界) 持続できない地球環境 環 境 ストック(スケルトン)兌換型ファイナンス:あるべき国の姿・愛すべき郷土の姿を具体的に 資源大量消費(大量生産) 短 寿命 CO2 ストックレ ス バック・キャスティング 大量廃棄物処 理 現 在 将 (限 森林減少 来 界) ゆとりの欠如 生 活 描き、その長寿命型ストック(スケルトン)を 日 賃金・ GDP世界一 生活不安 教育・サービス だ が,豊かさのない 生活 (社会不安) 資源(資産)蓄積 (非生物資源ストック) 少子化・高齢化 人 間 食料自給率低下 世 食 料など 高賃金 高生産コスト 海 外依存 雇用不安定 本 生産力低下 高生活コスト (高社会コスト) ※ 界 人口増加・途上国経済発展 日本の持続的人口は7千万人 資源自立 資源枯渇 (資源の取り 合い ) (食料自給・生物資源基盤) ※ 世界人口:2050年に90億人 リ ストラ・非正規社員・賃金 格差 対象に民間が参画を望むファイナンス 日本人を 産業空洞化 経 (第一次、第 二次、第三次) 済 産業災害多発 活かせない 地 温暖化・気候変動 その他いろいろ 球 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒8 05-0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 0 93-661-8772 Fax 0 93-663-161 2 学校法人 九州国際大学 次世代シス テム研究所 財政枯渇 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6 番1号 Tel 093 -66 1-8772 Fax 09 3-663- 161 2 D ストック型社会 *利回りは少し落ちるが価値が 不動産投資市場の拡大 日本の未来を具体的に設計する 部分最適型社会から総合最適型社会へ *小口化でより多くの国民参加 不動産証券の動向 安全・安心のインフラ・ 都市・ 地域 設計 海面上昇 天災の増加 大型プロジェ クト失敗 日本の諸課題を統合的に解決する ストック型社会政策 劣化しない安全・安心の証券 長寿命化 生活 の豊か さ C O2 固定 C O2 減少 次世代 の安全・安 心 人間社会 生物 資源 地球環境保全 長寿 命・スト ック型社 会 (ストック型) 不動産証券市場の国際化 森林減少 STOP の要 資源的自立 自然保 全 資源蓄積 高品質・ リデ ュース 景気浮揚 ・安定雇用 少量生 産 資 源 リサイクル コスト減少 廃棄物 減少 経 済 の 安 定 生 産 不動産価値・評価の国際化 エネル ギー 日本のコス トの健全 化 日本人を 活かせる社会 学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 〒 805-00 59 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel 09 3-661 -8 772 Fax 093-66 3-1 612 ストック型社会のつくり方−1(ハード編) 年金ファンド E ストック型社会のつくり方−2 ストック(スケルトン)兌換地域通貨 ストック型社会に向けたファイナンスの事例と経済連関 2050ゴール・設計図 団塊の世代の生き方カード(自分の地域づくりファンド) (国) ・ ・ ・ 健全内需拡大 稚内から与那国まで (景気の浮揚・雇用創出) (ソフト編) F 政策提言:日本のゴール/ストック型社会転換 ス トック 型社 会政 策イ メージ 国内資産蓄積 長寿命型インフラ整備 スケルトン 経済の健全化 各種リサイクル法 (国内産業) 海外技術移転 * 部分最 適化の 回避 (バッ ク・キ ャス ティング) (郵政民営化) インセンティブ その他 産業ルート 金融機関 (民間) 年金ファンド 預貯金 (国民) 安全な資金運用 〒 805 -0059学校法人 九州国際大学 次世代システム研究所 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1 号 Tel 093-661 -877 2 Fax 093-66 3-1 612 ハード面 ・ソフト面 の 日 本の構造 改 革のゴ ール の 明示 その他のカード (消費 税up ) 計 画(10%法) ③資源 自立基盤整備法 地方自 治の ゴール の明示 〈 資源自 立圏〉 ・地 球環境の持続的 保全 ②多世 代資 産形成 法 国民ルート × 外為投資 × 公共債 ? 日本の資金の 海外流出 ・日 本の資 金で日 本の 資産を 造る (郵政 民営化 後の金融 資産の海 外流出の 回避、 民間 資金の 地域への 誘導、不 動産証券 国際化 ) ・世 界一美しい まち づくり ・世界 に誇れる 長寿命 型都市・ 農村・漁村・ 山村 ・安 全・安心な 国民へ の夢と 希望の提示 リターン(リース料 ) 株式投資 〈日本の 生産コスト の健全化 〉 ・経済構 造の健全 化 /地域国 際競争力 (日本 人を活 かせる 社会) * 次世代 の安心 ・安全 社会 の実現 × 豊か さ ・地方財 政の ゆとり 理論的・ 技 術的 How to 長寿命型不動産の ( ス トッ ク型地方社 会) 〈 資産 蓄積〉 ストック型社会 スト ック型社会 転換年 次 証券化(価値不変 ) 民間金融ルート 郵貯・簡保 地方 分権化 ・三位 一体改 革 地方 圏205 0年計 画 ・国民生 活の *ゴ ール調整&マクロ 傾向分 析 リース型産業 オフバランス対応 上下水道・ガス・電気・通信の共同空間利用カード 国民へ の呼び かけ (地方) 既 成個別 法の統 合法 (2 050年計画法 ) 内閣 府?2 05 0年 計画庁 高級長寿命型製品 自由化圧力(WTO) (低価格外国製品の流入) 税制上の ・ ・・・ ・ ( 国) ①次 世代社 会形成 法 (地域) 民間企業の長寿命型資産:オフバランス対応証券 ・ 資源的 安全保障 防災型 都市・ 農村・漁村・ 山村 ( 転換事 業) ・健全 内需 拡大の全国的 展開 全国 的な景 気浮揚, 雇用促 進 公共 投資か ら国民投 資へ 学 校 法 人 九 州 国 際 大 学 次 世 代 シス テ ム 研 究 所 〒 805 -0 0 59 北 九 州 市 八 幡 東 区 尾 倉 二 丁 目 6 番 1 号 Te l 093 -66 1- 87 72 F ax 0 93 -66 3-1 612 ストック型社会政策イメージ ・・・・・ 国民への呼びかけ (国) ストック型社会転換/政策提言サマリー (地方) ①次世代社会形成法 既成個別法の統合法 (2050年計画法) *部分最適化の回避 地方分権化・三位一体改革 地方圏2050年計画 内閣府?2050年計画庁 (バック・キャスティング) ストック型社会 ハード面・ソフト面の 日本の構造 改革のゴール の明示 ストック型社会転換年次 (消費税up) ③資源自立基盤整備法 地方自治の ゴールの明示 民間資金の地域への誘導、不動産証券国際化) まちづくり ・地方財政の 〈日本の生産コスト の健全化〉 ・経済構造の健全化 /地域国際競争力 当面の経済政策からの意義 ⑤日本の金融資産の海外流出の回避。特に郵政民営化後、日本の資金を国内の資産形成に 向けること。安定した魅力的な投資先を国内につくる。 ⑥安定・持続型の国土形成を急ぐ。次世代の資産形成という健全な内需拡大を通して、国内の 景気浮揚と全国規模の安定型雇用を創出する。 公共投資から国民投資へ。 ⑦不動産証券市場の国際化。 ・世界に誇れる 長寿命型都市・ 農村・漁村・ 山村 ・安全・安心な 国民への夢と 希望の提示 〈資源自立圏〉 ・地球環境の持続的 保全 ②多世代資産形成法 (郵政民営化後の金融資産の海外流出の回避、 ・世界一美しい (日本人を活かせる 社会) *次世代の安心・安全社会の実現 ・日本の資金で日本の資産を造る 豊かさ ゆとり 理論的・技術的 How to 計画(10%法) (ストック型地方社会) 〈資産蓄積〉 ・国民生活の *ゴール調整&マクロ傾向分析 日本が目指す社会構造の改革 ①国民の生活を豊かにする。 ②経済構造を健全化し、日本の国際コスト競争力を回復すること。つまり生活レベルを 下げずに賃金と生活コストを国際水準に戻す。結果として国際社会で日本人を活かせる 条件を回復する。 ③資源自立圏を形成し、次世代の生存権・安全を保証する。 ④地球環境問題への本質的な対応。 ・資源的安全保障 今日的な政策ニーズ ⑧国民に改革の具体的ゴール、将来のビジョン・夢・希望を明示すること。(未来指向の政策) ⑨個別の新法・新政策はストック型社会転換に合致する方向に向かっている。 Ex.住生活基本法、国土形成計画法、景観三法、地域再生法、各種環境関連法、 財政投融資制度改革関連、農林水産関連、国民生活経済関連・・・。 ⑩だが、新法・新政策も個別に展開すれば部分最適解総和型になるため、それらを束ねる 政策が必要である。 ⑪地方分権化・三位一体の改革には、地方圏が主体的かつ自発的に展開できる政策が必要で ある。 ⑫団塊の世代の活動分野を拓く。 防災型都市・ 農村・漁村・ 山村 (転換事業) ・健全内需拡大の全国的展開 全国的な景気浮揚,雇用促進 公共投資から国民投資へ 7 A 現代社会の危機的状況をつくる 三つの現象 現代社会の課題 技術(学問)の細分化・専門分化(製鐵所・製鋼工場) 年代 50 60 ① 多様化・細分化・専門分化 ② 指数変化 ③ ①,②の下でのグローバル化 油布/NSC 70 90 80 細分化・専門分化の結果:部分最適解型社会 (94) 反応速 度論 冶金反 応工学 T.E除 去理論 ・冶金 反応面 積論 スラ グメタ ル反応 論 急冷凝 固理論 凝固理 論(基 礎) 凝固組 織制御 論 音響工 学 超音波 工学 粉体工 学 ・(物理)機械 全体系(認識不可能) 電磁流 体力学 液体力 学(炉 内液) TD内流 論 液体力 学(鋳 型内 流) 燃焼理 論 熱力学 回路理 論 1990 電磁気 学 ・電気 レーザー工学 基礎制 御理論 ファージ理論 ニューロ理 論 画像処 理理論 A I 理論 FOTR AN CO LBO L 個人的認識限界 (部分認識) BASI C ・電 算機 パソコン OS 〃各種 ソフ ト ネットワーク理 論 マイコン 統計解 析学 ・統計学 /根 本理 論 線型計 画法 Q.C ・(管理 技術) I. E VE(創 造工 学) OR/1 (精錬) 平炉法 × OR/2法 LD/ CB法 1980 転炉多 機能化 転炉法( LD法) LD/OB 法 LDスタティック・コントロール (消滅) サプランス ・ダイ ナミック・コン トロール DH法 新説炭プロ セス 取鍋粉 体吹 き込 み法 V/KIP法 RH法 RH/QB法 RH軽処理 技術 RHインジ ェクシ ョン KP説破法 (鋳造)IC法 × トビードカー説硫 法 大量溶 統予備 処理 技術 気水冷 却技術 CPC技 術 BO予知 技術 湯面自 動制御 高速鋳 造技術 CC法 ダンディッシュ加 熱技 術 (消滅) DR技術 CC大形 化 1970 溶銅流 動制御 電磁撹 拌 浸潰ノズ ル 電磁ルレーキ NNSCC A.S. S. 技術 水平 CC 垂直型 CC スラプ CC ピレットCC 垂直曲型CC 湾曲型 CC 環境制 御技術 時間 大気汚 染防止 技術 水質汚 染防止 技術 94年まで 分野数 5 10 38 66 84 90年 未予測 (120) 細分化・専門分化の結果:部分最適解型社会の危険性 社会の細分化・専門分化の結果:部分最適総和型社会 部分最適解の総和 ≠ 全体最適解 ※ ムダの発生 ※ 危機の発生 cf.ツギハギだらけの日本の町風景も部分最適解の総和型 全体を見なければ・・・ 崩壊する 自分の世界が足許から 各専門家は わき目も振らず 我が道︵専門分野︶を 突き進む 8 小 細分化・専門分化 結 論 複雑系社会 ①細分化・専門分化 ⇒ 分業・協業(組織運用)の限界 (部分最適総和型の社会) 各分野の交互作用 ②(部分の)積上政策の限界・・・全体ニーズの側からの政策の要 全体を認識できない ③全体の側(Wide-Range)から部分制御の要 (コントロール) 全体の歪:問題の原因が分からない (社会全体:最上位概念を基軸にした政策の要) 現代社会の危機的状況をつくる 三つの現象−2 基礎技術 指数的発展 ①多様化・細分化・専門分化 ②指数変化 マイクロプロセッサーの進展 (MIPS) (Byte) 10000 100 9000 90 8000 ③ 80 7000 ①,②の下でのグローバル化 70 パソコンの主メモ リー容 量 (Mbyte) 6000 60 5000 50 4000 40 3000 30 2000 マイクロプロセッサー性能 (MIPS) 1000 20 10 0 0 1985 1990 1995 2000 2005 指数的に増加する一人当たり資源量 例:エネルギー消費量(一人当たり)の推移 応用分野 2500 ・指数的発展 ・指数的増加 2000 (消費資源量) 指数的増加 1500 1000 500 1950 2000 ×103 Kcal0 (出典: 統計で見る世界 21世紀への展望) 指数的に増加するCO2濃度 指数的に増加する世界人口 二酸化炭素 濃度 (ppm) −375 −350 −325 限界収容能力 −300 持続的世界人口 −275 1850 (出典: 統計で見る世界 21世紀への展望) 1860 1870 1900 1920 1950 1965 2000 2005 (年) 出典:NATIONAL GEOGRAPHIC 2004.9 他を参照 9 小 結 現代社会の危機的状況をつくる 論−2 ①指数変化 ⇒ 三つの現象−3 急速に変化する時代社会 ②想定外の事態が予測(予感)より早くやってくる ① 多様化・細分化・専門分化 ③未来の測(Long-Term)から今後の政策を決める ② 指数変化 ③ ①,②の下でのグローバル化 (未来指向の政策) バック・キャスティング政策の要 (未来の状況を前提に今日の政策を決める) グローバル化 ①経済問題 人間社会、地球環境の ・・・国際競争から国際闘争への危惧 グローバルな 指数変化 技術移転の自由化 ○経済システム ②環境問題(資源問題) ⇒ 資本移転の自由化 ③人類文明 人のアクション CO2発生源の急速拡大 ○資源循環 (地球環境) 資源移転の拡大 価値観の急速な国際編流 地球・自然のリアクション ○価値観 (文明の衝突) 地球システム sustainable ●国・地域およびアジアの規範となる 物理・化学システム W/R & L/Tの政策(モデル)が必要である 生物システム ・ ・ ・ ・ 資源循環システム ・ ・ ・ ・ 植 物・・・ 分解 (Economy as Ecology) 人間系 原因2 人類の大繁栄 ①指数変化 ③グローバル化 経済・産業 ・・・動物 行動特性 欲望原理 行動:欲求原理 結果 ヒト科動物の大繁栄 持続可能にする選択肢 寄 進歩・向上心 欲望の発生 (ニーズ) 欲望の喚起 (マーケティング) 生 宿主 寄 科学技術 経 市 大脳 済 資本主義経済 資本の生態系 通貨 株・証券 欲望の供給 欲望の生産 流通 生産 生 兌換性 欲望の充足 消費 寄 (パラサイト系) 等価・代替 虚構的膨張 (イノベーション) 場 宿主 制御システム 投機的資本 の生態系 創造 大脳 生 (パラサイト系) (シーズ) 欲望 利便性・安楽性 環境と動物の行動(認知・思考・競争/行動) ストック型社会 (パラサイト系) 欲望の増幅 好奇心 既存価値観 ヒト経済システムの拡張モデル 比較 競争心・序列 既存倫理 個体当り資源消費量の急増 現状 日本型社会を 人間社会拡張モデル(現代文明モデル) 心 圧力増大 未来 ※ 原因3 ヒト第2の行動特性 個体数(人口)の急増 限界 ストック型社会転換は (行動圏拡大) ヒト経済システムの虚構化 ・資本主義経済 ・社会主義経済 ○貨幣経済 ○市場経済 EX. 立法府、行政府、産、学、国民(教育・文化) 最上位概念(W/R & L/T )の政策 ②細分化・多様化 文化・社会 生理特性 大脳の発達 ・ ・ ・・ 自然の経済システム ヒト社会の傾向 科学技術の発達 原因1 生産 消費 現在の日本社会は Narrow-Range & Short-Termの部分最適型 マクロ的サマリー : ECO-ECO視点 (地球:人間) 地 球 能 力一 定 則 論−3 が 大きくなる 国際競争から国際闘争への危惧 太陽エネルギー 結 インパクト 人間社会のリアクション ギャップ 小 大きいほど タイムラグ (栄養塩類の地球規模偏流) 欲望の実現 利権 欲望の具現化 膨張指向 投資 配当 実体経済(実業) の生態系 宿主 太陽エネルギー ヒト カネ モノ 地球の生態系 膨張指向 資源・エネルギー 資源・エネルギー 資源・エネルギーの 消費(CO2)・廃棄 エネルギー 太陽エネルギー ヒトの領域 欲望 膨張指向 地球モデル 難循環 有限 *上の回転が速くなる程・流通が大きくなる程・地球の負荷増大 10 長期課題のための戦略形成 次世代システム研究会第37回研究会 平成18年 7月 8日 東京大学名誉教授 平澤 冷 行政改革と科学技術基本計画の推移 バブル崩壊 円高不況 1989 九州国際大学 次世代システム研究所 平成18年7月8日 1990 宮沢 1991 1992 1993 羽田 海部 長期的課題のための戦略形成 細川 第37回 次世代システム研究会 講演 政策不況 村山 1994 橋本 1995 1996 小渕 1997 科学技術会議 科学技術会議 11号答申 18号答申 1998 小泉 森 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 25 兆円 17兆円 24兆円 第1期科学技術基本計画 第2期科学技術基本計画 第3期 ・科学技術基本法 ・経済構造改革 ・中央省庁等改革基本法 ・独立行政法人通則法 新省庁システム 東京大学名誉教授 平澤 冷 独立行政法人 国立大学民営化 特殊法人独法化 Science and Technology Organizations and Budget Flow Expert Panel on: on: CEFP CEFP: Council on Economic and Fiscal Policy CSTP: Council for Science and Technology Policy ESRI: Economic and Social Research Institute JSPS: Japan Society for the Promotion of Science JST: Japan Science and Technology Agency NEDO: New Energy and Industrial Technology Development Organization CRDP: Co-operative R&D Programs 提案内容の施策化と実施プロセス( 提案内容の施策化と実施プロセス(1) I&C Evaluation Environment Reforming Science and Technology System Nanotech & Materials Ethics of Life Production Technology Development of Space Social Infrastructure Strategic for Intellectual Property Frontier: Space, Marrine, ... <政治主導> <総理(内閣)主導> Energy 産業技術力強化法 内閣内政審議室 Food Safety Commission METI MEXT 科学技術会議 基本計画事務局 立国調査会 JST (U) (L) (U) (L) (U) (L) (I) (U) (L) (I) (L) Research Lab (L) Research Lab (L) NIMS, RIKEN, ... AIST (I) (U) (L) (I) (I),(L) 産業技術審議会 Industries (I) 戦略策定プロセス 2001年 2001年1月以降 <省際調整> Strategy development process 情報収集と分析 <省庁主導> 【政策調整】 政策調整】 課題群 Information collection and analysis * Group of issues 基本認識 ** Basic perception 経済財政諮問会議 財務省 ビジョン 第 2次科学技術基本計画 次科学技術基本計画 順位付け結果 (S,A,B,C) 【総合調整】 総合調整】 既存施策 (原則20億円以上) 知財権戦略会議 戦略オプション 中目標 と 基本戦略 Strategic options Medium objective 新規施策 (1億円以上) 個別目標 Individual objective バイオ戦略会議 各 省 立国調査会 詰めるべき事項 Issues to boil down Direction of expansion 大目標 Large objective ** 展開方向 戦略 Strategy Vision 概算 要求 総合科学技術会議 専門調査会 IT戦略会議 戦略会議 国家産業技術 戦略検討会 「 21世紀日本の構想 世紀日本の構想」 世紀日本の構想」 懇談会 (U) (L) (I) 内閣官房 内閣府 産業構造審議会 教育改革国民会議 提案内容の施策化と実施プロセス(2) <総理(内閣)主導> 学術審議会 21 世紀の 社会と科 学 技術を考える懇談会 NEDO CRDP 大学審議会 産業競争力会議 (産業新生会議) Other Ministries MLIT, MAF, MOE MHLW, DA, ... <政治主導> 21 世 紀の科 学 技 術に関 する懇談会 Atomic Energy Safety Commission ESRI Universities (U) <省庁主導> 次期科学技術基本計画 Atomic Energy Commission JSPS <省際調整> ミレニアム・プロジェクト Cabinet Office Block funds Competitive funds 2000年 2000年12月以前 12月以前 Life Science Basic Policy Promoting Strategic Fields CSTP 基本シナリオ Basic scenario 資源配分 * Resource distribution と 基本ロードマップ と 管理目標 strategy Basic Strategy Basic roadmap Management objective 個別戦略 Individual strategy 個別計画 Individual plan Individual management 個別管理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ [目標系] [戦略系] [計画系] [実施系] Objective Strategy Planning Implementation 2002.08.20 Ryo Hirasawa : [email protected] 目標系のブレークダウン Breakdown of Goals <理念> <大政策目標> <中政策目標> Idea Upper Policy Goal Middle Policy Goal 人類の叡智 を生む 地球温暖化・ エネルギー問題の克服 Individual Policy Goal 世界で地球観測に取組み、正確 な気候変動予測及び影響評価を 実施する 環境と経済の両立 環境と調和する 循環型社会の実現 世界を先導する省エネルギー国 であり続ける 世界で利用される新たな環境調 和型のエネルギー供給を実現す る 国力の源泉 を作る 世界を魅了する ユビキタスネット社会の実現 健康と安全 を守る <個別政策目標> イノベーター日本 ものづくりナンバーワン 国家の実現 科学技術により世界を勝ち抜く 産業競争力の強化 燃料電池を世界に先駆け家庭や 街に普及する 世代を超えて安全に原子力エネ ルギーを利用する 国民が必要とする燃料や電気を 安定的かつ効率的に供給する 個別政策目標 Individual Policy Objectives <個別政策目標> Individual Policy Objectives <成果目標> Outcomes <研究開発目標> R&D Targets <戦略重点科学技術> Strategically important S&T <戦略理念> <時代認識> <分野> Perception of Principle Area 世界で地球観測に取組み、正確な気 候変動予測及び影響評価を実施する エネルギーの面的利用で飛躍的な省エ ネの街を実現する都市システ技術 世界を先導する省エネルギー国であり 続ける 実効性のある省エネ生活を実現する先 進的住宅・建築物関連技術 世界を先導する省エネルギー国であり 続ける 便利で豊かな省エネ社会を実現する先 端高性能汎用デバイス技術 世界を先導する省エネルギー国であり 続ける 究極の省エネ工場を実現する革新的素 材製造プロセス技術 世界を先導する省エネルギー国であり 続ける 石油を必要としない新世代自動車の革 新的中核技術 燃料電池を世界に先駆け家庭や 街に普及する 先端燃料電池システムと安全な革新的 水素貯蔵・輸送技術 世界で利用される新たな環境調和型 のエネルギー供給を実現する 石油に代わる自動車用液体燃料(GTL) の最先端製造技術 国民が必要とする燃料や電気を 安定的かつ効率的に供給する 太陽光発電を世界に普及するための革 新的高効率化・低コスト化技術 国民が必要とする燃料や電気を 安定的かつ効率的に供給する 電源や利用形態の制約を克服する高性 能電力貯蔵技術 国民が必要とする燃料や電気を 安定的かつ効率的に供給する クリーン・高効率で世界をリードする石炭 ガス化技術 世代を超えて安全に原子力エネ ルギーを利用する 安全性・経済性に優れ世界に普及する 次世代軽水炉の実用化技術 世代を超えて安全に原子力エネ ルギーを利用する 長期的なエネルギーの安定供給を確保 する「高速増殖炉(FBR)サイクル技術」 世代を超えて安全に原子力エネ ルギーを利用する 高レベル放射性廃棄物等の処分実現に 不可欠な地層処分処理技術 未来のエネルギー源と期待される核融合エ ネルギーの科学的・技術的な実現可能性 を実証する 国際協力で拓く核融合エネルギー・ITER 計画 Seeds the times ライフ サイエンス 世界一の 省エネ国 家として更 なる挑戦 情報通信 最近の 科学技術 動向 環 境 ナノ・材料 運輸部門 を中心とし た石油依 存からの 脱却 エネルギー ものづくり 技術 基幹エネ ルギーとし ての原子 力の推進 エネルギー を巡る最近 の動向 社会基盤 フロンティア 研究開発モデル 戦略形成と評価のあり方 R&D Model Cases of Strategy-making and Evaluation Needs 科学技術の枠内に目的を設定 RTD 研究側からの構想 研究主導 ニーズを見据えシーズの側からアプローチ From the Seeds Side to Needs 両者の接合 From research side 個別研究 課題 企画側からの構想 From planning side Connection 科学技術的 成果 ・対応関係 社会経済的 成果 ・科学技術的評 価基準に基づ く選択 個別社会経済的 枠組み 社会経済的 枠組み ミッション Research driven case 戦略主導 ニーズからの発想 研究開発 テーマの 提案 From the Needs Side ・社会経済的 評価基準に 基づく選択 明確なターゲット ターゲット戦略 IA 良構造課題群 課題化 問題群 の抽出 戦略対象 の分析 ミッション 悪構造課題群 動的ターゲット Strategy driven case 混合型の例 科学技術の基盤整備 Maintenance of Infrastructure University ・領域研究組織の設定 ・領域組織毎のミッションの設定 研究開発 テーマの 提案 Society Research Institute 領域研究 ・一定期間毎の評価 対象分野の 状況把握 ・研究主導の展開 ・社会経済 的評価基 準に基づ く選択 戦略主導による社会経済的ターゲットの明示 ミッション 戦略研究 Mixed case アウトカムと研究分野の関係 がん研究の事例 The Relationship between Outcome and Research Fields 実現しようとするアウトカム Case of Cancer Research 産総研の基本理念 戦略理念 研究成果を創薬や 新規医療技術等に 実用化するための 橋渡し 戦略重点科学技術 標的治療等の革新的 がん医療技術 個別政策目標 ゲノム情報を活用した 生体機能の解明により、 がん等の生活習慣病や 難病等を克服し、健康 寿命を延伸する 中政策目標 国民を悩ます 病の克服 大政策目標 Basic Principle of AIST 持続的発展可能な社会の実現 Contribution to a Sustainable Society 生涯はつらつ 生活 ミッション Mission ・ 産業競争力強化と地域経済活性化 Contribution to Industrial Competitiveness and Local Industrial Development 超早期発見技術 ・新産業創出 Contribution to the Origination of New Industries 低侵襲治療/ 標的治療 発見時期の遅れる 原因 がんの中でも死亡率 の高いがん 治療効果の高い 治療法の普及・分布 勤労世代で死亡率の 高いがん 死亡率の高い 疾病=がん Contribution to Safe and Secure Infrastructure of Society ・研究成果の活用と政策への貢献 患者の生活の質の 問題点 研究分野 Research Fields High Quality Life with Good Health and Longevity 知的で安全・安心な生活を実現する ための高度情報サービスの創出 Intelligent, Safe, and Secure Life Supported by Advanced Information Services 産業競争力向上と環境負荷低減を実現 するための材料・部材・製造技術の創出 ライフサイエンス分野 Life Science and Technology 情報通信・エレクトロニクス分野 Information Technology High Industrial Competitiveness and Reduction of Environmental Load Realized by New Materials, Parts, and Manufacturing Technology Nanotechnology, Materials, and Manufacturing 環境・エネルギー問題を克服した豊かで 快適な生活 環境・エネルギー分野 ナノテクノロジー・材料・製造分野 ・安全安心な社会基盤 Contribution to Industrial Technology Policies 標準的治療法 Future Visions 健康長寿で質の高い生活 高度産業基盤を構築する横断技術 としての計測評価技術の創出 Advanced Industrial Infrastructure Developed by Novel Measurement Technologies and Evaluation Systems 離職期間の長いがん Environment and Energy Wealthy and Comfortable Life by Overcoming Environment and Energy Issues 地質分野 Geological Survey and Applied Geosciences 標準・計測分野 Metrology and Measurement Technology 地球の理解に基づいた知的基盤整備 (地質の調査) Construction of Intellectual Infrastructure through Understanding of the Earth 戦略目標 戦略課題 重点課題 Strategic goal Strategic research subject Focal research subject 知的基盤整備への対応(計量の標準) Dissemination of Physical and Chemical Metrological Standards 戦略主導型で考える産総研「研究戦略」の可能性 “AIST Management Policy and Research Strategy” in Strategy Driven Case 戦略論の多様性(1):戦略論の4つの視点 ゲーム論的アプロー チ 1.「産業技術の視点でシーズを捉え直す」 :「外」に力点をおいた相互作 用 ・ 「本格研究」の一種(RTDの枠内でのニーズ型アプローチ) 2.「持続的発展可能な地球社会の実現」を先導する産業とは ・ 「基本理念」のブレークダウン ・ 制約条件を境界条件として、その下での要因の構造化 「外」:他社と 環境 「内」:自社 3.産業活動の「戦略目標」の明確化 ・ 地球生態系の破局をもたらす産業活動のIAとシナリオ分析 ・ グローバルな社会経済的秩序の壊滅をもたらす産業活動のIAとシナリ オ分析 4.6研究分野と内外の連携により取り組むことが可能な課題群の抽出 5.産総研としての「戦略計画」の策定 出典: 産総研、第2期研究戦略(平成18年度版) 学習アプローチ :「内」に力点をおいた相互作用 ポジショニング・アプロー チ 資源アプローチ :コアコンピタンス経営 :競争環境の構造分析 加藤・青島、「競争戦略論」、一橋レビュー、48(1/2),102-114(2000年)より一部変 更 戦略論の事例(1):製品開発戦略論 戦略論の多様性(2): -「製品やサービス」の「動向」の「必然性」 ミンツバーグの戦略論の分類 支配的デザインの確立 1 デザイン・スクール コンセプト構想プロセスとしての戦略形成 2 プランニング・スクール 形式的策定プロセスとしての戦略形成 3 ポジショニング・スクール 分析的プロセスとしての戦略形成 4 アントレプレナー・スクール ビジョン創造プロセスとしての戦略形成 5 コグニティブ・スクール 認知プロセスとしての戦略形成 6 ラーニング・スクール 創発的学習プロセスとしての戦略形成 7 パワー・スクール 交渉プロセスとしての戦略形成 8 カルチャー・スクール 集合的プロセスとしての戦略形成 9 エンバイロメント・スクール 環境への反応プロセスとしての戦略形成 規範的 物理的スペックの改善 オーバースペック コスト競争 窮乏サイクル 製品やサービス価値の 転換(新たな価値) 意思的 非技術的イノベーション 体力とスピード ソフトなスペック 特定可能なスペック 混合的 10 コンフィギュレーション・スクール 変革プロセスとしての戦略形成 価格設定力の確保 寡占体制 非特定的スペック (顧客との共同作業) 再コモディティ化 ヘンリー・ミンツバーグ、「戦略サファリ」、東洋経済新報社(1999年) オンリーワン体制 楠木健 「見えない次元」 研究技術計画 19-1/2 (2004年) 戦略形成のまとめ 戦略論の事例(2):ディマンドサイド戦略 ● 戦略形成 [フェーズⅠ] [フェーズⅡ] [フェーズⅢ] 研究主導 戦略主導 多様な混合型 [グローバルレベル]/[国家レベル]/[地域レベル] 制約条件 自然的 社会経済的 国際的 未来論 未来学 者 評論家 文献ベース 社会経済 的 ニーズ (願望) 社会調査と 市民参加 クライテリア 絶対的 社会経済的制度改 革 長期プ ロジェ 技術 クト ロード 願望的 価値論 マップ 未来社会 社会経済的 トレンド 政策の トレンド 科学技術の フロンティ ア 変化の 予兆 の 構想 克服すべき 課題群 重要 課題 大型プ ロジェ クト 基盤領域研究 シナリオベー ス 【ディマンドサイドアプローチ】 ディマンドサイドアプローチ】 科学技術ポテンシャル 分析的アプローチ 【シーズサイドアプローチ】 シーズサイドアプローチ】 ● 課題としての把握 シーズ概念かニーズ概念か 「対象概念」への転換: 何を 何をターゲットにするか 良構造: 閉鎖系(境界条件設定可能)と内部構造化 → インパクト・アセスメント → 有効な対象を特定する 「がん」の事例 「関係、比較、機能概念」のままの場合: 「産業競争力強化」、「安全な生活」、「3R」 悪構造: 開放系、動的 → 競争戦略、動的戦略として扱う → メタ原理 ● 「 ストック型社会」の事例 ・何をストック型にするとインパクトが大きいか ・その対象をストック型に転換するためにはどのような手段、制度、体制等が必要か ・その手段、制度、体制等の実現に先行的に取り組む Ⅳ.受託調査および研究実績 【ストック型社会の必要性と効果】 ストック型社会 長 寿 命 化 ストック型社会システムに関する 受託調査および研究 平成17年度国土交通省住宅・建築関連先導技術開発助成事業 「ステンレス鋼鉄筋による建築用超高耐久RC造の開発」 RC造は高層住宅など構造物に多く使われているが、コンクリー トの中性化、ひび割れ発生等の材料特性および酸性雨、塩化物イオ ン、酸素等の腐食環境に内部の鉄筋が腐食され、構造物としての性 能劣化を招いている。結果、スクラップアンドビルドを繰り返す構 造体になっているため、耐腐食性能が高いステンレス鋼鉄筋を従来 の炭素鋼鉄筋に置き換えることで、地球環境的視点からRC造の性 能 劣 化 を 抑 え 、耐 用 年 数 10 0 年 、200 年 と い っ た 超 高 耐 久 の 土 木 ・ 建築構造物を実現することが出来る。 本研究は、国土交通省の開発助成を受け、ステンレス鋼鉄筋を使 った建築超高耐久RC造の開発を目指す研究で、平成17年から 3 年間の研究期間で①設計・施工上必要とされる基本特性の把握、② 耐 久 性 の 定 量 評 価 、 ③ RC 構 造 体 の 構 造 性 能 評 価 、 ④ 経 済 的 、 環 境 負 荷 上 の メ リ ッ ト の 評 価 を 実 施 し 、 建 築 用 超 高 耐 久 RC 造 を 実 現 さ せる設計・施工指針につながるマニュアル案の策定を目標としてい る。 本報告書は、初年度に当たる平成17年度の研究成果のうち、当 研究所が担当した経済性および環境負荷上のメリットの評価に関す る研究成果について論述したものである。 ※ここでは概要を記載し、具体的な研究内容は 「Ⅱ ストック型社会形成に関する論文」 『 ス テ ン レ ス 鋼 棒 を 用 い た R C 構 造 物 の 評 価 に 関 す る 研 究 』( P に掲載いたしております。 1 ∼P )、 1.研究の位置付け 当 研 究 所 で は 、17 年 4 月 か ら 3 ヵ 年 計 画 で 国 土 交 通 省 住 宅・建 築 関 連 先 導 技 術 開 発 助 成 事 業 と し て ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 に よ る 建 築 用 超 高 耐 久 RC 造 の 開 発 プ ロ ジェクト(以下、共同開発とする)をステンレスメーカー3 社・建設メーカー2 社・ステンレス構造建築協会と共に実施している。 本稿は、同共同研究において、次世代システム研究所が担当したステンレス鋼 棒 を 用 い た RC 構 造 物 の 評 価 に 関 す る 研 究 の 初 年 度 ( 1 7 年 度 ) の 実 施 内 容 ・ 成 果 および共同開発計画予定についてまとめたものである。 近年、コンクリートの中性化や外部から侵入する塩化物イオンにより鉄筋が早 期に腐食し、コンクリートが予想以上に劣化する現象が建築、土木分野において 問題になっている。一方で、現在の日本における「スクッラプアンドビルド型」 の建築物から、高耐久・長寿命で良好な社会資本となる「ストック型」建築物へ の 転 換 が 求 め ら れ て い る 。 本 共 同 開 発 は 、 そ う し た ニ ー ズ に 対 応 し 長 寿 命 の RC 構造体を造ることを目的としている。 共 同 開 発 で は 、 ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 に よ る 建 築 用 超 高 耐 久 RC 造 の 開 発 を 目 的 と し て 、 そ の 鉄 筋 お よ び RC 構 造 物 に お い て ( 表 ― 1 参 照 ) ① 設計・施工上必要とされる基本特性の把握 ② 耐久性の定量評価 ③ RC 構 造 体 の 構 造 性 能 評 価 ④ 経済的、環境負荷上のメリットの算出 を 実 施 し 、建 築 用 超 高 耐 久 RC 造 を 実 現 さ せ る 設 計・施 工 指 針 に つ な が る マ ニ ュ ア ル案の策定を目標としている。 な お 、本 稿 で 研 究 対 応 と し た ス ケ ル ト ン 住 宅( SI 住 宅 )は 、そ の 社 会 的 要 求 に 応えるべく提案されたものである。柱や梁のような構造的な部分(スケルトン) を長寿命化し、時代により要求が変化する内装・設備部(インフィル)のみを造 り 直 す こ と に よ り 建 物 全 体 を 長 持 ち さ せ 、 建 替 え に よ る 多 量 の 産 業 廃 棄 物 、 CO2 放出による環境負荷を低減していこうという建築物である。 2.研究の概要 平 成 17 年 の 実 施 内 容 と 成 果 は 以 下 の 通 り で あ る 。 ( 1 ) ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 造 集 合 住 宅 の 経 済 性 の 検 討 ・ 文 献 資 料 と 関 係 機 関 へ の ヒ ア リ ン グ に よ る RC 造 集 合 住 宅 の LC コ ス ト の 構 成 要 素 の 把 握 と 諸 元 の 設 定 を 行 い 、 概 略 LC コ ス ト 算 定 を 実 施 し て LC で の 経 済 特性を把握した。 ( 2 ) ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 造 集 合 住 宅 の 環 境 性 能 の 検 討 ( 3 )( 1 ) の LC コ ス ト デ ー タ を 用 い て L C C O 2 ・ エ ネ ル ギ ー の 算 定 ・ 躯 体 の 長 寿 命 化 に よ る RC 構 造 物 の 環 境 負 荷 軽 減 効 果 を 把 握 し た 。 2 技術開発成果 ( 1 ) ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 造 集 合 住 宅 の 経 済 性 の 検 討 ・ ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 造 集 合 住 宅 の 建 設 コ ス ト は 、 S U S − 4 1 0 を 使 用 し た 場 合 普 通 鋼 鉄 筋 の 場 合 と 比 較 し て 1 割 上 昇 す る が 、 LCC 現 在 価 値 ( 割 引 率 2% ) で は 91 年 目 以 降 か ら 1 割 下 が り 、 長 期 間 の 経 済 性 に 関 す る 有 効 性 が 検 証 で きた。 ・ SUS− 3 04 の 場 合 は 、極 め て 耐 久 性 能 は 高 い も の の 普 通 鋼 鉄 筋 の 場 合 と 比 較 し て 、 建 設 コ ス ト で 2 割 以 上 上 昇 し 、 LCC 現 在 価 値 で の 効 果 も 少 な く 、 そ の 使 用方法、使用部位・分野などを検討する必要があることが分かった。 ( 2 ) ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 RC 造 集 合 住 宅 の 環 境 性 能 検 討 ・ RC 構 造 物 の 長 高 耐 久 化 に よ り 、 解 体 更 新 周 期 が 大 幅 に 長 く な る 事 に よ っ て LCCO 2 は 、 91 年 以 上 使 用 す る と 発 生 量 は 、 普 通 鋼 鉄 筋 の 場 合 と 比 較 し て 半 減 しその効果が大きいことが分かった。 以 上 、 実 施 計 画 通 り の 成 果 が 得 ら れ た 。 H18 年 は 下 表 に 示 す 通 り 、 よ り 高 強 度 なステンレス鋼鉄筋の材料特性の把握、促進試験によるコンクリート中ステンレ ス 鋼 鉄 筋 の 腐 食 特 性 の 把 握 、ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 R C 梁 部 材 の 詳 細 な 構 造 性 能 の 把 握 、 お よ び ス テ ン レ ス 鋼 鉄 筋 に よ る RC 造 建 物 の 経 済 性 と 環 境 性 能 の 詳 細 な 研 究 開 発 を実施する予定である。 表−1 開発目標 年度 【開発項目1】 SUS鉄筋の仕様 3 ヵ年開発計画 ①SUS鉄筋SSBA案の設定と大臣材料認定を取得準備 ②部位部材を特定し設計マニュアル案の作成 H17 H18 H19 SUS鉄筋鋼種選定の 高強度SUS(304N2・ 鉄筋継手・異種鋼材 ための機械的・物理的 410系)鉄筋材料特性 組合せ検討、性能 データ評価 データ収集・評価 物性データの収集 腐食環境下コンクリー ト中各種SUS鉄筋の 【開発項目2】 コンクリートとSUS鉄筋 発錆状況基礎データ 収集準備と初期値採 との適合性 取 ①SUS鉄筋の機械的・ 物理的物性データ集、 ②SUS鉄筋RC建物用 鉄筋仕様 腐食環境下コンクリー ①SUS鉄筋RC用コン 腐食環境下コンクリー ト中各種SUS鉄筋発 クリート工事マニュア ト中各種SUS鉄筋の 錆データ評価、コンク ル粗案 継時発錆・促進発錆 リート工事マニュアル データ収集 案作成 SUS鉄筋RC梁部材構 SUS鉄筋RC梁部材構 SUS鉄筋RC柱部材構 【開発項目3】 造性能-靭性・せん断 造性能-靭性・せん断 造性能評価、設計法・ SUS鉄筋補強RC部材 強度・付着強度-の基 強度・付着強度・耐火 解析法のひょうか の部材性能 性能-の評価 礎データ採取 ①LCコストの構成調 査と諸元設定 【開発項目4】 SUS鉄筋を用いたRC ②RC造建物のCO2・ エネルギー原単位およ 構造物の評価 びアルゴリズム検討 予定成果 ①SUS鉄筋RC建物の 経済性評価手法の検 討 ②CASBEEによる構工 法システム改善検討 3 ①SUS鉄筋RC建物の 経済優位性市場形成 手法の検討 ②高耐久性技術の社 会効果検討 ①SUS鉄筋加工マニュ アル粗案 ②SUS鉄筋RC設計マ ニュアル粗案 SUS鉄筋RC建物の ①経済性検証資料 ②環境性能評価資料 ③市場戦略案 サスティナブル・ストック型街区プロジェクト 「持続可能な社会の形成に向けた市街地の整備に関する研究」 こ れ か ら の 日 本 の 人 口 は 減 少 に 転 じ 、 21 世 紀 末 に は 半 減 さ れ る と 言 わ れ て い る 。そ う し た 社 会 の 成 熟 化 の 中 で 、利 便 設 備 の 整 っ た 都 心 居 住 に 対 す る ニ ー ズ が 高 ま っ て お り 、集 積 度 の 高 い「 街 な か 」に 環 境 負 荷 や 行 政 コ ス ト が 少 な く 、且 つ 生 活 利 便 施 設 が 整 っ た 良 質 で 持 続 的 な住宅市街地を形成する必要がある。 本 研 究 は 、サ ス テ ィ ナ ブ ル ・ ス ト ッ ク 型 街 区( 建 築 物 を 長 寿 命 化 さ せ る だ け で な く 、敷 地 周 辺 の 都 市 イ ン フ ラ と の 一 体 整 備 、持 続 的 な タ ウ ン マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム を 構 築 な ど 、良 好 で 持 続 的 な 街 区 )を 形 成 す る た め に 、そ の 効 果 や 解 決 方 策 を 明 ら か に し 、モ デ ル プ ロ ジ ェ ク ト で の 実 現 を 目 指 す も の で 、本 年 度 は そ の た め の 準 備 作 業 と し て 、そ の 概 念 を 検 討 し 、単 純 事 業 モ デ ル を 設 定 し 、住 宅 の 長 寿 命 化 に よ る 環 境 負 荷 の 軽 減 効 果 や サ ス テ ィ ナ ブ ル・ス ト ッ ク 型 街 区 の 事 業 性 に 付 い て 検討を行ない、その実現可能性と課題を明らかにした。 ※ ここでは概要を記載し、具体的な研究内容は 「Ⅱ ストック型社会形成に関する論文」 『 ス ト ッ ク 型 街 区 形 成 に 向 け て 』( P 「Ⅲ ∼P )、 次世代システム研究会公開講座発表」 『 ス ト ッ ク 型 街 区 形 成 に 向 け て 』( P ∼P 1 )に掲載いたしております。 ストック型街区研究会 今 日 、日 本 は 成 長 型 社 会 か ら 成 熟 型 社 会 へ の 転 換 点 に あ る 。2 0 世 紀 後 半 の 半 世 紀は欧米へのキャッチアップを目指して、 “より高機能のものを早く安く提供する こと”に努め世界有数の経済発展を遂げた。しかし現在、少子高齢化の進行や生 産拠点の海外移転、地球環境問題の高まりの中で新たな社会目標を模索する状況 が続いている。 平 均 寿 命 が 30 年 以 下 と 短 寿 命 の 住 宅 は 生 涯 住 宅 コ ス ト の 高 負 担 に つ な が り 、高 齢 化 の 進 行 に よ る 社 会 負 担 の 増 加 と あ い ま っ て 、個 人 消 費 を 抑 制 し て い る 。ま た 、 高度成長期には景気浮上の効果を発揮した社会資本整備も低成長経済下では財政 の悪化につながるなど経済の足かせになっている。 日本が持続可能な成熟型社会に移行していくためには、これまでのフロー型の 住宅や社会インフラを長寿命ストック型のものに変え、資産として次の世代に残 していくような都市・建築づくりを行なう必要がある。それによって、次の世代 の住宅コストや社会負担を軽減できるだけでなく、解体更新をなくすことによっ て環境負荷の軽減や持続型の社会を形成することが出来る。 現在、日本は依然豊かな国であり個人資産の額も大きいが、その投資先として 良好で収益性のある住宅や上下水道の更新生活利便施設をそうした都市づくりを 進めることによって、地域経済の活性化にも資する事が出来る。そのためには、 建築と周辺の都市基盤を一体とした街区の整備が重要である。 本研究は、そうしたサスティナブル・ストック型街区を形成するために、その 効果や解決方策を明らかにし、モデルプロジェクトでの実現を目指すもので、本 年 度 は そ の た め の 準 備 作 業 と し て 、そ の 概 念 を 検 討 し 、単 純 事 業 モ デ ル を 設 定 し 、 住宅の長寿命化による環境負荷の軽減効果やサスティナブル・ストック型街区の 事業性について検討を行ない、その実現可能性と課題を明らかにした。 次年度以降は、これをもとに具体の適地において実現方策の検討を進めていき たい。 2 研究成果の概要 1.研究の目的と今年度研究の位置づけ 1−1.サスティナブル・ストック型街区研究の目的 ①堅固な構造と適正な規模をもち、世代を超えて長く使うことが出来る住宅を “ ス ト ッ ク 型 住 宅 ”と よ ぶ 。ス ト ッ ク 型 住 宅 は 、強 固 な 構 造 躯 体 や 機 能 更 新 を 考 慮 に 入 れ た 造 り 方 を す る た め 初 期 コ ス ト は 割 高 と な る が 、解 体 更 新 が 無 く ま た 改 修 コ ス ト も 低 下 し 、期 間 あ た り の 住 宅 コ ス ト や 環 境 負 荷 の 軽 減 に 役 立つことが考えられる。 ②しかし、単に建築物を長寿命化させるだけでは良好な市街地は形成されず、 そ の た め に は 敷 地 周 辺 の 都 市 イ ン フ ラ と の 一 体 整 備 、持 続 的 な タ ウ ン マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム の 構 築 な ど 、良 好 で 持 続 的 な 街 区 の 形 成 を 行 な う 必 要 が あ る 。 そうした街区をサスティナブル・ストック街区と呼ぶ。 1−2.ストック型街区形成の課題 サスティナブル・ストック型街区を普及させるためには、そのメリットを把 握し、それにふさわしい事業手法や供給方法の整備が必要である。そうした課 題として、 ①経済性や環境負荷軽減効果の定量的把握、 ② 長 寿 命 化 の コ ス ト メ リ ッ ト を 顕 在 化 さ せ る 事 業 手 法( 事 業 ス キ ー ム )の 検 討 、 ③街区の持続性を高めるための建物と街区を一体的に開発運営するための仕 組み(タウンマネジメント)を構築する必要がある。 1−3.サスティナブル・ストック型街区の構成と想定効果 想定される効果としては、①主要な効果として安全・安心な場の提供、都市 経営コストの軽減、地球環境負荷の半減、生涯住宅コストの低減が、②付加的 な効果として長期安定的な投資市場の創出、若年層・高齢者層の住宅確保、自 立的な地域産業の創出が考えられる。 1−4.サスティナブル・ストック型街区の検討項目 サスティナブル・ストック型街区の効果を明らかにし課題を解決するために は、検討項目は多岐にわたり、適応する地域や事業環境によって大きく異なる ため、具体の適地でのケーススタディを中心に進めるのが好ましい。 本年度はその準備作業として、一版的な効果の概略検討を行なうものとし、 3 章でストック型街区の構成要素を明らかにし、4 章で住宅の長寿命化による CO 2 の 削 減 効 果 を 、5 章 で 街 区 の 一 体 的 整 備 と 建 築 の 長 寿 命 化 に よ る 事 業 効 果 と 事業化の検討を行ない、6 章でストック型街区形成のメリットと実現に向けた 課題を明らかにした。 3 2.サスティナブル・ストック型街区の構成 2−1.持続可能な市街地の形成 持続可能な市街地を形成する視点から、サスティナブル・ストック型街区の 要件を整理し街区の構成要素を検討し、街区の施設構成を検討した。 持 続 可 能 な 社 会 で の 街 区 を 構 成 す る 概 念 要 素 に つ い て は 、住 宅・建 築 、街 区 ・ 住区、地区など都市の層別構成のほかニーズである社会の変化や建築生産のあ り方を考慮に入れ、社会的なサスティナブル要素、技術的なサスティナブル要 素、地球環境問題、歴史観や価値観などの社会意識などに分けし、街区形成の 上でどう関係するかを明らかにした。 2−2.サスティナブル・ストック型街区の施設構成 サ ス テ ィ ナ ブ ル・ス ト ッ ク 型 街 区 の 施 設 構 成 で は 、社 会 資 産 と し て 住 居 施 設 、 生活支援・サービス施設、都市基盤など従来の社会資産施設のほか、将来への フレキシビリティを担保するリザーブスペースを加えた。また、歴史・景観資 産やミニ自然資産など、機能は明確ではないが良好な市街地を形成していくた めに必要な要素も構成要素に加えた。 さらにそうした検討をもとに、サスティナブル・ストック型街区群のイメー ジ図を作成した。 3.環境負荷軽減効果の検討 3 − 1 . 住 宅 の 長 寿 命 化 に よ る CO2 削 減 効 果 こ れ ま で 住 宅 に お け る CO 2 の 削 減 に つ い て は 、 建 設 時 お よ び 使 用 時 の エ ネ ル ギー消費に対するものを対象としてきたが、長期の視点で考えると解体・更新 をしないことによる削減効果も大きい。また、欧米に比較し建築の寿命が短い 日 本 の CO 2 削 減 活 動 の 主 要 な 努 力 点 で も あ る 。 こ こ で は 、 そ う し た 建 築 の 改 装 や 建 替 え な ど 工 事 に 伴 う CO2 削 減 量 を 従 来 型 集 合 住 宅 と 比 較 し 、 200 年 間 で 4 割 削 減 さ れ る こ と を と 明 ら か に し た 。 尚 こ の 値 は マ イ カ ー の 使 用 量 を 40% 削 減 し た こ と に 相 当 す る 。 3 − 2 . ス ト ッ ク 型 住 宅 の 普 及 に よ る CO2 削 減 効 果 ストック型住宅の普及による社会的な効果を明らかにするため、毎年建替え ら れ る 集 合 住 宅 の う ち 、 ス ト ッ ク 型 住 宅 へ の 転 換 率 を 100% 、 70% 、 50% に 仮 定 し た と き の 削 減 効 果 を 算 定 し た 。 そ の 結 果 、 70% の 転 換 率 の と き に 135 年 目 で半減数する事がわかった。この結果から、長寿命型住宅への転換促進策の効 果が大きいことが分かった。 4 4.事業性と事業手法の検討 4−1.事業性の評価 単純事業モデルを想定し、従来型街区とサスティナブル・ストック型街区の 投 資 採 算 性 を 検 討 し た 結 果 、 内 部 収 益 率 ( I R R ) が 3.9% か ら 5.2% に 改 善 さ れ る 事 が わ か っ た 。 ま た 、 利 用 者 の 生 涯 支 出 で は 45 年 間 で 約 25% と 期 間 あ たりのコスト削減効果もわかった。 4−2.事業スキームの検討と課題の整理 そうしたサスティナブル・ストック型街区のメリットを顕在化させ、普及さ せる手法として、居住型証券化やリース事業方式が考えられることが分かった。 さらに、こうした事業手法は民間の投資型資金の活用や高齢化社会での住宅供 給にふさわしい事もわかった。 5.まとめ −サスティナブル・ストック型街区のメリットと今後の検討課題− 5−1.従来型街区との比較によるメリット 従来型も出るとの比較により、上記事項以外、駐車場や緑の確保など良好な 高空間の確保や安心・安全な市街地の形成の効果、個性的で陳腐化しない住環 境の形成、建替え更新の資金負担の心配の消滅などの効果があり、住宅生涯コ ストの軽減や次世代への資産継承のほか、良好な成熟型社会の形成にも有効で あることが分かった。 5−2.実現に向けた課題と今後の検討方法 実現に向けた課題については、官民一体による街区整備手法の検討、街区の 一体的管理運営によるコスト・環境負荷の低減と市街地環境の持続的向上の事 例検討、事業スキームの開発、投資環境の整備や街区形成の促進策などを検討 する必要があることが分かった。 そうした問題の解決のためには、具体の適地での実情に即した検討が不可欠 であり、次年度以降そうした事業化検討に進みたい。 5 さつき松原調査研究業務 当 研 究 所 は 平 成 14 年 度 か ら 旧 玄 海 町 の 依 頼 に よ り「 さ つ き 松 原 研 究 会 」の 活 動『 松 林 の 再 生 に よ る 環 境 保 全 と 地 域 産 業 の 活 性 化 モ デ ル 事業』に参加している。この事業の目的は荒れ果てた松林を再生し、 松 露 ・マ ツ タ ケ 等 の 菌 類 を 再 生 さ せ 、地 域 を 活 性 化 す る こ と で あ っ た が 、市 町 村 合 併 に よ り 一 年 間 、活 動 を 休 止 せ ざ る を 得 な か っ た 。平 成 16 年 7 月 よ り 新 ・ 宗 像 市 が 発 足 し 、 そ の 活 動 を 再 開 し た 。 新 た に 中 長 期 の 活 動 計 画 を 策 定 し 、平 成 1 7 年 度 は 第 1 期 の 事 業 計 画 で あ る 、「 各 専 門 分 野 の 視 点 か ら み た さ つ き 松 原 」 の 調 査 ・ 研 究 を 行った。ここに活動当初からの調査・研究等に関する成果をまとめ、 18 年 度 以 降 の 実 証 研 究 に 展 開 し て い く も の で あ る 。 発注元:宗像市農業振興課 1 さつき松原環境保全・地域活性研究会 平成17年度活動報告書 平成18年3月24日 さつき松原環境保全・地域活性研究会 (略 称 : さ つ き 松 原 研 究 会 ) 松 露 学校法人九州国際大学次世代システム研究所制作 2 1 .経 緯 さつき松原研究会(今後は当会と称す)は、旧玄海町での活動を経て市町村合 併 時 の 活 動 中 断 の 後 、平 成 16 年 7 月 よ り 新 ・宗 像 市 の 活 動 と し て 再 開 し た 。そ の 活動の理念は概ね旧玄海町のそれを引き継ぐものであるが、別紙−1 に示すよう に新たに市政ニーズに合うよう目的を構築し中長期の活動計画を策定した。 別紙に示した企画書のうち、第 1 期事業計画すなわち当初 3 年間の活動は各専 門分野の視点からみた「さつき松原」の調査・研究である。この結果つまり「さ つき松原」のポテンシャルを確かめた上で、その利用に関する実証研究の展開が 第 2 期 の 3 年 間 で 予 定 さ れ て い る 。平 成 1 8 年 度 で 終 了 予 定 の 第 1 期 の 位 置 付 け か ら 、平 成 17 年 度 の 事 業 は 極 め て 重 要 で あ る 。そ こ で 1 7 年 度 の 活 動 報 告 書 と し て 、 活 動 当 初 か ら の 調 査 ・ 研 究 等 に 関 す る 成 果 を こ こ で ま と め 、1 8 年 度 の 事 業 計 画 を 確認したい。 2.活動報告 2−1.調査・研究 (1)調査 (1−1)調査計画・研究実施計画 さつき松原の林相復元による環境保全と復元環境利用事業に係る 研究実施計画(案) 福岡県森林林業技術センター [緒 言 ] 海岸クロマツ林は我が国の伝統的な景観であり、国土保全上も重要な自然財 産である。 宗像市さつき松原もこのような意味において重要であるのみでなく、市民の 保健休養の場自然に親しむ場としても重要な役割を果たしてきている。近年、 マツノザイセンチュウ病等により、クロマツの枯損が進行しその復元は大きな 課題であるといえる。そのために、本研究では、当該地域の現状を把握し、機 能的、好景観な海岸林として復元するための調査研究を行う。 [調 査 研 究 ] 1.さつき松原現地踏査 本地域の現状について、国有林資料を基に現地調査を行う。 2.試験地設定 地域内数カ所に処理を施すための試験地を設定する。 3 3.林分調査(植生、樹木形質、菌類、動物調査) 試験地内の精査を行う。環境林としての機能性、景観林としての優良性等 を把握する。 4.除伐、林床整理 海岸クロマツ林としての諸機能を復元するための作業を施す。密植幼令林 においては環境に応じた除伐や、下層植生の混みすぎた箇所では林床整理等 の作業を行う。 5.効果調査 試験後の林分において3と同様の調査、および防風、防砂等の保全機能調 査を行う。 付.さつき松原および近郊の海岸マツ林でみられたきのこ類 ヒラタケ、マツオウジ、スエヒロタケ、シモフリヌメリガサ、フユヤマタケ、 ア カ ヤ マ タ ケ 、オ オ キ ツ ネ タ ケ 、キ ツ ネ タ ケ 、カ レ バ キ ツ ネ タ ケ 、サ マ ツ モ ド キ 、 シモコシ、ハマシメジ、カキシメジ、モリノカレバタケ、アマタケ、シイタケ、 ワサビカレバタケ、マツカサキノコ、オオホウライタケ、シバフタケ、ニセホウ ライタケ、チシオタケ、テングタケ、ツルタケ、コテングタケモドキ、ヘビキノ コモドキ、センボンイチメガサ、ミドリスギタケ、チャツムタケ、オウギタケ、 クギタケ、アミタケ、ドクベニタケ、ハツタケ、トキイロラッパタケ、ムラサキ ナギナタタケ、ショウロ、ホコリタケの仲間、ヒトクチタケ ショウロ発生調査現地実験計画 (クロマツ林への木炭埋め込みによるショウロ増産) 福岡県森林林業技術センター [内 容 ] 現在ショウロ発生の見られる現地に木炭を埋設し、クロマツの健全な育成を促 すとともに、ショウロの増産をめざす。 [材 料 と 方 法 ] 〇現地のクロマツ枯死枝の切除、作業に支障となる下枝の枝払い、植生(特に 木本類)の刈り取りを行う。 〇 ク ロ マ ツ 樹 間 に 幅 30cm、 深 さ 30cm の 溝 ( 長 さ は 現 地 に 会 わ せ る ) を 掘 り 低 質 炭 の 粉 炭 を 底 に 厚 さ 10cm 埋 め 込 む 。 〇粉炭の上は堀採った砂を埋め戻す。 〇その後のショウロ発生について、対照区と比較調査する。 4 (1−2)さつき松原−林相・植生調査 さつき松原のフローラに関するリストづくりを当初計画した。過去の調査資 料および現踏査によるリストづくりを考えた。 資料調査は十分な資料が収集できなかった。また現地調査は各研究員が個々 に行ったが、当該地の環境が地質的にも地形的にも変化に富み、植生も非常に 多様であり、今年度はまとめるに至らなかった。 しかしながら航空写真等の入手により、各研究員は当該地全域の林相・植生 等に関するマクロ的な認識を得ることができた。 (1−3)さつき松原 菌類調査 菌類は季節による多様性がある。そのため季節ごとの調査が必要である。本 年度は秋季における実態調査と、当該地で見られる可能性が高い菌類に関する 資料調査(次頁)を行った。 現 地 菌 類 調 査 ( 2005.9.29 金子) 地図に番号で示す地点における調査結果 地点① ア ラ ゲ キ ク ラ ゲ 、 カ ミ ウ ロ コ コ タ ケ 、 ス エ ヒ ロ タ ケ 、 カ ワ ラ タ ケ ( 薬 )、 ウ ス ヒ ラ タ ケ 、 ヒ イ ロ タ ケ ( 薬 )、 ウ ス バ シ ハ イ タ ケ 、 ム ラ サ キ ホ コ リ 、 クロコブタケ、ウチワタケ 地点② アシグロタケ、キアシグロタケ、オシロイタケ 地点③ ノウタケ、不明 地点④ チリメンタケ、コフキサルノコシカケ 5 事前調査で確認された菌類(さつき松原近郊の海岸マツ林) ヒラタケ、マツオウジ、スエヒロタケ、シモフリヌメリガサ、フユヤマタケ、ア カヤマタケ、オオキツネタケ、キツネタケ、カレバキツネタケ、サマツモドキ、 シモコシ、ハマシメジ、カキシメジ、モリノカレバタケ、アマタケ、シイタケ、 ワサビカレバタケ、マツカサキノコ、オオホウライタケ、シバフタケ、ニセホウ ライタケ、チシオタケ、テングタケ、ツルタケ、コテングタケモドキ、ヘビキノ コモドキ、センボンイチメガサ、ミドリスギタケ、チャツムタケ、オウギタケ、 クギタケ、アミタケ、ドクベニタケ、ハツタケ、トキイロラッパタケ、ムラサキ ナギナタタケ、ショウロ、ホコリタケの仲間、ヒトクチタケ 6 (1−4)さつき松原のファウナ(野鳥) さつき松原のファウナに関しては、食物連鎖の上位鋼・鳥類のみを調査対象 とした。菌類やマツ林との関係から見れば、昆虫類や哺乳類にも関心があった が、当該地においてはそれらの鋼の動物は過去の系統的調査資料も少なく、ま たその観測調査も容易でないため今回は鳥類のみを対象にした。 鳥類に関しては環境省・みどりの国勢調査/鳥類偏の直近の調査において、 当該地近隣の調査地を岡本が担当したので当時のデータを参考にした。またこ れに最近の当該地周辺の観測記録を加えてリストを作成した。 1)観測リストに含まれる環境の範囲 さつき松原の松林、雑木・潅木帯、海浜、つり川河口、さつき松原周辺 の池沼・耕地。ただし湯川山山系は含まない。 2)鳥相リスト リスト中、○と●のマーキングが付いた種が当該地の生息種で、●で示 した種は希少種である。 季 節( 渡 り )区 分 の み を 記 述 。学 名 や 詳 細 な 観 測 ポ イ ン ト 等 に つ い て は 、 この調査研究の目的から必要ないと思われるため割愛した。 3)鳥相からの環境評価 これまで当該地周辺域で観測された鳥相は32科138種である。この ことは、当該地周辺域が、環境の多様性と地理的位置から鳥相も非常に豊 かであることを意味している。この鳥相に湯川山山系の鳥相を加えると、 福岡県内屈指のバードウォッチング/エコツーリズムの候補地になり得 る。 7 さつき松原周辺域の鳥相 科 カイツブリ ウ サギ トキ カモ 種 カイツブリ ハジロカイツブリ ミミカイツブリ カンムリカイツブリ カワウ ヒメウ ウミウ サンカノゴイ ヨシゴイ オオヨシゴイ ゴイサギ ササゴイ ダイサギ チュウサギ コサギ カラシラサギ クロサギ アオサギ ムラサキサギ ヘラサギ クロツラヘラサギ ツクシガモ オシドリ マガモ カルガモ コガモ トモエガモ ヨシガモ オカヨシガモ ヒドリガモ オナガガモ ハシビロガモ ホシハジロ キンクロハジロ ススガモ リスト中○マークの種、●は希少種 渡り区分 留 旅 夏 冬 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 科 カモ タカ ○ ○ ハヤブサ ○ ○ キジ ○ ○ クイナ ミヤコドリ ○ ○ ○ チドリ ○ ○ ○ ○ ○ ○ シギ 8 種 ホオジロガモ ウミアイサ アメリカヒドリガモ ミサゴ ハチクマ トビ ハイタカ ノスリ サシバ ハイイロチュウヒ チュウヒ ハヤブサ ウスハヤブサ コチョウゲンボウ チョウゲンボウ ウズラ コジュケイ キジ クイナ ヒメクイナ ヒクイナ バン オオバン ミヤコドリ コチドリ シロチドリ メダイチドリ (オオメダイチドリ ムナグロ ダイゼン ケリ タゲリ キョウジョシギ トウネン ヒバリシギ 渡り区分 留 旅 夏 冬 ○ ○ ○ ● ● ○ ● ● ● ● ● ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 科 シギ セイタカシギ ヒレアシシギ ツバメチドリ カモメ 種 ウズラシジ ハマシギ オバシギ (ミュビシギ) エリマキシギ (キリアイ) (オオハシシギ) (ツルシギ) アカアシシギ コアオアシシギ アオアシサギ クサシギ タカブシギ キアシシギ イソシギ ソリハシシギ オグロシギ オオソリハシシギ ダイシャクシギ ホウロクシギ チュウシャクシギ コシャクシギ ヤマシギ タシギ ハリオシギ (オオジシギ) タマシギ セイタカシギ アカエリヒレアシシギ ツバメチドリ ユリカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ カモメ ウミネコ 渡り区分 留 旅 夏 冬 科 カモメ ○ ○ ○ ハト カッコウ フクロウ カワセミ ヤツガラシ キツツキ ヒバリ ○ ○ ○ ○ ツバメ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ セキレイ ○ ○ サンショウクイ ヒヨドリ モズ ○ ○ ○ ○ ○ ヒタキ ○ 9 種 ハジロクロアジサシ クロハラアジサジ コアジサシ ドバト キジバト アオバト ツツドリ コミミヅク カワセミ ヤツガラシ コゲラ ヒバリ ショウドウツバメ ツバメ コシアカツバメ イワツバメ ツメナガセキレイ キセキレイ ハクセキレイ ホオジロハクセキレイ セグロセキレイ ビンズイ ムネアカタヒバリ タヒバリ サンショウクイ ヒヨドリ チゴモズ モズ コルリ ルリビタキ ジョウビタキ ノビタキ イソヒヨドリ マミジロ トラツグミ 渡り区分 留 旅 夏 冬 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 科 ヒタキ エナガ ツリスガラ シジュウカラ メジロ ホオジロ 種 クロツグミ アカハラ シロハラ マミチャジナイ ツグミ ウグイス シマセンニュウ コヨシキリ オオヨシキリ メボソムシクイ エゾムシクイ センダイムシクイ キクイタダキ セッカ キビタキ オオルリ サメビタキ エゾビタキ コサメビタキ エナガ ツリスガラ ヤマガラ シジュウカラ メジロ ホオジロ コジュリン ホオアカ カシラダカ ミヤマホオジロ ノジコ アオジ クロジ オオジュリン 渡り区分 留 旅 夏 冬 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 科 種 アトリ カワラヒワ マヒワ アトリ ウソ コイカル シメ ハタオリドリ スズメ コムクドリ ムクドリ ムクドリ コウライウグイス コウライウグイス カササギ ミヤマガラス カラス ハシボソガラス ハシブトガラス ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 10 渡り区分 留 旅 夏 冬 (1−5)木屑処理に関する技術資料 福岡県工業技術センターインテリア研究所 松 林 の 保 全・管 理 の 過 程 で 発 生 す る 間 伐 材・木 屑 の 利 用 に 関 す る 調 査 を 行 っ た 。 この処理技術に関して今回は以下の4項目について調査した。 1.木質ペレット 2.炭化 3.ガス化炉 4.コンポスト 図−1.木屑・林地残木の処理ルート 11 ①木質ペレット <木質ペレットとは?> 木質ペレット燃料は、おが屑や鉋屑などの製材廃材や林地残材、古紙といった 木 質 系 の 副 産 物 、廃 棄 物 を 粉 砕 、圧 縮 し 、成 型 し た 固 形 燃 料 の こ と で す 。長 さ は 1 ∼ 2㎝ 、直 径 は 6、8、10、12㎜ が 一 般 的 で 、 最 大 25 ㎜ ま で 製 造 す る こ と が で き る 。 家 庭 で の 利 用 に 対 し て は 、6㎜ の も の が 最 良 の燃料状態を実現できるとしてスウェー デンで推奨しており、木材の成分である リグニンを熱で融解し固着させることで 成形するので、バインダー(接合剤)の 図−2.木質ペレット 添加は一切必要ない。 表−1.木質ペレット燃料の特性 発熱量(下限) 4. 7 k W h / k g = 約 4 , 0 0 0 k c a l / k g 灯油換算 ペ レ ッ ト : 灯 油 = 約 2.1ト ン : 1 m3 体積重量 650kg/ m3 含水率 8 ∼ 13% 灰分 心 材 : 0.5% 以 下 、 樹 皮 : 2.5% 以 上 ペレット燃料の特長は、他のバイオマス燃料に比べて非常に扱いやすいところ である。形状・含水率が一定であるため自動運転装置に適しているので、発電用 ボイラーでも家庭用のストーブでも、格段に手間が省ける。輸送に関しては、エ ネルギー密度が高く一度により多くのエネルギー量を運べるため、長距離輸送が 可能で、また加熱処理されているためカビなどが生える心配が少なく、長期間の 貯蔵もできる。 表−2.ペレット燃料の長所と短所 長所 上質の燃料である(形状や含水率等の品質が安定している) 乾燥しており貯蔵が容易である 環境基準に適合した燃焼が可能である 自動燃焼に適している 地域の再生可能な資源から造られる チ ッ プ よ り も エ ネ ル ギ ー 密 度 が 高 い の で 、輸 送 や 貯 蔵 に 適 し ている エ ネ ル ギ ー 密 度 が 高 い の で 、エ ネ ル ギ ー 需 要 密 度 の 高 い 地 域 まで運ぶことができる 閉鎖系の再生可能エネルギーシステムに理想的である 小規模から大規模なエネルギーシステムにおいて経済的な 12 代替選択となりうる 雇用を生み出す 短所 家 庭 に お い て は ガ ス や 石 油 、電 力 に よ る 暖 房 よ り も 労 働 集 約 的である 燃 料 供 給 や 輸 送 、燃 焼 に 関 し て 、ガ ス や 石 油 、電 力 よ り も 信 頼性が劣る 貯 蔵 時 に 石 油 の 3倍 の 容 積 が 必 要 水気に弱い <木質ペレットの利用> 木 質 ペ レ ッ ト は 目 的 に 合 わ せ て 様 々 な 使 わ れ 方 を し て い る 。 数 出 力 百 MW単 位 の 大型ボイラーでは、ペレットの形状は輸送と貯蔵のためだけに用いられ、燃料は 粉砕され浮遊燃焼される。この種の大型ボイラーは発電や地域供給といった地域 エネルギーの供給を担っている。 一方、中・小規模ボイラーは、工場の自家発電装置として使われたり、病院や 学校の暖房用に使われている。また、家庭で気軽に使えるものとしてペレットス トーブがある。こういった小規模ボイラーやペレットストーブは、企業や家庭が バイオマスエネルギーを導入したいと考えた際に、取り扱いの面からもコストの 面からも大変使いやすいものであり、特に家庭で利用しやすいペレットストーブ は、エアコンなどに代わる暖房設備として非常に注目されている。 <国内のペレット製造状況> わ が 国 で の ペ レ ッ ト シ ス テ ム の 導 入 は 2度 の 石 油 シ ョ ッ ク が き っ か け で あ っ た 。 一 時 は 30工 場 近 く が 創 業 し た が 、 石 油 価 格 の 下 落 に よ り 代 替 燃 料 と し て の 価 格 メ リットが失われた結果、定着するには至らなかった。現在、岩手県・葛巻林業、 徳 島 県 ・ ツ ツ イ 、 高 知 県 ・ 須 崎 燃 料 の 3工 場 が 稼 動 中 で 、 年 間 生 産 量 は 2,300ト ン である。 <ペレットの製造> 1 .破 砕 原料は小片の均一な微粒子サイズに破砕 される。 2 .乾 燥 微粒子状になった原料は木材あるいは天 然ガスを燃料とするロータリードラム乾 燥 機 を 用 い て 含 水 率 8 ∼ 10 % ま で 乾 燥 さ れる。 3 .ペ レ ッ ト 化 図−3.ペレット製造の仕組 乾 燥 さ れ た 原 料 は 、従 来 型 の ペ レ ッ ト 成 13 ①原料②ペレット 形機によってペレットに成形される。しばしは蒸気によって乾燥状態を調節さ れる。添加剤は通常使用せず、木材のリグニンがペレット化の工程の中で軟化 し接着剤の役割を果たす。 4 .冷 却 成形されたペレットは、リグニンを軟化させ、ペレットを安定化させるため、 すぐさま空気で冷却される。 5 .微 粒 子 の 選 別 残留した微粒子は選別され、工程に戻される。 6 .袋 詰 ・ 貯 蔵 ペレットは自動的に小袋や大袋に袋詰されたり、サイロに貯蔵されたりする。 <木質ペレットの価格> 日 本 の ペ レ ッ ト 価 格 は 18∼ 26円 / k g で あ る 。( 葛 巻 林 業 、 ツ ツ イ 、 須 崎 燃 料 の 3 社) <ペレット成形機の価格> ペ レ ッ ト 成 形 能 力 が 5 0 0 k g/ 時 の も の で 1 基 6 5 0 万 円 程 度 で あ る 。 14 ②木材炭化 炭化法の種類 炭化法は製炭と乾留に大別される。いずれも木炭が生産されるので、この区分 ははっきりしないが、一般の製炭は木炭取得を目的に生材を炭窯中で炭化し、乾 留では気乾材を原料として気体および液体生産物を主目的とするためレトルトま たは炉を使う。前者でも木酢液、木タールを採取する場合がある。製炭法として は次のようなものがある。 a. 無 蓋 製 炭 法 枝条材を主とする炭化法で、平地またはくぼ地に原料を積み重ねて点火し、炎 があがる中で、次々に枝条をかぶせ、不完全燃焼させて内部を炭化し、最後に水 や雪あるいは土で消火する原始的方法である。針葉樹の枝条材から成型木炭、活 性 炭 を 製 造 す る 場 合 に こ の 方 法 が よ く 用 い ら れ る 。 収 率 は 低 く 、 一 般 に 10% 内 外 で あ る 。( 図 − 4参 照 ) ● 初 期 投 資 : 無 し 。た だ し 埋 設 及 び 炭 化 用 の 土 地が必要。 ●課題:・1バッチ当たりの処理時間が 長 い ( 数 日 か ら 数 週 間 )。 し か も 開 始 、終 了 の 時 間 の 再 現 性 が ほとんどない。 ・煙が大量に出る。 ●端材・鋸屑などの炭化に適す 図 − 4 .無 蓋 製 炭 窯 15 b. 平 窯 製 炭 法 水分の多いのこ屑、樹皮、プレーナー屑、チッパダスト、木片などの工場廃材 の炭化に適し、天井のない、量産向の炭化窯で、窯底に地下煙道を設けて排煙す る。煙突は一般に高く、消煙のため煙を再燃することもある。原料、設置場所、 作業性などによって、水平・掘入れ・上置き式がある。一般は角形の掘込み式が 多 く 、と き に 丸 形 も あ る 。炭 化 温 度 は 低 い が 、部 分 に よ っ て は 4 0 0 ℃ を 越 え る こ と が あ る 。 煙 突 口 温 度 は 100℃ 以 下 で あ る 。 収 率 は 1 0 ∼ 1 2 % で あ る ( 図 − 5 参 照 )。 図 − 5 .平 窯 ( チ ッ プ 、 樹 皮 廃 材 用 ) ● 初 期 投 資 : セ メ ン ト ブ ロ ッ ク 及 び 組 み 立 て の た め の 費 用 が 必 要 。 1∼ 2m3/ 日 の 発 生 量 と 仮 定 し 、 1週 間 分 を ス ト ッ ク し て 、 1 週 間 運 転 の サ イ ク ル を 維持する設備は、図の程度と考えられる。 推 定 額 : 数 10万 円 ∼ 1 0 0 万 円 ● 課 題 : ・ 1バ ッ チ 当 た り の 処 理 時 間 が 長 い ( 数 日 か ら 数 週 間 )。 し か も 開 始 、 終 了の時間の再現性がほとんどない。 ・煙が大量に出る。 ・ 煙 の 2次 燃 焼 炉 が 必 要 。 ・頻繁に監視を行い、材料(木粉)の過給が必要。 ●端材・短尺材の炭化に適す 16 ③自燃式ガス化炉 ●説明 ガス化炉は高温二次燃焼を補助する蓄熱装置、高効率廃熱回収装置、及びサイ クロンを用いた微粉回収装置等で構成されるサーマルリサイクルを目的とした燃 焼炉である。この装置を用いて木くずを高温空気により可燃ガス化し、ガス燃焼 により得られた熱エネルギーの抽出により、生産現場におけるホットプレス等の 熱 源 、空 調 、あ る い は 発 電 エ ネ ル ギ ー と し て 利 用 す る 。8 0 0 ℃ 以 上 の 高 温 空 気 に よ り処理を行うため、エネルギー資源の回収と共に、廃棄物処理におけるダイオキ シン分解、廃煙の無煙化が可能となる。木くずは揮発成分を含んでおり、それ自 身がガス状の分子を生成するのに必要な酸素と水分を多く含むことからガスへの 転換が比較的容易である。さらに高温ガス化の副産物である「木炭」は歩留まり は低いものの性質の良い炭化物が得られることなどから多面的な効果も期待でき る。インテリア研究所は(株)大川鉄工に対して高温ガス化燃焼炉の開発に関し て 種 々 の 技 術 支 援 を 行 い 、低 価 格 な 小 型 高 温 ガ ス 化 炉 の 開 発・試 作 を 実 施 し て い る 。こ れ は 各 事 業 所 レ ベ ル で の 木 くず処理を指向したもので端材など の短尺材処理に適している。 ● 課 題:商 品 化 に 向 け た 細 部 の 詰 め が 必要 ・安全装置の装着 ・安定的なエネルギー供給 ・燃焼効率の向上 ●コスト ・小型高温ガス化炉 350∼ 400万 円 図−6 ●木くず発電の事例(写真とは異なるシステムによる) 原 料 : ヒ ノ キ バ ー グ 10m 3 、 集 成 材 鋸 屑 5 0 m 3 電 力 : 1,200 ∼ 1 , 3 0 0 k w h 約 9. 5億 の 投 資 に 対 し 、 年 間 5 , 0 0 0万 円 程 度 の 電 力 の 削 減 17 ④コンポスト化 ●説明 コンポスト化とは、生ゴミ・端材・木くず・剪定枝・バーグ(樹皮)などを一 定期間かき混ぜて醗酵させ堆肥(肥料)化することをいい、リサイクル対策の1 つとして有望である。堆肥(コンポスト)化とは、土壌の微生物(土壌菌)によ る有機廃棄物(生ゴミ)分解の過程そのものであり、有機物を好気性微生物の動 きで発酵分解することである。コンポスト化には、発酵微生物の増殖を助けるた め牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞を添加する。廃棄物処理問題を解決すると同時に 良質な有機肥料が得られるため、地域農業生産への寄与も大きい。コンポストを 使うことにより農作物に「自然野菜」などのブランドイメージの付与が可能であ る。 コンポスト化方法としては好気性の微生物を使って発酵させるため、空気を入 れる工程が必要である。方法としては屋外で木くずと家畜糞の混合物を長期野積 みしてコンポスト化を行う方法(臭気の問題がある。また空気を入れるため周期 的 に 攪 拌 す る 必 要 が あ る 。)と 短 期 間 で 装 置 を 用 い て 機 械 的 に 製 造 す る 方 法 が あ る 。 コ ン ポ ス ト 化 で は 含 水 率 を 60% 程 度 に 設 定 す る た め 、木 く ず は 含 水 率 が 低 す ぎ る 。 生ゴミや食品廃棄物、水産廃棄物、農業廃棄物等の廃棄物処理を抱き合わせると 効率的である。 ●課題 ・事 業 用 プ ラ ン ト の 建 設 費 が 非 常 に 高 い 。コ ン ポ ス ト の 売 上 収 入 が t あ た り 4 , 0 00 円程度であり、廃棄物処理費用支出に対するメリットを十分考慮する必要があ る。 ・技術的なノウハウの蓄積がない。技術の確立がなく農業生産に還元できない。 ( コ ン ポ ス ト 化 が 不 十 分 で あ る と 作 物 の 生 長 を 抑 制 す る 可 能 性 が あ る 。)。 ・臭気(アンモニア等の悪臭)の問題(施設の設置場所や脱臭装置にかかるコス ト )。 ・家畜糞に含まれる抗生物質(ブロイラーなどの糞)により分解菌が死滅する。 あるいは木くずの中に含まれる抗生物質により分解菌が死滅する可能性があ るなど。 ●コスト 設備費:1日の処理量、t/日当たりで 3,000∼ 6000万 円 10t / 日 で 5億 円 程 度 ラ ン ニ ン グ コ ス ト : 人 件 費 500万 の 人 を 3 人 付 け た と し て 3 , 0 0 0 ∼ 4 , 0 0 0万 円 / 年 程 度 脱臭装置費:数千万 収 入:例 え ば 6 , 0 0 0t / 年 の 木 く ず が 排 出 さ れ た と す る 。廃 棄 物 処 理 費 が t 当 た り 1万 円 か か っ た と す る と 6 , 0 0 0 万 円 相 当 の 収 入 。 t 当 た り 平 均 4 , 0 0 0 円 で 販 売 で き た と し て 2 , 4 0 0万 円 相 当 の 収 入 。 18 ( 2 ). 研 究 ・ 実 験 ・ 計 画 ( 2 − 1 ). 海 岸 ク ロ マ ツ 林 に お け る シ ョ ウ ロ 栽 培 の た め の 基 礎 試 験 目的 海岸クロマツ林においてショウロ栽培を行うための基礎試験を行う。 対象林分 林 齢 10 年 程 度 の 閉 鎖 開 始 林 分 を 利 用 す る 。 ショウロの発生場所としては、貧栄養の比較的光量に富む明るい林分があげら れるが、このような場所では、除草に多くの労力を必要とすることから実用的 ではない。写真1は、林齢7年の閉鎖前の林分を対象に試験地を設置した場所 である。除草を実施しなかった場合、下層はチガヤなどの草本により覆われて し ま い 、 試 験 地 と し て は 、 林 冠 の 閉 鎖 が 始 ま っ た 林 齢 10 年 程 度 の 林 分 を 対 象 として選択する。このような林分では、下層への光量不足のために、下層植生 が 枯 死 し 裸 地 化 し て い る( 写 真 3 )。 し か し 、下 層 に は こ れ ま で に 生 育 し て い た 植 生 が 有 機 物 と し て 残 さ れ て い る ( 写 真 4 )。 試験内容と方法 内容 ショウロ栽培のための試験項目としては以下の 4 項目があげられる。 1. 林内堆積物の除去 有 無 2. ショウロ菌の播種(感染苗の植栽) 有 無 3. 間伐 有 無 4. 炭の混入 有 無 こ れ ら の 4 項 目 に つ い て 試 験 を 行 う と す れ ば 2 × 2 × 2 × 2× 3( 繰 り 返 し )= 48 プロットが必要となる。これだけのプロットを設定することは困難であること から、試験項目を限定することとし、太字で示した部分のみの試験とする。 よって、試験地は間伐の有無に関して、以下の 6 プロットを設定する。 間 伐 ( 有 無 ) ×繰 り 返 し ( 3 回 ) = 6 プ ロ ッ ト 方法 1 . 対 象 林 分 に 1 0 m × 1 0m の 方 形 プ ロ ッ ト を 6 個 設 定 す る 。 無 間 伐 プ ロ ッ ト で は直ちに、また、間伐対象プロットでは間伐実施後に、林内の堆積物を全 て除去する。 2 . 続 い て 、近 隣 で 採 取 し た シ ョ ウ ロ の 方 市 を 6 等 分 し て 林 内 に 散 布 す る 。シ ョウロの採取が困難な場合も考えられることから、ショウロの感染苗を作 出して、これらを植栽することも計画する。 3 . 間 伐 林 分 で は 適 宜 、除 草 を 行 う 。そ れ ぞ れ 、毎 年 4 月 の 成 長 開 発 時 期 に 落 19 葉の除去を行う。 費用 1. 試験地設定 ( 7000 円 / 日 人 × 4 人 = ¥ 2,800) 2 . 間 伐 と 表 層 除 去 ( 7000 円 / 日 人 ×20 人 = ¥ 140,000) 3. ショウロ採取 ( 7000 円 / 日 人 ×20 人 = ¥ 140,000) 4. 定期的な除草 ( 7000 円 / 日 人 ×20 人 = ¥ 140,000) 5. 感染苗の作出 ( 苗 木 代 300 円 / 本 ×300 本 = ¥ 90,000) 計 538,000 円 写真 1 除草した試験地 写真 2 除草を行わなかった試験地 写真 3 閉鎖直後の林分 写真 4 閉鎖林分の林床 20 ( 2 − 2 ). 玄 海 さ つ き 松 原 竹 炭 埋 設 ・ シ ョ ウ ロ 胞 子 散 布 玄 海 さ つ き 松 原 竹 炭 埋 設・シ ョ ウ ロ 胞 子 散 布( 2 0 0 5 0 4 1 1 九 州 大 学・森 林 技 セ ) 1 2 3 4 5 竹炭埋設区 No. 胞子散布 GB341 − GB342 500ml GB343 − GB344 − GB345 500ml 6 7 8 9 10 対照区 No. 胞子散布 GB346 − GB347 500ml GB348 − GB349 500ml GB350 − * 竹 炭 埋 設 は ク ロ マ ツ 1 本 に つ き 2 袋( 周 囲 約 3 0 cm 堀 り 埋 没 表 面 砂 戻 し ) * シ ョ ウ ロ 胞 子 は ク ロ マ ツ 1 本 に つ き 5 0 0 ml( 腐 っ た 子 実 体 を 水 中 で 砕 い た懸濁液) 目的 現在もショウロが発生しているクロマツ幼齢林において、竹炭埋設により根 茎の活性化を促すとともに、より確実にショウロ発生を誘導する。 今後の調査 クロマツ根茎の発達状況、菌根形成について調査するとともに、ショウロ発 生について調査比較を行う。 21 2−2.松林の保全管理 本年度の活動過程において、九州国際大学学生の体験学習の場として、さつ き松原の保全管理を当てる提案があった。とりわけ「しょうろ」の発芽に適し た松の若木林の手入れが必要とされ、またこれは当研究会の目的と合致するた め急遽この計画を実行した。そこで当報告書もその経緯を収めたい。 (体験学習による松林保全演習・実施地) ( 2 − 1 ). 松 林 保 全 管 理 ・ 体 験 学 習 九州国際大学によるさつき松原体験学習 九州国際大学国際関係学部 教授 人見 五郎 九 州 国 際 大 学 で は 、 教 育 の 一 環 と し て 国 外 で の 語 学 研 修 、 NGO 団 体 な ど の ケ ーススタディー・ツアー、国内での様々なボランティア活動などに学生たちが 参加することを積極的に勧めている。またそれらの活動に参加したことで卒業 のための正規の単位認定も行っている。 22 本年度は、さつき松原保存会、宗像市役所のご厚意により、さつき松原での 保存活動を学生たちが体験することができた。学生たちは、保存会の皆さん、 市役所職員のご指導を受けながら、貴重な体験をすることができたとともに、 このようなボランティア活動を経験することで社会に対する視野が広がった ことと思う。 ここに、今回の体験学習を報告することで、今後このような体験学習を九州 国際大学に限らず広く大学生に広めていきたいと思っている。 1.体験学習の発端 本学次世代システム研究所岡本所長とさつき松原保存について雑談してい たところ、保存会は非常に熱心に松原保全に取り組んでいるものの、膨大な作 業が必要でなかなか保存活動が進まないということをうかがった。折しも、国 際関係学部の野球部員の社会実習の実習先を探していたところだったので、岡 本所長に学生の参加の可能性を保存会に打診して頂くようにお願いした。 国際関係学部の社会実習は必修科目となっており、夏休みや春休みと言った 長期休暇中に様々なプログラムが実施されている。しかしながらスポーツサー クルの学生にとって長期休暇中はリーグ戦に向けた練習の真最中で、こういっ たプログラムに参加できない問題があった。 冬季のサークル活動がオフの時期に有意義な活動をさせていただきたいと いう当方の勝手なお願いにもかかわらず、保存会の方々は興味を持っていただ き、前向きに検討しましょうとの返事をいただくことができた。 2.事前打ち合わせ 岡本所長の打診に保存会、市役所では好意的に受け取っていただき、学生を 受け入れる方向で話しが進み出した。 11 月 10 日 、 宗 像 市 役 所 玄 海 庁 舎 で さ つ き 松 原 保 存 会 の 皆 さ ん 、 市 職 員 方 々 と実習受け入れの協議が行われた。まず、九州国際大学より実習のねらいや参 加学生である野球部員を紹介し、大学からの要望などについてお話しした。保 存会の方々からも、大学生の教育にも配慮した形でできるだけのお手伝いをし ましょうとの願ってもないご協力をいただけた。 その席上で打ち合わせした主な点は、 ・ 作 業 期 間 は 野 球 部 の 活 動 が オ フ に な る 12 月 の 1 週 間 と す る 。 ・ 作業は、保存会、市役所の指導・協力のもとに行う。 ・ 移動手段は全員大学生なので学生の責任で現地に集合する。 ・ 作業期間中の万一の事故に備えるため、保険に加入する。 ・ 作 業 は 、神 湊 地 区 の 植 栽 地 の 枝 打 ち 、上 八 か ら 薬 師 川 周 辺 の 雑 木 を 撤 去 す る 。 ・ 市役所でパッカー車を手配し、ノコギリ、鉈など作業道具も準備する。 ・ 昼食はあらき屋さんを利用する。 ・ 大学でも事前研修を行う。 などである。 23 3.大学での事前研修 参加する野球部員を対象に大学で事前研修を行った。全員にとって松原の保 全は初めての経験であり、松原についての理解をまず深めることを行った。一 般の大学生にとって松原の存在に関心を寄せているものはほとんどいないの が普通であろう。保存会などで作成した資料を使わせていただきながら、松原 の歴史、松原の現状、松食い虫の被害、松原保全の意味、さつき松原保存会の 活動などについて勉強した。 座学で保全活動を十分に理解することは難しいが、全員これから新しいこと に取り組むということに意欲を見せていた。 4.作業日誌 12 月 5 日 ( 月 ) 雨のち小雪、風つよし 9 時に玄海庁舎に集合し、保存会、市役所の方々から松原の現状やこれから 作業手順などについてオリエンテーションが行われる。九国大の参加者は、学 生 18 名 と 引 率 教 員 1 名 。 オリエンテーションの後、現地に移動し神湊の植栽地で下枝の剪定を行う。 小雪の舞う中での作業開始はこれからのことが思いやられたが、松林の中に入 ると風も少なくしのぎやすい。保存会の方々の指導で、下枝を丁寧に切ってい く。また剪定と同時に切った枝や地面に落ちている枝などをどんどん道路脇に 積 み 上 げ て い く 。 さ す が に 屈 強 な 野 球 部 員 が 18 名 も い る と 、 作 業 は ど ん ど ん はかどっていく。 昼食はあらき屋さんで食べるが、ごはん食べ放題のサービスはありがたい。 午後も同様の作業を続け、パッカー車に道路脇の枝を積み込む。夕方 4 時に終 了。本日は読売新聞、西日本新聞の取材、宗像市広報の取材を受ける。 12 月 6 日 ( 火 ) 雨のち曇り 今日も雨の中で作業を開始。今日は二班に分かれ、神湊地区の剪定と松原モ デル地区の除草作業を行う。 神湊の班は全身ずぶ濡れになってしまい、あまりの寒さに一旦玄海庁舎に雨 宿りに帰る。モデル地区の班は、除草車を提供していただいた方の都合もある ので雨の中で作業を継続する。 昼食後からは神湊地区の作業。剪定する人間、枝を道路まで運ぶ人間と作業 にもずいぶん慣れてきた。本日は毎日新聞の取材を受ける。 12 月 7 日 ( 水 ) 晴れ 午前中、神湊の作業の仕上げを行う。どんどんきれいになっていくのが気持 ち良い。また、地区の人たちからも声をかけてもらい、皆さんから期待されて いるのを感じる。 午後は、薬師川周辺の雑木伐採を始める。枝打ちと異なり、どんどん雑木を 24 切り倒せばいいのでこちらの方が野球部員向きだ。海を見ながら作業に精を出 す。みるみる雑木が切り倒され、足の踏み場がなくなっていく。今日はパッカ ー車が来る日なので、道路際まで枝を運び出さなければならない。これが一苦 労で、枝の広がった雑木を松林の間から引っ張り出すのは思いのほか肉体労働 だ。しかもパッカー車に積み込むには適当な大きさに切り分けなければならな い。とはいえ、パッカー車の扱いにも慣れてきたので、かけ声をかけながら安 全に作業を進めていく。 12 月 8 日 ( 木 ) くもり のち 晴れ 薬師川周辺で雑木伐採。保存会の方がチェーンソーを持ってきて、我々の伐 採 を 手 伝 っ て い た だ い た 。そ ろ そ ろ 疲 れ も た ま り だ し 、作 業 が 段 々 つ ら く な る 。 作 業 を 通 じ て 感 じ る こ と は 、ど の 作 業 現 場 も ゴ ミ が 散 乱 し て い る こ と で あ る 。 海岸部では波や風で打ち上げられたものもあるのだが、心ない人たちのゴミの 投棄が目に余る。雑木は自然現象だが、ゴミは人為的行為なのでまじめに作業 をしているとよけいに腹立たしくなってくる。 12 月 9 日 ( 金 ) 晴れ 今日が最終日。最後の仕上げに取りかかる。伐採はほぼ完了しているので、 パッカー車に積み込む仕上げ作業を続ける。 きれいになった松原は、取りかかった時に比べると見違えるようにきれいにな った。我々の活動もまんざらでもないという満足感が広がってくる。 やっと作業終了。この一週間ははっきり言って長かった。野球の練習もきつい が、松原の作業も同じようにきつかった。 今日は作業を早めに切り上げて、あらき屋で打ち上げをしていただいた。保 存会や市役所の方々も来て下さり、労をねぎらっていただいた。 大学生活は自分のために活動するばかりで、人の役に立てることを実感する ことはほとんどない。今回の松原の作業で少しは人の役に立てたことが実感で きてうれしい。大学生活の良い思い出がひとつできたのではないかと思う。 野球の練習や大学の授業などで毎日忙しいので、さつき松原を訪れる機会は あまりないとは思うが、次に宗像に来るときは、是非自分たちの作業現場を訪 ねて見たいと思う。作業を通じて保存会や市役所の方々にお世話いただき、ま た様々なお話しを聞けたことに感謝したい。 5.作業を振り返って 九州国際大学として、はじめて松原の作業を体験し、学生たちは思いの外満 足感を覚えているようだ。 学生たちにとっては、普段ほとんど気もとめない松原にこれだけの人たちの 活動と努力があったと言うことを知り得ただけでも多くの収穫があったと思 われる。また、その活動の一端に参加させていただいたことで彼らの社会に対 する見方も少し変化したのではないかと思われる。 25 松原の保全に参加して感じたことは、大学生の労働力が松原保全に大きく貢 献できることである。わずか一週間で様変わりした松原は、見ているだけでも 気持ちがいいものである。 九州国際大学としては今回のご縁を大切にして、今後も積極的に保全活動に 参加していきたいと考えている。同時に積極的に宗像市や周辺の大学に参加の 呼びかけをおこなっていくと、もっと活動の輪が広がっていくのではないだろ うか。 最後に、今回の貴重な経験を提供していただいた関係者の皆さんに学生一同 深く感謝の気持ちを表したい。有り難うございました。 26 関連新聞記事 2005.12.6 西日本新聞 2005 . 1 2 . 6 読売新聞 27 実習風景 28 2−3 研究会の開催 「 さ つ き 松 原 研 究 会 」 の 全 体 研 究 会 は 、 平 成 17 年 度 は 5 回 開 催 し た 。 検 討 ・ 協議の項目の詳細に関しては別添の議事録集を参照されたい。全体研究会の開 催日とその概要は以下のとおりである。 平 成 17 年 度 平 成 17 年 度 平 成 17 年 度 平 成 17 年 度 平 成 17 年 度 第 1 回研究会 開催日 平 成 17 年 4 月 19 日 主テーマ 平 成 16 年 度 の 活 動 評 価 と 17 年 度 計 画 第 2 回研究会 開催日 平 成 17 年 9 月 30 日 主テーマ 平 成 17 年 度 の 活 動 経 過 に 関 す る 協 議 第 3 回研究会 開催日 平 成 17 年 11 月 29 日 主テーマ 松林保全・九州国際大学体験学習受け入れ 第 4 回研究会 開催日 平 成 18 年 2 月 29 日 主テーマ 平 成 17 年 度 の 活 動 評 価 と 18 年 度 計 画 第 5 回研究会 開催日 平 成 18 年 3 月 24 日 主テーマ 平 成 18 年 度 計 画 29 3 .平 成 17 年 度 ま で の 活 動 評 価 平 成 17 年 度 の 活 動 を 振 り 返 っ て 研 究 会 の 成 果 を 自 己 評 価 し て み た い 。次 年 度 の 活動計画はこの評価をベースに考えていきたい。この自己評価の基準は当初の企 画書「さつき松原の林相復元による環境保全と復元環境利用事業・企画書」によ る。 ( 1 ). 調 査 活 動 年度当初に計画した「さつき松原」のファウナ(動物相)とフローラ(植物 相)に関する調査は、研究会員の活動可能な範囲で相応の進捗があった。とり わけ菌類については金子・玉泉両氏の努力で実態調査を踏まえた情報を得るこ とができた。次年度も引続きこの調査を続け、将来は「さつき松原」の生態系 とその保全のあり方等についてまとめることができるよう希望したい。 また間伐材や木屑に関する処理技術の一通りの情報を松山氏の努力でまとめ る こ と が で き た 。 こ れ ら の 知 見 は 今 後 、「 さ つ き 松 原 」 の 保 全 活 動 に お い て 有 効であると思われる。 以上の調査結果は当会員相互の知見を高め、今後の活動を進めていく中で非 常に有益である。 ( 2 ). 研 究 ・ 実 験 ショウロ栽培に関する系統的な実験に着手できたことは評価できる。この一 連のフィールド実験には多大な労力を要したと思われるが、玉泉・金子氏両氏 お よ び「 さ つ き 松 原 保 存 会 」 ・行 政 の 良 好 な 対 応 に よ り 実 験 栽 培 に 着 手 で き た 。 しかしながら実験床が国有林という特殊な位置に在るため、実験床の保全・ 管理の上で有効な対策が打てず、外部からの撹乱が多々発生した。次ページの 状況写真で示すように、実験床に人が立ち入り(ショウロの採取)やレジャー 用の馬の侵入などが認められる。 従って実験結果の正確なデータを収集し、その結果を正確に確認・判断する ことが難しい状況に至っている。 ( 3 ). 松 林 の 保 全 管 理 「さつき松原」は「さつき松原保存会」の活動や行政業務による保全管理が 進められている。本年度はこれに加え、九州国際大学の学生の実習としての保 全活動が実施されたことは意味深い。 ( 4 ). 全 体 研 究 会 ・ そ の 他 本年度は5回の全体研究会を開催でき。各研究者、行政、保存会、ほかのメ ンバーの関心も高く、当研究会の運営は組織的に円滑に昨日していると考えて よい。 30 馬(乗馬)の浸入形跡 人の浸入形跡 31 4 .平 成 1 8 年 度 の 活 動 計 画 平 成 17 年 度 の 活 動 経 過 を 踏 ま え 、 平 成 1 8 年 度 の 活 動 の 方 向 を 整 理 し た い 。 平 成 18 年 度 は 当 研 究 会 の 当 初 計 画 書 に 示 す 中 長 期 計 画 第 1 期 プ ロ ジ ェ ク ト の 最 終 年 度 に あ た る 。従 っ て 平 成 18 年 度 活 動 終 了 時 の 結 果 か ら 、そ の 後 の 第 2 期 プ ロ ジ ク トに進むか否かを相互判断することになる。その意味から当年度の活動計画を考 えてみたい。 ( 1 ). 調 査 関 係 平 成 17 年 度 に 引 続 き「 さ つ き 松 原 」の フ ァ ウ ナ 、フ ロ ー ラ に 関 す る 情 報 収 集 を行う。とりわけ菌類調査は各季節のデータを得たい。また可能ならば自生シ ョウロの域内分布の状況を調査したい。 ( 2 ). 研 究 ・ 実 験 こ れ ま で の 実 験 床 の 推 移 を 観 測 し な が ら 、一 方 で 平 成 1 7 年 度 の 反 省 を 踏 ま え 以下の 2 点にチャレンジしたい。その一つは外部撹乱を回避できる場所でのシ ョウロ栽培実験である。二つ目は各種菌類の発生が落雷等の電撃により誘発さ れるという知見から研究されてきた技術の応用実験である。幸い金子氏がこの 分野の研究開発に当初から関係されており、関連する機関や企業の協力を得ら れれば達成可能な目標ではある。当研究会での研究が可能であれば民間利用が 可能なコンパクトなシステムの開発を目指したい。 ( 2 − 1 ). 新 規 の 実 験 床 で の 研 究 人その他の外部撹乱を避け得る場所において新たな実験床を作り、ショウ ロ栽培の実験をしたい。場所は図に示す神ノ湊地区の若松の苗床が理想であ る。その理由は、実験調査中であることを明示した張り縄や高札があれば、 一目が多く攪乱的浸入を回避できると考えるからである。 32 (2−2)さつき松原活性化のための林地電撃試験(案) 1.目的 海岸クロマツの枯損原因はマツノザイセンチュウによることが判明している が、そこまでに至る潜在的な要因としてマツ自体の衰弱も考えられている。 通常、健全なクロマツは様々な菌根菌と共生しており、相互に活力を与え合 っていると考えられ、菌根の枯渇によるマツの衰退も考えられる。 代表的な菌根菌にショウロがあり、通常土壌中に繁殖しマツ根に菌根を形成 しているが、食用ともなる本菌は愛好家の間では重宝がられている有用きのこ である。 一方、従来から、落雷周辺ではきのこがよく発生するのが観察されており、 シイタケ原木栽培では実験的に実証されている。 このことを利用して、さつき松原のクロマツ林において人工的に電撃(イン パルス電圧)を加え、ショウロ菌を活性化させることにより菌根を増やし、子 実体(きのこ)の増産につなげること、あわせてクロマツを活性化させること を目的とする。 2.概要 ① 試験区 さ つ き 松 原 内 の 5∼ 15 年 生 ク ロ マ ツ 林 に お い て 、 人 工 的 に 電 撃 を 加 え る 施 用区と散水等だけの処理を行う対照区を数カ所反復して設置する。 ② 実験時期 さ つ き 松 原 の シ ョ ウ ロ 子 実 体 は 12 月 頃 か ら み ら れ る の で 、 子 実 体 の 原 基 が 形 成 さ れ る と 考 え ら れ る 10 月 末 ∼ 11 月 と 2 月 に 電 撃 処 理 を 行 う 。 処 理 時においては、安全性の確認を行う。その後、のショウロに対する子実体 形 成 促 進 効 果 ( き の こ 発 生 量 )、 土 壌 中 の 菌 糸 体 の 増 殖 促 進 効 果 ( 菌 糸 体 量)の調査を行う。クロマツについては成長(樹高、直径)調査、また周 辺域の微生物、動植物への影響調査を行う。 ③ 評価 きのこの発生量、クロマツの成長、生物相への影響等を総合的に判断して 効果を評価する。 33 別紙 さつき松原の林相復元による環境保全と復元環境利用事業・企画書 平 成 16 年 7 月 15 日 九州国際大学 次世代システム研究所 1 .経 緯 当 研 究 所 は 平 成 13 年 度 よ り 玄 海 町( 当 時 )お よ び 九 大 農 学 部 ・県 工 業 技 術 セ ン タ − ・県 森 林 林 業 技 術 セ ン タ − ・県 水 産 林 務 部 等 の 機 関 と と も に 、 「松林の再生に よ る 環 境 保 全 と 地 域 産 業 の 活 性 化 モ デ ル 事 業 」を 1 4 年 末 ま で 研 究 し て き た 。こ の 事 業 は 平 成 15 年 に 玄 海 町 が 宗 像 市 と 市 町 村 合 併 す る 過 程 で 中 断 し て い た 。し か し ながら当該研究は「さつき松原」の潜在価値および研究成果の他地域への波及効 果を考えると重要であり、再開する必要がある。そこで宗像市の新しい組織・体 制に相応させ、研究成果から期待できる事業領域を拡大した展開を提案したい。 2.事業目的 「さつき松原」を対象に、以下の目的を達成するための研究を行う。 ①脆弱化した日本の海岸松原の機能復元・保全のための方法の研究。 ②復元された海岸松原を利用した各種事業の研究。 ③復元海岸松原の維持保全を、それを利用した事業と組合せることでコスト自 律的にするシステムの研究。 但しこれらの研究は成果の実行展開を前提に行う。従って研究過程で具体的成 果が期待できないことが明確となった場合は、研究事業を即座に中止する。 3.基本的な考え方 (別紙参照) 3−1.脆弱化した日本の海岸松原の機能復元・保全のための方法の研究 日本の伝統的海岸松原は社会構造の変化に伴い、里山と同様に「松葉かき」 等の人の介入が無くなった時点から林相が変化した。即ち松葉等の栄養塩類が 蓄積し、従来は松だけしか生育できなかった環境に他の植物が侵入生育できる よ う に な っ た 。他 の 植 物 が 無 い 環 境 に お い て 、松 は 松 固 有 の 菌 根 菌( シ ョ ウ ロ 、 松茸など含む)と共生することで強健に生育できた。だが他の植物の侵入で他 の植物に付随する菌根菌との競合で、松の菌根菌が弱体化し、更に栄養塩類の 獲得競争で松自体も活力を失いマツノセンチュウ等への抵抗力が消失してき た。その結果、広域な松枯れ現象が発生し毎年、薬剤散布を必要としている。 だが薬剤散布はコスト面でもまた生態系への影響・生活環境への影響面でも大 きな問題がある。 そこで松を中心にした伝統的海岸林相を復元し、それを維持することでそれ らの問題を解決することを考える。 34 3−2.復元された海岸松原を利用した各種事業の研究 松中心の海岸林相を復元できれば、それを基にした各種事業の展開が期待で きる。 ①松固有の有用菌根菌(ショウロ、松茸など)の栽培事業 ショウロが市場から消えて久しい。松茸より市場価値が高いショウロを市 場に定量供給できれば有望な事業展開が期待できる。 平成14年度までの研究会ではショウロを中心に研究してきたが、今後は ショウロ以外の高市場価値の菌類も研究対象に含めたい。これによりオール シーズンの事業形態を確保できる。 ②派生資源の利用事業 間伐材、松葉等の資源利用技術の研究。 ③日本の伝統的海岸景観を利用した各種事業の研究 ・環境観光事業 ・保健休養林としての各種事業 ・環境教育の場としての利用 ④高齢者雇用の場の創出 標記の事業展開において地域の高齢者の雇用の場を創出する。 3−3.自然環境保全とそれを利用した事業の組合せによるコスト自律モデル の研究 松固有の有用菌根菌の栽培事業においては「松葉かき」等の作業が前提にな る。即ちこの事業化自体が自然環境保全行為である。 ま た こ の 自 然 環 境 を 場 と し た 各 種 事 業 を NP O 的 に 運 営 す れ ば 、 そ の 収 益 を 保 全コストに還元できる。現状の薬剤散布に関わるコスト効果等を総合的にみれ ば、環境保全コスト自律型のモデルは実現可能な範囲に在り得る。 4.事業計画−1(事業内容) 4−1.海岸松原の機能復元・保全方法の研究 ①海岸松原の復元方法の研究 ・典型的松林復元を目的にした、間伐の理論・技術の研究。 ・密植した松植栽林の間伐の理論・技術の研究。 ・生態系の保全と復元方法に関する研究。 ・ 松 林 復 元 事 業 の コ ス ト : 効 果 の F / S 及 び 事 業 計 画 の 研 究 。( 法 ・ 制 度 面 含む) ②復元した海岸松林相の維持保全に関する理論・技術の研究 ・マツノセンチュウ他 ・当該事業を前提にした公的保全事業計画の研究。 35 4−2.復元された海岸松原を利用した各種事業の研究 ①松固有の有用菌根菌の栽培 ・ショウロ栽培に関する研究 前 回 か ら の 継 続 。( フ ィ − ル ド 拡 大 実 験 ) ・その他の有用菌根菌の調査 事業化F/S、栽培に関する研究。 ・市場、流通に関わる調査と研究。 ②派生資源の利用事業 間伐材、松葉等の資源利用技術の研究。 一部は前回からの継続。 ③日本の伝統的海岸景観を利用した各種事業の研究。 ・環境観光事業 ・保健休養林としての各種事業 ・環境教育の場としての利用 ④高齢者雇用の場の創出 標記の事業展開において地域の高齢者の雇用の場を創出する。 4−3.自然環境保全とそれを利用した事業の組合せによるコスト自律モデル の研究 ・当該研究に関わる全ての領域のF/Sを行う。 5 . 事 業 計 画 − 2( 事 業 ス ケ ジ ュ − ル 、 詳 細 計 画 、 組 織 ) 5−1.中長期目標 第 1 期プロジェクト 第 2 期プロジェクト 第 3 期プロジェクト 期間:3 年 期間:3 年 期間:5 年 調査・研究 各事業の実証研究 各事業の展開 F/ S( 判 断 ) F/ S( 判 断 ) 5−2.第 1 期プロジェクト事業詳細内容と実施スケジュ−ル 平 成 13∼ 14 年 度 の 研 究 活 動 に 参 加 し た 全 て の 団 体・機 関 に 諮 っ て 、そ れ が 提 案する事業内容と事業スケジュ−ルを整理する。 ※第 1 回(通算第 6 回)研究会までに整理。 5−3.第1期プロジェクト事業予算 前 項 の 第 1 期 プ ロ ジ ェ ク ト 事 業 詳 細 内 容 の 整 理 の 基 に 、第 2 回( 通 算 第 7 回 ) 研究会までに検討する。 36 6.組織体制案 6−1.第1期プロジェクト組織体制案 ( 案 − 1) む な か た 海 岸 松 原 研 究 会( 仮 称 ) 事務局 技術・理論/サポート 技術・理論 研究会 市民・実行団体 行政支援連絡会 玄海さつき松原保存会 宗像市関係部門 ( 案 − 2) 相互サポート 玄海さつき松原保存会 技術・理論支援 フィールド支援 37 海岸松原研究会 事 業 概 念 薬剤散布コスト 回避 林相復元 保 復元林相 初期整備 保守・保全 全 (松葉かき等) 間伐材等 松葉等 生態系・自然機能回復 メンテ・コスト 発生材の 収益還元 利用 利 保健休養環境 有用菌類生産 自然教育環境 高齢者雇用事業 その他の利用 用 38 平成17年度 産学官連携事業 産学官連携による九州・山口地域における 『資源自立・長寿命型社会の形成』 九州経済産業局公募「平成17年度産学官連携事業」に採択され、 以下のとおり、産学官技術交流会を行った。 次 世 代 シ ス テ ム 研 究 所 お よ び 次 世 代 シ ス テ ム 研 究 会 は 、循 環 型 社 会 の 形 成 、生 物 多 様 性 保 全 の 戦 略 、長 寿 命 型 社 会 の 形 成 な ど 社 会 的 ニ ー ズを踏まえ、調査研究活動を実施している。 従来の次世代システム研究会では発表ならびに交流会の対象が会 員 で あ り 、一 般 へ の 対 応 に つ い て 不 十 分 で あ る と 感 じ て い た 。本 事 業 に よ り 、拡 大 研 究 会 と し て 産 ・ 学 ・ 官 ・ 民 か ら 構 成 さ れ る 本 研 究 会 員 が 進 め て き た 技 術 や 理 論 を 多 く の 一 般 の 方 に 聴 講 し て い た だ き 、交 流 を深めていただくことを目的として開催した。 補助元:九州経済産業局地域経済部産学官連携推進室 平成17年度 1 産学官連駅事業 産 学 官 技 術 交 流 会 第33回次世代システム研究会(拡大研究会) 1.テーマ:ストック型社会の形成に向けての講演会 「産学官連携による九州・山口地域における 『 資 源 自 立 ・ 長 寿 命 型 社 会 の 形 成 』」 2.日 時:平成17年11月12日(土) 講 演 会 1 3:0 0 ∼ 1 7:0 0 3.会 場:九州国際大学文化交流センター 4.参加者:講演会参加者 127名 交 流 会 1 7:0 0 ∼ 1 8:3 0 多目的ホール、203教室 交流会参加者 講師等(講師、挨拶者、司会者等) 産 学 官 そ 事務局 55名 産 4 名 学 4 名 官 2 名 産の経営層(企業、個人企業) 22 名 産(会社員) 44 名 大学等関係者 17 名 官(自治体等) 8 名 官(公設試、自治体の研究者) 4 名 の 他 (団体等) 17 名 KIAC(産) 3 名 大学 1 名 官(九経産局、公設試等) 1 名 合 計 産 73 名 学 22 名 官 15 名 その他 17 名 総計 127 名 5.次世代システム研究所が提唱する『ストック型社会』とは・・・ ● パラダイムの転換の必要性 科学技術の発展によって、人類の福祉と生活の利便性が向上した、反面、 大量生産と大量消費、大量の廃棄物、有害物質や二酸化炭素の排出が河川や 海洋を汚染し、大気の温暖化を進めるといった環境劣化、資源枯渇を招いて いる。加えて、世界を見れば人口増加や、途上国の経済成長など人類の将来 2 を拓くはずの科学と技術の発展が地球の有限資源を急速かつ不可逆的に枯 渇させ始めている。 こ う し た 状 況 の 中 で 、今 後 と も 持 続 可 能 な 発 展 可 能 性 を 維 持 し て い く た め 、 立派なモノを作り、世代を超えて大切に利用できる新しい思想に基づく技術 開発が求められている。 ● 部分最適解から全体最適解へ ∼社技術の必要性∼ 科学技術の発展は学問分野および技術分野の多様性と専門化を進め、部分 最適解を求める中で人類社会全体系に対する認識力、最適解を喪失してきた。 こうした問題を解決し、地球と人類社会をともに持続的にする総合視点か らの新たな社会システムであるストック型社会を構築していくことが、これ からの喫緊の課題である。 科学技術と人間・社会の新しい関係を模索し、複数領域を統合して新たな 社会システムを構築していく必要がある。そのための“社会技術”の研究を 行いながら、実験・実証をとおしてこのパラダイム転換をしていく場が求め られる。 6.本事業の目的: 次世代システム研究所および次世代システム研究会は、循環型社会の形成、 生物多様性保全の戦略、長寿命型社会の形成など社会的ニーズを踏まえ、調査 研究活動を実施している。そのためにも今まで以上に地域の研究機関や企業に おける研究成果を総合的な視点から統合することが必要である。これを進める 上での重要な課題を以下のとおり整理した。 ● 産 業 ・ 経 済 社 会 を 生 態 学 的 に 捉 え た 新 し い 「 思 想 」( E c o n o m y a s E c o l o gy) を 持 続 発 展 が 可 能 な「 社 会 技 術 」と し て 具 体 的 に 展 開 さ せ て い く 方 法 論 の 構 築を行う。 ● こ れ に 基 づ き 、こ れ ま で の 自 然 資 源 略 奪 型 の 地 域 開 発 か ら 、環 境 へ の 影 響 を 最小化する新たな資源自立型の地域開発のあり方を明らかにしていく。 ● 地 域 産 業 ・ 技 術 ・ 資 源 再 生 産 ポ テ ン シ ャ ル を 基 に し て 、こ れ か ら の 実 験 ・ 実 証を行い、真の持続型地域圏の形成に寄与する。 上記の目的を踏まえ、次世代システム研究会は、隔月(奇数月)の第二土曜 に定期的に開催されている。しかし、従来の研究会では発表会ならびに交流会 の対象が会員であり、一般への対応について不十分であると感じていた。本事 業によりこの対応をすることで、産・学・官・民から構成される本研究会員が 進すすめてきた技術や理論の交流を多くの立場へ提供できる。さらに参加会員 の幅を広げ、そのモチベーション向上にも多大な効果が期待できる。 3 7.講演プログラム 13:00∼13:05 共催挨拶 : 財団法人九州地域産業活性化センター 常務理事 清水 正行 13:05∼ 多目的ホール(1F) 講演内容 講演者 講演時間 テーマ解説 テーマの解説 九州国際大学次世代システム研究所 顧問 平澤 基調講演1 『資源自立・長寿命ストック型社会とは 九州国際大学次世代システム研究所 所長 岡本 久人 13:20∼13:55 川上 征雄 13:55∼14:30 専務理事 高藪 裕三 14:30∼15:05 秀一 15:15∼15:50 13:05∼13:20 ∼ECO-ECO 理論∼』 基調講演2 『21世紀の日本の政策課題』 内閣府政策統括官付(社会基盤担当)参事官 基調講演3 『産学官連携による地域経済圏の形成』 社団法人日本プロジェクト産業協議会 15:15∼(各35分) 多目的ホール(1F) =躍進する未来の部= 日本の政策を通して九州の未来を探る A 『木質資源を中心とした資源自立圏の構築に向けて』 京都大学生存圏研究所 所長 B 『地域経済と新たな地域金融手法』 日本政策投資銀行九州支店企画調査課 調査役 武田 浩 15:50∼16:25 C 『広域地域圏と北九州の未来』 北九州市企画政策室 憲一 16:25∼17:00 圭 15:15∼15:50 室長 川井 片山 15:15∼(各35分) 203教室(2F) =持続可能な地域の部= あなたの地域の未来が見える D 『ストック型街区の事業メリット』 株式会社ソリュート総合研究所 代表取締役 坂本 E 『人口減少社会の街づくり』 九州国際大学次世代システム研究所 主任研究員 五十嵐 健 F 『豊かな環境にやさしい街づくり』 株式会社新日鉄都市開発九州支店 取締役支店長 岩科 4 健一 15:50∼16:25 16:25∼17:00 8.講演会(研究会)の様子 講演者の方々が一同に揃いいよいよ講 テーマ解説:平澤 冷氏 演会のはじまりです。 次世代システム研究会会長 多目的ホール満席の講演会参加の皆様 共催ご挨拶:清水正行氏 財団法人九州地域産業活性化センター 常務理事 基調講演1:岡本久人氏 基調講演2:川上征雄氏 次世代システム研究所長 内閣府政策統括官付参事官 『資源自立長寿命ストック型社会とは』 『21世紀の日本の政策課題』 5 基調講演3:高藪裕三氏 講演A:川井秀一氏 社団法人日本プロジェクト産業協議会 京都大学生存圏研究所所長 専務理事 『木質資源を中心とした 『産学官連携による地域経済圏の形成』 講演B:武田 浩氏 日本政策投資銀行九州支店 資源自立圏の構築に向けて』 講演C:片山憲一氏 北九州市企画政策室長 企画調査課調査役 『広域地域圏と北九州の未来』 『地域経済と新たな地域金融手法』 6 講演D:坂本 圭氏 講演E:五十嵐 健氏 株 式 会 社 ソリュ ー ト総 合 研 究 所 代 表 取 締 役 次世代システム研究所主任研究員 『ストック型街区の事業メリット』 『人口減少社会の街づくり』 講演F:岩科健一氏 大勢の方で賑わった交流会と 株式会社新日鉄都市開発常務取締役 パ ネ ル 展 示 。活 発 な 情 報 交 換 が 行 わ れ て 『豊かな環境にやさしい街づくり』 いました。 9.講演会を終えて 講 演 会 参 加 者 は 100 名 を 超 え た 。 産 学 官 民 そ れ ぞ れ の 立 場 の 方 が 参 加 し 、 次 世代システム研究所、次世代システム研究会が提唱する『ストック型社会』に 理解を深めてもらった。 講演会終了後の交流会では、にぎやかな雰囲気で活発な意見交換がされた。 参加者からは「問題点は理解できたが、今後の展開方法、手段が聞きたい」 という意見が多かった。一人一人の講演者への時間が足りなかったこともある が、みんなが聞きたがっている“今後の展開方法、手段”の具体的な取組みを 提案し、多くの市民、国民に『長寿命ストック型社会』を理解してもらうこと が今後の課題である 7 2005.11.17 建設新聞掲載記事 8 Ⅴ.ストック型社会システムに関する活動記録 【ストック型社会の必要性と効果】 ストック型社会 長 寿 命 化 【具現化・転換のためのテーマ】 日本をストック型社会にするための研究 実現するための政策 実現するための技術 社会システム編 技術システム編 研 究 ・ 検 討 領 域 研究・検討領域 税 制 ・ 法 制 素材 建築構造 土木構造 流通基盤 長寿命型 建築物 長寿命型 複合基盤(道路・ 交通・情報・ ライフライン等施設) ライフライン 長 期 金 融 制 度 ー 長 寿 命 型 都 市 圏 設 計 ル 長寿命型産業基盤 食 糧 農業・畜産基盤の保全 水産基盤の再生・保全 森林資源基盤の長期的保全 資 源 循 環 資 源 自 律 型 地 域 圏 設 計 ル ー 自然共生・生物回廊の保全 ル 各 種 社 会 制 度 再 生 保 存 則 ル ス ト ッ 長 寿 命 型 イ ン フ ラ 組 合 せ 技 術 ク 型 ・ 長 寿 命 型 社 会 転 換 対 応 中 長 期 地 価 政 策 新 産 業 連 関 予 測 ・ 評 価 ・ 対 応 新 産 業 構 造 転 換 政 策 各 種 標 準 ・ 指 標 長 寿 命 型 / 新 国 土 政 策 現 状 対 応 街 づ く り 長 寿 命 型 実 験 都 市 の 試 行 各 種 評 価 指 標 世 論 形 成 ス ト ッ ク 型 社 会 転 換 政 策 食 糧 ・ 森 林 資 源 自 律 政 策 統合理論(工学・自然科学・社会科学) 統 合 理 論 ( 社 会 科 学 : 他 科 学 ) ス トッ ク 型 社 会シ ス テ ム に関 す る 講 演活 動 講演・シンポジウム等活動 テーマ・講演内容(主催者・依頼者) H17.11.12 H17.11.25 H17.11.26 H18.2.1 H18.2.4 H18.2.15 H18.2.17 H18.2.24 H18.3.11 H18.4.4 H18.4.14 H18.5.13 H18.5.29 H18.7.7 H18.7.24 H18.8.1 H18.8.28 H18.9.2 H18.9.7 H18.9.21 H18.11.17 H18.11.23 ストック型社会の形成に向けての講演会 産学官による九州・山口地域における「資源自立・長寿命型社会形成」プログラム 基調講演『資源自立・長寿命型社会とは ∼ECO-ECO理論∼』 (九州経済産業局産学官連携推進室 助成事業) 環境フォーラム 『ストック型社会への転換の必要性と考え方 ∼環境問題・経済問題・生活の豊かさを統合的に解決する∼』 (長野県/信州エコタウン研究会) 日本建築学会都市マネジメントシンポジウム 建設業経営者研修会 (財団法人建設業振興協会) FM KitaQ ラジオ出演 『ガイアの風 ∼WIND of GAIA∼』 銀座十字屋トークショウ 『明るい未来のために、今 私たちができること ∼ストック型社会のすすめ∼』 (十字屋ホール) 『ストック型社会への転換』 (パナソニックコミュニケーションズ労組政策研究会) ポリテックビジョン2006 基調講演『持続可能な社会が求める住宅・建築・都市とは』 (九州職業能力開発大学校) 九州歯科大学 (シンポジウム講演) FM KitaQ ラジオ出演 『ガイアの風 ∼WIND of GAIA∼』 第47回産学官交流研究会(通称:二金会) 『めざそう!ストック型社会 ∼転換の必要性とその実現プロセス∼』 (九州経済産業局産学官連携推進室) FM KitaQ ラジオ出演 『ガイアの風 ∼WIND of GAIA∼』 今後の住宅政策に関するヒアリング (国土交通省住宅局) 住宅土地調査会 (自由民主党政務調査会) 少子高齢化セミナー (日本建築学会) 宗像市職員他に講演 新志会 (三菱化学関連企業、北九州商工会議所) 明るい社会の会 (北九州市議会議員 新上健一氏(本学OB)) クリーナープロダクション 海外技術者研修 (KITA/JICA) 平成18年度 北九州地区公立高等学校教頭協会第一回研修会 「エコロジーから見える日本の社会システム」 (北九州地区公立高等学校教頭協会) 平成18年度 産学官連携事業 「産学官連携による九州地域における「ゆたかな社会の作り方」 -事例と紹介-」 (九州経済産業局産学官連携推進室 助成事業) 北九州市・下関市建築士会合同シンポジウム 関門景観に関するシンポジウム (北九州市・下関市建築士会) 1 ス トッ ク 型 社 会シ ス テ ム に関 す る 著 作・ 論 文 著作・論文等 H16.9.20 H17.2∼ H18.5 H17.3 H17.5 H17.7 H17.10 H17.12 H18.1.22 H18.1∼ H18.10 H18.3 H18.3 H18.4 論文 研究技術計画第19巻 「科学技術研究成果を日本国民の利益・資産化するための提言」 研究・技術計画学会 論考 「長く使える家造り」 社団法人全日本建築士会機関誌「住と建築」掲載 著書 「ストック型社会 ∼あなたの未来を豊かにする日本の変え方∼」 電気書院 論文 「持続可能な社会の形成に向けた住宅評価システムの開発」 日本建築学会建築技術報告集(査読論文)第21号掲載 著書 「建設産業、新〝勝利の方程式〝」 日刊建設通信新聞社 論文 「良質な住宅スットク普及によるCO 2削減効果の考察」 日本建設学会建設精算シンポジウム発表論文掲載 連載 「建設研究」 論考 「ストック型社会と建築」 社団法人建築研究振興協会機関誌「建築の研究」掲載 論文 「建設マネジメント人材育成のための試行講座での事業戦略意識の醸成に関する効果分析」 日本建築学会建築技術報告集(査読論文)第22号掲載 新聞掲載 いまこの時代に「ストック型社会への転換 世代を超え残せる資産を」 西日本新聞(2006.1.22 朝刊) 連載(全10回) 「めざそう!ストック型社会 [転換の必要性とその実現プロセス]」 新建新聞社 著書 「ストック型社会への転換 ∼長寿命化時代のインフラづくり∼ 」 (鹿島出版会) 論考 「成熟型社会に向けて豊かさの持続する街づくり」 宇都宮行政センター刊「街づくり論集Ⅱ」掲載 論考 「ストック型社会形成が日本の生きる道」 (社団法人日本プロジェクト産業協議会機関誌 2006.4「JAPIC」掲載 2 Ⅶ.次世代システム研究所の概要 【ストック型社会の必要性と効果】 ストック型社会 長 寿 命 化 【具現化・転換のためのテーマ】 日本をストック型社会にするための研究 実現するための政策 実現するための技術 社会システム編 技術システム編 研 究 ・ 検 討 領 域 研究・検討領域 税 制 ・ 法 制 素材 建築構造 土木構造 流通基盤 長寿命型 建築物 長寿命型 複合基盤(道路・ 交通・情報・ ライフライン等施設) ライフライン 長 期 金 融 制 度 ー 長 寿 命 型 都 市 圏 設 計 ル 長寿命型産業基盤 食 糧 農業・畜産基盤の保全 水産基盤の再生・保全 森林資源基盤の長期的保全 資 源 循 環 資 源 自 律 型 地 域 圏 設 計 ル ー 自然共生・生物回廊の保全 ル 各 種 社 会 制 度 再 生 保 存 則 ル ス ト ッ 長 寿 命 型 イ ン フ ラ 組 合 せ 技 術 ク 型 ・ 長 寿 命 型 社 会 転 換 対 応 中 長 期 地 価 政 策 新 産 業 連 関 予 測 ・ 評 価 ・ 対 応 新 産 業 構 造 転 換 政 策 各 種 標 準 ・ 指 標 長 寿 命 型 / 新 国 土 政 策 現 状 対 応 街 づ く り 長 寿 命 型 実 験 都 市 の 試 行 各 種 評 価 指 標 世 論 形 成 ス ト ッ ク 型 社 会 転 換 政 策 食 糧 ・ 森 林 資 源 自 律 政 策 統合理論(工学・自然科学・社会科学) 統 合 理 論 ( 社 会 科 学 : 他 科 学 ) 次世代システム研究所組織図 法人事務局 大 センター長 次世代システム 研究所 運営委員会 学 次世代システム 研究会 付属高校 男子部 事務部 理事会 エコエコ 研究会 付属高校 女子部 付属中学校 運営委員会 文化交流 センター 運営協議会 次世代システム研究所スタッフ 研究所長 岡本 久人 研究所顧問 平澤 泠(Knowledge Front Inc.代表、東京大学名誉教授) 小野 勇一 (北九州市立自然史歴史博物館いのちのたび博物館館長、九州大学名誉教授) 主任研究員 五十嵐 健 客員研究員 川井 西尾 福田 特別研究員 秋元耕一郎 足立 直樹 市田 則孝 稲田 朝次 大熊 隆吉 坂本 圭 高藪 裕三 秀一 一政 展淳 (京都大学生存圏研究所所長) (九州工業大学大学院生命体工学研究科教授) (北九州市立大学国際環境工学部環境空間デザイン学科助教授) (財団法人日本立地センター理事) (株式会社レスポンスアビリティ) (バードライフ・アジア代表) (元九州国際大学教授) (九州国際大学非常勤講師) (株式会社ソリュート総合研究所代表取締役) (社団法人日本フプロジェクト産業協議会専務理事) 次世代システム研究会 会員名簿 会員区分 部会区分 特別 特別 特別 特別 特別 特別 特別 特別 特別 特別 特別 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 氏名 会長 顧問 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 自然共生 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 社会 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 部会長 副会長 部会長 副会長 副会長 平澤 ? 萬谷 興亞 高田 賢一郎 入江 伸明 井村 秀文 川井 秀一 林 明夫 森谷 賢 及川 信一 迎 靜雄 今村 忠夫 松岡 俊和 馬場崎 正博 大熊 隆吉 佐藤 庸一 岩本 浩 工藤 和也 稲田 朝次 山田 誠 市田 則孝 中村 常蔵 和 泰 小野 原一 白川 泰樹 魚崎 耕平 石田 寛人 加藤 達治 粟生 修司 山中 修 秋元 耕一郎 坂本 圭 廣原 浩一 北島 粋 段谷 憲 宮崎 昭 佐藤 明史 長田 純夫 中司 雅揮 現海 隆 番匠 博隆 萩尾 博文 遠松 展弘 西田 康隆 突田 芳宏 曽我部 駿輔 池田 保彦 松尾 潤二 赤峰 旭 福山 岳彦 藤原 正教 黒田 克樹 田中 洋征 水口 政義 井本 達夫 西尾 一政 片岸 庄史 大石 泰敬 W.J.Batty 松山 拓郎 武谷 政道 所属 東京大学名誉教授 新日鐵住金ステンレス(株) 取締役 相談役 (学)九州国際大学 理事長 (株)アステック入江 代表取締役会長 名古屋大学大学院環境学研究科 教授 京都大学 生存圏研究所 所長 日本鋼管(株) 総合リサイクル事業センター副センター長 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 参事 京都メカニズム事業推進担当 (独)産業技術総合研究所 技術情報部門 審議役 (学)九州国際大学 顧問 (学)九州国際大学 元副理事長 北九州市産業学術振興局新産業部長 環境局参事兼務 福岡市港湾局環境対策部 部長 (学)九州国際大学 次世代システム研究所 特別研究員 福岡県環境部自然環境課自然公園係 技術主査 環境テクノス(株) 環境部 部長 (財)北九州国際技術協力協会 技術協力部長 九州国際大学 元教授 アパート経営 バードライフアジア代表 (株)アースクリエイト九州支社 取締役 九州支社長 (株)新日本環境コンサルタント 専門研究員 (財)日本気象協会 調査部 グループリーダー (財)日本気象協会 調査部 グループリーダー (財)日本気象協会 部長代理 東亜大学医療工学部医療工学科長 教授 九州工業大学大学院生命体工学研科 脳情報専攻 教授 NPO法人 PFI推進事業体 代表理事 (財)日本立地センター 理事 (株)ソリュート総合研究所 代表取締役社長 (株)鑑定ソリュート福岡 代表取締役社長 北九州市建築都市局 理事 エージーカード(株) 取締役 (学)九州国際大学 教授 エクステンションセンター長 (株)九州テクノリサーチ 環境ソリューショングループリーダーエコタウン事務所 所長 福岡大学 工学部 教授 山口銀行 北九州本部 副部長 街づくり実践研究所 代表 (株)電通 プランニングプロデュース局 チーフプロデューサー 南税務会計事務所 所長代理 (株)日建設計上席理事、(株)日建アクトデザイン東京 代表取締役 (株)日建設計 開発・計画部門 計画主管 (社)北九州青年会議所 直前理事長 (株)菅原 経営企画室室長 (株)ナチュラルテック代表取締役 (株)アンカーネットワークサービス CBG統括リーダー、九州営業所 統括リーダー (株)福山組 代表取締役 西部ガス(株)営業本部 部長 (株)ブラックステューディオ 代表取締役 九州工業大学 助教授 地域共同研究センター長 新日本製鐵(株)八幡製鐵所総務部開発企画グループ部 部長代理 九州工業大学大学院生命体工学研科 教授 (株)八幡ハイキャスト 代表取締役社長 北九州市技術監理室指導室 英国クランフィールド大学北九州研究所 所長代理(英国 大学院大学) 福岡県工業技術センター インテリア研究所 所長 若築建設(株) 九州支社 次長 次世代システム研究会 会員名簿 会員区分 部会区分 氏名 所属 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 技術 部会長 是永 逸夫 副田 孝一 五十嵐 健 緒方 光 竹内 良治 清永 定光 大久保 英明 佐藤 隆樹 吉生 寛 田島 忠彦 斉藤 智樹 山田 義憲 秋本 丈司 岩下 陽市 山本 康友 小串 博敬 是永技術士・労働安全コンサル事務所 太平洋マテリアル(株) 小野田工場 工場長 (学)九州国際大学 次世代システム研究所 主任研究員 トヨタ自動車九州(株)NB事業室 室長 北九州市建設局水質管理課 課長 (株)松尾設計 取締役 大久保技術士事務所 (株)九州テクノリサーチ 代表取締役副社長 (株)日建設計九州 北九州市建設コンサルタント協会 専務理事 (株)クロスポイント代表取締役社長 (社)北九州青年会議所 副理事長 (株)木鶏 代表取締役 (社)北九州青年会議所 OB (株)ケーワン 常務取締役 (社)北九州青年会議所 九州職業能力開発大学校 応用課程 居住・建築系 教授 東京都港区用地活用・施設整備担当部長 (株)オグシホーム取締役 一般 総合理論 顧問・ 総合 理論部会長 (学)九州国際大学次世代システム研究所 所長 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 一般 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 総合理論 松本 亨 広報企画重松 依子 佐藤 俊郎 副会長 川崎 順一 荒牧 透 神代 雅晴 許 紅海 中村 昌広 石田 康 E.NICOSIA A.VISCONTI 森岡 侑士 谷川 寛樹 足立 直樹 鄭 石謨 李 南教 濱田 時栄 野村 まゆみ 鹿子木 公春 中薗 哲 隅田 眞弘 中川原 謙二 中山 興一 湯淺 墾道 神力 潔司 岡本 久人 北九州市立大学国際環境工学部環境空間デザイン学科助教授 (株)宣研 代表取締役社長 (株)環境デザイン機構 代表取締役 日鐵運輸(株) 常務取締役 (株)タス 専務取締役 産業医科大学 産業生態科学研究所人間工学研究室 教授 中国国際文化交流センター 学術部長 (社)国際環境研究協会 (株)日立製作所 理事 都市開発システムグループ ソリューション統括本部 本部長 DSN(DESIGN SERVICE NETWORK) BEESTUDIO 九州産業大学工学部建築学科 教授 和歌山大学 システム工学部 環境システム学科 助教授 (株)レスポンスアビリティ 韓・中・日 青少年文化交流協会 駐福岡大韓民国総領事館 領事 サンスカイホテル代表取締役、エコエコ研究会 北九州市議会議員 西日本ペットボトルリサイクル(株) 代表取締役社長 (財)北九州国際技術協力協会KITA環境協力センター副所長 (株)丹青社 公共空間開発部長 (株)丹青社 営業本部文化空間統括部文化2部3課長 九州電力(株) 営業部エネルギーサポートグループ副長 九州国際大学 法学部助教授 九州国際大学 学長事務室課長 おわりに 次世代システム研究所の所報も本号で 4 号目の刊行となった。改めて昨年度の活動 を総覧すると、研究所の活動の幅が多くの方々に支えられて一層広がってきたことが うかがえ、率直にその発展を喜び合いたい。 岡 本 現 所 長 の「 エ コ エ コ 理 論 」に 共 鳴 し て 始 ま っ た 次 世 代 シ ス テ ム 研 究 会 の 、 「知の 結節点」として九州国際大学に設立された本研究所の履歴が物語るように、所報も研 究 所 を 中 核 と す る 研 究 会 ネ ッ ト ワ ー ク の 活 動 を 色 濃 く 映 し て い る 。研 究 会 で の 議 論 は 、 生態学の自然観を経済社会の原理的価値観にしつらえるアイディアから始まり、その 後類似した多様な試みが付加されてきた。学問論にそくして整理すれば、それらはい ずれも実務的学際研究であり、ディシプリン型ではなくミッション型研究である。取 り上げてきた主題は、広く「我が国の経済社会のあるべき姿の追求」であり、本号で は「 ス ト ッ ク 型 社 会 」、中 で も 街 区 の よ う な 広 が り の あ る 対 象 に つ い て 主 と し て 論 じ て いる。 ミッション型研究の真価は、伝統的なディシプリン型研究の立場からは把握し難い ものである。知的フロンティアに挑戦する多くの研究がそうであるように、ミッショ ン型の実務的学際研究においても、仮説検証サイクルをたどる点においては同様であ る 。ま た そ の 循 環 過 程 に お い て 論 理 性 が 保 持 さ れ て い る べ き こ と も 等 し く 要 請 さ れ る 。 異 な る 点 は「 検 証 」の 内 容 に つ い て で あ る 。自 然 科 学 に お い て は 、研 究 対 象 で あ る「 自 然 」に 内 在 す る 普 遍 的 原 理 に 照 ら し て 実 証 す る( 自 然 に よ っ て 語 ら せ る )。社 会 科 学 で は、意思的存在としての「人間社会」を対象とするが、そこには普遍的内在原理は存 在しない。それは移ろい行くものである。そこで、伝統化された社会科学ではそのデ ィシプリンを成立させている「しつけ」に則っているかどうかが検証の対象になる。 それでは、ミッション型の実務的学際研究では何を検証すべきであろうか。我々は、 「実務的有用性」であると考えている。そして「自然法則」であっても、より原理的 な法則性を追求するように、ここでもより広いより長期的な有用性を求めるべきもの と考える。 資産に関し、その長寿命化やストック化を進めることの社会全体としての有用性は 論をまたないが、戦後フロー型の社会経済的仕組みを展開してきた我が国にとって、 ストック社会に転換する方途は単純ではない。フロー型経済の枠組みの中でそのメリ ットを享受してきた製造業をはじめとして、多くの産業においても構造転換を迫られ る こ と に な る 。し か し 、 「 所 有 か ら 利 用 へ 」と い う 標 語 が 意 味 す る よ う に 、た と え ば 製 造業がただ物財の生産過程だけではなく、その製品のリースをも事業領域に加え、消 費者が製造物を所有するのではなく、消費者に「利用」を提供するとすれば、製造業 にとっても長寿命型の製品開発に取り組むインセンティブが生まれる。このように、 社会全体にとって有用性の高い事象について、現行の体制によってロックインされて いるために実現できない状況から脱するための新たな仕組みを設計することが重要で ある。ディスインセンティブなプロセスに適切な政策装置(ポリシーインスツルメン ト)を付加し、インセンティブチェインの連鎖が成立するように改善することが必要 である。 幸い、所報の報告にもあるように、この間の研究所と研究会の取り組みを通じ、先 進的企業、市民団体、労働団体、地方自治体だけではなく、政府の基本政策にもこの ストック化の概念が組み入れられる状況になってきた。この先にはまだ長く困難な道 程が予想されるが、動き始めた社会のうねりを継続的に支援し増幅することが我々の 使命であると考える。 平 成 18 年 10 月 1 日 学校法人九州国際大学 次世代システム研究所 顧問 平 澤 泠 次世代システム研究所報 2006年 10月 1日 発行 編集:学校法人九州国際大学 文化交流センター/次世代システム研究所 発行:学校法人九州国際大学 文化交流センター/次世代システム研究所 〒805−0059 北九州市八幡東区尾倉二丁目6番1号 Tel:093 ー 661 ー 8772 Fax:093 ー 663 ー 1612 URL:http://www.fss-kiu-ac.jp <禁無断転用・複写 非売品>