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土地問題と土地政策に関する考察
99 實:土 地問題 と土地政策 に関す る考察 土地 問題 と土地 政 策 に関 す る考察 一大 阪都 市 圏 を例 と して 一 實 清 隆* OntheLandPriceHikeProblemanditsPolicy ReferringtotheCaseofOsakaMetropolitanArea KiyotakaJITSu 摘 要 著 者 は この論 文 の 中 で 、 地 価 形 成 が土 地 利 用 の変 動 に 何 如 な る関係 を もつ か を 明 らか にす る と共 に 、1980年 代 の後 半 に生 じて 来 た地 価 高 騰 が 、具 体 的 に ど の よ うな 影 響 を及 ぼ して 来 て い るの か を大 阪 都 市 圏 を フ ィー ル ドに実 証 し、 同 時 に 、 土 地 政 策 に つ い て の提 言 につ いて も論 じ た。 地価高騰の実態と要因 地 価 は首 都 圏 で 、1986年 か ら、 大 阪 圏 で は1987年 か ら急 騰 して来 た 。地 価 は 基 本 的 に は、 そ の土 地 か ら生 じ る 「純 益 」 が そ の ベ ー ス に あ る た め 、GNPの 増 加 ト レ ソ ドと、 地 価 の そ れ と は1985年 ま で は ほ ∫パ ラ レル に対 応 して い た 。 しか し、1986年 か らは 、 そ れ 迄 とは 一 段 異 な っ た烈 しい地 価 の上 昇 が 見 られ た 。(図1・2) 15,000 地価,市 街地価格指 数 (6大 都市全用途) xo,000 11! 0 1955年60 657075808588 図1.地 平 成2年 度9月29日 受 理*地 89 価 と 経 済 指 標(1955=100) 理学研究室 100 奈 良 大 学 紀 要 第19号 (万 円 ) 東京 圏 50 f大 阪 圏 40 30 20 ..名 古 屋 圏 13.4 10 078年 79so ・ ・ 図2.3大 ・ …1・ … 都 市 圏 住 宅 地 平 均 価 格 の 推 移(m') この こ と は、1986年 か ら、地 価 形 成 を め ぐっ て 、新 た な 事 態 が 生 じた事 を 意 味 す る。 そ の契 機 とな っ た もの は 、 金 利 の急 激 な低 下 が あ る。1985年 迄 は公 定 歩 合 が6.0%で が 、1986年9月 に は 同3.8%87年3月 に は 同3.6%と あ った 低 下 して い た 。 この金 利 の低 下 が 、 「金 余 り」 の 状 況 の 中 で 、 「土 地 神話 」 に 拍 車 を か け 、土 地 に 投 資 が 集 中す る契 機 を作 った 。 ひ とた び 地 価 高 騰 に 火 が つ くや 、 金 融 機 関 に よ る不 動 産 業 者 へ の 貸 し出 しが洪 水 の よ うに 注 ぎ込 まれ た。 即 ち 、全 国銀 行 の東 京 都 で の 不 動 産 部 門 へ の 半 年 間 の 貸 出 し伸 び率 が 、1987年3月 26.5%に も昇 り、 同年9月 期 に 降 下 し、 下 火 に な るが 、 大 阪 府 で は、1989年9月 期では 期 で40.3%と そ の前 期 に 比 して 急激 な増 に な って い る点 は 、 銀 行 が 融 資 先 鞭 と して 、値 上 が りの 急 な不 動 産 業 に そ の 力 点 を 置 き地 価 を上 げ て きた事 を 意 味 す る。(図3) 大 阪府 愛知県 40 30 20 ,・ 東 京 都 10 0 % 87/3988/3989/3 図3。 全 国 銀 行 不 動 産 融 資 前 期 比(日 本 銀 行 調) 101 賓:土 地 問題 と土地政策に関す る考察 更 に銀 行 以 上 に、 「ノ ソバ ソ ク」 部 門 も銀 行 以 上 に急 な テ ソ ポで 不 動 産 部 門 へ の 融資 を強 め た。 そ の 貸 出 残 高 は 、1986年 は18兆 円 に 過 ぎ な か っ た が 、1989年 に は 、 実 に45兆 円 と、 全 国 銀 行 の そ れ とほ ぼ 同 額 に もな っ た。(図4) 40 20 兆 円0 86 87 88 89 (年、3月 末 時点) 図4ノ ソバ ン クの 貸 出 残 高 の 推 移 この よ うな不 動 産 部 門 へ の融 資 に も支 え られ 、活 発 な 土 地 需 要 を促 し、 地 価 が急 速 に上 が り 出 した の は確 か で は あ るが 、 更 に 、 も う一 面 、 ジ リジ リと地 価 を上 昇 させた 幾 つ か の要 因 もあ っ た。 即 ち、70年 代 の後 半 か ら急 速 に進 み 出 した 日本 の 企 業 に よ る海 外 投 資 が あ る。 と くに 、1980 年 代 の 後 半 か ら大 幅 な増 額 とな り、 海 外 投 資 か ら もた らされ る純 益 が 、1989年 に は17兆 円 を超 えて い る。 これ らの海 外 へ 投資 す る企 業 の 本社 が 、 東 京 を メイ ソに、 大 阪 、名 古屋 な どの 巨大 都 市 に あ り、 そ の流 入 した 純 益 が そ こ に もた ら され 、 そ の こ とが 、 当該 地 で の地 価 を高 め る要 因 を作 って きて い る。 この 対 外 投 資 か らの利 益 の 流 入 額 は1986年 以 降 、毎 年3兆 て お り1989年 に は海 外 に 支 社 ・出 張 所 を数 多 くもつ 有 力 企 業(こ の 中 心 部 を 占拠 して い る)の 全 利 益 額 の30%近 円 ず つ増 額 し れ らの企 業 の 本社 、東 京 な ど くに も昇 っ て い る。 つ ま り 「国 際 化 」 に 伴 う海 外 へ の活 発 な投 資 や企 業 活 動 が 地 価 高 騰 の 一 因 と な っ て い る。(大 蔵 省 金 融 統 計 月報) こ の よ うな要 因 の ほ か に、 日本 企 業 が持 つ構 造 的 な要 因 も無 視 出来 な い。 即 ち、地 価 形 成 の 「源 」 た る 「利 益 」・「純 益 」 の 源 泉 を見 る と、 日本 企 業 の場 合 、剰 余価 値 率(剰 資 本)が 余 価値/可 変 、 欧 米 に 比 して 高 く、 か つ 、 そ の配 分 率 が付 加 価 値 に つ い て 言 え ば 欧 米 で は 、60:40 で 労 働 の側 が 高 い の に 比 して 、 日本 で は逆 に40:60で 、資 本 の側 の取 り分 が 高 い 。従 って 、 日 本 の場 合 、企 業 の 方 が 、 勤 労 者 に比 べ て 、剰 余 価 値 額 、即 ち 、地 代 負担 力 の 点 で優 位 に 立 って い る。 つ ま り、企 業 の 方 が イ ニ シ ア チ ブ を 握 って 、 場 所 的 に有 利 な土 地 を獲 得 し、 勤 労 者 用 の 住 宅 地 の地 価 を つ り上 げ る結 果 を招 い て い る。 ま た 、 この剰 余 価 値 率 が高 い とい う事 は 同 時 に、 好 景 気 で 、投 資 活 動 が活 発 で あ れ ば あ るほ ど 、企 業 に と って の 剰 余 価 値 額 が上 が り、 そ の 分 、 地 価 上 昇 が 著 し くな るの に 対 し、勤 労 者 の 側 は 、 そ れ とは 対 象 的 に、 地 価 形 成 力 が 企 業 に比 べ て 弱 ま り、地 価 獲 得 力 が 弱 ま る、 つ ま り、 勤 労 者 に と って は 、 景 気 が 良 くな れ ば な るほ ど地 代 負担 力 に 関 して企 業 に ハ ソデ ィをつ け られ 、 住 宅 地 の獲 得 が 難 し くな って く る こ とを 意 味 す る。 地 価 高騰 対 策 に と って 、 企 業 に過 度 の 利 益 を集 積 され な い た め に も、 税 制 度 も大 きな 意 味 を もつ。 即 ち、 地 価 と い うもの が 、純 益 の 多 さか らの ベー ス とな る もの で あ る か ら、 そ の 「純 益 」 (キ ャ ピ タル ゲ イ ソを含 め)を 巧 く、 税 の形 で 吸 収 さ えす れ ば 、 自か ら地 価 は下 が る もの で あ る。 奈 102 良 大 学 紀 要 第19号 だ が 、 皮 肉 に も 日本 の 税 制 度 は、 儲 け れ ば儲 け る ほ ど 「税 率 」 は 低 くな って い るの で あ る。 (図5) % 45 40 35 30 25 L-一 万 円 円 円 塞 円 円 円 円 図5 .企 業 の規 模 別 実 効 税 率 円 円 即 ち 、資 本 金 の 規 模 別 の 実 効 税 率 を 見 る と 、資 本 金500万 円 レベ ル ま で は 、 税 率 は 漸 増 して い る も の の 、500万 円 を超 え る と 、 奇 妙 に も 、 実 効 税 率 は 下 が っ て い く。 大 企 業 へ の 数 々 の 「優 遇 措 置 」 な ど が そ の 要 因 で あ る。 と もか く、大 儲 け して 、 地 代 負担 力 の あ る企 業 へ の税 負 担 率 が低 い ので あ るか ら、 当 然 そ の 高 い地 代 力 を バ ッ ク に大 企 業 の立 地 が 著 しい大 都 市都 心 の 地 価 を上 昇 させ る要 因 を作 る。 更 に 、土 地 税 制 で は 、税 金 の 対 象 と な る ベ ー ス が 、実 勢 地 価 の10分 の1に 満 た な い(固 定 資 産 税 の算 出 の根 拠 とな る地 価 は 、 実 勢 地 価 よ り2∼3割 1に 設 定 され て い る場 が 一 般 で あ る。)た 低 い標 準 地 価(公 示 地 価)の 約10分 の め に 、 「帳 簿 の 価 格 」 と 「含 み 益 」 を含 ん だ 土 地 資 産 額 の 間 に 大 き な乖 離 が あ る うえ に 税 が 安 くな って い る。 固 定 資 産 税 は 課 税 対 象 額 の1.4%と 所 得 税 に比 べ とて つ もな く安 い た め、 有 力 企 業 は 、利 益 か く しの た め 、 競 って 、 土 地 を 買 い 占 め に走 った 。1988年 の 大 企 業 の 「含 み 益 」 は実 に434兆 円 に もの ぼ る。(若 し、 これ を所 得 税 並 み に課 税 す れ ば 、300兆 円 は下 らな い と言 わ れ て い る。 実 に 国 家 予 算 の5倍 に は な る)。 この よ うに 、 日本 で は 、 大 企 業 へ の課 税 が甘 くな って い る事 や そ の 他 の 構 造 的 要 因 の た め 、 益 々、 大 都 市 の 「0等 地 」 の地 価 は上 が っ て行 く。 そ の煽 りを受 け、 周 辺 の地 価 が つ り上 が り、 資 産 の な い民(と りわ け 、新 入 りの 勤労 市 民)に と って は 、土 地 ・家 の 確保 が難 しい もの と な っ て きた よ うで あ る。 次 に土 地 政 策 を検 討 す る前 に 土 地利 用 と地 価 との 具体 的 な事 実 関係 に つ い て検 討 す る。 實:土 地 問題 と土地政策に関す る考察 103 地価と土地利用の関連について 地価 と 土 地 利 用 の 関連 に つ い て の レビ ュー 地 価 と土 地 利 用 と の関 連 研 究 に 関 して は 、 第 二 次 大 戦 後 に な って 、 盛 ん に な って来 た 。 そ の 先鞭 と な っ た の は ウィ リア ム=ア ロ ソ ゾ1)であ る。 彼 は 、 土 地 利 用 の 解 明 に 、近 代 経 済 学 の 価 格 理 論 を導 入 した。 付 け値 曲線(bidrentcurve)を プ テ ィマ ム(optimum)に 作 成 し、 距 離 帯 別 に見 て 、 ど の利 用 が オ な るの か を検 定 した。 彼 の考 え 方 は 、 チ ェ ー ネ ソ の 「孤 立 国 」 で 展 開 され て い る農 業 立 地 論 が そ の ヒ ソ トに な って い る。 ア ロ ソ ゾ以 降 、 工 学 ・経 済 学 ・地 域 ・ 地 理 学 の 分 野 な どで 、 こ の種 の研 究 が 続 々 とで て き た。 石 原2)は 社 会 工 学 的 サ イ ドか ら、 宅 地 率 ・事 業 所 密 度 ・新 着 工 住 宅 戸 数 ・火 災 の 発 生 件 数 ・ 都 心 か らの 所 要 時 間 を説 明変 数 に と って 、 住 宅 地 価 形 成 要 因 の 解 明 に ア プ ロ ー チ して い る。 天 野 等3)は都 市 の諸 活 動 を 立 地 要 因 に と り、 ク ラス ター 分析 す る 中 で 、地 価 の 意 味 を探 ろ う と した。 中原 ・太 田 のは地 価 に よ り、 土地 利 用 形 態 が異 な って 現 出 して い る点 に着 目 し、 札 幌 を フ ィー ル ドに土 地 利 用 の 需 要 予 測 を行 っ た。 彼 等 は 土 地 利 用 形 態 を 「商 業 専 用 」 「工 業 専 用 」 「住 商 工 混 合 」 「住 宅 専 用 」 の5種 に分 け 、土 地 利 用 の 型 を 目的変 数 に 、 地 域 特 性 を説 明変 数 と した 判 別 分 析 を地 価 の 階 層 別 に行 い、 この結 果 を 基 に土 地 利 用 型 の 予 測 を 行 った 。 しか し、 この分 析 も、最 近 の 高 層 化(土 地 利 用 の高 度 化)、 郊 外 へ の大 規 模 な 工 業 の 団 地 化 の 状 況 下 で も この 理 論 が適 用 出来 るか 疑 問 が 残 る。 地 理 学 関 係 で は脇 田5)が金 沢 ・仙 台 の 各 市 を フ ィー ル ドに 、 「地 価 ・地 代 」 の乖 離 を検 討 す る な か で 、 中心 商 業 地 に 立 地 す る生 業 的 な各 種 の 小 売 店 の存 立 基 盤 を診 断 して い る。 た だ し、 この乖 離 が具 体 的 に 、土 地 利 用 に ど の よ うな 変 化 を及 ぼ して い るか の論 及 は なか っ た。 著者の地価形成と土地利用変動に対する考え方 土 地 利 用 形 態 の変 化 は 各 土 地 利 用 間 の競 合 に あ り、 そ の変 化 に は そ の 土 地 を 占有 す る力 、 即 ち、 地 代 負 担 力 が そ の ベ ー ス に働 い て い る もの と著 者 は と ら え る。6)∼8)そ こで さ ま ざ まな 土 地 利 用 の 地 代 負 担 力 の源 泉 は 「そ の 土 地 を利 用 す る事 に よ って 生 ず る超 過 利 潤 」 に あ る と考 え、 面 積 当 りの超過 利潤 額 を割 り出 し、 そ れ を利 子還 元 す る事 に よ り、 「実 質 地 価(収 益 還元 地 価)」 を算 出 した。 この 実 質 地 価 な る概 念 を作 り出 す 意 義 は次 の とお りで あ る。 1)土 地 利 用 変 化 は基 本 的 に は 、 土 地 利 用 間 の 「競 合 」 で あ り、 土 地 利 用 に 関 して 、 地 代 負 担 力 の 高 い用 途 が 、 よ り低 い用 途 に入 れ 替 わ り得 るが 、 そ の 際 、 こ の概 念 が 、地 代 負担 力 を 表 現 す るイ ソ デ ィケ ー ター と して採 用 出 来 る。 2)こ の 「実 質 地 価 」 と 「実 勢 地 価 」 は 常 に均 衡 状 態 に動 い て お り、 当 該 地 域 の実 質 地 価 と 実 勢 地 価 と の差 こ そ が、 土地 利 用 変 動 を 惹起 す る もの と考 え られ る。 即 ち 、 当該 の 「実 質 地 価 」 が 「実 勢 地 価 」 よ り高 け れ ば、 両 地 価 が均 衡 す る よ り良 い位 置 まで 移 動 と得 る。 逆 の場 合 は 、 両地 価 が均 衡 す る条 件 の 悪 い位 置 ま で退 くこ とに な る。 以 上 の 考 え 方 を 適 用 す る と土 地 利 用 変 動 の移 動 の距 離 と方 向 に つ いて 推 測 す る事 が 出 来 る。 な お住 宅 地 の 実 質地 価 に つ い て は 、企 業 に お け る 「超 過 利 潤 」 に あ た る もの と して 、 「貯 蓄 」 (単 な る預 金 の み で な く、 株 式 の 土 地 な ど を含 め た 広 範 の 貯 蓄)を 持 った。 そ の理 由は 、 住 宅 地 自体 、 「利 潤 」 を 生 む もの で は な い が、 そ こで生 活 を し、 何 が しか の 「剰 余 」(家 計 収 入 一 労 働 力 の再 生 産 に 必要 な 支 出)が 生 じる ので 、 そ れ を企 業 で い う 「超 週 利 潤 」 に み な し得 る イ 奈 104 良 大 学 紀 要 第19号 ソ デ ィケ ー ター と して 取 り上 げ た。 以 下 、 各 土 地 利 用 毎 の 実 質 地 価 の算 出方 法 を説 明 す る◎ 実質地価算出方法 (商 業 地) 小 売 業;単 位 面 積 当 りの 商 品販 売 額 ×0.02÷0.05 (従 きり 業員 し数な ないど もは の)(縢 っ 銀 號 ρ霜學鰐 舞哲欝 て) 行;単 位 面 積 当 りの 預 金 額 ×0.∞6 (銀 行 協 会 調 査 の全 国銀 行 財 務 諸 表分 析 か ら) デ パ ー ト;{(粗 利 益=売 費用=粗 り上 げ ×0.2)一(配 当 一 金利=粗 利 益 ×0.60)}÷(敷 利 益 ×0.05)一(労 賃)一(そ の 他 の 地 面 積)÷0.05 (工 業 地) {(付 加 価 値 額)一(人 権 費)一(利 子 ・配 当)一(減 価 償 却 費)}÷(工 場 敷 地 面 積)÷0.05 (利 子 率5%と した。) (住 宅 地) 各 地 域 毎 に 、 敷 地 面 積 当 りの貯 蓄 の 純 増 減 を利 子還 元 以 上 の 算 出 に つ い て 以 下 コ メ ソ トを 加 え る。 1)商 業地 について 実 質 地 価 を 算 出 す る た め に は 、 まず 当 該 の 土 地 利 用 に つ いて の面 積 が必 要 で あ るが 、 商 業 地 に つ い て は 、通 産 省 の 商 業 統 計 か ら、 市 区 町 村 毎 に、 販 売 額 と共 に 、 売 り場 面 積 が 得 られ る。 こ こに 、 そ の 殆 ん ど が一 階 の み で 営 業 して い る一 般 小 売 店 に つ い て は 、 中 小企 業 庁 の 小 売 業 の 費用 構 成 分 析 か ら、 販 売 額 に 対 す る純 益 率 が、 過 去20年 で 、2%で あ る事 か ら、利 子 率 を5% と して 、 この 実 質 地 価 は 坪 当 た りの 商 品 販 売 額 ×0.02÷0.05と 算 出 され る。 又 、 百 貨 店 につ い て も、 市 町 村 毎 に、1店 舗 当 た りの販 売 額 と従 業 員数 が 得 られ 、 中小 企 業 庁 の 費 用 構 成 分 析 か ら、 精 利 益=販 売額 ×0.2、 配 当+金 利=粗 利 益 ×0.05、 減 価 償 却 ・広 告 ・ 通 信 等=粗 利 益 ×0.60 とな り、 労 賃 は 、 当該 地 域 で の大 規 模 小 売 店 従 業 員 の平 均 賃 金 ×従 業 員数 。 面 積 につ い て は 、 住 宅 地 図 に よ り計 測(例 {(粗 利 益=販 えば 、 札 幌 市 で は500坪)し 売額 ×0.05)一(配 通 信 費 等=粗 利 益 ×0.60)}÷(敷 算 出 す る。 よ って 、 百 貨 店 の実 質 地 価 は 、 当+金 利=粗 利 益 ×0.05)一(労 賃)一(減 価 償 却:広 告・ 地 面 積 ÷0.05) なお 、 卸 売 業 に つ い て は 、 販 売 額 に つ い て は 、 デ ー ター が得 られ る もの の 、 そ の 面 積 に つ い て は 、 そ の多 様 性 の た め 計 測 が 出来 な い。 サ ー ビス業 に つ い て も同 様 で あ る。 銀 行 に つ い て は 、 日本 銀 行 協 会 調 査 の市 区 町村 別1店 舗 当 た りの 預 金 額 が得 られ る。 同協 会 調 査 の全 国 銀 行 財 務 諸 表 分 析 の 利 益 配 分=構成 を 参 照 にす る と、超 過 利 潤 額=預 金 額 ×0.006と な る。 又 、面 積 に つ い て は 、百 貨店 と同様 に 、 市 区毎 に 、 住 宅 地 図 に基 づ いて 、1店 舗 平 均 を 計 測 す る。(例 え ば 、 札 幌 で は500坪 とす る。)よ って 、 銀 行 の 実 質 地 価 は 、 坪 当 りの預 金 額 ×0.006÷0.05 と な る。 2)工 業 地 につ い て は 、通 産 省 の 工 業 統 計 に よ り、 製 造 業 につ い て、 面 積 当 た りの付 加 価 値 額 が市 区 町 村 毎 に得 られ る。 次 に、 中 小 企 業 の 付加 価 値 構 成 を参 照 に して 、超 過 利 潤 を算 出 した。 な お 、規 模 別(大:従 業 員300人 以 上 、 中:同30∼299人 、 小:同29人 以 下)の 超 過 利 潤 は 同 白 實:土 地 問題 と土地政策 に関する考察 105 書 の規 模 別 付 加 価 値 構 成 分 析 を参 照 に した 。 以 上 、 面 積 当 た りの超 過 利 潤 を 計 算 した 後 、 利 子 還 元 して工 業 地 の 実 質 地 価 を求 め た。 3)住 宅 地 に つ い て は 、 ま ず 、 貯 蓄 動 向 年 報 の5(又 (貯 蓄 一 負担)を 都 市 規 模 別(巨 は10)分 位 別 の年 間 当 た りの 純 貯 蓄 額 出 す 。 次 にそ れ を 当該 地 域 の平 均 住 宅 敷 地 面 積 で 除 し、 さ ら に、 上 記 年 報 の 大都 市 、 大 都 市 、 中都 市 、 小 都 市)の 貯 蓄 額 格 差 で補 正 して 算 出 す る、 そ れ を 利 子 還 元 して 、 当 該 地 域 の規 模 別 の住 宅 地 の 実 質 地 価 を算 出 す る。 大阪都市圏にみる 「実質地価」と土地利用の実証例 大 阪都 市 圏 は 、JR、 阪 急 、 阪神 、近 鉄 、 南 海 な ど比 較 的 、公 共 交 通 機 関 が 発 達 して お り、 人 口 ・企 業 の 集 中 ・分 散 も これ らの交 通 網 に沿 って 進 行 して い る。 大 阪 圏 に つ い て 、 実 質 地 価 曲線 を描 き、 これ に 、 土 地 利 用 毎 の 「実 質 地 価 」 を 対 比 させ る と と もに 、 土 地 利 用 形 態 の変 化 の論 理 と そ の 実態 を 、1960年 代 の高 度 経 済 成 長 期 と ご く最 近 の1988年 の 二 時 点 につ い て 検 討 し た。 そ の結 果 、 以 下 の 事 が 分 っ た。 ま ず 、1960年 代 の ケー スで は 、 1)C.B.Dの 商 業 地 を構 成 す る機 能 を代 表 す る銀 行 、 デ パ ー ト、 専 門 店 につ いて み る と、 銀 行 につ い て は、 最 高地 価 を上 回 って お り、地 価 プ ライ ス リー ダー の一 翼 を担 っ て い る。 デ パ ー トに つ い て も、都 心 の0.6kmの 地 点 で 、 当該 の 実 質 地 価 と実 勢 地 価 が均 衡 して い る。 この事 は 、 又 、 大 半 の デ パ ー トが 、 都 心 よ り1-3kmに 分 布 す るだ け に 、 デ パ ー トも立 地 点 で の 実 質 地 価 が 、実 勢 地 価 よ りや や 高 く、 地 価 の 高騰 に一 役 買 って い る。(図6.7) 図6.大 阪 市 東 部 に お け る地 価 曲線 と 実 質 地 価 地 価 16313944 源 泉(昭 和40年 大 阪府,坪 当た り) 70 万円 地価 製 造 業 (千 円) 鯉 口 は実質地価 を表 わす 口 は実質地価 が現実 地価 を上 回ってい る分 最高地価曲線 (max) 瞳 西宮 限界地価 曲線 (MA) ⑭尼 ケ崎 ①守 都 心 か らの距離 ⑪ 西9. ⑤暇屋川 ⑭宝 塚 ④枚 奈 106 図7.大 良 大 学 紀 要 第19号 阪 市 及 び そ の 周 辺 の都 市 化 状 況 酊 国 B(少 ド ○ .討 ご \A画] ○ 、 ク ・二4グ B-一 ・ 、 、C、 ・ 凡 磯 鱒 ∴/ 離 ノ k喚c/ 例 工 ZOOh、GWIICi 100ha 50ha ● ・件 当 り3・ ・妹 ○ ・件 当 り㎜ 一599n'コ'未 満 ○ ・件 当 り節 住 宅 呼 満 肚 11.4VVi-Y 100ha 50ha 分 譲住 宅 貸 家 ・アパ ー ト 貸 家 アパ ー ト建設 上記 の ピー ク年 度 A世 帯主1人 当 り年80万 円以上 (昭和38年) B〃40∼79万 円 C〃39万 円以下 ○ 水害 常習 地 ""川'""丘 陵 地 大 阪府土 木部 「東大 阪 におけ る水害諭 」 大 阪府 農林部 農地 動態調 査 昭和39年,41年 大 阪府 民所得 推計 よ り作 成 2)住 宅 地 に つ い て 言 え ば、 図6.7よ り、理 論 的 に所 得 階 層 で5分 の1位(Aク ラ ス)は 大 阪市 内 で も十 分 負 担 力 に耐 え、 転 出 す る際 に は 、 枚 方 、 宝塚 と言 っ た高 燥 で 、静 か な 土 地 で の 地 代 負担 力 に も耐 え る事 が 出来 、 所 得 の5分 位 の3位(Bク ラ ス)で は 門真 、寝 屋 川 、 大東 、 東 大 阪 と言 った 低 湿 地 で や っ と地 代 負担 力 が均 衡 し、 そ れ よ り下 の ク ラス で は都 市 圏 内 の どの 場 所 も、 自力 で は 地 代 負 担 力 に耐 え か ね て 、 出 来 な い事 に な る。 事 実 、 上 記 の 理 論 を裏 付 け る よ うに 、居 住 者 の 所 得 が 、丘 陵地 に卓 越 して い る宝塚 、 芦 屋 、 西 宮 、 箕 面 、 生 駒 、 長 岡 京 と言 っ た 各 市 が 高 く、 守 口、 門 真 、 寝 屋 川 、 尼 崎 と言 った低 湿地 で 出 水 の 危 険 性 の 高 い 住 宅 地 と か 、 この場 の 公 害 に悩 ま され て い る地 域 で の所 得 が低 くな って い る。 な お 、 母 都 市 で あ る大 都 市 の所 得 が や や 低 い の は、JR環 状 線 の周 縁 に 、 ホ ー ム レス的 労 務 者 階 層 や 社 会 的 被 抑 圧 的 階 層 が ス ラ ム的 に 住 み 着 くな ど、 所 得 の 低 い階 層 が郊 外 へ 転 出 す る 余 力 が な く滞 留 して い る点 も大 きい。 この よ うに、 階 層 に よ る 「住 み分 け」 が地 代 負担 力 に も とつ い て な され て い た。 3)工 場 に つ い て は60年 代 の 高 度 経 済 成 長 期 に は郊 外 へ 大 量(1年 間 で大 阪 府 内 で5000haも の 転 用 が あ った 。)に建 設 され 、 同時 に 、 階 層 に よ っ て転 出場 所 に 差 が 出て 来 た。 即 ち 、 国道1 實:土 地問題 と土地政策 に関す る考察 号 線 やJRな 107 ど工場 に と って 転 出 条 件 の よ り優 れ て い る淀 川 右 岸 と比 較 的条 件 の 悪 い淀 川 左 岸 で は進 出 す る工 場 の 規模 に格 差 が あ る。 前 者 が一 一件 当 た り600m2以 上 の比 較 的 大 規 模 な工 場 が 多 く、 後 者 は300m2未 満 の 中 小 零 細 工 場 が 多 い 。 つ ま り、 淀 川 右 岸 の地 価 の 高 い所 は 、 そ れ に ふ さわ しい地 代 負担 力 の あ る有 力 工 場 が 進 出 した。 まだ 、 この 工場 進 出 が 住 宅 地 域 に 混 在 な い し近 接 す るい わ ゆ る 「住 工 混 在 地 域 」 を多 く現 出 した 。 この要 因 は 「住 宅 」 と 「工 場 」 の 地 代 負 担 力 が酷 似 し、 同 等 の土 地 を選 定 す る可 能 性 が 強 か った事 や 、行 政 的 に も、 住 み 分 け に つ いて の規 制 が甘 か った 事 に起 因す る。 1970年 代 に は い る と、大 阪 の 土地 利用 パ ター ソに も変 化 が 出 て き た。 まず 、工 場 に つ い て 言 え ば 、農 地 か ら工 場 地 へ の転 換 が 著 し く減 少 した。1980年 代 は60年 代 の それ と比 較 して 平 場 転 用 面 積 は15%ま で落 ち込 ん で い る。 また 、1980年 代 に入 る と、 円 高 傾 向 も手 伝 い 、産 業 の海 外 投 資 も急 増 、 海 外 生 産 率 も1990年 に は1割 を こ えた 。 ま た商 業 に つ い て言 え ば 、1960年 代 の 後 半 か ら70年 代 に か け 、 大 阪 の 都 心 周 辺 か らは 、府 下 の主要 私 鉄 駅 前 で 、再 開 発 プ ロ ジェ ク ト(:大 阪市 内1件 、 府下11件)が パ ー を 中心 と した大 型 小 売 店 も これ に伴 って 進 出 した。 進 行 し、 同時 に、 スー こ うい う状 況 下 で 、1988年 か ら大 阪都 市 圏 に も、 そ の2年 前 に 、東 京 に 発 した地 価 高 騰 の波 が ドッと押 し寄 せ た。 こ こ に、1988年 現 在 の地 価 曲 線 を描 き、 土 地 利 用 形 態 が い か に変 化 して い るか を検 討 した 結 果 、 次 の 事 が分 か っ た。 1)階 層 別 に よ る住 み 分 け が 継 続 して い る。 低 所 得 者 は 低 湿 地 、 環 境 悪 化 地 へ と転 出 が 続 い て い る もの の 、 住 宅 所 有 に つ い て 言 え ば、 実 勢 地 価 の 高騰 に よ り、 持 ち家 率 が大 阪 市 を 中 心 に急 速 に低 下 しだ して い る。 また持 ち家 と言 って も分 譲 マ ソ シ ョソ居 住 者 が大 幅 に増 え 、1983年 に は す で に 、持 ち家 の26.4%に も達 して お り、1990年 時 点 に は 同3分 の1に 思 わ れ る。1970年 に は僅 か4.4%で あ っ た事 を 考 え る と、 「土 地 無 し」 持 ち家 層 の 大 幅 な増 加 も 目立 つ。(図8) 10,000万yen/3.3㎡ km-NE 1520 reallandpricein bankarea departmentstorearea residentialareafirstclassindecatilegroup residentialareaoffirstclassinquintilegroup residentialareaofthirdclassinquintilegroup residentialareaof丘fthclassinquintilegroup industrialarea m ・5 k 図8.大 も達 して い る もの と 阪都 市 圏 の地 価 曲線 と実 質 地 価(1988) 奈 108 良 大 学 紀 要 第19号 この事 実 は 、 図8で 確 認 され る と お り、住 宅 地 の実 質 地 価 が 、5分 位 の1位 で90万 円 、3位 で36万 円 、5位 で21万 円 で 、大 阪 府 下 で は 、1位 で す ら、 住 宅 地 と して の 条 件 が悪 く、地 価 の 安 い宅 地(例 え ば 、 門真 や寝 屋 川 の は ず れ 、 南 大 阪 で は 都 心 よ り20km以 南)し か実 勢 地 価 と均 衡 しな くな っ た。10分 位 の1位 で は130万 円 と な り、 や っ と枚 方 、 堺 あ た りに 手 が 届 く程 度 に な って い る。 2)商 業 地 に つ い て 言 え ば 、 面 積 的 に は 、好 景 気 を反 映 して 、府 全 体 で は1978∼84の 間 に0.5 %程 度 の 面 積増 加(売 り場 面 積 は11.1%の 増 加)で あ っ た が 、大 阪 市 に隣 接 す る郡 で は15∼30 %増 と多 か った 。 商 業地 の 実 質地 価 を 見 る と、1965年 で は地 価 の プ ラ イ ス リー ダー で あ っ た銀 行 や デ パー トも そ れ ぞ れ 、3000万 円(都 心 の大 銀 行 は6000万 円)、4000万 円 と単 独 で は実 勢 地 価 を上 回れ な く な った 。 即 新 た に都 心 部 に 立地 す るの には 、 他 の オ フ ィス を伴 った 高 層 ビル に 入 居 す る形(再 開 発 事 業 な どが そ の チ ャ ソ ス)で しか 進 出 で き な くな っ て い る。1981年 に 降 って は 目ぼ しい再 開 発 事 業 は少 な く、 デパ ー ト、 スー パ ー共 に、 そ の数 は 余 り増 加 して い な い 。 3)工 場 に つ いて 言 えば 、80年 代 に入 って か ら、 全 域 的 に 転 出 の 傾 向 が続 い て い る。 しか し、 工 業 の 中 で も、 都 心 型 の付 加 価 値 の高 い 印刷 ・出版 業 が 生 野 、 東 成 、東 住 吉 の 各 区 で 増 加 した り、Nonbasic型 の工 場 で も、比 較 的 付 加 価 値 の 高 い電 気 、機 械 工 業 を 中 心 に 、 門 真 、 大 東 、 東 大 阪 の 各 市 で 増 加 の 傾 向 が み られ る。 前 者 の実 質 地 価 は160万 円 、 後 者 も80万 円 と高 く、新 規 立 地 す る場 所 も実 勢 地 価 に近 く理 論 的 に も存 立 基 盤 が あ る と言 え る。 大阪圏における住宅問題と対策 前 述 の 如 く、 地 価 と土 地 利 用 形 態 の 変 動 が 強 い 関 連 を 持 っ て い る 事 を 理 論 的 に も裏 付 け ら れ て い る が 、 現 実 の 土 地 利 用 を め ぐ る 状 態 を 宅 地 に し ぼ っ て 述 べ 、 後 で そ の 解 釈 等 を 検 討 した い 。 オ フ ィ ス に つ い て は 、 東 京 で の 「一 極 集 中 」 に よ る 極 端 に 上 昇 し た オ フ ィ ス使 用 に よ り、 大 阪 圏 は 、 東 京 圏 に 比 して 、 オ フ ィ ス の 賃 貸 料 に つ い て は 、 最 高 ポ イ ソ ト当 り のm2、 東 京 が13万 円 に 対 し 、 大 阪 が 同3.5万 円 と、 東 京 で 言 えば 副 都 心 よ り レベ ル の 低 い大 崎 あ た りの レベ ル と な っ て い る。 従 っ て こ れ が 最 高 地 価 に も多 少 反 映 し 、 実 勢 地 価 で は 、 東 京 の 銀 座 でm2当 億 円 に 対 し 、 大 阪 駅 前 が1.54億 り1.63 円 と の差 に な っ て顕 わ れ て い る。 然 し、 事 、 住 宅 地 に つ い て 言 え ば 、 東 京 圏 と 大 阪 圏 の 住 宅 地 の 価 格 差 は 、 殆 ん ど な い 。 即 ち 、 東 京 で 地 価 高 騰 の 始 ま っ た 次 年 の1987年 で は 、 大 阪 は 東 京 の53.6%、1988年 く差 が つ い た が 、 大 阪 も1988年 か ら地 価 急 騰 期 に 入 り、1990年 大 阪 が47.6万 も 、1989年7月 1990年3月 円 と 、 大 阪 も東 京 の91。4%と あ た りで は 、 東 京5,000万 に5,208万 に は 、m2当 に は43.4%と り 、 東 京 が52.1万 大 き 円、 、 大 差 が な くな った。 又 、 新 築 分 譲 マ ソ シ ョソ価 格 円 に 対 し 、 大 阪3,484万 円 と 同 額 に な り 、 同 年4月 円 と か な りの 差 が あ った が 、 に は 、 逆 に 、 大 阪 が6,439万 円 に 対 し、 東 京5, 785万 円 と大 阪 圏 の 方 が 分 譲 マ ソ シ ョ ソ の 値 が 高 く な っ て し ま っ た 。9)つま り 、 商 業 地 で は 幾 分 、 東 京 に 地 価 に 差 を つ け られ て い る と は 言 え 、 住 宅 地 に つ い て 言 え ば 、 大 阪 も東 京 と 負 け ず 劣 ら ず 高 地 価 に 喘 ぐ事 に な っ た 。 この大 阪 圏 で の地 価 高 騰 ブ ー ム を反 映 して住 環 境 に つ い て 次 の よ うな事 が 出 て 来 た 。 1)も と も と大 阪 の 住 条 件 は 劣 悪 だ っ た が 、 こ の 間 に 尚0層 の 傾 向 を 強 め た 。 即 ち、 大 阪 府 は 住 環 境 が 東 京 に 比 し て も悪 く、 平 均 居 住 水 準 未 満 が 全 世 帯 の65.3%の173万 居 住 水 準 の 世 帯 が 同18.9%の50.4万 く、 全 国 平 均 の48.6%の126m2(38.2坪)と 世 帯 、 更 に、 最 低 世 帯 に も及 び 、 一 住 宅 当 り の 敷 地 面 積 も 、 全 国 で 最 も 小 さ 住 条 件 が 最 悪 と な っ た 。 正 に 、 欧 米 人 が 「兎 小 屋 」 と称 さ れ る 日 本 家 屋 の 典 型 が 当 て は ま る よ う で あ る 。10) 109 實:土 地 問題 と土 地 政 策 に関 す る考 察 2)こ の住 条 件 の 悪 化 に追 い うち を か け る か の よ うに 、法 人 に よ る土 地 の 買 占 め 、地 上 げ屋 の 暗 躍 が 見 られ る。 地 目別 の個 人 ・法 人 別 所 有面 積 の推 移 を見 る と、大 阪 圏 の地 価 上 昇 が 急 に な っ た1988年(昭 和63年)か ら個 人 の 所 有 面 積 が減 少 し、代 って 、(個 人 所 有 の 土 地 を 買収 して) 法 人 の 所 有 面 積 が大 幅 に 増 加 し出 した 。1988∼89の1年 %)の 減 少 に 対 して 、 法 人 所 有 の 面 積 が306ha(7.8%)も 間 には 、 個 人 所 有 の 面 積 が78ha(1.2 の 増 加 とな っ て い る。 と りわ け 、 個 人所 有 の 土 地 の 法 人 所 有 者 へ の転 換 へ は 、 多 分 に 「地 上 げ 屋 」 な ど悪 質 な不 動 産 仲 介業 者 を 使 って い るケ ー ス も 目立 ち 「強 制 的 」 な 立 ち退 きの恐 怖 に脅 か され て い る住 民 の住 宅 問題 は深 刻 で あ る。 まず 何 よ り、 資 金 力 の あ る法 人 所 有 へ の大 量 の土 地 転換 は 、 地 価 上 昇 に つ な が る危 惧 を孕 んで い る。(表1) 表1地 目別,個 人,法 人別所有面積 の推移(大 阪市) 年 度S50S62S63平 地 目 計 元(元 個 人 6,622 6,700 s,ss2 6,622 法 人 4,163 4,131 4,177 4,437 10,785 10,831 10,839 11,059 計 3)地 (単位ha) 年一62)(元w/62) X78 306 X1.2% 7.4°/ 価 の 急 上 昇 に よ り、相 続 税 や 固 定 資 産 税 が べ らぼ うに 上 昇 した 。 相 続 税 に つ い て も、 そ の 金 額 が 全 国 平 均 の80坪 程 度'1)の敷 地 を 持 つ家 で も、 大 阪 市 内で は 、 実 勢 地 価 が860万 円(路 線 地 価500万 円)ぐ らい だ と2.5億 円 程 度 は相 続 税 と して 取 られ る ので 、 自分 の住 ん で い る土地 を 手放 さ ざ る を得 な くな る。 また 、 地 価 高 騰 や 、 固 定 資 産 の 書 きi換え に よ り、 大 幅 に資 産 税 が 上 が り、 上 記 の よ うな ケ ー ス で も、 固 定 資 産 税 評 価 地 価 が80万 円 と な り、1.4%の 税 率 で 年 間8 9.6万 円家 屋 も含 め る と優 に130万 円 を超 す 額 に達 す る、 殊 に、 退 職 して 年 金 に頼 っ て い る老 人 世 帯 に と って は 月 額8万 円 を超 す 税 は厳 し過 ぎ、 「居 住 権 」 を奪 われ 、今 住 ん で い る家 を 売 却 し、郊 外 の安 い家 賃 の所 へ転 居 せ ざ る を得 な くな る。 正 に無 言 の立 ち退 きに な る。 この よ うに 、 地 価 高 騰 は 、 そ うで な くて も、 母 都 市 か ら人 口を郊 外 へ 吸 い 出 し、 夜 は人 の住 ま な い オ フ ィ ス ビル が 主 役 の 鉄 と コ ソ ク リー トだ け の 、血 の 気 の 通 わ な い街 にす る傾 向 が強 ま って来 た 。 土 地 。住 宅 政 策 に つ い て 大 阪 圏 で も、今 や 、 マ ソシ ョソで も6,000万 円 、 一 戸 建 て とな る と1人 当 りの 年 収(500万 円) の10倍 を遙 か に超 え る事態 に 陥 っ た。 1990年9月 に、 「土 地 メー デ ー 」 が挙 行 され た ほ ど厳 しい段 階 に来 た。 これ に対 し、政 府 、 財 界 、 労 働 界 な ど各 界 で 、 そ れ ぞ れ の立 場 で 、 この 土 地 住 宅 問 題 に取 り組 も う とす る動 きが 出 て来た。 まず 、 政 府 は、1989年 に 「土 地 基 本 法 」 を制 定 した 。 これ に よ り(1)土地 の公 共 性 の認 識 の 徹 底 、(2)市外 化 区 域 内 の 農地 の 宅 地 並 課 税 実 施 に よ る土 地 供 給 の促 進 。(3)地価 の 監視 強 化(4)金融 機 関 の 不 動 産 部 門 へ の 融資 の 制 限 。(5)土地 の 高度 利 用 へ の 誘 導 の土 地 政 策 を打 ち 出 した 。 しか し、 そ の 法 律 の実 効 性 に つ い て は 、 抜 け道(疑 似 農 地 の 出 現.金 融 の裏 融 資 等)も 多 く疑 問 が 持 た れ て い る。 また 、 この 法 律 を支 援 す るか の よ うに 、 「大 都 市 住 宅 地 供 給 促 進 特 別 措 置 法 」 の制 定 や 「建 110 奈 良 大 学 紀 要 第19号 築 基 準法 」 の一 部 改 正 、 「借 地 ・借 家 法 」 の 改 正 等 に よ り、 容 積 率 の 上乗 せ な ど を イ ソセ ソテ ィ ブ と して 、土 地 利 用 の 高 度 化 や 高 層 住 宅 の 建 設 を計 り、 高 地 価 に耐 え る街 づ く りを促 進 しよ う と して い る。 然 し、 この 中 で も、 「借 地 ・借 家 法 」 の 改 正 は、 家 主 が 高地 価 の 地 域 で 、土 地 利 用 の 高 度 化 とい う名 目で 中高 層 ビル 、 マ ソ シ ョソを 建 て る場 合 は 、借 家 人 は 、 否 応 な しに 家 を 追 い 出 され る事 にな る法 律 で 、住 宅 問題 に 苦 しん で い る住 人 に と っ て は厳 しい 内容 の もの とな って い る。 また 、 地 価 高 騰 を抑 制 す るた め に 、土 地 に 対 す る課 税 を認 め るた め 、 政 府 は 、実 勢 地 価 の約 10分 の1と 言 わ れ て い る固 定 資 産 税 評 価 地 価 を 、 実 勢 地 価 の約2分 の1(現 行 の約5倍)と も 言 わ れ る路 線 地 価 に、 固 定 資 産 税 の基 準 を変 更 しよ うと構 え て い る。 そ うで な くと も、 地 価 高 騰 に伴 う、資 産 税 評 価 の 書 き換 え に怖 え て い る市 民 が、 更 に そ の5 倍 もの資 産 税 の 、 企 業 、 住 民 を問 わ な い一 律 課 題 が 課 せ られ る(先 述 の80坪 の例 だ と年 間 の 固 定 資 産 税 額 が土 地 だ け で448万 円 に もの ぼ る)と な る と、 これ は 愈 々大 都 市 の土 地 は 、 一 部 の 有 力 企 業 だ け の もの とな り、 住 民 や 生 業 的 な商 。 工 業 者(こ れ が実 に都 市 の 街 の個 性 的 な景 観 を形 づ く る)を 追 い 出 して しま う事 に な る。 こ うな って は 、 大 阪 市 に住 め な くな っ た住 民 が大 量 に 郊 外 へ 移 り住 む た め郊 外 の 土 地 は急 騰 す る と共 に、都 市 の 中心 は有 力 企 業 の買 い 占め が 始 ま るた め 、 これ 又 、 地 価 が 上 が る事 にな り、 とて も地 価 対 策 と して 受 け 入 れ られ る もの に は な らな い 。 政 府 も 当初 は一 律 課 税 で な く、遊 休 地 、 未 利 用 地 に ター ゲ ッ トを 当て 、 これ らの 土 地 を有 効 に利用 す べ く、 又 、土 地 の供 給 量 を増 や す た め と して課 税 の 予 定 で あ っ た。 しか し、 現 実 に、 これ らの 土 地 の 大 半 を、 有 力企 業 が握 って お り、 企 業 側 か らの反 発 を招 いて 立 消 え に な った よ うで あ る。 一 般 的 に言 って 著 者 は、 土 地 税 制 に は 限度 が あ る と思 う。 欧 州 な どの よ うに思 い切 って キ ャ ピ タル ゲ イ ソ(Capitalgain)課 税 をや る と い うの も一 つ の手 で あ ろ う し、1989年 か ら韓 国 で 実 施 され て い る土 地 税 制 一 キ ャ ピ タル ゲ イ ソへ の 大 幅課 税 、660m2を 超 え る土 地 に つ いて は実 勢 地 価 の6%も の重 課 税 を課 す る と い うキ ャ ピ タル ゲ イ ソへ の大 幅課 税 一 も一 つ の手 で あ ろ う と考 え る。 しか し、 地価 の 本 質 、 そ れ は、 そ の土 地 を使 う事 に よ っ て生 ず る利 潤 が そ の ペ ー ス に あ る事 を考 え れ ば 、 そ の 発 生 源 か らも手 を打 つ べ きで は な い か。 即 ち、 大 きな超 過 利 潤 を あ げ て い る企 業 。 高 額 の所 得 や 株 な ど不 労 所 得 の 多 い 市 民 へ の思 い 切 り高 い 課 税 も併 せ考 え な い と意 味 が 無 い と考 え る。 前 者 と して は 、所 得 に つ い て は 、 特 別 優 遇 税 を や るの で な く、 逆 累 進 的 に大 き く税 を と り、 後 者 に つ い て は 、 有 価 証 券 取 引 税 の 強化(例 え ば現 行 の0.07%を 欧 州 並 み の0.25∼0 .5%ま で 引 き上 げ た り、 企 業 の そ れ と同 し くよ り一 層 所 得 の累 進 課 税 を す る の も一 つ の方 策 で あ ろ う。 そ して 、 この 強 化 した税 を惜 しげ な く、 住 宅 用 地 を政 府 や 自治体 な ど公 共 的 団体 が 取 得 し、 大 量 に 安 くて 良 質 の公 共 的住 宅 を建 設 し、 住 宅 に困 窮 して い る住 民 に 「住 宅 権 」 を保 証 す る事 が 更 に 大 切 な事 で あ る。 註 1)WilliamAlonso(1964)`LocationandLandUseTowardsaGeneralTheoryofLandRent' MITPress. 2)石 原 舜 介(1966)「 地 価 形 成 の 分 析 」 不 動 産 研 究8-3 3)天 野 光 三 ・阿 部 宏 史 ・近 藤 光 男(1982)「 都 市 にお け る土 地 利 用 とそ の変 動 に関 す る実 証 的研 究 」 都 實:土 地 問 題 と土 地 政 策 に 関 す る考 察 111 市 計 画 学 会 論 集17 4)中 原 宏 ・太 田 実(1983)「 地 価 形 成 要 因 か らみ た 都 市 の 土 地 利 用 予 測 に関 す る考 察 」 都 市 計 画 学 会 発 表 論 集18 5)脇 田 武 光(1986)「 6)實 清 隆(1974)「 7)同(1977)「 仙 台 市 の 産 業 と土 地 経 済 か ら見 た 地 域 研 究 」 大 東 文 化 大 紀 要22 市 街 地 形 成 理 論 に 関 す る 試 論 」 富 山 大 教 育 学 部 紀 要22 地 形 形 成 と 地 域 変 動 か ら 見 た 日 本 の 土 地 利 用 形 態 の 変 動 」 地 域 学 研 究7 8)K.Jitsh(1987)`DynamicsofUrbanLandUseinTermsofLandPrices;Comparative AnalysisofMajorCitiesinU.S.A,EuropeandJapan,GeographicalReportsofTokyo MetropolitanUniv.22 9)こ の 理 由 は 東 京 が1986年 が 、1988年 の 地 価 高 騰 時 に マ ソ シ ョ ソ を 作 り過 ぎ 、 価 格 が 値 崩 れ 気 味 だ っ た の と 、 大 阪 か ら 地 価 高 騰 ブ ー ム に 支 え ら れ 、 マ ソ シ ョ ソ 価 格 も 上 昇 し、 大 阪 の 方 が 東 京 よ り マ ソ シ ョ ソ 価 格 が 高 くな る と い う 逆 転 現 象 を 生 ん だ も の と 考 え ら れ る 。 10)大 阪 府 建 築 部(1989)大 11)80坪(264m2)だ 阪府は言統計年報 と過 小 住 宅200m2以 受 け た 場 合 は こ れ の4分1に 下 の 適 応 を 受 けず 、 国 定 資 産 税 は坪 価 そ の もの と な る。 同指 定 を 減 額 され る。 Summary Inordertogetsomehintsforthesolutionofthelandpricehikeproblem,theauthor analysedJapaneselargecitiesfromvieupointoftheeconomicalrelationshipbetweenlanduse andlandprice.Throughtheanalysishepointedoutthattherewasacloserelationbetween them;Thelandusechangewasbasicallybasedontheruleofeconomicpowerofland. Nowtherehasbeenanabnormallykeenlandpricehikesince1986stimulatedbythelow bankingrate.Thehighestlandpricehasrisensohighashalfamillion$1msinTokyoand Osaka. Thesehighlandpricehasbeenbroughtbythefollowingthings 1)muchprofitsfrominvestmentsoverseas 2)relativelylowtaxratetowardslargercampanies 3}severeexploitationfromlaborer Atanyrateithasbeenbecomingevenmoreharderforlaborerstoobtaintheirown housings; Evenaapartmenthousewith3-4roomscostsabout400.000$ asingleunithousecosts1-1.5million$whichneedsmorethantentimesannualsalaryof acommonworker. Inordertoamerioratethissituation,somestepshavebeen,orwillbetakenbygoverments. TochikihonhouorBasicLowforLandPricePolicyhasjustlaunched,whichmaycontribute thefollowingthings; 1)Loweringthelandprice 2)Providingalotsofaccomodations Howevertherewereindeedsomedefectswiththelow;Thisislittlepenaltiesforthe outbreaks.Financialassistancestothestepstoachievetheprojectsareratherweaker.... Here,Iproposethefollowingprocedures 奈 112 良 大 学 紀 要 第19号 1)Taxrateshouldbemoreincreasedinproportiontothesizeoftheprofitgainedatthe company. 2)Laborer'sWageshouldbeamerioratedbychangingthedivisionrateofthevalueadded betweenlaborerandcapitalownes. 3)Alargenumberofcheapbutniceaccomodationsshouldbebuiltimmediately. Atanyrate,Citizensshouldrequesttherightof`accomdation'moreloudly!