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東アジア自由ビジネス経済圏形成に向けて

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東アジア自由ビジネス経済圏形成に向けて
独立行政法人「ジェトロ」発足記念シンポジウム
東アジア自由ビジネス経済圏形成に向けて
開催報告書
2004 年 3 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外調査部
経済分析部
アジア経済研究所 研究支援部
はじめに
本書は、ジェトロが 2003 年 11 月 26 日に開催しました、独立行政法人「ジェトロ」発足
記念シンポジウム「東アジア自由ビジネス経済圏形成に向けて」の開催報告書です。
本シンポジウムは、2003 年 10 月に発足した独立行政法人「日本貿易振興機構(ジェト
ロ)としての新たなスタートを記念して開催したものです。
現在、東アジアでは経済連携に向けて動きが加速しつつあります。一方で、中国が世界
の工場として、また世界の市場として急速に台頭してきています。このような状況下、各
国企業は東アジア全域において生産・調達・販売拠点の再編などビジネス戦略の再構築に
取り組みつつあります。
本シンポジウムの第 1 セッションでは、東アジアで広域的にビジネスを展開している代
表的な企業の「トップビジネスパーソン」をお招きし、東アジアでのビジネス機会とリス
クをどう捉え、事業ネットワークをどう構築しているのかなど、ビジネス戦略のポイント
について講演いただきました。更にビジネスの実態を踏まえながら、
「東アジア経済連携」
の方向性についてもディスカッションしました。
第 2 セッションでは、東アジアを代表する研究者をお招きし、東アジア経済連携の持つ
意義や課題について発表いただきました。また、より開かれた東アジア自由ビジネス経済
圏形成の可能性とそれに向けての道程について、活発な議論が繰り広げられました。
本報告書が、東アジアの経済連携に関心をお持ちの関係各位のご参考となりましたら幸
いです。なお、本報告書の内容は、以下のジェトロのウェブサイト上にてご覧になること
ができますので、そちらも合わせてご覧ください。
http://www.jetro.go.jp/ged/j/symposium/20031126/
2004 年 3 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外調査部
経済分析部
アジア経済研究所 研究支援部
目次
はじめに
1.シンポジウム開催概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.スピーカー、パネリスト、モデレーターの紹介
3.シンポジウム議事録
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
基調講演 「東アジア広域経済圏出現と日本」
渡辺 修 ジェトロ 理事長 ・・・・・・・・・・・・5
∼第1セッション 「東アジアにおけるビジネス戦略と課題」∼
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
基調報告 「ASEAN 自動車および部品業界コスト世界一への挑戦」
竹内 信二 デンソー・タイランド 社長・・13
パネルディスカッション「東アジアにおけるビジネス戦略と課題」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
報告1:「東アジアにおけるビジネス戦略」
ジャネット・アン
IBM シンガポール 社長・・25
報告2:「東アジアにおけるインテルの経験」
ウォン・シュウ・ハイ
インテル・マレーシア 副社長・・31
報告3:「東アジアにおける三星の経営戦略」
李 洙喆
三星物産株式会社 副社長・・36
報告4:「Co-petition(コ・ペティション)― ビジネスを発展させる効果的な方法」
魏 少軍
全体パネルディスカッション
大唐電信科技股份有限公司 総裁・・40
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
∼第2セッション 「アセアン単一市場の形成と東アジア経済連携」∼
基調報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
「日・アセアン包括的経済連携の理念と課題」
山澤 逸平 国際大学 学長・・60
パネルディスカッション「アセアン単一市場の形成と東アジアの経済連携」
・・・・・68
報告1:「東アジアにおけるシームレス市場の形成」
ハンク・リム
シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター・・70
報告2:「日・アセアン包括的経済連携」
キティ・リムサクン
タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授・・75
報告3:「東アジア共同体に向けての大きな歩み:インドネシアの視点から」
ジスマン・シマンジュンタク
インドネシア戦略国際問題研究所 会長・・79
報告4:「パートナーとしてのアセアン:中国と日本の比較」
張 蘊嶺
全体パネルディスカッション
中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長・・82
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87
4.参考資料
① 李 洙喆
三星物産株式会社 副社長
② 山澤 逸平 国際大学 学長
③ ハンク・リム
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103
シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
④ キティ・リムサクン
・・・・・・・・・・・・・・・112
タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
⑤ ジスマン・シマンジュンタク
⑥ 張 蘊嶺
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95
インドネシア戦略国際問題研究所 会長
中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
・・・・・・・・・123
・・・・・・・・・133
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144
独立行政法人「ジェトロ」発足記念シンポジウム
東アジア自由ビジネス経済圏形成に向けて
1. シンポジウム開催概要
日 時:
2003 年 11 月 26 日(水) 1:00 p.m.∼6:00p.m.
場 所:
経団連ホール(大手町)
主 催:
日本貿易振興機構(ジェトロ)、日本経済団体連合会、経済産業省
プログラム:
13:00∼13:10
開会挨拶
泉 信也 経済産業副大臣
宮原 賢次 社団法人 日本経済団体連合会 副会長
13:10∼13:30
基調講演 「東アジア広域経済圏出現と日本」
渡辺 修 ジェトロ 理事長
►►►第1セッション 「東アジアにおけるビジネス戦略と課題」
13:30∼13:50
基調報告 「ASEAN 自動車および部品業界コスト世界一への挑戦」
竹内 信二 デンソー・タイランド 社長
13:55∼15:45
パネルディスカッション「東アジアにおけるビジネス戦略と課題」
◇ モデレーター:
伊藤 元重 東京大学大学院経済学研究科 教授
◇ パネリスト :
ジャネット・アン
IBM シンガポール 社長
ウォン・シュウ・ハイ
15:45∼16:00
インテル・マレーシア 副社長
李 洙喆
三星物産株式会社 副社長
魏 少軍
大唐電信科技股份有限公司 総裁
休憩
1
►►►第2セッション 「アセアン単一市場の形成と東アジア経済連携」
16:00∼16:20
基調報告
「日・アセアン包括的経済連携の理念と課題」
山澤 逸平 国際大学 学長
16:20∼17:50
パネルディスカッション「アセアン単一市場の形成と東アジアの経済連携」
◇ モデレーター:
大辻 義弘 経済産業省 貿易経済協力局 通商金融・経済協力課長
◇ パネリスト:
ハンク・リム
シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
キティ・リムサクン
タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
ジスマン・シマンジュンタク
張 蘊嶺
17:50∼18:00
インドネシア戦略国際問題研究所 会長
中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
閉会挨拶
藤田 昌久 ジェトロ・アジア経済研究所 所長
来場者数:417 名
2
2. スピーカー、パネリスト、モデレーターの紹介
(アルファベット順)
►►►第1セッション
ジャネット・アン(IBM シンガポール 社長)
Janet ANG ( Managing Director, IBM Singapore)
シンガポール大学経営学修士取得。
IBM アジア大洋州マーケティング部長、IBM アジア大洋州販売事業部長などを経て現職。
伊藤 元重(東京大学大学院経済学研究科 教授)
Motoshige ITOH (Professor, Faculty of Economics, The University of Tokyo)
東京大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科修了。米国ロチェスター大学経済学博
士取得。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部教授などを経て現職。
李 洙喆(三星物産株式会社 副社長)
LEE Soo Chul (Executive Vice President, Samsung Corporation)
成均館大学校経商大学卒業。慶應義塾大学マネジメント・ディベロップメント・プログラム
(MDP)修了。延世大学校最高経営者過程修了。韓国科学技術院(KAIST)最高知識経営者
課程(CKO)修了。
三星物産株式会社東京支社長・常務理事、三星物産商事部門専務理事などを経て現職。
竹内 信二(デンソー・タイランド 社長)
Shinji TAKEUCHI (Managing Director, DENSO International (Thailand) Co., Ltd.)
日本大学法学部卒業。
株式会社デンソー海外営業部次長、デンソー・インドネシア社長などを経て現職。
魏 少軍(大唐電信科技股份有限公司 総裁)
WEI Shao Jun (President& CEO, Datang Telecom Technology, Co., Ltd.)
清華大学工学修士取得。
ベルギーモンス大学理工学博士取得。
シーメンス研究開発センター、ベルギーモンス大学理工学部助教授、清華大学マイクロ電子
学研究所教授などを経て現職。
ウォン・シュウ・ハイ(インテル・マレーシア 副社長)
WONG Siew Hai(Vice President&General Manager, INTEL Corporation)
リーズ大学機械工学科卒業。ロンドン大学大学院経営科学修士取得。
インテルマイクロコントローラービジネス統括部長、DELL アジア大洋州カスタマーセンタ
ー副社長などを経て現職。
3
►►►第2セッション
ハンク・リム (シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター)
Hank LIM (Director for Research, the Singapore Institute of International Affairs (SIIA))
ガノン大学卒業。ピッツバーグ大学経済学修士、博士取得。
太平洋経済協力会議(PECC)事務総長、アジア太平洋経済協力(APEC)賢人会議(EPG)
シンガポール首席代表、シンガポール国立大学高等教育研究所所長などを経て現職。
キティ・リムサクン(タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授)
Kitti LIMSKUL (Vice Minister for Finance, the former Associate Professor, Chulalongkorn
University)
タマサート大学経済学修士取得。名古屋大学経済学博士取得。
チュラロンコン大学経済学部教授、タイ財務省財政政策室長顧問、タクシン首相政策顧問な
どを経て現職。
大辻 義弘(経済産業省 貿易経済協力局 通商金融・経済協力課長)
Yoshihiro OTSUJI (Director, Trade Finance and Economic Cooperation Division, Trade and
Economic Cooperation Bureau, Ministry of Economy, Trade and Industry (METI))
東京大学法学部卒業。米国ワシントン大学ロースクール卒業。
通商産業省(現経済産業省)通商政策局南東アジア大洋州課長、ジェトロバンコク・センタ
ー所長などを経て現職。
ジスマン・シマンジュンタク(インドンネシア戦略国際問題研究所 会長、プラセティヤ・ムルヤ
経営大学院 学長)
Djisman SIMANDJUNTAK (Chairman, the Board of Trustees, Center for Strategic and
International Studies (CSIS) / Executive Director, Prasetiya Mulya Business School)
パヤヒヤンガン・カトリック大学経済学部卒業。ケルン大学経済学博士取得。
SGV-Utomo 社監査役、戦略国際問題研究所経済部長などを経て現職。
山澤 逸平(国際大学 学長、前ジェトロ・アジア経済研究所 所長)
Ippei YAMAZAWA (President, International University of Japan, the former President of the
Institute of Developing Economies, ジェトロ)
一橋大学経済学部卒業。一橋大学経済学博士取得。
一橋大学教授、ジェトロ・アジア経済研究所所長などを経て現職。早稲田大学大学院客員教
授を併任。
張蘊嶺(中国社会科学院 アジア太平洋研究所 所長)
ZHANG Yun Ling (Director, Institute of Asia-Pacific Studies, Chinese Academy of Social Science
(CASS))
山東大学卒業。中国社会科学院大学院経済学修士取得。
中国社会科学院研究員、マサチューセッツ工科大学客員教授などを経て現職。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
渡辺 修(日本貿易振興機構 理事長)
Osamu WATANABE (Chairman and CEO, Japan External Trade Organization (ジェトロ)
東京大学法学部卒業。
通商産業省(現経済産業省)大臣官房総務審議官、貿易局長、産業政策局長、通商産業事務
次官などを経て現職。
4
3.シンポジウム議事録
基調講演「東アジア広域経済圏出現と日本」
渡辺
修 ジェトロ理事長
ただいまご紹介いただきましたジェトロ理事長の渡辺です。
泉経済産業副大臣、それから宮原経団連副会長をはじめとしまして、たくさんの方に本
日の独立行政法人ジェトロの記念シンポジウムにご参加いただきました。心よりお礼を申
し上げます。
また本日は、伊藤元重先生をはじめとしまして、内外の著名な方々のご参加をいただき、
このシンポジウムを開催することができました。私の大変喜びとするところです。
ジェトロは 1958 年、特殊法人として生まれ、戦後の輸出振興さらには輸入促進、数々の
時代の要請を受けて長い間走ってまいりました。2003 年 10 月 1 日を期しまして独立行政
法人となりました。わかりやすく申し上げますと、日常の細かい業務、経費、予算の使い
方その他の監督など、日常業務をいままで国から細かく監督を受けていましたけれども、
これからは中期的な目標を国から示していただき、それに対してジェトロ自らが自己責任
においてその目標をしっかりと達成していく計画を作って、その成果を上げることを目標
にすることになりました。したがってその成果が上がったか上がらなかったかは、経済産
業省に置かれました評価委員会によってきびしく中身のチェックを受けることとなり、そ
の中身いかんによっては、ジェトロ理事長の私の給料・ボーナスも大きく変わると、こう
いう形になったわけです。
一言でいいますと、自己責任原則のもとにしっかりと思う存分仕事をし、結果がよけれ
ばよし、ダメならばその分の責任を取れと、こういうことです。ジェトロは、全職員一丸
となり、新しい組織のもとに数々のニーズに応え、さらにはお客様志向を徹底させ、これ
からも全力を尽くしていく所存です。どうぞ引き続きよろしくご指導、ご鞭鍵のほど、お
願い申し上げます。
私とアジアとの関わりですけれども、昨年の 7 月にジェトロにまいりました。それまで、
1964 年に通商産業省に入省して 35 年余、通産省に在職したわけです。いちばん思い出に
残りますのは、1997 年から 99 年までのアジアの通貨・経済危機の時代です。本日お集ま
りの各国の皆様方も大変ご苦労されたと思います。その時、私は、たまたま事務次官を務
5
めておりました関係で、国内も大変な時期であったのですが、あらゆる支援策に奔走した
のを覚えています。皆様方のご協力もあり、またアジア各国の自力により、これを克服し、
その後、着実に発展していますことを、心から敬意を表する次第です。
その後退官しまして、小泉総理による外交タスクフォースのメンバーの一員として、昨
年からの一連の ASEAN との経済連携協定のプロポーズとか、数々のアジア外交に関して
その一端に関与してきました。本日は、そのような、私のいままでのアジアとの付き合い、
関わり方その他を総括しまして、私見を申し上げまして、今日これからの実りある中身の
濃いシンポジウムの一助になればと思ってお話をさせていただきます。
まず、最初に日本経済の現況からお話を申し上げます。
長い間、皆様それぞれの分野で大変ご苦労されたことと思います。10 年を越えた長い不
況のなかから、私はいよいよ日本経済が復活に向けてのファイナルステージに入ったと、
実は思っているわけです。ただ 90 年代ずっと通じて見ますと、こういうことは二度ありま
した。二度とも失敗をしたわけです。私は、今度は三度目の正直になるのではないかなと、
このように考えています。
長期にわたる企業のリストラ努力の結果が出てきました。収益も上がってきました。設
備投資も伸びてきました。ただ、大企業を中心としたリストラ効果は出ていますけれども、
それが中小企業その他隅々にまで行き渡るには、まだそこまでは達していないというのが
現況だろうと思います。過去 2 回の失敗は、いずれもそういう状況の時に、一つは、財政
政策を含めて国が大変な財政赤字を背負っていますから、マクロ経済運営において直ちに
財政構造改革を急ごう、財政の不均衡を是正しようという方向に移ったというものです。
もう一つは、銀行をはじめとして個々の企業のリストラ努力というのが、景気が良くなる
傾向が出てくるとどうしてもスヒードが緩み、あるいはストップしてしまいます。その結
果、不良債権処理その他が止まってしまうというのが過去 2 回の失敗でした。
私は三度目の正直として、少なくともいままでのマクロ経済運営あるいは構造改革路線、
さらには個々の企業のいままで続けてきた不良債権の処理あるいはリストラ努力、この双
方を、あと 1 年ないし 2 年、しっかりと路線を変えないでいままで通り継続していくこと、
これが一番のポイントだろうと思いますし、それが過去 2 回の失敗から学ぶ教訓ではない
かと、このように考えているわけです。
そうしますと、つまり不良債権処理その他があと 1 年ないし 2 年続くということになり
ますと、当然のことながら経済にはデフレ効果をもたらすことになります。したがって私
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は、日本経済が復活し、新しい明るい経済状況で日本企業が活況を呈するというのは、ま
だ 1 年ないし 1 年半以降になるであろうと考えていまして、これらさらなる飛躍のために
は不可欠なステップであるとこのように考えています。
しかしながら、それを乗り切りますと、その先というのは、私はきわめて明るい展望を
持っています。それはこの 2 年数カ月の間に、国内に見られる東アジアとの一体的な経済
運営によって、新しい企業努力を生み出し、収益を上げようという、そういう新しいビジ
ネスモデルが着実に日本の個々の企業に定着しはじめていると、このように感じるからで
す。
先程、泉副大臣からもお話がありました。日本・東アジアにおける経済統合、域内貿易
は、飛躍的に拡大しています。日本経済は、おそらく、私は 2 年前の秋がボトムだったと
思っています。中国脅威論が満ちあふれました。国内の空洞化で皆が悲鳴を上げました。
その頃がいちばんのボトムだったと思いますが、やがて、大企業はもちろん、中堅企業、
中小企業も、中国でヒジネスがあるのなら、ビジネスをそこでしっかりやるしかないじゃ
ないか、それでしっかり収益を上げようじゃないかと、こういうことで、私は中国脅威論
という問題ではなくて、全企業あげてビジネスチャンスとしてこれをとらえるという形で、
まったく新しい活力を持ってビジネスにチャレンジしはじめたと、それがこの 2 年間のス
テップであったような気がします。
累積投資で見ますと、中国よりも 3.5 倍東南アジアに対する投資が多くあります。したが
っていま個々の企業というものは、国内でどういうものを生産し、中国でどういう技術者
を使ってどういうものを作り、そして ASEAN 各国でどういうものを作ろうという、個々
の企業が自分の戦略を組み立てて、ネットワークを作って効率的で最も収益の上がる、そ
ういうビジネスを行っていると、これが私は定着をしてきているような気がします。それ
は大企業だけではありません。中小企業、中堅企業も着実に自分の頭で考えて投資をはじ
めている。そこでしっかりした収益を上げている、これが現在の状況であるような気がし
ます。
本日は、第 1 セッションで、伊藤元重先生のもとに、東アジアビジネス圏での企業の戦
略のお話がなされることになっています。これは日本だけではありません。各企業が新し
い成長センターでの東アジア圏でのニュービジネスモデルをいま構築しつつあるところで
あり、大変興味ある議論が聞かれるのではないかと思っている次第です。
チャイナ・プラス・ワン(チャイナ+1)という言葉がありますけれども、国内も含めて
7
どういうネットワークをつくるか、それがこれからの鍵になると思います。
いま申し上げたのは生産活動のネットワークですけれども、同時に、中国および ASEAN
は、急速に消費が拡大しています。そういう意味では、これからの消費市場としての地域
として、これまた大きな期待が膨らむわけです。
ジェトロの「貿易投資白書」によりますと、中国および ASEAN で中間層というのが相
当な勢いで増えているという分析があります。中間層というのは、超お金持ちではなくて、
その間にくるような、そういう意味ではこれから所得が伸びる層です。中国でいえば月収
2100 元、したがってこれは、円に換算しますと月収 3 万円ぐらい、購買力平価で換算する
と、おそらく 17∼18 万円ぐらいの月収になるそうです。こういう人が急速にいま増えてき
ていて、都市人口 4 億ですから、そのうちの 4,000 万人くらい、ちょうど 1 割がそういう
人であろうといわれております。この人達が今各種の耐久消費財を買い自動車も買ってい
るそうです。これは中国、NIES 諸国、さらには ASEAN 各国全体を含めますと、この層が
1 億 4000 万人くらいいるというのが現状のようでして、ASEAN および中国、東アジア全
部で韓国も含めますと 19 億の人口ですから、そのうちの 1 億 4000 万人がそういう層にな
っている。しかも急速にこれが拡大していると、こういうのが現在の状況です。そういう
なかで企業がこれから一体となってビジネスを行い、収益を上げていくことが重要です。
最近、こういう話を耳にしました。いまの日本経済の復活も、景気の上昇も、大部分は
輸出に依存しているのですよ。したがって依然として内需は弱いのだと、こういう話を耳
にします。その話は部分的には事実です。しかし私は、東南アジアにモノを輸出している
というのはいまや輸出ではないのだと。いままでの日本という経済領域がなくなり、東ア
ジア全体があたかも国内のようになったと考えよう。したがって日本でモノを作って中国
に輸出して、東南アジアに輸出しているというのは、輸出需要によって成長しているので
はなくて、あたかも国内でモノを輸送しているのと同じことであると。したがって東南ア
ジアで作ってそれを日本に入れるのも、輸入という概念ではまったくなくて、国内でモノ
が移っているような、いまや経済が統合されたような結果になっているのだと。したがっ
て輸出需要だからどうの、内需が弱いという議論は、私はこれから新しい東アジアの一体
としたビジネスモデルのなかでは、あまり意味をなさないようになってくるのではないか、
このように実は考えているわけです。
しからば、そういう経済実体、事実としての実態上の経済統合において政府および国は
一体何を進めるか。これはデファクトベースのいまの経済統合を制度的な形で、つまり政
8
策的に国境が邪魔をしないような形に経済統合をより加速すること、これが最大の課題で
あると思うわけです。
先程来お話がありましたので繰り返しませんが、2005 年から ASEAN と日本は包括的な
経済連携交渉に入ることになりました。今年の 12 月には東京で ASEAN の特別首脳会合が
開かれます。おそらくそこではマレーシア、フィリピン、タイ、そういった国とのバイの
FTA の交渉に入ることが宣言されることを私は強く期待していますし、インドネシアとは
予備的な協議に入っていくのだろうと思っています。
ASEAN はすでに長い歴史のもとに AFTA を完成させまして、着々と ASEAN 全体で国
境のなかのバリアを取り外しながら一体として競争力をつける方向に走ってきています。
ASEAN10 カ国が 10 カ国としてではなくて、あたかも一つの地域として域内の障壁を取り
除き、一体として補完し合いながら競争力をつけ、ASEAN が安定することが私はこれから
のアジアの経済の発展と安定のなかできわめて重要なことであると、このように考えてい
ます。そういう観点から、日本と ASEAN との各種の経済連携プログラムのなかには、そ
れをさらに加速するために積極的に日本がやれることなど、各種の支援を差し伸べなけれ
ばいけないと、このように考えていますし、それは ASEAN 先発メンバー各国に対するの
みならず、例えばメコンの総合デルタ開発に象徴されますように、新規加盟各国に対して
も、日本のやるべきことはきわめて大きいのであろうと考えています。
アジア経済研究所では、過去 1 年半の間に、ASEAN10 カ国それぞれの経済分野でトッ
プの研究機関と共同で、アジアのこれからの復活に関するレポートをまとめました。7 月に
レポートを出し、これを 9 月の日・ASEAN の経済産業大臣会合に報告して大変高く評価さ
れたわけです。本日は、第 2 セッションで当時のアジア経済研究所の所長でいらっしゃい
ました山澤氏がお見えです。これについてご披露があり、それに基づいて、ASEAN 各国の
研究所の皆様方の活発なご議論が期待されます。
韓国とはこの 12 月から FTA の交渉会合に入ることになりました。中国は、すでに ASEAN
各国との間で枠組協定を結んでいまして、来年 6 月から中国・ASEAN との自由貿易協定が
動きはじめると思います。日本よりも早く動きはじめることになる。私はこれも結構なこ
とだと思います。先程申し上げましたように、日本、韓国、中国、そして香港、台湾、そ
れと ASEAN10 カ国、おそらく東アジア全体、これらの国は早晩、おそらく皆さんが予想
するよりはるかに早く、東アジアを結んで、一体としてその間に、人・モノ・カネが往来
するようなことになっていくのは間違いないと、このように考えているわけです。
9
さて、そうしたなかで、日本がどういう役割を担えるか。これはきわめて日本の将来に
とって重要なことだと思っています。残念ながら、この 10 月、メキシコとの自由貿易協定
締結に日本は失敗しました。継続交渉になっています。残念ながら、その最後のところは
農業間題についての意見の一致をみなかったということです。先般の APEC の会合があり
ました後、小泉総理は、構造改革をこれからも進めていくと、農業においても鎖国はない
と、こういうことを明確に表明されました。私は日本がみずから構造改革のど真ん中に農
業間題をどうするかということをしっかり頭に置いて、それに対して大きく舵を切ってい
く、そしてそれがネックになって今いった東アジア全体の FTA の成立時期を遅らすことの
ないようにすることが、いま日本で最も重要なことであろうと、このように考えているわ
けです。
そのためにも、おそらく、いま申し上げたように、東アジアで一刻も早く自由貿易協定
ができることが重要です。これはアメリカもそうなっているわけです。米州大陸全体で自
由貿易協定を結んで、そこで経済発展、投資の拡大をしようとしている。EU は 15 カ国か
ら 25 にもすでに膨れあがろうとしている。それぞれ二極が成立しようとしている時に、東
アジアもそれに向かって走っていく、そうすることによって日本経済はますます先程申し
上げたように発展する、それだけの活力を得ることになります。そうして拡大し、自立し
た日本の経済活力、得られたパイ、そのパイの何分の 1 かを、あるいは何十分の 1 かを不
可欠である農業の競争力強化のために、そのお金を注ぎ込む、あるいは犠牲になった人に
対して補償する、そういうメカニズムをしっかりと日本の国で作りあげれば、私は農業の
構造改革はできないことはないと思っているのです。そのメカニズムができていないこと
が、全体が遅延している大きな根源であろうと。したがってそれをやるのは、私は政治的
なリーダーシップそのものであろうと、このように考えているわけです。
いま申し上げたことに加え、もう一つ、東アジア自由貿易圏ができあがるなかで引き続
き日本がリーダーシップを発揮し、世界経済運営のコ・リーダー(Co-Leader)として活躍
していくためには、われわれ自身も思い切って付加価値の高い産業に移り、先端技術を磨
き、経済のサービス化をはかって、今までわれわれがやっていた部分はどんどんアジアの
各国がやれるような、そういう新しいネットワークをつくっていかなければいけないと思
います。そのためには、私は日本に世界中の優れた人、資本、技術、ノウハウ、そして頭
脳、そういったものがどんどん日本に入ってきてもらって、その人達の力によって全体が
浮上していく、そういう姿を早く作らなければいけないと思っていますし、それが、総理
10
がおっしゃっている対日投資倍増計画です。
ジェトロは、こういった各種の問題に対して積極的にチャレンジしていきたいと思いま
す。一つは、今言ったように、実体としてすでに東アジアに進出している日本企業、各国
への進出のお手伝いを積極的に行います。進出した企業は、そこで大変なご苦労をされて
います。ジェトロは駆け込み寺になろうと思いますし、知的所有権問題その他で各種の摩
擦が起こる問題に対しては、われわれが積極的にそれをカバーしていこうと、このように
考えています。
二つ目は、アジア経済研究所を中心とするシンクタンク機能です。このシンクタンク機
能について、先程も申し上げましたけれども、ASEAN10 カ国との経済研究所との連携強化
をさらに進めていきたいと思います。さらに将来の東アジア自由貿易圏を頭において、ア
ジア貿易の8割を占める日本と中国との間で、貿易投資にいかなるルールが望ましいのか、
またその際いかなる影響が両国に、またアジアに及ぶのか、というスタディが必要ではな
いかと思っています。われわれが予想するよりもはるかに早く東アジア自由貿易協定、自
由貿易圏が実現するであろうと、このように考えている次第です。
さらにタブーを設けずに、農業の構造改革にしっかりと着手していきたい。すでにその
ために米、野菜、果物その他の日本の優れたものを諸外国に輸出できないかという勉強会
をスタートさせていまして、いま日本の国内で各県から、あるいは農協、その他農家の方々
から大変注目されているところです。農業構造改革についても積極的に勉強していきたい
と思っています。
三つ目は、東アジア諸国の産業発展のための支援をこれからしっかりとジェトロもお手
伝いしていきたい、このように考えています。すでにタイの一村一品運動をはじめとして、
中小企業あるいはサポーティング・インダストリーの拡大、成長のために、いろいろ尽力
してきましたけれども、これを新たに新規加盟国にも支援の輪を拡げていきたいと考えて
いますし、さらにそこでもう一つ非常に重要なのは、特に CLMV(カンボジア、ラオス、
ミャンマー、ベトナム)の国に関して重要なこととして、メコン河流域総合開発というの
をなんとしてでも積極的に総合的にこれを推進し進めていく必要があると、このように考
えている次第です。もちろんこれは ODA をはじめとして、各種の国もやっていますけれど
も、やがてこういう国の経済が自立していくためには、個々の民間投資がそこに集中しな
ければいけません。そのためには、そういう関心を日本の企業が持たなければいけません
し、そこで企業の投資がおこるためには、中小企業あるいはサポーティング・インダスト
11
リーがそこに着実に育っていかなければいけません。それを私どもは日本の企業と一緒に
なってどんどんサポートしていきたいと思いますし、東京の関心をメコン総合開発に向け
るためにわれわれもまた努力していきたいし、かつまた CLMV の各国のビジネスマンが国
際ビジネスに十分従事できるようなキャパシティビルディングにも全力を尽くしていきた
いと、このように考えている次第です。
やるべきことはたくさんあります。いずれも、私ども、今までもそうでしたけれども、
これからも皆様方の強いご支援、ご鞭撻をいただきながらこれらを推進していきたいと、
このように考えています。特にいま劇的に進んでいます東アジアビジネス圏の確立に向け
て、私はあと 1、2 年の間に軌道に乗せることが最も重要なことだろうと思います。いちば
ん重要なのは、質でもなくて量でもなくて、私はスピードであると思っています。このス
ピードが遅れることが日本の国益、さらに東アジア全体の Win-Win ゲームを著しく遅らす
ことになり、すでに先発しているアメリカ・米州大陸、さらには欧州各国に対して、東ア
ジアが大きく劣ることになる。そのためには力を合わせて急がなければいけない、このよ
うに考える次第です。
本日は、まさにそういう議論をしていただくにふさわしい二つのセッションを用意して
います。十分ご議論いただき、また、会場の皆様にもいくつもご質問いただきながら、中
身の濃い実りあるシンポジウムにしたい、主催者の一人としてこのように考える次第です。
どうもありがとうございました。
12
第1セッション「東アジアにおけるビジネス戦略と課題」
基調報告「ASEAN 自動車および部品業界コスト世界一への挑戦」
竹内 信二
デンソー・タイランド 社長
デンソー・タイランド社長の竹内です。本日、このようなタイトルでお話させていただ
きます。本題に入る前に、多少、私どもの会社と ASEAN におけるグループ会社の説明を
したいと思います。
1.会社概要
1.1
DENSO(Thailand)
タイにはデンソー・タイランドという会社がありまして、約1年前まで、約 30 年間この
1社でやってきました。工場はサムロン工場とバンパコン工場の二つしかありませんでし
た。
1.2
タイ・デンソーグループ会社の使命
ところが、昨今、カーメーカーが皆1トン・ピックアップディーゼルトラックの製造を、
タイを中心にした ASEAN に持って来るということになり、ものすごく生産ボリュームが
増えてきまして、それに対応して、私どもも生産能力をなんとか確保しなければいけない
ということになりました。
1.3
ASEAN 生産品目拡大
このプロジェクトは世界 80 カ国以上に完成車を輸出するプロジェクトでして、いままで
の ASEAN 品質ではダメだというわけで、グローバル品質レベルの達成をしなければなら
なくなりました。そしてまた、カーメーカーからの猛烈な価格低減圧力が来まして、その
ためコスト競争力を強化しなければならないことになりました。とにかく今までタイには
カーメーカーが CKD で持ってきて 33%も関税がかかっていたものが、これは全部やめて
くれという話になってきまして、そこでグローバル競争力確立に向けた抜本的な体質強化
をこれからやっていかなければならなくなりました。今までタイ、インドネシア、マレー
13
シア、フィリピンと別々のオペレーションやってきたわけですが、今回新たにベトナムを
加えました。また、既存の会社では現地生産品目を拡大することになり、これは赤字で書
いてあるからといって赤字製品ばかりではないのですが、このような品目を追加していく
ということになったわけです。
1.4
タイ・デンソーグループ
デンソーでは、タイに1社2工場と申しましたけど、バンパコン工場を拡張しまして、
さらにもう一つウェルグローというところに工場を建て、さらにサイアム・デンソー、そ
の他のデンソー子会社にも出てきてもらって、今まで1社2工場でやっていたのをタイだ
けで6社8工場になりました。また、それらを統括する会社を作って、生産会社は生産・
モノ作りに専念してもらう、このように考えています。
2.ASEAN の自動車産業と規制の歴史
2.1
タイ国の自動車業界の歴史
実は私は、20 年くらい前にタイでセールスをやっていたことがあります。その頃から約
3年くらい前までは、デンソーのスケールがこれほど大きくなるとは夢想だにしなかった
というのが事実です。タイ国の自動車業界の歴史を述べますと、私どもの会社は 30 年前な
のですが、カーメーカーが出てきたのが 40 年前くらいです。まず、1964 年くらいにカー
メーカーが組立工場を作ったのですが、1970 年になって国産化率規制というのが出来まし
た。国産化率は、最初は 15%でした。車の組立は大体 10%に相当するので、残りの5%を
どうしたのかというと、いろいろ探したらしいのです。ガラス屋さん、バッテリー屋さん、
タイヤ、このようなものを掻き集めてなんとか 15%を達成していました。1973 年になると、
15%は少な過ぎるということになりまして、25%にしろということになりました。そうい
うことで、また部品メーカーを探したのですけれども、そのようなサプライヤーは誰一人
いないということで、日本へ行って誰か進出してきてくれませんかねと頼むと、何社か出
てくる。私はこれを第一次部品メーカーの進出と呼んでいます。私だけがこの言葉を使っ
ていますので、他所ではまったく通じないのですが、そういうことなのです。
デンソー・タイランドもカーメーカーの国産化率達成のために寄与する会社として、そ
の頃に出ていったわけです。
14
2.2
ASEAN 各国の規制(2000 年以前)
その後さらに規制が強化されまして、国産化率 25%は少な過ぎる、54%にしろというこ
とになりました。一方では、ディーゼルの国産化エンジンをタイで作ってくださいという
ので各社がエンジン会社をつくった。その時に 54%の国産化率を達成するためにまたドー
ッと日本の部品メーカーがタイに出てきたのです。
それまでの時代で何が言えるかといったら、コストなんかより国産化を達成するために
精一杯の時代だったということです。私は 20 年前にセールスをやっていまして、よくいろ
いろなカーメーカーに行きまして、我が社のスタータを持っていって、これは日本の 2.3 倍
の価格ですけれどもと言うと、いや竹内さん、それは高過ぎるじゃないかと言われるわけ
です。そこで、あ、そうですか、高いのならうちから買わなくてもいいですよ、と帰ろう
とすると、ちょっと待て。そのスタータがないと(国産化率 54%を)達成できない、とな
っていました。そういうわけで、価格なんかいくらでも良いとなっていたわけです。
もっとも無理はないのです。当時、タイの(自動車)市場というのは8万台ぐらいしか
ありませんでした。一方、デンソーの本社はスタータを年間 800 万個作っていました。タ
イのために部品なんか作らないのですね。そうすると(本社工場の)トランスファー・ラ
インというところから、1点1点部品を抜いていくのです。船で送るので防錆処理して、
それを個装箱に入れて、それでタイ国にきて(箱を)ポンと開けて組み付けると、はいス
タータが出来上がり、となっていたわけです。もちろん、デンソーの本社も部品の売却益
をばっちり上げて、それから我々デンソー・タイランドもばっちり利益を上げて、そうす
ると(価格が)大体日本の 2.3 倍になってしまう。ところがカーメーカーは損していたかと
いったら、ぜんぜん損してないのですね。 2.3 倍で買っておいて、車は3倍で売っていた
と、こういうことなものですから、みんながベリー・ハッピーな時代だったと、こういう
ことが言える(笑声)。国産化規制様々の時代であったというわけです。
インドネシアでも同じようなことをやっていまして、車の国産化率を 40%以上にしたら、
残りの 60%は日本から CKD で持って来ることになりますが、その CKD の関税を免除する
というわけです。さらにニンジンをぶらさげて、60%まで国産化率を高めたら、車の奢侈
税というのが 35%くらい賦課されるのですが、これも免除するというようなことをやって
いた。
マレーシアでは、いちばん最初にプロトン・サンガというのが第1国民車で、第2国民
車でプロドゥアです。第1国民車のプロトン・サンガは、CKD で持ってくると関税率が 13%
15
なのです。第2国民車は0%。マレーシアでは国民車以外を非国民車と呼んでいまして、
この関税率がなんと 42%。そういったディスクリミネーション(差別)をやっている。
それからフィリピンも面白くて、車の CKD を輸入してくる時、外貨は自分で獲得して下
さいと言われるわけです。外貨を獲得するには何をしなけれならないか。何か輸出しなけ
ればいけない。カーメーカーには輸出するものなんてないのですね。それで昔は、商社に
頼ってエビやカニを輸出して、そのエビやカニを売った外貨で車の CKD を輸入していた。
ところが途中で、フィリピン政府からもエビやカニならネコでも輸出できると、自動車部
品でなければダメだと言われまして、また自動車部品メーカーが進出していって、そこか
らいろいろな輸出をして、そうし得た外貨でもってはじめて CKD が買えていた。こんなよ
うなことをやっていたわけです。
ASEAN といってもいろいろな ASEAN がありまして、現在、10 カ国になっております
が、もともとケネディのドミノ理論といってベトナム戦争の時に軍事同盟として 1967 年に
できたのですが、最初の加盟国がタイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、それに
シンガポール、84 年にブルネイが加わりまして、ちょうどソ連の解体もあったことだし、
共産主義の脅威もあまりなくなってきたということから、1995 年にベトナムが加わりまし
た。続いてミャンマーとラオス、最後のカンボジアが加盟して現在 ASEAN 加盟国は 10 カ
国になっております。その ASEAN 加盟国 10 カ国中、WTO 加盟国がタイ、インドネシア、
マレーシア、フィリピン、それにシンガポール、ブルネイ、ミャンマーということで同時
加盟をしております。
ご存じの通り WTO といいますと、昔は2カ国間交渉をやっていましたが、例のガットと
いうもので東京ラウンドやウルグライラウンドなどといって多国間交渉でやらなければい
けないというので、それでは今までのガットだけではダメだというので、1995 年に WTO
ができたわけです。
2.3
ASEAN 政策の転換(2000 年以降)
実は WTO に加盟すると TRIM 協定というのがありまして、加盟してから5年以内に非
関税障壁を撤廃して下さいというものです。これが WTO の TRIM 協定なのですが、先ほ
ど私が申し上げた国産化規制だとか、ああいうものがすべて非関税障壁にあたります。
いちばん卑近な例ですと日本のコメです。コメは 1999 年の末まで輸入数量制限をやって
いましたが、これは非関税障壁でした。では、そういうものを撤廃してどうやってその産
16
業を守っていくのか、それは関税で守って下さいということになりました。したがって日
本はコメに 490%の関税をかけています。ところで、タイとインドネシアはどうか。これ
も 2000 年1月1日から一挙に、先ほどの国産化規制を全部やめました。ただし、マレーシ
アはさらに2年間延長、フィリピンは1年延長したのですが今は止めました。そのような
ことでタイは自動車産業を保護するために CKD の関税を 33%に引き上げました。インド
ネシアではほとんどの会社で 40%の国産化が達成されていたので、今まで CKD の関税率
はゼロでしたが、一律 15%を課しました。一方、ASEAN の域内関税、これは 2003 年から
0∼5%に下がりました。すなわち、例えばトランスミッションを日本から引っ張ってく
ると 33%の関税がかかるのが、フィリピンからもってくれば0から5%ということで、域
内外の関税差を設けるようになりました。
いずれにしても、WTO の TRIM 協定で国産化義務はなくなってしまい、国産化するかは
しないかは各国の自由となりました。しかし、域外からあるいは日本から輸入するものに
は、タイだったら 33%かかるし、インドネシアだったら 15%の輸入関税がかかります。そ
れとタイやインドネシアでモノ作りをするというのが、どっちがお得ですかという問いか
けの時代に入ってきたわけです。
2.4
ASEAN 経済環境の変化
以下は私がインドネシアの社長をやっている時に、周りのタイの社長などを皆集めて、
これから 2000 年以降を予測してみようとなった時の話です。とにかく域内外の関税差が
5%対 33%となりましたので、今まで日本車しかなかったけれども欧米各国のカーメーカ
ーが全部 ASEAN に出てくると考えたわけです。そして、本当に出てきてしまいましてカ
ーメーカーの競争が非常に激しくなりました。カーメーカーはどうするか。自分さえ勝て
ばいい、自分だけは勝ちたいとこういう気持ちになるに決まっています。競争に勝つため
にはどうするか。安い車を作る。安い車を作るためには、関税に左右されないように、要
するに自国の国産化率を上げる、あるいは5%ですむ ASEAN の調達率を拡大していくし
かない。要するにもう日本からは買わないということです。そうすると、今まで日本で部
品メーカーがカーメーカーに売っていた、そしてそれを CKD で持って来たのをもう止めて
しまう。日本の部品メーカーはどうするか、商売を失ってしまう。それでは、俺も行かな
くちゃということで、今度は部品メーカーが進出した。以前は国産化率に寄与しますなど
と言って2∼3倍のスタータを売っていたのが、今2∼3倍なんて価格で持っていったら、
17
本当にすぐ出入り禁止になってしまうぐらいですが、今度はそれくらい部品メーカー間の
競争が激しくなりました。ではどうするのだということですが、2000 年以降は誰にも負け
ないと低コストの実現を目指すのだと、こう言ったわけです。
いろんな手を打ったのですが、製品別の集中生産、すなわち ASEAN コンプリメンテー
ションというのは特にやったので、多少、説明させていただきます。
今まで1カ国ずつの需要は大変小さい。では集めてしまおうか。国産化規制も将来なく
なるということで、電装品、オルタネータとかスタータはタイが一番よく作っているから、
ここで集中生産しよう。インドネシアにあったオルタネータ、スタータの設備はタイに移
管してしまう。それではインドネシアはどうしたか。こちらで作っていたホーン、スパー
クプラグの生産ラインを移管する、このような集中生産を考えています。フィリピンはマ
ルコスが逃げてから我が社も少し引き揚げたのですが、最近もう一度出まして、何をやら
せようかなと考えた結果、コンビメータだなといって、これがいまだに赤字で少し失敗し
たかなと思っていますけど、いずれにせよ、このような数をまとめてエコノミック・ボリ
ュームにして、集中生産して、それらをやりとりしよう。このようなことをやりました。
それで、実はまだ AFTA が完成していなかったものですから、AICO というスキームを
ASEAN 政府に作ってもらいまして、これは別名デンソースキームといわれているスキーム
なのですが、今これを AFTA と同じ0から5%の税率で動かしているということです。
このようなことで、ASEAN ではなんとか1番になったかなと、このような自負を持って
いる次第です。
3.DENSO のアジア・豪州相互補完体制
時間の関係で説明省略
4.世界一への挑戦
4.1
環境変化
さあ、これからが大変です。ASEAN 各国は国産化規制を撤廃しました。次に待っている
のは完全自由化です。関税をすべて撤廃しようという APEC のボゴール宣言というのがあ
りまして、先進国は 2010 年、発展途上国は 2020 年までに関税をすべて撤廃しようという
ことです。WTO の新ラウンドが始まって、もっと早くしようなどという話も出ている。い
ずれにせよ近い将来、関税が撤廃される動きになる。一方、また少し昔のガットに戻った
18
ような動きとして、ASEAN と日本とが多国間交渉ではなくて、1対1の FTA を結ぼうと
している。いずれにしても関税は撤廃される方向になっているということは事実です。
そのなかで、重要なのは ASEAN と日本、それから ASEAN と中国、この関係が少し問
題というわけです。
中国は急速に成長しています。それからレーバーチャージが安いというようなことが魅
力的な生産基地として捉えられている。それから市場が大きくて、ポテンシャルがあるも
のですから、魅力的な市場というわけで、各社がどんどん、どんどん出て行きます。中国
が本当にある程度まで発展するというのはどこの国にとっても歓迎なのですね。ところが、
ASEAN の市場が、この FTA によって中国に支配されるということになって、リーダーシ
ップを握られてしまうと、日本が孤立していってしまう。中東の石油はマラッカ海峡、ス
ンダ海峡を通って、台湾を上って日本へ来るわけですから、そうした問題もあるのですが。
そのようなことも考えていくと、ASEAN と中国の FTA で、他の分野はたぶん皆負けてし
まうのではないかと思うのだけど、自動車と自動車部品は絶対負けないと、そういうもの
を築き上げようじゃないかということを言っているわけです。
4.2
世界一へ向けての挑戦
さあ、このような中で、ものすごくラッキーにそれが実現できるようになってきました。
それというのも、ASEAN を1トンピックアップの生産基地にするとカーメーカーがいって
きた。とにかく生産ボリュームがものすごく増える、それから先ほど言ったように、ハイ
レベルな QCD の要求が出てきました。
さあ、われわれ ASEAN のグループ会社にとって、こんなグッドチャンスはない。つら
いけど、きびしい要求だけれども、それを乗り越えたらすごい会社になるぞというわけで、
デンソー・タイランドでは、スローガンに「パラダイムチェンジ」というのを掲げまして、
もうまったく 100%、 180 度会社をガラリと変える。マネジメントスタイルから生産体制
から全部変えると、こういうことでやってきました。その重点活動というのはいろいろあ
るのですが、特にカンバン方式、ジャスト・イン・タイム方式を導入して、ものすごくコ
ストダウンになるのです。私も最初は半信半疑だったのですけれども、ものすごいコスト
ダウンになる。それからサプライチェーンの活動、このようなことをやってきました。あ
るいはここに書いてありませんが、カードボード・シミュレーション、カートンボックス、
廃材を使って、工程設計の段階から全部モデルラインを作って、このようなことをやると
19
ものすごくコストダウンになります。
それから先ほど言ったように、私ども、日本と海外で 62 拠点もあるにもかかわらず、他
の生産拠点のことを何も見ません。皆で同じようなものを作っているのです。これは 60 重
投資なのです。このようなことやってないで、今度は横串に会社を並べておいて、そこに
部品のコストをすべて入れておく。あとはポンとコンピューターを押せば、ああ、これは
タイが一番安い、じゃあこれはタイから買おう。そうしたら向こうでの投資は要らなくな
る。二重、三重の投資がなくなる。例えば世界で一番安い部品を集めてスタータを作った
ら世界一競争力があるはずじゃないかということで、これからはワールド・コンプリメン
テーションをやらなければいけない、ということです。
ただし、一番の問題はいろいろなことをこのようにやっているのですが、まだコストが
下がらない。最後にはやはり開発と設計部門を現地で持たなければなりません。開発と設
計、製造の一体化をすることによってリードタイムの短縮につながって、スピードが生ま
れると本当のコストダウンができるわけです。われわれはテクニカルセンターの設立を検
討中と、ここに書いてありますけれども、日本の本社でまだ了解を取ったわけじゃありま
せんので、ここだけの話にしておいていただきたいのですが(笑)、いずれにしても、この
ようなことをやりながら世界一の製品をつくっていくのだと、このようなことを考えてい
るわけです。
4.3
ネクスト・ステップ:中小企業(SME)サプライヤーの育成
これで我々のデンソー内部の内製部品は良くなりました。ところが、サプライチェーン
活動をやっていて、二次、三次のサプライヤーへ行きますと、私どもに 100 個納めるのに
200 個作らないと 100 個納められない。どういう意味かというと、残りの 100 個は全部不
良品なのです。それではその会社は儲かっていないかというと、べらぼうに儲けているの
です。ということは、我が社は2倍以上の価格で買わされていると、こういうことなので
すね。このようなことをやっていては絶対に世界一になれないのです。したがって、SME
を必ずレベルアップさせなければならない。これが一番これからやらなければいけないこ
とです。こういう裾野産業へも我々のやり方を広げていきたい。
デンソーはパラダイムチェンジで少し良くなってきました。その他の民間部門と書いて
ありますが、他の一次サプライヤー、この辺りを一生懸命に育成しなければなりません。
ただし、この話というのは ASEAN にとっても大変良い話だろうから、ASEAN 政府も今ま
20
で以上に一生懸命こういうことを考えてもらいたい。日本だって、やはり ASEAN で勝つ
ことによって孤立しなくなるという私の考え方からいけば、日本政府もやはりこれを支援
しなければならない。皆で支えて中小サプライヤーを育成していく、これが今後の課題で
す。もしこれが実現すれば、ASEAN の自動車および部品産業は、世界 No.1 になれると確
信しております。
どうもありがとうございました。
21
第1セッション
パネルディスカッション
「東アジアにおけるビジネス戦略と課題」
モデレーター
伊藤元重
東京大学大学院経済学研究科
教授
パネリスト
ジャネット・アン
IBMシンガポール
ウォン・シュウ・ハイ
李 洙喆
魏 少軍
社長
インテル・マレーシア
三星物産株式会社
副社長
大唐電信科技股份有限公司
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総裁
副社長
○司会(伊藤)
これから第1セッションで主にビジネスの視点から、今日実際にビジネ
スの現場で活躍されている方にご登場いただいて、東アジア地域の展開についてお話をし
ていただきたいと思います。
時間が非常に限られておりますけれども、最初に各人にプレゼンテーションしていただ
きまして、それを受けて少しディスカッションしたいと思います。
最初に一言だけコメントさせていただきたいと思います。グローバリゼーション、日本
語でグローバル化といいますが、グローバリゼーションという言葉は、少し誤解を招きや
すいかなと思っております。グローバリゼーションの言葉の意味はグローブというのでし
ょうか、地球というところからくるのだろうと思うのですよね。地球レベルで経済活動が
出てくるのをグローバリゼーションというのだと思いますが、残念ながら、地球という規
模は完全に経済活動が一体化するには大き過ぎます。例えば日本からアメリカやヨーロッ
パへ行くにはずいぶん時差もありますし、距離も時間もかかる。だけど、日本あるいは中
国や韓国、あるいはタイやベトナム、そういう一つ一つの国という単位では、ちょっとこ
のグローバライズした時代に規模が小さ過ぎる。そうするとグローバリゼーションの規模
として今、一番適正で一番重要なのは何かというと、たぶん、地域だろうと思うのです。
北米でもそういう形の地域の一体化が起こっておりますし、欧州でも起こっていて、そ
れから今、今日これからお話させていただくような東アジア地域−アジアってどこなのか
なと考えますと、要するに ASEAN+それよりも東ということだろうと思いますが、東アジ
アという地域が一つのグローバリゼーションの活動の非常に重要な意味を持っているだろ
うと。
もう一つ、グローバリゼーション、グローバル化ということを考える際に非常に重要な
のは、えてしてグローバル化というのは、経済、地域の全体が一体化して同じ方向に行く、
「標準化する」、「一体化する」というふうに単純に考えられやすいのですが、そう簡単な
ものではないのだろうと思います。グローバリゼーションというのは多様で異質なものが
お互いにいろいろな形でぶつかり合う、あるいは融合し合うものです。そういう意味では
東アジア地域は非常に面白くて、いろいろな環境や所得、技術水準、文化的背景を持つ国
が混在していて、それが一つの経済という場で混ざり合っていろいろな活動をする。こう
したグローバリゼーションが持っている多様化という側面は非常に重要になるのだろうと
思います。
例えば、ニューヨークからロサンゼルスへ行くまでにかかる時間は東京からシンガポー
23
ルに行く時間とあまり違わないのですが、ニューヨークからロサンゼルスまでモノを運ぼ
うと思うと、パナマ運河経由で遠く回るかあるいは陸送しなればいけない。けれども、シ
ンガポールから日本にモノを運ぼうと思えば、船で運べるものについては非常に安く大量
に運べるわけです。東アジア地域のなかにいろいろな所得の国が混在しているということ
がさまざまな経済的なオポチュニティ=機会を提供すると同時に、いろいろなむずかしい
問題もそこから生まれてきます。どういうふうに、むずかしい問題や障害を乗り越えなが
ら限りない可能性を実現するのか。今日、これからお話いただく企業の方々は、そういう
ことをすでに実現されていらっしゃるわけで、当然、政策の世界でもそれをさらに加速す
るために先程から話題になっている自由貿易協定ですとか、あるいは包括経済連携のよう
なことが出てくるのだろうと思います。
そういうことで、前半ではビジネスの話を中心にお話をしていただきたいと思いますけ
れども、できるだけ制約をかけないでまず自由にお話をしていただいて、それぞれの企業
が、何をやっているのか、どういうことを考えているのかということをお聞かせいただい
た上でいくつかの大事なポイントについて少しディスカッションしていただきたいと思い
ます。
最後には、フロアからの質問の場もありますので、質問がございましたら是非お手元に
ある資料のなかにあります紙に書いて事務局にお渡しください。
それでは席順でお話をしていただきたいと思います。
24
報告1:「東アジアにおけるビジネス戦略」
ジャネット・アン
IBM シンガポール 社長
泉副大臣、それから経団連の宮原副会長、ジェトロ渡辺理事長、本日はお招きいただき
ありがとうございます。みなさん、こんにちは。私は IBM シンガポールのマネージング・
ディレクター・ジェネラル、アンです。皆様にお会いでき、光栄です。よろしくお願いし
ます。(以上、日本語)
実は、私、日本に3年間暮らしたのですけれども、これだけのことしか日本語で話すこ
とができず残念です。久しぶりに日本に来られて嬉しく思っております。
今日は 15 分以内ということで、非常に厳しい条件を課されてしまったわけですが、なん
とかやってみたいと思います。
IBM は、アジアで非常に活発に展開しておりまして、日本でもかなりのプレゼンスを持
っております。日本の IBM の北城会長は、日本の非常に重要なビジネス団体のリーダーも
務めていらっしゃいますし、それは IBM の韓国、中国、ASEAN でも同じでございます。
<東アジアにおけるビジネス戦略>
ちなみに、IBM の場合、アジアパシフィックといいますと、オーストラリア、ニュージ
ーランドなども含むのですけれども、今日は東アジアに的を絞ってお話をしたいと思いま
す。それから IBM として皆様方のような企業に対して、この先に生じてくるチャンス、そ
して脅威に対抗するためにおすすめしたいことをお話しします。それは、オンデマンドで
あるということです。これは実は、10 年ほど前、IBM 自体が死にそうな目にあったという
経験に根ざしています。
93 年の IBM は恐竜と呼ばれておりまして、大方が IBM はいなくなってしまうだろうと
予想していました。その頃の IBM は、コンピューターのハードウェアの企業として存在し
ていまして、売上のうちサービスの占める比率は 15%しかありませんでした。しかもその
15%はハードのサポートによるものでした。しかし、いま 2003 年の IBM は大きく変わり
ました。技術サービスの会社となり、売上の 50%以上はサービスからの収入となっており
ます。ですので、一つ覚えておいていただきたいメッセージがあるとすれば、これだけ課
題がある変化が起こっている世界においては、改善をしているだけではダメで、改革、変
革がなければ生き延びられないということです。
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IBM は、お陰様で技術サービス会社への変革を遂げることができました。私どもはすで
に国際的な企業となっておりますけれども、のちほど、垂直統合型の会社であった時代、
すなわち、研究開発から設計、開発、製造まですべてをやった時代から、より水平統合型
の企業になっていった歩みをお話したいと思います。
すなわち世界一流のものがあれば、そこを生かすという新しいやり方に切り換えて、そ
してお客様に本当に一番のソリューションを提供しようという会社に、いま IBM はなって
います。
<東アジアの現実>
最初に、このスライドですけれども、東アジアの現実についてはすでに多くの方が触れ
られましたので、三つの点だけにとどめておきたいと思います。まず、東アジアは非常に
活発な貿易圏となっております。例えば世界の人口 55%はアジアにいます。GDP の4分の
1はアジアです。しかし最も重要なのは世銀によれば、東アジア域内貿易の年成長率は 15%
で、これは世界貿易の成長率の倍のペースです。これだけ活発な経済活動が行われている
ということです。伊藤先生が、その経済構造や言語、文化に多様性があるというふうにお
っしゃいました。確かにそれは課題でもありますけれども、同時にかなりのチャンスの源
にもなっています。この多様さを表しているものの一つとして、1人当たり GDP がありま
す。日本と香港、シンガポールは、1万米ドル以上であるのに対して、フィリピン、中国、
インドネシア、インドは 1000 ドル以下となっております。ですので、さまざまな技能、購
買力というチャンスがある、そして同時に安価な労働力も存在するわけです。
もう一つ東アジアの現実として触れたい点があります。ほかの方もそれに触れられてい
るのですけれども、お陰様でシンガポールと日本との間に経済協力のパートナーシップ協
定が合意されております。これは、オープンな形での地域の貿易にはずみをつけるもので
あります。これは企業にとっては本当に喜ばしいことです。
いまアジアの話をすれば必ず中国のことが出てきます。ナポレオンはかつてこのように
言いました。私が直接聞いたわけじゃないのですけれども。(笑)
「中国は眠らせておけ。中国が起きてしまえば世界を揺るがすだろうから」と。
確かに、その通りになっていると思います。それがプラスなのか、それとも脅威であっ
て、そのまま放っておくのかというのは皆さん次第ですけれども、なにしろ世界第4の輸
出国、世界第3の輸入国になっております。そして FDI(外国直接投資)のストックも世
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界第4位で開かれた大きな経済圏となろうとしております。これは止めることができない
だろうと思いますけれども、やはり課題もあります。例えば為替の問題、内外の政治的な
安定、そしてその環境の制約です。
戦略を考えていくにあたっては、企業として中国をはずすわけにはいかないとはいえ、
慎重になる必要があります。
多くの企業が取っているやり方というのは、インテグレートされたバリューチェーンの
なかに中国を入れるということです。すなわち適切なことを適切な場所で行い、適切なパ
ートナーを選んで適切なコンピテンシー(能力)を用いるということ、適材適所というこ
とです。例えばシンガポールの場合には、お陰様で多くの日本企業が、シンガポールにア
ジア本社を置いてくださっております。それは例えば研究開発やデザインの拠点であった
り、あるいはロジスティクスのハブであったり、そこを中心にほかの国々に事業を展開し
ていたりします。そういう意味では ASEAN は中国と並行して、あるいは中国のバックア
ップとして非常に有意義な存在になっているということです。多くの企業がこの点に目を
つけています。
中国の話は、ほかの中国の方にお任せするとして、次に参りたいと思います。いま企業
のオペレーションには、いろいろな圧力がかかっております。組織というのは変わらずに
じっとしていてはできないのです。何も取らない、何もやらないという選択肢は存在しま
せん。こちらのスライドでお伝えしたいのは、要するにいろいろなプレッシャーがかかっ
ているので、企業は決断を迫られているということです。
確実に起こることが二つあります。一つは、グローバル化です。どの国といえども、グ
ローバル化の波を避けることはできません。そして技術の変化ということもなくならない
でしょう。ですから技術の変化、そしてグローバル化にどう対応するかということが課題
となります。
技術について考えるのであれば、技術革新に目を光らせている必要があります。今朝の
新聞を見ましたら、日本の三洋さんが、トウモロコシを材料に使った新しいCDをつくら
れるそうです。いまのCDは、例えば雑誌の付録などでいろいろ使われていますけれども、
環境のコスト、負荷が問題になっておりますが、これは生分解性のCDということで環境
の負荷が少ないということです。こういった動きがあった時に、2、3年たってからどう
しようか決めるということはもう許されないわけです。こうした技術革新というのは非常
に大きな影響をもたらすものだからです。ですが、同時にコストは上がり続けております。
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また、昔ほどの高成長は望めません。ですので、どの組織もどの企業も、その企業あるい
は組織としての生産性を向上させることを考えなくてはなりません。
また、同時に、さまざまな脅威が世の中には存在します。そのため、どこの企業も逆境
に強くなる必要があります。例えば、同時多発テロの影響というのは 2000 億米ドルもあっ
たといわれています。また、今年の SARS の被害は 165 億米ドルと見積もられています。
このように、いかなる企業も、いまマーケットシェアを持っているからといって、それが
いつまでも続くとは考えることができません。
ある戦争のヒーローがこのように言ったそうです。
「勇敢に戦えば死ぬこともある。勇気を持たなければ必ず死ぬ」と。
また、レスター・ソロー教授の本も「勇気を持つものに幸運の女神は微笑む」というタ
イトルになっています。
<生き残り、成長するために必要不可欠なもの >
では、実際にその企業あるいは組織として生き残って成長するために必要なのは次の4
点です。
まず、もっと敏感に対応できるような形にならなければいけない。例えばお客様のニー
ズというのはどんどん、どんどん厳しくなるばかりです。それに対応できなければなりま
せん。また、市場ヘ商品を投入するまでの時間も短くしなければいけません。また、コア・
コンピタンス(最も他社との競争力を持つ中核事業)に絞る必要があります。選択と集中
です。自分達が世界で一番良くできるものに的を絞り、そのほかのものは外に任せるとい
うことです。
それによって合わさった総合的なバリューチェーンでお客様に価値提案ができるという
ことです。そのために、資本の効率あるいは財務上の予測可能性を高める必要があります
し、変化あるいは脅威への備えも必要です。このように、その企業あるいは組織というも
のには変化をする体制が必要なのです。日本語では「改善」とおっしゃっていますが、「改
善」というのは非常にいいことなのですけれど、
「改善」だけでは不十分です。そろそろ「改
革」も必要なのです。
<戦略的に生産性を向上させる手段としての IT >
IT の役割が増してきています。生産性がどのようにして向上してきたかを今日お話する
28
時間はありませんが、組織としての生産性を上げるためには、技術とビジネスを組み合わ
せる、融合させる必要があります。
<どのように組織的生産性を向上させるのか?>
では具体的に組織としての生産性を上げるためにはどうすればいいのでしょうか。これ
は IBM がまさに行っていることですけれども、まず、先を予測し、準備を整える必要があ
ります。いまの状況では、3ヵ月ごとでさえその計画を変える必要があります。そういっ
た変化というものをあらかじめ見込んで、例えばデータ倉庫(データウェアハウス)なり
なんなりをつくる必要があります。変化にすぐに対応できる新しい形での分析指標が必要
です。
二つ目として、水平統合が必要です。日本の企業もそうだと思いますけれども、昔はか
なり垂直統合が進んでおりまして、すべてを1社内でやっておりました。ですが、組織と
しての効率性を考えた時に、たまにはいままでやってきたプロセスで、縦のものを横にし
てみて、もう一度見直して、そして非効率があれば、それについて考えてみます。IBM も
そういったことを行いました。2年前には、私どものサプライチェーンをすべて統合いた
しました、すべての部門をまたがった形にかえました。それだけで 57 億米ドルのコスト削
減ができました。
もちろん、サプライチェーン自体も強化できたわけです。まだまだできることはたくさ
んあります。それは CRM(顧客関係管理)の分野であれ調達の分野であれです。そのため
には、いまあるビジネスの構成要素を一度壊して、本当に核となるものは何なのか、自分
達がベストだと思えるものは何なのか焦点を絞る必要があります。例えば IBM は、昔はメ
ーカーでした。その頃には製造業が優れていると思っていたわけです。ですが、この 10 年
間、私どもはビジネスの中身を見直しまして、世界一になれないところはほかに任せて、
自分達が世界的なものを出せるところだけに特化しています。このため戦略的なパートナ
ーとの関係が非常に大切になっております。そして調達センターというものを私どもは、
各社につくっております。シンガポールにも一つあります。そして地域全体のさまざまな
パートナーから調達することによってその地域内の各国の力をつけることにもなりますし、
コスト効率もよくなり、サプライチェーンの効果も向上、改善しております。
また、銀行の業界でもかなり大きな動きが起こっております。銀行というのは、銀行の
サービスを各地に届けるということに優れておりますけれども、その商品あるいはサービ
29
スを必ずしも自行内で開発する必要はないと思うのです。ほかのところからもってきて、
それを効果的にお客様に届けるというやり方もあると思います。
<オンデマンド・ビジネスになる>
まとめますと、「すべてはオンデマンドのビジネスであれ」というように IBM は訴えて
おります。お客様のニーズにより早く対応でき、いろいろな市場の異なったニーズにリア
ルタイムで応えるということ、そして柔軟なコスト構造を取るということ、中核に集中特
化すること、そして逆境の強さを身につけるということ、戦略的提携を通じたアウトソー
シングへ備えることです。アウトソーシングは人材についてでさえ考えるべきだと思いま
す。例えば P&G は、実は、人材管理を IBM にアウトソーシングしております。また逆境
の強さを身に付けるということに関しては、これは世界中で 24 時間、 365 日対応できる
ようなインフラストラクチャーをつくるということになるかと思います。
最後になりますが、これは私どものパルミザーノ会長(Sam Palmisano)会長の言葉で
す。
「ビジネスプロセスが、隅から隅まで、社内のみならず、パートナー、サプライヤー、
顧客まで統合され、どのようなニーズにも機会にも脅威にもスピーディに対応できる。そ
れがオンデマンドのビジネスである」これこそがいま求められることなのです。
このように、ローカルな世界を見ているのではいけなくて、本当に世界中が指先にある
という考え方が必要だと思います。
皆様、ご清聴ありがとうございました。私の方からは以上です。
30
報告2:「東アジアにおけるインテルの経験」
ウォン・シュウ・ハイ
インテル・マレーシア 副社長
皆さん、こんにちは。まず、ジェトロの皆様に、発表の機会をいただきましたことを、
感謝申し上げます。
これからお話することは、基本的にインテルが東アジアでどういった経験を積んできた
のかということです。
まず、グローバルオペレーションということで最初にお話をいたします。そして次にバ
リューチェーンのさらに上流への移行、さらにはコミュニティとの協力ということでお話
をいたします。
まずインテルの歴史です。1968 年に設立されました。1971 年にマイクロプロセッサ 4004、
−これは 2300 のトランジスタを搭載したものですが−が発表されました。89 年には 486
が発表されました。これは 120 万個のトランジスタを搭載しています。そしてペンティア
ム・フォーになりますと、200 万のトランジスタがチップ上に乗っております。いまはもっ
と増えておりまして、現在では 95 ナノメートルの技術を扱っておりますし、先日 65 ナノ
メートルの技術の発表をいたしました。こうした技術からご覧いただけますように、われ
われはリーダーとなっております。当然のことながら、技術の量も増えております。
まず、私どもの工場ですが、世界各地に設けております。ご覧いただけますように、工
場はアメリカ、ヨーロッパに設けておりますが、組立・テスト工場はアジアが中心となっ
ております。
非常に多様な構成になっておりますけれども、1チームとして業務を行っております。
上海、フィリピン、コスタリカ、マレーシアに組立・テスト工場を持っております。また、
8 月に中国の成都での設立を発表いたしました。そして 2005 年にはこれが稼働することに
なっております。
ご覧いただけますようにチップあるいはフラッシュ・メモリー、CPU、マイクロプロセ
ッサの生産ということだけではなく、あらゆる場所でソフトウェアやコンポーネントの設
計や技術開発なども行っております。つまり、われわれは単に製造を行っているだけでは
ないということです。
さて、われわれのオペレーションの方法ですが、いわゆる柔軟なバーチャル・ファクト
リー(Flexible Virtual Factories)というものを使っております。すべての工場を一つの工
31
場として運営しております。まずはそのために、お互いにまったくコピーできる状態にな
っています。まったく同じ形、鏡の状況になっているということです。つまり、どういっ
た工場においても稼動する、そして部品なども自由に動かすことができるということにな
ります。一つの工場で問題があった時には、その分の稼働はほかの工場にもっていくとい
うことができますので、お客様にご迷惑をかけることなくきちんと市場に商品を提供する
ことができる体制になっております。
さらに、グローバルな専門知識体制(Global Expertise)も整えております。ナレッジマネ
ジメントを行っており、これはナレッジ・インフォメーション・データベースに入ってお
ります。どの工場であれ必要なプロセス、問題、あるいは機器の問題などについて情報を
このデータベースから取ることができるようになっております。どういった対応をほかの
ところは取ったのかということを見ることができるということです。そのために、コンピ
テンシー・ハブというものをつくっております。これは機器にしろほかのものにしろ、な
にか問題があった時には、ほかの工場に対して相談を持ちかけることができる形になって
おります。さらに高度なリモート・コラボレーション体制も取っております。自分のとこ
ろで問題が解決できない時には、ほかのところに助けを求めることができるということで
す。これは電話あるいはいわゆるリアルタイムのコラボレーションもできます。つまり、
カメラで問題をきちんと写し、それをリアルタイムでほかの工場、マレーシアであれフィ
リピンであれ、見ることができます。リアルタイムで問題解決ができるようになっている
のです。スライドの一番下に 24×7 expert とありますけれども、これは昼夜を問わずい
つでも支援を他の工場に求めることができる体制ということです。
それでは次に、バリューチェーンの上流に移るために私たちが何をしたかということを
お話したいと思います。1970 年代、マレーシアはオフショア工場ということではじまりま
した。これはいわゆる低コストがその理由だったわけであります。ご覧いただけますよう
に、工場地を最初に訪れた時には、雨が降って下がぬかるんでいたものですから、このズ
ボンをたくしあげているわけです。これは工場の立地を視察した時の様子でありますが、
機械設備の開発や機械化ということも 80 年代を通して行っておりますし、いまではパッケ
ージの開発あるいはテスト技術の開発、ボードのデザインもしております。あるいはVL
SIのデザインあるいはマイクロチップのデザインも行っております。このようにわれわ
れの施設もバリューチェーンのさらに上流に上流にと行くようになったわけであります。
別の方法で表したのがこちらのスライドになります。
32
すなわち、まずは組立・テストからはじまり、今度はいわゆる製品移転、そして後工程
からの開発、早期段階からの開発、そしてパスファインディングまでやるようになってお
ります。製造部門で開発あるいは製品移転に協力できるということがわかりましたので、
製品移転のためにアメリカから人を送るのではなく、逆にこちらからアメリカに人を送る
ということをするようになりました。そして製品開発の早期の段階から関わるようになり
ました。製品のトランスファーをして、さらに生産性を上げるということで、最初から設
計などを行うようになったということであります。いまでは製品に対してジョイント・オ
ーナーシップを持つということになっております。これは量産に入る際に一緒になって行
うということです。
また、一部、パスファインディングにも関わっております。つまり、機器の設計に影響
を与える機器メーカーに対して発言できるようになっております。製品の開発段階あるい
はこれを考えている段階からわれわれの声が反映されるようになっているということです。
さて、次のテーマであります「コミュニティとの協力」ですが、現地ベンダーの開発が
とても大切だと考えております。地元のベンダーの育成、開発、これは各投資先で行って
おります。機械設備の開発あるいは機械化がかつての姿なわけですが、90 年代に入りまし
てサプライヤーと協力をさらに緊密にし、サプライヤーもグローバル化できるように支援
をいたしました。
すなわち、先程申し上げたどの工場もお互いのまったく完全なコピーであるということ
を可能にするためには、サプライヤーもグローバルでなくてはならないからであります。
私たちの技術プログラムのトレーニングによって現在では、すでに数社がグローバルな能
力を持つようになっております。
先程、現地調達を、特に自動車業界でどうするのかというお話がありましたけれども、
私どもも同じことをしております。過去においては、アメリカとシンガポールが中心であ
りました。ごらんいただけますように、下のほう、プリンター関連部品、ファブリケーシ
ョン資材(半導体生産工程関連資材)、電子部品あるいはプラスチック、こういったところ
でありますが、競争力を維持するためには、やはりコスト競争力を持っていなくてはなら
ない。つまり、コスト削減が必要であるということで、いまではアメリカからもっとアジ
アに軸足を移しております。特に現在はマレーシアですが、フィリピン、中国も視野に入
れております。特に機器メーカーに関しては、かつてはほとんどがアメリカのメーカーで
ありましたが、いまではサポート、開発、デザインにおいて、アジア発のものが増えてお
33
ります。特にマレーシア発のものが増えております。これが大きなコスト削減につながっ
ています。
さらに、研究者あるいは大学などの機関との協力も深めております。東アジア、ASE
AN諸国でのエンジニアリング面での技術力の育成というものが将来的に重要であると考
えています。そこでインテルでは、サイエンス・プロジェクトコンペを行っております。
それぞれの国から優秀な人を2人から3人選びまして、これを国際コンペという形でアメ
リカで行っております。いま 55 ヵ国、約 2000 人が参加しています。そして優秀な人には
アカデミー賞の授賞式──これは科学技術の分野ですけど──に無料で招待をするという
ことも行っております。
さらに学校における科学技術の育成にも協力をしております。学校の先生に対して教育
の中でどのようにPCを使うのかトレーニングをしております。いまアジア地域だけでも
すでに 58 万人の先生がこういったトレーニングを受けております。世界的には 100 万人
になります。
そして大学との協力ということでは、1年間で全世界トータルで1億ドル以上の奨学金
を拠出しております。こういった形で科学技術面での教育の支援をしております。
次に、東アジアではどういった機会と課題があるかということをまとめました。東アジ
アは非常に大きなそして成長する市場であります。そしてこれはこれからも続くであろう
と考えられております。
成長の主要な課題となりますのが、政治的な安定性です。東アジアに対する投資は、中
国だけではなく、既存の市場への投資も拡張されるであろうと考えられております。それ
から優秀な人がこの地域にはたくさんおりますので、こういった優秀な人材を十分に活用
していく必要があります。また、競争力を維持するためには、低コストの機会を活用して
いく必要があります。
どの政府もいま、いわゆるeエコノミー、IT投資を深化させています。そのためには
さらにこのITへの投資をする必要があります。B2Bやワイヤレス通信などをもっと深
化させていく必要があります。インテルは、このなかで非常に大きな貢献ができるものと
考えております。
以上、まとめますと、バリューチェーンをさらに上流のほうに進んでいくということ、
これにはインテルだけでもなく、サプライヤーも含めてグローバルな能力を持てるように
するということが大切だと考えております。これによって地域だけではなく、グローバル
34
に競争力を維持、強化するということです。
またIT投資をさらに強化することによって、いわゆるeエコノミー、e ロジスティクス、
e 通関というものを可能にして競争力を高める。そして最後に、各国が人材育成をするため
に、ヒューマン・リソースのマスタープランが欠かせません。
ご清聴ありがとうございました。
35
報告3:東アジアにおける三星の経営戦略
李 洙喆
三星物産株式会社 副社長
ただいまご紹介あずかりました韓国の三星物産の李でございます。韓国語の通訳がいら
っしゃれば韓国語で喋って、もう少し詳しい発言ができると思いますが、残念ながら韓国
語の通訳がいらっしゃらないということで日本語で喋らせていただきます。もし間違った
表現が出てきましても、ご了承をお願いしたいと思います。
<東アジアにおける三星の経営戦略>
1番目は「世界経済環境の変化と東アジア経済協力」、2番目は「経済協力における韓国
の ISSUE」、3番目は「三星のグローバル経営と東アジア経営戦略」について申し上げたい
と思います。
<世界経済環境の変化と東アジア経済協力>
世界貿易自由化の基調がかなり脅威を受けているということはすでに報道されておりま
す。メキシコのカンクンの WTO 閣僚会議交渉が決裂して、多国間主義から二国間もしくは
地域主義に移りつつあるのです。2番目には地域経済協力体制がますます強化されている
ということで、現に、2003 年5月現在、地域統合体というものが 184 ぐらいあるらしいの
ですが、これが 2005 年には 300 にのぼるという状況でございます。
それから中国の浮上と ASEAN の潜在力がかなり目立っております。世界の工場である
中国の 2002 年の貿易額がすでに 6200 億ドルを上回っておりますし、5億 7000 万人をか
かえている ASEAN の総貿易額も 7000 億ドルにのぼっております。それから ASEAN と
日・韓・中三国の経済協力推進がもっと加速される状況でございます。
<経済協力における韓国経済の問題>
2番目は、経済協力における韓国経済の問題について申し上げます。
韓国の韓日 FTA 対する見方に触れますと、まず域内貿易拡大の必要性が増加しているこ
と及び危機感を感じていることは事実です。
期待感と不安感をそれぞれ持っておりますが、期待感としては、産業構造の高度化、マ
ーケットが拡がるだろうということで期待をかけております。半面、不安感としては、貿
36
易不均衡もしくは技術依存度の深化をかなり恐れております。
そして、韓日 FTA に原則的には賛成しますが、憂慮する声も高いということは事実です。
韓国の最近の世論調査では、FTA 締結時期に対しては、時間をかけて中長期的に推進した
ほうがよいだろうというのが約 40%、日本経済と対等になった時期に進めたほうがよいと
いうのが 16%ということで、いずれにしても5割を超える国民が、日本とのFTA締結に
対して非常に賛成はしますけれども、FTA の時期、方法に対してはかなり心配している状
況でございます。
これを一言で申し上げますと、「明らかな不安のなかに、かすかな希望を持っている」、
そういうふうに表現したいと思います。「不安」というのは輸入が急激に増えること、「か
すかな希望」というのは、日本からの技術協力、投資などに対してはまだはっきりしない
という懸念です。
北東アジアのハブ国家化を韓国政府が発表しました。この内容を簡単に申し上げますと、
ビジネスハブになるというのは物流拠点とビジネス拠点というように大きく分かれると思
います。物流拠点というのは、拠点施設の拡充、制度の先進化、こういった改善をしなけ
ればならないと思います。ビジネス拠点というのは多国籍企業のアジア本部を誘致すると
か、北東アジアの金融センターになるとかという内容ですが、これも地域の開発、環境の
改善がまず進まないといけないことだろうと思います。これはいずれにしても、朝鮮半島
の緊張緩和及び南北経済強化と外国人及び外国企業にやさしい環境づくりが前提になって
おります。
韓国・中国・日本の貿易の現況を簡単に申し上げますと、韓国の対中国貿易現況は、2002
年現在 64 億ドルの黒字を示しております。半面、中国は日本に対しては 218 億ドル、日
本が韓国に対して 148 億ドルのそれぞれ貿易黒字を出しております。それを逆にいえば、
それぞれ相手の国に対して貿易赤字を持っているという話です。
この3国が補完関係にあるのは間違いありません。産業依存度も高くなっています。そ
してこの3国が協力し合えば、経済規模の拡大はもちろん、ますますの経済発展に至るの
は間違いないことでございます。
<三星のグローバル経営と東アジア経営戦略>
三星グループの海外拠点は、67 ヵ国で 116 の海外法人を運営しております。2001 年度
の現地法人の売上は約 300 億ドルぐらいになっております。三星グループの経営実績を簡
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単に申し上げますと、5年間、98 年から 2002 年まで売上は 1.6 倍成長しております。純
利益も 45 倍成長しております。2010 年の売上は、2002 年に比べて 1.9 倍の成長を計画し
ております。約 270 兆ウォンぐらいです。税引前利益は 2.1 倍成長した約 30 兆ウォンを計
画しております。ブランド価値は 2002 年が 83 億ドルでしたが、2003 年には世界 25 位の
108 億ドルに至っております。
もう一つ申し上げますと、2010 年には世界ナンバーワンの製品を 50 個育成するという
計画を持っております。
2002 年の三星グループの総売上は 1168 億ドルです。年度別の海外投資戦略を申し上げ
ますと、80 年代はグローバル化の胎動期です。90 年代前半は海外進出が本格化して、地域
ブロックに対応して現地ローカルマーケットへの参入を目指しました。90 年代の後半にな
ってからは、量中心の海外進出による不振事業の再編及び新たな IT 分野への転換を目指し
ております。2000 年代に入ってからは、地域特性を基にした差別化をはかっております。
会社全体のシナジー国家を高める方向に進んでおります。
次に拠点別の経営戦略を申し上げますと、まず、韓国にある本社、これは世界指向の総
括本部の役割を果たすつもりでございますが、研究開発の拠点、高付加価値製品開発、も
しくは生産、国際経営資源の開発、などがその役割になります。
その次に、中国については、第2の本社の基盤を構築するということで、内需市場を大
事にしますし、それからグローバル製造基地、それから人力活用の拠点になることは間違
いないと思います。
東南アジアは、多目的な生産拠点として活躍しますけれども、迂回輸出型の生産基地、
それから欧米と結びついた部品供給基地として活躍しますし、国内再輸入のための生産基
地、調達、地域統括本部の設置などが主な内容になります。
それから日本は、新規輸出市場及び技術導入拠点として大いに活躍できると思います。
現地 R&D センターの設置、現地マーケットセンターの設置などがいわれますが、韓国と日
本の間で FTA が締結されれば、日本が韓国にとって非常に大きな新しいマーケットとして
現れるのは事実でございます。
アメリカは、現地マーケティング、技術、情報導入拠点として活用します。マーケティ
ングセンター、アレンジセンター、製品開発、デザインを含めてのことです。これらがア
メリカなどでこれから活用していくものだろうと思います。
それから中国にある拠点の内容を申し上げますと、中国にはすでに 68 拠点あり、生産拠
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点が 26 ヶ所ございます。2002 年の売上は 77 億ドルで 2003 年にはおそらく 100 億ドルを
突破するのではないかと思います。約4万 2000 人ぐらいが働いております。いま拠点とし
ては、北京をはじめ、天津、蘇州、深センなどで電子関係の事業をはじめましたが、それ
ぞれの関連会社が生産基盤を構築しております。
中国市場での戦略を申し上げますと、まず、中国生産基地を土台にした世界市場への進
出を強化することです。2番目は、生産拠点の拡大、R&D センターの運営、優秀な人材を
確保すること、3番目は、生産差別化のためのブランド中心の戦略を展開すること、4番
目は、販売戦略を二元化すること。そういうふうに大きく立てております。
<三星のグローバル経営と東アジア経営戦略>
その次に、東南アジアの拠点の現況を申し上げますと、電子関係が主になっております
が、6ヵ国にわたって 21 の拠点を持っております。2002 年の売上は 42 億ドルで、去年と
比べると 38%くらい伸びております。ここには三星電子をはじめとしまして、三星物産、
第一企画、三星火災、三星重工などがそれぞれの国に生産基地を設けております。
東南アジアでの市場戦略を申し上げますと、ブランド価値を高めることと、それから国
家別のマーケットシェア1位の製品及び高級製品の販売を拡大すること、それから関係会
社間のシナジー効果を高めること、その次は優秀な人材を確保すること、そういうふうに
目的を立てております。
時間の関係で簡単に申し上げましたが、結論から申しますと、世界では地域主義が強ま
りつつあります。このようななかにありまして、私ども三星グループは東アジアのそれぞ
れの国がもっている特徴を生かして、それぞれの国がいっそう豊かな国になれるよう結び
付ける役の一助を担っていきたいと思っております。
ご静聴ありがとうございました。
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報告4:「Co-petition(コ・ペティション)
― ビジネスを発展させる効果的な方法」
魏 少軍
大唐電信科技股份有限公司 総裁
私の発表ですけれども、トピックは Co-petition(コ・ペティション)としております。
これは、新しくつくった言葉です。
頭の部分はコーポレーション=協力の部分です。例えば、テーブルの上では握手をして
協力をしながら、実は机の下では足で蹴り合っているということもあったりしますが、
Co-petition というやり方、この新しい言葉を使うことこそがビジネスの展開に効果的なの
ではないかというように今日はお伝えしたいと思います。
まずその前に、私の会社であります大唐についてお話したいと思います。
DTT といいますこの大唐電信が中国の電気通信機器のメーカーとして非常に大切な存在
になっております。98 年に CATT、電信科学技術研究院をベースにつくられまして、いま
は電子通信技術のなかで中国においては 46 年の歴史を持つ最大の研究施設となっておりま
す。
それをベースにしてつくられた DTT は非常に積極的な展開をしておりまして、デジタ
ル・スイッチング、光通信、ワイヤレス通信などですでに大きな成果をあげているほか、
いまよく知られているのが TD-SCDMA です。これは第三世代移動体通信の三つの規格の
一つをつくったものでございます。そのほかマイクロエレクトロニクス、ソフトウェアで
も知られております。
上海の証券取引所に 98 年に上場を果たしまして、現在、子会社が五つ、それから事業部
が七つあります。具体的にはデジタル・スイッチング、それから光通信、ワイヤレス、ソ
フトウェア、マイクロエレクトロニクスなどを扱っております。
事業部では、チャイナテレコム、チャイナネットコム、チャイナモバイル、チャイナユ
ニコムなど中国内外のお客様に対応させていただいております。
従業員数はおよそ 3500 人、ほとんどが技術者です。
私どもは設立以来、かなりの投資を知的財産にしてまいりました。現在、核となる特許
あるいは商標を数百持っております。具体的な分野としてはデジタル・スウィッチング、
移動体通信、ソフトウェア、それからマイクロエレクトロニクスの分野になります。
40
この TD-SCDMA といいますのは、電気通信の歴史のなかの一つの大きな節目になった
存在です。98 年、私どもは ITU(国際電気通信連合)にこの規格を次世代の移動体通信の
規格として提出いたしました。中国の代表としてです。
3年後、ITU はこの TD-SCDMA を第三世代移動体通信の三つの国際規格の一つとして
承認いたしました。また、第 3 世代移動体通信システムの標準化プロジェクトである 3GPP
(3rd Generation Partnership Project)も TD-SCDMA を認めております。
なぜ、この TD-SCDMA が大きな転機だったのかといいますと、まず、この ITU の歴史
のなかで欧米以外の会社あるいは団体が中心となって規格を出したのは初めてだったとい
うこと。しかもそれが途上国であったということ、また、初めて中国が独自の通信規格を
持ったという意味で大きな出来事でした。
そしてこの3つある国際規格のうち、残り二つ、CDMA2000―これはアメリカでよく使
われているものですが―そしてヨーロッパを中心として使われている WCDMA は、いずれ
も FDD モード、周波数分割多重のモードになっています。
これに対しまして、私どもの TD-SCDMA は、唯一、TDD、時分割多重の第三世代の規
格となっております。
つまり、この TD-SCDMA は、唯一、どこの国でも使える規格なのです。
もちろん、そのメリットはさまざまです。同時アップリンクですとか、スマート・アン
テナ、ソフト無線、Baton Handover ですとかいろいろあります。そういった技術的な優位
があります。周波数の効率が高いこと、オペレーションのコスト、そして機器接続にかか
るコストが低いこと、さらに非常にフレキシブルな形でデータ通信に対応できます。第三
世代といえば、やはりデータということも頭に入れておいていただければと思います。
そして TD-SCDMA は世界でいろいろと使われることになります。まず、もちろん中国
で導入されておりまして、人口 13 億人、そのなかで携帯電話加入者の数が2億 5000 万人
となっております。中国で第三世代の技術として真っ先に導入されるのがこの TD-SCDMA
と予想されております。
第三世代の市場全体を見ますと、おそらくその 2002 年から 2010 年までの間には、1兆
人民元ぐらいと見られておりますが、低めに見積もっても TD-SCDMA は 30%のシェアを
取ることになるでしょう。その規模は 3000 億人民元となるわけです。
TD-SCDMA は、中国でつくった規格ですが、ご覧いただけばお判りいただけますように、
ほとんどのヨーロッパの国では TDD のライセンスが出されております。アジア・太平洋も
41
このようになっております。
韓国、日本以外の国々はほとんど、TDD 用の周波数の割り当てを認めております。すな
わち中国だけではなく、ヨーロッパでもそしてアジア・太平洋地域でも、そしてアメリカ
でもこのシステムは使われるようになるということです。
そして私ども業界のパートナーを介しまして、完全なチェーンをつくっております。ノ
キア、シーンメンス、フィリップス、ノーザンテレコムなど世界の有名企業、それから中
国では華為とか、ZTE、UTstracom などともパートナーとなっております。
TD-SCDMA が何をもたらすかということになりますけれども、中国の市場規模としては
600 億ドル、アジア・太平洋地域としては 1000 億ドル、そして世界的には 2000 億ドルと
見積もられております。また、単なる売上だけではありません。例えば雇用も生み出す、
税収も生み出す、それから技術の基盤になります。このように TD-SCDMA のもたらす機
会というのは非常に大きいわけです。
さらに、TD-SCDMA によって世界に追いつくだけではなく、将来の電気通信業界の方向
性を自分達で決めることができる可能性をもたらします。文化、伝統、ライフスタイル、
そのほかを考えますと、TD-SCDMA がより大きな可能性を持つのはアジア・太平洋地域だ
と思われます。この TD-SCDMA は私どもの企業に属しているものではありますけれども、
もっと大切なことはアジア・太平洋地域の一環としてつくられている、それから世界の一
員であるということです。
単なる技術的なものだけではなく、そのほかにも、例えば経済、生活、文化といったも
のも影響されますので、皆がもう少し関心を払うべきではないかと私どもは思います。
こうした 3G(第三世代)の二つの柱となるのがマイクロエレクトロニクスとソフトウェ
アになります。いまのシステムは、ハードウェアとソフトウェアを合わせたものになって
おりますけれども、私どもでは、70%の活動をソフトウェアの開発に費やしております。
ハードウェアは、IC のみ、中核の部分だけであります。コンピュータの主要機能をチップ
に搭載した SOC(システム・オン・チップ)と埋め込みソフトウェア(embedded software)
がシステムの設計、そして開発のコアとなる技術です。
そして IC とソフトの組み合わせを最適化することによって第2世代の移動体通信では奇
跡のようなことが起こりましたけれども、引き続き、第三世代においても新たな奇跡が実
現されることになります。また移動体通信は加速しつつあります。これによって IC、そし
てソフトウェア業界の動きも加速することになるでしょう。間もなく第三世代の移動体通
42
信によって、マイクロエレクトロニクス、そしてソフトウェアの世界にも新しい商機が生
まれます。よりソフトウェアが求められます。ソフト無線、サービス仕様記述言語、リア
ルタイム OS などです。それからさらに複雑で高度なものも求められます。音声+信号だっ
たものが、音声+信号にデータも映像も、場合によっては動画もというふうになります。
これをソフトで処理しなければいけないわけです。
このためパフォーマンスが高い、そして消費電力の少ない SOC(システム・オン・チッ
プ)のプラットフォーム、少なくとも CPU を一つと、複数の DCP(デジタル・シグナル・
プロセッサ)を持ったものが第三世代のシステムの中核となるでしょう。その上でソフト
が走ることになるわけです。
私どもの重要なプロジェクトの一つが、COMIP というものです。これは新しい SOC の
プラットフォームです。32 ビットの CPU と複数の DSP を使います。埋め込みのソフトウ
ェア(embedded software)もあり、特殊な言語も使います。これによって将来の第三世代
サービスのアプリケーションソフトを走らせるわけです。これを発表いたしまして、来年
には間もなく、実際に供用されることになるでしょう。
このソフトウェアそれからマイクロエレクトロニクスという TD-SCDMA の二つの柱を
さらに進めるために、私どもは二つの子会社をつくりました。一つは、大唐ソフトウェア
という名前になっております。こちらは 90 年代のはじめに設立されまして、98 年に DTT、
私どもの会社の傘下に入りました。もともと国連開発計画(UNDP)が資金を出したアジ
ア・太平洋地域のプロジェクトから派生したもので、400 人以上の高度な技術を持った技術
者がいます。中国では、通信分野最大のソフトウェア会社となっております。私どもは引
き続き技術革新を続け、電気通信以外の分野にも事業を展開し、ソフトウェアのアウトソ
ーシングサービスも提供していきます。日本の企業にもすでにこのサービスは提供させて
いただいております。
また、私どもが特に力を入れるのは次世代のパーソナル・コミュニケーション端末のた
めの埋め込みソフト(embedded software)です。
それからもう一つの柱のマイクロエレクトロニクスですが、こちらには大唐マイクロエ
レクトロニクス・テクノロジーという子会社を設立いたしました。96 年に設立されまして、
98 年に私どもの子会社になっております。中国で最大のファブレスの IC 設計企業となって
おります。従業員数は 600 人です。この 600 人のうち 280 人は高度な技術を持ったチップ
設計の技術者です。それからコア・パテントは 40 以上、それから商標などの IC、そして埋
43
め込みソフトウェア(embedded software)を持っております。中国では、この電気通信の
スマート・カード・チップのサプライヤーとして最も重要な存在になっております。ハイ
エンドの SIM/UIM カードチップの 80%のシェアを持っております。
こちらのほうでも引き続き、コスト削減、そして技術革新に努めていきたいと思います。
再構成可能な SOC プラットフォーム、そしてリアルタイム OS、埋め込みソフト(embedded
software)、アプリケーションを組み合わせるということです。そしてこちらも次世代のパ
ーソナルコミュニケーション・ターミナルというのを戦略的な次世代製品と位置づけてお
ります。
もちろん、一社で何でもやることはできませんので、Co-petition、協力と競争というこ
とを考えました。よくいわれるのがイノベーション、革新ということですが、これはもち
ろん企業活動の中核です。素晴らしい人材を持っていてきちんとした組織があって、そし
て長期的なビジョンを持っているということ。そのためにはインスピレーションも必要で
すし、意思も必要ですし、自信も必要です。ですが、それはあくまでも社内のことです。
Co-petition というのが事業の中核だと思います。Co-petition するためには多くのビジョン
が必要ですし、また、十分な理解と信頼が必要です。そして長期的な利害が一致すること、
そして win-win のビジネスモデルが必要です。そのためにはオープンであること、忍耐、
寛容、そして勇気が必要です。技術革新というのはエンジニアの仕事です。そして経営革
新はマネジャーの仕事です。Co-petition というのは起業家(Entrepreneur)の責任です。
ですが、それで十分なのでしょうか。これは十分討議するべき点だと思います。Co-petition、
協力と競争をうまく組み合わせるということはその事業の発展に一番効果的だと思います。
これは起業家(Entrepreneur)の責任でありますが、win-win の関係を生み出すことがで
きますし、新しい世界観を提供できます。
一方、大唐といたしましては革新を続け、そしてパートナーさんとの協力を深化すると
同時に、新しいパートナーとの可能性をいつも見ております。私どもは信頼を得られるよ
うに努力いたしますし、また、私ども持っている競争力をさらに強化したいと思います。
強みといいますのは知的所有権、IC、そしてソフトウェアです。
以上、ご清聴ありがとうございました。
44
全体パネルディスカッション
○司会(伊藤)
それぞれの企業あるいは産業から見たアジアまたはビジネスの変化につ
いてお話をいただきました。私の方からは簡単に印象的なことだけ少しお話させていただ
いて、皆さんとのディスカッションにいきたいと思います。
竹内さんのお話を伺っていて非常に興味深いと思ったのは、いわゆる制度というものが
アジアでのビジネスを変える大きな原動力になっているということです。フィリピンのエ
ビやカニを一生懸命売っていた時代、つまりいかに国内から海外に輸出するのかとか、あ
るいは国産化比率を高めるという時代から関税が非常に低くなって、それが結果的には拠
点としての、竹内さんの例でいうと、タイのようなところの持っている重要性が非常に重
要になってきている、そのような意味で時代は大きく変わってきています。制度が変わる
ということが、結果的にビジネスに非常に大きな影響を及ぼすということの非常にいい例
だろうと思います。
ジャネット・アンさんの話は、非常にいろいろなことを示唆しますが、特に興味深かっ
たのは、IBM という会社は、10 年前にはコンピューターのハードウェアを主に販売する会
社であったのが、サービス中心へと大きく変化していったなかで、おそらく会社の組織と
かビジネスのやり方が非常に変わってきたと思いますが、アジア全体のビジネスのなかで
それがどういうふうに変わってきたのかということを考えさせられるケースだと思います。
時間がなかったので、アンさんはあまり詳しくはお話されませんでしたが、IT というもの
を使って組織をリコンストラクト―いったん壊してみて、そして新しい形に組み換える―
という時に、いまアジアでは機能の活動が旧来の形から分解して国境を越えていろいろな
形でアウトソーシングだとかネットワーキング、あるいはコラボレーションなどというこ
とが起こっているわけですから、この辺りのところをまたもう少しお話いただければあり
がたいなと思います。
ウォンさんはいろいろな形で、アジアだけではなく、世界全体のネットワークの重要性
をお話されました。フレキシブル・バーチャル・ファクトリー(Flexible Virtual Factories)
の絵がありましたけれども、実際の企業活動というものは一つの地域の一つの工場で行わ
れているわけではなくて、24 時間地球が回っているなかで、世界のあちこちの工場で連続
的にものごとが行われています。そういうなかで、いわゆる外との関係、例えばアカデミ
アとの関係、あるいは地元のローカルベンダーを育てることの重要性についておっしゃっ
45
たわけですけれども、そういう広い意味でのネットワークということを強調されたと思い
ます。
三星の李さんのお話の中でいちばん印象深かったのは、韓国にとって中国というのは第
2の基盤市場であるという点です。つまり、三星は中国にあれだけの工場を建てて、あれ
だけの生産を行っている。中国というのは第2の基盤市場であるというようないい方をさ
れていましたが、その点が非常に興味深かったので、今度はそれ以外、例えば ASEAN に
ついてはどのようにお考えになっているのか是非お聞きしてみたいと思います。
魏さんは、中国からいわゆる第三世代の携帯電話の新しいスタンダードが出てきている
という話をされました。大変興味深いお話でありまして、やはり中国の 10 億あるいはそれ
以上といわれている人口の持つパワーというのでしょうか、それが世界の3割を占める携
帯電話のマーケットになりつつあり、技術のイノベーション、あるいはスタンダード確立
という点でも非常に大きな力になるということは非常に面白かったと思います。アジア地
域のいわゆるインテグレーションを考える時に、貿易や投資の自由化だけではなくて、知
的財産権だとかパテントだとか技術ということがおそらく非常に重要になってきたため、
例えばアメリカと中国、日本と中国の間で、技術の問題についていろいろな摩擦のような
ものもあるというようにいわれております。このようなことについてわれわれはどういう
ふうに前向きに考えていったらいいか、これについて是非またお聞かせいただきたいと思
います。
これからまた少し追加的に皆さんにお話いただきたいと思いますが、あまり時間があり
ませんので、このシンポジウムのオーガナイザーから三つの設問をいただいており、これ
についてフロアでパネルディスカッションしてほしいということですので確認します。
一つ目は、「ビジネス拠点としての東アジアの位置づけについて評価してもらいたい。東
アジアというのをどういうふうに見ているのか」。二つ目は、「そういうなかで研究開発、
部品調達、生産、販売、それ以外でも良いのですが、それぞれいろいろな事業において、
地域における最適な戦略について検討してほしい」。最後には、「制度的な枠組としての東
アジアの経済連携の期待についてお話していただきたい」
。この三つのことについてお聞か
せいただきたいと思います。今度は逆に竹内さんからお願いいたします。
○竹内
まず、私どもの東アジアにおける戦略です。東アジアとは広い地域ですが、その
なかでまず ASEAN は一つとみます。中国は中国として、それからインドはインドとして
46
みます。そのなかで、デンソーグループ同士ではいろいろな、先程私が申し上げましたよ
うな連携は一応ありますが、戦略的には今申し上げたようなそれぞれの地域に分けて、や
はりその国で、ASEAN なら ASEAN でビジネスを成功させます。ジェトロさんの理事長さ
んからも、先程、東アジア全部くくった一つの経済連携をやろうとされているというお話
がありましたが、将来的には出てくるでしょうけれども、まだそういうところまではいっ
ていないのですね。
なぜこういうことになったかといいますと、実は、自動車の関連は、進出の動機がまっ
たくよその業界とは違うのですね。その国にバカ高い関税があったり、あるいは規制があ
ったり、それでみな出ていったのです。だから「あなた方、その国のことだけやっておき
なさいね」と、こうやって出ていかされたものなのです。ましてや、自動車ではこうして
出ていった国からよその国に輸出なんていうことは考えられません。おもちゃのモーター
などをつくっているところやミネベアさん、マブチさんは、そうではなくて、日本の人件
費が高くなってきたら、すぐもっと人件費の安いところにいこうと、こんなふうに考えて
生産基地を移していったというのがそういった業界なのですね。自動車は絶対に、日本は
日本、アジアはそれぞれの国のそういう規制があるから出ていくと。それから部品メーカ
ーも先程申しましたように規制を達成するために出ていきます。こんなことをずっと繰り
返してきました。
今度、まったく違うことが出てきたというのが、例えばタイを中心としたところに1ト
ンピックアップ、ディーゼルトラックを持ってきて、日本の生産をやめて、それでよその
国に 80 ヵ国以上に輸出する。こんなことははじめてなのです。家電ではこんなことは当た
り前ですが。ビデオはもう日本じゃつくりませんとか、ぜんぜん違うのです。
そんなようなことで今回、戦略的にも世界的にもはじめて自動車で戦略が行われた。そ
れまでは本当に各国単位だったというところでございます。これから徐々にそういうもの
が増えてくると、日本の自動車業界の空洞化が起こるのかもわからないけれど、一方、実
は日本やアメリカの市場あるいはヨーロッパの市場はたぶん止まるのですね。伸びるのは
東アジアなのです。だから日本は日本でいままで通りつくっているけれど、伸びてきた需
要にどうやって対応するかということであって、自動車業界は日本においては空洞化も起
こらないと、当面、私は安心しております。
それともう一言だけいわせていただいていいでしょうか。
実は、中国ももちろん素晴らしいし、うちも相当中国にいろいろな生産拠点をつくって
47
います。ただ、いま現在、ASEAN のコストのほうが安いのですよ、同じデンソーグループ
内で。それで、もちろんこれから中国というのはものすごい技術力もあるし、日本も技術
協力やっていくのだろうけれども、それでも、さっき私がいったようにもういっぺん裾野
を日本政府も一生懸命バックアップしてもらって、ASEAN もバックアップして、民間もみ
んなでやるということをやり出すと必ず勝てるのです、間違いなく。
結局、ああいうむずかしい目標、要するにあそこに1トンピックアップを持ってくるな
んていうと、いままでとやり方がまるっきり変わってきます。中国の場合は、デンソーに
しても、中国の市場を相手にしているだけなものだから、競争の激しさがまったく違うの
ですね。だから自動車業界は必ず ASEAN が勝てる。もちろん中国だってやっぱり商売、
向こうは向こうで一生懸命やるだろう。先程、魏さんがいわれたように、まったくいい意
味での競争、Co-petition といわれていたけれど、ああいうことが本当にできるのではない
かなと考えて、こういうふうに対等にいくというのが日本にとっても一番いいのじゃない
かと考えております。
○司会(伊藤)
産業によってずいぶん違うのかなと思いました。自動車と家電とはぜん
ぜん違うのだと。これは竹内さんから伺ったのではありませんが、あるデンソーの方から、
デンソーは世界に工場が多過ぎる、とお聞きしました。これは昔、国が全部バラバラにな
っていた時の名残で、これからやっぱり少し統合していかなければいけないということで
す。産業によってずいぶん違うのだろうとは思いますけれど。
魏さん、どの質問でもよろしいですのでお答えいただけますか。
○魏
とても答えにくい課題ばかりなので・・(笑)
東アジアにおける経済発展、これは日本も含めて、韓国、台湾、中国の経済発展を見る
と、類似している側面があります。つまり、私達は常に製造からビジネスをスタートして
います。ビジネスモデルとしては OEM、ODM のビジネスモデルを導入し、ビジネスをス
タートし、資本を蓄積し、ステップ・バイ・ステップで事業範囲を拡大していきます。そ
して生産能力を強化し、独自の設計を行い、独自のブランドを持ち、また生産拠点を別の
国へ移転するといったことも、この 20 年間でありました。
私達が導入しているビジネスモデルは、この東アジア地域においては終始一貫していま
す。製造拠点が東アジアでは非常に強力に整備されており、組立ばかりでなく、部品生産
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についても基盤が整備されています。これはいいことだと思います。システムメーカーに
とっても現地に重要な基盤があって生産するということはいいわけです。しかしシステム
製品のリーダーは東アジアではありません。ヨーロッパあるいはアメリカでこういったシ
ステムは設計されています。ですから単に完成品が東アジアで出来上がる、ウォンさんが
バーチャル・ファクトリーというお話をなさいましたけれども、まさにそういった仮想工
場が東アジアに存在しているということは、マージンが非常に限定されているということ
です。経済の全体の規模も大事ですけれども、グロスマージンという意味では東アジアは
まだ制約されていると思います。このプロセスはさらに 20 年ぐらい続くと思うのですが、
私が想像しているのは、将来的にほかの地域で低コスト、労働コストも低く、世界でも優
秀なエンジニアリングを供給することができる地域が台頭してくると、私達の事業基盤も
そこに移っていくということになってしまうかもしれません。そうなった場合、どう対応
しなければいけないか、これは私達がいまから直面している深刻な課題です。
私達の能力を、それではどうやって高めたらいいのか。それによって将来の発展を単に
これから 10 年先だけではなく、今後、50 年、100 年の発展をどう確保したらいいのか、こ
れが非常に大きな事業上の課題です。一番大事なことは、もちろんこの 20 年間に構築して
きたビジネス、これは良いビジネスですからこれを無駄にすることはできません。しかし、
いまのままで停滞していては成長はできません。私達の事業基盤というものを生産能力を
十分活用した上で、さらに発展させ、より競争力のある産業を発展していくシステム・ス
タンダードをつくり、システムを設計し、そして人材を育成していく。こういった高品質
の製品をつくる人達をもっと育成していけば、将来を確実にしていくことができると思い
ます。
○李
先程の発表の内容と同じく、私どもはすでに東南アジアもしくは中国にかなりの生
産拠点及びそれぞれの事業を展開しております。いままでは韓国よりコストの安い国で生
産したものを第三国に輸出もしくは販売するという戦略はかなり強かったのですけれども、
これから世界のマーケットが一つになるというのは目に見えていますので、その国でその
国民、要するに消費者のために何をしようかということをこれから考えなければならない
と思います。特に東南アジア、インド、中国には、優秀な人材がおりますので、そういう
人材を活用しての事業、もしくは将来は私どもが抱えているR&Dセンターとかを、―限
られた韓国の良い人材からそういうアイデアを得るよりは、豊富な人材を確保して―中国
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などに移して、そこでいろいろ開発したものを、もちろん海外輸出もしますけど、その国
で一般消費者に少しでも得になるものを考えながら、東南アジアにおいて各国の消費者と
ともに繁栄するということを考えたいと思います。
○司会(伊藤)
李さんにフロアから質問がきています。中国の電気産業の集積が進むに
つれて、中国へいろいろな意味で生産拠点をシフトさせていっている。そういう意味で日
本の企業も三星も同じところがあると思いますが、いわゆるリスク要因、例えばこの春に
起こった SARS の問題だとか、為替レートの問題だとか、長期的ないろいろなリスク要因
が考えられるわけです。そういうことに対してどのような戦略あるいは事をいま行ってい
るかというような質問がありますが。
○李
先程、私が発表した通り、中国では 68 の拠点で 26 ヵ所の生産事業を展開しており
ますが、幸いにいままではそういう問題にぶつかったことはございません。特に私どもの
方針としては、中国で稼いだ利益は、そのまま中国に再投資するとはっきりさせています
ので、要するに昔、日本の企業が進出して摩擦が起きた、それと似たような問題は、現在、
起きておりません。ですからもう、別に心配しておりません。
○司会(伊藤) この三つの質問について、ウォンさんのほうからお答えいただけますか。
○ウォン
状況は変わっていると思います。過去、アメリカが一番急速な成長を遂げてい
る経済大国でした。私達の業界において売上の 35%から 40%はアメリカ市場からあがって
いました。いまやこれが変化しており、アジアの成長率のほうがアメリカを上回っていま
す。大体、私どもの売上の 40%がアジア・太平洋地域からあがってきています。状況が変
化しています。アジアといっても、中国、インド、そして先進国の韓国や日本があるわけ
ですが、新興国も急速に伸びています。おそらく ASEAN 諸国も中国の半分ぐらいの成長
率を達成しています。中国だけではありません。GDP の過去8年間の伸び率は8%、今後
も年間で 6.7%伸びると予想されていますが、ASEAN も同じような高成長率が予想されて
います。というのも、ASEAN 諸国の政府は、環境を整備し、いわゆるナレッジベースの情
報通信技術産業を育成し、インフラ整備のための投資をし、学校、教育施設を整備し、先
進技術に対応できる人材を育成しようとしています。科学技術に対して、政府はブロード
50
バンド・インフラの整備も含め多大な投資をしていますから成長は続くと思いますし、ま
た、成長するだけではなく、世界のほかの国々とも競合できるようになっています。国境
のない世界ができているということは、やはりスピードが重要であり、インターネット中
心の経済、eエコノミーが重要であり、eエコノミーを取り込むことができる国が成功し
ていくでしょう。ですから新興国が先進国に追いつくためには、国民がeエコノミーに対
応できる能力を身につけなければいけません。こういった重要性は認識されています。
例えばマレーシアにおいては、このBtoBのeコマースの規格、eロジスティックス、e
物流あるいはe通関の処理も電子的に行われるようになっています。中国が導入し、日本
はすでに実施しており、韓国もフィリピンも開始しています。各国とも体制を整えてサプ
ライチェーンを築く、またすべての体制がより競争力を身につけることができるようにい
ま努力をしています。ですから焦点を絞れば成長を実現することができると思います。
東アジアを論じる場合には、中国を無視することはできません。巨大な市場であり、コ
ストは低く、誰もが進出したがっています。どこでも頑張れば成長はできますけれども、
新規投資案件というのは中国に眠っています。昨年、外国直接投資は 510 億米ドル、そし
て今年も 400 億米ドル実施されています。ただ、中国を一緒くたに取り上げることはでき
ません。チャイナ・プラス・ワンの戦略です。そのプラス・ワンというのは、アジアのど
の国なのか、マレーシアやフィリピンなど低コストの国はそのプラス・ワンになりたいと
考えているわけですが、もっとコストがかかる、日本のような国は、プラス・ワンにはな
れないかもしれません。やはりタイあるいはマレーシアのような国に目を向けなければい
けません。ですからバーチャル・ファクトリーのネットワークを整備することができれば、
世界のほかの国々がかかえている問題にも同時に対応することができると思います。
もう一つ、タイ、中国、マレーシア、フィリピン、インド、こういった国々においては、
やはりテクノロジーが重要です。そして人材を育成していかなければいけない。アメリカ
よりもやはり人件費が安いわけですから、こういった雇用は流れていきます。
例えば日本も、こういった優秀な人材―中国やインドでソフトやハードの開発が行われ
ていますけれども―そういった人材をうまく活用できなければ日本の競争力は失われてい
くでしょう。世界の多くの国々がこういったアジアの国々においてハード、ソフトのみな
らず、サービス産業、例えばコールセンターあるいはバック・オフィス、こういった業務
を利用しています。1日 24 時間、1週間7日間、非常に迅速なスピードで対応することが
できる、迅速に結論をくだすという能力を活用してきています。それができれば勝者にな
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ることができるわけで、同じような質で、同じスピードで問題をこなすということができ
れば、各国の雇用のニーズがこうった国々に移っていきます。
○アン
アジア・太平洋というのは、もちろん IBM にとっても非常に大切な大市場です。
デマンド側、サプライ側、両方においてです。多くのサプライヤーもこの地域に立地して
いますので、そういう意味では、やはり IBM としても非常に大切な地域なわけです。すで
に多くの方もおっしゃっている通り、中国は市場として非常に大切です。日本も重要です。
昔は「日本が風邪をひくと皆が肺炎になる」というふうにもいわれたものです。ですか
ら是非日本には風邪をひかないでいただきたい、回復して残りの私たちを引っ張っていっ
ていただければと思うわけです。
中国が台頭しているということによって1+1=3以上の効果を出してくれるのではな
いかと期待しております。東アジアについては以上です。
それから IBM の戦略の重要な点といたしましては、私は製造業に関わっているわけでは
ないので、その辺りのところはあまりお話ししていません。私どもは、やはりお客様のニ
ーズに的を絞ります。皆様方が市場の中で競争していくためにどのようにして変わってい
けるのか、そのお手伝いをしたいということです。ビジネスの変革が鍵になります。どの
ようにしてコンピテンシー、基礎能力というものをつくっていくか、各国での人材のスキ
ルを上げていくかということになります。
そして場所によっていろいろな人材、スキルがあります。例えば日本ではゲームが非常
に盛んであるということで、やはりそのゲーム関係の能力は、じゃあ日本でやろうかと。
韓国ではインターネットが非常に早く普及したと。そのためにいろいろなコンピテンシー
があります。ASEAN のほかの国々は、国によっていろいろな能力があります。例えばシン
ガポールは、おそらくマネジメント・コンサルティングといった分野で優れているのでは
ないかと思います。
それから例えばマレーシアではバックオフィスがあったり、会計部門があったり、コー
ルセンターがあったりといったことがあると思います。ですので、どこが何が強いのかと
いうことをきちんと特定するということが必要です。もちろん、競争することもあります
けれども、ただ低コストだけを考えるのであれば南アフリカにいけばいいかもしれません。
でもそうすると必ずしも求めるようなスキルや人材はいないかもしれないわけです。です
ので、やはり、適正な能力、適正な人材をそろえるということが大切だと思います。
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例えばシンガポールでも、大きなカスタマー・サポートセンターをつくるということが
できるわけです。そういう意味で、人的資本といったものをつくることができるような場
所であったわけです。アジアのなかに様々なチャンスがあり、世界的につなげるために、
例えばそういった形で活用していただけるわけです。IBM はプライス・ウォーターハウス・
コンサルティングを買収いたしましたので、そういったサービスにおいても貢献できるわ
けです。
また、もう一つ大切なのは、サービスを提供するためのインフラからつくっていくとい
う側面です。グローバル化が進んでいる中では規模も必要です。規模が大きければコスト
を下げることもできるし、それだけではなく、より多くの能力、コンピテンシーがつくの
で、地球規模でインフラをつくって、お客様がどこに行ってもどこでもサービスできるよ
うにするわけです。例えば P&G のお話を先程いたしましたけれども、私ども世界的にサポ
ートを展開していきます。シンガポールにある DBS 銀行も私どもにアウトソースしてくだ
さっており、私どもは IBM としてサポートできます。そういったことが私どもの主要戦略
の一つです。お客様がその国にいようと、それから地域的に展開されようと、グローバル
に展開されようとサポートするということです。
それからいまアジアで考えなければいけないのは、特に日本の方々にお話したいのは、
やはり ASEAN というチャンス、東アジアというチャンスがあるので、いまオープンでな
いというのが非常にあぶないと思います。例えば私の携帯電話は、日本で使えないのです
よ。ほかにもいくらでも言いたいことはありますが、日本の皆さんもそれ十分お判りだと
思います。
いま、アジアできちんとした規格をつくる、TD-SCDMA であろうが何であろうが、アジ
アとしての標準化が必要だと思います。オープンな形で標準化をしなければ本当にグロー
バルになる、そのなかでリーダーとして勝っていくということはできないと思います。日
韓中が協力し、オープン・ソース、リナックスベースのものをつくるという活路があるそ
うですけれども、それは非常に大切だと思います。IBM もオープン・スタンダードのイニ
シアチブを強く支持しております。それからイノベーション(革新)が必要です。すでに
ほかの方々も触れていらっしゃる通りです。
革新というのは、必ずしも技術の世界だけのものではありません。ビジネスモデルの革
新あるいはプロセスの革新もあります。例えばeベイは、もともとオークションという方
法で大成功をおさめたわけです。いろいろなモデルで、もちろんうまくいかないものもあ
53
るとは思いますけれども、アジア人は、革新をして新しい事業をつくっていくのに優れて
いると思いますので、その努力を続けていけば、必ず芽が出ると思います。IBM にとって
もイノベーションは非常に大切です。私どもは各地にあるさまざまな才能、人材、特にア
ジア・太平洋地域の人材を活用し、イノベーションをプロセスにおいて、あるいは技術に
おいて実現したいと考えております。
それからエンド・トゥ・エンド(end to end)のバリューチェーンというものが非常に大
切です。先程申し上げましたように、ビジネスの要素を壊すという覚悟が必要なのです。
自動車産業であろうと、金融サービスであろうと、どのような産業においてもいまの変化
から逃れる人は誰もいません。ですので、どのような形で壊すという作業が行われている
のか、それによって自分達のコア・コンピタンス(最も他社との競争力を持つ中核事業)
はどこなのかを見い出し、戦略的提携が必要なのはどこかを見い出した上で事業を再構築
し、そしていまの動きに乗ることが必要だと思います。企業というのは、世界レベルでも
のごとを行っていこうということが活路の中心であるわけです。そして世界一流のものが
出せないのであればほかに任せようと動くわけです。そうしますと、人も資本も動く、生
産拠点も動くと、適切なところに動いていくわけです。
このように変化が起こる時に、その対応として、変化はよくないことだというふうに逃
げてしまう手もありますけれども、やはりそれを活用するということがいいと思います。
○司会(伊藤)
先程一つ、フロアからのご質問をご紹介しましたが、もう一つだけご質
問を読ませていただいて、皆さんにお答えしていただきたいと思います。
「東アジアの自由貿易地域ができつつあるなかで、優位性に基づく東アジア諸国の分業
ができると思われますが、各国どのような産業で競争力を持つというふうに考えられます
か」と、こういう質問です。
竹内さん、魏さん、そして李さんについては韓国について、ウォンさんにはマレーシア
について、アンさんにはシンガポールについてお答えいただきたいのですが、いま地域の
なかで統合が進んでいる、そして国際的な分業が進むなかで、各国の持つ強み、弱みとい
うものがより明確に見えてきてしまう。そのなかで各国の強みというのは何なのかという
ことを皆様方、教えていただけるでしょうか。それぞれのお国についてお話いただければ
理解が深まり、将来どういった国際的な分業があるのかが見えてくると思いますが、いか
がでしょうか。竹内さん、お願いいたします。
54
○竹内
タイの強みといいますか、ASEAN についてです。私はインドネシアのほうにもい
たのです。大体皆さんには、 「どこの国がいちばんよく働きますか」とかあるいは「働く
ことに対するケーパビリティがありますか」なんていうことを聞かれるのですが、これは
一緒です。ただ一つ面白いなあと思ったのは、私どもはいろいろと教育を座学でやるので
すね。座学でやってもほとんど聞かないのです。それで、何をやるかというと、例えば先
程申しましたカンバン・システムだとかそういうものを導入していきます。これがどんど
ん、どんどんよくなってくると、勉強したくなってくるのですね。そういうところがあり
ます。
それから、段ボールや廃材を使って、今度の新しい車に対するオルタネータのラインを
皆でつくらせています、全員参加で。そうすると、いままでタイの人から「改善」なんて
いうことを一回も聞いたことがないですが、これが一つ興味を持たせることをやるとバン
バン改善の案が出てくる。自分らでどんどん、どんどん会社をよくしていくと、こういう
ことになるのですね。
いまのタイの強みは、本来はそういうことに積極的ではないんだけど、興味を持たせる
教育の仕方をしていくと、ものすごくいろいろな改善が出てくるし、そういうことで会社
がどんどんよくなっていく。そういうことで、いまにたぶんタイを中心とした ASEAN が、
やっぱり自動車では一番強くなるのではないかなと思っております。
私は実は、タイにいますので、日本と FTA あるいは CEP を結んだとしても、タイを応
援しますので、よろしくお願いします。(笑)
○司会(伊藤) FTA は両方にメリットがある win-win ですから、どちらを応援してもい
いと思いますけど。(笑)
○魏
中国の場合は、長所としては、まず市場の規模、技術の集積、またヒューマンパワ
ーをあげることができるでしょう。非常に優秀な人材を見つけることができます。市場も
見つけることができます。そして産業のシステムとしていろいろなコンポーネントがそろ
っています。しかし体制を見てみますと、―これは政治的ということではなくて、経済的
な体制あるいは企業の経営ということを考えてみますと―まだここは不備だと考えており
ます。
55
中国政府が金融市場を開放したことは嬉しく思っております。また、国有企業に対する
外国からの投資を受け入れるようになったことも、嬉しく思っています。ただ、経営とい
うことではまだスキルがありません。きちんとスキルを持ったマネジャークラスの人はい
ないわけではありませんが、そこが中国の弱点でしょう。
わが社の場合、また同様の企業の場合、おそらくできるだけ門戸を開くことが大切だと
思います。例えば TD-SCDMA の話をしましたが、これはオープンなものにしました。オ
ープン・スタンダードだからですが、これを事業としてもオープンに―外部から財政な支
援を受けただけでなく、経営ということでも外から受け入れる―ということをしました。
そうすることで TD-SCDMA に対して私どものボスである会長、ドクター・リーが―この
規格の父といわれている人でありますけれども―一緒に協力をしてこれを進めていくこと
ができる。そうすれば win-win になると思います。
○李
日本の皆さん方にとって、いまは韓国に先進技術を移転する絶好のチャンスだと思
います。おそらく両国の首脳が FTA を使ってかなり協調していますし、2、3年後には締
結に至ると思います。ざっくばらんに関税障壁をなくしますと、韓国は日本よりすべての
生産コストが安いというのは皆さんご存じだと思います。先進技術を韓国に移転して、そ
こで生産基地を設けて、そこで中国に向けていろいろ訓練を重ねて、私どもと一緒に中国
に進出すれば、リスクも少なくなるし、それからますます面白い事業ができるのではない
かと思います。
私どもは先程申し上げました通り、中国には相当の生産拠点を移転しておりますので、
日本で素材、部品を輸入して中国へ送るよりは、韓国でそういうメリットがあるものを生
産して、中国に直接持っていったほうがよろしいのじゃないかと思います。
ただ、日本の新聞にはかなり大きく報道されましたが、いま韓国の政治疑惑それから労
使問題が非常にきびしく報道されていますが、それは一時現象で、特に私ども三星グルー
プは一切、組合・労使問題はございませんので、心配せずに、いつでもいらっしゃってく
ださい。(笑)
○ウォン
マレーシアは 30 年の経験を持っております。ペナンは東洋のシリコンバレーと
呼ばれてきたわけであります。すべて多国籍企業です。アメリカだけではなく欧州の企業、
日系企業などがすでに長年事業をしています。ですからそこでのリソースを見ただけでも、
56
何が要求されるのか、どう経営するのか、どういうふうにものごとを進めればいいのかに
ついてすでに知見があるということであります。
また、政治的な安定性もあります。政権交代が最近ありましたが、それでも投資あるい
は予測可能性ということではまだ成長の可能性は大いにあります。
また、マレーシアには天災がありません。火山もないし地震もない。天災はない国です。
また、国民は多彩な文化を持っております。中華系、マレー系、インド系、そして中国語
を話す人達がいる。そして拡大のための踏み台になれるというふうに思っています。フィ
リピンであれ、中国であれ拡大の際に、マレーシア経由で中国の工場の経営を任せる人達
を出すということを多くの多国籍企業がやっています。つまり、この地域の成長の拠点に
なれるということであります。また、技術者も多彩です。地元の人もいますし、外国に留
学をした―これはカナダ、アメリカ、英国、日本、台湾、インドなどですが―、こういっ
た大学を卒業した非常に多彩な技術者がいます。それだけ世界を広くわかった人達がそろ
っているということです。ですから中国はもちろん成長するでしょう。そしてコスト競争
力ということで見ますと、例えばマレーシアと中国を比べてみますと、都市部においては
マレーシアは中国と同じかあるいは低いかもしれません。もちろん農村部にいけば中国の
ほうが生産コストは低いかもしれません。しかし、人々の豊かな経験ということを考える
と、やはりチャイナ・プラス・ワンの「ワン」はマレーシアだろうと思います(笑)。
○アン
シンガポールで最も重要なのは、ASEAN であるということだと思います。それが
とても重要であるということを私どもは認識しております。ASEAN がシンガポールの背後
に控えているということです。ですから、日本とあるいは中国と手を結んでいけば、非常
に強力なアジアができあがると思います。
さて長所ですが、一つは、非常に安定した政治あるいは社会があるということです。つ
まらない、退屈とさえいえるぐらい安定しております。ですが、娯楽もそろっています。
鍵となるのはこの 30 年、シンガポールが多くの多国籍企業の拠点になっているということ
です。日本、韓国、ヨーロッパ、アメリカの企業の拠点となっています。つまり、経営の
面でも中枢になっています。また、シンガポールに住むことでアジアを知ることができま
す。IBM も地域本部を置いておりますし、ほかの企業もそうです。また、デザインセンタ
ー、企画・コントロールセンター、マネジメントセンターをシンガポールに置いている企
業はたくさんあります。また、製造の面でも間違いなく、特にハイエンドの分野では非常
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に強い拠点となっております。ですからサービスだけではなくて、生産という面でもシン
ガポールはハイエンドのものに関しては非常に強い拠点であり得るということになります。
ただ、忘れはならないのは、シンガポール政府は過去の要素だけで成功を将来も維持で
きると考えてはならないということです。経済審議会などもできておりますが、それによ
って政府もシンガポールをもう一度見直して再活性化しようとしております。つまり、こ
れからの成長のために、さらにどういった柱が必要かということを考えています。金融あ
るいはライフサイエンスあるいはヘルスサービスなどが、そのなかで指定されております。
そしてこういったところへの投資もはじめています。すでにライフサイエンスの分野でも
成功が見られております。
多くの方が指摘しているシンガポールの長所は、東西の接点であるということです。特
に中国との接点が強いということ。中国とインドあるいは日本、韓国を見ますと、東西だ
けではなく、南北の接点でもあるということになります。そして日本とシンガポールの間
では、経済連携協定かできあがっておりますし、米国とも FTA に署名しましたし、さらに
経済協力は加速的に進むというふうに考えております。またインドとの間でも FTA の話し
合いが進んでおります。これによって、南の方との経済連携も進むと考えております。
もう一つの長所は、ロジスティックスの面です。世界第一級の港があります。これでビ
ジネスを運輸の面でもそのほかの面でもサポートすることができております。それからも
う一つ、シンガポールは電子政府という点では世界一であります。IT インフラが整備され
ています。ですから通信あるいはネットワークという意味でいろいろな企業にとってのハ
ブになる IT インフラが整っています。
○司会(伊藤)
アンさん、ありがとうございました。
まだ少しお話をお聞きしたいところですが、セッションはこれで終わりにしたいと思い
ます。最後に二つだけ、印象的なことをお話したいと思います。
一つは、この地域の規模の話で、これは何人かの方からお話があったのですが、私の手
元にあるデータですと、NAFTA=アメリカ、カナダ、メキシコが 37%、それから EU、西
ヨーロッパが 27%、そしていわゆる東アジア―今日のテーマですが―のシェアが 21.5%、
これらを足すと 85.5%です。これは 2001 年の世界の GDP に対するシェアで、要するに何
を言いたいかというと、北米と欧州ではこういう形のインテグレーションがどんどん進ん
でいて、冒頭に申しましたようにアジアの特性、地理的な近さだとか、多様性、あるいは
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いろいろなことを考えたら、ここにやはりより深い形のインテグレーションができるのは
一つの必然であります。今日は前半のセッションではビジネスの立場からそういう動きを
議論していただきました。後半は制度的な話になると思いますが、ある意味では必然的な
流れのなかで、われわれはこれをどういうふうにとらえるのかということが問われている
のだろうと思います。
それから二つ目、セッションをはじめる前にはあまり私の問題意識にはなかったのです
けれども、今日お話を伺って非常に大事だなと思うのは、いまわれわれが議論しようとし
ていているのは、モノや投資、従来の貿易とか投資とかいうことを超えた、もうちょっと
広いダイナミックなエコノミック・インテグレーションだろうと思うのです。特に重要な
のは、イノベーションということだろうと思います。イノベーションというのは決してハ
イテクレベルの最先端の技術だけではなくて、例えば地域の供給サプライヤーの二次的な
レベルの向上から、あるいはヒューマン・リソース、人的な資源の向上まですべて含むわ
けです。たまたま先週読んだ本で、ボーモルという大変有名な経済学者の本のなかでこん
なことが書いてありました。技術とか知的財産権というと、それをパテントでしっかり保
護して、開発した人には独占利益を与えて、それをインセンティブとして技術革新をすれ
ばいいんだという考え方が非常に強いと。いわゆるモノポリー理論というのでしょうか。
いまでもそういう議論は非常に多い。ただ、事実を見るとたぶんそうじゃないだろうと。
技術というのはどんなにパテントで守っても必ず漏れていくものですし、それからそうい
うものを独占しようとすると、実はかえってよくないのだと。ボーモルの理論なんかを見
ていると非常に大事なことというのは、技術というのは普及、波及するから実はイノベー
ションを引き起し、しかもそれがまた自分にはね返ってくる。もちろんそうはいっても、
技術をどういうふうに扱うかというのは非常に大事だと思いますが、イノベーションが地
域のなかでどういう形でグローバルに波及しインタラクションを起こすかということが非
常に大事になってくるだろうと思います。もちろん貿易も投資も大事で、そういう次元ま
で含めて、これから 10 年、20 年、東アジア地域でどういう形でダイナミックに経済を発展
させていくのか、というような話ができたのではないかと思います。ここで一応最初のセ
ッションは終わりにさせていただいて、斉藤さんに司会のバトンタッチをしたいと思いま
す。
皆さんどうもありがとうございました。
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第 2 セッション「アセアン単一市場の形成と東アジア経済連携」
基調報告
「日・アセアン包括的経済連携の理念と課題」
山澤 逸平
国際大学 学長
ご紹介いただきました山澤です。今日は大勢の皆様にお集まりいただきまして、ありが
とうございます。
今年の9月まで私はアジア経済研究所の所長を務めまして、その最後の1年間、日本・
ASEAN の研究機関の共同研究プロジェクトに取り組みまして、その結果として日本・
ASEAN 包括的経済連携の理念と課題という提言をまとめました。これは ASEAN10 カ国
それぞれからトップの研究機関に集まっていただき、研究所長ないしは副所長の方々に参
加してもらって作ったものです。本年7月にホテルオークラで2日間の会議をしました。
報告書は、皆様に配られていると思いますが、
「共同研究報告書
日・ASEAN 包括的経済
連携の理念と課題」、これは日本だけでつくったものではなくて、日本と ASEAN とで共同
でつくったということに特徴があると思います。
報告書は英語・日本語でありますし、その基礎になっているものとして、これもまた共
同の研究計画、1つは英語ですが、「Toward ASEAN-Japan Comprehensive Economic
Partnership」、これは共同報告だけではなくて、各国がこの ASEAN・日本包括的経済連携
をどういうふうに見ているかということをまとめています。ご覧いただきますとわかりま
すが、見方は ASEAN10 カ国、日本それぞれに違いがあります。こういうことにもしご関
心おありの方があればご覧いただければと思います。
また、こういうことの基礎として「ASEAN-Japan Competitive Strategy」、競争力戦略
レポートというのを作りまして、各国が競争力強化に向けてどのように取り組んでいるか
ということをまとめました。
本日は、それを大変短く簡潔にまとめて報告をさせていただいて、その後のパネルディ
スカッションにつなげようと思います。
1.日本 ASEAN 包括的経済連携の経緯
まず、ASEAN・日本の包括的経済連携の経緯ですが、昨年の1月に小泉総理がシンガポ
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ールで日本・シンガポールの包括的経済連携を調印された時に、それを ASEAN の他の国
にも拡大しようということを提案されて始まったものです。資料にあるような経緯で進ん
できまして、2003 年中、今年中かけて、日本・ASEAN の政府会合で議論の詰めが続いて
いました。その中で私どもも研究所レベルで、シンクタンクのレベルで ASEAN の研究機
関に呼びかけて共同研究をしたわけです。その結果を7月にまとめまして、9月の日本と
ASEAN の経済大臣会合へ提案をしまして、10 月の首脳会議で交渉開始が合意されたとい
う経緯があります。
2.日 ASEAN 関係再強化の試み
もっとも、日本・ASEAN の関係と申しましても、これは今始まったことではありません。
日本と ASEAN は 30 年以上に及ぶ緊密な貿易、投資、経済協力関係を築いてきているとい
うことをご存じだと思います。日本の主要企業は、1960 年代から既に ASEAN 各国にビジ
ネス網を構築してきていまして、もう既に主要な ASEAN 諸国にはそれが構築済みです。
そして、今盛んに喧伝されます、中国に進出したと言われますが、ASEAN と中国は実は多
くの分野で競合しています。つまり、同じようなものを輸出して、アメリカ、ヨーロッパ
等で競合しているわけです。それに対して日本は、ASEAN とも中国とも大変補完的な関係
が強い。もちろん、ASEAN、中国とも日本の主要なパートナーであるという事実が重要で
あろうかと思います。
3.貿易額の推移
以下、幾つかのデータをお示ししますが、これは日本、ASEAN、中国の間の貿易額が 1990
年から 2000 年にかけてどう推移したかということを見ています。これをご覧いただきます
と、中国と ASEAN の関係、これは大変中国が ASEAN に進出していると言われますけれ
ども、まだまだ小さいものであって、日本と ASEAN の方が強い絆を持っているというこ
とをご覧いただけると思います。日本、ASEAN の関係に比べて中国、ASEAN は 90 年で
10 分の1、2000 年でも4分の1に過ぎません。日中関係はもちろん 10 年間に4倍強も拡
大しましたけれども、なお日本、ASEAN の関係の2分の1から3分の2のレベルであると
いうことが数字をご覧いただくとわかります。
4.貿易結合度指数
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次は、日本と ASEAN と中国の間の貿易がどの程度緊密になっているかということを計
ったものですが、この数値、貿易結合度というのは1が平均でして、例えば日本とヨーロ
ッパの諸国との貿易結合度は大体 0.3 とか 0.4、そういうレベルで、これに比べると、こ
こはもちろんみんな1より大きいのですが、日本と ASEAN は 2.5 というような高さでほ
ぼ安定しているのに比べて、中国と ASEAN は1を若干上回る程度で、まだまだ貿易の結
合度がそれほど高くはない、平均レベルです。日本と中国の間では 10 年間で急増をしまし
たけれども、日本の輸入の方が輸出よりも高いレベルです。
5.競争力のステージ(2000 年)
これは私どもが先ほどご紹介申し上げた競争力戦略のレポートでつくった印象的な図で
す。一番左の端、それぞれの図で3つの種類の商品について左の端からずっと高さをとり
ましたのは、輸出と輸入の比率をとったものです。輸出/輸入というようになっていまし
て、それを対数化していますが、通常はいわゆる雁行型経済発展というもので、新しい産
業が始まると初めは輸入から、したがって分母の方が大変大きいわけですが、それがある
ところまでいくと、輸入と輸出が等しくなり、さらに輸出産業化して、そしてまた競争力
が落ちてくるとまた輸入産業として逆輸入ステージに戻ってくるという形になります。こ
れは各国がどのくらいのレベルに来ているかということを並べたものでして、一番下の図
ですが例えばアパレルでは、米国、日本はもう既にネットの輸入国になっていますが、韓
国、台湾、シンガポールも、もう下り坂の方に来ています。それに対して中国、ASEAN 諸
国はちょうど真中か少しその手前というところにあります。パソコン周辺機器でも同じよ
うに日本、米国は既に逆輸入。それに対してシンガポールや韓国、台湾は頂上のところに
近くて、ASEAN と中国はそれぞれ上り坂のところにあります。家電部品になると、今度は
米国だけが逆輸入で、日本はまだ上の方からちょっと下がりかけたところ。韓国、台湾、
シンガポールは上がりかけてトップに到達しつつあるところ。ASEAN と中国はまだ輸入か
ら輸出に変わりつつあるところです。要するに ASEAN と中国はどこでも大体同じような
ところにいて、非常に競合関係にあるということをご覧いただけます。それに対して日本
は ASEAN とも中国とも大変補完的な関係であるということになります。
6.日−ASEAN・CEP の理念
以上のような準備のもとで日本・ASEAN 包括的経済連携とはどういうものなのかという、
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まずビジョンを打ち出そうということになりました。
まず第1に、今まで日本と ASEAN は 30 年にわたって緊密な関係を持ってきた、こう申
しましたけれども、それは基本的に日本と個々の ASEAN の国との間の関係であったわけ
です。従来の2国間の関係とは違って、これからは日本と ASEAN 全体、つまり統合 ASEAN
との間の経済連携を目指す、これが日本と ASEAN の包括的経済連携の一番重要なメッセ
ージであろうと思います。
そういうことによって新しいビジネス機会が創出できる。もちろん、現実の形として日
本とタイ、日本とフィリピン、日本とマレーシアという国、2国間での自由貿易協定とい
うのはそれなりの効果を持つでしょうけれども、しかし、もう既にそれぞれの国との間で
日本はビジネス関係を持っているわけでして、やはりもっと大きな効果というのは ASEAN
全体が1つになって、それと日本との関係という形でより大きなビジネス機会ができてく
るわけであります。そこで、ASEAN は単一市場の形成に向けて保護主義から競争をつける
政策に転換をする必要があります。他方、日本は、10 年以上の経済の低迷に苦しんできま
したけれども、いまようやく曙光が見えていろいろな構造改革に取り組んでいます。それ
が ASEAN の諸国にとって、どういう意味を持つかということを日本はこれから説明して
いかなければならないと思います。
7.日−ASEAN・CEP の理念(続)
ここで日本対 ASEAN 全体といっても、ASEAN の中ではこれまた大きな格差があります。
先発の ASEAN 諸国と後発諸国との間で大きな格差がありまして、やはり、その後発
ASEAN 諸国のハンディキャップを克服するようないろいろな支援プログラムと制度的な
プロセスをそのなかに織り込んでやらなければならない。これもやはり日本・ASEAN 包括
的経済連携の重要な一部分であろうと思います。それでなければ、CLMV、後発 ASEAN
諸国にとって日本・ASEAN といっても大した意味はないということになりましょう。そし
て、それは貿易投資の自由化のみならず、円滑化、経済技術協力など包括的に取り組むと
いうことになると思います。
8.日 ASEAN・CEP の課題1:統合市場ベースでの効率的分業体制
以上が日本と ASEAN の包括的経済連携の理念、ビジョンです。そこでは具体的に何を
するのか、それを7つの課題にまとめてみました。まず第1の課題は、統合市場ベースで
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の効率的な分業体制を作るということです。日本と ASEAN が貿易、サービス、投資の障
壁を完全に撤廃すると、ASEAN 域内および ASEAN と日本との間で、より効率的な国際分
業が構築できる。そして、これは先ほどご紹介した報告書の中にいろいろのモデル等をつ
くって数値的にも予測をしているのですが、もう一つは、既に日系企業、前のセッション
でデンソーからご報告がありましたように、従来の2国ベースの分業から ASEAN 大の分
業に既に移りつつあるわけです。しかし、まだまだ ASEAN の統合市場というのは出来上
がっていませんから、日本はそれをプッシュしなければならない。
9.日 ASEAN・CEP の課題1(続)統合市場ベースでの効率的分業体制
そして、こうした可能性は ASEAN の中での生産の効率性を高め、期待利潤率を高め、
ASEAN への直接投資をさらに多く引きつける動態的な効果を生みます。我々はかなり大胆
な仮定を置いてそういうモデル分析を行いました。これはいずれもこの中に入っておりま
す。それは先行する中国・ASEAN の FTA の効果を凌駕するという結果を得ています。
10.課題2:単一 ASEAN 市場の完成
課題の2は、
そのためにはまず単一 ASEAN 市場というのを完成させなければならない。
これは日本の問題よりはむしろ ASEAN サイドの問題ですが、ASEAN の自由貿易地域、
AFTA というものがあります。これは既に先発の6メンバーが今年中に一部品目を除いて
5%以下の域内関税を達成し、他の後発メンバーは 2006 年から 10 年までに徐々にそれに
参加していく。それをぜひ計画通りに完成させるということを日本は元気づけて、勇気づ
けていかなければならない。それは関税や非関税障壁だけではなくて、サービスであり、
投資の自由化も実施して、円滑かつ迅速なビジネスができる環境を整備する必要がありま
す。これは前のセッションでいろいろ企業の方々が具体例を挙げて仰って下さったことで
す。そして、そのためには ASEAN サイドでも政府の今までの政府間の協力組織からより
有効な地域協力機構へ制度強化をしていくことも必要になってまいりましょう。
今年の7月にジャカルタで ASEAN10 の経済大臣が集まりまして、まさにこの問題を議
論しまして、ASEAN の各国市場はなお分断されていて国境を超えて商品を輸出する場合に
コストが大変かかる。本当に統合 ASEAN を作るためには AFTA を越えて通関手続、各種
基準・認証制度の共通化まで、そういうことを進めようと合意をしています。これは大変
正しい方向で、我々の提案に大変合致していまして、我々はそれを強くサポートしました。
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11.課題3:産業高度化と競争力強化
そうした方向に ASEAN が動いているという理由にやはり中国との競合が激化している
ということがあると思います。そして、ASEAN の各メンバーは未熟練労働集約的な産業で
は中国に比べて国際競争力が低下してきています。人材育成、技術・技能形成によって技
術水準を高め、統合 ASEAN 市場に根ざした新しい比較優位産業を育成する必要がある。
ASEAN のすべての国ではありませんけれども、各国の競争力戦略というのをご覧いただき
ますと、それぞれにそうした戦略を打ち出しています。先発メンバーの国は、産業高度化、
競争力強化に向けた戦略をとって、知識基盤経済を目指しているということがおわかりい
ただけると思います。
12.課題4:日本の産業構造改革
日本は何をすべきか。日本経済は成熟化し、少子高齢化し、80 年代後半の急激な円高や
バブル経済の後遺症で 10 年間の長期停滞となりました。しかし、さまざまな制度、規制改
革を実施して、経済最活性化に取り組んでいます。そして、こういう日本の再活性化なし
には、幾ら日本・ASEAN 包括的経済連携とビジョンを言っただけでは動かないわけでして、
やはりそれでは十分な推進力を持たない。日本の再活性化ということがどうしても必要で
す。
先ほど申しましたように、日本企業は東アジアを中心として海外進出して分業ネットワ
ークを再構築中ですし、日本は国の政策としてもそれをサポートしていく。それが私は東
アジアの自由ビジネス圏という構想であろうと思います。そして、そのためには農産物の
自由化や労働流入の拡大という面、これは ASEAN 各国の関心事でありまして、やはりこ
の包括的経済連携の枠組みの中で実験的に取り組むということが可能でありましょう。
13.課題5:政策環境の共同整備を
日本 ASEAN 包括的経済連携の目的は、域内でのビジネス環境を整備して内外企業を誘
致することです。それは日本と ASEAN の企業だけではなくて、他国の企業もそれに入っ
てくるということが考えられます。域内の通関手続の簡素化、迅速化は最重要であります。
加えて基準認証、知的所有権、競争政策、物流インフラ等の円滑化措置を共同で整備して
シームレスなビジネス環境を形成する。日本も将来の人材不足に備えて積極的に協力をす
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る。ここではこれをすべて日本、ASEAN だけでやる必要はないのでして、既に APEC と
いうのが円滑化や経済技術協力に取り組んでいますが、その成果を積極的に活用すべきで
あろうと思います。
14.課題6:資本市場と金融協力強化
次の課題は、資本市場と金融協力強化です。これを欠いては実効が上がりません。この
不備、不足がアジア通貨危機を招きました。97 年、98 年のアジア通貨危機の後で東アジア
ではこの地域金融協力の共通認識が高まっていまして、既に幾つかの成果が出ています。
マニラ枠組みであり、チェンマイ・イニシアチブであり、アジア債券市場の育成です。さ
らにそれを進めて相互経済監視メカニズム、マクロ経済の政策協調、地域の為替レート協
調の可能性までも探れると考えます。
15.課題7:後発国への支援措置
最後の課題は、後発国への支援措置です。ASEAN の後発メンバー、カンボジア、ラオス、
ミャンマー、ベトナムは低所得でして、資本、人的資源、技術も不足し、インフラも不備
で大きなハンディを負っています。2000 年の 11 月に、もう既に2年前に ASEAN 統合計
画というのを ASEAN は出しまして、先発国による後発国の人材育成支援をうたっていま
す。そして AFTA、ASEAN 自由貿易協定では、後発国に達成期限を遅らせ、そして多数の
例外品目を認めています。そういうハンディを与えているわけですが、日本は先発 ASEAN
諸国には徐々に日本自身の予算の制約ということもあって、ODA 等の供与を減らしてきて
いますけれども、後発メンバーには ODA 供与を継続していますし、むしろ増やしている。
先発メンバーの人的支援その他をその中に組み込んでいくということが必要であろうと思
います。既に初めに渡辺理事長がおっしゃったようなメコン川の流域開発プロジェクトで
あるとか、特に輸送回廊の実現、物流改善というのは大事な要素になってきます。
16.日 ASEAN・CEP 達成の道筋
以上が7つの課題ですが、最後に、この日本 ASEAN 包括的経済連携を達成するにはど
ういう道筋が考えられるか。今までもいろいろ説明がありましたように東アジアでは2国
間の FTA、ASEAN+1、ASEAN+3等の FTA 構想が続出しています。これに対して内外
のエコノミスト、特に外のエコノミストの人達は、これらをやると貿易転換によって域外
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差別が生ずるとか、いろいろな FTA がこんがらがっていわゆるスパゲッティボール現象が
起こるかもしれないということを警告する声が大変強いです。エコノミストとしてこれら
の危惧というのは確かに否定できません。しかし、私は、現実的なアプローチとしてこの
地域協力というのが今この東アジアのダイナミズムをつかまえてそれを生かす大変重要な
道であるということ、これをぜひ使うべきであろうと思います。
日本と従来の2国間ではなくて、日本対 ASEAN という統合 ASEAN ということになっ
てきました。その論理をさらに進めれば、何も統合 ASEAN だけではなくて、ASEAN+3
にすればもっと市場が広がって良いだろうという議論になりましょう。経済的な論理から
いうと合理性はそうだろうと思います。ただ、現実にはそれら早期の実現にはいろいろな
障害があります。むしろ経済的ではなくて、非経済的な要素もあるし、また、それは+3、
日中韓のその3の方にむしろ強いということが言えましょう。簡単に申しましても、それ
ぞれの3国の間には経済システムが違う、今までそういうことをやった経験が全くない、
そして 20 世紀前半の歴史的な経緯というのもありまして、その結果、韓国や中国には日本
に対する不信感というのがやはり大変強く残っています。こういうことから、早期の実現
はなかなか難しいというのが実態です。
そこで、現実的なアプローチとして私どもが提案したのは、我々は究極的には ASEAN
+3を目指すのだ。つまり、東アジア全体の自由貿易圏、やがては東アジア経済共同体を
目指すのだという認識をみんなが共有して、しかし、現実にはすぐにそれに取りかかれな
いけれども、しかし、いろいろな構想、2国間、ASEAN+1というようなものを並行して
進めていく。動くところから進めていく。やがてはそちらに向かうのだということをもっ
ていくということ。そして、日本と ASEAN のシンクタンクはそれが究極の目標なのだと
いうことを常に訴え続けて、その間の齟齬ができるだけ起こらないようにするということ
が私たちの仕事ではないか、ということです。どうもありがとうございます。
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第 2 セッション パネルディスカッション
「アセアン単一市場の形成と東アジアの経済連携」
モデレーター
大辻義弘氏
経済産業省貿易経済協力局通商金融・経済協力課長
パネリスト
ハンク・リム
シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
キティ・リムサクン
タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
ジスマン・シマンジュンタク
張 蘊嶺
インドネシア戦略国際問題研究所 会長
中国社会科学院 アジア太平洋研究所 所長
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○司会(大辻)
本日モデレーターを務めさせていただきます大辻と申します。どうもよ
ろしくお願いいたします。
私は、香港のジェトロやバンコクのジェトロで勤めさせていただきまして、東アジアの
経済実態をつぶさに見てまいりました。どうもよろしくお願いいたします。
第1セッションにおきましては、アジアの代表的な自動車や IT 関係の企業の皆さんから
そのビジネス戦略や課題が提示されたところでございます。私もそこからは通貨危機後の
ASEAN の成長過程への復帰とか域内統合の進展とか中国の WTO 加盟や高成長により、東
アジアビジネス経済圏の形成が経済実態の面から見ると急速に進んでいるということがま
さに浮き彫りになったと、こういうふうに思います。この第2セッションのパネルディス
カッションにおきましては、先ほど伊藤先生からもお話がありましたように、そうしたビ
ジネス界の急速、急激な動きを踏まえまして、東アジア経済の統合が今度は制度的にどの
ように進んできたか、これからどう進んでいくか。また、その際にはたくさんの難しい諸
課題があるわけでございますけれども、これをどのように克服していくべきかについて議
論を深めていきたいと思います。若干時間の方がずっと押しておりますので、私、最初は
辛抱しましてこれぐらいにしまして、早々にパネリストの方々のプレゼンテーションをお
願いいたしたいと思います。
最初のプレゼンテーションにつきましては、時間の関係もございますので、それぞれお
のおの 10 分間程度でお願いいたしたい、このように思います。
69
報告1:「東アジアにおけるシームレス市場の形成」
ハンク・リム
シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
皆さん、こんにちは。既にフルペーパー、50 ページぐらいのものでしょうか、を提出し
ておりますし、また、エグゼクティブサマリーも出しております。また 10 分しかないとい
うことで、パワーポイントを使いながら駆け足で進めていきたいと思います。一部重要な
点は時間をかけたいと思いますが、本題に入ります前に、まずジェトロの皆様に私の見解
の一部を、そして全文の一部を紹介する機会をいただきましたことを感謝申し上げます。
東アジアにおけるシームレス市場の創出ということでお話をさせていただきます。
問題は、多国的なあるいはバイの、そして地域的なということになるわけでありますけ
れども、理論上は多国間のものが一番有利ということになるわけです。しかしながら、現
実的にはマルチよりもバイあるいは地域的なものの方が、自由貿易を推進するために使わ
れているわけであります。これは障害(スタンブリング・ブロック)どころかそれが自由貿易
を推進するための手段(ビルディング・ブロック)になっているというものであります。
1.はじめに:地域および二国間の FTA 出現の背景にある経済的理由
そこで、地域的なあるいはバイのものがどうしてこういったプラスの要素を持てるのか
ということを見てみたいと思います。もう一つ、自由貿易協定というのは単に経済的なも
のだけではありません。特に初期の段階においては、これは政治的なプロセスでもあると
いうことを押さえておかなくてはなりません。というのも往々にして FTA というと、どう
も経済のことしか考えないわけですが、純粋な経済ということはあり得ないわけでありま
して、政治的なプロセス、政治的な要素も非常に重要です。
もう一つの問題は、バイの、そして地域的な協定というものがどういうふうになったと
きに多国的な自由貿易体制を促進するものになるのかということであります。すなわち、
多国的な自由貿易あるいは投資を促進するためには、それはできる限り WTO プラスと一貫
性がなくてはならないということ、また開放的でかつ非差別的な慣行を推進していくもの
でなくてはならないということになります。
2.FTA の網の目が各国間の経済的取引を促進する保証はない
このページですが、理論的な保障はありません。これは多国的なものであろうと、地域
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的なものであろうと、二国間のものであろうと、FTA が最適か、あるいは次善の策か、あ
るいは障害になるのか、全く保障はないわけです。そこで、すべて交渉次第ということに
なります。そこでの一番の課題は、特に二国間の場合、そして地域的な場合、理論的なコ
ンセプトとしてどうやってこれをプラスのものにするのかということを決めるのが最も厄
介な部分ということになります。ですから、これはケース・バイ・ケースで当たっていか
なくてはならないものということになります。なぜならば、ハブとスポークが複数あるか
らです。場合によってはハブが WTO プラスと整合性がある。しかし、大抵の場合にはスポ
ークというのはその間に入るものでありますので、慎重に当たっていかなくてはならない
ことになります。障害になりそうな要素というものは慎重に見極めておく必要があります。
3.地域経済統合
さて、地域経済統合、特に東アジアの場合に理解しなくてはならないのは、貿易投資と
いうことでは新しい現象がありますが、特に 97 年以降、金融協力あるいはバイの協力とい
うものが特に最初の段階では重要だということです。というのは、これまでの 97 年以前の
東アジア経済圏ということでは、これは市場原理に任せるということでありました。制度
的なプロセスもない。政府の積極的な介入もありませんでした。ですから、まずは金融面
での協力をし、それによって新たな経済危機が起きないようにしなくてはならないと思い
ます。単に貿易と投資ということだけではなく、金融システム、サービスなどもきちんと
促進する役目を果たすようなものにしなくてはなりません。これによって障害にならない
ようにするということができるということになります。
4.包括的な協定のトレンド
包括的な協定のトレンドがいま見られております。これも東アジアにとっては重要です。
ASEAN と日本の FTA あるいは ASEAN、中国の FTA あるいは中国、日本の間の FTA、こ
れらは全て非常に包括的な内容でなくてはなりません。なぜならば、域内貿易、これは地
域ベースであろうと、どうであろうとその領域というのはそれほど大きなものではありま
せん。ヨーロッパあるいは南北アメリカとは違うわけでありまして、漏れがないようにし
なくてはなりません。これが障害にならないようにしなくてはなりません。包括的でなく
てはなりません。だからこそ包括経済連携(CEP)ということが極めて東アジア独自のも
のということになります。そこで、東アジアにとってのモデルは、FTA だけではなく、フ
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ァシリテーションという円滑化の措置も必要になります。例えば原産地規則、ハーモナイ
ゼーション、あるいは通関の制度、規格標準、価値というものです。貿易の自由化をしよ
うと、市場の自由化をしようと、円滑化措置がなければ意味がありません。実際的な価値
はないということになります。ですから、円滑化も大切です。
もう一つ大切なのは、スパゲッティボール現象を避けるということです。中国あるいは
日本というのはおそばを食べるときにはずるずるずるっと食べるわけであります。それに
対してイタリアのスパゲティの場合にはフォークでくるくる巻いて食べるということで、
一度絡んでしまうと解くのが大変なわけです。つまり、周りの地域、周りの国々を巻き込
んでいく時に、そのようなスパゲッティボール現象というものを回避する必要があります。
そのためにやはり円滑化をきちんと考慮した包括経済連携が必要になるわけです。
5.シームレスな市場
さて、シームレスな市場ですが、これは決して自由化とあるいは規制緩和ということだ
けではありません。多くの人がそういった主張をするわけですが、シームレスな市場とい
うのは、包括的なプロセスになります。障壁を取り除くだけではありません。それだけで
なく、重要なのが標準化を進めるということ、ハーモナイゼーション、円滑化を進めると
いうことです。ですから、シームレス市場では単独あるいは自発的な APEC のプロセスの
ような努力とさらに協調的なコラボレーティブな努力を必要とするわけであります。
6.スパゲッティボール?
スパゲッティボール現象、これは詳しく説明する必要はないと思いますけれども、かな
りの包括性、円滑化を進める必要があるということになります。
7.貿易自由化:東アジアで重要か?
いま超特急で進んでいるのですけれども、貿易の自由化は特に東アジアで重要かという
ことですが、確かにこれは重要です。しかしながら、貿易の自由化というのは決して貿易
自由化のみに限るだけではありません。円滑化も必要です。あまり多くの人はこれを取り
上げませんけれども、エコノミストも枠組みあるいは構造ということを考えますと、ファ
シリテーション、円滑化も大切である。それから、金融、サービスの自由化も同じように
重要です。これによってシームレスな市場を支えていくことが可能になるからです。
72
(グラフ)
これは詳しく説明をする必要はないでしょう。時間は限られていますので皆さんに後で
見ていただくということにして、次も基本的なものなので後で見ていただきましょう。説
明は加えません。次のページにいきます。
8.サービスの自由化
サービスの自由化です。先ほども申し上げましたように、これはアジアでは非常に問題
になっているところです。なぜならば、日本においてすらも、非常に進んだ経済があると
ころでもサービスは非常に保護され、規制されています。ただ、先ほども言いましたよう
にサービスというのは包括経済連携の中では非常に重要な要素です。これを細分化する、
あるいはここだけ別建てにするということはできません。これも巻き込んでいかないとス
パゲッティボール現象あるいはゆがみが生まれてしまうということになります。
中国、韓国、日本を見てみますと、中国だけを責めることはできません。というのも、
中国は WTO に2年前に加盟したばかりのまだ新興国だからです。それに韓国、日本でもま
だサービスの分野では非関税障壁がたくさん残っています。ですので、ここを取り除いて
いかないと本当の包括経済連携は実現しないでしょう。
9.貿易の円滑化
貿易の円滑化でありますが、これはさまざまな事務手続のコストの低減化、そして標準、
技術、情報などが必要になるということになります。
10.貿易円滑化の中で特に重要な分野
貿易円滑化の中でも特に重要な分野、これは1分だけかけたいと思います。というのも、
これらは重要な要素になるからです。貿易の自由化、関税の引き下げなどだけでは十分で
はない。ASEAN の自由貿易圏ということでもこれらは抜け落ちている重要な点です。原産
地規則ですが、AFTA 域内の貿易は、いま 99.8%は5%以下で取引されていますけれども、
この原産地規則が欠如しているというところで 100%は達成されていないわけであります。
ハーモナイゼーションに関しては、AFTA のもとでも貿易は関税の問題ではなく、通関の手
続、さらにルールの標準化が欠如しているというところが問題です。ですので、これらは
すべて取り上げられなくてはならないということになります。これに正面から取り組んで
73
いかないと、本当の意味での効果的な貿易自由化は行われません。
それから、紛争処理メカニズムでありますが、さらにグローバル化、あるいは地域化が
進みますと、それだけ紛争が出るということになるでしょう。これも AFTA が欠けている
ところであります。この紛争処理メカニズム、これは ASEAN の事務局といった地域的な
ところにゆだねるべきであります。それをしないと AFTA はうまくいかないでしょう。
それから競争政策、これは IPR ですとか特許ですとか、こういったものすべて競争政策
が必要になります。
11.結論
そこで同じ土俵で戦えるような公平な環境づくりが必要になります。国際的にも地域的
にも環境は急速に変わっています。ということになりますと、東南アジアであろうと、北
東アジアであろうと政策、構造を大きく変えていく必要が出てきます。ここで特に日本が
戦略的な役割を果たすということになります。日本のみが ASEAN を変えることができる
ということです。日本にはその能力があります。そして、日本はこれをつくり直す余力を
持っていると思います。再活性化された ASEAN のもとでのみ、東アジアの協力圏ができ
るというふうに思います。ASEAN はエリアとしては大きくはありませんが、戦略的に重要
な地域であり北東アジアと東南アジアのハブになるところであります。東アジアは政治的
にはひじょうに不均質で多様でありますが、その中で我々は障害を最小化していく必要が
あります。これの再活性化のために日本が果たすべき役割は大きいと思います。
貿易の自由化というのは、先ほどから申し上げているように単に経済だけの問題ではあ
りません。これは政治的なプロセスでもあります。そこで、政治的制度の違いということ
も目をつぶるのではなく、きちんと議論していく必要があります。ただし、そこでは経済
的なダイナミズムということを忘れてはならない。政治的な違いというもの、これは経済
的なダイナミズムの中で議論していく必要があるということになります。そして、結局は
コンシステンシー、整合性の原則にのっとるということが重要になります。共通のフレー
ムワークを持つ必要があります。地域あるいは二国間、貿易の自由化、いずれも多国的な
貿易自由化の枠組みの方にもっていく必要があります。そうしないとスパゲッティボール
現象が起きてしまうということになります。東アジアというのは多様な地域でありますの
で、これを盛り込んだものにしなくてはなりません。
以上です。
74
報告2:「日・アセアン包括的経済連携」
キティ・リムサクン
タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
1.日・ASEAN 包括的経済連携の評価
それでは、私の方から簡単に日・ASEAN 包括的経済連携について私なりの視点でお話を
したいと思いますが、私は日本と言ったとき、日本だけでなく、韓国、台湾も同じグルー
プとして考えていくべきだと思っています。それから、ASEAN と言った場合にはこの初期
の ASEAN のメンバープラス新興国も入っているということを一言申し上げておきたいと
思います。この日・ASEAN の経済協力の評価をした上で日・ASEAN 経済協力の新時代、
そして ASEAN と日本の厚生の向上ということで ASEAN 地域において日本が果たすこと
ができる役割について論じてみたいと思います。
これはちょっと飛ばしまして、次のページ、まず、日・ASEAN 経済協力の評価について
ですが、ここで申し上げたいことは、いろいろなデータを考慮し、いままでの歴史的な経
緯を考え、私、いろいろと大学の教授として研究をしてまいりましたけれども、こういっ
たセミナーで論じられるデータをもとに考えますと、やはり日本の対 ASEAN 投資は厚生
及び経済成長、あるいは貿易や雇用の創出に多大な貢献を果たすことができる。もちろん
成長がさらに進んでいきますと、日本との間の ASEAN の貿易赤字というものがさらに拡
大する可能性もあります。もちろん輸入量、あるいは完成品と中間財の貿易構造を考えま
すと、日本と ASEAN の貿易関係は偏ったものにならざるをえないでしょう。これは日本
が FDI をさらに増大し、それによって中間財の輸入を促進し、完成品の ASEAN から海外
への輸出を増やすという傾向が生じさせることになります。ですから、FDI がさらに促進
されることによって、日本との貿易赤字は拡大するかもしれません。けれども、私として
は、やはり厚生の向上という意味で考えると、それぞれ別に考えなければいけない。厚生
の向上は貿易赤字と結びついているかもしれませんが、厚生が成長に依存している限りし
かたのないことだと思うます。
それから、対中国貿易ですが、これは成長しています。中国と日本、ASEAN 諸国の3者
関係を考えた場合、データだけを見ると、確かに ASEAN と中国の間では日本と中国の間
ほどの貿易はありません。しかしながら、中国が急速に対 ASEAN 貿易を拡大しています
ので、伸びというもので考えた場合、急速に成長しています。
したがって、中国、日本、ASEAN の3者関係を考えた場合、外資を積極的に誘致すると
75
いう中国政府の政策と高金利を考えますと、対 ASEAN 投資よりも対中投資の方が日本か
らは増えていく可能性があります。また、中国における過大な資本蓄積、あるいは資本取
引の自由化ということを考えますと、資本の輸出が増える可能性があり、実際中国から
ASEAN に向けて資本の輸出のペースが急速に上昇しています。日本は中国に投資をし、中
国が ASEAN に投資をするという3者関係が成立しつつあります。
2.ASEAN 地域における日本の役割
貿易についてはどうでしょうか。また、様々な分野で貿易の自由化は進んでいるとは
いえ、やはり現在の日本、中国、ASEAN の投資の関係というのは最適の状況ではないと思
います。中国の状況を考えてみてください。中国は次のページを見ていただくとわかるよ
うに、中間所得及び低所得国家であり、ほかの国々と相対的に考えた場合には、所得水準
で言うとまだまだ追いついていません。しかし、購買力は増大しています。ただ、資源の
流れあるいは市場における取引、貿易の創出量は、規模は大きいのですけれども、まだ十
分とは言えません。日本、ASEAN、中国の間における資源の流れは、まだ最適水準には至
っていません。日本の一次産品における貿易の障壁というものが完全に撤廃されていませ
ん。このような関係をずっと維持していくわけにはいかないと思います。言いかえれば、
東アジア、日本、韓国、中国、ASEAN がもっと活発に貿易をしていくためには、双方向で
資本及び貿易の完全な自由化を実現していく必要があります。日本はいろいろな国と FTA
を締結しつつあるわけですが、これによって最適な厚生を実現するとは保障されていませ
ん。これは最適水準以下ということになってしまいます。というのは、日本の消費者は最
低価格で一次産品を購入をすることができない状態が続いてしまうからです。またもっと
重要なことは、そのような状態では ASEAN 諸国は日本や中国との貿易関係をより緊密に
し、また自らの経済発展に必要な資本を自分で調達するのに十分な所得を得ることができ
ません。ASEAN はもはや ODA やローンに頼ってばかりはいられませんから、日本あるい
は中国との貿易を拡大し、資本を獲得することができなければいけません。そのために日
本及び中国も貿易の自由化をより一層進めていかなければなりません。これに関して、日
本の ASEAN 地域における成長に果たす役割というのは、3つの側面で考えていかなけれ
ばならないと思います。
まず1点目に言えることは、もちろん中国の市場の規模と購買力は巨大です。しかし、
日本市場、韓国市場、台湾市場と相対的に比較した場合、3者関係の枠内において、つま
76
り東アジア、ASEAN、中国の間でさらに貿易創出をしていく必要があります。また 2 点目
に、タイは近隣諸国に対して一方的にいわゆる経済協力戦略、ECS を実施、すなわちタイ
は CLMV、ASEAN 周辺の新興国に対して一方的に貿易の自由化を進めるなどの特別優遇
措置を実施しています。また、タイは ODA をラオス、そしてカンボジアに提供しています。
これはタイが非常に戦略的に、例えば難民受け入れのコストというものを低減し、社会的
な混乱を防止するために実施している政策です。3 点目は、市場経済、とはいっても中国、
日本、ASEAN 諸国はさまざまな政治組織を擁しており、いろいろな政治体制を敷いていま
すが、それとは関係なく、やはり市場経済体制の統合ということを考えていかなければい
けないということです。市場経済の枠組みというものが融合化する方向に向かっています。
3.結論
中国と ASEAN の間の FTA、これによって貿易が大幅に増大するということは両者にと
って大変望ましいことですが、日・ASEAN の2者間の関係だけではなく、今後は3者間の
関係、日・ASEAN・中国を考えていかなければいけない。日本・東アジア・中国という3
者間の関係において日本の戦略を策定していく必要があると思います。それによって日本
もこの両地域における状況を最適化し、日本の消費者にとっても最適の環境を提供し、一
次農産品あるいは工業製品を低価格で日本の消費者に提供していくことができると思いま
す。
また、ASEAN、特にタイにおいては、現在いろいろな海外からの投資、特に日本、ASEAN
あるいは中国、韓国からの投資を増やすために、資本の自由化を促進しています。既に関
税引き下げを 3400 品目で早期に引き下げを実施することにいたしました。日本・タイの
FTA を締結することによって、日系あるいは他国の多国籍企業が自由にタイにおいて事業
拠点をつくり、そして事業を成功させていくことができると思います。日本、中国は ASEAN
にとっては脅威ではありません。しかし、もっと日本は努力をしていただかなければいけ
ません。特に一次産品の市場を開放していただく必要があります。一方、中国はいろいろ
な混乱を解決し、あるいは資本の流れをさらに円滑化する努力が必要ですし、また、資本
取引をきちんと中国としても管理をしていかなければいけないでしょう。現在、貿易自由
化においてはまだまだ障壁が残っています。例えば原産地規則、ハーモナイゼーションあ
るいは貿易円滑化において問題は特にタイ政府はこういった3つの問題に対応していかな
ければいけないと考えています。ですから、まず、私どもも試みとして近隣諸国に対して
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一方的にアーリーハーベストという形で関税の早期引き下げを実施することにいたしまし
た。
以上です。
78
報告3:「東アジア共同体に向けての大きな歩み:インドネシアの視点から」
ジスマン・シマンジュンタク
インドネシア戦略国際問題研究所 会長
ご列席の皆様方、本日はこのような場でお話ができる機会をいただきまして、本当に嬉
しく思っております。ジェトロの皆様方、ありがとうございます。
さて、私の方は東アジア単一市場の形成に対するインドネシアの対応、特に ASEAN と
の絡みでお話しするようにというご依頼をいただきました。
1.ASEAN の統合における諸段階
最初に、ASEAN の歴史をひもといてみたいと思います。ASEAN は 1967 年に始まった
ときはもう少し地味な存在でした。もともとは、実は経済的な意味はほとんどない、政治
的な合意でした。ですが、ASEAN は危機に直面すると、そのたびにリーダーたちが ASEAN
にすがる。そして、ASEAN を活用してより深いレベルの統合を進めるというプロセスが繰
り返されてきました。
そして、歴史を振り返りますと、幾つか段階がありまして、それは経済危機などが往々
にしてきっかけになってきました。例えば ASEAN 経済共同体、これはシンガポールによ
って提唱されバリで了解されたものですけれども、これは本当に ASEAN の歴史の中で1
つ大きな節目になった出来事だと思います。
さて、インドネシアというのは ASEAN の統合の中ではブレーキ役というふうに考えら
れてきたきらいがありました。というのは、インドネシアは長らく統合の度合いを深める
のに最も消極的であったからです。92 年になりましても、私どもの貿易産業大臣は AFTA
をあまり支持していなかったということもありました。彼が AFTA の支持を表明したのは
本当に最後のぎりぎりになってからでした。また、インドネシアの産業界もそれほど熱意
を持って ASEAN の統合をより進めようと考えていたわけではありませんでした。
2.ASEAN の統合に対する反応
しかし、80 年代の末、そして 90 年代の初めに大きな変化がありました。ご記憶かと思い
ますけれども、インドネシアでは大幅な規制緩和を 83 年、そして 93 年にかけて行いまし
た。この規制緩和によりまして当時のインドネシアは非常に高度な経済成長を遂げること
79
ができまして、貿易のパフォーマンスもよく、そして海外からの投資額も膨らみました。
日本からのみならず、ASEAN 内の近隣諸国からの投資も拡大したのです。ですので、この
金融危機、通貨危機の前にはインドネシアでは AFTA に関して非常に熱気が高まっていま
した。もうすべての人が口を開けば AFTA の話をしていました。そして、新しいチャンス
が AFTA によって生まれていると盛り上がっていたものです。しかし、97 年に通貨危機が
発生し、98 年にまで尾を引き、結果としてインドネシアは非常に大きな打撃を受けました。
その詳細はここで触れる必要はないかと思います。
ですが、その影響について一言申し上げさせていただきます。まず1つには経済成長が
鈍化いたしました。現在の経済成長率は年率で3∼4%。危機前はこれが7%の水準でし
た。そして、世界の貿易あるいは生産高に占める割合あるいは FDI のストックに占める割
合も大きく低下しています。また、生産に関して言えば、2003 年にはようやく 97 年のレ
ベルに回復するという状況ですので、それだけ打撃が大きかったということはおわかりい
ただけるかと思います。
この通貨危機を受けて、私どもの政府はある種内向きになりました。また、産業界もそ
のようになりました。すなわち危機への対応に追われてしまって、外との経済的な関係に
ついて考える暇がなかったのです。金融危機の後、インドネシアの産業界はそういう意味
では無関心になってしまっているのかもしれません。すなわち、インドネシアの外での動
きに対して一般的に無関心である、あるいは地域統合についても無関心になってしまって
いるわけです。少なくとも昔ほど AFTA についての熱意も感じられませんし、その他の地
域的な統合の動きについても熱意は昔ほどありません。ですが、理由はたくさんあります。
まず、インドネシアにとっての AFTA の優位さというものが実は少なくなっているという
ことがあります。実効的に私どもが採用している関税率というのはかなり低くなっていま
す。それはインドネシアが単独でかなり自由化を行ったことにもよります。ですので、AFTA
というもののメリット、あるいは影響がとても小さいわけです。逆にリムさんもおっしゃ
っていましたように、原産地規則のような複雑な制度への対応に時間がかかるとそれだけ
かえって不便だと考えるわけです。一方で多国籍企業、そして特に日系あるいは韓国系の
企業はより深刻に、国内の産業界よりは深刻にこの事をとらえていらっしゃるようです。
AFTA は JAFTA だというふうに言われているくらいです。ジャパンと ASEAN の JAFTA
ですね。というのは、ほとんど日系企業が ASEAN の統合で一番メリットを受けるという
ふうにさえ見られているからです。ですが、危機の間、実は ASEAN 内のインドネシアか
80
らの輸出、そして輸入が非常に伸びまして、全体的な輸出入の伸びを大きく上回っていま
す。いろいろな数字がありますけれども、これは実はいいところと悪いところとあります。
ASEAN との貿易が世界的な対外貿易よりも早く伸びている。その要因の1つは AFTA が
あるかと思います。投資があるというのは非常に嬉しいことです。しかし FDI の流入は残
念ながらネットではマイナスになっております。危機の後6年間、常にこの状態です。そ
れにはいろいろ理由がありまして、1つにはそもそも生産高が 97 年の水準に達しないとい
うこと、それから新しい投資先が存在するということです。具体的に中国、ベトナムある
いは東ヨーロッパなどです。
それから、ほかにも残念ながら問題があります。例えば国際的なテロの問題で、ジェマ・
イスラミアというテロリスト団体がインドネシアにあるあるということで巻き込まれてし
まいました。それから、そのほかやはり国内に治安の問題を抱えています。そういう意味
ではインドネシアが東アジアの問題児に危機の後はなってしまったのかもしれません。
では、これから先についてですけれども、私どもはできるだけ早く回復を実現したいと
考えております。また、来年には総選挙も控えております。議会選挙が4月、そして7月、
9月には大統領選挙が予定されております。私どもの期待としては、新しい選挙を経た政
権はより効果的な政策を打ち出せるものであってほしいと考えております。いまの政府以
上にというものを期待しているわけです。インドネシアにはたくさんのチャンスがあると
思います。さまざまなチャンスがありまして、それは必ずしもシンガポールあるいはその
ほかの ASEAN の国々と同じではありません。天然資源にも恵まれておりますし、いろい
ろな有望な産業もあります。非熟練労働集約型のものもあります。ですが、一番成功のか
ぎとなるのは、やはり漸進的なガバナンスの改善、それから政治の改善、そしてビジネス
の改善、そして市民社会だと思います。これがきちんと実現できればインドネシアは再び
高度経済成長を実現できると思います。
ご清聴ありがとうございました。
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報告4:「パートナーとしてのアセアン:中国と日本の比較」
張 蘊嶺
中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
1.経済関係
私の方からは ASEAN を中国と日本と比較しながらより密接なパートナーにしていくと
いうことでお話をしたいと思います。
まず大きなトレンドを見てみましょう。特に最近のトレンドを見てみたいと思うのです
が、日本と ASEAN の間ではどうなっているのかをまず見てみましょう。かつては非常に
高いレベルの貿易のマーケットシェアがありました。日本からの直接投資が ASEAN 諸国
の近代産業発展の上で非常に重要な役割を果たしました。しかし、近年では日本が ASEAN
貿易に占める割合はかなり減ってきておりますし、また、投資も減少が見られます。昨年
までに日本の直接投資のレベルは 97 年のレベルの半分にまで減っております。
次に中国と ASEAN を見てみますと、この関係は最初のうちは非常に低いものでありま
した。しかし、貿易関係は急速に発展いたしました。また、投資も「ASEAN から中国」か
ら将来的には「中国から ASEAN」へと方向が逆転すると考えられております。
2.日本市場
これは ASEAN の貿易に占める日本のシェアの動向を見たものでありますが、ごらんい
ただきますように明確に減少傾向が見られます。特に通貨危機以降減少しております。
3.中国・ASEAN 間の貿易
こちらは中国と ASEAN の貿易です。急速に拡大しております。中国と ASEAN の貿易
の成長率は、トータルの成長率を上回るものとなっております。特に中国と ASEAN の貿
易、これが最も急速に伸びている部分です。ですが、もちろん中国は、主要な ASEAN 市
場に対しての投資元ではありません。またネットで見ても ASEAN から中国に向かってい
る投資の方が大きいわけであります。しかし、いま新しい傾向が見られておりまして、中
国から ASEAN への投資が資源、製造業ベース両方で伸びております。例えばインドネシ
アでは、今年の6月までに 100 以上の中国の企業が投資を行っております。
82
4.中国の貿易相手先
これが中国の貿易相手先ごとの最新の数字です。ごらんいただけますように中国の輸入
のトレンドが見られます。一番大きな輸入先はどこかといいますと、ASEAN です。急速に
拡大をしております。次が韓国です。3番目が日本です。東アジアが中国にとって最も多
くを輸入する地域ということになるわけです。
5.日本の新たな貿易の方向性
これは日本の新たな貿易の方向性を示したものであります。一番大きな市場、成長率が
大きいのが東アジアであります。大きなトレンドの変化が見られます。三大急速輸出市場
が中国、台湾、そして韓国となっております。東アジアが日本の貿易の半分以上を占めて
いる、これは大きな変化です。
6.日本→ASEAN←中国
新しいパターンが見られるということになります。日本・ASEAN、中国・ASEAN とい
う関係です。
FDI、直接投資ということでは、当然日本から中国への投資は増えています。昨年末まで
でほぼ 97 年のレベルに達しております。その結果として ASEAN にトレードオフ効果が見
られております。つまり、ASEAN から中国に投資が一部移ってしまったという影響です。
しかし、中国はいま、ASEAN に対して、日本と同程度の輸出市場としてのシェアを提供
しています。そして ASEAN はすぐに日本のシェアを越えると考えられています。2000 年
の数字が山澤先生からご紹介されましたけれども、現在の数字からするとそれは誤解を招
くものであり、実は、それ以降大きく貿易量が拡大しているのです。中国と日本の貿易は
現在 1000 億ドルを超えています。中国、ASEAN は 600 億ドルを超え、中国、ASEAN の
貿易量は 2005 年にはバイのレベルで 1000 億ドルに達すると見られております。つまり、
今年中に中国の対外貿易は 8300 億ドルに達すると見られております。1年で 40%の急速
な拡大ということになります。このトレンドは続くでありましょう。新しいマーケットベ
ースの FDI、貿易ネットワークのパターンが見られているということになります。日本と
ASEAN と中国の間で新しい関係が出現しつつあるということです。日本・ASEAN という
ことだけでなく、日本・ASEAN・中国という関係で見なくてはならないということです。
もちろん韓国も忘れてはならないでしょう。非常に複雑な統合化された相互依存性の強い
83
新しい貿易投資パターンが生まれているということです。
7.経済協力
次に、経済協力を見てみましょう。経済協力、統合は、中国にとっても日本にとっても
重要な ASEAN との関係を築く上での基盤となります。ですので、日本・ASEAN、ASEAN・
中国と2つを切り分けるのでなく、一緒に考える必要があると思うのです。10+3 と言われ
ています。これは共通の基盤です。10+1、これは全く同一のプラットフォームになります。
ただ、ここで残る問題は、中国と日本が協力できるか、そして同じ方向に進めるかどうか
ということです。これは多くのセミナーで語ることのできる重要なテーマではないかと思
います。
8.FTA と CEP
次に自由貿易協定(FTA)と包括経済連携(CEP)について考えたいと思います。2002
年に CEP と FTA を作ることが中国と ASEAN の間で了解され、2004 年には交渉が終わる
と考えられています。先週も、10 日ほど前でしょうか、政府高官と話をしましたが、彼ら
は最新の協議を行っているところでした。そして、非常に楽観していると言っていました。
中国、ASEAN をグループとして取り上げ、そして、明確な包括的な戦略を持っております。
経済面でも、政治面でもです。そして、中国の ASEAN に対しての市場、そして潜在的投
資元としてその役割が拡大するということになるでしょう。
9.選択肢
日本はシンガポールとの間で自由貿易協定を結んでいます。そして、それが包括経済連
携であるということも既に明確になっております。しかしながら、日本と ASEAN の FTA
を進めるためにはもっと強い政治的な意思が必要になるということになります。つまり
ASEAN にはまだ宿題が残っているということになります。選択肢ということでは、FTA
の枠組みということが既に決まっております。また FTAA などの他の自由貿易協定が締結
されつつあるという状況を鑑みると、より高いレベルでの東アジア FTA という地域的な統
合が今すぐ必要ということになります。10+1 の FTA を3つ持つのか、それとも北東アジ
ア FTA+AFTA というアプローチにするのか。前者になってしまいますと、東アジアの FTA
があまりに複雑になってしまいます。そこで、最良の選択肢は東アジア FTA をできるだけ
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早く立ち上げるということでありましょう。その一方で多層的な努力を推進するというこ
とでしょう。その方が日本にとっても、中国にとっても ASEAN にとってもベターなオプ
ションだと思います。すべてを同じバスケットの中で協議をする、議論をするということ
です。例えば日本が進めようとしている、進んでいる経済国との間で話し合いを進め、そ
して遅れている国は後からというのではかえって話はややこしくなるのではないかと思い
ます。フィジビリティスタディをして準備の協議をすべきだと思います。地域的な経済協
力と統合。これは FTA、CEP よりもはるかに大きなものであります。
10.地域主義
では、最後に地域主義の議論に移りたいと思います。
東アジアの地域主義がいまあらわれつつあります。97 年から以降を 10+3 ということで
進んでいるわけですが、まだ協力的なアプローチが必要になります。また、より広範な努
力、統合されたアプローチ、一元的な方向性、そして明確なゴールが必要になります。
中国と日本は多くの人がこの2つは競争関係にあると言っています。数週間前、北京で
会議が開かれました。そこで韓国の代表の方が日本と中国の間の仲介役を果たせるとおっ
しゃっていました。それに対して日本のスピーカーが、「いや、仲介者はいらない、日中は
今なら協力できるのだ」と言っていました。おっしゃるとおり重要だと思います。なぜな
らば、日中は地域協力というプロセスの中で共有できる利害というものを見つけることが
できますし、しなくてはならないと思うからです。日本、ASEAN、中国というパターンの
方が日本と中国の間でより中身のある協力を生むことができるというふうに思います。こ
れは東アジア協力というプロセスとともにであります。
私は今現れつつある新しいトレンドを 3 つの F で説明したいと思います。この3つのF
が重要なのです。まずは「初めて」東アジアのフレームワークが必要だということが認識
されました。10+3ということになります。それによって東アジアが地域として台頭する
ことができます。
2つ目として、「初めて」北東アジアの3カ国が協力宣言をバリで出しました。これはあ
まり注目されなかったのですが、中国と日本と韓国の首脳が宣言を発表しました。協力の
ための宣言です。
そして3つ目。これは「初めて」東アジアの地域が主要な役割を果たして経済成長を支
援することができるということです。最新の数字を見てみますと、例えば日本の中国との
85
貿易量は 70%拡大しています。ASEAN の輸出ということで見ますと、ほとんどの成長は
中国との貿易で生まれているものです。すなわち、こうしたトレンドは地域的な内部的な
エンジンとして東アジアの経済回復を支援し、また成長を支援することができる。これは
過去になかったものであります。
ありがとうございました。
86
全体パネルディスカッション
○司会(大辻)
本日、モデレーターを務めさせていただきます大辻です。私は、ジェト
ロの香港やバンコクで勤めた経験があり、東アジアの経済実態をつぶさに見てまいりまし
た。どうぞよろしくお願いいたします。
第1セッションでは、アジアの代表的な自動車や IT 関係の企業の方々からそのビジネス
戦略や課題が提示されました。それらのお話から、通貨危機後の ASEAN の成長過程への
復帰や域内統合の進展、中国の WTO 加盟や高成長などにより、東アジアビジネス経済圏の
形成が経済実態の面から見ると急速に進んでいるということがまさに浮き彫りになったと
思います。この第2セッションのパネルディスカッションでは、先ほど伊藤先生からもお
話がありましたように、そうしたビジネス界の急速、急激な動きを踏まえて、東アジア経
済の統合が制度的にどのように進んできたか、これからどう進んでいくか。また、その際
には多くの難しい諸課題があるわけですが、それらをどのように克服していくべきかにつ
いて議論を深めていきたいと思います。若干時間が押していますので、早々にパネリスト
の方々にそれぞれ 10 分間程度でプレゼンテーションをお願いしたいと思います。
○リム
2つのご質問、どうもありがとうございました。
最初のご質問、10+3 についてのご質問だったと思いますが、スパゲッティボール現象を
どうやって回避するかについてです。私の話の中でも申し上げましたけれども、経済理論
ということで考えた場合、3カ国の北東アジアの国々そして 10 カ国の ASEAN 加盟国が一
緒になって CEP、つまり包括的経済連携協定を結ぶということは経済的には最適の状況で
す。と申し上げた上で、やはりさまざまな多様性あるいは異質性というものが ASEAN6の
国々の間でも ASEAN4の新興国の間でも北東アジアの間でもあるわけです。更に、政治体
制にもさまざまな異質の体制、多様性があります。したがって、先ほど言いましたけれど
も、自由化は経済プロセスだけではなく、やはり政治的なプロセスも含めていかなければ
いけないわけで、これは決して容易なことではありません。欧州における EU あるいは北
米、南米とは状況が違います。
現実的な視点で考えると、時間が非常に重要なのですけれども、スパゲッティボール効
果を回避するためには明確な時間表を作成しなければいけません。そうでなければ、いま
のような状況が永遠に続いてしまいます。スパゲッティボール効果をできるだけ最小化す
87
るためには、まず時間の工程表というものをつくらなければいけません。また、可能な限
り WTO プラスに沿ったものでなければなりません。それはちょうど APEC やボゴタ宣言
における 2010 年から 2020 年という工程表のようなものです。FTA という意味で完全に状
況が実現されているわけではありません。やはり APEC 以外の国々というものに差別的な
扱いをしないためにも WTO プラスという形で進めていかなければいけません。スパゲッテ
ィボール現象の可能性をできるだけ低減し、それと同時にやはり最小公分母というもの達
成するようにしなければならない。最小公分母、つまりそれは二国間のものを地域的そし
て多国的なものに繋げていくためにどうしても必要なものです。ちょうど数学でやるよう
に、最小公分母を見つけていかなければならないということです。
ですから、WTO プラスの交渉を進めていかなければいけない。それと同時並行に2国間、
地域の交渉を進めていかなければいけない。これはとても大変なことです。2国間のメカ
ニズムというものがやはり一番やり方としてはやりやすいと考えると思いますけれども、
いろいろな注意点を考えると、やはり WTO プラスという形で進めていくということが同時
並行に必要だと思います。
97 年までは政府の介入というものはほとんどありませんでしたけれども、20 年以上にわ
たってダイナミックかつ持続可能な発展というものが実現していたわけです。なぜこれが
可能だったかというと、やはり WTO プラスのアプローチをとって自由化を進めてきたから
です。97 年以降、やはりこういった地域協力をさらに加速化し、強化していくためには時
間が重要です。5年後、10 年後に実現したとしても、状況は全く違います。やり方も違っ
てくるでしょうし、枠組みも違ってきます。ですから、時間が非常に重要であります。
それから、FTA、東アジア自由貿易協定における台湾の位置づけですけれども、2つの
メカニズムを考えなければいけません。まず、制度的なメカニズム、例えば AFTA、ASEAN
+日本のようなメカニズムと市場の原理というもの両方を考慮していかなければいけませ
ん。台湾は中国に多大な投資を行っています。中国と台湾というのはこういった制度的な
枠組みは確立されていませんが、両国間の関係は非常に重要です。
したがって、政治的にいま台湾、中国にとって受け入れられるのは、ASEAN+3 の枠組
みではないかと思います。台湾は経済的な影響力も持っていますし、ASEAN+3 の枠組み
でも東アジアにおいて十分な貢献を果たすことが期待できます。こういった制度的なプロ
セスに加盟しない現在でも、既に台湾は多大な貢献を果たしています。また 1997 年以前に
は、アジアの国々もこういった制度的な枠組みがなくてもいろいろな貢献をしてきました。
88
したがって、台湾はさまざまな東アジアとのネットワークを形成することによって十分な
貢献が果たせると思います。
○リムサクン
やはり2カ国間の FTA と多国的な枠組みは十分注意しないと不整合が出て
くるかもしれないとは私も思います。
FTA をあまり強化し過ぎると、ASEAN の統合にマイナスの影響があるかもしれないわ
けです。ですが、私のこれまでの経験から考えますと、実は私は AFTA のカウンシルにも
参加したのですけれども、やはり危機があったことによって関税の引き下げが少しおくれ
たものの、全体のスケジュールは変わっていないと思います。ほんの一部に影響は限られ
ていると思います。例えば一部の国々が、大統領選挙があるからとか、砂糖にかかる関税
は引き下げはもう少し遅くしたいといったものです。国によっては、例えば自動車部品を
適用除外にするかどうか、ということがあるわけです。こういった話は確かにありまして、
一部スケジュールが遅れていると思いますけれども、全体的な枠組みはおくれていないと
思います。むしろやはり円滑化、そして ROO(原産地規則)の方が問題だと思います。
CLMV に関するタイ政府としての取組みですが、実はラオスへの代表団のメンバーに私
は入りました。ASEAN との輸出入の際に申告が必要ということで、場合によってフォーム
D(原産地認証書類)の問題がありまして、場合によっては非常に長い時間、そして長い
距離、物をいちいち運んでいかないといけません。そうすると、税関の方がこのフォーム
Dはどこか、原産地はどこか、商社はどこかと聞くという問題がありまして、そういった
貿易の障壁をいま見直していると聞いております。私も税関の方々と直接お会いしまして、
それからラオスの財務大臣とお会いして直接お話をしました。
あとは場合によってマレーシアを通過するときにも問題が出てきます。荷を1回降ろし
て、それからまた上げたりする必要があり、そうするとコストがかかるということがあっ
たからです。ですが、それでも統合は進みつつありますし、問題は解決していっておりま
す。AFTA あるいは ASEAN の理念に反するようなことは起こっていないと思います。
それから、CLMV に関して言えば、タイ政府はいま非常に小さい分野にまず焦点を当て
て活動を進めております。それに ASEAN のメンバーであり近隣諸国である国々に力を入
れているわけです。私どもの方でそれらの国に対して一方的に、例えば関税をほとんどゼ
ロに近いところに 100 ないし 200 品目を対象に下げるということを行っております。
それから、場合によって関税がゼロだからといって輸出できるとは必ずしも限りません。
89
というのは、割り当てというものがあるからです。また、農産物の保護といったものもあ
ったりするわけです。例えば CLMV からタイに輸入するときには 26 以上のいろいろなラ
イセンスをとらなくてはいけないという許認可が必要になります。それから、これに関し
ては1カ所で手続が済むようにするという形で担当省庁の方々に働きかけてお願いしてお
ります。Eライセンシングといった形で電子的に許認可ができればいいんですけれども、
そこまではなかなか無理ということで、この辺のところに力を入れて、近隣諸国の方の所
得を確保したいと思います。まず、輸出をして稼げなければ何も物も買うこともできない
ので、購買力もつかないということです。
人材養成に関しては、やはりしっかりとした人材がいなければ生産と貿易を通したビジ
ネスができないということで、力をいれております。
3つ目といたしまして,幾つかの団体に対して現地通貨建ての債券の発行を認めようと
考えておりまして、これはいま検討中の段階になっております。
場合によっては、インフラの整備も行っております。ラオス、カンボジアに対してとり
あえず支援を行っておりますけれども、こうした金融的な仕組みを活用して産業全体の再
構築ですとか、それから農業その他の分野への展開もできるのではないかというふうに考
えております。これは ASEAN 内の一部の狭い地域で始めて少しずつ拡大していきたいと
いうふうに考えております。
○シマンジュンタク
確かに競争という意味では、インドネシアと中国はかなり厳しい競
争を展開することになるでしょう。既にいろいろな製品で競争力がそがれているという状
況を 93 年以来経験しております。ですが、全般的にそうとは言えません。分野によっては
インドネシアが中国に対して依然かなり優位にあるという場合もあります。特に資源ベー
スの製造業においてです。一見すると中国のコスト競争力というのはかなりの脅威に見え
るのですけれども、消費に関する判断というのは実は価格だけで行われるものではありま
せん。私は、実はジャカルタのあるセラミック企業の社外取締役をしておりますが、この
会社は高品質のセラミックのタイルをつくっております。かつてインドネシアには非常に
安価なセラミックタイルが中国から入ってきた時期がありましたが、私どもはそれでもイ
ンドネシアにおいてシェアを維持しております。
これは例えばオートバイに関しても言えます。中国のオートバイが初めてインドネシア
に入ってきたときに多くの人々は中国製のものを買うということで非常に盛り上がりまし
90
て、ブームになったわけなのですが、そのサイクルは既にピークを越しまして、地元の、
というのは実は日本のなんですけれども、ホンダやスズキ、ヤマハといったものへの回帰
が起こっております。
そういう意味では、厳しい競争にさらされる分野ももちろんありますが、必ずしもそう
ではありません。一部の分野においては、産業間の取引に関して特に考えられますが、や
はり中国とインドネシアが相互補完できるところがかなりあります。
ご質問の2番、円滑化策についてですが、円滑化というのはやはりその各産業でのリー
ディングカンパニーが ASEAN に来るようにする、すなわち投資を誘致するということが
大事だと思います。一番これが貿易の円滑化になると思うのです。
ジャネット・アンさんは、diversified(多様化)という言葉をお使いになられましたが、
これはプロセスベースの国際分業ですね。このような複雑な科学技術を使った経済の時代
においては、一つの産業で競争力を維持するに当たってすべてのプロセスにかかわってい
くということは無理です。必ずどこかにニッチがありまして、仮にインドネシアのような
あるいはベトナムのような途上国でも実は入っていけるというそういう余地が必ず存在す
るのです。ですので、世界あるいは業界をリードするような企業が投資を通じて地域に入
ってくれれば、実は貿易円滑化の問題はかなり解決するのだと思います。
これまでの経験、APEC の円滑化のところでいろいろな問題もありました。ただ、もち
ろん政府ができることというのもあります。ただ、もう少し大胆な施策を政府としてもと
ってくれないと、やはりあまり使えないと思います。私としては、張さんもおっしゃった
ように、できれば ASEAN+1 とか ASEAN+1 が 3 つあるような状態よりは全体として1
つのものがあればいいというふうに思っております。その方がリソースの配分も効率的に
東アジアの中でできると思うのです。また、取引のコストも随分低下すると思います。3 つ
の FTA をそれぞれ管理して ASEAN と中国、ASEAN と韓国、そして ASEAN と日本など
と結ぶ、あるいはもう一つ ASEAN とインドもあったりなどすると話がもっとややこしく
なります。
○張
私の方からはまず、台湾問題について自発的にお答えいたしたいと思います。恐ら
くそれはリムさんではなくて、私宛ての質問だったのではないかという気がするのです。
さて、東アジア、FTA ということであるならば、答えはイエスということになるでしょ
う。しかし、それはまだ始まっておりません。これは 10+3 とは異なるものです。10+3
91
は国と国の間の対話として始まったものです。香港、マカオはまだ入っておりません。も
し、今後EA、すなわち東アジアFTAを目指すのであるならば、こういったところも入
れるべきだと思います。しかし、やはり政治的な知恵が必要になります。どうやってこれ
を扱えばいいのか。少なくともいまは政治的な環境を考えますと、中国と台湾ということ
で、まだ適切な政治的環境は整備されてないと思います。
でも、先ほども言いましたように経済協力というものが中国と日本とが一緒にやるため
の重要なプラットフォームになると考えますので、そうであるならば、中国と台湾だって
不可能ではないと思うのです。
それから、知的財産権の件ですが、まず第 1 に中国にとってイノベーションは今後さら
に重要になりますので、まず中国はそこに大きく関心を払っております。
また、第 2 に WTO 以外にも地域協力によって非常に重要な基盤ができると思います。と
いうのも、地域協力あるいは統合というのはそもそも経済的なハーモナイゼーション、そ
して標準化を緊密に図るということでありますので、中国としてはどういった変化であれ、
これを受け入れると思います。そうすることによって中国自身もさらに前進することがで
きると考えます。
○山澤
2つ問題をいただいて、最初の問題は、日本はどうすべきかということです。こ
れについては、渡辺理事長が一番先にお話になったところで、既にそれをおっしゃってお
られたと思います。2つ、それは構造改革をきちっと進めていくことであり、もう一つは
マクロ経済的にも着実に再活性化をするということです。恐らくは3%ぐらいの成長率で
しょうが、それを着実に維持できるような体制にもっていくこと。それがなければいけな
いだろうと思います。
2番目は、今後はどうしたらいいのかということです。これは私と張蘊嶺さんとの間で
随分違いがあるような、彼の説明の仕方がプロパガティブであったわけですが、しかしエ
コノミストとしては、考え方は非常に近いのです。2人とも東アジア共同体というものが
将来的には最もいいものであるということは、もうまずその点で違いはありません。その
点はジスマンさんもそういうことを言われたし、それからリムさんやキティさん、いろい
ろ理屈はくっつけるけれども、基本的にはその方向性は似ているというふうに思います。
ただ、私はもう少し張さんよりは慎重です。そうは言ってもなかなか早急にそれはでき
ないから、現実にどうしたらいいかというと、張さんが言うようにいち早くそれを提案し
92
ろというよりは、むしろ現実にあるものを動かしていって、動く部分を動かしていく。1
つだけ先行すると貿易転換効果が生じて、大変困るわけですね。だから、どれも並行して
動かしていって、最終的にそれに持っていけるような形にするのがいいのではないか。日
本は、ASEAN の人たちが言われるように、ASEAN を引き上げて中国に行くということは、
実際の動きとしてそんなに大きな動きではありません。日本にとって、日本のビジネスに
とって ASEAN は ASEAN、中国は中国で、その2つを合わせて並行して進めていくという
ことになっています。だから、それを早急に一緒にする必要はありません。それは経済的
というよりはむしろ政治的なプロセス、さっきハンク・リムさんの言われたような政治的
なプロセスの難しさということだろうと思います。その特に中国と日本の間で、それがあ
る間、その中間に入る ASEAN や韓国がインターミディエーター;仲介者の役割をする。
もう少し経済的にはっきり言いますと、ハブのベネフィットを得るということは、私は一
向に構わないと思います。ぜひそうしてもらってほしい。最終的にはそちらの方向に進む
のであろうというふうに思います。
どうもありがとうございました。
○司会(大辻)
どうもありがとうございました。
最後の論点などは続けると1時間以上かかるような気がしますが、もう既に終了の6時
を大分過ぎてしまいました。パネリストの皆様方、実りのある、また建設的で率直なご議
論をありがとうございました。
私も1分だけ話をさせていただいてよろしいでしょうか。
感想を3つ持ちました。第1は、第1セッションの話にもありましたように、経済実態
を踏まえますと、経済連携の流れは、全くもって待ったなしの状態に来ているということ
を、今日まさに実感しました。
第2は、東アジアは非常に多様ですので、既にたくさんの FTA に関する動きが出ていま
す。これを地域全体の連携に束ねていくのは、非常に課題が多いことだということを今日
実感しました。しかしながら、だからこそ東アジアの構造改革の意思とスピードというも
のが試される時が来ていると私は感じました。
最後に3点目としては、やはりその中で日本がどうしていくのかということだろうと思
います。東アジアの一員として日本がどうするか、どう行動するかということが大事だと
いう点です。これからどう行動すべきかということについて話しますと、また私もさらに
93
15 分ぐらいいただくことになってしまいます。以上の3点が宿題であり、感想でした。
それでは、最後にもう一度、非常に興味深い知的な議論をしていただいたパネリストの
皆様方に感謝をしたいと思います。
ありがとうございました。
会場の皆様方も、遅くまで、本当に長い時間、ご清聴ありがとうございました。
94
4.参考資料
①
李 洙喆
三星物産株式会社 副社長
②
山澤 逸平
③
ハンク・リム
④
キティ・リムサクン
⑤
ジスマン・シマンジュンタク
⑥
張 蘊嶺
国際大学 学長
シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
インドネシア戦略国際問題研究所 会長
中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
① 李 洙喆 三星物産株式会社 副社長
東アジアにおける三星の経営戦略
2003.11.26
三星物産株式会社 副社長 李洙喆
目次
I
世界経済環境の変化と東アジア経済協力
II
経済協力における韓国のISSUE
III
三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
1
95
① 李 洙喆 三星物産株式会社 副社長
Ⅰ. 世界経済環境の変化と東アジア経済協力
ƒ
世界貿易自由化の基調 脅威
¾
ƒ
ƒ
メキシコ カンクンWTO閣僚会談 交渉決裂:多者主義→2国間、地域主義
地域経済協力体制の強化
¾
2国間、地域間地域統合体:184 (’03.5月)
¾
EU、NAFTA、CIS域内の経済協力拡大
中国の浮上とASEANの潜在力
¾
世界の工場 中国、 ’02年の貿易規模 6,208億ドル (世界6位)
¾
人口 5.7億人、総交易量 7千億ドルのASEAN
¾
ASEAN と韓中日 3国との経済協力推進加速
2
Ⅱ. 経済協力における韓国経済の ISSUE
韓国の韓日 FTAに対する視角
ƒ
域内貿易拡大の必要性増加 及び 危機感
¾
ƒ
経済ブロック化の強化、域外国家に対する相対的不利益等
期待感:産業構造の高度化、市場拡大
不安感:貿易不均衡、技術依存度の深化
ƒ
原則的に賛成するが、憂慮の声もある
¾
韓日企業人等の協力が重要
¾
企業の競争力を高めるための技術開発と品質向上努力が必要
3
96
① 李 洙喆 三星物産株式会社 副社長
Ⅱ. 経済協力における韓国経済の ISSUE
東北亜HUB 国家化
東北亜 Business HUB
東北亜 物流拠点
東北亜 Biz 拠点
- 港湾、空港
拠点施設の拡充
-多国籍企業のアジア本部誘致
-東北亜 金融中心地
制度の先進化
拠点地域の開発
-法、制度 整備
-仁川国際空港
-釜山港、 光陽港
-> ユーラシア Silk road
-関税自由地域、
国際物流支援センター
環境改善
-仁川、釜山、光陽
経済特区指定/開発
-企業環境改善
-IT インフラの拡大
-生活環境改善
(敎育、住居、文化等)
朝鮮半島緊張緩和及び南北経協強化
(税制、外為、労使等)
外国人及び外国企業に親和的な環境作り
4
Ⅱ. 経済協力における韓国経済の ISSUE
韓中日 交易現況
□ 韓国の対中交易現況
1990年
輸 出
輸 入
貿易收支
□ 中国の対日交易現況
1990年
(億$)
1995年
2002年
6
91
238
23
74
174
△17
17
64
□ 日本の対韓交易現況
(億$)
1995年
2002年
1990年
(億$)
1995年
2002年
輸 出
120
359
618
輸 出
185
326
299
輸 入
61
219
400
輸 入
126
170
151
貿易收支
59
140
218
貿易收支
59
156
148
5
97
① 李 洙喆 三星物産株式会社 副社長
Ⅲ. 三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
ƒ
ƒ
三星の海外拠点
67ヵ国で 116の海外法人を運営
2001年 現地法人の売上 290億ドル
SEG,SSEG(電子)FFT支社(物産)
SDIG(SDI), SCD(コーニング)
電機法人
SECA(電子)
SEBN,ELS(電子)
SEMUK,SEUK,SSEL(電子) SENA(電子)
STP(物産)
SEP(電子)
SHE(電子)
SHPOL(電子)
SPEM(電機) SEF(電子),物産
SEI(電子),物産
SESA(電子)
SAS,SEA,STA,SISA,SSI(電子)
NY,LA(物産), サンホセ法人(電機)
SDIA(SDI), SDSA(SDS), SOA(テクウィン)
NY法人(生命,證券)
SEM,SAMEX(電子)
SDIM(SDI)
SEMSA(電機)
SER(電子)
カザックムス(物産)
TSED,SSEC,TSEC,TTSEC,SST,SESS(電子)
TSOE(テクウィン), TSEM,DSEM(電機)
SSDI,TSDI(SDI), TSSC,SSG(コーニング)
SDSC(SDS)
SGE(電子)
SIEL(電子)
SDIH(SDI)
UNION(テクウィン)
SET(電子), 物産
SEMPHIL(電機)
TSE(電子) SAVINA(電子) SEPCO(電子)
SEMTHAI(電機)
SECL
SDMA,SEMA(電子)
SDIM(SDI)
SCM(コーニング), 物産
SAPL(電子)
物産/電機
SELA(電子)
SEIN(電子), 火災
SEDA(電子)
SDIB(SDI)
SEAU(電子)
シドニー(物産)
SSA(電子)
SEASA(電子)
6
Ⅲ. 三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
三星の経営実績
ƒ
ƒ
5年間(’98-’02年)で 売上 1.6倍 成長
純利益 45倍 成長
108億ドル, 世界 25位
(’02年 83億ドル, 世界 34位)
¾ ’03年
¾ 2010年
売上 ’02年 対比 1.9倍 成長
税前利益 2.1倍 成長 Vision
Sales
ブランド価値
¾ 2010年
700億ドル
Net Income
116.8
(US$ Bil)
8.9
72.0
0.2
1998
2002
(出所 : INTERBRAND)
7
98
① 李 洙喆 三星物産株式会社 副社長
Ⅲ. 三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
年度別海外投資戦略
ƒ
80年代 : グローバル化の胎動期
¾ 先進国市場中心の販売拠点確保
¾ 迂回輸出のための製造拠点を東南アジア、東欧に構築
ƒ
90年代前半 : 海外進出 本格化
¾ 地域 ブロック化に対応 → 現地 国内 市場への参入
¾ ブラジル、インド、中国市場への参入
¾ イギリス、メキシコ、マレーシア等に三星の協力会社や関係会社と共同進出
ƒ
90年代後半 : 量中心の海外進出による不振事業の再編及び
新たな IT分野への転換
¾ 中国、インド等の成長市場に
ƒ
新規拠点を構築
2000年代 : 地域特性を基にした差別化
¾ 会社全体のシナジー効果を高める方向
8
Ⅲ. 三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
拠点別経営戦略
米
国
現地マーケティング
技術、情報 導入拠点
- 現地マーケティングセンター
- R&Dセンター
(製品開発、デザイン)
部品,半製品
欧
州
完製品
現地 確保型
海外生産拠点
- 高価品 生産基地
- R&Dセンター、 デザインセンター
- 現地マーケティングセンター
- 地域総括本部 設置
技術
メ
キ
シ
コ
世界指向総括本部
迂回 輸出基地
- 中低級品 生産
- 部品生産 供給基地
東
南
ア
韓
国
中
国
- 研究開発拠点
- 高付加価値製品
開発、生産
- 国際経営資源 開発
多目的 生産拠点
日
本
-迂回 輸出型 生産基地
- 欧米と結びついた部品
供給 基地
- 国内再輸入 生産基地
- 購買、地域 総括本部 設置
第2の三星 基盤市場
-第2の内需市場
-グローバル 製造基地
-人力 活用 拠点
新規 輸出市場及び
技術導入 拠点
- 現地R&Dセンター 設置
−現地マーケティング
センター 設置
9
99
① 李 洙喆 三星物産株式会社 副社長
Ⅲ. 三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
中国拠点の現況
ƒ
68拠点
¾ 生産拠点 26ヵ所
ƒ
ƒ
’02年 売上 77億ドル
電子、電機
SDI、コーニング 等
電子
’03年 売上 100億ドル
重工業
深圳
電子、SDI
コーニング
R&D Center
電機、SDI
物産
10
Ⅲ. 三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
中国市場戦略
ƒ
ƒ
ƒ
ƒ
中国生産基地を土台にした世界市場への進出を強化する
生産拠点の拡大、R&D Center の運営、優秀な人材を確保する
¾
生産拠点の拡大: ‘99年 19ヵ所 → ’02年 26ヵ所
¾
R&D :工場進出と共に関連R&D Center (通信専門研究所) も 設立
¾
優秀な人材の確保:韓国本社中心
製品差別化のためのブランド(イメージ)中心の戦略を展開する
販売戦略を二元化する
¾ 中国で生産された製品の海外輸出は韓国本社が中心
¾
中国の国内販売は現地の販売拠点を中心に展開
11
100
① 李 洙喆 三星物産株式会社 副社長
Ⅲ. 三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
東南アジア拠点の現況
ƒ
電子関係社
¾
6ヵ国 21拠点
¾
’00年 売上 31億ドル
’02年 売上 42億ドル (38%伸長)
¾
ƒ
三星物産、第一企画、
三星火災、三星重工業 等
電子、電機
電子、SDI
コーニング
12
Ⅲ. 三星のグローバル経営と東アジア経営戦略
東南アジア市場戦略
ƒ
ƒ
ブランド価値を高める
国家別 M/S 1位 の製品及び 高級製品の販売を拡大する
¾ 供給面
ƒ
(生産コスト)→ 需要面 (市場及び收益機会)
関係会社間のシナジー効果を高める
¾ プロセス革新及び関係会社間のベンチマーキング
¾ 共同営業の展開
ƒ
優秀な人材を確保する
13
101
① 李 洙喆 三星物産株式会社 副社長
Thank You
三星物産株式会社 副社長 李洙喆
102
② 山澤 逸平 国際大学 学長
東アジア経済連携シンポジウム
2003年11月26日
第2セッション・基調報告
日本ASEAN包括的経済連携:
理念と課題
日本ASEAN研究機関共同報告
(山澤逸平)
1
1.日本ASEAN包括的経済連携の経緯
• 2002年1月:小泉総理が提案
• 2002年9月:ASEAN経済大臣・経済産業大臣
(AEM-METI)共同宣言で方向付け
• 2002年11月日ASEAN首脳会議で採択
• 2003年中:日本ASEANの政府会合が詰め
• JETROアジ研がASEAN10の研究機関を招き、
共同研究組織
• 2003年7月東京で日ASEAN研究機関会合開
催、9月の経済大臣会合へ提言
• 10月、AEM-METI,首脳会議で交渉開始合意
2
103
② 山澤 逸平 国際大学 学長
2.日ASEAN関係再強化の試み
• 日本とASEANは30年以上に及ぶ緊密な貿
易・投資・経済協力関係を築いている
• 日本の主要企業はASEAN各国にビジネス
網を構築済み
• ASEANと中国は多くの分野で競合。日本は
ASEANとも中国とも補完関係が強い。
• ASEAN、中国ともに日本の主要なパートナー
3
3. 貿易額の推移
単位:100万米ドル
from
日本
ASEAN
中国
to
1990
2000
1990
2000
1990
2000
日本
27,000
55,945
9,327
41,654
ASEAN
32,066
68,186
27,500
93,075
3,493
16,633
中国
6,145
30,356
2,268
16,179
4
104
② 山澤 逸平 国際大学 学長
4. 貿易結合度指数
from
日本
to
1990
2000
1990
2000
1990
2000
日本
ASEAN
中国
ASEAN
2.33
2.52
4.17
3.92
1.1
1.18
2.77
2.49
1.99
3.13
中国
1.29
1.91
0.99
1.16
5
5.競争力のステージ(2000年)
家電部品
パソコン周辺機器
1
(1) 導入ステージ (2) 輸入代替ステーシ (3) 輸出ステージ
゙
フィリピン
マレーシア タイ インドネシア
中国
0
(4)成熟ステージ
(5) 逆輸入ステージ
1
シンガポール
韓国 台湾
日本
米国
-1
(1) 導入ステージ (2) 輸入代替ステーシ (3) 輸出ステージ
゙
0
韓国 台湾
シンガポール
(4)成熟ステージ
(5) 逆輸入ステージ
日本
タイ
中国
マレーシア インドネシア
フィリピン
米国
-1
アパレル
(1) 導入ステージ (2) 輸入代替ステーシ (3) 輸出ステージ (4)成熟ステージ (5) 逆輸入ステージ
゙
1
中国 タイ マレーシア インドネシア
フィリピン
韓国
台湾
シンガポール
0
米国
日本
6
出所: アジア経済研究所
-1
105
② 山澤 逸平 国際大学 学長
6.日-ASEAN・CEPの理念
• 従来の2国間協力とは異なり、日本と統合A
SEANとの経済連携を目指すことで、新しい
ビジネス機会を創出する
• ASEANは単一市場形成に向けて保護主義
から競争力をつける政策へ転換する必要
• 日本は現在進行中の構造改革が統合ASEA
Nを見込んで日本企業の海外生産立地にど
のように影響するか明示する必要。
7
7.日-ASEAN・CEPの理念(続)
• 後発ASEANメンバー(CLMV)のハンディ
キャップを克服する支援プログラムと制度的
プロセスを織り込む
• 貿易投資の自由化のみならず、円滑化、経
済技術協力など包括的に取り組む
8
106
② 山澤 逸平 国際大学 学長
8. 日ASEAN・CEPの課題1:
統合市場ベースでの効率的分業体制
• 日本とASEANが貿易・サービス・投資の障壁を
完全撤廃すると、ASEAN域内及びASEANと
日本との間で、より効率的な国際分業が構築で
きる
• 日系企業は従来の2国ベースの分業からASE
AN大の分業へ転換し始めている 9
9. 日ASEAN・CEPの課題1(続)
統合市場ベースでの効率的分業体制
• この可能性はASEANでの生産の効率性を高
め、期待利潤率を高め、ASEANへの直接投
資をさらに多くひきつける動態的効果を生む
• この動態的効果は日本にも少なくない効果をも
たらし、先行する中国ASEAN・FTAの効果を
凌駕する(アジ研CGEモデルによるシミュレー
ション)
10
107
② 山澤 逸平 国際大学 学長
10.課題2:単一ASEAN市場の完成
• ASEAN自由貿易地域(AFTA)は先発6メンバー
が2003年中に一部品目を除き5%以下の域内
関税を達成し、他メンバーが2006−10年内に
達成する。計画通りの完成を。
• 関税、非関税措置だけでなく、サービス、投資の
自由化も実施して、円滑かつ迅速なビジネスが
できる環境を整備する必要
• ASEANも政府間協力組織から、有効な地域協
力機構へ、制度強化も必要になろう。
11
11.課題3:産業高度化と競争力強化
• 中国との競合激化で、ASEAN各メンバーは
未熟練労働集約産業での国際競争力低下
• 人材育成、技術・技能形成により、技術水準
を高め、統合ASEAN市場に根ざした新しい
比較優位産業を育成する必要
• 先発メンバー国は産業高度化、競争力強化
に向けた戦略をとって、知識基盤経済を目指
している
12
108
② 山澤 逸平 国際大学 学長
12.課題4:日本の産業構造改革
• 日本経済は成熟化、少子高齢化、80年代後半
の急激な円高化やバブル経済の後遺症で10年
余の長期停滞
• さまざまな制度・規制改革を実施して、経済再活
性化に取り組んでいる
• 日本の再活性化なしでは日ASEAN CEPは十
分な推進力をもたぬ
• 日本企業は東アジアを中心として海外進出して、
分業ネットワークを再構築中
• 農産物自由化や労働流入の拡大はASEAN各
国の関心事。CEPの枠組みで実験的取り組を13
13.課題5:政策環境の共同整備を
• 日ASEAN・CEPの目的は、域内でのビジネ
ス環境を整備して、内外企業を誘致すること
• 域内通関手続きの簡素化、迅速化は最重要
• 加えて、基準認証、知的所有権、競争政策、
物流インフラ等の円滑化措置を共同で整備し、
シームレスのビジネス環境形成を
• 日本も将来の人材不足に備えて積極的に協
力を
• APECの円滑化・経済技術協力も活用
14
109
② 山澤 逸平 国際大学 学長
14 課題6:資本市場と金融協力強化
• 1997−8年のアジア通貨危機後、東アジア
で地域金融協力の共通認識が高まる
• すでにいくつかの成果が出ている
-マニラ枠組み
-チェンマイ・イニシャティブ
-アジア債券市場の育成
・ さらに相互経済監視メカニズム、マクロ経済
政策協調、地域の為替レート協調の可能性も
15
15.課題7:後発国への支援措置
• ASEAN後発メンバーは低所得で、資本・人
的資源・技術不足、インフラ不備でハンデ大
• 2000年11月の「ASEAN統合計画」で、先
発国による後発国の人材育成支援を謳う
• AFTA計画では後発国に達成期限の遅れ、
多数の例外品目を容認
• 日本は後発メンバーへはODA供与を継続、
先発メンバーの人的支援その他を組み込み
• メコン河流域開発プロジェクト、特に東西及び
南北の輸送回廊を実現して、物流改善を 16
110
② 山澤 逸平 国際大学 学長
16.日ASEAN・CEP達成の道筋
• 東アジアでは2国間、ASEAN+1、ASEAN+
3等のFTA構想が続出している
• 内外のエコノミストには貿易転換による域外差
別や種々のFTAの錯綜によるスパゲッティーボ
ウル効果を警告する声も
• しかし地域協力強化の要望や競争的自由化の
ダイナミックスは活用すべきもの
• 経済合理性からはASEAN+3が良いが、その
早期の実現には種々の障害も
• 究極的にはASEAN+3を目指すとして、各種
17
のFTA構想の平行推進が現実的か
111
③ ハンク・リム シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
Creating a Seamless Market in East Asia
Presented by:
Dr. Hank Lim
Director of Research
1
Introduction: Underlying Economic Reasons
for Emergence of Regional and Bilateral
FTAs
• Neo-classical economic theory vs. Reality
– GATT works relatively well for achieving freer trade
– WTO allowed formation of regional and bilateral trade
agreements
• Promoters of FTAs argue:
– Maintain trade liberalization to avoid back-sliding and disguised
protectionism
– Doha Development Round – risk of slow trade liberalization due
to conflicting member interests
– FTAs promote/complement multilateral liberalization
– Gradual exposure – few countries first before international
community
2
112
③ ハンク・リム シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
• No assurance that a web of FTAs promotes smooth
economic transactions between countries
– FTAS are discriminatory
– Web of FTAs has complications that may impede liberalization:
tariff rates and rules applied to the same products
– Trade in services, investment, competition policy, government
procurement and migration (for newer FTAs)
– “hubs and spokes” – barriers remain between spokes
–
– Promotion of liberalization through FTAs theoretically
questionable
3
Regional Economic Integration
• Financial Cooperation, bilateral and regional trade
agreements in East Asia:
Reasons:
– Asian financial crisis
– China challenge
– Slow progress of WTO, other RTAs and co-operation schemes due to greater
economic integration in N. America and Europe
• Less progress in East relative to EU and NAFTA
– Competition and antagonism between Japan and China
– Absence of overwhelming geo-political challenge (WWII for EU)
• No successful region-wide proposal yet; only proposals
for RTAs with ASEAN
4
113
③ ハンク・リム シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
• Trend for comprehensive agreement
– Provides ASEAN with flexibility
• Comprehensive Economic Partnership (CEP)
Includes:
– Traditional FTA components
– Facilitation (standards, customs)
– General co-operation elements (HR and technology co-operation)
• How to introduce elements to make a “model”
– E.g. AFTA schedule of tariff reductions
– Minimize “spaghetti bowl” effect
– Introduce time lines to avoid protracted negotiations
• How to facilitate and accelerate FTAs
– Begin with non-controversial elements
– Concurrently pursue liberalization agreements, e.g. Early Harvest
5
A Seamless Market
• Definition:
– Removal of all barriers and other forms of discrimination between
member countries
– Cover virtually all trade (incl. services, FDI, etc.)
– Be based on rules of general application rather than sector-specific,
outcome oriented commitments
– Have terms of access for non-members that are at least not worse than
prior to the regional agreement
– Be a new age agreement with broad scope of measures rather than a
traditional one (i.e. beyond traditional FTA)
• Requires both unilateral and collaborative efforts
– Efforts may include but are not limited to liberalization, facilitation,
structural reform, innovation and regional cooperation in a variety of
areas
– Concerted efforts needed to suggest best practices and encourage
implementation of minimum standards
6
114
③ ハンク・リム シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
“Spaghetti Bowl”?
• No. of preferential trading agreements (PTAs) arising in
the region could potentially pose a threat to the creation
of a seamless market
– “Spaghetti-bowl” effect would undermine some of the benefits of
trade liberalization
• Currently, most of the newer agreements have many
areas that have not been negotiated, such as
competition policy, and whether negotiations will result in
inconsistent measures has yet to be fully determined.
– E.g. ASEAN-China FTA has not been fully mapped out in crucial
areas such as Rules of Origin (ROO) and competition policy
7
Trade Liberalization:
Is it still important in East Asia?
• East Asia did not seek early on to promote intra-regional trade via
custom unions, FTAs and PTAs
• Governments usually opted for market forces and private sector to
orientate trade
• Thus, region already embraced trade liberalization both unilaterally
and through multilateral trade rounds
⇒ This path has been largely successful (significant trade creation) mostly
due to their non-discriminatory nature
• Average tariff rates in most East Asian countries are at 5-10% level
• Study by World Bank estimates that complete liberalization will yield
a 2% increase in income for East Asia.
• 2% relatively small but it is the distribution of income that makes it
still important – income gains will be higher for poorer countries
8
115
③ ハンク・リム シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
Tariff Averages of APEC economies in 1995 and 2000
9
• Remaining barriers mostly in sensitive goods, e.g agriculture and
textiles
• Huge gains to be had from agricultural liberalization
10
116
③ ハンク・リム シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
Services Liberalization
• East Asian countries particularly resistant to services liberalization
although trend is changing
• Many East Asian economies lack comparative advantage in this
area and many services sectors still dominated by inefficient stateowned enterprises
• Some areas pertain to national security such as labour movements
• In ASEAN:
– After 1995 ASEAN Bangkok Summit, there was an agreement (ASEAN
Framework Agreement of Services (AFAS)) to negotiate 7 service
sectors: banking, tourism, air transport, maritime transport,
telecommunications, construction and professional services
– AFAS not particularly successful
11
• In China
– Range of commitments for services liberalization agreed to for WTO
accession is the most thorough ever undertaken in the GATT
– Many critical sectors such as telecommunications, logistics and finance
have been opened
– Commitments focus on market access and do not discriminate between
foreign and domestic suppliers
• In Korea
– Significant liberalization in services since 1996
– Most notable are construction and telecommunications
• In Japan
– Services sector still considerably protected from foreign competition
through internal regulations, state-ownership and government’s
tolerance of anti-competitive behaviour
12
117
③ ハンク・リム シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
Trade Facilitation
• Lower costs of administration, standardization,
technology, information, information flow, transactions,
labour, communications, insurance and financing
• Also reducing time costs related to these activities
• Involves both “behind-the-border” initiatives as well as
cooperation between countries
• Benefits are greater than those of trade liberalization
according to APEC study
• Trade facilitation especially beneficial due to current
trend of increasing intra-regional dependency
13
Some Important Areas of
Trade Facilitation
• Harmonization
– Important for lowering transaction costs and increasing efficiency
– More complicated for larger grouping because it involves harmonization
on multiple aspects
• ROOs
– Important to ensure that PTAs have complementary ROOs to prevent
“spaghetti bowl” effect
– Increasing fragmentation in production process through regional
production networks creating greater complexities for the architecture
of conventional ROOs
– Possibly extend AFTA’s ROOs to ASEAN+3 agreements
• Dispute Settlement Mechanisms
– Increasing intra-regional trade will invariably lead to more disputes
• Competition Policies
– Important for innovation
14
118
③ ハンク・リム シンガポール国際問題研究所 研究ディレクター
Conclusion
• Rapid changes in international and regional environment
require drastic policy and structural changes in NE and
SE Asian economies
• China and its entry into WTO poses a challenge
• Heterogeneity of political systems and diversity in many
other aspects makes the creation of a seamless market
difficult
• Ultimately, it is important to adhere to principle of
consistency between FTAs and to agree on a common
framework for the building of an East Asian Community
15
119
EXECUTIVE SUMMARY
FREE TRADE AGREEMENT (FTA) AND MARKET LIBERALIZATION
: CREATING A SEAMLESS MARKET IN EAST ASIA
Hank LIM
In the neo-classical economic theory, it has been well established that global free trade would
maximize economic benefits and minimize costs in individual countries and globally at the same
time. However, in reality, completely free trade has never been realized even at the level of an
individual country because policy decisions are made not only to pursue pure economic welfare but
also to achieve other objectives according to domestic political and strategic preferences.
Lately, the number of bilateral or regional free trade agreements (FTAs) has increased significantly.
In East Asia, ASEAN Free Trade Agreement (AFTA) is the first regional FTA that has come into
full operation in January 2003. In Northeast Asia, a region-wide FTA is yet to emerge. Japan, a longtime proponent of multilateral trade liberalization, has signed a bilateral Japan-Singapore Economic
Partnership Agreement (JSEPA) in 2002. Singapore has signed bilateral FTA with New Zealand,
Australia, Japan, European Free Trade Area (EFTA), US and in negotiations with a number of other
countries. Among ASEAN countries, Singapore, Thailand, the Philippines and Malaysia have
become interested to pursue FTAs with extra-regional countries as an important and tangible policy
option, though these countries accorded priority to AFTA as their most important trade liberalization
framework. In addition, ASEAN- China and ASEAN - Japan have initiated a Framework Agreement
on Comprehensive Economic Co-operation. The ASEAN-China agreement goes beyond and
explicitly aims at the establishment of an ASEAN-China Free Trade Area within 10 years. China is
the first country that concluded a framework agreement with ASEAN as a group. This could provide
a strong incentive for ASEAN to act as a group in developing similar agreements with Japan and
Korea, India and other countries. If ASEAN can become a strong and viable hub and introduce some
consistency in its various bilateral agreements, it can turn the ASEAN-China framework agreement
into a comprehensive, region-wide agreement. Without such a regional-wide consistency in bilateral
trade rules, there is a great risk of having a “spaghetti bowl syndrome” in the East Asian FTAs and
120
business network that will increase transaction costs, overlapping and impediment to a seamless East
Asian marketplace.
Increasingly, the East Asia Free Trade Area (EAFTA) has become an important agenda for East Asia.
Because of the risk of overlapping bilateral FTAs, It is argued that East Asia needs to consolidate all
its existing sub-regional FTAs in order to move forward towards the formation of EAFTA. Such
region-wide FTA is theoretically optimal but very difficult to implement because of different levels
of economic development and economic systems prevailing among East Asian countries.
It is generally agreed that bilateral FTAs seem to provide a more practical approach to achieve a
region-wide free trade area but there are risks of overlapping, inconsistency with the WTO principles
and rules. It is also very important to note that free trade may also less benefit the less developed
countries in the region as much as developmental co-operation. Therefore, market liberalization and
free trade must be closely linked with trade facilitation and technical co-operation. Infrastructure,
institutional building and human resource development are important measures to be undertaken by
the regional countries in initiating trade and market liberalization and regional co-operation. The
vision for ASEAN economic integration, as contained in the ASEAN Vision 2020, envisaged a
stable, prosperous and highly competitive ASEAN economic region in which there is a free flow of
goods, services, investment and a freer flow of capital to create a seamless market of 500 million
consumers.
The strategic linkage of FTAs and market liberalization to ASEAN Vision 2020 and East Asia FTA
needs to be elaborated to provide a clear balance sheet of the benefits and costs to regional countries
with a view to enhance regional co-operation and a seamless East Asian marketplace.
Free Trade Agreement and market liberalization would contribute to regional growth and market
liberalization if the objectives converge with the principle of comparative advantage and market
conditions. These conditions can be strengthened and institutionalized through domestic political,
economic reforms and good governance.
In addition of reducing the average tariff rates across a broad range of mostly traded goods in the
region, it is also very important to liberalize trade in services. East Asian countries are particularly
quite resistant to liberalization in the service sector and this sector increasingly has become a
121
dynamic integrated driving force behind regional economic integration. Services in logistic
transportation, financing, banking, telecommunication, tourism, IT and other professional services
are vital to intra-regional networking in manufacturing activities.
With a view to create a seamless regional marketplace, there are other important ancillary areas of
trade facilitation. These are in the areas of harmonization of customs, standardization of products,
rules of origins (ROO), dispute settlement mechanisms and competition policy. These policies are
necessary to facilitate the efficient and effective implementation of bilateral and regional FTAs that
are emerging in the region.
Rapid changes in international and regional environment have necessitated drastic policy and
structural changes among countries in East Asia. As a result of these external and internal changes,
established industrial structures and production patterns in the world and in East Asia have been
considerably altered. Mature and relatively more developed economies in the region have to
continually upgrade and restructure. Otherwise these economies would be experiencing "deindustrializing" (hollowing effect) and creating important domestic resistance towards regional trade
and investment liberalization. Alternatively viewed, FTAs proposals and comprehensive economic
partnership initiatives can be interpreted as policy-induces measures to maximize the potential
benefits and to reduce the potential short-run negative implications arising from the acceleration of
globalization and shortening of manufacturing product-cycle.
At this stage of regional economic integration and market liberalization, Japan can play a
proportionately vital role in providing trade and investment facilitation, capacity building,
institutional development, "public goods" through technical and financial assistance to upgrade and
restructure ASEAN economies. Through these measures, a dynamic intra-regional flows of trade and
investment between Northeast and Southeast Asian can be promoted and thus creating a regional
environment for a seamless East Asian marketplace.
* 本文(計 55 ページ)は以下のサイト上でダウンロード可能。
http://www.jetro.go.jp/ged/j/symposium/20031126/
122
④ キティ・リムサクン タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
The Commemorative Symposium on Business Strategy and Economic
Partnership in East Asia and APEC SME Business Network Promotion Forum
Japan-ASEAN Comprehensive
Economic Partnership
November 25 - 29, 2003
JETRO, Japan
By Dr. Kitti Limskul
Japan-ASEAN Comprehensive Economic Partnership
I. The Assessment of Japan-ASEAN
Economic Cooperation
II. A New Chapter of Economic Cooperation Between Japan and
ASEAN:
The Japanese Role in the Growth in ASEAN Region
123
④ キティ・リムサクン タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
Table 1: ASEAN Trade, 2002 (in US$ Million)
Country
Brunei D.
Cambodia
Indonesia
Malaysia
Myanmar
Philippines
Singapore
Thailand
Total
Total
Intra
Total
ASEAN
ASEAN ASEAN
Export
Export
Import
2,690.8
684.1
1,600.4
1,916.1
91.9
1,664.8
57,158.8
9,933.5
31,288.8
93,277.2 22,127.1
78,797.9
2,452.2
1,221.3
2,118.1
35,208.2
5,529.7 33,576.41
125,042.7 33,962.6 116,336.4
63,639.7 12,792.4
59,931.5
381,385.6 86,342.6 325,314.3
Intra
ASEAN
Import
598.9
598.0
6,931.8
17,245.2
1,190.8
5,542.0
30,441.4
10,570.0
73,118.1
Total
Intra
ASEAN
ASEAN
Trade
Trade
4,291.2
29.9
3,580.9
19.3
88,447.6
19.1
172,075.1
22.9
4,570.3
52.8
68,784.6
16.1
241,379.1
26.7
123,571.2
18.9
22.6
706,699.9
Source: ASEAN secretariat
Table 2: ASEAN Trade with Major Trading Partners, Q1 2003 (in US$ Million)
C o u n tr ie s
In tr a -A S E A N
A u stra lia
C anada
C h in a
EU
In d ia
Japan
K o re a
N e w Z e a la n d
P a k ista n
R u ss ia n
USA
R e st o f th e W o rld
W o r ld
E xport
2 0 ,4 4 0 .2 6
1 ,9 6 5 .3 1
2 8 1 .6 5
3 ,6 1 1 .9 3
7 ,9 9 7 .2 6
1 ,2 8 0 .3 6
5 ,9 1 6 .1 1
3 ,3 3 2 .7 1
2 2 3 .5 8
2 3 8 .7 2
1 4 9 .8 1
9 ,2 7 8 .9 0
3 2 ,0 4 6 .2 0
8 6 ,7 6 2 .7 8
Im p o r t
1 4 ,8 5 7 .2 6
1 ,1 8 1 .4 1
2 4 7 .0 1
4 ,0 1 0 .4 7
6 ,9 2 6 .7 1
5 2 2 .7 9
8 ,7 5 0 .2 3
2 ,4 3 9 .7 4
2 1 1 .3 9
2 1 .2 2
3 0 0 .4 2
9 ,1 6 6 .8 7
2 7 ,7 1 5 .9 2
7 6 ,3 5 1 .4 4
Note: Intra-ASEAN trade covers only Brunei D., Cambodia, Malaysia, Myanmar,
Philippines, Singapore, and Thailand.
Source: ASEAN secretariat
124
T rad e
3 5 ,2 9 7 .5 2
3 ,1 4 6 .7 2
5 2 8 .6 6
7 ,6 2 2 .4 0
1 4 ,9 2 3 .9 7
1 ,8 0 3 .1 5
1 4 ,6 6 6 .3 4
5 ,7 7 2 .4 5
4 3 4 .9 7
2 5 9 .9 4
4 5 0 .2 3
1 8 ,4 4 5 .7 7
5 9 ,7 6 2 .1 2
1 6 3 ,1 1 4 .2 2
B a la n c e
5 ,5 8 3 .0 0
7 8 3 .9 0
3 4 .6 4
-3 9 8 .5 4
1 ,0 7 0 .5 5
7 5 7 .5 7
-2 ,8 3 4 .1 2
8 9 2 .9 7
1 2 .1 9
2 1 7 .5 0
-1 5 0 .6 1
1 1 2 .0 3
4 ,3 3 0 .2 8
1 0 ,4 1 1 .3 4
④ キティ・リムサクン タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
I. The Assessment of Japan-ASEAN Economic Cooperation
1) Japanese investment into ASEAN contributes to economic growth through trade
2) The higher growth can result in deepening of trade deficit with Japan
3) Trade with China is expanding to exploit large market opportunity
4) Japanese firm exploiting cheap labor cost in ASEAN considers of
moving to China : delays trade liberalization in ASEAN and diverts
Japanese direct investment in to ASEAN.
5) Japan-ASEAN trade arrangement (FTA) may aggravate trade deficit with
Japan for most of members
II. The Japanese Role in the Growth in ASEAN Region
1. Market size and Purchasing Power
2. Source of supplies both raw materials, capable
and abundant human resource, advancement
of production technology level
3. Convergence of the market economy
framework under FTA.
125
④ キティ・リムサクン タイ財務政務次官、前チュラロンコン大学 教授
Conclusion
The Emergence of China
The International Trade and Investment Relationship
Bilateral Relationship between Japan-ASEAN
‘Triad’ of Three Players ‘Japan-ASEAN-China’
The End
126
Japan-ASEAN Comprehensive Economic Partnership
By Dr. Kitti Limskul
1. Introduction
The economic cooperation between ASEAN countries and Japan has been
concentrated on trade, investment and official development assistance for several years.
The Japanese economic cooperation strategy has contributed to the economic prosperity
of the Southeast Asian economies for the last decades. At the same time, Japan has also
used ASEAN economies as destination of her industrial relocations. This is to target a
cost minimization of its production, especially, labor and land cost of ASEAN countries.
The practice on “cost leadership” principle in the beginning of 1990 has been added by
“product differentiation” through economic integration strategy as shown by the
relocation of industries, especially automobile industry and electronics and electrical
machinery industry to ASEAN. Through AICO, Japanese industries in ASEAN could be
linked to restore their specialization and division of labor. At the beginning, a mother
company could monitor her subsidiaries rightly from Japan. Currently, the Japanese firm
has becoming a resident company of any host country ASEAN. Clearly, ASEAN-Japan
economic relationship has been deepened and bringing prosperity to both sides.
The relation with Japan has come to spectacular after the emergence of the People
Republic of China (here after called China) as competitor and market destination of
ASEAN. The triangle relationship has changed. ASEAN trade with China has been
expanding. Japan has diverted her investment from ASEAN towards China in order to
restore her competitiveness of labor intensive industries.
The objective of this note has two folds. First, we would like to assess the
Japanese economic strategy towards selected ASEAN member country especially
Cambodia, Laos, Myanmar, and Thailand or CLMT. This is through investment, trade,
and ODA strategy. In this note, we will assess from angle of trade direction. Second, we
would like to propose a new chapter of economic cooperation between Japan and
ASEAN.
2. Assessment of Japan-ASEAN Economic Cooperation
Intra-ASEAN trade, as percentage of total ASEAN trade increased by 1.99%,
from 22.12% in 2002. Extra-ASEAN (trade with major trading partners) grew by 3.1% in
terms of export and 1% in terms of import during 2001 to 2002. For Q1 2003, data shows
that the United States (US), the European Union (EU), Japan, China (PRC excluding
Hong Kong), and Republic of Korea remained to be significant trading partners of
ASEAN. Other emerging trading partners have high growth potential are Russian, New
Zealand, Australia and China. ASEAN trade with India, Canada slows down.
It is noted that Japan has significant trade surplus with ASEAN. Trade deficit
with Japan can be postulated as result of direct investment from Japan in to ASEAN.
127
Relocation of industries to ASEAN has been driven by comparative advantage of
ASEAN countries as cost of labor and land is concerned. Influx of direct investment from
Japan was accentuated by Japanese Yen appreciation after 1985.
Table 1: ASEAN Trade, 2002 (in US$ Million)
Country
Brunei D.
Cambodia
Indonesia
Malaysia
Myanmar
Philippines
Singapore
Thailand
Total
Total
ASEAN
Export
2,690.8
1,916.1
57,158.8
93,277.2
2,452.2
35,208.2
125,042.7
63,639.7
381,385.6
Intra
Total
ASEAN ASEAN
Export
Import
684.1
1,600.4
91.9
1,664.8
9,933.5
31,288.8
22,127.1
78,797.9
1,221.3
2,118.1
5,529.7 33,576.41
33,962.6 116,336.4
12,792.4
59,931.5
86,342.6 325,314.3
Intra
ASEAN
Import
598.9
598.0
6,931.8
17,245.2
1,190.8
5,542.0
30,441.4
10,570.0
73,118.1
Total
Intra
ASEAN
ASEAN
Trade
Trade
4,291.2
29.9
3,580.9
19.3
88,447.6
19.1
172,075.1
22.9
4,570.3
52.8
68,784.6
16.1
241,379.1
26.7
123,571.2
18.9
22.6
706,699.9
Source: ASEAN secretariat
Table 2: ASEAN Trade with Major Trading Partners, Q1 2003 (in US$ Million)
Countries
Intra-ASEAN
Australia
Canada
China
EU
India
Japan
Korea
New Zealand
Pakistan
Russian
Export
Import
Trade
Balance
20,440.26 14,857.26
35,297.52
5,583.00
1,965.31
1,181.41
3,146.72
783.90
281.65
247.01
528.66
34.64
3,611.93
4,010.47
7,622.40
-398.54
7,997.26
6,926.71
14,923.97
1,070.55
1,280.36
522.79
1,803.15
757.57
5,916.11
8,750.23
14,666.34
-2,834.12
3,332.71
2,439.74
5,772.45
892.97
223.58
211.39
434.97
12.19
238.72
21.22
259.94
217.50
149.81
300.42
450.23
-150.61
128
USA
Rest of the World
World
9,278.90
32,046.20
86,762.78
9,166.87
27,715.92
76,351.44
18,445.77
59,762.12
163,114.22
112.03
4,330.28
10,411.34
Note: Intra-ASEAN trade covers only Brunei D., Cambodia, Malaysia, Myanmar,
Philippines, Singapore, and Thailand.
Source: ASEAN secretariat
Even though, we can not prove empirically the positive relationship between
Japanese direct investment in to ASEAN and trade deficit overtime. Trade with rest of
the world, and intra-ASEAN trade is main engine of growth. Japanese firm is major
exporter of manufacturing products to rest of the world. Trade deficit with Japan is result
of capital and intermediate goods import by Japanese firms and its subcontracting
activities. Capital deepening of Japanese firms in ASEAN may cause a low Total Factor
Productivity of ASEAN, even though contribution from labor factor is impressive.
The emergence of China into the world economy has diverted direct investment of
Japan away from ASEAN. China has comparative advantage not less than ASEAN as far
as skilled labor cost is concerned. It has large market size that can attract Japanese firms.
In all respect, Japanese investment can be seen as strategic move to balance its industrial
relocation i.e., China and ASEAN.
The assessment of ASEAN-Japan relationship can be concluded as follows: 1)
Japanese investment in to ASEAN contributes to economic growth through trade. 2) The
higher growth can result in deepening of trade deficit with Japan. 3) The emergence of
China poses both threat and opportunity for ASEAN. Trade with China is expanding to
exploit large market opportunity. Chinese export of capital to ASEAN can be seen as new
round of direct investment into ASEAN. 4) Japanese firm exploiting cheap labor cost in
ASEAN considers of moving to China. The inconclusive tariff reduction in ASEAN
under AFTA may cause inefficient investment cooperation by Japanese firms across
border as result of exclusion of sensitive list. It has caused inconsistent tariff structure
imposed on import of intermediate and finished products. It delays trade liberalization in
ASEAN. It diverts Japanese direct investment in to ASEAN. 5) As Japanese market is not
fully liberalized for primary industry especially agriculture and food processing products,
Japan-ASEAN trade arrangement (FTA), if initiated, may aggravate trade deficit with
Japan for most of members, except only the case of Singapore.
In conclusion, Japan-ASEAN relation during last decades may be appropriate
economic model. Japanese investment was engine of growth. We may need to construct
new economic model to represent the relation in new environment.
3. The Japanese Role in the Growth in ASEAN Region
A new chapter of ASEAN-Japan economic cooperation can be started with the
role of Japan in re-engineering growth potential of ASEAN countries. Japan-ASEAN
Economic strategy can be assessed from a triad relationship between Japan-ASEANChina. The mapping of this triad can be viewed from dimension of 1) Market size or size
of consumer demand; 2) Source of supplies both raw materials, capable and abundant
129
human resource, advancement of production technology level; 3) Convergence of the
market economy framework under FTA.
3.1 Market size and Purchasing Power
As far as the size of consumer demand is concerned, China PRC has much larger
size of her consumer demand as compared with combined ASEAN as a whole.
Nonetheless, if effective demand is measured, Japan should be the most attractive market
destination for both China and ASEAN products. This is because Japan has sophisticated
consumer demand with high purchasing power as compared with China and ASEAN.
Currently, it is noted that Japanese market as destination of agriculture product and
processed food could not be accessed by ASEAN. This is why Thailand would like to
pursue FTA with Japan on this chapter. ASEAN and China could access to Japanese
market quite significantly on lower end of manufacturing product as result of direct
investment in these areas and the process of backward import in to Japan. Clearly, the
high purchasing power of Japan can be used as engine of growth for ASEAN’s and
Chinese agriculture and industrial development.
The Japanese strategy towards ASEAN and China is to optimize its welfare gain
from trade creation with respect to cost of investment and ODA (resource used) in to
ASEAN and China. The combined market of Japan-ASEAN-China has several levels of
market sophistications. Trade creation through steps of liberalization, welfare can be
reaching its esteem level.
3.2 Source of Supplies of Raw Materials, Human Resource and Technology
Currently, Thailand is directing its neighboring policy towards a true partnership
for development. The ODA grant and soft loan policy is designed to serve this purpose.
Thailand looks at Lao PDR, Cambodia and Myanmar as its market and source of raw
material supplies. In order to create effective demand, Thailand needs to help its
neighbors sincerely. The special tax preferential scheme of ASEAN (ASP) is unilaterally
provided to Lao PDR, Cambodia and Myanmar. The partnership in international rice
price agreement with Vietnam, the rubber price agreement with Indonesia and Malaysia
has raised the price of these commodities satisfactorily.
The human resource development and technology transfer will be listed in the
CLMT dialogue. The closer relationship was announced that ASEAN may try to become
EU type of region. A dream can not be true, if without the initiative under the triad
relationship of framework of ASEAN+3. In this regard, input from Japan who has
superiority in production technology and China as medium technology provider is
necessary. The gain from technology transfer can optimize the use of human resource in
the triad.
3.3 Convergence of Market Economy Framework under FTA.
130
Today, management of economic system is becoming closer to one another, no
matter the skeleton of economic philosophy was believed. The ‘Market economy’ is key
word for CLMV and for ASEAN as a whole. Nevertheless, these emerging economies
would need to structure their market system to suit with their predominant structure. The
ASEAN-China-Japan is three different economies according to their democratic polity.
Some countries may rely more on the top-down process, while the others have more
feature of bottom-up decision making process. The Japanese initiative for Japan-ASEAN
Comprehensive Economic Partnership can be visualized through the progress of FTA
between Japan-Thailand (JTEP), Japan-Philippines, Japan-Malaysia, and Japan-Indonesia.
More basic agreement has been achieved with Vietnam under the Japan-Vietnam
Investment Agreement. This is not to mention the Japan-Singapore FTA which has
progressed ahead of the other ASEAN members. Here, we can see that there is no barrier
for FTA to proceed. Yet, it can not be assured that each FTA can congruently add to the
jigsaw of multilateral agreement in broader framework. The PRC China moves to reach
FTA with ASEAN can be seen as China and Thailand have had agreed on the ‘Early
Harvest’ on selected items of goods. Although, Japan has trade volume with ASEAN
(107,200 millions USD) exceeding China-ASEAN (548,000 millions USD), the pace of
trade creation between China-ASEAN has increased with rapid rate. It is clear that
ASEAN+3 is converging rapidly towards market oriented economy with freer trade
arrangement, no matter what are their original economic systems i.e., heavy or weak
government intervention, flexible (managed float) or fixed exchange rate regime.
The Japanese role as head of the growth engine for Asia and Pacific needs to look
carefully on the congruence of bilateral agreement under FTA and multilateral agreement
framework. As Japan has tremendous investment flow in to ASEAN and China. The flow
need to be assessed such that the economic welfare of Japan-ASEAN-China triad is
optimized. Recently, Japanese FDI flow in to ASEAN has been declining since economic
crisis. After year 2003, it can be visualized that Chinese capital in to ASEAN will be
significant and may surpass that of Japan in the next 10 years. The outflow of investment
resource from China is replaced by the inflow of investment from Japan in to China
together with FDI from US and EU. This is a remarkable period where Japan-ASEANChina play important role.
4. Conclusions
We have shown that trade creation of Intra-ASEAN is becoming significant. It is
an output of FDI and ODA flow from outside ASEAN. Japan contributes importantly to
ASEAN growth and development. Nevertheless, the skewed trade relationship between
ASEAN and Japan has caused trade deficit for ASEAN. This can not be solved simply
relying on FDI. The capital deepening of manufacturing industries in ASEAN may cause
more trade deficit between Japan and ASEAN. The bilateral trade arrangement or FTA
could not solve problem at hand as Japan is reluctant to open its market for agriculture
product and processed food from ASEAN. The ‘multi-functionality of agriculture’ is key
excuse for protection.
The international trade and investment relationship has changed since the
emergence of China. Now bilateral relationship between Japan-ASEAN has turned in to
‘Triad’ of three players ‘Japan-ASEAN-China’. On the positive side, market size or
131
effective demand has been expanding according to their purchasing power which
determined by income per head. ASEAN and China is destination of FDI and being
sources of raw materials and human resources. The Japanese strategy is to optimize its
own consumer welfare through trade creation given its cost of resource flow from Japan
in to China and ASEAN. Currently, the ‘Triad’ relationship is not completed as FDI flow
on one hand could progress on the manufacturing supply in ASEAN and China. The flow
of supply could not meet with effective consumer demand in Japan. The exploitation of
vast Chinese market is not effective as it still has low purchasing power per head as
compared with ASEAN and Japan. The trade creation of trade in Japan-ASEAN-China is
sufficient condition of welfare optimization, adding on top of the flow of FDI and ODA
as necessary condition.
The ‘Initiative for Japan-ASEAN Comprehensive Economic Partnership’ can be
materialized only if the trade creation can be significantly achieved among JapanASEAN-China, step-by-step along every stage of comparative advantage. The economic
rationale is clear but political maneuvering of conflicting interest groups in each country
has no solution so far.
132
⑤ ジスマン・シマンジュンタク インドネシア戦略国際問題研究所 会長
Punctuations in ASEAN History
The establishment in 1967: Political Program
Disguised as economic program.
Bali Summit 1976: Government-Centered
Industrial projects and PTA.
Early 1980s: Private-centered initiatives of
AIJVs and AICs.
Early 1990s: Adoption of AFTA
Early 2000s: ASEAN Economic Community
And ASEAN + 3.
1
Responses to ASEAN Integration
Intra-ASEAN trade after the crisis of 1997-1998
Enthusiasm in Indonesia before the crisis
The crisis and its damaging impacts. Government and
Business were forced to look inward.
Indifference after the crisis
Indonesia’s trade with ASEAN after the crisis.
Impacts on investment are hard to gauge.
2
133
⑤ ジスマン・シマンジュンタク インドネシア戦略国際問題研究所 会長
Post-Crisis Industrial Consolidation
Manufacturing is damaged severely.
Industrial targeting fell in disgrace.
Debate on new strategy is yet to be started.
New strategy will have to integrate new realities
In the global economy, in East Asia and in
Indonesia itself.
Key success factors: New architecture, law
Enforcement, good governance, merit-oriented
Civil servant reform.
3
134
BIG STEPS TOWARD EAST ASIAN COMMUNITY:
An Indonesian View
Djisman S. Simanjuntak
Summary
1. Punctuations in ASEAN Integration
•
•
•
Two types of integration: Negative integration or removal of man-made barriers to
movement of goods, services, capital, goods and information; positive integration or
policy coordination such as common trade and investment policy.
Southeast Asia before ASEAN was highly integrated up until the “Age of Commerce”,
at least as regards major coastal cities. Disintegration occurred following European
colonization. The Cold War was also staged in Southeast Asia as reflected in Indonesia’s
policy of “Confrontation” and the Vietnam War.
Southeast Asia entered a new dawn with the establishment of ASEAN in 1967. At first
political intents were disguised under economic veil. Substantive programs were agreed
for the first time in 1975, centered on state-led industrial cooperation. ASEAN PTA was
deepened in the1980s with the adoption of AIJVs. Intra-ASEAN trade failed to surge.
AFTA was launched in 1993 and completed in 2003. At the same time the intent to step
up to economic community was announced at the Bali Summit.
2. Responses to Integration: The Case of Indonesian Business
•
•
•
•
•
•
Businesses in Indonesia behave differently toward ASEAN integration
Generally speaking the enthusiasm shown before the financial crisis of 1997-1998
dissipated and seems to have faded away by 1993 for various reasons: (1) The margin of
preferences has thinned in the wake of unilateral tariff reduction; (2) In cases where
applicable MFN rates are high smuggling discourages the use of AFTA privileges; (3)
Intra-ASEAN trade of Indonesia was dominated by transit trade with Singapore; (4)
Timetable for sensitive products is stretched to 2010.
Intra-ASEAN trade as fraction of total ASEAN trade has risen in the years after 2003.
The same trend is observable in Indonesia’s trade. Tracing the sources of the increase in
intra-ASEAN trade is difficult, however, especially in the case of Indonesia. An
important part of it is attributable to the protection that resulted from deep currency
devaluation against extra-regional currencies.
The widely expected positive impact on inward foreign investment is not apparent in
statistics. ASEAN’s combines share in the stock of inward FDI was a little lower in 2002
than in 1990. Inward FDI in the case of Indonesia has suffered from decline in recent
years. The main reason for the decline appears to be the financial crisis.
Foreign investors in manufacturing, which entered each of ASEAN markets under the
zeitgeist of import substitution, have a lot to gain in terms of static efficiency by
reorganizing their respective networks. Such reorganization has occurred in automotive
industries, electronic and computer components.
The few transnational corporations of ASEAN origin has widened and strengthened their
regional networks as well.
3. Post-Crisis Industrial Consolidation
•
The crisis has damaged the Indonesian manufacturing very severely. Manufacturing
output in 2002 was only 5.6 percent higher than 1997. Capital intensive manufactures
such as aircraft, shipbuilding, machinery and automotive suffered enormous losses.
135
•
•
•
Those who can rely on equity injection by foreign partners are lucky while the ones who
cannot are swaying on the brink of collapse.
With the crisis industrial targeting fell somehow in disgrace among Indonesians, though
the reasons behind the collapse of targeted industries are more complex.
Mismanagement and bad governance seem to be universal. Debate on how to start anew
has hardly started. Policy neutrality appears to enjoy the strongest support.
Rejuvenation of Indonesia’s manufacturing will have to take into account new global
and regional realities. First the competition in unskilled-labor intensive industries is
getting tougher. Niches will have to be identified more carefully. Second, global
production is gaining importance in a growing number of industries. Securing a place in
such system is imperative. Third, East Asia is undergoing dramatic changes. China is
pressing ahead at amazing pace. Barriers to movements of goods are being cut on a
preferential basis. Even Japan has dropped its indifference to regional trade agreements.
In the wake of the dramatic changes new opportunities will arise.
Given the severe damages left by the crisis Indonesia’s return to high growth depends
crucially on access to foreign markets and inflows of direct investments. The latter may
have to wait for unconventional policy initiatives, however. The hope is that the winners
out of the elections of 2004 will get a comfortably strong mandate to be able to act
innovatively.
136
BIG STEPS TOWARD EAST ASIAN COMMUNITY
An Indonesian View
Djisman S. Simanjuntak
Punctuations in ASEAN Integration
Integration between countries can occur with the reduction or removal of barriers to the flows of goods,
services, capital and people. Such integration is called negative integration in the sense that it deals with the
removal of barriers of the man-made nature. It includes free trade area such as AFTA and common market
such as European Community before it stepped up into a union. Countries of the same region can also seek
to establish common external economic policy or macroeconomic policy and venture into positive
integration. Regional integration usually starts at the modest form of free trade arrangement. Deepening
seems to be inherent in such integration as it is clearly demonstrated in the progression of the European
Coal and Steel Community to the European Union.
Southeast Asia is no stranger to regional integration. During the age of commerce in the 15th and 16th
centuries kingdoms and major trading centers in the region were linked closely with each other through
movements of goods, services, capital and people. Traders from Bantam were free to move to Malacca and
vice versa. Disintegration followed the arrival of Europeans who divided the region beyond recognition in
accordance with European power structure. After independence the disintegration was sealed. Nationalist
policies were pursued to vehemently after independence. During the Cold War the region was divided into
antagonistic camps. Indonesia staged confrontation with newly established Malaysia, calling the latter a
neocolonialist puppet. When Soeharto came to power in Indonesia to replace Soekarno, one of the founders
of non-align movement, relations in the regions were redefined. Once the confrontation between Indonesia
and Malaysia was put to an end the door is open to a new Southeast Asia, even though it was to remain
divided for years under the Vietnam War.
Southeast Asia in general and its non-communist part in particular entered a new dawn when ASEAN was
established in 1967. The very political nature of the association was concealed under an economic program
of a non-binding nature. Integration was consciously avoided, partly because of Indonesia’s strong
commitment to non-alignment. With the end of the Vietnam War, however, ASEAN rushed to its first
summit of early 1976. A little over 10 years after its establishment ASEAN agreed for the first time on a
substantive economic co-operation program, which consists of the pooling of government resources for the
establishment of ASEAN industrial projects in each of the members combined with a very limited market
sharing scheme called ASEAN Preferential Trading Arrangement (PTA). Implementation of the
agreements suffered from an inadequate political will. Governments were reluctant to commit financial
resources, and the industrial projects were established under an equity structure, which is dominated by
respective host-economies. The dilution of the industrial projects made the modest PTA even more trivial.
137
The second punctuation occurred in early 1980s triggered by the severe effects of the steep fall in oil price
on the economies of Indonesia, Malaysia and Singapore. A sense of crisis swept the region. People turned
again to ASEAN for possible remedy. A new attempt was launched to push ASEAN economic cooperation forward. The schemes of ASEAN Industrial Complementation (AIC) and Industrial Joint
Ventures (AIJVs) were launched in the hope that impetus to economic growth and trade is, thereby,
unleashed. Deeper cuts of trade barriers were granted to products originating in the two schemes. However,
the reluctance to liberalize is unmistakable.
When the world at large changed dramatically at end of the 1980s and early 1990s in the wake of the
collapsing centrally-planned economies, and when the New Economic Policy of China was starting to show
spectacular success ASEAN economic co-operation spurted again. The treatment of integration as a
political taboo was abandoned. A much more positive attitude to integration developed. Indonesia, then the
least enthusiastic about integration, was persuaded and agreement on AFTA was signed in 1992. The
greatest part of AFTA has entered into force as of 1993, and the sensitive sectors are to be completely
integrated by 2010. When a severe financial crisis hit the region in 1997-1998 the call for a closer
economic co-operation in ASEAN was aired again. Central banks in the region assisted each other, though
the size of the mutual assistance is simply too small to make a difference. The need to involve the rest of
East Asia in such co-operation is felt more strongly as reflected in the aborted Asian Monetary Fund and in
the adoption of the Chiang Mai Initiative and the initiative on ASEAN + 3. The way the crisis raged over
the entire region, if at different severities, instilled a feeling of being one at least as far as vulnerability to
major external shocks is concerned.
As ASEAN is discovering the merits of regional integration the world has undergone far-reaching changes.
The Cold War ended and opportunities for “peace dividend” arose. Information and communication
technologies (ICT) created a new sector of progressive growth. They open frontiers for productivity
improvement in almost all spheres of life. Investment soared. Cross merger and acquisitions of immense
magnitude were sealed, pushing foreign direct investment to a historical peak in 2000 before it plunged
deeply in 2001 and 2002. At the same time barriers to cross-border movement of goods, services, capital
and people are cut through unilateral, regional and multilateral liberalizations. Putting aside some sectors,
which unfortunately are the ones in which developing economies can aspire to forge competitiveness as a
step toward a sustainable participation in the world trade system, most industries have come to enjoy farreaching liberalization since the conclusion of the Tokyo Round in 1979. Protected industries are not
immune to the rise of cross-border movement either. Technology progress made them more porous. The
1990s were, therefore, a decade of boom for world output, investment and trade. Stock prices soared to new
heights.
138
Southeast Asia was very upbeat when the world was reaping the peace dividend. As late as 1996 people in
government, academia and business were of the firm belief that the original members of ASEAN would
make it through to catch up with their more advanced neighbors in East Asia: South Korea, Chinese Taipei,
Hong Kong, and perhaps even Japan in due course of time. Suddenly, the financial crisis struck, causing
severe damages to Indonesia, Thailand, Malaysia, and to a lesser extent the rest of Southeast Asia,
including Singapore. In the case of Indonesia the crisis led to a regime change after some atrocities. The
highly centralized authoritarian system was abandoned and Indonesia’s journey to a highly decentralized
democracy is set forth. The damages done during the crisis are much more enormous compared to those
afflicting Thailand and Malaysia. Indonesia is only half way through in cleaning up the debris of the very
severe crisis. The end of the 20th century and dawn of the 21st century constitute, therefore, a period of
bitter learning for Southeast Asia. Its shares in world output, stock of inward foreign direct investment, and
world trade in goods and services are eroded slightly. Leaders call again for a deeper integration and the
idea on ASEAN Economic Community (AEC) has been endorsed formally in the last Summit in Bali. They
are aware of the limitations of intra-ASEAN interactions. Though intra-ASEAN trade has increased a little
faster than total ASEAN trade, its share has remained relatively small at 21.3 percent for import and 22.8
percent for export in 2001. However, the shares are much higher for a few products, which include wood
products and knitted apparel. The diversification of total ASEAN export is also reflected in intra-ASEAN
import. Electrical goods, computer, lubricants, and textile and apparel accounted for more than 66 percent
of total intra-ASEAN export. In spite of the strong engagement of Singapore and Malaysia foreign
investment to ASEAN continues to rely heavily on traditional sources, notably Europe, North America and
Japan. Tourism spending in Southeast Asia also originates largely in countries other than ASEAN members.
In short, Southeast Asians are fully aware of the imperative of extra-ASEAN relations to their economic
development. They have no illusion of positioning ASEAN as substitute for extra-ASEAN interactions.
Responses to ASEAN Integration
Attitude toward ASEAN integration varies among Indonesian business people. Before the financial crisis of
1997-1998 most of them were enthusiastic about ASEAN free trade. The positive attitude rooted in the
success in deepening and diversifying competitiveness following the marathon of trade and investment
deregulation of 1986-1993. However, no such enthusiasm is observable after the completion of AFTA.
Most people have turned indifferent. AFTA does not rank high in the agenda of politics, business and civil
societies for the following reasons.
First, the government is yet to complete the adjustment to the crisis. There good news apparently. Inflation
rate has gone down following a global trend. The same applies to interest rate. Rupiah has gained strongly
in 2002 and 2003 against US dollar, though it lost against Euro. The balance of payments have stabilized.
Current account remains in surplus, if diminishing in magnitude. Outflow of private capital has declined
139
such that the net outflow of capital is less than the current account surplus, allowing foreign exchange
reserve to increase. Economic growth is showing a slight acceleration. However, unemployment is huge
and rising. Its reduction should be attached a very high importance in policy agenda. Moderate growth is
simply inadequate. Rapid increase in investment is needed badly from the current level of 22 percent of
GDP. Second, most Indonesians are still pre-occupied with the costs of the crisis. With a shrinking
business portfolio, large groups of companies in particular are struggling to exist. State-owned enterprises
are forced by circumstances to concentrate attention on privatization. Among listed companies expansion to
new markets is considered less urgent than maintaining existing markets, seeking in the meantime to
improve corporate governance. Third, actually imposed tariff rates in Indonesia have gone down to a very
low level as a result of unilateral liberalization. The rates bound at WTO are much higher than what
importers pay. Therefore, AFTA preferential rates in the case of Indonesia are thin. They hardly justify
extra efforts that need to be made to comply with AFTA’s rule of origin. Fourth, for most tradable
manufactures produced or assembled in Indonesia AFTA’s the ASEAN content requirement of 40 percent
are too stringent to pass. The average local content of Indonesia’s manufacturing is lower than 40 percent,
in spite of mandatory program in favor of localization prescribed by the government in the 1970s and early
1980s. In the case of footwear, high-quality apparel, computer components and electrical goods it is even
much lower.
It is an irony that rules of origin by default disqualify products of less developed countries from enjoying
preferential treatment in the context of regional integration. In deeply integrated industries such as ICT
such rules in fact prevent meaningful participation of developing economies in the global production
system. By early 21st century it should have been very clear that restrictive rules of origin is ineffective to
lure investments on a large scale. Third, in case the MFN rate is high Indonesia is vulnerable to smuggling.
The problem is particularly acute in ICT products, which happen to account for a relatively big share in
Indonesia’s intra-ASEAN trade. Expecting the government to act decisively against smuggling is somehow
unrealistic, given the immensity of coastal and land borders of the archipelago. Fourthly, intra-ASEAN
trade of Indonesia is seemingly dominated by transshipment to and from Singapore. Whether or traders
who are involved in this trade care about AFTA’s margin of preferences is hard to judge.
The financial crisis has not been a total curse as far as intra-ASEAN trade is concerned. In the period after
the crisis intra-ASEAN trade has risen faster than total trade of the region. The composition of intraASEAN trade has also undergone deep structural shift away from traditional products of agriculture,
plantation and mining toward manufactures. Electrical goods make up 31 percent of intra-ASEAN export in
2001.
Computer ranks second. Admittedly, trade in electrical goods and computer is dominated by
Singapore, Malaysia and Thailand. Nevertheless, the rest of the region is catching up. Similar trend is
observable in Indonesia. In the period of 1993-2001 Indonesia’s total export and import increased by a total
of 53 percent and 9 percent respectively. Intra-ASEAN export and import rose by 90 percent and 115
140
percent respectively. AFTA per se might have played only a minor role in the rise of Indonesia’s intraASEAN trade. However, ASEAN has had to have a contribution, considering its effects on bringing its
members closer together in the course of the last 36 years.
Foreign direct investment is expected to rise into a region, which decides to integrate more closely. AFTA
might have contributed to the strong inflows of FDI to ASEAN in the pre-crisis period. The crisis changed
the picture. The share of ASEAN in the inward tock of FDI declined from 4.7 percent in 1990 to 4.3
percent in 2002 while the share of China rose from 1.3 percent to 6.3 percent. Within ASEAN Indonesia’s
share plunged from 42.5 percent to 18.2 percent in the same period. In fact persistently depressed
investment, including FDI, constitutes the most disturbing element in the economy of Indonesia six years
after the outbreak of the crisis. United Kingdom for instance invested in the post-crisis period less than it
earned from existing investment in Indonesia. Japan is discovering the merits of investing more in China
than in Indonesia. United States has also taken a very cautious attitude toward investing in Indonesia.
The reasons for the disappointing investment performance of Indonesia are manifold. In the first place,
output in many industries has remained substantially smaller in 2002 than in 2007, though total gross
domestic product is likely to return to 1997 level in 2003. Under such circumstances no acute urgency is
felt to raise capacity. On should also bear in mind the worldwide free fall of FDI after the peak of 2000.
More importantly, Indonesia as investment location is associated with a plethora of elements that do not
conduce a strong investment. Law enforcement is weak. Bureaucracy is slow. Cost of doing business is
high, partly because of corruption. Trust was eroded during and after the crisis. The immense transition
from a strongly authoritarian government to a very democratic one and from a highly centralized
government to a very decentralized one is accompanied by a myriad of imperfections including unwanted
introduction of barriers to the flows of goods, services, capital and people across regencies or subprovincial units of government. Needless to say, inclusion of Indonesia in the network of international
terrorism scares investors, traders, tourists, and even perhaps academicians, in spite of the effective
measures taken by the government to fight the Indonesian leg of the network.
Transnational corporations may have responded more thoroughly and more quickly to AFTA than local
companies. Many of the foreign companies operating in ASEAN were established under the zeitgeist of
import substitution behind high protective barriers. Their presence is scattered in individual members of
ASEAN and regional strategy was of no relevance then. AFTA seems to have set forth a process of
reorganization. Locations are being rationalized. Intra-company division of labor is being set up especially
in ICT and automotive manufacturing. Similar activities do not appear prominent among Indonesia’s local
companies. Cases of Indonesian local companies taking over or merging with competitors in other
countries of ASEAN are hardly known. On the other hand Singaporean and Malaysian investors have
increased their activities in Indonesia by taking over, among others, companies that are offered for sales by
141
the government in the framework of IBRA’s restructuring and privatization of state-owned enterprises. The
venturing of ASEAN to free trade with East Asia is received with mixed feelings. Indonesian business
people consider ASEAN-China free trade additional threat to competitiveness, but see ASEAN-Japan free
trade a golden opportunity, and ASEAN-Korea free trade half-opportunity and half-threat.
Post-Crisis Consolidation
The crisis has hit Indonesian manufacturing severely. Output in 2002 was only 5.6 percent higher than in
1997 with numerous industries suffering from shrunken output. The underinvestment during the post-crisis
period must have led to an outmoded structure of manufacturing in Indonesia, considering the growing
speed at which machineries age technologically and economically. Some capital intensive manufactures
such as aircraft making, shipbuilding and machinery suffered enormous losses and are confronted with
existential issues. With the crisis industrial targeting fell in disgrace, though the reasons behind the fall of
the targeted industries are much more complex than the weaknesses associated with industrial targeting.
Corruption, mismanagement and other forms of bad governance were clearly important. Serious debate on
how to start anew has hardly started. However, policy neutrality appears to have gained the upper hand,
given the fiasco afflicting some high-profile targeted industries.
Rejuvenation of Indonesia’s manufacturing will have to take into account new global and regional realities.
Competition in unskilled-labor intensive manufactures is getting tougher with the meteoric rise of China,
the steady growth of India, and the consolidation of Vietnam. East Europe and Central Asia should also be
watched carefully, considering the proximity of the two regions to the European Union. Niches in
unskilled-labor industries will, therefore, have to be identified anew. In some industries that form the
backbone of world trade and investment access to the global production system will have to be secured. To
do so, however, requires a success in attracting foreign companies. Closer to home, East Asia is undergoing
dramatic changes. China is pressing ahead at an amazing pace. Barriers to movements of goods, services,
capital and people are being cut on regional preferential basis. The game of regional trading arrangement is
also staged in East Asia. Japan has given up its refusal against preferential trading arrangement and has
become active in negotiating free trade with other economies. With the new constellation new opportunities
arise, but so do new threats.
Given the new initial condition Indonesia’s success to return to a sustainable and shared high growth will
greatly depend on access to foreign markets for goods, services, and capital, including human capital. The
recent trend of foreign direct investment is, therefore, worrying. Reversing the trend is imperative. To do so,
however, Indonesia must consider adopting a new economic architecture where market and competition are
allowed to evolve much more freely paired with a state that put great emphasis on social capital formation
and an adequate social protection. The route of state capitalism where a large chunk of the economy is
142
owned and operated by the government has proved to be a deadlock. Indonesians expect that the winners of
the elections of 2004 will collaborate to forge a durable coalition with a comfortable mandate that enables
them to address structural issues. Assuming that progress is made in law enforcement, alleviation of
corruption, phasing out of anti-competitive practices, and merit-oriented civil servant reform the return to a
sustainable and shared high economic growth may already start in the latter half of 1995.
143
⑥ 張 蘊嶺 中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
Making ASEAN as a Close Partner:
China and Japan
Zhang Yunling
Institute of Asia-Pacific Studies,
CASS
I. Economic Relations
z
z
Japan-ASEAN used to have a high level trade
market share, Japan’s FDI plays key role in
promoting modern industries of ASEAN, but both
of them witness a declining trend.
China-ASEAN started from a low level, but trade
relations developed very fast, investment will see
a reversed trend, from ASEAN>China to China
>ASEAN in the future.
144
⑥ 張 蘊嶺 中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
Japan’s Market Share for
ASEAN Trade
30
25
20
Export
Import
15
10
20
01
`
20
00
19
99
19
98
19
97
19
96
19
95
19
94
19
93
5
0
China-ASEAN Trade
(in billion US dollars)
35
30
25
20
Export
Import
15
10
5
0
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
145
⑥ 張 蘊嶺 中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
China’s Trade Direction
(growth %, 2003.1-9)
60
50
40
Exp-Imp
Exp.
Imp.
30
20
10
0
ASEAN Korea
EU
Japan
US
Taiwan
Japan’s New Trade Direction
(Growth %, 2003.10)
30
20
10
0
-10
-20
Exp.
Imp.
US
d
re
n
il a
o
ga p
T ha
S in
HK
wa n
ea
na
T ai
K or
C hi
146
⑥ 張 蘊嶺 中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
Japan→ASEAN ← China
z Japan
FDI to China increased: some
tradeoff effects to ASEAN
z China provides almost equal export market
share of Japan to ASEAN now, will surpass
Japan’share soon
z A market based FDI-trade network pattern
emerges between Japan→ASEAN ← China:
new relations
II. Economic Cooperation
z Economic
cooperation and integration
provide an important platform for both
China and Japan in developing relations
with ASEAN.
z “10+3” is the common platform, while
“ 10+1” provides the identical platform.
z The question is: whether China and Japan
can cooperate and move to one direction?
147
⑥ 張 蘊嶺 中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
FTA & CEP
z
z
z
China-ASEAN signed framework agreement for
CEP & FTA in 2002, negotiation expected to be
finished next year. China takes ASEAN as a
group and has a clear comprehensive strategy
( economic and political). China’s role as a market
and potential investor for ASEAN will be larger.
Japan signed FTA with Singapore, CEP was
identified, but it needs strong political will for JASEAN FTA.
ASEAN needs more home work.
Options
z
z
z
z
In facing EU single market and FTAA, high level
East Asian regional integration (EAFTA) is
urgently needed.
Three “10+1” FTAS or a NEAFTA+AFTA
approach makes EAFTA too complex and distant.
Best option: an early launch of EAFTA, while
encouraging a multi-layered efforts, easier and
better for Japan, China and ASEAN.
Regional economic cooperation & integration
goes beyond FTA or CEP.
148
⑥ 張 蘊嶺 中国社会科学院アジア太平洋研究所 所長
Regionalism
z
z
East Asian regionalism is emerging, but needs
joint efforts and an integrated approach,
consolidated direction and goal
China and Japan should and can identify their
share interests in the process of regional
cooperation, vital to the bilateral relations.
Japan→ASEAN ← China pattern could enrich
more cooperation between China and Japan if
along with the process of East Asian cooperation.
149
Making ASEAN as a Close Partner: Comparing China and Japan
Zhang Yunling
Introduction
ASEAN combined by 10 South East Asian countries has become a highly
integrated region in East Asia through AFTA and other regional cooperation and
integration arrangements. The newly signed document by ASEAN leaders in Bali,
Indonesia in October, 2003 would lead ASEAN toward a more integrated community.
China1 normalized its relations with South East Asian countries only until early
1990s. Economic linkages used to be very week. But trade between the two sides has
been developed very fast in recent years. What is significant is that the two sides
singed the framework document for close economic partnership in 2002, and the
document for a strategic partnership in 2003, which set a firm foundation for future
close economic, as well as political cooperation.
Japan as the largest economy in East Asia has been one of the most important
economic partner of ASEAN. Japan provides an important market for ASEAN and its
investments are considered a key factor in ASEAN’s manufacturing industry.
Nevertheless, due to the economic trouble, both Japan’s trade and investment with
ASEAN have been declined. Efforts have been make by Japan to strengthen its
relations with ASEAN through many arrangements, including FTA or close economic
relation arrangement (CER). It seems that Japan intends to re-enhance its relations
with ASEAN in face of a changing situation.
Regionalism in East Asia is emerging. It has achieved progress by formulating
the process of “10 + 3”(ASEAN plus China, Japan and Korea). But for regional free
trade arrangement, it started only from a multi-layered process. ASEAN is a
pathfinder in this direction through its AFTA. China becomes active to engage in
regionalism after joining WTO. China’s first move is to sign an agreement with
1
Herein, China refers only to Mainland China.
150
ASEAN for a FTA within 10 years. However, a FTA with ASEAN is not the end of its
interest in regionalism. China has strong interest to promote a larger based East Asian
FTA and a real community in a longer term.
Japan is a key factor in any regional arrangement. Japan has moved in a new
direction by initiating and concluding bilateral FTAs, but “a comprehensive deal is not
on with Japan because of agriculture”,2 neither a bilateral deal, nor a regional deal. It
seems that Japan still needs time to move to an East Asian strategy on FTA.
It is crucial that China and Japan can cooperation in East Asian integration and
cooperation. The common interest is growing between the two countries through
economic integration. But political will is needed for two countries to work together
based on a new consensus.
I. Comparing Economic Relations of China and Japan with ASEAN
China-ASEAN
China and ASEAN trade started from a very low level. But it has been grown fast
and now they have become very important trade partners. Currently, ASEAN is
China’s 5th largest trade partner, and China is ASEAN’s 6th largest partner. Since early
1990s, the average annual growth rate in trade between ASEAN and China has been
more than 20%, higher than the average of the growth rate at the same period. For
most years since early 1990s, China has trade deficit, i.e. import more than the export.
ASEAN used to be one of the major FDI sources for China. But FDI flow to China
has been slowed down, especially after 1997 due to the financial crisis. ASEAN
accounts for 11% of FDI flow to China in 1997, only 4.9% in 2001 due to the impact
of financial crisis. However, China’s investment in ASEAN is still small compared to
ASEAN investment in China, only 0.65 billion US dollars by the end of 2001. But it
is expected that China’s investment in ASEAN will increase significantly in the
coming years. Besides, China has large contracted projects in ASEAN, total value is
2
Peter Drysdale & Kenichi Ishigaki, 2001, p.5.
151
more than 12 billion US dollars by the end of 2001.
A striking phenomenon in China-ASEAN trade relations is that China has
become a major market for ASEAN’s exports. ASEAN countries benefited largely
from China’s phenomenal growth since China’s imports from ASEAN have grown
faster than from the rest of the world. With economic growth, it is expected that China
will increase its gross imports by a rather big margin.
Trend of China and ASEAN trade (in billion dollars)
35
30
25
20
Expor t
I mpor t
15
10
5
0
1992 1993
1994 1995 1996
1997 1998 1999 2000
2001 2002
Source: ASEAN secretariat, China International Trade Statistics.
The trade between China and ASEAN still has a clear complementary nature.
Among China’s increasing import products, many of them are specially relevant to
ASEAN: rice, palm oil, rubber, chemicals, textiles, pulp and paper, petroleum
products, telecommunications, machinery and electrical appliances, grain and oil
processing products, etc. The trade figure of 2002 showed that China becomes
ASEAN’s most promising market for export. ASEAN becomes the fourth largest
partner for China’s import after Japan, Taiwan and EU. This reflects a fact that
ASEAN benefits significantly from an economically booming China.
152
China’s import distribution in 2002
30
25
20
Mar ket shar
15
I ncr ease r at e
10
5
0
Japan
EU
Tai wan
ASEAN
US
Kor ea
Source: www.moftec.gov.cn
ASEAN used to be China’s one of important sources of FDI. But 1997 financial
crisis largely reduced ASEAN’s capacity to invest in China. However, China’s
investment in ASEAN is still very limited, the total amount until 2001 only less than 5
billion US dollars, though the potential is promising if following current China’s
economic trend.
Share of ASEAN in China’s FDI inflow
10. 00
8. 00
6. 00
4. 00
2. 00
0. 00
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
Source: Yearbook of China Statistics, 1995, 1997,2002
153
2001
Japan- ASEAN
Japan is the second largest
trade partner of ASEAN after the United States.
From 1993-2001, the share of Japan’s trade with ASEAN or ASEAN with Japan was
almost equally about 15%. However, this general figure does not fully reflect the
nature of Japan –ASEAN economic relations. Japan provides a large market share for
ASEAN’s external trade, but the share has been declined, either export or import.
Japan’s export and import to ASEAN from 1993-2001
( In billion US dollars)
50
40
30
I mpor t
Expor t
20
10
0
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
Japan market share for ASEAN Export and Import (% of total)
(1993-2001)
30
25
20
15
10
5
0
`
20
01
00
20
99
19
98
19
97
19
96
19
95
19
94
19
19
93
Expor t
I mpor t
From 1994, ASEAN side always has had large trade deficit with Japan, i.e. Japan
exports more than imports.
154
It is interesting to compare China with Japan. In early 1990s, China’s market
share for ASEAN is very marginal, but till 2001, China’s import from ASEAN is
almost same as Japan’s import from ASEAN. After financial crisis, from 1998-2001,
China’s trade deficit with ASEAN is 14.6 billion US dollars, while Japan’s trade
surplus with ASEAN is close to 23 billion US dollars.3
Japan has made substantial investments in ASEAN, accounting for 18.4% of
total FDI into ASEAN in year 2001. Japanese investments have plaid an important
role in developing ASEAN’s modern manufacture industries, especially the export
industries. However, although ASEAN has always been a major destination for
Japanese investors, over the last decade, Japan's investment in ASEAN has been
slowdown, as a result, the share of total investments into ASEAN decreased from
about 28% in 1991 to 18.4% in 2001.4 From the comparing we can find that Japan is
still an important economic partner, but its role and position has been changed, which
is the result of its economic difficulty and also the outcome of China’s rising.
Japanese FDI share in ASEAN from 1995-2001
25
20
15
10
5
0
In
do
ne
si a
Th
ai
la
nd
Ph
ilip
p.
..
Vi
et
na
m
Si
ng
ap
or
e
M
al
ay
si a
Note: Japanese FDI in Laos, Cambodia and Myanmar still marginal.
Source: UNTADC
II. Comparing cooperation of China and Japan with ASEAN
3
4
ASEAN statistics, www.aseansec.org
Joint report of the ASEAN-Japan closer economic partnership expert group, 2002, p.1
155
Both China and Japan have made great efforts to promote economic cooperation
with ASEAN. China and ASEAN cooperation started mainly from 1990s and have
quickly developed recent years while the cooperation between Japan and ASEAN
began much earlier, but slowed down after the financial crisis and new efforts have
been made to strengthen it. Both China and Japan to emphasized that either
China-ASEAN FTA or Japan- ASEAN CEP “would boost the future development of
an economic area covering East Asia”.
The Cooperation between China and ASEAN
The cooperation between China and ASEAN can be traced to 1991 when Foreign
Minister Qian Qichen was invited to attend opening session of the 24th ASEAN
ministers meeting in Kuala Lumpur. He expressed China's interest in strengthening
cooperation with ASEAN for mutual benefit. In 1993, ASEAN and China agreed to
establish two joint committees for economic and trade cooperation in science and
technology. At the same time, ASEAN and China agreed to engage in consultations on
political and security issues of common concern at the senior officials level. In July
1996, China was accorded full dialogue partner status. In 1997, China and ASEAN
established the ASEAN-China Joint Cooperation Committee (ACJCC) and
ASEAN-China Cooperation Fund. China participates in a series of consultative
meetings with ASEAN, which includes the ASEAN Regional Forum (ARF), the Post
Ministerial Conferences (PMC) 9+1 and 9+10, the Joint Cooperation Committee (JCC)
Meeting the ASEAN-China SOM Consultations and the ASEAN-China Business
Council Meeting.
At the Eighth ASEAN-China Summit in Phnom Penh on 4 November 2002,
China and ASEAN signed the “Framework Agreement on Comprehensive Economic
Co-Operation between ASEAN and China” which provides the groundwork for the
eventual establishment of an ASEAN-China Free Trade Area (FTA) by 2010 for the
older ASEAN members and 2015 for the newer members. The Trade Negotiating
Committee (TNC) was established in May 2002 for negotiating a comprehensive
agreement. It is expected that the negotiation for a free trade area would be concluded
156
by 30 June 2004. Cooperative activities between China and ASEAN have been
expanding in the five priority areas, namely agriculture, information and
communications technology, human resource development, two-way investment, and
Mekong River Basin development. The two sides signed a Memorandum of
Understanding on Agricultural Cooperation. The areas of cooperation include forestry,
livestock production, fisheries, biotechnology, post-harvest technology and the field
harmonization of quarantine measures and standard conformity of agriculture
products.
Development cooperation between the two sides has been progressing at a
considerably fast pace especially with the establishment of the ASEAN-China
Working Group on Development Cooperation (ACWGDC) in May 2002. The
cooperation also is in the frameworks of the Greater Mekong Sub-Region (GMS),
ASEAN Mekong Basin Development Cooperation and the Mekong River
Commission. Between May 2002 and March 2003, ASEAN and China have
implemented 14 projects in the areas of science and technology, ICT, agriculture,
transport, social development, HRD, and mass media. More projects covering ICT,
HRD, science and technology, investment, transport, academic exchange, SME,
environment, and cultural sectors are expected to be implemented. In 2003, China and
ASEAN signed a Memorandum of Understanding on Cooperation on Information and
Communication Technology.
5
However, as a developing economy, China has plaid
a very important role in assisting ASEAN economic development and the cooperation
between the sides is still limited. Along with the closer economic integration, the
cooperation will be further developed more on a institutionally arranged base.
Importantly, China-ASEAN cooperation goes beyond economic area. In 2002,
with signing of “Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation”,
the Leaders also adopted the “Joint Declaration of ASEAN and China on Cooperation
in the Field of Non-Traditional Security Issues,” Declaration on the conduct of parties
in the South China SEA” aiming at “promoting a peaceful, friendly and harmonious
5
www. Aseansec. 0rg: ASEAN China dialogue, p.3; www. mof. gov.cn
157
environment in the South China Sea between ASEAN and China”. In 2003, China
formally signed “Treaty of Amity and Cooperation in Southeast Asia (TAC), and a
document for the strategic partnership, which provide a good foundation for
improving political cooperation in the future.
However, China-ASEAN cooperation and integration is not an easy course. As
acknowledged that “the extent and level of cooperation rests on the presence of two
vital ingredients: political will and a deep pool of knowledge and mutual
understanding.”6
The cooperation between Japan and ASEAN
Japan and ASEAN started their formal cooperation in 1977 when they decided to
establish a forum for cooperation. In 1987.the two sides announced "a new
partnership toward peace and prosperity".
In 1997, Japanese Prime Minister Ryutaro Hashimoto announced his "Hashimoto
Doctrine" and called for developing a "broader and deeper partnership" and
"broader and deeper exchanges at the top and all the other levels".
Japan has participated in a series of consultative meetings with ASEAN which
includes the ASEAN Regional Forum (ARF), the Post Ministerial Conferences (PMC)
9+1 and 9+10, ASEAN Economic Ministers-Ministry for International Trade and
Industry (AEM-MITI) Consultations, ASEAN-Japan Forum, Senior Economic
Officers-Ministry for International Trade and Industry (SEOM-MITI) Consultations,
Joint Planning Committee (JPC) Meeting, ASEAN-Japan Economic Council (AJEC),
ASEAN-Japanese Businessmen's Meeting (AJBM). The ASEAN-Tokyo Committee
also assist in conducting and maintaining the dialogue with Japan.. Regular Dialogue
meetings such as the AEM-MITI Consultations and the ASEAN Japan Forum are now
held annually. Japan also participates in the ARF
In addition to being one of ASEAN's most important economic partners, Japan is
a major contributor to development cooperation. Japan has provided technical
assistance to ASEAN through several programs, such as the Japan-ASEAN
6
Lim Swee Say: ASEAN and China: the challenges of cooperation, READER, Singapore Institute of International
Affairs, Vol. 2, No.2, 2002, p.6.
158
Cooperation Promotion Program (JACPP), the Intra-ASEAN Technical Exchange
Program (IATEP) and the Japan-ASEAN Exchange Program (JAEP).
In 2002, Japanese Prime Minister Koizumi visited a number of ASEAN countries
and put forward “ Koizumi Initiative”, which is made up of three pillars: filling
economic gaps and enjoying prosperity, reassuring human dignity, and fostering
democratic and stable governance. 7 He also proposed several initiatives for
cooperation, including the designation of 2003 as the Year of ASEAN-Japan
Exchange, reinforced cooperation in education and HRD, solidifying the security
relations between Japan and ASEAN, the ASEAN-Japan Comprehensive Economic
Partnership (CEP). The ASEAN-Japan Summit, held in Phnom Penh on 5 November
2002, issued a Joint Declaration endorsing the development of a framework for
Comprehensive Economic Partnership, including elements of a possible FTA. This
shows that Japan has made more efforts to re-enforce close relationship with ASEAN,
which has been negatively effected by the financial crisis in 1997 and Japan’s
economic slow down.
To compare the cooperation of China and Japan with ASEAN, we have may find
that Japan had longer history than China in proceeding economic cooperation and
Japan’s role is much larger in providing economic assistance to ASEAN. But, China is
moving faster than Japan in promoting cooperation with ASEAN, and China has
broader programs than Japan in making ASEAN as a partner.
III. China and Japan in Regional Integration and Cooperation
China and Japan have their different interests and strategies in developing
economic relations with ASEAN. ASEAN is the direct close neighbor for China.
China emphasizes its interests with ASEAN on a comprehensive dimension. This is
why China takes ASEAN as an integrated region. ASEAN as a stable region and a
cooperative relationship will well serve China’s interest in creating a peaceful
7
Yoriko Kawaguchi’s policy speech, “ Building bridges toward our future: Initiating for reinforcing ASEAN
integration”, June 17,2003
159
environment, which is crucial for its transition toward the modernization. China and
ASEAN relationship starts and develops from a new foundation, while for Japan,
ASEAN is firstly a big market and also strategic navigation route. Japan already built
up close relationship with ASEAN countries in the past. Japan now whants to renew
its existing relations through the new efforts.
However, it is important to recognize that the two countries can find more
interactions and common interests in their relation with ASEAN. From a broad
perspective, especially from the angle of emerging East Asian regional cooperation,
we may identify three ways of interactions and possible cooperation:
FDI driven interactions
Japanese FDI has created a large network for economic exchange within ASEAN
and ASEAN with outside market through import and export. Following increasing
Japanese FDI in China, this network has been enlarged into a Japan-China-ASEAN
structure. After the financial crisis in 1997, we have witnessed a trend of reallocation
of Japanese FDI, less to ASEAN, more to China. This reallocation has created a new
network between China and ASEAN through production network of Japanese
companies. The real story behind fast increase of ASEAN exports to China is a
reflection of this new network, i.e. increasing exchanges of parts and components
between Japanese investors in China and ASEAN. This China-Japan-ASEAN
economic angle has made the three sides more integrated ever.
For example, during 1996-2001, ASEAN exports of computer components,
machinery and electrical equipments to China increased sharply. This reflects a new
trend of China-ASEAN economic relations, i.e. China’s role as market is increasing.
Japanese FDI reallocation is not a zero sum game to ASEAN.
ASEAN exports of computer, machinery and electrical equipments to China
(In million US dollars)
160
12000
10000
8000
Comput er / Machi ner y
El ect r i cal equi pment
6000
4000
2000
0
1996
1997
1998
1999
2000
2001
Source: ASEAN trade statistics
Sub-regional cooperation
China and Japan may find more common areas in the sub-regional cooperation
with ASEAN. Currently, the major area for cooperation is Great Mekong Sub-regional
project/ (GMS). ASEAN adopted its basic framework of Mekong Basin development
cooperation in 1996 aiming at “ strengthening the interconnections and economic
linkages between the ASEAN member countries and the Mekong riparian countries”.8
This project become an important project for “ 10 plus 3” cooperation, which both
China and Japan participated.
GMS provides an important opportunity for China and Japan to cooperate
together. Geographically, China is directly linked to the Mekong Basin area and has
strong interest to participate and make contribution. Japan has been the largest donor
to less developed countries, like Cambodia and Laos and plaid important role in
assisting their economic development. Thus, China and Japan should not be
competitors in participating this project.
Japan is currently supporting two flagship projects in this area. One is the
East-West Corridor which will benefit Vietnam, Laos, Thailand and Myanmar, and the
other is the second East West Corridor which connect Cambodia with its neighbors. A
bridge was completed in 2000 which is called” Kizuna bridge”.9
The two countries have been cooperated in improving infrastructure of the region,
8
Basic Framework of ASEAN Mekong Basin Development Cooperation, Kuala Lumpur, 17 June 1996
Yoriko Kawaguchi’s policy speech, “ Building bridges toward our future: Initiating for reinforcing ASEAN
integration”, June 17,2003.
9
161
like Kunming-Bangkok high way and other projects. So that, the sub-regional
cooperation may become a platform for China and Japan work together with a
complementary feature of their roles to play.10 This of course needs good will and
also good coordination in a one integrated regional framework of the cooperation.
East Asian Cooperation
East Asian cooperation as a formal process started from 1997 as a reflection of
the financial crisis. This process has been developed well. Politically, it is under “10
plus 3” formula, with informal leaders meeting and several ministers’ meetings.
Economically, it is still following a multi-layered structure, with different efforts by
different parties, like Japan- Singapore FTA (JSEPA), Japan- ASEAN CEP,
China-ASEAN CEP and FTA, as well as China-Japan-Korea CEP etc. It seems that
time is still needed before these multi-layered processes can be integrated into one
unique East Asian approach and finally move toward an East Asian identity. EAVG
called on an East Asian Community building in 2001. This author proposed an early
establishment of an Organization of East Asian Cooperation (OEAC) to coordinate
and integrate East Asian cooperation process.11
China and Japan are considered as two key players in developing and realizing
East Asian cooperation and integration. Both China and Japan have participated “ 10
plus 3” process and a special “Northeast Asian 3” dialogue. It seems that while China
and Japan share some common interests in developing East Asian cooperation, some
differences are there. As for China, it becomes active to promote an EAFTA as early
as possible. China-ASEAN FTA is used as a pathfinder to forge EAFTA. This is why
China even supports an early arrangement of trilateral FTA in Northeast Asian region
though it is the weakest among three countries. It is wrong to think that China’s move
intends to reduce Japanese interests in ASEAN and to exclude Japan from East Asia.12
Japan has shown a different approach. Its near future effort seems to be focused
on the bilateral, rather than the regional. After the conclusion of JSEPA, Japan
10
China-ASEAN economic relations: view from China’s understanding, 2003, Study Group report, CASS, p.76.
Zhang Yunling, East Asian cooperation: progress and future, World Affairs Press, Beijing, 2002, p. 6
12
It was said that Japan’s rapid pursuit of JACEP was in response to China-ASEAN FTA and it was out of fear
that relative gains would otherwise shift against Japan in East Asia. Jiro Okamoto edited: Whither free trade
arrangements? IDE, JETRO, 2003, Tokyo p.246.
11
162
concluded Japan-ASEAN CEP (JACEP) in 2002, but intends to negotiate bilateral
FTA only with more developed economies of ASEAN. Like Thailand, Malaysia, The
Philippines, etc., rather than with the whole ASEAN. In Northeast Asia, Japanese first
priority is to complete CEP with Korea, rather than a trilateral one.
13
As for EAFTA,
the government policy has not been made clear yet though experts urged government
to adopt a more active policy to it and to establish an East Asian Economic
Community (EAEC) in 2007.14
How to make China and Japan to cooperate and move to an integrated direction?
Although their current priorities are different, shared interests can be found for the
two countries since both of them emphasize the importance of East Asian cooperation.
This is of course needs real cooperation between China and Japan, i.e. a real
partnership in promoting East Asian cooperation. East Asian cooperation process may
provide an important platform for China and Japan to improve their bilateral relations
and identify their common interests.
As a matter of fact, East Asian cooperation and integration is a comprehensive
process including economic, political, social, as well as cultural progresses. It is for
sure that cooperation of China and Japan in East Asian community process needs
strong political will and spirit from both sides. It seems that this political foundation is
still very weak and to some extent, also very vulnerable. The first weakness is the
bilateral relationship due to the historical legacy and security concerns. The second
weakness is the trust in engaging regional activities, both sides considers each side as
the competitor. In order to make the two as the real partners in forging East Asian
cooperation and integration, we have to overcome some political barriers if we
achieve an economically free East Asian region and finally moving toward a real
community.
It is recognized that “regionalism is on the rise in East Asia”,15 but it is still in
the early stage. China has taken an active attitude policy in participating and
13
Perspective on East Asian FTA, JETRO, March, 2003, p.37.
According to the report, 40 Japanese leading experts put forward a policy report and called on establishing
EAEC. World Weekly ( in Japanese), July 8,2003.
15
Chis Siow Yue: Regional economic cooperation in East Asia: approaches and process, in “ East Asian
Cooperation: progress and future”, World Affairs Press, 2003, p.37.
14
163
promoting the regional cooperation, especially the East Asian cooperation. Starting
from economic cooperation, China hopes that this process will move to the other areas,
including political, security, social and cultural areas. Prime Minister Wen Jiabao
called a comprehensive cooperation during the latest “10 +3” leaders’ meeting in Bali,
Indonesia in October of 2003.16 As a regional cooperation process, China surely
welcomes an active Japanese role. A closer Japan-ASEAN relationship is helpful for
the East Asian region. As a matter of fact, China- ASEAN and Japan-ASEAN
relationship are quite complementary. So that, China and Japan should work together
to play the leading role in this process, which is essential to overcome the “ leadership
gap” in this region. Both China and Japan need new mindset in moving to this
direction.
16
“ Wen Jiabao called on strengthening East Asian cooperation”, People’s Daily, October 8, 2003.
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